JP2014177381A - 鉱さいりん酸肥料の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】鉱さいりん酸肥料全体に含まれるく溶性りん酸が3.0質量%以上、同アルカリ分が20.0質量%以上、および同可溶性けい酸が10.0質量%以上の肥料成分を含有する鉱さいりん酸肥料の製造方法として、塩基度が1.5〜3.0、可溶性けい酸濃度が15〜35質量%、可溶性石灰が30〜45質量%、酸化アルミニウムが4.5質量%以下含有する、製鉄所の溶銑予備処理工程で副生されるスラグを粉砕する粉砕工程と、上記スラグを磁力選鉱して、鉱さいりん酸肥料全体に含まれる鉄分濃度を17質量%以下にする磁力選鉱工程とを備える。
【選択図】図1
Description
また、肥料取締法に基づく普通肥料の1つとして「鉱さいりん酸肥料」が定められ、その規格も定められている。
ミネラル養分欠乏に対処するために、鉄鋼スラグを原料とするけい酸質肥料が提案され、製造販売されている(特許文献3)。
しかしながら、製鋼鉱さいを原料として用いながら、く溶性りん酸が3.0質量%以上の品質を安定して達成することは困難であり、肥料取締法の規定する「鉱さいりん酸肥料」として利用できるまでには至っていないのが現状である。
また、特許文献2においては、スラグの融点降下剤としてホタル石(CaF2)を混合した造滓剤を不活性ガスを共に吹き込むことを必須としており、肥料中にフッ素が残存するという問題がある。
特許文献3に開示されている「けい酸質肥料」においては、当該肥料が可溶性けい酸の確保に主眼を置かれたものであるため、く溶性りん酸濃度は1〜4質量%である。したがってりん酸を保証するためには、高価なく溶性りん酸を混合材として混合する必要があった。
上記スラグは、塩基度が1.5〜3.0、可溶性けい酸濃度が15〜35質量%、可溶性石灰が30〜45質量%、酸化アルミニウムが4.5質量%以下含有する、製鉄所の溶銑予備処理工程で副生されるスラグであり、上記スラグを粉砕する粉砕工程と、上記スラグを磁力選鉱して、鉱さいりん酸肥料全体に含まれる鉄分濃度を17質量%以下にする磁力選鉱工程とを備えることを特徴とする。
また、上記粉砕工程および磁力選鉱工程の少なくとも1つの工程後に、上記スラグを造粒する造粒工程とを備えることを特徴とする。
また、上記造粒工程中、または上記造粒工程前に高炉スラグを混合することを特徴とする。
可溶性石灰が30質量%未満では、野菜等で求められる土壌中和能力が少なくなり、45質量%を超えると可溶性けい酸濃度の低下を招くことになる。
したがって、本発明においては、上記した鉄分を充分に含んだ塩基度が1.5〜3.0で、可溶性けい酸濃度が15〜35質量%、可溶性石灰が30〜45質量%、酸化アルミニウムが4.5質量%以下の製鋼スラグを原料として使用し、この原料を粉砕し、磁力選鉱(磁選)によって鉄分濃度が17質量%以下、好ましくは15質量%以下になるように調製する。鉄分濃度の好ましい下限は5質量%である。これによって、スラグ中のく溶性りん酸の濃度の割合を3質量%以上に高めることが可能となる。特に鉄分濃度の中でも金属鉄や磁鉄鉱などの成分を除去することにより、く溶性りん酸の濃度を上げることができる。
図1は砂状鉱さいりん酸肥料の製造工程図である。
製鉄所から搬入される製鋼スラグ1は、粉砕工程2にて粉砕される。粉砕工程において、鉱さいりん酸肥料の最大粒子径は小さいほど肥料効果が期待できるが、散布時の粉塵や飛散に配慮した粒子径を選ぶことが必要である。鉱さいりん酸肥料規格にもあるように、網目4mmの篩を全通する粒子径とする。また油分や有機物等による防散処理を施してもよい。
粉砕工程2および磁力選鉱工程3は、原料スラグの粒径、鉄分濃度、粒鉄の大きさ等の条件によって、粉砕−磁選を複数回繰返し処理を実施してもよい。また粉砕後の粒径については、製品粒径が保てる範囲で、効率よく磁選が可能なサイズを選ぶことができる。
整粒工程4は、網目4mmの製品振動篩を全通する粒子径となるように篩分けされる。
図2において、磁力選鉱工程3までの工程および製品調整工程6は、上記図1で説明した工程を採用できる。磁力選鉱工程3後に造粒するための乾燥・微粉砕工程8、混合工程9、造粒工程10、および造粒品乾燥工程11が設けられている。
