JP2013036035A - 微細セルロース繊維分散液の製造方法 - Google Patents

微細セルロース繊維分散液の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 複合体を製造する前に、予めセルロース繊維の不織布などを製造せずに、微細セルロース繊維と樹脂との複合体を得る方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 セルロース繊維と粘度が1.0以上で、屈折率が1.40以上の有機溶媒とを含有する分散液中で、セルロース繊維を解繊して、微細セルロース繊維を得ることを特徴とする、微細セルロース繊維分散液の製造方法、該製造方法により製造された微細セルロース繊維分散液、該微細セルロース繊維分散液と樹脂および/または樹脂前駆体を含有する、微細セルロース繊維-樹脂分散液、該微細セルロース繊維-樹脂分散液を用いて製造されるセルロース繊維複合体およびその製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、微細セルロース繊維分散液の製造方法に関する。より詳しくは、特定の有機溶媒の存在下にて、セルロース繊維の解繊を行う、微細セルロース繊維分散液の製造方法に関する。
近年、バクテリアセルロースをはじめとする微細セルロース繊維を用いた複合材料が、盛んに研究されている。セルロースは分子内水素結合に由来する剛直な構造を有することから、樹脂などと複合化することにより、低線膨張性を示す複合材料を得ることができる。
現在までに、セルロースを含む複合材料に関する様々な研究が行われており、例えば、特許文献1〜3においては、セルロース繊維の不織布またはゲルなどに液状の樹脂前駆体を含浸させ、セルロース繊維と樹脂との複合体を製造できることが開示されている。より具体的には、例えば、特許文献1では、セルロース繊維が分散した水分散液をテフロン(登録商標)製ろ過膜で抄紙してセルロース繊維の不織布を製造し、高温条件下にてエポキシ樹脂を該不織布に含浸させ、複合体を製造している。
一方、これらの文献に記載の方法では、複合体を製造する前に、予めセルロース繊維の不織布などを製造する必要があり、製造プロセスが複雑化してしまい、必ずしも工業的に満足できる方法ではなかった。また、該方法では樹脂を含浸させて複合体を得るため、樹脂とセルロース繊維との組成比を制御することが難しく、用途に応じて、所望の特性を有する複合体を作り分けることが困難であった。さらに、該方法で得られる複合体は樹脂層とセルロース繊維層との層状構造を有するため、それぞれの層の線膨張係数の相違から、加熱時に層間剥離を起こす懸念があった。
そこで、不織布などを製造せずに、微細セルロース繊維と樹脂とを含む分散液を用いて複合体を製造する方法が提案されている。通常、微細セルロース繊維は水中で解繊することにより得られるが、例えば、特許文献4では、セルロース繊維を有機溶媒中で解繊する方法が提案されている。有機溶媒中で解繊することにより、得られる微細セルロース繊維の分散液をそのまま樹脂と混合できるという利点がある。
特開2006−316253号公報 特開2007−165357号公報 特開2008−127510号公報 特開2009−261993号公報
しかしながら、セルロース繊維を有機溶媒中で解繊処理する場合、有機溶媒中でのセルロース繊維の分散性が十分に得られないという課題があった。
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、セルロース繊維の解繊処理を、特定の有機溶媒の存在下で実施することにより、上記課題を解決できることを見出した。
即ち、本発明は、セルロース繊維と有機溶媒とを含有する分散液中で、セルロース繊維
を解繊して、微細セルロース繊維を得る微細セルロース繊維分散液の製造方法であって、該有機溶媒は、粘度が1.0mPa・S以上で、屈折率が1.40以上の有機溶媒であることを特徴とする微細セルロース繊維分散液の製造方法、該製造方法により製造された微細セルロース繊維分散液、該微細セルロース繊維分散液と樹脂および/または樹脂前駆体を含有する、微細セルロース繊維-樹脂分散液、該微細セルロース繊維-樹脂分散液を用いて製造されるセルロース繊維複合体およびその製造方法、該セルロース繊維複合体を有する積層体、該積層体を用いた配線基板に存する。
本発明の製造方法により製造された微細セルロース繊維分散液は、微細セルロース繊維の分散性に優れる。また、該微細セルロース繊維分散液を用いて製造されたセルロース繊維複合体は、微細セルロース繊維の分散性が良好で、表面が平滑、線膨張係数が低いなどの優れた特性を有する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に特定はされない。
本発明は、セルロース繊維と有機溶媒とを含有する分散液中で、セルロース繊維を解繊して、微細セルロース繊維を得る微細セルロース繊維分散液の製造方法であって、該有機溶媒は、粘度が1.0mPa・S以上で、屈折率が1.40以上の有機溶媒であることを特徴とする微細セルロース繊維分散液の製造方法に関する。
本発明において、上記解繊されるセルロース繊維は、セルロースを含有する物質(セルロース含有物)またはセルロース含有物を用いて精製処理等を施して得られる材料(セルロース繊維原料)であればその種類は特に限定はされない。
なかでも、以下に列挙するセルロース含有物から精製処理を経て不純物を除去されたものであることが好ましい。
(セルロース含有物)
セルロース含有物としては、例えば、針葉樹や広葉樹等の木質(木粉等)、コットンリンターやコットンリント等のコットン、さとうきびや砂糖大根等の絞りかす、亜麻、ラミー、ジュート、ケナフ等の靭皮繊維、サイザル、パイナップル等の葉脈繊維、アバカ、バナナ等の葉柄繊維、ココナツヤシ等の果実繊維、竹等の茎幹繊維等の植物由来原料;バクテリアが産生するバクテリアセルロース;バロニアやシオグサ等の海草やホヤの被嚢;等の天然セルロースが挙げられる。これらの天然セルロースは、結晶性が高いので低線膨張率、高弾性率になり好ましい。中でも、植物由来原料が好ましい。
必要に応じて、セルロース含有物に後述する精製処理を施して、不純物を除去してもよいが、不純物を一部含むものを使用してもよい。
<精製処理>
本発明においては、セルロース含有物に精製処理を施して、セルロース含有物中のセルロース以外の物質、例えば、リグニンやヘミセルロース、樹脂(ヤニ)などを必要に応じて除去することが好ましい。精製方法は特に制限されないが、例えば、脱脂処理、脱リグニン処理、脱ヘミセルロース処理などが挙げられる。一例としては、セルロース含有物をベンゼン−エタノールで脱脂処理した後、ワイズ法で脱リグニン処理を行い、アルカリで脱ヘミセルロース処理をする方法が挙げられる。
また、脱リグニン処理としては、上記ワイズ法の他に、過酢酸を用いる方法(pa法)、過酢酸過硫酸混合物を用いる方法(pxa法)なども利用される。
また、必要に応じて、塩素、オゾン、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素、二酸化塩素
などで漂白処理を行ってもよい。
また、精製方法としては、一般的な化学パルプの製造方法、例えば、クラフトパルプ、サルファイトパルプ、アルカリパルプ、硝酸パルプの製造方法も挙げられる。また、セルロース含有物を蒸解釜で加熱処理して脱リグニン等の処理を行い、更に漂白処理等を行う方法も挙げられる。
精製処理には、分散媒として一般的に水が用いられるが、酸または塩基、その他の処理剤の水溶液であってもよく、この場合には、最終的に水で洗浄処理してもよい。
また、セルロース含有物を木材チップや木粉などの状態に破砕してもよく、この破砕は、精製処理前、処理の途中、処理後、いずれのタイミングで行ってもかまわない。
セルロース含有物の精製処理には、通常、酸または塩基、その他の処理剤を用いるが、その種類は特に限定されない。例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、硫化ナトリウム、硫化マグネシウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸マグネシウム、亜硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、酸化ナトリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酢酸、シュウ酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸ナトリウム、塩素酸ナトリウム、二酸化塩素、塩素、過塩素酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、過酸化水素、オゾン、ハイドロサルファイト、アントラキノン、ジヒドロジヒドロキシアントラセン、テトラヒドロアントラキノン、アントラヒドロキノン、また、エタノール、メタノール、2−プロパノールなどのアルコール類およびアセトンなどの水溶性有機溶媒などが挙げられる。これらの処理剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
また、2種以上の処理剤を用いて、2以上の精製処理を行うこともでき、その場合、異なる処理剤を用いた精製処理間で、水で洗浄処理することが好ましい。
精製処理時の温度、圧力は特に制限はなく、温度は0℃以上100℃以下の範囲で選択されることが好ましく、1気圧を超える加圧下での処理の場合、温度は100℃以上200℃以下とすることが好ましい。
(セルロース繊維原料)
セルロース含有物を精製して得られたセルロース繊維は、通常、含水状態(水分散液)として得られる。セルロース含有物を精製して得られたセルロース繊維を以下セルロース繊維原料ということがある。
また、セルロース繊維原料としては、広葉樹クラフトパルプ、針葉樹クラフトパルプ、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ、広葉樹漂白クラフトパルプ、針葉樹漂白クラフトパルプ、リンターパルプなども挙げられる。
(繊維径)
解繊されるセルロース繊維の繊維径は特に制限されるものではなく、解繊効率および取扱い性の点から、数平均繊維径としては10μm〜100mmであることが好ましく、50μm〜0.5mmであることがより好ましい。
