JP6405269B2 - 簡易メンブレンアッセイ法及びキット - Google Patents

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Description

本発明はメンブレンを備えたアッセイ装置を用いる検体の検査方法に関し、特に臨床上使用し得る簡易なメンブレンアッセイ法及びこの方法に使用されるキットに関する。
最近、抗原抗体反応や酵素反応等を利用した、ウイルスや細菌等の病原体への感染、妊娠の有無、血糖値など様々な測定項目を数分から数十分の短時間で検出あるいは定量する簡易検査試薬またはキットが開発されている。病原体構成蛋白質、ヒト繊毛性ゴナドトロピン(hCG)、血糖等が検出あるいは定量の対象である。簡易検査試薬の多くは、特別な設備を必要とせず操作も簡単で安価であるという特徴を有しており、例えば、妊娠診断のための簡易検査試薬はOTCとして一般薬局で販売されている。また病原体への感染を測定する簡易検査試薬は、他の検査試薬と異なり、大病院や医療検査センター以外にも一般の病院や診療所で広く使用されている。これらの施設は患者が最初に訪れる医療機関である場合が多く、患者から採取した検体についてその場で感染の有無が判明すれば、症状が早期のうちに治療措置を施すことができるため、簡易検査試薬の医療における重要性は益々高まってきている。
現在、簡易検査方法として、メンブレンアッセイ法、特にニトロセルロース等の膜やフィルター等のメンブレンを用いたアッセイ方法が一般に知られており、フロースルー式とラテラルフロー式メンブレンアッセイ法に大別される。前者は被測定物を含む溶液を被測定物に対する検出用物質が塗布された膜を垂直方向に通過させるものであり、後者は水平方向に展開させるものである。いずれの場合も被測定物に特異的に結合する膜固相物質、被測定物、被測定物に特異的に結合する標識物質の複合体を膜上に形成させて、標識を検出あるいは定量することで、被測定物の検出あるいは定量を行うという点で共通している。
しかし、このような膜やフィルターを用いるメンブレンアッセイ法による簡易検査方法では、患者から実際に採取された検体の分析において、被測定物が検体中に存在しないにも係わらず陽性と判定してしまう、いわゆる偽陽性が生じることがある。病原体の感染を測定する際に偽陽性反応が発生すると、疾患に関して誤った情報を与えるため、原因特定を遅らせるばかりでなく、不適切な措置を講じることになり病状がより重篤になる等の重大な結果をもたらすこともあり得る。したがって偽陽性を抑えることは簡易検査方法の主要な使用目的から見て、極めて重要な課題である。従来、この問題を解決するため、検体を浮遊あるいは希釈させる緩衝液として界面活性剤を含有する緩衝液を用いたり、試料を添加する際に濾過フィルターを通すなどの工夫がなされてきたが、必ずしも満足のゆくものではなかった。
本発明の目的は、メンブレンアッセイ法を用いた検体の簡易な検査方法において、偽陽性の発生を防止し、被測定物の精度の高い検出あるいは定量を可能にする方法及びそのような方法において使用されるキットを提供することである。
メンブレンアッセイ法を用いた被測定物の検出、定量を行うにあたり、被測定物を含有する可能性がある検体試料を、濾過フィルターを通して濾過することにより、偽陽性の発生が大きく抑制されることが見出された。
すなわち本発明の課題は、被測定物を捕捉するための捕捉試薬が結合したメンブレンを備えたアッセイ装置を用いる、検体試料中の被測定物の簡易メンブレンアッセイ法であって、検体試料を濾過フィルターを用いて濾過した後にメンブレン上に滴下し、前記検体試料中の被測定物の存在を検出することを特徴とする方法、により解決される。
また、本発明の課題は、以下を含む、検体試料中の被測定物の存在を検査するための簡易メンブレンアッセイキット;
(1)濾過フィルターを備えた検体試料用濾過チューブ、及び
(2)被測定物を捕捉するための捕捉物質が結合したメンブレンを備えたアッセイ装置、により解決される。
本発明の他の実施態様は、濾過フィルターの材質が、不織布、紙、ガラス繊維、シリカ繊維、ニトロセルロース、セルロースエステル、ニトロセルロースとセルロースエステルの混合物、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、四フッ化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリアミド、ナイロン6,6、ポリエステル、コットン、ステンレススチール繊維及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれることを特徴とする、上記方法またはキットに関する。
