JP2007262576A - 溶銑精錬方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】脱燐反応を促進させて溶銑を効率的に脱燐処理することができ、且つ脱燐・脱炭の両工程を含めたトータルのMn歩留まりを十分に高める溶銑精錬方法を提供する。
【解決手段】同一の転炉型容器を用い、溶銑にCaO源を主体とする精錬剤と酸素源を添加し、処理後のスラグの塩基度が2.2超え3.5以下、T.Fe濃度が10〜30mass%となり、且つ溶銑の処理終点温度が1320℃以上となるように脱燐処理を行った後、脱燐スラグの排滓率が60mass%以上となるように排滓し、引き続きMn鉱石を添加して脱炭処理を行う。
【選択図】図1

Description

この発明は、同一の転炉型容器を用いて脱燐処理と脱炭処理を中間排滓を挟んで連続して行う溶銑精錬方法に関する。
従来の転炉法に代わって溶銑段階で脱燐処理を行なう溶銑予備処理法が広く用いられるようになった。これは、脱燐反応が精錬温度が低いほど熱力学的に進行しやすく、より少ない量の精錬剤で脱燐処理を行うことができるためである。
一般に溶銑予備処理では、まず、酸化鉄等の固体酸素源を溶銑に添加して脱珪処理を行ない、この脱珪処理で発生したスラグを除去した後、精錬剤(媒溶剤)を添加して脱燐処理を行う。通常、脱燐処理の精錬剤としては石灰などのCaO系精錬剤を用い、酸素源としては固体酸素源(酸化鉄等)や気体酸素を用いる。また、処理容器としては、トーピードカー、取鍋(装入鍋)、転炉型容器などが用いられる。
従来の溶銑脱燐では、CaO系精錬剤の滓化促進のためにCaF(ホタル石)を添加することが広く行なわれている。しかし、近年、環境保護の観点からスラグからのF溶出量の規制基準が強化される傾向にあり、このためCaFの使用量を削減し或いはCaFを使用しない操業(Fレス操業)が求められている。
Fレス操業では、CaOの滓化を図り、脱燐効率を維持することが重要であり、CaOを十分に滓化させるために比較的低いスラグ塩基度で操業(低C/S操業)を行うのが一般的である(例えば、特許文献1)。また、脱燐処理は熱力学的には処理温度が低い方が有利であるため、脱燐効率を高めるのに処理温度を比較的低くした操業が行われている(例えば、特許文献2,3)。
特開平9-143529号公報 特開2000−8112号公報 特開2002−309312号公報
しかし、低C/S操業(或いは処理温度を低くした低C/S操業)では、限られた処理時間内で脱燐率を高めることには限界がある。また、仮に脱燐率をある程度高めることができたとしても、低C/S操業ではスラグ中のMnO濃度が増加し、脱燐工程でのMn歩留まりが低下するという問題がある。したがって、いずれにしても従来技術でFレス操業を行う場合には、(a)CaOの滓化を促進させて高い脱燐率を得ること、(b)高いMn歩留まりを確保すること、は両立し難い課題であると言える。しかしながら、この(a),(b)の両立は、溶銑脱燐だけの問題にとどまらず、脱炭工程を含めたトータルのMn歩留まりを確保する上で非常に重要である。すなわち、脱燐工程と脱炭工程を経てMn濃度が比較的高い鋼を溶製する場合、脱炭工程においてMn鉱石を装入し、これを還元して溶鋼中のMn濃度を高めることが行われるが、上記(a)が実現されることによって脱炭工程において実質的な脱燐を行う必要がなくなるため、少ないスラグ量での脱炭吹錬が可能になり、Mn鉱石の還元による溶鋼中Mn濃度の上昇が極めて容易になり、また、(b)が実現されることにより、脱炭工程において少ないMn鉱石添加量で溶鋼中のMn濃度を所望のレベルまで高めることができ、これらの結果、精錬全体でのトータルのMn歩留まりを効果的に高めることが可能となる。
なお、特許文献1においては、低C/S操業にもかかわらず、粉体を底吹きで供給している場合は比較的良好なMn歩留まりを達成している。粉体吹き込みによる撹拌力を定量化する試みは充分には成功していないが、例えば、ガスのみの吹き込みによる撹拌力よりも格段に大きいことは経験上知られている。したがって同文献における前記効果は、底吹きされた粉体による強力な撹拌力が原因と思われる。実際、同文献においても、粉体の底吹きを行わない場合にはMn歩留まりは極めて低い(特許文献1の表1)。しかしながら、粉体を底吹きで供給するには専用設備が必要となる上、羽口の損耗が激しくなる。羽口を交換するためには転炉を停止する必要があり、その頻度が高いと操業上極めて不経済となる。
また、溶銑精錬工程でのスクラップ大量溶解(低銑配)を実現するために、同一の転炉型容器を用い脱燐処理と脱炭処理を中間排滓を挟んで連続して行う精錬方法が知られているが、このような精錬方法においても、脱燐処理に関しては上記と同様の問題がある。
また、脱燐工程で低C/S操業を行うと十分な脱燐効率が得られないことが多いため、脱炭工程でも実質的な脱燐を行う必要が生じ、必然的にスラグ量が多くなる。この結果、特に脱炭工程でMn鉱石を添加する場合のMn歩留まりが大幅に低下してしまう。したがって、上述した脱燐工程でのMn歩留まりの低下と合わせ、トータルのMn歩留まりが非常に悪いという大きな問題がある。
