JP6011728B2 - 溶銑の脱燐処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、上吹きランスから転炉型精錬炉内の溶銑に酸素ガスを吹き付けるとともに、この酸素ガスの溶銑浴面への衝突面に、CaOを主成分とする脱燐用媒溶剤を前記上吹きランスを介して吹き付けて行う溶銑の脱燐処理方法に関する。
近年、高炉及び転炉を備えた銑鋼一貫製鉄所においては、コスト面及び品質面で有利であることから、転炉での脱炭精錬の前に溶銑に対して予備処理として脱燐処理(「予備脱燐処理」ともいう)を施し、溶銑中の燐を予め除去する精錬方法が広く行われている。これは、熱力学的に、脱燐反応は精錬温度が低いほど進行しやすく、つまり、溶鋼段階よりも温度の低い溶銑段階の方が脱燐反応は進行しやすく、少ない精錬剤で脱燐精錬を行うことができることに基づいている。
この溶銑の脱燐処理は、生石灰などのCaOを主成分とする脱燐用媒溶剤を添加し、且つ、酸素ガスや酸化鉄などの酸素源を脱燐剤として添加し、脱燐剤(酸素源)で溶銑中の燐を酸化し、生成した燐酸化物(P25)を、脱燐用媒溶剤の滓化によって形成されるスラグ中に3CaO・P25(「Ca3(PO4)2」とも記す)なる安定形態の化合物として固定するという方法で行われている。つまり、使用する脱燐用媒溶剤はCaOを含有することが必須条件となる。
このように、溶銑の脱燐処理においては、酸素ガスなどの酸素源の供給、及び、スラグ中のCaOが重要な役割を担っている。それゆえ、溶銑の脱燐処理では、酸素源の供給速度とCaOの供給速度との比を特定して脱燐効率を高める方法や、生成するスラグのFeO濃度を特定して脱燐効率を高める方法が、多数提案されている。
例えば、特許文献1には、溶銑の脱燐処理において溶銑に酸素源を添加する際に、酸素源の添加速度をX(kg/min)、脱燐用媒溶剤のCaO換算の添加速度をY(kg/min)としたとき、酸素源の添加速度Xに対して、「0.50≦X/Y≦2.0」を満足する条件でCaO源である脱燐用媒溶剤を溶銑に添加して溶銑処理する方法が提案されている。この方法は、供給する酸素源によってFeOを生成させ、スラグ中のFeO濃度を高めることで、脱燐効率を向上させるという方法である。
また、特許文献2には、転炉形式の炉を用いて、実質的にフッ素を含有しない脱燐用媒溶剤を使用して溶銑を脱燐処理する際に、脱燐処理後のスラグ中のCaOとSiO2との質量濃度比で定義されるスラグ塩基度((質量%CaO)/(質量%SiO2))を2.5以上3.5以下とし、且つ脱燐処理後の溶銑温度を1320℃以上1380℃以下にするとともに、全吹錬時間の60%が経過する前から吹錬終了まで、底吹きガス流量を溶銑1トンあたり0.18Nm3/min以下に保つことにより、脱燐処理後のスラグ中T.Fe濃度を5質量%以上として脱燐処理する方法が提案されている。
また、特許文献3には、上吹きランスを通じて気体酸素とCaO源である精錬剤を吹き付けるとともに処理後スラグ量を30kg/溶銑-ton以下とする低燐溶銑の製造方法において、珪素含有量が0.15質量%以下の溶銑に対して脱燐処理を行う方法や、気体酸素の供給速度(Nm3/(min・溶銑-ton))と精錬剤中のCaO純分の供給速度(kg/(min・溶銑-ton)との比の値を所定の範囲内とする方法が提案されている。
更に、特許文献4には、転炉形式の炉を用いて、CaF2含有物質を使用せずにCaO含有粉体をランスから酸素含有ガスとともに上吹きして溶銑を脱燐処理する際に、処理前の珪素含有量[Si](質量%)が0.30以上の溶銑に対して、CaO含有粉体中のCaO純分の上吹き速度(kg/min)と酸素ガスの質量流量(kg/min)との比の値を0.56+0.5×[Si]〜0.56+1.5×[Si]の範囲とする溶銑の脱燐方法が提案されている。
特開2007−92181号公報 特開2008−106296号公報 特開2004−83989号公報 特開2011−12286号公報
しかしながら、上記従来技術には以下の問題点がある。
即ち、特許文献1では、酸素源の添加速度と脱燐用媒溶剤のCaO換算の添加速度との比(X/Y)の範囲が広いことから、溶銑の珪素含有量が高い条件下では、高い脱燐量を維持することができなくなる場合が発生する。つまり、溶銑の珪素含有量に影響されずに、効率的な脱燐処理を安定して実施することはできない。従って、脱燐処理において冷鉄源の溶解を促進させる目的で、熱源となる、溶銑中の珪素の含有量を高めた操業には、特許文献1の技術は適用することができない。本発明者らは、特許文献1は、溶銑の珪素含有量が0.10質量%以下の場合に好適であることを確認している。
