JP6988532B2 - リン酸肥料原料、ケイ酸リン酸肥料原料及びこれらの製造方法 - Google Patents

リン酸肥料原料、ケイ酸リン酸肥料原料及びこれらの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、リン酸肥料原料、ケイ酸リン酸肥料原料及びこれらの製造方法に関するものである。
我が国は降水量が多いので、土壌からミネラル分が流出して、土壌が酸性化し易い。そのため、植物を生育させる際に使用するリン酸肥料には土壌中のリン酸濃度だけでなく、土壌pHも同時に増加させる塩基性リン酸肥料が広く使用されている。現在、塩基性リン酸肥料として、アルカリ分を多く含む溶成リン肥が利用されている。
現在、高炉から出銑された溶銑は不純物として約0.1質量%のリンを含んでいるが、リンは、製鋼工程でフラックスを添加し酸素を吹き込むことで酸化除去されて、製鋼スラグとして排出されている。
特許文献1に示すように、製鋼スラグのリン酸濃度は1〜4質量%程度であり、リン酸肥料として十分な濃度ではないものの、製鋼スラグ中には、フラックス由来のCaO分や溶銑から酸化除去されたSiO2分が多量に含まれているので、ケイ酸リン酸肥料として利用されている。
しかし、現在でもリン酸肥料の原料であるリン鉱石の全量を輸入に依存している我が国では、製鋼スラグ中のリン酸分は有用なリン酸肥料資源として考えられており、特許文献2〜4に示すように、製鋼スラグ中のリン酸分を濃縮して高リン酸スラグを製造し、製鋼スラグからリン酸肥料を製造することが試みられている。
ところで、上記リン酸肥料を肥料として使用する際において肥料効果を高めるには、リン酸濃度だけではなく、リンの結晶状態や鉱物相を制御する必要がある。例えば、上記溶成リン肥は、燐鉱石と酸化マグネシウムを融解し混合して、ジェット水流で急冷して製造した肥料であり、リン含有鉱物相を、非晶質、即ち、ガラスにすることにより、肥料効果を高めている。なお、リン含有鉱物相とは、肥料中各鉱物相の中でリンが濃化した相を指すこととする。
特許文献5〜7には、リン含有鉱物相であるCa3(PO42−Ca2SiO4固溶体相、5CaO・SiO2・P25相、又は、7CaO・2SiO2・P25相(以下、「固溶体相」)、Ca3(PO42相(以下、「C3P相」)及びガラス相の中で、リン酸肥料としての肥料効果が最も高い相が固溶体相であるとし、その固溶体相が晶出するスラグの組成条件やその製造方法が開示されている。
特許第5105322号公報 特開平11−158526号公報 特開2009−132544号公報 特許第5594183号公報 特開2015−189591号公報 特開2016−74940号公報 特開2016−88757号公報
特許文献5〜7に記載の方法では、製鋼スラグを原料としてリン酸肥料を製造する場合、一度製鋼スラグを電気炉やロータリーキルンで還元することによりリン濃度が高い溶銑を製造し(以後、高P溶銑と呼ぶ)、その高P溶銑を鍋等で脱リンすることにより、製鋼スラグよりリン酸濃度が高い脱リンスラグを製造している。また、さらに脱リン条件を制御することにより脱リンスラグの組成を特定の範囲に調整し、そして溶融状態の脱リンスラグを固化させる時の冷却速度を制御することにより、スラグ中で固溶体相を意図的に晶出させ、肥料効果の高いリン酸肥料を製造している。
例えば、特許文献6及び7に記載の方法では、スラグ組成をCaOとSiO2との重量濃度比で表示する塩基度αが1.5以上3.0以下であり、P25が8質量%以上(−4α2+23α−4)質量%以下、酸化鉄をFe換算で5質量%以上25質量%以下の範囲に制御し、溶融状態から固化せる時の冷却速度を10℃/分以上にする事により固溶体相を晶出させ、肥料効果の高い肥料を製造している。
しかし一方で、高P溶銑を脱リンした時に、塩基度αが1.5より小さかったり、塩基度αが3.0より大きかったり、塩基度αが1.5以上3.0以下であってもP25濃度が(−4α2+23α−4)超であったり、もしくは冷却速度が10℃/分未満であったりすると、肥料効果が急激に落ちるという問題がある。これは、スラグ中のP25濃度が(−4α2+23α−4)を超える、もしくは冷却速度が10℃/分未満になると、脱リンスラグ中のリン含有鉱物相が固溶体ではなく、肥料効果が低いリン含有鉱物相であるβ−Ca3(PO42が晶出し、その結果、肥料効果が急激に落ちる。そのため、肥料効果の高いスラグの品質を維持し、溶銑中のP濃度によらず再現性良くリン酸肥料を製造するためには高P溶銑の脱リン時に、スラグ組成や冷却速度を適切に制御しなければならず、条件の制御が厳しいという課題がある。