したがって本発明の目的は、同一の転炉型容器を用いて脱燐処理と脱炭処理を中間排滓を挟んで連続して行う溶銑精錬方法において、脱燐反応を促進させて溶銑を効率的に脱燐処理することができるとともに、設備負担が少なく、且つ脱燐・脱炭の両工程を含めたトータルのMn歩留まりを十分に高めることができる精錬方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決できる最適な精錬条件について検討を行い、その結果、まず脱燐処理条件に関して、処理後のスラグ塩基度を比較的高めの特定領域とし且つ溶銑の処理終点温度を所定レベル以上とした上で、処理後スラグ中のT.Fe濃度を十分に高めた条件で処理を行うことにより、高いMn歩留まりを確保しつつ、脱燐反応を促進させて効率的な溶銑脱燐を行うことができることを見出した。一般に溶銑脱燐の処理条件に関しては、(1)スラグ塩基度を高めると精錬剤(CaO)投入量の増加によるコスト増や精錬剤の滓化不足などの問題を生じる、(2)処理温度を高めると脱燐効率の低下や炉内耐火物の損耗の問題を生じる、(3)スラグ中のT.Fe濃度を高めると鉄歩留まりの低下などの問題を生じる、と考えられているが、本発明者らは、このようにいずれも操業上好ましくないと考えられてきた条件を敢えて組み合わせることにより、上記のような予測し得ない効果が得られることを見出したものである。
また、このような高い脱燐効率で脱燐処理を行った後に中間排滓を十分に行い、引き続き脱炭処理を行うことにより、脱炭処理のスラグ量を十分に低減させることが可能になるため、その分脱炭工程でのMn歩留まりを高めることができ、しかも脱燐工程と脱炭工程を中間排滓を介して連続的に行う方式では溶銑に熱余裕があるため、Mn鉱石の還元を効率的に行うことができる、という効果が得られ、以上のような作用効果が複合することにより、脱燐・脱炭の両工程を含めたトータルのMn歩留まりを十分に高めることができることが判った。
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
[1]同一の転炉型容器を用い、溶銑にCaO源を主体とする精錬剤と酸素源を添加して脱燐処理を行った後、脱燐スラグの少なくとも一部を排滓し、引き続き溶銑の脱炭処理を行う精錬方法において、
前記脱燐処理は、処理後のスラグの塩基度(%CaO/%SiO)が2.2超え3.5以下、T.Fe濃度が10〜30mass%となり、且つ溶銑の処理終点温度が1320℃以上となるように行い、
前記脱燐処理後の排滓は、脱燐スラグの排滓率を60mass%以上とし、
前記脱炭処理は、Mn鉱石を添加して行うことを特徴とする溶銑精錬方法。
[2]上記[1]の溶銑精錬方法において、脱燐処理は、処理後のスラグの塩基度(%CaO/%SiO)が2.2超え2.7以下となるように行うことを特徴とする溶銑精錬方法。
[3]上記[1]又は[2]の溶銑精錬方法において、脱燐処理は、溶銑の処理終点温度が1320〜1400℃となるように行うことを特徴とする溶銑精錬方法。
[4]上記[1]〜[3]のいずれかの溶銑精錬方法において、脱燐処理は、処理後のスラグのT.Fe濃度が15mass%以上となるように行うことを特徴とする溶銑精錬方法。
[5]上記[1]〜[4]のいずれかの溶銑精錬方法において、脱燐処理では、酸化チタン源又は/及びAl源を精錬剤の一部として用いることを特徴とする溶銑精錬方法。
[6]上記[5]の溶銑精錬方法において、脱燐処理後のスラグの酸化チタン(但し、TiO換算)とAlの含有量の合計が3〜15mass%となるように、酸化チタン源又は/及びAl源を添加することを特徴とする溶銑精錬方法。
[7]上記[1]〜[6]のいずれかの溶銑精錬方法において、脱燐処理後のスラグのF濃度が0.2mass%以下となるように、精錬剤を添加することを特徴とする溶銑精錬方法。
[8]上記[1]〜[7]のいずれかの溶銑精錬方法において、脱炭処理は、処理後のスラグ量が40kg/溶銑ton以下となるように行うことを特徴とする溶銑精錬方法。
[9]上記[1]〜[8]のいずれかの溶銑精錬方法において、脱炭処理終了後、スラグの30mass%以上を転炉型容器内に残し、次チャージの脱燐処理を行うことを特徴とする溶銑精錬方法。
本発明によれば、脱燐処理において、処理後のスラグ塩基度とT.Fe濃度、溶銑の処理終点温度の三条件を最適化することにより、高いMn歩留まりを確保しつつ、脱燐反応を促進させて効率的な溶銑脱燐を行うことができるとともに、脱燐・脱炭の両工程を含めたトータルのMn歩留まりを十分に高めることができる。
また、請求項2〜4に係る発明によれば、処理後のスラグ塩基度、T.Fe濃度、溶銑の処理終点温度をより好ましい限定的な範囲とすることにより、Mn歩留まりと脱燐効率をより高めることができる。
また、請求項5,6に係る発明によれば、酸化チタン源又は/及びAl源を精錬剤の一部として用いることにより、脱燐効率をより高めることができる。
また、請求項9に係る発明によれば、燐濃度が低く脱燐能が高い脱炭スラグを脱燐工程での精錬剤の一部として再利用できるので、脱燐工程での新たな精錬剤の添加量と使用エネルギーの削減が可能となる。
