JP5435106B2 - 溶銑の脱燐処理方法 - Google Patents

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この発明は、溶銑予備処理として行われる溶銑の脱燐処理方法に関する。
従来の転炉法に代わって溶銑段階で脱燐処理を行なう溶銑予備処理法が広く用いられるようになった。これは、脱燐反応が精錬温度が低いほど熱力学的に進行しやすく、より少ない量の精錬剤で脱燐処理を行うことができるためである。
一般に溶銑予備処理では、まず、酸化鉄等の固体酸素源を溶銑に添加して脱珪処理を行ない、この脱珪処理で発生したスラグを除去した後、精錬剤(脱燐剤)を添加して脱燐処理を行う。通常、脱燐処理の精錬剤としては石灰などのCaO系精錬剤を用い、酸素源としては気体酸素や固体酸素源(酸化鉄等)を用いる。処理容器としては、トーピードカー、取鍋(装入鍋)、転炉型容器などが用いられるが、特に転炉型容器を用いる場合には、上吹きランスから溶銑浴面に気体酸素が吹き付けられ、さらに炉底などから撹拌用ガスが吹き込まれるのが一般的である。
溶銑脱燐に関して、従来では処理後の溶銑[P]濃度の低減には高塩基度操業が不可欠であると考えられ、このため処理後のスラグ塩基度(=質量比[%CaO/%SiO],以下同様)が2.5〜3.5程度となるように処理が行われている(例えば、特許文献1)。一方、送酸速度が高い場合、スピッティングやダストの発生量が増大し、鉄歩留まりが著しく低下する。これを防止するため、送酸速度<1.5Nm/min/溶銑tonで操業を行うのが一般的である。
特開2003−328025号公報
しかし、上記従来技術のようなスラグ塩基度(=2.5〜3.5)では、スラグ中のfree-CaOの存在によりスラグが膨張するため路盤材等への利用が困難であり、スラグ利材化に限界がある。一方、単純にスラグ塩基度を低下させると脱燐能力が低下してしまい、効率的な脱燐処理ができなくなる。
また、従来技術では送酸速度が低いため、生産量を向上させることができない。さらに、スクラップを多量に使用する場合(低銑配操業時)、熱余裕を確保するため高[Si]溶銑を処理する必要があるが、送酸速度を高くできないため、[Si]増分の酸素を供給するために精錬時間を延長せざるを得ず、生産性がさらに低下してしまう。また、スラグ塩基度=2.5〜3.5による高[Si]溶銑の脱燐処理では、CaO原単位が大幅に増加し、操業コストの上昇が避けられない。
したがって本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決し、低スラグ塩基度でありながら高い脱燐効率を得ることができ、しかも、スピッティングやダストの発生を抑制して鉄歩留まりの低下も抑えることができる溶銑の脱燐処理方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決できる最適な脱燐処理条件について検討を行い、その結果、従来技術よりもスラグ塩基度を下げ、一方において送酸速度を高めることにより、高い脱燐効率で、しかも鉄歩留まりを低下させることなく脱燐処理を行うことができることを見出した。すなわち、(i)スラグ塩基度を単に低下させただけでは脱燐能力不足となってしまうが、送酸速度を高めてスラグの酸素ポテンシャルを高めることで脱燐能力を補うことができ、(ii)一方、送酸速度を高めるとスピッティングやダスト発生が多量になり鉄歩留まりが悪化するという問題に対しては、スラグ塩基度を低くすることによりスラグが容易に滓化し、カバースラグとしての機能が強化されるため、スピッティングやダストの発生を抑えることができる、という事実を見出した。このように、従来ではともに操業上不利と考えられてきた2つの条件を敢えて組み合わせることにより、上記のような予測し得ない効果が得られることを見出したものである。
