JP2014122458A - 繊維複合体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】平均繊維径が30nm以下である繊維とマトリクス材料を含む繊維複合体であって、厚み100μmにおける該繊維複合体のJIS規格K7136によるヘーズが5以下であることを特徴とする繊維複合体。繊維を、100MPa以上の圧力から噴出させて減圧する超高圧ホモジナイザー及び/又は周波数が15kHz以上1MHz以下で、実効出力密度が1W/cm2以上の超音波で解繊し、平均繊維径が30nm以下である繊維を得る工程と、平均繊維径が30nm以下である繊維とマトリクス材料を複合化する工程とを含むことを特徴とする該繊維複合体の製造方法。
【選択図】なし
Description
即ち、これらの用途には、高透明性、高耐熱性、低吸水性かつ低線膨張率のプラスチック材料が求められている。
明であるが、最も光線透過率の高いサンプルの全光線透過率が88.6%と仮定すると、ヘーズは8.2%と計算され、高い値を示す。
また、本発明の繊維複合体のように、繊維を含む複合体の場合、複合体中の繊維の繊維径が大きいと、繊維が複合体基板の表面に表出したとき、表面の凹凸が大きくなる。表面の平滑性が悪いと、有機EL素子用途の場合、ダークスポットの原因になる。このような点から、繊維複合体を構成する繊維の平均繊維径は30nm以下であることが必要になる。
また、透明性の中でも平行光線透過率が重要である。平行光線透過率が低い、即ち散乱光が大きい、つまりヘーズが大きいと、画素が不明瞭になり、色がぼやけたりにじんだりする。繊維を含む複合体の場合は、繊維径が光の波長に対して十分に小さくないと、光の散乱が生じてしまうという点から、厚み100μmにおける繊維複合体のJIS規格K7136によるヘーズは5以下であることが必要になる。繊維の平均繊維径が大きかったり、ヘーズが大きかったりすると、表面平滑性の悪化、平行光線透過率の低下という点で問題である。
本発明で用いられる繊維(以下「本発明の繊維」と称する場合がある。)としては、天然の繊維や合成繊維、無機の繊維などが挙げられる。
天然の繊維としては、植物やホヤ、バクテリアが製造するセルロース繊維や酢酸セルロースなどのセルロース誘導体、エビやかになどの甲殻類に含まれるキチンやキトサンなどのキチン誘導体、毛髪や羊毛、絹、蜘蛛の糸等のタンパク質繊維、DNA等の核酸、ポリイソプレン等の天然ゴム繊維が挙げられる。合成繊維としてはポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル等の付加重合型高分子繊維、ナイロンなどのポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどのポリエステル繊維、ポリウレタン繊維、フェノール樹脂繊維やメラミン樹脂繊維、ポリイミド繊維、アラミド繊維等、各種高分子繊維が挙げられる。無機の繊維としては、ガラス繊維や、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、チタン等の金属の酸化物、純金属や合金、金属を含む化合物の針状結晶、カーボンナノチューブやカーボン繊維等が挙げられる。
中でも、セルロース繊維は結晶の直径が数nm程度であり、好適に用いることができる。
セルロース繊維は、セルロース不織布として用いることが好ましい。
本発明におけるセルロース不織布(以下「本発明のセルロース不織布」と称する場合がある。)とは、主としてセルロースからなる不織布であり、セルロース繊維の集合体である。セルロース不織布はセルロース懸濁液を抄紙又は塗布によって製膜する方法、あるいはゲル状膜を乾燥する方法などによって得られる。
本発明のセルロース不織布の厚みは特に制限されるものではないが、好ましくは10μm以上、さらに好ましくは50μm以上、特に好ましくは80μm以上で、好ましくは10cm以下、さらに好ましくは1cm以下、より好ましくは1mm以下、特に好ましくは250μm以下である。セルロース不織布の厚みは、製造の安定性、強度の点から上記下限以上で厚い方が好ましく、生産性、均一性、樹脂の含浸性の点から上記上限以下で薄い方が好ましい。
本発明の繊維の繊維径は細いことが好ましい。具体的には1500nm以上の繊維径のものを含んでいないことが好ましく、さらに好ましくは1000nm以上の繊維径のものを含んでいないことが好ましく、特に好ましくは500nm以上の繊維径のものを含んでいないことが好ましい。1500nm以上の繊維径のものを含んでいないものであれば、樹脂等のマトリクス材料と複合化した場合、透明性が高く、線膨張率が低いものが得られる点において好ましい。
なお、繊維の繊維径はSEM観察により確認することができる。
繊維の長さについては特に限定されないが、平均で100nm以上が好ましい。繊維の平均長さが100nmより短いと、強度が不十分となる恐れがある。
本発明の繊維、好ましくはセルロース不織布の色目は、白いことが好ましい。
本発明のセルロース不織布は、上述のように繊維径の細いセルロース繊維で構成されるが、空隙があるために、セルロース不織布自体は実質的には透明にならず、樹脂等のマトリクス材料を含浸させて複合化した後に透明となる。その際、無色であることが好ましい。よって、不織布自体は白いことが好ましい。
本発明のセルロース不織布の原料としては、植物由来の原料を挙げることができる。具体的には、針葉樹や広葉樹等の木質、コットンリンターやコットンリント等のコットン、ケナフや麻、ラミーなどが挙げられる。植物由来の原料は、バクテリアセルロースなどの非植物由来のセルロースに比べて生産性やコスト面で実用性が非常に高い点で経済的に好ましい。植物由来の原料の中でも針葉樹や広葉樹などの木質はミクロフィブリルが約4nmと非常に微細であり、分岐のない線状の繊維形態を有することから、光の散乱を生じにくい。さらに、地球上で最大量の生物資源であり、年間約700億トン以上ともいわれる量が生産されている持続型資源あることから、地球温暖化に影響する二酸化炭素削減への寄与も大きく、性能的にも経済的にも非常に好ましい。
複合体中の不織布が植物由来のセルロース繊維よりなることは、SEM観察により繊維形態を確認する方法や、植物由来のセルロースにのみ存在するリグニンなどの成分を定性することにより確認することができる。
