JP2004137136A - 珪酸燐酸肥料用原料及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】適量の燐酸を含有することにより珪酸の溶解特性が優れ、しかも安価に製造することができる珪酸燐酸質肥料用原料を提供する。
【解決手段】高炉溶銑の溶銑予備処理工程で回収されるスラグであって、溶銑中の珪素の酸化物である珪酸と燐の酸化物である燐酸とを含み、且つ可溶性珪酸を10mass%以上含有するスラグからなる珪酸燐酸質肥料用原料であり、珪酸の溶解特性が優れるとともに、含有する燐酸も肥効成分として働くため肥料として優れた性能を有し、しかも溶銑予備処理で回収したスラグをそのまま利用できるため極めて安価に製造することできる。また、この珪酸燐酸肥料用原料は、高炉溶銑の溶銑予備処理工程において、溶銑にCaO源と酸素源を添加して溶銑中の珪素の酸化反応と溶銑の脱燐反応を生じさせ、該反応で生成した珪酸と燐酸を含むスラグを回収して固化させることにより製造できる。
【選択図】 なし
【解決手段】高炉溶銑の溶銑予備処理工程で回収されるスラグであって、溶銑中の珪素の酸化物である珪酸と燐の酸化物である燐酸とを含み、且つ可溶性珪酸を10mass%以上含有するスラグからなる珪酸燐酸質肥料用原料であり、珪酸の溶解特性が優れるとともに、含有する燐酸も肥効成分として働くため肥料として優れた性能を有し、しかも溶銑予備処理で回収したスラグをそのまま利用できるため極めて安価に製造することできる。また、この珪酸燐酸肥料用原料は、高炉溶銑の溶銑予備処理工程において、溶銑にCaO源と酸素源を添加して溶銑中の珪素の酸化反応と溶銑の脱燐反応を生じさせ、該反応で生成した珪酸と燐酸を含むスラグを回収して固化させることにより製造できる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、珪酸燐酸肥料用原料及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
珪酸質肥料は主に水稲に対する珪酸の補給を目的とした肥料であり、一般に可溶性珪酸を10mass%以上含んでおり、水田の土壌保全や老朽水田の土壌改質剤として大量に使用されている。また、近年では珪酸質肥料が植物体を強化し、病虫害にかかり難くする作用が注目されており、水稲のみならず、キュウリ等の野菜にも使用されるようになってきた。
珪酸質肥料は天然資源である珪灰石からも製造されるが、現在では多くの珪酸質肥料が高炉スラグを原料として製造されている。
【0003】
近年、農業労働力の不足などから珪酸資材の水田等への施肥が不十分であるという問題や、現在使用されている珪酸質肥料の溶解特性が植物の吸収に適していないという問題が指摘されている。このようなことから、珪酸の溶解特性が優れ、施肥量が少なくて済む肥料の開発が望まれており、特許文献1には高炉スラグに酸などの溶出促進剤を添加・反応させて可溶性珪酸量を増大させた珪酸質肥料が提案されている。また、この提案によれば、酸のなかでも燐酸が最も効果が大きく、しかも肥効成分としても働くので最も好適であるとしている。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−264768号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記特許文献1の技術は高炉スラグを燐酸と反応させるものであるため、スラグとは別に添加剤としての燐酸を用意する必要があるとともに、スラグと燐酸との反応工程が必要であり、このため原材料やエネルギー等の面で製造コストが高いという問題がある。
したがって本発明の目的は、適量の燐酸を含有することにより珪酸の溶解特性が優れ、しかも安価に製造することができる珪酸燐酸肥料用原料及びその製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは肥料の組成及び製造コストの面で上記の要求にかなう珪酸燐酸肥料用原料について検討を重ね、その結果、高炉溶銑の溶銑予備処理工程で回収される特定のスラグが珪酸燐酸肥料の原料として極めて好適であり、特殊な処理を加えることなくそのまま珪酸燐酸肥料用原料として利用でき、しかも肥料として優れた特性を示すことを見い出した。また、そのなかでも、特定の塩基度を有するスラグ、さらに好ましくは特定の冷却条件で得られたスラグが、肥料として特に優れた性能を示すことが判った。
【0007】
本発明はこのような知見に基づきなされたもので、その特徴は以下の通りである。
[1] 高炉溶銑の溶銑予備処理工程で回収されるスラグであって、溶銑中の珪素の酸化物である珪酸と燐の酸化物である燐酸とを含み、且つ可溶性珪酸を10mass%以上含有するスラグからなることを特徴とする珪酸燐酸肥料用原料。
[2] 上記[1]の珪酸燐酸肥料用原料において、スラグがク溶性燐酸を2mass%以上含有することを特徴とする珪酸燐酸肥料用原料。
[3] 上記[1]又は[2]の珪酸燐酸肥料用原料において、スラグが溶銑脱燐スラグであることを特徴とする珪酸燐酸肥料用原料。
【0008】
[4] 上記[1]〜[3]のいずれかの珪酸燐酸肥料用原料において、スラグの塩基度(CaO/SiO2)が1.5〜2.5であることを特徴とする珪酸燐酸肥料用原料。
[5] 上記[4]の珪酸燐酸肥料用原料において、スラグが、溶銑予備処理工程で回収された後、少なくとも1300〜1000℃の温度領域を100℃/分未満の冷却速度で冷却して得られたスラグであることを特徴とする珪酸燐酸肥料用原料。
[6] 上記[1]〜[4]のいずれかの珪酸燐酸肥料用原料において、スラグが、溶銑予備処理工程で回収された後、少なくとも1300〜1000℃の温度領域を100℃/分以上の冷却速度で冷却して得られたスラグであることを特徴とする珪酸燐酸肥料用原料。
[7] 上記[1]〜[6]のいずれかの珪酸燐酸肥料用原料において、スラグが実質的にフッ素を含まないスラグであることを特徴とする珪酸燐酸肥料用原料。
【0009】
[8] 上記[1]〜[7]のいずれかの珪酸燐酸肥料用原料からなる又は該珪酸燐酸肥料原料を主原料としたことを特徴とする珪酸燐酸肥料。
[9] 上記[8]の珪酸燐酸肥料において、珪酸燐酸肥料用原料が破砕処理及び/又は整粒されたものであることを特徴とする珪酸燐酸肥料。
[10] 上記[8]又は[9]の珪酸燐酸肥料において、珪酸燐酸肥料用原料にバインダーを添加して造粒することにより得られた造粒物であることを特徴とする珪酸燐酸肥料。
【0010】
[11] 高炉溶銑の溶銑予備処理工程において、溶銑にCaO源と酸素源を添加して溶銑中の珪素の酸化反応と溶銑の脱燐反応を生じさせ、該反応で生成した珪酸と燐酸を含むスラグを回収して固化させることにより、可溶性珪酸を10mass%以上含有し且つ燐酸を含有するするスラグを得ることを特徴とする珪酸燐酸肥料用原料の製造方法。
[12] 上記[11]の製造方法において、溶銑予備処理工程が溶銑脱燐工程であることを特徴とする珪酸燐酸肥料用原料の製造方法。
[13] 上記[11]又は[12]の製造方法において、塩基度(CaO/SiO2)が1.5〜2.5のスラグを回収し、固化させることを特徴とする珪酸燐酸肥料用原料の製造方法。
【0011】
[14] 上記[13]の製造方法において、回収されたスラグを、少なくとも1300〜1000℃の温度領域を100℃/分未満の冷却速度で冷却して固化させることを特徴とする珪酸燐酸肥料用原料の製造方法。
[15] 上記[11]〜[13]のいずれかの製造方法において、回収されたスラグを、少なくとも1300〜1000℃の温度領域を100℃/分以上の冷却速度で冷却して固化させることを特徴とする珪酸燐酸肥料用原料の製造方法。
