JP2015014618A - 試料ろ過フィルターを用いる簡易メンブレンアッセイ方法及びキット - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の目的は、メンブレンアッセイ法を用いた検体の簡易な検査方法において、感度を保ちながら偽陽性や詰まりを防止できる検体試料のろ過法を提供し、被検出物の精度の高い検出又は定量を可能にする方法及びそのような方法において使用されるキットの提供。【解決手段】被検出物を含む検体試料をろ過フィルターによってろ過した後に、被測定物を捕捉するための捕捉試薬が結合したメンブレンを備えたアッセイ装置上で検体試料中の被測定物の存在を検出又は定量することを含む簡易メンブレンアッセイ法において、上記ろ過フィルターを構成するフィルターに強剛性フィルターが含まれることを特徴とする簡易メンブレンアッセイ方法。【選択図】なし

Description

本発明は、検体試料中の被分析物質を特異的に定性又は定量測定する検出法、検出装置並びに検出キットに関する。
最近、抗原抗体反応や酵素反応等を利用した、ウイルスや細菌等の病原体への感染、妊娠の有無、血糖値など様々な測定項目を数分から数十分の短時間で検出あるいは定量する簡易検査試薬又はキットが開発されている。病原体構成蛋白質、ヒト繊毛性ゴナドトロピン(hCG)、血糖等が検出あるいは定量の対象である。簡易検査試薬の多くは、特別な設備を必要とせず操作も簡単で安価であるという特徴を有しており、例えば、妊娠診断のための簡易検査試薬はOTCとして一般薬局で販売されている。また病原体への感染を測定する簡易検査試薬は、他の検査試薬と異なり、大病院や医療検査センター以外にも一般の病院や診療所で広く使用されている。これらの施設は患者が最初に訪れる医療機関である場合が多く、患者から採取した検体についてその場で感染の有無が判明すれば、症状が早期のうちに治療措置を施すことができるため、簡易検査試薬の医療における重要性は益々高まってきている。
現在、簡易検査方法として、免疫測定法、すなわち免疫凝集法やイムノメンブレンアッセイ法、特にニトロセルロース等の膜やフィルター等のメンブレンを用いたアッセイ方法が一般に知られており、フロースルー式とラテラルフロー式メンブレンアッセイ法に大別される。前者は被検出物を含む溶液を被検出物に対する検出用物質が塗布された膜を垂直方向に通過させるものであり、後者は水平方向に展開させるものである。いずれの場合も被検出物に特異的に結合する膜固相物質、被検出物、被検出物に特異的に結合する標識物質の複合体を膜上に形成させて、標識を検出あるいは定量することで被検出物の検出あるいは定量を行うという点で共通しているが、最近ではより簡便で、より短時間での検出が可能であることから、ラテラルフロー式メンブレンアッセイ法(イムノクロマト法ともいう)が主流になっている。
しかし、このような膜やフィルターを用いるメンブレンアッセイ法による簡易検査方法では、患者から実際に採取された検体の分析において、被検出物が検体中に存在しないにも係わらず陽性と判定してしまう、いわゆる偽陽性が生じることがある。病原体の感染を測定する際に偽陽性反応が発生すると、疾患に関して誤った情報を与えるため、原因特定を遅らせるばかりでなく、不適切な措置を講じることになり病状がより重篤になる等の重大な結果をもたらすこともあり得る。したがって偽陽性を抑えることは簡易検査方法の主要な使用目的から見て、極めて重要な課題である。
偽陽性の発生する原因は完全には判明していない。しかし検体中に含まれる混入物が原因の一つと考えられている。被検出物を捕捉するための捕捉物質が結合したメンブレンを備えたアッセイ装置を用いる簡易メンブレンアッセイ法では、被検出物が存在すると予測される部位、例えば患者の咽頭や鼻腔等から綿棒等の検体採取器具を用いて拭い液を採取して緩衝液に浮遊したり、被検出物を含む鼻汁や便等の分泌物や排泄物から一部を採取し、緩衝液で浮遊して、メンブレンアッセイ用の検体試料を調製するが、この場合、前記試料中に被検出物の他、検体採取部位から剥落した細胞や分泌物、排泄物の成分等が混入することがある。このような混入物にはプロテオグルカン、糖脂質等の粘性物質をはじめ、様々な生体成分が含まれているため、前記検体試料をそのまま膜等のメンブレン上に添加すると、上記成分の一部がメンブレン上あるいはメンブレン中に付着すると考えられる。特にメンブレンとして孔径又は保留粒子径が0.5〜15μm程度のものが使用されることが多いが、この孔径又は保留粒子径に匹敵する大きさの成分が添加されると、メンブレン中の細孔を塞ぎ溶液中の成分の移動を阻害することが考えられる。このような現象により非特異的な反応が起こり、被検出物が検体中に存在しないにも係わらず陽性と判定してしまう、いわゆる偽陽性が起こると考えられる。
また、上記の混入物の含量、性状によってはメンブレン中の細孔が相当程度又は完全に塞がれてしまい、検体がメンブレン中を通過することが著しく困難になるか不可能になってしまうことにより、反応速度が極端に遅くなったり、測定不可能になったりしてしまう場合もあり、これを防ぐことも大きな課題である。
上記の問題点を解決するためには、検体試料をあらかじめろ過して、メンブレン上に添加するという方法が有効である(特許文献1及び2を参照)。ろ過により検体試料中の偽陽性原因物質が除去されるので、これらの物質がアッセイ装置のメンブレン上あるいはメンブレン中に付着して、偽陽性を引き起こすのを阻止することができる。ところがフィルターでろ過する場合、検体試料中の物質がフィルターに目詰まりしてしまい、アッセイ装置のメンブレン上への添加が不可能になってしまうことがある。この問題を解決するための一つの手段は、試料ろ過フィルターの構成を工夫することである。孔径又は保留粒子径の大きなフィルターから小さなフィルターを何枚か重ねた試料ろ過フィルターを用いることで、ろ過時における検体試料の目詰まりをある程度回避することが可能である。しかし、ここで新たに問題が生じる。まず何枚ものフィルターを重ねることによりフィルターが厚くなり、一般によく用いられるセルロースろ紙等を用いた場合、検体試料を吸収してしまうため、検体試料の量が減少することである。特に感度を高めるためには緩衝液をなるべく少なくし、検体試料中の被検出物濃度を高めておく必要があるが、フィルターによる吸収分が多いとその分緩衝液を増やしておかなければならないので、感度が低下してしまう。また、フィルターの枚数を重ねれば、それだけ被検出物のフィルターへの吸着が多くなる可能性が高くなる。これらの問題点から逃れる手段としては、ろ過面積を大きくすることが考えられるが、緩衝液量が限られていることから無制限に大きくすることはできず大きな効果は期待できない。以上のことから感度を犠牲にせずに検体試料のろ過を達成することはキットの測定系構築にとって重要な課題となっていた。
特開2000-88851号公報 特開2004-28875号公報
本発明の目的は、メンブレンアッセイ法を用いた検体の簡易な検査方法において、感度を保ちながら偽陽性や詰まりを防止できる検体試料のろ過法を提供し、被検出物の精度の高い検出又は定量を可能にする方法及びそのような方法において使用されるキットを提供することである。
すなわち本発明の課題は、被検出物を捕捉するための捕捉試薬が結合したメンブレンを備えたアッセイ装置を用いる、検体試料中の被検出物の簡易メンブレンアッセイ法において、強剛性フィルターを含むフィルターにより構成されたろ過フィルターを用いて検体試料をろ過した後にメンブレン上に滴下し、前記検体試料中の被検出物の存在を検出することを特徴とする方法、により解決される。
また、本発明の課題は、以下を含む、検体試料中の被検出物の存在を検査するための簡易メンブレンアッセイキット;
(1)強剛性フィルターを含むフィルターにより構成されたろ過フィルターを備えた検体試料用ろ過チューブ、及び
(2)検体試料中の被検出物を捕捉するための捕捉物質が結合したメンブレンを備えたアッセイ装置、
により解決される。
本発明の好ましい実施態様は、強剛性フィルターが焼結フィルターである、上記方法又はキットである。
本発明の特に好ましい実施態様は、焼結フィルターの材質が、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、アルミナ、ジルコニア及びケイ素からなる群より選ばれることを特徴とする、上記方法又はキットである。
本発明の他の好ましい実施態様は、ろ過フィルターが2枚以上のフィルターを重ねて構成されており、粗ろ過用の1枚は孔径又は保留粒子径がメンブレンの孔径以上〜200μm以下であり、精密ろ過用の1枚は孔径又は保留粒子径がメンブレンの孔径以下である上記方法又はキットである。強剛性フィルターは精密ろ過用としても、粗ろ過用としても用いることができるが、少なくとも1枚の強剛性フィルターの孔径又は保留粒子径はメンブレンの孔径以上であり、200μm以下が好ましい。
また、本発明の他の好ましい実施態様は、検体採取器具として、綿棒を用いる、上記方法であり、又は綿棒を含む上記キットである。
また、本発明の特に好ましい実施態様は、上記の綿棒がブラシ状綿棒である、上記方法であり、又はブラシ状綿棒を含む上記キットである。
また、本発明の好ましい実施態様は、検体試料が生体試料である、上記方法又はキットである。
また、本発明の特に好ましい実施態様は、検体がヒト又は他の動物の咽頭拭い液、鼻腔拭い液、鼻腔吸引液、鼻腔洗浄液、肺胞洗浄液、便懸濁液又は直腸拭い液である、上記方法又はキットである。
また、本発明の特に好ましい実施態様は検体中の被検出物が呼吸器感染症の原因微生物又は下痢症の原因微生物である、上記方法又はキットである。
また、本発明の特に好ましい実施態様は検体中の被検出物がインフルエンザウイルス、RSウイルス、アデノウイルス、A群溶連菌、肺炎マイコプラズマ、ノロウイルス、ロタウイルス、サポウイルス及び下痢症アデノウイルスからなる群から選択される病原微生物若しくは該微生物由来の物質又はそれらに対する抗体である上記方法又はキットである。
また、本発明の特に好ましい実施態様は、フロースルー式又はラテラルフロー式簡易メンブレンアッセイ法に関する上記方法又はキットである。
本発明の方法又は装置を用いて検体試料中の被検出物質を検出・定量する場合、検体が咽頭拭い液、鼻腔拭い液、鼻腔吸引液、肺胞洗浄液等の不純物を多く含む検体であっても、検体採取器具及び/又はろ過フィルターにより検体量を減らすことなく、不純物を除去することができる。その結果、不純物に影響されることなく、正確な結果を得ることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
(簡易メンブレンアッセイ方法及びアッセイ装置)
本発明の方法は、被検出物を捕捉するための捕捉物質が結合したメンブレンを備えたアッセイ装置を用いる、検体試料中の被検出物の簡易メンブレンアッセイ法であって、強剛性フィルターを含むフィルターにより構成されたろ過フィルターを用いて被検出物を含む検体から調製した検体試料をろ過した後に前記メンブレン上に滴下し、前記検体試料中の被検出物の存在を検出あるいは定量することを特徴とする方法である。
