JP6006654B2 - ケイ酸質肥料の製造方法 - Google Patents
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ミネラル養分欠乏に対処するために、鉄鋼スラグを原料とするケイ酸質肥料が製造販売されている。
鉄鋼スラグを用いるケイ酸質肥料としては、転炉スラグを用いた製品が実用化されている。例えば、溶銑予備処理で生じる転炉スラグは、塩基度(CaO/SiO2)が3以下で可溶性ケイ酸を20〜35質量%、可溶性石灰を30〜45質量%、く溶性苦土を8質量%以下、く溶性マンガンを1〜8質量%、く溶性リン酸を5質量%未満含有するケイ酸質肥料として知られている(特許文献1)。このケイ酸質肥料は、可溶性ケイ酸を多く含有しかつその他有効なミネラル分が確保できる成分を有している。
一方、散布された造粒物が充分に肥料効果を発揮するためには、当該造粒物が土中で早期に崩壊し微粒形状に戻ることが求められる。
すなわち、経済的に効率良く、実際の農地で肥料効果を安定して享受し得る肥料製品を工業的に製造するためには、肥料効果に優れる成分を有する原料の選択に加え、製造時の造粒性に優れ、かつ造粒物が土中で早期に崩壊する肥料製品を提供することが重要である。
しかしながら、このケイ酸質肥料は、塩基度(CaO/SiO2)が3以下であるため、フリー石灰分が不足しバインダーとの間で充分強度を有する結合体の形成が困難となり、結果として造粒性が悪化して所定の製品粒径の歩留が悪化する。もしくは乾燥中の崩壊による造粒製品歩留の悪化を招いていた。そのため従来はより強力な結合力を持つバインダーを使用したり、バインダー添加量を増量したりすることで造粒性の悪化を補ってきた。
しかし、このようにバインダーによる結合力強化は肥料の土中崩壊性を悪化させ、当該製鋼スラグが持つ肥料成分の効果を安定的に発揮することが困難になると共に、高価なバインダーの大量使用による製造コストの悪化を招く問題を生じていた。
また、上記混合工程において、上記高炉スラグは、造粒後の製品許容最大ケイ酸質肥料粒径の60%以下の粒径で混合することを特徴とする。ここで、製品許容最大ケイ酸質肥料粒径とは、篩機による篩分け時の最大篩目を通過できる最大粒径をいう。
また、上記造粒工程は皿形造粒機を用いて造粒することを特徴とする。
本発明の主原料となる製鋼スラグは、20〜50重量%の鉄分、5〜30重量%の2CaO・SiO2、微量成分としてマグネシウム、リン酸、マンガン、ホウ素等を含む。この製鋼スラグは、塩基度(CaO/SiO2)が3以下、可溶性ケイ酸濃度が15〜35重量%、可溶性石灰が30〜45重量%のスラグである。塩基度が3を超えると造粒過程で過剰に固まりやすくなり、また相対的に可溶性ケイ酸濃度が低下する。好ましい塩基度は1.5以上3以下である。塩基度が1.5未満の場合もケイ酸のネットワークが強くなると予測されることから可溶性ケイ酸濃度が低下する。
可溶性ケイ酸濃度が15重量%未満ではケイ酸濃度が十分でなく、35重量%を超えてもケイ酸肥料としての効果が飽和する。また、可溶性石灰が30重量%未満では土壌を中和する能力が少なくなり、45重量%を超えると可溶性ケイ酸濃度が低下する。
好ましい高炉スラグは、塩基度が1.0〜1.5であり、微量成分として酸化マグネシウム、酸化マンガン等を含む。
製鉄所からから搬入される製鋼スラグ1は、粉砕工程2にて粉砕される。
粉砕工程2は、粗破砕工程、磁選工程および微粉砕化工程をへて粉砕され、篩目の大きさが600μm以下の粉体となるように製鋼スラグ1が粉砕される。
粗破砕および磁選工程は、粗破砕機により粗破砕するとともに磁選機により金属鉄を除去する。ここで、粗破砕工程と磁選工程とは、粗破砕後に磁選を行なってもよく、または粗破砕工程と磁選工程とを同時に行なってもよい。粗破砕および磁選工程は、粉砕工程の最後において所定の粒径を得るために必要となる工程である。
磁選工程は、ケイ酸質肥料として、必ずしも必要とされない金属鉄を除去する工程である。なお、搬入される製鋼スラグ1が金属鉄を含まなく、かつ粗破砕されている場合は、粗破砕および磁選工程を省略することができる。