そこで本発明は、上記の状況に鑑み、高P溶銑を脱リンしてリン酸肥料原料を製造する際に、製造条件の制御をより緩和した肥料効果が高いリン酸肥料原料、ケイ酸リン酸肥料原料、及び、これらの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するため、高P溶銑の脱リン時に使用するフラックスや製造条件の面で肥料効果の高いリン酸肥料原料について検討を重ねた結果、一般的な脱リンスラグ中では晶出しないが、肥料効果の高いことが知られているMg3(PO42に注目し、(1)高P溶銑の脱リンではMgOを主成分としたフラックスを利用することにより脱リンスラグ中でMg3(PO42を晶出させることが可能であること、(2)この時の脱リンスラグ中の可溶性リン酸濃度はβ−Ca3(PO42が晶出した場合と比較して格段に肥料効果が高いこと、(3)脱リンスラグ中のリン含有鉱物相は、フラックスの条件を制御すれば冷却速度に依存しないことを見いだした。さらに、同時に、一般的な溶銑を脱リンする際には、CaOに比べて脱リン能が低いとされているMgOでも、高P溶銑を使用した際には十分に脱リンし、リン酸濃度の高いリン酸スラグを製造することが可能であることを見いだした。
また、稲作で肥料を使用する場合は、リン酸だけでなくケイ酸も重要な成分となる。ケイ酸は、稲の葉身などの部位の主要な成分であるため、この成分が少ないと強風により倒れたり、病中害や冷害に弱い稲になりやすくなったりするほか、この成分が不足すると発育や成熟が劣ることとなる。ケイ酸の中でも、可溶性ケイ酸と呼ばれるケイ酸は、0.5N塩酸に30℃で1時間振り混ぜた時に浸出するケイ酸のことを呼び、ケイ酸を吸収する植物にとっては重要な成分となる。例えば、製鋼スラグの全ケイ酸に対する可溶性ケイ酸の割合は91〜100質量%程度(スラグ中のケイ酸はほぼ可溶性ケイ酸)である。
そこで本発明者らは、さらに検討した結果、このリン酸濃度の高いリン酸スラグを用いて、ケイ酸濃度の高いスラグと適切に混合することにより、リン酸肥料であるとともにケイ酸肥料としても有効なケイ酸リン酸肥料原料を製造可能であることも見いだした。
上記の知見をもとにした本発明は以下の通りである。
(1)CaO、MgO、SiO2、P25、酸化鉄(Fe換算)、Al23及びMnOを合計で70質量%以上含有し、MgOが10質量%以上、P25が10質量%以上、CaO/MgOが質量比で0.3以下、かつMgO/P25が質量比で0.6以上のリン酸肥料原料であって、リン含有鉱物相としてMg3(PO42が晶出していることを特徴とするリン酸肥料原料。
(2)前記酸化鉄(Fe換算)を5〜40質量%含有することを特徴とする、上記(1)に記載のリン酸肥料原料。
(3)CaO、MgO、SiO2、P25、酸化鉄(Fe換算)、Al23及びMnOを合計で70質量%以上含有し、MgOが10質量%以上、CaO/MgOが質量比で0.4〜2.2、P25が10質量%以上、かつSiO2が11質量%以上であって、リン含有鉱物相としてMg3(PO42が晶出していることを特徴とするケイ酸リン酸肥料原料。
(4)上記(1)または(2)に記載のリン酸肥料原料の製造方法であって、溶銑中のP濃度が0.5〜4質量%である溶銑に対して、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、又は水酸化マグネシウムもしくはこれらの組合せを合計で90質量%以上含有するフラックスを脱燐剤として添加して、酸化鉄源を添加する又は酸素を吹き込むもしくはこれらを両方行うことにより、1200℃〜1450℃の温度範囲で脱リン処理することを特徴とするリン酸肥料原料の製造方法。
(5)上記(3)に記載のケイ酸リン酸肥料原料の製造方法であって、上記(1)または(2)に記載のリン酸肥料原料に、CaO/SiO2が質量比で0.8〜2.9である高炉スラグ、溶銑予備処理スラグを混合することを特徴とするケイ酸リン酸肥料原料の製造方法。
本発明によれば、高P溶銑の脱リンで、脱リンスラグ中の冷却速度によらず、肥料効果の高いリン酸肥料原料を製造することができる。さらに、高炉スラグや溶銑予備処理スラグといった可溶性ケイ酸濃度が高いスラグを混合することにより、稲用等で使用できるケイ酸リン酸肥料原料も製造することができる。
製鋼工程においてリン酸肥料原料を製造する工程の一例を示す図である。 高P溶銑を脱リン後の、スラグ中のMgO,P25濃度の関係を示す図である。 スラグ中CaO/MgO比とMg3(PO42、Ca3(PO42量との関係を示す図である。 スラグ中MgO/P25比とMg3(PO42量との関係を示す図である。
