JP6992604B2 - リン酸スラグ肥料の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、製鋼スラグを原料として高リン酸スラグを製造する、リン酸スラグ肥料の製造方法に関するものである。
製鉄原料である鉄鉱石中にはリン酸(P25)が含まれており、高炉法で製造された銑鉄中には0.1%程度のリンを含有している。一方、鋼中のリン含有量が低くなるほど一般的には良好な鋼品質が得られるため、溶銑を精錬する製鋼工程において脱リン精錬が行われる。脱リン精錬は、溶銑表面に脱リン精錬用スラグを形成し、酸化精錬によって溶銑中のリンを酸化してスラグ中に移行し、精錬終了後の溶鋼中のリン濃度の低減を図っている。精錬後に回収されたスラグ(以下「製鋼スラグ」という。)中に、脱リン精錬でスラグ中に移行したリン酸が2%前後含まれている。系外に排出された製鋼スラグは、路盤材などの土木材料として使用され、あるいは海洋の埋め立てに用いられており、製鋼スラグ中に含有するリン酸が有効利用されることはない。
世界におけるリン資源の偏在や資源の枯渇、および品位の低下が問題提起されるようになってきている。製鋼スラグ中に含まれるリン量は合計で日本の輸入リン鉱石に含まれるリンの量に匹敵すると言われており、製鋼スラグ中に含有するリンの有効利用が喫緊の課題となっている。
高リン鉄鉱石を原料として製造された、リン濃度が2%程度の高リン溶銑を用い、トーマス転炉と呼ばれる塩基性転炉で脱炭脱リン精錬を行う方法が知られている。当該精錬方法で形成される製鋼スラグ中には、リン酸(P25)濃度が15%以上の高濃度のリン酸が含まれ、肥料として使用すると高い肥料効果を得られるため、トーマスリン肥の名で知られている。しかし、トーマス転炉法で用いられたような、高リン溶銑を用い、精錬後の製鋼スラグ中に高濃度のリン酸を含有させつつ、現在要求される例えばリン濃度が0.015%程度の製品リン濃度レベルまで脱リン精錬を行うことは困難である。また、現代では高リン鉄鉱石を製鉄原料とすることは行われておらず、高リン溶銑を用いた精錬が行われることもない。
前述のように、現在広く行われている高炉-転炉法において、高炉法で製造される銑鉄中のリン濃度は0.1%程度であり、その溶銑を精錬する転炉法における製鋼スラグ中のリン酸の濃度は2%前後である。また、製鋼スラグ中には酸化鉄を含有している。この製鋼スラグ中のリン酸分は有用なリン酸肥料資源として考えられており、製鋼スラグ中のリン酸分を濃縮してリン酸濃度が高濃度のスラグ(以下「高リン酸スラグ」という。)を製造し、そのスラグをリン酸スラグ肥料として利用する試みがなされている。
非特許文献1には、製鋼スラグからのリン酸肥料製造方法として、電気炉で製鋼スラグを還元した後、高リン溶銑をカルドー炉(転炉)で脱リン処理をして高リン酸スラグを製造し、高リン酸スラグをリン酸スラグ肥料とした上で、メタルは溶鋼として活用する方法が示されている。特許文献1には、脱Pスラグに含まれるP25を数回にわたり還元処理をすることにより溶銑中のPを約1~3%に濃化し、少量のスラグで再度溶銑脱Pを行い、高リン酸スラグを得る方法が提案されている。
また、特許文献2には、製鋼スラグを還元して溶製した高P溶銑(P:0.5~3質量%、C:4.5質量%前後、Si:0.05質量%前後)に、転炉にて、塩基度が2~8のフラックスを添加し、酸化鉄源を添加するか又は酸素を吹き込んで脱リン処理(処理後温度:1550℃以上)を行い、溶鋼(C:1質量%以下、P:0.1~0.2質量%)とスラグ(塩基度:5~6、P25濃度:10~30質量%)を製造する方法が記載されている。還元処理、脱リン精錬のいずれも、精錬炉として転炉を用いている。
特許文献3及び4には、製鋼スラグを還元して溶製した高P溶銑(P:0.5~3質量%)に粉体のCaOと共に酸素ガスを投射し、スラグの塩基度を1.5以上に調整することにより、リン酸濃度を15質量%以上まで高め、その高リン酸スラグをリン酸スラグ肥料として利用する方法が記載されている。還元処理炉としてはロータリーキルン、アーク炉が例示されており、脱リン処理炉としては転炉型の反応容器が例示されている。
以上のように、製鋼スラグを還元して高リン溶銑を製造し、次いで高リン溶銑に脱リン処理を施して高リン酸スラグを製造し、リン酸スラグ肥料とする方法が種々提案されている。ここにおいて、高リン溶銑の脱リン処理は酸化精錬であり、転炉型の精錬容器を用いるとともに、酸化源として酸素ガスを用いることが行われている。高リン溶銑の脱リン処理では、脱リン負荷が大きいために脱リンスラグ(高リン酸スラグ)の原単位が100kg/T以上となり、また、酸素ガスを用いた脱リン精錬中にスラグがフォーミングするため、転炉のようにフリーボードの大きい反応容器が必要になる。また、高リン溶銑の脱リン処理にて必要となる熱源としては、C、P、Si、Feなどの金属を酸化するときの酸化熱で賄われるので、溶鉄中Cは殆ど酸化されて溶鋼となり、融点上昇により高温化を余儀なくされる。
