JP2014189427A - リン酸含有スラグの製造方法およびリン酸含有スラグ - Google Patents

リン酸含有スラグの製造方法およびリン酸含有スラグ Download PDF

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Abstract

【課題】可溶性リン酸を多く含み、肥料として有用に用いることが可能なリン酸含有スラグの製造方法、および、リン酸含有スラグを提供する。
【解決手段】溶銑を脱リン処理することにより、リン酸を含有するスラグを製造するリン酸含有スラグの製造方法であって、前記溶銑に対して造滓剤及び酸素源を供給してスラグを形成し、前記脱リン処理を行う際に、前記スラグの塩基度(CaO)/(SiO)を、0.8以上1.8以下の範囲内とするとともに、1600℃におけるCaO−FeO−Pの3元状態図において、固相領域及び2液相領域を外した領域となるように、CaO、FeO、Pの3成分の比率を調整する。
【選択図】なし

Description

本発明は、溶銑を脱リン処理することにより、リン酸を含有するスラグを製造するリン酸含有スラグの製造方法、および、リン酸含有スラグに関するものである。
一般に、製鋼プロセスにおいては、溶銑中のリンを除去するために、溶銑に生石灰等の造滓剤を供給して溶銑の上にスラグを形成し、溶銑に向けて酸素を吹き込んで、溶銑中の不純物をスラグと反応させて除去する酸素吹錬(酸化精錬)が行われている。この酸素吹錬においては、スラグと溶銑との界面において、下記に代表されるような脱リン反応が進行することによって、溶銑の脱リンが実施される。
2[P]+5Fe2++8O2− → 2PO 3−+5Fe
この脱リン反応により、脱リン処理を行った後のスラグにはリン酸が含まれることになる。すなわち、脱リン処理によってリン含有スラグが生成するのである。
ここで、上述のリン酸含有スラグは、例えば特許文献1−3に開示されているように、植物生育用のリン酸肥料として利用されている。
これら特許文献1−3においては、肥料効果を向上させるために、リン酸含有スラグ中のリン酸濃度を増加する種々の方法が提案されている。
特開平11−158526号公報 特開2009−132544号公報 特開2011−208277号公報
ところで、肥料に含まれるリン酸については、肥料取締法において、水溶性リン酸、可溶性リン酸、ク溶性リン酸に分類されている。
水溶性リン酸は、水に溶けるリン酸であって、Ca(HPO)として存在するものである。
可溶性リン酸は、2%クエン酸アンモニウム溶液に溶出するリン酸であり、水溶性リン酸も含むものである。
ク溶性リン酸:2%クエン酸溶液に溶出するリン酸であり、水溶性リン酸、可溶性リン酸を含むものである。
従来、リン酸肥料は、ク溶性リン酸の含有量で評価されていた。これは、植物の根からクエン酸に近い成分が分泌されることから、クエン酸に溶解するリン酸であれば肥料として有効であると考えられていたためである。
最近では、土壌中にはアンモニアイオンが存在することから、クエン酸アンモニウムに溶解する可溶性リン酸の含有量で肥料を評価することが提案されている。
ここで、特許文献1−3においては、リン酸全体の含有量について検討しているのみであり、肥料として有効な可溶性リン酸の含有量については、全く考慮されていなかった。このため、得られたリン酸含有スラグを肥料として使用しても、肥料効果が低く、肥料として適切に利用することができなかった。
本発明は、前述した状況に鑑みてなされたものであって、可溶性リン酸を多く含み、肥料として有用に用いることが可能なリン酸含有スラグの製造方法、および、リン酸含有スラグを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明に係るリン酸含有スラグの製造方法は、溶銑を脱リン処理することにより、リン酸を含有するスラグを製造するリン酸含有スラグの製造方法であって、前記溶銑に対して造滓剤及び酸素源を供給してスラグを形成し、前記脱リン処理を行う際に、前記スラグの塩基度(CaO)/(SiO)を、0.8以上1.8以下の範囲内とするとともに、1600℃におけるCaO−FeO−Pの3元状態図において、固相領域及び2液相領域を外した領域となるように、CaO、FeO、Pの3成分の比率を調整することを特徴としている。