本明細書において“簡易メンブレンアッセイ法”とは、被検出物に特異的に結合する捕捉物質が固相化されたメンブレンを含むアッセイ装置を用いて検体試料中の被検出物の存在の有無を短時間に簡便に検査する方法である。典型的には、被検出物と、前記捕捉物質及び標識物質を反応させて補足物質-被検出物-標識物質という構造を有するサンドイッチ状の複合体をメンブレン上に形成させ、前記標識物を検出することにより、この複合体の存在を検出する方法である。被検出物と前記捕捉物質及び標識物質との反応としては、抗原抗体反応、その他の受容体とレセプターの反応、ビオチンとアビジンの特異的結合反応、相補的配列を持つDNA同士の反応等が挙げられる。また、本発明の簡易検査方法は、このような方法に用いるものであれば、被検出物、メンブレン、標識物質の種類について限定されるものではない。
本明細書にいうメンブレンを備えたアッセイ装置(メンブレンアッセイ装置ともいう)とは、被検出物に特異的に結合する捕捉物質が固相化されたメンブレンを含む装置である。このようなアッセイ装置としては、フロースルー式メンブレンアッセイ法又はラテラルフロー式メンブレンアッセイ法を利用するものであることが、簡便かつ迅速であるため好ましい。フロースルー式メンブレンアッセイ法は被検出物を含む溶液を、被検出物と特異的に結合する捕捉試薬や検出用物質が塗布されたメンブレンに対して垂直方向に通過させるものであり、被検出物に特異的に結合する捕捉物質、被検出物、被検出物に特異的に結合する標識物質の複合体を膜上に形成させて、標識を検出あるいは定量することで、被検出物の検出又は定量を行う。ラテラルフロー式メンブレンアッセイ法は、同様なメンブレンを用いてメンブレンに対して被検出物を含む溶液を水平方向に展開させる点でフロースルー式メンブレンアッセイ法と異なるが、被検出物の検出原理は同様である。2種類の方法のうち、簡便さと測定時間の短さの面からラテラルフロー式メンブレンアッセイ法がより好ましい。
ラテラルフロー式メンブレンアッセイ法を利用するアッセイ装置の具体例は、例えば図1及び2に示されるような装置である。
図1は装置の平面図であり、図2は、図1のI−I’切断端面である。図1及び2において、aは調製した検体試料を滴下するために設置されたサンプル滴下パッドである。bは標識物質が乾燥化されて保持される標識物質乾燥パッドである。cは滴下された溶液を吸収するためのサンプル吸収パッドである。dは被検出物に特異的に結合する捕捉物質が結合したメンブレンであり、e、f及びgは被検出物に特異的に結合する捕捉物質がd上でライン状に結合している位置を示す。さらに捕捉物質が結合している位置の下流の位置hに標識物質を結合することができる物質、例えば被検出物と同等の反応性を有する物質又は標識物質に結合する抗体を固相してもよい。これにより標識物質が標識物質乾燥パッドから捕捉物質が結合したメンブレン上を流れたことを試験ごとに確認することができる。ろ過の際にフィルターが目詰まりしたり、フィルターに検体試料が吸収されてしまい充分量の検体試料のろ過ができなかったり、アッセイ装置のメンブレンの目詰まりが発生した場合にはhの位置には発色は認められない。iは部材を固定し、強度を増すためのプラスチック製バッキングシートである。jはサンプル滴下パッドの一部、標識物質乾燥パッド、サンプル吸収パッド及びメンブレンを被覆する透明プラスチックラミネートである。
メンブレンアッセイ装置中のメンブレンとしては、紙やニトロセルロースなどの多孔質物質、又は繊維状マトリクス、薄層クロマトグラフに用いられるシリカ、微細顆粒セルロース、ナイロン6,6などの担体からできたメンブレンを挙げることができる。感度・特異性が高いラテラルフロー式メンブレンアッセイを行うために好ましい多孔質物質としては、微多孔質セルロースエステル、たとえばアルカンカルボン酸などの脂肪族カルボン酸とのセルロースエステルが挙げられ、特に好ましくはニトロセルロースから作られた微多孔質物質が挙げられる。また、前記セルロースエステルとニトロセルロースの混合物も好適に用いることができる。上記メンブレンの平均孔径は0.5〜15μmが用いられることが多い。
以下に、本発明の方法についてより具体的な手順の一例を示し、本発明を説明する。
(1)ウイルスや細菌等に感染した疑いがある患者の咽頭、鼻腔あるいは直腸等から綿棒等の検体採取器具を用いて直接採取した検体試料を、後述するような検体浮遊液に浮遊させる。あるいは患者から採取した鼻腔吸引液、尿、便等の被分析対象物から綿棒等の検体採取器具を用いて採取した検体試料を、後述するような検体浮遊液に浮遊させる。
(2)この浮遊液を、ろ過フィルターを備えた検体試料用ろ過チューブ中に入れてろ過する。
(3)このろ過液を、メンブレンを備えたアッセイ装置中の被検出物に特異的に結合して被検出物を捕捉する捕捉試薬が結合したメンブレンに滴下等により添加して、被検出物をメンブレン上に捕捉させる。この際、ろ過液をサンプル滴下パッドに滴下することにより、毛細管現象により被検出物がメンブレンに流れていく。
(4)前記メンブレン上に、被検出物に特異的に結合する検出試薬である標識物質を滴下等により添加し、捕捉試薬/被検出物/標識物質の複合体を形成させる。この際、標識物質はあらかじめアッセイ装置に組み込んでおいてもよい。この場合、検体試料を含む浮遊液をアッセイ装置に添加することにより、該浮遊液がアッセイ装置上を流れ、検出試薬を含むパッド部分に到達すると、検出試薬が前記浮遊液に溶解し、被検体とともにメンブレンに到達し、メンブレンの捕捉試薬との間で複合体を形成する。
(5)前記複合体中の標識物質により、複合体の存在を検出することにより、検体試料中の被検出物の有無を測定する。複合体の存在の検出の前に、必要に応じて反応停止液を用いて反応を停止させてもよい。
(検体採取器具)
検体採取するための器具としては、綿棒、白金耳、スポイト又はさじ形状の用具等を用いることができる。特に人体を被験体とし、鼻腔ぬぐい液、鼻腔吸引液、咽頭ぬぐい液、肺胞洗浄液、便懸濁液又は直腸拭い液を検体とする場合は、検体採取器具として主として綿棒を用いることが多い。
従来使用されている綿棒は図3に示すように、検体採取部分k1は軸部lの片方の先端にある頭部mに綿を巻き付けた綿球から形成される。この従来の綿棒は検体を採集した後に綿棒から放出し試験に供するという本来の検体採取器具の目的を考慮すると、必要以上に綿を要し、綿の深部まで検体が入り込みそこに保持され、次の検体を放出する工程において検体中の被検出物が十分に放出されないという問題がある。
最近、天然物又は人工物でできた繊維がブラシ状に配置され、毛細管現象を利用し液体を採取する新しい方式の綿棒が市販されており、ブラシ状綿棒と呼ばれる。該ブラシ状綿棒は、以下の理由により本発明に特に好適に使用することができる。ブラシ状綿棒は、例えばフロック加工と呼ばれる、短く切った繊維(フロック)を、静電気により接着剤を塗布した綿棒の柄に付着させる方法により作製することができる。また、この方式の綿棒では、液体中の溶解物や混合物である固体や粘性物質も採取可能であり、この場合毛細管現象だけではなく、固体や粘性物質が本発明に器具の被分析試料採取部位に吸着等により結合することを利用して採取する。従来の綿棒と比較して表面積が大幅に増えるので、それだけ検体の採取量が大きく、検体中の被検出物をより多く吸着することが可能である。また浮遊液に浮遊させる際にも従来の綿棒とは異なり、浮遊液は容易に繊維間に入り込むことができるため、被検出物が放出されやすく、効率的に被検出物を浮遊液中に回収することができる。
図4にブラシ状綿棒の1例を示す。軸部lの片方の先端の頭部mの表面に繊維をブラシ状に配置した検体採取部分k2を備える。軸部l及び頭部mの材質に特に限定はないが、検体採取部位k2よりは液体吸収性に劣り、適度な硬度かつ適度な柔軟性を備えた物質がふさわしい。木、プラスチック、ウレタン樹脂、紙、金属等の成型物が好ましく、それら材料の混合物の成型品でもかまわない。硬度、柔軟性や液体吸収性等の調整を目的として、必要に応じて薬品等で処理してもかまわない。軸部lと頭部mは別々の材料から作られていてもかまわないし、同じ材料から作られていてもかまわない。また、別成型としてもよいし、一体成型としてもかまわない。検体採取部位k2を構成する繊維の材質に特に限定はないが、例えば細い繊維がより合わされ、織られ、編まれ、あるいは集合体として形成された物が利用でき、例えば布、織物、不織物、綿花状の物、海綿状の物が利用できる。材料は天然物、人工物いずれも利用でき、綿花や絹等の天然物や脱脂綿等の天然物の加工物、天然物の薬品処理物、ナイロン繊維等の人工物が利用できる。いずれの材料も組合せ又は層状に重ねて使用することもできる。細い繊維はブラシ状に配置され、軸部の軸中心に向かって実質的に垂直方向に配置されるのが好ましい。ブラシ状に配置された繊維部分は、毛細管現象により液体を吸収・保持し得る。ブラシ状の繊維部分の厚さは、適宜選択することができるが、0.5〜5mm、好ましくは1〜2mm程度である。毛細管現象を利用し液体を採取するブラシ状繊維部分、軸部及び頭部は軸部の中心軸に対して通常は対象な形状であり、軸方向に対する垂直断面は軸を中心に円形であるが、必要に応じて形状を変えてもかまないし、毛細管現象を利用し液体を採取するブラシ状繊維部分を選択的に配置してもかまわない。ブラシ状に配置された繊維は、軸部の軸中心に向かって実質的に垂直方向に配置されるのが好ましい。繊維の太さ及び配置密度はその目的、材質に応じて適宜選択することができるが、繊度は1.0〜4.0dtexが好ましい。
(ろ過フィルター)
本発明の方法において、患者から採取した検体は検体浮遊液に浮遊させて検体試料とした後、アッセイ装置中のメンブレンの目詰まりや偽陽性を防止するために、ろ過フィルターを用いてろ過される。特に検体採取器具としてブラシ状綿棒を用いた場合、通常の綿棒を用いた場合よりも多くの被検出物を採取することが可能であるが、同時に検体採取部位から剥落した細胞や分泌物、排泄物の成分等もより多く採取するため、メンブレンの目詰まりや偽陽性もより発生しやすい。したがってろ過工程の重要性もより高くなる。ろ過フィルターはメンブレンの目詰まりや偽陽性及びろ過フィルター自身の目詰まりを防ぐため、1種類だけではなく、材質の異なるもの、孔径又は保留粒子径の異なるものをいくつか組み合わせても良いが、本発明においては、少なくとも1種の強剛性フィルターを含むことが必要である。
ここに言う強剛性フィルターとは外部からの力に対して変形しにくいフィルターをいう。
ろ過チューブ中に検体浮遊液に浮遊させた検体試料を入れて、先端に取り付けた強剛性フィルターを含むろ過フィルターを通してろ過し、ろ液をメンブレンアッセイ装置中のメンブレンに滴下する際に、フィルターはろ過チューブ内の検体試料等の液体や空気の圧力を受ける。このとき、フィルターの厚さ方向の潰れや湾曲等の変形が発生する可能性があるが、これらの現象はフィルター内部のろ液の流路を塞ぎ、フィルター自身が目詰まりする原因となる。本発明に用いる強剛性フィルターは、ろ過チューブ中に検体浮遊液に浮遊させた検体試料を入れて、先端に取り付けた強剛性フィルターを含むろ過フィルターを通してろ過し、ろ液をメンブレンアッセイ装置中のメンブレンに滴下する際に、フィルターの厚さ方向に潰れにくく、または、湾曲等の変形をしにくい剛性を備えているフィルターをいう。別の表現をすれば、ろ液の圧力によってもフィルター内部のろ液の流路を塞ぎ難い剛性を備えたフィルターのことをいう。
