JP5359819B2 - セルロース繊維複合材料、およびその製造方法 - Google Patents

セルロース繊維複合材料、およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、セルロース繊維とマトリックス材料とを含むセルロース繊維複合材料に関するものであり、より詳細には、可視光の波長よりも細い繊維径のセルロース繊維を用いて得られる、優れた光学的等方性、表面平滑性、透明性を示すセルロース繊維複合材料に関する。
一般に、液晶や有機EL等のディスプレイ用基板には、ガラス板が広く用いられている。しかし、ガラス板は比重が大きく軽量化が困難であり、さらに、割れやすい、曲げられない、所定の厚みが必要などの欠点があることから、近年、ガラス板に変わるプラスチック基板が検討されている。具体的には、ポリカーボネートやポリエチレンテレフタレートなどを用いたディスプレイ用基板が使用されている。
しかしながら、これら従来のガラス代替用プラスチック材料は、ガラス板に比べて線膨張率が大きいため、基板上に薄膜トランジスタなどのデバイス層を高温で蒸着させるプロセスの際に、反りや蒸着膜の割れ、半導体の断線などの問題が生じ易く、実用は困難であった。さらには、従来のプラスチック基板は、その製造工程の特性上、光学的異方性に関する問題を有していた。一般的に、プラスチック基板は、溶融押出方式などで成形されるために、その面内方向において光学的特性が異なるという異方性を有する。そのため、液晶を利用した光学的変調により画像を出力するLCDパネルなどでは、かかる基板の光学的異方性が画像の変形を招くために、さらに問題になっていた。
即ち、これらの用途には、高透明性、高耐熱性、低吸水性、低線膨張率を示すとともに、表面平滑性に優れ、光学的等方性を示す(複屈折を示さない)プラスチック材料が求められている。
近年、バクテリアセルロースをはじめとするセルロースの微細繊維を用いた複合材料が、盛んに研究されている。セルロースは伸びきり鎖結晶を有することから、低線膨張率、高弾性率、高強度を発現することが知られている。また、微細化することにより太さが数nmから200nmの範囲にある微小かつ高結晶性のセルロースナノファイバーが得られ、その繊維の隙間をマトリックス材料で埋めることで、高い透明性と低線膨張率を有する複合体が得られることが報告されている。
例えば、特許文献1および特許文献2では、バクテリアセルロースシートまたは木質原料から形成されるナノファイバーセルロース不織布と、光硬化性樹脂との複合体が開示されている。
また、特許文献3および特許文献4では、セルロース繊維を含有する分散液から抄紙法または塗布法によって製膜して得られるセルロースを含有する不織布と、セルロース以外の樹脂とからなる複合体が製造され、この複合体が耐熱性、透明性に優れると共に、低線膨張率を示すことが開示されている。
さらに、特許文献5では、粘土を主要成分とする粘土薄膜層およびシリカなどを含む無機薄膜層とを備えるディスプレイ用基板において、強度を補強する観点から、セルロースを含有する不織布と樹脂とから構成される補強層を製造することが開示されている。
特開2006−241450号公報 特開2007−51266号公報 特開2006−316253号公報 特開2008−106152号公報 特開2007−65644号公報
上記特許文献1〜5において具体的に開示されているセルロース繊維を用いた複合材料の製造方法としては、まず、加圧または乾燥により含有される分散媒を除去して、所定の空孔率を有するセルロース繊維のシートまたは不織布を作製し、その後、得られたシートまたは不織布をモノマーなどのマトリックス材と接触させて、所望の複合材料を得る方法が開示されている。
本発明者らが、特許文献1〜5に記載のこれらの方法を用いて複合材料の製造を行ったところ、得られた複合材料は光学的な異方性が大きく、かつその表面上には目視で確認できる程度の非常に大きな凹凸形状(しわやうねり)が生じるという問題点があった。上述のように、液晶表示装置、プラズマディスプレイ、有機EL表示装置などのフラットディスプレイなどに使用されるガラス板の代替材料としては、透明性のみならず、高い光学的等方性および表面平滑性を備えることが望まれており、特許文献1〜5に記載の複合材料ではその要求特性を十分には満足するものではなかった。
上記実情に鑑みて、本発明は、セルロース繊維の高強度、低熱線膨張という優れた特性を持ちながら、高い透明性を示し、表面平滑性および光学的等方性(低位相差)に優れたセルロース繊維複合材料、およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記従来法におけるマトリックス材料と接触させるセルロース繊維のシートや不織布の製造工程に着目し、その問題点について検討を行った。鋭意検討の結果、セルロース繊維のシートや不織布を得るために実施する加圧や乾燥工程の際に、分散媒が除かれるとともに、セルロース繊維の3次元構造が破壊されて、繊維が特定の方向に配列するために、得られる複合材料の光学的特性および平滑性が損なわれることを見出した。
本発明者らは、上記の知見をもとに、過度の加熱または加圧処理を施すことなく、所定量の分散媒を含有させた湿潤状態のセルロース繊維のゲルをマトリックス材料と接触させることにより、所望の特性(例えば、光学特性)を示すセルロース繊維複合材料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
<1> 平均繊維径30nm以下のセルロース繊維とマトリックス材料とから構成され、前記セルロース繊維が3次元網目状構造を形成しているセルロース繊維複合材料であって、
厚み200μmのフィルムでの波長589nmにおける面内の位相差が6nm以下であり、
JIS B0601−1982に準じて測定した表面粗さの最大高さ(Rmax)が150μm以下であり、
厚み10μm〜500μmのフィルムまたはシートでのJIS K7136−2000に準じて測定したヘーズが5%以下であることを特徴とするセルロース繊維複合材料。
<2> 前記マトリックス材料が、高分子材料である<1>に記載のセルロース繊維複合材料。
<3> 分散媒中に平均繊維径30nm以下のセルロース繊維が分散した分散液を製造する工程と、
前記分散液中の前記分散媒の一部を除去して、前記セルロース繊維と前記分散媒とを主成分とする、前記分散媒の含有量が全重量に対して10〜99重量%である湿潤状態のセルロース繊維ゲルを製造する工程と、
前記セルロース繊維ゲルを、加圧または乾燥することなく湿潤状態のままで、マトリックス材料と接触させ、ゲル内に含有される前記分散媒と前記マトリックス材料とを置換する工程とを備える、セルロース繊維とマトリックス材料とから構成されるセルロース繊維複合材料の製造方法。
<4> 前記分散液が、セルロースが分散した原料分散液に解繊処理を施し得られる分散液である<3>に記載のセルロース繊維複合材料の製造方法。
<5> 前記解繊処理が、周波数15kHz以上1MHz以下で、実効出力密度1W/cm以上の超音波を照射する超音波処理である、<4>に記載のセルロース繊維複合材料の製造方法。
<6> 前記分散液中の前記分散媒の一部の除去を、濾過、または、塗布後に分散媒を蒸発させることにより行う、<3>〜<5>のいずれかに記載のセルロース繊維複合材料の製造方法。
<7> 前記マトリックス材料が、高分子材料またはその前駆体である、<3>〜<6>のいずれかに記載のセルロース繊維複合材料の製造方法。
<8> 前記セルロース繊維とマトリックス材料とから構成されるセルロース繊維複合材料が<1>または<2>に記載のセルロース繊維複合材料である、<3>〜<7>のいずれかに記載のセルロース繊維複合材料の製造方法。
<9> <1>または<2>に記載のセルロース繊維複合材料を用いて得られるディスプレイ用基板。
<10> <1>または<2>に記載のセルロース繊維複合材料を用いて得られる太陽電池用基板。
<11> <1>または<2>に記載のセルロース繊維複合材料を用いて得られる照明用基板。
<12> <1>または<2>に記載のセルロース繊維複合材料を用いて得られるタッチパネル用基板。
<13> <1>または<2>に記載のセルロース繊維複合材料を用いて得られる窓材。
<14> <1>または<2>に記載のセルロース繊維複合材料を用いて得られる構造材。
<15> 分散媒中に平均繊維径30nm以下のセルロース繊維が分散した分散液を製造する工程と、
前記分散液中の前記分散媒の一部を除去して、前記セルロース繊維と前記分散媒とを主成分とする、前記分散媒の含有量が全重量に対して10〜99重量%である湿潤状態のセルロース繊維ゲルを製造する工程と、
前記セルロース繊維ゲルを、加圧または乾燥することなく湿潤状態のままで、マトリックス材料と接触させ、ゲル内に含有される前記分散媒と前記マトリックス材料とを置換する工程とを含む方法により得られる、セルロース繊維とマトリックス材料とから構成されるセルロース繊維複合材料。
本発明によれば、セルロース繊維の高強度、低熱線膨張という優れた特性を持ちながら、高い透明性を示し、表面平滑性および光学的等方性(低位相差)に優れたセルロース繊維複合材料、およびその製造方法を提供することができる。
図1は、有機EL素子の構成図である。 図2(a)および(b)は、実施例1で得られたセルロース繊維複合材料の破断面のSEM観察図である。 図3(a)および(b)は、比較例1で得られたセルロース繊維複合材料の破断面のSEM観察図である。
以下に、本発明のセルロース繊維複合材料およびその製造方法の実施の形態について、本発明のセルロース繊維複合材料の好適な製造手順に従って詳細に説明する。
[セルロース繊維複合材料の製造方法]
本発明のセルロース繊維複合材料の製造方法は、特に限定されないが、以下の3つの工程を備え、その順番に実施される製造方法が好ましく挙げられる。
(分散液製造工程) 分散媒中に平均繊維径30nm以下のセルロース繊維が分散した分散液を製造する工程
(ゲル製造工程) 上記分散液中の前記分散媒の一部を除去して、セルロース繊維と分散媒とを主成分とする、分散媒の含有量が全重量に対して10〜99重量%である湿潤状態のセルロース繊維ゲルを製造する工程
(置換工程) 上記セルロース繊維ゲルを、加圧または乾燥することなく湿潤状態のままで、マトリックス材料と接触させ、ゲル内に含有される分散媒とマトリックス材料とを置換する工程
以下に、各工程で使用される材料およびその手順、ならびに、任意に実施してもよい工程について説明する。
[分散液製造工程]
分散液製造工程では、分散媒中に平均繊維径30nm以下のセルロース繊維が分散した分散液を製造する工程である。分散液の製造方法は特に限定されず、薬液処理や機械的解繊処理などが挙げられる。なかでも、セルロースが分散した原料分散液に解繊処理を施し、分散液を得ることが好ましい。解繊処理を施すことにより、原料分散液中のセルロースが十分に微細化され、所定のサイズのセルロース繊維を得ることができ、所望の光学的特性、力学特性を示す複合材料が得られる。
以下に、セルロースが分散した原料分散液を解繊処理する場合に、使用される材料(セルロース原料など)および解繊処理の方法について説明する。
<セルロース>
本発明で使用されるセルロースの種類としては、特に限定はされないが、植物由来原料から得られるセルロースが好ましい。
植物由来原料としては、具体的には、針葉樹や広葉樹などの木質、コットンリンターやコットンリントなどのコットン、ケナフや麻、ラミーなどが挙げられる。植物由来の原料は、バクテリアセルロースなどの非植物由来のセルロースに比べて、生産性やコスト面で実用性が非常に高く、経済的に好ましい。また、植物由来の原料から得られるセルロースは、結晶性が高いので低線膨張率になり好ましい。植物由来原料のうち、コットンは微細な繊維径のものが得やすい点で好ましいが、生産量が木質と比較して乏しいため経済的に好ましくない。一方、針葉樹や広葉樹などの木質はミクロフィブリルが約4nmと非常に微細であり、分岐のない線状の繊維形態を有することから、光の散乱を生じにくい。さらに、地球上で最大量の生物資源であり、年間約700億トン以上ともいわれる量が生産されている持続型資源であることから、地球温暖化に影響する二酸化炭素削減への寄与も大きく、性能的にも経済的にも非常に好ましい。
本発明で使用されるセルロースとしては、このような植物由来原料であって、最小長の平均が10μm以上で、最大長の平均が10cm以下の植物由来原料が好ましく使用される。
ここで、「最小長の平均」とは、原料チップ(この原料チップは、繊維状、粒子状などの様々な形状をなす。)のうち、最も長さ(ないし径)の小さい部分の長さの平均値であり、「最大長の平均」とは、原料チップのうち、最も長さ(ないし径)の大きい部分の長さの平均値であり、これらは、以下のようにして測定することができる。
<最小長、最大長の測定方法>
最小長や最大長は、1mm〜10cm程度の大きさにおいては、定規やノギスなどにより計測することができる。10μm〜1mm程度の大きさにおいては、光学顕微鏡で観察し計測することができる。平均値は、ランダムに抽出したサンプル10点の平均値とする。
原料の最小長の平均が小さ過ぎると後述するセルロースの精製工程における洗浄液の脱液速度が遅くなり非効率であり、原料の最大長の平均が大き過ぎると取り扱い性が悪かったり、精製の効率が低下する場合がある。
好ましくは、原料の最小長の平均は50μm以上で、原料の最大長の平均は5cm以下、より好ましくは原料の最小長の平均は50〜100μmで、原料の最大長の平均は100〜500μmである。
従って、本発明においては、前述の植物由来原料を必要に応じてこのような適当な大きさのチップ状に切断ないし破砕して用いる。
この原料の切断ないし破砕は、後述の原料の精製などの表面処理を行う場合、その処理前、処理中、処理後のいずれの時期に行ってもよい。例えば、精製処理前であれば衝撃式粉砕機や剪断式粉砕機などを用い、また精製処理中、処理後であればリファイナーなどを用いて行うことができる。
<精製処理>
本発明においては、上述の植物由来原料を水性分散媒中で精製処理して、原料中のセルロース以外の物質、例えば、リグニンやヘミセルロース、樹脂(ヤニ)などを除去することが好ましい。
精製処理に用いる水性分散媒としては、一般的に水が用いられるが、酸または塩基、その他の処理剤の水溶液であってもよく、この場合には、最終的に水で洗浄処理してもよい。
また、精製処理時には温度や圧力をかけてもよい。さらに、原料を木材チップや木粉などの状態に破砕してもよく、この破砕は上述の如く、精製処理前、処理の途中、処理後、いずれのタイミングで行ってもかまわない。
原料の精製処理に使用する酸または塩基、その他の処理剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、硫化ナトリウム、硫化マグネシウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸マグネシウム、亜硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、酸化ナトリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酢酸、シュウ酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸ナトリウム、塩素酸ナトリウム、二酸化塩素、塩素、過塩素酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、過酸化水素、オゾン、ハイドロサルファイト、アントラキノン、ジヒドロジヒドロキシアントラセン、テトラヒドロアントラキノン、アントラヒドロキノン、また、エタノール、メタノール、2−プロパノールなどのアルコール類およびアセトンなどの水溶性有機溶媒などが挙げられる。これらの処理剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
また、必要に応じて、塩素やオゾン、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素、二酸化塩素などで漂白処理を行ってもよい。
また、2種以上の処理剤を用いて、2以上の精製処理を行うこともでき、その場合、異なる処理剤を用いた精製処理間で、水で洗浄処理することが好ましい。
上記の精製処理時の温度、圧力には特に制限はなく、温度は0℃以上100℃以下の範囲で選択され、1気圧を超える加圧下での処理の場合、温度は100℃以上200℃以下とすることが好ましい。また、無水酢酸といった有機酸など化学修飾剤を反応させて、セルロース表面の化学修飾を行ってもよく、精製後に化学修飾を行ってもよい。
<分散媒>
原料分散液の分散媒(溶媒)は、通常、水であるが、有機溶媒の1種または2種以上の混合溶媒であってもよい。また、水と有機溶媒との混合溶媒であってもよい。
なお、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブタノールなどのアルコール類、アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン類、その他水溶性の有機溶剤が挙げられる。
なお、原料分散液中におけるセルロースの含有量は、特に限定されないが、後述する解繊処理の点から、原料分散液全量に対して、0.2〜10重量%が好ましく、0.3〜6重量%がより好ましい。
<解繊処理>
原料分散液の解繊処理方法は、所望の平均繊維径を有するセルロース繊維が得られれば特に限定されない。例えば、ペイントシェーカーやビーズミルなどを用いて振動を与え、セルロースを解繊する方法、ブレンダータイプの分散機や高速回転するスリットの間に、このような原料分散液を通して剪断力を働かせて解繊する方法が挙げられる。
また、所定の圧力から急に減圧することによって、セルロース繊維間に剪断力を発生させて解繊する方法(高圧ホモジナイザー法)、マスコマイザーXのような対向衝突型の分散機(増幸産業)を用いる方法なども挙げられる。
さらには、原料分散液に超音波を照射して、解繊する方法も挙げられる。
なかでも、所定の条件で超音波処理を行うことが好ましい。
さらには、解繊の効率が著しく向上する点から、原料分散液を高圧雰囲気下から噴出させて減圧することにより解繊を行った(高圧ホモジナイザー処理)後、超音波処理を行うことがより好ましい。これは、高圧ホモジナイザー処理により、セルロース繊維が数μm以下まで解繊され、超音波の照射効率が向上することによる。
以下に、上記の高圧雰囲気下から原料分散液を噴出させ減圧する処理方法(高圧ホモジナイザー処理)、および超音波処理について詳述する。
<高圧ホモジナイザー処理>
上記のように、原料分散液を高圧雰囲気下から噴出させて減圧することにより解繊する場合は、セルロース濃度(固形分濃度)が好ましくは0.2重量%以上10重量%以下、特に好ましくは0.3重量%以上6重量%以下の原料分散液を高圧雰囲気下から噴出させる。原料分散液中のセルロース濃度が低過ぎると、処理するセルロース量に対して液量が多くなり過ぎ効率が悪くなる。また、セルロース濃度が高過ぎると、細孔からの噴出が困難になる場合があるため、解繊処理に供する原料分散液は適宜水を添加するなどして濃度調整する。
