JP2007092181A - 低燐溶銑の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】CaO源添加前に酸素源を添加してスラグ中の酸化鉄濃度を高めておくことにより、F源を添加しなくても脱燐反応効率が飛躍的に向上することを見出しなされたもので、溶銑にCaO源である媒溶剤を添加する前に酸素源、好ましくは気体酸素を供給することでスラグ中の酸化鉄濃度を高めておき、しかる後、CaO源である媒溶剤を添加することを特徴とし、好ましくは、媒溶剤添加前に、0.010≦B/A≦0.50(但し、A:脱燐処理に要する媒溶剤中の全CaO量[kg/T]、B:気体酸素換算の酸素供給量[Nm3/T])を満足する量の酸素源を供給する。
【選択図】図1
Description
[1]溶銑予備処理として行われる脱燐処理において、溶銑にCaO源である媒溶剤を添加する前に酸素源を供給することでスラグ中の酸化鉄濃度を高めておき、しかる後、CaO源である媒溶剤を添加することを特徴とする低燐溶銑の製造方法。
[2]上記[1]の製造方法において、酸素源が気体酸素であることを特徴とする低燐溶銑の製造方法。
[4]上記[1]〜[3]のいずれかの製造方法において、溶銑にCaO源である媒溶剤を添加する前に下記(1)式を満足する量の酸素源を供給することを特徴とする低燐溶銑の製造方法。
0.010≦B/A≦0.50 …(1)
但し A:脱燐処理に要する媒溶剤中の全CaO量[kg/T]
B:気体換算の酸素供給量[Nm3/T]
[6]溶銑予備処理として行われる脱燐処理において、溶銑に酸素源を添加する際に、その酸素添加速度Xに対して下記(2)式を満足する条件でCaO源である媒溶剤を添加することを特徴とする低燐溶銑の製造方法。
0.50≦X/Y≦2.0 …(2)
但し X:酸素添加速度[kg/min]
Y:CaO換算の媒溶剤添加速度[kg/min]
[8]溶銑予備処理として行われる脱燐処理において、脱燐処理容器から排出される排ガス中のCOとCO2の濃度が下記(3)式を満足するような操業条件で脱燐処理を行うことを特徴とする低燐溶銑の製造方法。
0.10≦[CO2]/([CO2]+[CO])≦0.35 …(3)
但し [CO2]:排ガス中のCO2濃度[wt%]
[CO] :排ガス中のCO濃度[wt%]
0.02≦L/Lo≦0.10 …(4)
0.25≦F≦1.50 …(5)
[11]上記[10]の製造方法において、Si濃度が0.10重量%を超える溶銑を0.10重量%以下のSi濃度まで脱珪処理した後、脱燐処理することを特徴とする低燐溶銑の製造方法。
[12]上記[1]〜[11]のいずれかの製造方法において、F源を含まないCaOを主体とした媒溶剤を用いることを特徴とする低燐溶銑の製造方法。
この発明の低燐溶銑の製造方法(脱燐方法)では、溶銑にCaO源である媒溶剤を添加する前に酸素源を供給することでスラグ中の酸化鉄(FeO)濃度を高めておき、しかる後CaO源である媒溶剤を添加するものであり、これによりCaF2などのF源を添加しなくても脱燐反応効率を飛躍的に高めることが可能になる。これは、媒溶剤添加前の溶銑への酸素源の添加によってFeOを十分に生成させ、酸化鉄濃度が高い初期スラグを溶融させておき、このような高酸化鉄濃度の初期スラグ中にCaO源を直接投入することにより、高濃度に生成しているFeO中に高融点のCaOが取り込まれる形で滓化が進行するため、CaO+FeOの反応による滓化が飛躍的に促進されるためであると考えられる。
これに対して、従来技術のように早い時期にCaO源を投入して酸素源の供給を行った場合には、上述した本発明の作用とは逆に、酸素源の供給により生成したFeOが未滓化のCaO中に取り込まれる形で滓化が進行するため、CaO+FeOの反応による滓化が迅速に進行しないものと考えられる。