本発明の好ましい実施態様は、上記濾過フィルターの孔径または保留粒子径が0.2〜2.0μm、特に0.2〜0.6μmである、上記方法またはキットである。
また、本発明の他の好ましい実施態様は、上記濾過フィルターが、ガラス繊維フィルター、ニトロセルロースフィルター、またはガラス繊維フィルターとニトロセルロースフィルターの組み合わせである、上記方法またはキットである。
さらに、本発明の他の好ましい実施態様は、上記メンブレンの材質が不織布、紙、ニトロセルロース、ガラス繊維、シリカ繊維、セルロースエステル、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、四フッ化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリアミド、ナイロン6,6及びセルロースエステルとニトロセルロースの混合物からなる群より選ばれること、及び前記メンブレンの孔径または保留粒子径が該濾過フィルターの孔径または保留粒子径以上でありかつ0.3〜10μmである、上記方法またはキットである。
本発明のさらに好ましい実施態様は、上記メンブレンの材質がニトロセルロースであり、かつその孔径が0.5〜7μmである、上記方法またはキットである。
また、本発明の他の好ましい実施態様は、検体試料中の被測定物がインフルエンザウイルスである、上記方法またはキットである。
また、本発明の特に好ましい実施態様は、フロースルー式またはラテラルフロー式簡易メンブレンアッセイ法に関する上記方法及びキットである。
本発明の方法により、被測定物を捕捉するための捕捉物質が結合したメンブレンを備えたアッセイ装置を用いる簡易メンブレンアッセイ法において偽陽性の発生を大きく減らすことができた。これは以下のような理由によると考えられる。被測定物を捕捉するための捕捉物質が結合したメンブレンを備えたアッセイ装置を用いる簡易メンブレンアッセイ法では、被測定物が存在すると予測される部位、例えば患者の咽頭や鼻腔等から拭い液を採取して緩衝液に浮遊したり、被測定物を含む鼻汁や尿等の分泌物や排泄物から一部を採取し、緩衝液で希釈して、メンブレンアッセイ用の試料を作製するが、この場合、前記試料中に被測定物の他、検体採取部位から剥落した細胞や分泌物、排泄物の成分等が混入することがある。このような混入物にはプロテオグルカン、糖脂質等の粘性物質をはじめ、様々な生体成分が含まれているため、前記試料をそのまま膜等のメンブレン上に添加すると、上記成分の一部がメンブレン上あるいはメンブレン中に付着すると考えられる。特にメンブレンとして孔径または保留粒子径が0.1〜10μmのものが使用されることが多いが、この孔径または保留粒子径に匹敵する大きさの成分が添加されると、メンブレン中の細孔を塞ぎ溶液中の成分の移動を阻害することが考えられる。このような現象により非特異的な反応が起こり、被測定物が検体中に存在しないにも係わらず陽性と判定してしまう、いわゆる偽陽性が起こると考えられる。本発明の方法によりこのような偽陽性を効率よく抑制することができ、信頼性の高い簡易検査方法を確立することができた。
本発明の一実施態様であるメンブレンアッセイ装置の平面図である。 図1のI−I’切断端面図である。 本発明において使用される検体試料用濾過チューブの一実施態様を示す。 図3の検体試料用濾過チューブ先端部の透視図を示す。
以下に本発明を詳しく説明する。
(簡易メンブレンアッセイ方法)
本発明の方法は、被測定物を捕捉するための捕捉物質が結合したメンブレンを備えたアッセイ装置を用いる、検体試料中の被測定物の簡易メンブレンアッセイ法であって、検体試料を濾過フィルターを用いて濾過した後に前記メンブレン上に滴下し、前記検体試料中の被測定物の存在を検出あるいは定量することを特徴とする方法である。
本明細書において“簡易メンブレンアッセイ法”とは、被測定物に特異的に結合する捕捉物質が固相化されたメンブレンを含むアッセイ装置を用いて検体試料中の被測定物の存在の有無を短時間に簡便に検査する方法である。典型的には、被測定物と、前記捕捉物質及び標識化検出試薬を反応させてサンドイッチ状の複合体をメンブレン上に形成させ、前記標識物を検出することによりこの複合体の存在を検出する方法である。被測定物と前記捕捉物質及び標識化検出試薬との反応としては、抗原抗体反応、その他の受容体とレセプターの反応、ビオチンとアビジンの特異的結合反応、相補的配列を持つDNA同士の反応等が挙げられる。また、本発明の簡易検査方法は、このような方法に用いるものであれば、被測定物、メンブレン、標識物の種類について限定されるものではない。
