JP4078111B2 - リン酸肥料組成物 - Google Patents
リン酸肥料組成物 Download PDFInfo
- Publication number
- JP4078111B2 JP4078111B2 JP2002129471A JP2002129471A JP4078111B2 JP 4078111 B2 JP4078111 B2 JP 4078111B2 JP 2002129471 A JP2002129471 A JP 2002129471A JP 2002129471 A JP2002129471 A JP 2002129471A JP 4078111 B2 JP4078111 B2 JP 4078111B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- phosphate
- soluble
- powder
- weight
- magnesium
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Landscapes
- Fertilizers (AREA)
Description
【産業上の利用分野】
本発明は、クエン酸溶解性P2O5を多量に含み水溶性P2O5が少ない緩効性の粉末状リン酸肥料組成物を提供することを目的とするものである。
【0002】
【従来の技術】
リン酸質肥料には、過リン酸石灰、重過リン酸石灰のように主成分が水溶性P2O5から成る速効性のリン酸質肥料と、熔性リン肥のように水溶性P2O5をほとんど含まず、作物の成育過程において根部から出る酸に溶解する性質を有するクエン酸溶解性(以下ク溶性と呼ぶ)P2O5を含むものがある。これらの他には、両形態のP2O5を含有する肥料も製造されている。例えば、特開昭58−60686号、特開昭58−91093号で提示されるリン酸質肥料や、(1)熔性リン肥と過リン酸石灰(又は重過リン酸石灰)とリン酸液から製造したもの、(2) 熔性リン肥と重過リン酸石灰又はリン酸液から製造したもの、(3) フェロニッケルスラグ中のマグネシウムをリン酸・硫酸混合液で加熱分解しリン酸マグネシウムに変化させたもの等が存在する。
【0003】
水溶性P2O5は作物の生育初期には必要であるが、土壌中の鉄、アルミニウム等と反応することによって時間の経過とともに難溶化し、速効性を喪失してしまう。一方、ク溶性P2O5は緩効性であることからP2O5の固定されやすい土壌では特に有効で、火山灰質粘性土(非晶質ケイ酸アルミニウム等を多く含有する土)のようなリン酸吸収係数の高い土壌で効果を発揮する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
リン酸吸収係数の高い土壌の改良用肥料はP2O5の有効利用を考えた場合、含有するP2O5の形態が出来るだけク溶性P2O5であることが好ましい。公知の肥料としては、熔性リン肥、骨粉等があるが、熔性リン肥は、ク溶性P2O5で20〜25重量%が限度であり、製法上含有量を増やすのは困難であるため、P2O成分が不足の土壌には多量に施肥しなければならないこと、骨粉はク溶性P2O5を30〜40重量%含有するが、昨今の牛海綿状脳症(狂牛病)問題以来利用が避けられていることから、これらに変わる新しいク溶性リン酸質肥料の開発が急務となっていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意研究の結果、粗製リン酸液に対し、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、 炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム及びドロマイトからなる群から選ばれた1種以上よりなり且つ炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムのうちの1種又は2種の含有量が30重量%以下であるアルカリ土類金属化合物を主成分とする粉末を、粗製リン酸液中のP2O5とアルカリ土類金属化合物中のM(但しM=Ca,Mg)のモル比がP2O5/M=0.10〜0.45となる割合で反応させて得られるMHPO4 及び/又はMHPO4・nH2O(但しn=1〜3)を主成分とする粉末状リン酸肥料組成物が、流動性が良好な結晶性の粉末で、粉体輸送・計量時の付着・固結がほとんどなく、造粒するのに最適であり、それ自身も水溶性P2O5含有量が少なくク溶性P2O5含有量が多く、前述の問題を解決し得るものであることを見い出し、本発明を完成させるに至った。以下、本発明について詳細に説明する。