使用する気体酸素は純酸素ガス、酸素含有ガスのいずれでもよく、また、固体酸素源としては酸化鉄やミルスケールなどを用いることができる。
なお、この発明の脱燐処理は、CaO源である媒溶剤の添加前に溶銑に酸素源の供給を行うことを特徴とするものであるが、当然のことながら媒溶剤を添加した以降も酸素源(気体酸素及び/又は固体酸素源)の供給が行われる。
0.010≦B/A≦0.50 …(1)
但し A:脱燐処理に要する媒溶剤中の全CaO量[kg/T](T:溶銑ton、以下同様)
B:気体換算の酸素供給量[Nm3/T]
上記のように酸素源を供給して所定の濃度のFeOを生成させた後、CaO源である媒溶剤を添加するが、媒溶剤添加時にその滓化に必要な量のFeOを生成させておくため、媒溶剤の添加は複数回に分けて行うことが好ましい。また、同様の理由から、媒溶剤を少量ずつ連続的又は間欠的に添加してもよい。
すなわち、媒溶剤添加前の酸素源の供給時に、脱燐容器から排出される排ガスのガス分析(排ガス中のC濃度分析)をオンラインで実施することにより溶銑の脱炭量を求めることができ、この脱炭量と酸素源の供給量に基づき、さらには溶銑の脱珪推定量、排ガス分析から求められる二次燃焼量などを必要に応じて勘案することにより、脱燐容器内に蓄積された酸素量を求めることができ、さらにこれからスラグ中のFeO量が算出できる。したがって、排ガスのガス分析値から溶銑の脱炭量を求め、この脱炭量と酸素源の供給量に基づいてスラグ中の酸化鉄濃度を算出し、この酸化鉄濃度の算出値に基づいて酸素源の供給条件(例えば、送酸量、送酸速度など)を制御すれば、媒溶剤添加前の酸素源供給による酸化鉄濃度の制御を容易に行うことができる。
一般に、脱燐処理前の溶銑のSi濃度が高いと生成するSiO2が多くなり、この結果、スラグ量が増加するだけでなく、塩基度調整のためのCaO量も多くなる。したがって、このような観点からは脱燐処理前の溶銑のSi濃度は低い方が好ましいが、一方において、脱燐処理前の溶銑のSi濃度が低いとスラグ中のSiO2濃度が低下するためCaOの溶融性がさらに悪化し、脱燐反応効率が低下してしまう。
この理由は次のように考えられる。まず、第一の理由としては、溶銑中のSi濃度が低いと、媒溶剤添加前に供給された酸素源のうち、溶銑中のSiと反応してSiO2の生成に消費される割合が少ないため、それだけFeOの生成量が多くなり、このためにCaOの滓化がより効果的に促進されることが考えられる。
また、酸素源の供給方法(媒溶剤添加前及び添加後の供給方法)に特別な制約はなく、気体酸素の場合にはランスによる上吹きや溶銑中へのインジェクション、或いは底吹きなどの任意の方法で送酸を行うことができ、また、固体酸素源の場合にはインジェクションや上置き装入などの任意の方法で溶銑中への供給を行うことができる。なお、気体酸素を供給する場合、脱燐処理を転炉型容器や溶銑鍋などを用いて実施する場合にはランスによる上吹きが、また、トーピードを用いて実施する場合にはランスによる溶銑中へのインジェクションが一般的である。
なお、この発明の脱燐処理においてCaF2などのF源を含まないCaOを主体とした媒溶剤のみを使用する場合、媒溶剤がF源を含まないとはF源を実質的に含まないことを意味し、したがって、媒溶剤中に例えば不可避的不純物などとして少量のF源が含まれることは妨げない。
この発明の低燐溶銑の製造方法では、溶銑に酸素源を添加する際に、その酸素添加速度Xに対して下記(2)式を満足する条件でCaO源である媒溶剤を添加するものであり、これによりCaF2などのF源を含む媒溶剤を添加しなくても脱燐反応効率を飛躍的に高めることが可能になる。
0.50≦X/Y≦2.0 …(2)
但し X:酸素添加速度[kg/min]
Y:CaO換算の媒溶剤添加速度[kg/min]
ここで、上記酸素添加速度Xとは、気体酸素及び固体酸素源として添加される全酸素の添加速度である。