[16] 上記[11]〜[15]のいずれかの製造方法で得られた珪酸燐酸肥料用原料を用いて珪酸燐酸肥料を製造することを特徴とする珪酸燐酸肥料の製造方法。
[17] 上記[16]の製造方法において、珪酸燐酸肥料用原料を破砕処理及び/又は整粒する工程を有することを特徴とする珪酸燐酸肥料の製造方法。
[18] 上記[16]又は[17]の製造方法において、珪酸燐酸肥料用原料にバインダーを添加して造粒する工程を有することを特徴とする珪酸燐酸肥料の製造方法。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の珪酸燐酸肥料用原料及びその製造方法の詳細と好ましい実施形態について説明するとともに、その珪酸燐酸肥料用原料から得られる珪酸燐酸肥料及びその製造方法についても説明する。
本発明の珪酸燐酸肥料用原料は、高炉溶銑の溶銑予備処理工程で回収されるスラグであって、溶銑中の珪素の酸化物である珪酸と燐の酸化物である燐酸とを含み、且つ可溶性珪酸を10mass%以上含有するスラグからなるものである。ここで、本発明において可溶性珪酸とは0.5molの塩酸溶液可溶分の珪酸を指し、またク溶性燐酸とは2%クエン酸溶液(pH2)可溶分の燐酸を指す。なお、分析法は肥料分析法(農林水産省農業環境技術研究所法)に従う。
【0013】
上記のようなスラグとしては、特に高炉溶銑の脱燐処理工程で回収される溶銑脱燐スラグが好ましい。この溶銑脱燐スラグは、通常可溶性珪酸を10mass%以上含有するとともに、適量の燐酸(通常、ク溶性燐酸:2mass%以上)を含有し、さらにカルシウム(通常、CaO:25mass%以上)、鉄分(通常、T.Fe:1.5mass%以上)なども含有している。このため燐酸が珪酸の多量体を切断してク溶性燐酸珪酸化合物、例えば、シリコカーノタイト(5CaO・P2O5・SiO2)やナーゲルシュミタイト(7CaO・P2O5・2SiO2)が生成して珪酸の溶解特性を高めるとともに、燐酸、カルシウム、鉄分が肥効成分として働き、珪酸燐酸肥料として優れた効果を発揮する。また、スラグに従来技術のような特別な処理を加えなくても、溶銑予備処理工程で回収されるスラグをそのまま珪酸燐酸肥料用原料とすることができるため、低コストで製造できる。
【0014】
珪酸燐酸肥料用原料となるスラグは、可溶性珪酸を10mass%以上、好ましくは20mass%以上含有するものを用いる。また、このスラグは珪酸の溶解特性を高め且つ燐酸による肥効を得るためク溶性燐酸を2mass%以上、好ましくは3mass%以上含有することが望ましい。通常、溶銑脱燐スラグは珪酸及び燐酸を含有し、且つ珪酸の可溶率及び燐酸のク溶率ともに70%以上あるため、可溶性珪酸を10mass%以上、ク溶性燐酸を2mass%以上含有し、肥料として優れた溶解特性を有している。
【0015】
上述のように珪酸燐酸肥料用原料となるスラグは可溶性珪酸の含有量が高いことが好ましいが、本発明者らによる検討の結果、可溶性珪酸の含有量を高める上で、スラグ(特に、溶銑脱燐スラグ)の塩基度(CaO/SiO2)、さらには回収後のスラグの冷却速度に好適な条件が存在することが判った。
図1は、溶銑の脱燐処理工程で回収された種々の塩基度(CaO/SiO2)を有するスラグであって、回収された直後のスラグを通常の方法で徐冷したものと、鉄板上排滓などの方法で急冷したものについて、それらの塩基度と珪酸可溶率(=(可溶性珪酸量/トータル珪酸量)×100)との関係を調べた結果を示したものである。また、図2は、図1の結果をスラグ中の可溶珪酸含有量で整理して示したものである。
【0016】
これらによれば、回収されたスラグを徐冷したものは、スラグ塩基度が約1.0以上で略80%程度の珪酸可溶率が得られている。一方、回収されたスラグを急冷したものは、スラグ塩基度が約1.0以上で略95%以上の珪酸可溶率が得られている。この結果、約15mass%以上の可溶性珪酸含有量を得ることが可能となる。
図1及び図2に示されるように、特定の塩基度のスラグを急冷することによって高い珪酸可溶率が得られるのは、スラグを急冷することにより、スラグ組織中において珪酸の溶解性の向上に適したガラス構造の割合が増加するためであると考えられる。
【0017】
本発明者が検討した結果では、急冷による図1及び図2に示されるような効果を得るためには、回収されたスラグを少なくとも1300〜1000℃、好ましくは1400〜950℃の温度領域で100℃/分以上、好ましくは200℃/以上の冷却速度で冷却(急冷)すればよいことが判った。この100℃/分以上というスラグの冷却速度は、通常のスラグの冷却状態(徐冷)に較べると十分に速い冷却速度であると言える。このような冷却条件で融体または過冷却液体温度領域にあるスラグを急冷することにより、先に述べたような溶解性に優れたスラグ組織を得ることができる。なお、上記温度領域外での冷却条件は、形成されるスラグ組織には大きな影響を与えないため任意である。
【0018】
なお、回収されたスラグを上述した特定の温度領域において上記冷却速度で急冷するための具体的な方法は特に制限はないが、例えば、生成したスラグに高圧空気を吹きつけて飛散させ、冷却するとともに粒状化する方法(風砕法)、高圧水を吹きつけて飛散させ、冷却するとともに粒状化する方法(水砕法)、厚鋼板上に生成した脱珪スラグを流出させ、厚鋼板による強制冷却と空気への放熱により冷却する方法などが考えられ、いずれの方法でもよい。また、通常の冷却形態である徐冷の場合は、一般に、スラグを滓ポットに受け、その後、スラグ処理場に排滓する。
【0019】
スラグ塩基度と珪酸可溶率及び可溶性珪酸含有量との関係は図1及び図2に示す通りであり、スラグ塩基度が1.5未満、2.5超でも所望の珪酸可溶率と可溶性珪酸含有量が確保できる塩基度の範囲があるが、溶銑脱燐スラグが得られる溶銑脱燐工程での脱燐効率の観点からは、スラグ塩基度が1.5未満では十分な脱燐効率が得られず、このためスラグ塩基度は1.5以上が好ましい。また、スラグ塩基度が2.5を超えると、脱燐処理時におけるスラグの固相の割合が増加してスラグ成分のばらつきが大きくなり、珪酸の溶解性が不安定となるため好ましくない。以上の理由からスラグ塩基度は1.5〜2.5の範囲が特に好ましい。
【0020】
また、回収されたスラグを徐冷したものについては、特にスラグ塩基度が1.5〜2.5の範囲のものは冷却時に粉化(崩壊)しやすく、肥料にする際の粉砕処理を軽減又は省略できるという利点がある。これはスラグ成分中の2CaO・SiO2(ダイカルシウムシリケート)が冷却(徐冷)の際に変態によって体積膨張し、これによりスラグが粉化するためである。
図3は、回収されたスラグを100℃未満の冷却速度で徐冷したものについて、スラグ塩基度と冷却時の粉化性(粉化指数)との関係を示したもので、粉化指数とは、冷却後のスラグを65mmの篩を通したときの5mm以下の粒の割合(mass%)を示している。図3によれば、徐冷したスラグのスラグ塩基度が1.5〜2.5の範囲において高い粉化指数が得られている。一方、スラグ塩基度が1.5未満、2.5超の範囲では2CaO・SiO2以外の化合物の生成量が多くなり、2CaO・SiO2の割合が減少するため粉化性は低下する。
【0021】