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
[1]転炉型容器内の溶銑に対して、CaO源を主体とする精錬剤を添加し、上吹きランスから溶銑浴面に気体酸素の吹き付けを行う脱燐処理方法において、
上吹きランスから粉粒状の固体酸素源を溶銑浴面に吹き付け、且つ上吹きランスからの気体酸素の供給速度を1.5〜5.0Nm/min/溶銑tonとするとともに、処理後のスラグ塩基度[%CaO/%SiO]が1.0以上2.5未満となるように処理を行うことを特徴とする溶銑の脱燐処理方法。
[2]上記[1]の脱燐処理方法において、上吹きランスから粉粒状の精錬剤を溶銑浴面に吹き付けるとともに、該精錬剤のうちの少なくとも一部が、気体酸素の吹き付けにより溶銑浴面に生じる火点に吹き付けられることを特徴とする溶銑の脱燐処理方法。
[3]上記[2]の脱燐処理方法において、精錬剤のうちの少なくとも一部を、気体酸素をキャリアガスとして溶銑浴面に吹き付けることを特徴とする溶銑の脱燐処理方法。
[4]上記[1]または[2]の脱燐処理方法において、気体酸素の供給系統とは異なる供給系統を通じて供給されるキャリアガスにより、気体酸素が吹き付けられる溶銑浴面の近傍の浴面位置に、粉粒状の固体酸素源を吹き付けることを特徴とする溶銑の脱燐処理方法。
本発明によれば、低スラグ塩基度でありながら高い脱燐効率で処理を行うことができ、しかも、スピッティングやダストの発生が抑えられ、鉄歩留まりの低下を防止することができる。そして、低塩基度のスラグが得られるため、スラグの利材化も容易になるとともに、送酸速度を高めた操業を行うことができるために生産性が向上し、さらに、低塩基度操業であるため精錬剤のCaO原単位も低下し、操業コストを低下させることができる。
また、本発明において、上吹きランスから粉粒状の精錬剤を溶銑浴面に吹き付ける処理形態(精錬剤の投射)とした場合には、スラグの滓化をより促進させることができ、これによりスラグの脱燐能力が効果的に向上するとともに、カバースラグとしての機能がより強化されるため、脱燐効率と鉄歩留まりをより向上させることができる。
また、本発明において、上吹きランスから粉粒状の固体酸素源を溶銑浴面に吹き付ける処理形態とした場合には、固体酸素源が速やかに溶融するため、スラグの酸素ポテンシャルがさらに向上するとともに、火点冷却による脱燐促進効果が得られ、より高い脱燐効率を得ることができる。また、特に、気体酸素の供給系統とは異なる供給系統を通じて供給されるキャリアガスによって、気体酸素が吹き付けられる溶銑浴面の近傍の浴面位置に、粉粒状の固体酸素源を吹き付ける処理形態とした場合には、固体酸素源が速やかに溶融してスラグの酸素ポテンシャルが迅速に上昇するだけでなく、火点のように過剰な高酸素ポテンシャル場を形成しないため、脱炭反応を抑えて脱燐反応をさらに効率的に促進させることができる。
実施例において、上吹きランスのランス孔からの気体酸素、固体酸素源および精錬剤の供給形態を示す説明図
本発明の脱燐処理方法では、転炉型容器内の溶銑に対して、CaO源を主体とする精錬剤を添加し、上吹きランスから溶銑浴面に気体酸素の吹き付け(送酸)を行うことを基本的な処理形態とする。
精錬剤の主成分であるCaO源とは、CaOまたはCaOを生成可能なCa化合物(CaCO、Ca(OH)、CaMgO等)を指す。CaO源を主体とする精錬剤としては、一般には生石灰が用いられるが、石灰石、消石灰、ドロマイト、CaO源を含む使用済みスラグ(転炉滓、連鋳滓、造塊滓など)などを用いてもよい。ここで、CaO源を主体とする精錬剤としては、CaO源をCaO換算で40質量%以上含むものが好ましい。
上吹きランスから溶銑浴面に気体酸素を吹き付けるために使用されるガス(気体酸素源)としては、通常、工業用の純酸素ガスが用いられる。
