以下、本発明のエポキシ樹脂組成物、樹脂硬化物、プリプレグおよび繊維強化複合材料について詳細に説明する。
本発明者らは、繊維強化複合材料の引張強度と圧縮強度および、層間靭性の発現メカニズムを鋭意検討した結果、エポキシ樹脂組成物中に、少なくとも3官能以上の芳香族エポキシ樹脂[A]、4員環以上の環構造を1つ以上有し、かつ、環構造に直結したアミン型グリシジル基またはエーテル型グリシジル基を少なくとも1つ有するエポキシ樹脂[B]、芳香族アミン[C]を含み、エポキシ樹脂組成物全体に含まれるエポキシ基のモル数に対する、[C]に含まれる活性水素のモル数の比(H/E)が1.1≦H/E≦1.6であり、かつ、エポキシ樹脂組成物を硬化させてなるDSC硬化度が90%以上の樹脂硬化物において、曲げ撓み量が6.0mm以上であり、かつ、その樹脂硬化物のDMA(動的機械分析)により得られるガラス転移温度X(℃)とゴム状態弾性率Y(MPa)が下記式(1)を満たすことにより、トレードオフの関係であった引張強度と圧縮強度、および層間靭性を高いレベルで発現するのに最適な構造が得られることを見出した。
0.19X/℃−31.5≦Y/MPa≦0.19X/℃−27 ・・・(1)。
本発明において、エポキシ樹脂組成物を硬化させてなるDSC硬化度が90%以上の樹脂硬化物とは、DSC(示差走査熱量分析)により得られる、かかるエポキシ樹脂組成物の総発熱量と、かかる樹脂硬化物の残存発熱量から算出される硬化反応率(DSC硬化度)が90%以上である樹脂硬化物を指す。
本発明において、式(1)におけるXやYは、本発明のエポキシ樹脂組成物を、DSC硬化度が90%以上となる温度条件で加熱硬化し得られた樹脂硬化物について、DMA(動的機械分析)の昇温測定を実施し得られる貯蔵弾性率と温度の散布図より算出されるものである。かかるガラス転移温度は、上記散布図において、ガラス領域に引いた接線と、ガラス転移領域に引いた接線との交点における温度である。また、ゴム状態弾性率は、上記散布図において、270℃における貯蔵弾性率である。
また、繊維強化複合材料の引張強度と層間靭性の発現には、本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなるDSC硬化度が90%以上の樹脂硬化物において、曲げ撓み量が6.0mm以上であることが必要であり、より好ましくは7.0mm以上である。曲げ撓み量が6.0mm以上である場合、架橋密度が十分低く、靱性に優れた樹脂硬化物を得ることができ、かつ、得られる繊維強化複合材料において引張強度と層間靭性とを両立することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いた繊維強化複合材料は、樹脂硬化物のガラス転移温度とゴム状態弾性率が0.19X/℃−31.5≦Y/MPa≦0.19X/℃−27の関係を満たし、好ましくは0.19X/℃−31.5≦Y/MPa≦0.19X/℃−28である。ガラス転移温度とゴム状態弾性率がこの範囲を満たすことで、耐熱性と伸度を両立することができる。
エポキシ樹脂組成物のゴム状態弾性率が0.19X/℃−27より高いと、樹脂硬化物の耐熱性が低下したり、ゴム状態弾性率が高くなるために塑性変形能力が低下し、繊維強化複合材料の引張強度や層間靭性が低くなったりする。また、0.19X/℃−31.5より低いと、ゴム状態弾性率が低くなるために樹脂硬化物の曲げ弾性率が得られず、繊維強化複合材料とした場合に圧縮強度が不足する。
また、エポキシ樹脂組成物全体に含まれるエポキシ基のモル数に対する、芳香族アミン[C]に含まれる活性水素のモル数の比(H/E)は1.1≦H/E≦1.6である必要があり、好ましくは1.1≦H/E≦1.5、より好ましくは1.15≦H/E≦1.5である。H/Eが1.1に満たない場合、架橋密度が高くなるために樹脂硬化物の伸度が低下し、繊維強化複合材料の引張強度や層間靭性が不十分となる。一方、H/Eが1.6を超える場合は、樹脂硬化物の耐熱性や曲げ弾性率が低下し、また、エポキシ樹脂組成物の粘度が上昇するため、プリプレグの作製が困難となる。
また、本発明の繊維強化複合材料の引張強度と圧縮強度および層間靭性を高いレベルで発現するためには、本発明で得られるエポキシ樹脂組成物全体に含まれるエポキシ基のモル数に対する、芳香族アミン[C]に含まれる活性水素のモル数の比(H/E)が1.1≦H/E≦1.6であり、かつ、エポキシ樹脂組成物を硬化させてなるDSC硬化度が90%以上の樹脂硬化物において、曲げ撓み量が6.0mm以上であり、かつ、ガラス転移温度とゴム状態弾性率が0.19X/℃−31.5≦Y/MPa≦0.19X/℃−27の関係を満たすことが必要である。好ましくは、エポキシ樹脂組成物におけるH/Eが1.1≦H/E≦1.5であり、かつ、樹脂硬化物の曲げ撓み量が7.0mm以上であり、かつ、ガラス転移温度とゴム状態弾性率が0.19X/℃−31.5≦Y/MPa≦0.19X/℃−28である。H/E、曲げ撓み量、およびガラス転移温度とゴム状態弾性率がこの範囲を満たすことで、得られる樹脂硬化物において耐熱性と伸度を両立することができ、かつ、得られる繊維強化複合材料において引張強度と圧縮強度および層間靭性を高いレベルで発現することができる。
本発明において繊維強化複合材料の圧縮強度の発現には、本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなるDSC硬化度が90%以上の樹脂硬化物において、曲げ弾性率が3.4GPa以上であることが好ましく、より好ましくは3.6GPa以上である。曲げ弾性率が3.4GPa以上である場合、優れた圧縮強度を発現する繊維強化複合材料が得られる。
また、本発明の繊維強化複合材料の引張強度と圧縮強度を高いレベルで発現するためには、エポキシ樹脂組成物を硬化させてなるDSC硬化度が90%以上の樹脂硬化物において、曲げ弾性率が3.4GPa以上であり、かつ、ガラス転移温度とゴム状態弾性率が0.19X/℃−31.5≦Y/MPa≦0.19X/℃−27の関係を満たすことが好ましい。曲げ弾性率、およびガラス転移温度とゴム状態弾性率がこの範囲を満たすことで、得られる樹脂硬化物の架橋密度の増加を抑えつつ、曲げ弾性率を向上することがあり、得られる繊維強化複合材料において引張強度と圧縮強度を高いレベルで発現することがある。
本発明のエポキシ樹脂組成物に含まれる3官能以上の芳香族エポキシ樹脂[A]は、優れた耐熱性と力学特性を付与するため、必須の成分である。配合量が多すぎると樹脂硬化物の靱性が低下することがあり、また、少なすぎると樹脂硬化物の耐熱性の低下や、強度向上効果が不十分となることがある。したがって、3官能以上の芳香族エポキシ樹脂[A]の配合量は、本発明のエポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂総量100質量部に対して50〜90質量部であることが好ましく、より好ましくは55〜90質量部であり、さらに好ましくは55〜85質量部である。
3官能以上の芳香族エポキシ樹脂[A]としては、例えば、ジアミノジフェニルメタン型、ジアミノジフェニルスルホン型、アミノフェノール型、メタキシレンジアミン型、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型、ナフタレン型、ビフェニル型、イソシアヌレート型のエポキシ樹脂等が挙げられるが、樹脂硬化物に曲げ弾性率と耐熱性を付与できることから、下記式(2)または(3)で表される構造式を有するエポキシ樹脂およびその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましく用いられる。
ただし式(2)中、R1〜R4は、水素原子、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基、炭素数4以下の脂環式炭化水素基、ハロゲン原子からなる群から選ばれた一つを表す。Xは、−CH2−、−O−、−S−、−CO−、−C(=O)O−、−SO2−、−CH(CH3)−、−C(CH3)2−、−C(=O)NH−から選ばれる一つを表す。式(2)中のXが、−C(=O)O−、−C(=O)NH−である場合、その向きはどちらでも良い。
ただし式(3)中、R5〜R6は、水素原子、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基、炭素数4以下の脂環式炭化水素基、ハロゲン原子からなる群から選ばれた一つを表す。
式(2)または(3)において、R1〜R6の構造が大きすぎると、エポキシ樹脂組成物の粘度が高くなりすぎて取扱性を損ねたり、3官能以上の芳香族エポキシ樹脂[A]とエポキシ樹脂組成物中の他の成分との相溶性が損なわれ、得られる繊維強化複合材料の力学特性向上効果が小さくなったりすることがある。
