JP6776892B2 - リン酸肥料原料及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、リン酸肥料原料及びその製造方法に関するものである。
我が国は降水量が多いので、土壌からミネラル分が流出して、土壌が酸性化し易い。そのため、植物を生育させる際に使用するリン酸肥料には土壌中のリン酸濃度だけでなく、土壌pHも同時に増加させる塩基性リン酸肥料が広く使用されている。現在、塩基性リン酸肥料として、アルカリ分を多く含む溶成リン肥が利用されている。
現在、高炉から出銑された溶銑は不純物として約0.1質量%のリンを含んでいるが、リンは、製鋼工程でフラックスを添加し酸素を吹き込むことで酸化除去されて、製鋼スラグとして排出されている。
特許文献1に示すように、製鋼スラグのリン酸濃度は1〜4質量%程度であり、リン酸肥料として十分な濃度ではないものの、製鋼スラグ中には、フラックス由来のCaO分や溶銑から酸化除去されたSiO2分が多量に含まれているので、ケイ酸リン酸肥料として利用されている。
しかし、現在でもリン酸肥料の原料であるリン鉱石の全量を輸入に依存している我が国では、製鋼スラグ中のリン酸分は有用なリン酸肥料資源として考えられており、特許文献2〜4に示すように、製鋼スラグ中のリン酸分を濃縮して高リン酸スラグを製造し、製鋼スラグからリン酸肥料を製造することが試みられている。
ところで、上記リン酸肥料を肥料として使用する際において肥料効果を高めるには、リン酸濃度だけではなく、リンの結晶状態や鉱物相を制御する必要がある。例えば、上記溶成リン肥は、燐鉱石と酸化マグネシウムを融解し混合して、ジェット水流で急冷して製造した肥料であり、リン含有鉱物相を、非晶質、即ち、ガラスにすることにより、肥料効果を高めている。なお、リン含有鉱物相とは、肥料中各鉱物相の中でリンが濃化した相を指すこととする。
特許文献5〜7には、リン含有鉱物相であるCa3(PO42−Ca2SiO4固溶体相、5CaO・SiO2・P25相、又は、7CaO・2SiO2・P25相(以下、「固溶体相」)、Ca3(PO42相(以下、「C3P相」)及びガラス相の中で、リン酸肥料としての肥料効果が最も高い相が固溶体相であるとし、その固溶体相が晶出するスラグの組成条件やその製造方法が開示されている。
特許第5105322号公報 特開平11−158526号公報 特開2009−132544号公報 特許第5594183号公報 特開2015−189591号公報 特開2016−74940号公報 特開2016−88757号公報
実際に肥料を使用する際には、土壌に複数の肥料成分を同時に施肥することが一般的であり、施肥すべき成分がひとつの肥料に含まれていない場合には、複数の肥料を施肥する必要がある。複数の肥料を同時に用いる場合では、必要な肥料を揃えるのに多くの手間およびコストがかかってしまうため、近年では肥料に複数の肥料の効果を併せ持つニーズが高まっている。このため、リン酸肥料に他の肥料成分を加えたり、他の肥料にリン酸肥料の効果を具備させたりすることが望まれている。例えば、リン、カリウム、窒素を含んだオールインワン肥料が市販されている。また、スラグを原料とする肥料の場合は、製鉄プロセスで不可避的に混入するマンガンを有効利用できればマンガン肥料の効果を含んだリン酸肥料を製造することができる。
本発明は前述の問題点を鑑み、リン酸肥料とマンガン肥料の効果を併せ持ったリン酸肥料原料及びその製造方法を提供することを目的とする。
マンガン肥料としての効果を得るためには、鉱物相がMnO2の場合は不溶性となるため、く溶性の高いMnOにすることにより、溶性マンガン濃度を高める必要がある。ここで、く溶性の成分とは、植物が吸収利用できる肥料成分の保証形態の一つであり、現在、肥料公定規格の主成分に指定されている。く溶性の成分は2%のクエン酸水溶液に可溶の成分をいい、水溶性と比較して一般的にやや緩効性と考えられている。つまり、く溶性は、マンガン肥料としての指標を表す。