すなわち、X/Yが0.50未満では酸素の添加速度に対するCaOの添加速度が大きすぎるためスラグ中の未滓化CaOが過剰になり、CaOの滓化が進行しないため脱燐速度も低下する。一方、通常の操業ではCaOは溶銑中のSi濃度等に基づいて決められる操業基準で添加されるが、このような操業においてX/Yが2.0を超えるとCaOの添加速度に対する酸素の添加速度が大きすぎるため脱炭が進行し、後工程での熱不足などの問題が生じる。また、CaOの添加速度自体が小さいことによりX/Yが2.0を超える場合には、脱燐に必要なCaOが不足するため脱燐速度が低下する。
一般に、脱燐処理前の溶銑のSi濃度が高いと生成するSiO2が多くなり、この結果、スラグ量が増加するだけでなく、塩基度調整のためのCaO量も多くなる。したがって、このような観点からは脱燐処理前の溶銑のSi濃度は低い方が好ましいが、一方において、脱燐処理前の溶銑のSi濃度が低いとスラグ中のSiO2濃度が低下するためCaOの溶融性がさらに悪化し、脱燐反応効率が低下してしまう。
この発明の脱燐方法が実施される容器としては、フリーボードが十分に確保できるという点から転炉型容器が最も好ましいが、これ以外にも溶銑鍋、トーピードなどの任意の容器を用いることができる。
なお、この発明の脱燐処理においてCaF2などのF源を含まないCaOを主体とした媒溶剤のみを使用する場合、媒溶剤がF源を含まないとはF源を実質的に含まないことを意味し、したがって、媒溶剤中に例えば不可避的不純物などとして少量のF源が含まれることは妨げない。
この発明に係る低燐溶銑の製造方法では、固体酸素源及び/又は媒溶剤を200℃以上、1000℃未満の温度に予熱した後、溶銑に添加するものであり、これによりCaF2などのF源を含む媒溶剤を添加しなくても脱燐反応効率を飛躍的に高めることが可能になる。これは適正な温度に予熱された固体酸素源や媒溶剤を溶銑に添加することにより、CaOの溶解が効果的に促進されるためである。
本発明では溶銑に添加すべき固体酸素源、媒溶剤のいずれか一方又はその両方を予熱することができるが、固体酸素源は媒溶剤に較べて融点が低いため予熱によるCaOの溶解がより効果的に促進され、このため少なくとも固体酸素源を予熱することが好ましい。
また、媒溶剤としてはCaO源が添加され、後述するようにCaF2などのF源を含まないCaOを主体とした媒溶剤を用いることができる。
一般に、脱燐処理前の溶銑のSi濃度が高いと生成するSiO2が多くなり、この結果、スラグ量が増加するだけでなく、塩基度調整のためのCaO量も多くなる。したがって、このような観点からは脱燐処理前の溶銑のSi濃度は低い方が好ましいが、一方において、脱燐処理前の溶銑のSi濃度が低いとスラグ中のSiO2濃度が低下するためCaOの溶融性がさらに悪化し、脱燐反応効率が低下してしまう。
また、予熱した固体酸素源及び/又は媒溶剤を溶銑中に添加するとSiO2のフォーミングが促進されてスロッピングが大きくなり、安定操業性を阻害する要因になりやすいが、脱燐処理前のSi濃度が0.10wt%以下の場合には問題となるようなスロッピングは発生せず、安定操業性が損なわれることはない。
また、酸素源の供給方法に特別な制約はなく、気体酸素の場合にはランスによる上吹きや溶銑中へのインジェクション、或いは底吹きなどの任意の方法で送酸を行うことができ、また、固体酸素源の場合にはインジェクションや上置き装入などの任意の方法で溶銑中への供給を行うことができる。なお、気体酸素を供給する場合、脱燐処理を転炉型容器や溶銑鍋等を用いて実施する場合にはランスによる上吹きが、また、トーピードを用いて実施する場合にはランスによる溶銑中へのインジェクションが一般的である。
なお、この発明の脱燐処理においてCaF2などのF源を含まないCaOを主体とした媒溶剤のみを使用する場合、媒溶剤がF源を含まないとはF源を実質的に含まないことを意味し、したがって、媒溶剤中に例えば不可避的不純物などとして少量のF源が含まれることは妨げない。