本発明のセルロース不織布は空隙率が35vol%以上であることが好ましく、さらには35vol%以上60vol%以下であることが好ましい。セルロース不織布の空隙率が小さいと、後に示す化学修飾が進行しにくかったり、樹脂等のマトリクス材料が含浸しにくくなり、複合体にしたときに未含浸部が残るため、その界面で散乱が生じてヘーズが高くなり好ましくない。また、セルロース不織布の空隙率が高いと複合体としたとき、セルロース繊維による十分な補強効果が得られず、線膨張率が大きくなるので、好ましくない。
空隙率(vol%)={(1−B/(M×A×t)}×100
ここで、Aは不織布の面積(cm2)、t(cm)は厚み、Bは不織布の重量(g)、Mはセルロースの密度であり、本発明ではM=1.5g/cm3と仮定する。セルロース不織布の膜厚は、膜厚計(PEACOK社製 PDN−20)を用いて、不織布の種々な位置について10点の測定を行い、その平均値を採用する。
本発明の繊維複合体中の繊維は、化学修飾された繊維であることが好ましい。化学修飾とは、繊維の表面が化学修飾剤と反応して化学修飾されたものであり、繊維がセルロース繊維の場合、セルロース中の水酸基が化学修飾剤と反応して化学修飾されているものである。以下、繊維がセルロースである場合を代表例として繊維の化学修飾を説明するが、これに限定されるものではない。
化学修飾によってセルロースに導入させる官能基としては、アセチル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロピオニル基、プロピオロイル基、ブチリル基、2−ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、フロイル基、シンナモイル基等のアシル基、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアノイル基等のイソシアネート基、メチル基、エチル基、プロピル基、2−プロピル基、ブチル基、2−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基等のアルキル基、オキシラン基、オキセタン基、チイラン基、チエタン基等が挙げられる。これらの中では特にアセチル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基等の炭素数2〜12のアシル基、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜12のアルキル基が好ましい。
修飾方法としては、特に限定されるものではないが、セルロースと次に挙げるような化学修飾剤とを反応させる方法がある。この反応条件についても特に限定されるものではないが、必要に応じて溶媒、触媒等を用いたり、加熱、減圧等を行うこともできる。
アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール等が挙げられる。
ハロゲン化試薬としては、例えばアセチルハライド、アクリロイルハライド、メタクリロイルハライド、プロパノイルハライド、ブタノイルハライド、2−ブタノイルハライド、ペンタノイルハライド、ベンゾイルハライド、ナフトイルハライド等が挙げられる。
イソシアナートとしては、例えばメチルイソシアナート、エチルイソシアナート、プロピルイソシアナート等が挙げられる。
アルコキシシランとしては、例えばメトキシシラン、エトキシシラン等が挙げられる。
オキシラン(エポキシ)等の環状エーテルとしては、例えばエチルオキシラン、エチルオキセタン等が挙げられる。
これらの化学修飾剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
ここでいう化学修飾率とは、セルロース中の全水酸基のうちの化学修飾されたものの割合を示し、化学修飾率は下記の滴定法によって測定することができる。
セルロース不織布0.05gを精秤しこれにメタノール6ml、蒸留水2mlを添加する。これを60〜70℃で30分攪拌した後、0.05N水酸化ナトリウム水溶液10mlを添加する。これを60〜70℃で15分攪拌しさらに室温で一日攪拌する。ここにフェノールフタレインを用いて0.02N塩酸水溶液で滴定する。
ここで、滴定に要した0.02N塩酸水溶液の量Z(ml)から、化学修飾により導入された置換基のモル数Qは、下記式で求められる。
Q(mol)=0.05(N)×10(ml)/1000
−0.02(N)×Z(ml)/1000
この置換基のモル数Qと、化学修飾率X(mol%)との関係は、以下の式で算出される(セルロース=(C6O5H10)n=(162.14)n,繰り返し単位1個当たりの水酸基数=3,OHの分子量=17)。なお、以下において、Tは置換基の分子量である。
本発明のセルロース不織布の製造方法は特に限定されるものではないが、化学修飾したセルロース不織布を製造する場合には、好ましくは、セルロースを不織布とした後に、化学修飾することにより、より好ましくは、セルロースを有機溶媒で洗浄した後に不織布とし、その後化学修飾することにより製造される。
化学修飾が終了した後は水でよく洗浄した後、残留する水をアルコール等の有機溶媒で置換して乾燥することが好ましい。
不織布の製造には微細化したセルロース繊維を用いる。
針葉樹や広葉樹等の木質、コットンリンターやコットンリント等のコットンは一般的な塩素による漂白法や、酸やアルカリ、各種有機溶剤による抽出などにより精製した後、微細化処理を行い微細化したセルロースを得る。
具体的には、セルロース懸濁液を増圧機で100MPa以上、好ましくは150MPa以上、より好ましくは200MPa以上、更に好ましくは220MPa以上に加圧し、細孔直径50μm以上、好ましくは100μm以上、より好ましくは150μm以上、また800μm以下、好ましくは500μm以下、より好ましくは350μm以下のノズルから噴出させ、圧力差が50MPa以上、好ましくは80MPa以上、より好ましくは90MPa以上となるように減圧する。この圧力差で生じるへき開現象により、セルロース繊維は微細に解繊される。この噴出動作は必要に応じて複数回繰り返すことができる。通常1回以上、好ましくは3回以上、より好ましくは5回以上、更に好ましくは10回以上である。また、通常100回以下であり、好ましくは50回以下、より好ましくは20回以下、更に好ましくは15回以下である。繰り返し数が多いほど微細化の程度を上げることができる。しかし、過度に多いとコスト高やエネルギー消費量が多くなり好ましくない。
