JP2012222005A - 発光装置、繊維複合体、及び繊維複合体の製造方法 - Google Patents

発光装置、繊維複合体、及び繊維複合体の製造方法 Download PDF

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Fumiko Yoyasu
史子 與安
Toshiaki Yokoo
敏明 横尾
Akira Watanabe
渡邉  朗
Hideko Akai
日出子 赤井
Hiroya Kodama
弘也 樹神
Kakunari Katsumoto
覚成 勝本
Katsuo Hirose
勝夫 廣瀬
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Abstract

【課題】外形の変化及び発光特性の変化を防止するとともに色ムラのない光を放射することができる発光装置、及び蛍光体粒子をばらつきなく且つ確固に担持する繊維複合体、及び繊維複合体の製造方法を提供すること。
【解決手段】発光素子と、複数の蛍光体粒子からなる蛍光体材料及びI型結晶性セルロースからなる繊維を少なくとも含むセルロース系繊維材料を含有し、前記発光素子を覆うように形成される繊維複合膜と、を有すること。
【選択図】図1

Description

本発明は、光源から放射される光を波長変換して所望の光を外部に放出する発光装置、光源から放射される光を波長変換する蛍光体粒子及び当該蛍光体粒子を担持する繊維からなる繊維複合体、及び当該繊維複合体の製造方法に関する。
発光装置の光源として白熱電球や蛍光灯が従来から用いられている。近年では、これらに加え、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)や有機EL(OLED:Organic Light Emitting Diode)等の半導体発光素子を光源とした発光装置が開発され使用されつつある。これらの半導体発光素子では、様々な発光色を得ることが可能であるため、発光色の異なる複数の半導体発光素子を組み合わせ、それぞれの発光色を合成して所望の色の放射光を得るようにした発光装置も開発され使用され始めている。
例えば、発光色が赤色のLEDチップを用いた赤色LEDと、発光色が緑色のLEDチップを用いた緑色LEDと、発光色が青色のLEDチップを用いた青色LEDとを組み合わせ、各LEDに供給する駆動電流を調整して各LEDから発せられた光を合成することにより、所望の白色光を放射させるようにした発光装置が特許文献1に開示されている。
元来、LEDチップ自体の発光スペクトル幅は比較的狭いため、LEDチップ自体が発する光をそのまま照明に用いた場合、一般的な照明光において重要となる演色性が低下するという問題があった。そこで、このような問題を解消すべく、LEDチップが発する光を受光すると励起し、励起状態から基底状態へ遷移する際に受光した光とは異なる波長の光を放射する複数の蛍光体粒子から構成される蛍光体材料によってLEDを被覆する技術が研究されている。このような技術を用いた発光装置は、例えば特許文献2に開示されている。
特許文献2の発光装置においては、黄色蛍光体を分散させた透明樹脂を青色LEDチップに被覆することにより、青色LEDチップから放射される青色光を黄色光に波長変換することができる。また、特許文献2の発光装置には、黄色蛍光体に代えて、青色LEDチップが放射した青色光で励起された緑色光を放射する緑色蛍光体、又は青色LEDチップが放射した青色光で励起された赤色光を放射する赤色蛍光体を透明樹脂に分散させ、所望の色の光を放射することができるLEDが用いられている。
また、上述したような蛍光体材料によってLEDから放射される光を所望の光に波長変換する場合には、多数の蛍光体粒子を担持した蛍光物質担持体によってLEDを被覆する必要がある。このようなことに鑑みて、例えば特許文献3においては、従来よりも多くの蛍光体粒子を担持するために、多数の繊維が絡み合って形成された不織布に蛍光体粒子を担持させることによって蛍光物質担持体を形成している。
特開2006−4839号公報 特開2007−122950号公報 特開2005−105423号公報
一般に、蛍光物質担持体によって被覆されたLEDは、金属又はセラミック等の線膨張係数の小さい材料を用いてパッケージ化がなされる。しかしながら、特許文献3に開示されているような繊維を用いた蛍光物質担持体を用いる場合、上述した金属又はセラミックと蛍光物質担持体との線膨張係数の差が大きいため、LEDの発光に伴う発熱によって蛍光物質担持体が反り返り、パッケージ化された発光装置の外形が変形する問題、及び発光特性が変化する問題が生じてしまう。
また、赤色蛍光体、緑色蛍光体及び黄色蛍光体の粒子の粒径は異なっており、各蛍光体粒子の粒径にもばらつきが存在する。このため、繊維によって蛍光体粒子を担持させた場合、繊維によって形成される細孔から抜け落ちやすい蛍光体粒子と抜け落ちにくい蛍光体粒子とが存在してしまい、蛍光物質担持体内において特定の蛍光体粒子が凝集するようなムラが生じる。このようなムラが発生すると、発光装置から放射される光に色ムラが生じるといった問題に繋がる。更に、細孔から抜け落ちやすい蛍光体粒子と抜け落ちにくい蛍光体粒子とが存在することにより、複数種類の蛍光体粒子を混合する際の混合比の調整が困難になる。
本発明は、上述した課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、外形の変化及び発光特性の変化を防止するとともに色ムラのない光を放射することができる発光装置、すなわち優れた信頼性を有する発光装置を提供することにある。
また、本発明は、上述した発光装置を提供するにあたり、蛍光体粒子の種類に関係なく、蛍光体粒子をばらつきなく且つ確固に担持する繊維複合体、及び当該繊維複合体の製造方法を提供することにある。
上記の目的を達成するべく、本発明の発光装置は、発光素子と、複数の蛍光体粒子からなる蛍光体材料及びI型結晶性セルロースからなる繊維を少なくとも含むセルロース系繊維材料を含有し、前記発光素子を覆うように形成される繊維複合膜と、を有することを特徴とする。
上述した発光装置において、前記I型結晶性セルロースからなる繊維によって形成される細孔の平均寸法は、前記蛍光体粒子の平均粒径よりも小なることが好ましい。
上述した発光装置において、前記繊維複合膜は、前記発光素子から空隙を介して離間して設けられてもよい。
上述した発光装置は、I型結晶性セルロースからなる繊維及び透光性の樹脂を含有する繊維樹脂複合体が、前記繊維複合膜上に形成された構造を有してもよい。
また、上記の目的を達成するべく、本発明の発光装置は、発光素子と、前記発光素子を覆う透光性の封止材と、複数の蛍光体粒子からなる蛍光体材料及びI型結晶性セルロースからなる繊維を少なくとも含むセルロース系繊維材料を含有し、前記封止材上に形成された繊維複合膜と、を有することを特徴とする。
上述した発光装置において、前記I型結晶性セルロースからなる繊維によって形成される細孔の平均寸法は、前記蛍光体粒子の平均粒径よりも小なることが好ましく、前記蛍光体粒子が前記I型結晶性セルロースからなる繊維によって担持されてもよい。
また、上記の目的を達成するべく、本発明の発光装置は、発光素子と、I型結晶性セルロースからなる第1の繊維及び透光性の樹脂を含有し、前記発光素子を覆うように形成された繊維樹脂複合体と、複数の蛍光体粒子からなる蛍光体材料及びI型結晶性セルロースからなる第2の繊維を少なくとも含むセルロース系繊維材料を含有し、前記繊維樹脂複合体上に形成された繊維複合膜と、を有することを特徴とする。
上述した発光装置において、前記第2の繊維によって形成される細孔の平均寸法は、前記蛍光体粒子の平均粒径よりも小なることが好ましく、前記蛍光体粒子が前記第2の繊維によって担持されてもよい。
前記繊維複合膜において、前記発光素子から離間するにつれて前記蛍光体粒子の含有密度が低くなってもよい。
上述した発光装置において、前記繊維複合膜は、透光性を有する樹脂を更に含有していてもよい。
上記の目的を達成するべく、本発明の繊維複合体は、複数の蛍光体粒子からなる蛍光体材料と、I型結晶性セルロースからなる繊維を少なくとも含むセルロース系繊維材料と、を含有することを特徴とする。
上述した繊維複合体において、前記I型結晶性セルロースからなる繊維によって形成される細孔の平均寸法は、前記蛍光体粒子の平均粒径よりも小なることが好ましい。
前記蛍光体粒子の平均粒径は1μm〜50μmであってもよく、前記細孔の平均寸法は10nm〜30μmであってもよい。更に、前記細孔の平均寸法は前記蛍光体粒子の平均粒径の1/10以下であってもよい。
上述した繊維複合体において、前記繊維複合体における前記セルロース系繊維材料の含有率は、10重量%以上であってもよい。
前記I型結晶性セルロースは、平均繊維径が100nm以下のナノファイバーセルロースであってもよい。
上述した繊維複合体は、透光性を備える樹脂を更に含有してもよい。
前記繊維複合体は膜形状を有し、前記複数の蛍光体粒子は、前記I型結晶性セルロースからなる繊維によって担持されてもよい。
上述した繊維複合体において、前記複数の蛍光体粒子は、膜厚方向と直交する平面内において前記前記セルロース系繊維材料内に均一に分散していてもよい。
上述した繊維複合体において、前記複数の蛍光体粒子の粒径は、膜厚方向において異っていてもよい。
上述した繊維複合体は、分散性を有していてもよい。
また、上記の目的を達成するべく、本発明の繊維複合体の製造方法は、複数の蛍光体粒子からなる蛍光体材料と、I型結晶性セルロースからなる繊維を少なくとも含む液状のセルロース系繊維材料と、を混合する工程を有することを特徴とする。
上述した製造方法において、前記I型結晶性セルロースは、平均繊維径が100nm以下のナノファイバーセルロースであってもよい。
上述した製造方法において、前記繊維複合体における前記セルロース系繊維材料の含有率は、10重量%以上であってもよい。
上述した製造方法において、前記蛍光体材料、前記液状のセルロース系繊維材料、及び溶媒からなる混合液に吸引又は圧搾によって前記溶媒を除去し、前記溶媒が除去された前記混合液に乾燥処理を施して膜状化してもよい。
上述した製造方法において、前記混合液から前記溶媒を除去した後に、透光性を備える樹脂を更に注入又は含浸していてもよい。
上述した製造方法において、前記蛍光体材料は、互いに異なる粒径を備える蛍光体粒子を含んでいてもよい。
本発明の発光装置は、複数の蛍光体粒子からなる蛍光体材料及びI型結晶性セルロースからなる繊維を少なくとも含むセルロース系繊維材料を含有し、発光素子を覆うように形成される繊維複合膜を有することを特徴としている。そして、本発明の発光装置における繊維複合膜においては、I型結晶性セルロースからなる繊維を少なくとも含むセルロース系繊維材料によって蛍光体材料を構成蛍光体粒子が担持されることになる。このように蛍光体粒子を担持すると、セルロース系繊維材料が強固に蛍光体粒子を担持することとなり、蛍光体粒子がセルロース系繊維材料から抜け落ちることがなくなる。また、蛍光体粒子が凝集することもなくなり、繊維複合膜中における蛍光体粒子の分散ばらつき(むら)がなくなり、発光装置から放射される光の色むらが低減される。
更に、蛍光体粒子がセルロース系繊維材料から抜け落ちることがなくなることで、複数種類の蛍光体粒子を混合する際の混合比の調整も容易に行うことが可能になる。
そして、繊維複合膜を構成するI型結晶性セルロースからなる繊維は、他の繊維と比較して小さい線膨張係数を有するため、発光素子を金属又はセラミック等とともにパッケージ化しても、当該金属又はセラミックとの線膨張係数の差が低減され、繊維複合膜の反り返り、及びパッケージ化された発光装置の外形の変形を防止することができる。
以上のことから、本発明の発光装置は、外形の変化及び発光特性の変化を防止するとともに色ムラのない光を放射することができ、優れた信頼性を有することが可能になる。
本発明の繊維複合体は、複数の蛍光体粒子からなる蛍光体材料及びI型結晶性セルロースからなる繊維を少なくとも含むセルロース系繊維材料を含有することを特徴としている。従って、本発明の繊維複合体においても、I型結晶性セルロースからなる繊維を少なくとも含むセルロース系繊維材料によって蛍光体材料を構成蛍光体粒子が担持されることになる。このように蛍光体粒子を担持すると、セルロース系繊維材料が強固に蛍光体粒子を担持することとなり、蛍光体粒子がセルロース系繊維材料から抜け落ちることがなくなる。また、蛍光体粒子が凝集することもなくなり、繊維複合体中における蛍光体粒子の分散ばらつき(むら)がなくなる。
更に、蛍光体粒子がセルロース系繊維材料から抜け落ちることがなくなることで、複数種類の蛍光体粒子を混合する際の混合比の調整も容易に行うことが可能になる。
本発明の繊維複合体の製造方法は、複数の蛍光体粒子からなる蛍光体材料と、I型結晶性セルロースからなる繊維を少なくとも含む液状のセルロース系繊維材料と、を混合する工程を有することを特徴としている。従って、本発明の製造方法によって製造される繊維複合体においても、I型結晶性セルロースからなる繊維を少なくとも含むセルロース系繊維材料によって蛍光体材料を構成蛍光体粒子が担持されることになる。このように蛍光体粒子を担持すると、セルロース系繊維材料が強固に蛍光体粒子を担持することとなり、蛍光体粒子がセルロース系繊維材料から抜け落ちることがなくなる。また、蛍光体粒子が凝集することもなくなり、繊維複合体中における蛍光体粒子の分散ばらつき(むら)がなくなる。
本発明の第1実施例に係る発光装置の要部拡大断面図である。 本発明の第1実施例に係る発光装置の繊維複合膜の拡大断面図である。 本発明の第1実施例に係る発光装置の繊維複合膜の拡大断面図である。 本発明の第1実施例の変形例に係る発光装置の要部拡大断面図である。 本発明の第2実施例に係る発光装置の要部拡大断面図である。 本発明の第3実施例に係る発光装置の要部拡大断面図である。 本発明の第3実施例の変形例に係る発光装置の要部拡大断面図である。 本発明に係る発光装置から放射される光を測定する際の測定箇所を示している。 本発明に係る発光装置から放射される光を測定する際の測定箇所を示している。 本発明に係る発光装置から放射される光を測定する際の測定箇所を示している。 本発明に係る発光装置と比較用の発光装置との比較結果を示している。 本発明に係る発光装置と比較用の発光装置との比較結果を示している。
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について、いくつかの実施例に基づき詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する内容に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において任意に変更して実施することが可能である。また、各実施例の説明に用いる図面は、いずれも本発明による発光装置を模式的に示すものであって、理解を深めるべく部分的な強調、拡大、縮小、または省略などを行っており、各構成部材の縮尺や形状等を正確に表すものとはなっていない場合がある。更に、各実施例で用いる様々な数値は、いずれも一例を示すものであり、必要に応じて様々に変更することが可能である。
<第1実施例>
図1は、本発明の第1実施例に係る発光装置1の要部拡大断面図である。図1に示すように、本実施例において発光装置1は、配線基板2、半導体発光素子である複数のLED(Light Emitting Diode)チップ3、繊維複合膜(繊維複合体)4、及び封止材5から構成されている。なお、図1においては、1つのLEDチップ3のみを記載しているが、実際に複数のLEDチップ3は、一列に並置又はマトリックス状に配置されている。また、発光装置1は封止材5を必ず備えている必要はなく、例えば、LEDチップ3の十分な保護及びLEDチップ3からの光の取り出し効率の向上を図ることができれば、発光装置1は封止材5を備えていなくてもよい。
(配線基板)
本実施例において、配線基板2は、電気絶縁性に優れて良好な放熱性を有するアルミナ形セラミックから構成されている。配線基板2には、銅などの金属からなる配線パターン2aが形成されており、配線パターン2a上にLEDチップ3が搭載されている。なお、配線パターン2aは、外部接続端子(図示せず)に接続されている。
なお、配線基板2の材質はアルミナ系セラミックに限定されるものではなく、例えば、電気絶縁性に優れた材料として、樹脂、ガラスエポキシ、樹脂中にフィラーを含有した複合樹脂などから選択された材料を用いて配線基板2を形成してもよい。一方、より優れた放熱性を得るため、金属製の基板によって配線基板2を形成するようにしてもよい。この場合には、配線基板2と配線パターン2aとを電気的に絶縁する必要がある。
また、配線基板2の周囲に、リフレクタを設けてもよい。これにより、封止材5が配線基板2上から流出することがなくなり、更には発光装置1の発光効率等を向上させることができる。
(LEDチップ)
本実施例においてLEDチップ3には、460nmのピーク波長を有した青色光を発するLEDチップを用いる。具体的には、このようなLEDチップとして、例えばInGaN半導体が発光層に用いられるGaN系LEDチップがある。なお、LEDチップ3の種類や発光波長特性はこれに限定されるものではなく、本発明の要旨から逸脱しない限りにおいて、様々なLEDチップなどの半導体発光素子を用いることができる。
LEDチップ3の配線基板2側に向く面には、p電極及びn電極(いずれも図示せず)が設けられている。LEDチップ3のp電極及びn電極が配線基板2に形成された配線パターン2aに電気的に接続されている。また、p電極及びn電極の配線パターン2aへの接続は、図示しない金属バンプを介し、ハンダ付けによって行っている。以上のような構成により、LEDチップ3には、外部接続端子、配線パターン2a、p電極及びn電極を介して駆動電流が供給されることになる。
なお、LEDチップ3の配線基板2への実装方法は、上述したハンダ付けに限定されるものではなく、LEDチップ3の種類や構造などに応じて適切な方法を選択可能である。例えば、LEDチップ3を配線基板2の所定位置に接着固定した後、LEDチップ3の2つの電極をワイヤボンディングで対応する配線パターンに接続してもよいし、一方の電極を上述のように対応する配線パターンに接合すると共に、他方の電極をワイヤボンディングで対応する配線パターンに接続するようにしてもよい。
(繊維複合膜、繊維複合体)
本実施例に係る繊維複合膜4の拡大模式図を図2に示す。図2に示すように、繊維複合膜4は、複数の蛍光体粒子6からなる蛍光体材料7と、セルロースI型結晶構造を有する繊維(以下、I型結晶性セルロースからなる繊維とも称する)からなるセルロース系繊維材料8から構成されている。以下に、蛍光体材料7及びセルロース繊維材料8を詳細に説明する。
〔膜厚〕
繊維複合膜4の厚さは特に限定されないが、好ましくは1μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。また、繊維複合膜4の厚さは、一般的に2000μm以下、好ましくは200μm以下であることが好ましい。
〔蛍光体材料〕
本実施例の蛍光体材料7は、LEDチップ3が発した青色光を波長変換して赤色光を放射する赤色蛍光体粒子、LEDチップ3が発した青色光を波長変換して緑色光を放射する緑色蛍光体粒子、及びLEDチップ3が発した青色光を波長変換して黄色光を放射する黄色蛍光体粒子から構成されている。このように、互いに異なる色の光を放射する蛍光体粒子から蛍光体材料7が構成されることにより、LEDチップ3から放射される青色光を利用して蛍光体材料7から複数の色の光を放射させることができ、更には観測者に対して発光装置1から白色光が放射されているように感じさせることができる。
ここで、上述した各蛍光体粒子の具体例について以下に説明する。なお、これら蛍光体粒子は、本実施例において好適な蛍光体粒子を例示するものであるが、適用可能な蛍光体粒子はこれに限定されるものではなく、本発明の要旨から逸脱しない限りにおいて、様々な種類の蛍光体粒子を適用することが可能である。
「赤色蛍光体粒子」
赤色蛍光体粒子の発光ピーク波長は、一般に570nm以上、好ましくは580nm以上、より好ましくは585nm以上で、一般に780nm以下、好ましくは700nm以下、より好ましくは680nm以下の波長範囲にあるものが好適である。中でも、赤色蛍光体粒子として例えば、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O):Eu、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Ca,Sr)S:Eu、SrAlSi:Eu、(La,Y)S:Eu、Eu(ジベンゾイルメタン)・1,10−フェナントロリン錯体などのβ−ジケトン系Eu錯体、カルボン酸系Eu錯体、KSiF:Mnが好ましく、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Sr,Ca)AlSi(N,O):Eu、SrAlSi:Eu、(La,Y)S:Eu、KSiF:Mn(但し、Siの一部がAlやNaで置換されていてもよい)がより好ましい。
「緑色蛍光体粒子」
緑色蛍光体粒子の発光ピーク波長は、一般に500nm以上、好ましくは510nm以上、より好ましくは515nm以上で、一般に550nm未満、好ましくは542nm以下、より好ましくは535nm以下の波長範囲にあるものが好適である。中でも、緑色蛍光体粒子として例えば、Y(Al,Ga)12:Ce、CaSc:Ce、Ca(Sc,Mg)Si12:Ce、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Si,Al)(O,N):Eu(β−サイアロン)、(Ba,Sr)Si12:N:Eu、SrGa:Eu、BaMgAl1017:Eu,Mnが好ましい。
「黄色蛍光体粒子」
黄色蛍光体粒子の発光ピーク波長は、一般に530nm以上、好ましくは540nm以上、より好ましくは550nm以上で、一般に620nm以下、好ましくは600nm以下、より好ましくは580nm以下の波長範囲にあるものが好適である。中でも、黄色蛍光体粒子として例えば、YAl12:Ce、(Y,Gd)Al12:Ce、(Sr,Ca,Ba,Mg)SiO:Eu、(Ca,Sr)Si:Eu、α−サイアロン、LaSi11:Ce(但し、その一部がCaやOで置換されていてもよい)が好ましい。
蛍光体材料7は、上述した構成に限定されることはなく、発光装置1から放射させる照射光の特性(色温度、全光束)に応じて適宜変更することができる。例えば、赤色蛍光体粒子に代えて、橙色蛍光体粒子を用いてもよい。
「橙色蛍光体粒子」
橙色蛍光体粒子の発光ピーク波長は、一般に発光ピーク波長が580nm以上、好ましくは590nm以上で、620nm以下、好ましくは610nm以下の範囲にあるものが好適である。このような橙色蛍光体粒子としては、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O):Ceなどがある。
また、上述した実施例において、LEDチップ3は青色光を発し、蛍光体材料7は3種類の赤色蛍光体粒子、緑色蛍光体粒子及び黄色蛍光体粒子から構成されていたが、青色光を発するLEDチップに代えて近紫外光を発するLEDチップを用いてもよい。このような場合には、近紫外光を青色光に波長変換する青い色蛍光体粒子を用いることができる。青色蛍光体粒子の具体的は以下の通りである。
「青色蛍光体粒子」
青色蛍光体の発光ピーク波長は、一般に420nm以上、好ましくは430nm以上、より好ましくは440nm以上で、一般に500nm未満、好ましくは490nm以下、より好ましくは480nm以下、更に好ましくは470nm以下、特に好ましくは460nm以下の波長範囲にあるものが好適である。具体的な青色蛍光体粒子として例えば、(Ca,Sr,Ba)MgAl1017:Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO(Cl,F):Eu、(Ba,Ca,Mg,Sr)SiO:Eu、(Ba,Ca,Sr)MgSi:Euが好ましく、(Ba,Sr)MgAl1017:Eu、(Ca,Sr,Ba)10(PO(Cl,F):Eu、BaMgSi:Euがより好ましく、Sr10(POCl:Eu、BaMgAl1017:Euが特に好ましい。
なお、近紫外光を発するLEDチップを用いる場合には、赤色蛍光体粒子、緑色蛍光体粒子、及び黄色蛍光体粒子の割合調整は、青光を発するLEDチップを用いる場合の調整とは異なる。
更に、上述した実施例において、蛍光体材料7は3種類の赤色蛍光体粒子、緑色蛍光体粒子及び黄色蛍光体粒子から構成されていたが、上述した種々の蛍光体粒子のいずれか1つ以上から構成されていてもよい。例えば、蛍光体材料7は、2種類の赤色蛍光体粒子及び緑色蛍光体粒子から構成されてもよい。また、蛍光体材料7は、黄色蛍光体のみから構成されてもよい。このような場合にも、黄色蛍光体で波長変換されなかった青色光と、黄色蛍光体によって波長変換されて放射される黄色光とが合成され、発光装置1から合成白色光が放射される。
そして、発光装置1は並置された複数の繊維複合体4を有してもよい。このような場合に、各繊維複合体膜4が互いに異なる蛍光体粒子6から構成される蛍光体材料7を含むように形成されていると、各繊維複合膜4から放射される光が合成され、合成光として白色光が発光装置1から放射されることになる。
「平均粒径」
本実施例において、蛍光体粒子6の平均粒径は、光学特性を発現するために、1μm以上であることが好ましく、さらには5μm以上であることが好ましい。また、50μm以下であることが好ましい。
レーザー回折・散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置により、蛍光体粒子6の平均粒径を測定することができる。ここでいう蛍光体粒子6の平均粒径とは体積基準のメディアン径のことをいう。ここで、メディアン径とは、レーザー回折・散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置を用いて、試料を測定し、粒度分布(累積分布)を求めたときの体積基準の相対粒子量が50%になる粒子径のことをいう。
〔セルロース系繊維材料〕
上述したように、本実施例のセルロース系繊維材料8は、セルロースI型結晶構造を有する繊維から構成されている。ここで、セルロースI型結晶構造とは、例えば、朝倉書店発行の「セルロースの事典」新装版第一刷81頁〜86頁、又は93頁〜99頁に記載の通りのものであり、一般に知られている天然セルロースはセルロースI型結晶構造を有する。これに対して、セルロースI型結晶構造ではなく、例えばセルロースII、III、IV型構造のセルロースからなる繊維はセルロースI型結晶構造を有するセルロースから誘導されるものである。
一般に、セルロース繊維がI型結晶構造であることは、その広角X線回折像測定により得られる回折プロファイルにおいて、2θ=14〜17°付近と、2θ=22〜23°付近の二つの位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。
「繊維径」
セルロース系繊維材料8の数平均繊維径は、特に限定されないが、蛍光体粒子6を良好に担持して繊維複合膜4を形成するには、100nm以下であることが好ましく、80nm以下であることがさらに好ましく、50nm以下であることが特に好ましい。また、数平均繊維径は、小さい程好ましいが、I型結晶性セルロースを維持するためには、実質的にはセルロース結晶単位の繊維径である4nm以上である。なお、SEMやTEM等で観察することにより、セルロース系繊維材料8の繊維径を計測して求めることができる。
「平均細孔」
本実施例の繊維複合膜4おいて、セルロース系繊維材料8によって形成される平均細孔は、10nm以上であることが好ましく、さらには50nm以上であることが好ましい。特に、100nm以上であることが好ましい。また、50μm以下であることが好ましく、さらには30μm以下であることが好ましい。このような平均細孔を有するセルロース系繊維材料8により、繊維複合膜4において蛍光体材料7が強固に担持されることになる。なお、セルロース系繊維材料8によって形成される平均細孔は、繊維複合体の表面を、SEMやTEM等で観察することにより計測して求めることができる。
本実施例に係る繊維複合膜4を構成するセルロース系繊維材料8は、セルロース含有物から一般的な精製工程によって不純物を除去することによってセルロース繊維原料を精製し、当該セルロース繊維原料を解繊する工程を経ることによって得ることができる。以下に、セルロース系繊維材料8の原料となるセルロース含有物及びセルロース繊維原料について具体例及びその製造方法を説明する。
「セルロース含有物」
セルロース含有物としては、針葉樹や広葉樹等の木質、コットンリンターやコットンリント等のコットン、さとうきびや砂糖大根等の絞りかす、亜麻、ラミー、ジュート、ケナフ等の靭皮繊維、サイザル、パイナップル等の葉脈繊維、アバカ、バナナ等の葉柄繊維、ココナツヤシ等の果実繊維、竹等の茎幹繊維、バクテリアが産生するバクテリアセルロース、バロニアやシオグサ等の海草やホヤの被嚢等が挙げられる。これらの天然セルロースは、他のセルロースよりも高い結晶性を備えるため、他のセルロースよりも低い線膨張率及び高い弾性率を得ることができ、本実施例のセルロース系繊維材料8の原料に適している。
バクテリアセルロースは、微細な繊維径のものが得やすい点で好ましい。また、コットンも微細な繊維径なものが得やすい点で好ましく、そして原料が得やすい点においても好ましい。更に、針葉樹や広葉樹等の木質からも微細な繊維径のものが得られ、針葉樹や広葉樹等の木質は地球上で最大量の生物資源であり、年間約700億トン以上ともいわれる量が生産されている持続型資源であることから、地球温暖化に影響する二酸化炭素削減への寄与も大きく、経済的な点から優位性をもたらすことが可能になる。このようなセルロース含有物を一般的な精製を経ることにより、セルロースI型結晶構造を有するセルロース系繊維材料8の原料となるセルロース繊維原料を得ることができる。
「セルロース含有物の精製方法」
本実施例においては、上述したセルロース含有物に精製処理を施して(精製工程)、原料中のセルロース以外の物質、例えば、リグニンやヘミセルロース、樹脂(ヤニ)などを除去する。
例えば、上述したセルロース含有物をベンゼン−エタノール又は炭酸ナトリウム水溶液によって脱脂した後、亜塩素酸塩で脱リグニン処理を行い(例えば、ワイズ法)、その後にアルカリ性を有する物質によって脱ヘミセルロース処理を施すことにより、セルロースI型結晶構造を有するセルロース系繊維材料8の原料となるセルロース繊維原料を得ることができる。また、ワイズ法の他に、過酢酸を用いる方法(pa法)、又は過酢酸過硫酸混合物を用いる方法(pxa法)なども精製方法として用いることができる。また、上述した脱ヘミセルロース処理の後に、酵素処理や更に漂白処理を行ってもよい。
上述した方法以外にも、一般的な化学パルプの製造方法、例えばクラフトパルプ、サリファイドパルプ、アルカリパルプ、硝酸パルプの製造方法により、セルロースI型結晶構造を有するセルロース系繊維材料8の原料となるセルロース繊維原料を得ることもできる。具体的には、一般的に、上述したセルロース含有物を蒸解釜で加熱処理し、脱リグニン等の処理を施し、その後に必要に応じて漂白処理等を施すことにより、セルロース繊維原料を得ることができる。
なお、セルロース含有物である原料を木材チップや木粉などの状態に破砕してもよく、かかる破砕工程は、精製処理前、精製処理の途中、又は精製処理後のいずれのタイミングで行ってもよい。
上述した精製処理に用いる分散媒としては、一般的に水が用いられるが、酸、塩基、又はその他の処理剤の水溶液であってもよく、これらの場合には、最終的に水で洗浄処理してもよい。
上述した精製処理に用いる酸、塩基、又はその他の処理剤は、特に限定されない。例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、硫化ナトリウム、硫化マグネシウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸マグネシウム、亜硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、酸化ナトリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酢酸、シュウ酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸ナトリウム、塩素酸ナトリウム、二酸化塩素、塩素、過塩素酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、過酸化水素、オゾン、ハイドロサルファイト、アントラキノン、ジヒドロジヒドロキシアントラセン、テトラヒドロアントラキノン、若しくはアントラヒドロキノン、又はエタノール、メタノール、2−プロパノールなどのアルコール類、更にはアセトンなどの水溶性有機溶媒などが挙げられる。これらの処理剤は、上述したもの中から1種のみを選択して単独で用いてもよく、2種以上選択して併用してもよい。
上述した漂白処理には、塩素、オゾン、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素、二酸化塩素などを用いることができる。
また、2種以上の処理剤を用いて、2以上の精製処理を行うこともできる。そして、その後に水による洗浄処理を施すことが好ましい。
精製処理時の温度、圧力は特に制限はなく、温度は0℃以上100℃以下の範囲で選択され、1気圧を超える加圧下での処理の場合、温度は100℃以上200℃以下とすることが好ましい。
「セルロース繊維原料」
上述した精製工程を経ることより、セルロースI型結晶構造を有するセルロース系繊維材料8の原料となるセルロース繊維原料を得ることができる。本実施例に係るセルロース繊維原料の繊維径は特に制限されるものではなく、数平均繊維径としては数μmから数mmである。なお、上述した精製工程を経て生成されたセルロース繊維原料の繊維径は、数mm程度である。チップ等の数cmサイズのセルロース繊維原料を精製した場合、例えば、リファイナー又はビーター等の離解機で機械的処理を行い、数mm程度の大きさにすることが好ましい。
「セルロース繊維原料の化学修飾処理」
セルロース繊維原料又は解繊後のセルロース繊維原料に対して、化学修飾処理を行ってもよい。ここで、化学修飾とは、セルロース中の水酸基が化学修飾剤と反応して化学修飾されているものである。
『修飾基の種類』
化学修飾によってセルロースに導入させる官能基としては、アセチル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロピオニル基、プロピオロイル基、ブチリル基、2−ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、フロイル基、シンナモイル基等のアシル基、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアノイル基等のイソシアネート基、メチル基、エチル基、プロピル基、2−プロピル基、ブチル基、2−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基等のアルキル基、オキシラン基、オキセタン基、チイラン基、チエタン基等が挙げられる。これらの中では特にアセチル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基等の炭素数2〜12のアシル基、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜12のアルキル基が好ましい。
『修飾方法』
修飾方法としては、特に限定されるものではないが、セルロース繊維原料又は解繊後のセルロース繊維原料と、以下に挙げるような化学修飾剤とを反応させる方法がある。この反応条件についても特に限定されるものではないが、必要に応じて溶媒、触媒等を用いることも可能であり、更には加熱、減圧等を行うこと可能である。
化学修飾剤の種類としては、酸、酸無水物、アルコール、ハロゲン化試薬、イソシアナート、アルコキシシラン、又はオキシラン(エポキシ)等の環状エーテルからなる群から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
酸としては、例えば酢酸、アクリル酸、メタクリル酸、プロパン酸、ブタン酸、2−ブタン酸、又はペンタン酸が挙げられる。
酸無水物としては、例えば無水酢酸、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、無水プロパン酸、無水ブタン酸、無水2-ブタン酸、又は無水ペンタン酸が挙げられる。
アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、又は2−プロパノールが挙げられる。
ハロゲン化試薬としては、例えばアセチルハライド、アクリロイルハライド、メタクロイルハライド、プロパノイルハライド、ブタノイルハライド、2−ブタノイルハライド、ペンタノイルハライド、ベンゾイルハライド、又はナフトイルハライドが挙げられる。
イソシアナートとしては、例えばメチルイソシアナート、エチルイソシアナート、又はプロピルイソシアナートが挙げられる。
アルコキシシランとしては、例えばメトキシシラン、又はエトキシシランが挙げられる。
オキシラン(エポキシ)等の環状エーテルとしては、例えばエチルオキシラン、又はエチルオキセタンが挙げられる。
上述した化学修飾剤の中においては、特に無水酢酸、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、ベンゾイルハライド、又はナフトイルハライドが好ましい。また、上述したような多数の化学修飾剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
『化学修飾率』
ここでいう化学修飾率とは、セルロース中の全水酸基のうちの化学修飾されたものの割合を示し、化学修飾率は下記の滴定法によって測定することができる。
乾燥セルロース0.05gを精秤し、これにエタノール1.5ml、蒸留水0.5mlを添加する。これを60〜70℃の湯浴中で30分静置した後、0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液2mlを添加する。これを60〜70℃の湯浴中で3時間静置した後、超音波洗浄器にて30分間超音波振とうする。これを、フェノールフタレインを指示薬として0.2Nの塩酸標準溶液で滴定する。
ここで、滴定に要した0.2Nの塩酸水溶液の量Z(ml)から、化学修飾により導入された置換基のモル数Qは、下記の数式(1)で求められる。
Q(mol)=0.5(N)×2(ml)/1000
−0.2(N)×Z(ml)/1000 ・・・(1)
数式(1)によって求まる置換基のモル数Qと、化学修飾率X(mol%)との関係は、以下の数式(2)で表される(セルロース=(C10=(162.14),繰り返し単位1個当たりの水酸基数=3,OHの分子量=17)。なお、以下において、Tは置換基の分子量である。
Figure 2012222005
上述した数式(2)を解くと、下記の数式(3)によって化学修飾率X(mol%)を定義することができる。
Figure 2012222005
本実施例のセルロース繊維原料の化学修飾率は、セルロース繊維原料の全水酸基に対して、通常65mol%以下、好ましくは50mol%以下、より好ましくは40mol%以下である。
上述した化学修飾を施すことにより、セルロース繊維原料の分解温度が上昇し、耐熱性が高くなる。しかしながら、化学修飾率が高すぎると、セルロース構造が破壊されて結晶性が低下するため、最終的に得られる繊維複合体の線膨張係数が大きくなってしまうという問題点があるため、化学修飾率を必要以上に高くしないことが好ましい。
「セルロース繊維原料の解繊処理」
本実施例においては、上述した工程を経て得られたセルロース繊維原料に対して解繊処理を行い、セルロースI型結晶構造を備えるとともに、細かな繊維径を有するナノファイバーセルロースであるセルロース系繊維材料8を生成する。以下に、セルロース繊維原料の解繊処理を説明する。
解繊処理の具体的な方法としては、特に制限はないが、例えば、直径1mm程度のセラミック製ビーズを、セルロース繊維原料濃度が0.1〜10重量%(例えば1重量%程度)のセルロース繊維原料の分散液(以下、セルロース繊維分散液とも称する)に入れ、ペイントシェーカーやビーズミル等の分散機を用いてセルロース繊維分散液に振動を与え、セルロース繊維を解繊する方法などが挙げられる。
ここで、セルロース繊維分散液の分散媒としては、水、有機溶媒、又は有機溶媒と水との混合液を使用することができる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコール-モノ-t-ブチルエーテル等のアルコール類、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、その他水溶性の有機溶媒の中から1種又は2種以上の有機溶媒を用いることができる。なお、上述した分散媒は、有機溶媒と水との混合液又は水であることが好ましく、特に水であることが好ましい。
ブレンダータイプの分散機や高速回転するスリットの間に、セルロース繊維分散液を通して剪断力を働かせて解繊する方法(高速回転式ホモジナイザー)や、高圧から急に減圧することによって、セルロース繊維間に剪断力を発生させて解繊する方法(高圧ホモジナイザー)、マスコマイザーXのような対向衝突型の分散機(増幸産業)等を用いる方法などが挙げられる。特に、高速回転式ホモジナイザー又は高圧ホモジナイザーによる処理は、解繊の効率が向上する。
これらの処理で解繊する場合、前述の一般的な精製工程を経たセルロース繊維原料としての固形分濃度が0.1重量%以上、好ましくは0.2重量%以上、特に0.3重量%以上、また10重量%以下、特に6重量%以下のセルロース繊維分散液に対して行うことが好ましい。この解繊処理に供するセルロース繊維分散液中の固形分濃度が低過ぎると処理するセルロース繊維量に対して液量が多量となるため効率が低下する。一方、固形分濃度が高過ぎると流動性が悪くなる。これらのことから、解繊処理に供するセルロース繊維分散液は適宜水を添加するなどして濃度調整することが好ましい。
『高速回転式ホモジナイザー』
高速回転式ホモジナイザーの場合、回転数を上げると剪断が掛かるようになり、解繊効率が上昇する。回転数としては、例えば10000rpm以上が好ましく、15000rpm以上が更に好ましく、20000rpm以上が特に好ましい。また、処理時間は1分以上が好ましく、5分以上が更に好ましく、10分以上が特に好ましい。剪断により発熱が生じる場合、液温が50℃を越えない程度に冷却することが好ましい。また、分散液に均一に剪断が掛かるように攪拌又は循環することが好ましい。
『高圧ホモジナイザー』
高圧ホモジナイザーを用いる場合、セルロース繊維分散液を増圧機で30MPa以上、好ましくは100MPa以上、より好ましくは150MPa以上、更に好ましくは220MPa以上に加圧し(かかる圧力条件を高圧条件と定義する)、細孔直径50μm以上のノズルから噴出させる。その後、上述した圧力との圧力差が30MPa以上、好ましくは80MPa以上、より好ましくは90MPa以上となるように減圧(かかる圧力条件を減圧条件と定義する)する。この圧力差で生じるへき開現象により、セルロース繊維原料を解繊する。ここで、高圧条件の圧力が低い場合や、高圧条件の圧力から減圧条件の圧力への圧力差が小さい場合、解繊効率が下がり、所望の繊維径とするための繰り返し噴出回数が多くなるため好ましくない。このため、高圧条件の圧力をできるだけ高く、更には高圧条件の圧力から減圧条件の圧力への圧力差をできるだけ大きくすることが好ましい。
なお、噴出時の高圧条件は高い程、圧力差により大きなへき開現象によって更なる微細化を図ることができるが、装置仕様の上限として、一般に245MPa以下である。同様に、高圧条件から減圧条件への圧力差も大きいことが好ましいが、一般的には、増圧機による加圧条件から大気圧下に噴出することになるため、圧力差の上限は一般に、245MPa以下である。
また、セルロース繊維分散液を噴出させる細孔の細孔直径が大き過ぎる場合にも、十分な解繊効果が得られず、噴出処理を繰り返し行っても、所望の繊維径のセルロース繊維が得られないおそれもある。このため、他の不具合を生じさせない範囲内において、セルロース繊維分散液を噴出させる細孔の細孔直径をできる限り小さくすることが好ましい。なお、セルロース繊維分散液を噴出させる細孔の直径は小さければ容易に高圧状態を作り出せるが、過度に小さいと噴出効率が悪くなる。このため、上述した細孔直径は50μm以上800μm以下、好ましくは100μm以上500μm以下、より好ましくは150μm以上350μm以下である。
セルロース繊維分散液の噴出は、必要に応じて複数回繰り返すことにより、微細化度を上げて所望の繊維径のセルロース系繊維材料8を得ることができる。この繰り返し回数(以下、パス数とも称する)は、通常1回以上、好ましくは3回以上で、通常20回以下、好ましくは15回以下である。パス数が多くなるほどに微細化の程度を上げることができるが、過度にパス数が多い場合には製造コストが上昇するため、製造コストを考慮してパス数を決定することが好ましい。
噴出時の温度(分散液温度)には特に制限はないが、通常5℃以上100℃以下である。温度が高すぎると、増圧機の送液ポンプ又は高圧シール部等の劣化を早める恐れがあるため、上述した温度範囲が好ましくなる。
また、噴出ノズルは1本又は2本でもよく、噴出させたセルロースを噴出先に設けた壁やボール、リングにぶつけてもよい。更にノズルが2本の場合には噴出先でセルロース同士を衝突させてもよい。
なお、高圧ホモジナイザーは特に限定されないが、具体的装置としては、ガウリン社製やスギノマシーン社製の「スターバーストシステム」を用いることができる。
なお、上述した高圧ホモジナイザーによる処理のみを施してもよいが、その場合には、十分な微細化度とするための繰り返し回数が多くなり、処理効率が低下するおそれがある。このため、1〜5回程度の高圧ホモジナイザー処理後に後述の超音波処理を行って微細化することが好ましい。上述した高速回転式ホモジナイザーによる処理を行う場合にも、同様に超音波処理を組み合わせることが好ましい。
『超音波処理』
超音波処理を行う場合のセルロース繊維分散液のセルロース繊維原料濃度は、0.01〜10重量%、更には0.1〜5重量%、特に0.2〜2重量%であることが好ましい。超音波が照射されるセルロース繊維分散液のセルロース濃度が低過ぎると非効率である。一方、当該濃度が高過ぎると粘度が高くなり解繊処理が不均一になる。従って、本実施例においては、超音波処理に供されるセルロース繊維分散液のセルロース濃度が上記所定濃度となるように、必要に応じて水又は有機溶媒の少なくとも一方を添加することが好ましい。
また、超音波が照射されるセルロース繊維分散液中のセルロース繊維の数平均繊維径は、上述の解繊により10μm以下、特に2μm以下にしておくことが好ましい。さらに好ましくは1μm以下であることが好ましい。
セルロース繊維分散液に照射する超音波の周波数は15kHz〜1MHz、好ましくは20kHz〜500kHz、更に好ましくは20kHz〜100kHzである。また、超音波の出力としては、実効出力密度として1W/cm以上であり、好ましくは10W/cm以上、更に好ましくは20W/cm以上である。
超音波の照射方法には特に制限はなく、各種の方法を用いることができる。例えば、超音波振動子の振動を伝えるホーンを直接上記のセルロース繊維分散液に挿入することにより、直接セルロース繊維を微細化する方法や、セルロース繊維分散液を入れた容器の床や壁の一部に超音波振動子を設置してセルロース繊維を微細化する方法や、超音波振動子を装着した容器に水等の液体を入れ、その中にセルロース繊維分散液を入れた容器を漬すことにより、水等の液体を介して間接的に超音波振動をセルロース繊維分散液に与えて微細化する方法を用いることができる。
超音波振動子の振動を伝えるホーンを直接上記のセルロース繊維分散液に挿入する場合、ホーンの材質がセルロース繊維分散液に混入する場合がある。この場合、遠心分離により、ホーンの材質を除去することが好ましい。
上述した工程を経ることにより、解繊されたセルロース繊維分散液中に、本実施例のセルロース系繊維材料8が生成される。
(繊維複合膜、繊維複合膜の製造方法)
本実施例においては、上述した蛍光体材料7、及び上述した解繊処理を経て得られるセルロース系繊維材料を含有するセルロース繊維分散液を用いて繊維複合膜4を形成する。ここで、繊維複合膜4とは、一般に、上述したセルロース繊維分散液に蛍光体材料7を混合して濾過して得られる蛍光体材料7及びセルロース系繊維材料8の集合物、又は、上述したセルロース繊維分散液に蛍光体材料7を混合した混合液を所望の基材に塗布した状態から所望の揮発方法により、水、有機溶媒、又は有機溶媒と水との分散媒のみを除去して得られる蛍光体材料7及びセルロース系繊維材料8の集合物のことである。以下に、繊維複合膜4の具体的な製造方法を説明する。
セルロース系繊維材料8を含有する分散液と蛍光体材料7を混合し濾過することによって繊維複合膜4を製造する場合、濾過に供される当該分散液の濃度は、0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上であることが好ましい。このように濃度を調整することが好ましい理由は、濃度が低すぎると濾過に膨大な時間がかかるためである。また、当該分散液の濃度は1.5重量%以下、好ましくは1.2重量%以下、さらに好ましくは1.0重量%以下であることが好ましい。このように濃度を調整することが好ましい理由は、濃度が高すぎると均一な膜形状が得られないためである。
セルロース系繊維材料8を含有する分散液と蛍光体材料7の混合方法は、当該分散液に蛍光体材料7を直接添加し、均一に分散するまで攪拌してもよく、またセルロース系繊維材料8を含有する分散液に対し、蛍光体材料7をあらかじめ溶媒に分散させた分散液を添加して混合してもよい。混合においては、攪拌機を用いることが好ましく、超音波を照射してもよい。
セルロース系繊維材料8を含有する分散液と蛍光体材料7との混合液を濾過する場合、濾過時の濾布として、セルロース系繊維材料8が通過せず且つ濾過速度が遅くなりすぎないような濾布を用いることが重要である。このような濾布としては、有機ポリマーからなる膜形状、織物、多孔膜が好ましい。有機ポリマーとしてはポリエチレンテレフタレートやポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のような非セルロース系の有機ポリマーが好ましい。
具体的な濾布として、孔径0.1〜20μm、例えば1μmのポリテトラフルオロエチレンの多孔膜、孔径0.1〜20μm、例えば1μmのポリエチレンテレフタレートやポリエチレンの織物等が挙げられる。
また、上述した濾過による溶媒の除去においては、吸引又は圧搾を行うことが好ましい。
本実施例に係る繊維複合膜4は、その製造方法によって様々な空隙率を有することができる。空隙率は簡易的に下記の数式(4)により求めるものである。
空隙率(体積%)=
〔1−{(B/M)+(B/M)}/(A×t)〕×100・・・(4)
ここで、Aは繊維複合膜4の膜厚方向と直交する平面の面積(cm)、tは繊維複合膜4の厚み(cm)、Bは繊維複合膜4中の各成分(セルロース系繊維材料8、蛍光体材料6)の重量(g)、Mは繊維複合膜4中の各成分(セルロース系繊維材料8、蛍光体材料6)の密度である。本実施例においては、セルロース系繊維材料8の密度=1.5g/cmと仮定する。膜厚計(例えば、PEACOK製のPDN−20)を用いて、繊維複合膜4における種々の位置について10点の測定を行い、その平均値を採用することができる。
空隙率を制御することで繊維複合膜4の膜厚を制御することができる。より大きな空隙率を備える繊維複合膜4を得る方法としては、セルロース系繊維材料8を含有するする分散媒として有機溶媒を使用する方法、分散媒として水を使用する方法、又は分散媒として水及び有機溶媒の混合液を使用する方法がある。ここで、分散媒として水を使用する方法や、分散媒として水及び有機溶媒の混合液を使用する方法の場合には、濾過による製膜工程において、繊維複合体中の分散媒をアルコール等の有機溶媒に最終的に置換する必要がある。すなわち、分散媒として水を使用する方法や、分散媒として水及び有機溶媒の混合液を使用する方法の場合には、濾過により分散媒を除去し、セルロース含量が5〜99重量%になったところでアルコール等の有機溶媒を加えることが必要になる。また、セルロース系繊維材料8を含有する分散液と蛍光体材料7との混合液を濾過装置に投入した後、アルコール等の有機溶媒を混合液の上部に静かに投入することによっても濾過の最後にアルコール等の有機溶媒と置換することができる。
上述した濾過で用いるアルコール等の有機溶媒は、特に限定されるものではないが、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコール-モノ-t-ブチルエーテル等のアルコール類の他、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、トルエン、四塩化炭素等の1種又は2種以上の有機溶媒が挙げられる。非水溶性有機溶媒を用いる場合、非水溶性有機溶媒と水溶性有機溶媒との混合溶媒として使用すること、又は水溶性有機溶媒で置換した後に更に非水溶性有機溶媒で置換することが好ましい。
(セルロース系繊維材料の平均細孔と蛍光体粒子の平均粒径の関係)
本実施例における繊維複合膜4のセルロース系繊維材料8から形成される平均細孔は、蛍光体粒子6の平均粒径よりも小さいことが好ましい。このような理由は、セルロース系繊維材料8から形成される平均細孔が蛍光体粒子6の平均粒径よりも大きいと、蛍光体粒子6が繊維複合膜4から脱離し、又は蛍光体粒子6の分布が不均一になるからである。更に、セルロース系繊維材料8から形成される平均細孔は、蛍光体粒子6の平均粒径の1/10以下であることが好ましい。平均細孔と平均粒子との関係をこのようにすることにより、蛍光体粒子6の担持がより確実になり、蛍光体粒子6の平均分布もより均一になる。
(繊維複合膜内における蛍光体粒子の分散)
本実施例においては、セルロース系繊維材料8を含有する分散液に蛍光体材料7を均一に分散させることにより、繊維複合膜4の膜厚方向と直交する平面内において、蛍光体材料7が均一に分散した繊維複合膜4を得ることができる。これは、セルロース系繊維材料8として平均繊維径の小さいナノファイバーセルロースを用いることにより、蛍光体材料7を構成する蛍光体粒子6の各々が分散液中でナノファイバーセルロースに捕獲されるとともに均一に分散するため、ここから溶媒を除去した繊維複合膜4においても蛍光体材料7が均一に分散するためである。
(繊維複合体の特性及び物性)
以下に、本発明で得られる繊維複合膜4の好適な特性及び物性について説明する。
〔セルロース系繊維材料の含有量〕
本実施例の繊維複合膜4中のセルロース系繊維材料8の含有量は、
1重量%以上99重量%以下であるが、好ましくは10重量%以上である。10重量%以上であると、セルロース系繊維材料8のみで繊維複合膜4の自立性を保持することができる。また、好ましい範囲は15重量%以上90重量%以下であり、さらに好ましい範囲は20重量%以上80重量%以下であり、特に、25重量%以上70重量%以下が好ましい。
〔蛍光体材料の含有量〕
蛍光体材料7の含有量は、1重量%以上99重量%以下である。1重量%以上とする理由は、蛍光特性を発現するためである。好ましい範囲は10重量%以上95重量%以下であり、さらには20重量%以上90重量%以下であり、特に30重量%以上70重量%以下が好ましい。
繊維複合膜4中の蛍光体材料7の含有量は、元素分析により求めることができる。また、セルロース系繊維材料8の含有量は、NMR、IRを用いてセルロースの官能基を定量して求めることができる。
(封止材)
本実施例において封止材5を用いる目的は、発光素子であるLEDチップ3の保護、LEDチップ3からの光の取り出し効率の向上を図ることである。封止材5の種類は特に限定されず、一般に、繊維複合膜4を覆ってモールディングすることのできる封止材料を用いることができる。封止材料としては、流体状の材料であって、何らかの硬化処理を施すことにより硬化する材料(硬化性材料)や、溶剤や加熱により流動する材料を用いることができる。ここで、流体状とは、例えば液状又はゲル状のことをいう。
封止材料は、LEDチップ3から放射された光又は蛍光体粒子6によって波長変換された光を透過することができれば、具体的な種類に制限はない。また、封止材料は、後述する材料の内の1種を用いてもよく、又は2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。したがって、封止材料としては、無機系材料及び有機系材料並びに両者の混合物のいずれを用いることも可能である。
封止材料として用いることができる無機系材料としては、例えば、金属アルコキシド、セラミック前駆体ポリマー若しくは金属アルコキシドを含有する溶液をゾル−ゲル法により加水分解重合して成る溶液、又はこれらの組み合わせを固化した無機系材料(例えばシロキサン結合を有する無機系材料)等を挙げることができる。
一方、封止材料として用いられ得る有機系材料としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、又はシリコーン樹脂等が挙げられる。また、封止材料として用いられ得る有機系材料は、ポリスチレン又はスチレン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン樹脂であってもよい。更に、封止材料として用いられ得る有機系材料は、エチルセルロース、セルロースアセテート、又はセルロースアセテートブチレート等のセルロース系樹脂であってもよい。
これらの封止材料のうち、発光素子の製造における取り扱いの容易性の点から、熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂等の硬化性樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂の具体例としては、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、又はシリコーン樹脂が挙げられる。
これら封止材料の中では、LEDチップ3又は蛍光体粒子6から放射される光に対して劣化が少なく、耐アルカリ性、耐酸性、及び耐熱性にも優れる珪素含有化合物を使用することが好ましい。珪素含有化合物とは分子中に珪素原子を有する化合物をいい、ポリオルガノシロキサン等の有機材料(シリコーン系化合物)、酸化ケイ素、窒化ケイ素、若しくは酸窒化ケイ素等の無機材料、又はホウケイ酸塩、ホスホケイ酸塩、若しくはアルカリケイ酸塩等のガラス材料を挙げることができる。透明性、接着性、ハンドリングの容易さ、機械的、及び熱的応力の緩和特性を考慮すると、これらの中では特にシリコーン系材料が好ましい。
シリコーン系材料とは、一般に、シロキサン結合を主鎖とする有機重合体をいい、例えば、縮合型、付加型、改良ゾルゲル型、又は光硬化型等のシリコーン系材料を用いることができる。
縮合型シリコーン系材料としては、例えば、特開2007−112973〜112975号公報、特開2007−19459号公報、特開2008−34833号公報等に記載の部材を用いることができる。縮合型シリコーン系材料は、発光装置に用いられるパッケージ、電極、又はLEDチップなどの部材に対して優れた接着性を備えていればよいことから、密着向上を図ることができる成分が添加されていればよく、他の成分が添加されている必要がない。また、架橋がシロキサン結合主体のため、縮合型シリコーン系材料は耐熱性及び耐光性に優れている。
付加型シリコーン系材料としては、例えば、特開2004−186168号公報、特開2004−221308号公報、特開2005−327777号公報等に記載のポッティング用シリコーン材料、特開2003−183881号公報、特開2006−206919号公報等に記載のポッティング用有機変性シリコーン材料、特開2006−324596号公報に記載の射出成型用シリコーン材料、特開2007−231173号公報に記載のトランスファー成型用シリコーン材料等を好適に用いることができる。付加型シリコーン材料は、硬化速度及び硬化物の硬度などの選択の自由度が高いという利点、硬化時に脱離する成分が無く硬化収縮しにくい利点、及び深部硬化性に優れるなどの利点を有する。
また、縮合型の一つである改良ゾルゲル型シリコーン系材料としては、例えば、特開2006−077234号公報、特開2006−291018号公報、特開2007−119569号公報等に記載のシリコーン材料を好適に用いることができる。改良ゾルゲル型のシリコーン材料は、他の材料と比較して高い架橋度、耐熱性及び耐光性を有し且つ耐久性に優れているという利点、及びガス透過性が低く且つ耐湿性の低い蛍光体粒子6の保護機能にも優れているという利点を有する。
光硬化型シリコーン系材料としては、例えば特開2007−131812号公報、特開2007−214543号公報等に記載のシリコーン材料を好適に用いることができる。紫外硬化方シリコーン材料は、短時間に硬化するため生産性に優れているという利点、及び硬化する際に高い温度を必要としないことからLEDチップ3の劣化が生じにくい等の利点を有する。
光硬化型シリコーン系材料としては、例えば特開2007−131812号公報、特開2007−214543号公報等に記載のシリコーン材料を好適に用いることが出来る。紫外硬化方シリコーン材料は、短時間に硬化するため生産性に優れているという利点、及び硬化する際に高い温度を必要としないことからLEDチップ3の劣化が生じにくい等の利点を有する。
これらのシリコーン系材料は、単独で使用してもよく、混合することにより硬化阻害が起きなければ複数のシリコーン系材料を混合して用いてもよい。
上述したように、本実施例の発光装置は、複数の蛍光体粒子からなる蛍光体材料及びI型結晶性セルロースからなる繊維を少なくとも含むセルロース系繊維材料を含有し、発光素子であるLEDチップを覆うように形成される繊維複合膜を有することを特徴としている。そして、本発明の発光装置における繊維複合膜においては、I型結晶性セルロースからなる繊維を少なくとも含むセルロース系繊維材料によって蛍光体材料を構成蛍光体粒子が担持されることになる。このように蛍光体粒子を担持すると、セルロース系繊維材料が強固に蛍光体粒子を担持することとなり、蛍光体粒子がセルロース系繊維材料から抜け落ちることがなくなる。また、蛍光体粒子が凝集することもなくなり、繊維複合膜中における蛍光体粒子の分散ばらつき(むら)がなくなり、発光装置から放射される光の色むらが低減される。
更に、蛍光体粒子がセルロース系繊維材料から抜け落ちることがなくなることで、複数種類の蛍光体粒子を混合する際の混合比の調整も容易に行うことが可能になる。
そして、繊維複合膜を構成するI型結晶性セルロースからなる繊維は、他の繊維と比較して小さい線膨張係数を有するため、発光素子を金属又はセラミック等とともにパッケージ化しても、当該金属又はセラミックとの線膨張係数の差が低減され、繊維複合膜の反り返り、及びパッケージ化された発光装置の外形の変形を防止することができる。
以上のことから、本発明の発光装置は、外形の変化及び発光特性の変化を防止するとともに色ムラのない光を放射することができ、優れた信頼性を有することが可能になる。
なお、上述した実施例においては、繊維複合膜4内に含有されるセルロース系繊維材料8はI型結晶性セルロースのみから構成されていたが、これに限定されることなく、他の類型の繊維を含んでいてもよい。例えば、セルロース系繊維材料8は、I型結晶性セルロース及びII型結晶性セルロースから構成されていてもよい。
このような場合に、セルロース系繊維材料8におけるI型結晶性セルロースからなる繊維の含有率は、50%以上であることが好ましい。また、I型結晶性セルロースからなる繊維の含有率は、60%以上であることがより好ましい。更に、I型結晶性セルロースからなる繊維の含有率は、70%以上であることが特に好ましい。セルロース系繊維材料8において、I型結晶性セルロースからなる繊維の含有率が50%より低い場合、I型結晶性セルロースのみからなるセルロース系繊維材料8と比較して、結晶性成分の含有量が低くなり、繊維複合膜の線膨張係数が高くなるため好ましくない。
セルロース系繊維材料におけるI型結晶性セルロースからなる繊維の含有率の測定は、例えば、日本木材学会編から出版されている「木質科学実験マニュアル」の95頁における「α−セルロース」の測定方法のようにして求められる。
また、上述した実施例においては、LEDチップ3を覆う繊維複合体である繊維複合膜4は膜形状であったが、これに限定されることはなく、種々の形状を有する繊維複合体を形成してもよい。
(繊維複合膜の変形例1)
上述した実施例においては、互いに比重の等しい蛍光体粒子6からなる蛍光体材料7をセルロース系繊維材料が内在した分散液に混合して繊維複合膜4を形成したため、繊維複合膜4の膜厚方向においても蛍光体材料7が均一に分散していた。これに対して、互いに比重の異なる蛍光体粒子6をセルロース系繊維材料が内在した分散液に混合して繊維複合膜を形成してもよく、このような場合には、図3に示されたような繊維複合膜4’が得られる。
図3に示すように、繊維複合膜4’は第1繊維層4a及び第2繊維層4bから構成されている。第1繊維層4a内においては、セルロース系繊維材料8によって蛍光体粒子6aが担持されている。また、第2繊維層4b内においては、セルロース系繊維材料8によって蛍光体粒子6bが担持されている。ここで、蛍光体粒子6aは蛍光体粒子6bよりも粒径が大きく、且つその比重も大きい。すなわち、比重差によってセルロース系繊維材料8に担持される蛍光体粒子が分けられ、繊維複合膜4’は2層構造を有することになる。
このような繊維複合膜4’は、LEDチップ3に対していずれの方向に貼り付けられてもよい。すなわち、LEDチップ3に接する位置に第1繊維層4aが位置してもよく、又はLEDチップ3に接する位置に第2繊維層4bが位置してもよい。しかしながら、LEDチップ3から離間するにつれて、蛍光体粒子の含有密度が低い層が順次積層されるように繊維複合膜4’が貼り付けられたほうが好ましい。これは、繊維複合膜4’からの光の取り出し効率を向上させるためである。
上述したような繊維複合膜4’を形成する方法としては、互いに比重の異なる蛍光体粒子6a、6bをセルロース系繊維材料8が内在した分散液に一緒に混合し、その後に濾過する方法がある。また、異なる方法としては、蛍光体粒子6aをセルロース系繊維材料8が内在した分散液に混合し、その後に濾過して第1繊維層4aを形成し、これとは別に蛍光体粒子6bをセルロース系繊維材料8が内在した分散液に混合し、その後に濾過して第2繊維層4bを形成し、これらの2つの第1繊維層4a及び第2繊維層4bを貼り合わせることによって繊維複合膜4’を形成する方法がある。
なお、比重の異なる蛍光体粒子をセルロース系繊維材料8が内在した分散液に一緒に混合し、その後に濾過する方法においては、3種類以上の比重の異なる蛍光体粒子を用いることにより、繊維複合膜内における蛍光体粒子の層を3層以上形成してもよい。すなわち、繊維複合膜内において、膜厚方向において蛍光体粒子の粒径が徐々に異なるように、蛍光体粒子を分散せてもよい。
(繊維複合膜の変形例2)
上述した実施例における蛍光体材料7及びセルロース系繊維材料8からなる繊維複合膜4に、透光性を備える樹脂を更に含有させて、当該樹脂を更に含有させた繊維複合膜4”によってLEDチップ3を被覆してもよい。このような変形例を図4に示すとともに、繊維複合膜4”について詳細に説明する。
上述した透光性を備える樹脂として好適なものは、加熱することにより流動性を備える液体に変化する熱可塑性樹脂、加熱により重合する熱硬化性樹脂、紫外線や電子線などの活性エネルギー線を照射することによって重合硬化する活性エネルギー線硬化性樹脂のなかから得られる少なくとも1種の樹脂(高分子材料)又はその前駆体である。なお、本実施例において高分子材料の前駆体とは、いわゆるモノマー、オリゴマーであり、例えば、熱可塑性樹脂の項に(共)重合成分として後述する各単量体など(以下、熱可塑性樹脂前駆体と称することもある)、又は後述する熱硬化性樹脂若しくは光硬化性樹の前駆体などが挙げられる。
〔透光性を備える樹脂を更に含有させた繊維複合膜4”における蛍光体材料の含有量〕
透光性を備える樹脂を更に含有させた繊維複合膜4”全体中における(蛍光体材料7の重量とセルロース系繊維材料8の重量と透光性を備える樹脂の重量の総和に対する)蛍光体材料7の含有量は、1重量%以上99重量%以下である。1重量%以上とする理由は、蛍光特性を発現するためである。好ましい範囲は10重量%以上95重量%以下であり、さらには20重量%以上90重量%以下であり、特に30重量%以上70重量%以下が好ましい。
〔透光性を備える樹脂を更に含有させた繊維複合膜4”のセルロース系繊維材料8の重量と透光性を備える樹脂の重量の総和に対するセルロース系繊維材料の含有量〕
本実施例の繊維複合膜4”中のセルロース系繊維材料8の重量と透光性を備える樹脂の重量の総和に対するセルロース系繊維材料8の含有量は、1重量%以上99重量%以下であるが、好ましくは10重量%以上である。セルロース系繊維材料8の含有量が10重量%以上であると、線膨張係数を抑えることができる。繊維複合膜4”の透光性の点から、透光性を備える樹脂の含有割合は、15重量%以上90重量%以下であることが好ましく、30重量%以上70重量%以下であることがさらに好ましい。
〔樹脂を含有させるための方法〕
繊維複合膜4に上述した透光性を備える樹脂を含有させる方法としては、以下に示すような複数の方法が挙げられる。
第1に、蛍光体材料7及びセルロース系繊維材料8からなる繊維複合膜4に液状の熱可塑性樹脂前駆体を含浸させて重合する方法であってよい。具体的な方法としては、重合可能なモノマー又はオリゴマーを蛍光体材料7及びセルロース系繊維材料8からなる繊維複合膜4に含浸させ、熱処理等によって当該モノマーを重合させることにより、透光性を備える樹脂を含む繊維複合膜4”を形成してもよい。一般的には、モノマーの重合に用いられる重合触媒を重合開始剤として用いることができる。
第2に、蛍光体材料7及びセルロース系繊維材料8からなる繊維複合膜4に熱硬化性樹脂前駆体又は光硬化性樹脂前駆体を含浸させて重合硬化させる方法であってもよい。具体的な方法としては、エポキシ樹脂モノマー等の熱硬化性樹脂前駆体、又はアクリル樹脂モノマー等の光硬化性樹脂前駆体と硬化剤との混合物を、繊維複合膜4に含浸させ、熱又は活性エネルギー線等によって当該熱硬化性樹脂前躯体又は光硬化性樹脂前躯体を硬化させることにより、透光性を備える樹脂を含む繊維複合膜4”を形成してもよい。
第3に、蛍光体材料7及びセルロース系繊維材料8からなる繊維複合膜4に樹脂溶液(熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂前駆体、熱硬化性樹脂前駆体、又は光硬化性樹脂前駆体の内から選ばれる1以上の溶質を含む溶液)を含浸させて乾燥させ、その後に加熱プレス等で密着させ、必要に応じて更に重合硬化する方法であってもよい。具体的な方法としては、上述した樹脂を所望の溶媒に溶解させ、その溶液を蛍光体材料7及びセルロース系繊維材料8からなる繊維複合膜4に含浸させ、乾燥させることによって透光性を備える樹脂を含む繊維複合膜4”を得る方法が挙げられる。この場合において、乾燥後加熱プレスを施すことにより、セルロース系繊維材料8が乾燥した状態における空隙を上述した溶媒によって密着させるが可能となり、これによって繊維複合膜4”の性能(例えば、透光性、強度等)を向上させることができる。光硬化性樹脂の場合には更に、必要に応じて活性エネルギー線等による重合硬化を行う。
第4に、蛍光体材料7及びセルロース系繊維材料8からなる繊維複合膜4に熱可塑性樹脂の溶融体を含浸させ、加熱プレス等で密着させる方法であってもよい。具体的な方法としては、熱可塑性樹脂をガラス転移温度以上又は融点以上で熱処理することによって溶解させ、溶解した熱可塑性樹脂を繊維複合膜4に含浸し、加熱プレス等で密着することにより透光性を備える樹脂を含む繊維複合膜4”を形成してもよい。なお、熱処理は加圧下で行うことが望ましく、真空加熱プレス機能を有する設備の使用が有効である。
第5に、熱可塑性樹脂シートと、蛍光体材料7及びセルロース系繊維材料8からなる繊維複合膜4とを交互に配置し、加熱プレス等で密着させる方法であってもよい。具体的な方法としては、繊維複合膜4の片面又は両面に熱可塑性樹脂のフィルム又はシート配置し、必要に応じて加熱やプレスすることにより、熱可塑性樹脂と繊維複合膜4とを貼り合わせて繊維複合膜4”を形成してもよい。この場合、繊維複合膜4の表面に接着剤又はプライマーを塗布することにより、熱可塑性樹脂と繊維複合膜4とを貼り合わせてもよい。貼り合わせる際に気泡を抱き込まないように、加圧された2本のロールの間を通す方法や、真空状態でプレスする方法を用いてよい。
第6に、蛍光体材料7及びセルロース系繊維材料8からなる繊維複合膜4の片面又は両面に、液状の熱可塑性樹脂前駆体、熱硬化性樹脂前駆体、又は光硬化性樹脂前駆体を塗布して重合硬化させる方法であってもよい。具体的な方法としては、繊維複合膜4の片面又は両面に熱重合開始剤を処方した熱硬化性樹脂前駆体を塗布し、その後に加熱することによって硬化させて両者を密着させる方法や、繊維複合膜4の片面又は両面に光重合開始剤を処方した硬化性樹脂前駆体を塗布し、その後に紫外線等の活性エネルギー線を照射して硬化させる方法であってもよい。また、繊維複合膜4に熱光硬化性樹脂前駆体又は光硬化性樹脂前駆体を塗布し、その後に他の繊維複合体を重ねことにより、多層構造の状態を形成してから硬化させてもよい。
第7に、蛍光体材料7及びセルロース系繊維材料8からなる繊維複合膜4の片面又は両面に、樹脂溶液(熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂前駆体、熱硬化性樹脂前駆体、又は光硬化性樹脂前駆体の内から選ばれる1以上の溶質を含む溶液)を塗布して溶媒を除去し、その後に必要に応じて更に重合硬化することにより複合化する方法であってもよい。具体的な方法としては、溶媒に可溶な樹脂を溶解させた樹脂溶液を準備し、繊維複合膜4の片面又は両面に準備した樹脂溶液を塗布し、その後に加熱によって溶媒を除去することにより透光性を備える樹脂を含む繊維複合膜4”を形成してもよい。光硬化性樹脂の場合には更に、必要に応じて活性エネルギー線等による重合硬化を行ってもよい。
なお、上述した方法によって製造される繊維複合膜4”を複数枚重ねて積層体を形成してもよい。このような場合には、セルロース系繊維材料8を含む繊維複合膜4”と、セルロース系繊維材料8を含まない単なる樹脂シートとを積層してもよい。また、繊維複合膜4”同士、又は樹脂及び繊維複合膜4”を接着させるために、接着剤をいずれかの一方又は両方に塗布し、又は接着シートを両者の間に介在させてもよい。また、上述した積層体に加熱プレス処理を加えて一体化することもできる。
第8に、蛍光体材料7及びセルロース系繊維材料8からなる繊維複合膜4と、モノマー溶液又は分散液(熱可塑性樹脂前駆体、熱硬化性樹脂前駆体、若しくは光硬化性樹脂前駆体の内から選ばれる1以上の溶質又は分散質を含む溶液又は分散液)とを混合し、その後に溶媒除去及び重合硬化の工程を経ることにより複合化する方法であってもよい。具体的な方法としては、溶媒に可溶なモノマーを溶解させた溶液又は分散液を準備し、当該溶液又は分散液を繊維複合膜4に混合する。この際、必要に応じて、解繊セルロース繊維の分散媒(溶媒)を水から有機溶媒に置換することが好ましい。当該混合液中において、モノマーを重合硬化、又は溶媒を除去した後にモノマーを重合硬化することで繊維複合膜4”を得ることができる。
本実施例において、繊維複合膜4に複合化させる透光性を備える樹脂を以下に例示するが、本実施例において用いられる透光性を備える樹脂は、何ら以下のものに限定されるものではない。また、以下に代表して記載する熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光(活性エネルギー線)硬化性樹脂は、これらの樹脂のうちの2種以上を混合して用いることができる。
本実施例においては、以下の透光性を備える樹脂のうち、高分子材料又は前駆体については、透明性に優れた高耐久性を備える繊維複合膜4を得ることを考慮すると、その重合体が非晶質であってガラス転移温度(Tg)の高い合成高分子であることが好ましい。この場合に、非晶質の程度としては、結晶化度で10%以下、特に5%以下であるものが好ましく、また、Tgは50℃以上、特に100℃以上、とりわけ130℃以上のものが好ましい。この理由としては、Tgが低い場合には、例えば熱水等に触れた際に変形する恐れ等の問題が生じるためである。
また、一般的な繊維材料からなる膜体よりも低い吸水性を備える繊維複合膜4を得るためには、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基などの親水性の官能基が少ない高分子材料を選定することが好ましい。なお、高分子材料のTgは一般的な方法で求めることができる。例えば、DSC(Differential Scanning Calorimetry)法による測定で求められる。高分子材料の結晶化度は、非晶質部及び結晶質部の密度から算定することができる。また、高分子材料の結晶化度は、動的粘弾性測定により、弾性率と粘性率の比であるtanδから算出することもできる。
(熱可塑性樹脂)
本実施例における熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではないが、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、芳香族ポリカーボネート系樹脂、脂肪族ポリカーボネート系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリオレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、熱可塑性ポリイミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリスルホン系樹脂、又は非晶性フッ素系樹脂が挙げられる。
スチレン系樹脂としては、スチレン、クロルスチレン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレン等の重合体及び共重合体が挙げられる。
アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド等の重合体及び共重合体が挙げられる。ここで「(メタ)アクリル」とは、「アクリル及び/又はメタクリル」を意味する。(メタ)アクリル酸エステルとは(メタ)アクリル酸アルキルエステル、シクロアルキルエステル基を有する(メタ)アクリル酸系単量体、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等が挙げられる。シクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸系単量体としては、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ブトキシエチル等が挙げられる。(メタ)アクリルアミド類としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−t−オクチル(メタ)アクリルアミド等のN置換(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
芳香族ポリカーボネート系樹脂とは、3価以上の多価フェノール類を共重合成分として含有できる1種以上のビスフェノール類と、ビスアルキルカーボネート、ビスアリールカーボネート、ホスゲン等の炭酸エステル類との反応により製造される共重合体であり、必要に応じて芳香族ポリエステルカーボネート類とするために共重合成分としてテレフタル酸やイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸又はその誘導体(例えば芳香族ジカルボン酸ジエステルや芳香族ジカルボン酸塩化物)を使用してもよいものである。
ビスフェノール類としては、ビスフェノールA、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールM、ビスフェノールP、ビスフェノールS、ビスフェノールZ(略号はアルドリッチ社試薬カタログを参照)等が例示され、中でもビスフェノールAとビスフェノールZ(中心炭素がシクロヘキサン環に参加しているもの)が好ましく、ビスフェノールAが特に好ましい。共重合可能な3価フェノール類としては、1,1,1−(4−ヒドロキシフェニル)エタンやフロログルシノールなどが例示できる。
脂肪族ポリカーボネート系樹脂としては、脂肪族ジオール成分及び/又は脂環式ジオール成分とビスアルキルカーボネート、ホスゲン等の炭酸エステル類との反応により製造される共重合体である。脂環式ジオールとしてはシクロヘキサンジメタノールやイソソルバイト等が挙げられる。
芳香族ポリエステル系樹脂としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール等のジオール類とテレフタル酸等の芳香族カルボン酸との共重合体が挙げられる。また、ポリアリレートのように、ビスフェノールA等のジオール類とテレフタル酸やイソフタル酸等の芳香族カルボン酸との共重合体も挙げられる。
脂肪族ポリエステル系樹脂としては、上記ジオールとコハク酸、吉草酸等の脂肪族ジカルボン酸との共重合体やグリコール酸や乳酸等のヒドロキシジカルボン酸の共重合体等が挙げられる。
脂肪族ポリオレフィン系樹脂としては、具体的には、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン等の炭素数2〜8程度のα−オレフィンの単独重合体、それらのα−オレフィンと、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−オクタデセン等の炭素数2〜18程度の他のα−オレフィン等との二元或いは三元の共重合体等;具体的には、例えば、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状高密度ポリエチレン等のエチレン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−ヘプテン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体等のエチレン系樹脂、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体等のプロピレン系樹脂、1−ブテン単独重合体、1−ブテン−エチレン共重合体、1−ブテン−プロピレン共重合体等の1−ブテン系樹脂、及び4−メチル−1−ペンテン単独重合体、4−メチル−1−ペンテン−エチレン共重合体等の4−メチル−1−ペンテン系樹脂等の樹脂、並びに、エチレンと他のα−オレフィンとの共重合体、1−ブテンと他のα−オレフィンとの共重合体、更に、例えば1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、1,4−オクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ブチリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロペニル−2−ノルボルネン等の非共役ジエンとの二元或いは三元の共重合体等、具体的には、例えばエチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ブテン−非共役ジエン共重合体等のオレフィン系ゴム等が挙げられ、これらのオレフィン系重合体は2種以上が併用されていてもよい。
環状オレフィン系樹脂とは、ノルボルネンやシクロヘキサジエン等、ポリマー鎖中に環状オレフィン骨格を含む重合体もしくはこれらを含む共重合体である。例えば、ノルボルネン骨格の繰り返し単位、又はノルボルネン骨格とメチレン骨格の共重合体よりなるノルボルネン系樹脂が挙げられ、市販品としては、JSR製の「アートン」、日本ゼオン製の「ゼネックス」及び「ゼオノア」、三井化学製の「アペル」、チコナ製の「トーパス」等が挙げられる。
ポリアミド系樹脂としては、6,6−ナイロン、6−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロン、4,6−ナイロン、6,10−ナイロン、6,12−ナイロン等の脂肪族アミド系樹脂や、フェニレンジアミン等の芳香族ジアミンと塩化テレフタロイルや塩化イソフタロイル等の芳香族ジカルボン酸又はその誘導体からなる芳香族ポリアミド等が挙げられる。
ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等が挙げられ、さらに2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類との共重合体も挙げられる。
ポリイミド系樹脂としては、無水ポリメリット酸や4,4’−ジアミノジフェニルエーテル等の共重合体であるピロメリット酸型イミド、無水塩化トリメリット酸やp−フェニレンジアミン等の芳香族ジアミンやジイソシアネート化合物からなる共重合体であるトリメリット酸型ポリイミド、ビフェニルテトラカルボン酸、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミン等からなるビフェニル型ポリイミド、ベンゾフェノンテトラカルボン酸や4,4’−ジアミノジフェニルエーテル等からなるベンゾフェノン型ポリイミド、ビスマレイミドや4,4’−ジアミノジフェニルメタン等からなるビスマレイミド型ポリイミド等が挙げられる。
ポリアセタール系樹脂としては、オキシメチレン構造を単位構造にもつホモポリマーと、オキシエチレン単位を含む共重合体が挙げられる。
ポリスルホン系樹脂としては、4,4’−ジクロロジフェニルスルホンやビスフェノールA等の共重合体が挙げられる。
非晶性フッ素系樹脂としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、ペルフルオロアルキルビニルエーテル等の単独重合体又は共重合体が挙げられる。
これらの熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
(硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂、光(活性エネルギー線)硬化性樹脂とは、硬化する前の前駆体もしくは硬化してなる樹脂硬化物のことを意味する。ここで前駆体は、常温では液状、半固体状又は固形状等であって常温下又は加熱下で流動性を示す物質を意味する。これらは硬化剤、触媒、熱又は光の作用によって重合反応や架橋反応を起こして分子量を増大させながら網目状の三次元構造を形成してなる不溶不融の樹脂となり得る。また、樹脂硬化物とは、上記熱硬化性樹脂前駆体又は光(活性エネルギー線)硬化性樹脂前駆体が硬化してなる樹脂を意味する。
「熱硬化性樹脂」
本実施例における熱硬化性樹脂としては、特に限定されるものではないが、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、オキセタン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、珪素樹脂、ポリウレタン樹脂、又はジアリルフタレート樹脂の前駆体が挙げられる。
上記エポキシ樹脂前駆体としては、少なくとも1個のエポキシ基を有する有機化合物をいう。上記エポキシ樹脂前駆体中のエポキシ基の数としては、1分子あたり1個以上7個以下であることが好ましく、1分子あたり2個以上であることがより好ましい。ここで、前駆体1分子あたりのエポキシ基の数は、エポキシ樹脂前駆体中のエポキシ基の総数をエポキシ樹脂中の分子の総数で除算することにより求められる。上記エポキシ樹脂前駆体としては特に限定されず、例えば、以下に示したエポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は単独でも2種以上併用されてもよい。これらエポキシ樹脂は硬化剤を用いて熱硬化性樹脂前躯体を硬化することにより得られる。
例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等の、ノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタントリグリシジルエーテル等の芳香族エポキシ樹脂及びこれらの水添化物や臭素化物等の前駆体が挙げられる。また、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルアジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル)メチルアジペート、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル等の脂環族エポキシ樹脂が挙げられる。また、1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、炭素数が2〜9(好ましくは2〜4)のアルキレン基を含むポリオキシアルキレングリコールやポリテトラメチレンエーテルグリコール等を含む長鎖ポリオールのポリグリシジルエーテル等の脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。また、フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサドロフタル酸ジグリシジルエステル、ジグリシジル−p−オキシ安息香酸、サリチル酸のグリシジルエーテル−グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステル等のグリシジルエステル型エポキシ樹脂及びこれらの水添化物等が挙げられる。また、トリグリシジルイソシアヌレート、環状アルキレン尿素のN,N’−ジグリシジル誘導体、p−アミノフェノールのN,N,O−トリグリシジル誘導体のグリシジルアミン型エポキシ樹脂及びこれらの水添化物等が挙げられる。また、グリシジル(メタ)アクリレートと、エチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル等のラジカル重合性モノマーとの共重合体等が挙げられる。また、エポキシ化ポリブタジエン等の共役ジエン化合物を主体とする重合体又はその部分水添物の重合体における不飽和炭素の二重結合をエポキシ化したもの等が挙げられる。また、エポキシ化SBS等のような、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック又はその部分水添化物の重合体ブロックとを同一分子内にもつブロック共重合体における共役ジエン化合物の不飽和炭素の二重結合をエポキシ化したもの等が挙げられる。また1分子あたり1個以上、好ましくは2個以上のエポキシ基を有するポリエステル樹脂等が挙げられる。また、上記エポキシ樹脂の構造中にウレタン結合やポリカプロラクトン結合を導入した、ウレタン変成エポキシ樹脂やポリカプロラクトン変成エポキシ樹脂等が挙げられる。上記変成エポキシ樹脂としては、例えば、上記エポキシ樹脂にNBR、CTBN、ポリブタジエン、アクリルゴム等のゴム成分を含有させたゴム変成エポキシ樹脂等が挙げられる。なお、エポキシ樹脂以外に、少なくとも1つのオキシラン環を有する樹脂又はオリゴマーが添加されてもよい。また、フルオレン含有エポキシ樹脂、フルオレン基を含有する熱硬化性樹脂及び組成物、又はその硬化物も挙げられる。これらフルオレン含有エポキシ樹脂は、高耐熱であるため好適に用いられる。上記エポキシ樹脂前駆体の硬化反応に用いられる硬化剤としては、特に限定されず、例えば、アミン化合物、アミン化合物から合成されるポリアミノアミド化合物等の化合物、3級アミン化合物、イミダゾール化合物、ヒドラジド化合物、メラミン化合物、酸無水物、フェノール化合物、熱潜在性カチオン重合触媒、光潜在性カチオン重合開始剤、ジシアンアミド及びその誘導体等が挙げられる。これらの硬化剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
アクリル樹脂前駆体としては、分子内に1個の(メタ)アクリロイル基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物、分子内に2個又は3個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物、スチレン系化合物、アクリル酸誘導体、分子内に4〜8個の(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート化合物、エポキシ(メタ)アクリレート化合物、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物などが挙げられる。
分子内に1個の(メタ)アクリロイル基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルフォリン、ラウリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
特に、脂環骨格を有するモノ(メタ)アクリレートは、耐熱性が高くなるので、好適に利用することができる。脂環骨格モノ(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、例えば(ヒドロキシ−アクリロイルオキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(ヒドロキシ−メタクリロイルオキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(ヒドロキシ−アクリロイルオキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(ヒドロキシ−メタクリロイルオキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(ヒドロキシメチル−アクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(ヒドロキシメチル−メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(ヒドロキシメチル−アクリロイルオキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(ヒドロキシメチル−メタクリロイルオキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(ヒドロキシエチル−アクリロイルオキシエチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(ヒドロキシエチル−メタクリロイルオキシエチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(ヒドロキシエチル−アクリロイルオキシエチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(ヒドロキシエチル−メタクリロイルオキシエチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン等が挙げられる。また、これらの混合物等を挙げることが出来る。
分子中に2個又は3個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコール以上のポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8−オクタンジオール(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオール(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオール(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル]プロパン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、ビス(ヒドロキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジアクリレート、ビス(ヒドロキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジメタクリレート、ビス(ヒドロキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=アクリレートメタクリレート、ビス(ヒドロキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン=ジアクリレート、ビス(ヒドロキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン=ジメタクリレート、ビス(ヒドロキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン=アクリレートメタクリレート、2,2−ビス[4−(β−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(β−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)シクロヘキシル]プロパン、1,4−ビス[(メタ)アクリロイルオキシメチル]シクロヘキサン等が挙げられる。
スチレン系化合物としては、スチレン、クロルスチレン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレンなどが挙げられる。
エステル以外の(メタ)アクリル酸誘導体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
これらの中でも、含脂環骨格ビス(メタ)アクリレート化合物が好適に用いられる。例えばビス(アクリロイルオキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(メタクリロイルオキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(アクリロイルオキシ−メタクリロイルオキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(アクリロイルオキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、ビス(メタクリロイルオキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(アクリロイルオキシ−メタクリロイルオキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、ビス(アクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(アクリロイルオキシメチル−メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(アクリロイルオキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、ビス(メタクリロイルオキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(アクリロイルオキシメチル−メタクリロイルオキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、ビス(アクリロイルオキシエチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(メタクリロイルオキシエチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(アクリロイルオキシエチル−メタクリロイルオキシエチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(アクリロイルオキシエチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、ビス(メタクリロイルオキシエチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(アクリロイルオキシエチル−メタクリロイルオキシエチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン等、及びこれらの混合物等を挙げることが出来る。
これらのうち、ビス(アクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン及び(アクリロイルオキシメチル−メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンから選ばれるものが好ましい。これらのビス(メタ)アクリレートは、いくつか併用することもできる。
分子内に4〜8個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートとしては、ポリオールの(メタ)アクリル酸エステル等が利用できる。具体的には、ペンタエリスリテールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリテールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールセプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エポキシ(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ基を有する化合物、ビスフェノールA型プロピレンオキサイド付加型の末端グリシジルエーテル、フルオレンエポキシ樹脂等と(メタ)アクリル酸との反応物を挙げることができる。具体的にはビスフェノールAジグリシジルエーテル=ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジプロピレンオキサイドジグリシジルエーテル=ジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル=ジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジグリシジルエーテル=ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル=ジ(メタ)アクリレート、1、6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル=ジ(メタ)アクリレート、グリセリンジグリシジルエーテル=ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル=トリ(メタ)アクリレート、2−ヒドリキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルブチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアミノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレートとしては、1分子中に(メタ)アクリロイル基を2〜10個(好ましくは2〜5個)有するウレタンオリゴマー等が挙げられる。例えば、ジオール類及びジイソシアネー類を反応させて得られるウレタンプレポリマーと、ヒドロキシ基含有の(メタ)アクリレートを反応させて製造される(メタ)アクリロイル基含有ウレタンオリゴマーがある。
ここで用いるジオール類としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリヘプタメチレングリコール、ポリデカメチレングリコールあるいは二種以上のイオン重合性環状化合物を開環共重合させて得られるポリエーテルジオール等が挙げられる。イオン重合性環状化合物としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテン−1−オキシド、イソブテンオキシド、3,3−ビスクロロメチルオキセタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン、テトラオキサン、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エピクロルヒドリン、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルカーボネート、ブタジエンモノオキシド、イソプレンモノオキシド、ビニルオキセタン、ビニルテトラヒドロフラン、ビニルシクロヘキセンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、安息香酸グリシジルエステル等の環状エーテル類が挙げられる。また、上記イオン性重合性環状化合物と、エチレンイミン等の環状イミン類、β−プロピオラクトン、グリコール酸ラクチド等の環状ラクトン酸、あるいはジメチルシクロポリシロキサン類とを開環共重合させたポリエーテルジオールを使用することもできる。上記二種以上のイオン重合性環状化合物の具体的な組み合わせとしては、テトラヒドロフランとプロピレンオキシド、テトラヒドロフランと2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランと3−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランとエチレンオキシド、プロピレンオキシドとエチレンオキシド、ブテンオキシドとエチレンオキシド等を挙げることができる。これらのイオン重合性環状化合物の開環共重合体はランダムに結合していてもよいし、ブロック状の結合をしていてもよい。
ここまでに述べたこれらのポリエーテルジオールは、例えばPTMG1000、PTMG2000(以上、三菱化学(株)製)、PPG1000、EXCENOL2020、1020(以上、旭オーリン(株)製)、PEG1000、ユニセーフDC1100、DC1800(以上、日本油脂(株)製)、PPTG2000、PPTG1000、PTG400、PTGL2000(以上、保土ヶ谷化学(株)製)、Z−3001−4、Z−3001−5、PBG2000A、PBG2000B(以上、第一工業製薬(株)製)等の市販品としても入手することができる。
上記のポリエーテルジオールの他にポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリカプロラクトンジオール等が挙げられ、これらのジオールをポリエーテルジオールと併用して用いることもできる。これらの構造単位の重合様式は特に制限されず、ランダム重合、ブロック重合、グラフト重合のいずれであってもよい。ここで用いるポリエステルジオールとしては、例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール等の多価アルコールとフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマール酸、アジピン酸、セバシン酸等の多塩基酸とを反応して得られるポリエステルポリオール等を挙げることができる。市販品としてはクラポールP−2010、PMIPA、PKA−A、PKA−A2、PNA−2000(以上、(株)クラレ製)等が入手できる。
また、ポリカーボネートジオールとしては、例えば1,6−ヘキサンポリカーボネート等が挙げられ、市販品としてはDN−980、981、982、983(以上、日本ポリウレタン(株)製)、PC−8000(米国PPG(株)製)等が挙げられる。更に、ポリカプロラクトンジオールとしては、ε−カプロラクトンと、例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,2−ポリブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ブタンジオール等の2価のジオールとを反応させて得られるポリカプロラクトンジオールが挙げられる。これらのジオールは、プラクセル205、205AL、212、212AL、220、220AL(以上、ダイセル(株)製)等が市販品として入手することができる。
上記以外のジオールも数多く使用することができる。このようなジオールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加ジオール、ビスフェノールAのブチレンオキサイド付加ジオール、ビスフェノールFのエチレンオキサイド付加ジオール、ビスフェノールFのブチレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールAのブチレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールFのエチレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールFのブチレンオキサイド付加ジオール、ジシクロペンタジエンのジメチロール化合物、トリシクロデカンジメタノール、β−メチル−δ−バレロラクトン、ヒドロキシ末端ポリブタジエン、ヒドロキシ末端水添ポリブタジエン、ヒマシ油変性ポリオール、ポリジメチルシロキサンの末端ジオール化合物、ポリジメチルシロキサンカルビトール変性ポリオール等が挙げられる。
また上記したようなジオールを併用する以外にも、ポリオキシアルキレン構造を有するジオールとともにジアミンを併用することも可能であり、このようなジアミンとしてはエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、パラフェニレンジアミン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン等のジアミンやヘテロ原子を含むジアミン、ポリエーテルジアミン等が挙げられる。
好ましいジオールとしては1,4−ブタンジオールの重合体であるポリテトラメチレンエーテルグリコールが挙げられる。このジオールの好ましい分子量は数平均分子量で通常50〜15,000であり、特に500〜3,000である。
一方、ジイソシアネート類としては、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3′−ジメチル−4,4′−ジフェニルメタジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3′−ジメチルフェニレンジイソシアネート、4,4′−ビフェニレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジシクロヘキシル ジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−ヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアネートエチル)フマレート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、4−ジフェニルプロパンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。これらのジイソシアネートは一種でも、二種以上を併用して用いてもよい。中でもイソホロンジイソシアネートやノルボルナンジイソシアネート、メチレンジシクロヘキシル ジイソシアネートなどの脂環骨格を有するジイソシアネートが好適に用いられる。
また、反応に用いるヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート化合物としては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリロイルフォスフェート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、さらにアルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有化合物と(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる化合物も挙げることができる。これらのうち、特に2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が好ましい。
市販のウレタンオリゴマーとしては、EB2ECRYL220(ダイセル・サイテック)、アートレジンUN-3320HA(根上工業)、アートレジンUN-3320HB(根上工業)、アートレジンUN-3320HC(根上工業)、アートレジンUN-330(根上工業)及びアートレジンUN-901T(根上工業)、NK-オリゴU-4HA(新中村化学)、NK-オリゴU-6HA(新中村化学)、NK-オリゴU-324A(新中村化学)、NK-オリゴU-15HA(新中村化学)、NK-オリゴU-108A(新中村化学)、NK-オリゴU-200AX(新中村化学)、NK-オリゴU-122P(新中村化学)、NK-オリゴU-5201(新中村化学)、NK-オリゴU-340AX(新中村化学)、NK-オリゴU-511(新中村化学)、NK-オリゴU-512(新中村化学)、NK-オリゴU-311(新中村化学)、NK-オリゴUA-W1(新中村化学)、NK-オリゴUA-W2(新中村化学)、NK-オリゴUA-W3(新中村化学)、NK-オリゴUA-W4(新中村化学)、NK-オリゴUA-4000(新中村化学)、NK-オリゴUA-100(新中村化学)、紫光UV-1400B(日本合成化学工業)、紫光UV-1700B(日本合成化学工業)、紫光UV-6300B(日本合成化学工業)、紫光UV-7550B(日本合成化学工業)、紫光UV-7600B(日本合成化学工業)、紫光UV-7605B(日本合成化学工業)、紫光UV-7610B(日本合成化学工業)、紫光UV-7620EA(日本合成化学工業)、紫光UV-7630B(日本合成化学工業)、紫光UV-7640B(日本合成化学工業)、紫光UV-6630B(日本合成化学工業)、紫光UV-7000B(日本合成化学工業)、紫光UV-7510B(日本合成化学工業)、紫光UV-7461TE(日本合成化学工業)、紫光UV-3000B(日本合成化学工業)、紫光UV-3200B(日本合成化学工業)、紫光UV-3210EA(日本合成化学工業)、紫光UV-3310B(日本合成化学工業)、紫光UV-3500BA(日本合成化学工業)、紫光UV-3520TL(日本合成化学工業)、紫光UV-3700B(日本合成化学工業)、紫光UV-6100B(日本合成化学工業)、紫光UV-6640B(日本合成化学工業)等が使用できる。
分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレートの数平均分子量は1,000〜100,000が好ましく、更に好ましくは2,000〜10,000である。中でもメチレンジシクロヘキシルジイソシアネートとポリテトラメチレンエーテルグリコールを有するウレタンアクリレートは透明性、低複屈折性、柔軟性等の点により優れており、好適に利用することができる。
オキセタン樹脂前駆体としては、少なくとも1個のオキセタン環を有する化合物が挙げられる。上記オキセタン樹脂前駆体中のオキセタン環の数は、1分子あたり1個以上、4個以下が好ましい。分子中に1個のオキセタンを有する化合物としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル{[−3−(トリエトキシリル)プロポキシ]メチル}オキセタン、3−エチル−3−メタクリロキシメチルオキセタンなどが挙げられる。分子中に2個のオキセタンを有する化合物としては、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、4,4′−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル等が挙げられる。3〜4個のオキセタン環を有する化合物としては、分枝状のポリアルキレンオキシ基やポリシロキシ基と3−アルキル−3−メチルオキセタンの反応物などが挙げられる。
上記オキセタン樹脂前駆体の硬化反応に用いられる硬化剤としては、特に限定されず、例えば、アミン化合物、アミン化合物から合成されるポリアミノアミド化合物等の化合物、3級アミン化合物、イミダゾール化合物、ヒドラジド化合物、メラミン化合物、酸無水物、フェノール化合物、熱潜在性カチオン重合触媒、光潜在性カチオン重合開始剤、ジシアンアミド及びその誘導体等が挙げられる。これらの硬化剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。特に光硬化剤はエネルギーの有効活用の面から好適に利用される。ここで光硬化剤とは活性エネルギー線の照射によりカチオン重合を開始させる化合物であり、例えば、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等が挙げられる。
フェノール樹脂前駆体としては、フェノール、クレゾール等のフェノール類とホルムアルデヒド等を反応させノボラック等を合成し、これをヘキサメチレンテトラミン等で硬化させたもの等が挙げられる。
ユリア樹脂前駆体としては、尿素等とホルムアルデヒド等の重合反応物が挙げられる。
メラミン樹脂前駆体としては、メラミン等とホルムアルデヒド等の重合反応物が挙げられる。
不飽和ポリエステル樹脂としては、不飽和多塩基酸等と多価アルコール等より得られる不飽和ポリエステルを、これと重合する単量体に溶解し硬化した樹脂等が挙げられる。
珪素樹脂前駆体としては、オルガノポリシロキサン類を主骨格とするものが挙げられる。
ポリウレタン樹脂前駆体としては、グリコール等のジオール類と、ジイソシアネートからなる重合反応物等が挙げられる。
ジアリルフタレート樹脂前駆体としては、ジアリルフタレートモノマー類とジアリルフタレートプレポリマー類からなる反応物が挙げられる。
これら熱硬化性樹脂の硬化剤、硬化触媒としては特に限定はないが、例えば、硬化剤としては多官能アミン、ポリアミド、酸無水物、フェノール樹脂等が挙げられ、硬化触媒としてはイミダゾール等が挙げられる。これらは単独又は2種以上の混合物として使用することができる。
「光硬化性樹脂」
本実施例における光硬化性樹脂としては、特に限定されるものではないが、上述の熱硬化性樹脂の説明において例示したエポキシ樹脂、アクリル樹脂、又はオキセタン樹脂の前駆体が挙げられる。
これら光硬化性樹脂の硬化剤としては特に限定はないが、例えばジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等が挙げられる。
「その他の成分」
上述した熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂は、適宜、連鎖移動剤、紫外線吸収剤、充填剤、シランカップリング剤等と配合した硬化性組成物として用いられる。
『連鎖移動剤』
反応を均一に進行させる目的等のため、硬化性組成物は連鎖移動剤を含んでもよい。例えば、分子内に2個以上のチオール基を有する多官能メルカプタン化合物を用いることができ、これにより硬化物に適度な靱性を付与する事ができる。メルカプタン化合物としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス(β−チオプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(β−チオプロピオネート)、トリス[2−(β−チオプロピオニルオキシエトキシ)エチル]トリイソシアヌレートなどの1種又は2種以上を用いるのが好ましい。メルカプタン化合物を入れる場合は、ラジカル重合可能な化合物の合計に対して、通常30重量%以下の割合で含有させてもよい。
『紫外線吸収剤』
着色防止目的のため、硬化性組成物は紫外線吸収剤を含んでもよい。例えば、紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤から選ばれるものであり、その紫外線吸収剤は1種類を用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。紫外線吸収剤を入れる場合は、ラジカル重合な可能化合物の合計100重量部に対して、通常0.01〜1重量部の割合で含有させてもよい。
『セルロース系繊維材料以外の充填剤』
また、セルロース系繊維材料8以外の充填剤を含んでもよい。充填剤としては、例えば、無機粒子や有機高分子などが挙げられる。具体的には、シリカ粒子、チタニア粒子、アルミナ粒子などの無機粒子、ゼオネックス(日本ゼオン社)やアートン(JSR社)などの透明シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネートやPMMAなどの汎用熱可塑性ポリマーなどが挙げられる。上述したもの内、ナノサイズのシリカ粒子を用いることにより、透明性を維持することができる。また、紫外線硬化性モノマーと構造の似たポリマーを用いることにより、一般的なポリマーの溶解濃度よりも高い濃度までポリマーを溶解させることが可能である。
『シランカップリング剤』
また、シランカップリング剤を添加してもよい。シランカップリング剤としては、例えば、γ−((メタ)アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−((メタ)アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、γ−((メタ)アクリロキシプロピル)メチルジエトキシシラン、γ−((メタ)アクリロキシプロピル)トリエトキシシラン、γ−(アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン等は分子中に(メタ)アクリル基を有しており、他のモノマーと共重合することができるので好ましい。シランカップリング剤は、ラジカル重合な可能化合物の合計に対して通常0.1〜50重量%、好ましくは1〜20重量%となるように含有させる。かかる配合量が少な過ぎる場合には、これを含有させる効果が十分に得られない。一方、かかる配合量が多過ぎると、硬化物の透明性などの光学特性が損なわれる恐れがある。
〔重合硬化工程〕
本実施例に係る透光性を備える樹脂を含む繊維複合膜4の形成に用いられる硬化性組成物は、公知の方法で重合硬化させることもできる。
公知の方法としては、例えば、熱硬化又は放射線硬化が挙げられるが、放射線硬化を用いることが好ましい。放射線としては、赤外線、可視光線、紫外線、又は電子線を用いることができるが、より好ましくは波長が200nm〜450nm程度の光であり、更に好ましくは波長が250〜400nmの紫外線である。
具体的には、加熱によりラジカルを発生する熱重合開始剤を硬化性組成物に対して予め添加し、その後に加熱して重合(以下、「熱重合」とも称する)させる方法、紫外線等の放射線によりラジカルを発生する光重合開始剤を硬化性組成物に対して予め添加し、その後に当該放射線を照射して重合(以下、「光重合」とも称する)させる方法、又は熱重合開始剤及び光重合開始自在を併用して予め添加し、その後に加熱及び放射線照射することで熱と光の組み合わせにより重合させる方法がある。なお、本実施例においては光重合がより好ましい。
一般に、光重合開始剤として、光ラジカル発生剤が用いられる。光ラジカル発生剤として、上述した用途に用い得ることが知られている公知の化合物を用いることができる。例えば、ベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホシフィンオキシド等が挙げられる。これらの中において、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドが好ましい。なお、これらの光重合開始剤は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
光重合開始剤の成分量は、硬化性組成物中のラジカル重合な可能化合物の合計を100重量部としたとき、0.001重量部以上、好ましくは0.01重量部以上、更に好ましくは0.05重量部以上である。その上限は、一般的に、1重量部以下、好ましくは0.5重量部以下、更に好ましくは0.1重量部以下である。光重合開始剤の添加量が多すぎると、重合が急激に進行し、得られる硬化物の複屈折を大きくするだけでなく色相も悪化する。例えば、開始剤の量を5重量部とした場合、開始剤の吸収により、紫外線の照射と反対側に光が到達できずに未硬化の部分が生ずる。また、黄色く着色し色相の劣化が著しい。一方、少なすぎると紫外線照射を行っても重合が十分に進行しないおそれがある。従って、上述した問題が発生しない範囲内において、光重合開始剤の添加量を適宜調整することが好ましい。
また、上述した光重合開始剤に熱重合開始剤を添加してもよい。熱重合開始剤としては、例えば、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシカーボネート、パーオキシケタール、又はケトンパーオキサイドが挙げられる。具体的にはベンゾイルパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)ジクミルパーオキサイド、ジt−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルハイドロパーキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、又は1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイドを用いることができる。光照射時に熱重合が開始すると重合を制御することが難しくなるため、上述した熱重合開始剤は、1分半減期温度が120℃以上であることが好ましい。なお、上述した熱重合開始剤は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
硬化に際して照射する放射線の量は、光重合開始剤がラジカルを発生させる範囲であれば任意であるが、モノマーの組成及び光重合開始剤の種類及び量に応じて、波長300〜450nmの紫外線を、好ましくは0.1J/cm以上200J/cm以下の範囲で照射してもよい。1J/cm以上20J/cmの範囲で上述した紫外線を照射することがより好ましい。このような範囲で紫外線を照射する理由は、放射線の量が極端に少ない場合、重合が不完全となるため硬化物の耐熱性、機械特性が十分に発現されないこと、また、極端に過剰な量の放射線を放射すると硬化物の黄変等の光による劣化を生じることがあるからである。また、放射線を複数回に分割して照射することがより好ましい。すなわち1回目に全照射量の1/20〜1/3程度を照射し、2回目以降に必要残量を照射すると、複屈折のより小さな硬化物を得ることができる。なお、使用するランプの具体例としては、メタルハライドランプ、高圧水銀灯ランプ、紫外線LEDランプがある。
重合をすみやかに完了させる目的で、上述したような光重合と熱重合を同時に行ってもよい。この場合には、放射線照射と同時に硬化性組成物を30℃以上300℃以下の範囲で加熱して硬化を行う。この場合、硬化性組成物には、重合を完結するために熱重合開始剤を添加してもよいが、熱重合開始剤を大量に添加すると硬化物の複屈折の増大と色相の悪化をもたらすおそれがある。従って、モノマー量の合計に対して、一般に、0.1重量%以上2重量%以下、より好ましくは0.3重量%以上1重量%以下の重合開始剤を用いることが好ましい。
〔空隙率〕
本変形例のような繊維複合膜4に樹脂を注入又は含浸させて繊維複合膜4”を得る場合には、繊維複合膜4の空隙率が小さいと樹脂が注入又は含浸されにくくなるため、ある程度の空隙率があることが好ましい。この場合の空隙率は、10体積%以上、好ましくは20体積%以上である。
また、透光性を備える樹脂を注入又は含浸させる場合の空隙率を制御する方法として、上述したアルコール等の有機溶媒より沸点の高い溶媒を上述した有機溶媒に混合させて混合溶媒を生成し、生成した混合溶媒の沸点より低い温度で乾燥させる方法が挙げられる。この場合には、必要に応じて、乾燥後に残っている高い沸点の溶媒を、他の溶媒に置換した後に、樹脂を注入又は含浸させる。濾過によって溶媒が除去された繊維複合膜4は、その後、乾燥を行うが、場合によっては乾燥を行わずに樹脂を注入又は含浸させてもよい。すなわち、セルロース系繊維材料8を含有する分散液と蛍光体材料7との混合液を濾過し、その後に樹脂を注入又は含浸する場合、乾燥工程を経ずそのまま樹脂を注入又は含浸することもできる。
しかしながら、空隙率、膜厚の制御、膜形状の構造をより強固にする意味でも乾燥処理を施すほうが好ましい。かかる乾燥処理は、送風乾燥、減圧乾燥、又は加圧乾燥のいずれを用いてもよく、更には加熱乾燥を用いてもよい。加熱乾燥の場合には、加熱温度が50℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましく、また、250℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましい。加熱温度が低すぎると乾燥時間が長くなり、乾燥不十分で水分が残る可能性がある。逆に、加熱温度が高すぎるとセルロースが分解する恐れがある。また、加圧する場合には、0.01MPa以上が好ましく、0.1MPa以上がより好ましく、また、5MPa以下が好ましく、1MPa以下がより好ましい。なお、圧力が低すぎると乾燥が不十分になる可能性がり、圧力が高すぎるとセルロース繊維平面構造体がつぶれたり、又はセルロースが分解する可能性がある。
〔積層構造体〕
本変形例に係る繊維複合膜4”を第1層とし、上述した実施例に係る繊維複合膜4を第2層として貼り合わせ、繊維複合膜4及び 繊維複合膜4”から構成される2層構造の積層構造体を形成し、当該積層構造体によってLEDチップ3を被覆してもよい。なお、このように積層する場合には、その積層数や積層構成には特に制限はない。
また、上述した実施例及び変形例に係る繊維複合膜4及び繊維複合膜4”は、その用途に応じて、繊維複合膜4及び繊維複合膜4”上に無機膜が更に積層されてもよい。更には、上述した積層構造体に更に無機膜が積層されたものであってもよい。ここで用いられる無機膜は、セルロース繊維複合体の用途に応じて適宜決定され、例えば、白金、銀、アルミニウム、金、銅等の金属、シリコン、ITO、SiO、SiN、SiO、ZnO等、TFT等が挙げられ、その組み合わせや膜厚は任意に設計することができる。
<第2実施例>
第1実施例に係る発光装置1においては、繊維複合膜4、4’、4”がLEDチップ3に接触しつつLEDチップ3を被覆していたが、このような構造に限定されることはなく、例えば、繊維複合膜がLEDチップから離間しつつLEDチップを囲むように配置されてもよい。このような構造を有する発光装置を図5を参照しつつ説明する。
図5は、本発明の第2実施例に係る発光装置11の要部拡大断面図である。図5に示すように、本実施例において発光装置11は、配線基板12、半導体発光素子である複数のLEDチップ13、及び繊維複合膜(繊維複合体)14から構成されている。なお、図5においては、図1と同様に1つのLEDチップ13のみを記載している。
発光装置11を構成する配線基板12は、第1実施例1に係る発光装置1を構成する配線基板2と同一であり、その説明については省略する。また、発光装置11を構成するLEDチップ13は、第1実施例1に係る発光装置1を構成するLEDチップ3と同一であり、その説明についても省略する。
繊維複合膜14の両端は、配線基板12に接触し且つ固着されている。繊維複合膜14は、全体として湾曲し、LEDチップ13から離間するとともに、LEDチップ13の周囲を囲むように配置されている。すなわち、繊維複合膜14とLEDチップ13との間には空隙が存在し、繊維複合膜14はLEDチップ13から空隙を介して離間していることになる。そして、当該空隙の断面形状は半円状であり、当該空隙は全体としてトンネル状に形成されている。従って、本実施例においては、複数のLEDチップ13は当該空隙の伸長方向に沿って一列に並置されている。なお、空隙の断面形状は半円状に限られず、例えば、円弧状であってもよい。
ここで、繊維複合膜14は、第1実施例に係る繊維複合膜4、4’、4”のいずれかと同一の組成及び構造を有している。従って、繊維複合膜14は、一般的な紙のような材質であり、その形状を自在に変形することができる。このような特性から、繊維複合膜14の両端のみを配線基板12に接触させて固着することができ、更には繊維複合膜14を湾曲させることもできる。なお、繊維複合膜14は、第1実施例に係る繊維複合膜4、4’、4”のいずれかと同一の組成及び構造を有しているため、その組成及び構造についての説明は省略する。
また、繊維複合膜14上(すなわち、LEDチップ13から離れた面上)に、第1実施例に係る封止材5を形成してもよい。このような構造により、発光装置11の強度が向上し、繊維複合膜14がLEDチップ13に向かった屈曲又は凹み等の発生を防止することができる。
なお、上述した実施例においては、繊維複合膜14の両端が配線基板12に固着されていたが、これに限定されることはなく、例えば、繊維複合膜14の外縁部全体が配線基板12に固着されてもよい。このような場合には、繊維複合膜14が椀状に形成され、LEDチップ13と繊維複合膜14との間の空隙は半球状となる。この場合に、空隙の断面形状は半円状に限られず、全体としてトンネル状の空隙と同様に、円弧状であってもよい。
そして、上述した実施例において、当該空隙の一部又は全部を封止材で充填してもよい。
<第3実施例>
第1実施例に係る発光装置1においては、繊維複合膜4、4’、4”がLEDチップ3に接触しつつLEDチップ3を被覆していたが、このような構造に限定されることはなく、例えば、封止材がLEDチップに接触しつつLEDチップを被覆してもよい。このような構造を有する発光装置を図6を参照しつつ説明する。
図6は、本発明の第3実施例に係る発光装置21の要部拡大断面図である。図6に示すように、本実施例において発光装置21は、配線基板22、半導体発光素子である複数のLEDチップ23、繊維複合膜(繊維複合体)24、及び封止材25から構成されている。なお、図6においては、図1と同様に1つのLEDチップ23のみを記載している。
発光装置21を構成する配線基板22は第1実施例1に係る発光装置1を構成する配線基板2と同一であり、その説明については省略する。また、発光装置11を構成するLEDチップ13は、第1実施例1に係る発光装置1を構成するLEDチップ3と同一であり、その説明についても省略する。
封止材25は、第1実施例に係る封止材5と同一の材料から構成されており、LEDチップ23を覆ってモールディングすることのできる封止材料が用いられる。すなわち、封止材25は、液状又はゲル状の特性を有し、LEDチップ23の表面を容易且つ正確に覆うことができる。なお、上述したように、封止材25は第1実施例に係る封止材5と同一の材料から構成されているため、その材料等の説明は省略する。
繊維複合膜24は、封止材25上に貼り付けられている。また、繊維複合膜24は、第1実施例に係る繊維複合膜4、4’、4”のいずれかと同一の組成及び構造を有している。すなわち、繊維複合膜24内にも蛍光体粒子6が強固に担持されている。このため、発光装置24においては、LEDチップ23から放射されて封止材25を透過した光を波長変換し、LEDチップ23から放射された光とは異なる色の光を外部に放射することができる。なお、上述したように、繊維複合膜24は第1実施例に係る繊維複合膜4、4’、4”のいずれかと同一の組成及び構造を有しているため、その組成及び構造等の説明は省略する。
なお、本実施例において、発光装置21は必ず封止材25を備えている必要はなく、LEDチップ23と繊維複合膜24との間に空隙が形成されていてもよい。
(封止材の変形例)
第3実施例に係る封止材25は、第1実施例に係る封止材5と同一であることから、封止材料から構成されているが、これに限定されることはなく、例えば、セルロース繊維を封止材モノマー中に分散させたモノマーを重合して得られる封止材を用いてもよい。すなわち、図7に示すように、LEDチップ23を樹脂及び繊維から構成される封止材25’によって覆ってもよい。また、セルロース繊維を封止材モノマー中に分散させたモノマーは、例えばセルロース繊維原料を封止材モノマー中さらには封止材モノマーと相溶する溶媒中で解繊処理し、必要に応じて封止材モノマーと相溶する溶媒を除去することにより得られる。これらのセルロース繊維を封止材モノマー中に分散させたモノマーを前述の方法で硬化させることにより封止材25’が得られる。
<繊維複合膜の評価>
上述した第1実施例に係る繊維複合膜、及び蛍光体粒子を担持した従来から知られた繊維部材について、比較評価を行った。以下に、繊維複合膜の比較評価の詳細な内容及び結果を説明する。
(繊維複合膜中の平均細孔、セルロース系繊維材料の数平均繊維径)
繊維複合膜中の平均細孔は、光学顕微鏡、SEM、又はTEM等の装置で観察し、計測して求めた。具体的には、30,000倍に拡大したSEM写真の対角線に線を引き、その近傍にある細孔をランダムに12点抽出し、最も大きい細孔と最も小さい細孔を除去した10点の測定値の平均を平均細孔とした。
同様に、セルロース系繊維材料の数平均繊維径は、30,000倍に拡大したSEM写真の対角線に線を引き、その近傍にある繊維をランダムに12点抽出し、最も太い繊維と最も細い繊維を除去した10点の測定値の平均を平均繊維径とした。
(蛍光体の平均粒径)
蛍光体粒子の平均粒径は、レーザー回折・散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置によって測定した。レーザー回折・散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置を用いて、試料を測定し、粒度分布(累積分布)を求めたときの体積基準の相対粒子量が50%になる粒子径(メディアン径)を平均粒径とした。
(α−セルロース量の測定方法)
乾燥させたセルロース系繊維材料(約1g)を300ml容ビーカーにとり、17.5%水酸化ナトリウム水溶液25mlを加え、20℃の恒温水槽中で3分間放置したのち、5分間ガラス棒を使って試料を軽くつぶして水酸化ナトリウム水溶液の試料への吸収を均一にした。試料に水酸化ナトリウム水溶液を加えたときから、30分間20℃の恒温水槽中に放置した。この間、ビーカーは時計皿で覆った。30分後、20℃の水25mlを加え、1分間攪拌した。次いで、5分間放置したのち、内容物をあらかじめ秤量びんに入れて恒量を求めたガラス濾過器(1GP250)を用いて、吸引濾取し、先端の平らなガラス棒で時々押しながら、20℃の水で手早く(3分間以内)に洗浄した。濾取した内容物にさらに10%酢酸40mlを注ぎ、吸引濾過して液をできるだけ除去し、1Lの煮沸水で洗浄、105℃±3℃の乾燥機中で乾燥し、デシケーター中で放冷後秤量した。増加した重量をα―セルロース量とした。
(繊維複合膜の線膨張係数)
繊維複合膜をレーザーカッターにより、3mm幅×40mm長にカットした。これをSII製TMA6100を用いて引張モードでチャック間20mm、荷重10g、窒素雰囲気下、室温から180℃まで5℃/min.で昇温し、次いで180℃から20℃まで5℃/min.で降温し、更に20℃から180℃まで5℃/min.で昇温した際の2度目の昇温時の20℃から180℃の測定値から線膨張係数を求めた。
(セルロース繊維原料の製造例1)
木粉(米国産松)に2重量%に調整した炭酸ナトリウム水溶液を加え、液温78〜82℃で常時攪拌しながら6時間加熱した。この処理後に液を濾別し、残った木粉を水で洗浄、濾別した。次に、残った木粉に酢酸0.27重量%、亜塩素酸ナトリウム1.33重量%に調整した水溶液を加え、液温78〜82℃で5時間加熱した。処理後に液を濾別し、残った木粉を水で洗浄、濾別した。次に、残った木粉に5重量%に調整した水酸化ナトリウム水溶液を加え、常温〜30℃で16時間静置した。最後に、残った木粉を水で洗浄、濾別することによりセルロース繊維原料を得た。なお、この精製処理実施時には濾別する際も含めてセルロース繊維原料を完全に乾燥させることなく常に水に濡れた状態(含水量10重量%以上)にした。当該セルロース繊維原料中のセルロースI型結晶性セルロースからなる繊維の含有率は78%であった。
得られたセルロース繊維原料を4重量%で6Lの水懸濁液とし、高速回転式ホモジナイザー(エム・テクニック社製クレアミックス2.2S)にて20000rpmで3時間処理した。そして、処理後の水懸濁液を0.5重量%に希釈し、5Lを超音波ホモジナイザーで2時間処理した。(出力2000W)これを遠心分離機にて35000Gにて遠心分離し上澄み液を得た。得られたセルロース系繊維材料の数平均繊維径は15nmであった。
(セルロース繊維原料の製造例2)
木粉(米国産松)を炭酸ナトリウム2重量%水溶液で90℃にて4時間脱脂し、これを脱塩水で洗浄して脱脂木粉を得た。脱脂木粉をpa法(過酢酸水溶液中で90℃、1時間処理)にて脱リグニンした。最後に脱塩水で洗浄し、脱リグニン処理した木粉を得た。得られた脱リグニン処理木粉を水酸化カリウム5重量%水溶液に16時間浸漬して脱ヘミセルロース処理を行った。これを脱塩水で洗浄し、脱ヘミセルロース処理したセルロース繊維原料を得た。なお、この精製処理実施時には濾別する際も含めてセルロース繊維原料を完全に乾燥させることなく常に水に濡れた状態(含水量10重量%以上)にした。当該セルロース繊維原料中のセルロースI型結晶性セルロースからなる繊維の含有率は72%であった。
得られたセルロース繊維原料を0.5重量%で6Lの水懸濁液とし、高速回転式ホモジナイザー(エム・テクニック社製クレアミックス2.2S)にて20000rpmで9時間処理した。得られたセルロース系繊維材料の数平均繊維径は90nmであった。
(製造例1に係る本サンプル1の評価結果)
上述した製造例1で得られたセルロース繊維分散液を40g/mはかりとり、固形分濃度を0.127重量%に調整した。ここに、YAG(平均粒径6.5μm)を40g/m分添加し攪拌により均一に分散させた。これを、PTFE製メンブレンフィルターを用いて吸引ろ過した。これによって得られた繊維複合膜は加圧プレス機(120℃)で5分乾燥した。最終的に得られた繊維複合膜の厚さは、70μmであった。また、当該繊維複合膜中の平均細孔は、50nmであった。更に、当該繊維複合膜中のセルロース系繊維材料の含有率は50%であった。そして、当該繊維複合膜の線膨張係数は、20℃〜180℃の範囲内において9ppm/Kであった。
(製造例2に係る本サンプル2の評価結果)
上述した製造例2で得られたセルロース繊維分散液を用いた以外は実施例1と同様にして繊維複合膜を得た。最終的に得られた繊維複合膜中の平均細孔は、520nmであった。また、当該繊維複合膜中のセルロース系繊維材料の含有率は、50%であった。更に、当該繊維複合膜の線膨張係数は、20℃〜180℃の範囲内において12ppm/Kであった。
(比較サンプルの製造方法及び評価結果)
上述した製造例1及び2に係る本サンプル1及び2と比較するために、以下の方法によって比較サンプルを作製し、評価を行った。具体的には、まず所定量のバインダー樹脂及び蛍光体を同一容器に入れ、あわとり練太郎(シンキー社製)によって混合攪拌し、その後にスクリーン印刷機(奥原電気社製ST−310F1G)を用いて厚さ100μmのPET樹脂上に塗布した。そして、PET樹脂上に塗布した状態で、150℃、30分の加熱によって乾燥させ、上記樹脂を固化させることで比較サンプルを作製した。ここで、バインダー樹脂としポリエステルウレタン樹脂(帝国インキ社製MRX−HF)を用いて、蛍光体層中におけるYAG(平均粒径6.5μm)の含有量が重量百分率で80%となるように調整した。得られたPETの繊膨張係数は、20℃〜70℃の範囲内において24ppm/K、70〜90℃の範囲内において79ppm/Kであった。
上述した評価結果から、本発明に係る繊維複合膜のいずれの線膨張係数も、比較例に係るサンプルの線膨張係数によりも低くかった。このような結果から、本発明に係る繊維複合膜を用いてLEDのパッケージ化がなされたとしても、金属又はセラミック等の部材に対する線膨張係数の差に起因する繊維複合膜の反り返り、及び発光装置自体の外形の変形を防止することができる。
<発光装置の評価>
上述した製造例1、製造例2、及び比較例によって得られた繊維複合膜を用いて発光装置を製造し、当該繊維複合膜を内蔵した発光装置について比較評価を行った。以下に、発光装置の比較評価の詳細な内容及び結果を説明する。
(LEDチップ)
半導体発光素子であるLEDチップとして、Al基板を用いて形成された350μm角、主発光ピーク波長460nmのInGaN系のLEDチップ1個を、シリコーン樹脂ベースの透明ダイボンドペーストを用いて、PPA樹脂パッケージ(例えば、3528SMD型)のキャビティ底面上に接着した。そして、当該接着後に150℃、2時間の加熱によってダイボンドペーストを硬化させ、直径25μmのAu線を用いてLEDチップ側の電極とパッケージ側の電極とを接続した。
(封止材及び封止)
2液型シリコーン樹脂の主剤100重量部に対し、硬化剤100重量部の割合で計量し、真空脱法混合機を用いて1400rpmで2分間の真空脱法による混合を行った。真空脱法混合によって得られた混合液(4μL)を、ボンディングされた状態のLEDチップの周囲に注入した。注入にはオートディスペンサーを用いた。その後、100℃、1時間の加熱処理を施し、更には150℃、5時間の加熱処理(恒温処理)を追加し、混合液を硬化させ、LEDチップを封止材によって覆った。このようにして半導体発光装置光源部を作成した。
(測定)
上述した工程を経て作成した半導体発光装置光源部上に、上述した本サンプル1、本サンプル2、比較サンプルを貼り付け、繊維複合膜が貼り付けされた状態のLEDチップ(すなわち、発光装置)に対して20mAの電流を供給した。そして、ファイバマルチチャンネル分光器に接続した直径1.5インチの積分球を各発光装置上に載せ、各発光装置に係る発光スペクトルを得た。測定点は、図8、図9、及び図10に示すように、繊維複合膜の中央部(点A)、繊維複合膜の外縁から3〜8mmの領域内の所望の1点(点B)、点Aを対称中心とした場合における点Bの対称点(点C)、点A及び点Cの中間点(点D)、点A及び点Bの中間点(点E)の5点についておこなった。なお、各サンプルは、図8乃至図10に示すように、その形状を正方形又は円状の2種類を準備した。
(評価)
発光スペクトルより算出された各発光装置の発光特性の値(色度座標Cx、Cy、色温度)平均値を図11に示す。また、上述した5点(点A〜点E)の最大値から最小値の差分について、比較サンプルが貼り付けられた発光装置における値を基準値(100%)とした場合における、本サンプル1が貼り付けされた発光装置及び本サンプル2が貼り付けされた発光装置における値の相対値を図12に示す。
図11に示すように、本サンプル1、本サンプル2及び比較サンプルを内蔵する発光装置から放射される光のいずれもが、3300Kから3700Kの色温度を示していた。また、図12に示すように、本サンプル1及び本サンプル2を内蔵する発光装置においては、比較サンプルを内蔵する発光装置と比較して、上述した5点の最大値から最小値の差分が90%以上小さく、繊維複合膜内における色の斑が低減されていることがわかった。すなわち、本サンプル1及び本サンプル2を内蔵する発光装置においては、繊維複合膜中の蛍光体粒子が均一に分散されていることがわかった。
1,11,21 発光装置
2,12,22 配線基板
3,13,23 LEDチップ(発光素子)
4,4’,4”,14,24 繊維複合膜(繊維複合体)
5,5’,5”,15,25 封止材
6,6a,6b 蛍光体粒子
7 蛍光体材料
8 セルロース系繊維材料

Claims (28)

  1. 発光素子と、
    複数の蛍光体粒子からなる蛍光体材料及びI型結晶性セルロースからなる繊維を少なくとも含むセルロース系繊維材料を含有し、前記発光素子を覆うように形成される繊維複合膜と、を有することを特徴とする発光装置。
  2. 前記I型結晶性セルロースからなる繊維によって形成される細孔の平均寸法は、前記蛍光体粒子の平均粒径よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
  3. 前記繊維複合膜は、前記発光素子から空隙を介して離間していることを特徴とする請求項2に記載の発光装置。
  4. I型結晶性セルロースからなる繊維及び透光性の樹脂を含有する繊維樹脂複合体が、前記繊維複合膜上に形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の発光装置。
  5. 発光素子と、
    前記発光素子を覆う透光性の封止材と、
    複数の蛍光体粒子からなる蛍光体材料及びI型結晶性セルロースからなる繊維を少なくとも含むセルロース系繊維材料を含有し、前記封止材上に形成された繊維複合膜と、を有することを特徴とする発光装置。
  6. 前記I型結晶性セルロースからなる繊維によって形成される細孔の平均寸法は、前記蛍光体粒子の平均粒径よりも小さく、前記蛍光体粒子が前記I型結晶性セルロースからなる繊維によって担持されることを特徴とする請求項5に記載の発光装置。
  7. 発光素子と、
    I型結晶性セルロースからなる第1の繊維及び透光性の樹脂を含有し、前記発光素子を覆うように形成された繊維樹脂複合体と、
    複数の蛍光体粒子からなる蛍光体材料及びI型結晶性セルロースからなる第2の繊維を少なくとも含むセルロース系繊維材料を含有し、前記繊維樹脂複合体上に形成された繊維複合膜と、を有することを特徴とする発光装置。
  8. 前記第2の繊維によって形成される細孔の平均寸法は、前記蛍光体粒子の平均粒径よりも小さく、前記蛍光体粒子が前記第2の繊維によって担持されることを特徴とする請求項7に記載の発光装置。
  9. 前記繊維複合膜において、前記発光素子から離間するにつれて前記蛍光体粒子の含有密度が低くなることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1に記載の発光装置。
  10. 前記繊維複合膜は、透光性を有する樹脂を更に含有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1に記載の発光装置。
  11. 複数の蛍光体粒子からなる蛍光体材料と、
    I型結晶性セルロースからなる繊維を少なくとも含むセルロース系繊維材料と、を含有することを特徴とする繊維複合体。
  12. 前記I型結晶性セルロースからなる繊維によって形成される細孔の平均寸法は、前記蛍光体粒子の平均粒径よりも小さいことを特徴とする請求項11に記載の繊維複合体。
  13. 前記蛍光体粒子の平均粒径は、1μm〜50μmであることを特徴とする請求項12に記載の繊維複合体。
  14. 前記細孔の平均寸法は、10nm〜30μmであることを特徴とする請求項12又は13に記載の繊維複合体。
  15. 前記細孔の平均寸法は、前記蛍光体粒子の平均粒径の1/10以下であることを特徴とする請求項12乃至14のいずれか1に記載の繊維複合体。
  16. 前記繊維複合体における前記セルロース系繊維材料の含有率は、10重量%以上であることを特徴とする請求項12乃至15のいずれか1に記載の繊維複合体。
  17. 前記I型結晶性セルロースは、平均繊維径が100nm以下のナノファイバーセルロースであることを特徴とする請求項12乃至16のいずれか1に記載の繊維複合体。
  18. 透光性を備える樹脂を更に含有することを特徴とする請求項12乃至17のいずれか1に記載の繊維複合体。
  19. 前記繊維複合体は膜形状を有し、
    前記複数の蛍光体粒子は、前記I型結晶性セルロースからなる繊維によって担持されることを特徴とする請求項12乃至18のいずれか1に記載の繊維複合体。
  20. 前記複数の蛍光体粒子は、膜厚方向と直交する平面内において前記前記セルロース系繊維材料内に均一に分散していることを特徴とする請求項19に記載の繊維複合体。
  21. 前記複数の蛍光体粒子の粒径は、膜厚方向において異なることを特徴とする請求項20に記載の繊維複合体。
  22. 前記繊維複合体は分散性を有することを特徴とする請求項12乃至18のいずれか1に記載の繊維複合体。
  23. 複数の蛍光体粒子からなる蛍光体材料と、I型結晶性セルロースからなる繊維を少なくとも含む液状のセルロース系繊維材料と、を混合する工程を有することを特徴とする繊維複合体の製造方法。
  24. 前記I型結晶性セルロースは、平均繊維径が100nm以下のナノファイバーセルロースであることを特徴とする請求項23に記載の製造方法。
  25. 前記繊維複合体における前記セルロース系繊維材料の含有率は、10重量%以上であることを特徴とする請求項24に記載の製造方法。
  26. 前記蛍光体材料、前記液状のセルロース系繊維材料、及び溶媒からなる混合液に吸引又は圧搾によって前記溶媒を除去し、前記溶媒が除去された前記混合液に乾燥処理を施して膜状化することを特徴とする請求項23乃至25のいずれか1に記載の製造方法。
  27. 前記混合液から前記溶媒を除去した後に、透光性を備える樹脂を更に注入又は含浸することを特徴とする請求項26に記載の製造方法。
  28. 前記蛍光体材料は、互いに異なる粒径を備える蛍光体粒子を含むことを特徴とする請求項23乃至27のいずれか1に記載の製造方法。
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