本発明者らは、脱リン処理などによって不可避的にMnOがスラグ中に含まれることに着目し、MnO濃度および粒径を制御することによって、リン酸肥料のみならずマンガン肥料としての効果がさらに得られることを見出した。
本発明は以下の通りである。
(1)CaO、SiO2、P25、酸化鉄(Fe換算)及びMnOを合計で70質量%以上含有し、CaOとSiO2の質量濃度比で表示する塩基度αが1.5以上3.0以下であり、P25を8質量%以上(−4α2+23α−4)質量%以下、酸化鉄をFe換算で5質量%以上25質量%以下、MnOを10質量%以上20質量%以下含有するリン酸肥料原料であって、該リン酸肥料原料中、Ca3(PO42−Ca2SiO4固溶体、5CaO・SiO2・P25、及び、7CaO・2SiO2・P25の1種又は2種以上の存在濃度の合計が28質量%以上であり、粒径が150μm以下であることを特徴とするリン酸肥料原料。
(2)上記(1)に記載のリン酸肥料原料の製造方法であって、
P濃度が0.5〜4質量%の溶銑に対して、フラックスおよびMnO源を添加して、CaO、SiO2、P25、酸化鉄(Fe換算)及びMnOを合計で70質量%以上含有し、CaOとSiO2の質量濃度比で表示する塩基度αが1.5以上3.0以下であり、P25を8質量%以上(−4α2+23α−4)質量%以下、酸化鉄をFe換算で5質量%以上25質量%以下、MnOを10質量%以上20質量%以下含有する、1200〜1450℃の溶融スラグを生成する工程と、
前記1200〜1450℃の溶融スラグを、600℃に到達するまでの間の温度降下量を600℃に到達するまでの時間で除算した数値で、10℃/min以上になるように制御して冷却する工程と、
前記冷却されたスラグを150μm以下に粉砕する工程と、
を有することを特徴とするリン酸肥料原料の製造方法。
本発明によれば、リン酸肥料とマンガン肥料の効果を併せ持ったリン酸肥料原料及びその製造方法を提供することができる。
製鋼工程においてリン酸肥料原料を製造する工程の一例を示す図である。
本発明のリン酸肥料原料は、CaO、SiO2、P25、酸化鉄(Fe換算)及びMnOを合計で70質量%以上含有し、CaOとSiO2の質量濃度比で表示する塩基度αが1.5以上3.0以下であり、P25を8質量%以上(−4α2+23α−4)質量%以下、酸化鉄をFe換算で5質量%以上25質量%以下、MnOを10質量%以上20質量%以下含有するリン酸肥料原料であって、該リン酸肥料原料中、Ca3(PO42−Ca2SiO4固溶体、5CaO・SiO2・P25、及び、7CaO・2SiO2・P25の1種又は2種以上の存在濃度の合計が28質量%以上であり、粒径が150μm以下であることを特徴とする。
本発明のリン酸肥料原料の製造方法は、P濃度が0.5〜4質量%の溶銑に対して、フラックスおよびMnO源を添加して、CaO、SiO2、P25、酸化鉄(Fe換算)及びMnOを合計で70質量%以上含有し、CaOとSiO2の質量濃度比で表示する塩基度αが1.5以上3.0以下であり、P25を8質量%以上(−4α2+23α−4)質量%以下、酸化鉄をFe換算で5質量%以上25質量%以下、MnOを10質量%以上20質量%以下含有する、1200〜1450℃の溶融スラグを生成する工程と、前記1200〜1450℃の溶融スラグを、600℃に到達するまでの間の温度降下量を600℃に到達するまでの時間で除算した数値で、10℃/min以上になるように制御して冷却する工程と、前記冷却されたスラグを150μm以下に粉砕する工程と、を有することを特徴とする。