エポキシ樹脂[A]としては、例えば、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、テトラグリシジル−3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルジフェニルエーテル、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−2,2’−ジブロモジフェニルエーテル、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−5−メチルジフェニルエーテル、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−2’−メチルジフェニルエーテル、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−3’−メチルジフェニルエーテル、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−5,2’−ジメチルジフェニルエーテル、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−5,3’−ジメチルジフェニルエーテル、テトラグリシジル−3,3’−ジアミノ−5−メチルジフェニルエーテル、テトラグリシジル−3,3’−ジアミノ−5,5’−ジメチルジフェニルエーテル、テトラグリシジル−3,3’−ジアミノ−5,5’−ジブロモジフェニルエーテル、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルジフェニルエーテル、テトラグリシジル−4,4’ −ジアミノ−2,2’−ジブロモジフェニルエーテル、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−5−メチルジフェニルエーテル、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−2’−メチルジフェニルエーテル、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−3’−メチルジフェニルエーテル、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−5,2’−ジメチルジフェニルエーテル、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−5,3’−ジメチルジフェニルエーテル、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメチルジフェニルエーテル、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジブロモジフェニルエーテル、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル−3,3’−ジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルジフェニルメタン、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−2,2’−ジブロモジフェニルメタン、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−5−メチルジフェニルメタン、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−2’−メチルジフェニルメタン、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−3’−メチルジフェニルメタン、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−5,2’−ジメチルジフェニルメタン、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−5,3’−ジメチルジフェニルメタン、テトラグリシジル−3,3’−ジアミノ−5−メチルジフェニルメタン、テトラグリシジル−3,3’−ジアミノ−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、テトラグリシジル−3,3’−ジアミノ−5,5’−ジブロモジフェニルメタン、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルジフェニルメタン、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−2,2’−ジブロモジフェニルメタン、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−5−メチルジフェニルメタン、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−2’−メチルジフェニルメタン、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−3’−メチルジフェニルメタン、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−5,2’−ジメチルジフェニルメタン、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−5,3’−ジメチルジフェニルメタン、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジブロモジフェニルメタン、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、テトラグリシジル−3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルジフェニルスルホン、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−2,2’−ジブロモジフェニルスルホン、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−5−メチルジフェニルスルホン、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−2’−メチルジフェニルスルホン、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−3’−メチルジフェニルスルホン、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−5,2’−ジメチルジフェニルスルホン、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノ−5,3’−ジメチルジフェニルスルホン、テトラグリシジル−3,3’−ジアミノ−5−メチルジフェニルスルホン、テトラグリシジル−3,3’−ジアミノ−5,5’−ジメチルジフェニルスルホン、テトラグリシジル−3,3’−ジアミノ−5,5’−ジブロモジフェニルスルホン、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルジフェニルスルホン、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−2,2’−ジブロモジフェニルスルホン、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−5−メチルジフェニルスルホン、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−2’−メチルジフェニルスルホン、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−3’−メチルジフェニルスルホン、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−5,2’−ジメチルジフェニルスルホン、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−5,3’−ジメチルジフェニルスルホン、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメチルジフェニルスルホン、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジブロモジフェニルスルホン、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノベンズアニリド、テトラグリシジル−3,3’−ジアミノベンズアニリド、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノベンズアニリド、トリグリシジル−m−アミノフェノール、トリグリシジル−p−アミノフェノール等が挙げられる。
中でも、R1〜R6は、他のエポキシ樹脂への相溶性の点からは水素原子が好ましく、耐熱性の点から、テトラグリシジル−3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、テトラグリシジル−3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、テトラグリシジル−3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、トリグリシジル−m−アミノフェノール、トリグリシジル−p−アミノフェノールがより好ましい。また、難燃性の点からは、R1〜R6がClやBrといったハロゲン原子で置換されているものも好ましい形態である。
次に、本発明で用いられる式(2)で表される3官能以上のエポキシ樹脂[A]の製造方法について例示説明する。
本発明で用いられる式(2)で表される3官能以上のエポキシ樹脂[A]は、下記一般式(4)
(式(4)中、R1〜R4は、水素原子、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基、炭素数4以下の脂環式炭化水素基、ハロゲン原子からなる群から選ばれた一つを表す。Xは、−CH2−、−O−、−S−、−CO−、−C(=O)O−、−SO2−、−CH(CH3)−、−C(CH3)2−、−C(=O)NH−から選ばれる1つを表す。)で示されるジアミノジフェニル誘導体と、エピクロロヒドリンを反応させることにより製造することができる。
即ち、一般的なエポキシ樹脂の製造方法と同じく、3官能以上のエポキシ樹脂[A](式(2)で表される化合物は4官能のエポキシ樹脂である。)の製造方法は、ジアミノジフェニル誘導体1分子にエピクロロヒドリン4分子が付加し、下記一般式(5)
(式(5)中、R1〜R4は、水素原子、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基、炭素数4以下の脂環式炭化水素基、ハロゲン原子からなる群から選ばれた少なくとも一つを表す。Xは、−CH2−、−O−、−S−、−CO−、−C(=O)O−、−SO2−、−CH(CH3)−、−C(CH3)2−、−C(=O)NH−から選ばれる1つを表す。)で示されるジクロロヒドリン体が生成する付加工程と続くジクロロヒドリン体をアルカリ化合物により脱塩化水素し、4官能エポキシ体である下記一般式(2)
で示されるエポキシ化合物が生成する環化工程からなる。