強剛性フィルターは変形しにくいため、目詰まりが起こりにくい。さらに積層したり、あるいは厚さを数mm〜数cm程度に厚く加工することができるため、それにより有効ろ過面積が大きくできることも目詰まりが起こりにくい要因である。本発明においては、そのような変形が生じないような強剛性フィルターを含むことが必要である。
フィルターの厚さ方向に潰れにくい剛性を備えているとは、例えば、検体試料をろ過する時の液体や空気によるフィルターにかかる圧力が0.2[MPa]を超えても、ろ過前対ろ過時の厚さの変化量が5%以上とならず、好ましくは2%以上とならず、また、湾曲等の変形をしにくい剛性を備えているとは、上記同様の圧力がかかってもろ過時のフィルターの曲率半径が2cm以下とならないことをいう。
強剛性フィルターとしては各種の金属繊維をワインドしたもの、金属繊維の不織布を用いたもの、プラスチックスを発泡させたもの、金属メッシュを層状に重ね合わせたもの、金属、プラスチックス、セラミック等の粉末や金属繊維を熱や圧力で接着した焼結フィルターが挙げられ、いずれも本発明において使用可能である。
焼結フィルターは、金属、セラミック、プラスチック等の粉末粒子や金属繊維を熱及び圧力により直接接着し(焼結)製造されるフィルターである。強剛性フィルターの中でも焼結フィルターは、1)安価である、2)粒子の大きさにより孔径を制御することが可能である、3)大量製造に向く、4)生体物質との親和性が低いため被検出物を特異的に結合しない、5)液体中の水分の吸収がほとんどない、6)粒子の大きさにより様々な孔径のものを作製できる、という特徴を有するので、生体物質を含む検体試料のろ過に好ましい。
焼結フィルターの素材としては、ポリプロピレン、ポリエチレン(低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン)、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等の樹脂、アルミナ、ジルコニア、ケイ素、ケイ素四フッ化エチレン重合体、ステンレス鋼等を挙げることができるが、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等の樹脂を用いたものが加工性の面から好ましい。
試料ろ過フィルターは、2種類以上の強剛性フィルターを組み合わせて作製してもよい。また、強剛性フィルターと強剛性フィルター以外のフィルターと組み合わせてもよい。
強剛性フィルターは精密ろ過用としても、粗ろ過用としても用いることができるが、少なくとも1種類の強剛性フィルターの孔径又は保留粒子径はメンブレンの孔径以上であり、200μm以下が好ましい。
例えば、ポリプロピレン製強剛性フィルターの孔径は50〜200μm、低密度ポリエチレン製強剛性フィルターの孔径は30〜70μm、高密度ポリエチレン製強剛性フィルターの孔径は10〜50μm、超高分子量ポリエチレン製強剛性フィルターの孔径は10〜20μm、ポリスチレン製強剛性フィルターの孔径は100〜200μm、四フッ化エチレン重合体製強剛性フィルターの孔径は30〜100μmである。素材及び/孔径の異なる複数の強剛性フィルターを組合せて用いてもよい。
精密ろ過用フィルターとして例えば膜状のフィルターを用いることができ、その材質はセルロース、ガラス繊維、シリカ繊維、ニトロセルロース、セルロースエステル、ニトロセルロースとセルロースエステルの混合物、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、四フッ化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリアミド、ナイロン6,6、ポリエステル、コットン、ステンレススチール繊維等の中から好適なものを適宜選択することができるが、被検出物を結合させず、検体浮遊液の吸収量が多くないものにすることが必要である。
ろ過フィルターを構成するフィルターの中で最小の孔径又は保留粒子径を有するフィルターの最小の孔径又は保留粒子径がメンブレンの孔径以下であることが好ましい。すなわち、例えば用いるメンブレンの孔径が10μm以上の場合、ろ過フィルターの少なくとも1つは、孔径10μm以下であることが好ましい。
強剛性フィルター及び強剛性フィルター以外の別の種類のフィルター(以下、非強剛性フィルターということがある)の組合せ方は、例えば、フィルターを2つ用いる場合、フィルターを後記のろ過チューブのろ過用ノズルの底面から1段目フィルター、2段目フィルターとすると(この場合、最初に検体試料と接触するのは、1段目フィルターであり、検体試料は1段目フィルターを通過して、アッセイ装置に添加される)、1段目フィルターと2段目フィルターの組合せとして、強剛性フィルターと強剛性フィルター、強剛性フィルターと非強剛性フィルターの組合せがある。なお、ノズル先端部に近いフィルターを下流側フィルターと呼び、より早く検体試料に接触するフィルターを上流側フィルターと呼ぶことがある。フィルターを組合せる場合、孔径が異なるフィルターを組合せることが好ましく、2種類のフィルターのうち、少なくとも1つは孔径がメンブレンフィルターの孔径より小さいことが好ましい。強剛性フィルターはいずれもフィルターの表面だけでなく、その内部でも混入物をトラップするため、ある程度の厚さが必要である。必要な厚みは混入物の量やフィルターの孔径や大きさにより当然異なるが、一般に簡易メンブレンアッセイに必要な検体試料100〜2000μlを直径が5〜20mm程度の試料ろ過フィルターでろ過する場合、強剛性フィルター又は非強剛性フィルターの厚さは、限定されないが、好ましくは、0.5mm〜7mm、さらに好ましくは1mm〜5mmである。また、試料ろ過フィルターの厚さの合計は2mm〜10mm程度が好ましい。
ろ過フィルターに孔径又は保留粒子径の異なるものをいくつか組み合わせる場合は、孔径又は保留粒子径の大きなフィルターを上流側に、小さなフィルターを下流側に、両フィルターが重なるように配置することが、ろ過時における検体試料の目詰まりを回避する上で好ましい。例えば、2つのフィルターを組合わせる場合、1段目のフィルターに孔径又は保留粒子径が大きいフィルターを用い、2段目のフィルターに孔径が小さいフィルターを用いることが好ましい。
用いるフィルターのサイズは、アッセイに用いる検体浮遊液チューブのサイズによるが、例えば、円形で直径0.5〜1.5cmである。
(検体試料用ろ過チューブ)
上記ろ過フィルターは、本発明の簡易メンブレンアッセイ法又はキットにおいて、検体試料用ろ過チューブの先端に取り付けて使用されることが好ましい。すなわち、ろ過チューブ中に検体浮遊液に浮遊させた検体試料を入れて、先端に取り付けたろ過フィルターを通してろ過し、ろ液をメンブレンアッセイ装置中のメンブレンに滴下する方法が簡便であり、好ましい。このろ過チューブの一実施態様の模式図を図5及び図6に示す。ろ過チューブは例えば図5及び図6に記載されるように先端部(ろ過ノズル)nと本体部pからなる形状であり、先端部の内部に図5に示されるようにろ過フィルターo1〜o3が備えつけられている。図5のろ過ノズルにおいて、図下部がノズル底面であり、ろ過フィルターo1、o2及びo3は、それぞれ3段目フィルター、2段目フィルター及び1段目フィルターである。図6に示すような本体部に検体を浮遊液に浮遊させた調製した検体試料を入れ、ろ過フィルターを備えた先端部を取り付ける。ろ過フィルターを通して検体試料をろ過し、ろ液をメンブレンアッセイ装置に滴下する。本体部がポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のフレキシブルな材質からなる場合、ろ過フィルターを取り付け、内部に検体試料を入れた状態で、手などにより内部に圧力を加えることで、容易に検体試料をろ過することができるため、好ましい。
(被検出物)
本発明でいう被検出物にはインフルエンザウイルス、RSウイルス、アデノウイルス、A群溶連菌、肺炎マイコプラズマ、下痢症の原因微生物、例えばノロウイルス、ロタウイルス、サポウイルス、下痢症アデノウイルス等の病原微生物若しくは該病原微生物由来のタンパク質等の物質又はそれらに対する抗体、ペプチドホルモン、ステロイド、生理活性アミン類、ビタミン類、プロスタングランジン類、テトラサイクリン等の抗生物質、細菌等が産生する毒素、各種腫瘍マーカー、農薬、及び病原微生物に由来する核酸成分に相補的なヌクレオチド等を挙げることができる。上記の病原微生物若しくは該病原微生物由来のタンパク質等の物質又はそれらに対する抗体等を非検出物として用いる場合、特にインフルエンザウイルス、RS(Respiratory Syncytial)ウイルス、アデノウイルス、A群溶連菌、肺炎マイコプラズマ、ロタウイルス及びノロウイルス等のように、大流行し、ごく短時間に特定する必要がある病原体の診断に、極めて有用である。
本発明の検査方法により分析するための検体は、咽頭拭い液、鼻腔拭い液、鼻腔吸引液、肺胞洗浄液、便懸濁液、血漿、血清、尿、唾液、羊水、髄液、膿、臓器抽出液、各種組織抽出液等の生体試料、食品抽出液、培養上清、上水、下水、湖水、河川水、海水、土壌抽出液、汚泥抽出液を用いることができるがこれらに限定されない。この中でも、特に生体試料を検体とした場合に有用であり、咽頭拭い液、鼻腔拭い液、鼻腔吸引液、鼻腔洗浄液、肺胞洗浄液、直腸拭い液又は便懸濁液を検体とした場合に極めて有用である。生体試料はヒト由来であっても、非ヒト動物由来であってもよい。
(捕捉物質)
被検出物を捕捉するための捕捉物質は、被検出物と、抗原抗体反応のような特異的反応により結合して、複合体を形成する物質である。従って、被検出物により使用する捕捉物質が異なることは当然であるが、一般には被検出物が細菌、ウイルス、ホルモン、その他臨床マーカー等の場合には、これらに対し特異的に反応して結合するポリクローナル抗体、モノクローナル抗体等が挙げられる。そのほか、ウイルス抗原、ウイルス中空粒子、遺伝子組換え大腸菌発現タンパク質、遺伝子組換え酵母発現タンパク質等が挙げられる。このような捕捉物質を上述したメンブレン表面に結合させる方法としては、物理的吸着であってもよく、又は化学的な結合によるものであってもよい。固相化は、タンパク質をニトロセルロースメンブレン等の固相に固相化するための公知の方法で行うことができる。捕捉物質が結合したメンブレンの調製は、例えば、捕捉物質を緩衝液等に希釈した溶液をメンブレンに吸着してその後乾燥することにより行われる。補足物質は、例えばライン状に固相化すればよい。
(検体浮遊液)
本発明において、検体浮遊液とは、患者や環境等から採取した被検出物を含む可能性がある検体を浮遊又は懸濁するための溶液であり、該検体を浮遊又は懸濁した浮遊液は検体試料としてアッセイ装置に滴下等により添加されて、アッセイに供される。
