JP2014181255A - セルロース繊維分散体 - Google Patents

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環江 唐澤
Takanori Shimizu
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誠一郎 早川
Eiichi Fujiyama
栄一 藤山
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Abstract

【課題】高透明性であり、耐熱性に優れ、低線膨張なセルロース繊維樹脂複合材料を提供する。
【解決手段】1または2種以上の光硬化性樹脂前駆体とセルロース繊維を含有するセルロース繊維分散体であって、該光硬化性樹脂前駆体の50重量%以上は、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートであり、該セルロース繊維は数平均繊維径が400nm以下であるセルロース繊維分散体。このセルロース繊維分散体を硬化させて得られる繊維樹脂複合材料。
【選択図】なし

Description

本発明は、光硬化性樹脂前駆体とセルロース繊維を含有するセルロース繊維分散体と、このセルロース繊維分散体を硬化させてなるセルロース繊維と光硬化性樹脂とを含むセルロース繊維樹脂複合材料に関するものであり、特に光学特性、耐熱特性に優れたフラットで線膨張係数の小さいセルロース繊維樹脂複合材料を与えるセルロース繊維分散体及び繊維樹脂複合材料に関する。本発明はまた、この繊維樹脂複合材料を用いた透明基板に関する。
従来、光学部品はガラスを基材とするものが多く使われてきた。特に液晶などのフラットパネルディスプレイ用のパネルには、ガラス基板が用いられてきた。例えば、液晶ディスプレイや有機エレクトロルミネッセンスディスプレイでは厚さ0.3〜1.1mm程度のガラスが一般的に使用されている。しかし、ガラス基板は割れやすく、大型化や薄型化が進むほど製造工程での歩留まりが急激に悪化する問題がある。そこで、近年ガラスに代わる基板材料として、プラスチック基板が検討されている。具体的には、ポリカーボネートやポリエチレンテレフタレート等を用いたディスプレイ用基板が使用されている。しかしながら、これら従来のガラス代替用プラスチック材料はガラス板に比べて線膨張係数が大きいため、基板上に薄膜トランジスタ等のデバイス層を高温で蒸着させるプロセスの際に反りや蒸着膜の割れ、半導体の断線等の問題が生じやすく、実用は困難であった。すなわち、これらの用途には高透明性、高耐熱性、低線膨張係数のプラスチック材料が求められている。
特許文献1には、(メタ)アクリレート系の樹脂を光や熱で架橋することにより耐熱性を向上させる技術が提案され、2官能の脂肪族(メタ)アクリレート化合物と3官能以上の(メタ)アクリレート化合物とを含有する重合性組成物が、耐熱性が高く、線膨張係数が小さい樹脂硬化体を与えることが開示されている。また、特許文献2では、50〜100℃の線膨張係数が60ppm/℃以下のプラスチック基板について提示しているが、いずれも線膨張係数は低くて40ppm/℃程度であり、ガラスの線膨張係数(10ppm/K)に比べれば依然として大きく、更なる改良が求められている。
そこで、線膨張係数をさらに低下させて、透明なシートを提供する方法として、特許文献3には、セルロース繊維とアクリル樹脂との複合材料が提案されている。セルロースは、その伸びきり鎖結晶により、ガラスを凌駕するほどの低線膨張係数が得られる。また、樹脂を含浸することにより、透明性も同時に得ることができ、フラットパネルディスプレイ用の基板として有力視されている。しかし、ここで用いられる樹脂は光硬化性のアクリレート樹脂であり、硬化収縮率が10%近くあるために、セルロース繊維と複合化した際には、樹脂の収縮により、複合シートが撓んだり、皺が入ったりする問題が生じた。
この問題を解決するために、特許文献4では、アクリル樹脂よりも硬化収縮率の少ないオキセタン樹脂を用いたセルロース繊維複合体を提示している。しかしながら、オキセタン樹脂を硬化する際に用いる光カチオン重合開始剤はラジカル重合に比べて重合速度が遅い、水分による重合阻害を受けやすい、酸が発生するために金属腐食性がある、高温下で着色する、耐光性が悪い、等の問題がある。
特開2003−292545号公報 特開2007−56180号公報 特開2006−241450号公報 特開2009−155384号公報
本発明は、高透明性であり、耐熱性に優れ、低線膨張性のセルロース繊維樹脂複合材料を提供することを課題とする。
本発明者らは鋭意検討した結果、特定量のトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートにセルロース繊維を分散させることで、高耐熱性、高透明性であり、低線膨張性に優れる材料が得られることを見出した。
即ち、本発明は、1または2種以上の光硬化性樹脂前駆体とセルロース繊維を含有するセルロース繊維分散体であって、該光硬化性樹脂前駆体の50重量%以上は、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートであり、該セルロース繊維は数平均繊維径が400nm以下であることを特徴とするセルロース繊維分散体、に存する。
このセルロース繊維分散体は、該セルロース繊維及び該光硬化性樹脂前駆体を、セルロース繊維:光硬化性樹脂前駆体=5:95〜50:50(重量比)で含有することが好ましい。
本発明はまた、このセルロース繊維分散体を硬化させて得られる繊維樹脂複合材料と、この繊維樹脂複合材料を用いた透明基板、に存する。
本発明によれば、ナノファイバーセルロースを高耐熱性光硬化性樹脂前駆体であるトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートに分散させたセルロース繊維分散体を硬化させることで、耐熱性に優れ、低線膨張で透明なセルロース繊維樹脂複合材料を得ることができる。
本発明のセルロース繊維樹脂複合材料は各種ガラス代替用途、特に液晶ディスプレイや有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ、タッチパネル、太陽電池などの透明基板として有用である。
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。
[セルロース繊維]
まず、本発明のセルロース繊維分散体及び繊維樹脂複合材料に含有されるセルロース繊維について説明する。
本発明に用いるセルロース繊維は特に限定されるものではないが、通常は、以下に列挙するセルロース含有物から精製処理を経て不純物を除去されたセルロース繊維原料を更に解繊処理したものが使用される。
<セルロース含有物>
セルロース含有物としては、例えば、針葉樹や広葉樹等の木質(木粉等)、コットンリンターやコットンリント等のコットン、さとうきびや砂糖大根等の絞りかす、亜麻、ラミー、ジュート、ケナフ等の靭皮繊維、サイザル、パイナップル等の葉脈繊維、アバカ、バナナ等の葉柄繊維、ココナツヤシ等の果実繊維、竹等の茎幹繊維等の植物由来原料;バクテリアが産生するバクテリアセルロース;バロニアやシオグサ等の海草やホヤの被嚢;等の天然セルロースが挙げられる。これらの天然セルロースは、結晶性が高いので低線膨張率、高弾性率になり好ましい。中でも、植物由来原料が好ましい。
このようなセルロース含有物に、必要に応じて後述する精製処理を施して、不純物を除去してもよいが、不純物を一部含むものを使用してもよい。
<精製処理>
セルロース含有物に精製処理を施して、セルロース含有物中のセルロース以外の物質、例えば、リグニンやヘミセルロース、樹脂(ヤニ)などを必要に応じて除去することが好ましい。この精製方法は特に制限されないが、例えば、脱脂処理、脱リグニン処理、脱ヘミセルロース処理などが挙げられる。一例としては、セルロース含有物をベンゼン−エタノールで脱脂処理した後、ワイズ法で脱リグニン処理を行い、アルカリで脱ヘミセルロース処理をする方法が挙げられる。
また、脱リグニン処理としては、上記ワイズ法の他に、過酢酸を用いる方法(pa法)、過酢酸過硫酸混合物を用いる方法(pxa法)なども利用される。
また、必要に応じて、塩素、オゾン、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素、二酸化塩素などで漂白処理を行ってもよい。
また、精製方法としては、一般的な化学パルプの製造方法、例えば、クラフトパルプ、サルファイトパルプ、アルカリパルプ、硝酸パルプの製造方法も挙げられる。また、セルロース含有物を蒸解釜で加熱処理して脱リグニン等の処理を行い、更に漂白処理等を行う方法も挙げられる。
精製処理には、分散媒として一般的に水が用いられるが、酸または塩基、その他の処理剤の水溶液であってもよく、この場合には、最終的に水で洗浄処理してもよい。
また、セルロース含有物を木材チップや木粉などの状態に破砕してもよく、この破砕は、精製処理前、処理の途中、処理後、いずれのタイミングで行ってもかまわない。
