JP5272738B2 - セルロース塗工膜を有するポリマーフィルム - Google Patents

セルロース塗工膜を有するポリマーフィルム Download PDF

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Description

本発明は、セルロース繊維のマトリックス中に無機微粒子を含有させた、セルロース塗工膜を有するポリマーフィルムに関する。
樹脂に各種繊維状強化材を配合することで、その強度、剛性を大幅に向上させた繊維強化複合材料は、電気・電子、機械、自動車、建材等の産業分野で広く用いられている。この繊維強化複合材料に配合される繊維状強化材としては、優れた強度と軽量性を有するガラス繊維が主に用いられている。しかし、ガラス繊維強化材料では、高剛性化は達成されるが比重が大きくなる為、軽量化に限界があった。これに対し、繊維状強化材としてポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維といった有機材料からなる繊維強化材が検討されてきたが、これら強化材を配合した繊維強化材料は軽量性やサーマルリサイクル性については確保できるものの、機械的補強効果が十分でないという問題があった。一方、近年、カーボンニュートラルの観点から植物由来材料を利用した高機能材料が注目される中、この植物繊維を解繊してフィブリル化したセルロース繊維を樹脂に混合した繊維複合材料が提案されている。
これら繊維を樹脂中に分散させる方法として、繊維と樹脂を混合し、二軸混練機を用いて分散させる方法が一般に用いられているが、樹脂中に繊維をナノレベルで分散させることは困難であるため、力学的強度を十分に確保するには至っていない。一方このような繊維を溶媒中で均一分散したものを基材上に塗工し、被膜にすることで機械的強度を向上させる技術が報告されている。(例えば特許文献1、2)これは、粘度の高い樹脂中に繊維を分散することで繊維の凝集を引き起こすことなく、基材の強度を補強できる手段として優れているが、セルロース由来のフィブリルの構造的特徴による引っ張り強度のみ改良できているが、産業分野において重要な擦り傷耐性、また今後のフレキシブルエレクトロニクス分野に使用されている基材として必要な曲げ弾性率、低線膨張等の補強は行われていない。
特開平10−95803号公報 特開平9−13274号公報
従来の繊維複合材料では引っ張り強度、曲げ強度、耐傷性、寸法安定性などの力学特性が不十分であり、その適用範囲が限定されるといった課題があったので、本発明は、引っ張り強度、曲げ強度、耐傷性、寸法安定性を改良したセルロース塗工膜を有するポリマーフィルムを提供することである。
本発明の課題は、以下の構成により達成される。
1.ポリマー基材上に、平均繊維径が2nm以上200nm以下であるセルロース繊維を含有する塗工層を有することを特徴とするポリマーフィルム。
2.前記セルロース繊維が表面修飾されたことを特徴とする前記1記載のポリマーフィルム。
3.前記塗工層が平均粒径2nm以上1000nm以下の無機微粒子を含有することを特徴とする前記1または2記載のポリマーフィルム。
4.前記無機微粒子が酸化物微粒子であることを特徴とする前記3記載のポリマーフィルム。
本発明によれば、ミクロフィブリル化したセルロース繊維が良好な分散性を確保できたまま、ポリマーフィルムに塗工されることで、均一なセルロース繊維マトリックス膜を形成し、ポリマーフィルム単体の引っ張り強度、曲げ強度、耐傷性、低線膨張などの力学特性を大幅に向上させることができる。またセルロース繊維径が小さい場合には、透明性を確保することができる。
以下、本発明を実施形態に基づいて説明するが、これらに限定されるものではない。
本発明は、少なくとも平均繊維径が2nm以上、200nm以下であるセルロース繊維を含有した塗工層を有するポリマーフィルムであることを特徴としている。
以下、本発明を更に詳しく説明する。
(セルロース繊維)
セルロース繊維の平均繊維径が2nm以上、200nm以下であることにより塗布膜中でナノレベルの繊維マトリックスを形成することにより、本発明の効果が確認できる。本発明のセルロース繊維は、ミクロフィブリルの状態まで解繊されていればよく、さらに好ましくは繊維表面を化学修飾、あるいは物理修飾により表面処理したものである。本発明に用いる原料セルロース繊維としては、植物由来のパルプ、木材、コットン、麻、竹、綿、ケナフ、ヘンプ、ジュート、バナナ、ココナツ、海草等の植物繊維から分離した繊維、海産動物であるホヤが産生する動物繊維から分離した繊維、あるいは酢酸菌より産生させたバクテリアセルロース等が挙げられる。これらの中で、植物繊維から分離した繊維が好ましく用いることができるが、より好ましくはパルプ、コットン等の植物繊維から得られる繊維である。本発明においては、これらの繊維をホモジナイザーやグラインダー等を用いて解繊処理し、微細化したミクロフィブリル状のセルロース繊維とするが、含有されるセルロースが繊維状態を保持している限りにおいては、その解繊維処理方法について何ら制限はない。