また、従来一般に行われている脱燐処理ではCaOの滓化を促進するため脱燐剤の一部としてCaF2(ホタル石)が添加されているが、このCaF2の添加によりスラグ中のフッ素濃度が高まると1mass%のFに対して約11mass%のP2O5がアパタイトとして固定されることになり、ク溶性(クエン酸可溶性)の燐酸濃度が低下し、珪酸燐酸肥料としての役割を果たせなくなるという問題がある。このため溶銑脱燐スラグはF含有量が可能な限り少ないことが望ましく、好ましくは実質的にFを含まない(すなわち、不可避的不純物として含まれるFを除き、脱燐剤に由来するFを含まない)ことが望ましい。溶銑脱燐スラグが実質的にFを含まない場合、不溶性化合物であるフッ素アパタイト(Ca5(PO4)3F)が少なく且つリン酸カルシウム、シリコカーノタイト(5CaO・P2O5・SiO2)又はナーゲルシュミタイト(7CaO・P2O5・2SiO2)が増加するので、ク溶性燐酸の割合が高まることになる。
【0022】
したがって、溶銑脱燐スラグが得られる脱燐処理では、CaF2を実質的に含まないCaOを主体とした脱燐剤(但し、不可避的不純物として少量のFが含まれることは妨げない)のみを使用することが好ましく、これにより得られる脱燐スラグは珪酸とともに燐酸を含有し、且つ実質的にFを含有しないことにより燐酸の溶解特性が極めて優れたものとなる。
なお、以上述べたFに関する好ましい条件は、溶銑脱燐スラグ以外のスラグを用いる場合も同様である。
【0023】
以上述べた本発明の珪酸燐酸肥料用原料は、そのままで或いは破砕(粉砕)処理及び/又は整粒(粒度調整)を施した上で珪酸燐酸肥料とすることができる。また、上記珪酸燐酸肥料用原料、特に破砕処理及び/又は整粒された珪酸燐酸肥料用原料は、適当なバインダーを用いた造粒工程を経て珪酸燐酸肥料とすることが好ましく、このような珪酸燐酸肥料は施肥の時の飛散、雨水による流出、地面の通水性や通気性の阻害といった問題が生じにくい。また、形状が規則的で且つ球状に近く、角張っていないため、取り扱い性も良好である。
また、本発明の珪酸燐酸肥料用原料に他の添加成分を配合し、珪酸燐酸肥料としてもよい。
【0024】
本発明の珪酸燐酸肥料用原料が溶銑脱燐スラグからなる場合について、その好ましい製造方法を説明する。
溶銑脱燐スラグは高炉溶銑の脱燐処理で生成するスラグであり、この脱燐処理は、溶銑に対して脱燐剤として石灰源と酸素源を添加して行われる。石灰源としては通常は生石灰が用いられるが、これに限定されるものではない。また、酸素源としては、気体酸素源(酸素ガス又は酸素含有ガス)及び/又は固体酸素源(例えば、鉄鉱石、ミルスケール等の酸化鉄)が用いられる。また、先に述べたように脱燐剤としてはCaF2を実質的に含まないものを用いることが好ましい。
この脱燐処理では、処理前の溶銑中の燐濃度、処理後の目標燐濃度、上述した好ましいスラグ塩基度に応じて脱燐剤の添加量が決定される。
【0025】
脱燐処理を行う容器に特別な制約はないが、通常は溶銑鍋等の取鍋型容器、トピードカー、転炉型容器等を用いて行われる。脱燐処理は前工程(例えば、脱珪工程)で生じたスラグを分離した溶銑に対してなされる。
また、酸素源の供給方法に特別な制約はなく、気体酸素の場合には送酸ランスによる上吹きや溶銑中へのインジェクション、或いは底吹きなどの任意の方法で送酸を行うことができ、また、固体酸素源の場合には浸漬ランスによるインジェクションや上置き装入などの任意の方法で溶銑中への供給を行うことができる。なお、気体酸素を供給する場合、脱燐処理を転炉型容器や溶銑鍋などを用いて実施する場合には送酸ランスによる上吹きが、また、トーピードを用いて実施する場合には浸漬ランスによる溶銑中へのインジェクションが一般的である。
【0026】
また、石灰源の供給方法にも特別な制約はなく、浸漬ランスによる溶銑中へのインジェクションや上置き装入などの任意の方法で溶銑中への供給を行うことができる。浸漬ランスによる溶銑中へのインジェクションは、上述した固体酸素源とともに行ってもよい。また、脱燐効率を高めるために石灰源を溶銑の浴面上方からキャリアガスを用いて浴面に投射する(吹き付ける)こともできる。このキャリアガスとしては、窒素や不活性ガス或いは先に述べた気体酸素を用いることができる。
【0027】
また、石灰源と酸素源を供給する浴面又は浴中の位置は任意であるが、脱燐効率を高めるために石灰源と酸素源を浴面又は浴中の同一位置に供給することもできる。また、同様の目的で脱燐剤の一部又は全部に石灰源と酸素源を一体化したFeO−CaO系脱燐剤を使用することができる。
脱燐処理は転炉型容器を用いて行った方が特に大きな効果(脱燐効率)が得られる。これは、転炉型容器は取鍋やトーピードに較べてフリーボードが大きいために撹拌動力を大きくすることができ、これにより迅速な滓化とPの物質移動が生じるためである。通常、転炉型容器で行われる脱燐精錬では、送酸ランス等から酸素を吹錬する。
【0028】
また、脱燐反応効率をさらに向上させるためには溶銑をガス撹拌することが好ましい。このガス撹拌は、例えばインジェクションランスや底吹きノズルなどを通じて窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスを溶銑中に吹き込むことにより行われる。このような撹拌ガスの供給量としては、十分な浴撹拌性を得るために0.02Nm3/min/溶銑ton以上とし、また、浴の撹拌が強すぎると生成したFeOを溶銑中のCが還元する速度が大きくなり過ぎるためのため0.3Nm3/min/溶銑ton以下とすることが好ましい。
脱燐処理における脱燐処理効率を高めるためには、処理前の溶銑中Si濃度がなるべく低い方が好ましく、またこれによりスラグ量も少なくなるため、燐酸濃度の高い脱燐スラグを得ることができる。
【0029】
このようにして溶銑は脱燐処理され、溶銑上には珪酸燐酸肥料組成の脱燐スラグが生成する。脱燐処理終了後、溶銑脱燐スラグを溶銑保持容器から取り出し、冷却して固化させる。冷却・固化は、溶銑保持容器から取り出す際に行ってもよいし、容器に収納した後、その容器から取り出す際に行ってもよい。
冷却固化の方法としては、先に述べたように、融体又は過冷却液体温度領域を冷却する場合には、例えば、生成した溶銑脱燐スラグに高圧空気を吹きつけて飛散させ、冷却するとともに粒状化する方法(風砕法)、溶銑脱燐スラグに高圧水を吹きつけて飛散させ、冷却すとともに粒状化する方法(水砕法)、厚鋼板上に生成した溶銑脱燐スラグを流出させ、厚鋼板による強制冷却と空気への放熱により冷却する方法、などの方法を採ることができる。また、徐冷する場合には、スラグを滓ポットに受け、その後、スラグ処理場に排滓する。
このような冷却固化を経て珪酸燐酸肥料用原料である溶銑脱燐スラグが得られる。
【0030】
以上のようにして製造される珪酸燐酸肥料用原料は、粒度が適当であればそのまま珪酸燐酸肥料とすることができるが、冷却固化後の形状が塊状等の場合には、破砕(粉砕)処理及び/又は整粒(篩い分けなどにより粒度調整)を行い珪酸燐酸肥料とする。また、場合によっては他の添加成分を配合して珪酸燐酸肥料としてもよい。
珪酸燐酸肥料用原料の破砕(粉砕)方法に特別な制限はなく、どのような方法を採用してもよい。例えば、ジョークラッシャー、ロッドミル、フレッドミル、インペラブレーカーなどの粉砕機を用いて粉砕処理することができる。また、整粒は任意の篩い分け装置などを用いて行えばよく、珪酸燐酸肥料用原料を粉砕処理した後、整粒を行ってもよい。
【0031】
また、破砕処理及び/又は整粒された珪酸燐酸肥料用原料は、適当なバインダーを用いた造粒工程を経て珪酸燐酸肥料とすることが好ましく、このようにして造粒された珪酸燐酸肥料は、施肥時の飛散、雨水による流出、地面の通水性や通気性の阻害といった問題を生じにくい。また、形状が規則的で且つ球状に近く、角張っていないため、取扱い性も良好である。
造粒方法に特別な制限はなく、一般的な造粒方法を採用することができるが、例えば、上記粉砕処理によって得られた粉砕物とバインダーとを混合機で混合し、適量の水を加えながら造粒機で造粒し、しかる後、乾燥するという方法を採ることができる。