特許文献2は、脱燐処理後のスラグの塩基度を規定するだけであり、脱燐処理においてスラグの塩基度は重要な因子ではあるものの、脱燐処理後のスラグの塩基度を特許文献2のように確保しても、脱燐不足になる場合が発生する。つまり、特許文献2のように、脱燐処理後のスラグの塩基度を規定するだけでは、効率的な脱燐処理を安定して実施することはできない。
特許文献3は、CaO源としての精錬剤と気体酸素とを上吹きする溶銑の脱燐処理方法において、気体酸素の供給速度とCaO純分の供給速度との比が特定の範囲において溶銑の脱燐に有利であることを教示している。しかし、この技術は、処理前の溶銑の珪素含有量が例えば0.15質量%以下と少なく、処理後のスラグ量が30kg/溶銑-ton以下となることを前提とするものであり、珪素含有量を十分に低下させていない溶銑を脱燐処理する場合には、脱燐効率が低くて溶銑の燐含有量を十分に低下できない場合がある。
特許文献4は、CaO含有粉体と気体酸素とを上吹きする溶銑の脱燐処理方法において、処理前の溶銑の珪素含有量が0.30質量%以上と多い場合に、CaO純分の上吹き速度(kg/min)と酸素ガスの質量流量(kg/min)との比の値について操業の指針を与えている。しかし、この方法によれば、処理前の溶銑の珪素含有量が高くなるほど、CaO純分の上吹き速度と酸素ガス質量流量との比の適正範囲は高値側にシフトするとともに、酸素ガスの総供給量も増大するので、溶銑の珪素含有量が多い場合にはCaO含有粉体の供給量が過剰となってスラグ量が増大し、効率的な脱燐処理を行うことは困難である。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、転炉型精錬炉内の溶銑に上吹きランスから酸素ガスを吹き付けるとともに、この酸素ガスの溶銑浴面への衝突面にCaOを主成分とする脱燐用媒溶剤を前記上吹きランスを介して吹き付けて溶銑を脱燐処理する際に、上吹きランスからの酸素ガスの供給量に応じて上吹きランスからの前記脱燐用媒溶剤の供給量を適切に調整することで、脱燐反応を効率的に行うことを可能とする、溶銑の脱燐処理方法を提供することである。
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]転炉型精錬炉内の溶銑に上吹きランスから酸素ガスを吹き付けるとともに、CaOを主成分とする脱燐用媒溶剤を前記酸素ガスの溶銑への衝突面に前記上吹きランスを介して吹き付け、前記酸素ガスによって溶銑中の燐を酸化し、生成した燐酸化物を滓化した前記脱燐用媒溶剤中に取り込むことにより溶銑中の燐を除去する脱燐処理方法において、脱燐処理前の珪素含有量が0.20質量%以上の溶銑を脱燐処理するにあたり、炉内に供給される酸素ガスのうちで脱珪反応に使用される分を除いた酸素ガスを脱珪外酸素量(kg/溶銑-ton)と定義したとき、上吹きランスから溶銑浴面に吹き付け添加する、CaOを主成分とする脱燐用媒溶剤中のCaO量(kg/溶銑-ton)と、前記脱珪外酸素量との比[CaO量/脱珪外酸素量]が0.90未満になるように、脱珪外酸素量に応じて上吹きランスから吹き付け添加する前記脱燐用媒溶剤の添加量を調整する、溶銑の脱燐処理方法。
[2]前記比[CaO量/脱珪外酸素量]を0.80以上0.90未満の範囲内とする、上記[1]に記載の溶銑の脱燐処理方法。
[3]脱燐処理前の珪素含有量が0.30質量%以上の溶銑を脱燐処理するにあたり、炉内に供給されるCaOのうちでCaO・SiO2(カルシウムシリケート)を生成するために使用されるCaO分を除いたCaOを脱珪外CaOと定義したとき、前記比[CaO量/脱珪外酸素量]を0.80以上0.90未満の範囲内として溶銑を脱燐処理する場合には、前記脱珪外CaOが6〜9kg/溶銑-tonの範囲内になるように、上吹きランスから吹き付け添加する、CaOを主成分とする脱燐用媒溶剤の添加量を調整し、前記比[CaO量/脱珪外酸素量]を0.80未満の範囲として溶銑を脱燐処理する場合には、前記脱珪外CaOが8kg/溶銑-ton以上になるように、上吹きランスから吹き付け添加する、CaOを主成分とする脱燐用媒溶剤の添加量を調整する、上記[1]に記載の溶銑の脱燐処理方法。
本発明によれば、上吹きランスから添加する、CaOを主成分とする脱燐用媒溶剤中のCaO量と脱珪外酸素量との比[CaO量/脱珪外酸素量]を、CaOを主成分とする脱燐用媒溶剤中のCaOの脱燐効率が高い範囲内に制御して脱燐処理するので、添加された、CaOを主成分とする脱燐用媒溶剤は、生成される燐酸化物(P25)を効率的に吸収し、その結果、従来に比較してより効率的に脱燐処理を行うことが実現される。