また、脱燐を効果的に行うため溶銑を撹拌することが好ましく、この撹拌としては、一般に浸漬ランスや炉底に埋め込まれたノズル(羽口)などから不活性ガス(Arガス,Nなどの不活性ガス)や酸素ガス等を吹き込むガス撹拌が行われる。このような撹拌ガスの供給量としては、十分な浴撹拌性を得るために0.02Nm/min/溶銑ton以上とし、また、浴の撹拌が強すぎると生成したFeOを溶銑中のCが還元する速度が大きくなり過ぎるためのため0.5Nm/min/溶銑ton以下とすることが好ましい。
以上のような脱燐処理方法において、本発明では、上吹きランスからの気体酸素の供給速度(以下「送酸速度」という)を1.5〜5.0Nm/min/溶銑tonとするとともに、処理後のスラグ塩基度(質量比[%CaO/%SiO],以下同様)が1.0以上2.5未満となるように処理を行う。
このように従来技術よりもスラグ塩基度を下げ、一方において送酸速度を高めることにより、さきに述べたように下記(i),(ii)の作用効果が得られ、その結果、高い脱燐効率でしかも鉄歩留まりを低下させることなく脱燐処理を行うことができる。
(i)スラグ塩基度を単に低下させただけでは脱燐能力不足となってしまうが、送酸速度を高めてスラグの酸素ポテンシャルを高めることで脱燐能力を補うことができる。
(ii)送酸速度を高めるとスピッティングやダスト発生が多量になり鉄歩留まりが悪化するという問題に対しては、スラグ塩基度を低くすることによりスラグが容易に滓化し、カバースラグとして機能が強化されるためスピッティングやダストの発生を抑えることができる。
ここで、送酸速度が1.5Nm/min/溶銑ton未満では、スラグ塩基度を低下させたことによる脱燐能力の不足を適切に補うことができない。また、生産性も低く、特にスクラップを多量に使用する低銑配操業時に、熱余裕を確保するため高[Si]溶銑を処理する場合、精錬時間が長くなるため生産性がさらに低下する。一方、送酸速度が5.0Nm/min/溶銑tonを超えるとスピッティングやダストの発生が顕著になり、また、過剰な脱炭反応が生じるようになるので好ましくない。但し、送酸速度が2.5Nm/min/溶銑ton以下では、2.5Nm/min/溶銑ton超に較べて更に鉄歩留まりが向上する。このような観点から、より好ましい送酸速度は1.5〜2.5Nm/min/溶銑tonである。
また、スラグ塩基度が1.0未満ではスラグの脱燐能力が不十分であり、適切な脱燐効率が得られない。一方、スラグ塩基度が2.5以上では、路盤材等へのスラグの利材化に支障を生じる。
スラグ塩基度の調整方法としては、精錬剤の投入量を調整することの他にも、珪石やレンガ屑などの公知のSiO源の投入量の調整、事前脱珪処理やFeSi合金の投入による溶銑中Si濃度の調整、などがある。
次に、以上述べたような本発明の効果をさらに高めることができる、種々の好ましい実施形態について説明する。
本発明において、CaO源を主体とする精錬剤は、上置き装入、浸漬ランスによる溶銑中へのインジェクション、上吹きランスを通じた溶銑浴面への吹き付け(投射)などの任意の方法により溶銑に供給することができるが、本発明では特に、スラグの滓化促進による脱燐効率の向上とカバースラグとしての機能の強化を図るという観点から、上吹きランスから粉粒状の精錬剤を溶銑浴面に吹き付けることが好ましい。
上吹きランスから気体酸素を溶銑浴面に吹き付けると、浴面に衝突した気体酸素により大量のFeOが生成するため、精錬剤の滓化促進に非常に有利な条件となり、このFeOが大量に生成した領域に、上吹きランスを通じて精錬剤を直接供給することにより、精錬剤(CaO)の滓化を効果的に促進することができる。