本発明のメンブレンアッセイ法は、2種類のメンブレンアッセイ法、すなわちフロースルー式メンブレンアッセイ法またはラテラルフロー式メンブレンアッセイ法を利用するものであることが、簡便かつ迅速であるため好ましい。フロースルー式メンブレンアッセイ法は被測定物を含む溶液を、被測定物と特異的に結合する捕捉試薬や検出用物質が塗布されたメンブレンに対して垂直方向に通過させるものであり、被測定物に特異的に結合する捕捉物質、被測定物、被測定物に特異的に結合する標識物質の複合体を膜上に形成させて、標識を検出あるいは定量することで、被測定物の検出あるいは定量を行う。ラテラルフロー式メンブレンアッセイ法は、同様なメンブレンを用いて、メンブレンに対して被測定物を含む溶液を水平方向に展開させる点でフロースルー式メンブレンアッセイ法と異なるが、被測定物の検出原理は同様である。
以下に、本発明の方法についてより具体的な手順の一例を示し、本発明を説明する。
(1)ウイルスや細菌等に感染した患者の咽頭あるいは鼻腔等から採取した検体試料を後述するような検体浮遊液に浮遊させる。
(2)この浮遊液を、濾過フィルターを備えた検体試料用濾過チューブ中にいれて濾過する。
(3)この濾過液を、メンブレンを備えたアッセイ装置中の被測定物に特異的に結合して被測定物を捕捉する捕捉試薬が結合したメンブレンに滴下して、被測定物をメンブレン上に捕捉させる。
(4)前記メンブレン上に、被測定物に特異的に結合する標識化検出試薬を滴下し、捕捉試薬/被測定物/標識化検出試薬の複合体を形成させる。
(5)前記複合体中の標識化検出試薬により、複合体の存在を検出することにより、検体試料中の被測定物の有無を測定する。
(濾過フィルター)
本発明の方法において、患者から採取した検体試料は検体浮遊液に浮遊させた後、濾過フィルターを用いて濾過される。濾過フィルターの孔径(直径)または保留粒子径は0.2〜2.0μm、好ましくは0.2〜0.6μmである。濾過フィルターの孔径あるいは保留粒子径は、本発明の効果において重要である。孔径あるいは保留粒子径が大きすぎると、メンブレン上で非特異的結合が起こって偽陽性を示す場合がある。逆に小さすぎると試料中に存在する粘性物や凝集物のためにフィルター自身が詰まってしまい濾過が不可能であるか、あるいはフィルター面積をかなり広くしなければならず、簡易検査方法に用いるという目的から見て不適切である。従って、本発明の濾過フィルターの孔径あるいは保留粒子径の範囲は0.2〜2.0μmであり、0.2〜0.6μmの範囲のものがより好ましい。
濾過フィルターは1種類だけではなく、材質の異なるもの、孔径あるいは保留粒子径の異なるものをいくつか組み合わせても良い。その場合、フィルターを構成するもののうち、最も小さな孔径あるいは保留粒子径のものが、そのフィルターの孔径あるいは保留粒子径となる。したがって組み合わせのうち、一つでも孔径あるいは保留粒子径が0.2〜2.0μmの範囲にあれば、他のものがその範囲を越えていたとしても問題はない。
また、同じフィルターを2枚以上組み合わせることにより孔径または保留粒子径にばらつきのあるフィルターを使用しても一定の効果を得ることができるという利点が得られる。さらに強度的に不十分なフィルターを用いる場合に、2枚以上重ねてフィルターの強度を上げることも出来る。しかし、フィルターの種類によっては複数枚重ねることによりフィルターが詰まりやすくなり、濾過するための圧力が大きくなり、簡便性が損なわれるという欠点も有する。
濾過フィルターの材質は、不織布、紙、ガラス繊維、シリカ繊維、ニトロセルロース、セルロースエステル、ニトロセルロースとセルロースエステルの混合物、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、四フッ化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリアミド、ナイロン6,6、ポリエステル、コットン、ステンレススチール繊維等が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくはガラス繊維とニトロセルロースである。
一般に濾過フィルターは、捕集機構上、デプスフィルターとスクリーンフィルターに分かれる。デプスフィルターはフィルター内部で固形物を捕集するものであり、スクリーンフィルターはフィルター表面で固形物を捕集するものであるが、どちらの機構のものでも好適に用いることができる。
(濾過チューブ)