本発明のリン酸肥料原料は、CaO、MgO、SiO2、P25、酸化鉄(Fe換算)、Al23及びMnOを合計で70質量%以上含有し、MgOが10質量%以上、P25が10質量%以上、CaO/MgOが質量比で0.3以下、かつMgO/P25が質量比で0.6以上のリン酸肥料原料であって、リン含有鉱物相としてMg3(PO42が晶出していることを特徴とする。さらに、酸化鉄(Fe換算)の濃度は、5〜40質量%であることが好ましい。
また、本発明のリン酸肥料原料の製造方法は、溶銑中のP濃度が0.5〜4質量%を含んだ溶銑に対して、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、又は水酸化マグネシウムもしくはこれらの組合せを合計で90質量%以上含有するフラックスを脱燐剤として添加して、酸化鉄源を添加する又は酸素を吹き込むもしくはこれらを両方行うことにより、1200℃〜1450℃の温度範囲で脱リン処理することを特徴とする。
まず、植物生育用のリン酸肥料の原料(リン酸肥料原料)として使用可能なリン酸含有スラグの製造方法について説明する。図1に、製鋼工程において、リン酸含有スラグを製造する工程の一例を示す。
図1に示すように、製鋼工程においては、高炉で製造した溶銑であって、通常はリンを0.08〜0.15質量%含有する溶銑を転炉に移送し、溶銑の上にスラグを形成し、酸素源を吹き込んで、溶銑とスラグの反応で、溶銑の脱リン処理S01を行う。
脱リン処理S01によって生成した転炉脱リンスラグ41を転炉から排出し、その後、転炉内の溶銑の上に、再度、スラグを形成し、酸素源を吹き込んで、脱炭処理S02を行う。脱炭処理S02で得られた溶鋼に2次精錬S03を施した後、連続鋳造S04で鋼片を製造する。
脱リン処理S01の後、転炉から排出される転炉脱リンスラグ41には、溶銑中のリンが酸化したリン酸とともに、多量の鉄分を含んでいる。そこで、転炉脱リンスラグ41から鉄やリン等の有価元素を回収するために、転炉脱リンスラグ41に還元・改質処理S11を施す。
還元・改質処理S11においては、転炉脱リンスラグ41を溶融し、還元剤及び改質剤として、微粉炭、Al23源、SiO2源を添加して、リンを0.5〜4質量%と多く含有する高P溶銑42を製造する。
そして、高P溶銑42に、必要に応じ脱Cr処理S12を施した後、MgO源である、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、煉瓦屑を原料として成分を調整したフラックスを添加し、酸化鉄源を添加する又は酸素を吹き込むもしくはこれらを両方行うことにより脱リン処理S13を施して、植物生育用のリン酸肥料の原料(リン酸肥料原料)として使用可能なリン酸含有スラグ50を製造する。酸化鉄源としては、鉄鉱石やスケール等が例示される。このとき、リン酸含有スラグ50にMg3(PO42が晶出するように、添加するフラックスの組成を制御する。
また、酸化鉄源を添加する又は酸素を吹き込むもしくはこれらを両方行う脱リン処理S13では、酸化鉄(Fe換算)の濃度が5質量%以上になってしまうことは避けられないが、それ以上の濃度については酸素の供給方法を調整することによって制御可能である。
なお、脱リン処理S13によって、リン含有濃度で0.1〜0.3質量%まで脱リンされた溶銑51は、高炉で生成された溶銑とともに転炉へ供給される。
本発明のリン酸肥料原料では、リン含有鉱物相としてMg3(PO42が晶出するようにCaO、MgO、SiO2、P25、酸化鉄(Fe換算)、Al23及びMnOを合計で70質量%以上含有し、MgOが10質量%以上、P25が10質量%以上、CaO/MgOが質量比で0.3以下、かつMgO/P25が質量比で0.6以上である。
また、脱リン処理S13(図1、参照)を行う際には、添加するフラックスは、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、又は水酸化マグネシウムもしくはこれらの組合せが合計で90質量%以上のものを使用する。
さらに、リン酸含有スラグ50は冷却処理S14により冷却され、粉砕処理S15において、冷却されたリン酸含有スラグ50を粉砕し、リン酸肥料として効果を向上させたリン酸肥料原料60を製造する。なお、冷却条件は特に限定されるものではないため、急冷でも徐冷でもなんでもよい。
以下、リン酸含有スラグのリン含有鉱物相からMg3(PO42の晶出を促進するため、(1)成分組成を限定する理由、(2)MgOおよびP25の濃度を限定する理由、(3)CaOとMgOとの濃度比、(4)MgOとP25との濃度比を限定する理由を説明する。また、脱リン処理を行ってリン酸含有スラグを製造する時の、フラックスの組成を限定する理由について説明する。