原料分散液の噴出手段としては、高圧ホモジナイザーを用いるのが好ましい。具体的には、原料分散液を増圧機で好ましくは30MPa以上、より好ましくは100MPa以上、さらに好ましくは150MPa以上、特に好ましくは220MPa以上に加圧し、細孔直径50μm以上のノズルから噴出させ、圧力差が30MPa以上、好ましくは80MPa以上、より好ましくは90MPa以上となるように減圧する。この圧力差で生じるへき開現象により、セルロースを解繊する。ここで、高圧条件の圧力が低い場合や、高圧から減圧条件への圧力差が小さい場合には、解繊効率が下がり、所望の繊維径とするための繰り返し噴出回数が多く必要となるため好ましくない。また、原料分散液を噴出させる細孔の細孔直径が大き過ぎる場合にも、十分な解繊効果が得られない。この場合には、噴出処理を繰り返し行っても、所望の繊維径のセルロース繊維が得られないおそれもある。
原料分散液の噴出は、必要に応じて複数回繰り返すことにより、所望の繊維径のセルロース繊維を得ることができる。この繰り返し回数(パス数)は、通常1回以上、好ましくは3回以上で、通常20回以下、好ましくは15回以下である。パス数が多い程、微細化の程度を上げることができるが、過度にパス数が多いとコスト高となるため好ましくない。
高圧ホモジナイザーとしては特に限定はないが、具体的装置としては、ガウリン社製やスギノマシン社製の「アルティマイザー」を用いることができる。
噴出時の高圧条件は高い程、圧力差により大きなへき開現象でより一層の微細化を図ることができるが、装置仕様の上限として、通常245MPa以下である。
同様に、高圧条件から減圧下への圧力差も大きいことが好ましいが、一般的には、増圧機による加圧条件から大気圧下に噴出することで、圧力差の上限は通常245MPa以下である。
また、原料分散液を噴出させる細孔の直径が小さければ、容易に高圧状態を作り出せるが、過度に小さいと噴出効率が悪くなる。この細孔直径は50μm以上800μm以下が好ましく、より好ましくは100μm以上500μm以下、さらに好ましくは150μm以上350μm以下である。
噴出時の温度(原料分散液温度)には特に制限はないが、通常5℃以上100℃以下である。温度が高すぎると装置、具体的には送液ポンプや高圧シール部等の劣化を早める恐れがあるため好ましくない。
なお、噴出ノズルは1本でも2本でもよく、噴出させたセルロースを噴出先に設けた壁やボール、リングにぶつけてもよい。更にノズルが2本の場合には、噴出先でセルロース同士を衝突させてもよい。
なお、このような高圧ホモジナイザーによる処理のみでも、本発明の微細セルロース繊維分散液を得ることは可能であるが、その場合には、十分な微細化度とするための繰り返し回数が多くなり、処理効率が悪いことから、1〜5回程度の高圧ホモジナイザー処理後に後述の超音波処理を行って微細化することが好ましい。
<超音波処理>
本発明において、超音波を照射する原料分散液中のセルロース濃度は、原料分散液全量に対して、0.01〜10重量%が好ましく、0.1〜5重量%がより好ましく、特に0.2〜2重量%が好ましい。超音波を照射する原料分散液のセルロース濃度が低過ぎると非効率であり、高過ぎると粘度が高くなり解繊処理が不均一になる。本発明においては、超音波処理に供される原料分散液のセルロース濃度が上記所定濃度となるように、必要に応じて水および/または有機溶媒を添加してもよい。
また、超音波を照射する原料分散液中のセルロースの繊維径は、解繊効率の点で、10μm以下が好ましく、2μm以下がより好ましく、1μm以下が特に好ましい。下限値は、特に制限されないが、通常4nm以上である。
セルロース分散液に照射する超音波の周波数は、15kHz〜1MHzが好ましく、20kHz〜500kHzがより好ましく、20kHz〜100kHzが特に好ましい。照射する超音波の周波数が小さ過ぎると、後述のキャビテーションが発生しにくい。周波数が大き過ぎると、発生したキャビテーションが物理的な作用を発生させるまでに大きく成長することなく消滅してしまうため、微細化効果が得られない。
また、超音波の出力としては、実行出力密度として1W/cm以上が好ましく、10W/cm以上がより好ましく、20W/cm以上が特に好ましい。超音波の出力が小さ過ぎると、微細化効率が低下して、十分な微細化を行うために長時間の照射が必要であり、実用的ではない。なお、超音波の実行出力密度の上限は、振動子やホーンなどの耐久性の点から500W/cm以下である。
なお、超音波の実効出力密度は、水500mLの温度上昇から計算することができる。具体的には、容器に水500mLを投入し、この水に超音波を照射してそのときの温度上昇の程度を測定し、下記式(1)に従って計算することにより求められる。
P=(T/s)×4.18×500/A …(1)
ここで、Pは超音波の実効出力密度(W/cm)、Tは上昇温度(℃)、sは時間(秒)、Aは超音波の振動部の面積(cm)であり、ホーンタイプの場合はその端面の面積である。また、浴槽式の場合は、振動子取り付け面の面積に相当する。
なお、温度の測定に際しては、投入した超音波のエネルギーにより生じた熱が外部に伝わらないように、水を入れる容器は十分に断熱する必要がある。また、室温よりも高い温度では熱が外部に伝わりやすいため、室温よりも10℃まで上がった時の温度とその時の時間を用いて上記(1)式により計算する。
超音波の照射方法には特に制限はなく、各種の方法が利用できる。
例えば、超音波振動子の振動を伝えるホーンを直接上記の原料分散液に挿入することにより、直接セルロースを微細化する方法や、原料分散液を入れた容器の床や壁の一部に超音波振動子を設置してセルロースを微細化する方法や、超音波振動子を装着した容器に水などの液体を入れ、その中に原料分散液を入れた容器を漬すことにより、水などの液体を介して間接的に超音波振動を原料分散液に与えて微細化する方法が採用できる。
中でも、ホーンを直接原料分散液に挿入する方法は、直接超音波エネルギーを伝達することができ、エネルギー密度を高くできるので効率がよく好適に利用される。
原料分散液は一定の量に対して一定時間所定の周波数の超音波を所定の実効出力密度で照射した後、全量を入れ替えるバッチ式の処理方法で微細化処理してもよい。また、ホーンの近傍や、床や壁に超音波振動子を設置した処理容器に一定量の原料分散液を流通させて、連続的に超音波を当てる方法で処理を行ってもよい。さらに、一つの処理容器の中に超音波振動子を複数設置してもよいし、一つの処理容器に一つの振動子を設置した処理容器を複数個連結して用いてもよい。
特に、連続的に原料分散液を流して処理する場合、振動子を有する処理容器を直列に連結して、原料分散液を順次流通させる方法は、効率の面から好適である。その際に、複数の振動子は同一の周波数でもよいし、周波数を変化させてもよい。
また、超音波は連続的に照射してもよく、所定の間隔で間欠的に照射してもよい。例えば、0.1〜0.9秒間の超音波照射と0.1〜0.9秒間の休止運転とを交互に繰り返し行う方法であってもよい。
超音波処理を行うと、与えたエネルギーが熱に変換されて原料分散液の温度が上昇する。従って、一定の処理条件で微細化処理を行うために、冷却または加熱などにより、原料分散液の温度を一定にすることが好ましい。超音波処理時の原料分散液の温度は、1〜80℃が好ましく、より好ましくは10〜60℃、更に好ましくは15〜40℃である。この温度が低過ぎると水を分散媒に用いた場合、凍結してしまい、処理不能となる。即ち、固体の氷ではキャビテーションの発生が困難であり、また、水と氷が混在している場合には、氷の表面でキャビテーションが発生してエネルギーを消費するため、セルロースの微細化効率が低下する。逆に、処理温度が高過ぎると、超音波振動子面に微小な水蒸気等の蒸気が発生し、エネルギー効率が低下するため好ましくない。
超音波照射の処理時間は、分散液中のセルロース繊維が所望の微細化度に微細化されるような時間であればよく、用いた超音波の出力や周波数、超音波照射前のセルロース繊維の繊維径などにより適宜設定される。
超音波処理によりセルロース繊維が微細化される原理は完全に解明されているわけではないが、以下の現象が発生していると推測される。
即ち、水などの液体中にセルロース繊維が懸濁、分散している状態で、超音波を照射すると、超音波振動子から発生した超音波がセルロース繊維に当たり、セルロース繊維と水との界面にキャビテーションが発生する。発生したキャビティは急激に収縮して消滅するが、その際に、周辺に大きな剪断力を発生させる。これによりセルロース繊維の表面から微細なセルロース繊維が剥離されることにより、微細セルロース繊維が生成する。
なお、超音波処理前の原料分散液中のセルロースの繊維径は、光学顕微鏡により確認することができる。また、超音波処理等により生成したナノサイズの微細セルロース繊維の繊維径は、分散液中の分散媒を乾燥除去した後、SEMやTEMで観察することにより計測して求めることができる。
なお、上記の解繊処理(例えば、超音波処理)後に、必要に応じて、遠心分離処理などを施してもよい。
<セルロース繊維が分散した分散液>
上述した原料セルロースに対して解繊処理を施す方法などによって、分散媒中に平均繊維径30nm以下のセルロース繊維が分散した分散液(以後、適宜、微細セルロース繊維分散液とも称する)が得られる。
<セルロース繊維>
本発明の分散液中におけるセルロース繊維とは、主としてセルロースからなる繊維である。
このセルロース繊維の水分散液または有機溶媒分散液を、後述する濾過または塗布によって製膜する方法、あるいはゲル状膜を乾燥する方法などによって、セルロース繊維ゲルを製造することができる。
<セルロースI型結晶>
本発明のセルロース繊維は、セルロースI型結晶構造を有するものであることが好ましい。
セルロースI型結晶構造とは、例えば、朝倉書店発行の「セルロースの事典」新装版第一刷P.81〜P.86、あるいはP.93〜99に記載の通りのものであり、ほとんどの天然セルロースはセルロースI型結晶構造である。これに対して、セルロースI型結晶構造ではなく、例えばセルロースII、III、IV型構造のセルロース繊維は、セルロースI型結晶構造を有するセルロースから誘導されるものである。
本発明では、セルロースI型結晶構造のセルロース繊維により、微細セルロース繊維分散液を提供することに特徴がある。
セルロース繊維がI型結晶構造であることは、その広角X線回折像測定により得られる回折プロファイルにおいて、2θ=14〜17°付近と2θ=22〜23°付近の二つの位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。
<繰り返し単位>
上記のセルロース繊維は、一般式(2)で表される繰り返し単位を含むセルロースおよび/またはその誘導体よりなることが好ましい。なかでも、セルロースの全繰り返し単位(100モル%)中、一般式(2)で表される繰り返し単位を50モル%以上含むことが好ましく、特に、一般式(2)で表される繰り返し単位のみからなるセルロースおよび/またはその誘導体であることが好ましい。
セルロースが、このような繰り返し単位を有するものであれば、結晶性が高くなり、高耐熱、高弾性率、高強度、低線膨張率になり好ましい。
一般式(2)中、X、X、Xは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20のアルキルカルボニル基、アリル基で置換されていてもよい炭素数2〜6のアルケニルカルボニル基、アルキニルカルボニル基、アリルカルボニル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、またはフロイル基を表す。
一般式(2)において、X、X、Xは、それぞれ独立して、水素原子;アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、2−ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ピバロイル基などの炭素数1〜20のアルキルカルボニル基;アクリロイル基、メタクリロイル基、シンナモイル基などの、アリル基で置換されていてもよい炭素数2〜6のアルケニルカルボニル基;プロピオロイル基などのアルキニルカルボニル基;ベンゾイル基、ナフトイル基などのアリルカルボニル基;ニコチノイル基、イソニコチノイル基、フロイル基、シンナモイル基であるが、好ましくは、X、X、Xは水素原子である。その場合、結晶性が高くなり、高耐熱、高弾性率、高強度、低線膨張率になり好ましい。
疎水性が必要な場合には、X1、、Xは一部、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、2−ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、フロイル基、シンナモイル基としてもよい。
また、後述のセルロース繊維複合材料において、(メタ)アクリル樹脂と複合化する場合には、X1、、Xはアクリロイル基、メタクリロイル基、プロピオロイル基が好ましい。
なお、セルロースの繰り返し単位の化学構造は、固体NMRにより確認することができる。
<平均繊維径>
本発明の微細セルロース繊維分散液は、含まれるセルロース繊維の繊維径が非常に細いことを特徴とする。
微細セルロース繊維分散液中におけるセルロース繊維の平均繊維径(直径)は、30nm以下であり、好ましくは25nm以下、より好ましくは20nm以下である。下限値に関しては、特に限定されないが、通常は4nm以上である。30nmを超えると透明性が低下して好ましくない。また、4nmより小さい繊維は実質的に製造できない。
上記セルロース繊維としては、繊維径(直径)100nm以下のものを含み、10μm以上の繊維径のものを含んでいないことが好ましく、さらに好ましくは1μm以上の繊維径のものを含んでいないことが好ましく、特に好ましくは400nm以上の繊維径のものを含んでいないことが好ましい。400nmは最も短い可視光の波長であり、従って、400nm以上の繊維径の繊維が含まれていると、光の散乱が大きく、樹脂と複合化した場合、透明性を損なう。
なお、セルロース繊維の繊維径は、微細セルロース繊維分散液や後述するセルロース繊維複合材料の破断面をSEM(走査電子顕微鏡)観察することにより確認することができる。
<微細化度>
本発明の微細セルロース繊維分散液のセルロース繊維は、25℃において測定されるずり速度10s−1における粘度が100mPa・s以下となるように分散液を調整して、遠心分離機にて38900Gの加速度を30分間かけたとき、全体積における上澄み10%に含まれるセルロースおよび/またはその誘導体の濃度が、遠心分離機にかける前の該分散液のセルロースおよび/またはその誘導体の濃度の50%以上である程度に微細化されていることが好ましい(以下において、遠心分離前の分散液中のセルロースおよび/またはその誘導体の濃度(重量)に対する、遠心分離後の上記上澄みに含まれるセルロースおよび/またはその誘導体の濃度(重量)の割合(百分率)を「セルロース残存率」と称する。)。
上記のような微細化度をもつ分散液を使用すると、得られるセルロース繊維複合材料の透明性が向上する。
上記のセルロース残存率が大きい程、分散液中のセルロース繊維が十分に微細化されて、非常に細かい極細繊維とされていることを示す。この理由は次の通りである。
即ち、遠心分離機で大きな加速度を与えた場合、分散液中の水などの分散媒よりも比重の大きいセルロース繊維は沈降するが、繊維径の小さいセルロース繊維程、遠心力による沈降速度が小さくなり、一定時間内には沈降しなくなる。一方、繊維径の太い繊維にかかる遠心力は大きくなり、早期に沈降する。このような遠心力による沈降性の理論により、所定時間内に沈降する繊維量に応じて、遠心分離後の上澄み液中のセルロース濃度と初期濃度とで濃度差が発生する。従って、分散液に上記の一定の遠心力を作用させて一定の時間後に上澄みに含まれるセルロース濃度を測定することにより、繊維径の小さいセルロース繊維が多く含まれているか否かを数値として評価することが可能となる。
ただし、分散液の粘度が高い場合には、セルロース繊維が凝集してゲル構造をとるため、太い繊維が含まれていても遠心分離で沈降せず、セルロース残存率では微細化度を確認し得ない。従って、ずり速度が10s−1の時の粘度(定常ずり粘度)が100mPa・s以下、例えば1〜100mPa・sの比較的セルロース繊維濃度が低く、低粘度の分散液に対して、上記のような遠心分離による評価を行う。
なお、微細セルロース繊維分散液の定常ずり粘度は、粘弾性測定装置(RHEOMETRIC SCIENTIFIC社のARES100FRT)を用いて測定することができ、具体的には、後述の実施例の項に示される方法で測定することができる。
本発明の微細セルロース繊維分散液において上記のセルロース残存率は、50%以上が好ましく、より好ましくは70%以上であり、更に好ましくは80%以上である。
<可視光透過率>
本発明の微細セルロース繊維分散液は、分散液中のセルロース繊維の繊維径が非常に細いため、可視光の光線透過率が高い。即ち、太い繊維を含むセルロース分散液はその太い繊維によって光が散乱されるため、光線透過率は低下し、白濁して見える。特に、低波長の光は散乱されやすく、透過率が低下するが、本発明の微細セルロース繊維分散液は波長400nmの光でも高い透過率を得ることができる。
従って、本発明の微細セルロース繊維分散液は、波長400nmの光線透過率が好ましくは60%以上であり、より好ましくは70%以上であり、更に好ましくは80%以上である。また、波長550nmの光線透過率が好ましくは70%以上であり、より好ましくは80%以上であり、更に好ましくは85%以上である。また、波長800nmの光線透過率が好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上であり、更に好ましくは88%以上である。
<繊維長>
本発明の微細セルロース繊維分散液中のセルロース繊維の長さについては特に限定されないが、平均長さで100nm以上が好ましい。繊維の平均長さが短か過ぎると、後述するセルロース繊維複合材料の強度が不十分となる恐れがある。
なお、セルロース繊維の繊維長さは、前述のセルロース繊維の繊維径と同様に測定することができる。
<分散媒>
本発明の微細セルロース繊維分散液中の分散媒としては、上記の原料分散液で使用される分散媒と同じく、通常、水であるが、有機溶媒の1種または2種以上の混合溶媒であってもよい。また、水と有機溶媒との混合溶媒であってもよい。
なお、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブタノールなどのアルコール類、アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン類、その他水溶性の有機溶剤が挙げられる。