特許文献6及び7に開示されているように、固溶体相を析出させるとリン酸肥料としての効果が最も高くなることが知られている。つまり、Ca3(PO42−Ca2SiO4固溶体、5CaO・SiO2・P25、及び、7CaO・2SiO2・P25(以下、3つの鉱物相をまとめて「固溶体相」ということがある。)の1種又は2種以上の存在濃度の合計が28質量%以上であると、リン酸肥料としての効果が最も高くなることが知られている。
そこで、本発明では、リン酸肥料としての効果を得るために、このような割合で固溶体相を析出させることを前提とする。また、マンガン肥料としての効果を得るために、本発明では、MnO濃度及び粒径を制御するようにしている。
まず、植物生育用のリン酸肥料の原料(リン酸肥料原料)として使用可能なリン酸含有スラグの製造方法について説明する。図1に、製鋼工程において、リン酸含有スラグを製造する工程の一例を示す。
図1に示すように、製鋼工程においては、高炉で製造した溶銑であって、通常はリンを0.08〜0.15質量%含有する溶銑を転炉に移送し、溶銑の上にスラグを形成し、酸素源を吹き込んで、溶銑とスラグの反応で、溶銑の脱リン処理S01を行う。
脱リン処理S01によって生成した転炉脱リンスラグ41を転炉から排出し、その後、転炉内の溶銑の上に、再度、スラグを形成し、酸素源を吹き込んで、脱炭処理S02を行う。脱炭処理S02で得られた溶鋼に2次精錬S03を施した後、連続鋳造S04で鋼片を製造する。
脱リン処理S01の後、転炉から排出される転炉脱リンスラグ41には、溶銑中のリンが酸化したリン酸とともに、多量の鉄分を含んでいる。そこで、転炉脱リンスラグ41から鉄やリン等の有価元素を回収するために、転炉脱リンスラグ41に還元・改質処理S11を施す。
還元・改質処理S11においては、転炉脱リンスラグ41を溶融し、還元剤及び改質剤として、微粉炭、Al23源、SiO2源を添加して、リンを0.5〜4質量%と多く含有する高P溶銑42を製造する。
そして、高P溶銑42に、必要に応じ脱Cr処理S12を施した後、CaO源やSiO2源として、生石灰や硅砂、脱炭処理S02で得られた脱炭スラグ等を、また、MnO源としてMnO2やマンガン鉱石などを添加し、酸素を吹き込む脱リン処理S13を施して、植物生育用のリン酸肥料の原料(リン酸肥料原料)として使用可能なリン酸含有スラグ50を製造する。このとき、リン酸含有スラグ50に固溶体相が晶出するように成分組成を制御して、リン酸含有スラグ中の可溶性リン酸の量を増大する必要がある。
なお、脱リン処理S13によって、リン含有濃度で0.1〜0.3質量%まで脱リンされた溶銑51は、高炉で生成された溶銑とともに転炉へ供給される。
その後、冷却処理S14において、冷却速度を制御して、リン酸含有スラグ50中の可溶性リン酸の量を増大する必要がある。
本発明のリン酸肥料原料では、CaO、SiO2、P25、酸化鉄(Fe換算)及びMnOの合計が70質量%以上で、CaOとSiO2の質量濃度比で表示する塩基度αが1.5以上3.0以下で、P25が8質量%以上(−4α2+23α−4)質量%以下、酸化鉄がFe換算で5質量%以上25質量%以下、MnOが10質量%以上20質量%以下であり、さらに、Ca3(PO42−Ca2SiO4固溶体、5CaO・SiO2・P25、及び、7CaO・2SiO2・P25の1種又は2種以上の存在濃度の合計が28質量%以上である。
また、脱リン処理S13(図1、参照)を行う際には、その脱リン処理S13終了時の処理容器内の溶融スラグの塩基度αが1.5以上3.0以下で、P25が8質量%以上(−4α2+23α−4)質量%以下、酸化鉄がFe換算で5質量%以上25質量%以下になるように、かつMnOが10質量%以上20質量%以下になるように脱リン処理条件を調整する。
その上で、上記のように調整した溶融スラグを、その処理終了時の温度である1200〜1450℃から600℃に到達するまでの間の温度降下量を、600℃に到達するまでの時間で除算した数値(以下、「600℃までの冷却速度」ということがある。)で、10℃/min以上になるように制御して、好ましくは30℃/min以上になるように制御して冷却する。