【0006】
粗製リン酸液中の正リン酸(H3PO4)と、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、炭酸カルシウム(CaCO3)、炭酸マグネシウム(MgCO3 )との反応は、主に以下の化学式(1)〜(18)に従う(ドロマイト;Ca・Mg(CO3)2は炭酸カルシウムと炭酸マグネシウムの混合物として取り扱う)。
CaO + 2H3PO4 → Ca(H2PO4)2・H2O …(1)
Ca(OH)2 + 2H3PO4 → Ca(H2PO4)2・H2O + H2O …(2)
CaCO3 + 2H3PO4 → Ca(H2PO4)2・H2O + CO2 …(3)
CaO + H3PO4→ CaHPO4+ H2O…(4)
Ca(OH)2 + H3PO4→ CaHPO4 + 2H2O …(5)
CaCO3 + H3PO4 → CaHPO4 + CO2 …(6)
Ca(H2PO4)2 ・H2O + CaO → 2CaHPO4 + 2H2O …(7)
Ca(H2PO4)2 ・H2O + Ca(OH)2 → 2CaHPO4 + 3H2O …(8)
Ca(H2PO4)2 ・H2O + CaCO3 → 2CaHPO4 + 2H2O …(9)
MgO + 2H3PO4 + 2H2O→ Mg(H2PO4)2・2H2O …(10)
Mg(OH)2 + 2H3PO4 + H2O → Mg(H2PO4)2・2H2O …(11)
MgCO3 + 2H3PO4 + H2O → Mg(H2PO4)2・2H2O …(12)
MgO + H3PO4 + 2H2O → MgHPO4・3H2O …(13)
Mg(OH)2 + H3PO4 + H2O → MgHPO4・3H2O …(14)
MgCO3 + H3PO4 + 2H2O → MgHPO4・3H2O …(15)
Mg(H2PO4)2・2H2O + MgO + 3H2O → 2MgHPO4・3H2O …(16)
Mg(H2PO4)2・2H2O + Mg(OH)2 + 2H2O → 2MgHPO4・3H2O …(17)
Mg(H2PO4)2・2H2O + MgCO3 + 3H2O → 2MgHPO4・3H2O …(18)
初期に起こる反応は、第一リン酸塩であるM(H2PO4)2 ・nH2O(水溶性リン酸塩)の生成反応(化学式(1) 〜(3)、(10)〜(12))である。これは、反応系のH3PO4濃度が局所的に高濃度となり、一分子当たりのP2O5含有量が多い第一リン酸塩が生成しやすくなるからである。生成する第一リン酸塩は、結晶が微細なことと、余剰水分に溶解して粘度を増加させることから、反応初期は粘性を帯びて団粒状になる。
【0007】
反応が進行するに従って、第二リン酸塩であるMHPO4及び/又はMHPO4・nH2O(ク溶性リン酸塩)が生成する化学式(4)〜(9)と化学式(13)〜(18)の反応が主体となり、余剰水分を媒体としてアルカリ土類金属化合物とH3PO4、第一リン酸塩との間で行われる。この際、MO、M(OH)2は反応性が高く、上記の反応は速やかに進行し、反応熱によって系全体が高温になるため、低温(35℃以下)では生成しない第二リン酸カルシウム無水物及び/又は第二リン酸マグネシウム三水和物が生成する。これに対して、MCO3は第二リン酸塩の生成反応がゆっくり進行し、反応の終結に長時間を必要とする。
【0008】
粗製リン酸液に対し、アルカリ土類金属化合物を、P2O5とMのモル比がP2O5/M=0.10〜0.45(但しM=Ca,Mg)となる割合で反応させると、結晶性の高い第二リン酸塩が多量に生成し、且つ余剰水分が蒸発及び結晶水として取り込まれることから、付着・凝集性が低減され流動性に優れた粉末となる。P2O5とMのモル比は、P2O5/M=0.10〜0.45である事が必要で0.20〜0.40の範囲がより好ましい。P2O5/M=0.50では、理論上はアルカリ土類金属化合物とP2 O5の全てが第二リン酸塩に変化する割合であるが、実際には反応が不均一であることから第一リン酸塩が多量に残存し、粘性が増大して組成物の物性に悪影響を及ぼす。モル比が0.50以上の場合はP2O5が過剰で、化学式(4)〜(9)と化学式(13)〜(18)の反応が起きにくく、生成するほとんどのリン酸塩が第一リン酸塩になる。そのため水溶性P2 O5が増加し、粘性が増大して粒子が凝集し大きな塊になってしまい、粉末として得られない。モル比が0.10未満の場合は、未反応アルカリ土類金属化合物粉末が付着・凝集性を増加させる原因となることと、系全体のP2O5含有量が減少してリン酸質肥料としての価値が低くなることから、あまり好ましくない。