具体的には、セルロース繊維の懸濁液に15kHz以上、好ましくは20kHz以上の周波数であり、1MHz以下、好ましくは500kHz以下、より好ましくは100kHz以下の周波数で超音波を照射する。超音波の周波数が小さすぎるとキャビテーションの発生が生じにくく、大きすぎると物理的な作用を発生させにくい。また、超音波の出力としては、実効出力密度が1W/cm2以上、好ましくは10W/cm2以上、より好ましくは20W/cm2以上、更に好ましくは50W/cm2以上である。超音波の出力が小さいと微細化効率が極端に低下し、十分な微細化を行うためには長時間の照射が必要となり実用的ではない。また、超音波の実効出力密度は500W/cm2以下が振動子やホーンの耐久性から好適である。
なお、超音波の実効出力密度は水500mLの温度上昇から計算することができる。即ち、容器に水を500mL量り入れ、超音波を照射した時の上昇した温度を測定し、下記式に従って計算することで求められる。
P=(G/s)×4.18×500/m
ここで、Pは超音波の実効出力密度(W/cm2)、Gは上昇温度(℃)、sは超音波の照射時間(秒)、mは超音波の振動面の面積(cm2)であり、ホーンタイプの場合はその端面の面積、節状に振動面がある場合はその面積である。浴槽式などの場合は振動子の取り付けてある面が振動するためその面積に相当する。
具体的には孔径0.1〜5μm、例えば1μmのポリテトラフルオロエチレンの多孔膜、孔径0.1〜5μm、例えば1μmのポリエチレンテレフタレートやポリエチレンの織物等が挙げられる。
化学修飾については、不織布に製膜する前のセルロースに行ってもよいし、不織布に製膜してから化学修飾を行ってもよい。
この場合、化学修飾は通常の方法をとることができるが、通常精製後のセルロースは含水状態であるので、この水を反応溶媒等と置換して、化学修飾剤と水との反応を極力抑制することが重要である。また、ここで水を除去するために乾燥すると、後の微細化が進行しにくくなるため乾燥工程を入れることは好ましくない。
この後、化学修飾されたセルロースが、精製前の粗セルロースであれば、この化学修飾後に精製を行い、さらに微細化して製膜して不織布とする。精製後のセルロースに化学修飾を行った場合は、この化学修飾後に微細化して製膜して不織布とする。また、微細セルロースに化学修飾を行った場合は、化学修飾後に製膜して不織布とする。不織布とするとする際、例えば、微細セルロース懸濁液を濾過することにより不織布とする場合は、濾過による製膜工程において、セルロース中の水を最後にアルコール等の有機溶媒に置換する。
不織布の化学修飾も、通常の方法をとることができ、具体的には、上述の不織布とする前のセルロースに化学修飾を行う場合と同様である。
不織布に製膜する前に化学修飾を行った場合も、不織布に製膜してから化学修飾を行った場合も、最後に不織布を乾燥するが、この乾燥には送風乾燥又は減圧乾燥してもよいし、加圧乾燥してもよい。また、加熱乾燥しても構わない。加熱する場合、温度は50℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましく、また、250℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましい。加熱温度が低すぎると乾燥に時間がかかったり、乾燥が不十分になる可能性があり、加熱温度が高すぎると不織布が着色したり、分解したりする可能性がある。また、加圧する場合は0.01MPa以上が好ましく、0.1MPa以上がより好ましく、また、5MPa以下が好ましく、1MPa以下がより好ましい。圧力が低すぎると乾燥が不十分になる可能性があり、圧力が高すぎるとセルロース不織布がつぶれたり分解する可能性がある。
上述の本発明の繊維は、マトリクス材料と複合化されて、本発明の繊維複合体となる。
例えば、上述の本発明のセルロース不織布はマトリクス材料と複合化されて、本発明の繊維複合体となる。
本発明において、マトリクス材料とは、本発明の繊維、好ましくは本発明のセルロース不織布の空隙を埋める材料であり、好ましくは高分子材料である。
熱可塑性樹脂としては、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、芳香族ポリカーボネート系樹脂、脂肪族ポリカーボネート系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリオレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、熱可塑性ポリイミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリスルホン系樹脂、非晶性フッ素系樹脂等が挙げられる。
熱硬化性樹脂、活性エネルギー線硬化性樹脂とは、硬化する前の前駆体もしくは硬化してなる樹脂硬化物のことを意味する。ここで前駆体は、常温では液状、半固体状又は固形状等であって常温下又は加熱下で流動性を示す物質を意味する。これらは硬化剤、触媒、熱又は活性エネルギー線の作用によって重合反応や架橋反応を起こして分子量を増大させながら網目状の三次元構造を形成してなる不溶不融の樹脂となり得る。また、樹脂硬化物とは、上記熱硬化性樹脂前駆体又は光硬化性樹脂前駆体が硬化してなる樹脂を意味する。
本発明における熱硬化性樹脂としては、特に限定されるものではないが、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、オキセタン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、珪素樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂等の前駆体が挙げられる。
分子中に2個のオキセタン環を有する化合物としては、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、4,4’−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル等が挙げられる。
分子中に3〜4個のオキセタン環を有する化合物としては、分枝状のポリアルキレンオキシ基やポリシロキシ基と3−アルキル−3−メチルオキセタンの反応物などが挙げられる。
市販のオキセタン樹脂としてはアロンオキセタン OXT-101、OXT-121、OXT-211、OXT-221、OXT-212、OXT-610、OXT-213(東亞合成(株)社製)ETERNACOLL OXETANEEHO、OXBP、OXMA、OXTP(宇部興産(株)社製)などが挙げられる。