造粒機としては、一般的に使用されるもの、例えば、回転皿型造粒機、回転円筒型造粒機等を用いることができ、造粒後に所定の粒度範囲に入らないものは直接又は粉砕などの処理をした後に再度混合機に戻し、原料の一部として再利用する連続造粒方法を採ることが好ましい。
【0032】
図4は、珪酸燐酸肥料用原料の造粒工程の一例を示すもので、上記粉砕処理によって得られた粉砕物(珪酸燐酸肥料用原料)1がショベルローダー等によりホッパー2に装入され、計量された粉砕物1がホッパー2からコンベア3を介してドラム式回転型造粒機4に供給される。このドラム式回転型造粒機4には容器6に貯留されたバインダー5も所定量供給され、ドラム式回転型造粒機4が回転することにより粉砕物1とバインダー5とが混合されて造粒される。その後、造粒物はドライヤー7で乾燥され、エレベーター8により篩い装置9に供給されて篩い分けされ、さらにクーラー10で冷却されて造粒肥料となる。なお、クーラー10で冷却後に篩い分けして造粒肥料とすることも可能である。
【0033】
図5は、珪酸燐酸肥料用原料の造粒工程の他の例を示すもので、上記粉砕処理によって得られた粉砕物1がホッパー12に装入され、計量された粉砕物1がホッパー12からミキサー15に装入される。また、容器14に貯留されたバインダー13も所定量ミキサー15に装入される。そして、ミキサー15において粉砕物1とバインダー13とが混合され、この混合物が皿形造粒機16に供給され、この皿形造粒機16において造粒される。皿形造粒機16で造粒された造粒物はベルトコンベヤー17に載せられ、後は図4の工程と同様、ドライヤー7で乾燥され、エレベーター8により篩い装置9に供給されて篩い分けされ、さらにクーラー10で冷却されて造粒肥料となる。
【0034】
造粒工程で用いるバインダーにも特別な制限はなく、例えば、リン酸、粘土、ベントナイト、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、糖蜜、リグニン、硫酸マグネシウム、デンプン等の中から選ばれる1種以上を単独で又は混合して用いることができるが、造粒性と施肥後における肥料粒子の崩壊性の面で、デンプン、硫酸マグネシウム、リグニンが適しており、これらの中から選ばれる1種以上をバインダーの主成分として用いることが好ましい。
【0035】
珪酸燐酸肥料用原料を造粒して造粒物である肥料を製造する場合、バインダーに要求される特性としては、▲1▼ 優れた造粒性が得られること、▲2▼ 施肥後において肥料粒子(造粒物)が容易に崩壊して土壌中に分散できること、▲3▼ 製造中及び流通から施肥までの取り扱い中に粒子が崩壊しないような硬度を有すること、▲4▼バインダー成分が土壌を含めた環境に悪影響を与えないこと、などが挙げられ、上記デンプン、硫酸マグネシウム、リグニンはこれらの特性をすべて満足している。また、そのなかでもデンプンを用いた場合には、造粒された肥料粒子の硬度が特に高く、また、デンプンは雨や土壌中の水分で溶解して適度な速度で肥料粒子を崩壊させるため、特に好ましい。また、デンプンは水分を加えることにより糊化し、その後乾燥させることにより固化するので、造粒性にも優れており、さらに、土中微生物等により分解されるので、植物や環境に悪影響を及ぼすこともない。
【0036】
バインダーとして使用されるデンプンは、トウモロコシ、タピオカ、小麦、馬鈴薯、コメ等を原料としたものが挙げられる。これらのデンプンは、原料によって構成成分であるアミロース(d−グルコースが長い直鎖状に結合したもの)とアミロペクチン(d−グルコースが枝分かれ状に結合したもの)の割合が異なり、モチ米やモチトウモロコシ等ではアミロペクチンの割合が多い。さらに、デンプンの種類としては、そのままの生デンプンでも、熱や酸、アルカリ、塩、酵素等で処理した加工デンプンでもよい。これらのデンプンは、その種類に関わらず、糊化する性質を有しているものが造粒バインダーとして適している。
【0037】
このようにして造粒された珪酸燐酸肥料の平均粒径は0.5〜6mmが好ましい。平均粒径が0.5mm未満では施肥する時に風に吹き飛ばされたりして取り扱い性が悪くなり、一方、6mmを超えると均一に散布することが困難になる。より好ましい粒径は1〜5mmである。
【0038】
【実施例】
Si濃度が0.15mass%の溶銑に対して溶銑鍋を用いて脱燐処理を実施し、珪酸燐酸肥料用原料である脱燐スラグを製造した。この脱燐処理では浸漬ノズルを用いて脱燐剤(生石灰)を浴中にインジェクションするとともに、送酸ランスにより酸素の上吹を行った。また、上記インジェクションのキャリアガスにより浴の撹拌を行った。
【0039】
脱燐処理後、生成したスラグを珪酸燐酸肥料用原料として回収した。これらのスラグの組成を表1に示すが、実施例の珪酸燐酸肥料用原料はいずれも燐酸を含み且つ可溶性珪酸含有量が10mass%以上となっている。また、これらのなかでも、回収された後1300〜1000℃の温度領域を100℃以上の冷却速度で冷却(急冷)して得られたスラグは略95%以上の珪酸可溶率が得られている。一方、回収された後1300〜1000℃の温度領域を100℃未満の冷却速度で冷却(徐冷)して得られたスラグのうち、スラグ塩基度が1.5〜2.5のものは、良好な粉化性が得られている。
【0040】
【表1】
【0041】
【発明の効果】
以上述べた本発明の珪酸燐酸肥料用原料は、含有される燐酸の作用により珪酸の溶解特性が優れるとともに、珪酸が植物に吸収され易く、且つ燐酸自体も肥効成分として働くため別途燐酸の施肥を行う必要がない或いはその施肥量を軽減することができるなど、肥料として優れた特性を有し、しかも溶銑予備処理で回収したスラグをそのまま利用できるため極めて安価に製造することできる。また、本発明の製造方法によれば、このような優れた特性を有する珪酸燐酸肥料用原料を安定的に且つ安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】溶銑脱燐スラグの塩基度と珪酸可溶率との関係を示すグラフ
【図2】溶銑脱燐スラグの塩基度と可溶性珪酸含有量との関係を示すグラフ
【図3】回収された後徐冷したスラグの塩基度と冷却時の粉化性との関係を示すグラフ
【図4】本発明の珪酸燐酸肥料用原料の造粒工程の一例を示す説明図である。
【図5】本発明の珪酸燐酸肥料用原料の造粒工程の他の例を示す説明図である。
【符号の説明】
1…粉砕物、2…ホッパー、3…コンベア、4…ドラム式回転型造粒機、5…バインダー、6…容器、7…ドライヤー、8…エレベーター、9…篩い装置、10…クーラー、12…ホッパー、13…バインダー、14…容器、15…ミキサー、16…皿形造粒機、17…ベルトコンベヤー
【発明の属する技術分野】
本発明は、珪酸燐酸肥料用原料及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
珪酸質肥料は主に水稲に対する珪酸の補給を目的とした肥料であり、一般に可溶性珪酸を10mass%以上含んでおり、水田の土壌保全や老朽水田の土壌改質剤として大量に使用されている。また、近年では珪酸質肥料が植物体を強化し、病虫害にかかり難くする作用が注目されており、水稲のみならず、キュウリ等の野菜にも使用されるようになってきた。
珪酸質肥料は天然資源である珪灰石からも製造されるが、現在では多くの珪酸質肥料が高炉スラグを原料として製造されている。
【0003】