このような繊維径とするには、例えば切断や破砕などの機械的処理をセルロース含有物等に施せばよい。機械的処理は、精製処理前、処理中、処理後のいずれの時期に行ってもよい。例えば、精製処理前であれば衝撃式粉砕機や剪断式粉砕機などを用い、また精製処理中、処理後であればリファイナーなどを用いて行うことができる。
例えば、チップ等の数cm大のものを精製処理したものである場合、リファイナーやビーター等の離解機で機械的処理を行い、数mm程度にすることが好ましい。
なお、数平均繊維径の測定方法は特に限定されず、SEMやTEM等で観察して、写真の対角線に線を引き、その近傍にある繊維をランダムに12点抽出し、最も太い繊維と最
も細い繊維を除去した10点の測定値を平均して求めることができる。
(化学修飾)
本発明においては、使用されるセルロース繊維は、化学修飾によって誘導化されたもの(化学修飾されたセルロース繊維)であってもよい。化学修飾とは、セルロース中の水酸基が化学修飾剤と反応して化学修飾されたものである。
化学修飾は、上述した精製処理の前に行っても、後に行ってもよいが、化学修飾剤の効率的な反応の観点で、精製処理後のセルロース繊維(セルロース繊維原料)に対して化学修飾することが好ましい。なお、該化学修飾は、後述する解繊処理によってセルロース繊維を解繊した後に行ってもよい。
化学修飾によってセルロースの水酸基に導入する置換基(水酸基中の水素原子と置換して導入される基)は特に制限されず、例えば、アセチル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロピオニル基、プロピオロイル基、ブチリル基、2−ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、フロイル基、シンナモイル基等のアシル基、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアノイル基等のイソシアネート基、メチル基、エチル基、プロピル基、2−プロピル基、ブチル基、2−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基等のアルキル基、オキシラン基、オキセタン基、チイラン基、チエタン基等が挙げられる。これらの置換基の中の水素が水酸基、カルボキシ基等の官能基で置換されても構わない。また、アルキル基の一部が不飽和結合になっていても構わない。これらの中では特にアセチル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基等の炭素数2〜12のアシル基が好ましい。
(化学修飾剤)
修飾方法は、特に限定されるものではないが、セルロース繊維と次に挙げるような化学修飾剤とを反応させる方法がある。
化学修飾剤の種類としては、例えば、エステル基を形成させる場合は、酸、酸無水物、およびハロゲン化試薬等が、エーテル基を形成させる場合は、アルコール、フェノール系化合物、アルコキシシラン、フェノキシシラン、およびオキシラン(エポキシ)等の環状エーテル化合物等が、カルバマート基を形成させる場合は、イソシアナート化合物等が挙げられる。これらの化学修飾剤は、1種または2種以上を用いても構わない。
エステル基を形成させる化学修飾剤である酸としては、例えば、酢酸、アクリル酸、メタクリル酸、プロパン酸、ブタン酸、2−ブタン酸、ペンタン酸、安息香酸、ナフタレンカルボン酸等が、酸無水物としては、例えば、無水酢酸、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、無水プロパン酸、無水ブタン酸、無水2−ブタン酸、無水ペンタン酸、無水安息香酸、無水フタル酸、無水マレイン酸等が挙げられる。ハロゲン化試薬としては、例えば、アセチルハライド、アクリロイルハライド、メタクロイルハライド、プロパノイルハライド、ブタノイルハライド、2−ブタノイルハライド、ペンタノイルハライド、ベンゾイルハライド、ナフトイルハライド等が挙げられる。
エーテル基を形成させる化学修飾剤であるアルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール等が挙げられる。フェノール系化合物としては、フェノール、ナフトール等が挙げられる。アルコキシシランとしては、例えば、メトキシシラン、エトキシシラン等が、また、フェノキシシラン等が挙げられる。
環状エーテル化合物としては、例えば、エチルオキシラン、エチルオキセタン、オキシ
ラン(エポキシ)、フェニルオキシラン(エポキシ)が挙げられる。
カルバマート基を形成させる化学修飾剤であるイソシアナート化合物としては、メチルイソシアナート、エチルイソシアナート、プロピルイソシアナート、フェニルイソシアナートが挙げられる。
これらの中では、特に、無水酢酸、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、ベンゾイルハライド、ナフトイルハライドが好ましい。
これらの化学修飾剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(化学修飾方法)
化学修飾は、公知の方法によって実施することができる。すなわち、常法に従って、セルロース繊維と化学修飾剤とを反応させることによって、化学修飾を実施できる。この際、必要に応じて溶媒や触媒を使用してもよく、加熱、減圧等を行ってもよい。
なお、セルロース繊維原料を用いる場合、該セルロース繊維原料は通常含水状態であるので、この水を反応溶媒と置換して、化学修飾剤と水との反応を極力抑制することが好ましい。また、水を除去するために原料の乾燥を行うと、後述する解繊処理での原料の微細化が進行しにくくなるため、乾燥工程を入れることは好ましくない。
化学修飾剤の量は特に限定されず、化学修飾剤の種類によっても異なるが、セルロースの水酸基のモル数に対して、0.01倍以上が好ましく、0.05倍以上がより好ましく、100倍以下が好ましく、50倍以下がより好ましい。
溶媒としては、エステル化を阻害しない水溶性有機溶媒を用いることが好ましい。水溶性有機溶媒としては、例えば、アセトン、ピリジン等の有機溶媒や、蟻酸、酢酸、蓚酸等の有機酸が挙げられ、特に酢酸等の有機酸が好ましい。酢酸等の有機酸を用いることで、化学修飾がセルロースに均一に進行するため、後述する解繊がしやすくなり、得られる複合体が高耐熱性、高生産性を示すと考えられる。また、上記溶媒以外のものを併用しても構わない。
使用される溶媒の量は特に限定されないが、通常、セルロース重量に対して、0.5倍以上が好ましく、1倍以上がより好ましく、200倍以下が好ましく、100倍以下がより好ましい。
触媒としては、ピリジン、トリエチルアミン、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム等の塩基性触媒や、酢酸、硫酸、過塩素酸等の酸性触媒を用いることが好ましい。触媒の量は特に限定されず、種類によっても異なるが、通常、セルロースの水酸基のモル数に対して、0.01倍以上が好ましく、0.05倍以上がより好ましく、100倍以下が好ましく、50倍以下がより好ましい。
温度条件は特に制限されないが、高すぎるとセルロースの黄変や重合度の低下等が懸念され、低すぎると反応速度が低下することから、10〜130℃が好ましい。反応時間も特に制限されず、化学修飾剤や化学修飾率にもよるが、数分から数十時間である。
このようにして化学修飾を行った後は、反応を終結させるために有機溶媒や水で十分に洗浄することが好ましい。未反応の化学修飾剤が残留していると、後で着色の原因になったり、樹脂と複合化する際に問題になったりするので好ましくない。
(化学修飾率)
化学修飾率とは、セルロース中の全水酸基のうちの化学修飾されたものの割合を示し、化学修飾率は下記の滴定法によって測定することができる。
(測定方法)
乾燥セルロース0.05gを精秤し、これにエタノール1.5ml、蒸留水0.5mlを添加する。これを60〜70℃の湯浴中で30分静置した後、0.5N水酸化ナトリウ
ム水溶液2mlを添加する。これを60〜70℃の湯浴中で3時間静置した後、超音波洗浄器にて30分間超音波振とうする。これを、フェノールフタレインを指示薬として0.1N塩酸標準溶液で滴定する。
ここで、滴定に要した0.1N塩酸水溶液の量Z(ml)から、化学修飾により導入された置換基のモル数Qは、下記式で求められる。
Q(mol)=0.5(N)×2(ml)/1000
−0.1(N)×Z(ml)/1000
この置換基のモル数Qと、化学修飾率X(mol%)との関係は、以下の式で算出される(セルロース=(C10=(162.14),繰り返し単位1個当たりの水酸基数=3,OHの分子量=17)。なお、以下において、Tは置換基の分子量である。
Figure 2013036035
これを解いていくと、以下の通りである。
Figure 2013036035
本発明において、上記の化学修飾率は特に制限されないが、セルロースの全水酸基に対して、1モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましく、10モル%以上が特に好ましい。また、65モル%以下が好ましく、50モル%以下がより好ましく、40モル%以下がさらに好ましい。上記範囲内であれば、分散液中における微細セルロース繊維の分散性がより向上し、また、樹脂と複合化した際、低線膨張係数を示す複合体が得られる。
<解繊処理>
本発明は、セルロース繊維と特定の有機溶媒とを含有する分散液中で、セルロース繊維を解繊して、微細セルロース繊維を得ることを特徴とする。本発明において、解繊とは、繊維を解すことであり、通常は繊維をより小さなサイズにすることができるものである。
(有機溶媒)
本発明では、該有機溶媒として、粘度が1.0mPa・S以上で、屈折率が1.40以上の有機溶媒を用いることを特徴とする。この範囲の有機溶媒を用いることにより、微細セルロース繊維の沈降や凝集が抑制され、非常に分散性の高い微細セルロース繊維分散液を得ることができる。この範囲が好ましい理由は定かではないが、有機溶媒の粘度が高い方が、微細セルロース繊維の沈降速度を低下させ、結果として粒子の分散を効果的に保持できると考えられる。また、分散系の分散体間に作用する分散力は分散体と分散媒の屈折率差が小さい方が小さくなることが知られていることから(J.N.イスラエルアチヴィリ「分子間力と表面力 第2版」朝倉書店)、微細セルロース繊維と近い屈折率を有する溶媒のほうがセルロース繊維の凝集を抑制し分散に有利であるためと考えられる。