乾燥・微粉砕工程8は、乾燥および水分調整した後微粉砕する工程である。乾燥および水分調整工程は全水分量を5質量%以下に調整する。全水分量をこの範囲に調整することで粒子同士の固着が少なくなり微粉砕化が容易になると共に、遊離酸化カルシウム等の安定化に寄与する。特にキルン乾燥機等を用いることにより、水分量を調整する乾燥と同時に遊離酸化カルシウム等の安定化を連続して行なうことが好ましい。
微粉砕はボールミル等を用いてなされる。製鋼スラグ1は、スラグバンカーに一時貯蔵され、さらにボールミルにより微粉砕される。ボールミルは主に乾式で使用され、乾式自生粉砕ミルよりさらに微粉砕できる。
バインダーとしては、例えば、りん酸、粘土、ベントナイト、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、糖蜜、リグニン、リグニンスルホン酸金属塩、硫酸マグネシウム、デンプン等の中から選ばれる1種以上を単独でまたは混合して用いることができる。造粒工程で好ましく使用される皿型造粒機での造粒性を考慮すると糖蜜、リグニンまたはリグニンスルホン酸金属塩が好ましい。
高炉スラグとしては、高炉での銑鉄製錬のときに排出される水砕スラグおよび/または徐冷スラグを使用できる。高炉スラグを混合することで、造粒性および肥料散布後の土中崩壊性を高めることができる。しかし本来の目的であるく溶性りん酸濃度を確保する意味では、く溶性りん酸濃度レベルが可溶性けい酸等の他成分に比べて低いことに鑑み、混合する高炉スラグの濃度は10質量%以下とすることが好ましい。また、バインダー(固形分換算)は7質量%以下とすることが好ましい。
バインダーと高炉スラグとの混合物を用いることで、バインダー量を必要最小限に抑えることができる。
粒状鉱さいりん酸肥料7’の粒子径は、1.5〜6mm、好ましくは1.7〜5.5mmである。
製鉄所の製鋼工程において、溶銑を転炉型精錬炉に装入し、脱りん処理して得られた塩基度が1.74、2.02、および2.36の3種類の製鋼スラグを原料スラグとして用いた。原料スラグの組成を表1に示す。表1において、T.CaOは全CaO濃度、T.SiO2は全けい酸濃度、塩基度はT.CaO/T.SiO2である。また、T.Feは全鉄分濃度を表す。各成分はそれぞれ肥料分析法(農林水産省農業環境技術研究所法)により分析した。
また、磁力選鉱を施しても鉄分濃度が17質量%を超える例を比較例1〜10として表2に示す。なお表2において、簡略化した各組成の意味は表1と同様である。
また同時にアルカリ分が20質量%以上、可溶性けい酸が20質量%以上となり、肥料取締法の「鉱さいりん酸肥料」の条件を満足することが分かった。この結果、3質量%以上のく溶性りん酸を保証できることとなり、一般的に高価な化成肥料等で全量補給されるりん酸量を低減でき、大幅なコスト削減が可能となった。
比較例11〜15として、塩基度が1.0〜1.4の5種類の製鋼スラグを粉砕または造粒して鉱さいりん酸肥料を製造した。
また、比較例16〜20として、塩基度が1.6〜3.0の5種類の製鋼スラグを粉砕または造粒して鉱さいりん酸肥料を製造した。結果を表3に示す。なお表3において、簡略化した各組成の意味は表1と同様である。
2 粉砕工程
3 磁力選鉱工程
4 整粒工程
5 乾燥工程
6 製品調整工程
7、7’ 鉱さいりん酸肥料
8 乾燥・微粉砕工程
9 混合工程
10 造粒工程
11 造粒品乾燥工程
Claims (4)
- 鉱さいりん酸肥料全体に含まれるく溶性りん酸が3.0質量%以上、同アルカリ分が20.0質量%以上、および同可溶性けい酸が10.0質量%以上の肥料成分を含有する鉱さいりん酸肥料を、原料となるスラグより製造する鉱さいりん酸肥料の製造方法であって、
前記スラグは、塩基度が1.5〜3.0、可溶性けい酸が15〜35質量%、可溶性石灰が30〜45質量%、酸化アルミニウムが4.5質量%以下含有する、製鉄所の溶銑予備処理工程で副生されるスラグであり、
前記スラグを粉砕する粉砕工程と、
前記スラグを磁力選鉱して、鉱さいりん酸肥料全体に含まれる鉄分濃度を17質量%以下にする磁力選鉱工程とを備えることを特徴とする鉱さいりん酸肥料の製造方法。 - 前記粉砕工程および磁力選鉱工程の少なくとも1つの工程後に、前記スラグを造粒する造粒工程を備えることを特徴とする請求項1記載の鉱さいりん酸肥料の製造方法。
- 前記造粒工程中、または前記造粒工程前に高炉スラグを混合することを特徴とする請求項2記載の鉱さいりん酸肥料の製造方法。
- 請求項1、請求項2または請求項3記載の製造方法により製造されることを特徴とする鉱さいりん酸肥料。
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