図1は、本発明を実施するうえで好適な転炉型精錬炉設備の1例を示す概略図である。 図2は、比[CaO量/脱珪外酸素量]と脱燐石灰効率との関係を示す図である。 図3は、脱珪外酸素量を11〜13Nm3/溶銑-ton、比[CaO量/脱珪外酸素量]を0.80以上0.90未満として溶銑を脱燐処理したときの脱燐処理前の溶銑中珪素濃度と脱燐処理後の溶銑中燐濃度との関係を示す図である。 図4は、比[CaO量/脱珪外酸素量]が0.70未満の場合での、脱珪外CaOと脱燐量との関係の調査結果を示す図である。 図5は、比[CaO量/脱珪外酸素量]が0.70以上0.80未満の場合での、脱珪外CaOと脱燐量との関係の調査結果を示す図である。 図6は、比[CaO量/脱珪外酸素量]が0.80以上0.90未満の場合での、脱珪外CaOと脱燐量との関係の調査結果を示す図である。 図7は、比[CaO量/脱珪外酸素量]が0.90以上1.00未満の場合での、脱珪外CaOと脱燐量との関係の調査結果を示す図である。 図8は、脱燐処理後の溶銑中炭素濃度と溶銑中燐濃度との関係を、本発明例1と従来例1とで比較して示す図である。 図9は、脱燐処理前の溶銑中珪素濃度と脱燐処理におけるCaO使用量との関係を、本発明例2と従来例2とで比較して示す図である。 図10は、脱燐処理前の溶銑中珪素濃度と脱燐処理での溶銑の脱燐量との関係を、本発明例2と従来例2とで比較して示す図である。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明に係る脱燐処理で用いる溶銑は、高炉などの溶銑製造設備で製造された溶銑であり、溶銑製造設備で製造された溶銑を、溶銑鍋や混銑車などの溶銑搬送容器で受銑し、受銑した溶銑を、脱燐処理を実施する転炉型精錬炉設備に搬送する。溶銑の珪素含有量が、例えば0.40質量%超えと多い場合には、少ない脱燐用媒溶剤の使用量で効率的に脱燐処理するために、脱燐処理の前に溶銑中の珪素を予め除去(「溶銑の脱珪処理」という)してもよい。但し、本発明では、珪素含有量が0.20質量%以上の珪素含有量の高い溶銑であっても効率的に脱燐処理できることから、脱珪処理を行う必要はない。
脱珪処理を行う場合でも、珪素含有量が0.20質量%未満となるまで脱珪処理する必要はなく、脱珪処理後の溶銑の珪素含有量を0.20質量%以上とすればよい。但し、少ない脱燐用媒溶剤の使用量で効率的に脱燐処理する観点から、溶銑の珪素含有量は0.40質量%以下であることが望ましい。つまり、脱珪処理を行う場合には、溶銑の珪素含有量を0.20質量%以上0.40質量%以下の範囲に低減させたうえで本発明の脱燐処理方法を適用することが好ましい。
溶銑の珪素含有量をこの範囲まで下げる手段としては、溶銑に酸素ガスまたは酸化鉄などの酸素源を供給し、これらの酸素源によって溶銑中の珪素を酸化させ、珪素を酸化物(SiO2)として強制的に除去する方法を用いることができる。溶銑に脱珪処理を実施した場合には、生成したスラグを脱燐処理の前までに排滓しておく。
溶銑の脱燐処理は、溶銑鍋或いは混銑車などの溶銑搬送容器内で行うこともできるが、転炉型精錬炉は、これらの溶銑搬送容器に比べてフリーボードが大きく、溶銑を強攪拌することが可能であり、少ない脱燐用媒溶剤の使用量で迅速に脱燐処理を行うことができる。従って、本発明においては、転炉型精錬炉を用いて脱燐処理を実施する。図1は、本発明を実施するうえで好適な転炉型精錬炉設備の1例を示す概略図である。
図1に示すように、転炉型精錬炉設備1は、その外殻を鉄皮3で構成され、鉄皮3の内側に耐火物4が施工された転炉型精錬炉2と、この転炉型精錬炉2の内部に挿入され、上下方向に移動可能な上吹きランス5とを備えている。転炉型精錬炉2の上部には、脱燐処理終了後に処理後の溶銑18を出湯するための出湯口6が設けられ、また、転炉型精錬炉2の炉底部には、撹拌用ガスを吹き込むための底吹き羽口7が設けられている。この底吹き羽口7はガス導入管(図示せず)と接続されている。また、転炉型精錬炉2の上方には、転炉型精錬炉2から発生する排ガスを集めるためのフード8が設けられ、また、各種精錬剤を転炉型精錬炉2の内部に投入するための原料添加装置9が設置されている。この原料添加装置9としては、例えば、ホッパー10、ホッパー10の下部に設置される切出装置11、切出装置11につながり、フード8を貫通するシュート12などからなる原料供給装置を使用することができる。図1では、鉄鉱石などの酸化鉄21を収容するホッパー10を1基のみ記載しているが、実際には複数基のホッパーが設置されている。
