JPH11116364A - ク溶性カリ肥料の製造方法 - Google Patents

ク溶性カリ肥料の製造方法

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JPH11116364A
JPH11116364A JP23795298A JP23795298A JPH11116364A JP H11116364 A JPH11116364 A JP H11116364A JP 23795298 A JP23795298 A JP 23795298A JP 23795298 A JP23795298 A JP 23795298A JP H11116364 A JPH11116364 A JP H11116364A
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slag
hot metal
potassium
potash
raw material
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JP23795298A
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Tatsuto Takahashi
達人 高橋
Makoto Kato
誠 加藤
Hirohisa Nakajima
廣久 中島
Kenji Matsubara
健次 松原
Norio Isoo
典男 磯尾
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JFE Engineering Corp
Original Assignee
NKK Corp
Nippon Kokan Ltd
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    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C05FERTILISERS; MANUFACTURE THEREOF
    • C05DINORGANIC FERTILISERS NOT COVERED BY SUBCLASSES C05B, C05C; FERTILISERS PRODUCING CARBON DIOXIDE
    • C05D1/00Fertilisers containing potassium

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 原料の加熱に要する熱の消費量が少なく、か
つ、製造工程が複雑でなく、しかもク溶性MgOを多く
含有するク溶性カリ肥料の製造方法を提供すること。 【解決手段】 高炉から出銑後脱珪処理された溶銑また
は脱珪処理しない高炉溶銑と、溶銑の脱珪処理の際に生
成した脱珪スラグおよび/または高炉スラグとを収納し
た溶銑保持容器内に、カリ原料を添加し、かつMg系脱
硫剤を添加して、脱珪スラグおよび/または高炉スラグ
とカリ原料とMg系脱硫剤により生成した脱硫スラグと
を融合させ、次いで融合して生成したスラグを冷却して
固化させ、ク溶性カリ肥料を製造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水には溶解しない
がクエン酸には溶解するカリ分およびMgO(以下、ク
溶性カリ、ク溶性MgOと記す)とを含み、緩効性を示
すク溶性カリ肥料の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】植物の生育にとって肥料は欠かせないも
のであり、中でも窒素、燐酸、カリウムは三大成分とし
て育成に合わせて施肥される。このような肥料は土壌に
施され、潅水に溶解し、植物の根から少しずつ時間をか
けて吸収される。
【0003】しかし、植物の吸収は数日から数週間かけ
て行われるので、この間に吸収されずに流れ去ってしま
うものもある。水に溶けやすい肥料ではこのように流れ
去る分が多く、このような肥料では少量ずつ何回も手間
をかけて施肥する必要があった。
【0004】そこで、このような手間を省くことが可能
なように、近年、1回の施肥で長期間にわたって作物を
育成することができる肥料、すなわち土壌中で徐々に溶
出して肥効が長期間持続する肥料(緩効性肥料)が要望
されるようになってきた。
【0005】緩効性肥料としては、上記三大肥料要素を
単独に含むものや複合して含むもの、あるいは補助要素
を同時に含むもの等種々のものが提案され、製造されて
いる。これら三大肥料の中でも、カリウムは、生育の初
期には少量でよいが、結実期には多量に必要とされ、緩
効性カリ肥料が重要視されている。
【0006】従来から、緩効性カリ肥料として、植物の
根から分泌するクエン酸水溶液には溶けるが水に溶けな
いク溶性カリを含むク溶性カリ肥料が用いられている。
なお、ク溶とは2wt%クエン酸水溶液に可溶であるこ
とをいう。このようなク溶性カリ肥料は、潅水による流
出が防止されるとともに、根から分泌されるクエン酸に
は溶解するので、根の発育にともなって分泌するクエン
酸が増加するに従い、その吸収量も増加する。したがっ
て、理想的な緩効性を示す。
【0007】ク溶性のカリ化合物としては、K2O・A
23・2SiO2、K2O・(Al,Fe)23・2S
iO2、K2O・MgO・SiO2、K2O・CaO・Si
2、等の組成を有するものが知られており、これらの
カリ化合物を生成させてク溶性カリ肥料を製造する方法
が多数提案されている。
【0008】例えば、特開昭60−127286号公報
には、珪石、高炉スラグ、転炉スラグ、ニッケル製錬ス
ラグ、リン製錬スラグ、および安山岩等の粉末と、炭酸
カリ、苛性カリ等のカリ原料とを混合した後、この混合
物を加熱して溶融し、次いで冷却、粉砕してク溶性カリ
肥料を製造する方法が開示されている。
【0009】また、特開昭55−51785号公報に