近年、農業労働力の不足などから珪酸資材の水田等への施肥が不十分であるという問題や、現在使用されている珪酸質肥料の溶解特性が植物の吸収に適していないという問題が指摘されている。このようなことから、珪酸の溶解特性が優れ、施肥量が少なくて済む肥料の開発が望まれており、特許文献1には高炉スラグに酸などの溶出促進剤を添加・反応させて可溶性珪酸量を増大させた珪酸質肥料が提案されている。また、この提案によれば、酸のなかでも燐酸が最も効果が大きく、しかも肥効成分としても働くので最も好適であるとしている。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−264768号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記特許文献1の技術は高炉スラグを燐酸と反応させるものであるため、スラグとは別に添加剤としての燐酸を用意する必要があるとともに、スラグと燐酸との反応工程が必要であり、このため原材料やエネルギー等の面で製造コストが高いという問題がある。
したがって本発明の目的は、適量の燐酸を含有することにより珪酸の溶解特性が優れ、しかも安価に製造することができる珪酸燐酸肥料用原料及びその製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは肥料の組成及び製造コストの面で上記の要求にかなう珪酸燐酸肥料用原料について検討を重ね、その結果、高炉溶銑の溶銑予備処理工程で回収される特定のスラグが珪酸燐酸肥料の原料として極めて好適であり、特殊な処理を加えることなくそのまま珪酸燐酸肥料用原料として利用でき、しかも肥料として優れた特性を示すことを見い出した。また、そのなかでも、特定の塩基度を有するスラグ、さらに好ましくは特定の冷却条件で得られたスラグが、肥料として特に優れた性能を示すことが判った。
【0007】
本発明はこのような知見に基づきなされたもので、その特徴は以下の通りである。
[1] 高炉溶銑の溶銑予備処理工程で回収されるスラグであって、溶銑中の珪素の酸化物である珪酸と燐の酸化物である燐酸とを含み、且つ可溶性珪酸を10mass%以上含有するスラグからなることを特徴とする珪酸燐酸肥料用原料。
[2] 上記[1]の珪酸燐酸肥料用原料において、スラグがク溶性燐酸を2mass%以上含有することを特徴とする珪酸燐酸肥料用原料。
[3] 上記[1]又は[2]の珪酸燐酸肥料用原料において、スラグが溶銑脱燐スラグであることを特徴とする珪酸燐酸肥料用原料。
【0008】
[4] 上記[1]〜[3]のいずれかの珪酸燐酸肥料用原料において、スラグの塩基度(CaO/SiO2)が1.5〜2.5であることを特徴とする珪酸燐酸肥料用原料。
[5] 上記[4]の珪酸燐酸肥料用原料において、スラグが、溶銑予備処理工程で回収された後、少なくとも1300〜1000℃の温度領域を100℃/分未満の冷却速度で冷却して得られたスラグであることを特徴とする珪酸燐酸肥料用原料。
[6] 上記[1]〜[4]のいずれかの珪酸燐酸肥料用原料において、スラグが、溶銑予備処理工程で回収された後、少なくとも1300〜1000℃の温度領域を100℃/分以上の冷却速度で冷却して得られたスラグであることを特徴とする珪酸燐酸肥料用原料。
[7] 上記[1]〜[6]のいずれかの珪酸燐酸肥料用原料において、スラグが実質的にフッ素を含まないスラグであることを特徴とする珪酸燐酸肥料用原料。
【0009】
[8] 上記[1]〜[7]のいずれかの珪酸燐酸肥料用原料からなる又は該珪酸燐酸肥料原料を主原料としたことを特徴とする珪酸燐酸肥料。
[9] 上記[8]の珪酸燐酸肥料において、珪酸燐酸肥料用原料が破砕処理及び/又は整粒されたものであることを特徴とする珪酸燐酸肥料。
[10] 上記[8]又は[9]の珪酸燐酸肥料において、珪酸燐酸肥料用原料にバインダーを添加して造粒することにより得られた造粒物であることを特徴とする珪酸燐酸肥料。
【0010】
[11] 高炉溶銑の溶銑予備処理工程において、溶銑にCaO源と酸素源を添加して溶銑中の珪素の酸化反応と溶銑の脱燐反応を生じさせ、該反応で生成した珪酸と燐酸を含むスラグを回収して固化させることにより、可溶性珪酸を10mass%以上含有し且つ燐酸を含有するするスラグを得ることを特徴とする珪酸燐酸肥料用原料の製造方法。
[12] 上記[11]の製造方法において、溶銑予備処理工程が溶銑脱燐工程であることを特徴とする珪酸燐酸肥料用原料の製造方法。
[13] 上記[11]又は[12]の製造方法において、塩基度(CaO/SiO2)が1.5〜2.5のスラグを回収し、固化させることを特徴とする珪酸燐酸肥料用原料の製造方法。
【0011】
[14] 上記[13]の製造方法において、回収されたスラグを、少なくとも1300〜1000℃の温度領域を100℃/分未満の冷却速度で冷却して固化させることを特徴とする珪酸燐酸肥料用原料の製造方法。
[15] 上記[11]〜[13]のいずれかの製造方法において、回収されたスラグを、少なくとも1300〜1000℃の温度領域を100℃/分以上の冷却速度で冷却して固化させることを特徴とする珪酸燐酸肥料用原料の製造方法。
[16] 上記[11]〜[15]のいずれかの製造方法で得られた珪酸燐酸肥料用原料を用いて珪酸燐酸肥料を製造することを特徴とする珪酸燐酸肥料の製造方法。
[17] 上記[16]の製造方法において、珪酸燐酸肥料用原料を破砕処理及び/又は整粒する工程を有することを特徴とする珪酸燐酸肥料の製造方法。
[18] 上記[16]又は[17]の製造方法において、珪酸燐酸肥料用原料にバインダーを添加して造粒する工程を有することを特徴とする珪酸燐酸肥料の製造方法。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の珪酸燐酸肥料用原料及びその製造方法の詳細と好ましい実施形態について説明するとともに、その珪酸燐酸肥料用原料から得られる珪酸燐酸肥料及びその製造方法についても説明する。
本発明の珪酸燐酸肥料用原料は、高炉溶銑の溶銑予備処理工程で回収されるスラグであって、溶銑中の珪素の酸化物である珪酸と燐の酸化物である燐酸とを含み、且つ可溶性珪酸を10mass%以上含有するスラグからなるものである。ここで、本発明において可溶性珪酸とは0.5molの塩酸溶液可溶分の珪酸を指し、またク溶性燐酸とは2%クエン酸溶液(pH2)可溶分の燐酸を指す。なお、分析法は肥料分析法(農林水産省農業環境技術研究所法)に従う。
【0013】
上記のようなスラグとしては、特に高炉溶銑の脱燐処理工程で回収される溶銑脱燐スラグが好ましい。この溶銑脱燐スラグは、通常可溶性珪酸を10mass%以上含有するとともに、適量の燐酸(通常、ク溶性燐酸:2mass%以上)を含有し、さらにカルシウム(通常、CaO:25mass%以上)、鉄分(通常、T.Fe:1.5mass%以上)なども含有している。このため燐酸が珪酸の多量体を切断してク溶性燐酸珪酸化合物、例えば、シリコカーノタイト(5CaO・P2O5・SiO2)やナーゲルシュミタイト(7CaO・P2O5・2SiO2)が生成して珪酸の溶解特性を高めるとともに、燐酸、カルシウム、鉄分が肥効成分として働き、珪酸燐酸肥料として優れた効果を発揮する。また、スラグに従来技術のような特別な処理を加えなくても、溶銑予備処理工程で回収されるスラグをそのまま珪酸燐酸肥料用原料とすることができるため、低コストで製造できる。
【0014】
珪酸燐酸肥料用原料となるスラグは、可溶性珪酸を10mass%以上、好ましくは20mass%以上含有するものを用いる。また、このスラグは珪酸の溶解特性を高め且つ燐酸による肥効を得るためク溶性燐酸を2mass%以上、好ましくは3mass%以上含有することが望ましい。通常、溶銑脱燐スラグは珪酸及び燐酸を含有し、且つ珪酸の可溶率及び燐酸のク溶率ともに70%以上あるため、可溶性珪酸を10mass%以上、ク溶性燐酸を2mass%以上含有し、肥料として優れた溶解特性を有している。