上吹きランス5には、脱燐精錬用の酸素ガス(工業用純酸素ガス)を供給するための酸素ガス供給管13と、上吹きランス5を冷却するための冷却水を供給・排出するための冷却水給排水管(図示せず)とが接続されている。酸素ガス供給管13は途中で媒溶剤供給管14に枝分かれし、媒溶剤供給管14はディスペンサー17を経由した後、再度、酸素ガス供給管13に合流している。ディスペンサー17には、生石灰などのCaOを主成分とする粉状の脱燐用媒溶剤(以下、「CaO系脱燐用媒溶剤20」と記す)が収容されており、ディスペンサー17に導入された酸素ガスはCaO系脱燐用媒溶剤20の搬送用ガスとして機能し、CaO系脱燐用媒溶剤20は酸素ガスとともに上吹きランス5の先端から炉内の溶銑18に向けて吹き付けられるように構成されている。この場合、CaO系脱燐用媒溶剤20は、酸素ガスと溶銑浴面との衝突位置(「火点」という)に添加される。酸素ガス供給管13には遮断弁15が設けられ、媒溶剤供給管14には遮断弁16が設けられており、遮断弁15及び遮断弁16の開閉によって、酸素ガスのみを炉内に供給できるように構成されている。
必要に応じて転炉型精錬炉2に鉄スクラップなどの冷鉄源を装入した後、転炉型精錬炉2に溶銑18を装入し、底吹き羽口7からArガスや窒素ガスなどの不活性ガスを攪拌用ガスとして吹き込みながら、上吹きランス5から酸素ガスとともにCaO系脱燐用媒溶剤20を溶銑18に吹き付け添加し、炉内の溶銑18に対して脱燐処理を実施する。その際に、必要に応じて原料添加装置9から酸化鉄21を溶銑浴面に上置き添加してもよい。
溶銑18に含有される燐は酸素ガスによって酸化されて燐酸化物(P25)となり、炉内に添加されたCaO系脱燐用媒溶剤20の滓化によって形成されるスラグ19に、3CaO・P25(「Ca3(PO4)2」とも記す)なる安定形態の化合物として固定され、溶銑18の脱燐反応が進行する。酸化鉄21は、CaO系脱燐用媒溶剤20の滓化促進剤として機能するのみならず、スラグ19の酸素ポテンシャルを高めてスラグ19の脱燐能を高める機能を有することから、酸化鉄21の添加によって脱燐反応が促進される。但し、上吹きランス5から供給される酸素ガスによって炉内にはFeOが生成されることから、酸化鉄21の添加は本発明において必須条件ではない。
本発明者らは、このようにして実施する溶銑18の脱燐処理において、溶銑18の珪素含有量が高い場合も効率的に脱燐処理を行うことを目的として、上吹きランス5から供給するCaO系脱燐用媒溶剤中のCaO量と上吹きランス5から供給する酸素ガス量との比(=CaO量/酸素ガス量)の脱燐反応に及ぼす影響を調査した。上吹きランス5から供給する酸素ガスは、溶銑18に含有される珪素の除去反応(「脱珪反応」という)にも消費される。溶銑の脱燐処理において、精錬初期の脱珪反応が優先して起こる期間を「脱珪期」と呼び、その後を「脱燐期」と区別することもある。
そこで、この調査にあたり、脱燐反応に及ぼす酸素ガス量のみの影響を把握するために、炉内に供給される酸素ガスのうちで脱珪反応に使用される分を除いた酸素ガスを「脱珪外酸素量」と定義した。調査では、上吹きランス5から溶銑浴面に吹き付け添加するCaO系脱燐用媒溶剤中のCaO量(kg/溶銑-ton)と脱珪外酸素量(kg/溶銑-ton)との比[CaO量/脱珪外酸素量]を種々変化させ、比[CaO量/脱珪外酸素量]の脱燐反応に及ぼす影響を調査した。尚、本発明では、比[CaO量/脱珪外酸素量]を、単に「CaO/O」とも記す。
調査結果を図2に示す。図2に示すように、比[CaO量/脱珪外酸素量]が0.90未満であれば、脱燐石灰効率は18〜20%を維持するが、比[CaO量/脱珪外酸素量]が0.90以上になると、脱燐石灰効率が低下することがわかった。図2は、比[CaO量/脱珪外酸素量]と脱燐石灰効率との関係を示す図である。ここで、脱燐石灰効率とは、CaO系脱燐用媒溶剤中のCaO量を同一添加量として溶銑18を脱燐処理したときに、添加したCaOのなかで、3CaO・P25の化合物を形成するCaO分の質量比率を百分率で表示したものである。
比[CaO量/脱珪外酸素量]が0.90未満である、脱燐石灰効率がほとんど低下しない領域では、CaO系脱燐用媒溶剤20を炉内に供給すれば、供給したCaO系脱燐用媒溶剤20は、或る一定の割合で脱燐反応に寄与し得る。つまり、比[CaO量/脱珪外酸素量]が0.90未満の領域は、CaO系脱燐用媒溶剤20の添加量を増加させるほど脱燐量が増加する領域となる。一方、比[CaO量/脱珪外酸素量]が0.90を超えた、脱燐石灰効率が低下する領域では、大量のCaO系脱燐用媒溶剤20を供給しても、CaO系脱燐用媒溶剤20の脱燐反応に寄与する割合が低いことから、過剰に添加したCaO系脱燐用媒溶剤20は脱燐反応に寄与しない。従って、比[CaO量/脱珪外酸素量]が0.90を超えた領域は、単に、CaO系脱燐用媒溶剤20が過剰に添加された領域となる。
即ち、CaO系脱燐用媒溶剤20の過剰添加を防止するためには、CaO系脱燐用媒溶剤20が脱燐反応に有効に寄与し得る範囲に、比[CaO量/脱珪外酸素量]を制御する必要があり、その具体的な数値は0.90未満であることがわかった。この範囲では、CaO系脱燐用媒溶剤20の添加量の多い方が、脱燐量が増大して溶銑の燐含有量を低下するのに有利となることから、比[CaO量/脱珪外酸素量]は0.6以上、より望ましくは0.80以上とすることが好ましい。
本発明は上記知見に基づくものであり、本発明に係る転炉型精錬炉2における溶銑18の脱燐処理方法は、転炉型精錬炉内の溶銑18に上吹きランス5から酸素ガスを吹き付けるとともに、CaO系脱燐用媒溶剤20を前記酸素ガスの溶銑18への衝突面に前記上吹きランス5を介して吹き付け、前記酸素ガスによって溶銑中の燐を酸化し、生成した燐酸化物を滓化したCaO系脱燐用媒溶剤中に取り込むことにより溶銑中の燐を除去する脱燐処理方法において、脱燐処理前の珪素含有量が0.20質量%以上の溶銑18を脱燐処理するにあたり、上吹きランス5から溶銑浴面に吹き付け添加するCaO系脱燐用媒溶剤中のCaO量(kg/溶銑-ton)と、脱珪外酸素量(kg/溶銑-ton)との比[CaO量/脱珪外酸素量]が0.90未満になるように、脱珪外酸素量に応じて上吹きランス5から吹き付け添加するCaO系脱燐用媒溶剤20の添加量を調整することを特徴とする。
比[CaO量/脱珪外酸素量]を求めるにあたり、1Nm3/溶銑-tonの酸素ガス量は1.43kg/溶銑-tonの酸素添加量に相当し、1kgの珪素を脱珪するために必要な酸素量は1.142kg(=1kg×(16×2)/28)となる。従って、珪素濃度がZ(質量%)である溶銑を、供給する酸素ガス総量をF0(Nm3/溶銑-ton)として脱燐処理する場合、脱珪用酸素量(kg/溶銑-ton)は下記の(1)式で表され、脱珪外酸素量(kg/溶銑-ton)は下記の(2)式で表され、上吹きランス5から供給するCaO量(kg/溶銑-ton)は、下記の(3)式で求めることができる。
脱珪用酸素量(kg/溶銑-ton)=(Z/100)×1000×1.142 …(1)
脱珪外酸素量(kg/溶銑-ton)=F0×1.43−脱珪用酸素量(kg/溶銑-ton) …(2)
CaO量(kg/溶銑-ton)=脱珪外酸素量(Nm3/溶銑-ton)×([CaO/O]の値) …(3)
ここで、酸素ガス総量或いは脱珪外酸素量は、溶銑温度、スクラップ使用量、処理前の溶銑中珪素含有量などから熱的な条件を満たすように酸素ガス総量を決定するか、または、処理前の溶銑中燐含有量、目標とする溶銑中燐含有量などから経験的に脱燐のために必要とする脱珪外酸素量を決定するようにする。
尚、特許文献4のように、CaO純分の上吹き速度(kg/min)と酸素ガスの質量流量(kg/min)との比を指標とする場合と、本発明の[CaO量/脱珪外酸素量]を指標とする場合とを比較すると、前者の酸素ガスの質量流量には脱珪反応に消費される酸素も含まれることから、処理前の溶銑の珪素含有量が多くなると、前者の場合には脱燐処理全体でのCaO供給量が過剰になる傾向にある。これに対して、本発明では処理前の溶銑の珪素含有量が多くなっても、CaO供給量が過剰になることはない。つまり、本発明の脱燐処理方法は、珪素含有量が多い溶銑の脱燐処理に適用する場合に、CaO使用量を減少させて脱燐石灰効率を向上させる効果が大きくなる。従って、本発明の脱燐処理方法は、処理前の珪素含有量が0.20質量%以上、より望ましくは0.25質量%以上の溶銑の脱燐処理に適用することが望ましい。
本発明で使用するCaO系脱燐用媒溶剤20としては、CaOを50質量%以上含有する物質である限り種類を問わず使用することができ、例えば、生石灰、炭酸カルシウム、ドロマイトなどを使用することができる。これらに、酸化鉄、蛍石、アルミナ、転炉スラグ(溶銑の転炉での脱炭精錬で生成するスラグ)などを混合したものも、CaOを主成分とする脱燐用媒溶剤20として使用することができる。因みに、生石灰のCaO純分は90〜96質量%程度である。
本発明では、脱燐処理で使用するCaO源の大部分は上吹きランス5から供給する粉状のCaO系脱燐用媒溶剤20とすることが望ましいが、これ以外に、例えば、小塊状或いは粒状の生石灰や破砕した製鋼スラグなどの公知のCaO源を脱燐処理の初期(予定する脱燐処理時間の1/3が経過するまでの期間)に併用することは妨げない。但し、上吹きランス5から供給するCaO系脱燐用媒溶剤以外のCaO源の使用量が増大すると、脱燐反応を促進するための火点へのCaO系脱燐用媒溶剤の供給量の確保と炉内スラグの組成及び量の調整との両立が困難となる。従って、上吹きランス5から供給するCaO系脱燐用媒溶剤以外のCaO源の使用量は、CaO換算で、全CaO源の使用量の1/4程度以下、より望ましくは1/5未満に留めることが望ましい。上吹きランス5から供給するCaO系脱燐用媒溶剤以外のCaO源は、シュート12を介して供給する。
本発明は、比[CaO量/脱珪外酸素量]を0.90未満に制御して溶銑18を脱燐処理するものであるが、脱燐処理前の溶銑18の珪素含有量が0.30質量%以上の場合には、図3に示すように、珪素含有量の増大とともに脱燐量が低下し、脱燐処理後の溶銑中燐濃度が0.035質量%を超える傾向が見られた。図3は、脱燐処理前の燐濃度が0.100〜0.120質量%、溶銑温度が1280〜1300℃の溶銑を、脱珪外酸素量が11〜13Nm3/溶銑-ton、比[CaO量/脱珪外酸素量]が0.80以上0.90未満、脱燐処理終了時の溶銑温度が1350〜1370℃となるように制御し、本発明を適用して脱燐処理したときの脱燐処理前の溶銑中珪素濃度と脱燐処理後の溶銑中燐濃度との関係の調査結果を示す図である。尚、脱燐処理前の溶銑の珪素含有量が0.30質量%未満の場合には、本発明を適用することで、脱燐処理後の溶銑中燐濃度を安定して0.035質量%以下とすることができることを確認している。
CaO系脱燐用媒溶剤中のCaOは、珪素が酸化して生成するSiO2とCaO・SiO2(カルシウムシリケート)なる形態の化合物を生成すると考えられる。従って、珪素濃度が0.30質量%以上の溶銑で脱燐量が低下する理由は、珪素濃度が0.30質量%以上の溶銑を脱燐処理すると、CaO・SiO2の生成に消費されるCaO量が、珪素濃度の低い溶銑の脱燐処理の場合と比較して多くなり、3CaO・P25なる安定形態の化合物の生成に供されるCaOが相対的に少なくなることに起因すると考えられる。
そこで、本発明者らは、珪素濃度が0.30質量%以上の溶銑18を脱燐処理する場合に、CaO系脱燐用媒溶剤20を過不足なく添加し、効率的に脱燐処理を行うことを更に検討した。検討にあたり、CaO系脱燐用媒溶剤20などのCaO源として炉内に供給されるCaOのうちからCaO・SiO2(カルシウムシリケート)を生成するために使用されるCaO分を除いたCaOを「脱珪外CaO」と定義した。ここで、炉内に供給されるCaOとは、上吹きランス5から供給するCaO系脱燐用媒溶剤20に含まれるCaOと、シュート12から供給されるCaO源に含まれるCaOとを合わせたものである。また、CaO・SiO2を生成するためのSiO2源には、溶銑の脱珪反応によって生成するSiO2の他、スラグなどの添加材料に含有されるSiO2も含むものとする。
脱燐反応に寄与するCaO分は脱珪外CaOであることから、従来の知見からは、脱珪外CaOを増加するほど、脱燐量が増加すると推測された。しかし、本発明者らの実験の結果、脱珪外CaO量が同一であっても、比[CaO量/脱珪外酸素量]を変えることによって脱燐挙動が変わることがわかった。
図4〜図7に、脱珪外CaOと脱燐量との関係の調査結果を示す。図4は、比[CaO量/脱珪外酸素量]が0.70未満の場合、図5は、比[CaO量/脱珪外酸素量]が0.70以上0.80未満の場合、図6は、比[CaO量/脱珪外酸素量]が0.80以上0.90未満の場合、図7は、比[CaO量/脱珪外酸素量]が0.90以上1.00未満の場合での、脱珪外CaOと脱燐量との関係の調査結果を示している。図4〜図7における「T.CaO」とは、添加したCaO系脱燐用媒溶剤中の総CaO量である。
図4及び図5に示すように、比[CaO量/脱珪外酸素量]が0.80未満の場合は、脱珪外CaOが増加するほど脱燐量は増加した。つまり、比[CaO量/脱珪外酸素量]が0.80未満の場合には、脱珪外CaOを増加することで脱燐反応が効率的に行われることがわかった。一方、比[CaO量/脱珪外酸素量]が0.90以上の場合には、図7に示すように、脱珪外CaOを増加させても脱燐量は変化しないことがわかった。比[CaO量/脱珪外酸素量]が0.90以上の場合には、効率は良くないものの最低限の脱珪外CaO量で脱燐処理することができ、脱珪外CaOを増加させても過剰添加になるだけであることがわかった。この図7の結果は図2の結果と一致する。
これに対して、比[CaO量/脱珪外酸素量]が0.80以上0.90未満の場合には、図6に示すように、脱珪外CaOが9kg/溶銑-tonの近傍になるまでは脱珪外CaOの増加に伴って脱燐量が増えるが、脱珪外CaOが9kg/溶銑-tonを超えると、脱燐量の増加は極わずかで、脱珪外CaOの増加は脱燐量の増加に効果的でないことがわかった。つまり、比[CaO量/脱珪外酸素量]が0.80以上0.90未満の場合に、脱珪外CaOが9kg/溶銑-tonを超えるようにCaO系脱燐用媒溶剤20を添加しても、添加するCaOの9kg/溶銑-tonを超える分は脱燐反応には寄与せず過剰分であり、逆に、溶銑温度の低下やCaO系脱燐用媒溶剤20の滓化を妨げることから、却って脱燐反応を阻害する場合も起こり得ることがわかった。