さらに、粉砕処理S15において、冷却されたリン酸肥料原料を150μm以下に粉砕することによって、マンガン肥料としての効果を向上させたリン酸肥料原料60を製造する。
以下、リン酸含有スラグのリン含有鉱物相から固溶体相の晶出を促進するため、成分組成を限定する理由、塩基度、P25濃度、酸化鉄濃度およびMnO濃度を限定する理由、また、脱リン処理を行ってリン酸含有スラグを製造する時、塩基度、リン酸濃度、冷却速度及び粒径を限定する理由について説明する。
リン酸肥料原料は、主成分として、CaO、SiO2、P25、酸化鉄及びMnOを含んでおり、各成分の合計を70質量%以上とする。各成分の合計が70質量%未満であると、上記成分以外の成分とリン酸が化合物を形成して、リン酸含有鉱物相の生成を制御することができなくなるので、上記各成分の合計は70質量%以上とする。好ましくは80質量%以上である。
ただし、酸化鉄の濃度は、試料中のFe濃度全量で表示することとし、以後、"t.Fe"と表示する。
塩基度αを1.5以上3.0以下にする必要がある。
塩基度αが1.5より小さいか、又は、3.0より大きい場合は、C3P相が晶出して肥料効果が低下する。それ故、脱リン処理時には、添加する生石灰やSiO2などのフラックスの量を調整し、スラグの塩基度αを1.5以上3.0以下にする。
一方、塩基度αが1.5〜3.0の範囲内でも、リン酸濃度がある程度以上に増加すると、C3P相が晶出し始める。そのC3P相が晶出し始めるリン酸濃度は、塩基度αが増加すると二次曲線的に増加することが実験的に確認されており(特許文献6及び7参照)、二次曲線的に増加するリン酸濃度の上限を(−4α2+23α−4)で近似した。
即ち、塩基度を一定にして、リン酸を0質量%から増加させていくと、8質量%の条件から固溶体相が晶出するようになり、リン酸が(−4α2+23α−4)質量%以下の領域では、リン含有鉱物相は固溶体相であるが、(−4α2+23α−4)質量%を超えると、リン含有鉱物相はC3P相となる。
そこで、リン酸肥料原料のリン含有鉱物相がC3P相であると肥料効果が落ちるため、リン酸は8質量%以上(−4α2+23α−4)質量%以下とした。そのため、脱リン処理時、スラグに添加するフラックスの量を調整して、リン酸を8質量%以上(−4α2+23α−4)質量%以下にする必要がある。
リン酸が8質量%未満であると、リン酸濃度が低い上に固溶体相でなくC3P相である。その結果、リン酸肥料の使用量が多大になり、肥料としての商品価値が低下する。
t.Feは、5質量%以上25質量%とする。
酸化鉄は、FeOとして存在すると考えられており、塩基性酸化物であって、スラグの結晶化を促進する成分である。それ故、結晶相である固溶体相を晶出させるためには5質量%以上の酸化鉄が必要である。また、t.Feが25質量%を超えるとC3P相が晶出してしまう。
したがって、固溶体相を晶出させるためには、脱リン処理時に吹き込む酸素量を調整して、t.Feを5質量%以上25質量%以下にする必要がある。好ましくは、後述するようにt.Feが10質量%以下である。
MnOは、10質量%以上20質量%以下とする。
MnOが10質量%未満では、マンガン肥料としての効果が得られない。また、MnOが20質量%を超えると、相対的にリン酸鉱物相の割合が小さくなるとともに、C3P相が析出され、固溶体相の比率が極端に小さくなってしまう。この場合、スラグ中ではMnOが存在する相と固溶体相は別に存在するため、固溶体相の存在比率が直接MnOの溶出性に影響を与えることはなく、マンガン肥料としての効果は得られるが、固溶体相の比率の低下により、リン酸肥料としての効果が小さくなってしまう。
以上のことから、脱リン処理S13で、MnO2またはマンガン鉱石を添加してMnOが10質量%以上20質量%以下となるように調整する必要がある。