特許文献5においては、1回の脱リン時に使用するスラグ量を低減するため、脱リン工程を多段階にわけて行う方法が記載されている。小規模容器でも脱リン処理できる点は有効だが、複数回の脱リン処理を行う場合には、トータル処理時間の延長や複数回のスラグ排出処理による熱ロスの増加があり、外部熱源の必要性が増す。また最終脱リンスラグを前段の脱リン処理にリサイクルする方法はフラックス低減の観点から有効だが、ハンドリングが複雑になる難点がある。
特許文献6には、リン濃度が1%以上の溶銑に対して、溶融投射型燃料バーナーによって溶融した精錬剤を溶銑表面に添加し、上吹きランスから酸素ガスを溶銑表面に供給して溶銑の脱リン精錬を行う、リン酸肥料の製造方法および製造装置が開示されている。精錬剤は、脱リン精錬フラックス又は脱リン精錬フラックスと酸化鉄であり、脱リン精錬後の溶銑表面スラグをリン酸肥料原料とする。
特開平7-316621号公報 特開平11-158526号公報 特開2015-140473号公報 特開2015-140294号公報 特開2017-125244号公報 特開2017-128747号公報
尾上俊夫著 日本金属学会会報 第19巻第10号(1980)752頁
従来の、製鋼スラグを還元して高リン溶銑を製造し、次いで高リン溶銑に脱リン処理を施して高リン酸スラグを製造し、リン酸スラグ肥料とする方法においては、還元処理炉としてロータリーキルン、アーク炉を用いるとともに、脱リン処理炉としては転炉型の反応容器が用いられている。そのため、還元処理炉とは別に転炉型の脱リン処理炉を設ける必要があり、設備費の負担が増え、安価にリン酸スラグ原料を製造することができなかった。
また、従来の上記方法では、高リン溶銑の脱リン処理にて必要となる熱源については溶鉄中C,P,Siを炉内に吹き込んだ酸素ガスによって燃焼して加熱を行っていた。そのため、初期の溶鉄中[C]が低い場合や脱リン処理後に[C]を残留させたい場合には熱源の確保が十分に行えず、溶鉄とスラグの温度上昇が不十分となり、スラグ組成として融点の高いスラグ組成のものを用いることができず、スラグの粘性を十分に低下することができないという不自由度を有していた。
本発明は、製鋼スラグを還元して高リン溶銑を製造し、次いで高リン溶銑に脱リン処理を施して高リン酸スラグを製造し、リン酸スラグ肥料とする方法において、脱リン処理炉として転炉を用いる必要がなく、また脱リン処理で熱源を十分に確保してスラグ組成の自由度を増すとともにスラグの粘性の低下を計ることのできる、リン酸スラグ肥料の製造方法を提供することを目的とする。
即ち、本発明の要旨とするところは以下のとおりである。
(1)リン酸と酸化鉄を含有する製鋼スラグと、炭材とを電気炉内に投入し、アーク加熱を行って、投入した炭材によって製鋼スラグを還元し、還元したスラグ(還元スラグ)を電気炉から排出する処理を「単位還元処理」と称し、
前記単位還元処理を1回又は複数回行って生成又は増加した溶鉄を、そのまま電気炉内に貯留し、又は一旦電気炉から排出した上で再度同じ電気炉に装入し、
電気炉内にCaO源及び酸素源を投入するとともにアーク加熱を行って溶鉄の脱リン処理を行い、P25濃度が10質量%以上の高リン酸スラグを製造することを特徴とするリン酸スラグ肥料の製造方法。
(2)前記脱リン処理において電気炉内に投入する前記CaO源が、溶融製鋼スラグ、製鋼スラグ粉体、生石灰粉、石灰石粉、ドロマイト粉のひとつまたは複数であり、
前記酸素源が、鉄鉱石粉、ダスト粉、スケール粉のひとつまたは複数であることを特徴とする上記(1)に記載のリン酸スラグ肥料の製造方法。
(3)前記脱リン処理において、ランス挿入によるガス吹込、または電気炉の炉底または炉壁に流量可変型ガス吹込羽口またはノズルを設けて鉄浴内にガスを導入し、鉄浴を攪拌することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のリン酸スラグ肥料の製造方法。
(4)前記単位還元処理を1回又は複数回行って生成又は増加した溶鉄の一部又は全部を一旦電気炉から別容器に排出し、
質量比で(CaO)/(SiO2)が1.5以下のスラグ共存下で、当該別容器中の溶鉄に酸素源を投入して溶鉄中の[Cr]濃度を0.1質量%以下まで低減し、当該溶鉄を再度同じ電気炉に装入することを特徴とする上記(1)から(3)までのいずれか1つに記載のリン酸スラグ肥料の製造方法。
(5)前記高リン酸スラグを電気炉から排出し、さらに電気炉内に生石灰または石灰石と酸化鉄を投入して溶鉄中[P]濃度を0.15質量%以下まで低減する処理(以下「仕上げ脱リン処理」という。)を行ったのち、当該溶鉄を排出して製鋼原料として利用し、炉内に残留したスラグおよび溶鉄を残置したまま、次の前記還元処理を始めることを特徴とする上記(1)から(4)までのいずれか1つに記載のリン酸スラグ肥料の製造方法。
本発明は、製鋼スラグを還元して高リン溶銑を製造し、次いで高リン溶銑に脱リン処理を施して高リン酸スラグを製造し、リン酸スラグ肥料とする方法において、製鋼スラグを還元する還元処理炉と、前記脱リン処理を施す脱リン処理炉とに、同じ電気炉であってアーク加熱を具備したものを用いることにより、脱リン処理炉として転炉を用いる必要がなく、また脱リン処理で熱源を十分に確保してスラグ組成の自由度を増すとともにスラグの粘性の低下を計ることができる。