採取検体には被検出物以外にも様々な物質が含まれている。例えば、病原体感染測定のため、人から検体を採取する際には鼻腔、咽頭又は直腸より綿棒等で採取することが多いが、この検体中には患者由来の組織片や分泌物の他、被検出物である病原体の組織が含まれている場合がある。これらの一部は検体浮遊液中に凝集物として存在し、一部は検体試料中に溶解した状態で存在する。これらを含んだ状態で検体試料をアッセイ装置に添加すると、非特異反応により偽陽性が発生する場合がある。凝集物を除去するためにはアッセイ装置に添加する前にろ過用のメンブレンを通過させてろ過する方法が有効であるが、溶解物の場合、ろ過により除去することはできないので、検体浮遊液の組成を工夫する必要がある。
検体浮遊液には、通常、塩及びpHを一定に維持するための緩衝剤が含まれる。緩衝液としては、免疫学的試験に通常使用される緩衝液等を使用することができ、トリス緩衝液、リン酸緩衝液、グッドの緩衝液等が挙げられる。さらに検体浮遊液には特異的な凝集反応を阻害しない範囲で非特異反応を減じる目的で界面活性剤を含有させることが可能である。界面活性剤としては、Triton X-100(商品名):ポリエチレングリコールモノ−р−イソオクチルフェニルエーテル、Tween 20:ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、Tween 80:ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、Nonidet P-40:ノニデット P-40、ZWITTERGENT 3-14:n−テトラデシル−N,N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホネ−ト、CHAPS:3−〔(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ〕プロパンスルホン酸、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)等あるいはこれらを2種類以上混合したものを用いることができる。
検体浮遊液にはその他、非特異反応を減じる目的でウシ血清アルブミン、イムノグロブリン、カゼイン等のタンパク質、ウサギやマウス等の血清等を含有させることも可能である。
また、例えば、被検出物が細菌のように細胞壁を有し、かつ標識物質や捕捉物質の被検出物への結合部位が細菌の内部にある場合には、検体浮遊液中に検体を浮遊させただけでは結合部位が容易に外部に露出せず、検出・定量ができないことがある。その際にはNaOH等のアルカリ等の添加、中和、又は熱処理等の前処理が必要な場合もある。
上記のような工夫によっても偽陽性の発生を減じることができるが、完全に防ぐことはできない。
(検出試薬)
本明細書において、検出試薬とは、被検出物に特異的に結合し、被検出物と複合体を形成しうるものである。また、標識物質とは、被検出物と複合体を形成した後に何らかの手段で検出可能なように標識された検出試薬を意味する。例えば、被検出物がウイルス等の抗原物質である場合には、そのウイルスに対する抗体であって、酵素等で標識化された抗体が挙げられる。このように酵素で標識された場合には、該酵素により触媒される反応により、比色法、蛍光法により検出可能な物質を生成する該酵素の基質を添加することにより、複合体の検出を行うことができる。標識化される前の検出試薬としては、捕捉試薬について述べたものと同じものが挙げられる。また、標識は、酵素、蛍光発光性標識、磁性体標識、放射性同位元素、金コロイド、着色ラテックス等が挙げられる。検出試薬は、検体試料をアッセイ装置に添加した後に、アッセイ装置に添加してもよく、またあらかじめアッセイ装置に組み込んでおいてもよい。検出試薬をアッセイ装置に組み込む場合、例えば、検出試薬を含浸させて乾燥させたパッドをサンプル滴下パッドと捕捉物質を含むメンブレンの間に組み込んでおけばよい。この場合、検体試料を含む浮遊液をアッセイ装置に添加することにより、該浮遊液がアッセイ装置上を流れ、検出試薬を含むパッド部分に到達すると、検出試薬が前記浮遊液に溶解し、被検体とともにメンブレンに到達し、メンブレンの捕捉試薬との間で複合体を形成する。検出試薬を含むパッド部は、例えば、セルロース、ガラス繊維などでできた不織布等が用いられる。
酵素標識を用いる場合には、使用される酵素としては例えば、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、グルコース‐6‐リン酸脱水素酵素が挙げられる。
標識物質の標識として酵素標識を用いた場合には、通常その酵素に対する基質であって、該酵素により触媒される反応により、比色法、蛍光法により検出可能な物質を生成するものを添加する。具体例としては、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸(BCIP)/ニトロテトラゾリウムブルー(NBT)、テトラメチルベンチジン(TMB)、グルコース‐6‐リン酸NAD+が挙げられる。
(反応停止液)
本発明のキットにはさらに必要により、例えば酵素と基質との反応を停止させるための反応停止液が含まれていてもよい。このような反応停止液としては、例えば、クエン酸、硫酸等が挙げられる。
本発明の装置は、吸収パッド部を備えていてもよい。吸収パッド部は、本発明のエンザイムイムノアッセイデバイスの一端に設けられデバイスを展開する液体を吸収することによりメンブレン上の液体の流れを促進する。吸収パッド部は、多量の液を吸収できるよう、吸水性の材質でできており、例えば、セルロース、ガラス繊維などでできた不織布等が用いられる。また、その大きさは、特に限定されないが、通常、3mm〜15mm×10mm〜40mm、厚さ0.5mm〜3mm程度である。
(簡易メンブレンアッセイキット)
本発明の簡易メンブレンアッセイキットは、上述した本発明の簡易メンブレンアッセイ法に用いるキットである。本発明の簡易メンブレンアッセイキットは少なくとも以下の(i)及び(ii)を含む。
(i) 強剛性フィルターを含むフィルターにより構成されるろ過フィルター、及び
(ii) 被検出物を捕捉するための捕捉物質が結合したメンブレンを備えたアッセイ装置。
上記ろ過フィルターは、さらに上述した検体試料用ろ過チューブに取り付けられていることが好ましい。
キットは必要により綿棒等の検体採取器具を含んでいてもよい。検体採取器具としては、ブラシ状綿棒が好ましい。
キットはさらに必要により、検体浮遊液、洗浄液組成物、及び/又は標識物質を含んでいてもよい。洗浄液組成物は、生理食塩水、トリス緩衝液、リン酸緩衝液、グッドの緩衝液等を用いることができ、さらに、塩化ナトリウム、界面活性剤、ウシ血清アルブミン、アジ化ナトリウム等を適宜加えてもよい。また、標識物質の標識が酵素標識である場合には、後述する酵素の基質、反応停止液等を含むことができる。
また、必要に応じて、キットの活性を検査するためのバッファーのみからなる陰性コントロール液、抗原性物質などの被検出物を含むバッファーからなる陽性コントロールを含んでいてもよい。
以下、本発明の実施例に基づき具体的に説明する。本発明は下記実施例に限定されるものではない。
[実施例1]ラテラルフロー式イムノクロマトアッセイによる鼻腔吸引液中のインフルエンザウイルス及びRSウイルスの検出1
1.モノクローナル抗体の作製
(1)抗A型インフルエンザウイルスNP(Nucleoprotein;核蛋白)モノクローナル抗体(マウス)の作製
精製A型インフルエンザウイルス抗原を免疫し、一定期間維持したBALB/cマウスから脾臓を摘出し、ケラーらの方法(Kohler et al., Nature, vol, 256, p495-497(1975))によりマウスミエローマ細胞(P3×63)と融合した。
得られた融合細胞(ハイブリドーマ)を、37℃インキュベーター中で維持し、A型インフルエンザウイルスNP抗原固相プレートを用いたELISAにより上清の抗体活性を確認しながら細胞の純化(単クローン化)を行った。
取得した該細胞2株をそれぞれプリスタン処理したBALB/cマウスに腹腔投与し、約2週間後、抗体含有腹水を採取した。得られた腹水をそれぞれProteinAカラムクロマトグラフィー(アマシャム社製)を用いたアフィニティ精製によってIgGを精製し、2種類の精製抗A型インフルエンザウイルスNPモノクローナル抗体を得た。
(2)抗B型インフルエンザウイルスNPモノクローナル抗体(マウス)
精製B型インフルエンザウイルス抗原を免疫し、一定期間維持したBALB/cマウスから脾臓を摘出し、ケラーらの方法(Kohler et al., Nature, vol.256, p495-497(1975))によりマウスミエローマ細胞(P3×63)と融合した。得られた融合細胞(ハイブリドーマ)は、37℃下にてインキュベーター中で維持し、B型インフルエンザウイルスNP抗原固相プレートを用いたELISAにより上清の抗体活性を確認しながら細胞の純化(単クローン化)を行った。取得した該細胞2株をそれぞれプリスタン処理したBALB/cマウスに腹腔投与し、約2週間後、抗体含有腹水を採取した。得られた腹水からProteinAカラムクロマトグラフィー(アマシャム社製)によってIgGを精製し、2種類の精製抗B型インフルエンザウイルスNPモノクローナル抗体を得た。
(3)RSウイルスFPモノクローナル抗体(マウス)
ヒトRSウイルスのFP(Fusion Protein)のアミノ酸配列の一部を合成したポリペプチドを免役し、一定期間維持したBALB/cマウスから脾臓を摘出し、ケラーらの方法(Kohler et al., Nature, vol, 256, p495-497(1975))によりマウスミエローマ細胞(P3×63)と融合した。
得られた融合細胞(ハイブリドーマ)を、37℃インキュベーター中で維持し、RSウイルスFP抗原固相プレートを用いたELISAにより上清の抗体活性を確認しながら細胞の純化(単クローン化)を行った。
取得した該細胞2株をそれぞれプリスタン処理したBALB/cマウスに腹腔投与し、約2週間後、抗体含有腹水を採取した。得られた腹水をそれぞれProteinAカラムクロマトグラフィー(アマシャム社製)を用いたアフィニティ精製によってIgGを精製し、2種類の精製抗RSウイルスFPモノクローナル抗体を得た。
2.標識抗インフルエンザウイルス抗体(標識物質)の作製
(1)ラテックス粒子標識抗A型インフルエンザウイルス抗体の調製
抗A型インフルエンザウイルスNPモノクローナル抗体のうち1種類を50mM MES(2-Morpholinoethanesulfonic acid, monohydrate;同仁化学社)緩衝液(pH6.0)溶液で透析後、O.D.280nm=0.5になるように同じ緩衝液で希釈した溶液を10mL調製した。次に10(W/V)%赤色ポリスチレンラテックス粒子(粒径0.45μm、表面官能基はカルボキシル基、官能基密度65Å2/COOH基;Magsphere社)と液量比40:1になるように混合し、反応させた。次に、1(W/V)%のEDAC(N-(3-Dimethlaminopropyl)-N'-ethylcarbodiimide hydrochloride;Sigma社)を最終濃度0.1%になるように添加した後、2時間反応させた。洗浄後、最終浮遊液(5mMTris, 0.04(W/V)% BSA(ウシ血清アルブミン), 0.4Mトレハロース, 0.2(V/V)% TritonX-100)20mL中に浮遊し、超音波分散装置(オリンパス社)にかけ、ラテックス粒子を分散させた。