リン酸肥料原料を製造する際には、上記組成に調整した1200〜1450℃の溶融スラグを、600℃までの冷却速度が10℃/min以上になるように制御して冷却する必要がある。
溶融スラグの温度が1200℃未満であると、スラグが完全に溶融しない場合があり、その場合、リン酸肥料としての肥料効果が発現しない。溶融スラグの温度を、1450℃を超える温度とすることは、脱リン反応平衡から脱リンが進み難くなって、スラグ中のリン酸濃度が低下してしまう他、加熱コストが嵩むし、処理容器の耐火物の損耗も激しくなるので不適当である。
溶融スラグの塩基度、リン酸濃度、t.Fe濃度が上記範囲内にあるとしても、必ずしもC3P相の晶出を抑制できるわけではない。C3P相の晶出を抑制するためには、溶融スラグを冷却する冷却速度も重要な因子となる。
固溶体相の存在濃度を28質量%以上にするには、水冷や溶融スラグを鉄板の板に流し込んで急冷する方法などを用いて、600℃に到達するまでの間、10℃/min以上になるように制御して冷却する必要がある。好ましくは30℃/min以上である。
次に、マンガン肥料としての効果を得るために、冷却されたスラグを150μm以下に粉砕する必要がある。150μmを超える粒径のものが含まれていると、大きい粒径のものは比表面積が小さくなり、全体的にMnOによるく溶性が低下してしまう。したがって、粒径は150μm以下とする。
以上、リン酸含有スラグの製造方法及びリン酸含有スラグについて説明したが、本発明は、上記説明に限定されることはなく、発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
なお、図1に示すリン酸含有スラグを製造する工程においては、転炉脱リンスラグから得た高リン溶銑を脱リン処理してリン酸含有スラグを製造すると説明したが、リン酸含有スラグを製造は、この説明に限定されることはない。
例えば、高炉で生成した溶銑を脱リン処理することで製造してもよい。また、生石灰、SiO2、P25、酸化鉄などを出発原料として、上記組成範囲に入るように混合した後、溶融して、上記冷却速度で冷却してリン酸肥料原料を製造してもよい。
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
実施例1〜3では、P濃度が0.5〜4質量%の溶銑に対して脱リン処理S13(図1参照)を、その処理後のスラグの組成がCaO、SiO2、P25、酸化鉄(Fe換算)、及びMnOを合計で70質量%以上含有し、CaOとSiO2の質量濃度比で表示する塩基度αが1.5以上3.0以下であり、P25を8質量%以上(−4α2+23α−4)質量%以下、酸化鉄がFe換算で5質量%以上25質量%以下、MnOが10質量%以上20質量%以下になるように、マンガン鉱石、フラックス等を添加して調整し、かつ、その処理後の温度を1200〜1450℃に制御して、行った。
その際に生成したスラグを、600℃までの間は、主として、前記数値で10℃/minの冷却速度になるよう制御して冷却し、スラグをジョークラッシャーにて粉砕し、ふるいで150μm以下と150μm超とで分級した。そして、これらのサンプルにおいて、スラグの固溶体相の存在比、可溶性リン酸率、及びく溶性MnO濃度を評価した。また、比較例1〜12では、これらの条件の少なくとも1つが外れた条件で同様にサンプルを生成し、評価を行った。結果を表1に示す。
可溶性リン酸率が0.6以上かつく溶性MnO濃度が5質量%以上のものを◎、可溶性リン酸率が0.6以上であるがく溶性MnO濃度が5質量%未満のものを△、可溶性リン酸率が0.6未満のものを×として評価した。