この構成のリン酸含有スラグの製造方法によれば、前記スラグの塩基度(CaO)/(SiO)が0.8以上とされているので、スラグ中のリン酸が(PO3−として存在する割合が高く、クエン酸に溶解しやすいCa(POを多く含むことになる。また、前記スラグの塩基度(CaO)/(SiO)が1.8以下とされているので、上述のCa(POが結晶化して溶解しにくくなることを抑制できる。
また、1600℃におけるCaO−FeO−Pの3元状態図において、固相領域及び2液相領域を外した領域となるように、CaO、FeO、Pの3成分の比率を調整しているので、スラグが、FeO相とC3P相(3CaO・P相)とに液相分離すること、および、C3P相が結晶として存在することを抑制できる。C3P相は、クエン酸に溶解しにくいことから、このC3P相の生成を抑制することで可溶性リン酸の含有量を確保することが可能となる。
ここで、本発明に係るリン酸含有スラグの製造方法においては、前記脱リン処理を行う際に、前記スラグ中のMgO濃度を、3mass%以上15mass%以下の範囲内とすることが好ましい。
この構成のリン酸含有スラグの製造方法によれば、スラグ中のMgO濃度を3mass%以上15mass%以下の範囲内としているので、リン酸イオンを植物の生長点に運ぶ作用を持つMgを含有した肥料効果の高いリン酸含有スラグを製造できるとともに、スラグの結晶化を抑えることによって可溶性リン酸の比率を向上させることができる。
また、本発明に係るリン酸含有スラグの製造方法においては、前記脱リン処理を行う前に、前記溶銑に対して酸素源を添加して脱Cr処理を行い、この脱Cr処理によって生成したCr含有スラグを排出することが好ましい。
溶銑に対して酸素吹錬(酸化精錬)を行った場合、溶銑中のCrも酸化し、Cr酸化物としてスラグ中に含有されることになる。そこで、脱リン処理前に脱Cr処理を行い、この脱Cr処理によって生成したCr含有スラグを排出することにより、リン酸含有スラグ中へのCr酸化物の混入を抑制することができる。
本発明に係るリン酸含有スラグは、上述のリン酸含有スラグの製造方法によって製造され、スラグの塩基度(CaO)/(SiO)が0.8以上1.8以下であるとともに、CaO、FeO、Pの3成分の比率が、1600℃におけるCaO−FeO−Pの3元状態図において、固相領域及び2液相領域を外した領域の範囲内とされていることを特徴としている。
この構成のリン酸含有スラグによれば、上述のように、スラグ中においてクエン酸アンモニウム溶液に溶出する可溶性リン酸の含有量が確保されているので、肥料として有用である。
ここで、本発明に係るリン酸含有スラグにおいては、MgO濃度が、3mass%以上15mass%以下の範囲内とされていることが好ましい。
この構成のリン酸含有スラグによれば、上述のように、Mgによってリン酸イオンを植物の生長点に効率よく到達させることが可能となる。また、スラグが結晶化しておらず、可溶性リン酸の含有量が多くなる。よって、肥料効果をさらに向上させることができる。
また、本発明に係るリン酸含有スラグにおいては、Cr濃度が、リン酸濃度の1/10以下とされていることが好ましい。
この構成のリン酸含有スラグによれば、Cr濃度が、リン酸濃度の1/10以下に抑制されているので、安全に肥料として使用することができる。
上述のように、本発明によれば、可溶性リン酸を多く含み、肥料として有用に用いることが可能なリン酸含有スラグの製造方法、および、リン酸含有スラグを提供することができる。
本実施形態であるリン酸含有スラグの製造方法が実施される製鋼プロセスの一例を示すフロー図である。 1600℃におけるCaO−FaO−Pの3元状態図である。 スラグの塩基度(CaO)/(SiO)と、脱Cr率及び脱P率の関係図である。 スラグの塩基度(CaO)/(SiO)と、全リン酸に占める可溶性リン酸の割合と、を示す関係図である。 スラグ中のMgO濃度(mass%)と、全リン酸に占める可溶性リン酸の割合と、を示す関係図である。 実施例における本発明例および比較例の組成を1600℃におけるCaO−FaO−Pの3元状態図上にプロットした図である。
以下に、本発明の一実施形態であるリン酸含有スラグの製造方法、および、リン酸含有スラグについて、添付した図面を参照して説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