上記濾過フィルターは、本発明の簡易メンブレンアッセイ法またはキットにおいて、検体試料用濾過チューブの先端に取り付けて使用されることが好ましい。すなわち、濾過チューブ中に浮遊液に浮遊させた検体試料をいれて、先端に取り付けた濾過フィルターを通して濾過し、濾液をメンブレンアッセイ装置中のメンブレンに滴下する方法が簡便であり、好ましい。この濾過チューブの一実施態様の模式図を図3及び図4に示す。濾過チューブは例えば図3に記載されるように先端部と本体部からなる形状であり、先端部の内部に図4に示されるように濾過フィルターが備えつけられている。本体部に浮遊液に浮遊させた検体試料を入れ、本体部に濾過フィルターを備えた先端部を取り付ける。濾過フィルターを通して検体試料を濾過し、濾液をメンブレンアッセイ装置に滴下する。本体部がポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のフレキシブルな材質からなると、濾過フィルターを取り付けた状態で、手などにより内部に圧力を加えることで、容易に検体試料を濾過することができるため、好ましい。
(アッセイ装置)
本明細書にいうメンブレンを備えたアッセイ装置(メンブレンアッセイ装置ともいう)とは、被測定物に特異的に結合する捕捉物質が固相化されたメンブレンを含む装置である。このようなアッセイ装置としては、フロースルー式メンブレンアッセイ法またはラテラルフロー式メンブレンアッセイ法を利用する装置であることが好ましい。フロースルー式メンブレンアッセイ法を利用するアッセイ装置の具体例は、例えば図1及び2に示されるような装置である。
図1は装置の平面図であり、図2は、図1のI−I’切断端面図である。図1及び2において、aは、調製した検体試料を滴下する開口部を有し、底面部に試料が通過するための穴(Aホール及びBホール)を備えたアダプターである。bは被測定物に特異的に結合する捕捉物質が結合したメンブレンであり、cは液体を吸収する部材である。
(メンブレン)
メンブレンアッセイ装置中のメンブレンの材質としては、不織布、紙、ニトロセルロース、ガラス繊維、シリカ繊維、セルロースエステル、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、四フッ化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリアミド、ナイロン6,6及びセルロースエステルとニトロセルロースの混合物からなる群が挙げられ、特に好ましくはニトロセルロースから作られた微多孔質物質が挙げられる。また、前記セルロースエステルとニトロセルロースの混合物も好適に用いることができる。上記メンブレンの孔径あるいは保留粒子径は濾過フィルターの孔径または保留粒子径以上でありかつ0.3〜10μmであることが好ましく、0.5〜7μmが特に好ましい。また、メンブレンの厚さは特に限定されないが、通常、100〜200μm程度である。
(被測定物)
本明細書にいう被測定物にはインフルエンザウイルス、アデノウイルス、RSウイルス、HAV、HBc、HCV、HIV、EBV、ノーウォーク様ウイルス等のウイルス抗原、クラミジア・トラコマティス、溶連菌、百日咳菌、ヘリコバクター・ピロリ、レプトスピラ、トレポネーマ・パリダム、トキソプラズマ・ゴンディ、ボレリア、炭疽菌、MRSA等の細菌抗原、マイコプラズマ脂質抗原、ヒト繊毛性ゴナドトロピン等のペプチドホルモン、ステロイドホルモン等のステロイド、エピネフリンやモルヒネ等の生理活性アミン類、ビタミンB類等のビタミン類、プロスタングランジン類、テトラサイクリン等の抗生物質、細菌等が産生する毒素、各種腫瘍マーカー、農薬、抗大腸菌抗体、抗サルモネラ抗体、抗ブドウ球菌抗体、抗カンピロバクター抗体、抗ウェルシュ菌抗体、抗腸炎ビブリオ菌抗体、抗ベロトキシン抗体、抗ヒトトランスフェリン抗体、抗ヒトアルブミン抗体、抗ヒト免疫グロブリン抗体、抗マイクログロブリン抗体、抗CRP抗体、抗トロポニン抗体、抗HCG抗体、抗クラミジア・トラコマティス抗体、抗ストレプトリジンO抗体、抗ヘリコバクター・ピロリ抗体、抗β-グルカン抗体、抗HBe抗体、抗HBs抗体、抗アデノウイルス抗体、抗HIV抗体、抗ロタウイルス抗体、抗インフルエンザウイルス抗体、抗パルボウイルス抗体、抗RSウイルス抗体、抗RF抗体、病原微生物に由来する核酸成分に相補的なヌクレオチド等を挙げることができるが、これらに限定されない。