また、上吹きランスによる気体酸素と精錬剤の溶銑浴面への吹き付けでは、精錬剤を気体酸素以外のキャリアガス(例えば、N、Arなどの不活性ガス)を用いて溶銑浴面に吹き付けてもよいが、その場合でも、精錬剤の一部または全部を気体酸素の吹き付けにより溶銑浴面に生じる火点に吹き付けることが好ましい。これは、火点は気体酸素の供給によってFeOが生成する主要な場所であり、このような浴面領域に直接CaOを添加することにより、CaOの滓化が効果的に促進されるとともに、CaOとFeOの接触効率が高まるからである。特に、火点は気体酸素ガスジェットが衝突することにより最も高温となる溶銑浴面領域であるが、気体酸素による酸化反応が集中し且つ気体酸素ガスジェットにより撹拌されている領域であるため、CaOの供給による効果が最も顕著に得られる領域であると言える。また、この意味で精錬剤を溶銑浴面に吹き付けるためのキャリアガスとしては気体酸素を用いることが好ましく、この場合には、気体酸素が精錬剤とともに溶銑浴面に吹き付けられることにより、精錬剤が火点に直接供給されることになり、この結果、溶銑浴面でのCaOとFeOの接触効率が最も高まる。
上記の処理形態において、上吹きランスを用いて気体酸素と精錬剤を溶銑浴面に吹き付ける方法に特別な制限はなく、例えば、上吹きランスの複数のランス孔(=ノズル孔。以下同様)のうち、一部のランス孔から気体酸素のみを、また、他のランス孔から気体酸素または気体酸素以外のガス(例えば、窒素やArなどの不活性ガス)をキャリアガスとして精錬剤を、それぞれ溶銑浴面に供給することもできる。また、この場合には、ランス先端の中央に主ランス孔を、その周囲に複数の副ランス孔を有する上吹きランスを用い、副ランス孔から気体酸素を、主ランス孔から気体酸素または上述した気体酸素以外のガスをキャリアガスとして精錬剤を、それぞれ溶銑浴面に供給することが特に好ましい。また、気体酸素の吹き付けと、気体酸素または上述した気体酸素以外のガスをキャリアガスとする精錬剤の吹き付けを、異なる上吹きランスを用いて行ってもよい。但し、いずれの場合にも、上述したように精錬剤を最も効率的に滓化させるには、精錬剤のキャリアガスは気体酸素であることが特に望ましい。
また、精錬剤は、上吹きランスによる溶銑浴面への吹き付け以外に、一部を上置き装入や浴中へのインジョクションなどにより添加してもよいが、その場合でも、これらの方法により添加する精錬剤の量は精錬剤全体の20mass%以下とすることが望ましい。上吹きランスによる溶銑浴面への吹き付け以外の方法で添加される精錬剤の割合が全体の20mass%を超えると、精錬剤を気体酸素とともに溶銑浴面に吹き付けることによる脱燐反応促進の効果が低下する傾向がある。
本発明では、溶銑に気体酸素を供給することに加えて、固体酸素源を添加することができる。この固体酸素源としては、一般には、鉄鉱石、ミルスケール、砂鉄、集塵ダスト(高炉、転炉、焼結工程等において排出ガスから回収される鉄分含有ダスト)などの酸化鉄源が用いられる。
固体酸素源の投入方法としては、上置き装入、上吹きランスからの溶銑浴面への吹き付け(投射)、浸漬ランスからの溶銑中へのインジェクションなどの任意の方法を採ることができるが、本発明では、特に上吹きランスから粉粒状の固体酸素源を溶銑浴面に吹き付けることが、スラグの酸素ポテンシャルの向上と火点冷却による脱燐促進効果が得られるので好ましい。また、このような処理形態のなかでも特に、気体酸素の供給系統とは異なる供給系統を通じて供給されるキャリアガスにより、気体酸素が吹き付けられる溶銑浴面の近傍の浴面位置に、粉粒状の固体酸素源を吹き付けることが好ましい。
原理的には、脱燐反応に寄与する酸素源としては、固体酸素源は気体酸素に比して効率が高い。これは、脱燐反応が熱力学的には低温ほど有利であることに由来する。溶銑に酸素を投入すると脱炭および脱燐が起こるが、気体酸素を投入した場合は脱炭発熱による温度上昇が優勢であるのに対し、固体酸素源を投入した場合は固体酸素源の分解時に吸熱を伴うために、温度上昇が抑制される。つまり、固体酸素源を使用することにより、脱燐反応に有利な温度に維持される。但し、脱燐反応の促進のためには、固体酸素源が溶融できる程度の温度条件は必要である。また、固体酸素源は溶融後にFeOとなり、脱燐反応に寄与するスラグ中のFeO成分を増加させる機能を有しており、前記温度上昇の抑制効果と相俟って脱燐反応を促進させる。
従来、固体酸素源は、反応容器の上方に設置されたホッパーから脱燐処理中に落下投入されるのが一般的であった。この場合に固体酸素源は、排気系統に吸引されないようにするため、数mm〜数十mmの粒状または塊状のものが使用される。粒状または塊状の固体酸素源は反応容器内に投入されても直ちには溶融せず、脱燐処理終了時点まで残留する場合もある。また、固体酸素源が溶融することによってスラグ中のFeOが上昇するが、スラグ中のFeOは溶銑中の炭素と反応して還元されることから、固体酸素源の溶融速度とFeOの還元速度とが同等の場合には、スラグ中のFeO濃度は上昇しない。つまり、スラグ中のFeOの還元速度よりも固体酸素源の溶融速度を大きくしなければ、スラグ中の酸素ポテンシャルは上昇せず、脱燐速度の向上は望めない。この点、上吹きランスから粉粒状の固体酸素源を溶銑浴面に吹き付けることにより、固体酸素源が速やかに溶融し、スラグの酸素ポテンシャルの向上と火点冷却による脱燐促進効果が得られる。
さらに、気体酸素の供給系統とは異なる供給系統を通じて供給されるキャリアガスにより、気体酸素が吹き付けられる溶銑浴面の近傍の浴面位置に、粉粒状の固体酸素源を吹き付けることにより、次のような特に優れた作用効果が得られる。
溶銑浴面において、気体酸素が溶銑浴面と衝突する場所、つまり火点は、気体酸素によって過剰な高酸素ポテンシャル場が形成されているが、気体酸素と溶銑中の炭素との反応によって高温になっている。したがって、火点に直接固体酸素源を供給しても、酸素ポテンシャル及び冷却の観点で最大の効果が得られるとは言えない。これに対して、火点近傍の周縁部は、火点よりは温度が低いが比較的高温に維持されるので、そこに供給された固体酸素源は迅速に溶融することができる。さらに、火点のような過剰な高酸素ポテンシャル場は形成されず、固体酸素源は効率良く反応に寄与することができる。これにより、スラグの酸素ポテンシャルが上昇し、つまり脱燐反応に最適なスラグが迅速に形成され、少ないスラグ量であっても、また高温下であっても脱燐処理が可能となる。
ここで、固体酸素源を気体酸素が吹き付けられる溶銑浴面の近傍の浴面位置に吹き付けるには、両者の供給系統からの溶銑浴面上の供給位置の中心どうしが一致しないことが必要であり、固体酸素源の供給位置の中心が火点の領域にかからないことが好ましい。但し、供給領域自体が重なり合うことは問題ない。また、両系統から異なるガスが浴面に吹き付けられているため、前記浴面上の供給位置の中心どうしが相当近接していても、実質的に一致していないのであれば領域の相違が確保され、問題はない。
固体酸素源のキャリアガスとしては、空気、非酸化性ガス、希ガス、還元性ガス、炭酸ガスなどの1種または2種以上を用いることができる。ここで、還元性ガスとは、プロパンガスなどの炭化水素系ガスやCOガスであり、非酸化性ガスとは窒素ガスなどの酸化能力のないガスであり、希ガスとはArガスやHeガスなどの不活性ガスである。これらのガスを用いることで、火点近傍の温度上昇を抑制することができ、原理的に脱燐に有利な条件を作ることができる。なお、キャリアガスは酸素含有ガスであってもよいが、溶銑浴面に気体酸素を供給するためのガス(気体酸素源)よりも酸素濃度が低いことが条件である。