本実施形態であるリン酸含有スラグの製造方法は、製鋼プロセスの過程において、植物生育用のリン酸肥料として使用可能なリン酸含有スラグを製造するものである。図1に、本実施形態であるリン酸含有スラグの製造方法が実施される製鋼プロセスの一例を示す。
製鋼プロセスにおいては、図1に示すように、まず、高炉において生成された溶銑を転炉に移送し、転炉内に貯留された溶銑の上にスラグを形成し、酸素源を供給することにより、溶銑とスラグとの反応によって溶銑の脱リン処理S01を行う。
この脱リン処理S01によって生成した転炉脱リンスラグ41を転炉から排出した後、転炉内の溶銑の上に再度スラグを形成し、酸素源を供給することにより、脱炭処理S02を行う。
次に、得られた溶鋼を2次精錬S03した後、連続鋳造S04を行うことにより、鋼片を製造する。
ここで、脱リン処理S01後に転炉から排出される転炉脱リンスラグ41には、溶銑中のリンがリン酸として含有されるとともに多くの鉄分も含有されている。そこで、この転炉脱リンスラグ41から鉄分やリン等の有価元素を回収するために、転炉脱リンスラグ41に対して還元・改質処理S11を実施する。
この還元・改質処理S11においては、転炉脱リンスラグ41を溶融するとともに、還元材及び改質材として微粉炭、Al、SiO源を添加することにより、リンを多く含有する高P溶銑42を得る。この際、処理条件によっては、転炉脱リンスラグ41に含有されているクロム酸化物も還元されて、高P溶銑42のクロム含有量も高くなる場合もある。なお、還元・改質処理S11に、溶融した転炉脱リンスラグ41を直接供給するようにしてもよい。
そして、本実施形態であるリン酸含有スラグの製造方法においては、この高P溶銑42に対して、後述する脱リン処理S13を行うことにより、植物生育用のリン酸肥料として使用可能なリン酸含有スラグ50を製造する。なお、脱リン処理S13によって脱リンされた溶銑51は、高炉で生成された溶銑とともに転炉へと供給されることにより、鉄分の回収が行われる。
ここで、植物生育用のリン酸肥料においては、クエン酸アンモニウムに対して溶出する可溶性リン酸が植物にとって有用であることから、この可溶性リン酸の含有量を増加させる必要がある。
そこで、本実施形態であるリン酸含有スラグの製造方法においては、上述の高P溶銑42に対して造滓剤及び酸素源を供給して脱リン処理S13を行う際に、スラグの塩基度(CaO)/(SiO)を、0.8以上1.8以下の範囲内とする。
また、本実施形態では、脱リン処理S13を行う際に、図2に示す1600℃におけるCaO−FeO−Pの3元状態図において、固相領域A及び2液相領域Aを外した領域となるように、CaO、FeO,Pの3成分の比率を調整する。
さらに、本実施形態では、脱リン処理S13を行う際に、スラグ中のMgO濃度が3mass%以上15mass%以下の範囲内となるように調整している。
また、本実施形態では、高P溶銑42中にCrが含有されている場合には、当該脱リン処理S13を実施する前に、脱Cr処理S12を実施する。
以下に、スラグの塩基度(CaO)/(SiO)、スラグ中のCaO、FeO、Pの3成分の比率、スラグ中のMgO濃度、脱Cr処理S12について、上述のように規定した理由について説明する。
(スラグの塩基度)
スラグの塩基度(CaO)/(SiO)は、スラグ中のリン酸の存在形態に大きな影響を与える因子である。
ここで、(CaO)/(SiO)が0.8未満の場合には、スラグ中のリン酸が(P4−として存在する割合が高くなり、クエン酸に溶解し難いCaが生成し、肥料としての効果が低くなる。
一方、(CaO)/(SiO)が1.8を超えると、リン酸が結晶化し、やはりクエン酸アンモニウムへの溶解度が低下する。
以上のことから、本実施形態においては、スラグの塩基度(CaO)/(SiO)を0.8以上1.8以下の範囲内に規定している。
(スラグ中のCaO、FeO、Pの3成分の比率)
1600℃におけるCaO−FeO−Pの3元状態図において、スラグ中のCaO、FeO、Pの3成分の比率が固相領域Aとなった場合には、リン酸が3CaO・Pの結晶相(C3P結晶相)として存在することになり、クエン酸アンモニウムへの溶解度が低下する。
また、スラグ中のCaO、FeO、Pの3成分の比率が2液相領域Aとなった場合には、スラグが、FeO相と、3CaO・P相(C3P相)とに分離し、リン酸が結晶化する。これにより、クエン酸アンモニウムへの溶解度が低下する。