この発明に係る低燐溶銑の製造方法では、脱燐処理容器から排出される排ガス中のCOとCO2の濃度が下記(3)式を満足するような操業条件で脱燐処理を行うものであり、これによりCaF2などのF源を添加しなくても脱燐反応効率を飛躍的に高めることが可能になる。
0.10≦[CO2]/([CO2]+[CO])≦0.35 …(3)
但し [CO2]:排ガス中のCO2濃度[wt%]
[CO] :排ガス中のCO濃度[wt%]
脱燐処理容器から排出される排ガスの[CO2]/([CO2]+[CO])が0.10未満では二次燃焼率が低くすぎ、スラグへの着熱が不十分であるため、CaOの溶解が十分に促進されない。このため脱燐反応効率はあまり向上しない。一方、[CO2]/([CO2]+[CO])が0.35を超えると、二次燃焼により生じる過剰な熱によって脱燐処理容器の耐火物の溶損を早めてしまうため好ましくない。
また、この発明の脱燐処理を実施する場合、脱燐処理容器から排出される排ガスのガス組成分析を行い、このガス組成分析値に基づき上記の制御を行えば、排ガスの[CO2]/([CO2]+[CO])をオンラインで容易にコントロールすることができる。
一般に、脱燐処理前の溶銑のSi濃度が高いと生成するSiO2が多くなり、この結果、スラグ量が増加するだけでなく、塩基度調整のためのCaO量も多くなる。したがって、このような観点からは脱燐処理前の溶銑のSi濃度は低い方が好ましいが、一方において、脱燐処理前の溶銑のSi濃度が低いとスラグ中のSiO2濃度が低下するためCaOの溶融性がさらに悪化し、脱燐反応効率が低下してしまう。
この発明の脱燐処理が実施される容器としては、フリーボードが十分に確保できるという点から転炉型容器が最も好ましいが、これ以外にも溶銑鍋、トーピード等の任意の容器を用いることができる。
なお、この発明の脱燐処理においてCaF2などのF源を含まないCaOを主体とした媒溶剤のみを使用する場合、媒溶剤がF源を含まないとはF源を実質的に含まないことを意味し、したがって、媒溶剤中に例えば不可避的不純物などとして少量のF源が含まれることは妨げない。
この発明の低燐溶銑の製造方法では、上吹きランスから溶銑に気体酸素を上吹きするとともに、該上吹きされた気体酸素の運動エネルギーにより形成される溶銑浴面の凹み深さL(m)と溶銑の浴深さLo(m)の比L/Loと上吹きランスからの送酸速度F(Nm3/min/T)が下記(4)式及び(5)式を満足するような条件で脱燐処理を行うものであり、これによりCaF2などのF源を含む媒溶剤を添加しなくても脱燐反応効率を飛躍的に高めることが可能になる。
0.02≦L/Lo≦0.10 …(4)
0.25≦F≦1.50 …(5)
これは、上吹きランスからの送酸により形成される溶銑浴面の凹み深さと上吹きランスからの送酸速度を上記の範囲に制御することにより、スラグ中のFeO濃度を適正化できるためである。
送酸速度FとL/Loとの関係において、脱燐処理後の溶銑中P濃度[P]が0.020wt%以下と0.020wt%超えで整理したものを図3に示す。これによれば、L/Lo>0.10、L/Lo<0.02及び送酸速度F<0.25の場合には、溶銑中P濃度[P]が0.020wt%を超えており、効率的な脱燐が行われていないことが判る。
一方、L/Lo<0.02の場合には、浴面に到達する酸素量が少ないため十分な量のFeOを生成させることができず、媒溶剤中のCaOとFeOの反応溶融が進行しにくくなってしまうため、脱燐反応が遅延することになる。
さらに、送酸速度F<0.25の場合は、浴面へ供給される酸素が少ないためFeOの生成が遅延し、媒溶剤中のCaOとFeOの反応溶融が進行しにくくなり、脱燐反応が遅延することになる。