本発明の検査方法により分析するための検体試料は、咽頭あるいは鼻腔拭い液を適当な緩衝液中に浮遊させた溶液、鼻腔吸引液、便懸濁液、血漿、血清、尿、唾液、羊水、髄液、膿、臓器抽出液、各種組織抽出液等の生体試料、食品抽出液、培養上清、上水、下水、湖水、河川水、海水、土壌抽出液、汚泥抽出液及びそれらを適当な緩衝液で希釈した溶液を用いることができるがこれらに限定されない。また前記緩衝液には0.01〜20質量%の界面活性剤を含有させることができる。界面活性剤としては、TritonX−100:ポリエチレングリコールモノ−р−イソオクチルフェニルエーテル(ナカライテスク(株))、Tween20:ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(ナカライテスク(株))、Tween80:ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(ナカライテスク(株))、NP−40:ノニデット P−40(ナカライテスク(株))、Zwittergent:Zwittergent 3−14(カルビオケム(株))、SDS:ドデシル硫酸ナトリウム(ナカライテスク(株))、CHAPS:3−〔(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ〕プロパンスルホン酸(同仁化学(株))等あるいはこれらを2種類以上混合したものを用いることができるが、これらに限定されない。
(捕捉物質)
被測定物を捕捉するための捕捉物質は、被測定物と、抗原抗体反応のような特異的反応により結合して、複合体を形成する物質である。従って、被測定物により使用する捕捉物質が異なることは当然であるが、一般には被測定物が細菌、ウイルス、ホルモン、その他臨床マーカー等の場合には、これらに対し特異的に反応して結合するポリクローナル抗体、モノクローナル抗体等が挙げられる。そのほか、ウイルス抗原、ウイルス中空粒子、遺伝子組換え大腸菌発現タンパク質、遺伝子組換え酵母発現タンパク質等が挙げられる。このような捕捉物質を上述したメンブレン表面に結合させる方法としては、物理的吸着であってもよく、または化学的な結合によるものであってもよい。捕捉物質が結合したメンブレンの調製は、例えば、捕捉物質を緩衝液等に希釈した溶液をメンブレンに吸着してその後乾燥することにより行われる。
(簡易メンブレンアッセイキット)
本発明の簡易メンブレンアッセイキットは、上述した本発明の簡易メンブレンアッセイ法に用いるキットである。本発明の簡易メンブレンアッセイキットは少なくとも以下の(i)及び(ii)を含む。
(i)濾過フィルター、及び
(ii)被測定物を捕捉するための捕捉物質が結合したメンブレンを備えたアッセイ装置。
上記濾過フィルターは、さらに上述した検体試料用濾過チューブに取り付けられていることが好ましい。
キットはさらに必要により、検体浮遊液、洗浄液組成物、および/または標識化検出試薬を含んでいてもよい。また、標識化検出試薬の標識が酵素標識である場合には、後述する酵素の基質、反応停止液等を含むことができる。
また、必要に応じて、キットの活性を検査するためのバッファーのみからなる陰性コントロール液、抗原性物質などの被測定物を含むバッファーからなる陽性コントロールを含んでいてもよい。さらに、滅菌綿棒等の検体採取器具を含んでいてもよい。
(検体浮遊液)
検体は、例えば患者の咽頭・鼻腔等から滅菌綿棒等の検体採取器具を使用して採取するか、または鼻腔吸引液等を用いることができるが、このようにして得られた検体は、通常検体浮遊液に浮遊させてアッセイを行う。検体浮遊液としては、免疫拡散法、酵素免疫測定法、凝集法等の免疫学的手法による試料検出または定量法において通常使用されるバッファー類等を使用することができる。
より具体的には、生理食塩水、リン酸緩衝性生理食塩水(PBS)、ゼラチン添加PBS、ウシ血清アルブミン(BSA)添加PBS、グッドの緩衝液、子牛インフュージョンブロス(VIB)、ハートインフュージョンブロス、イーグルの最小必須培地(EMEM)、BSA添加EMEMなどが挙げられるがこの限りではない。また、上記バッファー類は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
また、さらに上記組成に加えて、塩基性アミノ酸、無機塩類および/または界面活性剤を添加することもできる。塩基性アミノ酸、無機塩類および界面活性剤の少なくとも二種類を含む検体浮遊液を使用することにより、検体中に含まれる被測定物以外の成分の、メンブレン自体への結合やメンブレン上の捕捉物質への非特異的な結合を軽減させることができ好ましい。
(検出試薬)
本明細書において、検出試薬とは、被測定物に特異的に結合し、被測定物と複合体を形成しうるものである。また、標識化検出試薬とは、被測定物と複合体を形成した後に何らかの手段で検出可能なように標識された検出試薬を意味する。例えば、被測定物がウイルス等の抗原物質である場合には、そのウイルスに対する抗体であって、酵素等で標識化された抗体が挙げられる。このように酵素で標識された場合には、該酵素により触媒される反応により、比色法、蛍光法により検出可能な物質を生成する該酵素の基質を添加することにより、複合体の検出を行うことができる。標識化される前の検出試薬としては、捕捉試薬について述べたものと同じものが挙げられる。また、標識は、酵素、蛍光発光性標識、磁性体標識、放射性同位元素、金コロイド、着色ラテックス等が挙げられる。