高P溶銑の脱リンスラグは、その脱燐処理を行った高P溶銑の組成に影響される。本発明では、溶銑中のP濃度が0.5〜4質量%を含んだ高P溶銑を対象としているが、より好適には「C濃度が3.0〜5.0質量%、Si濃度が0.6質量%以下、Mn濃度が0.3〜1.4質量%、P濃度が0.5〜4.0質量%」の溶銑である。
このような高P溶銑の脱リンスラグは、主に、CaO、MgO、SiO2、P25、酸化鉄(Fe換算)、Al23及びMnO含んでいるため、各成分の合計を70質量%以上とする。各成分の合計が70質量%未満であると、上記成分以外の成分とリン酸とが化合物を形成して、目的のリン含有鉱物相を晶出できなくなるので、上記各成分の合計は70質量%以上とする。好ましくは80質量%以上である。
ただし、酸化鉄の濃度は、試料中に酸化鉄として含まれるFeの濃度全量で表示することとし、以後、"t.Fe"と表示する。
MgOは10質量%以上で、かつP25は10質量%以上とする。本発明はリン酸肥料原料およびその製造方法であるから、P25の濃度が高い方が良い。しかし、高P溶銑の脱燐処理という特性上、適切なP25濃度の範囲が存在する。そこで、本発明ではP25濃度の下限を10質量%と規定した。図2に、1400℃にて0.5〜4%のPを含む高P溶銑を、MgOを主体とするフラックスを用いて脱リンした時のMgO濃度とP25濃度との関係を示す。スラグ中のMgOの濃度を上昇させると、P25の濃度が上昇しており、MgOが10質量%以上ではP25が10質量%以上となっているため、MgOの下限を10質量%とする。
CaOとMgOとの質量濃度の比率(以下、CaO/MgO比率)は、0.3以下にする必要がある。これは、CaOとMgOとではCaOの方がスラグ中のリン酸と化合物を形成しやすいからである。CaO/MgO比率が0.3を超えるとP25濃度によってはリン含有鉱物相として、β−Ca3(PO42が晶出し、狙いのリン含有鉱物相であるMg3(PO42相の晶出を制御することができないからである。好ましくは、0.1以下である。
図3に、1400℃にて0.5〜4質量%のPを含む高P溶銑を、MgOとCaOとを含むフラックスを用いて脱リンした時に得られたスラグの、CaO/MgO比率とCa3(PO42とMg3(PO42との存在比を示す。CaO/MgO比率が0.3以下である場合は、スラグ中のCa3(PO42が存在せず、本発明の効果を十分に享受することができる目安となる20質量%以上のMg3(PO42が存在していることが分かる。一方で、CaO/MgO比率が0.3を超えるとβ−Ca3(PO42が晶出することがわかる。このため、CaO/MgO比率を0.3以下とする。好ましくは、0.1以下である。
MgOとP25との質量濃度の比率(以下、MgO/P25比率)は、0.6以上である。溶銑中のP濃度が0.5%〜4%を含んだ溶銑に対して、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、又は水酸化マグネシウムもしくはこれらの組合せの合計が90%以上のフラックスを脱燐剤として添加し、酸化鉄源を添加する又は酸素を吹き込むもしくはこれらを両方行うことによって、1200℃〜1450℃の温度範囲で脱リン処理することにより、CaO、MgO、SiO2、P25、酸化鉄(Fe換算)Al23及びMnOを合計で70質量%以上含有し、MgOが10質量%以上、P25が10質量%以上、CaO/MgO比率が0.3以下とする本発明においては、図4に示すように、MgO/P25比率は、0.6程度が下限である。MgO/P25比率という指標は、小さいほどMgOによる脱燐効率が高い(MgOによるP25固定の比率が高い)ことを意味する。CaO/MgO比率を0.3以下と制限した条件下では、P25はMgOと反応する比率が高くなると考えられるが、MgO/P25の比が0.6程度までが、本発明におけるMgOのP25との結びつきの限界と分かった。
一方、溶銑中P濃度が低かったり、処理温度が高かったり、脱リンに不利な条件で脱リン処理した場合には、MgO/P25比率が大きくなる。スラグ中にMg3(PO42が20質量%程度以上という条件が、本発明の効果を十分に享受することができる目安となることから、MgO/P25比率は1.6以下であることが好ましい。
また、スラグ中のt.Fe濃度は5〜40質量%にすることが好ましい。製鋼スラグを原料とし、さらに溶銑を脱リンすることにより製造することを想定しているため、不可避的にリン酸スラグ中にはt.Feを含む。t.Feを少なくする余計なコストを発生させないために、t.Fe濃度は5質量%以上が好ましい。一方で、t.Fe濃度が40質量%を超えると、主成分が酸化鉄となり、商業的なリン酸肥料としての価値が小さくなる。そのため、スラグ中のt.Fe濃度は40質量%以下とすることが好ましい。
次に、脱リン処理を行ってリン酸含有スラグを製造する時、添加するフラックス中の組成を限定する理由について説明する。
