JP5359819B2 - セルロース繊維複合材料、およびその製造方法 - Google Patents
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Description
即ち、これらの用途には、高透明性、高耐熱性、低吸水性、低線膨張率を示すとともに、表面平滑性に優れ、光学的等方性を示す(複屈折を示さない)プラスチック材料が求められている。
また、特許文献3および特許文献4では、セルロース繊維を含有する分散液から抄紙法または塗布法によって製膜して得られるセルロースを含有する不織布と、セルロース以外の樹脂とからなる複合体が製造され、この複合体が耐熱性、透明性に優れると共に、低線膨張率を示すことが開示されている。
さらに、特許文献5では、粘土を主要成分とする粘土薄膜層およびシリカなどを含む無機薄膜層とを備えるディスプレイ用基板において、強度を補強する観点から、セルロースを含有する不織布と樹脂とから構成される補強層を製造することが開示されている。
本発明者らが、特許文献1〜5に記載のこれらの方法を用いて複合材料の製造を行ったところ、得られた複合材料は光学的な異方性が大きく、かつその表面上には目視で確認できる程度の非常に大きな凹凸形状(しわやうねり)が生じるという問題点があった。上述のように、液晶表示装置、プラズマディスプレイ、有機EL表示装置などのフラットディスプレイなどに使用されるガラス板の代替材料としては、透明性のみならず、高い光学的等方性および表面平滑性を備えることが望まれており、特許文献1〜5に記載の複合材料ではその要求特性を十分には満足するものではなかった。
本発明者らは、上記の知見をもとに、過度の加熱または加圧処理を施すことなく、所定量の分散媒を含有させた湿潤状態のセルロース繊維のゲルをマトリックス材料と接触させることにより、所望の特性(例えば、光学特性)を示すセルロース繊維複合材料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
厚み200μmのフィルムでの波長589nmにおける面内の位相差が6nm以下であり、
JIS B0601−1982に準じて測定した表面粗さの最大高さ(Rmax)が150μm以下であり、
厚み10μm〜500μmのフィルムまたはシートでのJIS K7136−2000に準じて測定したヘーズが5%以下であることを特徴とするセルロース繊維複合材料。
<2> 前記マトリックス材料が、高分子材料である<1>に記載のセルロース繊維複合材料。
<3> 分散媒中に平均繊維径30nm以下のセルロース繊維が分散した分散液を製造する工程と、
前記分散液中の前記分散媒の一部を除去して、前記セルロース繊維と前記分散媒とを主成分とする、前記分散媒の含有量が全重量に対して10〜99重量%である湿潤状態のセルロース繊維ゲルを製造する工程と、
前記セルロース繊維ゲルを、加圧または乾燥することなく湿潤状態のままで、マトリックス材料と接触させ、ゲル内に含有される前記分散媒と前記マトリックス材料とを置換する工程とを備える、セルロース繊維とマトリックス材料とから構成されるセルロース繊維複合材料の製造方法。
<4> 前記分散液が、セルロースが分散した原料分散液に解繊処理を施し得られる分散液である<3>に記載のセルロース繊維複合材料の製造方法。
<5> 前記解繊処理が、周波数15kHz以上1MHz以下で、実効出力密度1W/cm2以上の超音波を照射する超音波処理である、<4>に記載のセルロース繊維複合材料の製造方法。
<6> 前記分散液中の前記分散媒の一部の除去を、濾過、または、塗布後に分散媒を蒸発させることにより行う、<3>〜<5>のいずれかに記載のセルロース繊維複合材料の製造方法。
<7> 前記マトリックス材料が、高分子材料またはその前駆体である、<3>〜<6>のいずれかに記載のセルロース繊維複合材料の製造方法。
<8> 前記セルロース繊維とマトリックス材料とから構成されるセルロース繊維複合材料が<1>または<2>に記載のセルロース繊維複合材料である、<3>〜<7>のいずれかに記載のセルロース繊維複合材料の製造方法。
<9> <1>または<2>に記載のセルロース繊維複合材料を用いて得られるディスプレイ用基板。
<10> <1>または<2>に記載のセルロース繊維複合材料を用いて得られる太陽電池用基板。
<11> <1>または<2>に記載のセルロース繊維複合材料を用いて得られる照明用基板。
<12> <1>または<2>に記載のセルロース繊維複合材料を用いて得られるタッチパネル用基板。
<13> <1>または<2>に記載のセルロース繊維複合材料を用いて得られる窓材。
<14> <1>または<2>に記載のセルロース繊維複合材料を用いて得られる構造材。
<15> 分散媒中に平均繊維径30nm以下のセルロース繊維が分散した分散液を製造する工程と、
前記分散液中の前記分散媒の一部を除去して、前記セルロース繊維と前記分散媒とを主成分とする、前記分散媒の含有量が全重量に対して10〜99重量%である湿潤状態のセルロース繊維ゲルを製造する工程と、
前記セルロース繊維ゲルを、加圧または乾燥することなく湿潤状態のままで、マトリックス材料と接触させ、ゲル内に含有される前記分散媒と前記マトリックス材料とを置換する工程とを含む方法により得られる、セルロース繊維とマトリックス材料とから構成されるセルロース繊維複合材料。
本発明のセルロース繊維複合材料の製造方法は、特に限定されないが、以下の3つの工程を備え、その順番に実施される製造方法が好ましく挙げられる。
(分散液製造工程) 分散媒中に平均繊維径30nm以下のセルロース繊維が分散した分散液を製造する工程
(ゲル製造工程) 上記分散液中の前記分散媒の一部を除去して、セルロース繊維と分散媒とを主成分とする、分散媒の含有量が全重量に対して10〜99重量%である湿潤状態のセルロース繊維ゲルを製造する工程
(置換工程) 上記セルロース繊維ゲルを、加圧または乾燥することなく湿潤状態のままで、マトリックス材料と接触させ、ゲル内に含有される分散媒とマトリックス材料とを置換する工程
以下に、各工程で使用される材料およびその手順、ならびに、任意に実施してもよい工程について説明する。
分散液製造工程では、分散媒中に平均繊維径30nm以下のセルロース繊維が分散した分散液を製造する工程である。分散液の製造方法は特に限定されず、薬液処理や機械的解繊処理などが挙げられる。なかでも、セルロースが分散した原料分散液に解繊処理を施し、分散液を得ることが好ましい。解繊処理を施すことにより、原料分散液中のセルロースが十分に微細化され、所定のサイズのセルロース繊維を得ることができ、所望の光学的特性、力学特性を示す複合材料が得られる。
以下に、セルロースが分散した原料分散液を解繊処理する場合に、使用される材料(セルロース原料など)および解繊処理の方法について説明する。
本発明で使用されるセルロースの種類としては、特に限定はされないが、植物由来原料から得られるセルロースが好ましい。
植物由来原料としては、具体的には、針葉樹や広葉樹などの木質、コットンリンターやコットンリントなどのコットン、ケナフや麻、ラミーなどが挙げられる。植物由来の原料は、バクテリアセルロースなどの非植物由来のセルロースに比べて、生産性やコスト面で実用性が非常に高く、経済的に好ましい。また、植物由来の原料から得られるセルロースは、結晶性が高いので低線膨張率になり好ましい。植物由来原料のうち、コットンは微細な繊維径のものが得やすい点で好ましいが、生産量が木質と比較して乏しいため経済的に好ましくない。一方、針葉樹や広葉樹などの木質はミクロフィブリルが約4nmと非常に微細であり、分岐のない線状の繊維形態を有することから、光の散乱を生じにくい。さらに、地球上で最大量の生物資源であり、年間約700億トン以上ともいわれる量が生産されている持続型資源であることから、地球温暖化に影響する二酸化炭素削減への寄与も大きく、性能的にも経済的にも非常に好ましい。
最小長や最大長は、1mm〜10cm程度の大きさにおいては、定規やノギスなどにより計測することができる。10μm〜1mm程度の大きさにおいては、光学顕微鏡で観察し計測することができる。平均値は、ランダムに抽出したサンプル10点の平均値とする。
好ましくは、原料の最小長の平均は50μm以上で、原料の最大長の平均は5cm以下、より好ましくは原料の最小長の平均は50〜100μmで、原料の最大長の平均は100〜500μmである。
従って、本発明においては、前述の植物由来原料を必要に応じてこのような適当な大きさのチップ状に切断ないし破砕して用いる。
本発明においては、上述の植物由来原料を水性分散媒中で精製処理して、原料中のセルロース以外の物質、例えば、リグニンやヘミセルロース、樹脂(ヤニ)などを除去することが好ましい。
また、精製処理時には温度や圧力をかけてもよい。さらに、原料を木材チップや木粉などの状態に破砕してもよく、この破砕は上述の如く、精製処理前、処理の途中、処理後、いずれのタイミングで行ってもかまわない。
また、2種以上の処理剤を用いて、2以上の精製処理を行うこともでき、その場合、異なる処理剤を用いた精製処理間で、水で洗浄処理することが好ましい。
原料分散液の分散媒(溶媒)は、通常、水であるが、有機溶媒の1種または2種以上の混合溶媒であってもよい。また、水と有機溶媒との混合溶媒であってもよい。
なお、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブタノールなどのアルコール類、アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン類、その他水溶性の有機溶剤が挙げられる。
なお、原料分散液中におけるセルロースの含有量は、特に限定されないが、後述する解繊処理の点から、原料分散液全量に対して、0.2〜10重量%が好ましく、0.3〜6重量%がより好ましい。
原料分散液の解繊処理方法は、所望の平均繊維径を有するセルロース繊維が得られれば特に限定されない。例えば、ペイントシェーカーやビーズミルなどを用いて振動を与え、セルロースを解繊する方法、ブレンダータイプの分散機や高速回転するスリットの間に、このような原料分散液を通して剪断力を働かせて解繊する方法が挙げられる。
また、所定の圧力から急に減圧することによって、セルロース繊維間に剪断力を発生させて解繊する方法(高圧ホモジナイザー法)、マスコマイザーXのような対向衝突型の分散機(増幸産業)を用いる方法なども挙げられる。
さらには、原料分散液に超音波を照射して、解繊する方法も挙げられる。
さらには、解繊の効率が著しく向上する点から、原料分散液を高圧雰囲気下から噴出させて減圧することにより解繊を行った(高圧ホモジナイザー処理)後、超音波処理を行うことがより好ましい。これは、高圧ホモジナイザー処理により、セルロース繊維が数μm以下まで解繊され、超音波の照射効率が向上することによる。
以下に、上記の高圧雰囲気下から原料分散液を噴出させ減圧する処理方法(高圧ホモジナイザー処理)、および超音波処理について詳述する。
上記のように、原料分散液を高圧雰囲気下から噴出させて減圧することにより解繊する場合は、セルロース濃度(固形分濃度)が好ましくは0.2重量%以上10重量%以下、特に好ましくは0.3重量%以上6重量%以下の原料分散液を高圧雰囲気下から噴出させる。原料分散液中のセルロース濃度が低過ぎると、処理するセルロース量に対して液量が多くなり過ぎ効率が悪くなる。また、セルロース濃度が高過ぎると、細孔からの噴出が困難になる場合があるため、解繊処理に供する原料分散液は適宜水を添加するなどして濃度調整する。
噴出時の高圧条件は高い程、圧力差により大きなへき開現象でより一層の微細化を図ることができるが、装置仕様の上限として、通常245MPa以下である。
同様に、高圧条件から減圧下への圧力差も大きいことが好ましいが、一般的には、増圧機による加圧条件から大気圧下に噴出することで、圧力差の上限は通常245MPa以下である。
本発明において、超音波を照射する原料分散液中のセルロース濃度は、原料分散液全量に対して、0.01〜10重量%が好ましく、0.1〜5重量%がより好ましく、特に0.2〜2重量%が好ましい。超音波を照射する原料分散液のセルロース濃度が低過ぎると非効率であり、高過ぎると粘度が高くなり解繊処理が不均一になる。本発明においては、超音波処理に供される原料分散液のセルロース濃度が上記所定濃度となるように、必要に応じて水および/または有機溶媒を添加してもよい。
また、超音波の出力としては、実行出力密度として1W/cm2以上が好ましく、10W/cm2以上がより好ましく、20W/cm2以上が特に好ましい。超音波の出力が小さ過ぎると、微細化効率が低下して、十分な微細化を行うために長時間の照射が必要であり、実用的ではない。なお、超音波の実行出力密度の上限は、振動子やホーンなどの耐久性の点から500W/cm2以下である。
P=(T/s)×4.18×500/A …(1)
例えば、超音波振動子の振動を伝えるホーンを直接上記の原料分散液に挿入することにより、直接セルロースを微細化する方法や、原料分散液を入れた容器の床や壁の一部に超音波振動子を設置してセルロースを微細化する方法や、超音波振動子を装着した容器に水などの液体を入れ、その中に原料分散液を入れた容器を漬すことにより、水などの液体を介して間接的に超音波振動を原料分散液に与えて微細化する方法が採用できる。
中でも、ホーンを直接原料分散液に挿入する方法は、直接超音波エネルギーを伝達することができ、エネルギー密度を高くできるので効率がよく好適に利用される。
特に、連続的に原料分散液を流して処理する場合、振動子を有する処理容器を直列に連結して、原料分散液を順次流通させる方法は、効率の面から好適である。その際に、複数の振動子は同一の周波数でもよいし、周波数を変化させてもよい。
即ち、水などの液体中にセルロース繊維が懸濁、分散している状態で、超音波を照射すると、超音波振動子から発生した超音波がセルロース繊維に当たり、セルロース繊維と水との界面にキャビテーションが発生する。発生したキャビティは急激に収縮して消滅するが、その際に、周辺に大きな剪断力を発生させる。これによりセルロース繊維の表面から微細なセルロース繊維が剥離されることにより、微細セルロース繊維が生成する。
上述した原料セルロースに対して解繊処理を施す方法などによって、分散媒中に平均繊維径30nm以下のセルロース繊維が分散した分散液(以後、適宜、微細セルロース繊維分散液とも称する)が得られる。
本発明の分散液中におけるセルロース繊維とは、主としてセルロースからなる繊維である。
このセルロース繊維の水分散液または有機溶媒分散液を、後述する濾過または塗布によって製膜する方法、あるいはゲル状膜を乾燥する方法などによって、セルロース繊維ゲルを製造することができる。
本発明のセルロース繊維は、セルロースI型結晶構造を有するものであることが好ましい。
セルロースI型結晶構造とは、例えば、朝倉書店発行の「セルロースの事典」新装版第一刷P.81〜P.86、あるいはP.93〜99に記載の通りのものであり、ほとんどの天然セルロースはセルロースI型結晶構造である。これに対して、セルロースI型結晶構造ではなく、例えばセルロースII、III、IV型構造のセルロース繊維は、セルロースI型結晶構造を有するセルロースから誘導されるものである。
本発明では、セルロースI型結晶構造のセルロース繊維により、微細セルロース繊維分散液を提供することに特徴がある。
上記のセルロース繊維は、一般式(2)で表される繰り返し単位を含むセルロースおよび/またはその誘導体よりなることが好ましい。なかでも、セルロースの全繰り返し単位(100モル%)中、一般式(2)で表される繰り返し単位を50モル%以上含むことが好ましく、特に、一般式(2)で表される繰り返し単位のみからなるセルロースおよび/またはその誘導体であることが好ましい。
セルロースが、このような繰り返し単位を有するものであれば、結晶性が高くなり、高耐熱、高弾性率、高強度、低線膨張率になり好ましい。
疎水性が必要な場合には、X1、X2、X3は一部、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、2−ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、フロイル基、シンナモイル基としてもよい。
また、後述のセルロース繊維複合材料において、(メタ)アクリル樹脂と複合化する場合には、X1、X2、X3はアクリロイル基、メタクリロイル基、プロピオロイル基が好ましい。
なお、セルロースの繰り返し単位の化学構造は、固体NMRにより確認することができる。
本発明の微細セルロース繊維分散液は、含まれるセルロース繊維の繊維径が非常に細いことを特徴とする。
微細セルロース繊維分散液中におけるセルロース繊維の平均繊維径(直径)は、30nm以下であり、好ましくは25nm以下、より好ましくは20nm以下である。下限値に関しては、特に限定されないが、通常は4nm以上である。30nmを超えると透明性が低下して好ましくない。また、4nmより小さい繊維は実質的に製造できない。
本発明の微細セルロース繊維分散液のセルロース繊維は、25℃において測定されるずり速度10s−1における粘度が100mPa・s以下となるように分散液を調整して、遠心分離機にて38900Gの加速度を30分間かけたとき、全体積における上澄み10%に含まれるセルロースおよび/またはその誘導体の濃度が、遠心分離機にかける前の該分散液のセルロースおよび/またはその誘導体の濃度の50%以上である程度に微細化されていることが好ましい(以下において、遠心分離前の分散液中のセルロースおよび/またはその誘導体の濃度(重量)に対する、遠心分離後の上記上澄みに含まれるセルロースおよび/またはその誘導体の濃度(重量)の割合(百分率)を「セルロース残存率」と称する。)。
上記のような微細化度をもつ分散液を使用すると、得られるセルロース繊維複合材料の透明性が向上する。
ただし、分散液の粘度が高い場合には、セルロース繊維が凝集してゲル構造をとるため、太い繊維が含まれていても遠心分離で沈降せず、セルロース残存率では微細化度を確認し得ない。従って、ずり速度が10s−1の時の粘度(定常ずり粘度)が100mPa・s以下、例えば1〜100mPa・sの比較的セルロース繊維濃度が低く、低粘度の分散液に対して、上記のような遠心分離による評価を行う。
本発明の微細セルロース繊維分散液は、分散液中のセルロース繊維の繊維径が非常に細いため、可視光の光線透過率が高い。即ち、太い繊維を含むセルロース分散液はその太い繊維によって光が散乱されるため、光線透過率は低下し、白濁して見える。特に、低波長の光は散乱されやすく、透過率が低下するが、本発明の微細セルロース繊維分散液は波長400nmの光でも高い透過率を得ることができる。
本発明の微細セルロース繊維分散液中のセルロース繊維の長さについては特に限定されないが、平均長さで100nm以上が好ましい。繊維の平均長さが短か過ぎると、後述するセルロース繊維複合材料の強度が不十分となる恐れがある。
なお、セルロース繊維の繊維長さは、前述のセルロース繊維の繊維径と同様に測定することができる。
本発明の微細セルロース繊維分散液中の分散媒としては、上記の原料分散液で使用される分散媒と同じく、通常、水であるが、有機溶媒の1種または2種以上の混合溶媒であってもよい。また、水と有機溶媒との混合溶媒であってもよい。
なお、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブタノールなどのアルコール類、アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン類、その他水溶性の有機溶剤が挙げられる。
本発明の微細セルロース繊維分散液中のセルロース繊維濃度については特に制限はないが、分散液全量に対して、0.01〜10重量%が好ましく、0.05〜1重量%がより好ましい。濃度が低過ぎると分散液中のセルロース繊維量が少ないことにより、後述するセルロース繊維ゲルの生産効率に劣るものとなり、高過ぎると後述のセルロース繊維ゲルの製造において、厚み斑や光学等方性の悪化が起こる場合がある。
また、微細セルロース繊維分散液には、更に、界面活性剤、紙力増強剤、柔軟剤、サイズ剤などが1種または2種以上含まれていてもよい。
界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩、アルキルリン酸塩、ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物、特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤などの陰イオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミドなどの非イオン性界面活性剤;アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩等の陽イオン性界面活性剤;アルキルベタイン、アミンオキサイドなどの両性界面活性剤が挙げられる。
紙力増強剤としては、例えば、ホフマン系、アニオン系、澱粉グラフト系、液状カチオン澱粉、PAM系などが挙げられる。
柔軟剤としては、例えば、星光PMC社製FS8006が挙げられる。
サイズ剤としては、例えば、アルキルケテンダイマー、ロジンまたは変性ロジン、スチレンまたはスチレンアクリレート系ポリマー、脂肪酸系誘導体などが挙げられる。
微細セルロース繊維分散液に含まれるセルロース繊維に含まれるセルロースは、化学修飾によって誘導化されたものであってもよい。化学修飾とは、セルロース中の水酸基の一部または全部が化学修飾剤と反応して化学修飾されているものである。
なお、化学修飾は後述のセルロース繊維ゲルに対して行ってもよく、セルロース繊維ゲルとする前の分散液中のセルロース繊維に対して行ってもよい。また、解繊する前のセルロース原料、リグニンやヘミセルロースなどを除去した後のセルロース原料に対して行ってもよい。
酸無水物としては、例えば、無水酢酸、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、無水プロパン酸、無水ブタン酸、無水2-ブタン酸、無水ペンタン酸などが挙げられる。
ハロゲン化試薬としては、例えば、アセチルハライド、アクリロイルハライド、メタクリロイルハライド、プロパノイルハライド、ブタノイルハライド、2−ブタノイルハライド、ペンタノイルハライド、ベンゾイルハライド、ナフトイルハライドなどが挙げられる。
これらの化学修飾剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ゲル製造工程では、上述した分散液製造工程で得られた分散液中の分散媒の一部を除去して、セルロース繊維と分散媒とを主成分とするセルロース繊維ゲルであって、分散媒の含有量がゲル全重量に対して10〜99重量%である湿潤状態のセルロース繊維ゲルを製造する工程である。この工程によって得られるセルロース繊維ゲル中においては、セルロース繊維が3次元網目状構造を形成しており、その網目内部に分散媒が含まれている。
なかでも、得られるセルロール繊維ゲル中の分散媒の含有量の制御が容易である点から、濾過(濾過法)または塗布(塗布法)により分散媒を除去することが好ましい。
以下に、それぞれの方法について詳述する。
濾過法とは、上記の分散液を濾布に通すことにより、分散媒の一部を除去する方法である。この方法によれば、濾布上に所望の分散媒含有量を有する、フィルム状またはシート状のセルロール繊維ゲルが形成される。
なお、微細セルロース繊維分散液中のセルロース繊維の濃度は、必要に応じて、各種分散媒で調整することが可能である。
具体的には、孔径0.1〜20μmのポリテトラフルオロエチレンの多孔膜、孔径0.1〜20μmのポリエチレンテレフタレートやポリエチレンの織物などが挙げられる。
塗布法とは、上記分散液を所定の基板上に塗布して、分散媒を特定量まで蒸発させて除去する方法である。
塗布の方法としては、特に限定されず、スピンコート法、ブレードコート法、ワイヤーバーコート法、スプレーコート法、スリットコート法などが挙げられる。特に、均一な膜厚の薄膜が得られる点で、スピンコート法が好ましい。
なお、基板としては、特に限定されず、ガラス基板、プラスチック基板などが挙げられる。
なお、塗布により得られる塗布膜(ゲル)が所望の分散媒含有量を有していれば、上記乾燥は特に必要ない。
上記の方法(例えば、濾過法、塗布法)により得られたセルロース繊維ゲルは、セルロース繊維が3次元網目を作り、それが分散媒によって湿潤または膨潤したものであり、網目構造は化学架橋や物理架橋により形成される。分散媒の含有量はゲル全重量に対して10〜99重量%であり、ゲルが所定量の分散媒を含有することによって、ゲル中のセルロース繊維の3次元網目状構造が保持される。さらに、後述するマトリックス材料との置換が良好に進行し、光学的等方性および表面平滑性に優れたセルロース繊維材料を得ることができる。
ゲル中における分散媒の含有量は、10重量%以上であり、50重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましい。10重量%未満であると、得られるセルロース繊維複合材料の光学的等方性および表面平滑性が損なわれる。また、上限としては、99重量%以下であり、97重量%以下が好ましく、95重量%以下がより好ましい。99重量%を超えると、ゲルのハンドリング性が悪くなると共に、生産性が低下する。
また、ゲル中におけるセルロース繊維の含有量は、通常、90重量%以下であり、50重量%以下が好ましく、30重量%以下がより好ましい。90重量%を超えると、得られるセルロース繊維複合材料の光学的等方性および表面平滑性が損なわれる。また、下限としては、1重量%以上であり、3重量%以上が好ましく、5重量%以上がより好ましい。1重量%未満であると、ゲルのハンドリング性が悪くなると共に、生産性が低下する。
置換する方法としては、例えば、上記の濾過法により分散液中に含まれる所定量の分散媒を除去した後、アルコールなどの有機溶媒を加えることにより、アルコール等の有機溶媒が含まれるゲルを製造することができる。より具体的には、第一の分散媒が水で、第二の分散媒が有機溶媒である場合が挙げられる。
置換工程では、上記ゲル製造工程で得られたセルロース繊維ゲルから、加圧および/または乾燥によりゲル中の分散媒を除去することなく、上記分散媒含有量を保持した湿潤状態のままで、マトリックス材料と接触させ、ゲル内に含有される分散媒とマトリックス材料とを置換する工程である。本工程においては、得られたゲルから分散媒を除去するための加圧または乾燥処理を施すことなく、湿潤状態のゲルをマトリックス材料と接触させる点に特徴がある。
一方、従来法においては、まず、セルロース繊維を用いて得られる湿潤状態のセルロース繊維ゲルから実質的に分散媒を除去することにより、空孔率の高いセルロース繊維の不織布を製造する。次に、形成された空孔内部にマトリックス材料を充填させ、所定のセルロース繊維複合材料を製造している。つまり、従来法では、セルロース繊維の不織布内に空孔を形成することが必須とされており、本発明のように湿潤状態のセルロース繊維ゲルを用いて分散媒とマトリックス材料とを置換するという技術思想とは大きく異なる。
加圧とは、セルロース繊維ゲルから分散媒を除去するために実施される加圧を意味し、例えば、コールドプレスやホットプレスなどが挙げられる。プレスにより分散媒がセルロース繊維ゲルの横方向に抜けて層状構造を形成する、およびプレスによりセルロース繊維が横方向に配向するなどが起こり、光学等方性や表面平滑性が悪化する恐れが有ることから、プレスを実施しないことが好ましい。
乾燥とは、セルロース繊維ゲルから分散媒を除去するために実施される乾燥を意味し、例えば、加熱乾燥が挙げられる。より具体的には、分散媒の沸点以上の加熱を実施しないことが好ましい。
ただし、セルロース繊維ゲル中の分散媒含有量を実質的に変化させない程度の加圧や乾燥(例えば、大気圧下での放置)であれば、実施してもよい。
本発明のセルロース繊維複合材料は、上述のセルロース繊維ゲルとマトリックスとが複合化したものである。
本発明において、マトリックス材料とは、セルロース繊維と接触後、複合化の工程を経ることによって、セルロース繊維複合材料の母材(マトリックス)の一つとなり、後述する好適な物性を満たすセルロース繊維複合材料を製造することができるものであれば、特に制限されない。例えば、高分子材料、セラミックなどが挙げられる。
なかでも、加熱することにより流動性のある液体になる熱可塑性樹脂、加熱により重合する熱硬化性樹脂、紫外線や電子線などの活性エネルギー線を照射することにより重合硬化する光(活性エネルギー線)硬化性樹脂などから選ばれる1以上の高分子材料またはその前駆体(例えばモノマー)が好ましい。
なお、本発明において高分子材料の前駆体とは、いわゆるモノマー、オリゴマーであり、例えば、熱可塑性樹脂の項に(共)重合成分として後述する各単量体など(以後、熱可塑性樹脂前駆体と称することがある)、熱硬化性樹脂・光硬化性樹脂の項に後述する各前駆体などが挙げられる。
セルロース繊維ゲルとマトリックス材料との接触及びマトリックス複合化の方法としては、例えば、次の(a)〜(f)の方法が挙げられる。なお、(b),(c),(e)および(f)の方法に記載の硬化性樹脂前駆体の重合硬化の詳細については、後述する硬化工程にて詳述する。
(a) セルロース繊維ゲルに液状の熱可塑性樹脂前駆体を含浸させて重合する方法
(b) セルロース繊維ゲルに熱硬化性樹脂前駆体または光硬化性樹脂前駆体を含浸させて重合硬化させる方法
(c) セルロース繊維ゲルに樹脂溶液(熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂前駆体、熱硬化性樹脂前駆体、および光硬化性樹脂前駆体から選ばれる1以上の溶質を含む溶液)を含浸させて乾燥した後、加熱プレス等で密着させ、必要に応じて重合硬化する方法
(d) セルロース繊維ゲルに熱可塑性樹脂の溶融体を含浸させ、加熱プレス等で密着させる方法
(e) セルロース繊維ゲルの片面または両面に、液状の熱可塑性樹脂前駆体、熱硬化性樹脂前駆体、または光硬化性樹脂前駆体を塗布して重合硬化させる方法
(f) セルロース繊維ゲルの片面または両面に樹脂溶液(熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂前駆体、熱硬化性樹脂前駆体、および光硬化性樹脂前駆体から選ばれる1以上の溶質を含む溶液)を塗布して、溶媒を除去後、必要に応じて重合硬化する方法
樹脂を溶解させる溶媒としては、セルロース繊維ゲルとの親和性と樹脂の溶解性を考慮して選択すればよく、具体的にはセルロース繊維ゲルの分散媒として例示したもの等の中から、樹脂の溶解性に応じて選択すればよい。
樹脂を溶解させる溶媒としては、セルロース繊維ゲルとの親和性と樹脂の溶解性を考慮して選択すればよく、具体的にはセルロース繊維ゲルの分散媒として例示したもの等の中から、樹脂の溶解性に応じて選択すればよい。
熱可塑性樹脂としては、後述するセルロース繊維複合材料の物性を満足するものであれば特に制限されないが、例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、芳香族ポリカーボネート系樹脂、脂肪族ポリカーボネート系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリオレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、熱可塑性ポリイミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリスルホン系樹脂、非晶性フッ素系樹脂などが挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルとは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、シクロアルキルエステル基を有する(メタ)アクリル酸系単量体、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルなどが挙げられる。シクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸系単量体としては、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ブトキシエチルなどが挙げられる。
(メタ)アクリルアミドとしては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−t−オクチル(メタ)アクリルアミド等のN置換(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
更に、例えば、1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、1,4−オクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ブチリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロペニル−2−ノルボルネンなどの非共役ジエンとの二元あるいは三元の共重合体が挙げられる。具体的には、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ブテン−非共役ジエン共重合体などのオレフィン系ゴムが挙げられる。これらのオレフィン系重合体は、2種以上が併用されていてもよい。
熱硬化性樹脂、光(活性エネルギー線)硬化性樹脂とは、前駆体が硬化してなる樹脂硬化物のことを意味する。ここで前駆体は、常温では液状、半固体状または固形状であって、常温下または加熱下で流動性を示す物質を意味する。これらは硬化剤、触媒、熱または光の作用によって、重合反応や架橋反応を起こして分子量を増大させながら網目状の3次元構造を形成してなる不溶不融の樹脂となり得る。また、樹脂硬化物とは、上記熱硬化性樹脂前駆体または光(活性エネルギー線)硬化性樹脂前駆体が硬化してなる樹脂を意味する。
本発明における熱硬化性樹脂前駆体としては、特に限定されないが、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、オキセタン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、珪素樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂などの前駆体が挙げられる。
上記エポキシ樹脂前駆体としては特に限定されず、例えば、以下に示したエポキシ樹脂の前駆体が挙げられる。これらのエポキシ樹脂の前駆体は、単独でも2種以上併用されてもよい。エポキシ樹脂は、通常、硬化剤を用いて熱硬化性樹脂前駆体を硬化することにより得られる。
また、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルアジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル)メチルアジペート、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテルなどの脂環族エポキシ樹脂前駆体が挙げられる。
また、1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、炭素数2〜9(好ましくは2〜4)のアルキレン基を含むポリオキシアルキレングリコールやポリテトラメチレンエーテルグリコール等を含む長鎖ポリオールのポリグリシジルエーテルなどの脂肪族エポキシ樹脂前駆体が挙げられる。
また、フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサドロフタル酸ジグリシジルエステル、ジグリシジル−p−オキシ安息香酸、サリチル酸のグリシジルエーテル−グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステルなどのグリシジルエステル型エポキシ樹脂前駆体およびこれらの水添化物が挙げられる。
また、トリグリシジルイソシアヌレート、環状アルキレン尿素のN,N’−ジグリシジル誘導体、p−アミノフェノールのN,N,O−トリグリシジル誘導体のグリシジルアミン型エポキシ樹脂の前駆体およびこれらの水添化物などが挙げられる。
また、グリシジル(メタ)アクリレートと、エチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル等のラジカル重合性モノマーとの共重合体等が挙げられる。また、エポキシ化ポリブタジエン等の共役ジエン化合物を主体とする重合体またはその部分水添物の重合体における不飽和炭素の二重結合をエポキシ化したもの等が挙げられる。また、エポキシ化SBS等のような、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックまたはその部分水添化物の重合体ブロックとを同一分子内にもつブロック共重合体における共役ジエン化合物の不飽和炭素の二重結合をエポキシ化したもの等が挙げられる。また、1分子あたり1個以上、好ましくは2個以上のエポキシ基を有するポリエステル樹脂等が挙げられる。また、上記エポキシ樹脂の構造中にウレタン結合やポリカプロラクトン結合を導入した、ウレタン変性エポキシ樹脂やポリカプロラクトン変性エポキシ樹脂等が挙げられる。上記変性エポキシ樹脂としては、例えば、上記エポキシ樹脂にNBR、CTBN、ポリブタジエン、アクリルゴム等のゴム成分を含有させたゴム変性エポキシ樹脂等が挙げられる。なお、エポキシ樹脂以外に、少なくとも1つのオキシラン環を有する樹脂またはオリゴマーが添加されてもよい。また、フルオレン含有エポキシ樹脂、フルオレン基を含有する熱硬化性樹脂および組成物、またはその硬化物も挙げられる。これらフルオレン含有エポキシ樹脂は、高耐熱であるため好適に用いられる。
上記エポキシ樹脂前駆体の硬化反応に用いられる硬化剤としては、特に限定されず、例えば、アミン化合物、アミン化合物から合成されるポリアミノアミド化合物等の化合物、3級アミン化合物、イミダゾール化合物、ヒドラジド化合物、メラミン化合物、酸無水物、フェノール化合物、熱潜在性カチオン重合触媒、光潜在性カチオン重合開始剤、ジシアンアミドおよびその誘導体などが挙げられる。これらの硬化剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
分子内に1個の(メタ)アクリロイル基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
例えば、ビス(アクリロイルオキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(メタクリロイルオキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(アクリロイルオキシ−メタクリロイルオキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(アクリロイルオキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、ビス(メタクリロイルオキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(アクリロイルオキシ−メタクリロイルオキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、ビス(アクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(アクリロイルオキシメチル−メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(アクリロイルオキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、ビス(メタクリロイルオキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(アクリロイルオキシメチル−メタクリロイルオキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、ビス(アクリロイルオキシエチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(メタクリロイルオキシエチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(アクリロイルオキシエチル−メタクリロイルオキシエチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(アクリロイルオキシエチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、ビス(メタクリロイルオキシエチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(アクリロイルオキシエチル−メタクリロイルオキシエチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン等、およびこれらの混合物等を挙げることができる。
具体的には、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールセプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
具体的には、ビスフェノールAジグリシジルエーテル=ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジプロピレンオキサイドジグリシジルエーテル=ジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル=ジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジグリシジルエーテル=ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル=ジ(メタ)アクリレート、1、6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル=ジ(メタ)アクリレート、グリセリンジグリシジルエーテル=ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル=トリ(メタ)アクリレート、2−ヒドリキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルブチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアミノ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
ここで用いるジオール類としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリヘプタメチレングリコール、ポリデカメチレングリコールあるいは二種以上のイオン重合性環状化合物を開環共重合させて得られるポリエーテルジオールが挙げられる。
イオン重合性環状化合物としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテン−1−オキシド、イソブテンオキシド、3,3−ビスクロロメチルオキセタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン、テトラオキサン、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エピクロルヒドリン、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルカーボネート、ブタジエンモノオキシド、イソプレンモノオキシド、ビニルオキセタン、ビニルテトラヒドロフラン、ビニルシクロヘキセンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、安息香酸グリシジルエステル等の環状エーテル類が挙げられる。また、上記イオン性重合性環状化合物と、エチレンイミン等の環状イミン類、β−プロピオラクトン、グリコール酸ラクチド等の環状ラクトン酸、あるいはジメチルシクロポリシロキサン類とを開環共重合させたポリエーテルジオールを使用することもできる。
上記二種以上のイオン重合性環状化合物の具体的な組み合わせとしては、テトラヒドロフランとプロピレンオキシド、テトラヒドロフランと2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランと3−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランとエチレンオキシド、プロピレンオキシドとエチレンオキシド、ブテンオキシドとエチレンオキシド等を挙げることができる。これらのイオン重合性環状化合物の開環共重合体はランダムに結合していてもよいし、ブロック状の結合をしていてもよい。
さらにポリカプロラクトンジオールとしては、ε−カプロラクトンと、例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,2−ポリブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ブタンジオール等の2価のジオールとを反応させて得られるポリカプロラクトンジオールが挙げられる。これらのジオールは、プラクセル205、205AL、212、212AL、220、220AL(以上、ダイセル(株)製)等が市販品として入手することができる。
なかでも、イソホロンジイソシアネートやノルボルナンジイソシアネート、メチレンジシクロヘキシルジイソシアネートなどの脂環骨格を有するジイソシアネートが好適に用いられる。
なかでも、メチレンジシクロヘキシルジイソシアネートとポリテトラメチレンエーテルグリコールを有するウレタンアクリレートは透明性、低複屈折性、柔軟性等の点により優れており、好適に利用することができる。
本発明における光硬化性樹脂としては、特に限定されないが、上述の熱硬化性樹脂の説明において例示したエポキシ樹脂、アクリル樹脂、オキセタン樹脂等の前駆体が挙げられる。
例えば、分子内に2個以上のチオール基を有する多官能メルカプタン化合物を用いることができ、これにより硬化物に適度な靱性を付与する事ができる。メルカプタン化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(β−チオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(β−チオグリコレート)、トリメチロールプロパントリス(β−チオプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(β−チオグリコレート)、ジエチレングリコールビス(β−チオプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(β−チオグリコレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(β−チオプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(β−チオグリコレート)等の2〜6価のチオグリコール酸エステル又はチオプロピオン酸エステル;トリス[2−(β−チオプロピオニルオキシ)エチル]トリイソシアヌレート、トリス[2−(β−チオグリコニルオキシ)エチル]トリイソシアヌレート、トリス[2−(β−チオプロピオニルオキシエトキシ)エチル]トリイソシアヌレート、トリス[2−(β−チオグリコニルオキシエトキシ)エチル]トリイソシアヌレート、トリス[2−(β−チオプロピオニルオキシ)プロピル]トリイソシアヌレート、トリス[2−(β−チオグリコニルオキシ)プロピル]トリイソシアヌレート等のω−SH基含有トリイソシアヌレート;ベンゼンジメルカプタン、キシリレンジメルカプタン、4、4’−ジメルカプトジフェニルスルフィド等のα,ω−SH基含有化合物等が挙げられる。これらの中でもペンタエリスリトールテトラキス(β−チオプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(β−チオプロピオネート)、トリス[2−(β−チオプロピオニルオキシエトキシ)エチル]トリイソシアヌレートなどが挙げられる。これらは、1種単独でも、2種以上を併用して用いてもよい。メルカプタン化合物を入れる場合は、ラジカル重合な可能化合物の合計に対して、通常30重量%以下の割合で含有させる。
具体的には、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4、4’−ジメトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物、2−(2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジターシャリーブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−ターシャリーブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系化合物、その他マロン酸エステル系のホスタビンPR−25(クラリアント社)、蓚酸アニリド系のサンデュボアVSU(クラリアント社)などの化合物である。紫外線吸収剤を入れる場合は、ラジカル重合な可能化合物の合計100重量部に対して、通常0.01〜1重量部の割合で含有させる。
なかでも、γ−((メタ)アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−((メタ)アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、γ−((メタ)アクリロキシプロピル)メチルジエトキシシラン、γ−((メタ)アクリロキシプロピル)トリエトキシシラン、γ−(アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン等は分子中に(メタ)アクリル基を有しており、他のモノマーと共重合することができるので好ましい。
シランカップリング剤は、ラジカル重合な可能化合物の合計に対して通常0.1〜50重量%、好ましくは1〜20重量%となるように含有させる。この配合量が少な過ぎると、これを含有させる効果が十分に得られず、また、多過ぎると、硬化物の透明性などの光学特性が損なわれる恐れがある。
置換工程において高分子材料の前駆体(例えば、熱硬化性樹脂前駆体、光硬化性樹脂前駆体)を使用した場合は、必要に応じて、置換工程の後に、前駆体を硬化させる硬化工程を実施してもよい。
硬化方法は、使用される前駆体の種類により適宜選択されるが、例えば、熱硬化、または放射線硬化が挙げられる。好ましくは放射線硬化である。放射線としては、赤外線、可視光線、紫外線、電子線等が挙げられるが、好ましくは光である。更に好ましくは波長が200nm〜450nm程度の光であり、更に好ましくは波長が300〜400nmの紫外線である。
上述の製造工程などにより得られる本発明のセルロース繊維複合材料は、平均繊維径30nm以下のセルロース繊維とマトリックス材料とから構成され、セルロース繊維が3次元ネットワーク構造を形成している複合体である。さらに、厚み200μmのフィルムでの波長589nmにおける面内の位相差が6nm以下であり、JIS B0601−1982に準じて測定した表面粗さの最大高さ(Rmax)が150μm以下であり、厚み10μm〜500μmのフィルムでのJIS K7136−2000に準じて測定したヘーズが5%以下である。このような特性を有するセルロース繊維複合材料は、後述する種々の用途に使用することができ、特に光学的等方性および表面平滑性に優れる点からディスプレイ用基板などに使用することができる。
以下に、セルロース繊維複合材料の好適な特性ないし物性について説明する。
本発明のセルロース繊維複合材料中のセルロース繊維の含有量は、複合材料全量に対して、1重量%以上99重量%以下が好ましく、マトリックス材料の含有量は1重量%以上99重量%以下が好ましい。優れた低線膨張性を発現するには、セルロース繊維の含有量が1重量%以上、マトリックス材料の含有量が99重量%以下であることが好ましく、優れた透明性を発現するにはセルロース繊維の含有量が99重量%以下、マトリックス材料の含有量が1重量%以上であることが好ましい。
より好ましい範囲としては、セルロース繊維が5重量%以上90重量%以下であり、マトリックス材料が10重量%以上95重量%以下であり、さらに好ましい範囲はセルロース繊維が10重量%以上80重量%以下であり、マトリックス材料が20重量%以上90重量%以下であることが好ましい。
本発明のセルロース繊維複合材料の形状は、特に限定されず、板状、または曲面を有する板状とすることもできる。また、その他の異形形状であってもよい。また、厚さは必ずしも均一である必要はなく、部分的に異なっていてもよい。
形状が板状(シート状、フィルム状)である場合、その厚み(平均厚み)は、好ましくは10μm以上10cm以下であり、このような厚みとすることにより、構造材としての強度を保つことができる。さらに、より好ましくは50μm以上1cm以下であり、さらに好ましくは80μm以上250μm以下である。
なお、上記板状物において、フィルムとはその厚みが概ね、200μm以下の板状物を意味し、シートとはフィルムよりも厚い板状物を意味する。
本発明のセルロース繊維複合材料は、厚み200μmのフィルムでの波長589nmにおける面内の位相差が6nm以下を示す。位相差としては、より好ましくは5nm以下であり、さらに好ましくは4nm以下である。下限値としては特に制限されず小さければ小さいほどよく、0nmが特に好ましい。位相差が6nmを超えると、ディスプレイなどの用途への応用が制限される。
なお、面内の位相差(Ro)は、フィルムの厚み方向をZ軸、フィルム面上のZ軸に直交する軸をX軸、Y軸とし、フィルムの面内遅相軸方向の屈折率をnx、面内進相軸方向(遅相軸と面内で直交する方向)の屈折率をny、厚みをdとしたときに、下式(I)で定義される。
Ro = (nx−ny)×d (I)
測定方法としては、公知の測定装置(例えば、大塚電子社製RETS−100型位相差フィルム・光学材料評価装置)を用いて波長589nmの光をフィルム法線方向に入射させて測定する。この方法でセルロース繊維複合材料表面の任意の場所5点を測定し、最も大きい値と最も小さい値を除去した3点の平均値を算出して位相差とした。なお、具体的な測定方法については、後述する実施例の項に詳述する。
本発明のセルロース繊維複合材料(例えば、厚み10〜500μmのフィルム)は、JIS B0601−1982に準じて測定した表面粗さの最大高さ(Rmax)が150μm以下である。表面粗さの最大高さとしては、より好ましくは100μm以下であり、さらに好ましくは50μm以下である。下限値としては、特に制限されず小さければ小さいほどよく、0μmが特に好ましい。表面粗さの最大高さが150μmを超えると、ディスプレイなどの用途への応用が制限される。
なお、測定方法としては、公知の測定装置を用いて測定することができる。具体的な測定方法については、後述する実施例の項に詳述する。
本発明のセルロース繊維複合材料は、厚み10μm〜500μmのフィルムでのJIS K7136−2000に準じて測定したヘーズが5%以下である。なかでも、好ましくは3%以下であり、より好ましくは2%以下である。下限値としては、特に制限されず小さければ小さいほどよく、0%が最も好ましい。5%を超えると、透明性が要求される用途への使用が困難となる場合がある。
本発明のセルロース繊維複合材料は、可視光の波長よりも細い微細セルロース繊維を用いていることから、透明性が非常に高い。
なお、ヘーズは、例えば、スガ試験機製ヘーズメータを用いて測定することができ、C光の値を用いる。
本発明のセルロース繊維複合材料は、JIS規格K7105に準拠してその厚み方向に測定された全光線透過率が60%以上、更には70%以上、特に80%以上、とりわけ90%以上であることが好ましい。この全光線透過率が60%未満であると半透明または不透明となり、透明性が要求される用途への使用が困難となる場合がある。
全光線透過率は、例えば、厚み10〜500μmのセルロース繊維複合材料について、スガ試験機製ヘーズメータを用いて測定することができ、C光の値を用いる。
本発明のセルロース繊維複合材料は、線膨張係数(1Kあたりの伸び率)の低い微細セルロース繊維を含むため、低線膨張性を示す。具体的には、セルロース繊維複合材料の線膨張係数は、1〜50ppm/Kであることが好ましく、1〜30ppm/Kであることがより好ましく、1〜20ppm/Kであることが特に好ましい。
本発明のセルロース繊維複合材料の曲げ強度は、好ましくは40MPa以上であることが好ましく、より好ましくは100MPa以上である。曲げ強度が40MPaより低いと、十分な強度が得られず、構造材料等、力の加わる用途への使用に影響を与えることがある。
本発明のセルロース繊維複合材料の曲げ弾性率は、好ましくは0.2〜100GPaであることが好ましく、より好ましくは1〜50GPaである。曲げ弾性率が0.2GPaより低いと、十分な強度が得られず、構造材料等、力の加わる用途への使用に影響を与えることがある。
本発明のセルロース繊維複合材料は、透明性が高く、高強度、高透明性、低着色、および、ヘーズが小さく、表面平滑性、および光学的等方性に優れるため、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、リアプロジェクションテレビなどのディスプレイや基板やパネルとして好適である。また、シリコン系太陽電池、色素増感太陽電池などの太陽電池用基板に好適である。さらには照明用基板、タッチパネル用基板なども挙げられる。基板としては、バリア膜、ITO、TFTなどと積層してもよい。また、自動車用の窓材、鉄道車両用の窓材、住宅用の窓材、オフィスや工場などの窓材などに好適に使われる。窓材としては、必要に応じてフッ素皮膜、ハードコート膜などの膜や耐衝撃性、耐光性の素材を積層してもよい。
また、低線膨張係数、高弾性、高強度等の特性を生かして透明材料用途以外の構造体としても用いることができる。特に、内装材、外板、バンパーなどの自動車材料やパソコンの筐体、家電部品、包装用資材、建築資材、土木資材、水産資材、その他、工業用資材などとして好適に用いられる。
以下に、本発明のセルロース繊維複合材料が適用される有機EL素子とその構成について、図1に基づいて説明する。
製造例、実施例、および比較例で作製した試料の物性などは、下記の方法で評価した。
微細セルロース繊維分散液中に含まれるセルロース繊維含有量(重量%)の測定は、JAPAN TAPPI No.56「パルプ材−分析用試料の水分試験方法」に従って、分散媒含有量(重量%)を求め、100重量%から引いてセルロース繊維含有量とした。
すなわち、乾燥前の微細セルロース繊維分散液の重量をS1(g)、105±2℃で2時間乾燥した後、デシケーターで室温まで冷却した後の重量をL1(g)としたとき、分散媒(M重量%)とセルロース含有量C1(重量%)は下記式から求めた。
M={(S1−L1)/S1}×100 C1=100−M
微細セルロース繊維分散液は、下記のようにして粘度を測定した。粘弾性測定装置として、RHEOMETRIC SCIENTIFIC社のARES100FRTを用い、所定の濃度に調整した微細セルロース繊維分散液を25±0.1℃に調温したステージに1.5ml滴下して、直径50mmで0.04radの角度を有するコーンプレートをギャップ間50μm隔てて設置し、ずり速度を1s−1から126s−1まで11点(1, 2, 3, 5, 8, 13, 20, 32, 50, 80, 126s−1)を各30秒で上昇させながら定常ずり粘度を測定し、ずり速度が10s−1の時の定常ずり粘度を求めた。
遠心分離機として日立工機株式会社製のhimacCR22Gを用い、アングルローターとしてR20A2を用いた。50ml遠沈管8本を、回転軸から34度の角度で設置した。1本の遠沈管に入れる微細セルロース繊維分散液の量は30mlとした。18000rpmにて30分間遠心分離作業を行った。この時、本ローターでの遠心力は計算により38900Gと求められた。遠心分離後に遠沈管の上部3mlをスポイトで採取し、セルロース濃度を測定した。遠心分離後の上澄み液全量のうち10重量%に含まれるセルロース濃度(重量)を遠心分離前のセルロース濃度(重量)で割った値に100をかけて、セルロース残存率(%)とした。
微細セルロース繊維分散液中のセルロース繊維の平均繊維径は、分散液中の分散媒を乾燥除去した後、SEMまたはTEMで観察することにより計測して求めた。ランダムに抽出した10点の測定値の平均を平均繊維径とした。
微細セルロース繊維分散液を水で希釈して、分散液全量に対して、セルロース繊維濃度0.1重量%に調整した。日立製作所製の分光光度計U4000と、光路長10mmの石英セルを用い、リファレンスに水を入れ、サンプルとして上記の濃度調整した微細セルロース繊維分散液を入れ、波長300nmから900nmの光線透過率スペクトルを測定した。
使用されたセルロース繊維分散液中のセルロース繊維含有量と使用量とから算出されるセルロース繊維重量をL2(g)、得られたセルロース繊維ゲルの総重量をS2(g)としたとき、セルロース繊維ゲル全重量に対するセルロース繊維の含有量C2(重量%)は下記式から求めた。なお、分散媒含有量M2(重量%)は、100重量%からセルロース含有量C2を引いて求めた。
C2=(L2/S2)×100
膜厚計(IP65 ミツトヨ社製)を用いて、セルロース繊維ゲルの任意の位置について3〜10点の測定を行い、その平均値を厚みとした。
膜厚計(IP65 ミツトヨ社製)を用いて、セルロース繊維複合体材料の任意の位置について3〜10点の測定を行い、その平均値を厚みとした。
大塚電子社製RETS−100型位相差フィルム・光学材料評価装置を用いて、回転検光子法で波長:589nmにおける位相差を測定し、求めたセルロース繊維複合材料の厚さから、厚さ200μmあたりの位相差を算出した。
得られたセルロース繊維複合材料(厚み10μm〜500μmのフィルム)について、JIS規格K7136に準拠し、スガ試験機製ヘーズメータを用いてC光によるヘーズ値を測定した。
得られたセルロース繊維複合材料について、JIS規格K7105に準拠し、スガ試験機製ヘーズメータを用いてC光による全光線透過率を測定した。
得られたセルロース繊維複合材料について、JIS B0601に準じて、表面粗さ形状測定機(サーフコム570A 東京精密社製)を用いて測定した。基準長さは20mmとした。セルロース繊維複合材料表面の任意の場所5点を測定し、最も大きい値と最も小さい値を除去した3点の平均値を算出して最大高さとした。
得られたセルロース繊維複合材料中のセルロース繊維の平均繊維径の測定は、まず、複合材料をそのまま破断したり、必要に応じて液体窒素などで冷却してから破断したりして、破断面をだし、その破断面をSEMまたはTEMで観察した。破断面を写真撮影し、得られた写真の対角線に線を引き、その近傍にある繊維を任意に12点抽出し、最も太い繊維と最も細い繊維を除去した10点の平均値を算出し、平均繊維径を得た。
また、繊維構造についても同様の方法で破断面をSEMまたはTEMで観察することにより、層状構造(ミルフィーユ構造とも称する)または3次元網目状構造かを確認した。
使用されたセルロース繊維分散液中のセルロース繊維含有量と使用量とから算出されるセルロース重量をL3(g)、得られたセルロース繊維複合材料の重量をS3(g)としたとき、セルロース繊維複合材料全量に対するセルロース繊維の含有量C3(重量%)は下記式から求めた。
C3=(L3/S3)×100
原料としてベイマツ木粉((株)宮下木材/粒径50〜250μm(平均粒径138μm))を用意した。次に、セルロースの精製処理を以下に記す工程で実施した。
木粉原料に2重量%に調整した炭酸ナトリウム水溶液を加え、液温78〜82℃で常時攪拌しながら6時間加熱した。この処理後に液をろ別し、残った木粉を水で洗浄、ろ別した。次に、残った木粉に酢酸0.27重量%、亜塩素酸ナトリウム1.33重量%に調整した水溶液を加え、液温78〜82℃で5時間加熱した。処理後に液をろ別し、残った木粉を水で洗浄、ろ別した。次に、残った木粉に5重量%に調整した水酸化ナトリウム水溶液を加え、常温〜30℃で16時間静置した。最後に、残った木粉を水で洗浄、ろ別することによりセルロースを得た。尚、この精製処理実施時にはろ別する際も含めてセルロースを完全に乾燥させることなく常に水に濡れた状態(含水量10重量%以上)にした。
得られたセルロースに水を添加し、セルロース濃度として0.5重量%に調整したセルロース懸濁液を作製した。このセルロース懸濁液を超高圧ホモジナイザー(アルティマイザー「シングルノズルタイプ/細孔直径150μm」 スギノマシン製)を用いて、噴出圧力245MPaにて、繰り返し回数(パス数)10回で解繊処理を行った。
更に、超音波ホモジナイザー(UH−600S「周波数20kHz/36mmφのストレート型チップ(チタン合金製)」 SMT社製)を用い、アウトプットボリューム8で30分間超音波処理を行った。この時の出力を水の温度上昇から測定したところ224Wであった。
その後、遠心分離機(CR−22G 日立工機社製)を使用して18,000rpm(38900G)で30分間処理し、上澄みとして微細セルロース繊維分散液を得た。
微細セルロース繊維分散液中のセルロース繊維濃度を0.355重量%に希釈した。このセルロース分散液のずり速度10s−1での定常ずり粘度は、8.6mPa・sであった。また、18000rpm(38900G)にて遠心分離を行ったところ、上澄みに含まれるセルロース残存率は98%であった。
微細セルロース繊維分散液の可視光透過率を測定したところ、800nmでは98%、550nmでは95%、400nmでは88%であった。
製造例1で製造した微細セルロース繊維分散液を、セルロース繊維濃度0.13重量%に水で希釈し、孔径1μmのPTFEメンブレンフィルター(T100A090C アドバンテック社製)を用いた90mm径の減圧濾過器(KG−90 アドバンテック社製)に150g投入し、減圧条件下(−0.09MPa)でろ過を開始した。開始直後に、2−プロパノールを30mL投入し、続けてろ過をした。ろ過時間120分で終了後、PTFEメンブレンフィルター上にセルロース繊維ゲルを得た。
製造例1で製造した微細セルロース繊維分散液を、0.13重量%に水で希釈し、孔径1μmのPTFEメンブレンフィルター(T100A090C アドバンテック社製)を用いた90mm径の減圧濾過器(KG−90 アドバンテック社製)に150g投入し、減圧条件下(−0.09MPa)ろ過を開始した。ろ過時間90分で終了後、PTFEメンブレンフィルター上にセルロース繊維ゲルを得た。
製造例1で製造した微細セルロース繊維分散液を、セルロース繊維濃度0.13重量%に水で希釈し、孔径1μmのPTFEメンブレンフィルター(T100A090C アドバンテック社製)を用いた90mm径の減圧濾過器(KG−90 アドバンテック社製)に150g投入し、減圧条件下(−0.09MPa)でろ過を開始した(第1ろ過)。ろ過時間90分経過し、第1ろ過が終了したところで、2−プロパノールを30mL投入し、続けてろ過をした(第2ろ過)。ろ過時間30分が経過し、第2ろ過が終了したところで、PTFEメンブレンフィルター上にセルロース繊維ゲルを得た。
凍結乾燥保存状態の酢酸菌の菌株に培養液を加え、1週間静置培養した(25〜30℃)。培養液表面に生成したバクテリアセルロースのうち、厚さが比較的厚いものを選択し、その株の培養液を少量分取して新しい培養液に加えた。次に、この培養液を大型培養器に入れ、25〜30℃で7〜30日間の静地培養を行った。培養液には、グルコース2重量%、バクトイーストエクストラ0.5重量%、バクトペプトン0.5重量%、リン酸水素二ナトリウム0.27重量%、クエン酸0.115重量%、硫酸マグネシウム七水和物0.1重量%とし、塩酸によりpH5.0に調整した水溶液(SH培地)を用いた。このようにして算出させたバクテリアセルロースを培養液中から取り出し、2重量%のアルカリ水溶液で2時間煮沸し、その後、アルカリ処理液からバクテリアセルロースを取り出し、十分水洗し、アルカリ処理液を除去し、バクテリアセルロース中のバクテリアを溶解除去して、厚さ1cm、セルロース含有量1重量%、水含有量99重量%の含水バクテリアセルロース(平均繊維径60nm)を得た。
製造例2で得られたセルロース繊維ゲルを、ビス(メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン96重量部、ペンタエリスリトールテトラキス(β−チオプロピオネート)6重量部、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製ルシリンTPO)0.05重量部、およびベンゾフェノン0.05重量部を混合した溶液に浸漬させ、減圧下で1時間静置した。
静置後に得られた複合体を2枚のガラス板にはさみ、無電極水銀ランプ(フュージョンUVシステムズ社製「Dバルブ」)を用いて、放射照度1900mW/cm2の下を、ライン速度7m/minで通過させて光照射した。このときの放射照射量は0.8J/cm2であった。この操作をガラス面を反転して2回行った。紫外線照射後のガラス面の温度は25℃であった。次いで、放射照度1900mW/cm2の下をライン速度2m/minで照射した。このときの放射照射量は2.7J/cm2であった。この操作をガラス面を反転して8回行った。紫外線照射後のガラス面の温度は47℃であった。全放射照射量は23.2J/cm2であった。紫外線照射終了後、ガラス板よりはずし、セルロース繊維含有量14.5重量%、厚さ235μmのセルロース繊維複合材料を得た。得られたセルロース繊維複合材料を用いて、上述した各種測定を実施した。結果を表1にまとめて示す。
なお、紫外線の照度は、オーク製作所製紫外線照度計「UV−M02」で、アタッチメント「UV−35」を用いて、320〜390nmの紫外線の照度を23℃で測定した。
製造例3で得られたセルロース繊維ゲルを、エトキシ化グリセリントリアクリレート(新中村化学工業株式会社製A−Gly−20E)50重量部、アクリロイルモルホリン(株式会社興人社製ACMO)50重量部、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製ルシリンTPO)0.05重量部を混合した溶液に浸漬させ、減圧下で1時間静置した。
静置後に得られた複合体を2枚のガラス板にはさみ、無電極水銀ランプ(フュージョンUVシステムズ社製「Dバルブ」)を用いて、放射照度1900mW/cm2の下を、ライン速度7m/minで通過させて光照射した。このときの放射照射量は0.8J/cm2であった。この操作をガラス面を反転して2回行った。紫外線照射後のガラス面の温度は28℃であった。次いで、放射照度1900mW/cm2の下をライン速度2m/minで照射した。このときの放射照射量は2.7J/cm2であった。この操作をガラス面を反転して4回行った。紫外線照射後のガラス面の温度は43℃であった。全放射照射量は12.4J/cm2であった。紫外線照射終了後、ガラス板よりはずし、セルロース繊維含有量10.0重量%、厚さ420μmのセルロース繊維複合材料を得た。得られたセルロース繊維複合材料を用いて、上述した各種測定を実施した。結果を表1にまとめて示す。
製造例4で得られたセルロース繊維ゲルを、ビス(メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン96重量部、ペンタエリスリトールテトラキス(β−チオプロピオネート)6重量部、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製ルシリンTPO)0.05重量部、およびベンゾフェノン0.05重量部を混合した溶液に浸漬させ、減圧下で1時間静置した。
静置後に得られた複合体を、製造例1と同様の方法で複合化し、セルロース繊維含有量26.0重量%、厚さ135μmのセルロース繊維複合材料を得た。得られたセルロース繊維複合材料を用いて、上述した各種測定を実施した。結果を表1にまとめて示す。
製造例2で得られたセルロース繊維ゲルを、エトキシ化グリセリントリアクリレート(新中村化学工業株式会社製A−Gly−20E)50重量部、アクリロイルモルホリン(株式会社興人社製ACMO)50重量部、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製ルシリンTPO)0.05重量部を混合した溶液に浸漬させ、減圧下で1時間静置した。
静置後に得られた複合体を2枚のガラス板にはさみ、無電極水銀ランプ(フュージョンUVシステムズ社製「Dバルブ」)を用いて、放射照度1900mW/cm2の下を、ライン速度7m/minで通過させて光照射した。このときの放射照射量は0.8J/cm2であった。この操作を、ガラス面を反転して2回行った。紫外線照射後のガラス面の温度は29℃であった。次いで、放射照度1900mW/cm2の下をライン速度2m/minで照射した。このときの放射照射量は2.7J/cm2であった。この操作を、ガラス面を反転して4回行った。紫外線照射後のガラス面の温度は43℃であった。全放射照射量は12.4J/cm2であった。紫外線照射終了後、ガラス板よりはずし、セルロース繊維含有量重量9.5重量%、厚さ355μmのセルロース繊維複合材料を得た。得られたセルロース繊維複合材料を用いて、上述した各種測定を実施した。結果を表1にまとめて示す。
製造例2で得られたセルロース繊維ゲルを、120℃に加熱したプレス機にて0.15MPaの圧力で5分間プレス乾燥して、厚さ57μmのセルロース不織布を作製した。なお、得られたセロルース不織布中に分散媒は含まれていなかった。
得られた不織布を、ビス(メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン96重量部、ペンタエリスリトールテトラキス(β−チオプロピオネート)6重量部、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製ルシリンTPO)0.05重量部、およびベンゾフェノン0.05重量部を混合した溶液に浸漬させ、減圧下で一晩静置した。
静置後に得られた複合体を、ガラス板の四隅に200μm厚のシリコンスペーサーフィルムを置いてはさみ、実施例1と同様の方法で紫外線照射した後、ガラス板よりはずし、セルロース繊維含有量17.4重量%、厚さ224μmのセルロース繊維複合材料を得た。得られたセルロース繊維複合材料を用いて、上述した各種測定を実施した。結果を表1にまとめて示す。
製造例3で得られたセルロース繊維ゲルを、120℃に加熱したプレス機にて0.15MPaの圧力で5分間プレス乾燥して、厚さ62μmのセルロース不織布を作製した。なお、得られたセロルース不織布中に分散媒は含まれていなかった。
得られた不織布を、ビス(メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン96重量部、ペンタエリスリトールテトラキス(β−チオプロピオネート)6重量部、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製ルシリンTPO)0.05重量部、およびベンゾフェノン0.05重量部を混合した溶液に浸漬させ、減圧下で一晩静置した。
静置後に得られた複合体を2枚のガラス板にはさみ、実施例1と同様の方法で紫外線照射した。照射後、ガラス板よりはずし、セルロース繊維含有量46.0重量%、厚さ75μmのセルロース繊維複合材料を得た。得られたセルロース繊維複合材料を用いて、上述した各種測定を実施した。結果を表1にまとめて示す。
製造例5で得られた含水バクテリアセルロースを120℃に加熱したプレス機にて0.15MPaの圧力で5分間プレス乾燥して、厚さ50μmのバクテリアセルロース不織布を作製した。なお、得られたバクテリアセロルース不織布中に分散媒は含まれていなかった。
得られた不織布を比較例2と同様の方法で複合化し、セルロース繊維含有量40.6重量%、厚さ113μmのセルロース繊維複合材料を得た。得られたセルロース繊維複合材料を用いて、上述した各種測定を実施した。結果を表1にまとめて示す。
一方、比較例1〜3においては、位相差が大きく、かつ表面も粗いセルロース複合材料が得られた。繊維構造について観察したところ、いずれにおいてもセルロース繊維が層状に重なりあった構造(ミルフィーユ構造)が形成されていることが確認された(図3(a)および(b)参照)。このようなセルロース繊維の配置に伴い、光学的異方性が大きくなり、表面平滑性も損なわれたものと推測される。このように、所定の分散媒含有量を有するセルロース繊維ゲルを加圧または乾燥させることなく使用することにより、所望のセルロース繊維複合材料が得られることが分かった。
2 陽極
3 有機発光層
3a 正孔注入層
3b 正孔輸送層
3c 電子輸送層
4 陰極
Claims (14)
- 平均繊維径30nm以下のセルロース繊維とマトリックス材料とから構成され、前記セルロース繊維が3次元網目状構造を形成しているセルロース繊維複合材料であって、
厚み200μmのフィルムでの波長589nmにおける面内の位相差が6nm以下であり、
JIS B0601−1982に準じて測定した表面粗さの最大高さ(Rmax)が150μm以下であり、
厚み10μm〜500μmのフィルムまたはシートでのJIS K7136−2000に準じて測定したヘーズが5%以下であることを特徴とするセルロース繊維複合材料。 - 前記マトリックス材料が、高分子材料である請求項1に記載のセルロース繊維複合材料。
- 分散媒中に平均繊維径30nm以下のセルロース繊維が分散した分散液を製造する工程と、
前記分散液中の前記分散媒の一部を除去して、前記セルロース繊維と前記分散媒とを主成分とする、前記分散媒の含有量が全重量に対して10〜99重量%である湿潤状態のセルロース繊維ゲルを製造する工程と、
前記セルロース繊維ゲルを、加圧または乾燥することなく湿潤状態のままで、マトリックス材料と接触させ、ゲル内に含有される前記分散媒と前記マトリックス材料とを置換する工程とを備える、セルロース繊維とマトリックス材料とから構成されるセルロース繊維複合材料の製造方法。 - 前記分散液が、セルロースが分散した原料分散液に解繊処理を施し得られる分散液である、請求項3に記載のセルロース繊維複合材料の製造方法。
- 前記解繊処理が、周波数15kHz以上1MHz以下で、実効出力密度1W/cm2以上の超音波を照射する超音波処理である、請求項4に記載のセルロース繊維複合材料の製造方法。
- 前記分散液中の前記分散媒の一部の除去を、濾過、または、塗布後に分散媒を蒸発させることにより行う、請求項3〜5のいずれかに記載のセルロース繊維複合材料の製造方法。
- 前記マトリックス材料が、高分子材料またはその前駆体である、請求項3〜6のいずれかに記載のセルロース繊維複合材料の製造方法。
- 前記セルロース繊維とマトリックス材料とから構成されるセルロース繊維複合材料が請求項1または2に記載のセルロース繊維複合材料である、請求項3〜7のいずれかに記載のセルロース繊維複合材料の製造方法。
- 請求項1または2に記載のセルロース繊維複合材料を用いて得られるディスプレイ用基板。
- 請求項1または2に記載のセルロース繊維複合材料を用いて得られる太陽電池用基板。
- 請求項1または2に記載のセルロース繊維複合材料を用いて得られる照明用基板。
- 請求項1または2に記載のセルロース繊維複合材料を用いて得られるタッチパネル用基板。
- 請求項1または2に記載のセルロース繊維複合材料を用いて得られる窓材。
- 請求項1または2に記載のセルロース繊維複合材料を用いて得られる構造材。
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JP2010150541A (ja) | 2010-07-08 |
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