本発明は、同一の転炉型容器を用い、溶銑にCaO源を主体とする精錬剤と酸素源を添加して脱燐処理を行った後、脱燐スラグの少なくとも一部を排滓し、引き続き溶銑の脱炭処理を行う精錬方法であり、前記脱燐処理は、処理後のスラグの塩基度(=質量比[%CaO/%SiO],以下同様)が2.2超え3.5以下、T.Fe濃度が10〜30mass%となり、且つ溶銑の処理終点温度が1320℃以上となるように行い、前記脱燐処理後の排滓は、脱燐スラグの排滓率を60mass%以上とし、前記脱炭処理は、Mn鉱石を添加して行うものである。ここで、上記脱燐処理及び脱炭処理の各工程では、必要に応じて溶銑に対してスクラップが装入される。
このような本発明の溶銑精錬方法によれば、次のような作用効果が得られる。
(i)まず、脱燐処理において、上記のように処理後のスラグ塩基度とT.Fe濃度、溶銑の処理終点温度の三条件を最適化することにより、下記(1)〜(3)の作用によって高いMn歩留まりと脱燐効率で溶銑脱燐を行うことができる。
(1)スラグ塩基度が高いほど、また処理温度が高いほど溶銑中のMnが酸化されにくくなるため、スラグ塩基度を高め(>2.2)とし、且つ1320℃以上の高温処理を行うことにより、高いMn歩留まりが得られる。
(2)高温処理によりCaOの滓化が促進されるため、スラグ塩基度を高めたことによる脱燐反応の向上効果を十分に引き出すことができ、また、スラグ中のT.Fe濃度を高めることにより、脱燐に不利な高温処理による脱燐効率の低下を補うことができ、これらの結果、高い脱燐効率を得ることができる。ここで、熱力学的にはスラグ塩基度が高いほど、また処理温度(溶銑温度)が高いほど、スラグ中のFeO濃度は低くなりやすく、したがってT.Fe濃度を高めにくい条件となる。しかし、スラグ塩基度と処理温度をともに高めた条件下で特別な操作を行うことにより、T.Fe濃度を効果的に高めることができ、高い脱燐効率を実現できる。
(3)スラグ中のFeO濃度が大きくなると、スラグの酸素ポテンシャルが高くなるためMn歩留まりには不利な条件となるが、上記(1)の作用が優勢であるため、高いMn歩留まりが得られる。
(ii)また、本発明では、(a)中間排滓を十分に行うこと、(b)脱燐工程において高い脱燐効率で脱燐がなされるために、脱炭工程では実質的な脱燐を行う必要がなく若しくは脱燐を行うとしても極少レベルで済み、このため生成スラグ量(造滓剤添加量)が少ないこと、という理由(a),(b)によって脱炭処理終了後のスラグ量が少なく、このため、特に脱炭工程でMn鉱石を添加する場合のMn歩留まりが非常に良くなる。また、中間排滓を十分に行うことにより、脱炭工程でのスラグから溶銑への復燐が抑制され、脱燐工程において高い脱燐効率で脱燐されたことによる効果が担保される。さらに、脱燐工程と脱炭工程を中間排滓を介して連続的に行う方式では溶銑に熱余裕があるため、これを脱炭工程でのMn鉱石の還元に利用することができ、Mn鉱石の還元を効率的に行うことができる。
(iii)そして、以上(i),(ii)として挙げた作用効果が複合して得られる結果、溶銑を高い脱燐効率で効率的に脱燐でき、且つ脱燐・脱炭の両工程を含めたトータルのMn歩留まりを十分に高めることができる。
以下、本発明の処理条件について具体的に説明する。
本発明法における脱燐処理では、転炉型容器内の溶銑にCaO源を主体とする精錬剤と酸素源を添加して処理を行う。ここで、CaO源とは、CaOまたはCaOを生成可能なCa化合物(CaCO、Ca(OH)、CaMgO等)を指す。CaO源を主体とする精錬剤としては、一般には生石灰が用いられるが、石灰石、消石灰、ドロマイト、CaO源を含む使用済みスラグ(転炉滓、連鋳滓、造塊滓など)などを用いてもよい。なお、CaO源を主体とする精錬剤としては、CaO源をCaO換算で40質量%以上含むものが好ましい。
精錬剤は、上置き装入、浸漬ランスによる溶銑中へのインジェクション、上吹きランスを通じた投射などの任意の方法により溶銑に供給することができる。これらのなかでは、上置き装入、上吹きランスによる投射、およびこれらの組合せが、設備の傷みが少なく好適であり、またこれらの手段で充分効果を得ることができる。
また、酸素源としては気体酸素(酸素ガス又は酸素含有ガス)及び/又は固体酸素源(例えば、鉄鉱石、ミルスケール、砂鉄、集塵ダスト(高炉、転炉、焼結工程等において排出ガスから回収される鉄分含有ダスト)などの酸化鉄)が用いられる。このうち気体酸素については、上吹き送酸ランスによる上吹きや溶銑中へのインジェクション或いは底吹きなどの任意の方法により、また、固体酸素源については、上置き装入、浸漬ランスによる溶銑中へのインジェクション、上吹きランスを通じた投射などの任意の方法により、それぞれに溶銑中に供給することができる。これらのなかでは、気体酸素の上吹き、固体酸素源の上置き装入、上吹きランスによる固体酸素源の投射、およびこれらの任意の組合せが、設備の傷みが少なく好適であり、またこれらの手段で充分効果を得ることができる。転炉型容器を用いて行う脱燐処理では、上吹き送酸ランスから気体酸素の上吹きを行い、必要に応じて固体酸素源を上記の方法で供給するのが一般的である。また、脱燐を効果的に行うため溶銑を撹拌することが好ましく、この撹拌としては、一般に浸漬ランスや炉底に埋め込まれたノズル(羽口)などから不活性ガスや酸素ガス等を吹き込むガス撹拌が行われる。