セルロース含有物の精製処理には、通常、酸または塩基、その他の処理剤を用いるが、その種類は特に限定されない。例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、硫化ナトリウム、硫化マグネシウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸マグネシウム、亜硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、酸化ナトリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酢酸、シュウ酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸ナトリウム、塩素酸ナトリウム、二酸化塩素、塩素、過塩素酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、過酸化水素、オゾン、ハイドロサルファイト、アントラキノン、ジヒドロジヒドロキシアントラセン、テトラヒドロアントラキノン、アントラヒドロキノン、また、エタノール、メタノール、2−プロパノールなどのアルコール類およびアセトンなどの水溶性有機溶媒などが挙げられる。これらの処理剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
また、2種以上の処理剤を用いて、2以上の精製処理を行うこともでき、その場合、異なる処理剤を用いた精製処理間で、水で洗浄処理することが好ましい。
精製処理時の温度、圧力は特に制限はなく、温度は0℃以上100℃以下の範囲で選択されることが好ましく、1気圧を超える加圧下での処理の場合、温度は100℃以上200℃以下とすることが好ましい。
<セルロース繊維原料>
セルロース含有物を精製して得られたセルロース繊維は、通常、含水状態(水分散液)として得られる。セルロース含有物を精製して得られたセルロース繊維を以下セルロース繊維原料ということがある。
また、セルロース繊維原料としては、広葉樹クラフトパルプ、針葉樹クラフトパルプ、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ、広葉樹漂白クラフトパルプ、針葉樹漂白クラフトパルプ、リンターパルプなども挙げられる。
<セルロース繊維原料の繊維径>
セルロース繊維原料の繊維径は特に制限されるものではなく、解繊効率および取扱い性の点から、数平均繊維径としては10μm〜100mmであることが好ましく、50μm〜0.5mmであることがより好ましい。
このような繊維径とするには、例えば切断や破砕などの機械的処理をセルロース含有物等に施せばよい。機械的処理は、精製処理前、処理中、処理後のいずれの時期に行ってもよい。例えば、精製処理前であれば衝撃式粉砕機や剪断式粉砕機などを用い、また精製処理中、処理後であればリファイナーなどを用いて行うことができる。
例えば、チップ等の数cm大のものを精製処理したものである場合、リファイナーやビーター等の離解機で機械的処理を行い、数mm程度にすることが好ましい。
なお、本発明において、セルロース繊維及びセルロース繊維原料の数平均繊維径の測定方法は特に限定されず、走査型電子顕微鏡(以下SEM)、透過型電子顕微鏡(以下TEM)、原子間力顕微鏡(以下AFM)等で観察することにより計測して求めることができる。具体的には、通常、SEM、TEM、AFM等で観察して、写真の対角線に線を引き、その近傍にある繊維をランダムに12点抽出し、最も太い繊維と最も細い繊維を除去した10点の測定値を平均して求めることができる。セルロース繊維の数平均繊維長についても同様に測定される。
<変性セルロース繊維>
本発明に用いられるセルロース繊維は、変性されたものであってもよい。
以下、セルロース繊維の変性について説明する。
変性されたセルロース繊維とは、セルロース繊維を構成するセルロースの水酸基やヒドロキシメチル基の一部が他の基によって置換等されたセルロース繊維をいう。
変性の方法としては、酸化処理、化学変性処理などが挙げられる。
なお、この変性のための処理は、セルロース繊維原料に対して行ってもよく、後述の解繊処理後のセルロース繊維に対して行ってもよい。
酸化処理を行うことにより、セルロースにカルボキシ基を導入することができる。酸化処理としては、酸化性を有するガス(以下「酸化性ガス」という)にセルロース繊維原料またはセルロース繊維を接触させる方法や、酸化性化学種を含む溶液にセルロース繊維原料またはセルロース繊維を懸濁または浸漬させる方法を挙げることができる。
酸化性ガスとしては、特に限定されるものではないが、オゾン、塩素ガス、フッ素ガス、二酸化塩素、亜酸化窒素等が挙げられ、これらの2種以上を含むものであってもよい。
酸化性化学種としては、一般にアルコールをアルデヒドまたはカルボン酸に酸化することができる試薬を用いることができ、特に限定されるものではないが、六価クロム酸硫酸混液、ジョーンズ試薬(無水クロム酸の硫酸酸性溶液)、クロロクロム酸ピリジニウム(PCC試薬)などのクロム酸酸化試薬、スワーン(Swern)酸化などに使われる活性化ジメチルスルホキシド試薬、また、触媒的な酸化が生じるテトラプロピルアンモニウムペルルテナード(TPAP)や、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO)などのN−オキシル化合物(特開2008−1728号公報)などが挙げられる。
化学変性処理としては以下に記載の基を導入する処理が挙げられる。
例えば、アセチル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロピオニル基、プロピオロイル基、ブチリル基、2−ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、フロイル基、シンナモイル基等のアシル基;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアノイル基等のイソシアネート基;メチル基、エチル基、プロピル基、2−プロピル基、ブチル基、2−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基等のアルキル基;オキシラン基;オキセタン基;チイラン基;チエタン基;カルボン酸基;リン酸基等が挙げられる。
また、これらの置換基の中の水素原子が水酸基、カルボキシ基等の官能基で置換されても構わない。また、アルキル基の一部が不飽和結合になっていても構わない。また、セルロース繊維には、これらの基の2種以上の置換基が導入されていてもよい。
これらの置換基の中では特にアセチル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基等の炭素数2〜12のアシル基が好ましく、とりわけアセチル基が好ましい。
これらの置換基は、セルロース繊維原料またはセルロース繊維と次に挙げるような化学修飾剤とを反応させることにより、導入することができる。
化学修飾剤の種類としては、例えば、酸、酸無水物、アルコール、ハロゲン化試薬、並びにイソシアナート、アルコキシシランおよびオキシラン(エポキシ)等の環状エーテルよりなる群から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
化学修飾剤の種類としては、例えば、エステル基を形成させる場合は、酸、酸無水物、およびハロゲン化試薬等が、エーテル基を形成させる場合は、アルコール、フェノール系化合物、アルコキシシラン、フェノキシシラン、およびオキシラン(エポキシ)等の環状エーテル化合物等が、カルバマート基を形成させる場合は、イソシアナート化合物等が挙げられる。
エステル基を形成させる化学修飾剤である酸としては、例えば、酢酸、アクリル酸、メタクリル酸、プロパン酸、ブタン酸、2−ブタン酸、ペンタン酸、安息香酸、ナフタレンカルボン酸等が、酸無水物としては、例えば、無水酢酸、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、無水プロパン酸、無水ブタン酸、無水2−ブタン酸、無水ペンタン酸、無水安息香酸、無水フタル酸、無水マレイン酸等が挙げられる。ハロゲン化試薬としては、例えば、アセチルハライド、アクリロイルハライド、メタクロイルハライド、プロパノイルハライド、ブタノイルハライド、2−ブタノイルハライド、ペンタノイルハライド、ベンゾイルハライド、ナフトイルハライド等が挙げられる。
エーテル基を形成させる化学修飾剤であるアルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール等が挙げられる。
フェノール系化合物としては、フェノール、ナフトール等が挙げられる。アルコキシシランとしては、例えば、メトキシシラン、エトキシシラン等が、また、フェノキシシラン等が挙げられる。
環状エーテル化合物としては、例えば、エチルオキシラン、エチルオキセタン、オキシラン(エポキシ)、フェニルオキシラン(エポキシ)が挙げられる。
カルバマート基を形成させる化学修飾剤であるイソシアナート化合物としては、メチルイソシアナート、エチルイソシアナート、プロピルイソシアナート、フェニルイソシアナートが挙げられる。
これらの中では、特に、無水酢酸、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、ベンゾイルハライド、ナフトイルハライドが好ましい。
これらの化学修飾剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
化学変性は、公知の方法によって実施することができる。すなわち、常法に従って、セルロース繊維原料または繊維長や繊維径の調整されたセルロース繊維と化学修飾剤とを反応させることによって実施することができる。この際、必要に応じて溶媒や触媒を使用してもよく、加熱、減圧等を行ってもよい。
なお、セルロース繊維原料を用いる場合、該セルロース繊維原料は通常含水状態であるので、この水を反応溶媒と置換して、化学修飾剤と水との反応を極力抑制することが好ましい。また、水を除去するために原料の乾燥を行うと、後述する解繊処理での原料の微細化が進行しにくくなるため、乾燥工程を入れることは好ましくない。