例えばビス(アクリロイルオキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(メタクリロイルオキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(アクリロイルオキシ−メタクリロイルオキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(アクリロイルオキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、ビス(メタクリロイルオキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(アクリロイルオキシ−メタクリロイルオキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、ビス(アクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(アクリロイルオキシメチル−メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(アクリロイルオキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、ビス(メタクリロイルオキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(アクリロイルオキシメチル−メタクリロイルオキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、ビス(アクリロイルオキシエチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(メタクリロイルオキシエチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(アクリロイルオキシエチル−メタクリロイルオキシエチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(アクリロイルオキシエチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、ビス(メタクリロイルオキシエチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(アクリロイルオキシエチル−メタクリロイルオキシエチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン等、及びこれらの混合物等を挙げることが出来る。
好ましいジオールとしては1,4−ブタンジオールの重合体であるポリテトラメチレンエーテルグリコールが挙げられる。このジオールの好ましい分子量は数平均分子量で通常50〜15,000であり、特に500〜3,000である。
本発明においては、このようなマトリクス材料のうち特に非晶質でガラス転移温度(Tg)の高い合成高分子が、透明性に優れた高耐久性のセルロース繊維複合体を得る上で好ましく、このうち非晶質の程度としては、結晶化度で10%以下、特に5%以下であるものが好ましく、また、Tgは110℃以上、特に120℃以上、とりわけ130℃以上のものが好ましい。Tgが低いと例えば熱水等に触れた際に変形する恐れがあり、実用上問題が生じる。また、低吸水性の複合体を得るためには、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基などの親水性の官能基が少ないマトリクス材料を選定することが好ましい。
なお、マトリクス材料のTgはDSC法による測定で求められ、結晶化度は、非晶質部と結晶質部の密度から算定することができる。
本発明の繊維複合体を得る方法としては、特に制限はないが、例えば前述の本発明のセルロース不織布を用いる場合、セルロース不織布に対し、
(a)モノマーを含浸させて重合する方法
(b)熱硬化性樹脂前駆体又は光硬化性樹脂前駆体を含浸させて硬化させる方法
(c)樹脂溶液を含浸させ乾燥後、加熱プレス等で密着させる方法
(d)熱可塑性樹脂の溶融体を含浸させ、加熱プレス等で密着させる方法
等が挙げられる。
次に、本発明の繊維複合体の物性について説明する。
本発明の繊維複合体中のセルロース繊維等の繊維の含有量は通常1重量%以上99重量%以下であり、マトリクス材料の含有量が1重量%以上99重量%以下である。低線膨張性を発現するには、セルロース繊維等の繊維の含有量が1重量%以上、マトリクス材料の含有量が99重量%以下であることが、透明性を発現するにはセルロース繊維等の繊維の含有量が99重量%以下、マトリクス材料の含有量が1重量%以上であることが必要である。好ましい範囲はセルロース繊維等の繊維が2重量%以上90重量%以下であり、マトリクス材料が10重量%以上98重量%以下であり、さらに好ましい範囲はセルロース繊維等の繊維が5重量%以上80重量%以下であり、マトリクス材料が20重量%以上95重量%以下である。特に、本発明の繊維複合体では、セルロース繊維等の繊維の含有量が70重量%以下でマトリクス材料の含有量が30重量%以上、更には、セルロース繊維等の繊維の含有量が60重量%以下でマトリクス材料の含有量が40重量%以上であることが好ましい。また、セルロース繊維等の繊維の含有量が10重量%以上でマトリクス材料の含有量が90重量%以下、更にはセルロース繊維等の繊維の含有量が15重量%以上でマトリクス材料の含有量が85重量%以下、更にはセルロース繊維等の繊維の含有量が20重量%以上でマトリクス材料の含有量が80重量%以下であることが好ましい。
本発明の繊維複合体の厚みは、好ましくは10μm以上、10cm以下である。このような厚みの繊維複合体にすることで強度を保つことができる。繊維複合体の厚みはより好ましくは50μm以上、1cm以下であり、さらに好ましくは80μm以上、250μm以下である。
なお、本発明の繊維複合体は、好ましくはこのような厚みの膜状(フィルム状)又は板状であるが、平膜又は平板に限らず、曲面を有する膜状又は板状とすることもできる。また、その他の異形形状であっても良い。また、厚みは必ずしも均一である必要はなく、部分的に異なっていても良い。
本発明の繊維複合体は、厚み100μmの繊維複合体について、190℃で酸素分圧0.006MPa以下で1時間加熱した後に、JIS規格K7105に準拠して測定した黄色度(YI値)が20以下であることが好ましい。この黄色度は10以下であることがより好ましく、5以下であることがさらに好ましい。
繊維複合体の黄色度は例えば、スガ試験機製カラーコンピューターを用いて測定することができる。