使用するフラックスの主成分は、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、又は炭酸マグネシウムもしくはこれらの組合せとする。そして、使用するフラックス全体中において、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、又は炭酸マグネシウムもしくはこれらの組合せの合計は90質量%以上にする必要がある。これは、高P溶銑の脱リンによりリン含有鉱物相としてMg3(PO42を生成させるには、フラックスとしてMgOが必要だからである。水酸化マグネシウムや炭酸マグネシウムは1200〜1400℃の高温で熱せられるとMgOとなるため、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムのフラックスは高温で全てMgOとなり、脱リン剤として有効に働く。但し、持ち越しスラグにCaOが含まれていることから、脱燐剤として競合するCaOは極力少なくする必要がある。そのため、フラックス中において、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、又は炭酸マグネシウムもしくはこれらの組合せの合計は90質量%以上にする必要がある。
リン酸肥料原料を製造する際には、上記組成(CaO、MgO、SiO2、P25、酸化鉄(Fe換算)、Al23及びMnOを合計で70質量%以上含有し、MgOが10質量%以上、P25が10質量%以上、CaO/MgOが質量比で0.3以下、かつMgO/P25が質量比で0.6以上)に調整したスラグを、1200〜1450℃で処理する必要がある。
溶融スラグの温度が1200℃未満であると、スラグが完全に溶融しない場合があり、その場合、リン酸肥料としての肥料効果が発現しない。溶融スラグの温度を、1450℃を超える温度とすることは、脱リン反応平衡から脱リンが進み難くなって、スラグ中のリン酸濃度が低下してしまう他、加熱コストが嵩むし、処理容器の耐火物の損耗も激しくなるので不適当である。
次に、リン酸肥料の効果をより効率的に得るために、リン酸肥料原料は150μm以下に粉砕されたものとすることが好ましい。150μmを超える粒径のものが含まれていると、大きい粒径のものは比表面積が小さくなり、全体的にP25による可溶性が低下してしまう。リン酸含有スラグを粉砕後、150μmの標準篩で篩い分けすることが好ましい。
以上のように本発明のリン酸肥料原料では、特許文献5〜7に記載の固溶体相に比べて、P25の範囲が緩和されており、さらには冷却条件に拘束されないため、製造条件の自由度を高めることができる。
次に、以上のような手順で製造されたリン酸肥料原料を用いてケイ酸肥料としての効果も備えるケイ酸リン酸肥料原料を製造する方法について、図1を参照しながら説明する。
次の混合処理S16では、以上の手順で製造されたリン酸肥料原料にSiO2濃度が高いスラグ(以下、ケイ酸スラグと称する場合がある。)を混合し、ケイ酸リン酸肥料原料70を製造する。
本発明のケイ酸リン酸肥料原料は、CaO、MgO、SiO2、P25、酸化鉄(Fe換算)、Al23及びMnOを合計で70質量%以上含有し、MgOが10質量%以上、CaO/MgOが質量比で0.4〜2.2、P25が10質量%以上、かつSiO2が11質量%以上であって、リン含有鉱物相としてMg3(PO42が晶出していることを特徴とする。
また、本発明のケイ酸リン酸肥料原料の製造方法は、上述したリン酸肥料原料に、CaO/SiO2が質量比で0.8〜2.9である高炉スラグもしくは溶銑予備処理スラグを混合することを特徴とする。
リン酸肥料としての有効性を保ちつつ、ケイ酸肥料としての有効性をも兼ね備えるためには、まず、ケイ酸リン酸肥料原料がCaO、MgO、SiO2、P25、酸化鉄(Fe換算)、Al23及びMnOを合計で70質量%以上含有し、MgOが10質量%以上、かつP25が10質量%以上であって、リン含有鉱物相としてMg3(PO42が晶出していることが、基礎的要件として必要である。
リン酸肥料原料としての要件であるCaO/MgOが質量比で0.3以下という要件は、スラグ中のCa3(PO42が存在せず、本発明の効果を十分に享受することができる目安となる20質量%以上のMg3(PO42が存在していることから規定されているものであって、リン含有鉱物相としてMg3(PO42が晶出していることと実質的に同義である。リン酸肥料原料にSiO2濃度が高いスラグを混合することによりCaO/MgO比率が変化するが、すでにリン含有鉱物相としてMg3(PO42が晶出しているため、リン酸肥料としての有効性を保つことができる。つまり、リン酸肥料原料は固形物であるために、SiO2濃度が高いスラグを混合しても「リン含有鉱物相としてMg3(PO42が晶出していること」という特徴は失われない。したがって、ケイ酸リン酸肥料原料では、CaO/MgOが質量比で0.3以下という要件は当てはまらない。