化学修飾剤の量は特に限定されず、化学修飾剤の種類によっても異なるが、セルロースの水酸基のモル数に対して、0.01倍以上が好ましく、0.05倍以上がより好ましく、100倍以下が好ましく、50倍以下がより好ましい。
溶媒としては、化学変性を阻害しない水溶性有機溶媒を用いることが好ましい。水溶性有機溶媒としては、例えば、アセトン、ピリジン等の有機溶媒や、蟻酸、酢酸、蓚酸等の有機酸が挙げられ、特に酢酸等の有機酸が好ましい。酢酸等の有機酸を用いることで、化学修飾がセルロースに均一に進行するため、後述する解繊がしやすくなり、得られる繊維樹脂複合材料が高耐熱性、高生産性を示すと考えられる。また、上記溶媒以外のものを併用しても構わない。
使用される溶媒の量は特に限定されないが、通常、セルロース重量に対して、0.5重量倍以上が好ましく、1重量倍以上がより好ましく、200重量倍以下が好ましく、100重量倍以下がより好ましい。
また、触媒としては、ピリジン、トリエチルアミン、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム等の塩基性触媒や、酢酸、硫酸、過塩素酸等の酸性触媒を用いることが好ましい。触媒の量は特に限定されず、種類によっても異なるが、通常、セルロースの水酸基のモル数に対して、0.01モル倍以上が好ましく、0.05モル倍以上がより好ましく、100モル倍以下が好ましく、50モル倍以下がより好ましい。
温度条件は特に制限されないが、高すぎるとセルロースの黄変や重合度の低下等が懸念され、低すぎると反応速度が低下することから、10〜130℃が好ましい。反応時間も特に制限されず、化学修飾剤や化学修飾率にもよるが、通常、数分から数十時間である。
このようにして化学変性を行った後は、反応を終結させるために有機溶媒や水で十分に洗浄することが好ましい。未反応の化学修飾剤が残留していると、後で着色の原因になったり、樹脂と複合化する際に問題になる場合があるので好ましくない。
尚、本発明に用いられる変性セルロース繊維の変性割合(セルロース繊維への他の基の導入量)は、後述の方法で算出される化学修飾率の値で、通常70モル%以下、例えば0.1〜70モル%であることが好ましい。2種以上の基を有する場合、これらの合計で、セルロース繊維に対し、通常70モル%以下導入されていることが好ましい。
セルロース繊維に他の基を導入することは、溶媒中でのセルロース繊維の分散性や樹脂との界面密着性を向上させる点で好ましいが、導入量が上記上限より多くなると、セルロースの結晶性が下がり線熱膨張低減効果が損なわれる恐れがある。
ここで、他の基の導入量(化学修飾率)はその基に適した方法で算出すればよいが、例えば、カルボキシ基のセルロース繊維への導入量(化学修飾率)は、TAPPI T237 cm−08(2008) を用いて算出することができる。具体的には、酸性基(ここではカルボキシ基)の導入数をより広範囲まで算出可能にするために、前記試験方法に用いる試験液のうち、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)/塩化ナトリウム(NaCl)=0.84g/5.85gを蒸留水で1000mlに溶解希釈した試験液について、前記試験液の濃度が実質的に4倍となるように、炭酸水素ナトリウム/塩化ナトリウム=3.36g/23.40gに変更し、さらに置換基導入前後のセルロース繊維における算出値の差を実質的な置換基導入量とした以外は、TAPPI T237 cm−08(2008)に準じて算出する。
その他の化学変性基については、以下の通り求めることができる。
乾燥させた変性セルロース繊維0.05gを精秤し、これにエタノール1.5ml、蒸留水0.5mlを添加する。これを60〜70℃の湯浴中で30分静置した後、0.5N水酸化ナトリウム水溶液2mlを添加する。これを60〜70℃の湯浴中で3時間静置した後、超音波洗浄器にて30分間超音波振とうする。これを、フェノールフタレインを指示薬として0.1N塩酸標準溶液で滴定する。
ここで、滴定に要した0.1N塩酸水溶液の量Z(ml)から、変性により導入された置換基のモル数Qは、下記式で求められる。
Q(mol)=0.5(N)×2(ml)/1000
−0.1(N)×Z(ml)/1000
この置換基のモル数Qと、化学修飾率X(モル%)との関係は、以下の式で算出される(セルロース=(C10=(162.14)、繰り返し単位1個当たりの水酸基数=3、OHの分子量=17)。なお、以下において、Tは変性により導入された置換基の分子量である。
Figure 2014181255
これを解いていくと、以下の通りである。
Figure 2014181255
<繊維長及び繊維径の調整>
本発明に用いるセルロース繊維の数平均繊維径は、400nm以下である。該セルロース繊維の数平均繊維径は好ましくは100nm以下、より好ましくは80nm以下、特に好ましくは50nm以下、とりわけ好ましくは30nm以下、最も好ましくは20nm以下である。また、該セルロース繊維の数平均繊維径は、小さい程好ましいが、高い効果を発現するためには、セルロースの結晶性を維持することが重要であり、2nm以上が好ましく、実質的にはセルロース結晶単位の繊維径である4nm以上であることがより好ましい。セルロース繊維の数平均繊維径が上記上限を上回ると、セルロース繊維の比表面積が小さくなり十分な線熱膨張低減効果が得られない場合がある。セルロース繊維の平均繊維径が上記の下限を下回る場合は、セルロースのI型結晶構造が維持できず、繊維自体の強度が低下する場合がある。
また、セルロース繊維の数平均繊維長は、1μm以下であればよいが、好ましくは950nm以下、さらに好ましくは900nm以下、特に好ましくは850nm以下で、通常10nm以上、好ましくは50nm以上である。
(溶媒)
前述のセルロース繊維原料に対し、以下の解繊処理を施すことにより、上記範囲のように、繊維長及び繊維径の調整をすることができる。解繊処理は、繊維を解すことであり、通常は繊維をより小さなサイズにすることができるものである。
本発明に用いられるセルロース繊維は、水中、有機溶媒中のいずれで解繊してもよいが、樹脂を混合する際に好適であるので、有機溶媒中で解繊することが好ましい。通常、セルロース繊維原料は水に分散されたものであるため、この場合、水を有機溶媒に置換した後に解繊処理を行うことが好ましい。
溶媒を置換する方法は特に限定されないが、セルロース繊維原料の水分散液から濾過などにより水を除去し、ここに解繊時使用する有機溶媒を添加し、攪拌混合し、再度濾過により有機溶媒を除去する方法が挙げられる。有機溶媒の添加と濾過を繰り返すことで、分散液中の媒体を水から有機溶媒に置換することができる。
なお、使用する有機溶媒が非水溶性の場合、水溶性の有機溶媒に一度置換した後、非水溶性の有機溶媒に置換してもよい。
ここで、有機溶媒としては、芳香族炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、非プロトン性極性溶媒、エーテル系溶媒(グリコールエーテル系溶媒を含む)などが挙げられる。
芳香族炭化水素系溶媒としては、好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素が挙げられ、具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
アルコール系溶媒としては、好ましくは炭素数1〜7のアルコール系溶媒が挙げられ、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどが挙げられる。
ケトン系溶媒(ケトン基を有する液体を指す)としては、好ましくは炭素数3〜9のケトン系溶媒が挙げられ、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジイソプロピルケトン、ジ−tert−ブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−オクタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘキシルメチルケトン、アセトフェノン、アセチルアセトン、ジオキサン等が挙げられる。
非プロトン性極性溶媒としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)などのスルホキシド系溶媒、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、2−ピロリドン、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒が挙げられる。
エーテル系溶媒としてはジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどが挙げられる。グリコールエーテル系溶媒としては、好ましくは炭素数3〜9のグリコールエーテル系溶媒が挙げられ、具体的には、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。
これらの有機溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
なお、本発明で使用される有機溶媒は、繊維樹脂複合材料の製造工程において、有機溶媒を除去する工程があることから沸点が高すぎないことが好ましい。有機溶媒の沸点は300℃以下が好ましく、200℃以下が好ましく、180℃以下が更に好ましい。また、取り扱い性などの点から、有機溶媒の沸点は0℃以上が好ましい。特に、後述する硬化性樹脂及び/または硬化性樹脂前駆体の溶解性の観点から、MEK、シクロヘキサノンが好適である。なお、MEKとシクロヘキサノンを併用する場合、その使用割合は、MEK:シクロヘキサノン=1:0.01〜100(重量比)とすることが好ましい。