図4によれば、送酸速度F>1.50の場合にはΔCが1.2wt%以上となり、脱炭量が過大となるため操業上望ましくないことが判る。これは、浴面に供給される酸素が潤沢でFeOの生成も十分であるが、脱燐の進行とともに脱炭も進行してしまうため、脱炭量が過大となるからである。
一般に、脱燐処理前の溶銑のSi濃度が高いと生成するSiO2が多くなり、この結果、スラグ量が増加するだけでなく、塩基度調整のためのCaO量も多くなる。したがって、このような観点からは脱燐処理前の溶銑のSi濃度は低い方が好ましいが、一方において、脱燐処理前の溶銑のSi濃度が低いとスラグ中のSiO2濃度が低下するためCaOの溶融性がさらに悪化し、脱燐反応効率が低下してしまう。
この発明の脱燐処理が実施される容器としては、フリーボードが十分に確保できるという点から転炉型容器が最も好ましいが、これ以外にも溶銑鍋などの取鍋型容器、トーピードなどの任意の容器を用いることができる。但し、これらの容器は上吹きランスを装備していることが必要である。上吹きランスの孔径や孔数などに制約はなく、この発明の条件範囲内の送酸条件が得られるよう、孔径や孔数などが選定される。
また、媒溶剤の溶銑への供給も、上部ホッパーなどからの上置き装入(一括投入又は分割投入)、インジェクションランスを通じた吹き込みなどの任意の方法で行うことができる。媒溶剤の供給量は溶銑中のSi、S、P濃度に応じ決められるが、スラグ発生量の低減化の観点から20kg/T以下の供給量とすることが望ましい。
なお、この発明の脱燐処理においてCaF2などのF源を含まないCaOを主体とした媒溶剤のみを使用する場合、媒溶剤がF源を含まないとはF源を実質的に含まないことを意味し、したがって、媒溶剤中に例えば不可避的不純物などとして少量のF源が含まれることは妨げない。
高炉から出銑された溶銑を高炉鋳床と溶銑鍋において脱珪処理し、次いで機械撹拌を用いた溶銑鍋内で脱硫処理した後、300ton転炉内で脱燐処理を行った。
この実施例では、脱燐処理前後での溶銑温度を1280〜1320℃とし、脱燐用の媒溶剤としてはCaF2を含まないCaO主体の焼石灰のみを用いた。CaOの原単位は8〜12kg/Tとした。
本実施例では、P濃度が0.1wt%でほぼ一定で、Si濃度が種々異なる溶銑について、本発明例及び比較例の脱燐処理を実施した。
一方、比較例では、本発明例のような媒溶剤添加前の送酸を行うことなく、初期媒溶剤の添加と同時に送酸を開始した。
また、本発明例のなかでもB/A≦0.20(但し、B/A≧0.05)の場合により高い脱燐反応効率が得られている。
実施例1と同様に、高炉から出銑された溶銑を高炉鋳床と溶銑鍋において脱珪処理し、次いで機械撹拌を用いた溶銑鍋内で脱硫処理した後、300ton転炉内で脱燐処理を行った。脱燐処理前後での溶銑温度を1280〜1320℃とし、脱燐用の媒溶剤としてはCaF2を含まないCaO主体の焼石灰のみを用いた。
媒溶剤の添加は、約30秒おきに2〜6回に分けて分割添加する方法または媒溶剤全量を一括添加する方法で行った。媒溶剤添加後は、上吹きランスにより気体酸素の供給を行うとともに、鉄鉱石を主体とした固体酸素源の添加も行い、媒溶剤添加前に供給する酸素源を含めた全酸素原単位を気体O2換算で8〜10Nm3/Tとした。
本実施例では、P濃度が0.1wt%でほぼ一定で、Si濃度が種々異なる溶銑について、脱燐処理に要する媒溶剤中の全CaO量A[kg/T]と媒溶剤添加前に供給された酸素源の気体換算の酸素供給量B[Nm3/T]との比B/Aを種々変えて脱燐処理を実施した。
高炉から出銑された溶銑を高炉鋳床及び溶銑鍋において脱珪処理し、次いで機械撹拌を用いた溶銑鍋内で脱硫処理した後、溶銑鍋で脱燐処理を行った。溶銑量は150〜160ton、脱燐処理前後での溶銑温度は1280〜1320℃とし、脱燐用媒溶剤としてはCaF2を含まないCaO主体の焼石灰のみを用い、CaOの原単位は6〜10kg/Tとした。