本発明のリン酸スラグ肥料の製造方法を示す図であり、(A)は還元処理、(B)は脱クロム処理、(C)は脱クロム処理後、(D)は脱リン処理、(E)は仕上げ脱リン処理を示す図である。
本発明は、製鋼スラグを還元して高リン溶銑を製造する還元処理を行い、次いで高リン溶銑に脱リン処理を施して高リン酸スラグを製造し、リン酸スラグ肥料とする方法を対象とする。製鋼スラグを還元する還元処理炉と、前記脱リン処理を施す脱リン処理炉とに、同じ電気炉であってアーク加熱を具備したものを用いることを特徴とする。以下、図1に基づいて詳細に説明する。成分含有量についての%表示は、特に断りのない限り質量%を意味する。
本発明で用いる電気炉1は、直流,交流どちらでも可能だが、直流のほうがスラグの撹拌力が大きく、また直流電場においてはElectro Capillary Effectにより、スラグ中の微小粒鉄のクリーニング効果があることから直流電気炉の方がより望ましい。図1は電気炉1として直流電気炉を用いる場合について図示している。
製鋼スラグとは、製鋼精錬後に回収されたスラグであって、リン酸と酸化鉄を含有する。通常は、1%以上(2%前後)のリン酸と、10~30%程度の酸化鉄とを有している。高炉溶銑を精錬する転炉精錬で生成した脱炭スラグ、脱リンスラグが主な製鋼スラグ発生源である。
図1(A)に還元処理31実施状況を示す。還元処理31では、電極2によるアーク加熱3を有する電気炉1に、リン酸と酸化鉄を含有する製鋼スラグ13を所定量、投入する。投入する製鋼スラグは、溶融状態、固体のいずれでもよい。図1(A)では製鋼スラグ容器5から溶融状態の製鋼スラグ13を装入する状況を示している。電気炉1には、あらかじめ種湯としての溶鉄11を形成しておくと良い。製鋼スラグ13とともに還元剤として炭材21を電気炉1内に投入する。炭材21としては石炭粉又はコークス粉が用いられる。アーク加熱を行って還元のための熱源とし、投入した炭材21によって電気炉1内のスラグ12(製鋼スラグ13)を還元する。製鋼スラグ中のリン酸と酸化鉄は、炭素によって還元され、溶鉄及び溶鉄中の含有リンとなり、種湯と混合して電気炉内の溶鉄11の量が増加する。
製鋼スラグの還元に際しては、さらに電気炉1内に、スラグ改質剤22として追加の造滓剤を投入すると好ましい。スラグ改質剤22は、還元スラグの融点を下げ、スラグ粘性を下げ、free CaOを消滅させるための材料または高炉スラグ相当を製造するための材料である。還元スラグのSiO2源としてフライアッシュ、珪砂等が好適であり、Al23源としてフライアッシュ、レンガ屑等を用いる。スラグ改質剤添加による改質後のスラグの目標組成は以下の通りである。まず、塩基度((CaO)/(SiO2)質量比)は1.5以下、望ましくは1.2以下とする。塩基度が高すぎると融点が上昇して流動性が低下し、またPの還元効率も低下するからである。一方、低すぎるとSiO2溶解に要するエネルギーが過多になるため、塩基度の下限は0.8とすると好ましい。また、改質後のスラグ中(Al23)成分は8%~12%が好ましい。高すぎると必要エネルギーが増加し、低すぎると粘性が上昇するためである。
製鋼スラグの還元は、電気炉1内に投入されたスラグ12を炭材21投入とアーク加熱3によって、スラグ12の(T.Fe)成分が1%以下程度に還元するまで行う。目標とする還元が完了したら、還元したスラグ(還元スラグ14)を電気炉1から排出する。図1(A)には、電気炉1から還元スラグ容器6に還元スラグ14を排出する状況が図示されている。製鋼スラグ13を電気炉1に投入してから還元スラグ12を排出するまでの1回の処理を「単位還元処理」と称する。
1回の単位還元処理が終了したら、新たに製鋼スラグ13を電気炉内に投入し、次の単位還元処理を行う。前回の単位還元処理で生成した還元スラグ14の一部が、炉外に排出されずに溶融状態で電気炉内に残留しており、この還元スラグ14が次回の製鋼スラグの還元において、装入スラグとメタル中Cとの直接反応を抑制し、スラグフォーミングを防止する機能を有する。
このように単位還元処理を複数回行うことにより、電気炉内には、逐次溶鉄11が増加していく。また、溶鉄11中には製鋼スラグ中のリン酸が還元されてリンが含まれ、溶鉄11中のリン濃度が上昇する。そして、電気炉内の溶鉄量が所定の溶鉄量に至ったところで、還元処理を終了する。固定電気炉の場合は、スラグ孔の下端レベル以下、傾動炉の場合はスラグ排出下端レベル以下が、所定の溶鉄量となる。
さらに具体的に上記還元処理31について説明する。