(解繊方法)
解繊工程の具体的な方法は特に制限されないが、例えば、ビーズミルによる解繊処理、噴出による解繊処理、回転式解繊方法による解繊処理、または超音波処理による解繊処理などが挙げられる。
解繊処理の中でも、ビーズミルによる処理は、解繊効率が高く、セルロース繊維の分散性の向上に効果的である。
これらの処理で解繊する場合、原料分散液中の固形分濃度(セルロース繊維原料濃度)は特に制限されないが、0.1重量%以上が好ましく、0.2重量%以上がより好ましく、99重量%以下が好ましく、50重量%以下がより好ましい。この解繊工程に供する原料分散液中の固形分濃度が低過ぎると処理するセルロース繊維原料量に対して液量が多くなり過ぎ効率が悪くなり、固形分濃度が高過ぎると流動性が悪くなる。
尚、解繊処理に供する原料分散液中に、下記詳述する光硬化性樹脂前駆体や、光硬化性樹脂を含有させてもよい。その場合、光硬化性樹脂及び/または光硬化性樹脂前駆体とともに、セルロース繊維原料を解繊することで、セルロース繊維原料の凝集を抑制して解繊効率を高めることができる。
この場合の、原料分散液中の、光硬化性樹脂及び/または光硬化性樹脂前駆体の含有量は、通常0.1重量%以上、好ましくは0.2重量%以上、通常99重量%以下、好ましくは80重量%以下、さらに好ましくは70重量%以下であり、セルロース繊維原料の含有量は、通常0.1重量%以上、好ましくは0.2重量%以上、通常99重量%以下、好ましくは80重量%以下、さらに好ましくは70重量%以下であって、セルロース繊維原料と光硬化性樹脂及び/または光硬化性樹脂前駆体との合計の含有量は通常0.1重量%以上、好ましくは0.2重量%以上、通常99重量%以下、好ましくは80重量%以下、さらに好ましくは70重量%以下である。
これらの含有量が上記上限を上回ると流動性が悪くなる恐れがある。光硬化性樹脂及び/または光硬化性樹脂前駆体の含有量が上記下限を下回ると繊維の凝集を抑制する効果が得られなくなる恐れがある。また、セルロース繊維原料の含有量が上記下限を下回ると解繊に供するセルロース繊維原料量が少なく、処理効率が悪くなる恐れがある。
ビーズミルによる解繊処理としては、例えば、直径1mm程度のセラミック製ビーズをセルロース繊維原料濃度0.5〜50重量%、具体的には、1重量%程度の原料分散液に入れ、ペイントシェーカーやビーズミル等を用いて振動を与えて解繊する方法などが挙げられる。
ビーズミルとしては、公知の装置を使用することができ、例えば、ウルトラアペックスミルUAM、デュアルアペックスミルDAM(ともに寿工業社製)、スターミル(アシザワファインテック社製)、OBミル(ターボ工業社製)などが挙げられる。
使用されるビーズの材質は特に制限されず、例えば、ガラス、ジルコニアなどが挙げられる。また、ビーズの粒径は特に制限されず、通常、直径0.01〜5mm程度である。また、ビーズミルを行う条件は、溶媒の種類や、目的とするセルロース繊維の繊維径など使用材料に応じて適宜最適な条件が選択されるが、通常、周速4〜16m/secで、1〜5時間程度行うことが好ましい。尚、ビーズミルで解繊を行う場合、異なる条件で複数回行ってもよい。
その他、メディアミルの一種として、回転する主軸および主軸の回転と連動して回転する副軸およびリングを粉砕媒体として繊維を解繊する方法が挙げられる。
また、ブレンダータイプの分散機や高速回転するスリットの間に、原料分散液を通して剪断力を働かせて解繊する方法(高速回転ホモジナイザー)や、高圧から急に減圧することによって、セルロース繊維間に剪断力を発生させて解繊する方法(高圧ホモジナイザー法)、マスコマイザーXのような対向衝突型の分散機(増幸産業)等を用いる方法などが挙げられる。
噴出による解繊処理として具体的には、高圧ホモジナイザーによる解繊が挙げられる。高圧ホモジナイザーの場合、原料分散液を増圧機で好ましくは30MPa以上、より好ましくは100MPa以上、さらに好ましくは150MPa以上、特に好ましくは220MPa以上に加圧し、細孔直径50μm以上のノズルから噴出させ、圧力差が好ましくは30MPa以上、より好ましくは80MPa以上、さらに好ましくは90MPa以上となるように減圧する。この圧力差で生じるへき開現象により、セルロース繊維を解繊する。
ここで、高圧条件の圧力が低い場合や、高圧から減圧条件への圧力差が小さい場合には、解繊効率が下がり、所望の繊維径とするための繰り返し噴出回数が多く必要となるため好ましくない。
噴出時の高圧条件が高いほど、圧力差により大きなへき開現象でより一層の微細化を図ることができるが、装置仕様の上限として、通常245MPa以下である。
同様に、高圧条件から減圧下への圧力差も大きいことが好ましいが、一般的には、増圧機による加圧条件から大気圧下に噴出することで、圧力差の上限は通常245MPa以下である。
また、原料分散液を噴出させる細孔の細孔直径が大き過ぎる場合にも、十分な解繊効果が得られず、この場合には、噴出処理を繰り返し行っても、所望の繊維径のセルロース繊維が得られないおそれもある。原料分散液を噴出させる細孔の直径は小さければ容易に高圧状態を作り出せるが、過度に小さいと噴出効率が悪くなる。この細孔直径は、50μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましく、150μm以上がさらに好ましく、800μm以下が好ましく、500μm以下がより好ましく、350μm以下がさらに好ましい。
原料分散液の噴出は、必要に応じて複数回繰り返すことにより、微細化度を上げて所望の繊維径のセルロース繊維を得ることができる。この繰り返し回数(パス数)は、通常1回以上、好ましくは3回以上で、通常20回以下、好ましくは15回以下である。パス数が多い程、微細化の程度を上げることができるが、過度にパス数が多いとコスト高となるため好ましくない。
噴出時の温度(分散液温度)には特に制限はないが、通常5℃以上100℃以下である。温度が高すぎると装置、具体的には送液ポンプや高圧シール部等の劣化を早める恐れがあるため好ましくない。
なお、噴出ノズルは1本でも2本でもよく、噴出させた原料分散液を噴出先に設けた壁やボール、リングにぶつけてもよい。更にノズルが2本の場合には、噴出先で原料分散液同士を衝突させてもよい。
高圧ホモジナイザーの具体的な装置は特に制限されないが、例えば、ガウリン社製や、スギノマシン社製の「スターバーストシステム」を用いることができる。
なお、このような高圧ホモジナイザーによる処理のみでも、本発明で用いる微細セルロース繊維分散液を得ることは可能であるが、十分な微細化度とするための繰り返し回数が多く処理効率が悪い場合には、1〜5回程度の高圧ホモジナイザー処理後に以下の超音波処理を行って微細化することが好ましい。また、高圧ホモジナイザーによる処理は、前述のビーズミルによる解繊処理に先立つ予備分散処理として行うこともできる。
回転式解繊方法による解繊処理としては、具体的には高速回転ホモジナイザーによる解繊が挙げられる。高速回転ホモジナイザ―の場合、回転数が高い方が、剪断が掛かり、解繊効率が高くなる。回転数としては、例えば、10000rpm以上が好ましく、15000rpm以上がより好ましく、20000rpm以上が特に好ましい。なお、回転数の上限は特に制限されないが、装置の性能上の観点から、30000rpm以下が好ましい。
処理時間は、1分以上が好ましく、5分以上がより好ましく、10分以上が特に好ましい。なお、処理時間は生産性の点から、6時間以下が好ましい。剪断により発熱が生じる場合は、液温が50℃を越えない程度に冷却することが好ましい。
また、原料分散液に均一に剪断がかかるように、攪拌または循環することが好ましい。
回転式解繊方法による解繊処理は、前述のビーズミルによる解繊処理の前処理として行ってもよい。
超音波処理による解繊処理を行う場合、超音波処理を施す、解繊処理後の原料分散液(以後、適宜、超音波処理用原料分散液と称する)中のセルロース濃度は、液全量に対して、0.5重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましく、50重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましい。超音波を照射する超音波処理用原料分散液中のセルロース濃度が低過ぎると非効率であり、高過ぎると粘度が高くなり解繊処理が不均一になる恐れがある。
また、解繊処理には、原料分散液を圧縮空気で音速まで加速・水滴化して衝突板に衝突させ、液滴内部と衝突板表面の液膜内に衝撃波を発生させて粒子の粉砕・分散を行う液滴衝突法も使用できる。このための装置としては、例えばリックス社製湿式粉砕機「G−smasher」が挙げられる。
上記の解繊処理後、加圧濾過機等を用いてセルロース繊維分散液を濾過して、解繊不良のセルロース繊維を除去してもよい。
なお、前述の酸化処理や化学変性処理は、解繊処理後のセルロース繊維に施してもよい。
また、本発明に用いるセルロース繊維は、解繊処理を経ずとも、前述の繊維長及び繊維径に制御できる方法があれば、その方法により製造されてもよい。
<酵素処理>
本発明で用いるセルロース繊維を製造する際、前述の解繊処理に先立ち、酵素処理を行ってもよい。
酵素処理は、セルロースのβ−1,4−グルコシド結合を加水分解によって開裂し、解重合を引き起こすセルラーゼ系酵素を用いて行われ、酵素処理によりセルロース繊維原料を解繊して繊維径、繊維長を小さくすることができる。
酵素処理は、通常、セルロース繊維原料の水分散液に対してセルラーゼ系酵素を添加することにより行われる。