粘度は1.0mPa・S以上であればよいが、1.1mPa・S以上が好ましく、1.5mPa・S以上がより好ましく、通常は100mPa・S以下である。また、屈折率は1.40以上であればよいが、1.41以上が好ましく、1.42以上がより好ましく、通常は1.60以下である。いずれも、25℃、常圧での値である。
有機溶媒の粘度は、通常、液体を測定するに用いられる粘度計で測定すればよいが、例えば、下記実施例で使用した装置やそれに準じた装置を使用することができる。
また、有機溶媒の屈折率も、通常、液体を測定するに用いられる屈折率計で測定すればよいが、例えば、下記実施例で使用した装置やそれに準じた装置を使用することができる。
有機溶媒として具体的には、芳香族系炭化水素、非プロトン性極性溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、グリコールエーテル系溶媒などの有機溶媒が挙げられ、このうち、上記条件を満たすものを使用することができる。尚、単独で、粘度が1.0mPa・S以上、屈折率が1.40以上を満たさない有機溶媒でも、2種以上の有機溶媒を混合することにより、これを満たせばよい。
このように本発明においては、該有機溶媒は2種以上の有機溶媒からなる混合溶媒であることも好ましい。有機溶媒として2種以上の溶媒を混合して用いる場合も、少なくとも1種が、粘度が1.0mPa・S以上で、屈折率が1.40以上の有機溶媒であることがより好ましい。
尚、2種以上の溶媒を混合して用いる場合、全溶媒中において、粘度が1.0mPa・S以上で、屈折率が1.40以上の有機溶媒が単独で、25重量%以上含まれていることが好ましく、50重量%以上含まれていることがより好ましく、75重量%以上含まれていることがさらに好ましい。
芳香族系炭化水素としては、好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素が挙げられ、具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
アルコール系溶媒としては、好ましくは炭素数1〜7のアルコール系溶媒が挙げられ、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどが挙げられる。
ケトン系溶媒(ケトン基を有する液体を指す)としては、好ましくは炭素数3〜9のケトン系溶媒が挙げられ、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジイソプロピルケトン、ジ−tert−ブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−オクタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘキシルメチルケトン、アセトフェノン、アセチルアセトン、ジオキサン等が挙げられる。
非プロトン性極性溶媒としては、ジメチルスルフォキシド(DMSO)などのスルホキシド系溶媒、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、2−ピロリドン、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒が挙げられる。
エーテル系溶媒としてはジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
グリコールエーテル系溶媒としては、好ましくは炭素数3〜9のグリコールエーテル系溶媒が挙げられ、具体的には、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、エチ
レングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。
特に、微細セルロース繊維と後述する樹脂または樹脂前駆体との分散性の点で、有機溶
媒としては、少なくとも1種が、ケトン系溶媒、非プロトン系溶媒が好ましく、特に、ケトン系溶媒が好ましい。具体的に、ケトン系溶媒としてはメチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、非プロトン系溶媒としてはN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが好ましい。
また、シクロヘキサノン、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどは、単独で、粘度が1.0mPa・S以上、屈折率が1.40以上を満たすため好ましい。
なお、本発明で使用される有機溶媒は、後の工程で有機溶媒を除去する工程があることから沸点が高すぎないことが好ましい。有機溶媒の沸点は300℃以下が好ましく、200℃以下が好ましく、180℃以下が更に好ましい。また、取り扱い性などの点から、0℃以上が好ましい。
セルロース繊維を解繊するにあたり、上記のような有機溶媒と、セルロース繊維とを含有する分散液(原料分散液)を調製する。
セルロース繊維原料が水分散液の状態、または、水を含んだ状態である場合、水を有機溶媒に置換することが好ましい。置換する方法は特に限定されないが、セルロース繊維を含有する水分散液から濾過などにより水を除去し、ここに解繊時使用する有機溶媒を添加し、攪拌混合し、再度濾過により有機溶媒を除去する方法が挙げられる。有機溶媒の添加と濾過を繰り返すことで、分散液中の媒体を水から有機溶媒に置換することができる。
なお、後述する解繊工程に使用する有機溶媒が非水溶性の場合、水溶性の有機溶媒に一度置換した後、非水溶性の有機溶媒に置換してもよい。
また、置換前の、水分散液中のセルロース繊維の含有量は、特に制限されないが、水分散液全量に対して、0.1〜60重量%が好ましい。同様に、置換後の分散液中のセルロース繊維の含有量は、分散液全量に対して、0.1〜60重量%が好ましい。
原料分散液中におけるセルロース繊維の含有量は特に限定されないが、得られる微細セルロース繊維分散液の粘度や液安定性が好適なものになるといった取扱い性の点から、原料分散液全量に対して、0.5重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましく、50重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましい。
原料分散液中における有機溶媒の含有量は特に限定されないが、得られる微細セルロース繊維分散液の粘度や液安定性が好適なものになるといった取扱い性の点から、原料分散液全量に対して、40重量%以上が好ましく、50重量%以上がより好ましく、99.9重量%以下が好ましく、99.5重量%以下がより好ましい。
(解繊方法)
解繊工程の具体的な方法は特に制限されないが、例えば、ビーズミルによる解繊処理、噴出による解繊(微細化)処理、回転式解繊方法による解繊処理、または超音波処理による解繊処理などが挙げられる。
解繊処理の中でも、ビーズミルによる処理は、解繊の効率がより向上し、微細セルロース繊維の分散性がより向上する。
これらの処理で解繊する場合は、原料分散液中の固形分濃度(セルロース繊維濃度)は特に制限されないが、2.5重量%以上が好ましく、3重量%以上がより好ましく、99重量%以下が好ましく、50重量%以下がより好ましい。この解繊工程に供する原料分散液中の固形分濃度が低過ぎると処理するセルロース量に対して液量が多くなり過ぎ効率が悪くなり、固形分濃度が高過ぎると流動性が悪くなる。
ビーズミルによる解繊処理としては、例えば、直径1mm程度のセラミック製ビーズを
セルロース繊維濃度0.5〜50重量%、具体的には、1重量%程度の原料分散液に入れ、ペイントシェーカーやビーズミル等を用いて振動を与え、セルロース繊維を解繊する方法などが挙げられる。
ビーズミルを行うための装置は、公知の装置を使用することができ、例えば、ウルトラアペックスミルUAM、デュアルアペックスミルDAM(ともに寿工業社製)、スターミル(アシザワファインテック社製)、OBミル(ターボ工業社製)などが挙げられる。
使用されるビーズの材質は特に制限されず、例えば、ガラス、ジルコニアなどが挙げられる。また、ビーズの粒径は特に制限されず、通常、直径0.01〜5mm程度である。
また、ビーズミルを行う条件は、溶媒の種類や、セルロース繊維の繊維径など使用材料に応じて適宜最適な条件が選択されるが、通常、周速4〜16m/secで、1〜5時間程
度行うことが好ましい。尚、ビーズミルで解繊を行う場合、異なる条件で複数回行ってもよい。
その他、メディアミルの一種として、回転する主軸および主軸の回転と連動して回転する副軸およびリングが粉砕媒体として繊維を解繊する方法が挙げられる。
また、ブレンダータイプの分散機や高速回転するスリットの間に、このような原料分散液を通して剪断力を働かせて解繊する方法(高速回転ホモジナイザー)や、高圧から急に減圧することによって、セルロース繊維間に剪断力を発生させて解繊する方法(高圧ホモジナイザー法)、マスコマイザーXのような対向衝突型の分散機(増幸産業)等を用いる方法などが挙げられる。
高速回転ホモジナイザーの場合、回転数が高い方が、剪断が掛かり、解繊効率が高くなる。回転数としては、例えば、10000rpm以上が好ましく、15000rpm以上がより好ましく、20000rpm以上が特に好ましい。なお、回転数の上限は特に制限されないが、装置の性能上の観点から、30000rpm以下が好ましい。また、処理時間は、1分以上が好ましく、5分以上がより好ましく、10分以上が特に好ましい。なお、処理時間は生産性の点から、6時間以下が好ましい。剪断により発熱が生じる場合は、液温が50℃を越えない程度に冷却することが好ましい。
また、原料分散液に均一に剪断がかかるように、攪拌または循環することが好ましい。