<セルロース繊維濃度>
本発明の微細セルロース繊維分散液中のセルロース繊維濃度については特に制限はないが、分散液全量に対して、0.01〜10重量%が好ましく、0.05〜1重量%がより好ましい。濃度が低過ぎると分散液中のセルロース繊維量が少ないことにより、後述するセルロース繊維ゲルの生産効率に劣るものとなり、高過ぎると後述のセルロース繊維ゲルの製造において、厚み斑や光学等方性の悪化が起こる場合がある。
<各種添加剤>
また、微細セルロース繊維分散液には、更に、界面活性剤、紙力増強剤、柔軟剤、サイズ剤などが1種または2種以上含まれていてもよい。
界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩、アルキルリン酸塩、ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物、特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤などの陰イオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミドなどの非イオン性界面活性剤;アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩等の陽イオン性界面活性剤;アルキルベタイン、アミンオキサイドなどの両性界面活性剤が挙げられる。
紙力増強剤としては、例えば、ホフマン系、アニオン系、澱粉グラフト系、液状カチオン澱粉、PAM系などが挙げられる。
柔軟剤としては、例えば、星光PMC社製FS8006が挙げられる。
サイズ剤としては、例えば、アルキルケテンダイマー、ロジンまたは変性ロジン、スチレンまたはスチレンアクリレート系ポリマー、脂肪酸系誘導体などが挙げられる。
<セルロースの化学修飾>
微細セルロース繊維分散液に含まれるセルロース繊維に含まれるセルロースは、化学修飾によって誘導化されたものであってもよい。化学修飾とは、セルロース中の水酸基の一部または全部が化学修飾剤と反応して化学修飾されているものである。
なお、化学修飾は後述のセルロース繊維ゲルに対して行ってもよく、セルロース繊維ゲルとする前の分散液中のセルロース繊維に対して行ってもよい。また、解繊する前のセルロース原料、リグニンやヘミセルロースなどを除去した後のセルロース原料に対して行ってもよい。
化学修飾によってセルロースに導入される官能基としては、例えば、アセチル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロピオニル基、プロピオロイル基、ブチリル基、2−ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、フロイル基、シンナモイル基などのアシル基が挙げられる。これらの中では特にアセチル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基などの炭素数2〜12のアシル基が好ましい。
修飾方法としては、特に限定されるものではないが、セルロース繊維と次に挙げるような化学修飾剤とを反応させる方法がある。この反応条件についても特に限定されるものではないが、必要に応じて溶媒、触媒などを用いたり、加熱、減圧などを行うこともできる。
化学修飾剤の種類としては、酸、酸無水物、およびハロゲン化試薬からなる群から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
酸としては、例えば、酢酸、アクリル酸、メタクリル酸、プロパン酸、ブタン酸、2−ブタン酸、ペンタン酸などが挙げられる。
酸無水物としては、例えば、無水酢酸、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、無水プロパン酸、無水ブタン酸、無水2-ブタン酸、無水ペンタン酸などが挙げられる。
ハロゲン化試薬としては、例えば、アセチルハライド、アクリロイルハライド、メタクリロイルハライド、プロパノイルハライド、ブタノイルハライド、2−ブタノイルハライド、ペンタノイルハライド、ベンゾイルハライド、ナフトイルハライドなどが挙げられる。
これらの中では特に無水酢酸、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、ベンゾイルハライド、ナフトイルハライドが好ましい。
これらの化学修飾剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
化学修飾による修飾率の割合としては、セルロースの全水酸基に対して、置換度が0〜1.5が好ましく、0〜1.2が好ましく、0〜1.0が特に好ましい。置換度が1.5より高いとセルロースの結晶性が低下し、弾性率や強度が低下すると共に、線膨張係数が大きくなるおそれがある。ここで、置換度とは一グルコース単位中にある、三個の水酸基のうち、いくつが置換されるかを示す。すなわち置換度1は、三個の水酸基のうち一つの水酸基が置換されたことを意味する。
[ゲル製造工程]
ゲル製造工程では、上述した分散液製造工程で得られた分散液中の分散媒の一部を除去して、セルロース繊維と分散媒とを主成分とするセルロース繊維ゲルであって、分散媒の含有量がゲル全重量に対して10〜99重量%である湿潤状態のセルロース繊維ゲルを製造する工程である。この工程によって得られるセルロース繊維ゲル中においては、セルロース繊維が3次元網目状構造を形成しており、その網目内部に分散媒が含まれている。
分散液製造工程で得られた分散液から分散媒を除去する方法としては、所定量の分散媒を含むセルロース繊維ゲルが製造できれば、特に限定されない。例えば、濾布を用いた濾過法、分散液を所定の基板上に塗布して、分散媒を蒸発させる塗布法、加熱乾燥により分散媒を除去する加熱乾燥法などが挙げられる。
なかでも、得られるセルロール繊維ゲル中の分散媒の含有量の制御が容易である点から、濾過(濾過法)または塗布(塗布法)により分散媒を除去することが好ましい。
以下に、それぞれの方法について詳述する。
<濾過法>
濾過法とは、上記の分散液を濾布に通すことにより、分散媒の一部を除去する方法である。この方法によれば、濾布上に所望の分散媒含有量を有する、フィルム状またはシート状のセルロール繊維ゲルが形成される。
濾過に供される微細セルロース繊維分散液中のセルロース繊維の濃度は、分散液全量に対して、0.01重量%以上が好ましく、0.05重量%以上がより好ましく、0.1重量%以上が特に好ましい。濃度が低すぎると、濾過に膨大な時間がかかるため好ましくない。また、微細セルロース繊維分散液中のセルロース繊維の濃度は、分散液全量に対して、1.5重量%以下が好ましく、1.2重量%以下がより好ましく、1.0重量%以下が特に好ましい。濃度が高すぎると、均一なセルロール繊維ゲルが得られにくいため好ましくない。
なお、微細セルロース繊維分散液中のセルロース繊維の濃度は、必要に応じて、各種分散媒で調整することが可能である。
濾過時に使用される濾布としては、微細化したセルロース繊維は通過せずかつ濾過速度が遅くなりすぎないことが重要である。このような濾布としては、有機ポリマーからなる不織布、織物、多孔膜が好ましい。有機ポリマーとしてはポリエチレンテレフタレートやポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのような非セルロース系の有機ポリマーが好ましい。
具体的には、孔径0.1〜20μmのポリテトラフルオロエチレンの多孔膜、孔径0.1〜20μmのポリエチレンテレフタレートやポリエチレンの織物などが挙げられる。
濾過の方法としては、自然濾過であっても、減圧濾過であっても加圧濾過であってもよい。生産性の観点からは、減圧濾過または加圧濾過が好ましい。
<塗布法>
塗布法とは、上記分散液を所定の基板上に塗布して、分散媒を特定量まで蒸発させて除去する方法である。
塗布の方法としては、特に限定されず、スピンコート法、ブレードコート法、ワイヤーバーコート法、スプレーコート法、スリットコート法などが挙げられる。特に、均一な膜厚の薄膜が得られる点で、スピンコート法が好ましい。
なお、基板としては、特に限定されず、ガラス基板、プラスチック基板などが挙げられる。
分散液の塗布により形成される塗膜中の分散媒の蒸発方法は、所望の分散媒含有量を有するセルロース繊維ゲルが得られれば特に限定されず、送風乾燥であってもよく、減圧乾燥であってもよく、また、加圧乾燥であってもよい。また、加熱乾燥しても構わない。
なお、塗布により得られる塗布膜(ゲル)が所望の分散媒含有量を有していれば、上記乾燥は特に必要ない。
<セルロース繊維ゲル>
上記の方法(例えば、濾過法、塗布法)により得られたセルロース繊維ゲルは、セルロース繊維が3次元網目を作り、それが分散媒によって湿潤または膨潤したものであり、網目構造は化学架橋や物理架橋により形成される。分散媒の含有量はゲル全重量に対して10〜99重量%であり、ゲルが所定量の分散媒を含有することによって、ゲル中のセルロース繊維の3次元網目状構造が保持される。さらに、後述するマトリックス材料との置換が良好に進行し、光学的等方性および表面平滑性に優れたセルロース繊維材料を得ることができる。
ゲル中における分散媒の含有量は、10重量%以上であり、50重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましい。10重量%未満であると、得られるセルロース繊維複合材料の光学的等方性および表面平滑性が損なわれる。また、上限としては、99重量%以下であり、97重量%以下が好ましく、95重量%以下がより好ましい。99重量%を超えると、ゲルのハンドリング性が悪くなると共に、生産性が低下する。
また、ゲル中におけるセルロース繊維の含有量は、通常、90重量%以下であり、50重量%以下が好ましく、30重量%以下がより好ましい。90重量%を超えると、得られるセルロース繊維複合材料の光学的等方性および表面平滑性が損なわれる。また、下限としては、1重量%以上であり、3重量%以上が好ましく、5重量%以上がより好ましい。1重量%未満であると、ゲルのハンドリング性が悪くなると共に、生産性が低下する。
ゲル中における分散媒とセルロース繊維との重量比(セルロース繊維/分散媒)は、9/1〜1/99が好ましく、より好ましくは1/1〜3/97であり、さらに好ましくは3/7〜5/95である。9/1を超えると、得られるセルロース繊維複合材料の光学的等方性および表面平滑性が損なわれる。1/99未満であると、セルロース繊維ゲルの形状を保てず、取扱いが非常に困難となる。
セルロース繊維ゲルにおいて、分散媒とセルロース繊維とは主成分として含まれる。ここで主成分とは、分散媒とセルロース繊維との合計重量が、ゲル全重量に対して、通常、90重量%以上が好ましく、より好ましくは95重量%以上である。上限値は特に制限されないが、100重量%である。
セルロース繊維ゲル中におけるセルロース繊維の平均繊維径は、通常、上述のように30nm以下であり、好適な範囲は上述の通りである。
セルロース繊維ゲルに含まれる分散媒は、上記で説明したとおり、通常、水であるが、有機溶媒の1種または2種以上の混合分散媒であってもよい。また、水と有機溶媒との混合分散媒であってもよい。
セルロース繊維ゲルに含まれる分散媒は、上記分散媒含有量が上記範囲内である限り、必要に応じて他の種類の分散媒に置換することができる。つまり、ゲル製造工程後、必要に応じて、セルロース繊維ゲル中の分散媒(第一の分散媒)を、他の分散媒(第二の分散媒)に置換する分散媒置換工程を実施してもよい。
置換する方法としては、例えば、上記の濾過法により分散液中に含まれる所定量の分散媒を除去した後、アルコールなどの有機溶媒を加えることにより、アルコール等の有機溶媒が含まれるゲルを製造することができる。より具体的には、第一の分散媒が水で、第二の分散媒が有機溶媒である場合が挙げられる。
なお、上記第二の分散媒の種類は特に限定されず、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2-プロパノール、1−ブタノールなどのアルコール類の他、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、トルエン、四塩化炭素などの1種または2種以上の有機溶媒が挙げられる。
セルロース繊維ゲルの形状は、特に限定されず、シートまたはフィルム状(例えば、厚み10μm以上10cm以下)、粒子状など適宜制御することができる。
[置換工程]
置換工程では、上記ゲル製造工程で得られたセルロース繊維ゲルから、加圧および/または乾燥によりゲル中の分散媒を除去することなく、上記分散媒含有量を保持した湿潤状態のままで、マトリックス材料と接触させ、ゲル内に含有される分散媒とマトリックス材料とを置換する工程である。本工程においては、得られたゲルから分散媒を除去するための加圧または乾燥処理を施すことなく、湿潤状態のゲルをマトリックス材料と接触させる点に特徴がある。
一方、従来法においては、まず、セルロース繊維を用いて得られる湿潤状態のセルロース繊維ゲルから実質的に分散媒を除去することにより、空孔率の高いセルロース繊維の不織布を製造する。次に、形成された空孔内部にマトリックス材料を充填させ、所定のセルロース繊維複合材料を製造している。つまり、従来法では、セルロース繊維の不織布内に空孔を形成することが必須とされており、本発明のように湿潤状態のセルロース繊維ゲルを用いて分散媒とマトリックス材料とを置換するという技術思想とは大きく異なる。
本工程においては、得られたセルロース繊維ゲルから分散媒を除去するための加圧および/または乾燥処理を施すことなく、上記の分散媒含有量を保持したまま、ゲルをマトリックス材料と接触させる。
加圧とは、セルロース繊維ゲルから分散媒を除去するために実施される加圧を意味し、例えば、コールドプレスやホットプレスなどが挙げられる。プレスにより分散媒がセルロース繊維ゲルの横方向に抜けて層状構造を形成する、およびプレスによりセルロース繊維が横方向に配向するなどが起こり、光学等方性や表面平滑性が悪化する恐れが有ることから、プレスを実施しないことが好ましい。
乾燥とは、セルロース繊維ゲルから分散媒を除去するために実施される乾燥を意味し、例えば、加熱乾燥が挙げられる。より具体的には、分散媒の沸点以上の加熱を実施しないことが好ましい。
ただし、セルロース繊維ゲル中の分散媒含有量を実質的に変化させない程度の加圧や乾燥(例えば、大気圧下での放置)であれば、実施してもよい。
なお、上述したゲル製造工程と本置換工程との間では、実質的にセルロース繊維ゲルの組成(分散媒含有量、セルロース含有量)などを変化させる工程はなく、静置、搬送、移動等の工程はあってもよい。
セルロース繊維ゲルとマトリックス材料との接触方法は、後述の<セルロース繊維ゲルとマトリックス材料との接触及びマトリックス複合化の方法>において例示するが、セルロース繊維ゲル中の分散媒と液状のマトリックス材料との置換が進行すれば、特に制限はされない。なお、接触時は大気圧下でも、減圧下でもよい。
<マトリックス材料>
本発明のセルロース繊維複合材料は、上述のセルロース繊維ゲルとマトリックスとが複合化したものである。
本発明において、マトリックス材料とは、セルロース繊維と接触後、複合化の工程を経ることによって、セルロース繊維複合材料の母材(マトリックス)の一つとなり、後述する好適な物性を満たすセルロース繊維複合材料を製造することができるものであれば、特に制限されない。例えば、高分子材料、セラミックなどが挙げられる。
なかでも、加熱することにより流動性のある液体になる熱可塑性樹脂、加熱により重合する熱硬化性樹脂、紫外線や電子線などの活性エネルギー線を照射することにより重合硬化する光(活性エネルギー線)硬化性樹脂などから選ばれる1以上の高分子材料またはその前駆体(例えばモノマー)が好ましい。
なお、本発明において高分子材料の前駆体とは、いわゆるモノマー、オリゴマーであり、例えば、熱可塑性樹脂の項に(共)重合成分として後述する各単量体など(以後、熱可塑性樹脂前駆体と称することがある)、熱硬化性樹脂・光硬化性樹脂の項に後述する各前駆体などが挙げられる。
<セルロース繊維ゲルとマトリックス材料との接触及びマトリックス複合化の方法>
セルロース繊維ゲルとマトリックス材料との接触及びマトリックス複合化の方法としては、例えば、次の(a)〜(f)の方法が挙げられる。なお、(b),(c),(e)および(f)の方法に記載の硬化性樹脂前駆体の重合硬化の詳細については、後述する硬化工程にて詳述する。
(a) セルロース繊維ゲルに液状の熱可塑性樹脂前駆体を含浸させて重合する方法
(b) セルロース繊維ゲルに熱硬化性樹脂前駆体または光硬化性樹脂前駆体を含浸させて重合硬化させる方法
(c) セルロース繊維ゲルに樹脂溶液(熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂前駆体、熱硬化性樹脂前駆体、および光硬化性樹脂前駆体から選ばれる1以上の溶質を含む溶液)を含浸させて乾燥した後、加熱プレス等で密着させ、必要に応じて重合硬化する方法
(d) セルロース繊維ゲルに熱可塑性樹脂の溶融体を含浸させ、加熱プレス等で密着させる方法
(e) セルロース繊維ゲルの片面または両面に、液状の熱可塑性樹脂前駆体、熱硬化性樹脂前駆体、または光硬化性樹脂前駆体を塗布して重合硬化させる方法
(f) セルロース繊維ゲルの片面または両面に樹脂溶液(熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂前駆体、熱硬化性樹脂前駆体、および光硬化性樹脂前駆体から選ばれる1以上の溶質を含む溶液)を塗布して、溶媒を除去後、必要に応じて重合硬化する方法
(a) セルロース繊維ゲルに熱可塑性樹脂前駆体を含浸させて重合する方法としては、重合可能なモノマーやオリゴマーをセルロース繊維ゲルに含浸させ、熱処理等により上記モノマー等を重合させることにより高分子セルロース複合体を得る方法が挙げられる。一般的には、モノマーの重合に用いられる重合触媒を重合開始剤として用いることができる。
(b) セルロース繊維ゲルに熱硬化性樹脂前駆体または光硬化性樹脂前駆体を含浸させて、重合硬化させる方法としては、エポキシ樹脂モノマー等の熱硬化性樹脂前駆体、またはアクリル樹脂モノマー等の光硬化性樹脂前駆体と硬化剤の混合物を、セルロース繊維ゲルに含浸させ、熱または活性エネルギー線等により上記熱硬化性樹脂前躯体または光硬化性樹脂前躯体を重合硬化させることによりセルロース繊維複合材料を得る方法が挙げられる。
(c) セルロース繊維ゲルに樹脂溶液(熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂前駆体、熱硬化性樹脂前駆体、および光硬化性樹脂前駆体から選ばれる1以上の溶質を含む溶液)を含浸させて乾燥後、加熱プレス等で密着させ、必要に応じて重合硬化する方法としては、樹脂が溶解する溶媒に溶解させ、その溶液をセルロース繊維ゲルに含浸させ、乾燥させることでセルロース繊維複合材料を得る方法が挙げられる。この場合、さらに、乾燥後、加熱プレス等で溶媒が乾燥した空隙を密着させることで、より高性能な複合体を得ることができる。光硬化性樹脂前駆体を用いた場合には更に、必要に応じて活性エネルギー線等による重合硬化を行う。
