JP6003911B2 - リン酸質肥料原料、リン酸質肥料およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、製鋼工程において発生する製鋼スラグの有効活用に係り、とくに、製鋼スラグからリンを回収・濃化して得られる、リン酸質肥料として活用可能なリン酸質肥料原料およびその製造方法に関する。
高炉で溶製される溶銑には、鉄鉱石起因のリン(P)が含有されている。リン(P)は、鋼材にとっては有害成分であり、製鋼工程で脱リン処理が行われている。脱リン処理では、溶銑あるいは溶鋼中のリンは、酸素ガスや酸化鉄などの酸素源によって酸化されてP2O5となり、CaOを主成分とするスラグ中に固定されて、鉄鋼スラグ(以下、製鋼スラグともいう)として系外に除去されている。
近年、燐鉱石の枯渇や、中国、米国などによる燐鉱石の囲い込みのため、リン資源が高騰している。そのため、鉄鋼プロセスにおいて発生する製鋼スラグ中のリンが貴重なリン資源として見直されている。
しかし、高炉から出銑される溶銑中のリン濃度は0.1質量%程度であるため、従来の一般的な溶銑の予備脱燐処理や溶銑の脱炭精錬で生成される製鋼スラグ中のリン酸(P2O5)濃度は、高々1〜2質量%、多くても5質量%程度と低く留まっている。このままでは、製鋼スラグをリン酸資源、例えばリン酸質肥料原料として利用できる見込みはほとんどない。そのため、これらの製鋼スラグは、路盤材などの土木用材料として使用されているのが現状であり、スラグ中のリンは有効に利用されていない。なお、ここでいう「予備脱燐処理」とは、溶銑を転炉などで脱炭精錬する前に、予め溶銑中のリンを除去する処理をいう。
また、最近では、環境対策や省資源という観点から、製鋼スラグをリサイクルして使用する製鋼スラグの有効利用が進められている。
例えば、製鋼スラグの活用法として、リンを含む製鋼スラグを回収して、リン酸質肥料原料として有効利用する方法がある。スラグを原料とするリン酸質肥料としては、トーマス燐肥が広く知られている。このトーマス燐肥は、高リン鉄鉱石を原料として製造されるトーマス溶銑(通常、[P]:1.8〜2.0質量%程度)をトーマス転炉を用いて精錬し、この際に生成するスラグを原料とするものであり、リン酸濃度は16〜22質量%と高いことが特徴である。しかし、この技術は、トーマス転炉を用いる必要があることや、高リン鉄鉱石を原料とする必要があることなどの制約や、脱リン後の溶銑のリン濃度が高いこと、生成するスラグ量が多いこと等の問題があり、現在はほとんど実施されていない。
このような問題に対し、例えば特許文献1には、清浄鋼の精錬方法が記載されている。特許文献1に記載された技術は、高炉精錬工程と転炉精錬工程の間に2段階にわたる溶銑の炉外予備脱燐工程を設け、1回目の炉外予備脱燐工程ではP含有量が0.17〜0.50重量%の高含燐溶銑を予備脱燐しP含有量の高い有用スラグを生成してこれを排出し、この時得られる脱燐銑を2回目の炉外予備脱燐工程で再度脱燐して低燐銑とし、得られた低燐銑を転炉精錬して低燐鋼となす、清浄鋼の精錬方法である。
特許文献1に記載された技術では、2回目の炉外予備脱燐工程で発生した含燐スラグを高炉装入原料の一部として高炉に装入し、高炉から出銑される溶銑中のP含有量を0.17〜0.50重量%に維持するとしている。また、1回目の炉外予備脱燐工程で排出されたP含有量の高いスラグは、燐酸資源として回収し、燐酸、肥料の原料に利用できるとしている。また、特許文献1に記載された技術によれば、製鋼プロセスで排出されるスラグの量を大幅に低減できるとしている。
また、特許文献2には、製銑製鋼方法が記載されている。特許文献2に記載された技術では、高炉精錬工程と転炉精錬工程の間に溶銑の炉外予備脱燐工程を設け、この炉外予備脱燐工程でP含有量が0.17〜0.50重量%の高含燐溶銑を予備脱燐しP含有量の高い有用スラグを生成してこれを排出し、この時得られた予備脱燐銑を転炉精錬して低燐鋼となしたのち、該転炉精錬で生成した含燐スラグを高炉装入原料の一部として高炉に装入し、高炉から出銑される溶銑中のP含有量を0.17〜0.50重量%に維持するとともに、廃棄スラグ量の低減を可能とする製銑製鋼方法である。特許文献2に記載された技術によれば、溶銑の炉外予備脱燐工程で排出されたP含有量の高いスラグは、リン酸資源として回収し、リン酸質肥料の原料に利用できるとしている。また、特許文献2に記載された技術によれば、製鋼プロセスで排出されるスラグの量を大幅に低減できるとしている。