セルラーゼを産生する微生物としては、好気性細菌、嫌気性細菌、動物や昆虫の消化器官に存在するルーメン細菌、放線菌、酵母、糸状菌(子嚢菌や担子菌など)などが挙げられ、それぞれ多様なセルラーゼを産生する。
セルラーゼ系酵素としては、トリコデルマ(Trichoderma、糸状菌)属、アクレモニウム(Acremonium、糸状菌)属、アスペルギルス(Aspergillus、糸状菌)属、ファネロケエテ(Phanerochaete、担子菌)属、トラメテス(Trametes、担子菌)属、フーミコラ(Humicola、糸状菌)属、バチルス(Bacillus、細菌)属、スエヒロタケ(Schizophyllum、担子菌)属、ストレプトミセス(Streptomyces、細菌)属、シュードモナス(Pseudomonas、細菌)属などが産生するセルラーゼ系酵素が挙げられる。このようなセルラーゼ系酵素は試薬や市販品として購入可能である。例えば、セルロイシンT2(エイチピィアイ社製)、メイセラーゼ(明治製菓社製)、ノボザイム188(ノボザイム社製)、マルティフェクトCX10L(ジェネンコア社製)、セルラーゼ系酵素GC220(ジェネンコア社製)等が挙げられる。これらのセルラーゼ系酵素の中でも糸状菌セルラーゼ系酵素が好ましく、糸状菌セルラーゼ系酵素の中でもトリコデルマ菌(Trichoderma
reesei、あるいはHyporea jerorina、糸状菌の一種である子嚢菌)が産生するセルラーゼ系酵素はセルラーゼ系酵素の種類が豊富で、産生性も高いため特に好ましい。
ヘミセルラーゼ系酵素とは、ヘミセルロースを加水分解する酵素である。ヘミセルラーゼ系酵素の中でもキシランを分解する酵素であるキシラナーゼ(xylanase)、マンナンを分解する酵素であるマンナーゼ(mannase)、アラバンを分解する酵素であるアラバナーゼ(arabanase)が挙げられる。また、ペクチンを分解する酵素であるペクチナーゼもヘミセルラーゼ系酵素として使用することができる。ヘミセルラーゼ系酵素を産生する微生物はセルラーゼ系酵素も産生する場合が多い。
ヘミセルロースは植物細胞壁のセルロースミクロフィブリル間にあるペクチン類を除いた多糖類である。ヘミセルロースは多種多様で植物の種類や細胞壁の壁層間でも異なる。木材においては針葉樹の2次壁ではグルコマンナンが主成分であり、広葉樹の2次壁では4−O−メチルグルクロノキシランが主成分である。そのため、針葉樹から微細繊維状セルロースを得るためにはマンナーゼを使用する方が好ましく、広葉樹の場合はキシラナーゼを使用する方が好ましい。
セルラーゼ系酵素のセルロース繊維原料に対する添加量は0.1〜3重量%が好ましく、0.3〜2.5重量%がより好ましい。セルラーゼ系酵素の添加量が0.1重量%未満であると酵素による解繊効率が低下するおそれがあり、3重量%を超えて添加するとセルロースが糖化されて、微細セルロース繊維の収率が低下するおそれがある。
セルラーゼ系酵素処理時のセルロース繊維原料の水分散液のpHは弱酸性領域であるpH3.0〜6.9が好ましいが、セルラーゼ系酵素の種類により適宜最適なpH領域を選択してもよい。
また、ヘミセルラーゼ系酵素による処理を行う際のセルロース繊維原料の水分散液のpHは弱アルカリ性領域であるpH7.1〜10.0が好ましいが、ヘミセルラーゼ系酵素の種類により適宜最適なpH領域を選択してもよい。
酵素処理時のセルロース繊維原料の水分散液の温度は30〜70℃が好ましく、35〜65℃がさらに好ましく、40〜60℃が特に好ましい。温度が30℃未満であると酵素活性が低下して処理時間が長くなるので好ましくない。温度が70℃を超えると酵素が失活するので好ましくない。処理時間は酵素の種類や温度、pHで調整するが、30分〜24時間が好ましい。処理時間が30分未満であると酵素処理の効果がほとんど発現しないおそれがある。24時間を超えると酵素によりセルロース繊維の分解が進みすぎて、得られる微細セルロース繊維の数平均繊維長が短くなりすぎるおそれがある。
なお、酵素が活性なままで残留しているとセルロース繊維の分解が進み過ぎるので、所定時間、酵素で反応させた後のセルロース繊維原料の水分散液に20重量%程度の水酸化ナトリウム水溶液を分散液のpHが12程度になるように添加して酵素を失活させるか、あるいはセルロース繊維原料の水分散液の温度を90℃まで上昇させて、失活させる方法が通常とられる。水酸化ナトリウム水溶液を加える方が簡便ではあるが、その後の洗浄処理において脱水性が悪化するおそれがあるので、その対処が必要になる。水洗は、セルロース繊維の2〜4重量倍量の水で行なえばよく、これにより酵素はほとんど残留しなくなる。
[光硬化性樹脂前駆体]
次に本発明に用いられる光硬化性樹脂前駆体について説明する。
本発明のセルロース繊維分散体には、1または2種以上の光硬化性樹脂前駆体が含まれる。1種の光硬化性樹脂前駆体の場合は、光硬化性樹脂前駆体は、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、即ちトリシクロデカンジメタノールジアクリレート及び/またはトリシクロデカンジメタノールジメタクリレートである(トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート100重量%)。2種以上の光硬化性樹脂前駆体が含まれる場合、セルロース繊維分散体に含まれる光硬化性樹脂前駆体全量の50重量%以上がトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートである必要がある。トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートは屈折率がセルロース繊維と近いため、相溶性が良く、高透明性に寄与する。また、耐熱性も高く好適であるためである。
更に、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートは、オキセタン樹脂のように、光カチオン重合開始剤ではなく、光ラジカル重合開始剤を用いてラジカル重合させることができ、前述のオキセタン樹脂におけるような問題がない。
本発明で用いる光硬化性樹脂前駆体中のトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートの含有量が50重量%以上であれば、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートによる上記効果を有効に得ることができる。光硬化性樹脂前駆体中のトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートの含有量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、通常100重量%以下である。
本発明の光硬化性樹脂前駆体は、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートが50重量%以上含まれていれば、その他の光硬化性樹脂前駆体を含有していてもよい。
本発明で用いるトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート以外の光硬化性樹脂前駆体としては、ラジカル重合可能な化合物であれば、特に限定されない。
ラジカル重合可能な化合物としては、例えば、分子内に1個の(メタ)アクリロイル基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物、分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物、エポキシ(メタ)アクリレート、分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート、スチレン系化合物、エステル以外の(メタ)アクリル酸誘導体などが挙げられる。
これらの他の光硬化性樹脂前駆体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
中でも、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート(ウレタン(メタ)アクリレート)は好適に用いられる。ウレタン(メタ)アクリレートを含有させることにより、光硬化性樹脂前駆体としてトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートを単独で用いる場合に較べて、クラックが入った際の割れ易さが改良される効果がある。本発明では、光硬化性樹脂前駆体のうち、10〜40重量%がウレタン(メタ)アクリレートであることが好ましい。
[セルロース繊維分散体]
本発明のセルロース繊維分散体は、前述した解繊処理等により得られるセルロース繊維の有機溶媒分散液に前述した光硬化性樹脂前駆体を添加して製造されたものであってもよいし、セルロース繊維原料、光硬化性樹脂前駆体及び溶媒を含有する原料分散液に対し、解繊処理を施して得られる分散液であってもよい。
本発明のセルロース繊維分散体中の固形分量は特に制限されないが、1重量%以上が好ましく、2重量%以上がさらに好ましく、全く溶媒が含有しない固形分濃度100重量%でもよいが、通常70重量%以下が好ましく、50重量%以下がより好ましい。セルロース繊維分散体中の固形分量が高くなると、分散体の流動性が喪失され基板に製膜しにくいなどの取り扱い性に劣るものとなり、上記下限を下回ると製膜時の膜厚が薄くなり好ましくない。ここで、固形分とは、セルロース繊維分散体中の溶媒以外の成分の合計をさす。