樹脂を溶解させる溶媒としては、セルロース繊維ゲルとの親和性と樹脂の溶解性を考慮して選択すればよく、具体的にはセルロース繊維ゲルの分散媒として例示したもの等の中から、樹脂の溶解性に応じて選択すればよい。
(d) セルロース繊維ゲルに熱可塑性樹脂の溶融体を含浸させ、加熱プレス等で密着させる方法としては、熱可塑性樹脂をガラス転移温度以上または融点以上で熱処理することにより溶解させ、セルロース繊維ゲルに含浸し、加熱プレス等で密着することにより高分子セルロース複合体を得る方法が挙げられる。熱処理は加圧下で行うことが望ましく、真空加熱プレス機能を有する設備の使用が有効である。
(e) セルロース繊維ゲルの片面または両面に液状の熱可塑性樹脂前駆体、熱硬化性樹脂前駆体または光硬化性樹脂前駆体を塗布して、重合硬化させる方法としては、セルロース繊維ゲルの片面または両面に熱重合開始剤を処方した熱硬化性樹脂前駆体を塗布して加熱することにより硬化させて両者を密着させる方法や、セルロース繊維ゲルの片面または両面に光重合開始剤を処方した光硬化性樹脂前駆体を塗布した後、紫外線等の活性エネルギー線を照射して硬化させる方法等が挙げられる。セルロース繊維ゲルに液状の熱可塑性樹脂前駆体や熱もしくは光硬化性樹脂前駆体を塗布した後、更にセルロース不織布を重ねるなど、多層構造にしてから、重合硬化させても良い。
(f) セルロース繊維ゲルの片面または両面に樹脂溶液(熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂前駆体、熱硬化性樹脂前駆体、および光硬化性樹脂前駆体から選ばれる1以上の溶質を含む溶液)を塗布して、溶媒を除去することにより複合化する方法としては、溶媒に可溶な樹脂を溶解させた樹脂溶液を用意し、セルロース繊維ゲルの片面または両面に塗布し、加熱により溶媒を除去する方法が挙げられる。光硬化性樹脂前駆体を用いた場合には更に、必要に応じて活性エネルギー線等による重合硬化を行う。
樹脂を溶解させる溶媒としては、セルロース繊維ゲルとの親和性と樹脂の溶解性を考慮して選択すればよく、具体的にはセルロース繊維ゲルの分散媒として例示したもの等の中から、樹脂の溶解性に応じて選択すればよい。
このようにして製造したセルロース繊維複合材料を、複数枚重ねて積層体を得ることもできる。その際に、セルロース繊維を含む複合材料と含まない樹脂シートを積層してもよい。複合材料同士や樹脂と複合材料を接着させるために、接着剤を塗布したり、接着シートを介在させてもよい。また、積層体に加熱プレス処理を加えて一体化することもできる。
本発明において、セルロース繊維ゲルに接触させるマトリックス材料を以下に例示するが、本発明で用いるマトリックス材料は何ら以下のものに限定されるものではない。また、本発明における熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光(活性エネルギー線)硬化性樹脂は2種類以上混合して用いることができる。
本発明においては、以下の高分子材料のうち、特に、非晶質でガラス転移温度(Tg)の高い合成高分子が、透明性に優れた高耐久性のセルロース繊維複合材料を得る上で好ましい。なかでも、非晶質の程度としては、結晶化度で10%以下、特に5%以下であるものが好ましく、また、Tgは室温以上、特に100℃以上、とりわけ130℃以上のものが好ましい。なお、高分子のTgは一般的な方法で求めることができる。例えば、DSC法による測定で求められる。高分子の結晶化度は、非晶質部と結晶質部の密度から算定することができ、また、動的粘弾性測定により、弾性率と粘性率の比であるtanδから算出することもできる。
<熱可塑性樹脂>
熱可塑性樹脂としては、後述するセルロース繊維複合材料の物性を満足するものであれば特に制限されないが、例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、芳香族ポリカーボネート系樹脂、脂肪族ポリカーボネート系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリオレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、熱可塑性ポリイミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリスルホン系樹脂、非晶性フッ素系樹脂などが挙げられる。
スチレン系樹脂としては、スチレン、クロルスチレン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレンなどの重合体および共重合体が挙げられる。
アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミドなどの重合体および共重合体が挙げられる。ここで「(メタ)アクリル」とは、「アクリルおよび/またはメタクリル」を意味する。
(メタ)アクリル酸エステルとは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、シクロアルキルエステル基を有する(メタ)アクリル酸系単量体、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルなどが挙げられる。シクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸系単量体としては、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ブトキシエチルなどが挙げられる。
(メタ)アクリルアミドとしては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−t−オクチル(メタ)アクリルアミド等のN置換(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
芳香族ポリカーボネート系樹脂とは、3価以上の多価フェノール類を共重合成分として含有できる1種以上のビスフェノール類と、ビスアルキルカーボネート、ビスアリールカーボネート、ホスゲンなどの炭酸エステル類との反応により製造される共重合体である。必要に応じて、芳香族ポリエステルカーボネート類とするために共重合成分として、テレフタル酸やイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸またはその誘導体(例えば、芳香族ジカルボン酸ジエステルや芳香族ジカルボン酸塩化物)を使用してもよい。
上記ビスフェノール類としては、ビスフェノールA、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールM、ビスフェノールP、ビスフェノールS、ビスフェノールZ(略号はアルドリッチ社試薬カタログを参照)などが例示され、中でもビスフェノールAとビスフェノールZ(中心炭素がシクロヘキサン環に参加しているもの)が好ましく、ビスフェノールAが特に好ましい。共重合可能な3価フェノール類としては、1,1,1−(4−ヒドロキシフェニル)エタンやフロログルシノールなどが例示できる。
脂肪族ポリカーボネート系樹脂としては、脂肪族ジオール成分および/または脂環式ジオール成分と、ビスアルキルカーボネート、ホスゲンなどの炭酸エステル類との反応により製造される共重合体である。脂環式ジオールとしては、シクロヘキサンジメタノールやイソソルバイトなどが挙げられる。
芳香族ポリエステル系樹脂としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールなどのジオール類とテレフタル酸などの芳香族カルボン酸との共重合体が挙げられる。また、ポリアリレートのように、ビスフェノールAなどのジオール類とテレフタル酸やイソフタル酸などの芳香族カルボン酸との共重合体も挙げられる。
脂肪族ポリエステル系樹脂としては、上記ジオールとコハク酸、吉草酸などの脂肪族ジカルボン酸との共重合体やグリコール酸や乳酸などのヒドロキシジカルボン酸の共重合体等が挙げられる。
脂肪族ポリオレフィン系樹脂としては、具体的には、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどの炭素数2〜8程度のα−オレフィンの単独重合体、それらのα−オレフィンと、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−オクタデセンなどの炭素数2〜18程度の他のα−オレフィンなどとの二元あるいは三元の共重合体が挙げられる。具体的には、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状高密度ポリエチレンなどのエチレン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−ヘプテン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体などのエチレン系樹脂、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体などのプロピレン系樹脂、1−ブテン単独重合体、1−ブテン−エチレン共重合体、1−ブテン−プロピレン共重合体などの1−ブテン系樹脂、および、4−メチル−1−ペンテン単独重合体、4−メチル−1−ペンテン−エチレン共重合体などの4−メチル−1−ペンテン系樹脂などの樹脂、並びに、エチレンと他のα−オレフィンとの共重合体、1−ブテンと他のα−オレフィンとの共重合体が挙げられる。
更に、例えば、1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、1,4−オクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ブチリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロペニル−2−ノルボルネンなどの非共役ジエンとの二元あるいは三元の共重合体が挙げられる。具体的には、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ブテン−非共役ジエン共重合体などのオレフィン系ゴムが挙げられる。これらのオレフィン系重合体は、2種以上が併用されていてもよい。
環状オレフィン系樹脂とは、ノルボルネンやシクロヘキサジエン等、ポリマー鎖中に環状オレフィン骨格を含む重合体またはこれらを含む共重合体である。例えば、ノルボルネン骨格の繰り返し単位、またはノルボルネン骨格とメチレン骨格の共重合体よりなるノルボルネン系樹脂が挙げられ、市販品としては、JSR製の「アートン」、日本ゼオン製の「ゼネックス」および「ゼオノア」、三井化学製の「アペル」、チコナ製の「トーパス」などが挙げられる。
ポリアミド系樹脂としては、6,6−ナイロン、6−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロン、4,6−ナイロン、6,10−ナイロン、6,12−ナイロンなどの脂肪族アミド系樹脂や、フェニレンジアミンなどの芳香族ジアミンと塩化テレフタロイルや塩化イソフタロイルなどの芳香族ジカルボン酸またはその誘導体とからなる芳香族ポリアミドが挙げられる。
ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)などが挙げられ、さらに2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類との共重合体も挙げられる。
ポリイミド系樹脂としては、例えば、無水ポリメリット酸や4,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどの共重合体であるピロメリット酸型イミド、無水塩化トリメリット酸やp−フェニレンジアミンなどの芳香族ジアミンやジイソシアネート化合物からなる共重合体であるトリメリット酸型ポリイミド、ビフェニルテトラカルボン酸、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミンなどからなるビフェニル型ポリイミド、ベンゾフェノンテトラカルボン酸や4,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどからなるベンゾフェノン型ポリイミド、ビスマレイミドや4,4’−ジアミノジフェニルメタンなどからなるビスマレイミド型ポリイミドが挙げられる。
ポリアセタール系樹脂としては、例えば、オキシメチレン構造を単位構造にもつホモポリマーと、オキシエチレン単位を含む共重合体が挙げられる。
ポリスルホン系樹脂としては、例えば、4,4’−ジクロロジフェニルスルホンやビスフェノールAなどの共重合体が挙げられる。
非晶性フッ素系樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、ペルフルオロアルキルビニルエーテルなどの単独重合体または共重合体が挙げられる。
これらの熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<硬化性樹脂>
熱硬化性樹脂、光(活性エネルギー線)硬化性樹脂とは、前駆体が硬化してなる樹脂硬化物のことを意味する。ここで前駆体は、常温では液状、半固体状または固形状であって、常温下または加熱下で流動性を示す物質を意味する。これらは硬化剤、触媒、熱または光の作用によって、重合反応や架橋反応を起こして分子量を増大させながら網目状の3次元構造を形成してなる不溶不融の樹脂となり得る。また、樹脂硬化物とは、上記熱硬化性樹脂前駆体または光(活性エネルギー線)硬化性樹脂前駆体が硬化してなる樹脂を意味する。
<熱硬化性樹脂>
本発明における熱硬化性樹脂前駆体としては、特に限定されないが、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、オキセタン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、珪素樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂などの前駆体が挙げられる。
上記エポキシ樹脂前駆体としては、少なくとも1個のエポキシ基を有する有機化合物をいう。上記エポキシ樹脂前駆体中のエポキシ基の数としては、1分子あたり1個以上7個以下であることが好ましく、1分子あたり2個以上であることがより好ましい。ここで、前駆体1分子あたりのエポキシ基の数は、エポキシ樹脂前駆体中のエポキシ基の総数をエポキシ樹脂中の分子の総数で除算することにより求められる。
上記エポキシ樹脂前駆体としては特に限定されず、例えば、以下に示したエポキシ樹脂の前駆体が挙げられる。これらのエポキシ樹脂の前駆体は、単独でも2種以上併用されてもよい。エポキシ樹脂は、通常、硬化剤を用いて熱硬化性樹脂前駆体を硬化することにより得られる。
例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタントリグリシジルエーテル等の芳香族エポキシ樹脂およびこれらの水添化物や臭素化物などの前駆体が挙げられる。
また、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルアジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル)メチルアジペート、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテルなどの脂環族エポキシ樹脂前駆体が挙げられる。
また、1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、炭素数2〜9(好ましくは2〜4)のアルキレン基を含むポリオキシアルキレングリコールやポリテトラメチレンエーテルグリコール等を含む長鎖ポリオールのポリグリシジルエーテルなどの脂肪族エポキシ樹脂前駆体が挙げられる。
また、フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサドロフタル酸ジグリシジルエステル、ジグリシジル−p−オキシ安息香酸、サリチル酸のグリシジルエーテル−グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステルなどのグリシジルエステル型エポキシ樹脂前駆体およびこれらの水添化物が挙げられる。
また、トリグリシジルイソシアヌレート、環状アルキレン尿素のN,N’−ジグリシジル誘導体、p−アミノフェノールのN,N,O−トリグリシジル誘導体のグリシジルアミン型エポキシ樹脂の前駆体およびこれらの水添化物などが挙げられる。
また、グリシジル(メタ)アクリレートと、エチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル等のラジカル重合性モノマーとの共重合体等が挙げられる。また、エポキシ化ポリブタジエン等の共役ジエン化合物を主体とする重合体またはその部分水添物の重合体における不飽和炭素の二重結合をエポキシ化したもの等が挙げられる。また、エポキシ化SBS等のような、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックまたはその部分水添化物の重合体ブロックとを同一分子内にもつブロック共重合体における共役ジエン化合物の不飽和炭素の二重結合をエポキシ化したもの等が挙げられる。また、1分子あたり1個以上、好ましくは2個以上のエポキシ基を有するポリエステル樹脂等が挙げられる。また、上記エポキシ樹脂の構造中にウレタン結合やポリカプロラクトン結合を導入した、ウレタン変性エポキシ樹脂やポリカプロラクトン変性エポキシ樹脂等が挙げられる。上記変性エポキシ樹脂としては、例えば、上記エポキシ樹脂にNBR、CTBN、ポリブタジエン、アクリルゴム等のゴム成分を含有させたゴム変性エポキシ樹脂等が挙げられる。なお、エポキシ樹脂以外に、少なくとも1つのオキシラン環を有する樹脂またはオリゴマーが添加されてもよい。また、フルオレン含有エポキシ樹脂、フルオレン基を含有する熱硬化性樹脂および組成物、またはその硬化物も挙げられる。これらフルオレン含有エポキシ樹脂は、高耐熱であるため好適に用いられる。
上記エポキシ樹脂前駆体の硬化反応に用いられる硬化剤としては、特に限定されず、例えば、アミン化合物、アミン化合物から合成されるポリアミノアミド化合物等の化合物、3級アミン化合物、イミダゾール化合物、ヒドラジド化合物、メラミン化合物、酸無水物、フェノール化合物、熱潜在性カチオン重合触媒、光潜在性カチオン重合開始剤、ジシアンアミドおよびその誘導体などが挙げられる。これらの硬化剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