種湯としての溶鉄([C]:0.5%~4.5%)と溶融状態の還元スラグ((T.Fe)2%以下)の入った密閉型電気炉(定常的な空気吸引のない電気炉)に製鋼スラグ((T.Fe)10%以上、(P25)1%以上)を装入する。製鋼スラグは溶融状態のまま断続的に装入してもよいし、粉状スラグを連続的に投入してもよい。図1(A)では製鋼スラグ容器5から溶融状態の製鋼スラグ13を装入する状況を示している。アーク加熱をしつつ、還元剤として炭材粉(コークス粉、石炭粉)、スラグ成分調整剤としてSiO2源(フライアッシュ、珪砂、珪石)およびAl23源(フライアッシュ、レンガ屑、等)を上方から連続的に投入する。
製鋼スラグ13を還元して還元スラグ14とし、溶鉄11中にFe、Pを移行させたのち、還元スラグ14を炉外に排出する。このとき、スラグ塩基度((CaO)/(SiO2))は還元能力を確保するために1.5以下とする。鉄分の増加およびP濃度の増加した溶鉄はそのまま保持し、溶鉄レベルがスラグ孔下端レベルか排滓口下端レベルに達するレベル以下にある限り、製鋼スラグの装入と還元をくりかえしてよい。溶鉄レベルがあらかじめ定めたレベルに到達したところで、あるいは溶鉄[P]が所定のレベルに到達した時点で、還元処理を終了する。あらかじめ定めた溶鉄レベルについては、固定電気炉の場合はスラグ孔の下限レベル以下、傾動炉の場合はスラグ排出下端レベル以下である。
還元処理で電気炉内に蓄えられた溶鉄中の[P]濃度は、還元処理で投入した製鋼スラグ中のリン酸と酸化鉄の比率によって定まる。溶鉄中の[P]濃度が高いほど、次工程の脱リン処理におけるリン濃縮プロセスの頻度が減るので生産性は向上する。下限は脱リンによって容易に10%以上の(P25)を有するスラグの生成が可能な[P]レベルであり、そのため、溶鉄中の[P]濃度は0.4%以上が好ましい。なお、例えば、脱リンスラグ100kgで(P25):10%とするには、溶鉄[P]は0.43%以上でないといけない。一方、溶鉄中の[P]濃度が高すぎると脱リンに要するスラグ量が多くなり、脱リン反応効率が低下する。よって4%を上限とする。
還元処理から次の処理に進むにあたっては、電気炉内から還元スラグを十分に排出しておくことが好ましい。還元スラグに含まれるSiOは脱リンに必要な投入石灰量の増加を招き、またAl23は肥料にとって必要ではないので、還元スラグはできるだけ排出しAl23の混入を防ぐことが望ましいからである。
還元処理が終了して電気炉内に収容された溶鉄を、そのまま電気炉内に貯留し、又は一旦電気炉から排出した上で再度同じ電気炉に装入して、次の脱リン処理に移行する。一旦電気炉から排出するのは、溶鉄を別容器に移注して当該別容器中で脱クロム処理を行う場合であり、以下に説明する。
ここで、上記還元処理と後述の脱リン処理との間に行う、脱クロム処理32について説明する。製鋼スラグを還元して生成した溶鉄中には、Pと同様にCrも濃化する。肥料取締法により、脱リン処理で得られるリン酸肥料中の(T.Cr)は、ク溶性(P25)の1/10未満に抑えなければならない、と規定されているので、上記還元処理と脱リン処理を行ったのみでは、生成した高リン酸スラグ中のCr濃度が高すぎる場合がある。スラグの脱クロムが必要な場合には、電気炉内で脱リンする前に溶鉄をできるだけ排出し、電気炉外で酸素供給によって脱クロムすることが必要である。
そこで本発明では、必要に応じて、図1(B)に示すように、前記単位還元処理を複数回行って生成又は増加した溶鉄(脱クロム前溶鉄16)の一部又は全部を一旦電気炉から別容器9に排出し、脱クロム処理32を行う。脱リンを抑制しつつ脱クロムを行うには、低塩基度(例えば(CaO)/(SiO2)<1.2)で酸化処理をすればよい。そこで、質量比で(CaO)/(SiO2)が1.5以下のスラグ共存下で、当該別容器9中の溶鉄に酸素ランス10等から酸素源を投入して溶鉄中の[Cr]濃度を0.1質量%以下まで低減する。脱リン処理をしても脱リンスラグ(高リン酸スラグ)中(T.Cr)が規定範囲内に収まる程度まで脱クロム処理を行った後、図1(C)に示すように、脱クロム後溶鉄17を同じ電気炉1に再度装入する。
上記脱クロム処理において、電気炉内の溶鉄は原則全量別容器に排出とするが、通電に支障の起きない範囲で若干のメタルを残留させる。別容器に排出したメタルと付随して排出されるスラグに酸素を供給してCrを酸化除去する。供給する酸素源は酸素ガスまたは酸化鉄を有する材料(鉄鉱石、ダスト、スケール、等)でよい。メタル[Cr]濃度が十分低い(0.05%以下)の場合には脱クロム処理を省略することができる。脱クロムした溶鉄を再び電気炉に装入する(図1(C))。このときあらかじめ脱リンに必要なフラックスを投入しておいてもよい。目的はフラックスの早期溶解と撹拌力の利用である。
還元処理が終了した後の溶鉄をそのまま電気炉内に貯留し、又は一旦電気炉から排出した上で上記脱クロム処理を行った溶鉄を再度同じ電気炉に装入して、次の脱リン処理に移行する(図1(D))。
脱リン処理33では、図1(D)に示すように、還元処理31で用いた電気炉1と同じ電気炉1であって、アーク加熱3を具備するものを用いる。還元処理で生成した高リン溶鉄に対して、電気炉1内にCaO源23及び酸素源24を投入するとともにアーク加熱3を行って脱リン処理を行い、P25濃度が10質量%以上の高リン酸スラグ15を製造する。CaO源23の投入は、スラグの塩基度を上げて脱リン反応を促進するためである。