は、石炭火力発電所の集塵装置で捕集されるフライアッ
シュに、炭酸カリや苛性カリ等のカリ原料を加えた後、
微粉炭を加えて造粒し、添加した微粉炭を燃料として造
粒物を焼成してク溶性カリ肥料を製造する方法が開示さ
れている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】上記従来技術において
は、いずれも、調合した原料を反応させる際に、溶融工
程または焼成工程が必要であり、そのため、極めて多量
の熱量を必要とするという問題がある。
【0011】また、特に、フライアッシュとカリ原料と
の混合物を焼成してク溶性カリ肥料を製造する方法にお
いては、その前段に、原料を破砕する工程、これを造粒
する工程、この造粒物を乾燥する工程等を実施しなけれ
ばならず、製造工程が非常に複雑であるという問題もあ
る。
【0012】一方、植物にとってマグネシウムは葉緑素
を構成する重要な成分であり、これが欠乏すると光合成
に影響を及ぼす。したがって、肥料中にマグネシウム分
をク溶性MgOとして多く含有することが望ましい。
【0013】本発明は、かかる事情に鑑みてなされたも
のであって、原料の加熱に要する熱の消費量が少なく、
かつ、製造工程が複雑でなく、しかもク溶性MgOを多
く含有するク溶性カリ肥料の製造方法を提供することを
目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、第1発明は、高炉から出銑後脱珪処理された溶銑ま
たは脱珪処理しない高炉溶銑と、溶銑の脱珪処理の際に
生成した脱珪スラグおよび/または高炉スラグとを収納
した溶銑保持容器内に、カリ原料を添加し、かつMg系
脱硫剤を添加して、脱珪スラグおよび/または高炉スラ
グとカリ原料とMg系脱硫剤により生成した脱硫スラグ
とを融合させ、次いで融合して生成したスラグを冷却し
て固化させることを特徴とする、ク溶性カリ肥料の製造
方法を提供する。
【0015】第2発明は、高炉から出銑後脱珪処理され
た溶銑または脱珪処理しない高炉溶銑と、溶銑の脱珪処
理の際に生成した脱珪スラグおよび/または高炉スラグ
とを収納した溶銑保持容器内に、カリ原料を添加し、溶
銑中に攪拌用ガスを吹き込んで溶銑、脱珪スラグおよび
/または高炉スラグ、ならびにカリ原料を攪拌して混合
し、脱珪スラグおよび/または高炉スラグとカリ原料と
を融合させ、その融合されて形成されたカリ含有スラグ
が溶銑上に存在する状態において、Mg系脱硫剤を溶銑
中に添加して溶銑を脱硫し、その際の脱硫反応により生
成した脱硫スラグを、溶銑上の前記カリ含有スラグに吸
収かつ融合させ、次いで融合して生成したスラグを冷却
して固化させることを特徴とする、ク溶性カリ肥料の製
造方法を提供する。
【0016】第3発明は、溶銑保持容器内において高炉
から出銑された溶銑の脱珪処理中に生成しつつある脱珪
処理スラグにカリ原料を添加し、溶銑中に攪拌用ガスを
吹き込んで溶銑、脱珪スラグ、ならびにカリ原料を攪拌
して混合し、脱珪スラグとカリ原料とを融合させ、その
融合されて形成されたカリ含有スラグが溶銑上に存在す
る状態において、Mg系脱硫剤を溶銑中に添加して溶銑
を脱硫し、その際の脱硫反応により生成した脱硫スラグ
を、溶銑上の前記カリ含有スラグに吸収かつ融合させ、
次いで融合して生成したスラグを冷却して固化させるこ
とを特徴とする、マグネシウム含有ク溶性カリ肥料の製
造方法を提供する。
【0017】第4発明は、第1発明ないし第3発明のい
ずれかにおいて、Mg系脱硫剤を搬送ガスにより溶銑中
に吹き込んで添加することを特徴とする、ク溶性カリ肥
料の製造方法を提供する。
【0018】第5発明は、第1発明ないし第4発明のい
ずれかにおいて、前記溶銑保持容器内にさらに成分調整
剤を添加することを特徴とする、ク溶性カリ肥料の製造
方法を提供する。
【0019】第6発明は、第5発明において、成分調整
剤を搬送ガスに吹き込んで添加することを特徴とする、
ク溶性カリ肥料の製造方法を提供する。
【0020】第7発明は、第1発明ないし第6発明のい
ずれかにおいて、カリ原料を上置きして添加することを
特徴とする、ク溶性カリ肥料の製造方法を提供する。
【0021】第8発明は、第7発明において、カリ原料
をブリケット状にしたことを特徴とする、ク溶性カリ肥
料の製造方法を提供する。
【0022】第9発明は、第1発明ないし第6発明のい
ずれかにおいて、カリ原料を搬送ガスにより溶銑中に吹
き込んで添加することを特徴とする、ク溶性カリ肥料の
製造方法を提供する。
【0023】第10発明は、第1発明ないし第6発明の
いずれかにおいて、カリ原料を搬送ガスにより溶融スラ
グ中に吹き込むか、あるいは投射して添加することを特
徴とするク溶性カリ肥料の製造方法を提供する。
【0024】高炉、転炉による銑鋼一貫製鉄法において
は、高炉から出銑された溶銑は転炉で脱炭されて溶鋼に
なるが、近年、要求される製品の品質水準の上昇と共
に、鋼の低硫化、低リン化が求められ、そのため、硫黄
およびリンの除去効率の高い溶銑の段階で、トピードや
溶銑鍋などの溶銑保持容器内にて脱硫処理および脱リン
処理が行われている。しかし、高炉から出銑された溶銑
には珪素が含まれ、この珪素が脱リン反応を妨げるた
め、高炉鋳床の溶銑樋内もしくは溶銑保持容器内、また
は両者で、酸素ガスや固体酸素源等の脱珪剤を添加して
脱珪処理が施されている。
【0025】この脱珪処理によりSiO2が生成する。
また、高炉から出銑の際に、高炉から溶銑と同時に排出
される高炉スラグは、高炉鋳床に設けられたスキンマに
より溶銑と分離されるが、一部の高炉スラグは溶銑に混
入して、溶銑保持容器に流入する。高炉スラグはCaO
−SiO2−Al23−MgO系であり、その他Fe
O、MnO等が含まれている。そのため、脱珪処理によ
り生成するSiO2と高炉スラグとが融合し、脱珪処理
により生成されるスラグ(以下、脱珪スラグと記す)
は、SiO2を主成分として、CaO、Al23、Mg