アクリル樹脂前駆体としては、分子内に1個の(メタ)アクリロイル基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物、分子内に2個または3個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物、アクリル酸誘導体、分子内に4〜8個の(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート化合物、エポキシ(メタ)アクリレート化合物、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物などが挙げられる。
分子内に1個の(メタ)アクリロイル基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
特に、脂環骨格を有するモノ(メタ)アクリレートは、耐熱性が高くなるので、好適に利用することができる。脂環骨格モノ(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、例えば(ヒドロキシ−アクリロイルオキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(ヒドロキシ−メタクリロイルオキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(ヒドロキシ−アクリロイルオキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(ヒドロキシ−メタクリロイルオキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(ヒドロキシメチル−アクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(ヒドロキシメチル−メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(ヒドロキシメチル−アクリロイルオキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(ヒドロキシメチル−メタクリロイルオキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(ヒドロキシエチル−アクリロイルオキシエチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(ヒドロキシエチル−メタクリロイルオキシエチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(ヒドロキシエチル−アクリロイルオキシエチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(ヒドロキシエチル−メタクリロイルオキシエチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン等が挙げられる。また、これらの混合物を使用することもできる。
分子中に2個または3個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコール以上のポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル]プロパン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ビス(ヒドロキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジアクリレート、ビス(ヒドロキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジメタクリレート、ビス(ヒドロキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=アクリレートメタクリレート、ビス(ヒドロキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン=ジアクリレート、ビス(ヒドロキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン=ジメタクリレート、ビス(ヒドロキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン=アクリレートメタクリレート、2,2−ビス[4−(β−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(β−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)シクロヘキシル]プロパン、1,4−ビス[(メタ)アクリロイルオキシメチル]シクロヘキサンなどが挙げられる。
エステル以外の(メタ)アクリル酸誘導体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
これらの中でも、含脂環骨格ビス(メタ)アクリレート化合物が好適に用いられる。
例えば、ビス(アクリロイルオキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(メタクリロイルオキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(アクリロイルオキシ−メタクリロイルオキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(アクリロイルオキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、ビス(メタクリロイルオキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(アクリロイルオキシ−メタクリロイルオキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、ビス(アクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(アクリロイルオキシメチル−メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(アクリロイルオキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、ビス(メタクリロイルオキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(アクリロイルオキシメチル−メタクリロイルオキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、ビス(アクリロイルオキシエチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(メタクリロイルオキシエチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(アクリロイルオキシエチル−メタクリロイルオキシエチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(アクリロイルオキシエチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、ビス(メタクリロイルオキシエチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(アクリロイルオキシエチル−メタクリロイルオキシエチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン等、およびこれらの混合物等を挙げることができる。
これらのうち、ビス(アクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンおよび(アクリロイルオキシメチル−メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンから選ばれるものが好ましい。これらのビス(メタ)アクリレートは、2種以上を併用することもできる。
分子内に4〜8個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートとしては、ポリオールの(メタ)アクリル酸エステルが利用できる。
具体的には、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールセプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
次に、エポキシ(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ基を有する化合物、ビスフェノールA型プロピレンオキサイド付加型の末端グリシジルエーテル、フルオレンエポキシ樹脂等と(メタ)アクリル酸との反応物を挙げることができる。
具体的には、ビスフェノールAジグリシジルエーテル=ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジプロピレンオキサイドジグリシジルエーテル=ジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル=ジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジグリシジルエーテル=ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル=ジ(メタ)アクリレート、1、6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル=ジ(メタ)アクリレート、グリセリンジグリシジルエーテル=ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル=トリ(メタ)アクリレート、2−ヒドリキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルブチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアミノ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレートとしては、1分子中に(メタ)アクリロイル基を2〜10個(好ましくは2〜5個)有するウレタンオリゴマー等が挙げられる。例えば、ジオール類およびジイソシアネート類を反応させて得られるウレタンプレポリマーと、ヒドロキシ基含有の(メタ)アクリレートを反応させて製造される(メタ)アクリロイル基含有ウレタンオリゴマーがある。
ここで用いるジオール類としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリヘプタメチレングリコール、ポリデカメチレングリコールあるいは二種以上のイオン重合性環状化合物を開環共重合させて得られるポリエーテルジオールが挙げられる。
イオン重合性環状化合物としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテン−1−オキシド、イソブテンオキシド、3,3−ビスクロロメチルオキセタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン、テトラオキサン、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エピクロルヒドリン、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルカーボネート、ブタジエンモノオキシド、イソプレンモノオキシド、ビニルオキセタン、ビニルテトラヒドロフラン、ビニルシクロヘキセンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、安息香酸グリシジルエステル等の環状エーテル類が挙げられる。また、上記イオン性重合性環状化合物と、エチレンイミン等の環状イミン類、β−プロピオラクトン、グリコール酸ラクチド等の環状ラクトン酸、あるいはジメチルシクロポリシロキサン類とを開環共重合させたポリエーテルジオールを使用することもできる。
上記二種以上のイオン重合性環状化合物の具体的な組み合わせとしては、テトラヒドロフランとプロピレンオキシド、テトラヒドロフランと2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランと3−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランとエチレンオキシド、プロピレンオキシドとエチレンオキシド、ブテンオキシドとエチレンオキシド等を挙げることができる。これらのイオン重合性環状化合物の開環共重合体はランダムに結合していてもよいし、ブロック状の結合をしていてもよい。
ここまでに述べたこれらのポリエーテルジオールは、例えばPTMG1000、PTMG2000(以上、三菱化学(株)製)、PPG1000、EXCENOL2020、1020(以上、旭オーリン(株)製)、PEG1000、ユニセーフDC1100、DC1800(以上、日本油脂(株)製)、PPTG2000、PPTG1000、PTG400、PTGL2000(以上、保土ヶ谷化学(株)製)、Z−3001−4、Z−3001−5、PBG2000A、PBG2000B(以上、第一工業製薬(株)製)等の市販品としても入手することができる。
上記のポリエーテルジオールの他にポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリカプロラクトンジオールなどが挙げられ、これらのジオールをポリエーテルジオールと併用して用いることもできる。これらの構造単位の重合様式は特に制限されず、ランダム重合、ブロック重合、グラフト重合のいずれであってもよい。ここで用いるポリエステルジオールとしては、例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール等の多価アルコールと、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマール酸、アジピン酸、セバシン酸等の多塩基酸とを反応して得られるポリエステルポリオールを挙げることができる。市販品としてはクラポールP−2010、PMIPA、PKA−A、PKA−A2、PNA−2000(以上、(株)クラレ製)等が入手できる。
また、ポリカーボネートジオールとしては、例えば1,6−ヘキサンポリカーボネート等が挙げられ、市販品としてはDN−980、981、982、983(以上、日本ポリウレタン(株)製)、PC−8000(米国PPG(株)製)等が挙げられる。
さらにポリカプロラクトンジオールとしては、ε−カプロラクトンと、例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,2−ポリブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ブタンジオール等の2価のジオールとを反応させて得られるポリカプロラクトンジオールが挙げられる。これらのジオールは、プラクセル205、205AL、212、212AL、220、220AL(以上、ダイセル(株)製)等が市販品として入手することができる。
上記以外のジオールも数多く使用することができる。このようなジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加ジオール、ビスフェノールAのブチレンオキサイド付加ジオール、ビスフェノールFのエチレンオキサイド付加ジオール、ビスフェノールFのブチレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールAのブチレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールFのエチレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールFのブチレンオキサイド付加ジオール、ジシクロペンタジエンのジメチロール化合物、トリシクロデカンジメタノール、β−メチル−δ−バレロラクトン、ヒドロキシ末端ポリブタジエン、ヒドロキシ末端水添ポリブタジエン、ヒマシ油変性ポリオール、ポリジメチルシロキサンの末端ジオール化合物、ポリジメチルシロキサンカルビトール変性ポリオール等が挙げられる。
また上記したようなジオールを併用する以外にも、ポリオキシアルキレン構造を有するジオールとともにジアミンを併用することも可能であり、このようなジアミンとしてはエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、パラフェニレンジアミン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン等のジアミンやヘテロ原子を含むジアミン、ポリエーテルジアミン等が挙げられる。
好ましいジオールとしては、1,4−ブタンジオールの重合体であるポリテトラメチレンエーテルグリコールが挙げられる。このジオールの好ましい分子量は、数平均分子量で通常50〜15,000であり、特に500〜3,000である。
一方、ジイソシアネート類としては、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3′−ジメチル−4,4′−ジフェニルメタジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3′−ジメチルフェニレンジイソシアネート、4,4′−ビフェニレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−ヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアネートエチル)フマレート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、4−ジフェニルプロパンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。これらのジイソシアネートは一種でも、二種以上を併用して用いてもよい。
なかでも、イソホロンジイソシアネートやノルボルナンジイソシアネート、メチレンジシクロヘキシルジイソシアネートなどの脂環骨格を有するジイソシアネートが好適に用いられる。