また、特許文献3には、高Pスラグの製造方法が記載されている。特許文献3に記載された技術は、P濃度が0.15質量%以下の溶銑を脱燐して得られた燐含有スラグを溶銑浴に投入し、炭素材および酸化鉄または/および酸素を供給してスラグ中のPを溶銑浴中に還元抽出して、P濃度が0.5〜3質量%の溶銑を生成する第1工程と、第1工程で生成したスラグを排滓した後、溶銑に処理後のスラグ塩基度が2〜8になるようにフラックスを添加し、さらに酸化鉄源の添加および/または酸素ガスの吹き込みを行って溶銑中に含まれる炭素濃度を1%以下まで低下させる第2工程を施し、処理後の燐酸濃度が10〜35%である高Pスラグを得る方法である。この方法で得られたスラグは、高濃度のリン酸を含み、直接、肥料として使用できるとしている。
また、特許文献4には、製鋼スラグの資源化方法が記載されている。特許文献4に記載された技術は、転炉での溶銑の脱炭精錬において発生した脱炭精錬スラグと、溶銑の予備処理において発生した予備脱燐スラグとを、混合した後の塩基度(質量%CaO/質量%SiO2)が1.5〜2.8になるように混合し、該混合物に対して、炭素、珪素、アルミニウムのうちの1種以上を含有する還元剤を用いて前記スラグ中の鉄酸化物を還元するための還元処理を行い、該還元処理によって得られた金属鉄を鉄源として利用し、還元処理後のスラグを燐酸肥料用原料として利用する製鋼スラグの資源化方法である。
また、製鋼スラグからリンを回収する技術が種々提案されている。例えば、特許文献5には、製鋼スラグからの鉄及び燐の回収方法が記載されている。特許文献5に記載された技術は、燐を含有する製鋼スラグを還元処理して高燐高マンガン銑鉄を回収する第1の工程と、第1の工程で還元処理によって燐含有量が低下したスラグをCaO源としてリサイクルする第2の工程と、第1の工程で回収した高燐高マンガン銑鉄を、媒溶剤としてスラグの塩基度が0.5〜1.0となるようにCaO源および酸素源を供給して、処理後の溶銑中マンガン濃度が0.4質量%以下となるまで脱マンガン処理する第3の工程と、第3の工程の脱マンガン処理で生成したスラグを排出する第4の工程と、第4の工程でスラグが排出された後の容器内の溶銑に、脱燐反応に必要とする酸素ガス換算の全酸素源のうちの40体積%以上の酸素ガスを上吹きランスから溶銑に対して吹き付けて供給し、脱燐反応に必要とするCaO源のうちの40質量%以上のCaO源を上吹きランスを通じて酸素ガスとともに溶銑に吹き付けて供給して脱燐処理する第5の工程と、第5の工程で脱燐処理された溶銑をリサイクルする第6の工程と、第5の工程の脱燐処理で生成されたスラグを回収して燐資源原料とする第7の工程からなる製鋼スラグからの鉄及び燐の回収方法である。特許文献5に記載された技術で回収されたスラグは、リン酸濃度が15質量%以上、マンガン酸化物濃度が10質量%以下で、含まれる主要なリン含有化合物がCa3(PO4)2であり、リン酸肥料用原料として有用であるとしている。
また、特許文献6には、製鋼スラグからの鉄及び燐の回収方法が記載されている。特許文献6に記載された技術では、製鋼精錬プロセスにおいて発生した燐を含有する製鋼スラグで固化した後に金属鉄が分離された製鋼スラグを、炭素、珪素、アルミニウムのうちの1種以上を含有する還元剤を用いて還元処理して、製鋼スラグ中の鉄酸化物及び燐酸化物を燐含有溶融鉄として還元・回収する第1の工程と、鉄酸化物及び燐酸化物が回収された製鋼スラグを、CaO源としてリサイクルする第2の工程と、還元処理により回収した燐含有溶融鉄を、フッ素を含有しないCaO系フラックスを用いて燐濃度が1質量%以下となるまで脱燐処理し、CaO系フラックス中に燐を濃縮する第3の工程と、脱燐処理され、燐濃度が0.1質量%以下の燐含有溶融鉄を、鉄源として高炉溶銑に混合する第4の工程と、を有する製鋼スラグからの鉄及び燐の回収方法である。そして、第3の工程で得られた、燐が濃縮されたCaO系フラックス(スラグ)は、燐資源として利用でき、ク溶性リン酸濃度が高く、「小松菜」を用いた肥効試験により、リン酸肥料として優れているとしている。
また、特許文献7には、製鋼スラグからの鉄及び燐の回収方法が記載されている。特許文献7に記載された技術は、転炉での溶銑の脱炭精錬において発生したスラグ及び溶銑の予備脱燐処理において発生したスラグのうちの少なくとも何れか1種の燐を含有する製鋼スラグであって固化した後に金属鉄が分離された製鋼スラグを、炭素、珪素、アルミニウムのうちの1種以上を含有する還元剤を用いて還元処理して、燐を0.5質量%以上且つマンガンを0.5質量%以上含有する高燐高マンガン銑鉄を回収する第1の工程と、第1の工程の還元処理によって燐含有量が低下したスラグを製銑工程または製鋼工程でのCaO源としてリサイクルする第2の工程と、第1の工程で回収した高燐高マンガン銑鉄を、媒溶剤としてフッ素化合物を用いることなく処理後のスラグの塩基度が0.5以上1.0以下となるまでCaO源及び酸素源を供給して、処理後の溶銑中のマンガン濃度が0.4質量%以下となるまで脱マンガン処理する第3の工程と、第3の工程の脱マンガン処理によって生成したスラグを処理容器から排出する第4の工程と、第4の工程により、スラグが排出された容器内の溶銑に対し、脱燐反応で必要とするCaO源のうちの40質量%以上のCaO源を上吹きランスを通じて酸素ガスとともに溶銑に吹き付け供給し、処理後の溶銑中燐濃度が0.10質量%以下となるまで脱燐処理する第5の工程と、第5の工程で脱燐処理された溶銑を製鋼工程にリサイクルする第6の工程と、第5の工程の脱燐処理で生成したスラグを排出する第7の工程とを有する製鋼スラグからの鉄及び燐の回収方法である。