本発明法における脱燐処理では、1320℃(溶銑の処理終点温度)以上の高温処理を行い且つ処理後のスラグ塩基度を2.2超えとすることにより、上述したように脱燐工程における高いMn歩留まりが得られるとともに、高温処理によりCaOの滓化が促進されるため、スラグ塩基度を高めたことによる脱燐効率の向上効果を十分に引き出すことができる。このような観点から、処理後のスラグ塩基度は特に2.5以上がより一層好ましい。しかし、処理後のスラグ塩基度が3.5を超えると、スラグ中に占める固相の割合が高くなり、反応性が低下し、脱燐不良を招く。また、中間排滓を行う場合も、スラグ塩基度が高いと、スラグ中に占める固相の割合が高いためスラグの流動性が低い。このような観点と脱P率の安定性の面から処理後のスラグ塩基度は3.0以下、さらに望ましくは2.7以下が好ましい。
以上の理由から本発明法における脱燐処理では、処理後のスラグ塩基度は2.2超え3.5以下とする。また、スラグ塩基度のより好ましい下限を2.5、より好ましい上限を3.0、特に望ましくは2.7とする。
予め脱珪処理した高炉溶銑を転炉型容器(300ton)を用いて脱燐処理した。この脱燐処理では、脱燐剤としてホタル石などのフッ素源を含まないCaO主体の生石灰を上置き装入した。そして、酸素ガスを上吹きランスで供給するとともに、鉄鉱石を主体とした固体酸素源を上置き装入した。酸素ガスの送酸条件は15000〜23000Nm/hrとした。酸素原単位は、脱珪に必要な酸素を除いて12Nm/溶銑tとした。スラグ塩基度C/Sは、生石灰の投入量を調整して1.7〜4.1の範囲で変化させた。また脱燐処理後の溶銑温度が1350℃となるように、気体酸素源と固体酸素源の供給比を調整した。
この処理では、溶銑中燐の脱P率の目標を80%以上、溶銑中Mnの歩留まりの目標を30%以上とした。なお、脱P率(%)とMn歩留まり(%)は下式で定義した。
(脱P率)={[(処理前P濃度)−(処理後P濃度)]/(処理前P濃度)}×100
(Mn歩留り)=[(処理後Mn濃度)/(処理前Mn濃度)]×100
処理後のスラグ塩基度C/Sと脱P率及びMn歩留まりとの関係を図1(a),(b)に示す。これによれば、スラグ塩基度C/Sが2.2以下では、脱P率およびMn歩留まりは低位である。これに対して、スラグ塩基度C/Sが2.2超え3.5以下の範囲では、脱P率およびMn歩留まりの両方が目標値に到達している。しかし、スラグ塩基度C/Sが3.5を超えると、脱P率は再び低下する。また、スラグ塩基度C/Sが2.2超え3.0以下では、特に脱P率のばらつきが小さく安定していることが判る。
なお、上記試験において精錬剤の上置き装入に代えて、生石灰粉を主体とする精錬剤を上吹きランスから投射した場合も、同じような結果が得られた。
スラグ塩基度C/Sの制御手段としては、上記のようにCaO源の投入量を調整することの他にも、珪石やレンガ屑などの公知のSiO源の投入量の調整、事前脱珪処理やFeSi合金の投入による溶銑中Si濃度の調整、などがある。
本発明法における脱燐処理では、溶銑の処理終点温度を1320℃以上とする高温処理を行うことによりCaOの滓化が促進されるため、スラグ塩基度を高めたことによる脱燐効率の向上効果を十分に引き出すことができる。さらに、熱力学的にも、Mn歩留まりが良好な条件となる。また、これらの観点から、また、この観点から、より好ましい処理終点温度は1350℃以上である。一方、処理終点温度が1400℃を超えると脱燐に不利な温度条件となり、これを補うためには多量のスラグが必要になり、結果として、後続の脱炭工程におけるMn歩留まりが大きく低下する。また、このような傾向は処理終点温度が1420℃以上で特に顕著になり、膨大なスラグ量が必要になる。以上の理由から本発明では、溶銑の処理終点温度は1320℃以上、好ましくは1350℃以上とし、また、その上限は1400℃とすることが好ましい。
予め脱珪処理した高炉溶銑を転炉型容器(300ton)を用いて脱燐処理した。このとき、溶銑条件に応じて30ton以上のスクラップを装入した。この脱燐処理では、脱燐剤としてホタル石などのフッ素源を含まないCaO主体の生石灰を上置き装入した。脱燐処理後のスラグ塩基度が3.0となるように、生石灰の投入量を調整した。そして、酸素ガスを上吹きランスで供給するとともに、鉄鉱石を主体とした固体酸素源を上置き装入した。酸素ガスの送酸条件は15000〜25000Nm/hrとした。酸素原単位は、脱珪に必要な酸素を除いて12Nm/溶銑tとした。溶銑の処理終点温度は、気体酸素源と固体酸素源の供給比を調整して約1310〜1430℃の範囲で変化させた。
溶銑の処理終点温度と脱P率及びMn歩留まりとの関係を図2(a),(b)に示す。これによれば、処理終点温度が高いほど、脱燐処理におけるMn歩留まりは向上するが、脱P率は低下する。溶銑中燐の脱P率が80%以上、溶銑中Mnの歩留まりが30%以上を両立する条件は、処理終点温度が1320〜1400℃の範囲であることが判る。また、処理終点温度を1350℃以上とすると、特にMn歩留まりの下限のばらつきが小さくなり安定することが判る。
なお、上記試験において精錬剤の上置き装入に代えて、生石灰粉を主体とする精錬剤を上吹きランスから投射した場合も、同じような結果が得られた。
溶銑の処理終点温度の制御手段としては、上記のように気体酸素源と固体酸素源の供給比を調整することの他にも、スクラップなどの鉄源の投入量の調整、炭材などの投入量の調整、などがある。