本発明では、例えば、セルロース繊維を化学修飾したり、透明性の高いマトリクス材料を用いたりすることにより、このような着色の小さいセルロース繊維複合体とする。
本発明の繊維複合体は、可視光の波長よりも細い繊維径の繊維を用いていることから、透明性の高い、すなわちヘーズの小さい複合体である。本発明の繊維複合体のヘーズ値は、厚み100μmの繊維複合体について、JIS規格K7136に従って測定した値として、5以下であり、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、特にこの値は1以下であることが各種透明材料として用いる場合に好ましい。繊維複合体のヘーズは、例えばスガ試験機製ヘーズメータで測定することができ、C光の値を用いる。
本発明の繊維複合体は、厚み100μmの繊維複合体について、JIS規格K7209(D法)に準拠して測定した吸水率が好ましくは1%以下となる吸水率の低い複合体である。この吸水率は0.8%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることがさらに好ましく、0.3%以下であることが特に好ましい。吸水率が1%を超えると、加工プロセス上で脱水した複合体が空気中に放置された際、空気中の水分を吸収して伸び、寸法変形を起こすため、好ましくない。
本発明の繊維複合体は、厚み50μmの繊維複合体について、その厚み方向にJIS規格K7105に準拠して測定された全光線透過率が好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは82%以上、より好ましくは84%以上、更に好ましくは86%以上、特に好ましくは88%以上、とりわけ好ましくは90%以上である。この全光線透過率が60%未満であると半透明又は不透明となり、透明性が要求される用途への使用が困難となる場合がある。全光線透過率は例えば、スガ試験機製ヘーズメータを用いて測定することができ、C光の値を用いる。
本発明の繊維複合体は、厚み50μmの繊維複合体について、その厚み方向にJIS規格K7105に準拠して測定された平行光線透過率が57%以上、更には70%以上、特に80%以上、とりわけ89%以上であることが好ましい。この平行光線透過率が57%未満であると散乱光が多く、ヘーズが大きくなり、例えば有機EL素子用途等において、画素が不明瞭となり、色がぼやけたりにじんだりする。平行光線透過率は例えば、スガ試験機製ヘーズメータを用いて測定することができ、C光の値を用いる。
本発明の繊維複合体は、線膨張率が1〜50ppm/Kの線膨張率の低い複合体であることが好ましい。本発明の繊維複合体の線膨張率は30ppm/K以下であることがさらに好ましく、20ppm/K以下であることが特に好ましい。
即ち、例えば、基板用途においては、無機の薄膜トランジスタの線膨張率が15ppm/K程度であるため、繊維複合体の線膨張率が50ppm/Kを超えると無機膜との積層複合化の際に、二層の線膨張率差が大きくなり、クラック等が発生する。従って、本発明の繊維複合体の線膨張率は、特に5〜20ppm/Kであることが好ましい。
なお、線膨張率は、後述の実施例の項に記載される方法により測定される。
本発明の繊維複合体においては、用いた繊維、例えばセルロース不織布の空隙には、複合体とした際にマトリクス材料充填されているが、基本的には不織布を作成した際の空隙が保たれている。よって、本発明の繊維複合体の繊維部分の空隙率、即ちマトリクス材料充填部の体積割合は35vol%以上であることが好ましく、さらには35vol%以上60vol%以下であることが好ましい。
前述の如く、繊維複合体の繊維部分の空隙率、例えばセルロース不織布の空隙率は、例えば分光分析、複合体断面のSEM観察やTEM観察の画像解析によって測定することができる。
本発明の繊維複合体は、引張強度が、好ましくは40MPa以上であり、より好ましくは100MPa以上である。引張強度が40MPaより低いと、十分な強度が得られず、構造材料等、力の加わる用途への使用に影響を与えることがある。
本発明の繊維複合体は、引張弾性率が、好ましくは0.2〜100GPaであり、より好ましくは、1〜50GPaである。引張弾性率が0.2GPaより低いと、十分な強度が得られず、構造材料等、力の加わる用途への使用に影響を与えることがある。
特に、ディスプレイ用基板用途において、基板の引張弾性率には好適範囲が存在し、基板の引張弾性率が低いと基板は自重で曲がってしまい、平滑な面を形成することが難しくなる。そのため、トランジスタやその他の素子を精度よく形成することができなくなる。逆に引張弾性率が高すぎると硬く脆くなり、基板自体が割れるなど不都合が生じる。
本発明の繊維複合体は、透明性が高く、高強度、低吸水性でヘーズの小さい複合体とすることができ、光学特性に優れるため、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、リアプロジェクションテレビ等のディスプレイや基板やパネルとして好適である。また、シリコン系太陽電池、色素増感太陽電池などの太陽電池用基板に好適である。基板としての用途において、バリア膜、ITO、TFT等と積層してもよい。また、自動車用の窓材、鉄道車両用の窓材、住宅用の窓材、オフィスや工場などの窓材などに好適に使われる。窓材としては、必要に応じてフッ素皮膜、ハードコート膜等の膜や耐衝撃性、耐光性の素材を積層してもよい。
また、低線膨張率、高弾性、高強度等の特性を生かして透明材料用途以外の構造材としても用いることができる。特に、グレージング、内装材、外板、バンパー等の自動車材料やパソコンの筐体、家電部品、包装用資材、建築資材、土木資材、水産資材、その他工業用資材等として好適に用いられる。
なお、以下において、作製した試料の物性等は、下記の評価方法及び測定方法により行った。
セルロース不織布0.05gを精秤しこれにメタノール6ml、蒸留水2mlを添加する。これを60〜70℃で30分攪拌した後、0.05N水酸化ナトリウム水溶液10mlを添加する。これを60〜70℃で15分攪拌しさらに室温で一日攪拌する。これをフェノールフタレインを用いて0.02N塩酸水溶液で滴定する。
ここで、滴定に要した0.02N塩酸水溶液の量Z(ml)から、化学修飾により導入された置換基のモル数Qは、下記式で求められる。
Q(mol)=0.05(N)×10(ml)/1000
−0.02(N)×Z(ml)/1000
この置換基のモル数Qと、化学修飾率X(mol%)との関係は、以下の式で算出される(セルロース=(C6O5H10)n=(162.14)n,繰り返し単位1個当たりの水酸基数=3,OHの分子量=17)。なお、以下において、Tは置換基の分子量である。