【0009】
粗製リン酸液は、リン鉱石から湿式法で製造した未精製の濃縮リン酸液で、P2O5成分を主にH3PO4の形で含有しているものである。既存の粗製リン酸液は、P2O5換算で44〜48重量部程度の濃度を有し、この濃度範囲であれば本発明の原料として問題なく使用できる。又、これよりも高濃度のものを利用することも可能である。
【0010】
アルカリ土類金属化合物を主成分とする粉末としては、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マ グネシウム及びドロマイトからなる群から選ばれた1種又は2種以上の混合粉末で、且つ炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムのうちの1種又は2種の含有量が30重量%以下であるものを用いる。炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムのうちの1種又は2種の含有量が30重量%を越えて含有した場合は、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムとH3PO4、第一リン酸塩による第二リン酸塩の生成反応がゆっくり進行し、反応の終結に長時間を必要とするため、第一リン酸塩の含有量が多い状態になり、粘性が増大して粒子が凝集し大きな塊になってしまうため好ましくない。又、他の不純物(鉄化合物、アルミニウム化合物等)が多量に混入しているものについては、不溶性リン酸塩を形成してP2O5を難溶化させる等の問題が生じるので好ましくない。
【0011】
アルカリ土類金属化合物を主成分とする粉末の原材料としては、生石灰、焼成貝殻灰、軽焼マグネシア、軽焼ドロマイト、消石灰、水酸化マグネシウム、軽焼ド ロマイト水和物(ドロマイトプラスター)、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、貝殻粉末、苦土石灰粉末(ドロマイト粉末)等が挙げられ、このうちの1種又は2種以上を使用することが出来る。
【0012】
アルカリ土類金属化合物を主成分とする粉末の粒度は、細かいほど反応性が良好であるが、一般の工業分野で使用されているものと同様の粒度、例えば600μm以下であれば問題なく使用できる。
【0013】
粗製リン酸液とアルカリ土類金属化合物を主成分とする粉末を反応させる装置は、両者を均一に混合撹拌できる装置であれば良く、装置の種類を問わず利用できる。
【0014】
得られた粉末状リン酸肥料組成物は、ク溶性P2O5成分である第二リン酸塩を主成分とするリン酸質肥料として利用できる。又、この組成物は、粉体輸送・計量時の付着・固結がほとんどないことから、製造時の生産性の向上に寄与するだけでなく、粒状リン酸質肥料の製造に適した原料として利用できる。
【0015】
前述の粉末状リン酸肥料組成物は、H3PO4を含有する水溶液を適量添加して造粒することによって、適度な硬度を有した造粒物に出来る。これは、粉末状リン酸肥料組成物に残存したMO、M(OH)2、MCO3がH3PO4と反応して第一リン酸塩の粘性物を形成し、この粘性物が粒子同士をしっかりと結合させて、造粒物を密度の高い状態にするからである。
【0016】
H3PO4水溶液を粉末状リン酸肥料組成物100重量部に対しP2O5換算で3.0〜8.0重量部の割合で添加した場合は、造粒に適した粘性を発現し、且つ適度な硬度を有した造粒物が得られる。3.0重量部未満の割合では第一リン酸塩の生成量が不足し、粒子同士を結合する力が弱まるので造粒性が悪化し、指先で簡単に潰せる程度の硬度の造粒物しか得られない。また、8.0重量部より多い割合では、第一リン酸塩の生成量が過剰であるため、粘性が高くなり過ぎて造粒性が悪化する。
【0017】
造粒時に添加するH3PO4水溶液は、H3PO4をP2O5換算で10重量部以上含有するものが良い。造粒の良し悪しはP2O5濃度に依存し、高濃度であるほど単位添加量当たりの増粘効果が高くなるので、H3PO4水溶液の使用量を減らすことができる。10重量部未満の濃度では、H3PO4水溶液を多量に添加しなければ効果が低減するため好ましくない。
【0018】
粉末状リン酸肥料組成物を造粒する際、既存の粒状肥料の製造工程で一般的に使用されている転動式造粒機、例えばパン型造粒機、回転ドラム式造粒機等を用いることによって容易に造粒できる。
【0019】