本発明法における脱燐処理では、処理後のスラグのT.Fe濃度を10mass%以上とすることにより、脱燐に不利な高温処理による脱燐効率の低下を補うことができ、上述したスラグ塩基度の最適化と相俟って、高い脱燐効率を得ることができる。また、この観点から、より好ましいT.Fe濃度の下限は15mass%である。一方、処理後のスラグのT.Fe濃度が30mass%を超えると、スラグとともに排出される鉄分が多くなり、鉄歩留まりの低下が無視できなくなる。以上の理由から本発明法における脱燐処理では、処理後のスラグのT.Fe濃度は10〜30mass%、好ましくは15〜30mass%とする。
さきに述べたように、熱力学的にはスラグ塩基度が高いほど、また処理温度(溶銑温度)が高いほど、スラグ中のFeO濃度は低くなりやすく、したがってT.Fe濃度を高めにくい条件となる。そして、本発明の脱燐処理における処理後スラグ塩基度及び処理終点温度では、処理後のスラグ中のT.Fe濃度を10mass%以上とするには、T.Fe濃度を高めるための積極的な操作(アクション)が必要であり、この操作なしではT.Fe濃度を10mass%以上まで高めることはできない。
この特別な操作としては、例えば、酸化鉄源の投入量を制御する、上吹き送酸ランスからの送酸をソフトブローで行う、などの方法を挙げることができる。
スラグ中に酸化鉄を投入する方法では、処理後半のスラグ中T.Fe濃度を確保する目的で、酸化鉄源を処理後半又は末期に多く投入する。この場合、例えば、予定した酸化鉄投入量の1/2超、好ましくは2/3以上を、処理期間(吹錬期間)の中間点以降に投入するようにすると効果的である。
酸化鉄源としては、鉄鉱石、ミルスケール、砂鉄、集塵ダストなどを用いることができ、その投入方法としては、上置き装入、上吹きランスからの投射、浸漬ランスからのインジェクションなどの任意の方法を採ることができる。
また、上吹き送酸ランスからのソフトブローとは、同ランスからの送酸速度を小さくし、上吹きされた気体酸素の運動エネルギーにより生じる溶銑浴面の動圧を小さくする(例えば0.03MPa以下、好ましくは0.02MPa以下)ことである。なお、溶銑浴面の動圧Pd(MPa)は、下式で算出することができる。
Pd=Uo×(de/HL)×COSθ×(1/2)×(1/(0.016+0.19/Pi))/10
但し Uo: ランスノズル出口流速(m/s)
de: ランスノズル出口径(m)
HL: ランス高さ(m)
θ: ランスノズル中心軸とランス中心軸の成す角(rad)
Pi: ランスノズル入口圧(MPa)
このように上吹き送酸ランスからの送酸をソフトブローで行うと、スラグへの酸素供給が充分に行われ、スラグ中のT.Feを高濃度に維持することができる。このソフトブローは、少なくとも脱燐処理の後半に行なわれればよい。
予め脱珪処理した高炉溶銑を転炉型容器(300ton)を用いて脱燐処理した。この脱燐処理では、脱燐剤としてホタル石などのフッ素源を含まないCaO主体の生石灰を上置き装入した。脱燐処理後のスラグ塩基度が3.0となるように、生石灰の投入量を調整した。そして、酸素ガスを上吹きランスで供給するとともに、鉄鉱石を主体とした固体酸素源を上置き装入した。酸素ガスの送酸条件は15000〜23000Nm/hrとした。酸素原単位は、脱珪に必要な酸素を除いて12Nm/溶銑tとした。また、脱燐処理後の溶銑温度が1350℃となるように、気体酸素源と固体酸素源の供給比を調整した。処理後のスラグのT.Fe濃度は、固体酸素源の投入パターンを種々変えて約5〜28mass%の範囲で変化させた。T.Fe濃度を高めるために、必要に応じて、予定した固体酸素源投入量の1/2超を処理期間(吹錬期間)の中間点以降に投入するようにし、目標T.Fe濃度が高い場合ほど中間点以降の投入比を増加させた。また、特にT.Fe濃度15mass%以上を達成する場合は、予定した固体酸素源投入量の2/3以上を、処理期間(吹錬期間)の中間点以降に投入するようにした。
処理後のスラグのT.Fe濃度と脱P率及びMn歩留まりとの関係を図3(a),(b)に示す。これによれば、T.Fe濃度が10mass%以上であれば、脱P率とMn歩留まりがいずれも目標を満足することが分かる。
先に述べたようにスラグ中のFeO濃度が大きくなると、スラグの酸素ポテンシャルが高くなるためMn歩留まりの確保には不利な条件となるが、本発明ではスラグ塩基度と処理終点温度の最適化による作用が優勢であるため、高いMn歩留まりが得られている。また、T.Fe濃度が15mass%以上になると、特にMn歩留まりのばらつきが小さくなり安定することが判る。
なお、上記試験において精錬剤の上置き装入に代えて、生石灰粉を主体とする精錬剤を上吹きランスから投射した場合も、同じような結果が得られた。
本発明法における脱燐処理では、F源(CaFなど)を実質的に含まない精錬剤を用いるか若しくはF源の添加量が少ない精錬剤を用いることにより、処理後のスラグのF濃度が0.2mass%以下となるようにすることが好ましく、本発明法における脱燐処理では、そのような精錬剤を用いても高い脱燐効率を得ることができる。ここで、精錬剤がF源を含まないとはF源を実質的に含まないことを意味し、したがって、例えば不可避的不純物などとして少量のF源が含まれることは妨げない。