即ち、珪素濃度が0.30質量%以上の溶銑18を、比[CaO量/脱珪外酸素量]を0.80以上0.90未満の範囲として脱燐処理する場合には、脱珪外CaOを6〜9kg/溶銑-tonの範囲内、より望ましくは、脱珪外CaOを6〜8kg/溶銑-tonの範囲内になるように調整することが好ましいことがわかった。このようにすることで、CaO系脱燐用媒溶剤20を過不足なく添加でき、効率的に脱燐処理を行うことができる。但し、珪素濃度が0.30質量%以上の溶銑を脱燐処理する場合であっても、比[CaO量/脱珪外酸素量]を0.80未満とする場合には、脱珪外CaOの添加に伴って脱燐量が増加することから、温度的な余裕のある範囲内で脱珪外CaOを増加することが好ましく、8kg/溶銑-ton以上とすることが効果的な脱燐量を確保するうえで好適である。
以上説明したように、本発明によれば、上吹きランス5から添加するCaO系脱燐用媒溶剤中のCaO量と脱珪外酸素量との比[CaO量/脱珪外酸素量]を、CaO系脱燐用媒溶剤中のCaOの脱燐効率が高い範囲内に制御して脱燐処理するので、換言すれば、スラグ中のCaO濃度を高くすればするほど脱燐量が多くなる操業条件下で溶銑18を脱燐処理するので、添加された、CaO系脱燐用媒溶剤20は、生成される燐酸化物(P25)を効率的に吸収し、その結果、従来に比較してより効率的に脱燐処理を行うことが実現される。
[実施例1]
図1に示す転炉型精錬炉設備を用い、高炉から出銑された溶銑に対して本発明を適用して脱燐処理を実施した。脱燐処理前の溶銑中燐濃度は0.100〜0.120質量%、溶銑中珪素濃度は0.20質量%以上0.30質量%未満、溶銑温度は1280〜1300℃であり、この溶銑に対して、脱燐処理終了時の溶銑温度が1350〜1370℃となるように、脱珪外酸素量を15.7〜17.2kg/溶銑-ton(11〜12Nm3/溶銑-ton)とした。比[CaO量/脱珪外酸素量]を0.83〜0.85の範囲として、脱珪外酸素量からCaO系脱燐用媒溶剤の総使用量を決定し、添加速度を一定とするように上吹きランスからCaO系脱燐用媒溶剤を吹き付けて脱燐処理を行った(本発明例1)。炉内に添加したCaO源は上吹きランスから吹き付けたCaO系脱燐用媒溶剤のみであり、脱珪外CaOが9kg/溶銑-ton以下となるように、比[CaO量/脱珪外酸素量]を調整した。CaO系脱燐用媒溶剤としては生石灰(CaO純分93質量%)を使用した。
図8に、本発明を適用して脱燐処理(本発明例1)したときの、脱燐処理後の溶銑中炭素濃度と溶銑中燐濃度との関係を示す。図8には、従来の脱燐処理における脱燐処理後の溶銑中炭素濃度と溶銑中燐濃度との関係を、従来例1として併せて示している。この従来例1は、CaO系脱燐用媒溶剤の添加速度を、CaO純分で、脱珪期も含む脱燐処理の初期から中期には1.67kg/(min・溶銑-ton)とし、脱燐処理の中期から末期には0.84kg/(min・溶銑-ton)とし、処理時間全体での平均で約1.4kg/(min・溶銑-ton)に調整した以外は、上記本発明例1と同じ条件で行った脱燐処理である。
本発明例1及び従来例1において、酸素供給速度は、脱珪期には1.94〜2.50Nm3/(min・溶銑-ton)に、脱燐期には1.33Nm3/(min・溶銑-ton)とし、吹錬時間は約12分であった。また、従来例1における比[CaO量/脱珪外酸素量]は全て1.00以上であり、脱燐処理後のスラグの塩基度((質量%CaO)/(質量%SiO2))は2.7〜3.7の範囲であった。尚、図8において、実線は、最小二乗法を用いて求めた本発明例1における累乗近似による回帰式を示し、破線は、最小二乗法を用いて求めた従来例1における累乗近似による回帰式を示す。
本発明例1では、比[CaO量/脱珪外酸素量]を0.90未満として脱燐処理しているので、脱燐石灰効率が向上し、CaO系脱燐用媒溶剤を効率的に脱燐反応に寄与させることが可能となり、図8に示すように、脱燐処理後の溶銑中燐濃度は0.030質量%以下になり、従来例1に比較して脱燐処理後の溶銑中燐濃度を低位安定させることが実現された。これに対し、従来例1は、比[CaO量/脱珪外酸素量]が1.00以上であり、脱燐石灰効率が低く、CaO系脱燐用媒溶剤を効率的に脱燐反応に寄与させることができず、これによって脱燐処理後の溶銑中燐濃度が高くなったと考えられる。
[実施例2]
本発明例1よりも溶銑中珪素濃度が高い0.30質量%以上0.50質量%未満の場合に、本発明を適用して脱燐処理を行った。珪素以外の溶銑成分及び溶銑温度の条件は本発明例1と同様であった。溶銑中珪素含有量の増大に伴って、脱珪外酸素量は16.7〜19.5kg/溶銑-ton(11.7〜13.7Nm3/溶銑-ton)に増大させた。