本発明で用いられる3官能以上のエポキシ樹脂[A]は、特に、曲げ弾性率と耐熱性を付与できることから、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノール、またはそれらの誘導体もしくは異性体が好ましい。
3官能以上の芳香族エポキシ樹脂[A]の市販品としては、以下に示すものが挙げられる。
ジアミノジフェニルメタン型のエポキシ樹脂の市販品としては、ELM434(住友化学(株)製)、“アラルダイト(登録商標)”MY720、“アラルダイト(登録商標)”MY721、“アラルダイト(登録商標)”MY9512、“アラルダイト(登録商標)”MY9663(以上、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)、および“エポトート(登録商標)”YH−434(新日鉄住金化学(株)製)等が挙げられる。
ジアミノジフェニルスルホン型のエポキシ樹脂の市販品としては、TG3DAS(三井化学ファイン(株)製)等が挙げられる。
アミノフェノール型エポキシ樹脂の市販品としては、ELM120やELM100(以上、住友化学(株)製)、“jER(登録商標)”630(三菱化学(株)製)、および“アラルダイト(登録商標)”MY0510、“アラルダイト(登録商標)”MY0600(以上、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)等が挙げられる。
メタキシレンジアミン型のエポキシ樹脂の市販品としては、TETRAD−X(三菱ガス化学(株)製)が挙げられる。
フェノールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、DEN431やDEN438(以上、ダウケミカル社製)および“jER(登録商標)”152、“jER(登録商標)”154(以上、三菱化学(株)製)等が挙げられる。
オルソクレゾールノボラック型のエポキシ樹脂の市販品としては、EOCN−1020(日本化薬(株)製)や“EPICLON(登録商標)”N−660(DIC(株)製)等が挙げられる。
トリスヒドロキシフェニルメタン型のエポキシ樹脂市販品としては、Tactix742(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)が挙げられる。
テトラフェニロールエタン型のエポキシ樹脂市販品としては、“jER(登録商標)”1031S(三菱化学(株)製)が挙げられる。
ビフェニル型エポキシ樹脂の市販品としては、NC−3000(日本化薬(株)製)等が挙げられる。
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の市販品としては、“EPICLON(登録商標)”HP7200(DIC(株)製)等が挙げられる。
イソシアヌレート型のエポキシ樹脂の市販品としては、TEPIC−P(日産化学工業(株)製)が挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、4員環以上の環構造を1つ以上有し、かつ、環構造に直結したアミン型グリシジル基またはエーテル型グリシジル基を少なくとも1つ有するエポキシ樹脂[B]を含むことが必須である。ここで、エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂[B]が、4員環以上の環構造を1つ以上有するとは、シクロヘキサンやベンゼン、ピリジン等の4員環以上の単環構造を1つ以上有するか、フタルイミドやナフタレン、カルバゾール等の各々4員環以上の環からなる縮合環構造を少なくとも1つ以上有することを指す。
エポキシ樹脂[B]の環構造に直結したアミン型グリシジル基またはエーテル型グリシジル基とは、ベンゼンやフタルイミド等の環構造にアミン型ならばN原子、エーテル型ならばO原子が結合した構造を有することを指し、アミン型ならば1官能または2官能のエポキシ樹脂、エーテル型ならば1官能のエポキシ樹脂である。(以降、エポキシ樹脂[B]のうち、1官能のエポキシ樹脂[B]を[B1]、2官能のエポキシ樹脂[B]を[B2]と言うこともある。)
エポキシ樹脂組成物中に、エポキシ樹脂[B]の配合量が少ないと、繊維強化複合材料の引張強度と圧縮強度の向上効果がほとんどなく、配合量が多すぎると、耐熱性を著しく損ねてしまうことがある。したがって、エポキシ樹脂[B]の配合量は配合されたエポキシ樹脂総量100質量部に対して10〜60質量部であることが好ましい。また、エポキシ樹脂[B]において、1官能エポキシ樹脂[B1]はより力学特性発現の効果に優れ、2官能エポキシ樹脂[B2]はより耐熱性に優れる。ゆえにエポキシ樹脂[B]の配合量は、エポキシ樹脂[B1]が用いられる場合には、配合されたエポキシ樹脂総量に対して10〜40質量部が好ましく、より好ましくは15〜35質量部である。そして、エポキシ樹脂[B2]が用いられる場合には、配合されたエポキシ樹脂総量に対して20〜50質量部が好ましく、より好ましくは25〜45質量部である。
本発明で用いられるエポキシ樹脂[B1]としては、例えば、N−グリシジルアニリン、N−グリシジルトルイジン、グリシジルフタルイミド、グリシジル−1,8−ナフタルイミド、グリシジルカルバゾール、グリシジル−3,6−ジブロモカルバゾール、グリシジルインドール、グリシジル−4−アセトキシインドール、グリシジル−3−メチルインドール、グリシジル−3−アセチルインドール、グリシジル−5−メトキシ−2−メチルインドール、o−フェニルフェニルグリシジルエーテル、p−フェニルフェニルグリシジルエーテル、p−(3−メチルフェニル)フェニルグリシジルエーテル、2,6−ジベンジルフェニルグリシジルエーテル、2−ベンジルフェニルグリシジルエーテル、2,6−ジフェニルフェニルグリシジルエーテル、4−α−クミルフェニルグリシジルエーテル、o−フェノキシフェニルグリシジルエーテル、p−フェノキシフェニルグリシジルエーテル等が挙げられる。
本発明で用いられるエポキシ樹脂[B2]としては、4員環以上の環構造を1つ有するものとして、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン等が挙げられ、4員環以上の環構造を2つ以上有するものとして、N,N−ジグリシジル−4−フェノキシアニリン、N,N−ジグリシジル−4−(4−メチルフェノキシ)アニリン、N,N−ジグリシジル−4−(4−tert−ブチルフェノキシ)アニリンおよびN,N−ジグリシジル−4−(4‐フェノキシフェノキシ)アニリン等が挙げられる。中でも、4員環以上の環構造を2つ以上有するエポキシ樹脂[B2]は、多くの場合、フェノキシアニリン誘導体にエピクロロヒドリンを付加し、アルカリ化合物により環化して得られる。分子量の増加に伴い粘度が増加していくため、取扱性の点から、N,N−ジグリシジル−4−フェノキシアニリンが特に好ましく用いられる。
フェノキシアニリン誘導体としては、具体的には、4−フェノキシアニリン、4−(4−メチルフェノキシ)アニリン、4−(3−メチルフェノキシ)アニリン、4−(2−メチルフェノキシ)アニリン、4−(4−エチルフェノキシ)アニリン、4−(3−エチルフェノキシ)アニリン、4−(2−エチルフェノキシ)アニリン、4−(4−プロピルフェノキシ)アニリン、4−(4−tert−ブチルフェノキシ)アニリン、4−(4−シクロヘキシルフェノキシ)アニリン、4−(3−シクロヘキシルフェノキシ)アニリン、4−(2−シクロヘキシルフェノキシ)アニリン、4−(4−メトキシフェノキシ)アニリン、4−(3−メトキシフェノキシ)アニリン、4−(2−メトキシフェノキシ)アニリン、4−(3−フェノキシフェノキシ)アニリン、4−(4−フェノキシフェノキシ)アニリン、4−[4−(トリフルオロメチル)フェノキシ]アニリン、4−[3−(トリフルオロメチル)フェノキシ]アニリン、4−[2−(トリフルオロメチル)フェノキシ]アニリン、4−(2−ナフチルオキシフェノキシ)アニリン、4−(1−ナフチルオキシフェノキシ)アニリン、4−[(1,1′−ビフェニル−4−イル)オキシ]アニリン、4−(4−ニトロフェノキシ)アニリン、4−(3−ニトロフェノキシ)アニリン、4−(2−ニトロフェノキシ)アニリン、3−ニトロ−4−アミノフェニルフェニルエーテル、2−ニトロ−4−(4−ニトロフェノキシ)アニリン、4−(2,4−ジニトロフェノキシ)アニリン、3−ニトロ−4−フェノキシアニリン、4−(2−クロロフェノキシ)アニリン、4−(3−クロロフェノキシ)アニリン、4−(4−クロロフェノキシ)アニリン、4−(2,4−ジクロロフェノキシ)アニリン、3−クロロ−4−(4−クロロフェノキシ)アニリン、および4−(4−クロロ−3−トリルオキシ)アニリン等が挙げられる。
エポキシ樹脂[B1]の市販品としては、“デナコール(登録商標)”Ex−731(グリシジルフタルイミド、ナガセケムテックス(株)製)、OPP−G(o−フェニルフェニルグリシジルエーテル、三光(株)製)が例示され、エポキシ樹脂[B2]の市販品としては、GAN(N,N−ジグリシジルアニリン)、GOT(N,N−ジグリシジルトルイジン)(以上、日本化薬(株)製)、TORAY EPOXY PG−01(ジグリシジル−p−フェノキシアニリン、東レ・ファインケミカル(株)製)等が挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物において、3官能以上の芳香族エポキシ樹脂[A]の配合量が少ないと耐熱性や曲げ弾性率を損ねてしまい、多すぎると架橋密度が高くなるため靱性を損ねてしまうことがあり、得られる繊維強化複合材料の引張強度と圧縮強度、および層間靭性を損ねてしまうことがある。一方、エポキシ樹脂中組成物にエポキシ樹脂[B]の配合量が少ないと、得られる繊維強化複合材料の引張強度や圧縮強度等の力学特性向上の効果が小さく、多すぎると耐熱性を損ねてしまうことがある。したがって、エポキシ樹脂組成物中に3官能以上の芳香族エポキシ樹脂[A]と1官能のエポキシ樹脂[B1]とを含む場合、エポキシ樹脂総量100質量部に対して、[A]の配合量が60〜90質量部で[B1]の配合量が10〜40質量部であることが好ましく、より好ましくは[A]の配合量が60〜85質量部で[B1]の配合量が15〜40質量部であり、さらに好ましくは[A]の配合量が65〜85質量部で[B1]の配合量が15〜35質量部である。また、エポキシ樹脂組成物中に3官能以上の芳香族エポキシ樹脂[A]と2官能のエポキシ樹脂[B2]とを含む場合、エポキシ樹脂総量100質量部に対して、[A]の配合量が50〜80質量部で[B2]の配合量が20〜50質量部であることが好ましく、より好ましくは[A]の配合量が50〜75質量部で[B2]の配合量が25〜50質量部であり、さらに好ましくは[A]の配合量が55〜75質量部で[B2]の配合量が25〜45質量部である。