これらのセルロースにおいては、重合度が一般に1000〜3000(分子量で、数万〜数百万)の範囲であるといわれ、不溶性の天然繊維である。本発明では、これを解繊した結晶性フィブリルの繊維径が重要である為、重合度(分子量)がこの範囲にある不溶性の天然繊維であればよい。
具体例として、パルプ等のセルロース繊維を、水を入れた分散容器に0.1〜3質量%となるように投入し、これを高圧ホモジナイザーで解繊処理して平均繊維径0.1〜10μm程度のミクロフィブリルに解繊されたセルロース繊維の水分散液を得る。更にグラインダー等で繰り返し磨砕処理することで、平均繊維径2〜500nm程度のナノオーダーのセルロース繊維を得ることができる。
上記磨砕処理に用いられるグラインダーとしては、例えば、ピュアファインミル(栗田機械製作所社製)等が挙げられる。また、別の方法として、セルロース繊維の分散液を一対のノズルから250MPa程度の高圧でそれぞれ噴射させ、その噴射流を互いに高速で衝突させることによってセルロース繊維を粉砕する、高圧式ホモジナイザーを用いる方法が知られている。用いられる装置としては、例えば、三和機械社製の「ホモジナイザー」、スギノマシン(株)製の「アルテマイザーシステム」、等が挙げられる。このようにして解繊処理して得られるセルロース繊維の平均繊維径としては、2nm以上、200nm以下であり、より好ましくは2nm以上、100nm以下、更に好ましくは4nm以上、40nm以下である。
ここで示される平均繊維径は、樹脂中に分散した繊維の径の平均値であり、走査電子顕微鏡等による画像観察結果より求められる。
本発明において、セルロース繊維の平均繊維径が200nmを超えると、繊維複合材料の強度が不十分となる。また、セルロース繊維の平均繊維径が2nm未満のものは前記高圧ホモジナイザーによる解繊処理、また、グラインダー等による磨砕処理によっては得ることが困難となる。
また、本発明において、セルロース繊維の長さについては特に限定されるものではないが、平均繊維長で50nm以上が好ましく、更に好ましくは100nm以上である。この平均繊維長が50nm、好ましくは100nm以上である方が繊維複合材料の強度を十分に確保することができる。
本発明において、平均繊維径、平均繊維長の測定は、得られた繊維について透過型電子顕微鏡、H−1700FA型(日立製作所社製)を用いて10000倍の倍率で観察した後、得られた画像について無作為に繊維を100本選び、画像処理ソフト(WINROOF)を用いて一本毎の繊維径、及び繊維長を解析し、それらの単純な数平均値を求めた。
(セルロースの表面修飾方法)
ミクロフィブリル化したセルロース繊維は、良好な分散性を保っているが、繊維径がナノレベルまで小さくなることで繊維の比表面積が増大し、表面の水酸基が増加する。これにより水酸基同士の水素結合性が増し時間と共に水素結合による繊維同士の凝集がおこりやすくなる。一度、ミクロフィブリル繊維に分散した分散液の再凝集を防ぐためにセルロース水酸基を修飾し、水素結合由来の凝集を少なくする手段としてセルロースの水酸基の表面修飾方法がある。
前記セルロース繊維の表面修飾としては、化学修飾、あるいは物理修飾があるが好ましくは化学修飾法であり、化学修飾についてより具体的に説明する。
本発明においては、セルロース繊維の水酸基を、酸、アルコール類、ハロゲン化試薬、酸無水物、イソシアナート類、シランカップリング剤等の修飾剤を用いて化学修飾させる。
化学修飾する方法は公知の方法に従って行うことができ、例えば、解繊処理したセルロース繊維を水、あるいは適当な溶媒に添加して分散させた後、これに化学修飾剤を添加して適当な反応条件下で反応させれば良い。この場合、化学修飾剤の他に、必要に応じて反応触媒を添加することができ、例えば、ピリジンやN,N−ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、水酸化ナトリウム等の塩基性触媒や酢酸、硫酸、過塩素酸等の酸性触媒を用いることができるが、反応速度や重合度の低下を防止するため、ピリジン等の塩基性触媒を用いることが好ましい。反応温度としては、セルロース繊維の黄変や重合度の低下等の変質を抑制し、反応速度を確保する点で、40〜100℃程度が好ましい。反応時間については用いる修飾剤や処理条件により適宜選定すればよい。
化学修飾によりセルロース繊維に導入する官能基としては、例えば、アセチル基、メタクリロイル基、プロパノイル基、ブタノイル基、iso−ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。反応性基を導入する場合は、例えば反応性基を導入できるシランカップリング剤が好ましく用いられ、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のビニル基を末端に有するシランカップリング剤、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等のエポキシ基を末端に有するシランカップリング剤、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプト基を末端に有するシランカップリング剤等が挙げられる。