以上のことから、本実施形態においては、CaO、FeO、Pの3成分の比率を、1600℃におけるCaO−FeO−Pの3元状態図において、固相領域A及び2液相領域Aを外した領域となるように調整している。
なお、実際の脱リン処理S13は、1300〜1450℃程度で実施されるが、他の成分や操業条件等によって、上述の2液相領域Aが変動するおそれがある。そこで、1600℃の高温での3元状態図においてCaO、FeO、Pの3成分の比率を規定することにより、実際の脱リン処理S13時において、スラグが2液相に分離することを確実に防止している。
(スラグ中のMgO濃度)
MgOは、リン酸イオンを植物の生長点へと運ぶ作用を有するため、ある程度含有されていることが好ましい。
MgOの含有量が3mass%未満の場合、上述の作用効果を奏功せしめることができない。
一方、MgOの含有量が15mass%を超えると、スラグの融点が上がり、スラグが結晶化しやすく、リン酸がクエン酸アンモニウムに溶出にしにくくなる。
以上のことから、本実施形態では、スラグ中のMgO濃度を3mass%以上15mass%以下の範囲内が望ましい。
(脱Cr処理)
植物生育用のリン酸肥料として使用する場合、Cr濃度を低減する必要がある。そこで、本実施形態では、高P溶銑42中にCrが含有されている場合には、脱リン処理S13を実施する前に脱Cr処理S12を実施する。
図3に、スラグの塩基度(CaO)/(SiO)と脱Cr率及び脱P率との関係を示したグラフを示す。図3によれば、スラグの塩基度(CaO)/(SiO)が低い場合、ほとんどリンは除去されずにCrが優先的に除去される。
そこで、脱Cr処理S12時には、高P溶銑42の上に形成するスラグの塩基度(CaO)/(SiO)を0.1以下として実施する。これにより、高P溶銑42中のリンの酸化を抑制しつつ、Crを優先酸化させてスラグ中に除去することができる。
上述の本実施形態であるリン酸含有スラグの製造方法によって製造されたリン酸含有スラグ50は、CaOとSiOとの重量比(CaO)/(SiO)が0.8以上1.8以下であるとともに、CaO、FeO、Pの3成分の比率が、1600℃におけるCaO−FeO−Pの3元状態図において、固相領域A及び2液相領域Aを外した領域の範囲内とされている。
また、MgO濃度が、3mass%以上15mass%以下の範囲内とされ、Cr濃度が、リン酸濃度の1/10以下とされている。
以上のような構成とされた本実施形態であるリン酸含有スラグの製造方法、及び、リン酸含有スラグ50によれば、スラグの塩基度(CaO)/(SiO)が0.8以上とされているので、スラグ中のリン酸が(PO3−として存在する割合が高く、クエン酸に溶解しやすいCa(POを多く含むことになる。また、スラグの塩基度(CaO)/(SiO)が1.8以下とされているので、Ca(POが結晶化して溶解しにくくなることを抑制できる。
また、1600℃におけるCaO−FeO−Pの3元状態図において、固相領域A及び2液相領域Aを外した領域となるように、CaO、FeO、Pの3成分の比率を調整しているので、スラグが、FeO相とC3P相(3CaO・P相)とに液相分離すること、および、C3P相が結晶として存在することを抑制できる。C3P相は、クエン酸に溶解しないことから、このC3P相の生成を抑制することで可溶性リン酸の含有量を確保することが可能となる。
さらに、本実施形態においては、脱リン処理S13を行う前に、高P溶銑42に対して脱Cr処理S13を行う構成としているので、リン酸含有スラグ50中へのCr酸化物の混入を抑制することができ、リン酸含有スラグ50中のCr濃度をリン酸濃度の1/10以下に抑制することが可能となる。このようにCr濃度を抑制した本実施形態であるリン酸含有スラグ50は、安全に肥料として使用することができる。
以上、本発明の実施形態であるリン酸含有スラグの製造方法およびリン酸含有スラグについて具体的に説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、脱リン処理前に、脱Cr処理を実施するものとして説明したが、これに限定されることはなく、溶銑中のCr濃度が十分に低い場合には、脱Cr処理を省略してもよい。
また、本実施形態では、図1に示す製鋼プロセスにおいて、転炉脱リンスラグから得られた高P溶銑を脱リン処理することでリン酸含有スラグを製造するものとして説明したが、これに限定されることはなく、高炉で生成された溶銑を脱リン処理することでリン酸含有スラグを製造してもよい。