各実施例とも脱燐処理前の溶銑中P濃度は0.10wt%前後でほぼ一定とし、脱燐処理後の目標P濃度は0.015wt%以下とした。また高炉鋳床及び溶銑鍋の脱珪処理を制御して、脱燐処理前の溶銑中Si濃度を調整した。
表3によれば、X/Yが0.50〜2.0の範囲に制御された本発明例では、溶銑のSi濃度に拘りなく目標P濃度である[P]≦0.015wt%が達成されており、特に溶銑中Si濃度が0.1wt%以下の場合に低P規格である[P]≦0.01wt%が安定して達成されている。
これに対してX/Yが本発明条件を満足していない比較例では、溶銑中Si濃度が0.1wt%以下であっても目標P濃度である[P]≦0.015wt%は達成されていない。
高炉から出銑された溶銑を高炉鋳床と溶銑鍋において脱珪処理し、次いで機械撹拌を用いた溶銑鍋内で脱硫処理した後、300ton転炉内で脱燐処理を行った。脱燐処理前後での溶銑温度は1250〜1330℃とし、脱燐用媒溶剤はCaF2を含まないCaO主体の焼石灰のみを用い、CaOの原単位は9〜11kg/Tとした。また、酸素源としては上吹きランスを通じた気体酸素の供給と鉄鉱石を主とした固体酸素源の供給を併用し、全酸素原単位は8〜10Nm3/Tとした。また、固体酸素源の添加量は気体酸素換算で1〜4Nm3/Tとした。気体酸素の供給条件としては、送酸速度を15000〜25000Nm3/hr、ランス高さを1.5〜2.5m、所定の酸素量を供給するための吹錬時間を8〜10分とした。
各実施例とも脱燐処理前の溶銑中P濃度は0.10wt%前後でほぼ一定とし、脱燐処理後の目標P濃度は0.015wt%以下とした。また、高炉鋳床及び溶銑鍋の脱珪処理を制御して、脱燐処理前の溶銑中Si濃度を調整した。
これに対して予熱していなか或いは予熱していても予熱温度が200℃未満の固体酸素源を溶銑中に供給した比較例では、目標P濃度である[P]≦0.015wt%は達成されていない。
高炉から出銑された溶銑を高炉鋳床及び溶銑鍋内で脱珪処理し、次いで機械撹拌を用いて溶銑鍋内で脱硫処理した後、300ton転炉内で脱燐処理を行った。脱燐処理前後での溶銑温度は1280〜1320℃とし、脱燐用媒溶剤はCaF2を含まないCaO主体の焼石灰のみを用い、CaOの原単位は9〜11kg/Tとした。
各実施例とも脱燐処理前の溶銑中P濃度は0.10wt%前後でほぼ一定とし、脱燐処理後の目標P濃度は0.015wt%以下とした。また、高炉鋳床及び溶銑鍋の脱珪処理を制御して、脱燐処理前の溶銑中Si濃度を調整した。
表4によれば、排ガス中の[CO2]/([CO2]+[CO])が0.10〜0.35に制御された本発明例では溶銑のSi濃度に拘りなく目標P濃度である[P]≦0.015wt%が達成されており、特に溶銑中Si濃度が0.1wt%以下の場合に低P規格である[P]≦0.01wt%が安定して達成されている。
図6に示すような取鍋型精錬容器(150ton)を用いて溶銑の脱燐処理を行った。媒溶剤としては焼石灰を使用し、これを窒素をキャリアガスとしてインジェクションランスから溶銑中に吹き込んだ。溶銑の成分、温度、送酸時間は可能な限り一定とし、媒溶剤投入量は脱燐処理前の溶銑中Si濃度に応じて装入基準を設定するように留意した。主要な脱燐条件を表5に示す。
各実施例における脱燐処理後の溶銑中P濃度(終点[P]濃度)と脱燐処理による脱炭量ΔCを、溶銑温度、送酸速度F、L/Loなどとともに表6に示す。
これに対してL/Lo、Fが上記の本発明条件を満足していない比較例では、少なくとも[P]≦0.020wt%、ΔC<1.20wt%のいずれかが達成されていない。
図7に示すような転炉型精錬容器(350ton)を用いて溶銑の脱燐処理を行った。媒溶剤としては焼石灰を使用し、これを上部ホッパーからの一括投入又は分割投入で溶銑に供給した。溶銑の成分、温度、送酸時間は可能な限り一定とし、媒溶剤投入量は脱燐処理前の溶銑中Si濃度に応じて装入基準を設定するように留意した。主要な脱燐条件を表7に示す。