【0015】
上述のように珪酸燐酸肥料用原料となるスラグは可溶性珪酸の含有量が高いことが好ましいが、本発明者らによる検討の結果、可溶性珪酸の含有量を高める上で、スラグ(特に、溶銑脱燐スラグ)の塩基度(CaO/SiO2)、さらには回収後のスラグの冷却速度に好適な条件が存在することが判った。
図1は、溶銑の脱燐処理工程で回収された種々の塩基度(CaO/SiO2)を有するスラグであって、回収された直後のスラグを通常の方法で徐冷したものと、鉄板上排滓などの方法で急冷したものについて、それらの塩基度と珪酸可溶率(=(可溶性珪酸量/トータル珪酸量)×100)との関係を調べた結果を示したものである。また、図2は、図1の結果をスラグ中の可溶珪酸含有量で整理して示したものである。
【0016】
これらによれば、回収されたスラグを徐冷したものは、スラグ塩基度が約1.0以上で略80%程度の珪酸可溶率が得られている。一方、回収されたスラグを急冷したものは、スラグ塩基度が約1.0以上で略95%以上の珪酸可溶率が得られている。この結果、約15mass%以上の可溶性珪酸含有量を得ることが可能となる。
図1及び図2に示されるように、特定の塩基度のスラグを急冷することによって高い珪酸可溶率が得られるのは、スラグを急冷することにより、スラグ組織中において珪酸の溶解性の向上に適したガラス構造の割合が増加するためであると考えられる。
【0017】
本発明者が検討した結果では、急冷による図1及び図2に示されるような効果を得るためには、回収されたスラグを少なくとも1300〜1000℃、好ましくは1400〜950℃の温度領域で100℃/分以上、好ましくは200℃/以上の冷却速度で冷却(急冷)すればよいことが判った。この100℃/分以上というスラグの冷却速度は、通常のスラグの冷却状態(徐冷)に較べると十分に速い冷却速度であると言える。このような冷却条件で融体または過冷却液体温度領域にあるスラグを急冷することにより、先に述べたような溶解性に優れたスラグ組織を得ることができる。なお、上記温度領域外での冷却条件は、形成されるスラグ組織には大きな影響を与えないため任意である。
【0018】
なお、回収されたスラグを上述した特定の温度領域において上記冷却速度で急冷するための具体的な方法は特に制限はないが、例えば、生成したスラグに高圧空気を吹きつけて飛散させ、冷却するとともに粒状化する方法(風砕法)、高圧水を吹きつけて飛散させ、冷却するとともに粒状化する方法(水砕法)、厚鋼板上に生成した脱珪スラグを流出させ、厚鋼板による強制冷却と空気への放熱により冷却する方法などが考えられ、いずれの方法でもよい。また、通常の冷却形態である徐冷の場合は、一般に、スラグを滓ポットに受け、その後、スラグ処理場に排滓する。
【0019】
スラグ塩基度と珪酸可溶率及び可溶性珪酸含有量との関係は図1及び図2に示す通りであり、スラグ塩基度が1.5未満、2.5超でも所望の珪酸可溶率と可溶性珪酸含有量が確保できる塩基度の範囲があるが、溶銑脱燐スラグが得られる溶銑脱燐工程での脱燐効率の観点からは、スラグ塩基度が1.5未満では十分な脱燐効率が得られず、このためスラグ塩基度は1.5以上が好ましい。また、スラグ塩基度が2.5を超えると、脱燐処理時におけるスラグの固相の割合が増加してスラグ成分のばらつきが大きくなり、珪酸の溶解性が不安定となるため好ましくない。以上の理由からスラグ塩基度は1.5〜2.5の範囲が特に好ましい。
【0020】
また、回収されたスラグを徐冷したものについては、特にスラグ塩基度が1.5〜2.5の範囲のものは冷却時に粉化(崩壊)しやすく、肥料にする際の粉砕処理を軽減又は省略できるという利点がある。これはスラグ成分中の2CaO・SiO2(ダイカルシウムシリケート)が冷却(徐冷)の際に変態によって体積膨張し、これによりスラグが粉化するためである。
図3は、回収されたスラグを100℃未満の冷却速度で徐冷したものについて、スラグ塩基度と冷却時の粉化性(粉化指数)との関係を示したもので、粉化指数とは、冷却後のスラグを65mmの篩を通したときの5mm以下の粒の割合(mass%)を示している。図3によれば、徐冷したスラグのスラグ塩基度が1.5〜2.5の範囲において高い粉化指数が得られている。一方、スラグ塩基度が1.5未満、2.5超の範囲では2CaO・SiO2以外の化合物の生成量が多くなり、2CaO・SiO2の割合が減少するため粉化性は低下する。
【0021】
また、従来一般に行われている脱燐処理ではCaOの滓化を促進するため脱燐剤の一部としてCaF2(ホタル石)が添加されているが、このCaF2の添加によりスラグ中のフッ素濃度が高まると1mass%のFに対して約11mass%のP2O5がアパタイトとして固定されることになり、ク溶性(クエン酸可溶性)の燐酸濃度が低下し、珪酸燐酸肥料としての役割を果たせなくなるという問題がある。このため溶銑脱燐スラグはF含有量が可能な限り少ないことが望ましく、好ましくは実質的にFを含まない(すなわち、不可避的不純物として含まれるFを除き、脱燐剤に由来するFを含まない)ことが望ましい。溶銑脱燐スラグが実質的にFを含まない場合、不溶性化合物であるフッ素アパタイト(Ca5(PO4)3F)が少なく且つリン酸カルシウム、シリコカーノタイト(5CaO・P2O5・SiO2)又はナーゲルシュミタイト(7CaO・P2O5・2SiO2)が増加するので、ク溶性燐酸の割合が高まることになる。
【0022】
したがって、溶銑脱燐スラグが得られる脱燐処理では、CaF2を実質的に含まないCaOを主体とした脱燐剤(但し、不可避的不純物として少量のFが含まれることは妨げない)のみを使用することが好ましく、これにより得られる脱燐スラグは珪酸とともに燐酸を含有し、且つ実質的にFを含有しないことにより燐酸の溶解特性が極めて優れたものとなる。
なお、以上述べたFに関する好ましい条件は、溶銑脱燐スラグ以外のスラグを用いる場合も同様である。
【0023】
以上述べた本発明の珪酸燐酸肥料用原料は、そのままで或いは破砕(粉砕)処理及び/又は整粒(粒度調整)を施した上で珪酸燐酸肥料とすることができる。また、上記珪酸燐酸肥料用原料、特に破砕処理及び/又は整粒された珪酸燐酸肥料用原料は、適当なバインダーを用いた造粒工程を経て珪酸燐酸肥料とすることが好ましく、このような珪酸燐酸肥料は施肥の時の飛散、雨水による流出、地面の通水性や通気性の阻害といった問題が生じにくい。また、形状が規則的で且つ球状に近く、角張っていないため、取り扱い性も良好である。
また、本発明の珪酸燐酸肥料用原料に他の添加成分を配合し、珪酸燐酸肥料としてもよい。
【0024】
本発明の珪酸燐酸肥料用原料が溶銑脱燐スラグからなる場合について、その好ましい製造方法を説明する。
溶銑脱燐スラグは高炉溶銑の脱燐処理で生成するスラグであり、この脱燐処理は、溶銑に対して脱燐剤として石灰源と酸素源を添加して行われる。石灰源としては通常は生石灰が用いられるが、これに限定されるものではない。また、酸素源としては、気体酸素源(酸素ガス又は酸素含有ガス)及び/又は固体酸素源(例えば、鉄鉱石、ミルスケール等の酸化鉄)が用いられる。また、先に述べたように脱燐剤としてはCaF2を実質的に含まないものを用いることが好ましい。
この脱燐処理では、処理前の溶銑中の燐濃度、処理後の目標燐濃度、上述した好ましいスラグ塩基度に応じて脱燐剤の添加量が決定される。
【0025】
脱燐処理を行う容器に特別な制約はないが、通常は溶銑鍋等の取鍋型容器、トピードカー、転炉型容器等を用いて行われる。脱燐処理は前工程(例えば、脱珪工程)で生じたスラグを分離した溶銑に対してなされる。
