JP3440630B2 - 溶銑脱燐方法 - Google Patents

溶銑脱燐方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、溶銑脱燐法、特に、酸
化カルシウムを主体とする脱燐剤を用いる溶銑脱燐法で
あって、従来のハロゲン系化合物およびアルカリ系化合
物を併用することなく、効率的かつ経済的に行うことが
できる溶銑脱燐方法に関する。
【0002】
【従来の技術】転炉複合吹錬法は、底吹きガス攪拌の併
用によりLD転炉よりも歩留の高い製鋼法として一般化し
つつあるが、転炉複合吹錬法では底吹転炉と同様に、底
吹ガス攪拌のために高炭素領域においてスラグ中T.Feが
低く、したがって、滓化が悪化し、脱燐には問題があっ
た。
【0003】ここに、酸化カルシウム (以下CaO と称す
る) による脱燐反応は下記(1) 式にて進行する。 3(CaO) +5(FeO)+2[P]=3CaO・P2O5 ・・・(1) ( ):スラグ内、 [ ]:溶銑内を示す。
【0004】このため、溶銑脱燐を効果的に行うために
は、CaO が溶解し、スラグ内に充分に存在し、脱燐
に必要な (FeO)レベルが維持されることが必要となる。
ところが、CaO の融点は約2570℃であり、CaO の溶解促
進のために何らかの造滓剤の添加を必要とする。そこ
で、従来は、例えば蛍石等のハロゲン系化合物およびア
ルカリ系化合物を併用してきた。
【0005】しかし、ハロゲン系化合物およびアルカリ
系化合物を含むスラグは化学的に活性であり再利用上制
約が大きく、また例えば蛍石を使用する場合スラグ中に
F(フッ素)が含まれることになり、処理が困難となり、
溶銑脱燐コストの増大をもたらすものである。
【0006】この課題を解決するためは、(a) CaO −Fe
On 系の事前焼成脱燐剤を用いる方法、(b) CaO 粉を酸
素と共に吹き込む方法が知られている。しかし、(a) 法
については事前焼成コストが必要であり経済性が損なわ
れるため一般には用いられていない。
【0007】また、(b) 法については、例えば「鉄と
鋼」vol.68(1982)S202において開示されている複合吹錬
法があるが、これは造滓剤である脱燐剤 (酸化カルシウ
ム+蛍石) の粉体上吹に酸素ガスを併用した複合吹錬法
である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、その後
の研究の結果によれば、この複合吹錬法は、通常の転炉
精錬を想定し脱炭・昇温・脱燐を行うことを前提として
いるため、溶銑脱燐処理時には、過剰の脱炭を行い次
工程である転炉精錬にて熱源不足となる、底吹き攪拌
が強すぎ(FeO) レベルが維持されずスラグの固化を招く
粒鉄ロスを招く等の問題を生じていた。
【0009】例えば、上記「鉄と鋼」'82 −S202 に開
示された吹錬条件は、底吹きガスがArガス0.22〜0.84Nm
3/min.t であり、上吹きランスより石灰50kg/t.pig、蛍
石2kg/t.pigを酸素3Nm3/min.t とともに吹き込むので
あり、この方法では上述の問題は避けられない。つま
り、スラグ中にFが含まれるばかりでなく、操業上も
底吹きが過大であり、溶銑脱燐工程ではスラグ中FeO が
維持できず脱燐不良となる。また、脱燐率を向上させ
るには、[C] を下げ、熱力学的にスラグ中FeO を安定的