セルロース不織布の面積、厚み、重量から、下記式によって求めた。
空隙率(vol%)={(1−B/(M×A×t)}×100
ここで、Aは不織布の面積(cm2)、t(cm)は厚み、Bは不織布の重量(g)、Mはセルロースの密度であり、本発明ではM=1.5g/cm3と仮定する。セルロース不織布の膜厚は、膜厚計(Mitutoyo(株)製 IP65)を用いて、不織布の種々な位置について10点の測定を行い、その平均値を採用した。
セルロース繊維複合体中のセルロース繊維の繊維径は、複合体をそのまま破断したり、必要に応じて液体窒素などで冷却してから破断したりして、破断面を出し、その破断面をSEMで観察し、ランダムに抽出した10点の測定値を平均することで求めた。
平均の求め方としては、観察されたSEM写真の対角線に線を引き、その近傍にある繊維をランダムに12点抽出し、最も太い繊維と最も細い繊維を除去した10点の平均値を算出して平均繊維径とした。
なお、製造例2や実施例6,7等におけるセルロース懸濁液中のセルロース繊維の平均繊維径の算出も同様である。
JIS規格K7136に準拠し、スガ試験機製ヘーズメータを用いてC光によるヘーズ値を測定した。
JIS規格K7105に準拠し、スガ試験機製ヘーズメータを用いてC光による全光線透過率を測定した。
JIS規格K7105に準拠し、スガ試験機製ヘーズメータを用いてC光による平行光線透過率を測定した。
得られた複合体を190℃で真空下(酸素分圧0.004MPa)で1時間加熱した後、JIS規格K7105に準拠し、スガ試験機製カラーコンピューターを用いて黄色度を測定した。
得られた複合体をレーザーカッターにより、10mm幅×40mm長に切断した。これを、SII社製DMS6100を用いて引っ張りモードでチャック間20mm、周波数10Hz、2℃/min.で−100℃から250℃まで測定し、23℃における貯蔵弾性率E’(単位:GPa)より引張弾性率を測定し、tanδよりガラス転移温度(Tg)を測定した。
得られた複合体をレーザーカッターにより、3mm幅×30mm長に切断した。これを、SII製TMA120を用いて引っ張りモードでチャック間20mm、荷重10g、窒素雰囲気下、室温から180℃まで5℃/min.で昇温、180℃から25℃まで5℃/min.で降温、25℃から180℃まで5℃/min.で昇温した際の2度目の昇温時の60℃から100℃の測定値から線膨張率を求めた。
JIS規格7209(D法)に準拠し、得られた複合体を50℃で24時間静置後、重量(W0)を測定し、その後23℃、湿度50%の雰囲気下に重量が一定になるまで静置後、重量(W1)を測定した。下記式により吸水率を算出した。
吸湿率(%)=(W1−W0)/W0 ×100
従って、以下の実施例及び比較例で製造されたセルロース繊維複合体又は樹脂硬化物の厚みが50μm又は100μmでない場合は、比例計算により、それぞれの値を換算して求めた。
米松木粉((株)宮下木材)を炭酸ナトリウム2重量%水溶液で80℃にて6時間脱脂した。これを脱塩水で洗浄した後、0.66重量%の亜塩素酸ナトリウム、0.14重量%の酢酸水溶液に80℃にて5時間浸漬してリグニン除去を行った。脱塩水洗浄した後、濾過し、回収した精製セルロースを脱塩水で洗浄後、5重量%の水酸化カリウム水溶液に16時間浸漬してヘミセルロース除去を行った。その後、脱塩水洗浄を行った。
製造例1で得られたセルロース分散液を、0.5重量%の水懸濁液に調整し、超高圧ホモジナイザー(アルティマイザー;スギノマシン社製)処理を行った。処理時の圧力は245MPa、噴出口の孔径は150μmで、10回行った。この処理後のセルロース懸濁液中のセルロースの平均繊維径は、TEM観察より15nmであった。さらに、この懸濁液中のセルロースは、広角X線回折像から、セルロースI型結晶構造であることが確認された。
製造例2で得られたセルロース懸濁液をセルロース濃度0.127重量%になるように水で希釈して、150mlに調整し、上部から30mlのイソプロピルアルコールを静かに加えて減圧濾過を行った。濾過器としてはアドバンテック社製KG−90を用い、ガラスフィルターの上に同アドバンテック社製の1.0μm孔径のPTFE製メンブランフィルターを載せた。有効濾過面積は48cm2であった。減圧度−0.09MPa(絶対真空度10kPa)にて減圧濾過したところ、PTFE製メンブランフィルターの上にセルロース繊維の堆積物が得られた。このセルロース堆積物を120℃に加熱したプレス機にて0.15MPaの圧力で5分間プレス乾燥してセルロース不織布を得た。
製造例3で得られたセルロース不織布を100mlの無水酢酸に含浸して100℃にて7時間加熱した。その後、蒸留水でよく洗浄し、最後に2−プロパノールに10分浸した後、120℃、2MPaにて5分間プレス乾燥して、厚み62μmのアセチル化セルロース不織布を得た。
この不織布の化学修飾率は33mol%であった。また空隙率は56vol%であった。
また、SEM観察により繊維径500nm以上のものが含まれていないことを確認した。平均繊維径は15nmであった。また、繊維長は100nm以上であることを確認した。得られたアセチル化セルロース不織布の黄色度は11.4であった。
製造例3で得られたセルロース不織布を100mlの無水酢酸:酢酸=9:1の溶液に含浸し、室温で5日間静置した。その後、蒸留水でよく洗浄し、最後に2−プロパノールに10分浸した後、120℃、0.14MPaで5分間プレス乾燥して厚み38μmのアセチル化セルロース不織布を得た。この不織布の化学修飾率は7mol%であった。また空隙率は28vol%であった。
食材として利用されているバクテリアセルロースゲルのナタデココ(フジッコ社製、厚さ1cm、繊維含有率1体積%、水含有率99体積%)を用いた。この含水バクテリアセルロースを2−プロパノールに浸漬後、120℃、0.14MPaで5分間プレス乾燥することにより、厚さ50μm、空隙率42vol%のバクテリアセルロースシートを得た。