そして、特許文献7に記載された技術では、第7の工程で排出されたスラグは、リン資源として利用でき、ク溶性リン酸濃度が高く、「小松菜」を用いた肥効試験により、リン酸肥料として優れているとしている。
特開平08−3612号公報 特開平08−3613号公報 特開平11−158526号公報 特開2012−7190号公報 特開2011−208277号公報 特開2012−1797号公報 特開2012−7189号公報
しかし、特許文献1、2に記載された技術では、溶銑の炉外予備脱リン工程という特別な工程を設ける必要があり、脱リン処理コストやスラグ回収コストが高くなるという問題がある。例えば、特許文献1に記載された技術では、溶銑の炉外予備脱リン工程を2回に分けて行うため、脱リン処理装置を2基設ける必要があり、脱リン処理コストが高騰する。また、1基では脱リン処理量が半分となり、生産性が低下する。
また、特許文献1〜3に記載された技術によれば、高濃度のリン酸を含むスラグを得ることができる。しかし、特許文献1〜3には、ク溶性リン酸、可溶性リン酸についての言及がなく、得られたスラグがリン酸質肥料として有効な肥料効果を保持しているかは不明である。なお、ここでいう「ク溶性リン酸」とは、2%クエン酸(pH2.0)に溶解するリン酸をいい、「可溶性リン酸」とは、クエン酸二アンモニウム溶液(pH7)に溶解するリン酸をいう。この「ク溶性リン酸」濃度あるいは「可溶性リン酸」濃度が高いほど、肥料として有効であるといわれており、得られたスラグがリン酸質肥料として効果を発揮するためには、ク溶性リン酸あるいは可溶性リン酸が多く含まれる必要がある。しかし、特許文献1〜3に記載された発明では、スラグ中の「ク溶性リン酸」濃度や「可溶性リン酸」を高めるための方策についてなんの配慮もされておらず、高いレベルの肥料効果を有するスラグが得られているとは必ずしも言い難い。
また、特許文献4には、スラグ中の「ク溶性リン酸」含有量についての記載があるが、「可溶性リン酸」についての記載はなく、特許文献4に記載された技術では、高いレベルの肥料効果を有するスラグが得られているとは必ずしも言い難い。
なお、肥料効果は、リン酸の溶解性(リン酸溶解性)を示す「ク溶性リン酸」あるいは「可溶性リン酸」で評価されることが多いが、「可溶性リン酸」で評価するほうが、「ク溶性リン酸」で評価するよりも、作物生育促進との相関が強いと言われている。
また、特許文献5に記載された技術では、得られたスラグ中に化合物として、リン酸カルシウムCa3(PO4)2が生成され、リン酸質肥料として優れるとしているが、しかし、作物生育促進との相関が強い可溶性リン酸が必ずしも高いとは言えず、また製造単位(ロット)ごとに、可溶性リン酸や作物栽培試験における生育にばらつきが生じ、肥料として安定しないという問題があり、リン酸質肥料として利用するまでに至っていない。
また、特許文献6、7に記載された技術では、得られたスラグが、ク溶性リン酸濃度が高く、リン酸質肥料として優れるとしているが、しかし、可溶性リン酸が必ずしも高いとは言えず、また製造単位(ロット)ごとに、可溶性リン酸や作物栽培試験における生育にばらつきが生じ、肥料として安定しないという問題があった。
このように、製鋼スラグから従来の技術で製造された高リン含有スラグは、製造単位(ロット)ごとに、肥料効果が変動して、リン酸質肥料として安定して使用できないという問題があった。
本発明は、かかる従来技術の問題を解決し、製鋼工程で発生する製鋼スラグを活用し、製鋼スラグから、可溶性リン酸濃度(リン酸溶解性)が高く、肥料効果の高い、リン酸質肥料原料およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記した目的を達成するために、まず、製鋼スラグを還元処理して得た高リン銑鉄を原料とし、該原料に脱リン処理を施して得られた各種リン含有スラグ種を用いて、リン酸溶解性に及ぼすスラグ組成の影響について鋭意研究した。