粗破砕された製鋼スラグは、スラグバンカーに一時貯蔵され、さらにボールミルにより微粉砕することが好ましい。ボールミルは主に乾式で使用され、乾式自生粉砕ミルよりさらに微粉砕できる。
なお、肥料の造粒工程で使用されるバインダーを配合することができる。高炉スラグ3aを配合することで、ケイ酸質肥料に配合されるバインダー量を必要最小限に抑えることができる。
このように、農地散布後の土中で肥料粒子が容易に崩壊し製鋼スラグが微粒に戻ることで比表面積が確保できるため、塩基度が3以下、可溶性ケイ酸濃度が15〜35重量%、可溶性石灰が30〜45重量%の製鋼スラグが本来持ち合わせている肥料効果を安定的に享受することが可能となる。
ケイ素を0.55重量%、リン酸を0.011重量%含む溶銑を転炉型精錬炉に装入し、脱ケイ、脱リン処理して得られた塩基度が1.8、可溶性ケイ酸濃度が21重量%、可溶性石灰が38重量%の製鋼スラグを最大粒径が600μm以下、粒径61μm以下の割合が50%となるように微粉砕した。
次に当該製鋼スラグ粉を分取した後、最大粒径が3mmとした高炉水砕スラグ8重量%と、バインダーとしてリグニンスルホン酸ナトリウム5重量%(固形分換算)とを混合して皿型造粒機で造粒して、粒径範囲が1.7〜5.5mmの粒状ケイ酸質肥料を製造した。スラグの特性および配合割合、バインダーの配合割合、肥料の粒径を表1に示す。なお、スラグとバインダーとの配合割合は、ケイ酸質肥料全体に対する割合(固形分換算)である。
造粒製品歩留は原料として用いた製鋼スラグおよび高炉スラグの合計量に対するケイ酸質肥料製品の割合を重量%で表した。
土中崩壊性試験は、試料50粒を100mlのビーカーに採り、乾土(1,000μmの網ふるいを全通したもの)50gを加えて混合し、使用土壌の最大容水量の60重量%となるように水を加えた後、密封して1週間放置する、いわゆる「土壌処理」を経た試料から20粒を取り出して測定した硬度であり、硬度が低い物ほど良好な土中崩壊性を示している。
さらに、正方形(10m×10m)の水田に得られたケイ酸質肥料を10kg散布し、イネを育成した結果を表2に示す。
最大粒径が3mmの高炉徐冷スラグを30重量%と、バインダーとしてリグニンスルホン酸カルシウム5重量%(固形分換算)とを混合する以外は、実施例1と同様の製造方法を用いて粒径範囲が1.7〜5.5mmの粒状ケイ酸質肥料を製造し、実施例1と同様の方法で評価した。配合割合等を表1に、また得られたケイ酸質肥料の製造歩留および土中崩壊性試験の結果を表2に示す。
また、実施例1に対して、隣接する類似の気象条件、土壌条件を有する長方形(縦5m×横2m)の農地に実施例2で得られたケイ酸質肥料を1kg散布する以外は実施例1と同様の条件でコマツナを育成した結果を表2に示す。
さらに、実施例1に対して、隣接する類似の気象条件、土壌条件を有する正方形(10m×10m)の水田に実施例2で得られたケイ酸質肥料を10kg散布する以外は実施例1と同様の条件でイネを育成した結果を表2に示す。
最大粒径が5mmの高炉水砕スラグを25重量%と、バインダーとしてリグニンスルホン酸ナトリウム5重量%(固形分換算)とを混合する以外は、実施例1と同様の製造方法を用いて粒径範囲が1.7〜5.5mmの粒状ケイ酸質肥料を製造した。配合割合等を表1に、また得られたケイ酸質肥料の製造歩留および土中崩壊性試験の結果を表2に示す。
また、実施例1に対して、隣接する類似の気象条件、土壌条件を有する長方形(縦5m×横2m)の農地に実施例3で得られたケイ酸質肥料を1kg散布する以外は実施例1と同様の条件でコマツナを育成した結果を表2に示す。
さらに、実施例1に対して、隣接する類似の気象条件、土壌条件を有する正方形(10m×10m)の水田に実施例3で得られたケイ酸質肥料を10kg散布する以外は実施例1と同様の条件でイネを育成した結果を表2に示す。
高炉水砕スラグを混合しない以外は実施例1と同様の製造方法を用いて粒径範囲が1.7〜5.5mmの粒状ケイ酸質肥料を製造した。配合割合等を表1に、また得られたケイ酸質肥料の製造歩留および土中崩壊性試験の結果を表2に示す。
また、実施例1に対して、隣接する類似の気象条件、土壌条件を有する長方形(縦5m×横2m)の農地に比較例1で得られたケイ酸質肥料を1kg散布する以外は実施例1と同様の条件でコマツナを育成した結果を表2に示す。