脱リン処理33は、溶鉄中のリンを酸化してスラグ中に移行する酸化処理である。その酸化処理のための酸素源24として、本発明では、酸素ガスではなく、酸化鉄などの固体酸素源を用いることが特徴である。酸素源として従来技術のように酸素ガスを用いると、吹き込んだ酸素ガスが溶鉄と接触する火点において溶鉄が高温に熱せられるため、火点の温度が上昇する。高温では酸化反応として溶鉄中のリンの酸化よりも炭素の酸化(脱炭)が優先され、CO気泡が発生してスラグがフォーミング状態となり、スラグオーバーフローの危険が高まった。また、脱リンの進行よりも脱炭が進行することとなった。それに対して本発明は、酸素源として酸化鉄などの固体酸素源を用いる。炉内の溶鉄に酸化鉄を投入すると、酸化鉄が還元され、還元反応は吸熱反応であるために、反応領域における溶鉄の温度が低下する。温度が低下するほど、脱炭反応に優先して脱リン反応が進行するので、溶鉄の脱炭を抑制しつつ、脱リンしてスラグ中のリン酸濃度を上昇させることが可能となる。また、酸素ガスを用いる場合と比較してフォーミング発生が抑制されるので、スラグのオーバーフローのリスクを低減しつつ、十分に脱リン処理を実施することが可能となった。また、本発明で用いる電気炉はアーク加熱を有しているので、酸素源として固体酸化鉄を用いて反応が吸熱反応であるものの、アーク加熱によって熱源が補償されるので、何ら熱源の問題なく脱リン処理を行うことができる。外部熱源増加の代償としては、酸化鉄還元による鉄源の増加を享受することが可能となる。
脱リンスラグの塩基度(CaO)/(SiO2)は3~8を目標とする。理由は低すぎると脱リン能が担保できず、また高すぎるとスラグの融点が上昇して溶解できないからである。スラグの塩基度を3以上とするため、脱リン処理において電気炉内にCaO源23を投入する。また、脱リンスラグの(T.Fe)は5%~20%、望ましくは5%~15%の範囲とする。理由は低すぎると脱リン能が担保できず、高すぎると(P25)の高濃度化に支障をきたすからである。
脱リン処理で脱リン効率を上げるためには、スラグ成分の制御とともに、スラグの粘性の制御が重要である。スラグは塩基度が3以上と高塩基度であり、T.Feも低いため、同一温度ではスラグの粘性が増大する。
スラグ中に蛍石を添加するとスラグの粘性を低下させ得ることがわかっている。しかし本発明では、高リン酸スラグをリン酸スラグ肥料として用いることを目的としている。スラグ中に蛍石を含有していると、肥料として用いることができない。蛍石(CaF2)が含まれるとリン酸が溶出しにくいフルオロアパタイトが形成されるためである。従って、本発明では蛍石を用いることができない。
それに対して本発明は、アーク加熱を有する電気炉を用いて脱リン処理を行うので、アーク加熱によってスラグ温度を上昇させ、高塩基度、低T.Fe、かつ蛍石を用いない条件であっても、十分にスラグの粘性を低下させ、脱リン反応を良好に促進することができる。スラグ温度は1500℃以上を確保し、スラグの流動性、均一性を担保する。アーク加熱によって温度を調整する。アーク加熱で昇温してスラグの粘性を下げることによって、スラグの均一度を向上させ、肥料としての品質保証を担保することが容易となる。また、スラグ中に含有する粒鉄を沈降分離しやすくできるので、排出後の磁力選鉱処理を軽減または省略することができる。
脱リン処理において電気炉内に投入するCaO源23としては、溶融製鋼スラグ、製鋼スラグ粉体、生石灰粉、石灰石粉、ドロマイト粉のひとつまたは複数を用いることができる。製鋼スラグは溶融スラグでもよいし、粉状スラグでもよい。フラックス投入後または投入中に、アーク加熱によりフラックスの溶解を促進する。フラックスとして溶融スラグを用いれば、顕熱を利用できるとともに、早期に高い塩基度が得られるため、脱炭反応を抑制することができる。冷間粉体スラグを用いてもよい。製鋼スラグを脱リン剤として用いることによって、SiO2、MgOといった肥料に適したミネラル成分を活用することができる。また20%前後の(FeO)は脱リンの酸化に利用できる。ただし製鋼スラグだけではCaOとFeOが不足するので、別途、CaO源と鉄酸化物を投入する必要がある。
脱リン処理において電気炉内に投入する酸素源24としては、鉄鉱石粉、ダスト粉、スケール粉のひとつまたは複数を用いることができる。気体酸素は用いない方が脱炭反応を抑制できる。
脱リン処理において、電気炉では脱リンに必要な攪拌力が得られないので、ガス吹込によって移動律速を緩和する必要がある。挿入型ノズルでガス吹込みを行うか、底吹・横吹ガス攪拌が望ましい。ただし溶融スラグ装入時にはスラグフォーミング防止の観点からガス吹込を停止できることが重要であるため、底吹・横吹の場合は流量可変型ノズルの設置が望ましい。流量可変型ノズルとしては、小径ノズル、扁平ノズルまたはポーラスノズル等があり、溶融スラグ装入時には流量を低減できるものとする。
脱リン処理後の高リン酸スラグ中(P25)濃度は10%以上を目標とする。高リン酸肥料製造を目的とするためである。スラグ中(P25)は15%以上であるとより好ましい。