まず、得られた各種リン含有スラグについて、X線回折を用いて、スラグ中に含まれる結晶物質(化合物)を同定した。その結果、得られたリン含有スラグ中には、α−Ca3(PO42、β−Ca3(PO42、Ca4O(PO42、Ca5(PO43(OH)などのCaO−P2O5系結晶物質が含まれていた。そこで、試薬または化学合成により得られたこれらCaO−P2O5系結晶物質の可溶性リン酸量を調査し、リン酸可溶率を求めた。
ここでいう「リン酸可溶率」とは、クエン酸二アンモニウム溶液(pH:7.0)に溶解するリン酸(可溶性リン酸)量を測定し、全リン酸量に対する比率(=(可溶性リン酸量)/(全リン酸量))をいう。
なお、可溶性リン酸量は、肥料分析法(農林水産省農業環境技術研究所法 1992年度版)に準拠して、所定量のスラグを容器にとり、所定量のクエン酸二アンモニウム溶液(pH:7.0)を加え、振り混ぜながら、所定温度で所定時間作用させたのち、水を加えて冷却し直ちに乾燥ろ紙でろ過し、液中のリン酸量を測定して、求めた。
得られた結果を表1に示す。
Figure 0006003911
表1から、α−Ca3(PO42、Ca4O(PO42が、高いリン酸可溶率を示し、リン酸溶解性の優れたCaO−P2O5系結晶物質であることを知見した。とくに、Ca3(PO42は、α型とβ型で、リン酸可溶率が大きく相違していることを見出した。
従来、リン酸質肥料としてリン含有スラグを利用する際にはCa3(PO42が含有することを目標としていたが、α型が生成している場合には、リン酸可溶率が大きくなり肥料効果が大きくなるが、β型が生成している場合には、リン酸可溶率が低く肥料効果が低くなる。このため、従来のリン含有スラグで大きく肥料効果が変動した理由は、形成されるCa3(PO42の型が変動したことによることが大きいことを突き止めた。
このようなことから、リン酸質肥料用原料としては、スラグ組成を、リン酸溶解性が高い、α−Ca3(PO42、Ca4O(PO42が主として生成するように、CaO−P2O5−SiO2三元系の組成を調整することが肝要であることを知見した。
さらに、本発明者らは、脱リンスラグ中に、α−Ca3(PO42を生成させるためには、CaO−P2O5−SiO2三元系の組成を調整することに加えて、脱リン処理後に、生成したスラグを1050℃〜700℃の温度域を急冷する加速冷却を行う必要があることを見出した。反応容器中での放冷では、β−Ca3(PO42の生成が優先し、肥料効果に優れたα−Ca3(PO42が生成しないことを知見した。
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
(1)製鋼精錬プロセスで発生したリンを含む製鋼スラグを処理して得られる脱リンスラグを素材とするリン酸質肥料原料であって、前記脱リンスラグが、少なくともCaO、P2O5およびSiO2を含み、スラグ全量に対するmass%で、前記CaO、P2O5およびSiO2の合計量が50%以上、P2O5:15%以上で、かつ前記CaO、P2O5、SiO2の三元系での合計量全量に対するmass%で、CaO:50〜65%、P2O5:15%以上を含み、SiO2:10%未満である組成を有し、かつ可溶性リン酸をスラグ全量に対するmass%で、4.5%以上含むスラグであることを特徴とするリン酸質肥料原料。
(2)(1)において、前記脱リンスラグが、α−リン酸三カルシウム(α−Ca3(PO42)、および/または、リン酸四カルシウム(Ca4O(PO42)の結晶構造を有するCaO−P2O5系結晶を含むことを特徴とするリン酸質肥料原料。
(3)一部または全部が、(1)または(2)に記載のリン酸質肥料原料からなることを特徴とするリン酸質肥料。
(4)製鋼精錬プロセスで発生したリンを含む製鋼スラグに還元処理を施して得られるリン含有溶銑に脱リン処理を施し、生成する脱リンスラグをリン酸質肥料原料とするリン酸質肥料原料の製造方法であって、生成する前記脱リンスラグが、CaO含有量とSiO2含有量の比、[%CaO]/[%SiO2]で定義される塩基度が1.5以上、かつ、スラグ全量に対するmass%で、CaO、P2O5およびSiO2の合計量が50%以上、P2O5:15%以上で、かつ前記CaO、P2O5およびSiO2の三元系での合計量全量に対するmass%で、CaO:50〜65%、P2O5:15%以上を含み、SiO2:10%未満となる組成を有するように、前記脱リン処理を、酸素ガス量および酸素ガスと共に投射するCaO源の量を調整する処理とし、前記脱リン処理後、生成した前記脱リンスラグに、1050〜700℃の温度域を平均冷却速度で5℃/min以上の加速冷却を施す、ことを特徴とするリン酸質肥料原料の製造方法。
(5)(4)において、前記還元処理が、炭素、珪素、アルミニウムのうちの1種以上を含有する還元剤を用いて行う処理であることを特徴とするリン酸質肥料原料の製造方法。