製造例4で得られたアセチル化セルロース不織布を、ビス(メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン96重量部、ペンタエリスリトールテトラキス(β−チオプロピオネート)4重量部、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製ルシリンTPO)0.05重量部、及びベンゾフェノン0.05重量部を混合した溶液に含浸させ、減圧下一晩静置した。これを2枚のガラス板にはさみ、無電極水銀ランプ(フュージョンUVシステムズ社製「Dバルブ」)を用いて、放射照度400mW/cm2の下を、ライン速度7m/minで通過させて光照射した。このときの放射照射量は0.12J/cm2であった。この操作をガラス面を反転して2回行った。紫外線照射後のガラス面の温度は25℃であった。次いで、放射照度1900mW/cm2の下をライン速度2m/minで照射した。このときの放射照射量は2.7J/cm2であった。この操作をガラス面を反転して8回行った。紫外線照射後のガラス面の温度は44℃であった。全放射照射量は21.8J/cm2であった。紫外線照射終了後、ガラス板よりはずし、190℃の真空オーブン中で1時間加熱して厚み96μmのセルロース繊維複合体を得た。得られた複合体の23℃における引張弾性率は8.1GPaであった。
なお、紫外線の放射照度は、オーク製作所製紫外線照度計「UV−M02」で、アタッチメント「UV−35」を用いて、320〜390nmの紫外線の照度を23℃で測定した。
製造例4で得られたアセチル化セルロース不織布を、光硬化性樹脂前駆体のエポキシ化合物である水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂YX8000(JER社製)100重量部と硬化剤SP170((株)アデカ社製)1重量部との混合液に含浸させ、減圧下一晩静置した。これを2枚のガラス板にはさみ、実施例1と同様のランプを用いて放射照度1900mW/cm2の下を、ライン速度2m/minで照射した。このときの放射照射量は2.7J/cm2であった。この操作をガラス面を反転して12回行った。紫外線照射後のガラス面の温度は55℃であった。全放射照射量は32.4J/cm2であった。紫外線照射終了後、ガラス板よりはずし、190℃の真空オーブン中で1時間加熱して厚み106μmのセルロース繊維複合体を得た。
製造例4で得られたアセチル化セルロース不織布を、光硬化性樹脂前駆体のエポキシ化合物であるビスフェノールA型エポキシ樹脂828EL(JER社製)100重量部と硬化剤SP170((株)アデカ社製)1重量部との混合液に含浸させ、減圧下一晩静置した。これを2枚のガラス板にはさみ、実施例1と同様のランプを用いて放射照度1900mW/cm2の下を、ライン速度2m/minで照射した。このときの放射照射量は2.7J/cm2であった。この操作をガラス面を反転して16回行った。紫外線照射後のガラス面の温度は60℃であった。全放射照射量は43.2J/cm2であった。紫外線照射終了後、ガラス板よりはずし、190℃の真空オーブン中で1時間加熱して厚み103μmのセルロース繊維複合体を得た。
製造例4で得られたアセチル化セルロース不織布を、熱硬化性樹脂前駆体の水添ビスフェノール型エポキシ樹脂YX8000(JER社製)100重量部と硬化剤CP−77((株)アデカ社製)5重量部との混合液に含浸させ、減圧下一晩静置した。これをガラス板2枚にはさみ、100℃のオーブンの中に3時間静置して熱硬化した。硬化後、ガラス板よりはずし、厚み98μmのセルロース繊維複合体を得た。
製造例4で得られたアセチル化セルロース不織布の代わりに、製造例3で得られたセルロース不織布を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で厚み105μmのセルロース繊維複合体を得た。
超高圧ホモジナイザー処理数を5回にするほかは、製造例2と同様の方法でセルロース懸濁液を調製した。この液にSMT社製超音波ホモジナイザーUH−600S(周波数20kHz、実効出力密度22W/cm2)を用いて超音波処理を行った。超音波処理の条件は、36mmφのストレート型チップ(チタン合金製)を用い、アウトプットボリウム8でチューニングを行い、最適なチューニング位置で60分間、50%の間欠運転にて超音波処理を行った。50%の間欠運転とは0.5秒間超音波を発振した後0.5秒間休止を行う運転である。
その後、日立工機株式会社製の遠心分離機(himacCR22G)を用い、アングルローターとしてR20A2を用いて遠心分離処理を行った。50ml遠沈管8本を、回転軸から34度の角度で設置した。1本の遠沈管に入れるセルロース懸濁液の量は30mlとして、18000rpmにて10分間遠心分離作業を行った。この時、本ローターでの遠心力は計算により38900Gと求められた。沈殿物を除去した上澄みの懸濁液中に含まれるセルロース繊維の平均繊維径は、TEM観察より10nmであった。この懸濁液中のセルロースは、広角X線回折像から、セルロースI型結晶構造であることが確認された。
また、このセルロース不織布の厚みは66μmで、空隙率を前記式にて計算したところ58vol%あった。
セルロース不織布としてこのセルロース不織布を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で光硬化性樹脂組成液を含浸させ、同様に光硬化してセルロース繊維複合体を製造した。
製造例1で得られたセルロース分散液を用い、この分散液をセルロース濃度0.1重量%に調整した後、実施例6と同様の条件で超音波処理を4時間行った。その後、実施例6と同様の条件で遠心分離処理を行った。遠心分離処理により沈殿物を除去した上澄みの懸濁液中に含まれるセルロース繊維の平均繊維径は、SEM観察より20nmであった。このセルロース懸濁液中のセルロースは、広角X線回折像から、セルロースI型結晶構造であることが確認された。
製造例1で得られたセルロース分散液を酢酸中に分散して濾過する工程を3度行い、水を酢酸に置換した。別に、セルロース1gに対して、トルエン50ml、酢酸40ml、60重量%過塩素酸水溶液0.2mlを混合しておき、そこに酢酸置換したセルロースを添加した後無水酢酸1mlを添加し攪拌しながら1時間アセチル化反応させた。反応後、反応液を濾過して、メタノール、脱塩水の順で洗浄した。これを0.5重量%の水懸濁液とし、増幸産業株式会社の石臼式摩砕機スーパーマスコロイダーMKCA6−2を用い、GC6−80の石臼を用いて、ギャップ間を80μmにして回転数1500rpmにて、原料投入口から投入する操作を2回行った。さらに、超高圧ホモジナイザー(スギノマシン製アルティマイザー)にて、150MPaで2回、245MPaで10回通した(噴出口の孔径は150μm)。
得られたセルロース懸濁液をセルロース濃度が0.25重量%になるように希釈した後、SMT社製超音波ホモジナイザーUH−600S(周波数20kHz、実効出力密度22W/cm2)を用いて超音波処理を行った。超音波処理は、36mmφのストレート型チップ(チタン合金製)を用い、アウトプットボリウム8でチューニングを行い、最適なチューニング位置で60分間、50%の間欠運転にて行った。50%の間欠運転とは0.5秒間超音波を発振した後0.5秒間休止を行う運転をさす。