また、反応に用いるヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリロイルフォスフェート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、さらにアルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有化合物と(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる化合物も挙げることができる。これらのうち、特に2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が好ましい。
市販のウレタンオリゴマーとしては、EB2ECRYL220(ダイセル・サイテック)、アートレジンUN-3320HA(根上工業)、アートレジンUN-3320HB(根上工業)、アートレジンUN-3320HC(根上工業)、アートレジンUN-330(根上工業)およびアートレジンUN-901T(根上工業)、NK-オリゴU-4HA(新中村化学)、NK-オリゴU-6HA(新中村化学)、NK-オリゴU-324A(新中村化学)、NK-オリゴU-15HA(新中村化学)、NK-オリゴU-108A(新中村化学)、NK-オリゴU-200AX(新中村化学)、NK-オリゴU-122P(新中村化学)、NK-オリゴU-5201(新中村化学)、NK-オリゴU-340AX(新中村化学)、NK-オリゴU-511(新中村化学)、NK-オリゴU-512(新中村化学)、NK-オリゴU-311(新中村化学)、NK-オリゴUA-W1(新中村化学)、NK-オリゴUA-W2(新中村化学)、NK-オリゴUA-W3(新中村化学)、NK-オリゴUA-W4(新中村化学)、NK-オリゴUA-4000(新中村化学)、NK-オリゴUA-100(新中村化学)、紫光UV-1400B(日本合成化学工業)、紫光UV-1700B(日本合成化学工業)、紫光UV-6300B(日本合成化学工業)、紫光UV-7550B(日本合成化学工業)、紫光UV-7600B(日本合成化学工業)、紫光UV-7605B(日本合成化学工業)、紫光UV-7610B(日本合成化学工業)、紫光UV-7620EA(日本合成化学工業)、紫光UV-7630B(日本合成化学工業)、紫光UV-7640B(日本合成化学工業)、紫光UV-6630B(日本合成化学工業)、紫光UV-7000B(日本合成化学工業)、紫光UV-7510B(日本合成化学工業)、紫光UV-7461TE(日本合成化学工業)、紫光UV-3000B(日本合成化学工業)、紫光UV-3200B(日本合成化学工業)、紫光UV-3210EA(日本合成化学工業)、紫光UV-3310B(日本合成化学工業)、紫光UV-3500BA(日本合成化学工業)、紫光UV-3520TL(日本合成化学工業)、紫光UV-3700B(日本合成化学工業)、紫光UV-6100B(日本合成化学工業)、紫光UV-6640B(日本合成化学工業)等が使用できる。
分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレートの数平均分子量は、1,000〜100,000が好ましく、更に好ましくは2,000〜10,000である。
なかでも、メチレンジシクロヘキシルジイソシアネートとポリテトラメチレンエーテルグリコールを有するウレタンアクリレートは透明性、低複屈折性、柔軟性等の点により優れており、好適に利用することができる。
オキセタン樹脂前駆体としては、少なくとも1個のオキセタン環を有する化合物が挙げられる。上記オキセタン樹脂前駆体中のオキセタン環の数は、1分子あたり1個以上、4個以下が好ましい。分子中に1個のオキセタンを有する化合物としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル{[−3−(トリエトキシリル)プロポキシ]メチル}オキセタン、3−エチル−3−メタクリロキシメチルオキセタンなどが挙げられる。分子中に2個のオキセタンを有する化合物としては、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、4,4′−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニルなどが挙げられる。3〜4個のオキセタン環を有する化合物としては、分枝状のポリアルキレンオキシ基やポリシロキシ基と3−アルキル−3−メチルオキセタンの反応物などが挙げられる。
上記オキセタン樹脂前駆体の硬化反応に用いられる硬化剤としては、特に限定されず、例えば、アミン化合物、アミン化合物から合成されるポリアミノアミド化合物等の化合物、3級アミン化合物、イミダゾール化合物、ヒドラジド化合物、メラミン化合物、酸無水物、フェノール化合物、熱潜在性カチオン重合触媒、光潜在性カチオン重合開始剤、ジシアンアミドおよびその誘導体等が挙げられる。これらの硬化剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。特に光硬化剤はエネルギーの有効活用の面から好適に利用される。ここで光硬化剤とは活性エネルギー線の照射によりカチオン重合を開始させる化合物であり、例えば、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等が挙げられる。
フェノール樹脂前駆体としては、フェノール、クレゾール等のフェノール類とホルムアルデヒド等を反応させノボラック等を合成し、これをヘキサメチレンテトラミン等で硬化させたもの等が挙げられる。
ユリア樹脂前駆体としては、尿素等とホルムアルデヒド等の重合反応物が挙げられる。
メラミン樹脂前駆体としては、メラミン等とホルムアルデヒド等の重合反応物が挙げられる。
不飽和ポリエステル樹脂としては、不飽和多塩基酸等と多価アルコール等より得られる不飽和ポリエステルを、これと重合する単量体に溶解し硬化した樹脂等が挙げられる。
珪素樹脂前駆体としては、オルガノポリシロキサン類を主骨格とするものが挙げられる。
ポリウレタン樹脂前駆体としては、グリコール等のジオール類と、ジイソシアネートからなる重合反応物等が挙げられる。
ジアリルフタレート樹脂前駆体としては、ジアリルフタレートモノマー類とジアリルフタレートプレポリマー類からなる反応物が挙げられる。
これら熱硬化性樹脂の硬化剤、硬化触媒としては特に限定はないが、例えば、硬化剤としては多官能アミン、ポリアミド、酸無水物、フェノール樹脂等が挙げられ、硬化触媒としてはイミダゾール等が挙げられる。これらは単独又は2種以上の混合物として使用することができる。
<光硬化性樹脂>
本発明における光硬化性樹脂としては、特に限定されないが、上述の熱硬化性樹脂の説明において例示したエポキシ樹脂、アクリル樹脂、オキセタン樹脂等の前駆体が挙げられる。
これら光硬化性樹脂の硬化剤としては特に限定はないが、例えば、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等が挙げられる。
上述した熱硬化性樹脂前駆体及び光硬化性樹脂前駆体は、適宜、連鎖移動剤、紫外線吸収剤、充填剤、シランカップリング剤等と配合した硬化性組成物として用いることができる。
反応を均一に進行させる目的等で、硬化性組成物は連鎖移動剤を含んでもよい。
例えば、分子内に2個以上のチオール基を有する多官能メルカプタン化合物を用いることができ、これにより硬化物に適度な靱性を付与する事ができる。メルカプタン化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(β−チオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(β−チオグリコレート)、トリメチロールプロパントリス(β−チオプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(β−チオグリコレート)、ジエチレングリコールビス(β−チオプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(β−チオグリコレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(β−チオプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(β−チオグリコレート)等の2〜6価のチオグリコール酸エステル又はチオプロピオン酸エステル;トリス[2−(β−チオプロピオニルオキシ)エチル]トリイソシアヌレート、トリス[2−(β−チオグリコニルオキシ)エチル]トリイソシアヌレート、トリス[2−(β−チオプロピオニルオキシエトキシ)エチル]トリイソシアヌレート、トリス[2−(β−チオグリコニルオキシエトキシ)エチル]トリイソシアヌレート、トリス[2−(β−チオプロピオニルオキシ)プロピル]トリイソシアヌレート、トリス[2−(β−チオグリコニルオキシ)プロピル]トリイソシアヌレート等のω−SH基含有トリイソシアヌレート;ベンゼンジメルカプタン、キシリレンジメルカプタン、4、4’−ジメルカプトジフェニルスルフィド等のα,ω−SH基含有化合物等が挙げられる。これらの中でもペンタエリスリトールテトラキス(β−チオプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(β−チオプロピオネート)、トリス[2−(β−チオプロピオニルオキシエトキシ)エチル]トリイソシアヌレートなどが挙げられる。これらは、1種単独でも、2種以上を併用して用いてもよい。メルカプタン化合物を入れる場合は、ラジカル重合な可能化合物の合計に対して、通常30重量%以下の割合で含有させる。
着色防止目的で硬化性組成物は、紫外線吸収剤を含んでもよい。例えば、紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤およびベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤から選ばれるものである。これらは、1種類を用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
具体的には、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4、4’−ジメトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物、2−(2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジターシャリーブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−ターシャリーブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系化合物、その他マロン酸エステル系のホスタビンPR−25(クラリアント社)、蓚酸アニリド系のサンデュボアVSU(クラリアント社)などの化合物である。紫外線吸収剤を入れる場合は、ラジカル重合な可能化合物の合計100重量部に対して、通常0.01〜1重量部の割合で含有させる。
また、セルロース繊維以外の充填剤を含んでもよい。充填剤としては、例えば、無機粒子や有機高分子などが挙げられる。具体的には、シリカ粒子、チタニア粒子、アルミナ粒子などの無機粒子、ゼオネックス(日本ゼオン社)やアートン(JSR社)などの透明シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネートやPMMAなどの汎用熱可塑性ポリマーなどが挙げられる。中でも、ナノサイズのシリカ粒子を用いると透明性を維持することができ好適である。また、紫外線硬化性モノマーと構造の似たポリマーを用いると高濃度までポリマーを溶解させることが可能であり、好適である。
また、シランカップリング剤を添加してもよい。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−((メタ)アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
なかでも、γ−((メタ)アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−((メタ)アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、γ−((メタ)アクリロキシプロピル)メチルジエトキシシラン、γ−((メタ)アクリロキシプロピル)トリエトキシシラン、γ−(アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン等は分子中に(メタ)アクリル基を有しており、他のモノマーと共重合することができるので好ましい。
シランカップリング剤は、ラジカル重合な可能化合物の合計に対して通常0.1〜50重量%、好ましくは1〜20重量%となるように含有させる。この配合量が少な過ぎると、これを含有させる効果が十分に得られず、また、多過ぎると、硬化物の透明性などの光学特性が損なわれる恐れがある。
<硬化工程>
置換工程において高分子材料の前駆体(例えば、熱硬化性樹脂前駆体、光硬化性樹脂前駆体)を使用した場合は、必要に応じて、置換工程の後に、前駆体を硬化させる硬化工程を実施してもよい。
硬化方法は、使用される前駆体の種類により適宜選択されるが、例えば、熱硬化、または放射線硬化が挙げられる。好ましくは放射線硬化である。放射線としては、赤外線、可視光線、紫外線、電子線等が挙げられるが、好ましくは光である。更に好ましくは波長が200nm〜450nm程度の光であり、更に好ましくは波長が300〜400nmの紫外線である。
具体的には、予め高分子材料の前駆体に加熱によりラジカルを発生する熱重合開始剤を添加しておき、加熱して重合させる方法(以下「熱重合」という場合がある)、予め高分子材料の前駆体に紫外線等の放射線によりラジカルを発生する光重合開始剤を添加しておき、放射線を照射して重合させる方法(以下「光重合」という場合がある)等、および熱重合開始剤と光重合開始剤を併用して予め添加しておき、熱と光の組み合わせにより重合させる方法が挙げられ、本発明においては光重合がより好ましい。
光重合開始剤としては、通常、光ラジカル発生剤が用いられる。光ラジカル発生剤としては、この用途に用い得ることが知られている公知の化合物を用いることができる。例えば、ベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホシフィンオキシド等が挙げられる。これらの中でも、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドが好ましい。これらの光重合開始剤は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
光重合開始剤の成分量は、ラジカル重合な可能化合物の合計を100重量部としたとき、0.001重量部以上、好ましくは0.01重量部以上、更に好ましくは0.05重量部以上である。その上限は、通常1重量部以下、好ましくは0.5重量部以下、更に好ましくは0.1重量部以下である。光重合開始剤の添加量が多すぎると、重合が急激に進行し、得られる硬化物の複屈折を大きくするだけでなく色相も悪化する。例えば、開始剤の量を5重量部とした場合、開始剤の吸収により、紫外線の照射と反対側に光が到達できずに未硬化の部分が生ずる。また、黄色く着色し色相の劣化が著しい。一方、少なすぎると紫外線照射を行っても重合が十分に進行しないおそれがある。
また、熱重合開始剤を同時に含んでもよい。例えば、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシカーボネート、パーオキシケタール、ケトンパーオキサイド等が挙げられる。具体的には、ベンゾイルパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)ジクミルパーオキサイド、ジt−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルハイドロパーキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等を用いることができる。光照射時に熱重合が開始されると、重合を制御することが難しくなるので、これらの熱重合開始剤は好ましくは1分半減期温度が120℃以上であることがよい。これらの重合開始剤は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
硬化に際して照射する放射線の量は、光重合開始剤がラジカルを発生させる範囲であれば任意である。なお、極端に少ない場合は重合が不完全となるため硬化物の耐熱性、機械特性が十分に発現されず、逆に極端に過剰な場合は硬化物の黄変等の光による劣化を生じるので、モノマーの組成および光重合開始剤の種類、量に合わせて、波長300〜450nmの紫外線を、好ましくは0.1J/cm以上200J/cm以下の範囲で照射する。更に好ましくは1J/cm以上20J/cmの範囲で照射する。放射線を複数回に分割して照射すると、より好ましい。すなわち1回目に全照射量の1/20〜1/3程度を照射し、2回目以降に必要残量を照射すると、複屈折のより小さな硬化物が得られる。使用するランプの具体例としては、メタルハライドランプ、高圧水銀灯ランプ、紫外線LEDランプ等を挙げることができる。
重合をすみやかに完了させる目的で、光重合と熱重合を同時に行ってもよい。この場合には、放射線照射と同時に30℃以上300℃以下の範囲で加熱して硬化を行う。この場合、重合を完結するために熱重合開始剤を添加してもよいが、大量に添加すると硬化物の複屈折の増大と色相の悪化をもたらすので、熱重合開始剤は、モノマー量の合計に対して通常0.1重量%以上2重量%以下、より好ましくは0.3重量%以上1重量%以下となるように用いる。
[セルロース繊維複合材料]
上述の製造工程などにより得られる本発明のセルロース繊維複合材料は、平均繊維径30nm以下のセルロース繊維とマトリックス材料とから構成され、セルロース繊維が3次元ネットワーク構造を形成している複合体である。さらに、厚み200μmのフィルムでの波長589nmにおける面内の位相差が6nm以下であり、JIS B0601−1982に準じて測定した表面粗さの最大高さ(Rmax)が150μm以下であり、厚み10μm〜500μmのフィルムでのJIS K7136−2000に準じて測定したヘーズが5%以下である。このような特性を有するセルロース繊維複合材料は、後述する種々の用途に使用することができ、特に光学的等方性および表面平滑性に優れる点からディスプレイ用基板などに使用することができる。
以下に、セルロース繊維複合材料の好適な特性ないし物性について説明する。
<セルロース含有量>
本発明のセルロース繊維複合材料中のセルロース繊維の含有量は、複合材料全量に対して、1重量%以上99重量%以下が好ましく、マトリックス材料の含有量は1重量%以上99重量%以下が好ましい。優れた低線膨張性を発現するには、セルロース繊維の含有量が1重量%以上、マトリックス材料の含有量が99重量%以下であることが好ましく、優れた透明性を発現するにはセルロース繊維の含有量が99重量%以下、マトリックス材料の含有量が1重量%以上であることが好ましい。
より好ましい範囲としては、セルロース繊維が5重量%以上90重量%以下であり、マトリックス材料が10重量%以上95重量%以下であり、さらに好ましい範囲はセルロース繊維が10重量%以上80重量%以下であり、マトリックス材料が20重量%以上90重量%以下であることが好ましい。
セルロース繊維複合材料は、セルロース繊維とマトリックス材料とを主成分として構成される。ここで、主成分とは、セルロース繊維とマトリックス材料との合計重量が、複合材料全重量に対して、通常、90重量%以上が好ましく、より好ましくは95重量%以上である。なお、上限値は特に限定されないが、通常、100重量%である。
なお、セルロース繊維複合材料中のセルロース繊維の含有量(C3)は、例えば、使用されたセルロース繊維分散液中のセルロース繊維の重量濃度と使用量から算出されるセルロース重量(L3(g))と、得られたセルロース繊維複合材料の総重量(S3(g))とを用いて、式:C3=(L3/S3)×100によって求めることができる。
<形状および厚み>
本発明のセルロース繊維複合材料の形状は、特に限定されず、板状、または曲面を有する板状とすることもできる。また、その他の異形形状であってもよい。また、厚さは必ずしも均一である必要はなく、部分的に異なっていてもよい。
形状が板状(シート状、フィルム状)である場合、その厚み(平均厚み)は、好ましくは10μm以上10cm以下であり、このような厚みとすることにより、構造材としての強度を保つことができる。さらに、より好ましくは50μm以上1cm以下であり、さらに好ましくは80μm以上250μm以下である。
なお、上記板状物において、フィルムとはその厚みが概ね、200μm以下の板状物を意味し、シートとはフィルムよりも厚い板状物を意味する。
<位相差>
本発明のセルロース繊維複合材料は、厚み200μmのフィルムでの波長589nmにおける面内の位相差が6nm以下を示す。位相差としては、より好ましくは5nm以下であり、さらに好ましくは4nm以下である。下限値としては特に制限されず小さければ小さいほどよく、0nmが特に好ましい。位相差が6nmを超えると、ディスプレイなどの用途への応用が制限される。
なお、面内の位相差(Ro)は、フィルムの厚み方向をZ軸、フィルム面上のZ軸に直交する軸をX軸、Y軸とし、フィルムの面内遅相軸方向の屈折率をnx、面内進相軸方向(遅相軸と面内で直交する方向)の屈折率をny、厚みをdとしたときに、下式(I)で定義される。
Ro = (nx−ny)×d (I)
測定方法としては、公知の測定装置(例えば、大塚電子社製RETS−100型位相差フィルム・光学材料評価装置)を用いて波長589nmの光をフィルム法線方向に入射させて測定する。この方法でセルロース繊維複合材料表面の任意の場所5点を測定し、最も大きい値と最も小さい値を除去した3点の平均値を算出して位相差とした。なお、具体的な測定方法については、後述する実施例の項に詳述する。
<表面粗さ>
本発明のセルロース繊維複合材料(例えば、厚み10〜500μmのフィルム)は、JIS B0601−1982に準じて測定した表面粗さの最大高さ(Rmax)が150μm以下である。表面粗さの最大高さとしては、より好ましくは100μm以下であり、さらに好ましくは50μm以下である。下限値としては、特に制限されず小さければ小さいほどよく、0μmが特に好ましい。表面粗さの最大高さが150μmを超えると、ディスプレイなどの用途への応用が制限される。
なお、測定方法としては、公知の測定装置を用いて測定することができる。具体的な測定方法については、後述する実施例の項に詳述する。
<ヘーズ>
本発明のセルロース繊維複合材料は、厚み10μm〜500μmのフィルムでのJIS K7136−2000に準じて測定したヘーズが5%以下である。なかでも、好ましくは3%以下であり、より好ましくは2%以下である。下限値としては、特に制限されず小さければ小さいほどよく、0%が最も好ましい。5%を超えると、透明性が要求される用途への使用が困難となる場合がある。
本発明のセルロース繊維複合材料は、可視光の波長よりも細い微細セルロース繊維を用いていることから、透明性が非常に高い。
なお、ヘーズは、例えば、スガ試験機製ヘーズメータを用いて測定することができ、C光の値を用いる。
<全光線透過率>
本発明のセルロース繊維複合材料は、JIS規格K7105に準拠してその厚み方向に測定された全光線透過率が60%以上、更には70%以上、特に80%以上、とりわけ90%以上であることが好ましい。この全光線透過率が60%未満であると半透明または不透明となり、透明性が要求される用途への使用が困難となる場合がある。
全光線透過率は、例えば、厚み10〜500μmのセルロース繊維複合材料について、スガ試験機製ヘーズメータを用いて測定することができ、C光の値を用いる。
<線膨張係数>
本発明のセルロース繊維複合材料は、線膨張係数(1Kあたりの伸び率)の低い微細セルロース繊維を含むため、低線膨張性を示す。具体的には、セルロース繊維複合材料の線膨張係数は、1〜50ppm/Kであることが好ましく、1〜30ppm/Kであることがより好ましく、1〜20ppm/Kであることが特に好ましい。
即ち、例えば、基板用途においては、無機の薄膜トランジスタの線膨張係数が15ppm/K程度であるため、セルロース繊維複合材料の線膨張係数が50ppm/Kを超えると無機膜との積層複合化の際に、二層の線膨張率差が大きくなり、クラック等が発生する。従って、セルロース繊維複合材料の線膨張係数は、特に1〜20ppm/Kであることが好ましい。
<曲げ強度>
本発明のセルロース繊維複合材料の曲げ強度は、好ましくは40MPa以上であることが好ましく、より好ましくは100MPa以上である。曲げ強度が40MPaより低いと、十分な強度が得られず、構造材料等、力の加わる用途への使用に影響を与えることがある。
<曲げ弾性率>
本発明のセルロース繊維複合材料の曲げ弾性率は、好ましくは0.2〜100GPaであることが好ましく、より好ましくは1〜50GPaである。曲げ弾性率が0.2GPaより低いと、十分な強度が得られず、構造材料等、力の加わる用途への使用に影響を与えることがある。
本発明のセルロース繊維複合材料には、必要に応じて、各種添加剤(例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、難燃化剤)などが含まれていてもよい。
<用途>
本発明のセルロース繊維複合材料は、透明性が高く、高強度、高透明性、低着色、および、ヘーズが小さく、表面平滑性、および光学的等方性に優れるため、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、リアプロジェクションテレビなどのディスプレイや基板やパネルとして好適である。また、シリコン系太陽電池、色素増感太陽電池などの太陽電池用基板に好適である。さらには照明用基板、タッチパネル用基板なども挙げられる。基板としては、バリア膜、ITO、TFTなどと積層してもよい。また、自動車用の窓材、鉄道車両用の窓材、住宅用の窓材、オフィスや工場などの窓材などに好適に使われる。窓材としては、必要に応じてフッ素皮膜、ハードコート膜などの膜や耐衝撃性、耐光性の素材を積層してもよい。
また、低線膨張係数、高弾性、高強度等の特性を生かして透明材料用途以外の構造体としても用いることができる。特に、内装材、外板、バンパーなどの自動車材料やパソコンの筐体、家電部品、包装用資材、建築資材、土木資材、水産資材、その他、工業用資材などとして好適に用いられる。
本発明のセルロース繊維複合材料を有機EL(電界発光)ディスプレイに適用する場合、例えば、以下のような構成の有機EL素子の基板材料として用いることができる。
以下に、本発明のセルロース繊維複合材料が適用される有機EL素子とその構成について、図1に基づいて説明する。
基板1上に形成された陽極2(後述の透明導電膜に相当する)は、有機発光層3への正孔注入の役割を果たすものである。この陽極2は、ITOやPEDOT以外に、アルミニウム、金、銀、白金、ニッケル、パラジウム、白金などの金属、インジウムの酸化物、スズの酸化物などの金属酸化物、ヨウ化銅などのハロゲン化金属、カーボンブラック、或いは、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリンなどの導電性高分子が挙げられる。陽極2の形成は、スパッタリング法、真空蒸着法、スピンコートなどにより行うことができる。陽極2の厚みは、目的とする抵抗値(導電率)により異なるが、0.005〜1μm、好ましくは0.01〜0.5μmである。
陽極2の上に形成される有機発光層3は、電界が与えられた電極間において、陽極2から注入された正孔と陰極4から注入された電子を効率よく輸送して再結合させ、かつ、再結合により効率よく発光する材料から形成される。この有機発光層3は発光効率の向上のために、正孔注入層3aと正孔輸送層3bと電子輸送層3cに分割した機能分離型にすることが好ましい。
正孔注入層3aに用いられる材料としては、フタロシアニン化合物やポルフィリン化合物が用いられる。正孔注入層3aの膜厚は、通常0.002〜0.1μm、好ましくは0.005〜0.05μmである。このような膜厚の薄い正孔注入層を一様に形成するためには、一般に真空蒸着法を採用するのが好適である。
正孔輸送層3bの材料としては、例えば、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサンなどの3級芳香族アミンユニットを連結した芳香族ジアミン化合物、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルで代表される2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族アミン、トリフェニルベンゼンの誘導体でスターバースト構造を有する芳香族トリアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミン等の芳香族ジアミン、α,α,α’,α’−テトラメチル−α,α’−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−p−キシレン、分子全体として立体的に非対称なトリフェニルアミン誘導体、ピレニル基に芳香族ジアミノ基が複数個置換した化合物、エチレン基で3級芳香族アミンユニットを連結した芳香族ジアミン、スチリル構造を有する芳香族ジアミン、チオフェン基で芳香族3級アミンユニットを連結したもの、スターバースト型芳香族トリアミン、ベンジルフェニル化合物、フルオレン基で3級アミンを連結したもの、トリアミン化合物、ビスジピリジルアミノビフェニル、N,N,N−トリフェニルアミン誘導体、フェノキサジン構造を有する芳香族ジアミン、ジアミノフェニルフェナントリジン誘導体、ヒドラゾン化合物、シラザン化合物、シラナミン誘導体、ホスファミン誘導体、キナクリドン化合物などが挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてもよく、また、必要に応じて2種以上を混合して用いてもよい。
正孔輸送層3bは、これらの正孔輸送材料を塗布法または真空蒸着法により成膜することにより、形成される。正孔輸送層3bの膜厚は、通常0.01〜0.3μm、好ましくは0.03〜0.1μmである。このような膜厚の薄い正孔輸送層を一様に形成するためには、一般に真空蒸着法を採用するのが好適である。
電子輸送層3cに用いられる電子輸送性化合物としては、テトラフェニルブタジエンなどの芳香族化合物、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体、シクロペンタジエン誘導体、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ビススチリルベンゼン誘導体、ペリレン誘導体、クマリン化合物、希土類錯体、ジスチリルピラジン誘導体、p−フェニレン化合物、チアジアゾロピリジン誘導体、ピロロピリジン誘導体、ナフチリジン誘導体などが挙げられる。電子輸送層3cの膜厚は、通常0.01〜0.2μm、好ましくは0.03〜0.1μmである。電子輸送層も正孔輸送層と同様の方法で形成することができるが、通常は真空蒸着法が用いられる。
陰極4は、有機発光層3に電子を注入する役割を果たす。陰極4として用いられる材料は、陽極2に使用される材料を用いることが可能であるが、効率よく電子注入を行うには、仕事関数の低い金属が好ましく、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀などの適当な金属またはそれらの合金が好適である。陰極4の膜厚は、通常、陽極2と同程度である。
陰極を保護する目的で、この陰極上に更に、大気に対して安定な金属層を積層することにより、素子の安定性を増すことができる。この目的のための金属層には、アルミニウム、銀、ニッケル、クロム、金、白金などの金属が用いられる。
このような有機EL素子は、単一の素子、アレイ状に配置された構造からなる素子、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構造の素子のいずれにも適用することができる。
また、本発明のセルロース繊維複合材料にはガスバリア膜や透明導電膜を成膜することができる。ガスバリア膜としては酸化珪素膜やアルミナなどの無機膜、ポリビニルアルコール系樹脂やエチレン−ビニルアルコール系共重合体などのビニルアルコール系樹脂からなる有機膜が挙げられる。無機膜としては、厚さ0.01〜0.1μmの酸化珪素膜が好ましく、有機膜としては、0.5〜5μmのエチレン−ビニルアルコール系共重合体が好ましい。透明導電膜としては、インジウムとスズの酸化物(ITO)などの無機膜や、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)などの有機膜が挙げられる。
尚、本発明のセルロース繊維複合材料は、有機EL素子中において基板とは反対側に設置される背面板(またはコート膜)などにも好適に用いられる。
以下、製造例、実施例および比較例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
[評価方法]
製造例、実施例、および比較例で作製した試料の物性などは、下記の方法で評価した。
<微細セルロース繊維分散液中に含まれるセルロース繊維含有量>
微細セルロース繊維分散液中に含まれるセルロース繊維含有量(重量%)の測定は、JAPAN TAPPI No.56「パルプ材−分析用試料の水分試験方法」に従って、分散媒含有量(重量%)を求め、100重量%から引いてセルロース繊維含有量とした。
すなわち、乾燥前の微細セルロース繊維分散液の重量をS1(g)、105±2℃で2時間乾燥した後、デシケーターで室温まで冷却した後の重量をL1(g)としたとき、分散媒(M重量%)とセルロース含有量C1(重量%)は下記式から求めた。
M={(S1−L1)/S1}×100 C1=100−M
<微細セルロース繊維分散液の粘度測定>
微細セルロース繊維分散液は、下記のようにして粘度を測定した。粘弾性測定装置として、RHEOMETRIC SCIENTIFIC社のARES100FRTを用い、所定の濃度に調整した微細セルロース繊維分散液を25±0.1℃に調温したステージに1.5ml滴下して、直径50mmで0.04radの角度を有するコーンプレートをギャップ間50μm隔てて設置し、ずり速度を1s−1から126s−1まで11点(1, 2, 3, 5, 8, 13, 20, 32, 50, 80, 126s−1)を各30秒で上昇させながら定常ずり粘度を測定し、ずり速度が10s−1の時の定常ずり粘度を求めた。
<微細セルロース分散液のセルロース残存率>
遠心分離機として日立工機株式会社製のhimacCR22Gを用い、アングルローターとしてR20A2を用いた。50ml遠沈管8本を、回転軸から34度の角度で設置した。1本の遠沈管に入れる微細セルロース繊維分散液の量は30mlとした。18000rpmにて30分間遠心分離作業を行った。この時、本ローターでの遠心力は計算により38900Gと求められた。遠心分離後に遠沈管の上部3mlをスポイトで採取し、セルロース濃度を測定した。遠心分離後の上澄み液全量のうち10重量%に含まれるセルロース濃度(重量)を遠心分離前のセルロース濃度(重量)で割った値に100をかけて、セルロース残存率(%)とした。
<微細セルロース繊維分散液中のセルロース繊維の平均繊維径>
微細セルロース繊維分散液中のセルロース繊維の平均繊維径は、分散液中の分散媒を乾燥除去した後、SEMまたはTEMで観察することにより計測して求めた。ランダムに抽出した10点の測定値の平均を平均繊維径とした。
<微細セルロース繊維分散液の可視光透過率>
微細セルロース繊維分散液を水で希釈して、分散液全量に対して、セルロース繊維濃度0.1重量%に調整した。日立製作所製の分光光度計U4000と、光路長10mmの石英セルを用い、リファレンスに水を入れ、サンプルとして上記の濃度調整した微細セルロース繊維分散液を入れ、波長300nmから900nmの光線透過率スペクトルを測定した。
<セルロース繊維ゲルに含まれるセルロース繊維含有量および分散媒含有量>
使用されたセルロース繊維分散液中のセルロース繊維含有量と使用量とから算出されるセルロース繊維重量をL2(g)、得られたセルロース繊維ゲルの総重量をS2(g)としたとき、セルロース繊維ゲル全重量に対するセルロース繊維の含有量C2(重量%)は下記式から求めた。なお、分散媒含有量M2(重量%)は、100重量%からセルロース含有量C2を引いて求めた。
C2=(L2/S2)×100
<セルロース繊維ゲルの厚み測定>
膜厚計(IP65 ミツトヨ社製)を用いて、セルロース繊維ゲルの任意の位置について3〜10点の測定を行い、その平均値を厚みとした。
<セルロース繊維複合材料の厚み測定>
膜厚計(IP65 ミツトヨ社製)を用いて、セルロース繊維複合体材料の任意の位置について3〜10点の測定を行い、その平均値を厚みとした。
<セルロース繊維複合材料の位相差の測定>
大塚電子社製RETS−100型位相差フィルム・光学材料評価装置を用いて、回転検光子法で波長:589nmにおける位相差を測定し、求めたセルロース繊維複合材料の厚さから、厚さ200μmあたりの位相差を算出した。
<セルロース繊維複合材料のヘーズ>
得られたセルロース繊維複合材料(厚み10μm〜500μmのフィルム)について、JIS規格K7136に準拠し、スガ試験機製ヘーズメータを用いてC光によるヘーズ値を測定した。
<セルロース繊維複合材料の全光線透過率>
得られたセルロース繊維複合材料について、JIS規格K7105に準拠し、スガ試験機製ヘーズメータを用いてC光による全光線透過率を測定した。
<セルロース繊維複合材料表面の最大高さ(Rmax)>
得られたセルロース繊維複合材料について、JIS B0601に準じて、表面粗さ形状測定機(サーフコム570A 東京精密社製)を用いて測定した。基準長さは20mmとした。セルロース繊維複合材料表面の任意の場所5点を測定し、最も大きい値と最も小さい値を除去した3点の平均値を算出して最大高さとした。
<セルロース繊維複合材料中のセルロース繊維の平均繊維径、およびセルロース繊維構造観察>
得られたセルロース繊維複合材料中のセルロース繊維の平均繊維径の測定は、まず、複合材料をそのまま破断したり、必要に応じて液体窒素などで冷却してから破断したりして、破断面をだし、その破断面をSEMまたはTEMで観察した。破断面を写真撮影し、得られた写真の対角線に線を引き、その近傍にある繊維を任意に12点抽出し、最も太い繊維と最も細い繊維を除去した10点の平均値を算出し、平均繊維径を得た。
また、繊維構造についても同様の方法で破断面をSEMまたはTEMで観察することにより、層状構造(ミルフィーユ構造とも称する)または3次元網目状構造かを確認した。
<セルロース繊維複合材料中のセルロース含有量>
使用されたセルロース繊維分散液中のセルロース繊維含有量と使用量とから算出されるセルロース重量をL3(g)、得られたセルロース繊維複合材料の重量をS3(g)としたとき、セルロース繊維複合材料全量に対するセルロース繊維の含有量C3(重量%)は下記式から求めた。
C3=(L3/S3)×100
[製造例1:微細セルロース繊維分散液の製造]
原料としてベイマツ木粉((株)宮下木材/粒径50〜250μm(平均粒径138μm))を用意した。次に、セルロースの精製処理を以下に記す工程で実施した。
木粉原料に2重量%に調整した炭酸ナトリウム水溶液を加え、液温78〜82℃で常時攪拌しながら6時間加熱した。この処理後に液をろ別し、残った木粉を水で洗浄、ろ別した。次に、残った木粉に酢酸0.27重量%、亜塩素酸ナトリウム1.33重量%に調整した水溶液を加え、液温78〜82℃で5時間加熱した。処理後に液をろ別し、残った木粉を水で洗浄、ろ別した。次に、残った木粉に5重量%に調整した水酸化ナトリウム水溶液を加え、常温〜30℃で16時間静置した。最後に、残った木粉を水で洗浄、ろ別することによりセルロースを得た。尚、この精製処理実施時にはろ別する際も含めてセルロースを完全に乾燥させることなく常に水に濡れた状態(含水量10重量%以上)にした。
得られたセルロースに水を添加し、セルロース濃度として0.5重量%に調整したセルロース懸濁液を作製した。このセルロース懸濁液を超高圧ホモジナイザー(アルティマイザー「シングルノズルタイプ/細孔直径150μm」 スギノマシン製)を用いて、噴出圧力245MPaにて、繰り返し回数(パス数)10回で解繊処理を行った。
更に、超音波ホモジナイザー(UH−600S「周波数20kHz/36mmφのストレート型チップ(チタン合金製)」 SMT社製)を用い、アウトプットボリューム8で30分間超音波処理を行った。この時の出力を水の温度上昇から測定したところ224Wであった。
その後、遠心分離機(CR−22G 日立工機社製)を使用して18,000rpm(38900G)で30分間処理し、上澄みとして微細セルロース繊維分散液を得た。
分散液中のセルロース繊維の平均繊維径は、TEM観察より10nmであった。分散液中のセルロース繊維は、広角X線回折像から、セルロースI型結晶構造であることが確認された。
微細セルロース繊維分散液中のセルロース繊維濃度を0.355重量%に希釈した。このセルロース分散液のずり速度10s−1での定常ずり粘度は、8.6mPa・sであった。また、18000rpm(38900G)にて遠心分離を行ったところ、上澄みに含まれるセルロース残存率は98%であった。
微細セルロース繊維分散液の可視光透過率を測定したところ、800nmでは98%、550nmでは95%、400nmでは88%であった。
<製造例2: セルロース繊維ゲルの製造1>
製造例1で製造した微細セルロース繊維分散液を、セルロース繊維濃度0.13重量%に水で希釈し、孔径1μmのPTFEメンブレンフィルター(T100A090C アドバンテック社製)を用いた90mm径の減圧濾過器(KG−90 アドバンテック社製)に150g投入し、減圧条件下(−0.09MPa)でろ過を開始した。開始直後に、2−プロパノールを30mL投入し、続けてろ過をした。ろ過時間120分で終了後、PTFEメンブレンフィルター上にセルロース繊維ゲルを得た。
<製造例3: セルロース繊維ゲルの製造2>
製造例1で製造した微細セルロース繊維分散液を、0.13重量%に水で希釈し、孔径1μmのPTFEメンブレンフィルター(T100A090C アドバンテック社製)を用いた90mm径の減圧濾過器(KG−90 アドバンテック社製)に150g投入し、減圧条件下(−0.09MPa)ろ過を開始した。ろ過時間90分で終了後、PTFEメンブレンフィルター上にセルロース繊維ゲルを得た。
<製造例4: セルロース繊維ゲルの製造3>
製造例1で製造した微細セルロース繊維分散液を、セルロース繊維濃度0.13重量%に水で希釈し、孔径1μmのPTFEメンブレンフィルター(T100A090C アドバンテック社製)を用いた90mm径の減圧濾過器(KG−90 アドバンテック社製)に150g投入し、減圧条件下(−0.09MPa)でろ過を開始した(第1ろ過)。ろ過時間90分経過し、第1ろ過が終了したところで、2−プロパノールを30mL投入し、続けてろ過をした(第2ろ過)。ろ過時間30分が経過し、第2ろ過が終了したところで、PTFEメンブレンフィルター上にセルロース繊維ゲルを得た。
<製造例5: 含水バクテリアセルロースの製造>
凍結乾燥保存状態の酢酸菌の菌株に培養液を加え、1週間静置培養した(25〜30℃)。培養液表面に生成したバクテリアセルロースのうち、厚さが比較的厚いものを選択し、その株の培養液を少量分取して新しい培養液に加えた。次に、この培養液を大型培養器に入れ、25〜30℃で7〜30日間の静地培養を行った。培養液には、グルコース2重量%、バクトイーストエクストラ0.5重量%、バクトペプトン0.5重量%、リン酸水素二ナトリウム0.27重量%、クエン酸0.115重量%、硫酸マグネシウム七水和物0.1重量%とし、塩酸によりpH5.0に調整した水溶液(SH培地)を用いた。このようにして算出させたバクテリアセルロースを培養液中から取り出し、2重量%のアルカリ水溶液で2時間煮沸し、その後、アルカリ処理液からバクテリアセルロースを取り出し、十分水洗し、アルカリ処理液を除去し、バクテリアセルロース中のバクテリアを溶解除去して、厚さ1cm、セルロース含有量1重量%、水含有量99重量%の含水バクテリアセルロース(平均繊維径60nm)を得た。
<実施例1>
製造例2で得られたセルロース繊維ゲルを、ビス(メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン96重量部、ペンタエリスリトールテトラキス(β−チオプロピオネート)6重量部、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製ルシリンTPO)0.05重量部、およびベンゾフェノン0.05重量部を混合した溶液に浸漬させ、減圧下で1時間静置した。
静置後に得られた複合体を2枚のガラス板にはさみ、無電極水銀ランプ(フュージョンUVシステムズ社製「Dバルブ」)を用いて、放射照度1900mW/cmの下を、ライン速度7m/minで通過させて光照射した。このときの放射照射量は0.8J/cmであった。この操作をガラス面を反転して2回行った。紫外線照射後のガラス面の温度は25℃であった。次いで、放射照度1900mW/cmの下をライン速度2m/minで照射した。このときの放射照射量は2.7J/cmであった。この操作をガラス面を反転して8回行った。紫外線照射後のガラス面の温度は47℃であった。全放射照射量は23.2J/cmであった。紫外線照射終了後、ガラス板よりはずし、セルロース繊維含有量14.5重量%、厚さ235μmのセルロース繊維複合材料を得た。得られたセルロース繊維複合材料を用いて、上述した各種測定を実施した。結果を表1にまとめて示す。
なお、紫外線の照度は、オーク製作所製紫外線照度計「UV−M02」で、アタッチメント「UV−35」を用いて、320〜390nmの紫外線の照度を23℃で測定した。
<実施例2>
製造例3で得られたセルロース繊維ゲルを、エトキシ化グリセリントリアクリレート(新中村化学工業株式会社製A−Gly−20E)50重量部、アクリロイルモルホリン(株式会社興人社製ACMO)50重量部、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製ルシリンTPO)0.05重量部を混合した溶液に浸漬させ、減圧下で1時間静置した。
静置後に得られた複合体を2枚のガラス板にはさみ、無電極水銀ランプ(フュージョンUVシステムズ社製「Dバルブ」)を用いて、放射照度1900mW/cmの下を、ライン速度7m/minで通過させて光照射した。このときの放射照射量は0.8J/cmであった。この操作をガラス面を反転して2回行った。紫外線照射後のガラス面の温度は28℃であった。次いで、放射照度1900mW/cmの下をライン速度2m/minで照射した。このときの放射照射量は2.7J/cmであった。この操作をガラス面を反転して4回行った。紫外線照射後のガラス面の温度は43℃であった。全放射照射量は12.4J/cmであった。紫外線照射終了後、ガラス板よりはずし、セルロース繊維含有量10.0重量%、厚さ420μmのセルロース繊維複合材料を得た。得られたセルロース繊維複合材料を用いて、上述した各種測定を実施した。結果を表1にまとめて示す。
<実施例3>
製造例4で得られたセルロース繊維ゲルを、ビス(メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン96重量部、ペンタエリスリトールテトラキス(β−チオプロピオネート)6重量部、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製ルシリンTPO)0.05重量部、およびベンゾフェノン0.05重量部を混合した溶液に浸漬させ、減圧下で1時間静置した。
静置後に得られた複合体を、製造例1と同様の方法で複合化し、セルロース繊維含有量26.0重量%、厚さ135μmのセルロース繊維複合材料を得た。得られたセルロース繊維複合材料を用いて、上述した各種測定を実施した。結果を表1にまとめて示す。
<実施例4>
製造例2で得られたセルロース繊維ゲルを、エトキシ化グリセリントリアクリレート(新中村化学工業株式会社製A−Gly−20E)50重量部、アクリロイルモルホリン(株式会社興人社製ACMO)50重量部、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製ルシリンTPO)0.05重量部を混合した溶液に浸漬させ、減圧下で1時間静置した。
静置後に得られた複合体を2枚のガラス板にはさみ、無電極水銀ランプ(フュージョンUVシステムズ社製「Dバルブ」)を用いて、放射照度1900mW/cmの下を、ライン速度7m/minで通過させて光照射した。このときの放射照射量は0.8J/cmであった。この操作を、ガラス面を反転して2回行った。紫外線照射後のガラス面の温度は29℃であった。次いで、放射照度1900mW/cmの下をライン速度2m/minで照射した。このときの放射照射量は2.7J/cmであった。この操作を、ガラス面を反転して4回行った。紫外線照射後のガラス面の温度は43℃であった。全放射照射量は12.4J/cmであった。紫外線照射終了後、ガラス板よりはずし、セルロース繊維含有量重量9.5重量%、厚さ355μmのセルロース繊維複合材料を得た。得られたセルロース繊維複合材料を用いて、上述した各種測定を実施した。結果を表1にまとめて示す。
<比較例1>
製造例2で得られたセルロース繊維ゲルを、120℃に加熱したプレス機にて0.15MPaの圧力で5分間プレス乾燥して、厚さ57μmのセルロース不織布を作製した。なお、得られたセロルース不織布中に分散媒は含まれていなかった。
得られた不織布を、ビス(メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン96重量部、ペンタエリスリトールテトラキス(β−チオプロピオネート)6重量部、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製ルシリンTPO)0.05重量部、およびベンゾフェノン0.05重量部を混合した溶液に浸漬させ、減圧下で一晩静置した。
静置後に得られた複合体を、ガラス板の四隅に200μm厚のシリコンスペーサーフィルムを置いてはさみ、実施例1と同様の方法で紫外線照射した後、ガラス板よりはずし、セルロース繊維含有量17.4重量%、厚さ224μmのセルロース繊維複合材料を得た。得られたセルロース繊維複合材料を用いて、上述した各種測定を実施した。結果を表1にまとめて示す。
<比較例2>
製造例3で得られたセルロース繊維ゲルを、120℃に加熱したプレス機にて0.15MPaの圧力で5分間プレス乾燥して、厚さ62μmのセルロース不織布を作製した。なお、得られたセロルース不織布中に分散媒は含まれていなかった。
得られた不織布を、ビス(メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン96重量部、ペンタエリスリトールテトラキス(β−チオプロピオネート)6重量部、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製ルシリンTPO)0.05重量部、およびベンゾフェノン0.05重量部を混合した溶液に浸漬させ、減圧下で一晩静置した。
静置後に得られた複合体を2枚のガラス板にはさみ、実施例1と同様の方法で紫外線照射した。照射後、ガラス板よりはずし、セルロース繊維含有量46.0重量%、厚さ75μmのセルロース繊維複合材料を得た。得られたセルロース繊維複合材料を用いて、上述した各種測定を実施した。結果を表1にまとめて示す。
<比較例3>
製造例5で得られた含水バクテリアセルロースを120℃に加熱したプレス機にて0.15MPaの圧力で5分間プレス乾燥して、厚さ50μmのバクテリアセルロース不織布を作製した。なお、得られたバクテリアセロルース不織布中に分散媒は含まれていなかった。
得られた不織布を比較例2と同様の方法で複合化し、セルロース繊維含有量40.6重量%、厚さ113μmのセルロース繊維複合材料を得た。得られたセルロース繊維複合材料を用いて、上述した各種測定を実施した。結果を表1にまとめて示す。
以下に実施例1〜4および比較例1〜3で得られたセルロース繊維複合材料の各種評価結果を示す。
表1より、実施例1〜4においては、位相差が小さく、表面平滑性に優れ、さらに透明性に優れるセルロース繊維複合材料が得られたことが分かった。繊維構造についても、実施例1〜4においては、セルロース繊維が3次元網目状に絡み合った構造をしていることが確認された(図2(a)および(b)参照)。このようなセルロース繊維の構造により、光学的等方性、平坦性に優れた材料が得られたと推測される。
一方、比較例1〜3においては、位相差が大きく、かつ表面も粗いセルロース複合材料が得られた。繊維構造について観察したところ、いずれにおいてもセルロース繊維が層状に重なりあった構造(ミルフィーユ構造)が形成されていることが確認された(図3(a)および(b)参照)。このようなセルロース繊維の配置に伴い、光学的異方性が大きくなり、表面平滑性も損なわれたものと推測される。このように、所定の分散媒含有量を有するセルロース繊維ゲルを加圧または乾燥させることなく使用することにより、所望のセルロース繊維複合材料が得られることが分かった。
1 基板
2 陽極
3 有機発光層
3a 正孔注入層
3b 正孔輸送層
3c 電子輸送層
4 陰極

Claims (14)

  1. 平均繊維径30nm以下のセルロース繊維とマトリックス材料とから構成され、前記セルロース繊維が3次元網目状構造を形成しているセルロース繊維複合材料であって、
    厚み200μmのフィルムでの波長589nmにおける面内の位相差が6nm以下であり、
    JIS B0601−1982に準じて測定した表面粗さの最大高さ(Rmax)が150μm以下であり、
    厚み10μm〜500μmのフィルムまたはシートでのJIS K7136−2000に準じて測定したヘーズが5%以下であることを特徴とするセルロース繊維複合材料。
  2. 前記マトリックス材料が、高分子材料である請求項1に記載のセルロース繊維複合材料。
  3. 分散媒中に平均繊維径30nm以下のセルロース繊維が分散した分散液を製造する工程と、
    前記分散液中の前記分散媒の一部を除去して、前記セルロース繊維と前記分散媒とを主成分とする、前記分散媒の含有量が全重量に対して10〜99重量%である湿潤状態のセルロース繊維ゲルを製造する工程と、
    前記セルロース繊維ゲルを、加圧または乾燥することなく湿潤状態のままで、マトリックス材料と接触させ、ゲル内に含有される前記分散媒と前記マトリックス材料とを置換する工程とを備える、セルロース繊維とマトリックス材料とから構成されるセルロース繊維複合材料の製造方法。
  4. 前記分散液が、セルロースが分散した原料分散液に解繊処理を施し得られる分散液である、請求項3に記載のセルロース繊維複合材料の製造方法。
  5. 前記解繊処理が、周波数15kHz以上1MHz以下で、実効出力密度1W/cm以上の超音波を照射する超音波処理である、請求項4に記載のセルロース繊維複合材料の製造方法。
  6. 前記分散液中の前記分散媒の一部の除去を、濾過、または、塗布後に分散媒を蒸発させることにより行う、請求項3〜5のいずれかに記載のセルロース繊維複合材料の製造方法。
  7. 前記マトリックス材料が、高分子材料またはその前駆体である、請求項3〜6のいずれかに記載のセルロース繊維複合材料の製造方法。
  8. 前記セルロース繊維とマトリックス材料とから構成されるセルロース繊維複合材料が請求項1または2に記載のセルロース繊維複合材料である、請求項3〜7のいずれかに記載のセルロース繊維複合材料の製造方法。
  9. 請求項1または2に記載のセルロース繊維複合材料を用いて得られるディスプレイ用基板。
  10. 請求項1または2に記載のセルロース繊維複合材料を用いて得られる太陽電池用基板。
  11. 請求項1または2に記載のセルロース繊維複合材料を用いて得られる照明用基板。
  12. 請求項1または2に記載のセルロース繊維複合材料を用いて得られるタッチパネル用基板。
  13. 請求項1または2に記載のセルロース繊維複合材料を用いて得られる窓材。
  14. 請求項1または2に記載のセルロース繊維複合材料を用いて得られる構造材。
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