以下に、本発明の効果を確認すべく、実施した実験結果について説明する。
まず、CaO−SiO−Pの3元系スラグにおいて、スラグの塩基度(CaO)/(SiO)と、スラグ中の全リン酸に占める可溶性リン酸の割合(S−P/全P)との関係について確認した。
を20mass%に固定し、塩基度(CaO)/(SiO)を変化させて、各種組成のスラグを形成し、このスラグのクエン酸アンモニウム溶液への溶出特性を評価した。
その結果、図4に示すように、塩基度(CaO)/(SiO)が0.8以上1.8以下の範囲内において、全リン酸に占める可溶性リン酸の割合が多くなり、安定していることが確認された。
ここで、NMR(核磁気共鳴分光法)により、スラグ中のリン酸の構造を解析した結果、塩基度(CaO)/(SiO)が0.8未満では、リン酸が、(PO3−が重合した(P4−の構造を有していることが確認された。クエン酸に溶解し難いCaが生成することで、可溶性リン酸の割合が低下したと推測される。
さらに、XRD(X線回折法)により、スラグの結晶相の同定を行った結果、(CaO)/(SiO)が1.8以下では、ガラス相となっていたが、(CaO)/(SiO)が1.8を超えた場合には、3CaO・Pの結晶構造(C3P結晶相)となっていた。結晶化によって溶解度が低下したと推測される。
以上のことから、スラグの塩基度(CaO)/(SiO)を0.8以上1.8以下の範囲内とすることで、全リン酸に占める可溶性リン酸の割合を増加できることが確認された。
次に、CaO−MgO−SiO−Pの4元系スラグにおいて、スラグ中のMgO濃度(mass%)と、スラグ中の全リン酸に占める可溶性リン酸の割合(S−P/全P)との関係について確認した。
を20mass%、塩基度(CaO)/(SiO)を1.4に固定し、MgOの含有量を変化させて各種組成のスラグを形成し、このスラグのクエン酸アンモニウム溶液への溶出特性を評価した。
その結果、図5に示すように、MgOの含有量が15mass%以下では、全リン酸に占める可溶性リン酸の割合が多くなり、安定していることが確認された。
ここで、XRD(X線回折法)により、スラグの結晶相の同定を行った結果、MgOの含有量が15mass%を超えた場合には、3CaO・Pの結晶構造(C3P結晶相)となっていた。
以上のことから、スラグがMgOを含有する場合には、MgOの含有量を15mass%以下とすることで、全リン酸に占める可溶性リン酸の割合を増加できることが確認された。
次に、溶銑に対して脱リン処理を行って、得られたリン酸含有スラグの組成について確認した。
C濃度4.5mass%、P濃度1.5mass%の溶銑に、造滓剤(生石灰および転炉脱炭スラグ)を添加し、酸素を吹き込んで脱リン処理を実施した。この脱リン処理時の温度は1350〜1400℃とし、添加する造滓剤および酸素の吹き込み量を変更した。これにより、種々の組成のリン酸含有スラグを製造した。
得られたリン酸含有スラグの組成、可溶性リン酸(S−P)の含有量、全リン酸量に対する可溶性リン酸の割合(S−P/全P)を表1に示す。また、CaO、FeO、Pの3成分の比率を、1600℃におけるCaO−FeO−Pの3元状態図にプロットした結果を図6に示す。
Figure 2014189427
さらに、得られたリン酸含有スラグを用いて植物の生育試験を実施した。土として黒ボク土3kgを用いてヒロシマ菜を栽培した。ここで、黒ボク土1kgに対してPが0.5gとなるようにリン酸含有スラグを肥料として添加した。そして、ヒロシマ菜の生育状態を目視で評価した。評価結果を表2に示す。市販の熔成リン肥と比較して、生育が優っている場合を◎、同等のものを○、劣っているものを×で示した。
Figure 2014189427
CaO、FeO、Pの3成分の比率が、1600℃におけるCaO−FeO−Pの3元状態図の固相領域A及び2液相領域Aを外した領域とされた本発明例1−7においては、全リン酸量に対する可溶性リン酸の割合が0.55以上と高くなっていることが確認される。
一方、CaO、FeO、Pの3成分の比率が、1600℃におけるCaO−FeO−Pの3元状態図の固相領域A及び2液相領域Aとされた比較例1−20においては、全リン酸量に対する可溶性リン酸の割合が低くなっていることが確認される。
そして、植物(ヒロシマ菜)の生育試験の結果、可溶性リン酸の含有量が少ない比較例1−20に比べて、可溶性リン酸の含有量が多い本発明例1−7は、生育状態が良好であった。