酵素標識を用いる場合には、使用される酵素としては例えば、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、グルコース‐6‐リン酸脱水素酵素が挙げられる。
(基質)
標識化検出試薬の標識として酵素標識を用いた場合には、通常その酵素に対する基質であって、該酵素により触媒される反応により、比色法、蛍光法により検出可能な物質を生成するものを添加する。具体例としては、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸(BCIP)/ニトロテトラゾリウムブルー(NBT)、テトラメチルベンチジン(TMB)、グルコース‐6‐リン酸NAD+が挙げられる。
(反応停止液)
本発明のキットにはさらに必要により、例えば酵素と基質との反応を停止させるための反応停止液が含まれていてもよい。このような反応停止液としては、例えば、クエン酸、硫酸等が挙げられる。
[実施例1]
1.モノクローナル抗体の作製
(1)抗A型インフルエンザウイルスNPモノクローナル抗体(マウス)の作製
精製A型インフルエンザウイルス抗原を免疫し、一定期間維持したBALB/cマウスから脾臓を摘出し、ケラーらの方法(Kohler et al., Nature, vol, 256, p495-497(1975))によりマウスミエローマ細胞(P3×63)と融合した。
得られた融合細胞(ハイブリドーマ)を、37℃インキュベーター中で維持し、A型インフルエンザウイルスNP抗原固相プレートを用いたELISAにより上清の抗体活性を確認しながら細胞の純化(単クローン化)を行った。
取得した該細胞2株をそれぞれプリスタン処理したBALB/cマウスに腹腔投与し、約2週間後、抗体含有腹水を採取した。得られた腹水からそれぞれ硫安分画法によってIgGを精製し、2種類の精製抗A型インフルエンザウイルスNPモノクローナル抗体を得た。
(2)抗B型インフルエンザウイルスNPモノクローナル抗体(マウス)
精製B型インフルエンザウイルス抗原を免疫し、一定期間維持したBALB/cマウスから脾臓を摘出し、ケラーらの方法(Kohler et al., Nature, vol.256, p495-497(1975))によりマウスミエローマ細胞(P3×63)と融合した。得られた融合細胞(ハイブリドーマ)は、37℃でインキュベーター中で維持し、B型インフルエンザウイルスNP抗原固相プレートを用いたELISAにより上清の抗体活性を確認しながら細胞の純化(単クローン化)を行った。取得した該細胞2株をそれぞれプリスタン処理したBALB/cマウスに腹腔投与し、約2週間後、抗体含有腹水を採取した。得られた腹水から硫安分画法によってIgGを精製し、2種類の精製抗B型インフルエンザウイルスNPモノクローナル抗体を得た。
2.標識抗インフルエンザ抗体液の作製
(1)標識抗A型インフルエンザ抗体液の作製
精製抗A型インフルエンザウイルスNPモノクローナル抗体のうち1種類について20mgを0.1M酢酸緩衝液(pH3.8)で透析後、ペプシン10mgを添加し、37℃で1時間、Fab’消化処理を行った。処理液をウルトロゲルAcA44カラムで分画して抗A型インフルエンザF(ab’)2精製画分を得た。前記画分を約10mg/mLまで濃縮後、0.1Mメルカプトエチルアミンと10:1の体積比で混合し、37℃で90分間還元処理を行った。処理液をウルトロゲルAcA44カラムで分画して抗A型インフルエンザFab’精製画分を得た後、約1mLにまで濃縮した。
10mg/mLのアルカリフォスファターゼ1.5mLを50mMホウ酸緩衝液(50mMホウ酸(pH7.6)、1mM塩化マグネシウム、0.1mM塩化亜鉛)に透析後、N−(6−マレイミドカプロイルオキシ)スクシンイミド(EMCS;同仁化学(株))0.7mgを添加し、30℃で1時間処理した。処理後の溶液をセファデックスG−25カラムで分画し、最初のピークを回収してマレイミド−アルカリフォスファターゼを得た後、約1mLにまで濃縮した。
濃縮した抗A型インフルエンザFab’とマレイミド−アルカリフォスファターゼを1:2.3の蛋白比で混合し、4℃で20時間穏やかに撹拌して反応させ、アルカリフォスファターゼ標識抗A型インフルエンザFab’を得た。反応液をウルトロゲルAcA44カラムで分画し、未反応物を除去して精製アルカリフォスファターゼ標識Fab’を得た。