また、本発明法における脱燐処理では、酸化チタン源又は/及びAl源を精錬剤の一部として用いることにより、CaO系精錬剤の滓化が促進され、さらに、スラグの酸素ポテンシャルも上昇するのでスラグの脱燐能力も向上する。この結果、脱燐反応がさらに促進されることで、より効率的な溶銑脱燐を行うことができる。すなわち、酸化チタン源又は/及びAl源はCaO系精錬剤の滓化促進剤として機能するため、上記のようにF源を実質的に含まない若しくはF源の量が少ない精錬剤を用いる場合に特に有効である。
酸化チタンにはTiO、TiO、Ti、Tiなどの形態があるが、いずれの形態のものでもよい。酸化チタン源である酸化チタン含有物質としては、例えば、砂鉄、イルメナイト鉱石(チタン鉄鉱)、ルチル鉱石(金紅石)、酸化チタン含有鉄鉱石などが挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。また、これらのなかでも、砂鉄は一般に粒径1mm以下の微粒であり、反応容器内で迅速に溶融することから、特に好適である。また、砂鉄、イルメナイト鉱石、酸化チタン含有鉄鉱石などは酸化鉄源にもなるので、これらの1種以上(特に好ましくは、少なくとも砂鉄を用いる)をスラグ中に添加することにより、スラグ中のT.Fe濃度を高めることもできるので、この点からも好ましい。砂鉄は、産地によって品位が異なるが、一般にTiOを5〜8mass%程度含有し、高いものでは13mass%程度含有するものもある。一方、イルメナイト鉱石やルチル鉱石は、通常TiOを30mass%以上含有している。
酸化チタン源である酸化チタン含有物質としては、TiO換算で3mass%以上の酸化チタンを含有する物質を用いることが好ましい。酸化チタン含有量がTiO換算で3mass%未満の物質は、CaO系精錬剤の滓化促進効果が得られにくく、効果を得ようとすると添加量が増えてスラグ量が増大し、Mn歩留まりの低下などの問題を招いてしまう。したがって、いずれにしても、酸化チタンが微量に含まれる程度の物質は、酸化チタン源(酸化チタン含有物質)としては不適である。
また、Al源としては、市販のカルシウムアルミネート系媒溶剤、アルミ灰、ボーキサイトなどの酸化アルミ含有鉱石などを使用することができる。また、造塊滓、2次精錬スラグ、レンガ屑などのような、酸化アルミを高濃度に含む製鋼工程の副産物も使用することができる。なお、Al源としては、Al換算で20mass%以上を含有するものが好ましい。
酸化チタン源又は/及びAl源の添加量としては、処理後のスラグ中の酸化チタン(但し、TiO換算)とAlの含有量の合計が15mass%以下となるようにすることが好ましい。含有量の合計が15mass%を超えると、脱燐反応に必要なCaOを薄めてしまうことになり、脱燐能力を低下させてしまう。また、通常の脱燐操業においては、両者はスラグ中に合計で1.0〜2.5mass%程度は不可避的に含まれるが、3mass%未満ではCaO系精錬剤の滓化促進効果が十分でない。このため、処理後のスラグ中の酸化チタン(但し、TiO換算)とAlの含有量の合計は3mass%以上とすることが好ましい。
脱燐処理では、上述したような精錬剤以外に、炉体保護の目的でMgO源などを添加することができる。
本発明では、以上のような脱燐処理を行った後、脱燐スラグの排滓(中間排滓)を行う。この中間排滓では、脱炭工程での復燐を防止するとともに、脱炭工程でのスラグ量を極力少なくするため、生成した脱燐スラグの60mass%以上を排滓する(排滓率60mass%以上)。また、より好ましい排滓率は70mass%以上である。
中間排滓は、通常、転炉型容器を横転することによって行うが、排滓の方法としては、スラグを自然に流出させる自然流滓、機械的手段でスラグを掻き出す機械排滓等の任意の方法を採ることができる。
排滓後、直ちに転炉型容器を正立させ、引き続き脱炭処理が行われるが、この脱炭処理では、溶鋼中Mn濃度を高めるためにMn鉱石を添加する。脱炭処理は常法にしたがって行えばよく、基本的にその処理条件は任意である。
本発明では、(1)上記のように脱燐工程において高い脱燐効率で脱燐がなされること、また、(2)中間排滓が十分に行われるために、脱炭工程での脱燐負荷を小さくでき、このため生成スラグ量(造滓剤添加量)が少ないこと、によって脱炭処理終了後のスラグ量が少なく、このためMn歩留まりが非常に良くなる。また、中間排滓を十分に行うことにより、脱炭工程でのスラグから溶銑への復燐が抑制され、脱燐工程において高い脱燐効率で脱燐されたことによる効果が担保される。
上述した点から脱炭処理では、特に処理後のスラグ量を40kg/溶銑ton以下とすることが好ましく、スラグ量の低減化によるMn歩留まり向上が期待できる。
また、脱燐工程と脱炭工程を異なる容器を用いて分離して行う方式では、脱燐処理終了後に溶銑を出湯し、次工程の脱炭を行う転炉に再装入するが、このとき、溶湯の移し替えに伴う熱ロスが発生し、この熱ロスは、脱炭時に多量のMn鉱石の還元を行うことの阻害要因となる。これに対して、本発明のように脱燐工程と脱炭工程を中間排滓を介して連続的に行う方式では、溶銑に熱余裕があるため、これを脱炭工程でのMn鉱石の還元に利用することができ、多量のMn鉱石を添加してもこれを効率的に還元することができる。