(2)ラテックス粒子標識抗B型インフルエンザウイルス抗体の調製
抗B型インフルエンザウイルスNPモノクローナル抗体のうち1種類を50mM MES(2-Morpholinoethanesulfonic acid,monohydrate;同仁化学社)緩衝液(pH6.0)溶液で透析後、O.D.280nm=0.5になるように同じ緩衝液で希釈した溶液を10mL調製した。次に10(W/V)%青色ポリスチレンラテックス粒子(粒径0.45μm, 表面官能基はカルボキシル基, 官能基密度65Å2/COOH基;Magsphere社)と液量比40:1になるように混合し、反応させた。次に、1(W/V)%のEDAC(N-(3-Dimethlaminopropyl)-N'-ethylcarbodiimide hydrochloride;Sigma社)を最終濃度0.1%になるように添加した後、2時間反応させた。洗浄後、最終浮遊液(5mMTris, 0.04(W/V)% BSA(ウシ血清アルブミン), 0.4Mトレハロース,0.2(V/V)% TritonX-100)20mL中に浮遊し、超音波分散装置(オリンパス社)にかけ、ラテックス粒子を分散させた。
(3)ラテックス粒子標識抗RSウイルス抗体の調製
抗RSウイルスFPモノクローナル抗体のうち1種類を50mM MES緩衝液(pH6.0)溶液で透析後、O.D.280nm=0.5になるように同じ緩衝液で希釈した溶液を10mL調製した。次に10(W/V)%緑色ポリスチレンラテックス粒子(粒径0.49μm, 表面官能基はカルボキシル基, 官能基密度69Å2/COOH基;メルク社)と液量比40:1になるように混合し、反応させた。次に、1(W/V)%のEDAC(N-(3-Dimethlaminopropyl)-N'-ethylcarbodiimide hydrochloride;Sigma社)を最終濃度0.1%になるように添加した後、2時間反応させた。洗浄後、最終浮遊液(5mMTris, 0.04(W/V)% BSA(ウシ血清アルブミン), 0.4Mトレハロース,0.2(V/V)% TritonX-100)20mL中に浮遊し、超音波分散装置(オリンパス社)にかけ、ラテックス粒子を分散させた。
3.ラテックス粒子標識抗体の乾燥化
(1)ラテックス粒子標識抗体の混合
上記2.(1)、(2)及び(3)で作製したラテックス粒子標識抗A型インフルエンザウイルス抗体、ラテックス粒子標識抗B型インフルエンザウイルス抗体及びラテックス粒子標識抗RSウイルス抗体をラテックス濃度がそれぞれ0.3(W/V)%になるように、上記2.(1)記載の最終浮遊液で希釈後、室温下にて150rpmで5分間撹拌して等量混合した。
(2)ラテックス粒子標識抗体乾燥パッドの作製
3.(1)で作製したラテックス粒子標識抗体を陽圧噴霧装置(BioJet;BioDot社)を用いて8μL/cmの塗布量でリール状に巻いた幅15mmのセルロース不織布全面に噴霧した。噴霧後、50℃の温風を1分間吹きつけて乾燥させ、ラテックス粒子標識抗体乾燥パッドを作製した。
4.メンブレン固相用抗体の調製
(1)固相用抗A型インフルエンザウイルス抗体の調製
上記1.(1)で作製した精製抗A型インフルエンザウイルスNPモノクローナル抗体のうち標識に用いなかった方を、固相液(10mM Tris-HCl(pH7.5))に透析し、透析後に0.22μmろ過を行い、O.D.280nm=4.0になるように固相液で希釈して固相用抗A型インフルエンザウイルス抗体を調製した。
(2)固相用抗B型インフルエンザウイルス抗体の調製
上記1.(2)で作製した精製抗B型インフルエンザウイルスNPモノクローナル抗体のうち標識に用いなかった方を、固相液(10mM Tris-HCl(pH7.5))に透析し、透析後に0.22μmろ過を行い、O.D.280nm=3.0になるように固相液で希釈して固相用抗B型インフルエンザウイルス抗体を調製した。
(3)固相用抗RSウイルス抗体の調製
上記1.(3)で作製した精製抗RSウイルスFPモノクローナル抗体のうち標識に用いなかった方を、固相液(10mM Tris-HCl(pH7.5),1(W/V)%トレハロース)に透析し、透析後に0.22μmろ過を行い、O.D.280nm=3.0になるように固相液で希釈して固相用抗RSウイルス抗体を調製した。
5.インフルエンザ及びRSウイルス検出用ラテラルフロー式メンブレンアッセイ装置の作製
インフルエンザ及びRSウイルス検出用ラテラルフロー式メンブレンアッセイ装置は、図1及び図2に示すものと同様の構成のものを用いた。
メンブレンは、幅3cm×長さ10cmのニトロセルロースメンブレン(孔径12μm;ワットマン社製)シート(白色)を用いた(図1及び図2のd)。その長軸側の一端(この端を上流端、反対側を下流端とする)から6mm離れたeの位置に固相用抗A型インフルエンザウイルス抗体を1μL/cmの塗布量で陽圧噴霧装置(BioJet;BioDot社)を用いて線状に塗布し、10mm離れたfの位置に固相用抗B型インフルエンザウイルス抗体を1μL/cmの塗布量で陽圧噴霧装置(BioJet;BioDot社)を用いて線状に塗布し、14mm離れたgの位置に固相用抗RSウイルス抗体を1μL/cmの塗布量で陽圧噴霧装置(BioJet;BioDot社)を用いて線状に塗布した。22mm離れたhの位置に抗マウスIgG抗体をO.D.280nm=1.0に希釈し、1μL/cmの塗布量で陽圧噴霧装置(BioJet;BioDot社)を用いて線状に塗布した。塗布後、45℃の温風を10分間吹き付けて乾燥した。
次に、部材を固定し、かつ強度を増すため、メンブレンの抗体塗布面(この面を上面とする)の反対側(この面を下面とする)にプラスチック製バッキングシート(BioDot社製)を接着した(図2のi)。
次に、上記3(2)で作製したラテックス粒子標識抗体乾燥パッド(図1及び図2のb)を幅15mm×長さ10cmに切断し、メンブレンの上面に、メンブレンの上流端が2mm重なる様に配置して貼り付け、さらに幅23mm×長さ10cmのセルロースろ紙(ワットマン社)をラテックス粒子標識抗体乾燥パッドの上面に13mm重なる様に配置して貼り付け、サンプル滴下パッド(図1及び図2のa)とした。
次に、幅30mm×長さ10cmのセルロースろ紙(ワットマン社)をメンブレンの上面に、メンブレンの下流端と5mm重なる様に配置して貼り付け、サンプル吸収パッド(図1及び図2のc)とした。
次にサンプル滴下パッドの上流端の幅5mmを除いて、上面全面を透明プラスチックラミネート(Adhesive Research社)で被覆した(図2のj)。
最後に長軸方向に沿って、5mmずつ切断し、図1及び図2に示すメンブレンアッセイ装置を作製した。
6.試料ろ過フィルターの作製
図5のnに示した様なろ過用ノズルを用意し、表1に示す部材を円形(直径0.7cm)に打ち抜き、ノズルの底面に装填し、表2に示すような構成の試料ろ過フィルターを作製した。ろ過フィルターとして2枚以上の部材を重ねた場合には底面の側から1段目、2段目、3段目と数えた。
7.インフルエンザウイルス及びRSウイルスの検出
(1)検体の採取と検体試料の調製
臨床的にインフルエンザウイルスあるいはRSウイルス感染が疑われる患者から鼻腔吸引液を採取した。まず、そのうち一部を2mLのウイルス分離用培地に浮遊し、この浮遊液を用いてRT-PCR法により検体中にインフルエンザウイルス遺伝子又はRSウイルス遺伝子が存在するかを確認した。インフルエンザウイルス遺伝子検出のためのRT-PCR法は、清水の方法(感染症学雑誌、第71巻、第6号、p522-526)で実施した。またRSウイルス遺伝子検出のためのRT-PCR方はStockton等の方法(Journal of Clinical Microbiology 、第36巻、p2990-2995、1998年)で実施した。その結果より、A型インフルエンザウイルス遺伝子が検出された鼻腔吸引液を10検体、B型インフルエンザウイルス遺伝子が検出された鼻腔吸引液を10検体、RSウイルス遺伝子が検出された鼻腔吸引液を10検体及びいずれの遺伝子も検出されなかった鼻腔吸引液を10検体それぞれ選び出し、以後の試験に用いた。
選択した鼻腔吸引液に頭部がナイロン繊維からなるブラシ状綿棒(検体採取部分の水分吸収量90μL;microRheologics社)及び軸部に綿を巻き付けて綿球を形成した頭部を有する従来型綿棒(検体採取部分の水分吸収量100μL;日本綿棒社)をそれぞれ10秒間浸した後に引き上げ、図6に示した様なチューブ内に分注した検体浮遊液(20mM MES緩衝液(pH6.0)、1(W/V)% TritonX-100、5(W/V)% アルギニン塩酸塩、1.0(W/V)%ウシ血清アルブミン)0.3mL中にそれぞれ浮遊し、検体試料を調製した。鼻腔吸引液1検体につきブラシ状綿棒3本、従来型綿棒3本を用いて検体試料を計6本調製した。
(2)メンブレンアッセイ法による検出
鼻腔吸引液1検体より調製した検体試料の入った6本のチューブの先端に6.で作製した各種の試料ろ過フィルターをそれぞれ2個ずつ装着した。検体採取に用いた綿棒の種類と試料ろ過フィルターの種類の組み合わせを表3に示した。
検体試料全量をろ過用ノズルに通過させてろ過したろ過液をチューブに集めた後、上記5.で作製したインフルエンザ及びRSウイルス検出用ラテラルフロー式メンブレンアッセイ装置のサンプル滴下パッド側を液に浸した。10分後、アッセイ装置を観察し、図1又は図2のhの位置(コントロールライン)に発色が認められた場合を有効とし、eの位置に標識に用いた着色ラテックスの色調の発色(この場合、赤色)が認められた場合にはA型インフルエンザウイルス陽性、fの位置に着色ラテックスの色調の発色(この場合、青色)が認められた場合にはB型インフルエンザウイルス陽性、gの位置に着色ラテックスの色調の発色(この場合、緑色)が認められた場合はRSウイルス陽性、いずれの位置にも発色が認められない場合は陰性と判定した。またhの位置に発色が認められない場合を無効とした。
試験の結果を表3に示す。
結果の説明
A型インフルエンザ陽性:RT-PCRにてA型インフルエンザウイルス遺伝子が検出された検体から調製された検体試料を用いてメンブレンアッセイ法にて試験した際にA型インフルエンザウイルスのみ陽性と判定された場合
B型インフルエンザ陽性:RT-PCRにてB型インフルエンザウイルス遺伝子が検出された検体から調製された検体試料を用いてメンブレンアッセイ法にて試験した際にB型インフルエンザウイルスのみ陽性と判定された場合
RS陽性:RT-PCRにてRSウイルス遺伝子が検出された検体から調製された検体試料を用いてメンブレンアッセイ法にて試験した際にRSウイルスのみ陽性と判定された場合
陰性:RT-PCRにていずれの遺伝子も検出されなかった検体から調製された検体試料を用いてメンブレンアッセイ法にて試験した際に陰性と判定された場合
非特異:試験した際にRT-PCRにて検体から遺伝子が検出されなかったウイルスがメンブレンアッセイ法にて陽性であると判定された場合(RT-PCRにて遺伝子が検出されたウイルスに加えて、遺伝子が検出されなかったウイルスもメンブレンアッセイ法にて陽性と判定された場合を含む)