精製アルカリフォスファターゼ標識Fab’を4.5(W/V)%ウシ血清アルブミン、5.25(W/V)%ポリエチレングリコール6000、10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.4)、150mM塩化ナトリウム、1.5(W/V)%TritonX−100、1.5mM塩化マグネシウム、0.15mM塩化亜鉛の組成を有する標識抗体希釈液で1.0μg/mLに希釈した後、0.22μm孔径の濾過フィルターで濾過し、標識抗A型インフルエンザ抗体液を得た。
(2)標識抗B型インフルエンザ抗体液の作製
精製抗B型インフルエンザウイルス抗体のうち1種類について20mgを0.1M酢酸緩衝液(pH3.8)で透析後、ペプシン10mgを添加し、37℃1時間でFab’消化処理を行った。処理液をウルトロゲルAcA44カラムで分画して抗B型インフルエンザF(ab’)2精製画分を得た。前記画分を約10mg/mLまで濃縮後、0.1Mメルカプトエチルアミンと10:1の体積比で混合し、37℃で90分間還元処理した。処理液をウルトロゲルAcA44カラムで分画して抗B型インフルエンザFab’精製画分を得た後、約1mLになるまで濃縮した。
濃縮した抗B型インフルエンザFab’と2−(1)で作製したマレイミド−アルカリフォスファターゼを1:2.3の蛋白比で混合し、4℃、20時間で穏やかに撹拌して反応させ、アルカリフォスファターゼ標識抗B型インフルエンザFab’を得た。反応液をウルトロゲルAcA44カラムで分画し、未反応物を除去して精製アルカリフォスファターゼ標識Fab’を得た。
精製アルカリフォスファターゼ標識Fab’を4.5(W/V)%ウシ血清アルブミン、5.25(W/V)%ポリエチレングリコール6000、10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.4)、150mM塩化ナトリウム、1.5(W/V)%TritonX−100、1.5mM塩化マグネシウム、0.15mM塩化亜鉛の組成を有する標識抗体希釈液で1.0μg/mLに希釈した後、0.22μm孔径の濾過フィルターで濾過し、標識抗B型インフルエンザ抗体液を得た。
3.インフルエンザウイルス検出用メンブレンアッセイ装置の作製
インフルエンザウイルス検出用メンブレンアッセイ装置は、図1及び図2に示すものと同様の構成のものを用いた。メンブレンは、孔径3μmを有するニトロセルロースメンブレン(サイズ2×3cm、厚さ125μm)を用いた。
メンブレンへの固相は、2種の抗体溶液をニトロセルロースメンブランヘスポットして行った。装置のAホールには精製抗A型インフルエンザウイルスNPモノクローナル抗体のうち標識に用いなかったもの0.2mg/mLが含まれる溶液を12μL、Bホールには精製抗B型インフルエンザウイルスNPモノクローナル抗体のうち標識に用いなかったもの1mg/mLが含まれる溶液12μLを0.22μm孔径の濾過フィルターで濾過し、それぞれスポットした。抗体を希釈する緩衝液は10mMクエン酸緩衝液(pH4.0)を用いた。スポット後、45℃の乾燥室で40分間乾燥を行い、インフルエンザウイルス検出用メンブレンアッセイ装置を作製した。
4.インフルエンザウイルスの検出
(1)メンブレンアッセイ法による検出
臨床的にインフルエンザウイルス感染が疑われる患者115人の鼻腔より滅菌綿棒を用いて拭い液を採取し、50mMリン酸緩衝液(pH7.0)、1.5M塩化ナトリウム、1(W/V)%TritonX−100、0.5(W/V)%ウシ血清アルブミンの組成を有する溶液1.5mL中に浮遊し、試験用試料を作製した。試験用試料をよく懸濁させた後、3つの検体試料用濾過チューブに400μLずつ三等分し、それぞれのチューブの先端に下記の3種類のノズルを装着した。ノズル(I)には2枚の孔径(保留粒子径)0.67μmのガラス繊維の間に孔径0.45μmのニトロセルロースメンブレンを挟んだフィルターを装填し、ノズル(II)には孔径(保留粒子径)0.67μmのガラス繊維を3枚重ねにしたフィルターを装填し、ノズル(III)にはフィルターを装填しなかった。