また、酸素源の供給方法に特別な制約はなく、気体酸素の場合には送酸ランスによる上吹きや溶銑中へのインジェクション、或いは底吹きなどの任意の方法で送酸を行うことができ、また、固体酸素源の場合には浸漬ランスによるインジェクションや上置き装入などの任意の方法で溶銑中への供給を行うことができる。なお、気体酸素を供給する場合、脱燐処理を転炉型容器や溶銑鍋などを用いて実施する場合には送酸ランスによる上吹きが、また、トーピードを用いて実施する場合には浸漬ランスによる溶銑中へのインジェクションが一般的である。
【0026】
また、石灰源の供給方法にも特別な制約はなく、浸漬ランスによる溶銑中へのインジェクションや上置き装入などの任意の方法で溶銑中への供給を行うことができる。浸漬ランスによる溶銑中へのインジェクションは、上述した固体酸素源とともに行ってもよい。また、脱燐効率を高めるために石灰源を溶銑の浴面上方からキャリアガスを用いて浴面に投射する(吹き付ける)こともできる。このキャリアガスとしては、窒素や不活性ガス或いは先に述べた気体酸素を用いることができる。
【0027】
また、石灰源と酸素源を供給する浴面又は浴中の位置は任意であるが、脱燐効率を高めるために石灰源と酸素源を浴面又は浴中の同一位置に供給することもできる。また、同様の目的で脱燐剤の一部又は全部に石灰源と酸素源を一体化したFeO−CaO系脱燐剤を使用することができる。
脱燐処理は転炉型容器を用いて行った方が特に大きな効果(脱燐効率)が得られる。これは、転炉型容器は取鍋やトーピードに較べてフリーボードが大きいために撹拌動力を大きくすることができ、これにより迅速な滓化とPの物質移動が生じるためである。通常、転炉型容器で行われる脱燐精錬では、送酸ランス等から酸素を吹錬する。
【0028】
また、脱燐反応効率をさらに向上させるためには溶銑をガス撹拌することが好ましい。このガス撹拌は、例えばインジェクションランスや底吹きノズルなどを通じて窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスを溶銑中に吹き込むことにより行われる。このような撹拌ガスの供給量としては、十分な浴撹拌性を得るために0.02Nm3/min/溶銑ton以上とし、また、浴の撹拌が強すぎると生成したFeOを溶銑中のCが還元する速度が大きくなり過ぎるためのため0.3Nm3/min/溶銑ton以下とすることが好ましい。
脱燐処理における脱燐処理効率を高めるためには、処理前の溶銑中Si濃度がなるべく低い方が好ましく、またこれによりスラグ量も少なくなるため、燐酸濃度の高い脱燐スラグを得ることができる。
【0029】
このようにして溶銑は脱燐処理され、溶銑上には珪酸燐酸肥料組成の脱燐スラグが生成する。脱燐処理終了後、溶銑脱燐スラグを溶銑保持容器から取り出し、冷却して固化させる。冷却・固化は、溶銑保持容器から取り出す際に行ってもよいし、容器に収納した後、その容器から取り出す際に行ってもよい。
冷却固化の方法としては、先に述べたように、融体又は過冷却液体温度領域を冷却する場合には、例えば、生成した溶銑脱燐スラグに高圧空気を吹きつけて飛散させ、冷却するとともに粒状化する方法(風砕法)、溶銑脱燐スラグに高圧水を吹きつけて飛散させ、冷却すとともに粒状化する方法(水砕法)、厚鋼板上に生成した溶銑脱燐スラグを流出させ、厚鋼板による強制冷却と空気への放熱により冷却する方法、などの方法を採ることができる。また、徐冷する場合には、スラグを滓ポットに受け、その後、スラグ処理場に排滓する。
このような冷却固化を経て珪酸燐酸肥料用原料である溶銑脱燐スラグが得られる。
【0030】
以上のようにして製造される珪酸燐酸肥料用原料は、粒度が適当であればそのまま珪酸燐酸肥料とすることができるが、冷却固化後の形状が塊状等の場合には、破砕(粉砕)処理及び/又は整粒(篩い分けなどにより粒度調整)を行い珪酸燐酸肥料とする。また、場合によっては他の添加成分を配合して珪酸燐酸肥料としてもよい。
珪酸燐酸肥料用原料の破砕(粉砕)方法に特別な制限はなく、どのような方法を採用してもよい。例えば、ジョークラッシャー、ロッドミル、フレッドミル、インペラブレーカーなどの粉砕機を用いて粉砕処理することができる。また、整粒は任意の篩い分け装置などを用いて行えばよく、珪酸燐酸肥料用原料を粉砕処理した後、整粒を行ってもよい。
【0031】
また、破砕処理及び/又は整粒された珪酸燐酸肥料用原料は、適当なバインダーを用いた造粒工程を経て珪酸燐酸肥料とすることが好ましく、このようにして造粒された珪酸燐酸肥料は、施肥時の飛散、雨水による流出、地面の通水性や通気性の阻害といった問題を生じにくい。また、形状が規則的で且つ球状に近く、角張っていないため、取扱い性も良好である。
造粒方法に特別な制限はなく、一般的な造粒方法を採用することができるが、例えば、上記粉砕処理によって得られた粉砕物とバインダーとを混合機で混合し、適量の水を加えながら造粒機で造粒し、しかる後、乾燥するという方法を採ることができる。
造粒機としては、一般的に使用されるもの、例えば、回転皿型造粒機、回転円筒型造粒機等を用いることができ、造粒後に所定の粒度範囲に入らないものは直接又は粉砕などの処理をした後に再度混合機に戻し、原料の一部として再利用する連続造粒方法を採ることが好ましい。
【0032】
図4は、珪酸燐酸肥料用原料の造粒工程の一例を示すもので、上記粉砕処理によって得られた粉砕物(珪酸燐酸肥料用原料)1がショベルローダー等によりホッパー2に装入され、計量された粉砕物1がホッパー2からコンベア3を介してドラム式回転型造粒機4に供給される。このドラム式回転型造粒機4には容器6に貯留されたバインダー5も所定量供給され、ドラム式回転型造粒機4が回転することにより粉砕物1とバインダー5とが混合されて造粒される。その後、造粒物はドライヤー7で乾燥され、エレベーター8により篩い装置9に供給されて篩い分けされ、さらにクーラー10で冷却されて造粒肥料となる。なお、クーラー10で冷却後に篩い分けして造粒肥料とすることも可能である。
【0033】
図5は、珪酸燐酸肥料用原料の造粒工程の他の例を示すもので、上記粉砕処理によって得られた粉砕物1がホッパー12に装入され、計量された粉砕物1がホッパー12からミキサー15に装入される。また、容器14に貯留されたバインダー13も所定量ミキサー15に装入される。そして、ミキサー15において粉砕物1とバインダー13とが混合され、この混合物が皿形造粒機16に供給され、この皿形造粒機16において造粒される。皿形造粒機16で造粒された造粒物はベルトコンベヤー17に載せられ、後は図4の工程と同様、ドライヤー7で乾燥され、エレベーター8により篩い装置9に供給されて篩い分けされ、さらにクーラー10で冷却されて造粒肥料となる。
【0034】
造粒工程で用いるバインダーにも特別な制限はなく、例えば、リン酸、粘土、ベントナイト、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、糖蜜、リグニン、硫酸マグネシウム、デンプン等の中から選ばれる1種以上を単独で又は混合して用いることができるが、造粒性と施肥後における肥料粒子の崩壊性の面で、デンプン、硫酸マグネシウム、リグニンが適しており、これらの中から選ばれる1種以上をバインダーの主成分として用いることが好ましい。
【0035】