高圧ホモジナイザーを用いる場合、原料分散液を増圧機で好ましくは30MPa以上、より好ましくは100MPa以上、さらに好ましくは150MPa以上、特に好ましくは220MPa以上に加圧し、細孔直径50μm以上のノズルから噴出させ、圧力差が好ましくは30MPa以上、より好ましくは80MPa以上、さらに好ましくは90MPa以上となるように減圧する。この圧力差で生じるへき開現象により、セルロース繊維を解繊する。ここで、高圧条件の圧力が低い場合や、高圧から減圧条件への圧力差が小さい場合には、解繊効率が下がり、所望の繊維径とするための繰り返し噴出回数が多く必要となるため好ましくない。また、原料分散液を噴出させる細孔の細孔直径が大き過ぎる場合にも、十分な解繊効果が得られず、この場合には、噴出処理を繰り返し行っても、所望の繊維径のセルロース繊維が得られないおそれもある。
原料分散液の噴出は、必要に応じて複数回繰り返すことにより、微細化度を上げて所望の繊維径の微細セルロース繊維を得ることができる。この繰り返し回数(パス数)は、通常1回以上、好ましくは3回以上で、通常20回以下、好ましくは15回以下である。パス数が多い程、微細化の程度を上げることができるが、過度にパス数が多いとコスト高となるため好ましくない。
高圧ホモジナイザーの装置は特に制限されないが、例えば、ガウリン社製や、スギノマシン社製の「スターバーストシステム」を用いることができる。
噴出時の高圧条件が高いほど、圧力差により大きなへき開現象でより一層の微細化を図ることができるが、装置仕様の上限として、通常245MPa以下である。
同様に、高圧条件から減圧下への圧力差も大きいことが好ましいが、一般的には、増圧機による加圧条件から大気圧下に噴出することで、圧力差の上限は通常245MPa以下である。
また、原料分散液を噴出させる細孔の直径は小さければ容易に高圧状態を作り出せるが、過度に小さいと噴出効率が悪くなる。この細孔直径は、50μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましく、150μm以上がさらに好ましく、800μm以下が好ましく、500μm以下がより好ましく、350μm以下がさらに好ましい。
噴出時の温度(分散液温度)には特に制限はないが、通常5℃以上100℃以下である。温度が高すぎると装置、具体的には送液ポンプや高圧シール部等の劣化を早める恐れがあるため好ましくない。
なお、噴出ノズルは1本でも2本でもよく、噴出させた原料分散液を噴出先に設けた壁やボール、リングにぶつけてもよい。更にノズルが2本の場合には、噴出先で原料分散液同士を衝突させてもよい。
なお、このような高圧ホモジナイザーによる処理のみでも、本発明の微細セルロース繊維分散液を得ることは可能である。その場合には、十分な微細化度とするための繰り返し回数が多くなり、処理効率が悪いことから、1〜5回程度の高圧ホモジナイザー処理後に後述の超音波処理を行って微細化することが好ましい。超音波処理が施される、解繊処理が施された原料分散液中のセルロース濃度は、液全量に対して、0.5重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましく、50重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましい。セルロース濃度が低過ぎると非効率であり、高過ぎると粘度が高くなり解繊処理が不均一になる恐れがある。
また、解繊処理には、分散液を圧縮空気で音速まで加速・水滴化し衝突板に衝突させ、液滴内部と衝突板表面の液膜内に衝撃波を発生させ粒子の粉砕・分散を行う液滴衝突法も使用できる。装置は、例えばリックス社製湿式粉砕機G-smasherが挙げられる。
(微細セルロース繊維分散液)
上記解繊処理を経て得られた微細セルロース繊維の分散液(微細セルロース繊維分散液)中には、微細セルロース繊維が均一に分散しており、微細セルロース繊維の凝集や沈降が抑制され、優れた液安定性を有する。
(微細セルロース繊維の数平均繊維径)
上記方法によって得られた微細セルロース繊維分散液中の微細セルロース繊維の数平均繊維径は、分散液中の分散媒を乾燥除去した後、SEMやTEM等で観察することにより計測して求めることができる。
本発明により得られる微細セルロース繊維の数平均繊維径は、得られる複合体がより優れた低線膨張性を示す点より、400nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましく、80nm以下がさらに好ましく、50nm以下が特に好ましく、40nm以下が最も好ましい。尚、この数平均繊維径の下限は通常4nm以上である。
なお、上記数平均繊維径は、SEMやTEM等で観察して、写真の対角線に線を引き、その近傍にある繊維をランダムに12点抽出し、最も太い繊維と最も細い繊維を除去した10点を測定して、平均した値である。
微細セルロース繊維分散液中における微細セルロース繊維の含有量は使用される出発原料であるセルロース繊維量によって適宜調製されるが、分散液の安定性の点から、分散液全量に対して、0.5重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましく、50重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましく、30重量%以下がさらに好ましい。
なお、微細セルロース繊維分散液中の有機溶媒の含有量は、上述した原料分散液中の含有量と同じであり、好適な範囲も同じである。
(セルロースI型結晶)
上記解繊処理によって得られる微細セルロース繊維は、セルロースI型結晶構造を有することが好ましい。セルロースI型結晶は、他の結晶構造より結晶弾性率が高いため、高弾性率、高強度、低線膨張係数であり好ましい。
微細セルロース繊維がI型結晶構造であることは、その広角X線回折像測定により得られる回折プロファイルにおいて、2θ=14〜17°付近と2θ=22〜23°付近の二つの位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。
<微細セルロース繊維-樹脂分散液>
上記得られた微細セルロース繊維分散液と樹脂および/または樹脂前駆体とを混合することにより、微細セルロース繊維分散液と、樹脂および/または樹脂前駆体を含有す微細セルロース繊維-樹脂分散液を得ることができる。
(樹脂、樹脂前駆体)
本発明で使用される樹脂または樹脂前駆体は、微細セルロース繊維と複合化できる樹脂または樹脂前駆体であれば特に制限されない。樹脂または樹脂前駆体としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光(活性エネルギー線)硬化性樹脂、またはこれらの前駆体が挙げられる。また、樹脂または樹脂前駆体としては、アルコール系樹脂、アミド系樹脂、エーテル系樹脂、アミン系樹脂、芳香族系樹脂またはこれらの前駆体が挙げられる。また、樹脂または樹脂前駆体としてセルロース誘導体が挙げられる。
得られる複合体の各種性能、および、生産性(取扱い性)などの観点から、熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂前駆体、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂が好ましく挙げられる。
これら樹脂または樹脂前駆体は一種のみを用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
(熱可塑性樹脂およびその前駆体)
熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、芳香族ポリカーボネート系樹脂、脂肪族ポリカーボネート系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリオレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、熱可塑性ポリイミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリスルホン系樹脂、非晶性フッ素系樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、熱可塑性樹脂の前駆体とは、上記のような樹脂を製造するための前駆体を意味する。
(硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂、光(活性エネルギー線)硬化性樹脂とは、それぞれ、熱または光により硬化する樹脂のことを意味する。前駆体は、通常、常温では液状、半固体状または固形状であって、常温下または加熱下で流動性を示す物質を意味する。これらは、硬化剤、触媒、熱または光の作用によって重合反応や架橋反応を起こして分子量を増大させながら、網目状の三次元構造を形成してなる不溶不融の樹脂となり得る。
(熱硬化性樹脂)
本発明における熱硬化性樹脂またはその前駆体は特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、オキセタン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、珪素樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂等の樹脂またはその前駆体が挙げられる。
(光硬化性樹脂)
本発明における光硬化性樹脂またはその前駆体は特に限定されないが、例えば、上述の熱硬化性樹脂の説明において例示した、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、オキセタン樹脂等の樹脂またはその前駆体が挙げられる。
上記樹脂および/または樹脂前駆体のなかでも、室温付近で液状または有機溶媒に溶解するという点で、エポキシ樹脂またはその前駆体、アクリル樹脂またはその前駆体が好ましく、特にエポキシ樹脂またはその前駆体が好ましい。
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールアセトフェノン型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレノン型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂や、カテコール、レゾルシン、ハイドロキノンなどの単環2価フェノールのジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂や、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂などのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂や、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂等の種々のエポキシ樹脂が挙げられる。
