JP3823898B2 - 低燐溶銑の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、溶銑予備処理として行われる脱燐処理により低燐溶銑を効率的に製造するための方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、溶銑段階で予備脱燐を行って溶銑中のPをある程度除去した後、転炉で脱炭吹錬を実施する製鋼方法が発展してきた。この予備脱燐処理は、トーピード、溶銑鍋、転炉等の設備を用い、CaO系精錬剤と気体酸素や固体酸素源(例えば、酸化鉄)等の酸素源を添加して行われる。この脱燐処理の際に溶銑からスラグ側にPを効率的に移行させるためには、スラグの組成やスラグ量等の制御が重要な因子となる。
【0003】
特に、精錬剤にCaF(ホタル石)を添加することで、▲1▼スラグの融体性が向上する、▲2▼SiOのネットワークを分断してCaイオンの活量が増加する、▲3▼FeOの活量が増加する、等の作用が得られることが従来から指摘されており、実操業でも脱燐の反応性を高めるためにCaFが広く使用されている。
例えば、特開昭63−57712号には、添加CaOと酸素源の重量比CaO/O以外に、(CaF+Al)/CaO及びAl/CaF比を規定し、CaF添加により脱燐率を向上させる技術が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、最近では環境保護の観点から、スラグ中Fの溶出量の規制基準が強化される状況にあり、このため脱燐スラグ中のF濃度を極限まで低下させる必要が生じている。このためCaFを使わない脱燐処理技術の開発が強く望まれているが、現状ではスラグを低塩基度化してスラグ量を極端に多くした操業を行うとか、多重処理を実施する等の方法を行っているのが実情である。しかし、前者のように脱燐スラグ量が極端に増大することは、環境保護の面から強く望まれているスラグ量削減というニーズに逆行するものであり、また、後者のように多重処理を実施することは生産性の低下と溶鋼の製造コストの上昇を招く問題があり、したがって、これらは抜本的な対策にはなり得ない。
【0005】
したがって本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、CaFの添加量を極力削減し若しくはCaFを添加しなくても、効率的且つ低コストに溶銑脱燐を行うことができる低燐溶銑の製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決し得る溶銑予備処理法を見い出すべく、転炉型容器を用いて種々の実験と検討を行った。先に述べたようにCaFはスラグの溶融性を確保するために重要な働きをしており、本発明者らの実験においても、CaFを添加しない或いは添加量が少ない場合には添加された精錬剤(石灰)は見掛け上滓化したようには見えず、脱燐反応効率も低下した。しかし、実験を繰り返すうちに、気体酸素と微粉状の精錬剤を溶銑浴面に吹き付けること(特に好ましくは、気体酸素が供給されている溶銑浴面領域に精錬剤を吹き付けること)により、精錬剤の反応性が大きく向上することが判った。さらに、このような気体酸素と精錬剤の添加形態を最適化すべく検討を重ねた結果、供給された気体酸素により溶銑浴面に生じる凹みの深さ(気体酸素供給速度と上吹きランスの構成及び使用条件から計算される理論上の凹み深さ)によっても脱燐反応が大きく変化することが判った。
【0007】
すなわち、気体酸素を溶銑浴面に供給(吹き付け)すると気体酸素が供給された溶銑浴面領域にFeOが生成するが、脱燐反応を効率的に生じさせるには、精錬剤(CaO)の供給速度に見合った十分な量のFeOを生成させる必要がある。そして、このFeOの生成量が、気体酸素が溶銑浴面に衝突する圧力に応じて溶銑浴面に生じる凹みの深さによって大きく変化し、FeOを効率的に生成させるための最適な凹み深さの範囲があることが判った。また、脱燐処理では溶銑成分や操業条件等によってスラグ生成量が変化するが、スラグは気体酸素が溶銑浴面に到達することを妨げる要因となり、その程度はスラグ量に依存することから、上記凹み深さはスラグ量に応じて制御する必要があることも判った。
【0008】
本発明は、以上のような知見に基づきなされたもので、その特徴は以下のとおりである。
[1]溶銑を保持した容器内にCaO源である精錬剤と酸素源を添加して、溶銑予備処理である脱燐処理を行うことにより低燐溶銑を製造する方法において、
上吹きランスを通じて気体酸素と少なくとも一部の精錬剤を溶銑浴面に吹き付けて脱燐処理を行うとともに、下記(1)式により定義される、気体酸素の吹き付け又は気体酸素をキャリアガスとする精錬剤の吹き付けにより溶銑浴面に生じる凹みの深さLを、溶銑成分と精錬剤添加量とから予め計算される処理後スラグ量Ws(kg/溶銑ton)に応じて、下記 (2) 式を満足するよう制御することを特徴とする低燐溶銑の製造方法。
L=LO×exp(−0.78LH/LO) … (1)
O=63×(FO2/ndt} /
但し LH:上吹きランスのランス高さ(mm)
O2:上吹きランスからの気体酸素供給速度(Nm/hr)
n:上吹きランスのノズル孔数
t:上吹きランスのノズル孔径(mm)(但し、複数のノズル孔のノズル径が異なる場合は、全ノズル孔の平均孔径)
1.5 Ws+ 170 ≦L≦ 1.5 Ws+ 400 (2)
【0009】
2 上記 1 の製造方法において、上吹きランスから供給される精錬剤のうちの少なくとも一部が、気体酸素が吹き付けられる溶銑浴面領域に吹き付けられることを特徴とする低燐溶銑の製造方法。
【0010】
3 上記 2 の製造方法において、上吹きランスから供給される精錬剤のうちの少なくとも一部が、気体酸素の吹き付けにより溶銑浴面に生じる火点に吹き付けられることを特徴とする低燐溶銑の製造方法。
4 上記 2 ]又は[ 3 の製造方法において、精錬剤の少なくとも一部を、気体酸素をキャリアガスとして溶銑浴面に吹き付けることを特徴とする低燐溶銑の製造方法。
5 上記[1]〜 4 のいずれかの製造方法において、Si濃度が0.10mass%以下の溶銑を脱燐処理することを特徴とする低燐溶銑の製造方法。
6 上記[1]〜 5 のいずれかの製造方法において、精錬剤中にCaFを実質的に添加しないか若しくはCaFの添加量を1kg/溶銑ton以下とすることを特徴とする低燐溶銑の製造方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の低燐溶銑の製造方法では、溶銑を保持した容器(精錬容器)内に酸素源とCaO源である精錬剤を添加して、溶銑予備処理である脱燐処理を行うに際し、上吹きランスを通じて気体酸素と少なくとも一部の精錬剤を溶銑浴面に吹きつけて脱燐処理を行うとともに、下記(1)式により定義される、気体酸素の吹付け又は気体酸素をキャリアガスとする精錬剤の吹付けにより溶銑浴面に生じる凹みの深さLを、溶銑成分と精錬容器への添加成分とから予め計算される処理後スラグ量に応じて制御する。
L=LO×exp(−0.78LH/LO) … (1)
O=63×(FO2/ndt} /
但し LH:上吹きランスのランス高さ(mm)
O2:上吹きランスからの気体酸素供給速度(Nm/hr)
n:上吹きランスのノズル孔数
t:上吹きランスのノズル孔径(mm)(但し、複数のノズル孔のノズル径が異なる場合は、全ノズル孔の平均孔径)
【0012】
上記(1)式で定義される溶銑浴面の凹み深さLは、気体酸素供給速度と上吹きランスの構成及び使用条件から計算される理論上の凹み深さであるが、この凹み深さLが小さすぎると、気体酸素の圧力が小さいために気体酸素と溶銑中のFe、P等との反応効率が悪くなり、気体酸素が溶銑中成分と反応しないまま系外に出てしまうため、脱燐反応が悪化する。一方、凹み深さLが大きすぎると、気体酸素の圧力が大きくなるため溶銑の撹拌が強くなり、生成したFeOが溶銑中の炭素で還元されやすくなるため、FeOを高濃度に維持することが困難となり、この場合も脱燐反応が悪化する。したがって、気体酸素の供給(又は、気体酸素をキャリアガスとする精錬剤の供給)により溶銑浴面に形成される凹み深さLには最適な範囲が存在することになる。
【0013】
また、この凹み深さLの最適範囲はスラグ量に依存する。つまり、スラグが存在すると気体酸素はこのスラグを押しのけて溶銑浴面に到達しなければならず、スラグ量が多いほど気体酸素は溶銑表面に到達しにくくなる。このためスラグ量が多いほど気体酸素の圧力を高めること、すなわち、上記(1)式で定義される凹み深さLを大きくすることが必要となる。
ここで、本発明において溶銑浴面に生じる凹みの深さLの制御を行うための基準となるスラグ量は、溶銑成分と精錬剤添加量とから予め計算される処理後スラグ量である。脱燐処理中は溶銑に対して気体酸素が供給されていることや溶銑を撹拌するために底吹きガス等を併用する場合が多いためスラグの採取が難しく、このため処理中のスラグ量の実測は極めて困難である。このため本発明では、溶銑成分と精錬剤添加量とから予め計算される処理後スラグ量に基づき凹み深さLの制御を行う。この場合、処理後スラグ量そのものに基づいて凹み深さLを制御してもよいし、処理後スラグ量と、処理中の気体酸素の添加速度、精錬剤の添加時期、添加速度などから処理中のスラグ量を推定して凹み深さLを制御してもよい。ここで、気体酸素の添加速度から気体酸素で酸化されて生成する酸化物の量が把握でき、また精錬剤の添加時期や添加速度も把握できるため、処理後のスラグ量が求まれば、処理中のスラグ量を推定することは容易である。また、処理後スラグ量は、溶銑温度、処理後目標P濃度などに応じたスラグ量の変動量を予めデータ蓄積しておくことにより、溶銑成分と精錬剤添加量に基づき容易に計算することができる。
【0014】
ここで、本発明では、溶銑成分と精錬容器内への添加成分とから予め計算される処理後スラグ量Wsに応じて、溶銑浴面に生じる凹みの深さLを下記(2)式を満足するよう制御する。
1.5Ws+170≦L≦1.5Ws+400 … (2)
【0015】
図1は、本発明が行った試験結果に基づき、溶銑の脱燐率を処理後スラグ量(溶銑成分と精錬剤添加量から計算される処理後スラグ量)と凹み深さLとの関係で整理して示したものである。この試験では、高炉で出銑した溶銑を鋳床及び必要に応じて溶銑鍋内で脱珪処理し、機械撹拌を用いて溶銑鍋内で脱硫処理を施した後、300tの転炉型容器内で脱燐処理を行った。この脱燐処理では、上吹きランスを用いて気体酸素をキャリアガスとして石灰粉を溶銑浴面に吹き付けるとともに、転炉型容器の炉底に埋め込まれたノズルから溶銑中に窒素ガスを0.07〜0.12Nm/min/溶銑tonの供給量で吹き込み、8〜13分間の脱燐処理を行った。なお、処理前後での溶銑温度は1280〜1350℃となるようにした。図1によれば、処理後スラグ量Wsとの関係で上記(2)式を満足する凹み深さLの範囲において、80%以上の脱燐率が得られている。
【0016】
また、スラグ量が多い場合には、気体酸素がスラグを押しのけて溶銑浴面に到達できるようにするために、上記(1)式で定義される凹み深さLを大きくする必要があるが、通常の脱燐処理では、溶銑は上吹きランスからの気体酸素の吹き付けにより撹拌されることに加えて、底吹きガス等の吹き込みによっても撹拌されるため、スラグ量が多い場合に上記凹み深さLを大きくすると溶銑の撹拌が過剰になる。このため気体酸素と溶銑との反応サイトとなる溶銑浴面が大きく乱れ、溶銑浴面に到達する気体酸素量を適切に制御することが難しくなる。また、溶銑の撹拌が過剰になると気体酸素と溶銑との反応により生成したFeOが溶銑中のCにより還元され、脱燐に必要なFeO量を十分に確保できなくなる。したがって、溶銑を過剰に撹拌することなく溶銑浴面に到達する気体酸素量を適切に制御し且つFeO量を十分に確保するには、スラグ量は少ない方が好ましい。そして、このように少ないスラグ量で脱燐処理を行うことにより、溶銑浴面にFeOを効率的に生成させ、高効率な脱燐反応を安定して生じさせることができる。
【0017】
脱燐反応により生じるスラグは、脱燐生成物を安定な物質である3CaO・Pなどのカルシウムフォスヘイトとして固定しなければならないので、塩基度(CaO/SiO)をある程度高める必要がある。したがって、スラグ量を少なくするには、脱燐処理される溶銑中のSi濃度を低減し、スラグ中のSiO量を少なくすることが有効である。特に、脱燐処理される溶銑中のSi濃度を0.10mass%以下として、スラグ量を十分に低減させることにより、特に高い効果が得られることが判った。
【0018】
溶銑は高炉などの溶銑製造設備から供給されるが、製造される溶銑のSi濃度を低める方法としては、溶銑製造用の原料の予備処理などで珪酸分の全装入量を低減したり、高炉などの炉内での珪酸還元反応を抑制するための低温操業やコークスの偏在装入などの方法が有効である。したがって、高炉などで製造された溶銑のSi濃度が0.10mass%以下の場合には、これら溶銑に対して下記のような脱珪処理を施すことなく、脱燐処理してもよい。
【0019】
一方、高炉などで製造された溶銑のSi濃度が0.10mass%を超える場合には、脱燐処理に先立ち高炉鋳床や溶銑鍋などで脱珪処理を実施し、脱燐処理前の溶銑中Si濃度を0.10mass%以下とした上で脱燐処理を行うことが好ましい。
通常、溶銑の脱珪処理は固体酸素源や気体酸素を溶銑に添加することにより行われ、例えば、焼結粉やミルスケールなどの固体酸素源を溶銑浴面への上置き装入や浴中への吹き込みにより添加し、或いは気体酸素を溶銑浴面への吹き付けや浴中への吹き込みにより添加する方法が採られる。
【0020】
また、溶銑の脱珪処理は高炉鋳床や溶銑鍋以外に、例えば高炉鋳床から溶銑鍋などの搬送容器への溶銑流に対して酸素源を添加することにより行うこともできる。また、脱珪効率を高めるために容器内の溶銑中に撹拌ガスを吹き込んだり、焼石灰などのCaO源を添加してスラグの塩基度を調整することにより脱珪スラグ中の酸化鉄を極力低減させ、還元効率を高めるようにすることもできる。
溶銑の脱珪処理を経て脱燐処理を行う場合には、事前に脱硅スラグなどのスラグを排滓し、珪酸分の混入を極力抑制することが、効率的な脱燐処理を行う上で好ましい。このため脱燐処理前に機械式排滓装置や手作業により、溶銑からスラグを分離した後、脱燐処理を行う。
【0021】
本発明法では、上吹きランスを通じて気体酸素と少なくとも一部の精錬剤を溶銑浴面に吹き付けるが、この場合、精錬剤を気体酸素が供給(吹き付け)される溶銑浴面領域に吹き付けることが特に好ましい。
上吹きランスを通じて気体酸素を溶銑浴面に吹き付けると、浴面に衝突した気体酸素により大量のFeOが生成するため、精錬剤の滓化促進に非常に有利な条件となり、このFeOが大量に生成した領域に、上吹きランスを通じて精錬剤を直接供給することにより、精錬剤(CaO)の滓化を効果的に促進することができる。
【0022】
また、上吹きランスによる気体酸素と精錬剤の溶銑浴面への吹き付けでは、精錬剤を気体酸素以外のキャリアガス(例えば、N、Arなどの不活性ガス)を用いて溶銑浴面に吹き付けてもよいが、その場合でも、精錬剤の一部又は全部を気体酸素が供給(吹き付け)されている溶銑浴面領域に吹き付けることが好ましい。これは、気体酸素が供給される溶銑浴面領域は酸素供給によってFeOが生成する場所であり、このような浴面領域に直接CaOを添加することにより、CaOの滓化が効果的に促進されるとともにCaOとFeOの接触効率が高まり、これによって脱燐反応効率を顕著に促進できるからである。また、精錬剤は気体酸素が供給された溶銑浴面領域の中でも、特に気体酸素の上吹きにより生じる“火点”と呼ばれる領域に供給することが最も好ましい。この火点は気体酸素ガスジェットが衝突することにより最も高温となる溶銑浴面領域であるが、気体酸素による酸素反応が集中し且つ気体酸素ガスジェットにより強攪拌されている領域であるため、CaOの供給による効果が最も顕著に得られる領域であると言える。また、この意味で精錬剤を溶銑浴面に吹き付けるためのキャリアガスとしては気体酸素を用いることが好ましく、この場合には、気体酸素が精錬剤とともに溶銑浴面に吹き付けられることにより、精錬剤が火点に直接供給されることになり、この結果、溶銑浴面でのCaOとFeOの接触効率が最も高まり、脱燐反応を特に顕著に促進することができる。
【0023】
本発明法において、上吹きランスを用いて気体酸素と精錬剤を溶銑浴面に吹き付ける方法に特別な制限はなく、例えば、上吹きランスの複数のランス孔のうち、一部のランス孔から気体酸素のみを、また、他のランス孔から気体酸素又は気体酸素以外のガス(例えば、窒素やArなどの不活性ガス)をキャリアガスとして精錬剤を、それぞれ溶銑浴面に供給することもできる。これにより気体酸素が供給されている溶銑浴面領域に精錬剤を添加することができる。また、この場合には、ランス先端の中央に主ランス孔を、その周囲に複数の副ランス孔を有する上吹きランスを用い、副ランス孔から気体酸素を、主ランス孔から気体酸素又は上述した気体酸素以外のガスをキャリアガスとして精錬剤を、それぞれ溶銑浴面に供給することが特に好ましい。また、気体酸素の吹き付けと、気体酸素又は上述した気体酸素以外のガスをキャリアガスとする精錬剤の吹き付けを、異なる上吹きランスを用いて行ってもよい。但し、いずれの場合にも、上述したように精錬剤を最も効率的に滓化させるには、精錬剤のキャリアガスは気体酸素であることが特に望ましい。
【0024】
本発明において使用する気体酸素は、純酸素ガス、酸素含有ガスのいずれでもよい。また、溶銑保持容器内に添加される酸素源としては、気体酸素以外に酸化鉄(例えば、焼結粉、ミルスケール)等の固体酸素源を用いることができ、これらを上置き装入や浴中へのインジェクション等の任意の方法で添加することができる。但し、上述したような溶銑浴面への気体酸素の供給(吹き付け)による効率的な溶銑脱燐を行うためには、溶銑保持容器内に添加される酸素源の50%以上、好ましくは70%以上(気体酸素換算量)が上吹きランスを通じて溶銑浴面に供給される気体酸素であることが好ましい。
なお、気体酸素の一部は溶銑浴面への吹き付け以外の方法、例えば、浸漬ランス、溶銑保持容器の側壁や底部に設けられた吹き込みノズルを通じた溶銑浴中へのインジェクション等の方法で浴中に供給してもよい。
精錬剤としては、通常、石灰などのCaO系精錬剤(CaOを主体とした精錬剤)を用いる。また、上吹ランスを通じて溶銑浴面に吹き付ける精錬剤は粉体を用いる。
【0025】
本発明法では精錬剤の一部を上記方法以外の方法、例えば、上置き装入や窒素ガス等をキャリアガスとする浴中へのインジェクションなどによって溶銑保持容器内に添加してもよいが、これらの方法で添加された精錬剤は上記のような作用にはあまり寄与しない。よって、本発明法では容器内に添加すべき精錬剤の少なくとも1/3程度を、また、特に好ましくは容器内に添加すべき精錬剤の全量を上吹きランスを通じて浴面上方から溶銑浴面に吹き付けることが好ましい。上吹きランスを通じて精錬剤を溶銑浴面に吹き付ける際のキャリアガスとしては窒素や不活性ガス、或いは気体酸素(純酸素ガス又は酸素含有ガス)が用いられる。なお、気体酸素(純酸素ガス又は酸素含有ガス)をキャリアガスとして精錬剤を浴中にインジェクションする方法は上記作用を得るのに比較的有効であるので、溶銑浴面に精錬剤を吹き付ける以外の方法を併用する場合には、この気体酸素による浴中へのインジェクションを用いることが好ましい。
【0026】
また、脱燐効率を向上させるためには溶銑をガス撹拌することが好ましい。このガス撹拌は、例えば、浸漬ランス、溶銑保持容器の側壁や底部に設けられた吹込みノズル等を通じて窒素やArなどの不活性ガスを溶銑中に吹き込むことにより行われる。このような撹拌ガスの供給量としては、十分な浴撹拌性を得るために0.02Nm/min/溶銑ton以上とし、また、浴の撹拌が強すぎると生成したFeOを溶銑中のCが還元する速度が大きくなり過ぎるためのため0.3Nm/min/溶銑ton以下とすることが好ましい。
脱燐処理を行うための溶銑保持容器(精錬容器)としては、フリーボードが十分に確保できるという点から転炉型容器が最も好ましいが、例えば、溶銑鍋やトーピードカーなどの任意の容器を用いることができる。
【0027】
従来の脱燐処理では、CaOの滓化を促進させるためにCaF(ホタル石)を添加することが事実上必須であったが、近年Fが環境に及ぼす影響を考慮し、鋼の精錬においてもCaFの使用量を抑えることが要請されつつある。この点、本発明法はCaFを実質的に添加しない(すなわち、精錬剤中に不可避的不純物として含まれる以外のCaFを添加しない)若しくは少量のCaFを添加するだけで高い脱燐効率が得られる。したがって、CaOの滓化を促進するためにCaFを添加する場合でも、その添加量は1kg/溶銑ton以下とすることが望ましい。
図2は、転炉型容器を用いた本発明法の一実施状況を示しており、1は転炉型容器、2は上吹きランス、3は炉底部に設けられた底吹きノズルであり、この例では、上吹きランス2から気体酸素をキャリアガスとして精錬剤がメタル浴面に吹き付けられるとともに、底吹きノズル3から撹拌ガスが溶銑内に吹き込まれている。
【0028】
【実施例】
高炉で出銑した溶銑を鋳床及び必要に応じて溶銑鍋内で脱珪処理し、機械撹拌を用いて溶銑鍋内で脱硫処理を施した後、図2に示す300tの転炉型容器内で脱燐処理を行った。この脱燐処理では、上吹きランスを用いて気体酸素をキャリアガスとして石灰粉を溶銑浴面に吹き付けるとともに、一部の実施例では、塊石灰の上置き装入を併せて行った。各実施例とも転炉の炉底に埋め込まれたノズルから溶銑中に窒素ガスを0.07〜0.12Nm/min/溶銑tonの供給量で吹き込み、8〜13分間の脱燐処理を行った。なお、処理前後での溶銑温度は1280〜1350℃となるようにした。
各実施例の結果を、脱燐処理条件とともに表1及び表2に示す。
【0029】
【表1】
Figure 0003823898
【0030】
【表2】
Figure 0003823898
【0031】
【発明の効果】
以上述べたように本発明の低燐溶銑の製造方法によれば、CaFの添加量を従来に較べて大幅に削減し若しくはCaFを添加することなく、効率的な脱燐処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】溶銑の脱燐率を処理後スラグ量と凹み深さLとの関係で整理して示したグラフ
【図2】本発明法の一実施状況を示す説明図
【符号の説明】
1…転炉型容器、2…上吹きランス、3…底吹きノズル

Claims (6)

  1. 溶銑を保持した容器内にCaO源である精錬剤と酸素源を添加して、溶銑予備処理である脱燐処理を行うことにより低燐溶銑を製造する方法において、
    上吹きランスを通じて気体酸素と少なくとも一部の精錬剤を溶銑浴面に吹き付けて脱燐処理を行うとともに、下記(1)式により定義される、気体酸素の吹き付け又は気体酸素をキャリアガスとする精錬剤の吹き付けにより溶銑浴面に生じる凹みの深さLを、溶銑成分と精錬剤添加量とから予め計算される処理後スラグ量Ws(kg/溶銑ton)に応じて、下記 (2) 式を満足するよう制御することを特徴とする低燐溶銑の製造方法。
    L=LO×exp(−0.78LH/LO) … (1)
    O=63×(FO2/ndt} /
    但し LH:上吹きランスのランス高さ(mm)
    O2:上吹きランスからの気体酸素供給速度(Nm/hr)
    n:上吹きランスのノズル孔数
    t:上吹きランスのノズル孔径(mm)(但し、複数のノズル孔のノズル径が異なる場合は、全ノズル孔の平均孔径)
    1.5 Ws+ 170 ≦L≦ 1.5 Ws+ 400 (2)
  2. 上吹きランスから供給される精錬剤のうちの少なくとも一部が、気体酸素が吹き付けられる溶銑浴面領域に吹き付けられることを特徴とする請求項1に記載の低燐溶銑の製造方法。
  3. 上吹きランスから供給される精錬剤のうちの少なくとも一部が、気体酸素の吹き付けにより溶銑浴面に生じる火点に吹き付けられることを特徴とする請求項2に記載の低燐溶銑の製造方法。
  4. 精錬剤の少なくとも一部を、気体酸素をキャリアガスとして溶銑浴面に吹き付けることを特徴とする請求項2又は3に記載の低燐溶銑の製造方法。
  5. Si濃度が0.10mass%以下の溶銑を脱燐処理することを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の低燐溶銑の製造方法。
  6. 精錬剤中にCaFを実質的に添加しないか若しくはCaFの添加量を1kg/溶銑ton以下とすることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載の低燐溶銑の製造方法。
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