(6)(4)または(5)において、前記CaO源が、粒径が1mmアンダーの粉末であることを特徴とするリン酸質肥料原料の製造方法。
(7)(4)ないし(6)のいずれかにおいて、前記加速冷却前に、前記生成した脱リンスラグに、加熱し均一化する処理を施し、しかる後に前記加速冷却を施すことを特徴とするリン酸質肥料原料の製造方法。
(8)(4)ないし(7)のいずれかにおいて、前記加速冷却後の脱リンスラグが、α−リン酸三カルシウム(α−Ca3(PO42)、および/または、リン酸四カルシウム(Ca4O(PO42)の結晶構造を有するCaO−P2O5系結晶を含むことを特徴とするリン酸質肥料原料の製造方法
本発明によれば、製鋼スラグを利用して、高い可溶性リン酸量(リン酸溶解性)を有し、肥料効果が高い、リン酸質肥料原料を製造することができ、産業上格段の効果を奏する。また、本発明によれば、製鋼スラグを有効利用できるという効果もある。
本発明リン酸質肥料原料(スラグ)の組成範囲を三元系で示す説明図である。 脱リン処理設備の一例を模式的に示す説明図である。
本発明リン酸質肥料原料は、製鋼スラグを還元処理して得られた高リン銑鉄にさらに脱リン処理を施し、その際に生成する、リンが濃化したスラグ(脱リンスラグともいう)を素材とする。
本発明リン酸質肥料原料は、CaO、P2O5およびSiO2を含み、あるいはさらにAl2O3、MgO、MnO、FeO等を含有するスラグで、スラグ全量に対するmass%で、CaO、P2O5およびSiO2の合計量が50%以上、P2O5:15%以上で、かつCaO、P2O5、SiO2の三元系での合計全量に対するmass%で、CaO:50〜65%、P2O5:15%以上を含み、SiO2:10%未満である組成を有する。なお、ここでいう「CaO」、「P2O5」、「SiO2」は、スラグ中のCa、P、Siがそれぞれの酸化物(CaO、P2O5、SiO2)で存在すると考えた際の、それら酸化物の質量組成である。
CaO、P2O5およびSiO2の合計量が、スラグ全量に対するmass%で、50%未満では、リン酸含有量が相対的に低くなり、可溶性リン酸の生成が少なくなるため、肥料効果が低下する。このため、CaO、P2O5およびSiO2の合計量は、スラグ全量に対するmass%で、50%以上に限定した。なお、好ましくは50〜70%である。
また、スラグ全量に対する質量%で、P2O5が15%未満では、リン酸含有量が少なすぎて、肥料効果が低下し、所望の肥料効果を確保することができなくなる。このため、P2O5はスラグ全量に対する質量%で、15%以上に限定した。
また、本発明リン酸質肥料原料は、上記したCaO、P2O5およびSiO2の合計量、P2O5量を満足し、さらには、CaO、P2O5、SiO2の三元系で、CaO、P2O5、SiO2の合計量全量に対するmass%で、CaO:50〜65%、P2O5:15%以上を含み、SiO2:10%未満である組成で、かつ可溶性リン酸をスラグ全量に対するmass%で、4.5%以上含むスラグとする。
CaO、P2O5、SiO2の合計量全量に対して、リン酸(P2O5)含有量が、15%未満では、ク溶性リン酸量が15%未満となり、リン酸質肥料としては不適となる。このようなことから、リン酸(P2O5)は、CaO、P2O5、SiO2の三元系で15%以上に限定した。好ましくは30%以上である。なお、スラグ全量に対するmass%で、P2O5:15%以上であれば、三元系でもP2O5:15%以上を確保できる。
また、CaO含有量が50%未満では、α−Ca3(PO42、Ca4O(PO42が生成せず、可溶性リン酸の生成が不十分となる。一方、65%を超えて多量となると、いったん生成したCa4O(PO42が空気中の水と反応して、CaOまたはCa(OH)2とリン酸カルシウムアパタイトCa5(PO43(OH)に分解し、可溶性リン酸の生成が不十分となる。このため、CaOは三元系で50〜65%の範囲に限定した。
CaO、P2O5、SiO2の三元系で、上記した範囲のリン酸(P2O5)量、CaO量で、SiO2量が10%未満の領域では、製造方法を工夫することにより、リン酸可溶率が高い、α−Ca3(PO42、Ca4O(PO42が主要なCaO−P2O5系結晶物質が生成し、スラグ全量に対する質量%で4.5%以上の可溶性リン酸を含むスラグとなる。
つぎに、上記した本発明リン酸質肥料原料の好ましい製造方法について説明する。
使用する製鋼スラグは、製鋼プロセスで発生するリンを含有するスラグであればよく、とくに限定されないが、例えば、溶銑を転炉で脱炭精錬する工程で発生する転炉スラグや溶銑予備処理工程で発生する脱リンスラグなどが好適である。
まず、リンを含む製鋼スラグに還元処理を施して、高リン銑鉄を得る。