O、FeO等を含む化学組成となる。
【0026】一方、溶銑脱珪後の脱硫処理は、トピード
や溶銑鍋のような溶銑保持容器で脱硫剤をインジェクシ
ョン等により添加する方法が知られている。脱硫剤とし
ては、CaOやNa2Oの他、溶銑中のSとの親和性が
高く、比較的低い温度においても優れた脱硫能を有する
Mgが公知である。しかし、金属Mgおよびその合金
は、高価であり、また取り扱いが難しい。このため、M
g系脱硫剤としてCaOとMgを混合したものが提案さ
れている(特開平7−179919号公報)。また、本
出願人は先に、Mg系脱硫剤としてAlとMgOとを含
むものを用い、溶銑中でAlとMgOとを反応させてM
g蒸気を生成させ、このMg蒸気と溶銑中に溶解したS
とを反応させて脱硫する方法を提案している(特願平8
−167406号)。
【0027】このようなMg系脱硫剤は、使用する脱硫
フラックス原単位はCaO系の脱硫剤に比べて少なく、
発生するスラグ原単位がCaO系の脱硫剤に比べて少な
いという利点がある反面、予備処理スラグ中のMgO濃
度またはMgOとAl23の濃度が高くなり、CaO系
脱硫スラグのようにスラグのセメント工場におけるセメ
ントクリンカー原料への有効利用ができなくなる。しか
し、このようなMg系脱硫剤を用いて生成した脱硫スラ
グはMgOまたはMgO+Al23の量が多いものの、
成分系は高炉スラグ、脱珪スラグと同様である。
【0028】本発明では、このようなMg系脱硫剤で脱
硫して形成されたMgO含有量の多い脱硫スラグを上記
脱珪スラグおよび/または高炉スラグならびにカリ原料
とともに溶融させてク溶性カリ肥料を得る。すなわち、
ク溶性カリ肥料は、K2OおよびSiO2の他に、Al2
3、FeO、MgO、CaO等の1種以上の成分を含
有するク溶性カリ化合物で構成されているので、上述し
たような脱珪スラグおよび/または高炉スラグならびに
脱硫スラグと、カリ原料とを融合させればク溶性カリ化
合物組成の溶融スラグを得ることができ、これを冷却し
て固化させることによりク溶性カリ肥料を得ることがで
きる。
【0029】本発明の場合、カリ原料の顕熱、潜熱、分
解熱、およびカリ原料、脱珪スラグ、高炉スラグ、脱硫
スラグの溶解熱は、溶銑保持容器内で大量に共存する溶
銑が保有する熱量で補われるので、特に加熱する必要が
ない。すなわち、本発明では溶銑の脱珪処理により生成
する脱珪スラグ、高炉スラグ、脱硫スラグといった溶銑
上に存在する高温のスラグを使用し、かつ、カリ原料の
溶融、分解、融合に要する熱量を溶銑が供給するので、
原料を加熱するための熱量を新たに付加する必要がな
く、極めて熱経済性が高い。
【0030】また、新たに製造設備を設けることなく、
既存の製鉄設備による通常の操業で製造することがで
き、複雑な工程が不要であるから、設備的、工程的にも
極めて経済的である。
【0031】さらに、Mg系脱硫剤を用いて脱硫処理し
た際に生成するMgOリッチの脱硫スラグを用いること
により、光合成に有効な成分であるマグネシウムを含有
し、吸収性が高いク溶性MgOを多く含有させることが
できる。
【0032】さらにまた、利材化が困難であった、脱珪
スラグ、およびMg系脱硫剤によって脱硫した後に生成
する脱硫スラグを有効に活用することができ、この点か
らも経済的価値は極めて高い。
【0033】本発明のク溶性カリ肥料の製造方法は、上
述したように、高炉から出銑後脱珪処理された溶銑また
は脱珪処理しない高炉溶銑と、溶銑の脱珪処理の際に生
成した脱珪スラグおよび/または高炉スラグとを収納し
た溶銑保持容器内に、カリ原料を添加し、かつMg系脱
硫剤を添加して、脱珪スラグおよび/または高炉スラグ
とカリ原料とMg系脱硫剤により生成した脱硫スラグと
を融合させる。その際に、カリ原料添加とMg系脱硫剤
の添加の順序は問わない。つまり、カリ原料を添加した
後に脱硫剤を添加してもよいし、脱硫剤を添加した後に
カリ原料を添加してもよいし、これらを同時に添加して
もよい。現実的にはカリ原料を添加した後にMg系脱硫
剤を添加することが好ましい。このような本発明に係る
ク溶性カリ肥料の製造方法は、具体的には以下の手順で
行うことが好ましい。
【0034】まず、高炉から出銑後脱珪処理された溶銑
または脱珪処理しない高炉溶銑と、溶銑の脱珪処理の際
に生成した脱珪スラグおよび/または高炉スラグとを収
納した溶銑保持容器内に、カリ原料を添加し、溶銑中に
攪拌用ガスを吹き込んで溶銑、脱珪スラグおよび/また
は高炉スラグ、ならびにカリ原料を攪拌して混合し、脱
珪スラグおよび/または高炉スラグとカリ原料とを融合
させる。次いで、その融合されて形成されたカリ含有ス
ラグが溶銑上に存在する状態において、Mg系脱硫剤を
溶銑中に添加して溶銑を脱硫し、その際の脱硫反応によ
り生成した脱硫スラグを、溶銑上のカリ含有スラグに吸
収かつ融合させる。また、溶銑の脱珪処理中に生成しつ
つある脱珪スラグにカリ原料を添加するようにしてもよ
い。
【0035】本発明に用いられるMg系脱硫剤は、上述
したMg−CaO系脱硫剤、MgO−Al系脱硫剤が典
型例であるが、処理により最終的にMgOを生成する脱
硫剤による処理であれば本発明に係るク溶製カリ肥料を
製造することができる。
【0036】なお、Mg−CaO系脱硫剤による脱硫方
法を開示する上記特開平7−179919号公報では、
溶銑中の硫黄濃度により、MgとCaOとの比率を変え
ており、溶銑中の硫黄濃度が0.012%以上ではMg
15〜20重量%、CaO85〜80重量%とし、硫黄
濃度が0.012%以下ではMgO5〜10重量%、C
aO95〜90重量%としているが、この場合の脱硫ス
ラグ中のMgOは12.5重量%が例示される。また、
Al−MgO系脱硫剤による脱硫方法を提案する特願平
8−167406号では、脱硫スラグ中のMgOは3
2.1重量%が例示される。
【0037】添加するカリ原料としては、炭酸カリ、重