特許文献5に記載のように、脱リン精錬後のスラグの組成が、質量%で、
SiO2/P25≧0.4 (1)
CaO/P25≧2.0 (2)
25≧10% (3)
T.Fe:5%以上15%以下 (4)
であると好ましい。
普通一般に認められているリン酸の化合形態として、5CaO・P25・SiO2の複塩が最もクエン酸に溶けやすい。この化学式によれば、質量比でCaO:P25:SiO2=1.97:1:0.423となる。SiO2/P25の比が上記式(1)を満たすときに、スラグ中のリン酸がクエン酸に溶解するリン酸可溶率が高い水準に維持されている。そこで本発明においても、脱リン精錬後のスラグの組成が上記(1)式を満たしていると好ましい。
脱リンスラグは、CaO/P25比を2.0以上とすることにより、リン酸可溶率を0.4~0.7の高位に保持することができる。即ち、上記(2)式を満たしていると好ましい。
脱リン精錬後のスラグをリン酸肥料原料とするに際し、スラグ中のP25濃度が高いほど、リン肥としての価値が増大する。本発明において、P25≧10%として上記(3)式を満足することにより、必要なリン酸量を土壌に与えるに際して肥料使用量の増大を防止することができ、リン肥としての価値を得ることができる。P25≧15%であるとより好ましい。
本発明の脱リン精錬における脱リン反応は酸化反応であり、スラグ中のT.Fe濃度で示される酸化鉄を酸素源として、溶鉄中のリンが酸化される。そのため、スラグ中のT.Fe濃度が低すぎると脱リン精錬における脱リン能が極端に低下してP25濃縮効果が薄れるが、スラグ中T.Fe濃度が5%以上であれば脱リン能を発揮することができる。一方、スラグ中のT.Fe濃度が高くなりすぎると、スラグ中のP25濃度を薄める悪影響が出てくる。本発明ではスラグのT.Fe濃度上限を15%とすると好ましい。
CaO/P25≧2の条件の下でスラグ中のP25濃度を高めようとすると、SiO2や酸化鉄によるスラグ希釈効果を防止するため、T.Feを低下し塩基度を上昇することが必要となり、そのような成分ではスラグの融点や粘性を高めることとなる。従って、本発明のように、電気炉のアーク加熱によってスラグの温度を上昇させることにより、均一な目標組成の溶融スラグを得る上できわめて有効な手段となることがわかる。
電気炉内での還元処理と脱リン処理を終了し、電気炉内の溶鉄とスラグが目標の温度、組成に到達したら、得られた高リン酸スラグを電気炉から排出する。図1(D)には、電気炉1から高リン酸スラグ容器7に高リン酸スラグ15を移注している状況を示している。高リン酸スラグ15は、そのまま、リン酸スラグ肥料として利用することができる。
電気炉から高リン酸スラグを排出した後、電気炉内には溶鉄が残されている。本発明の脱リン処理は、高リン酸スラグを製造することが目的であるため、脱リン処理後の電気炉内の溶鉄中リン濃度は、下がるところまで下げればよい。そのため、脱リン処理後の溶鉄中リン濃度は、通常の高炉溶銑よりも高いリン濃度となっていることが多い。このままでは、通常の製鋼精錬の主原料として用いると、製鋼精錬での脱リン負荷が増加することとなる。そこで本発明では、高リン酸スラグ15を電気炉から排出した後(図1(D))、炉内に溶鉄を残留させた上で、図1(E)に示すように、さらに電気炉内に生石灰または石灰石と酸化鉄を投入して溶鉄中[P]濃度を0.15質量%以下、好ましくは0.12質量%以下まで低減する処理(仕上げ脱リン処理34)を行うと好ましい。仕上げ脱リン処理34においては、生石灰粉、石灰石粉と酸化鉄粉を投入するとともにガス攪拌を行い、必要に応じてアーク加熱を行う。仕上げ脱リン処理の目的は溶鉄[P]の低減なので、製鋼スラグではなく、生石灰または石灰石(CaO源23)と酸化鉄(酸素源24)の投入で脱リンする。できるだけ少量スラグで目的を達成する。仕上げ脱リン処理を行ったのち、電気炉から溶鉄を排出して、通常の高炉溶銑とともに製鋼原料として利用することができる。図1(E)では、取鍋8に脱リン溶鉄18を移注している。電気炉内には、次回還元処理の種湯として必要な溶鉄を残存させる。排出された脱リン溶鉄18はその[P]レベルに応じて、溶銑として転炉に装入、溶鋼として転炉に装入、凝固させ鉄スクラップとして転炉に装入、等の利用が考えられる。
仕上げ脱リン処理後には、炉内にスラグおよび次回種湯としての一部の溶鉄が残留する。本発明では、スラグと種湯を残置したまま、次の還元処理を始める。これにより、仕上げ脱リン処理で精製したスラグをそのまま、次の還元処理で還元してリンを回収することができる。
ここで、本発明の還元処理と脱リン処理における溶鉄中[C]濃度について説明する。
還元処理でのスラグ還元時において、製鋼スラグを溶融状態のまま還元処理炉に装入することは、必要エネルギー低減の観点から効果的である。その際、突沸を防ぎ、安定した操業を図るためには、電気炉内に形成された溶鉄[C]は低いほうがよい。本発明は、外部エネルギーとしてアーク加熱が利用できるので、還元処理後であって脱リン処理前の溶鉄[C]が下がっても脱リン処理時に熱量不足に陥ることはなく、還元処理時において溶鉄中[C]濃度を低下させることが可能である。
