JP3823623B2 - 溶銑精錬方法 - Google Patents

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  • Refinement Of Pig-Iron, Manufacture Of Cast Iron, And Steel Manufacture Other Than In Revolving Furnaces (AREA)

Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、溶銑予備処理として行われる脱燐処理において、蛍石などのF源を含まない媒溶剤を用いて溶銑を効率的に脱燐するための溶銑精錬方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、溶銑段階で予備脱燐を行い、溶銑中の燐をある程度除去してから転炉で脱炭吹錬を実施する製鋼方法が発展してきた。この溶銑予備脱燐処理はトーピード、溶銑鍋、転炉などの設備を用い、CaO系媒溶剤と気体酸素や固体酸素源(酸化鉄)などの酸素源を添加して行われる。
【0003】
この脱燐処理の際に溶銑からスラグ側に燐を効率的に移行させるためには、スラグ組成やスラグ量などの制御が重要な因子となる。特に、媒溶剤としてCaFを添加することにより、▲1▼スラグの融体性が向上する、▲2▼SiOのネットワークが分断されてCaイオンの活量が増加する、▲3▼FeOの活量が増加する、などの作用が得られることが従来から指摘されており、実操業でも脱燐の反応性を高めるために媒溶剤としてCaFが広く使用されている。
【0004】
また、例えば特公平6−17496号公報では、添加するCaOと酸素Oの重量比CaO/O以外に、[CaF+Al]/CaO及びAl/CaFの各重量比を規定することにより、CaF添加による脱燐効率の向上を図る技術が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし最近では、環境保護の観点からスラグ中のFの溶出量の規制基準が強化される傾向にあり、脱燐スラグ中のF濃度を極限まで低下させる必要が生じている。このためCaFなどのF源を含まない媒溶剤を用いる脱燐処理技術の確立が強く望まれているが、現状ではスラグを低塩基度化してスラグ量を極端に多した操業を行うとか、多重処理を実施するなどの方法しか有効な対策がないのが実情である。しかし、前者のように脱燐スラグ量が極端に増大することは、環境保護の面から強く望まれているスラグ量削減というニーズに逆行するものであり、また、後者のように多重処理を実施することは生産性の低下及び製造コストの上昇を招く問題があり、したがって、これらは抜本的な対策にはなり得ない。
【0006】
したがって本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、溶銑予備脱燐処理を行う際に、CaFなどのF源を含まない媒溶剤を用いて溶銑脱燐を効率的に行うことができる溶銑精錬方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、製鋼工程で生じるスラグの利材化を図り、スラグ発生量を極力低減することができる溶銑精錬方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、蛍石(CaF)などのF源を含まないCaOを主体とした媒溶剤を使用して効率的に脱燐処理することができる方法を見い出すべく、転炉型容器を用いて種々の実験と検討を行った。先に述べたようにCaFはスラグの溶融性を確保するために重要な働きをしており、本発明者らの実験においても、CaFを含まない媒溶剤を用いた場合には添加された媒溶剤(CaO源)は見掛け上は滓化したようには見えず、脱燐反応効率も低下した。ところが、成分が異なる種々の溶銑に対する実験を繰り返すうちに溶銑中の珪素濃度と燐濃度との関係が脱燐反応の向上に重要な要素となり得ることが判明した。
【0008】