無効:メンブレンアッセイ法にてhの位置に発色が認められなかった場合
簡易メンブレンアッセイにおいて焼結フィルターを含む試料ろ過フィルターで鼻腔吸引液から調製した検体試料をろ過することにより目詰まりによる無効や偽陽性を防ぎ、さらにブラシ状綿棒との組み合わせにより感度・特異性が共に高い測定が可能となることが判明した。
[実施例2]ラテラルフロー式イムノクロマトアッセイによる鼻腔吸引液中のインフルエンザウイルス及びRSウイルスの検出2
1.インフルエンザ及びRSウイルス検出用ラテラルフロー式メンブレンアッセイ装置の作製
実施例1で用いたものを使用した。
2.試料ろ過フィルターの作製
図5のnに示した様なろ過用ノズルを用意し、表4に示す部材を円形(直径0.7cm)に打ち抜き、ノズルの底面に装填し、表5に示すような構成の試料ろ過フィルターを作製した。ろ過フィルターとして2枚以上の部材を重ねた場合には底面の側から1段目、2段目、3段目と数えた。また、試料ろ過フィルターに含まれる2種類のフィルターのうち、孔径の小さいフィルターを精密ろ過用フィルターと、孔径の大きいフィルターを粗ろ過用フィルターと呼ぶ。
3.インフルエンザウイルス及びRSウイルスの検出
(1)検体の採取と検体試料の調製
実施例1で用いた鼻腔吸引液の中から、実施例1に記載の方法によりA型インフルエンザウイルス遺伝子が検出された鼻腔吸引液を10検体、B型インフルエンザウイルス遺伝子が検出された鼻腔吸引液を7検体、RSウイルス遺伝子が検出された鼻腔吸引液を10検体及びいずれの遺伝子も検出されなかった鼻腔吸引液を10検体それぞれ選び出し、以後の試験に用いた。
鼻腔吸引液に頭部がナイロン繊維からなるブラシ状綿棒を10秒間浸した後に引き上げ、図6に示した様なチューブ内に分注した検体浮遊液(20mM MES緩衝液(pH6.0)、1(W/V)% TritonX-100、5(W/V)% アルギニン塩酸塩、1.0(W/V)%ウシ血清アルブミン)0.3mL中に浮遊し、検体試料を調製した。鼻腔吸引液1検体につき6本の検体試料を調製した。
(2)メンブレンアッセイ法による検出
鼻腔吸引液1検体より調製した検体試料の入った6本のチューブの先端に上記2.で作製したA、D、E、F、G及びHの各種試料ろ過フィルターをそれぞれ1個ずつ装着し、実施例1と同じ方法で試験を実施した。
試験の結果を表6に示す。尚、結果の説明は実施例1の表3に記載したものと同じである。
D〜Hのどの試料ろ過フィルターを用いた場合でも、試料ろ過フィルターを用いない場合と比較して効果が見られたが、精密ろ過用のフィルターの孔径がメンブレンの孔径より大きかったり、粗ろ過用フィルターの孔径が200μm以上のろ過フィルターを使用した場合には、非特異や無効と判定される検体が発生した。
[実施例3] ラテラルフロー式イムノクロマトアッセイによる鼻腔拭い液中のインフルエンザウイルス及びRSウイルスの検出
1.インフルエンザ及びRSウイルス検出用ラテラルフロー式メンブレンアッセイ装置の作製
実施例1で用いたものを使用した。
2.試料ろ過フィルターの作製
実施例1及び2で作製した試料ろ過フィルターのうちA、C及びDを用いた。
3.インフルエンザウイルス及びRSウイルスの検出
(1)検体の採取と検体試料の調製
臨床的にインフルエンザウイルスあるいはRSウイルス感染が疑われる患者から頭部がナイロン繊維からなるブラシ状綿棒(検体採取部分の水分吸収量90μL;microRheologics社)を用いて鼻腔拭い液を3本、咽頭拭い液を1本採取した。まず、そのうち咽頭拭い液を2mLのウイルス分離用培地に浮遊し、この浮遊液を用いて実施例1の7.(1)記載のRT-PCR法により検体中にインフルエンザウイルス遺伝子又はRSウイルス遺伝子が存在するかを確認した。その結果より、採取した咽頭拭い液中からA型インフルエンザウイルス遺伝子が検出された患者を5人、B型インフルエンザウイルス遺伝子が検出された患者を5人、RSウイルス遺伝子が検出された患者を5人及びいずれの遺伝子も検出されなかった患者を5人選び出し、その患者から採取した鼻腔拭い液を図6に示した様なチューブ内に分注した検体浮遊液(20mM MES緩衝液(pH6.0)、1(W/V)% TritonX-100、5(W/V)% アルギニン塩酸塩、1.0(W/V)%ウシ血清アルブミン)0.3mL中にそれぞれ浮遊し、検体試料を調製した。
(2)メンブレンアッセイ法による検出
1人の患者より採取した鼻腔拭い液から調製した検体試料の入った3本のチューブの先端に2.で作製したA、C及びDの各種試料ろ過フィルターをそれぞれ1個ずつ装着し、実施例1と同じ方法で試験を実施した。
試験の結果を表7に示す。尚、結果の説明は実施例1の表3に記載したものと同じである。
簡易メンブレンアッセイにおいて鼻腔拭い液から調製した検体試料を、焼結フィルターを含む試料ろ過フィルターでろ過することにより、目詰まりによる無効や偽陽性を防ぐことが判明した。
[実施例4] ラテラルフロー式イムノクロマトアッセイによる咽頭拭い液中のインフルエンザウイルス及びRSウイルスの検出
1.インフルエンザ及びRSウイルス検出用ラテラルフロー式メンブレンアッセイ装置の作製
実施例1で用いたものを使用した。
2.試料ろ過フィルターの作製
実施例1及び2で作製した試料ろ過フィルターのうちA、C及びDを用いた。
3.インフルエンザウイルス及びRSウイルスの検出
(1)検体の採取と検体試料の調製
臨床的にインフルエンザウイルスあるいはRSウイルス感染が疑われる患者から頭部がナイロン繊維からなるブラシ状綿棒(検体採取部分の水分吸収量90μL;microRheologics社)を用いて咽頭拭い液を3本、鼻腔拭い液を1本採取した。まず、そのうち鼻腔拭い液を2mLのウイルス分離用培地に浮遊し、この浮遊液を用いて実施例1の7.(1)記載のRT-PCR法により検体中にインフルエンザウイルス遺伝子又はRSウイルス遺伝子が存在するかを確認した。その結果より、採取した咽頭拭い液中からA型インフルエンザウイルス遺伝子が検出された患者を5人、B型インフルエンザウイルス遺伝子が検出された患者を5人、RSウイルス遺伝子が検出された患者を5人及びいずれの遺伝子も検出されなかった患者を5人選び出し、その患者から採取した鼻腔拭い液を図6に示した様なチューブ内に分注した検体浮遊液(20mM MES緩衝液(pH6.0)、1(W/V)% TritonX-100、5(W/V)% アルギニン塩酸塩、1.0(W/V)%ウシ血清アルブミン)0.3mL中にそれぞれ浮遊し、検体試料を調製した。
(2)メンブレンアッセイ法による検出
1人の患者より採取した咽頭拭い液より調製した検体試料の入った3本のチューブの先端に2.で作製したA、C及びDの各種試料ろ過フィルターをそれぞれ1個ずつ装着し、実施例1と同じ方法で試験を実施した。
試験の結果を表8に示す。尚、結果の説明は実施例1の表3に記載したものと同じである。
簡易メンブレンアッセイにおいて咽頭拭い液から調製した検体試料を、焼結フィルターを含む試料ろ過フィルターでろ過することにより、目詰まりによる無効や偽陽性を防ぐことが判明した。
[実施例5] ラテラルフロー式イムノクロマトアッセイによる咽頭拭い液中のアデノウイルスの検出
1.モノクローナル抗体の作製
(1)アデノウイルスヘキソン蛋白モノクローナル抗体(マウス)
ヒトアデノウイルスのヘキソン蛋白のアミノ酸配列の一部を合成したポリペプチドを免疫し、一定期間維持したBALB/cマウスから脾臓を摘出し、ケラーらの方法(Kohler et al., Nature, vol, 256, p495-497(1975))によりマウスミエローマ細胞(P3×63)と融合した。
得られた融合細胞(ハイブリドーマ)を、37℃インキュベーター中で維持し、アデノウイルスヘキソン蛋白抗原固相プレートを用いたELISAにより上清の抗体活性を確認しながら細胞の純化(単クローン化)を行った。
取得した該細胞2株をそれぞれプリスタン処理したBALB/cマウスに腹腔投与し、約2週間後、抗体含有腹水を採取した。得られた腹水をそれぞれProteinAカラムクロマトグラフィー(アマシャム社製)を用いたアフィニティ精製によってIgGを精製し、2種類の精製抗アデノウイルスヘキソン蛋白モノクローナル抗体を得た。
2.標識抗アデノウイルスヘキソン蛋白抗体(標識物質)の作製
(1)ラテックス粒子標識抗アデノウイルスヘキソン蛋白抗体の調製
抗アデノウイルスヘキソン蛋白抗体のうち1種類を50mM MES(2-Morpholinoethanesulfonic acid,monohydrate;同仁化学社)緩衝液(pH6.0)溶液で透析後、O.D.280nm=0.5になるように同じ緩衝液で希釈した溶液を10mL調製した。次に10(W/V)%青色ポリスチレンラテックス粒子(粒径0.45μm、表面官能基はカルボキシル基、官能基密度65Å2/COOH基;Magsphere社)と液量比40:1になるように混合し、反応させた。次に、1(W/V)%のEDAC(N-(3-Dimethlaminopropyl)-N'-ethylcarbodiimide hydrochloride;Sigma社)を最終濃度0.1%になるように添加した後、2時間反応させた。洗浄後、最終浮遊液(5mM Tris, 0.04(W/V)% BSA(ウシ血清アルブミン), 0.4Mトレハロース,0.2(V/V)% TritonX-100)20mL中に浮遊し、超音波分散装置(オリンパス社)にかけ、ラテックス粒子を分散させた。
3.ラテックス粒子標識抗体の乾燥化
(1)ラテックス粒子標識抗体乾燥パッドの作製
2.で作製したラテックス粒子標識抗体を陽圧噴霧装置(BioJet;BioDot社)を用いて8μL/cmの塗布量でリール状に巻いた幅15mmのセルロース不織布全面に噴霧した。噴霧後、50℃の温風を1分間吹きつけて乾燥させ、ラテックス粒子標識抗体乾燥パッドを作製した。
4.メンブレン固相用抗体の調製
(1)固相用抗アデノウイルスヘキソン蛋白抗体の調製
上記1.(1)で作製した精製抗アデノウイルスヘキソン蛋白抗体のうち標識に用いなかった方を、固相液(10mM Tris-HCl(pH7.5))に透析し、透析後に0.22μmろ過を行い、O.D.280nm=4.0になるように固相液で希釈して固相用抗アデノウイルスヘキソン蛋白抗体を調製した。
5.アデノウイルス検出用ラテラルフロー式メンブレンアッセイ装置の作製
アデノウイルス検出用ラテラルフロー式メンブレンアッセイ装置は、図1及び図2に示すものと同様の構成のものを用いた。
メンブレンは、幅3cm×長さ10cmのニトロセルロースメンブレン(孔径12μm;ワットマン社製)シート(白色)を用いた(図1及び図2のd)。その長軸側の一端(この端を上流端、反対側を下流端とする)から6mm離れたeの位置に固相用抗アデノウイルスヘキソン蛋白抗体を1μL/cmの塗布量で陽圧噴霧装置(BioJet;BioDot社)を用いて線状に塗布し、22mm離れたhの位置に抗マウスIgG抗体をO.D.280nm=1.0に希釈し、1μL/cmの塗布量で陽圧噴霧装置(BioJet;BioDot社)を用いて線状に塗布した。fとgの位置には何も塗布しなかった。塗布後、45℃の温風を10分間吹き付けて乾燥した。