脱リン処理においては、本発明では、脱炭反応を抑制して脱リン反応を促進させることで脱リン処理後の溶鉄[C]濃度を高くし、次工程での熱源を保持することができる。また脱炭反応を抑制することで、脱リン中のスラグフォーミングを抑制することができる。脱炭反応を抑制する方法としては、以下の方法があるが、いずれもアーク加熱等の外部加熱が有効である。
(1)CaO粉のアーク溶解、または溶融脱炭スラグの利用によるスラグ塩基度の早期上昇(P25活量の低下)とそれによる脱炭抑制
(2)酸素源として酸素ではなく酸化鉄の適用とそれによる脱リン反応領域の温度低下による優先脱炭
アーク加熱を有する直流電気炉を用い、表1に示す条件で、本発明によってリン酸スラグ肥料の製造を行った。溶鉄とスラグの代表成分を表1に示す。
Figure 0006992604000001
還元処理開始前の電気炉内には、種湯としての溶鉄70トンと、溶融スラグ26.5トンが収容されている。還元処理として、単位還元処理を6回繰り返す処理を行った。各単位還元処理において、電気炉に製鋼スラグを30トン、炭材を3.6トン投入する。1回目の単位還元処理排滓後、6回目の単位還元処理排滓後の炉内溶鉄・スラグ量、排出スラグ量を表1に示す。還元処理終了時に炉内には121.3トンの溶鉄が収容されていた。6回目の単位還元処理とスラグ排出を行った後、脱クロム処理のため、120トンの溶鉄を別容器に排出し、脱クロム処理を行った。
脱クロム処理後の溶鉄を再度電気炉に装入し、表1に示す条件で脱リン処理を行った。脱リン処理で添加した酸化鉄が還元され、溶鉄は124トンに増加した。脱リン処理後の炉内スラグ(22トン)中(P25)濃度は17.0%に達し、高リン酸スラグを形成することができた。
高リン酸スラグ20トンを電気炉から排出した後、さらに表1に示す条件で仕上げ脱リン処理を行った。溶鉄中[P]濃度が0.08%まで低下したので、この溶鉄56トンを電気炉から排出し、通常の製鋼精錬の主原料として高炉溶銑とともに用いることができた。電気炉内には70トンの溶鉄、6.2トンのスラグが残ったので、この溶鉄を種湯として次の還元処理を開始することができた。
リン酸と酸化鉄を含有する製鋼スラグとして、表2に代表成分を示すものを準備した。この製鋼スラグと炭材とを電気炉内に投入し、アーク加熱を行って、投入した炭材によって製鋼スラグを還元し、還元したスラグ(還元スラグ)を電気炉から排出する処理(単位還元処理)を複数回行って還元処理を実施し、電気炉内に高リン溶鉄と、その上に還元スラグを生成した。還元スラグを電気炉内から排出した。その後、電気炉内に生成した100トンの高リン溶鉄(成分と温度を表3に示す。)を用いて、以下の比較例、本発明例1~4に示す脱リン処理を実施した。結果を表3に示す。表3の「製鋼スラグ」欄において、「Cold」は固体状態の製鋼スラグを意味し、「Hot」は溶融状態の製鋼スラグを意味している。表3の添加剤・酸素ガスの欄には、溶鉄トンあたりの添加原単位(kg/t又はNm3/t)を記載している。
Figure 0006992604000002
Figure 0006992604000003
[比較例]
転炉において、前記高リン溶銑を装入した上で、生石灰7.5t、鉄鉱石5.0t、珪砂1.8t、軽焼ドロマイト5.0tを投入し、300Nm3/hの窒素底吹攪拌をしながら酸素上吹きを行って、高リン溶鉄100tの脱リン処理を行った。酸素吹込量は12000Nm3/h×20min/60=4000Nm3であった。脱リン処理前の溶銑条件は、[C]:4.5%、[P]:2.1%、溶銑温度1350℃であった。
送酸およびフラックス投入後、鉄浴の条件は[C]:0.2%、[P]:0.14%、温度:1620℃となり、スラグ条件は、(T.Fe):18.0%、(P25):18.8%、(CaO)/(SiO2):4.2、スラグ量:22.5tとなった。
C、P、Feの燃焼熱でスラグメタルの昇温を行った。脱リン後は凝固後、鉄スクラップとして転炉に装入した。フラックスの溶解に時間がかかり、脱炭反応が先行したため、激しいフォーミングが発生した。
生成したスラグは肥料に適した組成であったが、均一性が乏しく、また粒鉄を多量に含有していた。また、溶鉄中[C]が0.2%まで下がっても[P]が0.2%残っていたため、仕上げ脱リンが十分できず、そのまま高リンスクラップとし、高リン鋼種に限定して転炉で使用した。
[本発明例1]
還元に用いた直流還元電気炉を用い、還元処理で得られた[C]:3.5%、[P]:2.0%、[Cr]:0.03%、温度1350℃の溶鉄100tを、高リン溶鉄として電気炉に装入した。
高リン溶鉄の脱リン処理を行うに際し、CaO源として3mm以下に粉砕した転炉脱炭スラグ:14.8t、生石灰粉:4.0t、酸素源として鉄鉱石粉:11.8tを約60分間で連続的に電気炉内に投入した。また同時に20MWでアーク加熱を60分間行ってフラックスを完全に溶解した。その後、通電を停止して浸漬ランスを挿入し、15分間、攪拌を行った。更に15分間、25MWでスラグを再加熱し流動性を高めた。