さきに挙げた固体酸素源のなかで、砂鉄及び微粉の鉄鉱石は発生形態として1mm以下の微粉であり、粉砕処理を必要としないことから特に好適である。このうち、砂鉄は固体酸素源として機能するのみならず、酸化チタンを7〜10%程度含有していることからCaOを主体とする精錬剤の滓化促進剤としての機能も備えており、特に好適である。
酸化チタンは脱燐処理時のスラグ組成においては酸性酸化物として作用し、精錬剤の主体であるCaOを滓化させる効果に優れている。つまり、酸化チタンを含有する砂鉄を添加することで、CaOを主体とする精錬剤の滓化が促進されて脱燐反応が促進される。また、酸化チタンはスラグの粘度を低下させる作用があり、これにより、脱燐処理後、反応容器からのスラグの排出が容易になるという効果が得られる。このため、スラグ排出後の反応容器内のスラグ残留量は無視できるほど少なくなり、次チャージの脱燐処理においては、復燐などによって脱燐反応が阻害されることなく、効率よく脱燐処理することができる。
スラグ中の酸化チタンの量は、TiO換算で10質量%以下が好適である。10質量%を超えると、主成分であるCaOの比率が低下するので、脱燐能力の改善効果が相殺され、添加の効果を低下させてしまう。一方、スラグの粘度低下などの上記の効果を確実に享受するためには、酸化チタンの量はTiO換算で1質量%以上が好ましい。
気体酸素が供給される溶銑浴面、即ち火点は、気体酸素による脱炭反応が優勢であり、脱炭反応などの発熱により、例えば転炉の脱燐では2000℃を超える高温となっている。一方、脱燐反応は熱力学的には低温ほど促進される。したがって、実質的に脱燐反応が起こるのは、火点からわずかに離れた、概ね1800℃以下の周辺部である。
上吹きランスが、少なくとも2つの供給系統を有し、そのうち1系統から気体酸素を供給し、別の1系統から固体酸素源をキャリアガスとともに火点の近傍に向けて供給することで、固体酸素源は火点に近接した、実質的に脱燐反応の促進される部分に供給されることになる。固体酸素源は、気体酸素源に比べて酸素濃度の低いキャリアガスで供給されるので、その部分の温度が過剰に上昇することもなく、固体酸素源の良好な反応性によって脱燐がさらに促進される。例えば、1800℃における脱燐能力は、熱力学的概算で2000℃における脱燐能力より概ね倍増する。
2つの供給系統を有する上記のような構成としては、例えば、上吹きランスを少なくとも二重管構造として一方を気体酸素の流路、他方を固体酸素源及びキャリアガスの流路とし、気体酸素を、ランス中心軸を中心とする仮想円に沿って配された複数のランス孔から供給し、一方、固体酸素源およびキャリアガスをランス中心軸上に配されたランス孔から供給する方法などを採用することができる。この方法は、気体酸素の供給により形成される複数の火点に囲まれる浴面位置に、固体酸素源を供給する状態を作り出すため、火点に囲まれた固体酸素源供給部(浴面)は火点より低い高温状態が安定して維持されるので特に好適である。また、ランス中心軸を中心とする仮想円に沿って複数のランス孔を配し、交互(互い違い)のランス孔から気体酸素および固体酸素源を供給するようにしてもよい。
上記処理形態においては、供給すべき固体酸素源の全てを、気体酸素が供給されている溶銑浴面近傍の浴面位置に供給する必要はなく、固体酸素源の一部のみを気体酸素が供給されている溶銑浴面の近傍の浴面位置に供給してもよい。但し、気体酸素が供給されている溶銑浴面の近傍の浴面位置に供給する固体酸素源が少ないと、前述したスラグ中FeO成分の上昇が少ないので、これを防止するために、設備仕様に応じて、スラグ中FeO成分の上昇が十分となる量を下限とすればよい。また、上限としては、設備仕様に応じて抜熱が過大とならない量に抑制すればよい。例えば、100〜350トン程度の容器で脱燐処理する場合には、浴面に供給する気体酸素(標準状態での酸素ガス純分)1Nmに対し、キャリアガスにより供給される固体酸素源を0.1〜2kgの範囲で添加することが好ましい。0.1kg未満では本処理形態で期待する効果が十分に得られず、一方、2kgを越えると固体酸素源の供給面における抜熱が大きくなり、スラグの滓化が不十分となって脱燐能力を低下させてしまう。より好ましい供給量は0.3kg以上である。