また、本発明のセルロース繊維分散体において、セルロース繊維と光硬化性樹脂前駆体の合計の比率を100重量%としたときに、セルロース繊維は、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、更に好ましくは20重量%以上、通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下、更に好ましくは30重量%以下である。セルロース繊維の含有比率がこれより少ないと、十分に低線膨張な繊維樹脂複合材料を得ることができず、これよりも多いと、得られる繊維樹脂複合材料中の樹脂量が少なくなって、樹脂による繊維間の接着、または繊維間の空間の充填が十分でなくなり、繊維樹脂複合材料の強度や透明性、表面の平坦性が低下する恐れがある。
尚、本発明のセルロース繊維分散体中のセルロース繊維と光硬化性樹脂前駆体の含有比率は、重量比で、セルロース繊維:光硬化性樹脂前駆体=5:95〜50:50であることが好ましい。
[その他の添加剤]
本発明のセルロース繊維分散体には、これを硬化して得られる本発明の繊維樹脂複合材料の物性を損ねない範囲でその他の添加剤を含んでいてもよい。これらのその他の添加剤としては、例えば、連鎖移動剤、重合禁止剤、光重合開始剤、熱重合開始剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤、シランカップリング剤、硬化剤、硬化促進剤、消泡剤、レベリング剤、ブルーイング剤、染顔料、フィラー、ガラスファイバー等が挙げられる。これらは、前述のセルロース繊維の解繊工程時に共存させてもよいし、解繊工程後のセルロース繊維分散体に添加してもよい。
<連鎖移動剤>
連鎖移動剤としてしては、例えば、分子内に2個以上のチオール基を有する多官能メルカプタン化合物を用いることができ、これにより得られる硬化物に適度な靱性を付与することができ来る。
メルカプタン化合物としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス(β−チオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(β−チオグリコレート)、トリメチロールプロパントリス(β−チオプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(β−チオグリコレート)、ジエチレングリコールビス(β−チオプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(β−チオグリコレート、ジペンタエリスリトールヘキサキス(β−チオプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(β−チオグリコレート)等の2〜6価のチオグリコール酸エステルまたはチオプロピオン酸エステル、トリス[2−(β−チオプロピオニルオキシ)エチル]トリイソシアヌレート、トリス[2−(β−チオグリコニルオキシ)エチル]トリイソシアヌレート、トリス[2−(β−チオプロピオニルオキシエトキシ)エチル]トリイソシアヌレート、トリス[2−(β−チオグリコニルオキシエトキシ)エチル]トリイソシアヌレート、トリス[2−(β−チオプロピオニルオキシ)プロピル]トリイソシアヌレート、トリス[2−(β−チオグリコニルオキシ)プロピル]トリイソシアヌレート等のω−SH基含有トリイソシアヌレート、ベンゼンジメルカプタン、キシリレンジメルカプタン、4、4’−ジメルカプトジフェニルスルフィド等のα,ω−SH基含有化合物等が挙げられる。これらの中でもペンタエリスリトールテトラキス(β−チオプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(β−チオプロピオネート)、トリス[2−(β−チオプロピオニルオキシエトキシ)エチル]トリイソシアヌレートなどの1種または2種以上を用いるのが好ましい。
<紫外線吸収剤>
紫外線吸収剤としては、好ましくはベンゾフェノン系紫外線吸収剤及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤から選ばれるものであり、その紫外線吸収剤は1種類を用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
具体的には、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4、4’−ジメトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物、2−(2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’、5’−ジターシャリーブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−ターシャリーブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系化合物、その他マロン酸エステル系のホスタビンPR−25(クラリアント社)、蓚酸アニリド系のサンデュボアVSU(クラリアント社)などの化合物である。紫外線吸収剤を用いる場合は、光硬化性樹脂前駆体の合計重量の100重量部に対して、通常0.01〜1重量部の割合で含有させる。
<充填剤>
充填剤としては、無機粒子や有機高分子などが挙げられる。例えば、シリカ粒子、チタニア粒子、アルミナ粒子などの無機粒子、ゼオネックス(日本ゼオン社)やアートン(JSR社)などの透明シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネートやポリメチルメタアクリレートなどの汎用熱可塑性ポリマーなどが挙げられる。中でも、ナノサイズのシリカ粒子を用いると透明性を維持することができ好適である。また、光硬化性樹脂前駆体と構造の似たポリマーを用いると高濃度までポリマーを溶解させることが可能であり、好適である。例えば日立化成社の紫外線硬化性モノマー(FA−513M)を重合させたポリマーは本発明で用いるトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートと構造がよく似ており、好適である。上記重合の方法はよく知られた熱重合を用いることができる。
<シランカップリング剤>
シランカップリング剤としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−((メタ)アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。中でも、γ−((メタ)アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−((メタ)アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、γ−((メタ)アクリロキシプロピル)メチルジエトキシシラン、γ−((メタ)アクリロキシプロピル)トリエトキシシラン、γ−(アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン等は分子中に(メタ)アクリル基を有しており、本発明で用いるトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートと共重合することができるので好ましい。
<光重合開始剤>
本発明のセルロース繊維分散体は光硬化させることで本発明の繊維樹脂複合材料となることから、通常、光重合開始剤を含有する。
光重合開始剤としては、通常、光ラジカル発生剤が用いられる。光ラジカル発生剤としては、この用途に用い得ることが知られている公知の化合物を用いることができる。例えば、ベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等が挙げられる。これらの中でも、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等のラジカル開裂型の光重合開始剤が好ましい。これらの光重合開始剤は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
本発明のセルロース繊維分散体中の光重合開始剤の含有量は、特に限定されないが、樹脂成分である光硬化性樹脂前駆体100重量部に対して、通常0.1重量部以上、好ましくは0.5重量部以上、更に好ましくは1重量部以上である。その上限は、通常5重量部以下、好ましくは4重量部以下、更に好ましくは3重量部以下である。光重合開始剤の含有量が多すぎると重合が急激に進行し、得られる繊維樹脂複合材料の複屈折を大きくするだけでなく、色相も悪化する。また、少なすぎると、重合が十分に進行しないおそれがある。
<熱重合開始剤>
本発明のセルロース繊維分散体の硬化に際しては、上記の光重合開始剤と共に熱重合開始剤を併用してもよい。
熱重合開始剤としては、公知の化合物を用いることができる。例えば、ハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジt−ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル、ベンゾイルパーオキシド等のジアシルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート等のパーオキシカーボネート、パーオキシケタール、ケトンパーオキサイド等の過酸化物が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
[繊維樹脂複合材料]
<繊維樹脂複合材料の製造方法>
本発明の繊維樹脂複合材料は、本発明のセルロース繊維分散体を硬化させて得られるものである。