次に、部材を固定し、かつ強度を増すため、メンブレンの抗体塗布面(この面を上面とする)の反対側(この面を下面とする)にプラスチック製バッキングシート(BioDot社製)を接着した(図2のi)。
次に、上記3.で作製したラテックス粒子標識抗体乾燥パッド(図1及び図2のb)を幅15mm×長さ10cmに切断し、メンブレンの上面に、メンブレンの上流端が2mm重なる様に配置して貼り付け、さらに幅23mm×長さ10cmのセルロースろ紙(ワットマン社)をラテックス粒子標識抗体乾燥パッドの上面に13mm重なる様に配置して貼り付け、サンプル滴下パッド(図1及び図2のa)とした。
次に、幅30mm×長さ10cmのセルロースろ紙(ワットマン社)をメンブレンの上面に、メンブレンの下流端と5mm重なる様に配置して貼り付け、サンプル吸収パッド(図1及び図2のc)とした。
次にサンプル滴下パッドの上流端の幅5mmを除いて、上面全面を透明プラスチックラミネート(Adhesive Research社)で被覆した(図2のj)。
最後に長軸方向に沿って、5mmずつ切断し、図1及び図2に示すメンブレンアッセイ装置を作製した。
6.試料ろ過フィルターの作製
実施例1及び2で作製した試料ろ過フィルターのうちA、C及びDを用いた。
7.アデノウイルスの検出
(1)検体の採取と検体試料の調製
臨床的にアデノウイルス感染が疑われる患者から頭部がナイロン繊維からなるブラシ状綿棒(検体採取部分の水分吸収量90μL;microRheologics社)を用いて咽頭拭い液を4本採取した。まず、そのうち1本を2mLのウイルス分離用培地に浮遊し、この浮遊液を用いてFujimoto等の方法(Single-tube multiplex PCR for rapid and sensitive diagnosis of subgenus B and other subgenera adenovirus in clinical samples. Microbiology and Immunology. 44. 821-826, 2000)を用いたPCR法により検体中にアデノウイルス遺伝子が存在するかを確認した。その結果より、採取した咽頭拭い液中からアデノウイルス遺伝子が検出された患者を5人及びアデノウイルス遺伝子が検出されなかった患者を5人選び出し、その患者から採取した咽頭拭い液を図6に示した様なチューブ内に分注した検体浮遊液(20mM MES緩衝液(pH6.0)、1(W/V)% TritonX-100、5(W/V)% アルギニン塩酸塩、1.0(W/V)%ウシ血清アルブミン)0.3mL中にそれぞれ浮遊し、検体試料を調製した。
(2)メンブレンアッセイ法による検出
1人の患者より採取した咽頭拭い液より調製した検体試料の入った3本のチューブの先端に2.で作製したA、C及びDの各種試料ろ過フィルターをそれぞれ1個ずつ装着し、実施例1と同じ方法で試験を実施した。
試験の結果を表9に示す。10分後、アッセイ装置を観察し、図1あるいは図2のhの位置(コントロールライン)に青色の発色が認められた場合を有効とし、eの位置に青色の発色が認められた場合にアデノウイルス陽性と判定した。またhの位置に発色が認められない場合を無効とした。
結果の説明
アデノウイルス陽性:PCRにてアデノウイルス遺伝子が検出された検体から調製された検体試料を用いてメンブレンアッセイ法にて試験した際にアデノウイルス陽性と判定された場合
陰性:PCRにてアデノウイルス遺伝子が検出されなかった検体から調製された検体試料を用いてメンブレンアッセイ法にて試験した際に陰性と判定された場合
非特異:試験した際にPCRにて検体からアデノウイルス遺伝子が検出されなかった検体から調製された検体試料を用いてメンブレンアッセイ法にて試験した際にアデノウイルス陽性であると判定された場合
無効:メンブレンアッセイ法にてhの位置に発色が認められなかった場合
簡易メンブレンアッセイにおいて咽頭拭い液から調製した検体試料を、焼結フィルターを含む試料ろ過フィルターでろ過することにより、目詰まりによる無効や偽陽性を防ぐことが判明した。
[実施例6] ラテラルフロー式イムノクロマトアッセイによる直腸拭い液中のノロウイルスの検出
1.モノクローナル抗体の作製
(1)抗ノロウイルスキャプシド蛋白モノクローナル抗体(マウス)
ノロウイルスのキャプシド蛋白をコードする遺伝子を導入した組換えバキュロウイルスによるタンパク質発現によりウイルス中空粒子(VLPs)を作製した。これを免疫し、一定期間維持したBALB/cマウスから脾臓を摘出し、ケラーらの方法(Kohler et al., Nature, vol, 256, p495-497(1975))によりマウスミエローマ細胞(P3×63)と融合した。
得られた融合細胞(ハイブリドーマ)を、37℃インキュベーター中で維持し、VLPs固相プレートを用いたELISAにより上清の抗体活性を確認しながら細胞の純化(単クローン化)を行った。
取得した該細胞2株をそれぞれプリスタン処理したBALB/cマウスに腹腔投与し、約2週間後、抗体含有腹水を採取した。得られた腹水をそれぞれProteinAカラムクロマトグラフィー(アマシャム社製)を用いたアフィニティ精製によってIgGを精製し、2種類の精製抗ノロウイルスキャプシド蛋白モノクローナル抗体を得た。
2.標識抗ノロウイルスキャプシド蛋白抗体(標識物質)の作製
(1)ラテックス粒子標識抗ノロウイルスキャプシド蛋白抗体の調製
抗ノロウイルスキャプシド蛋白抗体のうち1種類を50mM MES(2-Morpholinoethanesulfonic acid,monohydrate;同仁化学社)緩衝液(pH6.0)溶液で透析後、O.D.280nm=0.5になるように同じ緩衝液で希釈した溶液を10mL調製した。次に10(W/V)%青色ポリスチレンラテックス粒子(粒径0.45μm、表面官能基はカルボキシル基、官能基密度65Å2/COOH基;Magsphere社)と液量比40:1になるように混合し、反応させた。次に、1(W/V)%のEDAC(N-(3-Dimethlaminopropyl)-N'-ethylcarbodiimide hydrochloride;Sigma社)を最終濃度0.1%になるように添加した後、2時間反応させた。洗浄後、最終浮遊液(5mM Tris, 0.04(W/V)% BSA(ウシ血清アルブミン), 0.4Mトレハロース,0.2(V/V)% TritonX-100)20mL中に浮遊し、超音波分散装置(オリンパス社)にかけ、ラテックス粒子を分散させた。
3.ラテックス粒子標識抗体の乾燥化
(1)ラテックス粒子標識抗体乾燥パッドの作製
2.で作製したラテックス粒子標識抗体を陽圧噴霧装置(BioJet;BioDot社)を用いて8μL/cmの塗布量でリール状に巻いた幅15mmのセルロース不織布全面に噴霧した。噴霧後、50℃の温風を1分間吹きつけて乾燥させ、ラテックス粒子標識抗体乾燥パッドを作製した。
4.メンブレン固相用抗体の調製
(1)固相用抗ノロウイルスキャプシド蛋白抗体の調製
上記1.(1)で作製した精製抗ノロウイルスキャプシド蛋白抗体のうち標識に用いなかった方を、固相液(10mM Tris-HCl(pH8.0))に透析し、透析後に0.22μmろ過を行い、O.D.280nm=3.0になるように固相液で希釈して固相用抗ノロウイルスキャプシド蛋白抗体を調製した。
5.ノロウイルス検出用ラテラルフロー式メンブレンアッセイ装置の作製
ノロウイルス検出用ラテラルフロー式メンブレンアッセイ装置は、図1及び図2に示すものと同様の構成のものを用いた。
メンブレンは、幅3cm×長さ10cmのニトロセルロースメンブレン(孔径12μm;ワットマン社製)シート(白色)を用いた(図1及び図2のd)。その長軸側の一端(この端を上流端、反対側を下流端とする)から6mm離れたeの位置に固相用抗ノロウイルスキャプシド蛋白抗体を1μL/cmの塗布量で陽圧噴霧装置(BioJet;BioDot社)を用いて線状に塗布し、22mm離れたhの位置に抗マウスIgG抗体をO.D.280nm=1.0に希釈し、1μL/cmの塗布量で陽圧噴霧装置(BioJet;BioDot社)を用いて線状に塗布した。fとgの位置には何も塗布しなかった。塗布後、45℃の温風を10分間吹き付けて乾燥した。
次に、部材を固定し、かつ強度を増すため、メンブレンの抗体塗布面(この面を上面とする)の反対側(この面を下面とする)にプラスチック製バッキングシート(BioDot社製)を接着した(図2のi)。
次に、上記3(2)で作製したラテックス粒子標識抗体乾燥パッド(図1及び図2のb)を幅15mm×長さ10cmに切断し、メンブレンの上面に、メンブレンの上流端が2mm重なる様に配置して貼り付け、さらに幅23mm×長さ10cmのセルロースろ紙(ワットマン社)をラテックス粒子標識抗体乾燥パッドの上面に13mm重なる様に配置して貼り付け、サンプル滴下パッド(図1及び図2のa)とした。
次に、幅30mm×長さ10cmのセルロースろ紙(ワットマン社)をメンブレンの上面に、メンブレンの下流端と5mm重なる様に配置して貼り付け、サンプル吸収パッド(図1及び図2のc)とした。
次にサンプル滴下パッドの上流端の幅5mmを除いて、上面全面を透明プラスチックラミネート(Adhesive Research社)で被覆した(図2のj)。
最後に長軸方向に沿って、5mmずつ切断し、図1及び図2に示すメンブレンアッセイ装置を作製した。
6.試料ろ過フィルターの作製
実施例1及び2で作製した試料ろ過フィルターのうちA、C及びDを用いた。
7.ノロウイルスの検出
(1)検体の採取と検体試料の調製
臨床的にノロウイルス感染が疑われる患者から頭部がナイロン繊維からなるブラシ状綿棒(検体採取部分の水分吸収量90μL;microRheologics社)を用いて直腸拭い液を4本採取した。まず、そのうち1本を2mLのウイルス分離用培地に浮遊し、この浮遊液を用いてRT-PCR法(平成15年11月5日付食安監発第1105001号厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課長通知に準拠)により検体中にノロウイルス遺伝子が存在するかを確認した。その結果より、採取した直腸拭い液中からノロウイルス遺伝子が検出された患者を5人及びノロウイルス遺伝子が検出されなかった患者を5人選び出し、その患者から採取した直腸拭い液を図6に示した様なチューブ内に分注した検体浮遊液(20mM MES緩衝液(pH6.0)、1(W/V)% TritonX-100、5(W/V)% アルギニン塩酸塩、1.0(W/V)%ウシ血清アルブミン)0.3mL中にそれぞれ浮遊し、検体試料を調製した。
(2)メンブレンアッセイ法による検出
1人の患者より採取した直腸拭い液より調製した検体試料の入った3本のチューブの先端に2.で作製したA、C及びDの各種試料ろ過フィルターをそれぞれ1個ずつ装着し、実施例1と同じ方法で試験を実施した。
試験の結果を表10に示す。10分後、アッセイ装置を観察し、図1あるいは図2のhの位置(コントロールライン)に青色の発色が認められた場合を有効とし、eの位置に青色の発色が認められた場合にノロウイルス陽性と判定した。またhの位置に発色が認められない場合を無効とした。