この超音波処理中、セルロース懸濁液は処理容器の外側から5℃の冷水で冷却し、懸濁液温度15℃±5℃に保ちながら処理を行った。また、マグネティックスターラーにて撹拌しながら処理を行った。
製造例2で得られたセルロース懸濁液を0.2重量%に水で希釈し、孔径1μmのPTFE製フィルターを用いた90mm径の濾過器に100g投入し、固形分が約5重量%になったところで2−プロパノールを投入して水を置換した。その後、120℃にて0.15MPaで5分間プレス乾燥してセルロース不織布を得た。
なお、紫外線の照度は、オーク製作所製紫外線照度計「UV−M02」で、アタッチメント「UV−35」を用いて、320〜390nmの紫外線の照度を23℃で測定した。
オキセタン樹脂OXT−211(東亜合成(株)社製)20重量部、ビスフェノール型エポキシ樹脂828EL(JER社製)80重量部と硬化剤SP170((株)アデカ社製)5重量部を60℃でよくかき混ぜて組成物を調製し、この組成物を用いた他は、実施例9と同様の方法でセルロース繊維複合体を作製した。
オキセタン樹脂OXT−221(東亜合成(株)社製)50重量部、オキセタン樹脂ETERNACOLL OXBP(宇部興産(株)社製)40重量部、ビスフェノール型エポキシ樹脂828EL(JER社製)10重量部と硬化剤SP170((株)アデカ社製)5重量部を60℃でよくかき混ぜて組成物を調製し、この組成物を用いた他は、実施例9と同様の方法でセルロース繊維複合体を作製した。
オキセタン樹脂OXT−211(東亜合成(株)社製)50重量部、OXT−221(東亜合成(株)社製)40重量部、エポキシ樹脂KL−613((株)クラレ社製)10重量部と硬化剤SP170((株)アデカ社製)1重量部を60℃でよくかき混ぜて組成物を調製し、この組成物を用いた他は、実施例9と同様の方法でセルロース繊維複合体を作製した。
超高圧ホモジナイザー処理数を5回にするほかは、製造例2記載の方法でセルロース懸濁液を調製した。この懸濁液をセルロース濃度0.5重量%に調整して、日本シイベルヘグナー社製UIP2000(周波数20kHz、実行出力密度90W/cm2、直径50mmφのチタン合金製ホーンチップ)を直列に2台繋げた装置に毎分3リットルで全量5リットルを循環させながら、60分間超音波を連続に照射した。このとき、6℃の水で配管や超音波処理容器の外側から冷却した。この懸濁液を、日立工機社製の遠心分離機(himacCR22G)を用いて、アングルローターとしてR18Cを用いて、懸濁液を毎分100mlで供給しながら連続で遠心分離を行った。ローターの回転数は18,000rpmであった。
このセルロース懸濁液を製造例3の方法で抄紙した。セルロース繊維の平均繊維径は10nmであった。
このセルロース不織布の厚みは60μmであった。空隙率は47.0重量%であった。
製造例4で得られたアセチル化セルロース不織布の代わりに、製造例5で得られたアセチル化セルロース不織布を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で厚み92μmのセルロース繊維複合体を得た。
製造例4で得られたアセチル化セルロース不織布の代わりに、製造例6で得られたバクテリアセルロースシートを用いたこと以外は実施例1と同様の方法で厚み96μmのセルロース繊維複合体を得た。
実施例1において、アセチル化セルロース不織布を用いず、光硬化性樹脂のみを同様の条件で硬化させて、厚み83μmの樹脂単独の硬化物を作製した。
超高圧ホモジナイザー処理数を1回にする他は製造例2と同様の方法でセルロース懸濁液を調製した。このセルロース懸濁液のセルロース濃度は0.487重量%であった。このセルロース懸濁液中のセルロース繊維の平均繊維径は、SEM観察より1μmであった。さらに、この分散液中のセルロースは、広角X線回折像から、セルロースI型結晶構造であることが確認された。
製造例1と同様にしてセルロース分散液を調製した。このときのセルロース濃度は0.484重量%であった。このセルロース分散液は、不均一であり、セルロースが自重で沈降した。このセルロース分散液中のセルロース繊維の平均繊維径は、SEM観察より130μmであった。さらに、この分散液中のセルロースは、広角X線回折像から、セルロースI型結晶構造であることが確認された。
なお、実施例1〜12及び比較例1,2,4で得られたセルロース繊維複合体は、いずれも、用いた不織布の空隙部分に樹脂が充填されたものであり、不織布の空隙率とセルロース繊維複合体の樹脂充填部の体積割合はほぼ等しいものであった。
Claims (6)
- 平均繊維径が30nm以下のセルロース繊維を製造する方法であって、
セルロース繊維を、
周波数が15kHz以上1MHz以下で、実効出力密度が1W/cm2以上の超音波で解繊することを特徴とする、平均繊維径が30nm以下のセルロース繊維の製造方法。 - 前記超音波での解繊と、
高速回転式ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、対向衝突型の分散機、ビーズミルまたはボールミルから選ばれる微細化処理とを組み合わせてセルロース繊維を解繊する、請求項1に記載の平均繊維径が30nm以下のセルロース繊維の製造方法。 - セルロース繊維が化学修飾されている、請求項1または2に記載の平均繊維径が30nm以下のセルロース繊維の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法により得られた平均繊維径が30nm以下のセルロース繊維を製膜して得られる、不織布。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法により得られた平均繊維径が30nm以下のセルロース繊維とマトリックス材料とを含有する、繊維複合体。
- 平均繊維径が30nm以下のセルロース繊維とマトリックス材料とを含有する繊維複合体の製造方法であって、
セルロース繊維を、周波数が15kHz以上1MHz以下で、実効出力密度が1W/cm2以上の超音波で解繊し、平均繊維径が30nm以下であるセルロース繊維を得る工程と、
平均繊維径が30nm以下であるセルロース繊維とマトリックス材料を複合化する工程とを含むことを特徴とする、繊維複合体の製造方法。
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