得られた造粒物を加熱乾燥すると、造粒物中の未反応MO、M(OH)2と第一リン酸塩が反応して第二リン酸塩に変化する。この反応は、造粒物中の第一リン酸塩が余剰水分及び造粒時に添加したH3PO4水溶液の水分を媒体として行われる。特に加熱乾燥温度が100〜300℃の範囲では、化学式(7)(8)(16)(17)の反応が短期間で進行し、第一リン酸塩のほとんどが第二リン酸塩に変化する。同時に余剰水分が蒸発しP2O5成分が濃縮され、ク溶性P2O5を多く含有した粒状リン酸質肥料が得られる。この反応は、MCO3と第一リン酸塩との間でも進行するが、非常に遅い反応であるためほとんど期待できない。故に、アルカリ土類金属炭酸塩を多く含有するリン酸肥料組成物については、本発明に記載の方法により造粒を行ったとしても水溶性P2O5を 低減することが困難であり好ましくない。最終的に造粒物中の余剰水分が1重量部以下まで低減すると、反応進行の状態に関わらず反応が停止し、成分が安定し た状態となる。100℃未満では余剰水分が蒸発し難いこと、第二リン酸塩生成反応が徐々に進行するので成分が安定しないこと等から好ましくない。300℃ 以上では、第二リン酸塩が熱分解してピロリン酸塩等の不溶性リン酸塩に変化するため好ましくない。
【0020】
造粒物の加熱乾燥処理は、加熱乾燥温度を100〜300℃程度に設定できる装置であれば使用できるが、加熱乾燥時間を容易に調整できるロータリー式ドライヤー等の粒状肥料用の加熱乾燥機を使用することが好ましい。
【0021】
得られた粒状リン酸質肥料は、ク溶性P2O5を多く含み、且つ水溶性P2 O5が少ないことから、長期に渡り肥効が期待できる。又、施肥時に飛散したり施肥後に雨水で流失してしまうことが少なくなるので、P2O5成分を有効に利用することが出来る。さらに、適度な硬度を有するため、他の粒状肥料との混合肥料して使用することが可能である。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、実施例により本発明の製造方法の具体例及びその効果を説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0023】
【実施例1】
天然に産するドロマイト質石灰石を1100〜1200℃で焼成して得られた軽焼ドロマイト(酸化カルシウム55.4重量%、酸化マグネシウム32.0重量%、炭酸カルシウム9.1重量%)を、最大粒子径600μm以下に粉砕した粉末7.1kgに対して、P2O5濃度45.0重量%である粗製リン酸液13.6kgを添加して、(株)川田製作所製スーパーミキサー(容量100L)で5分間混合撹拌した(両者の配合比率は、P2O5/M =0.32(モル比)に相当する)。撹拌開始から2〜3分間は水蒸気が激しく発生していた。ミキサーから取り出した生成物はサラサラして非常に流動性が高く、若干の凝集体が確認できるものの、手で簡単に押しつぶせる程度のものであった。この反応によって得られた「粉末組成物A」の重量は20.8kgであった。粉末組成物Aを構成する結晶相を粉末X線回折により同定した結果、第二リン酸カルシウム無水物、第二リン酸マグネシウム三水和物と、未反応の酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムが認められた。粉末組成物Aのク溶性P2 O5及び水溶性P2O5を肥料分析法に従い測定した結果及び両者の差を表1に示す。ク溶性P2O5の測定値中には水溶性P2O5の値も含まれるので、それらの差が実際の緩効性P2O5の含有量になる。ク溶性P2O5は第二リン酸塩由来のものである。また水溶性P2O5は主に第一リン酸塩由来のものである。
【0024】
[参考例1]
粉末組成物Aを10.0kg採取してパン型造粒機に移し、P2O5濃度10.0重量%のH3PO4水溶液3.0kg(P2O50.3kgに相当、粉末組成物Aに対して3.0重量部のP2O5)を徐々に加えて粒径1.0〜5.0mm程度に造粒した。これを電熱式乾燥機に移し100℃で3時間加熱乾燥して「粒状物A」を得た。2.38〜2.83mmの大きさの粒10個を抜き取り圧壊強度を測定したところ、平均値で1.8kgであった。これは指で潰すことが出来ない程の硬度であった。粒状物Aのク溶性P2O5及び水溶性P2O5を肥料分析法に従い測定した結果及び両者の差を表1に示す。
【0025】
【実施例2】