比[CaO量/脱珪外酸素量]を0.75以上0.90未満の範囲として、比[CaO量/脱珪外酸素量]が0.80以上0.90未満の場合には、脱珪外CaOが6〜9kg/溶銑-tonの範囲内になり、比[CaO量/脱珪外酸素量]が0.75以上0.80未満の場合には、脱珪外CaOが8kg/溶銑-ton以上になるように、脱珪外酸素量からCaO系脱燐用媒溶剤の総使用量を決定し、添加速度を一定とするように上吹きランスからCaO系脱燐用媒溶剤として生石灰(CaO純分93質量%)を吹き付けて脱燐処理を行った(本発明例2)。炉内に添加したCaO源は上吹きランスから吹き付けたCaO系脱燐用媒溶剤のみであり、脱珪外CaOは8〜9.6kg/溶銑-tonの範囲であった。
従来例2として、特許文献4に記載されている溶銑の脱燐処理方法を適用して、溶銑中珪素濃度が0.30質量%以上0.50質量%未満の溶銑の脱燐処理を行った。炉内に添加したCaO源は上吹きランスから吹き付けたCaO系脱燐用媒溶剤のみであり、CaO純分の上吹き速度(kg/min)と酸素ガスの質量流量(kg/min)との比の値を「0.56+0.69×[Si]〜0.56+0.83×[Si]」の範囲とするように、CaO純分の上吹き速度を決定した。この従来例2では、脱珪外酸素量は18.2〜22.5kg/溶銑-tonの範囲であり、結果として、[CaO量/脱珪外酸素量]の指標では0.96〜1.19の範囲に、脱珪外CaOは11〜17kg/溶銑-tonの範囲に、脱燐処理後のスラグの塩基度((質量%CaO)/(質量%SiO2))は2.4〜2.6の範囲であった。
図9に、脱燐処理前の溶銑中珪素濃度と脱燐処理におけるCaO使用量との関係を、本発明例2と従来例2とで比較して示す。また、図10に、脱燐処理前の溶銑中珪素濃度と脱燐処理での溶銑の脱燐量との関係を、本発明例2と従来例2とで比較して示す。
図9より、本発明例2では、溶銑中珪素濃度が0.30質量%以上と高くても、CaO使用量を従来例2のように大幅に増大させることなく、脱燐処理を実施できることがわかる。
また、図10より、CaO使用量を従来例2よりも大幅に減少させても脱燐量には大きな差は見られないことから、本発明の方法では、[CaO量/脱珪外酸素量]を0.9以下としてCaO添加量を制御することにより、CaO使用量を大幅に減少させつつ効率的な脱燐処理が可能となることがわかる。
1 転炉型精錬炉設備
2 転炉型精錬炉
3 鉄皮
4 耐火物
5 上吹きランス
6 出湯口
7 底吹き羽口
8 フード
9 原料添加装置
10 ホッパー
11 切出装置
12 シュート
13 酸素ガス供給管
14 媒溶剤供給管
15 遮断弁
16 遮断弁
17 ディスペンサー
18 溶銑
19 スラグ
20 CaO系脱燐用媒溶剤
21 酸化鉄

Claims (1)

  1. 転炉内の溶銑に上吹きランスから酸素ガスを吹き付けるとともに、CaOを主成分とする脱燐用媒溶剤を前記酸素ガスの溶銑への衝突面に前記上吹きランスを介して吹き付け、前記酸素ガスによって溶銑中の燐を酸化し、生成した燐酸化物を滓化した前記脱燐用媒溶剤中に取り込むことにより溶銑中の燐を除去する脱燐処理方法において、
    脱燐処理前の珪素含有量が0.30質量%以上の溶銑を脱燐処理するにあたり、炉内に供給される酸素ガスのうちで脱珪反応に使用される分を除いた酸素ガスを脱珪外酸素量(kg/溶銑-ton)と定義し、炉内に供給されるCaOのうちでCaO・SiO 2 (カルシウムシリケート)を生成するために使用されるCaO分を除いたCaOを脱珪外CaOと定義したとき、
    上吹きランスから溶銑浴面に吹き付け添加する、CaOを主成分とする脱燐用媒溶剤中のCaO量(kg/溶銑-ton)と、前記脱珪外酸素量との比[CaO量/脱珪外酸素量]を0.80以上0.90未満の範囲内として溶銑を脱燐処理する場合には、前記比[CaO量/脱珪外酸素量]0.80以上0.90未満になり、且つ、前記脱珪外CaOが6〜9kg/溶銑-tonの範囲内になるように、脱珪外酸素量に応じて上吹きランスから吹き付け添加する前記脱燐用媒溶剤の添加量を調整し、
    前記比[CaO量/脱珪外酸素量]を0.80未満の範囲として溶銑を脱燐処理する場合には、前記比[CaO量/脱珪外酸素量]が0.80未満になり、且つ、前記脱珪外CaOが8kg/溶銑-ton以上になるように、脱珪外酸素量に応じて上吹きランスから吹き付け添加する前記脱燐用媒溶剤の添加量を調整する、溶銑の脱燐処理方法。
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