本発明においては、本発明の効果を失わない範囲において、[A]または[B]以外のエポキシ樹脂や、エポキシ樹脂と熱硬化性樹脂との共重合体等を含んでも良い。エポキシ樹脂と共重合させて用いられる上記の熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂およびポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂組成物や化合物は、単独で用いてもよいし適宜配合して用いてもよい。
[A]または[B]以外のエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ウレタンおよびイソシアネート変性エポキシ樹脂、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン型エポキシ樹脂、ウレタン変性型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、“jER(登録商標)”825、“jER(登録商標)”828“jER(登録商標)”1001、“jER(登録商標)”1004、“jER(登録商標)”1007(以上、三菱化学(株)製)、“EPICLON(登録商標)”850(DIC(株)製)、“エポトート(登録商標)”YD−128(新日鉄住金化学(株)製)等が挙げられる。
ビスフェノールF型エポキシ樹脂の市販品としては、“jER(登録商標)”806、“jER(登録商標)”807、jER(登録商標)”4005P、“jER(登録商標)”4007P(以上、三菱化学(株)製)、“EPICLON(登録商標)”830(DIC(株)製)、“エポトート(登録商標)”YD−170、“エポトート(登録商標)”YDF―2001(以上、新日鉄住金化学(株)製)等が挙げられる。
ビスフェノールS型エポキシ樹脂としては、“エピクロン(登録商標)”EXA−1514(DIC(株)製)等が挙げられる。
ビスフェノールAD型エポキシ樹脂としては、“EPOMIK(登録商標)”R710、“EPOMIK(登録商標)”R1710(以上、(株)プリンテック製)等が挙げられる。
レゾルシノール型エポキシ樹脂の市販品としては、“デナコール(登録商標)”EX−201(ナガセケムテックス(株)製)等が挙げられる。
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の市販品としては、“エピクロン(登録商標)”HP7200、“エピクロン(登録商標)”HP7200L、“エピクロン(登録商標)”HP7200H(以上、DIC(株)製)、Tactix558(ハンツマン・アドバンスト・マテリアル社製)、XD−1000−1L、XD−1000−2L(以上、日本化薬(株)製)等が挙げられる。
ウレタンおよびイソシアネート変性エポキシ樹脂の市販品としては、オキサゾリドン環を有するAER4152(旭化成イーマテリアルズ(株)製)やACR1348(旭電化(株)製)等が挙げられる。
ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂の市販品としては、“jER(登録商標)”YX4000H、“jER(登録商標)”YX4000、“jER(登録商標)”YL6616(以上、三菱化学(株)製)、NC−3000(日本化薬(株)製)等が挙げられる。
フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂の市販品としては、ESF300(新日鐵住金化学(株)製)、“オンコート(登録商標)”EX−1010、“オンコート(登録商標)”EX−1011、“オンコート(登録商標)”EX−1012、“オンコート(登録商標)”EX−1020、“オンコート(登録商標)”EX−1030、“オンコート(登録商標)”EX−1040、“オンコート(登録商標)”EX−1050、“オンコート(登録商標)”EX−1051(ナガセケムテックス(株)製)等が挙げられる。
1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン型のエポキシ樹脂の市販品としては、TETRAD−C(三菱ガス化学(株)製)が挙げられる。
ウレタン変性エポキシ樹脂の市販品としては、AER4152(旭化成エポキシ(株)製)が挙げられる。
ヒダントイン型のエポキシ樹脂市販品としては、AY238(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)が挙げられる。
本発明において、芳香族アミン[C]は、本発明のエポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂の硬化剤であり、エポキシ基と反応し得る活性水素を有する化合物である。
具体的には、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、ビスアニリン、ジアミノベンズアニリドが挙げられる。
中でも、ジアミノジフェニルスルホンもしくはその異性体が好ましく用いられる。ジアミノジフェニルスルホンもしくはその異性体は、耐熱性の良好な樹脂硬化物を得られることから好ましく使用される。
ジアミノジフェニルスルホンの異性体としては、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホンが挙げられる。
芳香族アミン[C]の市販品としては、4,4’−DABAN、3,4’−DABAN(以上、日本純良薬品(株)製)、セイカキュアS(和歌山精化工業(株)製)、MDA−220(三井化学(株)製)、“jERキュア(登録商標)”W(三菱化学(株)製)、および3,3’−DAS(三井化学(株)製)、“Lonzacure(登録商標)”M−DEA、“Lonzacure(登録商標)”M−DIPA、“Lonzacure(登録商標)”M−MIPAおよび“Lonzacure(登録商標)”DETDA 80(以上、Lonza社製)等が挙げられる。
これらの硬化剤は、単独で使用しても複数を併用してもよい。また、エポキシ樹脂と芳香族アミン[C]、あるいはそれらの一部を予備反応させたものを組成物中に配合することもできる。この方法は、エポキシ樹脂組成物の粘度調節や保存安定性向上に有効な場合がある。
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、芳香族アミン[C]以外の構成要素(成分)を、まず160℃程度の温度で均一に加熱混練し、次いで70℃程度の温度まで冷却した後に、芳香族アミン[C]を加えて混練することが好ましいが、各成分の配合方法は特にこの方法に限定されるものではない。
本発明においては、芳香族アミン[C]以外の硬化剤を併用しても良い。芳香族アミン[C]以外の硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド、アミノ安息香酸エステル類、各種酸無水物、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ポリフェノール化合物、イミダゾール誘導体、脂肪族アミン、テトラメチルグアニジン、チオ尿素付加アミン、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物のようなカルボン酸無水物、カルボン酸ヒドラジド、カルボン酸アミド、ポリメルカプタンおよび三フッ化ホウ素エチルアミン錯体のようなルイス酸錯体等が挙げられる。
本発明の樹脂硬化物は、本発明のエポキシ樹脂組成物をDSC硬化度が90%以上となる温度条件で加熱硬化することにより得ることが出来る。かかる温度条件は、硬化剤や促進剤の種類や量に応じて適宜設定することができ、例えば硬化剤にジアミノジフェニルスルホンを用いた場合、180℃で2時間の温度条件が好適に使用できる。
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、エポキシ樹脂組成物中に溶解可能な熱可塑性樹脂[D]を含むことも好適な態様である。エポキシ樹脂組成物に熱可塑性樹脂[D]を溶解させることは、エポキシ樹脂組成物または熱可塑性樹脂[D]を単独で用いた場合より良好な結果を与えることが多い。エポキシ樹脂組成物の脆さを熱可塑性樹脂[D]の高い靱性でカバーし、かつ、熱可塑性樹脂[D]の成形困難性をエポキシ樹脂組成物でカバーすることで、バランスのとれたベース樹脂となる。さらに、エポキシ樹脂組成物中に溶解可能な熱可塑性樹脂[D]を含むことで、樹脂硬化物の耐熱性の低下を回避しつつ高い靭性が得られ、繊維強化複合材料としたときに層間靱性が大幅に向上することがある。
ここで説明される「エポキシ樹脂組成物に溶解可能」とは、熱可塑性樹脂[D]をエポキシ樹脂組成物に混合したものを加熱、または加熱撹拌することによって、均一相をなす温度領域が存在することを指す。ここで、「均一相をなす」とは、少なくとも目視で分離のない状態が得られることを指す。ある温度領域で均一相をなすのであれば、その温度領域以外、例えば室温で分離が起こっても構わない。またエポキシ樹脂組成物に熱可塑性樹脂[D]が溶解可能であることは、次の方法でも評価することができる。即ち、熱可塑性樹脂[D]の粉末をエポキシ樹脂組成物に混合し、熱可塑性樹脂[D]の融点より低い温度で数時間、例えば2時間等温保持したときの粘度の変化を評価したときに実質的に粘度の変化が見られる場合、熱可塑性樹脂[D]がエポキシ樹脂組成物に溶解可能であると判断してよい。
このように熱可塑性樹脂[D]がエポキシ樹脂組成物に溶解可能な性質を有していれば、樹脂を硬化させる過程で熱可塑性樹脂[D]が相分離を起こしても構わないが、硬化させて得られる樹脂硬化物および繊維強化複合材料の耐溶剤性を高める観点からは、硬化過程で相分離をしないことがより好ましい。また、得られる繊維強化複合材料の力学特性、耐溶剤性等を向上させる観点から、熱可塑性樹脂[D]をあらかじめエポキシ樹脂組成物に溶解させて混合することがより好ましい。溶解させて混合することで、エポキシ樹脂組成物中に均一に分散しやすくなる。
このような熱可塑性樹脂[D]としては、一般に、主鎖に炭素−炭素結合、アミド結合、イミド結合、エステル結合、エーテル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、チオエーテル結合、スルホン結合およびカルボニル結合からなる群から選ばれた結合を有する熱可塑性樹脂であることが好ましい。また、この熱可塑性樹脂[D]は、部分的に架橋構造を有していても差し支えなく、結晶性を有していても非晶性であってもよい。特に、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、フェニルトリメチルインダン構造を有するポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアラミド、ポリエーテルニトリルおよびポリベンズイミダゾールからなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂が、上記のエポキシ樹脂組成物に含まれるいずれかのエポキシ樹脂に混合または溶解していることが好適である。
本発明において、熱可塑性樹脂[D]はエポキシ樹脂組成物中に1〜40質量%含まれることが好ましく、より好ましくは8〜40質量%、さらに好ましくは12〜35質量%、最も好ましくは16〜35質量%含まれる。1質量%未満となると、樹脂硬化物の靭性が低下し、得られる繊維強化複合材料の引張強度および層間靭性が不足することがある。また、40質量%より多くなると、エポキシ樹脂組成物の粘度が上昇し、エポキシ樹脂組成物およびプリプレグの製造プロセス性や取扱性が不十分となることがある。
また、かかる熱可塑性樹脂[D]の重量平均分子量は、4000〜40000g/molの範囲にあることが好ましく、より好ましくは10000〜40000g/mol、さらに好ましくは15000〜30000g/molである。かかる平均分子量が4000g/molより低いと、プリプレグのタックが過剰となり取扱性が低下したり、樹脂硬化物の伸度と靱性が低くなったりすることがある。また、かかる平均分子量が40000g/molより高いと、プリプレグのタックが低下し取扱性が低下したり、エポキシ樹脂組成物に熱可塑性樹脂を溶解した際、エポキシ樹脂の粘度が高くなり混練が難しく、プリプレグ化が困難となったりする場合がある。
さらに、良好な耐熱性を得るためには、熱可塑性樹脂[D]のガラス転移温度(Tg)が少なくとも150℃以上であり、170℃以上であることが好ましい。配合する熱可塑性樹脂[D]のガラス転移温度が、150℃未満であると、成形体として用いたときに熱による変形を起こしやすくなることがある。かかる熱可塑性樹脂[D]としては、ポリカーボネート(Tg:150℃)、ポリスルホン(Tg:190℃)、ポリエーテルイミド(Tg:215℃)、ポリエーテルスルホン(Tg:225℃)等が挙げられる。
さらに、この熱可塑性樹脂[D]の末端官能基としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、酸無水物等のものがカチオン重合性化合物と反応することができ、好ましく用いられる。水酸基を有する熱可塑性樹脂としては、ポリビニルホルマールやポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール、フェノキシ樹脂を挙げることができる。また、スルホニル基を有する熱可塑性樹脂としては、ポリエーテルスルホンを挙げることができる。
具体的には、ポリカーボネートの市販品としては、“パンライト(登録商標)”K1300Y(帝人化成(株)製)等が挙げられる。
ポリスルホンの市販品としては、“UDEL(登録商標)”P−1700、“UDEL(登録商標)”P−3500(以上、帝人アモコ社製)、“Virantage(登録商標)”VW−30500RP(Solvay Advanced Polymers社製)等が挙げられる。
ポリエーテルイミドの市販品としては、“ウルテム(登録商標)”1000、“ウルテム(登録商標)”1010、“ウルテム(登録商標)”1040(以上、Solvay Advanced Polymers社製)等が挙げられる。
ポリエーテルスルホンの市販品としては、“スミカエクセル(登録商標)”PES3600P、“スミカエクセル(登録商標)”PES5003P、“スミカエクセル(登録商標)”PES5200P、“スミカエクセル(登録商標)”PES7600P(以上、住友化学工業(株)製)、“Ultrason(登録商標)”E2020P SR、“Ultrason(登録商標)”E2021SR(以上、BASF社製)、“GAFONE(登録商標)”3600RP、“GAFONE(登録商標)”3000RP、“Virantage(登録商標)”VW−10700RP(以上、Solvay Advanced Polymers社製)等が挙げられる。
また、特表2004-506789号公報に記載されるようなポリエーテルスルホンとポリエーテルエーテルスルホンの共重合体オリゴマーが挙げられる。オリゴマーとは10個から100個程度の有限個のモノマーが結合した比較的分子量が低い重合体を指す。
本発明においては、エポキシ樹脂組成物に不溶な熱可塑性樹脂粒子[E]を配合することも好適である。かかる熱可塑性樹脂粒子[E]を配合することにより、繊維強化複合材料としたときの層間靭性が向上することがある。ここで、エポキシ樹脂組成物に不溶であるとは、かかる熱可塑性樹脂粒子[E]を分散したエポキシ樹脂組成物を加熱硬化した際に、熱可塑性樹脂粒子[E]がエポキシ樹脂組成物中に実質的に溶解しないことを意味しており、例えば、透過型電子顕微鏡を用い、樹脂硬化物の中で熱可塑性樹脂粒子[E]が元のサイズから実質的に縮小することなく、熱可塑性樹脂粒子[E]とマトリックス樹脂の間に明確な界面をもって観察できる状態を指す。
かかる熱可塑性樹脂粒子[E]としては、先に例示した各種の熱可塑性樹脂[D]と同様のものであって、エポキシ樹脂組成物に混合して用い得る熱可塑性樹脂を用いることができる。中でも、ポリアミドは最も好ましく、ポリアミドの中でも、ナイロン12、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン66、ナイロン6/12共重合体や特開平01−104624号公報の実施例1記載のエポキシ化合物にてセミIPN(高分子相互侵入網目構造)化されたナイロン(セミIPNナイロン)は、特に良好なエポキシ樹脂との接着強度を与える。この熱可塑性樹脂粒子[E]の形状としては、球状粒子でも非球状粒子でも、また多孔質粒子でもよいが、球状の方が樹脂の流動特性を低下させないため粘弾性に優れ、また応力集中の起点がなく、高い耐衝撃性を与えるという点で好ましい態様である。
ポリアミド粒子の市販品としては、SP−500、SP−10、TR−1、TR−2、842P−48、842P−80(以上、東レ(株)製)、“トレパール(登録商標)”TN(東レ(株)製)、“オルガソール(登録商標)”1002D、2001UD、2001EXD、2002D、3202D、3501D,3502D、(以上、アルケマ(株)製)、“グリルアミド(登録商標)”TR90(エムザベルケ(株)社製)、“TROGAMID(登録商標)”CX7323、CX9701、CX9704、(デグサ(株)社製)等を使用することができる。これらのポリアミド粒子は、単独で使用しても複数を併用してもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明の効果を妨げない範囲で、カップリング剤や、熱硬化性樹脂粒子、あるいはシリカゲル、カーボンブラック、クレー、カーボンナノチューブ、カーボン粒子、金属粉体といった無機フィラー等を配合することができる。カーボンブラックとしては、例えば、チャネルブラック、サーマルブラック、ファーネスブラックおよびケッチェンブラック等が挙げられる。
本発明において、熱可塑性樹脂粒子[E]はエポキシ樹脂組成物中に0.1〜30質量%含まれることが好ましく、より好ましくは1〜25質量%であり、さらに好ましくは5〜20質量%である。熱可塑性樹脂粒子[E]の配合量が多すぎると、ベース樹脂であるエポキシ樹脂組成物との混合が困難になる上、プリプレグのタックとドレープ性が低下することがある。熱可塑性樹脂粒子[E]の配合量が少なすぎると、得られる繊維強化複合材料の耐衝撃性が低下することがある。
本発明のプリプレグは、熱可塑性樹脂粒子[E]に富む層、即ち、その断面を観察したときに、熱可塑性樹脂粒子[E]が局在して存在している状態が明瞭に確認しうる層が、プリプレグの表面付近部分に形成されている構造であることが好ましい。
このような構造をとることにより、プリプレグを積層してエポキシ樹脂を硬化させて繊維強化複合材料とした場合、プリプレグ層、即ち繊維強化複合材料層の間で樹脂層が形成されやすく、それにより、繊維強化複合材料層相互の接着性や密着性が高められ、得られる繊維強化複合材料に高度の耐衝撃性が発現されるようになることがある。
本発明で用いられる強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、黒鉛繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維および炭化ケイ素繊維等が挙げられる。これらの強化繊維を2種以上混合して用いても構わないが、より軽量で、より耐久性の高い成形品を得るために、炭素繊維や黒鉛繊維を用いることが好ましい。特に、材料の軽量化や高強度化の要求が高い用途においては、その優れた比弾性率と比強度のため、炭素繊維が好適に用いられる。
本発明で好ましく用いられる炭素繊維は、用途に応じてあらゆる種類の炭素繊維を用いることが可能であるが、耐衝撃性の点から少なくとも400GPa以上の引張弾性率を有する炭素繊維であることが好ましい。また、強度の観点からは、高い剛性および機械強度を有する複合材料が得られることから、引張強度が好ましくは4.4〜6.5GPaの炭素繊維が用いられる。また、引張伸度も重要な要素であり、1.7〜2.3%の高強度高伸度炭素繊維であることが好ましい。従って、引張弾性率が少なくとも230GPa以上であり、引張強度が少なくとも4.4GPa以上であり、引張伸度が少なくとも1.7%以上であるという特性を兼ね備えた炭素繊維が最も適している。
炭素繊維の市販品としては、“トレカ(登録商標)”T800G−24K、“トレカ(登録商標)”T800S−24K、“トレカ(登録商標)”T810G−24K、“トレカ(登録商標)”T700G−24K、“トレカ(登録商標)”T300−3K、および“トレカ(登録商標)”T700S−12K(以上東レ(株)製)等が挙げられる。
炭素繊維の形態や配列については、一方向に引き揃えた長繊維や織物等から適宜選択できるが、軽量で耐久性がより高い水準にある炭素繊維強化複合材料を得るためには、炭素繊維が、一方向に引き揃えた長繊維(繊維束)や織物等連続繊維の形態であることが好ましい。
本発明で用いられる炭素繊維束は、単繊維繊度が0.2〜2.0dtexであることが好ましく、より好ましくは0.4〜1.8dtexである。単繊維繊度が0.2dtex未満では、撚糸時においてガイドローラーとの接触による炭素繊維束の損傷が起こりやすくなることがあり、また樹脂組成物の含浸処理工程においても同様の損傷が起こることがある。単繊維繊度が2.0dtexを超えると炭素繊維束に樹脂組成物が充分に含浸されないことがあり、結果として耐疲労性が低下することがある。
本発明において用いられる炭素繊維束は、一つの繊維束中のフィラメント数が2500〜50000本の範囲であることが好ましい。フィラメント数が2500本を下回ると繊維配列が蛇行しやすく強度低下の原因となりやすい。また、フィラメント数が50000本を上回るとプリプレグ作製時あるいは成形時に樹脂含浸が難しいことがある。フィラメント数は、より好ましくは2800〜40000本の範囲である。
本発明のプリプレグは、上述のエポキシ樹脂組成物を上記強化繊維に含浸したものである。そのプリプレグの繊維質量分率は好ましくは40〜90質量%であり、より好ましくは50〜80質量%である。繊維質量分率が低すぎると、得られる複合材料の重量が過大となり、比強度および比弾性率に優れる繊維強化複合材料の利点が損なわれることがあり、また、繊維質量分率が高すぎると、樹脂組成物の含浸不良が生じ、得られる複合材料がボイドの多いものとなりやすく、その力学特性が大きく低下することがある。
強化繊維の形態は特に限定されるものではなく、例えば、一方向に引き揃えた長繊維、トウ、織物、マット、ニット、組み紐等が用いられる。また、特に比強度と比弾性率が高いことを要求される用途には、強化繊維が単一方向に引き揃えられた配列が最も適しているが、取り扱いの容易なクロス(織物)状の配列も本発明には適している。
本発明のプリプレグは、本発明のエポキシ樹脂組成物を、メチルエチルケトンやメタノール等の溶媒に溶解して低粘度化し、強化繊維に含浸させるウェット法と、エポキシ樹脂組成物を加熱により低粘度化し、強化繊維に含浸させるホットメルト法等によって好適に製造することができる。
ウェット法は、強化繊維をエポキシ樹脂組成物の溶液に浸漬した後、引き上げ、オーブン等を用いて溶媒を蒸発せしめ、プリプレグを得る方法である。
ホットメルト法は、加熱により低粘度化したエポキシ樹脂組成物を直接強化繊維に含浸させる方法、または、エポキシ樹脂組成物を離型紙等の上にコーティングした樹脂フィルムを作製しておき、次に強化繊維の両側または片側からその樹脂フィルムを重ね、加熱加圧することにより、エポキシ樹脂組成物を転写含浸せしめ、プリプレグを得る方法である。このホットメルト法では、プリプレグ中に残留する溶媒が実質的に皆無となるため好ましい態様である。
また、本発明の繊維強化複合材料は、このような方法により製造された複数のプリプレグを積層後、得られた積層体に熱および圧力を付与しながらエポキシ樹脂組成物を加熱硬化させる方法等により製造することができる。
熱および圧力を付与する方法としては、プレス成形法、オートクレーブ成形法、バッギング成形法、ラッピングテープ法および内圧成形法等が使用される。特にスポーツ用品の成形には、ラッピングテープ法と内圧成形法が好ましく用いられる。
ラッピングテープ法は、マンドレル等の芯金にプリプレグを捲回して、繊維強化複合材料製の管状体を成形する方法であり、ゴルフシャフトや釣り竿等の棒状体を作製する際に好適な方法である。より具体的には、マンドレルにプリプレグを捲回し、プリプレグの固定および圧力付与のため、プリプレグの外側に熱可塑性樹脂フィルムからなるラッピングテープを捲回し、オーブン中でエポキシ樹脂組成物を加熱硬化させた後、芯金を抜き去って管状体を得る方法である。
また、内圧成形法は、熱可塑性樹脂製のチューブ等の内圧付与体にプリプレグを捲回したプリフォームを金型中にセットし、次いでその内圧付与体に高圧の気体を導入して圧力を付与すると同時に金型を加熱せしめ、管状体を成形する方法である。この内圧成形法は、ゴルフシャフト、バット、およびテニスやバトミントン等のラケットのような複雑な形状物を成形する際に、特に好ましく用いられる。
本発明の繊維強化複合材料は、上述した本発明のプリプレグを所定の形態で積層し、加圧・加熱してエポキシ樹脂を硬化させる方法を一例として製造することができる。
本発明の繊維強化複合材料は、前記したエポキシ樹脂組成物を用いて、プリプレグを経由しない方法によっても製造することができる。
このような方法としては、例えば、本発明のエポキシ樹脂組成物を直接強化繊維に含浸させた後加熱硬化する方法、即ち、ハンド・レイアップ法、フィラメント・ワインディング法、プルトルージョン法、レジン・インジェクション・モールディング法およびレジン・トランスファー・モールディング法等が用いられる。これら方法では、エポキシ樹脂からなる1つ以上の主剤と、1つ以上の硬化剤とを使用直前に混合してエポキシ樹脂組成物を調製する方法が好ましく採用される。
本発明のエポキシ樹脂組成物をマトリックス樹脂として用いた繊維強化複合材料は、スポーツ用途、航空機用途および一般産業用途に好適に用いられる。より具体的には、航空宇宙用途では、主翼、尾翼およびフロアビーム等の航空機一次構造材用途、フラップ、エルロン、カウル、フェアリングおよび内装材等の二次構造材用途、ロケットモーターケースおよび人工衛星構造材用途等に好適に用いられる。このような航空宇宙用途の中でも、特に耐衝撃性が必要で、かつ、高度飛行中において低温にさらされるため低温における引張強度が必要な航空機一次構造材用途、特に胴体スキンや主翼スキンにおいて、本発明による繊維強化複合材料が特に好適に用いられる。また、一般産業用途では、自動車、船舶および鉄道車両等の移動体の構造材、ドライブシャフト、板バネ、風車ブレード、各種タービン、圧力容器、フライホイール、製紙用ローラ、屋根材、ケーブル、補強筋、および補修補強材料等の土木・建築材料用途等に好適に用いられる。さらにスポーツ用途では、ゴルフシャフト、釣り竿、テニス、バトミントンおよびスカッシュ等のラケット用途、ホッケー等のスティック用途、およびスキーポール用途等に好適に用いられる。
以下、実施例によって、本発明のエポキシ樹脂組成物と、それを用いた樹脂硬化物、プリプレグおよび繊維強化複合材料について、より具体的に説明する。実施例で用いた強化繊維、樹脂原料および樹脂硬化物、プリプレグ、繊維強化複合材料の作製方法、硬化度の計算方法、樹脂硬化物の曲げ弾性率、曲げ撓み量、ガラス転移温度、ゴム状態弾性率、繊維強化複合材料の0°引張強度、0°圧縮強度、および層間靭性の評価方法を次に示す。実施例のプリプレグの作製環境と評価は、特に断りのない限り、温度25℃±2℃、相対湿度50%の雰囲気で行ったものである。
[炭素繊維(強化繊維)]
・“トレカ(登録商標)”T800G−24K−31E(フィラメント数24,000本、引張強度5.9GPa、引張弾性率294GPa、引張伸度2.0%の炭素繊維、東レ(株)製)。
[樹脂原料]
<成分[A]>
・“アラルダイト(登録商標)”MY721(テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)エポキシ当量:113(g/eq.)
・“アラルダイト(登録商標)”MY0600(トリグリシジル−m−アミノフェノール、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)エポキシ当量:101(g/eq.)
・“アラルダイト(登録商標)”MY0510(トリグリシジル−p−アミノフェノール、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)エポキシ当量:101(g/eq.)
・TG3DAS(テトラグリシジル−3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、三井化学ファイン(株)製)エポキシ当量:136(g/eq.)。
<成分[B1]>
・“デナコール(登録商標)”Ex−731(N−グリシジルフタルイミド、ナガセケムテックス(株)製)エポキシ当量:216(g/eq.)
・OPP−G(o−フェニルフェニルグリシジルエーテル、三光(株)製)エポキシ当量:240(g/eq.)。
<成分[B2]>
・GAN(N−ジグリシジルアニリン、日本化薬(株)製)エポキシ当量:125(g/eq.)
・TORAY EPOXY PG−01(ジグリシジル−p−フェノキシアニリン、東レ・ファインケミカル(株)製)エポキシ当量:164(g/eq.)。
<その他のエポキシ樹脂>
・“jER(登録商標)”825(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱化学(株)製)エポキシ当量:175(g/eq.)
・“EPICLON(登録商標)”830(ビスフェノールF型エポキシ樹脂、DIC(株)製)エポキシ当量:172(g/eq.)。
<成分[C]>
・セイカキュアS(4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、和歌山精化工業(株)製)活性水素当量:62(g/eq.)
・3,3’−DAS(3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、三井化学ファイン(株)製)活性水素当量:62(g/eq.)。
<[C]以外の硬化剤>
・DICY7(ジシアンジアミド、三菱化学(株))活性水素当量:21(g/eq.)。
<成分[D]>
・“Virantage (登録商標)”VW−10700RP(ポリエーテルスルホン、Solvay Advanced Polymers(株)製、重量平均分子量:21000)
・“ウルテム(登録商標)”1000(SABICイノベーティブプラスチックスジャパン合同会社製、重量平均分子量:54000)。
<熱可塑性樹脂粒子[E]>
・“トレパール(登録商標)”TN(東レ(株)製、平均粒子径:13.0μm)
・“オルガソール(登録商標)”1002D(ATOCHEM(株)、平均粒子径:21.0μm)。
<その他の成分>
・DCMU99(3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア、硬化促進剤、保土ヶ谷化学工業(株)製)。
(1)エポキシ樹脂組成物の調製
ニーダー中に、表1〜3に記載の組成と割合のエポキシ樹脂と熱可塑性樹脂[D]を加え、混練しつつ160℃まで昇温し、160℃で1時間混練することで、透明な粘調液を得た。混練しつつ70℃まで降温した後、芳香族アミン[C]と熱可塑性樹脂粒子[E]を所定量加え、さらに混練しエポキシ樹脂組成物を得た。
(2)樹脂硬化物のDSC硬化度測定
上記(1)で調製したエポキシ樹脂組成物を5mg採取し、DSCを用いて、5℃/分の昇温速度で30℃から350℃まで昇温測定し、発熱カーブを取得し、その発熱ピークを積分することにより、エポキシ樹脂組成物の総発熱量QTを算出した。
上記(1)で調製したエポキシ樹脂組成物を真空中で脱泡し、180℃の温度で2時間硬化させ、樹脂硬化物を得た。得られた樹脂硬化物を5mg採取し、DSCを用いて、5℃/分の昇温速度で30℃から350℃まで昇温測定し、発熱カーブを取得した。残存発熱ピークが存在する場合は、その発熱ピークを積分することにより、残存発熱量QRを算出した。残存発熱ピークが存在しない場合は、QR=0とした。
ここで、DSC硬化度(%)は、
(QT−QR)/QT×100
で求められる。
(3)樹脂硬化物の曲げ弾性率と曲げ撓み量測定
上記(1)で調製したエポキシ樹脂組成物を真空中で脱泡した後、厚み2mmになるように設定したモールド中に注入した。180℃の温度で2時間硬化させ、厚さ2mmの樹脂硬化物を得た。次に、得られた樹脂硬化物の板から、幅10mm、長さ60mmの試験片を切り出し、スパン間32mmの3点曲げを測定し、JIS K7171−1994に従って、曲げ弾性率、および樹脂伸度の指標となる曲げ撓み量を求めた。
(4)樹脂硬化物のガラス転移温度とゴム状態弾性率測定
上記(3)で作製した樹脂硬化物の板から、幅12.7mm、長さ45mmの試験片を切り出し、JIS K7244−7(2007)に従い、動的粘弾性測定装置(ARES:TAインスツルメント社製)を用い、固体ねじり治具に試験片をセットし、昇温速度5℃/分、周波数1Hz、歪み量0.1%にて30〜300℃の温度範囲について測定を行った。この時、ガラス転移温度は、得られた貯蔵弾性率と温度のグラフにおいて、ガラス領域に引いた接線と、ガラス転移領域に引いた接線との交点における温度である。ゴム状態弾性率は、得られた貯蔵弾性率と温度のグラフにおいて、270℃における貯蔵弾性率である。なお、エポキシ樹脂に不溶な熱可塑性樹脂粒子[E]由来ではない、[A]、[B]、[C]に由来するガラス転移温度が複数生じた場合は、低い方の値をガラス転移温度として採用した。
(5)プリプレグの作製
エポキシ樹脂組成物を、ナイフコーターを用いて離型紙上に塗布して樹脂フィルムを作製した。次に、シート状に一方向に配列させた東レ(株)製、炭素繊維“トレカ(登録商標)”T800G−24K−31Eに、樹脂フィルム2枚を炭素繊維の両面から重ね、加熱加圧により樹脂を炭素繊維に含浸させ、炭素繊維の目付が190g/m2、マトリックス樹脂の質量分率が35.5%の一方向プリプレグを得た。その際、熱可塑性樹脂粒子[E]を配合したエポキシ樹脂組成物を使用する場合は以下の2段含浸法を適用し、熱可塑性樹脂粒子[E]が表層に高度に局在化したプリプレグを作製した。
まず、熱可塑性樹脂粒子[E]を含まない1次プリプレグを作製した。表1〜3に記載の原料成分の内、エポキシ樹脂に不溶な熱可塑性樹脂粒子[E]を含まないエポキシ樹脂組成物を上記(1)の手順で調製した。この1次プリプレグ用エポキシ樹脂組成物を、ナイフコーターを用いて離型紙上に塗布して、通常の60質量%の目付となる30g/m2の1次プリプレグ用樹脂フィルムを作製した。次に、シート状に一方向に配列させた東レ(株)製、炭素繊維“トレカ(登録商標)”T800G−24K−31Eに、この1次プリプレグ用樹脂フィルム2枚を炭素繊維の両面から重ね合せてヒートロールを用い、温度100℃、気圧1気圧で加熱加圧しながら、樹脂を炭素繊維に含浸させ、1次プリプレグを得た。
さらに、2段含浸用樹脂フィルムを作製するために、ニーダーを用いて、表1〜3に記載の原料成分の内、エポキシ樹脂に不溶な熱可塑性樹脂粒子[E]を記載量の2.5倍としたエポキシ樹脂組成物を上記(1)の手順で調製した。この2段含浸用エポキシ樹脂組成物を、ナイフコーターを用いて離型紙上に塗布して、通常の40質量%の目付となる20g/m2の2段含浸用樹脂フィルムを作製した。これを1次プリプレグの両面から重ね合せてヒートロールを用い、温度80℃、気圧1気圧で加熱加圧することで、熱可塑性樹脂粒子[E]が表層に高度に局在化したプリプレグを得た。
(6)繊維強化複合材料の0°の定義
JIS K7017(1999)に記載されているとおり、一方向繊維強化複合材料の繊維方向を軸方向とし、軸方向を0°軸と定義したときの軸直交方向を90°と定義する。
(7)繊維強化複合材料の0°引張強度測定
一方向プリプレグを所定の大きさにカットし、一方向に6枚積層した後、真空バッグを行い、オートクレーブを用いて、温度180℃、圧力6kg/cm2、2時間で硬化させ、一方向繊維強化複合材料を得た。この一方向強化材をASTM D3039−00に準拠してタブを接着した後、0°方向を試験片の長さ方向として、長さ254mm、幅12.7mmの矩形試験片を切り出した。得られた0°方向引張試験片を23℃環境下においてASTM D3039−00に準拠し、材料万能試験機(インストロン・ジャパン(株)製、“インストロン(登録商標)”5565型P8564)を用いて、試験速度1.27mm/minで引張試験を実施した。サンプル数はn=5とした。
(8)繊維強化複合材料の0°圧縮強度測定
一方向プリプレグを所定の大きさにカットし、一方向に6枚積層した後、真空バッグを行い、オートクレーブを用いて、温度180℃、圧力6kg/cm2、2時間で硬化させ、一方向繊維強化複合材料を得た。この一方向強化材をSACMA−SRM 1R−94に準拠してタブを接着した後、0°方向を試験片の長さ方向として、長さ80mm、幅15.0mmの矩形試験片を切り出した。得られた0°方向圧縮試験片を23℃環境下においてSACMA−SRM 1R−94に準拠し、材料万能試験機(インストロン・ジャパン(株)製、“インストロン(登録商標)”5565型P8564)を用いて、試験速度1.27mm/minで圧縮試験を実施した。サンプル数はn=5とした。
(9)モードI層間靭性(GIC)試験用複合材料製平板の作製とGIC測定
JIS K7086(1993)に従い、次の(a)〜(e)の操作によりGIC試験用複合材料製平板を作製した。
(a)(5)で作製した一方向プリプレグを、繊維方向を揃えて20ply積層した。ただし、積層中央面(10ply目と11ply目の間)に、繊維配列方向と直角に、幅40mm、厚み12.5μmのフッ素樹脂製フィルムをはさんだ。
(b)積層したプリプレグをナイロンフィルムで隙間のないように覆い、オートクレーブにて、温度180℃、圧力6kg/cm2、2時間で硬化させ、一方向繊維強化複合材料を成形した。
(c)(b)で得た一方向繊維強化複合材料を、幅20mm、長さ195mmにカットした。繊維方向は、サンプルの長さ側と平行になるようにカットした。
(d)JIS K7086(1993)に従い、ピン負荷用ブロック(長さ25mm、アルミ製)を試験片端(フィルムをはさんだ側)に接着した。
(e)亀裂進展を観察しやすくするため、試験片の両側面に白色塗料を塗った。
作製した複合材料製平板を用いて、以下の手順により、GIC測定を行った。
JIS K7086(1993)附属書1に従い、インストロン万能試験機(インストロン社製)を用いて試験を行った。クロスヘッドスピードは、亀裂進展が20mmに到達するまでは0.5mm/分、20mm到達後は1mm/分とした。JIS K7086(1993)にしたがって、荷重、変位、および、亀裂長さから、亀裂進展初期の限界荷重のモードI層間破壊靭性値(亀裂進展初期のGIC)および亀裂進展過程のモードI層間破壊靭性値を算出した。亀裂進展初期のGICと亀裂進展量10mmから60mmにおける5点以上の測定値、計6点以上の測定値の平均をGICとして比較した。
(実施例1)
混練装置で、50質量部の“アラルダイト(登録商標)”MY721、25質量部の“デナコール(登録商標)”Ex−731、25質量部の“jER(登録商標)”825、および40質量部の“Virantage(登録商標)”VW−10700RFPを160℃で1時間溶解混練した後、エポキシ樹脂組成物を70℃に降温して57質量部の4,4’−DDSを配合して混練し、エポキシ樹脂組成物を作製した。表1に、組成と割合を示す(表1中、数字は各成分の質量部を表す)。
得られたエポキシ樹脂組成物を用い、上記(2)樹脂硬化物のDSC硬化度測定、(3)樹脂硬化物の曲げ弾性率と曲げ撓み量測定、(4)樹脂硬化物のガラス転移温度とゴム状態弾性率測定を実施した。また、得られたエポキシ樹脂組成物から、(5)の手順でプリプレグを作製した。得られたプリプレグを用い、(7)繊維強化複合材料の0°引張強度測定、(8)繊維強化複合材料の0°圧縮強度測定、(9)モードI層間靭性(GIC)試験用複合材料製平板の作製とGIC測定を実施した。結果を表1に示す。
(実施例2〜20、比較例1〜11)
エポキシ樹脂、熱可塑性樹脂、硬化剤、熱可塑性樹脂粒子およびその他の成分の配合量を、表1〜3に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を作製した。得られたエポキシ樹脂組成物を用い、上記(2)樹脂硬化物のDSC硬化度測定、(3)樹脂硬化物の曲げ弾性率と曲げ撓み量測定、(4)樹脂硬化物のガラス転移温度とゴム状態弾性率測定を実施した。また、得られたエポキシ樹脂組成物から、(5)の手順でプリプレグを作製した。得られたプリプレグを用い、(7)繊維強化複合材料の0°引張強度測定、(8)繊維強化複合材料の0°圧縮強度測定、(9)モードI層間靭性(GIC)試験用複合材料製平板の作製とGIC測定を実施した。結果を、実施例2〜10については表1に、実施例11〜20については表2に、比較例1〜11については表3に示す。
実施例1〜20と、比較例1〜11の比較から、本発明の樹脂硬化物は伸度と耐熱性を有し、かつ、繊維強化複合材料の0°引張強度、0°圧縮強度およびGICに優れることが判る。
実施例1〜20と、比較例1の比較から、エポキシ樹脂[B]、芳香族アミン[C]が配合されており、かつ、エポキシ樹脂組成物全体に含まれるエポキシ基のモル数に対する、[C]に含まれる活性水素のモル数の比(H/E)が1.1≦H/E≦1.6の範囲に含まれていても、3官能以上の芳香族エポキシ樹脂[A]が配合されていない場合、樹脂硬化物の耐熱性、曲げ弾性率、および繊維強化複合材料の0°圧縮強度が大きく低下する傾向にあった。また、このとき、ガラス転移温度とゴム状態弾性率の関係は0.19X/℃−31.5≦Y/MPa≦0.19X/℃−27(式中、Xはガラス転移温度(℃)、Yはゴム状態弾性率(MPa)を表す。)を満たさなかった。
実施例1〜20と、比較例2の比較から、3官能以上の芳香族エポキシ樹脂[A]、芳香族アミン[C]が配合されており、かつ、エポキシ樹脂組成物全体に含まれるエポキシ基のモル数に対する、[C]に含まれる活性水素のモル数の比(H/E)が1.1≦H/E≦1.6の範囲に含まれていても、エポキシ樹脂[B]が配合されていない場合、樹脂硬化物のゴム状態弾性率が大きくなり、繊維強化複合材料の0°引張強度が大きく低下する傾向にあった。また、このとき、ガラス転移温度とゴム状態弾性率の関係は0.19X/℃−31.5≦Y/MPa≦0.19X/℃−27(式中、Xはガラス転移温度(℃)、Yはゴム状態弾性率(MPa)を表す。)を満たさなかった。
実施例1〜20と、比較例3の比較から、3官能以上の芳香族エポキシ樹脂[A]、エポキシ樹脂[B]が配合されており、かつ、エポキシ樹脂組成物全体に含まれるエポキシ基のモル数に対する、硬化剤に含まれる活性水素のモル数の比(H/E)が1.1≦H/E≦1.6の範囲に含まれていても、芳香族アミン[C]が配合されていない場合、樹脂硬化物の伸度、および繊維強化複合材料のGICが大きく低下する傾向にあった。また、このとき、ガラス転移温度とゴム状態弾性率の関係は0.19X/℃−31.5≦Y/MPa≦0.19X/℃−27(式中、Xはガラス転移温度(℃)、Yはゴム状態弾性率(MPa)を表す。)を満たさなかった。
実施例1〜20と、比較例4の比較から、3官能以上の芳香族エポキシ樹脂[A]、エポキシ樹脂[B]、芳香族アミン[C]が配合されているが、エポキシ樹脂組成物全体に含まれるエポキシ基のモル数に対する、[C]に含まれる活性水素のモル数の比(H/E)がH/E<1.1である場合、樹脂硬化物の伸度、繊維強化複合材料のGIC、0°引張強度が低下し、樹脂硬化物のゴム状態弾性率が大きくなる傾向にあった。また、このとき、ガラス転移温度とゴム状態弾性率の関係は0.19X/℃−31.5≦Y/MPa≦0.19X/℃−27(式中、Xはガラス転移温度(℃)、Yはゴム状態弾性率(MPa)を表す。)を満たさなかった。
実施例1〜20と、比較例5の比較から、3官能以上の芳香族エポキシ樹脂[A]、エポキシ樹脂[B]、芳香族アミン[C]が配合されているが、エポキシ樹脂組成物全体に含まれるエポキシ基のモル数に対する、[C]に含まれる活性水素のモル数の比(H/E)がH/E>1.6である場合、樹脂硬化物の伸度、耐熱性、および繊維強化複合材料のGIC、0°引張強度が低下する傾向にあった。また、このとき、ガラス転移温度とゴム状態弾性率の関係は0.19X/℃−31.5≦Y/MPa≦0.19X/℃−27(式中、Xはガラス転移温度(℃)、Yはゴム状態弾性率(MPa)を表す。)を満たさなかった。
実施例1〜20と、比較例6〜7(国際公開WO2010/109929号の実施例29〜30の組成にそれぞれ相当する)の比較から、3官能以上の芳香族エポキシ樹脂[A]、エポキシ樹脂[B]、芳香族アミン[C]が配合され、かつ、[C]に含まれる活性水素のモル数の比(H/E)が1.1≦H/E≦1.6の範囲に含まれ、かつ、ガラス転移温度とゴム状態弾性率の関係が0.19X/℃−31.5≦Y/MPa≦0.19X/℃−27(式中、Xはガラス転移温度(℃)、Yはゴム状態弾性率(MPa)を表す。)を満たしていても、エポキシ樹脂組成物を硬化させてなるDSC硬化度が90%以上の樹脂硬化物において曲げ撓み量が6mm以下である場合、特に繊維強化複合材料のGICが大きく低下する傾向にあった。
実施例1〜20と、比較例8(特開2001−323046号公報の比較例1の組成に相当する)の比較から、3官能以上の芳香族エポキシ樹脂[A]、芳香族アミン[C]が配合されており、かつ、ガラス転移温度とゴム状態弾性率の関係が0.19X/℃−31.5≦Y/MPa≦0.19X/℃−27(式中、Xはガラス転移温度(℃)、Yはゴム状態弾性率(MPa)を表す。)を満たしていても、エポキシ樹脂[B]が配合されておらず、かつ、エポキシ樹脂組成物全体に含まれるエポキシ基のモル数に対する、[C]に含まれる活性水素のモル数の比(H/E)がH/E<1.1である場合、樹脂硬化物のゴム状態弾性率が大きくなり、樹脂硬化物の曲げ弾性率、および繊維強化複合材料の0°圧縮強度と0°引張強度が大きく低下する傾向にあった。
実施例14、17、18と、比較例9〜11の比較から、3官能以上の芳香族エポキシ樹脂[A]、その他のエポキシ樹脂、芳香族アミン[C]が配合されており、かつ、エポキシ樹脂組成物全体に含まれるエポキシ基のモル数に対する、[C]に含まれる活性水素のモル数の比(H/E)が1.1≦H/E≦1.6の範囲に含まれていても、エポキシ樹脂[B]が配合されていない場合、樹脂硬化物の耐熱性、および繊維強化複合材料の0°引張強度が大きく低下する傾向にあった。また、このとき、ガラス転移温度とゴム状態弾性率の関係は0.19X/℃−31.5≦Y/MPa≦0.19X/℃−27(式中、Xはガラス転移温度(℃)、Yはゴム状態弾性率(MPa)を表す。)を満たさなかった。