炭酸カリ、硫酸カリ等のカリ塩、およびカリ長石等のカ
リ含有鉱物を適用することができる。一般にカリ原料
は、融点が低く蒸気圧が高いため、溶銑に触れると脱珪
スラグおよび/または高炉スラグと融合する前に飛散し
て歩留まりの低下を来す。そのため、カリ原料を脱珪ス
ラグ上に上置き添加すれば、カリ原料が速やかに溶融ス
ラグ中に入り、スラグ中でK2Oとして安定するためK
の蒸発が抑制され、歩留まりが向上する。ただし、粉末
状のカリ原料を上置きすると粉塵が発生するので、上置
きする際には、カリ原料を予めブリケットとして添加す
ることが好ましい。
【0038】カリ原料をブリケットにする場合には、そ
の分製造工程が煩雑になり製造コストも上昇するため、
コスト上昇を避けて粉体状のカリ原料を添加する場合に
は、カリ原料を搬送ガスにより溶銑中に吹き込んで添加
すれば、粉塵の発生を防止することができる。
【0039】また、粉体状のカリ原料を添加する場合に
は、カリ原料を搬送ガスにより溶融スラグ中に吹き込む
か、あるいは投射して、スラグ中に速やかに溶解するよ
うにすると、分解して揮散するK蒸気を抑制することが
でき、K歩留まりをさらに向上させることができる。
【0040】本発明においては、SiO2分の多い脱珪
スラグを用いることが好ましいが、脱珪処理していない
高炉スラグが混入してもよく、また意図的に高炉スラグ
を混合した脱珪スラグを用いてもよい。さらに、高炉ス
ラグ単独で用い、これにカリ原料および脱硫スラグを混
入させてもよい。
【0041】この場合に、例えば脱珪スラグの組成は、
高炉スラグの混入量に応じて変化する。そのため、例え
ば、高炉スラグの混入量が多くてSiO2分が不足する
場合には珪砂等のSiO2含有物質を、また、高炉スラ
グの混入量が少なくてAl23、FeO、MgO、Ca
O等が不足する場合には、それぞれボーキサイト、鉄鉱
石、マグネシアクリンカー、生石灰等の所望する成分を
含有する物質を、ク溶性カリ肥料の成分調整剤として添
加することにより、所望の組成とすることができる。成
分調整剤は、このようにSiO2、Al23、FeO、
MgO、CaO等を調整するものであり、これらを主成
分とする物質であれば特に限定されないが、付着水を含
有する場合には、乾燥してから用いることが好ましい。
成分調整剤を搬送ガスにより溶銑中に吹き込んで添加す
れば、成分調整剤の溶融が促進され、迅速に所望するク
溶性カリ化合物組成とすることができる。また、成分調
整剤は、脱硫処理の際の成分調整に用いることもでき
る。
【0042】本発明においては、上述のようにして融合
して生成したスラグを冷却して固化する。冷却固化の方
法は、生成した溶融スラグに高圧空気を吹き付けて飛散
させ、冷却するとともに粒状化する方法(これを「風砕
法」という)、あるいは高圧水を吹き付けて飛散させ冷
却するとともに粒状化する方法(これを「水砕法」とい
う)、あるいは厚鋼板上に生成した溶融スラグを流出さ
せ、厚鋼板による強制冷却と空気への放熱により冷却す
る方法があり、いずれの方法も可能である。ただし、ク
溶性カリ肥料中の水溶性カリも肥料としては重要である
から、水溶性カリが減少しないように、水と直接接触し
ない冷却法、あるいは水と接触させるにしても水量を適
正化し冷却水が蒸発する程度にする冷却方法が好まし
い。冷却、固化後の形状が塊状の場合には、破砕して所
定の寸法に整粒することが好ましい。
【0043】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照して、本発
明の実施の形態について説明する。図1は本発明の実施
に用いられる溶銑の脱珪処理設備の一例を示す概略断面
図、図2は本発明の実施に用いられる溶銑の脱硫処理設
備の一例を示す概略断面図である。
【0044】図1に示すように、取鍋型溶銑保持容器1
は、高炉から出銑された溶鋼2を収納しており、この取
鍋型溶銑保持容器1は、台車3にて高炉から上記脱珪処
理設備および脱硫処理設備を含む溶銑処理設備に搬送さ
れ、溶銑予備処理が終了した後台車3に載せられた状態
でさらに転炉へ搬送される。
【0045】脱珪処理設備には、上吹き酸素ランス6と
インジェクションランス7とが配置されており、これら
はいずれも溶銑保持容器1内を上下方向に移動可能とな
っている。
【0046】インジェクションランス7は、貯蔵タンク
9、リフトタンク11およびディスペンサー13で構成
される系統と、貯蔵タンク10、リフトタンク12およ
びディスペンサー13で構成される系統の2系統を有す
る原料供給装置30に接続されている。そして貯蔵タン
ク9に収納されたカリ原料5とタンク10に収納された
成分調整剤8とを、窒素ガスを搬送ガスとしてインジェ
クションランス7から溶融スラグ4あるいは溶銑2中に
吹き込むことが可能となっている。なお、貯蔵タンク9
内のカリ原料5および貯蔵タンク10内の成分調整剤8
は、リフトタンク11、12にて、それぞれ独立に添加
量および添加時間を制御して吹き込むことができ、ま
た、インジェクションランス7から窒素ガスのみを吹き
込み、溶銑2を攪拌することもできる。
【0047】また、ホッパー14、15、16と切り出
し装置18、19、20と、原料搬送装置21と、シュ
ート22からなる原料供給装置40を備えており、この
原料供給装置40にてホッパー14内のカリ原料5、ホ
ッパー15内の成分調整剤8、およびホッパー16内の
鉄鉱石焼結粉17を溶銑保持容器1内に上置きすること
が可能となっている。
【0048】脱硫処理設備は、図2に示すように、上下
方向に移動可能なインジェクションランス31を備えて
いる。インジェクションランス31は、貯蔵タンク3
4、リフトタンク36およびディスペンサー38で構成
される系統と、貯蔵タンク35、リフトタンク37およ
びディスペンサー38で構成される系統の2系統を有す
る原料供給装置50に接続されている。そして貯蔵タン
ク34に収納されたMg系脱硫剤32とタンク35に収