珪酸燐酸肥料用原料を造粒して造粒物である肥料を製造する場合、バインダーに要求される特性としては、▲1▼ 優れた造粒性が得られること、▲2▼ 施肥後において肥料粒子(造粒物)が容易に崩壊して土壌中に分散できること、▲3▼ 製造中及び流通から施肥までの取り扱い中に粒子が崩壊しないような硬度を有すること、▲4▼バインダー成分が土壌を含めた環境に悪影響を与えないこと、などが挙げられ、上記デンプン、硫酸マグネシウム、リグニンはこれらの特性をすべて満足している。また、そのなかでもデンプンを用いた場合には、造粒された肥料粒子の硬度が特に高く、また、デンプンは雨や土壌中の水分で溶解して適度な速度で肥料粒子を崩壊させるため、特に好ましい。また、デンプンは水分を加えることにより糊化し、その後乾燥させることにより固化するので、造粒性にも優れており、さらに、土中微生物等により分解されるので、植物や環境に悪影響を及ぼすこともない。
【0036】
バインダーとして使用されるデンプンは、トウモロコシ、タピオカ、小麦、馬鈴薯、コメ等を原料としたものが挙げられる。これらのデンプンは、原料によって構成成分であるアミロース(d−グルコースが長い直鎖状に結合したもの)とアミロペクチン(d−グルコースが枝分かれ状に結合したもの)の割合が異なり、モチ米やモチトウモロコシ等ではアミロペクチンの割合が多い。さらに、デンプンの種類としては、そのままの生デンプンでも、熱や酸、アルカリ、塩、酵素等で処理した加工デンプンでもよい。これらのデンプンは、その種類に関わらず、糊化する性質を有しているものが造粒バインダーとして適している。
【0037】
このようにして造粒された珪酸燐酸肥料の平均粒径は0.5〜6mmが好ましい。平均粒径が0.5mm未満では施肥する時に風に吹き飛ばされたりして取り扱い性が悪くなり、一方、6mmを超えると均一に散布することが困難になる。より好ましい粒径は1〜5mmである。
【0038】
【実施例】
Si濃度が0.15mass%の溶銑に対して溶銑鍋を用いて脱燐処理を実施し、珪酸燐酸肥料用原料である脱燐スラグを製造した。この脱燐処理では浸漬ノズルを用いて脱燐剤(生石灰)を浴中にインジェクションするとともに、送酸ランスにより酸素の上吹を行った。また、上記インジェクションのキャリアガスにより浴の撹拌を行った。
【0039】
脱燐処理後、生成したスラグを珪酸燐酸肥料用原料として回収した。これらのスラグの組成を表1に示すが、実施例の珪酸燐酸肥料用原料はいずれも燐酸を含み且つ可溶性珪酸含有量が10mass%以上となっている。また、これらのなかでも、回収された後1300〜1000℃の温度領域を100℃以上の冷却速度で冷却(急冷)して得られたスラグは略95%以上の珪酸可溶率が得られている。一方、回収された後1300〜1000℃の温度領域を100℃未満の冷却速度で冷却(徐冷)して得られたスラグのうち、スラグ塩基度が1.5〜2.5のものは、良好な粉化性が得られている。
【0040】
【表1】
【0041】
【発明の効果】
以上述べた本発明の珪酸燐酸肥料用原料は、含有される燐酸の作用により珪酸の溶解特性が優れるとともに、珪酸が植物に吸収され易く、且つ燐酸自体も肥効成分として働くため別途燐酸の施肥を行う必要がない或いはその施肥量を軽減することができるなど、肥料として優れた特性を有し、しかも溶銑予備処理で回収したスラグをそのまま利用できるため極めて安価に製造することできる。また、本発明の製造方法によれば、このような優れた特性を有する珪酸燐酸肥料用原料を安定的に且つ安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】溶銑脱燐スラグの塩基度と珪酸可溶率との関係を示すグラフ
【図2】溶銑脱燐スラグの塩基度と可溶性珪酸含有量との関係を示すグラフ
【図3】回収された後徐冷したスラグの塩基度と冷却時の粉化性との関係を示すグラフ
【図4】本発明の珪酸燐酸肥料用原料の造粒工程の一例を示す説明図である。
【図5】本発明の珪酸燐酸肥料用原料の造粒工程の他の例を示す説明図である。
【符号の説明】
1…粉砕物、2…ホッパー、3…コンベア、4…ドラム式回転型造粒機、5…バインダー、6…容器、7…ドライヤー、8…エレベーター、9…篩い装置、10…クーラー、12…ホッパー、13…バインダー、14…容器、15…ミキサー、16…皿形造粒機、17…ベルトコンベヤー
Claims (18)
- 高炉溶銑の溶銑予備処理工程で回収されるスラグであって、溶銑中の珪素の酸化物である珪酸と燐の酸化物である燐酸とを含み、且つ可溶性珪酸を10mass%以上含有するスラグからなることを特徴とする珪酸燐酸肥料用原料。
- スラグがク溶性燐酸を2mass%以上含有することを特徴とする請求項1に記載の珪酸燐酸肥料用原料。
- スラグが溶銑脱燐スラグであることを特徴とする請求項1又は2に記載の珪酸燐酸肥料用原料。
- スラグの塩基度(CaO/SiO2)が1.5〜2.5であることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の珪酸燐酸肥料用原料。
- スラグが、溶銑予備処理工程で回収された後、少なくとも1300〜1000℃の温度領域を100℃/分未満の冷却速度で冷却して得られたスラグであることを特徴とする請求項4に記載の珪酸燐酸肥料用原料。
- スラグが、溶銑予備処理工程で回収された後、少なくとも1300〜1000℃の温度領域を100℃/分以上の冷却速度で冷却して得られたスラグであることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の珪酸燐酸肥料用原料。
- スラグが実質的にフッ素を含まないスラグであることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6に記載の珪酸燐酸肥料用原料。
- 請求項1、2、3、4、5、6又は7に記載の珪酸燐酸肥料用原料からなる又は該珪酸燐酸肥料用原料を主原料としたことを特徴とする珪酸燐酸肥料。
- 珪酸燐酸肥料用原料が破砕処理及び/又は整粒されたものであることを特徴とする請求項8に記載の珪酸燐酸肥料。
- 珪酸燐酸肥料用原料にバインダーを添加して造粒することにより得られた造粒物であることを特徴とする請求項8又は9に記載の珪酸燐酸肥料。
- 高炉溶銑の溶銑予備処理工程において、溶銑にCaO源と酸素源を添加して溶銑中の珪素の酸化反応と溶銑の脱燐反応を生じさせ、該反応で生成した珪酸と燐酸を含むスラグを回収して固化させることにより、可溶性珪酸を10mass%以上含有し且つ燐酸を含有するするスラグを得ることを特徴とする珪酸燐酸肥料用原料の製造方法。
- 溶銑予備処理工程が溶銑脱燐工程であることを特徴とする請求項11に記載の珪酸燐酸肥料用原料の製造方法。
- 塩基度(CaO/SiO2)が1.5〜2.5のスラグを回収し、固化させることを特徴とする請求項11又は12に記載の珪酸燐酸肥料用原料の製造方法。
- 回収されたスラグを、少なくとも1300〜1000℃の温度領域を100℃/分未満の冷却速度で冷却して固化させることを特徴とする請求項13に記載の珪酸燐酸肥料用原料の製造方法。
- 回収されたスラグを、少なくとも1300〜1000℃の温度領域を100℃/分以上の冷却速度で冷却して固化させることを特徴とする請求項11、12又は13に記載の珪酸燐酸肥料用原料の製造方法。
- 請求項11、12、13、14又は15の製造方法で得られた珪酸燐酸肥料用原料を用いて珪酸燐酸肥料を製造することを特徴とする珪酸燐酸肥料の製造方法。
- 珪酸燐酸肥料用原料を破砕処理及び/又は整粒する工程を有することを特徴とする請求項16に記載の珪酸燐酸肥料の製造方法。
- 珪酸燐酸肥料用原料にバインダーを添加して造粒する工程を有することを特徴とする請求項16又は17に記載の珪酸燐酸肥料の製造方法。
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