これらのエポキシ樹脂は、アルキル基、アリール基、エーテル基、エステル基などの悪影響のない置換基で置換されていてもよい。
これらのエポキシ樹脂の中で特に好ましいものは、取り扱いのし易い、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、結晶性樹脂であり融点以上で低粘度となる4,4’−ビフェノール型エポキシ樹脂、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール型エポキシ樹脂、多官能であり硬化時に高架橋密度となり耐熱性の高い硬化物が得られるフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。
また、エポキシ樹脂は、重量平均分子量の低いモノマータイプ(例えば、Mw=200)のものから、分子量の高い高分子タイプ(例えば、Mw=90,000)のものまで使用できる。重量平均分子量が、100,000以上になると樹脂の取り扱いが困難になり、好ましくない。樹脂の取り扱い性の観点から、エポキシ樹脂の重量平均分子量は200〜80,000が好ましく、300〜60,000がより好ましい。
エポキシ樹脂前駆体としては、例えば、2価フェノール類が挙げられ、水酸基が芳香族環に結合したものであればどのようなものでもよい。例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールB、ビスフェノールAD、4−4’−ビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール等のビスフェノール類、ビフェノール、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ジヒドロキシナフタレン等が挙げられる。
また、エポキシ樹脂前駆体として、これらの2価フェノール類が、アルキル基、アリール基、エーテル基、エステル基などの非妨害性置換基で置換されたものも挙げられる。これらの2価フェノール類の中で好ましいものは、ビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノールであ
る。これらの2価フェノール類は、複数種を合わせて使用することもできる。
また、2価フェノール以外のものとしては多官能フェノール樹脂が挙げられ、フェノールノボラック型樹脂、ビスフェノール型ノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノ
ール樹脂、Xylok型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、メラミン変性フェノールノボラック樹脂、トリアジン構造含有ノボラック樹脂などが挙げられる。
アクリル樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド等の重合体及び共重合体などが挙げられる。なかでも、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルの重合体及び共重合体などが好ましく挙げられる。
アクリル樹脂前駆体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド等などが挙げられる。なかでも、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルなどが好ましく挙げられる。
アクリル樹脂の重量平均分子量は特に制限されないが、取り扱い性の観点から、300〜3,000,000が好ましく、400〜2,500,000がより好ましい。
(アルコール系樹脂)
アルコール系樹脂としては、ポリエチレングリコール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリビニルアルコール、アミロース、アミロペクチン、ソルビトル、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリブチロラクトン、ポリグリコール、ポリ乳酸等が挙げられる。
(アミド系樹脂)
アミド系樹脂としては、ポリアクリルアミド、キチン、キトサン、ポリビニルピロリドン、ポリカプロラクタム等が挙げられる。
(エーテル系樹脂)
エーテル系樹脂としては、クラウンエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
(アミン系樹脂)
アミン系樹脂としては、ポリアリルアミン、ポリリジン、各種のアミン変性アクリルコポリマー等が挙げられる。
(芳香族系樹脂)
芳香族系樹脂としては、ポリフェニレンオキサイド、カテキン、タンニン、テルペン等が挙げられる。
この中では、アルコール系樹脂、アミド系樹脂が好ましく、特に、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどが好ましい。
(セルロース誘導体)
セルロース誘導体としては、セルロース有機酸エステルとして、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、その他、酢化度を適宜調整したアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどがあげられる。また、セルロースエーテルとして、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、イオン性の置換基を持つセルロースエーテルが挙げられる。アルキルセルロースとしては、メチルセルロース、エチルセルロースなどが挙げられる。ヒドロキシアルキルセルロースとしては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロースなどが挙げられる。イオン性の置換基を持つセルロースエーテルとしては、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。
(その他添加剤)
微細セルロース繊維-樹脂分散液または微細セルロース繊維分散液に、必要に応じて、
連鎖移動剤、紫外線吸収剤、充填剤、シランカップリング剤、光・熱重合開始剤、硬化剤
、硬化促進剤などを使用してもよい。これらは、解繊工程時に共存させてもよいし、解繊工程後の微細セルロース繊維分散液に添加して使用してもよい。
なお、樹脂または樹脂前駆体として、エポキシ樹脂またはその前駆体を使用する場合は、エポキシ樹脂硬化剤を併用することもできる。通常、該硬化剤は、後述する解繊工程の後に、分散液に加えられる。
使用されるエポキシ樹脂硬化剤は特に限定されず、例えば、多価フェノール化合物類、アミン化合物類、酸無水物類、その他下記に挙げるようなものを用いることができる。
例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ハイドロキノン、レゾルシン、メチルレゾルシン、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシジフェニルエーテル、チオジフェノール類、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、テルペンフェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ビフェニルフェノール樹脂、臭素化ビスフェノールA、臭素化フェノールノボラック樹脂などの種々の多価フェノール類や、種々のフェノール類とベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキザールなどの種々のアルデヒド類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂類や、重質油またはピッチ類とフェノール類とホルムアルデヒド類との共縮合樹脂等の各種のフェノール樹脂類や、それら各種のフェノール(樹脂)類のフェノール性水酸基の全部もしくは一部をベンゾエート化あるいはアセテート化などのエステル化することによって得られる活性エステル化合物類や、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ピロメリット酸、メチルナジック酸等の酸無水物類や、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド、脂肪族ポリアミン、ポリアミド等のアミン類などが挙げられる。
カチオン系重合開始剤もエポキシ樹脂またはその前駆体の硬化剤として使用することができる。そのカチオン系重合開始剤としては、活性エネルギー線によりカチオン種またはルイス酸を発生する、活性エネルギー線カチオン系重合開始剤、または、熱によりカチオン種またはルイス酸を発生する熱カチオン重合開始剤を用いることができる。
例えば、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートなどのホスホニウム塩、2−メチルイミダゾ−ル、2−フェニルイミダゾ−ル、2−エチル−4−メチルイミダゾ−ル、2−ウンデシルイミダゾ−ル、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾ−ル、2,4−ジシアノ−6−[2−メチルイミ
ダゾリル−(1)]−エチル−S−トリアジンなどのイミダゾ−ル類、1−シアノエチル−
2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテ−ト、2−メチルイミダゾリウムイソシアヌレ−ト、2−エチル−4−メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレ−ト、2−エチル−1,4−ジメチルイミダゾリウムテトラフェニルボレ−トなどのイミダゾリウム塩、2,4