納された成分調整剤33とを、窒素ガスを搬送ガスとし
てインジェクションランス31から溶銑2中に吹き込む
ことが可能となっている。この場合にも、貯蔵タンク3
4内のMg系脱硫剤32および貯蔵タンク35内の成分
調整剤33は、リフトタンク36、37にて、それぞれ
独立に添加量および添加時間を制御して吹き込むことが
でき、また、インジェクションランス31から窒素ガス
のみを吹き込み、溶銑2を攪拌することもできる。
【0049】次に、これらの設備を用いてク溶性カリ肥
料を製造する手順について説明する。まず、図1の脱珪
処理設備にて、脱珪処理後にカリ原料5および必要に応
じて成分調整剤8を添加し、その後脱硫処理する場合に
ついて説明する。
【0050】溶銑保持容器1内での溶銑2の脱珪処理に
先立って、溶銑保持容器1内に残留する高炉スラグの量
および組成を把握する。残留スラグ量は、スラグの厚さ
の測定または溶銑2の湯面を覆う残留スラグの面積率の
目視観察により把握することができる。また、スラグ組
成は化学分析により把握する。
【0051】そして脱珪処理を行う。脱珪処理は、例え
ば、鉄鉱石焼結粉17をシュート22より溶銑保持容器
1内に上置き添加するとともに、上吹き酸素ランス6か
ら酸素ガスを溶銑2の湯面に吹き付け、さらに、インジ
ェクションランス7から窒素ガスを吹き込んで溶銑2と
鉄鉱石焼結粉17とを攪拌混合させて行う。すると、酸
素ガスおよび鉄鉱石焼結粉17中の酸素は、溶銑2中の
珪素と反応してSiO2を生成する。生成したSiO2
残留スラグと混合・融合し、溶銑2上にSiO2を主成
分とする脱珪スラグ4が生成される。
【0052】なお、脱珪処理は、上記の方法に限るもの
ではなく、造滓剤として生石灰等をインジェクションラ
ンス7にて吹き込んで行うこともあり、また、鉄鉱石焼
結粉の代わりにミルスケール等の鉄酸化物を使用して行
うこともできる。
【0053】このようにして脱珪処理を行った後、脱珪
処理により生成したSiO2量を把握する。生成したS
iO2量は、脱珪処理前後の溶銑2の珪素濃度から把握
することができる。また、酸素ガスと鉄鉱石焼結粉17
の酸素供給量から、生成したSiO2量を把握すること
もできる。そして、SiO2の生成量と、脱珪処理前に
把握した残留スラグの量と組成とで、脱珪スラグ4の概
略組成および概略重量を把握する。把握した脱珪スラグ
4の概略重量と概略組成とから、カリ原料5の添加量
と、必要な場合には成分調整剤8の添加量とを決定す
る。なお、脱珪スラグ4の重量をスラグの厚さの測定等
から把握するとともに、脱珪スラグ4から分析試料を採
取して成分分析すれば、正確な重量および組成を把握す
ることができる。
【0054】次いで、所定量のカリ原料5、および必要
に応じて所定量の成分調整剤8を溶銑保持容器1内に添
加し、これらを脱珪スラグ4に融合させる。なお、カリ
原料5の添加前に、インジェクションランス7から窒素
ガスを溶銑2中に吹き込むことが望ましい。窒素ガスを
吹き込むことで、溶銑2と脱珪スラグ4とが攪拌され、
脱珪スラグ4が溶融されるとともに、脱珪スラグ4の組
成が均一化され、その後のク溶性カリ肥料の製造が容易
となるからである。
【0055】カリ原料5は、その歩留まり向上のため
に、シュート22から溶銑保持容器1内に上置き添加す
ることが好ましい。その際、予めカリ原料5をブリケッ
トにすれば、粉塵の発生が防止される。また、粉体状の
カリ原料5を添加する場合には、粉塵の発生を防止する
ため、インジェクションランス7から溶銑中に吹き込み
添加することが好ましい。なお、図1では、カリ原料5
を上置き添加した状態を示している。
【0056】成分調整剤8は、インジェクションランス
7から溶銑2中に吹き込み添加することが好ましい。こ
れにより、成分調整剤8の溶融が促進されて迅速に所望
するスラグ組成となる。さらに、カリ原料5の添加前に
所定量の成分調整剤8を添加し、その後、カリ原料5の
添加を開始することが望ましい。カリ原料5が溶融スラ
グ中に速やかに入り、K2Oとして安定しやすくなり、
高温の状態で攪拌される期間が減少し、K2Oの蒸発量
が少なくなり、カリ原料5の歩留りが向上するためであ
る。
【0057】カリ原料5および成分調整剤の添加完了
後、さらにインジェクションランス7から窒素ガスを溶
銑2中に吹き込み、脱珪スラグ4とカリ原料5、および
必要に応じて添加された成分調整剤8とを溶銑2ととも
に混合し、これらの融合を促進するとともに、生成する
溶融スラグの組成を均一化する。
【0058】このようにして、脱珪処理後に添加された
カリ原料5および必要に応じて添加された成分調整剤8
は、脱珪スラグ4と融合し、カリを含有した溶融スラグ
が溶銑2上に形成される。
【0059】その後、台車3により溶銑保持容器1を脱
硫処理設備に搬送し、そこで脱硫処理を行う。脱硫処理
に際しては、容器34からAlとMgOとを主成分とす
る脱硫剤32を、窒素ガスを搬送ガスとしてインジェク
ションランス31を介して溶銑2中に吹き込む。この際
に、溶銑中で以下の反応が生じてMg蒸気が発生する。 4MgO+2Al → 3Mg(g)+MgO・Al23 そして、このようにして生成したMg蒸気と溶銑2中の
Sとが反応して溶銑が脱硫される。また、この場合に、
必要に応じて容器35から成分調整剤33をインジェク
ションランス31を介して溶銑2中に吹き込んでもよ
い。脱硫によって生じた脱硫スラグは、溶銑2の表面上
に存在するカリ含有スラグ39に吸着・混合され、融合
される。この場合に、Mg系脱硫剤による脱硫によって
生成された脱硫スラグは、マグネシア分の割合が高いの
で、マグネシアリッチのク溶性カリ化合物組成の溶融ス
ラグが溶銑2上に製造されることとなる。また、このス
ラグ中のマグネシアは大部分がク溶性のMgOとして存
在している。
【0060】なお、このようなMgO−Al系脱硫剤
は、Al源粉末とMgO源粉末とを合計で90%以上含
み、AlとMgOとの重量比が0.34〜1.335の