実施例1とは別に準備した軽焼ドロマイトを水和して得られた最大粒子径300μm以下のドロマイトプラスター(水酸化カルシウム58.5重量%、 水酸化マグネシウム32.0重量%、炭酸カルシウム6.4重量%、酸化マグネシウム1.0重量%)10.0kgに対して、P2O5濃度47.0重量%である粗製リン酸液16.0kgを添加して、スーパーミキサーで5分間混合した(両者の配合比率はP2O5/M =0.37(モル比)に相当する)。反応時の様子や生成物の状態は、実施例1と同様であった。この反応によって得られた「粉末組成物B」の重量は22.0kgであった。粉末組成物Bを構成する結晶相を粉末X線回折により同定した結果、第二リン酸カルシウム無水物、第二リン酸マグネシウム三水和物と、未反応の水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムが認められた。粉末組成物Bのク溶性P2O5及び水溶性P2O5を肥料分析法に従い測定した結果及び両者の差を表1に示す。
【0026】
[参考例2]
粉末組成物Bを10.0kg採取してパン型造粒機に移し、P2O5濃度25.0重量%のH3PO4水溶液1.6kg(P2O50.4kgに相当、粉末組成物Bに対して4.0重量部のP2O5)を徐々に加えて粒径1.0〜5.0mm程度に造粒した。これを電熱式乾燥機に移し100℃で3時間加熱乾燥して「粒状物B」を得た。参考例1と同じ方法で粒の硬度を測定した結果、圧壊強度は1.9kgであり指で潰すことが出来ない程の硬度を有していた。粒状物Bのク溶性P2O5及び水溶性P2O5を肥料分析法に従い測定した結果及び両者の差を表1に示す。
【0027】
【実施例3】
実施例2と同じ成分のドロマイトプラスター10.0kgに対して、P2O5濃度47.0重量%である粗製リン酸液8.8kgを添加して、スーパーミキサーで5分間混合した(両者の配合比率はP2O5/M =0.20(モル比)に相当する)。撹拌開始から2〜3分間は、実施例1よりも水蒸気発生量が少なかった。ミキサーから取り出した生成物は埃っぽく付着・凝集性が高かった。これは、比較的多量に残存している未反応アルカリ土類金属化合物の微粉末が粉体物性に影響を与えているためと考えられる。この反応によって得られた「粉末組成物C」の重量は14.4kgであった。粉末組成物Cを構成する結晶相を粉末X線回折により同定した結果、第二リン酸カルシウム無水物、第二リン酸マグネシウム三水和物と、未反応の酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムが認められた。粉末組成物Cのク溶性P2O5及び水溶性P2Oを肥料分析法に従い測定した結果及び両者の差を表1に示す。
【0028】
[参考例3]
粉末組成物Cを10.0kg採取してパン型造粒機に移し、P2O5濃度30.0重量%のH3PO4水溶液2.7kg(P2O50.8kgに相当、粉末組成物Cに対して8.0重量部のP2O5)を徐々に加えて粒径1.0〜5.0mm程度に造粒した。これを電熱式乾燥機に移し100℃で3時間加熱乾燥して「粒状物C」を得た。参考例2と同じ方法で粒の硬度を測定した結果、圧壊強度は1.6kgであり指で力強く押なければ崩れない程の硬度であった。粒状物Cのク溶性P2O5及び水溶性P2O5を肥料分析法に従い測定した結果及び両者の差を表1に示す。
【0029】
[比較例1]
実施例2と同じ成分のドロマイトプラスター10.0kgに対して、P2O5濃度47.0重量%である粗製リン酸液25.9kgを添加して、スーパーミキサーで混合した(両者の配合比率はP2O5/M=0.60(モル比)に相当する)。この反応によって得られた「組成物D」は紛末にならず、粘性が増大して大きな塊になってしまったため、造粒出来なかった。これは、原料粗製リン酸液の添加量が過剰であるために第一リン酸塩が多量に生成してしまったことが原因であると考えられる。組成物Dを構成する結晶相を粉末X線回折により同定した結果、第一リン酸カルシウム一水和物、第一リン酸マグネシウム二水和物、第二リン酸カルシウム無水物、第二リン酸マグネシウム三水和物、そして僅かに未反応の水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムの存在が認められた。組成物Dを100℃で3時間加熱乾燥し、ク溶性P2O5及び水溶性P2O5を肥料分析法に従い測定した結果及び両者の差を表1に示す。ク溶性P2O5の含有量は45.2重量%と大であるが、その中の水溶性P2O5の量も32.7重量%と大なので、差引の緩効性P2O5の含有量は12.5重量%に過ぎない。
【0030】
[比較例2]