すなわち、溶銑の燐濃度が高い場合には、酸化してスラグ側へ除去される燐酸化合物(P)の濃度が高くなり、これがCaOと低融点化合物を生成してCaOの溶解を促進すること、一方、溶銑の珪素濃度が高い場合には、酸化生成するSiOにCaOが消費されてCaOによる脱燐能力が低下し、所定の燐濃度まで脱燐できなくなることが判った。そこで、さらに実験と検討を重ねた結果、脱燐処理される溶銑中の燐濃度と珪素濃度に関して高い脱燐効率が得られる領域が存在すること、具体的には溶銑の燐濃度が0.15wt%以上、珪素濃度が0.05wt%以下の範囲において、従来では予想し得なかったような高い脱燐効率が得られることが判明した。
【0009】
また、スラグ発生量の低減化という観点から、脱燐処理により生じたスラグ(脱燐スラグ)を脱珪処理の媒溶剤としてリサイクル使用することについて検討を行い、以下のような結論を得た。
すなわち、脱珪処理では酸素源とCaOを主成分とした媒溶剤が添加されるが、この際に媒溶剤として脱燐スラグを使用するとスラグ中の燐が溶銑に復燐し、次工程の脱燐処理の負荷が増大するという問題を生じるため、通常、脱燐スラグを脱珪処理の媒溶剤に再利用するようなことは行われていない。しかし、上述のように脱燐処理される溶銑の燐濃度が0.15wt%以上であっても珪素濃度が0.05wt%以下であれば高い脱燐効率が得られるため、脱燐スラグを脱珪処理の媒溶剤として使用することでスラグから溶銑への復燐があったとしても、次工程の脱燐処理では十分高い脱燐効率が得られ、溶銑の燐濃度を所望のレベルまで低下させることができる。このため脱燐スラグを脱珪処理の媒溶剤としてリサイクル使用しても何ら問題はなく、その分、製鋼スラグの発生量を削減することができる。
【0010】
さらに、精錬前の溶銑の燐濃度が0.15wt%未満であるような場合に、脱珪処理の媒溶剤として脱燐スラグを用いることで、スラグからの復燐により溶銑の燐濃度を0.15wt%以上に高め、しかる後、脱燐処理を行うことにより、溶銑を燐濃度が0.15wt%未満のままで脱燐処理するよりも脱燐効率を高めることができる。
【0011】
本発明はこのような知見に基づきなされたもので、その特徴とする構成は以下のとおりである。
[1]溶銑予備処理としての脱燐処理を、溶銑にF源を含まないCaOを主体とした媒溶剤を添加し、酸素源として気体酸素及び/又は固体酸素源を供給して行う溶銑精錬方法において、脱燐処理を燐濃度が0.15wt%以上、珪素濃度が0.05wt%以下の溶銑に対して行い、脱燐処理後の溶銑の燐濃度を0.015wt%以下とすることを特徴とする溶銑精錬方法。
2 ]上記[ 1 ]の溶銑精錬方法において、脱燐処理で添加する媒溶剤のCaO原単位を9〜11kg/溶銑tonとすることを特徴とする溶銑精錬方法。
【0012】
3 上記 1 ]又は[ 2 の溶銑精錬方法において、珪素濃度が0.05wt%を超える溶銑を0.05wt%以下の珪素濃度まで脱珪処理した後、脱燐処理することを特徴とする溶銑精錬方法。
4 上記 1 ]〜[ 3 ]のいずれかの溶銑精錬方法において、溶銑を脱珪処理した後、脱燐処理する溶銑精錬法であって、前記脱珪処理においては、後工程の脱燐処理により生じたスラグを媒溶剤の少なくとも一部として用いることを特徴とする溶銑精錬方法。
【0013】
5 上記 4 の溶銑精錬方法において、高炉から出銑された燐濃度が0.15wt%未満の溶銑を脱珪処理するに当り、後工程の脱燐処理により生じたスラグを媒溶剤の少なくとも一部として用い、該脱珪処理した際のスラグからの復燐により燐濃度が0.15wt%以上となった溶銑を脱燐処理することを特徴とする溶銑精錬方法。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の溶銑精錬方法では、溶銑予備処理としての脱燐処理を、溶銑中にF源を含まないCaOを主体とした媒溶剤を添加し、酸素源として気体酸素及び/又は固体酸素源を供給して行うが、この脱燐処理を燐濃度が0.15wt%以上、珪素濃度が0.05wt%以下の溶銑に対して行い、脱燐処理後の溶銑の燐濃度を0.015wt%以下とすることを特徴としている。
【0015】
このように脱燐処理においてF源を含まないCaOを主体とした媒溶剤を用いた場合であっても、溶銑の燐濃度が0.15wt%以上と高く、且つ珪素濃度が0.05wt%以下の低レベルであれば、先に述べたような作用により高い脱燐効率が得られる。