また、リン酸肥料原料としての要件であるMgO/P25が質量比で0.6以上という要件は、MgO/P25の比が0.6程度までが、本発明におけるMgOのP25との結びつきの限界ということから規定されたものであって、この比自体がリン含有鉱物相としてMg3(PO42が晶出していることに関わっているわけではない。リン酸肥料原料にSiO2濃度が高いスラグを混合することによりMgO/P25比率も変化するため、ケイ酸リン酸肥料原料では、MgO/P25が質量比で0.6以上という要件も当てはまらない。
したがって、上記した基礎的要件を満たしていれば、本発明のケイ酸リン酸肥料原料はリン酸肥料原料としての効用を維持しているといえる。これらの基礎的要件における各成分の質量%はリン酸肥料原料と同様の条件であるが、ケイ酸スラグ中にも近い量が含まれているため、ケイ酸スラグをリン酸肥料原料に混合した後にも、リン酸肥料原料内の質量%と比べて大きな差を生じないようにすることができるからである。
さらに、ケイ酸肥料原料としての有効性を備えるためには、目安となる条件は可溶性ケイ酸≧10質量%である。可溶性ケイ酸が10質量%以上という条件を設定する理由としては、稲の葉身などの主成分はケイ素であるため、ケイ酸は非常に重要な元素である。そのため、可溶性ケイ酸が少ないと上述の通り稲に害が及ぶこととなる。可溶性ケイ酸とは0.5N塩酸に30℃で1時間振り混ぜた時に浸出するケイ酸のことを呼び、ケイ酸を吸収する植物にとっては重要な成分となる。そのため、肥料中の可溶性ケイ酸は多い方が良い。そして、ケイ酸肥料として商業的に登録するためには、最低でも可溶性ケイ酸は10質量%以上が必要である。例えば、製鋼スラグを原料としたときのケイ酸肥料の肥料規格である鉱滓ケイ酸肥料では、可溶性ケイ酸濃度で10質量%以上が必要となる。高炉スラグもしくは溶銑予備処理スラグのケイ酸のうち、91質量%以上が可溶性ケイ酸となるため、ケイ酸(SiO2)濃度が11質量%以上であればよい。
また、リン含有鉱物相としてMg3(PO42が晶出している上に、リン酸肥料原料として必要なP25が10質量%以上であること、ケイ酸肥料原料として必要なSiO2が11質量%以上であるという基本的な要件を満たしておけば、混合物中にCaO成分が増加しても、リン酸肥料としての有効性を保ちつつ、ケイ酸肥料としての有効性をも兼ね備えることができる。
詳細は後述するが、SiO2が11質量%以上となるように、CaOとSiO2との質量比(以下、CaO/SiO2比率)が0.8〜2.9であるスラグを前述のリン酸肥料原料に混合すると、混合物中にCaO成分が増加するため、CaO/MgO比率が変化する。スラグ中のCaO/SiO2比率が質量比で0.8〜2.9である理由については後述するが、CaO/SiO2比率が質量比で0.8〜2.9の範囲のスラグを用いた場合、通常はスラグをリン酸肥料原料の30〜50%混合することになるので、混合後のケイ酸リン酸肥料原料におけるCaO/MgO比率は質量比で0.4〜2.2とする。
次に、以上のようなケイ酸リン酸肥料原料を製造する詳細な方法について説明する。
リン酸肥料としての有効性を保ちつつ、ケイ酸肥料としての有効性をも兼ね備えるためには、上記リン酸肥料原料に、SiO2濃度が高いスラグを混合すればよい。SiO2濃度が高いスラグとしては、鉱滓ケイ酸質肥料として使用されている、高炉スラグ、溶銑予備処理スラグが適している。溶銑予備処理スラグには、溶銑予備脱珪、溶銑予備脱燐、溶銑予備脱硫により生成されたスラグが含まれるが、本発明に用いる高炉スラグ、溶銑予備処理スラグとしては、CaOとSiO2との質量比(以下、CaO/SiO2比率)が0.8〜2.9であるものを選択する。具体的には、高炉スラグ、溶銑脱珪スラグまたは溶銑脱燐スラグの大部分が該当するので、それらの中からCaO/SiO2比率が低いものを選別して用いればよい。より具体的には、表1に示すものが例示される。表1において、t.Fe濃度が低いものは高炉スラグであり、それ以外は溶銑予備処理スラグである。
Figure 0006988532
また、混合するスラグのCaO/SiO2比率を質量比で0.8〜2.9の範囲にする理由は以下のとおりである。CaO/SiO2比率が質量比で2.9を超えるとスラグ中のSiO2濃度が低くなり、混合後のケイ酸濃度を11質量%以上に確保することができない。一方で、CaO/SiO2比率が質量比で0.8未満である場合は、ネットワークフォーマーであるSiO2の量が多くなってしまい、可溶性ケイ酸を確保できなくなる。そのため、混合するスラグのCaO/SiO2比率は質量比で0.8〜2.9の範囲にする必要がある。