また、脱炭工程では、上述したようにMn鉱石とともに必要最低限の媒溶材(生石灰など)などを添加して脱炭吹錬が行われるが、脱炭工程での脱燐が少なく、脱炭スラグの燐濃度が低いので、脱炭処理終了後にスラグを転炉型容器内に残し、次チャージの脱燐処理を行うことにより、脱P能が高いスラグを脱燐工程での精錬剤の一部として再利用でき、脱燐工程での新たな精錬剤の添加量と使用エネルギーの削減が可能となる。さらには、その脱炭スラグは、Mn鉱石還元を行った後では、Mn酸化物を高濃度に含むMn源と見なすことができるため、溶銑脱燐時のMn歩留まりの向上にも寄与する。
脱炭処理終了後に転炉型容器内に残すスラグの量は、上記の次チャージの脱燐工程での精錬剤削減およびMn歩留まり向上の効果を有意に発揮させるために、30mass%以上とすることが望ましい。
[実施例1]
予め脱珪処理した高炉溶銑(Mn濃度0.3mass%)を転炉型容器(300ton)を用いて脱燐処理した。この脱燐処理では、脱燐剤としてホタル石などのフッ素源を含まないCaO主体の生石灰を上置き装入した。そして、酸素ガスを上吹きランスで供給すると共に、鉄鉱石を主体とした固体酸素源を上置き装入した。酸素ガスの送酸条件は15000〜23000Nm/hrとした。酸素原単位は、脱珪に必要な酸素を除いて12Nm/溶銑tとした。固体酸素源は、予定した投入量を全吹錬時間にわたって均等に投入する場合(均等分割)と、予定した投入量の1/2超(60〜100mass%)を、吹錬期間の中間点以降に投入する場合(後半傾斜)の2通りを行った。
次いで、脱燐スラグを排滓した後、直ちに脱炭処理を行った。脱燐スラグの排滓は、転炉を倒炉し、炉口からスラグを流出させることで行った。また脱炭吹錬時に、Mn源としてMn鉱石を上置き投入した。Mn鉱石の投入量は、溶鋼ton当たりMn純分で4kgとなるようにした。
脱燐吹錬後の脱P率とMn歩留りを脱燐処理条件とともに表1に示す。また、脱燐処理後の中間排滓率と脱燐・脱炭トータルでのMn歩留りも表1に併せて示す。脱燐・脱炭トータルでのMn歩留りは、下式で算出した。
(トータルMn歩留り)={(脱炭後Mn濃度)/[(脱燐前Mn濃度)+(脱炭時投入Mn濃度)]}×100
本発明例においては、脱燐処理後の脱P率85%以上、Mn歩留り40%以上が両立する結果が得られた。さらに、脱燐後の中間排滓において、排滓率が70%以上に達した。その結果、脱炭吹錬において、装入Mn濃度が高く且つ装入P濃度が低く、低スラグ量での吹錬が行えたことにより、脱燐・脱炭トータルのMn歩留りも30%を超える結果となった。
これに対して、比較例においては、高脱P率と高Mn歩留りの両立は実現できなかった。さらに、脱燐後の中間排滓において、排滓率が40%未満にとどまった。その結果、脱炭吹錬において、装入Mn濃度が低く且つ装入P濃度が高く、高スラグ量での吹錬となったため、脱燐・脱炭トータルのMn歩留りは低位であった。
Figure 2007262576
[実施例2]
脱燐用の精錬剤の一部として、酸化チタン源である砂鉄(TiO含有量:7.5mass%)又は酸化アルミニウム源である造塊滓(Al含有量:30mass%)を上置き装入した以外は実施例1と同様にして、脱燐処理を行った。砂鉄を使用した吹錬における脱燐スラグ中のTiO濃度は4.0mass%、TiOとAlの含有量の合計は6.3mass%であった。また、造塊滓を使用した吹錬における脱燐スラグ中のAl濃度は4.5mass%、TiOとAlの含有量の合計は6.1mass%であった。次いで、実施例1と同様に、脱燐スラグを排滓した後、直ちにMn源としてMn鉱石を上置き投入して脱炭処理を行った。
脱燐吹錬後の脱P率とMn歩留りを脱燐処理条件とともに表2に示す。また、脱燐・脱炭トータルでのMn歩留りも表2に併せて示す。いずれの例においても、脱燐吹錬後の脱P率85%以上、Mn歩留り40%以上が両立する結果が得られた。その結果、脱燐・脱炭トータルのMn歩留りも30%を超える結果となった。
Figure 2007262576
[実施例3]
予め脱珪処理した高炉溶銑(Mn濃度0.3mass%)を転炉型容器(300ton)を用いて脱燐処理した。この脱燐処理では、酸素ガスを上吹きランスで供給するとともに、鉄鉱石を主体とした固体酸素源を上置き装入した。そして、脱燐剤としてホタル石などのフッ素源を含まないCaO主体の生石灰を酸素ガスとともに上吹きランスから投射した。酸素ガスの送酸条件は15000〜40000Nm/hrとし、脱燐剤の投射量は6000〜30000kg/hrの範囲内で調整した。酸素原単位は、脱珪に必要な酸素を除いて12Nm/溶銑tとした。上吹きランスからの送酸は、送酸による溶銑浴面の動圧を精錬期間の後半で0.01〜0.02MPaとする場合(ソフトブロー)と、0.03MPaを超える場合(ハードブロー)の2通りを行った。
なお、一部の発明例では、脱燐用の精錬剤の一部として、酸化チタン源である砂鉄(TiO含有量:7.5mass%)又は酸化アルミニウム源であるレンガ屑(Al含有量:30mass%)を上置き装入した。
次いで、脱燐スラグを排滓した後、直ちに脱炭処理を行った。脱燐スラグの排滓は、転炉を倒炉し、炉口からスラグを流出させることで行った。また、脱炭吹錬時に、Mn源としてMn鉱石を上置き装入した。Mn鉱石の投入量は、溶鋼ton当たりMn純分で4kgとなるようにした。