−6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノ−ル、ベンジルジメチルアミンなどのアミン類、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレ−トなどのアンモニウム塩、1,5−
ジアザビシクロ(5,4,0)−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−5−
ノネンなどのジアザビシクロ化合物などが挙げられる。
また、これらジアザビシクロ化合物のテトラフェニルボレ−ト、フェノール塩、フェノールノボラック塩、2−エチルヘキサン酸塩など、さらにはトリフル酸(Triflic acid
)塩、三弗化硼素エーテル錯化合物、金属フルオロ硼素錯塩、ビス(ペルフルオルアルキルスルホニル)メタン金属塩、アリールジアゾニウム化合物、芳香族オニウム塩、周期表第IIIa〜Va族元素のジカルボニルキレート、チオピリリウム塩、MF6 陰イオン(ここでMは燐、アンチモンおよび砒素から選択される)の形の周期表第VIb族元素、アリー
ルスルホニウム錯塩、芳香族ヨードニウム錯塩、芳香族スルホニウム錯塩、ビス[4−(
ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド−ビス−ヘキサフルオロ金属塩(例えば燐
酸塩、砒酸塩、アンチモン酸塩等)、アリールスルホニウム錯塩、ハロゲン含有錯イオンの芳香族スルホニウムまたはヨードニウム塩等を用いることができる。その他、鉄化合物の混合配位子金属塩およびシラノール−アルミニウム錯体も使用することが可能である。これらの塩のいくつかは、FX−512(3M社)、UVR−6990およびUVR−6974(ユニオン・カーバイド(Union Carbide)社)、UVE−1014およびUVE−1016(ジェネラル・エレクトリック(General Electric)社)、KI−85(デ
グッサ(Degussa)社)、SP−150およびSP−170(旭電化社)、並びに、サン
エイドSI−60L、SI−80LおよびSI−100L(三新化学工業社)として商品として入手できる。
また、好ましい熱カチオン系重合開始剤としては、トリフル酸塩であり、例としては、3M社からFC−520として入手できるトリフル酸ジエチルアンモニウム、トリフル酸トリエチルアンモニウム、トリフル酸ジイソプロピルアンモニウム、トリフル酸エチルジイソプロピルアンモニウム等(これらの多くはR.R.Almによって1980年10月発行のモダン・コーティングス(Modern Coatings)に記載されている)がある。
一方、活性エネルギー線カチオン系重合開始剤としても用いられる芳香族オニウム塩のうち、熱によりカチオン種を発生するものがあり、これらも熱カチオン系重合開始剤として用いることができる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、硬化促進剤としては、例えば、ベンジルジメチルアミン、各種のイミダゾール系化合物等のアミン類、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類等が挙げられる。
微細セルロース繊維-樹脂分散液中におけるセルロース繊維の含有量は特に限定されな
いが、得られる微細セルロース繊維分散液の粘度や液安定性が好適なものになるといった取扱い性の点から、分散液全量に対して、0.5重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましく、50重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましい。
微細セルロース繊維-樹脂分散液中における樹脂および/または樹脂前駆体の含有量は
特に限定されないが、分散液の粘度や液安定性が好適なものになるといった取扱い性の点から、分散液全量に対して、2重量%以上が好ましく、2.5重量%以上がより好ましく、95重量%以下が好ましく、80重量%以下がより好ましい。
微細セルロース繊維-樹脂分散液中における有機溶媒の含有量は特に限定されないが、
分散液の粘度や液安定性が好適なものになるといった取扱い性の点から、分散液全量に対して、1重量%以上が好ましく、5重量%以上がより好ましく、97.5重量%以下が好ましく、95重量%以下がより好ましい。
微細セルロース繊維-樹脂分散液中において樹脂および/または樹脂前駆体と有機溶媒
との重量比は特に限定さないが、分散液の粘度や液安定性が好適なものになるといった取扱い性の点から、有機溶媒の含有量は、樹脂および/または樹脂前駆体100重量部に対して、5〜2000重量部が好ましく、25〜1000重量部がより好ましい。
微細セルロース繊維-樹脂分散液中において微細セルロース繊維と樹脂および/または
樹脂前駆体との重量比は特に限定さないが、分散液の粘度や液安定性が好適なものになるといった取扱い性の点から、微細セルロース繊維の含有量は、微細セルロース繊維および樹脂および/または樹脂前駆体の合計量(100重量%)に対して、2.5重量%以上が好ましく、3重量%以上がより好ましく、5重量%以上がさらに好ましく、97.5重量%以下が好ましく、97重量%以下がより好ましく、95重量%以下がさらに好ましい。
<セルロース繊維複合体>
上述した微細セルロース繊維-樹脂分散液を用いることにより、微細セルロース繊維が
樹脂中に均一に分散したセルロース繊維複合体を得ることができる。
具体的には、上記微細セルロース繊維-樹脂分散液に加熱処理および/または露光処理
を施し(複合化処理)、有機溶媒を除去して、微細セルロース繊維と樹脂とを含有するセルロース繊維複合体を得ることが好ましい。
複合化処理の前に、微細セルロース繊維-樹脂分散液に、さらに樹脂および/または樹
脂前駆体を添加してもよい。添加される樹脂および/または樹脂前駆体の量は、使用される用途などに応じて適宜調製される。
また、さらに上述した硬化剤などの添加物を合わせて添加してもよい。例えば、樹脂としてエポキシ樹脂を使用する場合は、該工程においてエポキシ樹脂硬化剤を合わせて添加してもよい。
また、樹脂および/または樹脂前駆体と同様に、さらに有機溶媒を添加してもよく、樹脂および/または樹脂前駆体と、有機溶媒とを一緒に添加してもよい。
なお、ここで添加される樹脂および/または樹脂前駆体、並びに、有機溶媒の具体例は、上記微細セルロース繊維-樹脂分散液に含有される樹脂および/または樹脂前駆体、並
びに、有機溶媒として例示したものと同様である。微細セルロース繊維-樹脂分散液に加
熱処理および/または露光処理を施し、溶媒を除去して、微細セルロース繊維と樹脂とを含有するセルロース繊維複合体を得る。
複合化処理を経ることにより、優れた低線膨張性を示すセルロース繊維複合体を得ることができる。なお、樹脂前駆体を使用した場合は、該工程を経て該前駆体が硬化されて、樹脂となる。
加熱および/または露光処理を施す際、微細セルロース繊維-樹脂分散液を基板上へ塗
布して塗膜状としてもよく、また、型内に流し込んでもよい。該塗布や、型内に流し込む際に、必要に応じて、乾燥処理を施して、溶媒を除去してもよい。
加熱処理の条件は特に限定されず、樹脂前駆体が使用される場合は、該前駆体が硬化する温度以上であればよい。なかでも、溶媒を揮発させて除去できる点から、加熱温度は、60℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。なお、微細セルロース繊維の分解を抑制する点から、250℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましい。加熱時間は、生産性などの点から、60〜180分が好ましい。
加熱処理は複数回にわたって、温度・加熱時間を変更して実施してもよい。具体的には60〜100℃で30〜60分間の一次加熱と、130〜160℃で30〜60分間の二次加熱と、二次加熱温度よりも40〜60℃高い150〜200℃で30〜60分間の三次加熱との三段処理で行なうことが、溶剤を完全に除去し、複合体の表面形状の不良を少なくし、完全硬化させるという点で好ましい。なお、少なくとも二段以上の加熱が好ましい。
露光処理には、赤外線、可視光線、紫外線などの光、電子線などの放射線等が使用されるが、好ましくは光である。更に好ましくは波長が200〜450nm程度の光であり、更に好ましくは波長が300〜400nmの紫外線である。
照射する量は、使用される樹脂前駆体や、光重合開始剤などによって適宜最適な量が選択されるが、波長300〜450nmの紫外線を、好ましくは0.1J/cm2以上20
0J/cm2以下の範囲で照射する。更に好ましくは1J/cm2以上20J/cm2以下
の範囲で照射する。複数回に分割して照射すると、より好ましい。すなわち1回目に全照射量の1/20〜1/3程度を照射し、2回目以降に必要残量を照射することが好ましい
。使用するランプの具体例としては、メタルハライドランプ、高圧水銀灯ランプ、紫外線LEDランプ等を挙げることができる。
上記樹脂および/または樹脂前駆体として、エポキシ樹脂および/またはその前駆体を使用した場合、分散液にエポキシ樹脂硬化剤および/または硬化促進剤を加え、硬化させて複合体を作製することが好ましい。
分散液中のエポキシ樹脂成分の重量平均分子量(Mw)が200〜6,000の場合、エポキシ樹脂(当量):エポキシ樹脂硬化剤(当量)=1:0.8〜1.2の割合で配合することが好ましい。また、分散液中のエポキシ樹脂成分の重量平均分子量(Mw)が6,000超90,000以下の場合、エポキシ樹脂硬化剤を配合して硬化することも出来るが、多官能エポキシ樹脂をエポキシ樹脂成分の2〜20重量%添加し、硬化させる方が好ましい。
高分子量エポキシ樹脂は、エポキシ基濃度が低い為、硬化させるには多官能エポキシ樹脂を加えて、エポキシ基濃度を高め、架橋密度を上げることが好ましい。
硬化促進剤は全エポキシ樹脂100重量部に対して、0.1〜5.0重量部配合することが好ましい。
なお、硬化条件としては、以下の硬化方法IおよびIIの方法が好ましく挙げられる。
硬化方法I:分散液中のエポキシ樹脂成分の重量平均分子量(Mw)が200〜6,000の場合、分散液にエポキシ樹脂硬化剤を加え、100〜200℃の温度で5分間加熱混合したのち、硬化促進剤を素早く混合して樹脂組成物を作製する。この組成物を減圧下で溶媒成分を除去し脱泡したのち、型の中に流し込み、120〜200℃で2〜5時間加熱して複合体を得る。