このような高炉スラグや溶銑予備処理スラグといったケイ酸スラグを、本発明に係るリン酸肥料原料に混合して、全体でCaO、MgO、SiO2、P25、酸化鉄(Fe換算)、Al23及びMnOを合計で70質量%以上含有し、MgOが10質量%以上、P25が10質量%以上、SiO2が11質量%以上で、CaO/MgOが質量比で0.4〜2.2であるケイ酸リン酸肥料原料を製造する。
リン酸肥料原料と高炉スラグ、溶銑予備処理スラグ等のケイ酸スラグとの混合比率は、それぞれのSiO2濃度を把握した上で、物質バランスに基づき計算して決めることができる。ここで、混合比率x=(ケイ酸スラグの質量(g))/(ケイ酸スラグの質量(g)+リン酸肥料原料の質量(g))と定義すると、混合比率xの最大値x1は、混合物中のP25が10質量%となる値であり、混合比率xの最小値x2は、混合物中のSiO2が11質量%となる値である。
まず、ケイ酸リン酸肥料原料を製造するためのリン酸肥料原料を選択し、その選択したリン酸肥料原料のP25濃度をa、SiO2濃度をbとする。この場合、混合比率xの最大値x1は、x1=(a−10)/aと計算できる。なお、ケイ酸スラグにもP25が含まれている場合もあるが、リン酸肥料原料に比べて少量であるため、その量を無視した計算式としている。また、混合比率xの最大値x1が大きいほど、混合するケイ酸スラグの選択肢が増えるとともに、P25濃度とSiO2濃度との両方が高いケイ酸リン酸肥料原料を製造できることから、混合するリン酸肥料原料として、なるべくP25濃度の高いリン酸肥料原料を選択することが好ましい。
一方、ケイ酸スラグ中のSiO2濃度が低いと、混合物中のP25が10質量%となる混合比率の最大値x1で混合しても、混合物中のSiO2濃度が11質量%以上とならない可能性がある。そこで、混合物中のSiO2濃度が11質量%以上となるのに必要なケイ酸スラグ中のSiO2濃度の下限値を計算する必要がある。ケイ酸スラグ中のSiO2濃度の下限値をcとした場合、ケイ酸スラグ中のSiO2濃度の下限値cは、c=b+(11−b)/x1と計算できる。
以上のようにケイ酸スラグ中のSiO2濃度の下限値cが決まるため、混合するケイ酸スラグとして、SiO2がc質量%以上で、かつCaO/SiO2が質量比で0.8〜2.9のケイ酸スラグを選択することができる。そして、選択したケイ酸スラグのSiO2濃度をdとした場合、混合比率xの最小値x2は、x2=(11−b)/(d−b)と計算できる。つまり、x2以上x1以下の混合比率でリン酸肥料原料とケイ酸スラグとを混合することにより、本発明のケイ酸リン酸肥料原料を製造することができる。このようにリン酸肥料原料とケイ酸スラグとを適切に選択すると、通常は混合比率が30〜50%の範囲になる場合が多く、混合後のCaO/MgO比率は質量比で0.4〜2.2の範囲に収まる。
以上、リン酸肥料原料、ケイ酸リン酸肥料原料及びこれらの製造方法について説明したが、本発明は、上記説明に限定されることはなく、発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
なお、図1に示すリン酸含有スラグを製造する工程においては、転炉脱リンスラグから得た高P溶銑を脱リン処理してリン酸含有スラグを製造すると説明したが、リン酸含有スラグの製造は、この説明に限定されることはない。
例えば、高炉で生成した溶銑にFe−Pを追加装入して高P溶銑を製造しそれを脱リン処理することで製造してもよい。また、生石灰、SiO2、P25、酸化鉄などを出発原料として、上記組成範囲に入るように混合した後、溶融して、リン酸含有スラグを製造してもよい。
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
(第1の実験)
実施例1〜9では、溶銑中のP濃度が0.5〜4質量%である溶銑に対して、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、又は炭酸マグネシウムもしくはこれらの組合せを合計で90質量%以上含むフラックスを脱燐剤として添加し、酸素を鉄鉱石の添加もしくは/および酸素を吹き込むことにより、1200℃〜1450℃の温度範囲で脱リン処理することで製造した。これらの実施例では、上記範囲内でサンプルごとに条件を変えた。