【0016】
従来、このような事実が知られていなかったのは、従来製造されてきた高炉溶銑は殆どが低燐鉱石を主原料とする低燐溶銑(燐濃度:0.07〜0.12wt%程度)であり、しかも脱燐処理ではCaFを含んだ媒溶剤が使用されてきたため、高燐溶銑の脱燐処理、それも媒溶剤としてCaFを使用しない脱燐処理における滓化のメカニズムやその最適条件についての検討が殆んどなされていなかったためであると考えられる。
また、上述したような高燐溶銑の脱燐処理における滓化のメカニズムからして、脱燐処理の媒溶剤の少なくとも一部として脱燐スラグを再利用した場合には、これに含まれる燐酸化合物が脱燐処理の初期段階においてCaOの滓化を効果的に促進するので、脱燐効率をより向上させるのに有利である。
【0017】
本発明法における脱燐処理では、CaFなどのF源を含まないCaOを主体とした媒溶剤が用いられるが、ここで、媒溶剤がF源を含まないとはF源を実質的に含まないことを意味し、したがって、媒溶剤中に例えば不可避的不純物などとして少量のF源が含まれることは妨げない。
【0018】
脱燐処理に使用する容器に特別な制約はなく、溶銑鍋や装入鍋などの取鍋、トピード、転炉型容器などを用いることができる。また場合によっては、後述する脱珪処理と脱燐処理とを同一容器内で順次実施してもよい。
この脱燐処理では、脱燐反応を効果的に高めるために溶銑中に酸素源として気体酸素(酸素ガスまたは酸素含有ガス)及び/又は固体酸素源(例えば、鉄鉱石やミルスケールなどの酸化鉄)を媒溶剤とともに添加する。このうち気体酸素についてはランスによる上吹きや溶銑中へのインジェクション或いは底吹きなどの任意の方法により、また、固体酸素源や媒溶剤については上置き装入やインジョクションなどの任意の方法により、それぞれに溶銑中に供給される。また、脱燐を効率的に行うため溶銑を撹拌することが好ましく、この撹拌としては、一般に浸漬ランスや炉底に埋め込まれたノズルなどを利用したガス撹拌が行われる。
【0019】
高炉操業では、装入原料中の珪酸分の調整や操業条件の調整などにより出銑される溶銑中の珪素濃度を低減させることができ、したがって、仮に高炉溶銑が珪素濃度0.05wt%以下の低珪素溶銑である場合にはそのまま脱燐処理に供することもできるが、通常の高炉溶銑の珪素濃度は0.05wt%を超える水準にあり、この場合には脱燐処理に先立ち溶銑の脱珪処理を行う必要がある。
【0020】
一般に、高炉から出銑された溶銑は鋳床を経由して溶銑鍋、トーピードなどの容器に注湯及び貯留されるが、前記脱珪処理は鋳床での脱珪、容器内での脱珪のいずれか、若しくはその両方で実施してよい。容器内での脱珪処理は溶銑鍋や装入鍋などの取鍋だけでなく、媒溶剤や酸素源などの副原料の供給機能(さらに好ましくは、溶銑の撹拌機能)を備えたものであれば如何なる形式の容器で行ってよく、例えば、トーピード、転炉型容器、脱珪専用容器などを用いることができる。
【0021】
脱珪処理では脱珪剤として酸素源が添加され、また、必要に応じて媒溶剤として焼石灰などのCaO分が添加され、スラグの塩基度が調整される。酸素源としては、固体酸素源(例えば、鉄鉱石やミルスケールなどの酸化鉄)または気体酸素(酸素ガス又は酸素含有ガス)のいずれを用いてもよく、また両者を併用してもよい。このうち気体酸素についてはランスによる上吹きや溶銑中へのインジェクション或いは底吹きなどの任意の方法により、また、固体酸素源や媒溶剤については上置き装入(例えば、鋳床や鋳床から溶銑鍋などの容器への溶銑流、溶湯浴面上への上置き装入)又はインジョクションなどの任意の方法により、それぞれに溶銑に供給される。
【0022】
また、脱珪処理の媒溶剤として脱燐処理により生じた脱燐スラグを用いることにより、製鋼スラグの発生量を削減できるため好ましい。一般には、脱珪処理の媒溶剤として脱燐スラグを使用するとスラグ中の燐が溶銑に復燐し、次工程の脱燐処理の負荷が増大することが問題となるが、本発明法による燐濃度0.15wt%以上、珪素濃度0.05wt%以下の領域での脱燐処理では高い脱燐効率が得られるため、脱燐スラグを脱珪処理の媒溶剤として使用し、スラグからの復燐によって溶銑の燐濃度が高くなっても何ら問題はなく、次工程の脱燐処理では高い脱燐効率が得られ、溶銑の燐濃度を所望のレベルまで低下させることができる。そして、このように脱珪処理の媒溶剤として脱燐スラグを用いれば、その分、製鋼スラグの発生量の削減化につながる。