脱燐吹錬後の脱P率とMn歩留りを脱燐処理条件とともに表3に示す。また、脱燐処理後の中間排滓率と脱燐・脱炭トータルでのMn歩留りも表3に併せて示す。
本発明例においては、脱燐吹錬後の脱P率85%以上、Mn歩留り40%以上が両立する結果が得られ、また脱燐・脱炭トータルのMn歩留りも30%を超える結果となった。
これに対して比較例においては、高脱燐率と高Mn歩留りの両立は実現できず、その結果、脱燐・脱炭トータルのMn歩留りは低位であった。
Figure 2007262576
[実施例4]
予め脱珪処理した高炉溶銑(Mn濃度0.3mass%)を転炉型容器(300ton)を用いて脱燐処理した。この脱燐処理では、酸素ガスを上吹きランスで供給するとともに、スケールを主体とした固体酸素源の大部分を、同ランスに設けられた別の投射口より不活性ガスとともに投射した。そして、脱燐剤としてホタル石などのフッ素源を含まないCaO主体の生石灰を、上置き装入する場合と、酸素ガスとともに上吹きランスから投射する場合の2通りを行った。
酸素ガスの送酸条件は15000〜40000Nm/hrとし、脱燐剤の投射量は6000〜30000kg/hrの範囲内で調整した。酸素原単位は、脱珪に必要な酸素を除いて12Nm/溶銑tとした。上吹きランスからの送酸は、送酸による溶銑浴面の動圧を精錬期間の後半で0.01〜0.02MPaとする場合(ソフトブロー)と、0.03MPaを超える場合(ハードブロー)の2通りを行った。
なお、一部の発明例では、脱燐用の精錬剤の一部として、酸化アルミニウム源である造塊滓(Al含有量:30mass%)を上置き装入した。
次いで、脱燐スラグを排滓した後、直ちに脱炭処理を行った。脱燐スラグの排滓は、転炉を倒炉し、炉口からスラグを流出させることで行った。また、脱炭吹錬時に、Mn源としてMn鉱石を上置き装入した。Mn鉱石の投入量は、溶鋼ton当たりMn純分で4kgとなるようにした。
脱燐吹錬後の脱P率とMn歩留りを脱燐処理条件とともに表4に示す。また、脱燐・脱炭トータルでのMn歩留りも併せて表4に示す。
本発明例においては、脱燐吹錬後の脱P率85%以上、Mn歩留り40%以上が両立する結果が得られ、また脱燐・脱炭トータルのMn歩留りも35%を超える結果となった。
これに対して比較例においては、高脱燐率と高Mn歩留りの両立は実現できず、その結果、脱燐・脱炭トータルのMn歩留りは低位であった。
Figure 2007262576
脱燐処理後のスラグ塩基度C/Sと脱P率及びMn歩留りとの関係を示すグラフ 溶銑の脱燐処理終点温度と脱P率及びMn歩留りとの関係を示すグラフ 脱燐処理後のスラグのT.Fe濃度と脱P率及びMn歩留まりとの関係を示すグラフ

Claims (9)

  1. 同一の転炉型容器を用い、溶銑にCaO源を主体とする精錬剤と酸素源を添加して脱燐処理を行った後、脱燐スラグの少なくとも一部を排滓し、引き続き溶銑の脱炭処理を行う精錬方法において、
    前記脱燐処理は、処理後のスラグの塩基度(%CaO/%SiO)が2.2超え3.5以下、T.Fe濃度が10〜30mass%となり、且つ溶銑の処理終点温度が1320℃以上となるように行い、
    前記脱燐処理後の排滓は、脱燐スラグの排滓率を60mass%以上とし、
    前記脱炭処理は、Mn鉱石を添加して行うことを特徴とする溶銑精錬方法。
  2. 脱燐処理は、処理後のスラグの塩基度(%CaO/%SiO)が2.2超え2.7以下となるように行うことを特徴とする請求項1に記載の溶銑精錬方法。
  3. 脱燐処理は、溶銑の処理終点温度が1320〜1400℃となるように行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の溶銑精錬方法。
  4. 脱燐処理は、処理後のスラグのT.Fe濃度が15mass%以上となるように行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の溶銑精錬方法。
  5. 脱燐処理では、酸化チタン源又は/及びAl源を精錬剤の一部として用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の溶銑精錬方法。
  6. 脱燐処理後のスラグの酸化チタン(但し、TiO換算)とAlの含有量の合計が3〜15mass%となるように、酸化チタン源又は/及びAl源を添加することを特徴とする請求項5に記載の溶銑精錬方法。
  7. 脱燐処理後のスラグのF濃度が0.2mass%以下となるように、精錬剤を添加することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の溶銑精錬方法。
  8. 脱炭処理は、処理後のスラグ量が40kg/溶銑ton以下となるように行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の溶銑精錬方法。
  9. 脱炭処理終了後、スラグの30mass%以上を転炉型容器内に残し、次チャージの脱燐処理を行うことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の溶銑精錬方法。
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