水酸化カルシウム33.2重量%、水酸化マグネシウム16.8重量%、炭酸カルシウム30.9重量%、炭酸マグネシウム18.4重量%(これらの重量比は、M(OH)2:MCO3=50.3:49.7)を含有する最大粒子径300μm以下のアルカリ土類金属化合物混合粉末10.0kgに対して、P2O5濃度47.9重量%である粗製リン酸液14.2kgを添加して、スーパーミキサーで5分間混合した(両者の配合比率はP2O5/M=0.38(モル比)に相当する)。撹拌開始から2〜3分間は、水蒸気発生とともに激しく発泡した。この反応によって得られた「組成物E」は紛末にならず、粘性が増大して大きな塊になってしまった。これは、炭酸塩とH3PO4の反応によって発生する熱量が少なく余剰水分の蒸発量が少ないことと、第二リン酸塩生成反応の遅延によって第一リン酸塩が多量に残存することが原因であると考えられる。組成物Eを構成する結晶相を粉末X線回折により同定した結果、第一リン酸カルシウム一水和物、第一リン酸マグネシウム二水和物、第二リン酸カルシウム無水物、第二リン酸マグネシウム三水和物と、未反応の炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムが認められた。組成物Eを100℃で3時間加熱乾燥し、ク溶性P2O5及び水溶性P2O5を肥料分析法に従い測定した結果及び両者の差を表1に示す。
【0031】
[比較例3]
天然に産するドロマイト(炭酸カルシウム60.9重量%、炭酸マグネシウム36.8重量%)を最大粒子径300μm以下に粉砕した粉末10.0kgに対して、P2O5濃度47.9重量%である粗製リン酸液11.5kgを添加して、スーパーミキサーで5分間混合した(両者の配合比率はP2O5/M=0.37(モル比)に相当する)。この反応によって得られた「組成物F」は比較例2の組成物Eと同様の理由で紛末にならなかった。組成物Fを構成する結晶相を粉末X線回折により同定した結果、第一リン酸カルシウム一水和物、第一リン酸マグネシウム二水和物、第二リン酸カルシウム無水物、第二リン酸マグネシウム三水和物と、未反応のドロマイト、炭酸カルシウムが認められた。組成物Fを100℃で3時間加熱乾燥し、ク溶性P2O5及び水溶性P2O5 を肥料分析法に従い測定した結果及び両者の差を表1に示す。
【0032】
[比較例4]
「粉末組成物A」を10.0kg採取してパン型造粒機に移し、P2O5濃度10.0重量%のH3PO4水溶液1.0kg(P2O50.1kgに相当、粉末組成物Aに対して1.0重量部のP2O5)を徐々に加えて粒径1.0〜5.0mm程度に造粒した。これを電熱式乾燥機に移し100℃で3時間加熱乾燥して「粒状物G」を得たが、粒の硬度は圧壊強度で0.3kg以下となり、指で簡単に崩れる硬度しか得られなかった。これは、添加したH3PO4の量が少な過ぎるため、粒同士を結合させる効果が弱いことが原因であると考えられる。
【0033】
[比較例5]
「粉末組成物A」を10.0kg採取してパン型造粒機に移し、P2O5濃度30.0重量%のH3PO4水溶液3.3kg(P2O51.0kgに相当、粉末組成物Aに対して10.0重量部のP2O5)を徐々に加えて粒径1.0〜5.0mm程度に造粒しようとしたが、粘性が増大して大きな塊になってしまった。これは、添加したH3 PO4の量が過剰であるため、第一リン酸塩が多量に生成したことに起因する。
【0034】
[比較例6]
「粉末組成物A」を10.0kg採取してパン型造粒機に移し、P2O5濃度5.0重量%の清水4.0kgを徐々に加えて粒径1.0〜5.0mm程度に造粒した。これを電熱式乾燥機に移し100℃で3時間加熱乾燥して「粒状物G」を得たが、粒の硬度は圧壊強度で0.3kg以下となり、指で簡単に崩れる硬度しか得られなかった。これは、造粒助剤のH3PO4が存在しないため、粒同士を結合させる効果が弱いことが原因である。
【0035】
【表1】
【0036】
得られた粒状物A〜Cの成分値は、ク溶性P2O5が33重量部以上、水溶性P2O55重量部以下で、その差は32重量%以上であった。また、これらの粒状物は人力では容易に崩せない程の硬度を有しており、粒状リン酸質肥料に適したものであった。比較例1,2,3の組成物D,E,Fを加熱乾燥したものを分析した結果、水溶性P2O5が多すぎるため本発明には適さなかった。
【0037】
【発明の効果】
本発明の粉末状リン酸肥料組成物は、ク溶性P2O5成分である第二リン酸塩を主成分とするリン酸質肥料として利用できる。又、この組成物は、粉体輸送・計量時の付着・固結がほとんどないことから製造時の生産性の向上に寄与する。又、本発明に記載の製造方法を用いて造粒することによって、適度な硬度を有する粒状リン酸質肥料が得られ、施肥時に飛散したり、施肥後に雨水で流失してしまう等の問題を解決できる。更に、この粒状リン酸質肥料は、ク溶性P2O5含有量が多く、且つ水溶性P2O5 含有量が少ないため、リン酸吸収係数の高い土壌の改良用肥料として有効である。以上のような効果によって、有効資源であるP2O5を無駄なく利用できるため、本発明の工業的意義は大きい。