ここで、可溶性リン酸率は、リン酸肥料原料中の全リン酸濃度に対する可溶性リン酸濃度の存在比である。リン酸肥料を使用する場合、リン酸量が一定となるように、リン酸肥料のリン酸濃度に応じて添加量を調整して土壌に添加するので、肥料効果は、可溶性リン酸濃度でなく、可溶性リン酸率で評価した。また、く溶性MnO濃度は、リン酸肥料原料中の全MnO濃度に対してクエン酸水溶液に可溶なMnO濃度の存在比である。肥料効果としてはクエン酸水溶液に可溶なMnO濃度が重要であることから、肥料効果は、MnO濃度ではなく、く溶性MnO濃度で評価した。
Figure 0006776892
冷却速度が10℃/minの実施例1〜3のスラグ試料においては、塩基度が1.5以上3.0以下、リン酸が8質量%以上(−4α2+23α−4)質量%以下、t.Feが5質量%以上25質量%以下、MnOが10質量%以上20質量%以下で、かつ、全スラグ質量に対する固溶体相の存在比が28質量%以上であった。また、粒径も150μm以下であったため、可溶性リン酸率およびく溶性MnO濃度が高く、リン酸肥料のみならずマンガン肥料としての効果が高いことが確認できた。
一方、比較例1〜4は、脱リン処理でマンガン鉱石を添加しなかった場合の例であり、MnO濃度が10質量%未満であったため、く溶性MnO濃度も低く、マンガン肥料としての効果がほとんどないことが確認できた。
比較例5〜7は、粒径が150μm超のものが含まれている例であるが、全体的に比表面積が小さくなったため、く溶性MnO濃度が低く、マンガン肥料としての効果がほとんどないことが確認できた。
比較例8及び9は、脱リン処理でマンガン鉱石を過剰に添加した場合の例であり、MnO濃度が20質量%超であったため、主なリン酸鉱物相がC3P相となってしまい、リン酸肥料としての効果が低いことが確認できた。
比較例10〜12は、それぞれ塩基度、リン酸濃度、t.Feが数値範囲から外れた例であり、固溶体相が析出されずC3P相となってしまったため、リン酸肥料としての効果が低いことが確認できた。
本発明によれば、リン酸濃度及びMnO濃度が高く、リン酸肥料及びマンガン肥料として肥料効果の高いリン酸肥料原料とその製造方法を提供することができる。よって、本発明は、鉄鋼産業及び植物育成産業において利用可能性が高いものである。

Claims (2)

  1. CaO、SiO2、P25、酸化鉄(Fe換算)及びMnOを合計で70質量%以上含有し、CaOとSiO2の質量濃度比で表示する塩基度αが1.5以上3.0以下であり、P25を8質量%以上(−4α2+23α−4)質量%以下、酸化鉄をFe換算で5質量%以上25質量%以下、MnOを10質量%以上20質量%以下含有するリン酸肥料原料であって、該リン酸肥料原料中、Ca3(PO42−Ca2SiO4固溶体、5CaO・SiO2・P25、及び、7CaO・2SiO2・P25の1種又は2種以上の存在濃度の合計が28質量%以上であり、粒径が150μm以下であることを特徴とするリン酸肥料原料。
  2. 請求項1に記載のリン酸肥料原料の製造方法であって、
    P濃度が0.5〜4質量%の溶銑に対して、フラックスおよびMnO源を添加して、CaO、SiO2、P25、酸化鉄(Fe換算)及びMnOを合計で70質量%以上含有し、CaOとSiO2の質量濃度比で表示する塩基度αが1.5以上3.0以下であり、P25を8質量%以上(−4α2+23α−4)質量%以下、酸化鉄をFe換算で5質量%以上25質量%以下、MnOを10質量%以上20質量%以下含有する、1200〜1450℃の溶融スラグを生成する工程と、
    前記1200〜1450℃の溶融スラグを、600℃に到達するまでの間の温度降下量を600℃に到達するまでの時間で除算した数値で、10℃/min以上になるように制御して冷却する工程と、
    前記冷却されたスラグを150μm以下に粉砕する工程と、
    を有することを特徴とするリン酸肥料原料の製造方法。
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