硬化方法II:分散液中のエポキシ樹脂成分の重量平均分子量(Mw)が6,000超90,000以下の場合、分散液に多官能エポキシ樹脂および硬化促進剤を混合してワニスを作製し、スリット幅300μmのアプリケーターを用いて、PTFEテープ(中興化成工業(株):チューコーフロー スカイブドテープ MSF−100)上に塗膜を引き、熱風乾燥機にて60℃で60分保持し、160℃で60分間保持し、更に200℃で60分保持して、複合体を得る。
<セルロース繊維複合体>
(微細セルロース繊維含有量)
本発明のセルロース繊維複合体中の微細セルロース繊維の含有量は特に制限されないが、微細セルロース繊維の好適な含有量としては、複合体全量に対して、2.5重量%以上が好ましく、5重量%以上がより好ましく、10重量%がさらに好ましく、99重量%以下が好ましく、80重量%以下がより好ましく、70重量%以下がさらに好ましい。複合体中の微細セルロース繊維の含有量が少な過ぎると微細セルロース繊維による複合体の線熱膨張係数低減の効果が不十分となる傾向がある。複合体中の微細セルロース繊維の含有量が多過ぎると、樹脂による繊維間の接着、または繊維間の空間の充填が十分でなくなり、複合体の強度や透明性、硬化したときの表面の平坦性が低下するおそれがある。
(樹脂含有量)
複合体中における樹脂の含有量は特に制限されないが、成型性の点から、1重量%以上が好ましく、20重量%以上がより好ましく、30重量%以上がさらに好ましく、97.5重量%以下が好ましく、95重量%以下がより好ましく、90重量%以下がさらに好ましい。
セルロース繊維複合体は、セルロース繊維と樹脂とから構成されることが好ましいが、
その他の配合剤が含まれていてもよい。
セルロース繊維複合体中の微細セルロース繊維および樹脂の含有量は、例えば、複合化前のセルロースの重量と複合化後のセルロースの重量より求めることができる。また、樹脂が可溶な溶媒にセルロース繊維複合体を浸漬して樹脂のみを取り除き、残った微細セルロース繊維の重量から求めることもできる。その他、樹脂の比重から求める方法や、NMR、IRを用いて樹脂や微細セルロース繊維の官能基を定量して求めることもできる。
(形状、厚み)
本発明のセルロース繊維複合体の形状は、特に限定されず、板状、または曲面を有する板状とすることもできる。また、その他の異形形状であってもよい。また、厚さは必ずしも均一である必要はなく、部分的に異なっていてもよい。
形状が板状(シート状、フィルム状)である場合、その厚み(平均厚み)は、好ましくは10μm以上10cm以下であり、このような厚みとすることにより、構造材としての強度を保つことができる。さらに、より好ましくは50μm以上1cm以下であり、さらに好ましくは80μm以上250μm以下である。
なお、上記板状物において、フィルムとはその厚みが概ね、200μm以下の板状物を意味し、シートとはフィルムよりも厚い板状物を意味する。
(線膨張係数)
本発明により得られるセルロース繊維複合体は、低い線膨張係数(1Kあたりの伸び率)を示す。このセルロース繊維複合体の線膨張係数は、1〜70ppm/Kが好ましく、1〜60ppm/Kがより好ましく、1〜50ppm/Kが特に好ましい。
例えば、基板用途においては、無機の薄膜トランジスタの線膨張係数が15ppm/K程度であるため、セルロース繊維複合体の線膨張係数が50ppm/Kを超えると無機膜との積層複合化の際に、二層の線膨張係数差が大きくなり、クラック等が発生するおそれがある。従って、セルロース繊維複合体の線膨張係数は、特に1〜50ppm/Kであることが好ましい。
なお、線膨張係数は、後述の実施例の項に記載される方法により測定される。
(ガラス転移温度)
本発明により得られるセルロース繊維複合体では、セルロース繊維が樹脂中に均一に分散することによって、樹脂のTg(ガラス転移温度)を上昇させる効果を有する。該効果によって、後述する用途に好適な高Tgを示す材料を得ることができる。特に、エポキシ樹脂を使用した場合は、その効果が顕著となる。なお、電材用途においては、複合体のTgが3〜4℃上昇することは、大きなメリットとなる。
<用途>
本発明により得られるセルロース繊維複合体を樹脂などの基板とともに積層体として使用してもよい。該基板上に本発明の微細セルロース繊維分散液を塗布し、上記のとおり、加熱処理および/または露光処理等を施すことにより、積層体を製造してもよい。また、該積層体は保護フィルムを有していてもよい。
本発明により得られるセルロース繊維複合体または前記積層体は、様々な用途に使用することができ、例えば、接着剤、塗料、土木建築用建材、電気・電子部品の絶縁材料などが挙げられる。特に、その優れた耐熱性および低線膨張性、並びに、成形加工性から、多層電気積層板や、ビルドアップ法等の新方式プリント配線基板などの配線基板、および封止材用途に好適に使用できる。また、フレキシブル積層板用途、レジスト材、シール材などにも使用できる。
以下、製造例、実施例および比較例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
微細セルロース繊維分散液およびセルロース繊維複合体の各種物性の測定方法は次の通りである。
[微細セルロース繊維分散液の分散性試験]
微細セルロース繊維分散液を調製し、調製直後、および室温で10日間静置後の沈降の有無を、以下の基準に従って、目視により評価した。「全く沈降の見られないもの」を◎、「ほとんど沈降の見られないもの」を○、「極めて多くの沈降が見られるもの、または、液中の大部分に凝集物が見られるもの」を×とし、ほとんど沈降の見られない○以上を合格とした。
[微細セルロース繊維分散液中の微細セルロース繊維の数平均繊維径]
微細セルロース繊維の数平均繊維径は、光学顕微鏡、SEM、TEM等で観察することにより計測して求めた。具体的には、微細セルロース繊維分散液から有機溶媒を乾燥除去した後、30,000倍に拡大したSEM写真の対角線に線を引き、その近傍にある繊維をランダムに12点抽出し、最も太い繊維と最も細い繊維を除去した10点の測定値の平均を数平均繊維径とした。
[製膜性]
微細セルロース繊維−樹脂分散液をPETシート上に厚み300μmで塗布製膜し、オーブンで120℃30分、160℃30分、200℃1時間加熱乾燥した。得られた複合体のフィルムが均一で剥離できたものを◎、できないものを×とした。
[セルロース繊維複合体の線膨張係数およびガラス転移温度Tg]
セルロース繊維複合体を、2.5mm幅×20mm長にカットした。これをSII製TMA「EXSTAR6000」を用いて引張モードでチャック間10mm、荷重30mN、窒素雰囲気下、室温から150℃まで10℃/min.で昇温し、次いで150℃から20℃まで10℃/min.で降温し、更に20℃から200℃まで5℃/min.で昇温した際の2度目の昇温時の40℃から110℃の測定値から線膨張係数を求めた。また、2度目の昇温時の40℃から180℃の測定値からTgを求めた。
[有機溶媒の粘度測定]
有機溶媒の粘度は以下の装置、条件で測定した。
測定装置:BROOKFIELD LV VISCOMETER DV-I Prime
測定温度:25℃(常圧)
Gap: 0.0005inch
回転数:60rpm
[有機溶媒の屈折率測定]
有機溶媒の屈折率は以下の装置により測定した。
測定装置:カルニュー 精密屈折計 KPR-2000
測定温度:25℃(常圧)
(製造例1)
セルロース含有物として木粉(米国産松)を炭酸ナトリウム2重量%水溶液で90℃にて4時間脱脂処理し、これを脱塩水で洗浄して脱脂木粉を得た。脱脂木粉を過酢酸水溶液中で90℃にて、1時間処理して脱リグニン処理した(pa法)。最後に脱塩水で洗浄し、脱リグニン処理した木粉を得た。得られた脱リグニン処理木粉を水酸化カリウム5重量%水溶液に16時間浸漬して脱ヘミセルロース処理を行った。これを脱塩水で洗浄し、脱ヘミセルロース処理することにより、セルロース繊維原料を得た。
このセルロース繊維原料を酢酸中に分散して濾過する工程を3度行い、セルロース繊維
原料中の水を酢酸に置換した。セルロース繊維1g(乾燥重量)に対して、酢酸20ml、無水酢酸10mlの割合でこれらを混合しておき、そこに酢酸置換したセルロース繊維原料を添加した。その後、攪拌しながら115℃で5時間反応させることによりセルロース繊維を化学修飾処理(アセチル化処理)した。反応後、反応液を濾過して、メタノール、脱塩水の順で洗浄し、化学修飾処理したセルロース繊維原料を得た。このセルロース繊維の化学修飾率は22.7%であった。このセルロース繊維原料を「セルロース繊維原料1」と称す。
(製造例2)
セルロース繊維原料として、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)をリファイナー処理し、さらに6時間酵素処理を行ないセルロース繊維原料を得た。このセルロース繊維原料を脱水し、セルロース繊維1g(乾燥重量)に対して、酢酸8部、無水酢酸21部を添加し十分に攪拌した。その後、攪拌しながら115℃で5時間反応させることによりセルロース繊維を化学修飾処理(アセチル化処理)した。反応後、反応液を濾過して、メタノール、脱塩水の順で洗浄し、化学修飾処理したセルロース繊維原料を得た。このセルロース繊維の化学修飾率は15.0%であった。このセルロース繊維原料を「セルロース繊維原料2」と称す。
(製造例3)
セルロース繊維原料として、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)をリファイナー処理し、さらに6時間酵素処理を行ないセルロース繊維原料を得た。このセルロース繊維40kgを無水酢酸中で60℃、1時間加熱した後、水を酢酸で置換し、更に115℃、5時間加熱し反応させることによりセルロース繊維を化学修飾処理(アセチル化処理)した。反応後、ろ過により酢酸と無水酢酸を除去し、イオン交換水で懸濁洗浄を繰り返し行い、洗浄水のpHが5.0以上をもって洗浄の終点とした。
このセルロース繊維の化学修飾率は26.7%であった。このセルロース繊維原料を「セルロース繊維原料3」と称す。
(製造例4)