【0023】
また、脱珪処理の媒溶剤として脱燐スラグを用いることは、例えば、高炉溶銑の燐濃度が0.15wt%未満である場合に、この溶銑の脱燐効率を高めることにも有効である。すなわち、精錬前の溶銑の燐濃度が0.15wt%未満であるような場合に、脱珪処理の媒溶剤として脱燐スラグを用いることにより、スラグからの復燐によって溶銑の燐濃度を0.15wt%以上に高めることができる。したがって、これを本発明法にしたがい脱燐処理することにより、溶銑を燐濃度が0.15wt%未満のままで脱燐処理するよりも脱燐効率を効果的に高めることができる。
【0024】
【実施例】
[実施例1]
高炉から出銑した溶銑を鋳床及び溶銑鍋内で脱珪処理した後、300ton転炉内で脱燐処理を行った。脱燐処理前の溶銑の珪素濃度は、前記鋳床及び溶銑鍋での脱珪処理条件を制御することで調整した。
【0025】
脱燐処理条件としては、脱燐処理前後の溶銑温度を1270〜1330℃とし、脱燐用媒溶剤にはCaFなどのF源を含まないCaO主体の焼石灰のみを用い、CaOの原単位は9〜11kg/溶銑tonとした。また、気体酸素の供給は上吹きランスで行うとともに、鉄鉱石を主体とした固体酸素源の添加も行い、全酸素原単位を8〜10Nm/溶銑tonとした。
なお、固体酸素源の添加量は酸素換算で1〜2Nm/溶銑tonとした。また、気体酸素の送酸条件は送酸速度を15000〜25000Nm/hr、ランス高さを1.5〜2.5m、吹錬時間を8〜10分とした。
【0026】
各実施例における脱燐処理前後の溶銑成分を表1及び表2に示す。なお、脱燐処理後の溶銑の目標燐濃度は0.015wt%以下とした。
表1及び表2によれば、脱燐処理を燐濃度が0.15wt%以上、珪素濃度が0.05wt%以下の溶銑に対して行った本発明例(No.1〜No.8)は、いずれも脱燐処理後の溶銑の燐濃度は目標である0.015wt%以下となっている。これに対して、脱燐処理を燐濃度が0.15wt%未満の溶銑に対して行った比較例(No.9〜No.18)では、溶銑の珪素濃度に拘りなく目標とする0.015wt%以下の燐濃度は得られていない。また、脱燐処理を燐濃度は0.15wt%以上であるが、珪素濃度が0.05wt%を超える溶銑に対して行った比較例(No.19〜No.22)についても、目標とする0.015wt%以下の燐濃度は得られていない。
【0027】
【表1】
Figure 0003823623
【0028】
【表2】
Figure 0003823623
【0029】
[実施例2]
高炉から出銑した溶銑を150トン溶銑鍋内で脱珪処理した。この脱珪処理条件としては、脱珪処理前後での溶銑温度を1350〜1400℃とし、脱珪用媒溶剤には石灰、脱燐滓及び鉄鉱石を用い、気体酸素の供給は上吹きランスで行ない、その送酸速度は1500〜2500Nm/hrとした。また、浴の撹拌のために窒素をキャリアガスとしてインジェクションし、このガスインジェクションによる撹拌時間は14〜16分とした。この脱珪処理の後、CaFなどのF源を含まないCaO主体の脱燐用媒溶剤を用いて上記実施例1とほぼ同じ条件で脱燐処理を行い、燐濃度が0.015wt%以下の溶銑を得た。
【0030】
各実施例の脱珪処理における媒溶剤の添加量と脱珪処理前後の溶銑成分を表3に示す。
表3によれば、脱珪処理において媒溶剤の一部として脱燐スラグを用いた場合でも、処理前の珪素濃度に拘りなく0.05wt%以下のレベルまで珪素濃度が低下し、適切な脱珪がなされている。また、媒溶剤の一部として脱燐スラグを用いたことにより、脱珪処理前には0.15wt%未満であった溶銑の燐濃度がスラグからの復燐によって脱珪処理後には0.15wt%以上になり、これにより脱燐処理において高い脱燐効率が得られ、結果として、脱燐処理後の燐濃度を目標とする0.015wt%以下とすることができた。
【0031】