各実施例における脱燐処理後の溶銑中P濃度(終点[P]濃度)と脱燐処理による脱炭量ΔCを、溶銑温度、送酸速度F、L/Loなどとともに表8及び表9に示す。
これに対してL/Lo、Fが上記の本発明条件を満足していない比較例では、少なくとも[P]≦0.020wt%、ΔC<1.20wt%のいずれかが達成されていない。
Claims (12)
- 溶銑予備処理として行われる脱燐処理において、溶銑にCaO源である媒溶剤を添加する前に酸素源を供給することでスラグ中の酸化鉄濃度を高めておき、しかる後、CaO源である媒溶剤を添加することを特徴とする低燐溶銑の製造方法。
- 酸素源が気体酸素であることを特徴とする請求項1に記載の低燐溶銑の製造方法。
- 媒溶剤を複数回に分けて添加することを特徴とする請求項1または2に記載の低燐溶銑の製造方法。
- 溶銑にCaO源である媒溶剤を添加する前に下記(1)式を満足する量の酸素源を供給することを特徴とする請求項1、2または3に記載の低燐溶銑の製造方法。
0.010≦B/A≦0.50 …(1)
但し A:脱燐処理に要する媒溶剤中の全CaO量[kg/T]
B:気体換算の酸素供給量[Nm3/T] - 媒溶剤添加前の酸素源の供給時における排ガスのガス分析値から溶銑の脱炭量を求め、該脱炭量と酸素源の供給量に基づいてスラグ中の酸化鉄濃度を算出し、この酸化鉄濃度値に基づいて酸素源の供給条件を制御することを特徴とする請求項1、2、3または4に記載の低燐溶銑の製造方法。
- 溶銑予備処理として行われる脱燐処理において、溶銑に酸素源を添加する際に、その酸素添加速度Xに対して溶銑に下記(2)式を満足する条件でCaO源である媒溶剤を添加することを特徴とする低燐溶銑の製造方法。
0.50≦X/Y≦2.0 …(2)
但し X:酸素添加速度[kg/min]
Y:CaO換算の媒溶剤添加速度[kg/min] - 溶銑予備処理として行われる脱燐処理において、固体酸素源及び/又は媒溶剤を200℃以上、1000℃未満の温度に予熱した後、溶銑に添加することを特徴とする低燐溶銑の製造方法。
- 溶銑予備処理として行われる脱燐処理において、脱燐処理容器から排出される排ガス中のCOとCO2の濃度が下記(3)式を満足するような操業条件で脱燐処理を行うことを特徴とする低燐溶銑の製造方法。
0.10≦[CO2]/([CO2]+[CO])≦0.35 …(3)
但し [CO2]:排ガス中のCO2濃度[wt%]
[CO] :排ガス中のCO濃度[wt%] - 溶銑予備処理として行われる脱燐処理において、上吹きランスから溶銑に気体酸素を上吹きするとともに、該上吹きされた気体酸素の運動エネルギーにより形成される溶銑浴面の凹み深さL(m)と溶銑の浴深さLo(m)の比L/Loと上吹きランスからの送酸速度F(Nm3/min/T)が下記(4)式及び(5)式を満足するような条件で脱燐処理を行うことを特徴とする低燐溶銑の製造方法。
0.02≦L/Lo≦0.10 …(4)
0.25≦F≦1.50 …(5) - Si濃度が0.10wt%以下の溶銑を脱燐処理することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9に記載の低燐溶銑の製造方法。
- Si濃度が0.10wt%を超える溶銑を0.10wt%以下のSi濃度まで脱珪処理した後、脱燐処理することを特徴とする請求項10に記載の低燐溶銑の製造方法。
- F源を含まないCaOを主体とした媒溶剤を用いることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11に記載の低燐溶銑の製造方法。
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