結果の説明
ノロウイルス陽性:RT-PCRにてノロウイルス遺伝子が検出された検体から調製された検体試料を用いてメンブレンアッセイ法にて試験した際にノロウイルス陽性と判定された場合
陰性:RT-PCRにてノロウイルス遺伝子が検出されなかった検体から調製された検体試料を用いてメンブレンアッセイ法にて試験した際に陰性と判定された場合
非特異:試験した際にRT-PCRにて検体からノロウイルス遺伝子が検出されなかった検体から調製された検体試料を用いてメンブレンアッセイ法にて試験した際にノロウイルス陽性であると判定された場合
無効:メンブレンアッセイ法にてhの位置に発色が認められなかった場合
簡易メンブレンアッセイにおいて直腸拭い液から調製した検体試料を、焼結フィルターを含む試料ろ過フィルターでろ過することにより、目詰まりによる無効や偽陽性を防ぐことが判明した。
[実施例7] ラテラルフロー式イムノクロマトアッセイによる糞便中のノロウイルスの検出
1.ノロウイルス検出用ラテラルフロー式メンブレンアッセイ装置の作製
実施例6で用いたものを使用した。
2.試料ろ過フィルターの作製
実施例1及び2で作製した試料ろ過フィルターのうちA、C及びDを用いた。
3.ノロウイルスの検出
(1)検体の採取と検体試料の調製
臨床的にノロウイルス感染が疑われる患者の糞便より頭部がナイロン繊維からなるブラシ状綿棒(検体採取部分の水分吸収量90μL;microRheologics社)を用いて検体を4本採取した。まず、そのうち1本を2mLのウイルス分離用培地に浮遊し、この浮遊液を用いてRT-PCR法(平成15年11月5日付食安監発第1105001号厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課長通知に準拠)により検体中にノロウイルス遺伝子が存在するかを確認した。その結果より、採取した糞便中からノロウイルス遺伝子が検出された患者を5人及びノロウイルス遺伝子が検出されなかった患者を5人選び出し、その患者から採取した糞便を図6に示した様なチューブ内に分注した検体浮遊液(20mM MES緩衝液(pH6.0)、1(W/V)% TritonX-100、5(W/V)% アルギニン塩酸塩、1.0(W/V)%ウシ血清アルブミン)0.3mL中にそれぞれ浮遊し、検体試料を調製した。
(2)メンブレンアッセイ法による検出
1人の患者より採取した糞便より調製した検体試料の入った3本のチューブの先端に2.で作製したA、C及びDの各種試料ろ過フィルターをそれぞれ1個ずつ装着し、実施例1と同じ方法で試験を実施した。
試験の結果を表11に示す。10分後、アッセイ装置を観察し、図1あるいは図2のhの位置(コントロールライン)に青色の発色が認められた場合を有効とし、eの位置に青色の発色が認められた場合にノロウイルス陽性と判定した。またhの位置に発色が認められない場合を無効とした。
結果の説明
実施例6と同じ。
簡易メンブレンアッセイにおいて糞便から調製した検体試料を、焼結フィルターを含む試料ろ過フィルターでろ過することにより、目詰まりによる無効や偽陽性を防ぐことが判明した。
本発明の方法及び装置は、被検体中の特定の物質の定量又は検出に用いることができ、疾患に関連した物質を測定することにより、疾患の検出・診断に利用することができる。
本発明の一実施態様であるラテラルフロー式メンブレンアッセイ装置の平面図である。 図1のI−I’切断端面図である。 従来の綿棒の一例を示す図である。 ブラシ状綿棒の一例を示す図である。 試料ろ過フィルターの一例を示す構造図である。 検体チューブの一例を示す構造図である。
a:サンプル滴下パッド
b:ラテックス粒子標識抗体乾燥パッド(標識物質乾燥パッド)
c:サンプル吸収パッド
d:ニトロセルロースメンブレン
e〜g:被検出物に特異的に結合する捕捉物質がd上でライン状に結合している位置
h:標識物質を結合することができる物質がd上でライン状に結合している位置
i:バッキングシート
j:透明プラスチックラミネート
k1:綿を巻き付けた綿球からなる検体採取部分
k2:繊維をブラシ状に配置した検体採取部分
l:軸部
m:頭部
n:ろ過用ノズル
o1〜o3:ろ過フィルター
p:検体浮遊液チューブ

Claims (17)

  1. 検体中の被検出物を捕捉するための捕捉試薬が結合したメンブレンを備えたアッセイ装置上で検体中の被検出物の存在を検出又は定量することを含む簡易メンブレンアッセイ法において、ヒト又は他の動物の咽頭拭い液、鼻腔拭い液、鼻腔吸引液、鼻腔洗浄液、肺胞洗浄液、便懸濁液及び直腸拭い液からなる群から選択される検体を採取し、採取した検体を検体浮遊液に浮遊させ試料を調製し、調製した試料を強剛性フィルターが含まれるろ過フィルターを用いて加圧ろ過することを含み、前記強剛性フィルターは、フィルター内部のろ液の流路を塞ぎ難い剛性を備えた強剛性フィルターである、簡易メンブレンアッセイ方法。
  2. フレキシブルな材質からなり検体から調製した試料をろ過することができるろ過チューブの内部に前記試料を入れた状態で、内部に圧力を加えることで、検体から調製した試料を加圧ろ過することを特徴とする請求項1記載の簡易メンブレンアッセイ方法。
  3. 強剛性フィルターが焼結フィルターである請求項1または2に記載の簡易メンブレンアッセイ方法。
  4. 焼結フィルターの素材がポリプロピレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリスチレン、四フッ化エチレン重合体及びポリメチルメタクリレートからなる群から選択される請求項3に記載の簡易メンブレンアッセイ方法。
  5. 焼結フィルターの素材がポリプロピレン製強剛性フィルターの場合のフィルターの孔径は50〜200μm、低密度ポリエチレン製強剛性フィルターの場合のフィルターの孔径は30〜70μm、高密度ポリエチレン製強剛性フィルターの場合のフィルターの孔径は10〜50μm、超高分子量ポリエチレン製強剛性フィルターの場合のフィルターの孔径は10〜20μm、ポリスチレン製強剛性フィルターの場合のフィルターの孔径は100〜200μm、四フッ化エチレン重合体製強剛性フィルターの場合のフィルターの孔径は30〜100μmである、請求項4に記載の簡易メンブレンアッセイ方法。
  6. 検体中の被検出物が呼吸器感染症の原因微生物若しくは該微生物由来の物質又はそれらに対する抗体である請求項1〜5のいずれか1項に記載の簡易メンブレンアッセイ方法。
  7. 検体中の被検出物がインフルエンザウイルス、RSウイルス、アデノウイルス、A群溶連菌及び肺炎マイコプラズマからなる群から選択される病原微生物若しくは該微生物由来の物質又はそれらに対する抗体である請求項6に記載の簡易メンブレンアッセイ方法。
  8. 検体中の被検出物が下痢症の原因微生物若しくは該微生物由来の物質又はそれらに対する抗体である請求項1〜5のいずれか1項に記載の簡易メンブレンアッセイ方法。
  9. 検体中の被検出物がノロウイルス、ロタウイルス、サポウイルス及び下痢症アデノウイルスからなる群から選択される病原微生物若しくは該微生物由来の物質又はそれらに対する抗体である請求項8に記載の簡易メンブレンアッセイ方法。
  10. フロースルー式又はラテラルフロー式メンブレンアッセイ方法である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の簡易メンブレンアッセイ方法。
  11. ろ過フィルターが孔径の異なる複数のフィルターを重ねて構成されており、最小孔径を有するフィルターの孔径が、メンブレンを備えたアッセイ装置のメンブレンの孔径以下であり、最大孔径を有するフィルターの孔径が前記メンブレンの孔径以上でありかつ200μm以下である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の簡易メンブレンアッセイ方法。
  12. 試料を最初に最大孔径を有するフィルターを通過させ、次いでより小さい孔径を有するフィルターを通過させる請求項11に記載の簡易メンブレンアッセイ方法。
  13. 以下を含む、ヒト又は他の動物の咽頭拭い液、鼻腔拭い液、鼻腔吸引液、鼻腔洗浄液、肺胞洗浄液、便懸濁液及び直腸拭い液からなる群から選択される検体中の被検出物の存在を検査するための簡易メンブレンアッセイキット;
    (1)フィルター内部のろ液の流路を塞ぎ難い剛性を備えた強剛性フィルターを含むフィルターにより構成されたろ過フィルターを備えた検体試料用加圧ろ過チューブであり、及び
    (2)検体中の被検出物を捕捉するための捕捉物質が結合したメンブレンを備えたアッセイ装置。
  14. さらに、以下の(3)から(6)の少なくとも1つを含む請求項13記載の簡易メンブレンアッセイキット;
    (3)検体浮遊液、
    (4)洗浄液組成物、
    (5)標識物質、及び
    (6)コントロール液。
  15. ろ過フィルターが孔径の異なる複数のフィルターを重ねて構成されており、最小孔径を有するフィルターの孔径が、メンブレンを備えたアッセイ装置のメンブレンの孔径以下であり、最大孔径を有するフィルターの孔径が前記メンブレンの孔径以上でありかつ200μm以下であり、強剛性フィルターが焼結フィルターであり、焼結フィルターの素材がポリプロピレン製強剛性フィルターの場合のフィルターの孔径は50〜200μm、低密度ポリエチレン製強剛性フィルターの場合のフィルターの孔径は30〜70μm、高密度ポリエチレン製強剛性フィルターの場合のフィルターの孔径は10〜50μm、超高分子量ポリエチレン製強剛性フィルターの場合のフィルターの孔径は10〜20μm、ポリスチレン製強剛性フィルターの場合のフィルターの孔径は100〜200μm、四フッ化エチレン重合体製強剛性フィルターの場合のフィルターの孔径は30〜100μmである、請求項13または14に記載の簡易メンブレンアッセイキット。
  16. 検体中の被検出物を捕捉するための捕捉試薬が結合したメンブレンを備えたアッセイ装置上で検体中の被検出物の存在を検出又は定量することを含む簡易メンブレンアッセイ法において、繊維がブラシ状に配置されたブラシ状綿棒を検体採取器具として用いて、ヒト又は他の動物の咽頭拭い液、鼻腔拭い液、鼻腔吸引液、鼻腔洗浄液、肺胞洗浄液、便懸濁液及び直腸拭い液からなる群から選択される検体を採取し、ブラシ状綿棒により採取した検体を検体浮遊液に浮遊させ試料を調製し、調製した試料を強剛性フィルターが含まれるろ過フィルターを用いて加圧ろ過することを含み、前記強剛性フィルターの厚さが、数mm〜数cmである、簡易メンブレンアッセイ方法。
  17. 以下を含む、検体中の被検出物の存在を検査するための簡易メンブレンアッセイキット;
    (1)厚さが数mm〜数cmである強剛性フィルターを含むフィルターにより構成されたろ過フィルターを備えた検体試料用加圧ろ過チューブであり、
    (2)検体中の被検出物を捕捉するための捕捉物質が結合したメンブレンを備えたアッセイ装置、及び
    (3)繊維がブラシ状に配置されたブラシ状綿棒。
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