また、MgOの含有量が3mass%以上とされた本発明例1−4、6,7と、MgOの含有量が3mass%未満である本発明例5とを比較すると、MgOの含有量が3mass%以上とされた本発明例1−4、6,7の方が、生育状態がさらに良好であった。Mgの作用によってリン酸が植物の生長点へと効率的に運ばれたためと推測される。
次に、Crを含有する溶銑に対して脱リン処理を実施し、得られたリン酸含有スラグの組成について確認した。
C濃度4.5mass%、P濃度1.5mass%、Cr濃度0.5mass%の溶銑に、造滓剤(生石灰や転炉脱炭スラグ等)を添加し、酸素を吹き込んで脱リン処理を行った。その結果、表3に示すリン酸含有スラグが得られた。
また、Crを含有する溶銑に対して、脱Cr処理を実施した後に脱リン処理を実施し、得られたリン酸含有スラグの組成について確認した。
C濃度4.5mass%、P濃度1.5mass%、Cr濃度0.5mass%の溶銑1トンに、珪石とミルスケールを添加し、酸素を上吹きして、脱Cr処理を行った。このとき、石灰を添加していないことから、スラグの塩基度(CaO)/(SiO)は0であり、Pはほとんど酸化されず、Crが優先酸化され、溶銑中のCr濃度が低下した。得られた溶銑は、C濃度4.2mass%、P濃度1.3mass%、Cr濃度0.2mass%であった。
脱Cr処理後の溶銑に、造滓剤(生石灰や転炉脱炭スラグ等)を添加し、酸素を吹き込んで脱リン処理を行った。その結果、表4に示すリン酸含有スラグが得られた。
Figure 2014189427
Figure 2014189427
脱Cr処理を実施せずに脱リン処理を行って得られたリン酸含有スラグは、表3に示すように、ク溶性リン酸の含有量が15.2mass%であり、T.Cr濃度が3mass%であった。
一方、脱Cr処理を実施した後に脱リン処理を行って得られたリン酸含有スラグは、表4に示すように、ク溶性リン酸の含有量が15.1mass%であり、T.Cr濃度が1.1mass%であった。
脱リン処理前に脱Cr処理を行うことにより、Cr濃度が低く、肥料として使用可能なリン酸含有スラグを得ることができた。
42 高P溶銑(溶銑)
50 リン酸含有スラグ
S12 脱Cr処理
S13 脱リン処理

Claims (6)

  1. 溶銑を脱リン処理することにより、リン酸を含有するスラグを製造するリン酸含有スラグの製造方法であって、
    前記溶銑に対して造滓剤及び酸素源を供給してスラグを形成し、前記脱リン処理を行う際に、
    前記スラグの塩基度(CaO)/(SiO)を、0.8以上1.8以下の範囲内とするとともに、
    1600℃におけるCaO−FeO−Pの3元状態図において、固相領域及び2液相領域を外した領域となるように、CaO、FeO、Pの3成分の比率を調整することを特徴とするリン酸含有スラグの製造方法。
  2. 前記脱リン処理を行う際に、前記スラグ中のMgO濃度を、3mass%以上15mass%以下の範囲内とすることを特徴とする請求項1に記載のリン酸含有スラグの製造方法。
  3. 前記脱リン処理を行う前に、前記溶銑に対して酸素源を添加して脱Cr処理を行い、この脱Cr処理によって生成したCr含有スラグを排出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のリン酸含有スラグの製造方法。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のリン酸含有スラグの製造方法によって製造され、
    スラグの塩基度(CaO)/(SiO)が0.8以上1.8以下であるとともに、
    CaO、FeO、Pの3成分の比率が、1600℃におけるCaO−FeO−Pの3元状態図において、固相領域及び2液相領域を外した領域の範囲内とされていることを特徴とするリン酸含有スラグ。
  5. MgO濃度が、3mass%以上15mass%以下の範囲内とされていることを特徴とする請求項4に記載のリン酸含有スラグ。
  6. Cr濃度が、リン酸濃度の1/10以下とされていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のリン酸含有スラグ。
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