製鋼スラグには、CaO、SiO2を主成分とし、リンがP2O5なる酸化物として含まれ、また鉄がFeOやFe2O3等の形態で酸化物として含有されている。このようなリン含有製鋼スラグに、還元剤を使用して還元処理を施す。なお、使用する還元剤は、炭素、珪素、アルミニウム等のうちの1種以上とすることが好ましい。
燐、鉄はCaやSiに比較して酸素との親和力が弱く、スラグ中のP2O5や鉄酸化物は容易に還元される。還元処理は、リンを含有する製鋼スラグを反応容器に装入し熱を与えて、還元剤を用いて行う。反応容器は、製鋼スラグに熱を与えて還元処理を施すことができるものであればよく、とくに限定されない。
このような還元処理に使用できる反応容器としては、例えば、バーナー等の加熱手段を備えたロータリーキルン炉、アーク加熱方式の電気炉や、バーナー或いは酸素による加熱装置を有する転炉や鍋型の処理容器、誘導加熱炉、RHF形式の処理容器などが挙げられる。
なお、還元により生成した鉄が溶融状態となるように、好ましくは1000℃以上の高温に加熱して行うことが好ましい。これにより、還元され生成した鉄(溶融鉄)が、容易にスラグから分離でき、さらに、この溶融鉄に、還元により生成したリンが溶解し、高リン含有溶融鉄となる。
なお、生成した溶融鉄の融点が低いほど、溶融鉄とスラグとの分離が促進されるため、生成した溶融鉄に、炭素を溶解させ、溶銑とすることが好ましい。溶融鉄に炭素を溶解させるには、還元剤として炭素を使用することが好ましい。また、還元剤として珪素やアルミニウムを使用する場合には、炭素と製鋼スラグと共存させることにより、還元より生成した溶融鉄に浸炭させて、高リン含有溶銑とすることができる。
得られた高リン含有溶銑には、ついで脱リン処理が施され、低リンの溶銑とされる。なお、得られた高リン含有溶銑に、高炉から出銑された溶銑を混合して、適正なリン濃度に調整してもよい。
本発明における高リン含有溶銑の脱リン処理には、反応容器として、転炉方式、鍋方式、トピード方式等の、通常の脱リン処理設備がいずれも利用可能である。
脱リン処理設備としては、例えば図2に示すような、反応容器(転炉型)1に、上吹きランス2、インジェクションランス3、貯蔵タンク5,6、ホッパー11等を備えた設備が例示できる。
脱リン処理では、得られた高リン含有溶銑7を反応容器1に装入し、上吹きランス2から酸素ガスを吹付けると同時に、この酸素ガスを搬送ガスとして、貯蔵タンク6に貯蔵されたCaO源4を吹付ける。なお、上吹きランス2からCaO源4(CaO系脱リン剤)を溶銑7に吹付けることを「投射」ともいう。また、インジェクションランス3を利用して、窒素ガスを搬送ガスとして貯蔵タンク5に貯蔵されたCaO源(CaO系脱リン剤)、酸素源等を溶銑7中に吹き込んでも良い。また、ホッパー11に貯蔵されたCaO源(CaO系脱リン剤)、酸素源等を溶銑7に上添加してもよい。
なお、CaO源(CaO系脱リン剤)としては、反応の促進という観点から、粉末状とし、粒径1mmアンダー(1mm未満)の粉末とすることが好ましい。また、CaO系脱リン剤としては、生石灰が例示できる。使用する生石灰は、蛍石などのフッ素化合物を混合しないものとする。フッ素化合物を含有すると脱リン処理で得られるCaO−P2O5系結晶物質がフッ化アパタイトとなりリン酸溶解性が低下する。
本発明では、脱リン処理において、得られる脱リンスラグが、CaO含有量とSiO2含有量の比、[%CaO]/[%SiO2]で定義される塩基度が1.5以上となる組成を有するように、投射するCaO源の量を調整する。これにより、得られる脱燐スラグのリン酸(P2O5)含有量を安定して、所望値以上に高めることができる。
得られるスラグの塩基度が1.5未満では、リン酸含有量を、安定して所望値以上とすることができない。ここでいう「所望値」とは、スラグ全量に対する質量%で、P2O5:15%以上である。スラグ中のP2O5含有量が15%以上確保できれば、リン酸質肥料として所望の肥料効果を期待できる。
なお、上吹きランスから供給する酸素ガスおよびCaO源は、脱リン反応に必要な酸素源およびCaO源のうちの、酸素ガス換算で40体積%以上、CaO換算で40質量%以上とすることが好ましい。上吹きランスから供給する酸素ガスが40体積%未満およびCaO源が40質量%未満では、上吹き供給する量が少なすぎて、CaOの滓化速度が低下し、溶銑の脱リン不良の原因となることがある。
上記した脱リン処理では、生成する脱リンのスラグ塩基度を1.5以上とし、スラグ全量に対するmass%で、P2O5が15%以上とするとともに、CaO、P2O5およびSiOの合計量が50%以上で、かつCaO、P2O5、SiO2の三元系での合計量全量に対するmass%で、CaO:50〜65%、P2O5:15%以上、SiO2:10%未満となるように、供給する酸素ガス、投射するCaO源の量を調整する。