その結果、処理後の鉄浴の条件は[C]:2.5%、[P]:0.12%、温度:1615℃となり、スラグ条件は、(T.Fe):12.1%、(P25):18.9%、(CaO)/(SiO2):4.9、スラグ量:23.0tとなり、高リン酸スラグを製造することができた。このとき消費電力は26.1MWhであった。
酸素源として酸素ガスを用いず、鉄鉱石を酸素の供給源としたため、反応サイトの温度を低位に保持できたため、脱リン反応が促進され、スラグフォーミングは穏やかであった。また脱炭反応が抑制されたため、処理終了後も[C]は2.5%を維持していた。
スラグの流動性はよく粒鉄の殆どない均一な性状で、肥料効果の高い高リン酸スラグを得ることができた。
脱リン後のメタル[P]は通常溶銑レベルなので、そのままトーピードカーに装入し、通常溶銑と混合した後、転炉工程に送った。[C]は通常溶銑よりも低いが、温度が高かったので熱源不足には成らなかった。
[本発明例2]
本発明例1と同様の方法で、[P]が3.2%と濃化が進んだ高リン溶鉄について脱リン処理を施した。
脱リン量が大きくなったため、発熱量は増加したが、スラグ量が36.0tと増加したため、消費電力量は26.1MWhから32.8MWhに増加した。
[本発明例3]
本発明例1と同様の方法で、還元工程で[C]が2.5%まで下がった溶鉄について脱リン処理を施した。脱炭量が減少したため、酸化発熱量が減少し、消費電力量は23.3 MWhとなった。
[本発明例4]
本発明例1と同様の方法で、高リン溶鉄の脱リン処理を行った。フラックスとなる製鋼スラグを溶融状態のまま、電気炉に断続的に装入した。装入完了後、生石灰粉、鉄鉱石粉を連続投入し、同時に20~30MWでフォーミングを制御しながらアーク加熱を行った。処理後の成分、温度は本発明例1とほぼ同等であったが、1300℃の製鋼スラグの顕熱を利用できたことで消費電力量は20.5MWhに低下した。
1 電気炉
2 電極
3 アーク加熱
4 ランス
5 製鋼スラグ容器
6 還元スラグ容器
7 高リン酸スラグ容器
8 取鍋
9 別容器
10 酸素ランス
11 溶鉄
12 スラグ
13 製鋼スラグ
14 還元スラグ
15 高リン酸スラグ
16 脱クロム前溶鉄
17 脱クロム後溶鉄
18 脱リン溶鉄
21 炭材
22 スラグ改質剤
23 CaO源
24 酸素源
31 還元処理
32 脱クロム処理
33 脱リン処理
34 追加脱リン処理

Claims (5)

  1. リン酸と酸化鉄を含有する製鋼スラグと、炭材とを電気炉内に投入し、アーク加熱を行って、投入した炭材によって製鋼スラグを還元し、還元したスラグ(還元スラグ)を電気炉から排出する処理を「単位還元処理」と称し、
    前記単位還元処理を1回又は複数回行って生成又は増加した溶鉄を、そのまま電気炉内に貯留し、又は一旦電気炉から排出した上で再度同じ電気炉に装入し、
    電気炉内にCaO源及び酸素源を投入するとともにアーク加熱を行って溶鉄の脱リン処理を行い、P25濃度が10質量%以上の高リン酸スラグを製造することを特徴とするリン酸スラグ肥料の製造方法。
  2. 前記脱リン処理において電気炉内に投入する前記CaO源が、溶融製鋼スラグ、製鋼スラグ粉体、生石灰粉、石灰石粉、ドロマイト粉のひとつまたは複数であり、
    前記酸素源が、鉄鉱石粉、ダスト粉、スケール粉のひとつまたは複数であることを特徴とする請求項1に記載のリン酸スラグ肥料の製造方法。
  3. 前記脱リン処理において、ランス挿入によるガス吹込、または電気炉の炉底または炉壁に流量可変型ガス吹込羽口またはノズルを設けて鉄浴内にガスを導入し、鉄浴を攪拌することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のリン酸スラグ肥料の製造方法。
  4. 前記単位還元処理を1回又は複数回行って生成又は増加した溶鉄の一部又は全部を一旦電気炉から別容器に排出し、
    質量比で(CaO)/(SiO2)が1.5以下のスラグ共存下で、当該別容器中の溶鉄に酸素源を投入して溶鉄中の[Cr]濃度を0.1質量%以下まで低減し、当該溶鉄を再度同じ電気炉に装入することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のリン酸スラグ肥料の製造方法。
  5. 前記高リン酸スラグを電気炉から排出し、さらに電気炉内に生石灰または石灰石と酸化鉄を投入して溶鉄中[P]濃度を0.15質量%以下まで低減する処理(以下「仕上げ脱リン処理」という。)を行ったのち、当該溶鉄を排出して製鋼原料として利用し、炉内に残留したスラグおよび溶鉄を残置したまま、次の前記還元処理を始めることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のリン酸スラグ肥料の製造方法。
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