Claims (2)
- 粗製リン酸液に対し、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム及びドロマイトからなる群から選ばれた1種以上よりなり且つ炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムのうちの1種又は2種の含有量が30重量%以下であるアルカリ土類金属化合物を主成分とする粉末を、粗製リン酸液中のP2O5とアルカリ土類金属化合物中のM(但しM=Ca,Mg)のモル比がP2O5/M=0.10〜0.45となる割合で反応させて得られるMHPO4 及び/又はMHPO4・nH2O(但しn=1〜3)を主成分とする粉末状リン酸肥料組成物。
- 前記アルカリ土類金属化合物を主成分とする粉末の粒度が600μm以下であることを特徴とする請求項1記載の粉末状リン酸肥料組成物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002129471A JP4078111B2 (ja) | 2002-05-01 | 2002-05-01 | リン酸肥料組成物 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002129471A JP4078111B2 (ja) | 2002-05-01 | 2002-05-01 | リン酸肥料組成物 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2003321287A JP2003321287A (ja) | 2003-11-11 |
JP4078111B2 true JP4078111B2 (ja) | 2008-04-23 |
Family
ID=29542861
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002129471A Expired - Fee Related JP4078111B2 (ja) | 2002-05-01 | 2002-05-01 | リン酸肥料組成物 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4078111B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP4548835B2 (ja) * | 2005-04-21 | 2010-09-22 | 村樫石灰工業株式会社 | 新規りん酸加里複合肥料 |
JP2010189238A (ja) * | 2009-02-20 | 2010-09-02 | Furuta Sangyo:Kk | リン酸肥料 |
-
2002
- 2002-05-01 JP JP2002129471A patent/JP4078111B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2003321287A (ja) | 2003-11-11 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP4548835B2 (ja) | 新規りん酸加里複合肥料 | |
US9932276B2 (en) | Polyphosphate fertilizer combinations | |
US20050241354A1 (en) | Soil conditioning agglomerates containing calcium | |
CN100509710C (zh) | 清洁型脲硫酸复混肥料的制造方法 | |
US7670405B2 (en) | Process for the manufacture of a bio-release fertilizer of an anionic micro nutrient viz molybdenum | |
US4248617A (en) | Process for producing granular basic phosphate fertilizer | |
JP4078111B2 (ja) | リン酸肥料組成物 | |
WO2017151017A1 (en) | Phosphorus-potassium-nitrogen-containing npk-fertilizer and a method for the preparation of granulated phosphorus-potassium-nitrogen-containing npk-fertilizer | |