脱リン処理終了後、生成した脱リンスラグには、1050〜700℃の温度域を、平均冷却速度:5℃/min以上の加速冷却を施す。これにより、得られる脱リンスラグには、肥料効果の高いα−リン酸三カルシウム(α−Ca3(PO42)が生成する。徐冷のような、冷却速度が平均で5℃/min未満では、β−リン酸三カルシウム(β−Ca3(PO42)となり、リン酸可溶率が低下し、肥料効果が低下する。また、加速冷却の温度域は、β−リン酸三カルシウムへの変態が著しい温度域である1050〜700℃の範囲とする。なお、脱リン処理は、通常1200℃以上の高温で行われるため、α−リン酸三カルシウムの方が優先的に存在する状態になっており、また、700℃未満の温度域では、α−リン酸三カルシウムへの変態速度が低下するため、1050〜700℃の温度域を上記した冷却速度で冷却することによりα−リン酸三カルシウムが生成する。
なお、加速冷却を施す前に、脱リンスラグには、1100℃以上に加熱し均一化する処理を施すことが好ましい。
以下、さらに実施例に基づき、本発明について説明する。
製鋼工程で発生したリン含有製鋼スラグ50tonを、還元剤である炭素とともに、ロータリーキルン炉に装入した。そして、ロータリーキルン炉付設の加熱バーナーにより、装入した製鋼スラグを還元剤とともに 1000℃以上に加熱する還元処理を施し、高リン還元鉄10tonを得た。
なお、得られた高リン還元鉄のリン含有量は1.0〜4.0質量%であった。そこで、得られた高リン還元鉄を、高炉から出銑された溶銑と混合し、リン含有量を0.5〜1.3質量%の範囲内の値に調整し、高リン溶銑200tonとした。脱リン処理前の溶銑成分を表2に示す。
ついで、これら高リン溶銑(200ton)を、転炉型反応容器に装入し、脱リン処理を実施した。脱リン処理は、上吹きランスから酸素ガスを吹き付けるとともに、CaO源(CaO系脱リン剤)として、粉状CaO系脱リン剤を吹き込む処理とした。CaO源(CaO系脱リン剤)は、粒径1mmアンダーの粉状生石灰(CaO純分:95質量%程度)のみとし、蛍石等のフッ化化合物を含有しないものとした。なお、投入するCaO源(CaO系脱リン剤)の原単位を調整して、スラグの塩基度を変化させるとともに、スラグ組成を調整した。
上吹きランスからの吹き付け量は、脱リン反応に必要とする酸素源の40体積%以上(酸素ガス換算)、脱リン反応に必要とするCaO源の40質量%以上(CaO換算)とし、残りはホッパーより添加した。
なお、脱リン処理は、溶銑中のリン濃度が0.13質量%以下となるまで実施した。
脱リン処理後の溶銑成分を測定し、表2に示す。
なお、脱リン処理後、溶銑は反応容器外に排出し、一方、スラグは、反応容器内で、1500℃に加熱され均一な溶融スラグとしたのち、反応容器外に排出し、表2に示す平均冷却速度で700℃以下まで冷却した。
得られたスラグについて、組成を調査し、表2に示す。
また、得られたスラグに含有する鉱物相(化合物)を調査した。含有する鉱物相(化合物)の調査は、X線回折法を用いて行った。また、得られたスラグについて、可溶性リン酸を測定し、リン酸可溶率を求めた。得られた結果を表3に示す。
なお、可溶性リン酸量の測定は、肥料分析法(農林水産省農業環境技術研究所法 1992年度版)に準拠して、つぎの通りとした。
クエン酸二アンモニウム(NH42HC6H5O720gを水に溶かして1000mlとして、クエン酸二アンモニウム液を調整した。得られたスラグ1gを、250mlのメスフラスコに正確にとり、上記クエン酸二アンモニウム液150mlを加え、密栓をして振り混ぜ、65℃の水浴中で15minごとに振り混ぜながら1h作用させたのち、水を加えて冷却し、更に標線まで水を加えて直ちに、乾燥ろ紙でろ過した。ろ液中のリン酸量を定量し、スラグ1gに対する質量割合を可溶性リン酸量(mass%)とした。得られた可溶性リン酸量をスラグ1g中含まれる全リン酸量で除して、リン酸可溶率(%)を算出した。
また、ク溶性リン酸量(mass%)についても測定した。なお、ク溶性リン酸量の測定は、肥料分析法(農林水産省農業環境技術研究所法 1992年度版)に準拠して行った。
ついで、得られたスラグをリン酸質肥料原料として、ヒロシマナを用いて栽培試験を実施した。栽培試験はつぎのとおりとした。
炭酸カルシウムと酸化マグネシウムでpH(H20)6.5に矯正した多腐植質黒ボク土1kgと、リン酸質肥料原料としてのスラグ0.5gを装入した1/5000aワグネルポットに、ヒロシマナを植え、ガラス温室内で所定期間(60日間)栽培し、生育状況を観察した。なお、すべてのポットには、窒素(N)として0.5g/ポット、カリウム(K20)として0.5g/ポットとなるように、硝酸カリウムと塩化カリウムを施用した。ヒロシマナの生育状況は、リン酸質肥料として対照肥料である過リン酸石灰をP2O5量としてスラグと同量施用したポットでの生育状況と比較し、同等もしくは優れている場合を「○」とし、それ以外の場合を「×」として評価した。
得られた結果を表3に併記して示す。なお、表2に示すスラグ組成を図1の三元系図中にプロットして示す。
Figure 0006003911
Figure 0006003911
本発明例は、α−リン酸三カルシウム(α−Ca3(PO42)が生成しているか、あるいはCa4O(PO42が主要なCaO−P2O5系結晶物質(鉱物相)として生成しており、可溶性リン酸が4.5mass%以上、リン酸可溶率が20%以上で、植物生育状況が「○」と優れており、肥料効果が顕著に向上したスラグ(リン酸質肥料原料)となっている。一方、本発明の範囲を外れる比較例は、β−Ca3(PO42やCa5(PO43(OH)等のリン酸可溶率が低いCaO−P2O5系結晶物質(鉱物相)しか生成しておらず、可溶性リン酸が低く、リン酸可溶率が20%未満と低く、植物生育状況が「×」と劣っている。
なお、本発明リン酸質肥料原料(スラグ)の三元系での組成範囲を満足していても、可溶性リン酸量が所望値(4.5mass%)未満となる場合(比較例:スラグNo.K,L)がある。これは、脱リン処理後の冷却条件が大きく異なり、スラグ中に生成される鉱物相が、α−Ca3(PO42やCa4O(PO42を含まないためと考えられる。
1 反応容器
2 上吹きランス
3 インジェクションランス
4 CaO源(CaO系脱リン剤)
5 貯蔵タンク
6 貯蔵タンク
7 溶銑
11 ホッパー
12 生成スラグ

Claims (8)

  1. 製鋼精錬プロセスで発生したリンを含む製鋼スラグを処理して得られる脱リンスラグを素材とするリン酸質肥料原料であって、
    前記脱リンスラグが、少なくともCaO、P2O5およびSiO2を含み、スラグ全量に対するmass%で、前記CaO、P2O5およびSiO2の合計量が50%以上、P2O5:15%以上で、かつ前記CaO、P2O5、SiO2の三元系での合計量全量に対するmass%で、CaO:50〜65%、P2O5:15%以上を含み、SiO2:10%未満である組成を有し、かつ可溶性リン酸をスラグ全量に対するmass%で、4.5%以上含むスラグであることを特徴とするリン酸質肥料原料。
  2. 前記脱リンスラグが、α−リン酸三カルシウム(α−Ca3(PO42)、および/または、リン酸四カルシウム(Ca4O(PO42)の結晶構造を有するCaO−P2O5系結晶を含むことを特徴とする請求項1に記載のリン酸質肥料原料。
  3. 一部または全部が、請求項1または2に記載のリン酸質肥料原料からなることを特徴とするリン酸質肥料。
  4. 製鋼精錬プロセスで発生したリンを含む製鋼スラグに還元処理を施して得られたリン含有溶銑に脱リン処理を施し、生成する脱リンスラグをリン酸質肥料原料とするリン酸質肥料原料の製造方法であって、
    生成する前記脱リンスラグが、CaO含有量とSiO2含有量の比、[%CaO]/[%SiO2]で定義される塩基度が1.5以上、かつ、スラグ全量に対するmass%で、CaO、P2O5およびSiO2の合計量が50%以上、P2O5:15%以上で、かつ前記CaO、P2O5およびSiO2の三元系での合計量全量に対するmass%で、CaO:50〜65%、P2O5:15%以上を含み、SiO2:10%未満となる組成を有するように、前記脱リン処理を、酸素ガス量および酸素ガスと共に投射するCaO源の量を調整する処理とし、
    前記脱リン処理後、生成した前記脱リンスラグに、1050〜700℃の温度域を平均冷却速度で5℃/min以上の加速冷却を施す、
    ことを特徴とするリン酸質肥料原料の製造方法。
  5. 前記還元処理が、炭素、珪素、アルミニウムのうちの1種以上を含有する還元剤を用いて行う処理であることを特徴とする請求項4に記載のリン酸質肥料原料の製造方法。
  6. 前記CaO源が、粒径が1mmアンダーの粉末であることを特徴とする請求項4または5に記載のリン酸質肥料原料の製造方法。
  7. 前記加速冷却前に、前記生成した脱リンスラグに、加熱し均一化する処理を施し、しかる後に前記加速冷却を施すことを特徴とする請求項4ないし6のいずれかに記載のリン酸質肥料原料の製造方法。
  8. 前記加速冷却後の脱リンスラグが、α−リン酸三カルシウム(α−Ca3(PO42)、および/または、リン酸四カルシウム(Ca4O(PO42)の結晶構造を有するCaO−P2O5系結晶を含むことを特徴とする請求項4ないし7のいずれかに記載のリン酸質肥料原料の製造方法
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