範囲であることが好ましい。また、このMgO−Al系
脱硫剤はブリケット状にして添加するようにすることが
できる。また、インジェクションランスを用いずに、脱
硫剤を上置き添加した後、溶銑2をインペラー攪拌する
ようにすることもできる。また、MgOとAlとの反応
を促進するために、Alの表面のアルミナの融点を降下
させるMgCl2、CaCl2等のアルミナ融点降下物質
を脱硫剤中に含有させることが好ましい。さらに、Mg
O1kgあたり0.005〜1.0kgの過剰なAlを
供給し、MgSの酸化による復硫を防止することが好ま
しい。
【0061】また、上述したようにMg系脱硫剤として
は、MgO−Al系脱硫剤の他にMg−CaO系脱硫剤
を用いることができるし、そのほかに最終的に溶銑の脱
硫が可能なものであれば用いることができる。
【0062】次に、脱珪処理中にカリ原料5および成分
調整剤8を添加して、ク溶性カリ化合物組成の溶融スラ
グを製造する方法について説明する。
【0063】まず、脱珪の前に、上記方法に従って、残
留する高炉スラグの量および組成を把握する。そして、
上記の方法に従って脱珪処理を行うが、脱珪処理中にカ
リ原料5および必要に応じて成分調整剤8をインジェク
ションランスまたはシュート22により添加する。
【0064】この場合、カリ原料5および成分調整剤8
の添加量は次のようにして決定する。まず、脱珪処理前
の残留スラグの量および組成と、脱珪処理前の珪素濃度
と脱珪処理後の目標珪素濃度との差から推定されるSi
2の生成量とで、脱珪処理により生成する脱珪スラグ
4の概略組成および概略重量を把握し、そして、把握し
た脱珪スラグ4の概略重量と概略組成から、カリ原料5
の添加量と、必要な場合には成分調整剤8の添加量とを
決定する。なお、脱珪処理で使用する酸素ガスおよび鉄
鉱石焼結粉17の酸素の総酸素添加量からも、SiO2
の生成量を推定することができる。このようにしてカリ
原料5および成分調整剤8を添加する場合にも、カリ原
料5の上置き添加とブリケット化、および成分調整剤8
のインジェクションランス7による吹き込み添加は、上
記と同様の理由で好ましい。
【0065】このようにして所定時間経過後、脱珪処理
を終了する。脱珪処理中に添加されたカリ原料5および
成分調整剤8は脱珪スラグ4と融合し、上記の実施の形
態と同様、カリを含有した溶融スラグが溶銑2上に形成
される。
【0066】その後同様にしてMg系脱硫剤により溶銑
2を脱硫処理し、カリ含有スラグ41に脱硫スラグを融
合させ、マグネシウムリッチのク溶性カリ化合物組成の
溶融スラグが溶銑2上に製造される。
【0067】このようにして溶銑2上に製造されたク溶
性カリ化合物組成の溶融スラグは、溶銑保持容器1から
取り出され、冷却・固化される。冷却・固化は、溶銑保
持容器1から取り出す際に行っても、また、別の容器に
収納した後、その容器から取り出す際に行ってもよい。
【0068】冷却・固化は、上記風砕法、水砕法、厚鋼
板に生成した溶融スラグを流す方法等の適宜の方法で行
われる。冷却・固化後、必要に応じて破砕し所定の寸法
に整粒し、ク溶性カリ肥料とする。そして、溶銑保持容
器1内の溶銑2は、次の処理工程に送られる。
【0069】このようにして、既設の製鉄設備を用い
て、極めて熱経済性が高く、かつ短時間でマグネシウム
リッチのク溶性カリ肥料の製造が可能になり、その結
果、極めて低コストでマグネシアリッチのク溶性カリ肥
料を製造することが可能となる。また、利材化が困難で
あった、脱珪スラグ、およびMg系脱硫剤によって脱硫
した後に生成する脱硫スラグを有効に活用することがで
きる。
【0070】なお、上記実施の形態では、脱珪処理を溶
銑保持容器1内で実施したが、脱珪処理は上記の方法に
限るものではなく、高炉から出銑され、スキンマにて高
炉スラグと分離された直後の高炉鋳床樋内の溶銑2に酸
素ガスや鉄鉱石焼結粉等の固体酸素源を添加して行って
もよい。この場合でも、上記の脱珪処理後にカリ原料5
を添加し、さらにMg系脱硫剤により脱硫する方法に従
って、ク溶性カリ肥料を何等支障なく製造することがで
きる。ただし、この場合には、溶銑保持容器1内に流入
した脱珪スラグ4の重量および組成を直接把握し、カリ
原料5および成分調整剤8の添加量を決める必要があ
る。
【0071】また、上記実施の形態では、脱珪処理設備
と脱硫処理設備とを別個に設けて処理する場合について
説明したが、例えば、図1のインジェクションランス7
にMg系脱硫剤供給系を接続して、Mg系脱硫剤を吹き
込むことを可能な状態として1つの設備で脱珪処理およ
び脱硫処理を行うようにしてもよい。この場合には、脱
珪処理、カリ原料添加、および脱硫処理を並行して行う
ことも可能である。
【0072】さらに、上記実施の形態では取鍋型の溶銑
保持容器1を用いているが、これに限らずトピードカー
であってもよい。さらにまた、脱硫設備とク溶性カリ製
造設備とを分離してもよく、脱珪処理設備および脱硫処
理設備の詳細や攪拌ガスも上記のものに限るものではな
いことはいうまでもない。
【0073】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。な
お、以下の説明において重量基準のパーセンテージをw
t%と表記する。 (実施例1)図1に示す脱珪処理設備および図2に示す
脱硫処理設備にて本発明を実施した。高炉から出銑され
た溶銑を脱珪処理設備に搬送した。溶銑重量は150ト
ン、溶銑組成は、炭素:4.49wt%、珪素:0.2
5wt%、リン:0.099wt%、硫黄:0.035
wt%、溶銑温度は1375℃であった。溶銑保持容器
内には、前工程の高炉スラグ(CaO=42wt%、S
iO2=33wt%、MgO=7wt%、Al23=1
5wt%)が残留し、残留スラグは目視観察で360k
gであった。
【0074】まず、脱珪処理を行った。脱珪処理は、上
吹き酸素ランスからの酸素ガスの流量を800〜900