【表3】
Figure 0003823623
【0032】
[実施例3]
高炉から出銑した溶銑を150トン溶銑鍋内で脱珪処理した。この脱珪処理条件としては、脱珪処理前後での溶銑温度を1350〜1400℃とし、脱珪用媒溶剤には石灰、脱燐滓及び鉄鉱石を用い、それらの使用量は石灰:2kg/溶銑ton、脱燐滓:8〜10kg/溶銑ton、鉄鉱石:4〜6kg/溶銑tonとした。また、気体酸素の供給は上吹きランスで行ない、その送酸速度は1500〜2500Nm/hrとした。さらに、浴の撹拌のために窒素をキャリアガスとしてインジェクションし、このガスインジェクションによる撹拌時間は14〜16分とした。
【0033】
脱珪処理後、スラグを排滓した後に2鍋を300ton転炉で受銑し、引き続き転炉内で脱燐処理を行った。この脱燐処理条件としては、脱燐処理前後の溶銑温度を1300〜1330℃とし、脱燐用媒溶剤にはCaFなどのF源を含まないCaO主体の焼石灰のみを用い、CaOの原単位は9〜11kg/溶銑tonとした。また、気体酸素の供給は上吹きランスで行うとともに、鉄鉱石を主体とした固体酸素源の添加も行い、全酸素原単位を8〜10Nm/溶銑tonとした。
なお、固体酸素源の添加量は酸素換算で1〜2Nm/溶銑tonとした。また、気体酸素の送酸条件は送酸速度を15000〜25000Nm/hr、ランス高さを1.5〜2.5m、吹錬時間を8〜10分とした。
【0034】
各実施例における脱珪処理前後と脱燐処理後の溶銑成分を表4に示す。なお、脱燐処理後の溶銑の目標燐濃度は0.015wt%以下とした。
表4によれば、高炉溶銑を脱珪処理して珪素濃度を0.05wt%以下とし、且つその際に媒溶剤の一部として脱燐スラグを用いることで0.15wt%未満であった溶銑の燐濃度を0.15wt%以上に高め、この溶銑に対して脱燐処理を実施することにより、高い脱燐効率が得られ、脱燐処理後の溶銑の燐濃度は目標である0.015%以下となっている。
【0035】
【表4】
Figure 0003823623
【0036】
【発明の効果】
以上述べたように本発明法によれば、溶銑予備脱燐処理を行う際にCaFなどのF源を含まない媒溶剤を用いて溶銑脱燐を効率的に行うことができる。
また、本願の請求項3に係る発明によれば、脱燐スラグを脱珪工程で再利用することにより製鋼工程におけるスラグ発生量の低減化を図ることができる。
さらに、本願の請求項4に係る発明によれば、脱燐スラグを脱珪工程で再利用することにより製鋼工程におけるスラグ発生量の低減化を図ることができるだけでなく、精錬前の燐濃度が比較的低い溶銑の脱燐効率を効果的に向上させることが可能となる。

Claims (5)

  1. 溶銑予備処理としての脱燐処理を、溶銑にF源を含まないCaOを主体とした媒溶剤を添加し、酸素源として気体酸素及び/又は固体酸素源を供給して行う溶銑精錬方法において、脱燐処理を燐濃度が0.15wt%以上、珪素濃度が0.05wt%以下の溶銑に対して行い、脱燐処理後の溶銑の燐濃度を0.015wt%以下とすることを特徴とする溶銑精錬方法。
  2. 脱燐処理で添加する媒溶剤のCaO原単位を9〜11kg/溶銑tonとすることを特徴とする請求項1に記載の溶銑精錬方法。
  3. 珪素濃度が0.05wt%を超える溶銑を0.05wt%以下の珪素濃度まで脱珪処理した後、脱燐処理することを特徴とする請求項1又は2に記載の溶銑精錬方法。
  4. 溶銑を脱珪処理した後、脱燐処理する溶銑精錬法であって、前記脱珪処理においては、後工程の脱燐処理により生じたスラグを媒溶剤の少なくとも一部として用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の溶銑精錬方法。
  5. 高炉から出銑された燐濃度が0.15wt%未満の溶銑を脱珪処理するに当り、後工程の脱燐処理により生じたスラグを媒溶剤の少なくとも一部として用い、該脱珪処理した際のスラグからの復燐により燐濃度が0.15wt%以上となった溶銑を脱燐処理することを特徴とする請求項4に記載の溶銑精錬方法。
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