容器に、セルロース繊維原料として広葉樹クラフトパルプ(LBKP)を乾燥重量で20g及び空気2Lを加えた後、オゾン濃度200g/mのオゾン/酸素混合気体を15L加え、25℃で2分間振とう、および6時間静置を順次行った後、容器内のオゾンおよび空気を除去してオゾン処理を終了した。この操作を2回行い、十分に洗浄・脱水した。これに塩酸により水溶液pHを4〜5に調整した0.2%濃度の亜塩素酸ナトリウム水溶液を200g(セルロース繊維の乾燥重量に対して、亜塩素酸ナトリウムとして3%相当)添加して、70℃で3時間処理して追酸化処理を行った。得られたセルロース繊維のカルボキシ基量は0.284mmol/gであった。
セルロース繊維30g(乾燥重量)を無水酢酸中で60℃、1時間加熱して水を酢酸で置換し、更に105℃、3時間加熱し反応させることによりセルロース繊維を化学修飾処理(アセチル化処理)した。反応後、ろ過により酢酸と無水酢酸を除去し、メタノールで懸濁洗浄した。その後、イオン交換水で懸濁洗浄を繰り返し行い、洗浄水のpHが5.0以上をもって洗浄の終点とした。このセルロース繊維の化学修飾率は29.3%であった。このセルロース繊維原料を「セルロース繊維原料4」と称す。
(実施例1)
製造例1で得られたセルロース繊維原料1(繊維含有量7重量%、残部は主に水)を濾過により脱水した。これをメチルエチルケトン中に分散して濾過する工程を3度行い、水をメチルエチルケトンに置換した。
このようにして、水をメチルエチルケトンに置換したセルロース繊維原料1に、シクロ
ヘキサノンが75重量%、メチルエチルケトンが23.5重量%となるように各溶媒を加え、十分に攪拌混合し原料分散液とした。尚、このシクロヘキサノンとメチルエチルケトンの混合溶媒の粘度は1.14mPa・S(25℃)、屈折率は1.43であった。
得られた原料分散液を回転式高速ホモジナイザー(エム・テクニック社製クレアミックス2.2S)にて20000rpmで6時間処理して、セルロース繊維の解繊を行い、さらにビーズミル(寿工業社製ウルトラアペックスミルUAM−015)にてビーズ径0.3mm、周速11.4m/secで10パス処理してセルロース繊維の解繊を行い、微細セルロース繊維が分散した微細セルロース繊維分散液を得た。得られた微細セルロース繊維の数平均繊維径は、50nmであった。表1に各種測定結果を示す。
得られた微細セルロース繊維分散液に、この微細セルロース繊維分散液中のセルロース固形分とエポキシ樹脂の重量比が3:7になるようにエポキシ樹脂(三菱化学社製YL6954)を混合し、更にエポキシ樹脂固形分に対して5.2重量部の特殊ノボラック型エポキシ樹脂(三菱化学社製157S70、エポキシ樹脂硬化剤に該当)、エポキシ樹脂固形分と特殊ノボラック型エポキシ樹脂との合計量に対して、0.5重量部の硬化促進剤(2-エチル-4(5)-メチルイミダゾール、三菱化学社製EMI−24)を添加し、均一に
混合した後、溶媒の一部を揮発させた。
これをアプリケーターで製膜して、厚さ200μmの塗膜を得た。この塗膜を60℃で1時間加熱し、さらに160℃で1時間加熱し、さらに200℃で1時間加熱して硬化させ、セルロース繊維複合体を得た。セルロース繊維複合体中の微細セルロース繊維の数平均繊維径は上記と同じく、50nmであった。
セルロース繊維複合体中の微細セルロース繊維の分散性を目視で評価したところ、微細セルロース繊維が均一に分散していることが確認できた(評価◎)。さらに、顕微鏡を用いて、セルロース繊維複合体中の微細セルロース繊維の分散状態を、複合体の表面および断面方向からSEMにて3,000倍で観察し分散性を評価したところ、微細セルロース繊維が均一に分散していることが確認できた(評価◎)。
表2に各種測定結果を示す。
(実施例2)
製造例2で得られたセルロース繊維原料2(繊維含有量7重量%、残部は主に水)を用いる以外は実施例1と同様にして、微細セルロース繊維分散液を得た。微細セルロース繊維が分散した微細セルロース繊維分散液を得た。得られた微細セルロース繊維の数平均繊維径は40nmであった。表1に各種測定結果を示す。
得られた微細セルロース繊維分散液を用いる以外は実施例1と同様にして、セルロース繊維複合体を得た。複合体中の微細セルロース繊維の数平均繊維径は、上記と同じく、40nmであった。
セルロース繊維複合体中の微細セルロース繊維の分散性を目視で評価したところ、微細セルロース繊維が均一に分散していることが確認できた(評価◎)。さらに、顕微鏡を用いて、セルロース繊維複合体中の微細セルロース繊維の分散状態を、複合体の表面および断面方向からSEMにて3,000倍で観察し分散性を評価したところ、微細セルロース繊維が均一に分散していることが確認できた(評価◎)。
表2に各種測定結果を示す。
(実施例3)
製造例3で得られたセルロース繊維原料3(繊維含有量25重量%、残部は主に水)を濾過により脱水した。これをイソプロピルアルコール中に分散して濾過する工程を1度、更にシクロヘキサノン中に分散してろ過する工程を2度行い、水をシクロヘキサノンに置
換した。
このようにして、水をシクロヘキサノンに置換したセルロース繊維原料3に、N,N−ジメチルアセトアミドが75重量%、シクロヘキサノンが23.5重量%となるように各溶媒を加え、十分に攪拌混合し原料分散液とした。尚、このN,N−ジメチルアセトアミドとシクロヘキサノンの混合溶媒の粘度は1.06mPa・S(25℃)、屈折率は1.44であった。 得られた原料分散液をIKAホモジナイザで30分間処理して、セルロー
ス繊維の予備解繊を行い、さらにビーズミル(寿工業社製ウルトラアペックスミルUAM−015)にてビーズ径0.3mm、周速11.4m/secで10パス処理してセルロース繊維の解繊を行い、微細セルロース繊維が分散した微細セルロース繊維分散液を得た。表1に各種測定結果を示す。
(実施例4)
製造例4で得られたセルロース繊維原料4(繊維含有量24重量%、残部は主に水)を濾過により脱水した。これをエチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル(EGtB
E)中に分散して濾過する工程を2度行い、水をEGtBEに置換した。
このようにして、水をEGtBEに置換したセルロース繊維原料4に、EGtBEが97重量%となるように各溶媒を加え、十分に攪拌混合し原料分散液とした。尚、EGtBEの粘度は4.23mPa・S(20℃)、屈折率は1.42であった。 得られた原料分散液を実施例3と同様にしてセルロース繊維の解繊を行い、微細セルロース繊維が分散した微細セルロース繊維分散液を得た。表1に各種測定結果を示す。
(実施例5)
製造例3で得られたセルロース繊維原料3に、シクロヘキサノンが98.5重量%となるように各溶媒を加え、十分に攪拌混合し原料分散液とした。尚、シクロヘキサノンの粘度は2.02mPa・S(25℃)、屈折率は1.45であった。 得られた原料分散液をIKAホモジナイザで30分間処理して、セルロース繊維の予備解繊を行い、さらにG-smasher(リックス社製)にてスラリー供給速度100mL/min、圧縮空気0.6MPaで処理してセルロース繊維の解繊を行い、微細セルロース繊維が分散した微細セルロース繊維分散液を得た。表1に各種測定結果を示す。
(比較例1)
実施例1で得られたセルロース繊維原料1に、メチルエチルケトンが98.5重量%となるように各溶媒を加え、十分に攪拌混合し原料分散液とした。尚、メチルエチルケトンの粘度は0.4mPa・S(20℃)、屈折率は1.38であった。 得られた原料分散液をビーズミル(寿工業社製ウルトラアペックスミルUAM−015)にてビーズ径0.3mm、周速11.4m/secで10パス処理してセルロース繊維の解繊を行い、微細セルロース繊維が分散した微細セルロース繊維分散液を得た。表1に各種測定結果を示す。
Figure 2013036035
Figure 2013036035
セルロース繊維を特定の有機溶媒中で解繊することで、有機溶媒中で分散性に優れた微細セルロース繊維分散液を得ることができた。また、微細セルロース繊維分散液と樹脂および/または樹脂前駆体を混合した後、製膜することで、製膜性および成形性が良好で、表面が平滑であり、含有される微細セルロース繊維の分散の優れた複合体が得られることがわかった。
また、得られた複合体は優れた低線膨張係数を示し、さらに、使用された樹脂自体のガラス転移温度(137℃)と比較して、より高いガラス転移温度を示すことが確認された。
本発明の製造方法により得られる微細セルロース繊維分散液は、エポキシ樹脂など任意の樹脂と混合が可能であり、また、任意の比率で混合しても微細セルロース繊維が凝集したり不均一になったりすることなく、均一な微細セルロース繊維-樹脂分散液を得ること
ができる。

Claims (11)

  1. セルロース繊維と有機溶媒とを含有する分散液中で、セルロース繊維を解繊して、微細セルロース繊維を得る微細セルロース繊維分散液の製造方法であって、
    該有機溶媒は、粘度が1.0mPa・S以上で、屈折率が1.40以上の有機溶媒であることを特徴とする、微細セルロース繊維分散液の製造方法。
  2. 有機溶媒の少なくとも1種がケトン系溶媒である、請求項1に記載の微細セルロース繊維分散液の製造方法。
  3. 該有機溶媒は2種以上の有機溶媒からなる混合溶媒である、請求項1または2に記載の微細セルロース繊維分散液の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の微細セルロース繊維分散液の製造方法により製造された、微細セルロース繊維分散液。
  5. 請求項4に記載の微細セルロース繊維分散液と、樹脂および/または樹脂前駆体を含有することを特徴とする、微細セルロース繊維-樹脂分散液。
  6. 該樹脂および/または樹脂前駆体が、エポキシ樹脂および/またはその前駆体である、請求項5に記載の微細セルロース繊維-樹脂分散液。
  7. 請求項5または6に記載の微細セルロース繊維-樹脂分散液に加熱処理および/または
    露光処理を施し、有機溶媒を除去して、微細セルロース繊維と樹脂とを含有するセルロース繊維複合体を得ることを特徴とする、セルロース繊維複合体の製造方法。
  8. 請求項7に記載の製造方法により製造された、セルロース繊維複合体。
  9. 基板及び請求項8に記載のセルロース繊維複合体を有する積層体。
  10. さらに保護フィルムを有する、請求項9に記載の積層体。
  11. 請求項9または10に記載の積層体を用いた配線基板。
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