例えば、通常公知の方法により、セルロース繊維分散体を製膜した後に、溶媒を揮発させるなどした後に、硬化させて得ることができる。製膜方法としては、ドクターブレード、アプリケータなど公知の方法を用いることができる。
製膜厚み(溶媒乾燥前の厚み)は溶媒乾燥後の厚みを考慮して制御できるが、通常100〜2000μm、好ましくは120〜1500μmである。製膜厚みがこの下限を下回ると溶媒乾燥後の厚みが薄くなり、上限を上回ると溶媒が完全に揮発しなかったり、溶媒揮発時に膜に皺や亀裂が入る恐れがある。
溶媒を揮発させる方法は特に限定されないが、熱風オーブンなどで高温の窒素ガスを吹き付ける方法が好ましい。このときの温度は特に限定されないが、光硬化性樹脂前駆体の硬化が完全に進行しない程度であることが望ましい。温度は必ずしも溶媒の沸点以上である必要はなく、沸点より低い温度の熱風を吹き付けて徐々に溶媒を蒸発させてもよい。
例えば、以下の工程を経て本発明の繊維樹脂複合材料を製造することができる。
(1)セルロース繊維分散体を第1の基板上に製膜し、溶媒を蒸発させる。
(2)必要に応じて、更に該膜上にセルロース繊維分散体を製膜し、溶媒を蒸発させる。
(3)(1)、(2)と同様にして第2の基板上にセルロース繊維分散体を製膜し、溶媒を蒸発させる。
(4)第1の基板及び第2の基板の、分散体が製膜された面どうしを貼り合せ、次いで、光硬化性樹脂前駆体を硬化させる。
第1の基板及び第2の基板の、基板材料は特に限定されないが、基板の表面平滑性が、得られる繊維樹脂複合材料の表面に転写されることから、光学研磨されたガラス板が好ましい。
得られる繊維樹脂複合材料の膜厚を制御するため、必要において、(2)の工程の後に更に該膜上にセルロース繊維分散体を製膜してもよい。製膜の回数は何回でもよい。
また、(4)において、製膜された面間を密着させる目的で光硬化性樹脂及び/またはその前駆体を製膜面どうしの間に積層してもよい。該層はセルロース繊維を含有していてもよい。
また、上記(1)、(2)の工程を経た第1の基板の製膜面に、セルロース繊維分散体を製膜していない第2の基板を重ねて光硬化性樹脂前駆体を硬化させてもよい。
セルロース繊維分散体は通常放射線を用いて硬化させるが、本発明のセルロース繊維分散体を硬化させるために照射する放射線の量は、セルロース繊維分散体中の光重合開始剤がラジカルを発生させる範囲であれば任意であるが、極端に少ない場合は重合が不完全となるため硬化物の耐熱性、機械特性が十分に発現されず、逆に極端に過剰な場合は硬化物の黄変等の光による劣化を生じるので、光硬化性樹脂前駆体の組成および光重合開始剤の種類、量に合わせて、波長200〜400nmの紫外線を用いて、照射光量1〜50J/cmの範囲、好ましくは5〜40J/cmの範囲、更に好ましくは10〜30J/cmの範囲で照射する。照射光量がこの下限値未満では十分な重合度が得られず、上限値を超える場合は生産性に劣る傾向がある。紫外線の照度は10〜5000mW/cm、好ましくは100〜1000mW/cmである。照度が低すぎると繊維樹脂複合材料内部まで十分に硬化しない。逆に高すぎると重合が暴走し複屈折が増大する傾向がある。紫外線は複数回に分割して照射すると、複屈折がより小さい複合材料が得られるので好ましい。例えば、1回目に全照射量の1/100〜1/10程度を照射し、2回目以降に必要残量を照射する方法が挙げられる。
使用するランプの具体例としては、メタルハライドランプ、高圧水銀灯ランプ、無電極水銀ランプ、紫外線LEDランプ等が挙げられる。光源から発生する赤外線により重合が暴走するのを防ぐためにランプに赤外線を遮断するフィルターや赤外線を反射しない鏡等を用いることも可能である。
上記光硬化後は、重合度の向上、応力歪みの解放、あるいは揮発成分除去のために熱処理を行ってもよく、この場合は100℃以上、好ましくは150〜200℃で熱処理することが好ましい。
<セルロース繊維及び光硬化性樹脂含有量>
本発明の繊維樹脂複合材料中のセルロース繊維の含有量は特に制限されないが、5〜50重量%含有することが好ましい。5重量%以上が好ましいが、10重量%以上がより好ましく、20重量%以上がさらに好ましく、50重量%以下が好ましく、45重量%以下がより好ましく、40重量%以下がさらに好ましく、35重量%以下が特に好ましい。繊維樹脂複合材料中のセルロース繊維の含有量が少な過ぎると線膨張係数低減等の効果が不十分となる傾向がある。逆に、繊維樹脂複合材料中のセルロース繊維の含有量が多過ぎると相対的に樹脂含有量が低減して、樹脂による繊維間の接着、または繊維間の空間の充填が十分でなくなり、繊維樹脂複合材料の強度や透明性、表面の平坦性が低下する恐れがある。
なお、繊維樹脂複合材料中のセルロース繊維および樹脂の含有量は、例えば硬化前に投入したセルロース繊維の重量と硬化後の繊維樹脂複合材料の重量より求めることができる。また、樹脂が可溶な溶媒に繊維樹脂複合材料を浸漬して樹脂のみを取り除き、残ったセルロース繊維の重量から求めることもできる。その他、樹脂の比重から求める方法や、NMR、IRを用いて樹脂やセルロース繊維の官能基を定量して求めることもできる。
<形状、厚み>
本発明のセルロース繊維分散体の形状は、特に限定されず、板状、または曲面を有する板状とすることもできる。形状が板状(シート状、フィルム状)である場合、その厚み(平均厚み)は、好ましくは10μm以上5mm以下であり、より好ましくは50μm以上2mm以下であり、さらに好ましくは80μm以上1mm以下である。
なお、上記板状物において、フィルムとはその厚みが概ね、200μm以下の板状物を意味し、シートとはフィルムよりも厚い板状物を意味する。
<線膨張係数>
本発明の繊維樹脂複合材料は、低い線膨張係数(1Kあたりの伸び率)を示す。この繊維樹脂複合材料の線膨張係数は、1〜70ppm/Kが好ましく、1〜60ppm/Kがより好ましく、1〜50ppm/Kが特に好ましい。
例えば、基板用途においては、無機の薄膜トランジスタの線膨張係数が15ppm/K程度であるため、繊維樹脂複合材料の線膨張係数が50ppm/Kを超えると無機膜との積層複合化の際に、二層の線膨張係数差が大きくなり、クラック等が発生するおそれがある。従って、繊維樹脂複合材料の線膨張係数は、特に1〜50ppm/Kであることが好ましい。
なお、線膨張係数は、後述の実施例の項に記載される方法により測定される。
<光線透過率>
本発明の繊維樹脂複合材料の光線透過率は、80%以上であることが好ましい。より好ましくは85%以上、更に好ましくは88%以上、特に好ましくは90%以上である。光線透過率が小さすぎると、ディスプレイ基板としての透明性が低下する傾向にある。なお光線透過率の上限値は99%である。光線透過率を向上させる手法としては、ヘイズの低減やYI値の低減が挙げられる。
<ヘイズ>
本発明の繊維樹脂複合材料のヘイズは、10以下であることが好ましい。より好ましくは7以下、更に好ましくは5以下、特に好ましくは3以下である。ヘイズが大きすぎると、ディスプレイの精細性が低下する傾向にある。なおヘイズの下限値は0.01である。ヘイズを低減する手法としては、セルロース繊維の形状、化学修飾状態、解繊方法、配合量の適正化などが挙げられる。
<黄色度(YI)>
本発明の繊維樹脂複合材料のYIは、5以下であることが好ましい。より好ましくは4以下、更に好ましくは3以下、特に好ましくは2以下である。YIが大きすぎるおおきすと、ディスプレイの色調が低下する傾向にある。なおYIの下限値は0.1である。YIを低減する手法としては、セルロース繊維の化学修飾状態、配合量の適正化などが挙げられる。
<表面硬度>
本発明の繊維樹脂複合材料の表面硬度は、鉛筆硬度でHB以上であることが好ましい。より好ましくはH以上、更に好ましくは2H以上、特に好ましくは3H以上である。鉛筆硬度が低すぎると、ディスプレイパネルが傷つきやすい傾向にある。なお鉛筆硬度の上限値は9Hである。表面硬度を向上する手法としては、ウレタン(メタ)アクリレートを配合する手法などが挙げられる。
<耐熱性(ガラス転移温度)>
本発明の繊維樹脂複合材料のガラス転移温度は、100℃以上が好ましい。より好ましく150℃以上、更に好ましくは200℃以上、特に好ましくは250℃以上である。ガラス転移温度が低すぎると、ディスプレイの製造が困難になる傾向にある。なおガラス転移温度の上限値は500℃である。
<サイズ>
本発明の繊維樹脂複合材料のサイズは、幅3cm以上が好ましい。より好ましく10cm以上、更に好ましくは50cm以上、特に好ましくは1m以上である。幅が小さすぎると、ディスプレイ基板の量産性が低下する傾向にある。また、長さ5cm以上が好ましい。より好ましく10cm以上、更に好ましくは50cm以上、特に好ましくは1m以上である。長さが小さすぎると、ディスプレイ基板の量産性が低下する傾向にある。なお長さの上限値は1kmである。
<用途>
本発明のセルロース繊維樹脂複合材料は、その高耐熱性、高透明性、低線膨張性の特性を利用して様々な光学材料、電子材料の透明基板等として用いることができる。例えば、液晶基板、有機エレクトロルミネッセンス用基板、電子ペーパー用基板、導光板、位相差板、タッチパネル等、各種ディスプレイ用部材、光カード光ディスク基板、光ディスク用フィルムなどの記憶、記録用途、薄膜電池基板、太陽電池基板などのエネルギー用途、光導波路などの光通信用途、更には、機能性フィルム・シート、反射防止膜、光学多層膜等、各種光学フィルム・シート・コーティング用途に用いることができる。特にコーティング用途ではプラスチック基板のハードコートやアンダーコート等に好適である。例えば、有機エレクトロルミネッセンス用基板等の素子化工程では加熱工程を通ることになるが、その際にプラスチック基板と無機ガスバリア膜との間に積層すると低線膨張性の効果で加熱工程でのガスバリア膜のクラックを防止する効果がある。