Nm3/hrとして溶湯湯面に連続して吹き付け、鉄鉱
石焼結粉添加速度を200〜240kg/minで連続
して上置き添加し、さらに造滓材として生石灰を30〜
40kg/minの添加速度で窒素ガスとともにインジ
ェクションランスにて連続して吹き込み、5分間で脱珪
処理を終了した。添加した酸素ガスの総量は72N
3、鉄鉱石焼結粉総量は1080kg、生石灰総量は
170kg、脱珪処理後の溶銑温度は1330℃であっ
た。
【0075】脱珪処理後の溶銑中珪素濃度は0.11w
t%になり、脱珪処理によるSiO2の生成量を、脱珪
処理前後の溶銑中の珪素濃度から449kgと推定し
た。
【0076】また、脱珪処理前の残留スラグ量:360
kgと、生成したSiO2量:449kgとから、塩基
度を0.56と推定し、塩基度を0.7とするために成
分調整剤として生石灰を77kg添加することとした。
また、カリ原料として炭酸カリを用い、脱硫前のK2
濃度の目標を32wt%とし、歩留まりを90%として
炭酸カリの添加量を算出して553kgと決定した。
【0077】次いで、ク溶性カリ肥料の製造を行った。
まず、炭酸カリの添加前にインジェクションランスより
窒素ガスとともに成分調整剤である生石灰を50〜60
kg/minで吹き込み、3分間で77kgを添加完了
した。次いで、窒素ガスとともに粉体状の炭酸カリを7
0〜90kg/minの添加速度で溶銑中に吹き込んで
添加し、6分間の連続添加で553kgを添加終了し
た。炭酸カリ添加終了後に、さらに、インジェクション
ランスより窒素ガスを2分間吹き込み、脱珪スラグと炭
酸カリとの融合を促進して、カリを含有した溶融スラグ
を得た。
【0078】次に、このカリ含有溶融スラグと溶銑の入
った溶銑保持容器を図2に示す脱硫処理設備に搬送し
た。脱硫処理は、MgO−Al系脱硫剤を、140〜1
50kg/minの添加速度で窒素ガスと共にインジェ
クションランスにて連続して吹き込み、5分間で脱硫処
理を終了した。MgO−Al系脱硫剤の総量は610k
g、脱珪処理後の溶銑温度は1302℃であった。
【0079】その後、滓掻機にて生成した溶融スラグ
を、溶銑保持容器から鋳鋼性の取鍋(以下、ノロパンと
いう)内に一旦掻き出し、次いで、建屋内に設けられ、
かつ厚み15〜20mmの厚鋼板板で底面および側面を
構築した鉄箱内に溶融スラグを流し込み、冷却・固化さ
せて、1756kgの塊状スラグを得た。この塊状スラ
グを2mm以下に粉砕してク溶性カリ肥料とした。この
ク溶性カリ肥料の成分および炭酸カリの歩留まりを表1
に、またク溶性カリと水溶性カリの分析値を表2に示
す。なお、表2において、T.K2Oは全カリ、c−K2
Oはク溶性カリ、w−K2Oは水溶性カリ、T.MgO
は全マグネシア、c−MgOはク溶性マグネシアを示
す。なお、ク溶性カリ、マグネシアは2%クエン酸に溶
解したK2O分あるいはMgO分であり、ク溶性カリで
は水溶性カリを含んでいる。これらの表に示すように、
生成したク溶性カリ肥料中のK2O分は21.6wt%
で、そのうち92wt%がク溶性であった。また、炭酸
カリの歩留りは91%であった。
【0080】(実施例2)実施例1と同様に、図1に示
す脱珪処理設備および図2に示す脱硫処理設備にて本発
明を実施した。まず、実施例1と同様な脱珪処理を行
い、カリ原料を溶融スラグ層に吹き込み添加した後、こ
の溶融スラグと溶銑の入った溶銑保持容器を図2に示す
脱硫処理設備に搬送した。脱硫処理は、Mg−CaO系
脱硫剤を、45〜50kg/minの添加速度で窒素ガ
スとともにインジェクションランスにて連続して吹き込
み、6分間で脱硫処理を終了した。Mg−CaO系脱硫
剤の総量は300kg、脱硫処理後の溶銑温度は130
8℃であった。
【0081】その後、実施例1と同様の方法で溶融スラ
グを冷却・固化させて1526kgの塊状スラグを得
た。この塊状スラグを2mm以下に破砕してク溶性カリ
肥料とした。このク溶性カリ肥料の成分および炭酸カリ
の歩留まりを表1に、またク溶性カリと水溶性カリの分
析値を表2に示す。これらの表に示すように、生成した
ク溶性カリ肥料中のK2O分は21.8wt%でその内
94wt%がク溶性であり、MgO分は4.2wt%
で、その内89wt%がク溶性であった。また、炭酸カ
リの歩留りは93%であった。
【0082】(実施例3)実施例1と同様に、図1に示
す脱珪処理設備および図2に示す脱硫処理設備にて本発
明を実施した。まず、実施例1と同様な脱珪処理を行
い、次いで、ク溶性カリ肥料の製造を行った。まず、炭
酸カリの添加前にインジェクションランスより窒素ガス
とともに成分調整剤である生石灰を吹き込み、次いで、
インジェクションランスをスラグ層直上に配置し、窒素
ガスとともに粉体状の炭酸カリを70〜90kg/mi
nの添加速度でスラグ層に投射して、6分間の連続添加
で550kgを添加終了した。炭酸カリ添加終了後に、
さらに、インジェクションランスより窒素ガスを2分間
吹き込み、脱珪スラグと炭酸カリとの融合を促進して、
カリを含有した溶融スラグを得た。
【0083】次いで、このカリ含有溶融スラグと溶銑の
入った溶銑保持容器を図2に示す脱硫処理設備に搬送し
た。脱硫処理は、Mg−CaO系脱硫剤を、140〜1
50kg/minの添加速度で窒素ガスとともにインジ
ェクションランスにて連続して吹き込み、6分間で脱硫
処理を終了した。MgO−Al系脱硫剤の総量は500
kg、脱珪処理後の溶銑温度は1310℃であった。
【0084】その後、実施例1と同様の方法で溶融スラ
グを冷却・固化させて1740kgの塊状スラグを得
た。この塊状スラグを2mm以下に破砕してク溶性カリ
肥料とした。このク溶性カリ肥料の成分および炭酸カリ
の歩留まりを表1に、またク溶性カリと水溶性カリの分
析値を表2に示す。これらの表に示すように、生成した
ク溶性カリ肥料中のK2O分は22.0wt%でその内
95wt%がク溶性であり、MgO分は11.2wt%