さらに、実施例1に対して、隣接する類似の気象条件、土壌条件を有する正方形(10m×10m)の水田に比較例1で得られたケイ酸質肥料を10kg散布する以外は実施例1と同様の条件でイネを育成した結果を表2に示す。
ケイ素を0.55重量%、リン酸を0.011重量%含む溶銑を、脱ケイ、脱リン等の溶銑予備処理ではなく脱炭をも伴う通常の転炉吹錬を実施して、炭素が0.1重量%の溶鋼を製造した際に得られた、塩基度が3.8、可溶性ケイ酸が11重量%、可溶性石灰が47重量%の製鋼スラグを最大粒径が600μm以下、粒径61μm以下の割合が50%となるように微粉砕した。
次に当該製鋼スラグ粉を分取した後、高炉水砕スラグを混合することなく、バインダーとしてリグニンスルホン酸カルシウム7.5重量%(固形分換算)を配合して皿型造粒機により造粒して、粒径範囲が1.7〜5.5mmの粒状ケイ酸質肥料を製造した。配合割合等を表1に、また得られたケイ酸質肥料の製造歩留および土中崩壊性試験の結果を表2に示す。
また、実施例1に対して、隣接する類似の気象条件、土壌条件を有する長方形(縦5m×横2m)の農地に比較例2で得られたケイ酸質肥料を1kg散布する以外は実施例1と同様の条件でコマツナを育成した結果を表2に示す。
最大粒径2mmの高炉水砕スラグを10重量%混合する以外は比較例2と同様にして粒径範囲が1.7〜5.5mmの粒状ケイ酸質肥料を製造した。配合割合等を表1に、また得られたケイ酸質肥料の製造歩留および土中崩壊性試験の結果を表2に示す。
また、実施例1に対して、隣接する類似の気象条件、土壌条件を有する長方形(縦5m×横2m)の農地に比較例3で得られたケイ酸質肥料を1kg散布する以外は実施例1と同様の条件でコマツナを育成した結果を表2に示す。
高炉水砕スラグを45重量%配合する以外は実施例1と同様にして、粒径範囲が1.7〜5.5mmの粒状ケイ酸質肥料を製造した。配合割合等を表1に、また得られたケイ酸質肥料の製造歩留および土中崩壊性試験の結果を表2に示す。
また、実施例1に対して、隣接する類似の気象条件、土壌条件を有する長方形(縦5m×横2m)の農地に比較例4で得られたケイ酸質肥料を1kg散布する以外は実施例1と同様の条件でコマツナを育成した結果を表2に示す。
一方、比較例1および比較例3では、造粒製品歩留が80%以下となった。加えて、比較例2では、造粒性の悪化を補うために実施例1、実施例2および実施例3の1.5重量倍のバインダーを造粒工程で添加した。その結果、製品粒が硬めとなり土中崩壊性が悪化した。
また比較例3では、造粒時の粒径が比較的に小さく粒の成長が悪化した結果、歩留が低下した。
比較例2は、良好な造粒製品歩留を示したが、土中崩壊性に劣る結果となった。
一方比較例1においては、精玄米重量、屑米重量共に本実施例に及ばない結果となり、登熟歩合も88.0%に留まった。
更に比較例4は、表2に示すように、造粒製品歩留、土中崩壊性については実施例とほぼ同等の結果となったが、コマツナ収量、精玄米重量、屑米重量および登熟歩合については、本実施例に及ばない結果となった。
2 粉砕工程
3 高炉スラグ混合工程
3a 高炉スラグ
4 造粒工程
5 製品調整工程
6 ケイ酸質肥料
Claims (3)
- 製鉄所から副生される製鋼スラグを主原料とするケイ酸質肥料の製造方法であって、
前記製鋼スラグは、塩基度が3以下、製鋼スラグ全体に対して、可溶性ケイ酸濃度が15〜35重量%、可溶性石灰が30〜45重量%含有する製鋼スラグであり、
前記製鋼スラグを粉砕する粉砕工程と、
前記粉砕工程で得られた粉砕物に、ケイ酸質肥料全体に対して、高炉スラグを2〜40重量%混合する高炉スラグ混合工程と、
前記高炉スラグ混合工程で得られた混合物を造粒する造粒工程とを備えることを特徴とするケイ酸質肥料の製造方法。 - 前記高炉スラグ混合工程において、前記高炉スラグは、造粒後の製品許容最大ケイ酸質肥料粒径の60%以下の粒径で混合することを特徴とする請求項1記載のケイ酸質肥料の製造方法。
- 前記造粒工程は皿形造粒機を用いて造粒することを特徴とする請求項1または請求項2記載のケイ酸質肥料の製造方法。
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