その際に生成したスラグをジョークラッシャーにて粉砕し、150μm以下のものが質量比率で80%以上になるようにした。そして、基本的には150μmの標準篩で篩い分けした。但し、一部は篩い分けしなかった。これらのサンプルにおいて、スラグ中のリン含有鉱物相、可溶性リン酸濃度を評価した。また、比較例1〜4では、これらの条件の少なくとも1つが外れた条件で実施例の時と同様にサンプルを生成し、評価を行った。結果を表2に示す。
可溶性リン酸濃度が10質量%以上のものを◎、5以上10質量%未満のものを○、5質量%未満であるものを×、として評価した。
ここで、可溶性リン酸とは、クエン酸アンモニウム溶液に溶解するリン酸分を指し、肥料効果のひとつの指標である。今までの検討の結果、可溶性リン酸は植物の成長と非常に良い相関が得られることが分かっていることから、肥料効果を判断する指標として、可溶性リン酸濃度を用いた。
Figure 0006988532
CaO、MgO、SiO2、P25、酸化鉄(Fe換算)、Al23及びMnOを合計で70質量%以上含有し、MgOが10質量%以上、P25が10質量%以上、CaO/MgOが質量比で0.3以下、かつMgO/P25が質量比で0.6以上のリン含有肥料原料では、リン含有鉱物相としてMg3(PO42が晶出し、肥料効果の指標である可溶性リン酸濃度が高いことが確認できた。
比較例1〜4は、高P溶銑の脱リン時に添加するフラックスのCaO/MgO比率が0.3を超えるものを使用しており、脱リンスラグのCaO/MgO比率が0.3を超えていた。その結果、リン含有鉱物相がβ−Ca3(PO42となっており、その結果肥料効果が格段に下がっていた。
実施例9では、実施例2と同じ試料でふるい分けせずに可溶性リン酸濃度を測定した。その結果、可溶性リン酸濃度が5質量%以上であった。可溶性リン酸濃度が10質量%未満であったことからふるい分けしたサンプルほどではないが、肥料効果が得られたことを確認できた。
(第2の実験)
ケイ酸リン酸肥料は、表2の実施例1〜9の中でリン酸濃度が20質量%以上の実施例2、7を選択した。表3には、これらの実施例2、7の各成分および可溶性ケイ酸の濃度を示す。また、製鉄工程の中で発生するスラグである高炉スラグ、溶銑予備処理スラグの中で、CaO/SiO2が質量比で0.8〜2.9である表1に示したものを選択し、表4の混合比率で混合することによりケイ酸リン酸肥料を製造した。表4において、可溶性ケイ酸濃度が10質量%以上で、かつ可溶性リン酸濃度が5質量%以上であるものを○と評価した。
Figure 0006988532
Figure 0006988532
表4に示すように、実施例10〜25のすべてにおいて、可溶性リン酸濃度が5質量%以上で、かつ可溶性ケイ酸濃度が10質量%以上となった。
本発明によれば、P濃度及びMgO濃度が高く、リン酸肥料として肥料効果の高いリン酸肥料原料とその製造方法を提供することができる。よって、本発明は、鉄鋼産業及び植物育成産業において利用可能性が高いものである。

Claims (5)

  1. CaO、MgO、SiO2、P25、酸化鉄(Fe換算)、Al23及びMnOを合計で70質量%以上含有し、MgOが10質量%以上、P25が10質量%以上、CaO/MgOが質量比で0.3以下、かつMgO/P25が質量比で0.6以上のリン酸肥料原料であって、リン含有鉱物相としてMg3(PO42が晶出していることを特徴とするリン酸肥料原料。
  2. 前記酸化鉄(Fe換算)を5〜40質量%含有することを特徴とする、請求項1に記載のリン酸肥料原料。
  3. CaO、MgO、SiO2、P25、酸化鉄(Fe換算)、Al23及びMnOを合計で70質量%以上含有し、MgOが10質量%以上、CaO/MgOが質量比で0.4〜2.2、P25が10質量%以上、かつSiO2が11質量%以上であって、リン含有鉱物相としてMg3(PO42が晶出していることを特徴とするケイ酸リン酸肥料原料。
  4. 請求項1または2に記載のリン酸肥料原料の製造方法であって、
    溶銑中のP濃度が0.5〜4質量%である溶銑に対して、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、又は水酸化マグネシウムもしくはこれらの組合せを合計で90質量%以上含有するフラックスを脱燐剤として添加して、酸化鉄源を添加する又は酸素を吹き込むもしくはこれらを両方行うことにより、1200℃〜1450℃の温度範囲で脱リン処理することを特徴とするリン酸肥料原料の製造方法。
  5. 請求項3に記載のケイ酸リン酸肥料原料の製造方法であって、請求項1または2に記載のリン酸肥料原料に、CaO/SiO2が質量比で0.8〜2.9である高炉スラグもしくは溶銑予備処理スラグを混合することを特徴とするケイ酸リン酸肥料原料の製造方法。
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