検体試料を各ノズルを通過して濾過した後、3.で作成したメンブレンアッセイ装置のAホールとBホールにそれぞれ150μLずつ滴加し、ニトロセルロースメンブレンの下部に備えられた液体吸収部材に試料が完全に吸収されるまで放置した。次にAホールには標識抗A型インフルエンザ抗体液を、Bホールには標識抗B型インフルエンザ抗体液を、それぞれ180μLずつ滴加後、前記抗体液が液体吸収部材に完全に吸収されるまで放置した。次にアダプターを除去し、20mMリン酸緩衝液(pH7.0)、0.5M塩化ナトリウム、5(W/V)%アルギニン塩酸塩、1(W/V)%TritonX−100の組成を有する洗浄液をAホールとBホールにそれぞれ150μLずつ滴加後、前記洗浄液が液体吸収部材に完全に吸収されるまで放置した。続いて、BCIP/NBT基質液(Sigma社製)をAホールとBホールにそれぞれ250μL滴加し、発色反応を開始させた。10分後、100mMクエン酸緩衝液(pH3.0)をAホールとBホールにそれぞれ150μLずつ滴加し反応を停止させた。反応停止直後にAホールとBホールを鉛直上方から観察し、Aホールにのみ発色が認められた場合にはA型インフルエンザウイルス陽性、Bホールにのみ発色が認められた場合にはB型インフルエンザウイルス陽性、AB両ホールに発色が認められた場合はA型及びB型インフルエンザウイルス陽性、AB両ホールとも発色が認められない場合は陰性と判定した。
(2)RT−PCR法による検出
5−(1)で作製した試験用試料の残りを用いてRT−PCR法により検体中にインフルエンザウイルス遺伝子が存在するかを確認した。RT−PCR法は、清水の方法(感染症学雑誌、第71巻、第6号、p522−526)で実施した。
(3)簡易メンブレンアッセイ法とRT−PCR法の比較
本発明の簡易メンブレンアッセイ法と上述したRT−PCR法の判定結果の比較を表1から表3に示す。RT−PCR法は感度及び特異性が極めて高い測定法であることが知られており、RT−PCR法の結果と異なる判定となった場合に偽陽性または偽陰性とみなした。
Figure 0006405269
Figure 0006405269
Figure 0006405269
ノズル(I)を用いた場合にはRT−PCR法による判定と完全に一致し、偽陽性は見られなかった。ノズル(II)を用いた場合は偽陽性発生率が7%(115検体中8検体(表2中、□で囲まれた偽陽性検体の合計))であり、それ以外はRT−PCR法による判定と一致した。一方、ノズル(III)を用いた場合には偽陽性発生率は83%(115検体中96検体(表3中、□で囲まれた偽陽性検体の合計))であった。
本発明の方法及びキットにより、偽陽性の発生を防止することができ、信頼性の高い簡易メンブレンアッセイ法を確立することができた。
A:穴
B:穴
a:アダプター
b:メンブレン
c:液体吸収部材
d:濾過チューブ先端部
e:濾過チューブ本体部
f:濾過フィルター

Claims (6)

  1. 被測定物を捕捉するための捕捉試薬が結合したメンブレンを備えたアッセイ装置を用いる、検体試料中の被測定物の簡易メンブレンアッセイ法であって、検体試料を濾過フィルターを用いて濾過した後に前記メンブレン上に滴下し、前記検体試料中の被測定物の存在を検出あるいは定量することを含み、前記検体が、咽頭拭い液、鼻腔拭い液、鼻腔吸引液又は便懸濁液であり、前記メンブレンの孔径または保留粒子径が0.5μm以上7μm以下でかつ前記濾過フィルターの孔径または保留粒子径以上であり、及び前記濾過フィルターの孔径または保留粒子径が0.2〜2.0μmであり、前記濾過フィルターは検体試料中の生体成分がメンブレン上あるいはメンブレン中に付着することを原因とする偽陽性を防ぐことを特徴とする方法。
  2. 該被測定物がインフルエンザウイルスであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 該検体試料を濾過フィルターを備えた濾過チューブ中の浮遊液に浮遊させることをさらに含む請求項1または2に記載の方法。
  4. 以下を含む、咽頭拭い液、鼻腔拭い液、鼻腔吸引液又は便懸濁液である検体試料中の被測定物の存在を検査あるいは定量するための簡易メンブレンアッセイキット;
    (1)検体試料中の生体成分がメンブレン上あるいはメンブレン中に付着することを原因とする偽陽性を防ぐための濾過フィルター、及び
    (2)被測定物を捕捉するための捕捉物質が結合したメンブレンを備えたアッセイ装置、であって、前記メンブレンの孔径または保留粒子径が0.5μm以上7μm以下でかつ前記濾過フィルターの孔径または保留粒子径以上であり、及び前記濾過フィルターの孔径または保留粒子径が0.2〜2.0μmである、上記アッセイキット。
  5. さらに以下のものを含む、請求項4に記載のキット;
    (3)検体浮遊液
    (4)洗浄液組成物、
    (5)標識化検出試薬、
    (6)検体採取器具、及び/または
    (7)コントロール液。
  6. 該被測定物がインフルエンザウイルスであることを特徴とする請求項4または5に記載のキット。
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