JP4074857B2 (ja) | 土壌固化剤 | |
JPH0159239B2 (ja) | ||
JP3595820B2 (ja) | 緩効性肥料の製造方法 | |
JP2010189238A (ja) | リン酸肥料 | |
RU2628292C1 (ru) | Фосфор-калий-азотсодержащее npk-удобрение и способ получения гранулированного фосфор-калий-азотсодержащего npk-удобрения | |
JP3446063B2 (ja) | 高含鉄速緩効性リン酸肥料とその製造方法 | |
JPS6117795B2 (ja) | ||
JPH0243708B2 (ja) | ||
JP2000095587A (ja) | 粒状硫酸苦土肥料とその製造方法 | |
JPH0222035B2 (ja) | ||
JPS59190286A (ja) | 苦土入り粒状複合肥料の製造方法 | |
JPS6016399B2 (ja) | 土壌改良材を兼ねたスラグ質りん酸肥料の製造方法 | |
JP2002293679A (ja) | 低フッ素リン酸肥料とその製法 | |
JP2544958B2 (ja) | 茶樹栽培改良組成物の製造方法 | |
JPH0118039B2 (ja) | ||
JPS5891093A (ja) | リン酸質肥料の製造方法 | |
JPS6246518B2 (ja) |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
RD02 | Notification of acceptance of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422 Effective date: 20040414 |
|
RD05 | Notification of revocation of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7425 Effective date: 20040414 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20040609 |
|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20050420 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20070927 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20071113 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821 Effective date: 20071129 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20071129 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20080108 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20080204 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 4078111 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110208 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110208 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120208 Year of fee payment: 4 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130208 Year of fee payment: 5 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140208 Year of fee payment: 6 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |