JP2015098541A - 乳化剤を使用したエッセンス香料及びその製造方法 - Google Patents

乳化剤を使用したエッセンス香料及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】油溶性原料から、必要な香気成分及び呈味成分を豊富に含み、透明でかつ、水や飲料に添加しても濁りを生じない、風味に優れたエッセンス香料を効率よく得る方法を提供する。
【解決手段】課題を解決するために、油溶性原料を、乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル、エチルアルコールおよび水からなる混合溶剤を使用して抽出し抽出溶剤層を分離することにより、香気成分及び呈味成分などを効率よく抽出できる風味の強化されたエッセンス香料を得ることができた。
【選択図】なし

Description

本発明は、乳化剤及び抽出溶剤を用いて油溶性原料を抽出する風味の強化されたエッセンス香料の製造方法に関する。
近年、消費者の嗜好の多様化により、多種多様の飲料や食品が上市されている。
フレーバーに対するニーズとしては、より嗜好性を高めるものが求められ、低カロリー飲料、機能性飲料等については甘味料等の原料由来の厭味のマスキング等も求められる。特に柑橘香味を与える飲料用の香料に関しては、溶液中に均一分散させるためのエッセンス香料や乳化香料が必要とされ、近年、乳化剤を用いた可溶化香料の開発が著しい進化を遂げている。
天然香料、合成香料、調合香料などの香料類は、ほとんどが油溶性であり、水性の香粧品に付香するには何らかの方法で水溶性にする必要がある。その方法には油溶性成分の一部である香気成分を含水アルコールなどの水溶性溶剤に溶解する方法(エッセンス)と、乳化剤などを用いて微粒子にし、水中に分散させる方法とがある(非特許文献1)。
油溶性原料を使用し、エッセンス香料を得る方法として、主に抽出溶剤としてエチルアルコール、プロピルアルコールなどのアルコール類、水、含水アルコールなどが使用される。これは精油を溶剤で液―液抽出する簡単な製法である(非特許文献2)。しかしながらこの製法では精油から香味・風味成分が効率良く抽出されるわけではなく、香料に十分な力価と風味を持たせられない。
そこで、油溶性原料から必要な香気成分及び呈味成分を豊富に含み、かつ、水に容易に透明に溶解し、その後の保存においても透明性が保たれる安定なエッセンス香料を効率よく得る為、可食性原料から抽出して得た油溶性原料を、エチルアルコール、エチルアルコール以外の水混和性有機溶剤及び/又は電解質、エチルアルコール及び水の混合溶剤を使用した水性抽出液の製法が提案されている。そして、可食性原料から抽出して得た油溶性原料としては、柑橘精油のような精油類、オイル類が挙げられ、電解質としては、硫酸ナトリウム、食塩、塩化カリウム、塩酸カルシウムが使用され、水混和性有機溶剤としては、プロピルアルコール、イソプロピルアルコールまたはそれらの混合物が使用されている(特許文献1)。
しかしながら、この製法では、水混和性有機溶剤として実際に使用されているプロピルアルコール、イソプロピルアルコールまたはそれらの混合物は、独特な風味があり、特に柑橘精油以外の油溶性原料を使用した場合には、エッセンス香料の風味を著しく阻害する。
また、油溶性原料としてのテルペン類、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び水の3成分を必須成分として含み、保持温度の調整によってテルペン類が可溶化可能になされているテルペン類含有液状組成物が、化粧品、医薬品、食品用として提案されている(特許文献2)。さらに、親水性のポリオール脂肪酸エステル5〜30重量%、50重量%以上のテルペン類を含有する油溶性物質30〜80重量%及びポリオール水溶液10〜30重量%から成るテルペン類を含有する透明ゲル状組成物が同じく化粧品、医薬品及び食品用として提案されている(特許文献3)。
しかしながら、これらの文献は、いずれも、溶剤としてポリオールを使用しており、また、油溶性原料から、エッセンス香料を抽出するものではなく、乳化剤と精油を混合し、
乳化組成物を製造するものである。また、多種多様の飲料に添加し、長期保存した場合においても透明とすることは極めて困難である。
さらに、非水溶性物質1〜70重量部にポリグリセリン脂肪酸エステル1〜90重量部と水0.1〜50重量部および多価アルコール1〜90重量部を混合し、乳化至可溶化することを特徴とする乳化至可溶化液の製造法も提案されている(特許文献4)。しかしながら、この方法では多価アルコールを大量に使用した粘性の高い乳化香料については飲料中に使用した場合、香り立ち(フレーバーリース)が悪くなる傾向にある。そして、特許文献3と同様に、多種多様の飲料に添加し、長期保存した場合においても透明にすることは極めて困難である。
さらに、(a)精油のような可食性油性材料、(b)HLB12以上のポリグリセリン脂肪酸エステル、酵素処理レシチン及びキラヤ抽出物よりなる群から選ばれた少なくとも1種類の乳化剤、(c)多価アルコール及び(d)水からなる組成物を乳化処理する飲食品用乳化液組成物の製法において、該乳化処理を減圧条件下で行い、且つ該乳化液組成物の平均乳化粒子径を0.2ミクロン以下とすることを特徴とする飲食品用乳化液組成物の製法が提案されている(特許文献5)。しかしながら、この方法では減圧条件下で乳化処理を行うと、可食性油性材料本来の風味を阻害するのみではなく、減圧装置等大掛かりな設備が必要となる。
さらに、(a)精油のような可食性油性材料、(b)精製ポリグリセリン脂肪酸エステル、(c)多価アルコール及び、(d)水からなる組成物を乳化処理して得られることを特徴とする耐アルコール性透明乳化組成物についても提案されている(特許文献6)。しかしながら、この方法ではポリグリセリン脂肪酸エステル精製の際に、ヘキサンを使用したり、薄層クロマトグラフィーを使用して確認する等、手間が非常にかかる。さらに、この方法では、多価アルコールは、乳化液の安定性を維持するために使用されるが、乳化時に8000rpmと高速で攪拌する必要がある。そして、この製品では多価アルコールが使用されているため、香り立ち(フレーバーリリース)が悪くなる傾向がある。
また、水及びエチルアルコール、プロピレングリコール、グリセリン等のアルコールからなるマトリックス中に分散された食用精油からなり、食用精油1〜25%、少なくとも1種類の界面活性剤1〜35%、アルコール及び水25〜80%からなり熱に安定で、長期間保存できる食用濃縮微細エマルジョンがフレーバーキャリヤとして提案されている(特許文献7)。しかしながら、この方法では食用精油として、オレンジ油、ライム油、ベルガモット油、グレープフルーツ油が挙げられ、界面活性剤として、アニオン界面活性剤とならんで、HLB10〜18の非イオン界面活性剤が使用されているが、乳化剤、エチルアルコール、水と精油を単に混合し、乳化組成物を製造するもので油溶性原料から、エッセンス香料を抽出するものではない。
特開2012−24号公報 特開2004−323638号公報 特開2001−299890号公報 特開昭62−250941号公報 特開平4−51853号公報 特開2007−116930号公報 米国特許4835002号公報
日本香料工業会 周知・慣用技術集(香料)第I部 香料一般 2・3・1乳化・可溶化89項(1999年1月29日発行) 日本香料工業会 周知・慣用技術集(香料)第I部 香料一般 2・3・2抽出・浸出66項(1999年1月29日発行)
本発明が解決しようとする課題は、油溶性原料から、必要な香気成分及び呈味成分を豊
富に含み、透明で、かつ、水や飲料に添加しても濁りを生じない、風味に優れたエッセンス香料を効率よく得ることにある。
本発明者等は前記課題を解決するために鋭意研究を行ったところ、乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルを使用し、抽出溶剤としてエチルアルコールおよび水の混合溶剤を用いて油溶性原料を抽出し、抽出溶剤層を分離し、この抽出溶剤層から析出物をろ過することにより、香気成分、呈味成分などを豊富に含む安定性に優れた風味の強化されたエッセンス香料が効率よく容易に得られることを見出した。そして、必要により、抽出溶剤層の分離と析出物のろ過とを低温静置後に行うとよい。
このエッセンス香料は飲料、食品等に着香剤として添加することができ、長期間保存しても透明である。
本発明は以下の発明内容を提供するものである。
1.乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルを使用し抽出溶剤としてエチルアルコー
ルおよび水の抽出溶剤混合物を用いて油溶性原料を抽出し、抽出溶剤層を分離し、この抽出溶剤層から、析出物をろ過することを特徴とする風味の強化されたエッセンス香料の製造方法。
2.抽出溶剤層の分離と析出物のろ過とを低温静置後に行うことを特徴とする1に記載の
風味の強化されたエッセンス香料の製造方法。
3.油溶性原料が柑橘精油である1に記載のエッセンス香料の製造方法。
4.柑橘精油がオレンジ精油である3に記載のエッセンス香料の製造方法。
5.乳化剤のHLBが15.5〜17である1に記載のエッセンス香料の製造方法。
6.乳化剤がデカグリセリン脂肪酸エステルである5に記載のエッセンス香料の製造方法

7.デカグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸の炭素数が12〜14である6に記載のエッ
センス香料の製造方法。
8.1〜7のいずれかに記載の製造方法により得られるエッセンス香料。
9.8に記載のエッセンス香料を添加した飲食品。
本発明により、油溶性原料から風味に優れたエッセンス香料を簡単な製造法でかつ大掛かりな設備を必要としないで簡単な装置で得ることが出来る。本発明により得られたエッセンス香料は、必要な香気成分及び呈味成分を豊富に含み、かつ水に容易に透明に溶解し、多種多様な飲料、食品等に添加しても濁りを生じず、その後の長期保存においても透明性と安定性が保たれる。しかもフレーバーリリース(香り立ち)にも優れているという有利な効果をもたらすものである。
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明において用いる油溶性原料とは、精油、植物性油脂、動物性油脂等が挙げられるが、主に精油のことであり、一般的に柑橘などの植物原料から水蒸気蒸留法、圧搾法、抽出法等の種々の方法により得られる精油のことである。
例えば、具体例として、オレンジ油、レモン油、グレープフルーツ油、ベルガモット油、ユズ油、ライム油、マンダリン油、タンジェリン油などの柑橘精油を挙げることができる。
これらの油溶性原料は、水性の飲料や食品に対して直接使用することが不可能であるため、何等かの方法で水溶性にする必要がある。そこで従来から油溶性成分の一部である香気成分を含水アルコールなどの水溶性溶剤に溶解する加工方法が用いられてきたが、柑橘精油の持つ香気成分を水溶性溶剤に効率よく溶解させ、香り立ち、呈味、苦味を伴うピール感等、柑橘の風味を食品に対し効率よく着香出来ることが求められている。ピール感は、特開2010−88348号公報「発明の名称 香り酸柑橘様香味増強剤」においても使用されているように、柑橘風味の香料に関して柑橘果実の、特に果皮に関する風味の特徴を表す官能表現として用いられる。ピール感は、苦味を伴う柑橘の美味しさの指標であり、ピール感があると柑橘らしさを強調する為、飲料や食品において一般的に好まれている。本発明品においては精油由来の風味を香料製剤中に効率よく取り込むことで、着香した食品に対してより良い柑橘の風味を持たせることが出来る。
また、本発明では、油溶性原料として、精油例えばベルガモット精油,オレンジ精油のような柑橘精油と合成香料を合わせて使用することもできる。合成香料は風味の特徴付けや、香気の補強の目的に用いられる。合成香料は、油溶性のものが多数存在し、合成香料を精油抽出後に添加すると、飲料に添加した時の濁りや油浮きを生じる場合があるが、抽出前に添加することで、飲料に添加した時に均一に透明に分散させることが可能になる。ここで、合成香料とは、化学反応を利用した方法で作られ、化学構造が明らかで、香りを有する化学物質のことを言い、炭化水素類、アルコール類、脂肪酸類、エステル類、ラクトン類、アルデヒド類、ケトン類、エーテル類、含窒素化合物類、含硫化合物類などから選ばれた1種類、もしくは2種類以上を任意の割合で混合したものを指す。例えばアルコール類ではヘキサノール、ゲラニオール、ネロリドール、エステル類ではブチルアセテート、リナリルアセテート、エチルブチレート、ベンジルベンゾエート、アルデヒド類では、オクタナール、デカナール、フェニルアセトアルデヒド、テルペン類ではヌートカトン(分子式C15H22Oで表されるセスキテルペンケトンの一種)、リモネン等があげられる。たとえば、ベルガモット精油の風味をよりフレッシュな風味にする為には、ベルガモット精油10gに対してヘキサノール0.1gとリナリルアセテート2gの合成香料を組み合わせることができる。また、例としてオレンジ精油の果皮の風味(ピール感)を強調する為には、オレンジ精油10gに対してオクタナール0.3gとデカナール0.1gの合成香料を組み合わせることができる。さらに、グレープフルーツ精油の特徴的な香気を強調し、ピール感を増強する為にグレ―プフルーツ精油10gに対してヌートカトンを1gの合成香料を組み合わせることもできる。合成香料を1種類使用することも出来るが、2種類以上組み合わせることで、より複雑な風味を表現することが出来る。
また、使用する乳化剤としてのポリグリセリン脂肪酸エステルは非イオン性のものであり、本発明では、エッセンス香料の透明性の観点や飲料等への味の影響を考慮すると、特にHLB15.5以上のポリグリセリン脂肪酸エステル、特にデカグリセリン脂肪酸エステルが望ましい。ここでいうHLBとは親水性−親油性比(hydrophile−lipophilebalance)の意味である。HLBが低い程親油性を、高い程親水性を示す。さらにデカグリセリン脂肪酸エステルはその構成脂肪酸の炭素数及びエステル化度の組み合わせや飽和、不飽和により各種存在するが、炭素数12〜14の飽和脂肪酸、さらに好ましくはミリスチン酸、ラウリン酸を選択することが望ましい。エステル化度は、モノエステルタイプが好ましく、具体例としてはデカグリセリンモノミリスチン酸エステル、デカグリセリンモノラウリン酸エステルが挙げられる。具体的な市販品乳化剤の例としては、前者としては、三菱化学フーズ(株)リョートー(登録商標)ポリグリエステル M-7D、坂本薬品工業(株)SYグリスターMM−750が挙げられ、後者としては、リョートーポリグリエステルL-7D、日光ケミカルズ(株)NIKKOL Decaglyn 1-LVEX等が挙げられる。HLBが15.5より低い場合や、構成脂肪酸の炭素数が12より小さいとき或いは14より大きい場合には、エッセンス香料が白濁を生じたり、または飲料中にエッセンス香料を添加した場合に白濁を生じる場合がある。
アルコールには1価アルコールと多価アルコールがあり、さらに飽和、不飽和があるが、本発明では、1価飽和アルコールが好ましい。1価アルコールでも低級アルコールから高級アルコールがあるが、本発明においては低級アルコールが望ましく、さらに油溶性原料の香質を活かすことを考慮すると、エチルアルコールが好ましい。前述したようにプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールまたはそれらの混合物は独特な風味があり、特に柑橘精油以外の油溶性原料を使用した場合には、エッセンス香料の風味を著しく阻害する。また、高級アルコールの場合、独特な風味が強いだけではなく、親水性が弱まる為、添加時の濁りの原因となる。さらに多価アルコールを使用した場合は、粘性の高い水溶性香料組成物となり、香り立ち(フレーバーリリース)が悪くなる傾向にある。
本発明のエッセンス香料の製造方法は、特に限定されるものではないが、タンク内でイオン交換水にポリグリセリン脂肪酸エステルを加え、ついでエチルアルコールを加えた後、攪拌し溶剤を混合した後、油溶性原料を添加し、攪拌混合した後、低温静置し、上層(油層)と下層(抽出溶剤層)をタンク内で油分分離させ、タンク下から抽出溶剤層を抜き取ることで油層を除去し抽出溶剤層から析出物をろ過して本発明のエッセンス香料が得られる。この抽出溶剤層の分離と析出物のろ過とを必要により低温静置後に行うとよい。
本発明のエッセンス香料の製造法では、イオン交換水、乳化剤及び95%のエチルアルコールからなる混合抽出溶剤を使用し、乳化剤の使用比率は乳化剤の種類によるが混合抽出溶剤層において0.1〜25%、好ましくは1〜10%である。また、混合抽出溶剤層におけるエチルアルコールとイオン交換水の比率は特に限定されないが、エチルアルコール比率が高すぎたり、低すぎたりすると本発明のエッセンス香料それ自体の、またはエッセンス香料を飲料へ添加した時の透明性が不十分となる傾向がある。そのため溶剤層においてのエチルアルコールの比率は55〜75%、特に好ましくは60〜70%である。油溶性原料に関しては種類によるが抽出溶剤層に対して1〜10%が好ましい。
本発明の抽出工程では、攪拌の条件は特に限定されないが、望ましくは300〜600rpm、好ましくは450〜550rpmである。攪拌回転数が200rpm以下の場合、溶液全体が均一に攪拌出来ない恐れがある。抽出時間については、任意の時間に設定することが可能であるが、2〜30分が好ましく、特に好ましくは15分間である。抽出時間が短すぎると、溶液の均一化が不十分になる恐れがあり、また長すぎるとエチルアルコールの飛散が懸念される。また抽出温度についても、任意の温度で抽出することが可能であるが、−15℃〜70℃、好ましくは10℃〜40℃である。抽出温度が低すぎる場合、乳化剤の種類によっては乳化剤が析出する恐れがあり、また高すぎる場合においては精油香気変性の加速を招き、風味劣化に繋がる恐れがある。たとえば精油は様々な香気で構成されているが、オレンジ精油に主に含まれているリモネンは、熱が過剰に加わることでターピネオールに変化し、また、シトラールにおいてはクレゾールに変化したりすることで、本来の精油と異なる風味に変化することがある。
本発明の工程をフローチャートで示すと表1のようになる。
Figure 2015098541
市販の乳化剤、例えば三菱化学フーズ(株)製のリョートーポリグリエステル、日光ケミカルズ(株)製のDecaglyn等は、通常、様々な分子種を含む混合物からなっており、全てが本発明の目的達成に必要な機能を有する成分から構成されている訳ではない。例えばポリグリセリン脂肪酸エステルにおいてはポリグリセリン混合物と、脂肪酸混合物を反応させて生成する。主体となるものはモノエステルであるが、それ以外にもジエステル、トリエステルなどの高次エステル、未反応のポリグリセリン等が存在した種々の混合物である。
この乳化剤製造時にやむなく発生する未反応部分が、十分な親水性を示さず、エッセンス香料自体の不安定化や、もしくはエッセンス香料を添加した飲料の不安定化に繋がることもある。特に低温状態での保管を余儀なくされる飲料類では、不安定化を未然に防ぐ必要がある。そのため、本発明においては抽出溶剤層の分離と析出物のろ過とを低温静置後に行い、油溶性原料、主に精油の中でも混合溶剤に安定的に取り込まれる香気成分や乳化剤成分以外のものを、析出物として選択的に除去することができる。
本発明のエッセンス香料は、あらゆる飲食品、例えば、発酵乳、乳酸菌飲料、乳飲料、清涼飲料水、果実飲料類、野菜系飲料、炭酸飲料類、茶系飲料類(紅茶・ウーロン茶、緑茶など)、コーヒー飲料類、機能性飲料、アルコール飲料等の嗜好飲料類、ゼリーなどのデザート類、マーマレードなどのジャム類、果実フレーバーソースなどのソース類、冷菓類などの着香に使用できる。本発明の飲食品への配合量は、0.001〜5%の範囲を例示することが出来る。
本発明に関する実施例を以下に述べるが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、多くの変形が、本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により、可能である。
[乳化剤の使用の有無による、エッセンス香料の比較試験 ]
エッセンス香料の製造にあたり、乳化剤を使用した場合と、使用しない場合に、エッセンス香料の水溶性に与える影響を試験する。
[実施例1]
[乳化剤としてデカグリセリンミリスチン酸エステル、C:14、HLB16.0を使用
したエッセンス香料]
溶剤層においてエチルアルコールが57%、乳化剤が9.1%になるようにイオン交換水34gに乳化剤としてデカグリセリンミリスチン酸エステルであるリョートーポリグリエステル M−7D、HLB16.0の10gを43℃で溶解させ、95%のエチルアル
コール66gを混合し、オレンジ精油10gを添加、25℃下で15分、500rpmで攪拌し、−15℃に冷却静置した後、分液ロートで下層(抽出溶剤相)70gを採取し、ラヂオライトデラックス(登録商標)(昭和化学工業(株)製)を0.35g混合攪拌した後、定性ろ紙NO.2 55mm(ADVANTEC社製)でろ過し、エッセンス香料69gを得た。
[比較例1]
[乳化剤を使用しないエッセンス香料]
溶剤層においてエチルアルコールが57%になるように実施例1で使用した乳化剤リョートーポリグリエステル M−7Dを使用せず、イオン交換水44gに95%のエチルアルコール66gを混合し攪拌後、他は実施例1と同様に実施し、エッセンス香料75gを得た。
[試験例1]
[実施例1及び比較例1のエッセンス香料の可溶性評価]
実施例1及び比較例1で得たエッセンス香料0.1gをイオン交換水100gに添加して攪拌しそれぞれの試験液を得た。この試験液の透過率を分光光度計ANA−720W(東京光電株式会社製)を用い、660nmの条件で測定したところ、実施例1では99.8%、比較例1では99.9%の値を示した。透過率は100%に近いほど透明となり、値が低くなるほど濁りを示す。97%以下では目視で明らかな濁りが確認出来る。すなわち本発明品である乳化剤を使用したエッセンス香料を水に添加した際の可溶性は乳化剤を使用しないエッセンス香料と同様に極めて透明であることが確認できた。
[試験例2]
[乳化剤使用の有無におけるガスクロマトグラフィーGC/MSによる香気成分比較]
実施例1および比較例1で得られたエッセンス香料を以下の条件でGC/MSにより分析した。
(分析条件)
ガラスキャピラリーカラム:DB−WAX(J&W社製)
60m×0.25mm×0.25μm
カラム温度:40℃で1分保持、3℃/分で230℃まで昇温
注入口温度:240℃
検出器:MSD
検出器温度:230℃
キャリアガス:ヘリウム
流量:1.0mL/分
スプリット比:1:100
注入量:1μL
実施例1及び比較例1においてそれぞれの内部標準物質(2−オクタノール)のピーク面積を100とした時の各特徴香気成分の相対面積値と各特徴香気成分の合計面積値を表2に示す。
香料成分の合計面積値はエッセンス香料における主な特徴香気の香気全体の強さを示すものである。
また、相対面積値を比較することで、比較例1に対して実施例1の精油に含まれる各特徴成分の香気の強さが分かる。
Figure 2015098541
表2において実施例1の乳化剤を使用して抽出したエッセンス香料における香気成分の合計面積値は、比較例1の乳化剤を使用しないエッセンス香料に対して2.2倍多く、実施例1のエッセンス香料は香気成分を豊富に含んでいた。また香気成分全体が増加するが、オレンジのフレッシュ感の香気であるリモネン、リナロールが2.9倍、1.04倍と相対的に多く、果皮感の香気であるオクタナール、デカナール、シトロネラール、ゲラニアールについては各々1.4倍、1.7倍、1.4倍、2倍と相対的に多い。さらに、柑橘の清涼感の香気であるカルボンについては1.3倍と相対的に多いことがいえる。よって、実施例1は比較例1と比較して全体の香気の強さを表す合計面積値、及びオレンジの香気の各特徴成分の強さを表す相対面積値共に多く、エッセンス香料に含まれるオレンジの香気が強いことを示唆している。
[実施例2]
[HLB及び脂肪酸の炭素数が異なる乳化剤を使用したエッセンス香料の比較試験]
抽出に使用する乳化剤のHLB及び脂肪酸の炭素数を変えた場合に得られるエッセンス香料の水溶性に与える影響を試験した。
[実施例2−1]
[デカグリセリンカプリン酸エステル、C:10、HLB15.0を使用したエッセンス
香料]
実施例1において、実施例1で使用した乳化剤リョートーポリグリエステル M−7D10gの代わりに、デカグリセリンカプリン酸エステルであるリョートーポリグリエステル CE−19D、HLB15.0の10gを使用した他は実施例1と同様に実施し、エッセンス香料59.9gを得た。
[実施例2−2]
[デカグリセリンラウリン酸エステル、C:12、HLB15.5を使用したエッセンス
香料]
実施例2−1において、実施例2−1で使用した乳化剤リョートーポリグリエステルCE−19D、HLB15.0の10gの代わりに、デカグリセリンラウリン酸エステルであるDecaglyn1−L、HLB15.5の10gを使用した他は実施例2−1と同様に実施し、エッセンス香料60.6gを得た。
[実施例2−3]
[デカグリセリンラウリン酸エステル、C:12、HLB17.0を使用したエッセンス
香料]
溶剤層においてエチルアルコールが57%、乳化剤が9.1%になるようにイオン交換水34gに実施例2−1で使用した乳化剤リョートーポリグリエステル CE−19D、HLB15.0の10gの代わりに、デカグリセリンラウリン酸エステルであるリョートーポリグリエステル L−7D、HLB17.0の10gを使用した他は実施例2−1と同様に実施し、エッセンス香料60.6gを得た。
[実施例2−4]
[デカグリセリンパルミチン酸エステル、C:16、HLB12.5を使用したエッセン
ス香料]
実施例2−1において、実施例2−1で使用した乳化剤リョートーポリグリエステルCE−19D、HLB15.0の10gの代わりに、デカグリセリンパルミチン酸エステルであるDecaglyn 1−PVEX、HLB12.5の10gを使用した他は実施例2−1と同様に実施したところ攪拌後に冷却静置すると、水層(抽出溶剤層)と油層(オレンジ精油層)が分離していない且つ、凝固した状態の水溶性香料組成物120gが得られた。
[実施例2−5]
[デカグリセリンオレイン酸エステル、C:18、HLB13.0を使用したエッセンス
香料]
実施例2−1において、実施例2−1で使用した乳化剤リョートーポリグリエステルCE−19D、HLB15.0の10gの代わりに、デカグリセリンオレイン酸エステルであるリョートーポリグリエステル O−15D、HLB13.0の10gを使用した他は実施例2−1と同様に実施したところ攪拌後に冷却静置したが水層(抽出溶剤層)と油層(オレンジ精油層)が分離しない水溶性香料組成物120gが得られた。
[試験例3]
[HLB及び脂肪酸の炭素数が異なる乳化剤を使用して得られるエッセンス香料の可溶性
評価]
実施例1、実施例2−1、2−2、2−3、2−4及び2−5で得たエッセンス香料0.1gをイオン交換水100gに添加して攪拌し、それぞれの試験液を得た。この試験液を試験例1と同様の方法でその透過率を測定したところ、実施例2−1のC:10、HLB15.0の乳化剤を使用したエッセンス香料は透過率92.3%、実施例2-2のC:12、HLB15.5の乳化剤を使用したエッセンス香料と実施例2-3のC:12、HLB17.0の乳化剤を使用したエッセンス香料とは共に99.6%、実施例1のC:14、HLB16.0の乳化剤を使用したエッセンス香料は99.8%と高い透過率を示したが、実施例2−4のC:16、HLB12.5の乳化剤を使用したエッセンス香料では透過率88.2%の値を示し、実施例2−5のC:18、HLB13.0の乳化剤を使用したエッセンス香料は油浮きが激しく測定不可であった。これは、油分分離工程で油を分離できず、水層に含有されていたことが原因である。その結果を表3に示す。表3の可溶性評価に関して、冷却静置後の油分分離について水層と油層が分離したものについては○、分離しなかったものについては×とする。
Figure 2015098541
前述したようにエッセンス香料の水に添加した際の透過率は97.0%が望ましい。表3の結果から、使用する乳化剤の範囲がHLB15.5〜17で、且つデカグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸の炭素数が12〜14のものを使用した場合に、得られたエッセンス香料は水に極めて透明に均一溶解することが分かった。
[実施例3]
[乳化剤使用比率の検証]
本発明において、抽出に使用する乳化剤の量が、得られるエッセンス香料の水溶性に与える影響を調べる。
[実施例3−1]
[乳化剤を溶剤層において0.1%使用したエッセンス香料]
溶剤層においてエチルアルコールが63%、乳化剤が0.1%になるようにイオン交換水34gにデカグリセリンミリスチン酸エステルであるリョートーポリグリエステル M−7D、HLB16.0の0.1gを43℃で溶解させ、95%のエチルアルコール66gを混合し、レモン精油を10g添加後、他は実施例1と同様に実施し、エッセンス香料59.4gを得た。
[実施例3−2]
[乳化剤を溶剤層において0.5%使用したエッセンス香料]
実施例3−1において、溶剤層中の乳化剤が0.5%になるようにイオン交換水34gにデカグリセリンミリスチン酸エステルであるリョートーポリグリエステル M−7D、HLB16.0の0.5gを使用した他は実施例3−1と同様に実施し、エッセンス香料60.8gを得た。
[実施例3−3]
[乳化剤を溶剤層において1.0%使用したエッセンス香料]
実施例3−1において、溶剤層中の乳化剤が1.0%になるようにイオン交換水33g
にデカグリセリンミリスチン酸エステルであるリョートーポリグリエステル M−7D、HLB16.0の1.0gを使用した他は実施例3−1と同様に実施し、エッセンス香料60.3gを得た。
[実施例3−4]
[乳化剤を溶剤層において10%使用したエッセンス香料]
実施例3−1において、溶剤層中の乳化剤が10%になるようにイオン交換水24gにデカグリセリンミリスチン酸エステルであるリョートーポリグリエステル M−7D、HLB16.0の10gを使用した他は実施例3−1と同様に実施し、エッセンス香料58.6gを得た。
[実施例3−5]
[乳化剤を溶剤層において20%使用したエッセンス香料]
実施例3−1において、溶剤層中のエチルアルコールが63%、乳化剤が20%になるようにイオン交換水14gにデカグリセリンミリスチン酸エステルであるリョートーポリグリエステル M−7D、HLB16.0の20gを43℃で溶解させ、95%のエチルアルコール66gを混合し、レモン精油を10g添加後、他は実施例3−1と同様に実施し、エッセンス香料54.9gを得た。
[実施例3−6]
[乳化剤を溶剤層において25%使用したエッセンス香料]
実施例3−1において、溶剤層中のエチルアルコールが63%、乳化剤が25%になるようにイオン交換水9gにデカグリセリンミリスチン酸エステルであるリョートーポリグリエステル M−7D、HLB16.0の25gを使用した他は実施例3−1と同様に実施し、エッセンス香料55.4gを得た。
[比較例2]
[乳化剤を使用しないで、レモン精油をエチルアルコールと水のみで抽出したエッセンス
香料]
実施例3−1において、溶剤層中のエチルアルコールが57%になるように実施例3−1で使用した乳化剤リョートーポリグリエステル M−7Dを使用せず、レモン精油10gを、イオン交換水44gと95%のエチルアルコール66gとの混合物に添加し攪拌後、他は実施例3−1と同様に実施し、エッセンス香料75gを得た。
[試験例4]
[乳化剤使用比率が異なるエッセンス香料の可溶性評価]
実施例3−1〜3−6で得た乳化剤の使用比率が異なるエッセンス香料及び比較例2で得た乳化剤を使用しないエッセンス香料のそれぞれ0.1gをイオン交換水100gに添加して攪拌し、それぞれの試験液を得た。この試験液を試験例1と同様にその透過率を測定したところ、乳化剤0.1%を使用した実施例3-1では99.9%、乳化剤0.5%を使用した実施例3−2では99.2%、乳化剤1.0%を使用した実施例3−3では100.0%、乳化剤10%を使用した実施例3−4は99.2%の値を示し、水に極めて透明に均一溶解することが分かったが、乳化剤を20%使用した実施例3−5のエッセンス香料は96.5%、乳化剤25%を使用した実施例3−6のエッセンス香料は92.6%の値を示し透過率が低下した。また、比較例2の乳化剤を使用しないエッセンス香料は100.0%であった。前述したようにこれらのエッセンス香料を添加した水の透過率は97.0%以上が望ましいので、本発明における乳化剤の使用量は10%以下が好ましい。その結果を表11に示す。
[実施例4]
[アルコール使用比率の検証]
エッセンス香料に使用される精油は、種類によっては、エッセンス香料に濁りを生じさせたり、または飲料の添加時に白濁をもたらす原因となる場合がある。特にグレープフルーツ精油等はその傾向があるが、本発明においてはエチルアルコールの比率を制御することで飲料への添加時に透明に分散させることが出来る。そこで、グレープフルーツ精油を用い、本発明の乳化剤を使用する抽出溶剤層におけるエチルアルコールの使用比率がエッセンス香料の水溶性に与える影響を調べた。
[実施例4−1]
[溶剤層においてエチルアルコールを55%の比率で使用したエッセンス香料]
溶剤層においてエチルアルコールが55%、乳化剤が1.0%になるようにイオン交換水42gにデカグリセリンミリスチン酸エステルであるリョートーポリグリエステル M−7D、HLB16.0の1gを43℃で溶解させ、95%のエチルアルコール58gを
混合し、グレープフルーツ精油を10g添加後、他は実施例1と同様に実施したところ、やや濁りのあるエッセンス香料61gが得られた。
[実施例4−2]
[溶剤層においてエチルアルコールを60%の比率で使用したエッセンス香料]
溶剤層においてエチルアルコールが60%、乳化剤が1.0%になるようにイオン交換水36gにデカグリセリンミリスチン酸エステルであるリョートーポリグリエステル M−7D、HLB16.0の1gを43℃で溶解させ、95%のエチルアルコール64gを混合し、グレープフルーツ精油を10g添加後、他は実施例4−1と同様に実施し、エッセンス香料61gを得た。
[実施例4−3]
[溶剤層においてエチルアルコールを70%の比率で使用したエッセンス香料]
溶剤層においてエチルアルコールが70%、乳化剤が1.0%になるようにイオン交換水26gにデカグリセリンミリスチン酸エステルであるリョートーポリグリエステル M−7D、HLB16.0の1gを43℃で溶解させ、95%のエチルアルコール74gを混合し、グレープフルーツ精油を10g添加後、他は実施例4−1と同様に実施し、エッセンス香料60.5gを得た。
[実施例4−4]
[溶剤層においてエチルアルコールを75%の比率で使用したエッセンス香料]
溶剤層においてエチルアルコールが75%、乳化剤が1.0%になるようにイオン交換水20gにデカグリセリンミリスチン酸エステルであるリョートーポリグリエステル M−7D、HLB16.0の1gを43℃で溶解させ、95%のエチルアルコール80gを混合し、グレープフルーツ精油を10g添加後、他は実施例4−1と同様に実施し、エッセンス香料62.2gを得た。
[比較例3]
[乳化剤を使用しない、グレープフルーツ精油を抽出したエッセンス香料]
溶剤層においてエチルアルコールが57%になるように、グレープフルーツ精油10gをイオン交換水44gに95%のエチルアルコール66gとの混合物に添加し、他は実施例4−1と同様に実施し、エッセンス香料75gを得た。
[試験例5]
[アルコール使用比率が異なるエッセンス香料の可溶性評価]
実施例4−1のエチルアルコールの比率を55%にした結果では、エッセンス香料自体に濁りが生じていた為、可溶性評価は行わなかった。
実施例4−2、4−3及び4−4で得たアルコールの使用比率が異なるエッセンス香料
を、イオン交換水100gに添加して攪拌し、それぞれの試験液を得た。この試験液を試験例1と同様の方法でその透過率を測定したところ、実施例4−2、4−3のエチルアルコールをそれぞれ60%、70%使用して得られたエッセンス香料はそれぞれ100.0%、98.9%の値を示し、水に極めて透明に均一溶解することが分かった。実施例4−4のエチルアルコールを75%使用したエッセンス香料は95.8%の値を示した。比較例3の乳化剤を使用しないエッセンス香料は100.0%であった。これらのエッセンス香料の透明性を考慮すると本発明において、グレープフルーツ精油を使用した場合、エチルアルコールは60%〜70%の範囲で使用するのが好ましいことが分かった。その結果を表12に示す。
[精油と合成香料との混合物を使用したエッセンス香料の製造]
エッセンス香料では、合成香料を香気の補強、もしくは特徴付けの目的で精油と共に使用される場合が多い。香料に合成香料を添加する場合に、エッセンス香料を抽出した後に合成香料を添加すると、均一分散せず、分離してしまう場合がある為、エッセンス香料の抽出前に合成香料を添加している。そこで、本発明のエッセンス香料の抽出が、抽出原料に合成香料を添加したことに与える影響を試験した。さらに、抽出後のエッセンス香料に合成香料を後で添加した場合と比較した。
[抽出原料に合成香料の併用]
[実施例5−1]
[乳化剤を使用し、グレープフルーツ精油と合成香料としてヌートカトン1gを合わせて
使用した混合物を使用したエッセンス香料の製造]
[デカグリセリンミリスチン酸エステル、C:14、HLB16.0を使用し合成香料を
添加したエッセンス香料]
実施例4−2においてグレープフルーツ精油10gの代わりに、グレープフルーツ精油10gにヌートカトン1gを加えたものを使用する以外は、実施例4−2と全く同一の操作を行って、エッセンス香料69gを得た。ヌートカトンはセスキテルペンケトンの一種で、グレープフルーツの特徴的な香りを持つ化合物の1つであり、グレープフルーツ精油のピール感を補強する目的で使用した。
[実施例5−2]
[合成香料の抽出後添加]
[デカグリセリンミリスチン酸エステル、C:14、HLB16.0を使用して抽出した
エッセンス香料に合成香料を後から添加したエッセンス香料]
実施例4−2のエッセンス香料11gにヌートカトン0.1gを、グレープフルーツ精
油のピール感を補強する目的で加え、撹拌混合し11.1gの水溶性組成物を得た。
実施例5−1と5−2の合成香料の添加時期による効果の差異は後述の段落[0109]に記載されている。
[実施例6]
[本発明のエッセンス香料の官能評価]
本発明のエッセンス香料の性能及び効果を確認するため、種々の飲料例えば清涼飲料水、炭酸飲料水、50%果汁入り飲料及び紅茶飲料並びに食品例えばジャム、ゼリーに使用した場合の官能評価を行った。また、抽出原料に合成香料を併用した場合とエッセンス香料の抽出後に合成香料を添加した場合の差異も検討した。
(1)官能評価の方法
官能評価の項目は、匂った時に感じる香気の強さ(香り立ち)、口に含んだ時に感じる呈味の強さ、苦味を伴う柑橘のピール感の3項目と、飲料、食品としておいしく感じるか、柑橘以外の異味例えば薬品の様な苦味、渋味、酸味等や異臭例えば石油臭、アルコール臭、カビ臭、薬品臭、があるかどうかの5項目である。官能評価は試験溶液を当社内の飲食品業務に従事し、十分に訓練されたパネラー10名により行った。
官能評価は、各評価項目について1、弱い 2、やや弱い 3、同等 4、やや強い 5、強い、の5段階で評価した。また、官能評価の際に選択する試験溶液については、エッセンス香料自体に濁りがなく、水に0.1%添加した可溶性試験においても目視で明らかに濁りの確認出来る透過率97.0%未満のエッセンス香料は官能評価の対象とせず、透明に溶解する97.0%以上の透過率を示したエッセンス香料のみを評価した。
清涼飲料水の場合は乳化剤を使用していないエッセンス香料である比較例1の香料を清
涼飲料水に加えた試験液の数値を、すべての項目において5段階評価中、3と設定した上で、本発明品である実施例1のエッセンス香料と比較例1のエッセンス香料とをいずれも0.1%添加した清涼飲料水を比較した。
炭酸飲料水の場合は、乳化剤を使用していないエッセンス香料である比較例2の香料を炭酸飲料水に加えた試験液の数値を、すべての項目において5段階評価中、3と設定した上で、本発明品である実施例3−1〜3−4のエッセンス香料と比較例2のエッセンス香
料とをいずれも0.1%添加した炭酸飲料水を比較した。実施例3−5及び実施例3−6のエッセンス香料については試験例4の可溶性評価で透過率がそれぞれ96.5%と92.6%と低い値を示した為、官能評価はおこなわなかった。
50%果汁入り飲料の場合は、乳化剤を使用していないエッセンス香料である比較例3の香料を果汁入り飲料水に加えた試験液の数値を、すべての項目において5段階評価中、3と設定した上で、本発明品である実施例4−2〜4−3のエッセンス香料と比較例3のエッセンス香料とをいずれも0.1%添加した50%果汁入り飲料を比較した。実施例4−1のエッセンス香料は濁りを生じ、実施例4−4のエッセンス香料は、試験例5で透過率が95.8%と低い数値を示したため評価を行わなかった。
紅茶飲料の場合は乳化剤を使用していないエッセンス香料である比較例1の香料を紅茶飲料水に加えた試験液の数値を、すべての項目において5段階評価中、3と設定した上で、本発明品である実施例1のエッセンス香料と比較例1のエッセンス香料とをいずれも0.1%添加した紅茶飲料を比較した。
ジャムの場合は乳化剤を使用していないエッセンス香料である比較例1の香料をジャムに加えた試験物の数値を、すべての項目において5段階評価中、3と設定した上で、本発明品である実施例1のエッセンス香料と比較例1のエッセンス香料とをいずれも0.2%添加したジャムを比較した。
ゼリーの場合は乳化剤を使用していないエッセンス香料である比較例1の香料をジャムに加えた試験物の数値を、すべての項目において5段階評価中、3と設定した上で、本発明品である実施例1のエッセンス香料と比較例1のエッセンス香料とをいずれも0.1%添加したゼリーを比較した。
(2)試験液及び試験物の調製
(2-1)清涼飲料水
実施例1及び比較例1で得たエッセンス香料を各々、表4に示した清涼飲料水に0.1%添加して試験液を得た。
官能評価の結果は表10に示した。
Figure 2015098541
(2-2)炭酸飲料水
実施例3−1〜3−4で得た乳化剤の使用比率が異なるエッセンス香料と比較例2で得た乳化剤を使用しないエッセンス香料を各々、表5に示した炭酸飲料水に0.1%の濃度となるように添加して試験液を得た。
官能評価の結果は表11に示した。
Figure 2015098541
(2-3)50%果汁入り飲料
実施例4−2、4−3及び比較例3で得たエッセンス香料を各々、表6に示した果汁飲料に0.1%の濃度となるように添加して試験液を得た。
官能評価の結果は表12に示した。
Figure 2015098541
(2-4)紅茶飲料
実施例1で得たエッセンス香料、比較例1で得た水溶性組成物を各々、表7に示した紅茶飲料に0.1%の濃度となるように添加して試験液を得た。
官能評価の結果は表13に示した。
Figure 2015098541
(2-5)ジャム
実施例1及び比較例1で得たエッセンス香料を各々、表8に示したジャムに0.1%添加して試験物を得た。
官能評価の結果は表14に示した。
Figure 2015098541
(2-6)ゼリー
実施例1及び比較例1で得たエッセンス香料を各々、表9に示したゼリーに0.1%添加して試験物を得た。
官能評価の結果は表15に示した。
Figure 2015098541
(3)試験液の官能評価の結果
上記の4種の試験液及び2種の試験物について、(1)の官能評価の方法に従って、評
価を行ったところ、下記の結果が得られた。
清涼飲料水についての官能評価の結果は表10に示される。また、表10中の透過率は
試験例1の可溶化試験で得た、エッセンス香料0.1gをイオン交換水100gに添加した試験液の透過率である。
Figure 2015098541
表10の結果から、実施例1の乳化剤を使用したエッセンス香料を添加した清涼飲料水が、比較例1の乳化剤を使用しないエッセンス香料を添加した清涼飲料水と比較して、香気の強さ(香り立ち)、呈味の強さ及び、柑橘のピール感が相当大きくなった。清涼飲料
水として美味しく感じた人数は、10人中、実施例1では9人、比較例1では1人と、本発明品を使用した清涼飲料水がおいしいという結果となった。柑橘以外の異味、異臭を感じた人数はいずれの清涼飲料水も0人であった。本発明品は比較例1と比較して、異味を感じさせることなく、柑橘の香り、呈味、ピール感を強く感じさせ、飲料の風味を向上することが出来るといえる。これは本発明品が精油由来の香気成分を効率よく抽出溶剤層に取り込んでいることが理由であると考えられる。
炭酸飲料水による官能評価は表11に示される。また、表11中の透過率は、試験例4
の可溶化試験で得た、エッセンス香料0.1gをイオン交換水100gに添加した試験液の透過率である。
Figure 2015098541
表11の結果から、乳化剤をそれぞれ0.5%、1%及び10%使用した、実施例3-
2、実施例3−3及び実施例3−4のエッセンス香料を添加した炭酸飲料水は比較例2の乳化剤を使用しないエッセンス香料を添加した炭酸飲料水と比較して、香気の強さ(香り立ち)、呈味の強さ及び柑橘のピール感は大きくなったが、乳化剤を0.1%使用した実施例3-1の場合は比較例2の乳化剤を使用しないエッセンス香料を添加した炭酸飲料水
と比較して、呈味の強さ及び柑橘のピール感は増加したものの、香気の強さ(香り立ち)
はほぼ差のない結果となった。また、乳化剤をそれぞれ20%と25%使用した実施例3−5及び3−6のエッセンス香料は透過率が低いため評価を行わなかった。炭酸飲料水として美味しく感じた人数は、10人中、実施例3-1では3人、実施例3-2では1人、実
施例3-3では3人、実施例3-4では3人に対して比較例2では0人となり、本発明品を使用した炭酸飲料水がおいしいという結果となった。柑橘以外の異味、異臭を感じた人数はいずれの炭酸飲料水も0人であった。以上の結果から総合すると、乳化剤の使用量としては0.5%以上、10%以下が好ましく特に1%がすべての評価項目で優れている。
50%果汁入り飲料による官能評価は表12に示される。また、表12中の透過率は、
試験例5の可溶化試験で得た、エッセンス香料0.1gをイオン交換水100gに添加した試験液の透過率である。
Figure 2015098541
表12の結果から、アルコールをそれぞれ60%及び70%使用した実施例4−2と実施例4-3のエッセンス香料を添加した50%果汁入り飲料は、比較例3の乳化剤を使用
しないエッセンス香料を添加した50%果汁入り飲料と比較して香気の強さ、呈味の強さ及び柑橘のピール感が大きくなったが、アルコールを55%及び75%使用した実施例4−1および実施例4−4のエッセンス香料は、透過率が低いため評価しなかった。50%果汁入り飲料として美味しく感じた人数は、10人中、実施例4-2と実施例4-3のエッセンス香料ではいずれも5人に対して比較例3では0人となり、本発明品を使用した50%果汁入り飲料がおいしいという結果となった。柑橘以外の異味、異臭を感じた人数はいずれの50%果汁入り飲料も0人であった。上記の透明性および官能評価の結果からエチルアルコールは60%〜70%の範囲で使用することが風味に富んだ本発明のエッセンス香料を得るために好ましい。
紅茶飲料による官能評価は表13に示される。
Figure 2015098541
表13の結果から、実施例1の乳化剤を使用したエッセンス香料を添加した紅茶飲料が、比較例1の乳化剤を使用しないエッセンス香料を添加した紅茶飲料と比較して、香気の強さ(香り立ち)、呈味の強さ及び柑橘のピール感で優れている。紅茶飲料として美味しく感じた人数は、10人中、比較例1では1人、実施例1では9人と、本発明品を使用した紅茶飲料がおいしいという結果となった。柑橘以外の異味、異臭を感じた人数はいずれの紅茶飲料も0人となった。本発明品である実施例1は比較例1と比較して、紅茶飲料においても異味、異臭を感じさせることなく、柑橘の香り、呈味、ピール感を強く感じさせることが出来るといえる。
ジャムによる官能評価は表14に示される。
Figure 2015098541
表14の結果から、実施例1の乳化剤を使用したエッセンス香料を添加したジャムが、比較例1の乳化剤を使用しないエッセンス香料を添加したジャムとを比較して、香気の強さ(香り立ち)、呈味の強さ及び柑橘のピール感のいずれの評価項目についても優れている。ジャムとして美味しく感じた人数は、10人中比較例1では0人、実施例1では10人と、本発明品を使用したジャムがおいしいという結果となった。柑橘以外の異味、異臭を感じた人数はいずれのジャムも0人となった。本発明品である実施例1は比較例1と比較して、ジャムにおいても異味、異臭を感じさせることなく、柑橘の香り、呈味、ピール感を強く感じさせることが出来るといえる。
ゼリーによる官能評価は表15に示される。
Figure 2015098541
表15の結果から、実施例1の乳化剤を使用したエッセンス香料を添加したゼリーが、比較例1の乳化剤を使用しないエッセンス香料を添加したゼリーと比較して、香気の強さ(香り立ち)、呈味の強さ及び柑橘のピール感で優れている。ゼリーとして美味しく感じた人数は、10人中比較例1では1人、実施例1では9人と、本発明品を使用したゼリーがおいしいという結果となった。柑橘以外の異味、異臭を感じた人数はいずれのゼリーも0人となった。本発明品である実施例1は比較例1と比較して、ゼリーにおいても異味、異臭を感じさせることなく、柑橘の香り、呈味、ピール感を強く感じさせることが出来る。
[実施例7]
[本発明のエッセンス香料において、合成香料を使用した場合の効果検証]
[試験液の製造]
実施例5−1の合成香料の事前併用で製造したエッセンス香料と実施例5−2で得られ
た水溶性香料組成物とを表5に示した組成の炭酸飲料水に0.1%の濃度になるように添加して試験液を製造する。
[官能評価]
上記試験液について実施例6の(1)の官能評価の方法に従い、各評価項目の5段階評
価のうち実施例4−2の数値を3と設定した上で、実施例4−2のグレープフルーツ精油のみを使用したエッセンス香料と実施例5−1のグレープフルーツ精油と合成香料としてヌートカトンを使用したエッセンス香料とを、いずれも0.1%炭酸飲料水に添加した炭酸飲料水を比較した。その結果を表16に示す。また、ヌートカトンをグレープフルーツ精油に事前に併用した実施例5−1のエッセンス香料と、ヌートカトンを後から加えた実施例5−2のエッセンス香料とをいずれも0.1%添加した炭酸飲料水も官能検査で比較した。
Figure 2015098541
表16の結果から、実施例5−1のグレープフルーツ精油と合成香料を抽出時に併用したエッセンス香料を添加した炭酸飲料水は、実施例4−2のグレープフルーツ精油を使用したエッセンス香料を添加した炭酸飲料水と比較して、香気の強さ、呈味の強さ及び柑橘のピール感のいずれの評価項目についても優れている。炭酸飲料水として美味しく感じた人数は、10人中実施例5−1では9人、実施例4−2では1人と、合成香料を使用した本発明品を添加した炭酸飲料がおいしいという結果となった。柑橘以外の異臭、異味を感じた人数はいずれの炭酸飲料水も0人となった。このことから本発明品において、合成香料を使用した場合にも、異臭、異味を感じさせることなく、精油の香気を補強でき、風味の向上がみられる結果となった。
また、ヌートカトンをグレープフルーツ精油に事前に併用した実施例5−1のエッセンス香料を0.1%添加した炭酸飲料水と、ヌートカトンを抽出後に添加した実施例5−2のエッセンス香料とヌートカトンの混合物である水溶性香料組成物を0.1%添加した炭酸飲料水とを比較したところ、実施例5−1のヌートカトンを事前に併用したエッセンス香料の方が、自然でまろやかにグレープフルーツのピール感が増強されている傾向にあった。
[実施例8]
[特許文献6の実施例1の製品と本発明のエッセンス香料との比較]
特許文献6の実施例1では精油を乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルを使用し、抽出溶剤として多価アルコールと水の混合溶剤で処理しているが、本発明では、抽出溶媒として多価アルコールでなくエチルアルコールと水の混合溶剤で処理する点が相違する。そこで、両者を比較する。
[溶剤成分として多価アルコールを使用した水溶性香料組成物とエチルアルコールを使用
したエッセンス香料の比較試験]
[比較例4]
[多価アルコールを使用した水溶性香料組成物の製造](特許文献6の[0042]製造例1に準じた試験)
イオン交換水12gに乳化剤としてデカグリセリンミリスチン酸エステルであるリョートーポリグリエステルM−7D、HLB16.0の4.5gを43℃で溶解させ、95%のエチルアルコールではなく、多価アルコールであるグリセリンV(ミヨシ油脂(株)製)78gを使用して混合し、オレンジ精油4gを添加し、25℃で10分、8000rpmで攪拌したところ、オレンジ精油が製剤中に全て溶解し、粘性のある水溶性香料組成物100gを得た。
比較例4で使用した、多価アルコールであるグリセリンは乳化状態を安定化させやすい為、比較例4で得られた水溶性香料組成物は、均一な乳化液となる。そのため実施例1のエッセンス香料の製造工程(表1)の冷却静置、油分分離、濾過の工程を行わなかった。そして、エッセンス香料ではなく水溶性香料組成物が得られた。
[特許文献6の実施例の多価アルコールを使用した水溶性香料組成物と本発明のエッセン
ス香料との比較]
[試験液の製造]
実施例1で製造したエッセンス香料と比較例4で得られた水溶性香料組成物とを表7に示した組成の紅茶飲料にいずれも0.1%の濃度になるように添加して試験液を製造する。
[官能評価]
上記試験液について実施例6の(1)の官能評価の方法に従い、各評価項目の5段階評
価のうち比較例4の数値を3と設定した上で、実施例1のエッセンス香料と比較例4の水溶性香料組成物とをいずれも0.1%添加した紅茶飲料を比較した。その結果を表17に
示す。
Figure 2015098541
表17の結果から、実施例1のエチルアルコールを使用したエッセンス香料は、比較例4の多価アルコールを使用した水溶性香料組成物と比較して、香気の強さ、呈味の強さ及び柑橘のピール感は相当大きくなった。紅茶飲料として美味しく感じた人数は、10人中比較例4のエッセンス香料を添加した紅茶飲料では1人、実施例1のエッセンス香料を添加した紅茶飲料では9人と、本発明品を使用した紅茶飲料がおいしいという結果となった。また、柑橘以外の異味、異臭を感じた人数はいずれの紅茶飲料も0人となった。このことから本発明品は比較例4の多価アルコールを使用した水溶性香料組成物と比較しても呈味が顕著に強く感じるだけではなく、香気の強さも強く感じる結果となった。これは本発明品が精油由来の香気成分を効率よく抽出溶剤層に取り込んでいるだけでなく、香り立ち(フレーバーリリース)を良くする効果があることが理由であると考えられる。
本発明のエッセンス香料を種々の飲料及び食品に加えて、本発明のエッセンス香料が透明に分散し、経時的にも安定しているかを検証したところ、次の結果が得られた。
[実施例9]
[実施例9-1]
[清涼飲料水による本発明の乳化剤を使用したエッセンス香料の添加直後と保存後の可溶
性評価]
表4に示した清涼飲料水に実施例1で得た乳化剤を使用したエッセンス香料を0.1%添加し、ホットパック殺菌(85℃達温)して試験液を得た。また、この試験液を40℃で2週間保存し、試験液を得た。両者の透過率を試験例1と同様の方法で測定したところ、どちらも100.0%の値を示した。よって本発明品である実施例1のエッセンス香料は清涼飲料水に対し極めて透明に均一溶解しかつ、経時的にも安定であることが分かった。
[実施例9-2]
[紅茶飲料による本発明の乳化剤を使用したエッセンス香料の添加直後と保存後の可溶性
評価]
表7に示した紅茶飲料に、実施例1で得た乳化剤を使用したエッセンス香料を0.1%添加し、撹拌してUHT殺菌装置(超高温短時間殺菌装置)で120℃30秒殺菌した後ペットボトルに無菌充填し、試験液を得た。また、この試験液を40℃2週間保存し、試験液を得た。これらの紅茶飲料試験液の透過率を、試験例1と同様の方法で測定したところ、どちらも99.7%の値を示した。よって本発明品である実施例1のエッセンス香料は紅茶飲料に対しても極めて透明に均一溶解し、経時的にも安定であることが分かった。
[実施例9-3]
[ジャムによる本発明の乳化剤を使用したエッセンス香料の添加直後と保存後の可溶性評
価]
表8に示したジャムに実施例1で得た乳化剤を使用したエッセンス香料を0.1%添加し混合してジャムの試験物を得た。この試験物を40℃で2週間保存して試験物を得た。両試験物を目視比較したところ、濁りの差は確認できなかった。透過率に関しては、表8に示したジャムが固形であり、また原料としてオレンジ混濁果汁を使用している為測定不可能であったが、本発明品である実施例1のエッセンス香料はジャムに対しても均一溶解し、経時的にも安定であることが分かった。
[実施例9-4]
[ゼリーによる本発明の乳化剤を使用したエッセンス香料の添加直後と保存後の可溶性評
価]
表9に示したゼリーに実施例1で得た乳化剤を使用したエッセンス香料を0.1%添加し混合してゼリーの試験物を得た。また、この試験物は高温では融解してしまう為、実際の適正保存温度である5℃で2週間保存して試験物を得た。両試験物を目視比較したところ、濁りの差は確認できなかった。透過率に関しては、表9に示したゼリーが固形であり、また原料としてオレンジ混濁果汁を使用している為測定不可能であったが、本発明品である実施例1のエッセンス香料はゼリーに対しても均一溶解し、経時的にも安定であることが分かった。
実施例9の結果から、本発明品は清涼飲料水、紅茶飲料、ゼリー、ジャム等の飲料及び食品に対して均一に溶解し、加工条件、保存条件に関わらず、経時的に安定していることがわかる。

Claims (9)

  1. 乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルを使用し、抽出溶剤としてエチルアルコールおよび水の抽出溶剤混合物を用いて油溶性原料を抽出し、抽出溶剤層を分離し、この抽出溶剤層から析出物をろ過することを特徴とする風味の強化されたエッセンス香料の製造方法。
  2. 抽出溶剤層の分離と析出物のろ過とを低温静置後に行うことを特徴とする請求項1に記載の風味の強化されたエッセンス香料の製造方法。
  3. 油溶性原料が柑橘精油である請求項1に記載のエッセンス香料の製造方法。
  4. 柑橘精油がオレンジ精油である請求項3に記載のエッセンス香料の製造方法。
  5. 乳化剤のHLBが15.5〜17である請求項1に記載のエッセンス香料の製造方法。
  6. 乳化剤がデカグリセリン脂肪酸エステルである請求項5に記載のエッセンス香料の製造方法。
  7. デカグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸の炭素数が12〜14である請求項6に記載のエッセンス香料の製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法により得られるエッセンス香料。
  9. 請求項8に記載のエッセンス香料を添加した飲食品。
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