以下、製造例、実施例および比較例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
[物性の評価]
セルロース繊維の数平均繊維径及び繊維樹脂複合材料の物性の評価方法は、次の通りである。
<セルロース繊維の数平均繊維径>
微細セルロース繊維の数平均繊維径は、光学顕微鏡、SEM、TEM等で観察することにより計測して求めた。具体的には、分散液から有機溶媒を乾燥除去した後、30,000倍に拡大したSEM写真の対角線に線を引き、その近傍にある繊維をランダムに12点抽出し、最も太い繊維と最も細い繊維を除去した10点の測定値の平均を数平均繊維径とした。
<黄色度(YI)>
JIS規格K7105に準拠し、スガ試験機製カラーコンピューターを用いて測定した。
<ヘイズ及び全光線透過率>
JIS規格K7136に準拠し、スガ試験機製へイズメーターを用いてC光によるヘイズ及び全光線透過率を測定した。
<線膨張係数の測定>
繊維樹脂複合材料を3.0mm幅×30mm長にカットした。これを熱機械的分析装置(SII社製TMA「EXSTAR6000」)を用いて、引張モードでチャック間20mm、荷重98mN、窒素ガス雰囲気下で、温度プロファイルは25℃→(5℃/分 昇温)→200℃(5分保持)→(5℃/分 降温)→−20℃(5分保持)→(5℃/分 昇温)→250℃の条件で測定した。線膨張係数はセカンドランの60℃から100℃の測定値から求めた。
[製造例1:セルロース繊維分散液の作製]
セルロース繊維原料として、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)をリファイナー処理し、さらに6時間酵素処理を行ないセルロース繊維原料を得た。このセルロース繊維原料を脱水し、セルロース繊維1重量部(乾燥重量)に対して、酢酸8重量部、無水酢酸21重量部を添加し十分に攪拌した。その後、攪拌しながら115℃で5時間反応させることによりセルロース繊維を化学修飾処理(アセチル化処理)した。反応後、反応液を濾過して、メタノール、脱塩水の順で洗浄し、化学修飾処理されたセルロース繊維原料を得た。このセルロース繊維原料の化学修飾率は27モル%であった。
得られたセルロース繊維原料を用いて微細セルロース繊維分散液を作製した。
具体的には、セルロース繊維原料分散液中の水を吸引濾過にて脱水し、固形分25〜25重量%程度のケーキを得た。これを絶乾セルロース重量の20倍量のイソプロピルアルコール中に分散して攪拌・濾過する工程を1度行い、更に20倍量のメチルエチルケトン中に分散して攪拌・濾過する工程を2度行い、水をメチルエチルケトンに置換した。
次にセルロース繊維/メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=1.5/23.5/75(重量比)となるように溶媒を配合した。
この原料分散液に対し、高速回転ホモジナイザー(T25デジタルウルトラタラックス、IKA社製)を用いて13500rpmで30分間予備分散処理した。次に、ビーズミル(ウルトラアペックスミルUAM−015、寿工業社製)を用いて、ビーズ径0.3mm、周速11.4m/secで10パス処理することによりセルロース繊維の解繊を行い、微細なセルロース繊維が分散した微細セルロース繊維分散液Aを得た。
この微細セルロース繊維分散液Aを公称濾過粒度28μmの金属メッシュを用いて加圧濾過器でフィルタリングし、セルロース繊維分散液Bを作成した。
尚、このセルロース繊維分散液Bに含まれるセルロース繊維の数平均繊維径は38nmであった。
[実施例1]
セルロース繊維分散液B10g(セルロース繊維絶乾量0.15g)に、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(新中村化学工業社製「A−DCP」)を0.6g、光重合開始剤2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製「ルシリンTPO」)を0.012g添加し、セルロース繊維分散体を得た。これを光学研磨ガラス板上にドクターブレードを用いて1mm厚で塗膜し、80℃のイナートオーブンで窒素フローしながら30分脱溶媒してセルロース繊維分散体膜Cを得た。セルロース繊維分散体膜C上にPETフィルムを被せ、PETフィルムと分散体膜Cが密着するように延し棒で圧着させ、PETフィルムとガラス板をクリップで固定した。このものに対して、ワーク面から40cm離れて上下に3本づつ、計6本の出力80W/cmのメタルハライドランプを備えたオーク製作所社製コンベア搬送式UV照射装置(型式QRM−2232−A−00)を用いて、ライン速度0.5m/minで上下両面から積算光量20J/cmの光を照射してセルロース繊維分散体膜Cを硬化させた。得られた硬化物をガラス板及びPETフィルムから剥がして、真空下で200℃で6時間加熱した。得られた硬化物(繊維樹脂複合材料)のセルロース繊維の含有量及び厚みは表1に示す通りであった。この硬化物のYI、ヘイズ、全光線透過率、線膨張係数を測定し、結果を表1に示した。
[実施例2]
セルロース繊維分散液B20g(セルロース繊維絶乾量0.3g)に、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(新中村化学工業社製「A−DCP」)を0.9g、光重合開始剤2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製「ルシリンTPO」)を0.018g添加し、セルロース繊維分散体を得た。これを光学研磨ガラス板上にドクターブレードを用いて1mm厚で塗膜し、80℃のイナートオーブンで窒素フローしながら30分脱溶媒してセルロース繊維分散体膜Dを得た。分散体膜Dの上に、同様にしてセルロース分散体膜Dを2層重ねて形成した。同様にもう一つの光学研磨ガラス板上にセルロース分散体膜Dを3層重ねて形成し、片方の塗膜上にトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(新中村化学工業社製「A−DCP」)100重量部に対し、重合開始剤2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製「ルシリンTPO」)を2重量部溶解させた光硬化性樹脂前駆体液を0.1g滴下した後、この面にもう片方の塗膜付きガラス板を被せて密着させた。これをクリップで固定し、実施例1と同様にして光硬化、加熱工程を経て硬化物を得た。得られた硬化物(繊維樹脂複合材料)のセルロース繊維の含有量及び厚みは表1に示す通りであった。この硬化物のYI、ヘイズ、全光線透過率、線膨張係数を測定し、結果を表1に示した。
[比較例1]
セルロース繊維を含有させずに、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(新中村化学工業社製「A−DCP」)100重量部に対し、光重合開始剤2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製「ルシリンTPO」)を0.2重量部溶解させた光硬化性樹脂前駆体液を、光学研磨ガラス板上に0.2mmのシリコン製スペーサーを用いて作成した枠内に注入し、光学研磨ガラス板を上から重ねてクリップで固定し、実施例1と同様にして光硬化、加熱工程を経て硬化物を得た。得られた硬化物の厚みは表1に示す通りであった。この硬化物のYI、ヘイズ、全光線透過率、線膨張係数を測定し、結果を表1に示した。
Figure 2014181255
表1より、本発明の繊維樹脂複合材料は、高耐熱性、高透明性であり、低線膨張性に優れる材料であることがわかる。
本発明のセルロース繊維樹脂複合材料は、その高耐熱性、高透明性、低線膨張性の特性を利用して様々な光学材料、電子材料の透明基板等として用いることができる。例えば、液晶基板、有機エレクトロルミネッセンス用基板、電子ペーパー用基板、導光板、位相差板、タッチパネル等、各種ディスプレイ用部材、光カード光ディスク基板、光ディスク用フィルムなどの記憶、記録用途、薄膜電池基板、太陽電池基板などのエネルギー用途、光導波路などの光通信用途、更には、機能性フィルム・シート、反射防止膜、光学多層膜等、各種光学フィルム・シート・コーティング用途に用いることができる。

Claims (6)

  1. 1または2種以上の光硬化性樹脂前駆体とセルロース繊維を含有するセルロース繊維分散体であって、
    該光硬化性樹脂前駆体の50重量%以上は、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートであり、
    該セルロース繊維は数平均繊維径が400nm以下であることを特徴とする、セルロース繊維分散体。
  2. 該セルロース繊維及び該光硬化性樹脂前駆体を、セルロース繊維:光硬化性樹脂前駆体=5:95〜50:50(重量比)で含有することを特徴とする、請求項1に記載のセルロース繊維分散体。
  3. 該光硬化性樹脂前駆体の10〜40重量%が、ウレタン(メタ)アクリレートであることを特徴とする、請求項1または2記載のセルロース繊維分散体。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のセルロース繊維分散体を硬化させて得られる、繊維樹脂複合材料。
  5. 該セルロース繊維を5〜50重量%含有することを特徴とする、請求項4に記載の繊維樹脂複合材料。
  6. 請求項4または5に記載の繊維樹脂複合材料を用いた、透明基板。
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