で、その内90wt%がク溶性であった。また、炭酸カ
リの歩留りは94%であった。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
溶銑の脱珪処理により生成する脱珪スラグ、高炉スラ
グ、脱硫スラグといった溶銑上に存在する高温のスラグ
を使用し、かつ、カリ原料の溶融、分解、融合に要する
熱量を溶銑が供給するので、原料を加熱するための熱量
を新たに付加する必要がなく、極めて熱経済性が高い。
また、新たに製造設備を設けることなく、既存の製鉄設
備による通常の操業で製造することができ、複雑な工程
が不要であるから、設備的、工程的にも極めて経済的で
ある。さらに、Mg系脱硫剤を用いて脱硫処理した際に
生成するMgOリッチの脱硫スラグを用いることによ
り、光合成に有効な成分であるマグネシウムを含有し、
吸収性が高いク溶性MgOを多く含有させることができ
る。さらにまた、利材化が困難であった、脱珪スラグ、
およびMg系脱硫剤によって脱硫した後に生成する脱硫
スラグを有効に活用することができ、この点からも経済
的価値は極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施に用いられる溶銑の脱珪処理設備
の一例を示す概略断面図。
【図2】本発明の実施に用いられる溶銑の脱硫処理設備
の一例を示す概略断面図。
【符号の説明】 1……溶銑保持容器 2……溶銑 3……台車 4……脱珪スラグ 5……カリ原料 6……上吹き酸素ランス 7,31……インジェクションランス 8,33……成分調整剤 32……Mg系脱硫剤 39……カリ含有スラグ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 松原 健次 神奈川県川崎市川崎区南渡田町1番1号 日本鋼管テクノサービス株式会社内 (72)発明者 磯尾 典男 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高炉から出銑後脱珪処理された溶銑また
    は脱珪処理しない高炉溶銑と、溶銑の脱珪処理の際に生
    成した脱珪スラグおよび/または高炉スラグとを収納し
    た溶銑保持容器内に、カリ原料を添加し、かつMg系脱
    硫剤を添加して、脱珪スラグおよび/または高炉スラグ
    とカリ原料とMg系脱硫剤により生成した脱硫スラグと
    を融合させ、次いで融合して生成したスラグを冷却して
    固化させることを特徴とする、ク溶性カリ肥料の製造方
    法。
  2. 【請求項2】 高炉から出銑後脱珪処理された溶銑また
    は脱珪処理しない高炉溶銑と、溶銑の脱珪処理の際に生
    成した脱珪スラグおよび/または高炉スラグとを収納し
    た溶銑保持容器内に、カリ原料を添加し、溶銑中に攪拌
    用ガスを吹き込んで溶銑、脱珪スラグおよび/または高
    炉スラグ、ならびにカリ原料を攪拌して混合し、脱珪ス
    ラグおよび/または高炉スラグとカリ原料とを融合さ
    せ、その融合されて形成されたカリ含有スラグが溶銑上
    に存在する状態において、Mg系脱硫剤を溶銑中に添加
    して溶銑を脱硫し、その際の脱硫反応により生成した脱
    硫スラグを、溶銑上の前記カリ含有スラグに吸収かつ融
    合させ、次いで融合して生成したスラグを冷却して固化
    させることを特徴とする、ク溶性カリ肥料の製造方法。
  3. 【請求項3】 溶銑保持容器内において高炉から出銑さ
    れた溶銑の脱珪処理中に生成しつつある脱珪処理スラグ
    にカリ原料を添加し、溶銑中に攪拌用ガスを吹き込んで
    溶銑、脱珪スラグ、ならびにカリ原料を攪拌して混合
    し、脱珪スラグとカリ原料とを融合させ、その融合され
    て形成されたカリ含有スラグが溶銑上に存在する状態に
    おいて、Mg系脱硫剤を溶銑中に添加して溶銑を脱硫
    し、その際の脱硫反応により生成した脱硫スラグを、溶
    銑上の前記カリ含有スラグに吸収かつ融合させ、次いで
    融合して生成したスラグを冷却して固化させることを特
    徴とする、マグネシウム含有ク溶性カリ肥料の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 Mg系脱硫剤を搬送ガスにより溶銑中に
    吹き込んで添加することを特徴とする、請求項1ないし
    請求項3のいずれか1項に記載のク溶性カリ肥料の製造
    方法。
  5. 【請求項5】 前記溶銑保持容器内にさらに成分調整剤
    を添加することを特徴とする、請求項1ないし請求項4
    のいずれか1項に記載のク溶性カリ肥料の製造方法。
  6. 【請求項6】 成分調整剤を搬送ガスに吹き込んで添加
    することを特徴とする、請求項5に記載のク溶性カリ肥
    料の製造方法。
  7. 【請求項7】 カリ原料を上置きして添加することを特
    徴とする、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記
    載のク溶性カリ肥料の製造方法。
  8. 【請求項8】 カリ原料をブリケット状にしたことを特
    徴とする、請求項7に記載のク溶性カリ肥料の製造方
    法。
  9. 【請求項9】 カリ原料を搬送ガスにより溶銑中に吹き
    込んで添加することを特徴とする、請求項1ないし請求
    項6のいずれか1項に記載のク溶性カリ肥料の製造方
    法。
  10. 【請求項10】 カリ原料を搬送ガスにより溶融スラグ
    層中に吹き込むか、あるいは投射して添加することを特
    徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載
    のク溶性カリ肥料の製造方法。
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