気体酸素が供給されている溶銑浴面の近傍以外の場所に供給する固体酸素源は、上置き添加、インジェクション添加など適宜の方法で供給すればよい。
なお、気体酸素を使用した場合には、酸化反応熱によって溶銑温度は上昇し、固体酸素源を使用した場合には、固体酸素源自体の顕熱、潜熱及び分解熱が酸化反応熱よりも大きいために溶銑温度は降下する。したがって、気体酸素と固体酸素源との使用比率は、上記の範囲を維持しつつ、溶銑の処理前後の温度に応じて設定することとする。また、脱燐反応を効率的に行うためには溶銑を撹拌することが好ましく、この撹拌としては、一般にインジェクションランスや炉底に埋め込まれたノズルなどを利用したガス撹拌を行えばよい。
スラグとしては、スラグ中のFeO濃度が10質量%以上50質量%以下の範囲が好適であるので、スラグ中のFeO濃度がこの範囲を維持できるように、固体酸素源の供給量を調整することが好ましい。より好ましい範囲は10質量%以上30質量%以下である。
高炉から出銑された溶銑を鋳床で脱珪処理した後、溶銑鍋に受銑し、この溶銑鍋内で脱珪処理した。排滓後、脱燐処理用の300トン転炉に溶銑を装入し、脱燐処理を行った。この脱燐処理では、上吹きランスを通じて気体酸素、固体酸素源(酸化鉄)および精錬剤(石灰粉)を供給した。上吹ランス先端のランス孔からのそれらの供給形態を図1に示すが、ランス中心軸を中心とする仮想円に沿って配された複数のランス孔(●)から気体酸素(キャリアガス)+精錬剤を、ランス中心軸上に配された単一のノズル孔(○)から固体酸素源+窒素ガス(キャリアガス)を、それぞれ供給した。その際に、固体酸素源の供給位置の中心が、火点の領域にかからないように供給した。また、ガス撹拌を行い、撹拌ガスの供給量は0.02〜0.5Nm/min/溶銑tonとした。また、脱燐処理は、蛍石などのフッ素含有物質を添加しないで行った。
各実施例の鉄歩留まり(スピッティングおよびダストの発生量が少ないほど鉄歩留まりが高い)とスラグ中のFree-CaO量を、処理前後の溶銑成分および処理条件とともに、表1および表2に示す。
Figure 0005435106
Figure 0005435106

Claims (4)

  1. 転炉型容器内の溶銑に対して、CaO源を主体とする精錬剤を添加し、上吹きランスから溶銑浴面に気体酸素の吹き付けを行う脱燐処理方法において、
    上吹きランスから粉粒状の固体酸素源を溶銑浴面に吹き付け、且つ上吹きランスからの気体酸素の供給速度を1.5〜5.0Nm/min/溶銑tonとするとともに、処理後のスラグ塩基度[%CaO/%SiO]が1.0以上2.5未満となるように処理を行うことを特徴とする溶銑の脱燐処理方法。
  2. 上吹きランスから粉粒状の精錬剤を溶銑浴面に吹き付けるとともに、該精錬剤のうちの少なくとも一部が、気体酸素の吹き付けにより溶銑浴面に生じる火点に吹き付けられることを特徴とする請求項1に記載の溶銑の脱燐処理方法。
  3. 精錬剤のうちの少なくとも一部を、気体酸素をキャリアガスとして溶銑浴面に吹き付けることを特徴とする請求項2に記載の溶銑の脱燐処理方法。
  4. 気体酸素の供給系統とは異なる供給系統を通じて供給されるキャリアガスにより、気体酸素が吹き付けられる溶銑浴面の近傍の浴面位置に、粉粒状の固体酸素源を吹き付けることを特徴とする請求項1または2に記載の溶銑の脱燐処理方法。
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