に存在するまで、例えば [C]=0.05%にまで脱炭する必
要がある。
【0010】本発明の目的は、酸化カルシウムを主体と
する脱燐剤を用い、ハロゲン系化合物およびアルカリ系
化合物を併用することなく、効率的かつ経済的に溶銑脱
燐を行うことのできる溶銑脱燐方法を提供することであ
る。より具体的には、本発明の目的は、溶銑に十分な量
の炭素量を確保しながら、複合吹錬転炉を用いて効率的
に行い得る脱燐法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】ここに、本発明者らは、
かかる目的を達成すべく、種々検討を重ね、むしろ酸素
供給量を少なくすることで、蛍石などの造滓剤を使用せ
ずにスラグの速やかな生成を図ることができることを知
り、本発明を完成した。
【0012】すなわち、前述の CaO+蛍石を酸素ととも
に吹込む方法と比較して、本発明によれば、上底 (複
合) 吹錬の酸素量を適正にコントロールするので、スラ
グ中(FeO) 濃度が適正化されるため、蛍石の使用を省略
することができるのである。
【0013】よって、本発明の要旨とするところは、下
記の通りである。 (1)転炉型反応器に収容された溶銑に対して上吹きラン
スより予め決められた量の酸化カルシウム粉を、同じく
溶銑1ton 当たり0.7 〜2.0 Nm3 /minの酸素とともに吹
き付けるとともに、前記反応容器の炉底または側壁から
溶銑1ton 当たり0.05〜0.30Nm3 /minの攪拌用ガスを吹
込むことを特徴とする溶銑脱燐方法。 (2)前記酸化カルシウム粉を、溶銑トン当たり5 〜30kg
添加することを特徴とする上記(1) 記載の溶銑脱燐方
(3) C:4.0〜5.0 %の溶銑がC:3.5〜4.5 %にまで脱炭
されるまで吹錬を行う上記(1) または(2) に記載の溶銑
脱燐方法。(4) さらに、吹錬終了後、得られた脱燐滓と溶銑とを分
離し、次いで脱炭処理を行うことを特徴とする上記(1)
ないし(3) のいずれかに記載の溶銑脱燐方法。
【0014】本発明の好適態様によれば、転炉型反応容
器に収容された、例えばC:4.0 〜5.0 %の溶銑に対し
て上吹きランスより、例えば溶銑1ton 当たり5〜30kg
というように予め定められた量の酸化カルシウム粉を、
同じく溶銑1ton 当たり0.7〜2.0 Nm3/min の酸素とと
もに吹き付けるとともに、前記反応容器の炉底または側
壁から溶銑1ton 当たり0.05〜0.30 Nm3/minの攪拌用ガ
スを吹込み、C:3.5〜4.5 %となるまで吹錬を行い、
次いで脱燐滓と溶銑とを分離後、脱炭処理を行うことを
特徴とする溶銑脱燐方法である。
【0015】
【作用】次に、本発明において処理条件を上記のように
限定した理由とその作用についてそれぞれ説明する。
【0016】(1) 酸化カルシウムの添加量について:ま
ず、本発明において使用する脱燐剤としてのCaO は、一
般的には溶銑トン当たり5〜30kg使用するが、これは脱
燐に必要かつ十分な量としてのそれであり、処理すべき
溶銑に含まれる燐の総量、つまり除去すべき燐の量によ
って予め決まる量のCaO を添加するという意味である。
通常、0.10%程度のPは含まれているとすると、溶銑1
トン当たり所要CaO 量はほぼ20kgである。
【0017】かかる量のCaO は粉末状で供給され、酸素
とともに上吹ランスから溶銑表面に吹き付けられるか
ら、その粒度は例えば15〜150 μm であり、より好まし
くは15〜50μm である。
【0018】(2) 酸化カルシウム粉を酸素とともに溶銑
に吹き付け溶銑脱燐を行う際に、転炉型反応容器を用い
上吹き水冷ランスを使用する理由:溶銑脱燐に用いる反
応容器としては、取鍋、トピードカー、転炉が考
えられるが、本発明の場合も底吹き可能であれば特に制
限はないが、実際上からは吹き付けに伴うスピッティン
グならびにフォーミングの発生を考慮すると、フリーボ
ードの大きな転炉型反応容器が好ましい。またランス寿
命を確保し、粉体を溶銑に吹きつけるために酸素気流の
動圧を確保するためのラバールノズル化を実現するには
水冷ランスが望ましく、耐火物製のランス等では不充分
である。
【0019】(3) 酸化カルシウム粉を溶銑1ton 当たり
0.7 〜2.0 Nm3/min の酸素とともに吹き付ける理由:上
吹き水冷ランスより酸化カルシウム粉を酸素とともに吹
き付ける場合、上吹き酸素量は、酸化カルシウムの溶
解 (滓化) 、スピッティング発生量、溶銑の脱炭量
に影響する。
【0020】そこで、上吹き酸素量を変化させ、その効
果を調査したところ図1の通りであった。すなわち、脱
燐前のSi濃度がそれぞれ0.1 %、0.3 %、0.5 %の溶銑
(C:4.4 〜4.8 %) を底吹Arガス量0.20Nm3/min で上
吹送酸速度を変化させてときの脱燐状況を示すグラフで
ある。
【0021】CaO の滓化度は下記(2) 式にて計算した。 滓化度= (溶銑脱燐後のスラグ中CaO/SiO2比)/(装入CaO/SiO2比) ・・・(2) 。
【0022】酸化カルシウムの溶解 (滓化) には、溶
銑1ton 当たり最低0.7 Nm3/min の酸素吹込みが必要で
あり、2.0 Nm3/min 超でほぼその効果は一定となる。 スピッティング発生量は、上吹き酸素量が溶銑1ton
当たり2.0 Nm3/min 超で急増しており溶銑脱燐処理で
は、酸素量を2.0 Nm3/min 以下とすることが望ましい。
【0023】次工程である転炉脱炭工程での熱源とし
て溶銑中炭素を使用するため、溶銑の脱炭量は少ないこ
とが望ましい。このため、、の効果を勘案して最適
酸素量は、溶銑1ton 当たり0.7 〜2.0 Nm3/min と決定
した。好ましくは0.7 〜1.5Nm3/minである。
【0024】(4) 転炉型反応容器の炉底または側壁から
吹き込む攪拌用ガス量を溶銑1ton 当たり0.05〜0.30 N
m3/minとする理由:転炉型反応容器の炉底または側壁か
ら吹き込み攪拌用ガス (例:アルゴンガスなどの不活性
ガス) は、溶銑およびスラグの攪拌に有用であり、攪拌
を行うことで反応速度を向上することができる。転炉に
おける脱炭工程では、溶鋼レベルまで脱炭するので、溶
鋼中酸素が高まり、これと平衡するスラグ中酸化鉄[(1)
式の(FeO)]も高く維持できるので、攪拌用ガス量増大に
よる反応速度向上は脱燐促進に結びつく。
【0025】ところが、溶銑脱燐工程ではスラグ中酸化
鉄と溶銑中炭素の酸化力は平衡しておらず、いたずらに
攪拌を強化すると、溶銑中炭素によりスラグ中酸化鉄
[(1)式の(FeO)]が還元され、脱燐の悪化、スラグ固
化によるスラグ中への粒鉄損出を引き起こす可能性があ
る。
【0026】そこで攪拌用ガス量を変化させ、脱燐、ス
ラグ中への粒鉄損出に対する影響を調査した結果を図2
にまとめて示す。すなわち、Si:0.15〜0.20%、C:4.
4 〜4.6 %の脱硅溶銑を 180トン、CaO投入量15〜20kg
/トン、上吹酸素ガス 1.2 Nm3/minの一定条件の下で攪
拌Arガスの流量を変化させたときの脱燐効果をみた。
【0027】これらの結果からも分かるように、脱燐の
ためには攪拌用ガス量が溶銑1ton当たり0.05〜0.30 Nm
3/min程度が望ましい。また攪拌用ガス量が溶銑1ton
当たり0.30 Nm3/min超では、スラグ中への粒鉄損出が急
増した。
【0028】このため、本発明にあっては、転炉型反応
容器の炉底または側壁から吹き込む攪拌用ガス量を溶銑
1ton 当たり0.05〜0.30 Nm3/minに限定する。好ましく
は、0.08〜0.20Nm3/min である。次に、実施例によって
本発明の作用効果をさらに具体的に説明する。
【0029】
【実施例】脱燐処理前の成分: [C]=4.4 〜4.8 %、[S
i]=0.2 〜0.3 %、[Mn]=0.25〜0.35%、[P] =0.09〜
0.11%、[S] <0.01%、脱燐処理前の温度=1320〜1340
℃の予備脱珪処理済みの溶銑180 ton について、各処理
条件を変えて底吹き転炉にて溶銑脱燐処理を行った。
【0030】脱燐剤としては、粒度=−200 メッシュの
酸化カルシウム粉を溶銑1ton 当たり20kg使用した。比
較のため、塊状の酸化カルシウムを溶銑1ton 当たり20
kg使用し、そのまま投入した脱燐処理も行った。また従
来例として蛍石4kg/トンを用いた例についても行っ
た。
【0031】上吹き水冷ランスは、4孔外向き10°の
出口速度マッハ=2.25のラバールランスを基本とし、
中心ストレート1孔+3孔外向き5°の出口速度マッハ
=2.25のラバールランス (酸化カルシウムは中心ストレ
ート管より吹き込み) についても調査した。底吹き羽口
は4本使用し、上吹き送酸時間は10分とした。
【0032】本発明にかかる上吹き酸素量と攪拌用ガス
量の条件を満たす実施例1〜3では処理後燐レベル、
[C] 損出、鉄分損出を低位に安定させることができた。
4孔外向き10°の出口速度マッハ=2.25のラバールラン
スに替え、実施例4に示すように中心ストレート1孔+
3孔外向き5°の出口速度マッハ=2.25のラバールラン
スを使用した場合でも充分な効果が得られた。
【0033】一方、上吹き酸素量不足 (比較例1) では
脱燐不良、上吹き酸素量過大 (比較例2) では[C] 損出
を招き、攪拌用ガス量不足 (比較例3) では脱燐不良と
なった。また攪拌用ガス量過大 (比較例4) の場合、鉄
分の損出が大きく、塊状酸化カルシウム使用 (比較例
5) では脱燐が不良であった。
【0034】また、比較例6、7は、CaO とともに蛍石
を併用する場合において、上吹酸素量を変えた例を示
す。表2に示す結果からも本発明により蛍石使用時と同
等の脱燐が可能であることが分かる。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【発明の効果】本発明により、酸化カルシウムを主体と
する脱燐剤を用い、ハロゲン系化合物およびアルカリ系
化合物を併用することなく、効率的かつ経済的に溶銑脱
燐を行うことが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】上吹き送酸速度と滓化度、脱炭量およびスピッ
ティング発生量とのそれぞれの関係を示すグラフであ
る。
【図2】底吹き攪拌ガス量と粒鉄ロスおよび脱燐率との
関係を示すグラフである。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 転炉型反応器に収容された溶銑に対して
    上吹きランスより予め決められた量の酸化カルシウム粉
    を、同じく溶銑1ton 当たり0.7 〜2.0 Nm3/minの酸素
    とともに吹き付けるとともに、前記反応容器の炉底また
    は側壁から溶銑1ton 当たり0.05〜0.30Nm3 /minの攪拌
    用ガスを吹込むことを特徴とする溶銑脱燐方法。
  2. 【請求項2】 前記酸化カルシウム粉を、溶銑トン当た
    り5 〜30kg添加することを特徴とする請求項1記載の溶
    銑脱燐方法。
  3. 【請求項3】 C:4.0〜5.0 %の溶銑がC:3.5〜4.5 %
    にまで脱炭されるまで吹錬を行う請求項1または2に記
    載の溶銑脱燐方法。
  4. 【請求項4】 さらに、吹錬終了後、得られた脱燐滓と
    溶銑とを分離し、次いで脱炭処理を行うことを特徴とす
    る請求項1ないしのいずれかに記載の溶銑脱燐方法。
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