これらの中で、末端にエポキシ基、あるいはビニル基を有するものが好ましく用いられる。これらの官能基は1種、あるいは2種以上が導入されていてもよい。特に、ポリマー基材が有する官能基と同一、あるいは同種の官能基、または基材樹脂に対して反応性を有する官能基を導入することで、セルロース繊維とポリマー基材との親和性を向上させたり、セルロース繊維とポリマー基材の間で共有結合を形成させたりすることが可能となるため、良好な機械的強度や耐傷性、低線膨張係数等の物性向上効果が得られる。
一方、最近、植物資源からリグニン等の不純物を除去、精製して得る天然セルロースをいったん溶媒に溶解させて得られる再生セルロースを原料とし、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(以下、TEMPOと表記する)の存在下、次亜塩素酸のような酸化剤を作用させて酸化反応を進行させることにより、再生セルロースを形成するセルロース鎖が分子鎖レベルで、しかもセルロース鎖の構成モノマー単位であるグルコピラノーズ環中のC6位の一級水酸基のみが選択的に酸化され、アルデヒドを経由してカルボキシル基にまで酸化されるという報告(「Cellulose」Vol.5、1998年、第153〜164ページにおけるA.Isogai及びY.Katoによる「TEMPO触媒酸化によるセルロースからのポリウロン酸の調製」と題する記事)があり、セルロース繊維のナノファイバーを作成する本方法で作成した繊維を使用することも可能である。この方法によりセルロース繊維に表面処理を行ってもよい。
(ポリマー基材)
次に本発明で用いられるポリマー基材(基材樹脂)について具体的に例示する。
本発明に係るポリマー基材の素材としては、各種高分子材料がフレキシブルエレクトロニクス材料としての取り扱い上、可撓性のあるシートまたはロールに加工でき好適である。従って本発明のポリマー基材としては、プラスチックフィルム(例えば、セルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、セルローストリアセテートフィルムまたはポリカーボネートフィルム等)が好ましく、本発明においては2軸延伸したポリエチレンテレフタレートフィルム、セルロースアセテートフィルムが特に好ましい。支持体の厚みとしては50〜300μm程度であり、好ましくは70〜180μmである。
その他、好ましく用いられるポリマー基材としては、ビニル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、アミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
(無機微粒子)
本発明は、ミクロフィブリル化したセルロース繊維単体膜でも本発明の目的の物性向上を図れるが、耐傷性という観点から有機物より硬い成分である無機微粒子を含有させることでより良好な結果が得られる。また、無機微粒子単体では、温度による膨張がほとんどないことより、セルロース繊維マトリックス中に無機微粒子を含有させることで耐傷性、線膨張の両物性値をさらに向上させることが可能である。
ここでいう無機微粒子は、「均一酸化物粒子」が好ましく、「均一酸化物粒子」とは、1種類の金属酸化物が、粒子中に均一に分布した酸化物粒子であり、具体的には、例えば、ケイ素酸化物であるシリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化インジウム、酸化錫、酸化鉛等のいずれか1種類の酸化物粒子である。
また、ケイ素酸化物と1種類以上のケイ素以外の金属酸化物とが均一に分布した複合酸化物粒子でもよく、具体的には、例えば、ケイ素酸化物であるシリカと、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化インジウム、酸化錫、酸化鉛のいずれか1種類以上の酸化物とで構成された複合酸化物粒子であって、各酸化物が均一に分布したものでもよい。
上記の「均一酸化物粒子」とは、粒子中のケイ素酸化物(シリカ等)とその他の金属酸化物とが局在することなく平均的に分布している状態の粒子であり、当該粒子内で屈折率分布を持たない粒子のことである。
無機微粒子の形状は、特に限定されるものではないが、好適には球状の微粒子が用いられる。また、粒径の分布に関しても特に制限されるものではないが、本発明の効果をより効率よく発現させるためには、広範な分布を有するものよりも、比較的狭い分布を持つものが好適に用いられる。
無機微粒子の体積平均粒径は1nm以上1000nm以下であり、2nm以上〜500nm以下であるのが好ましい。
また、体積平均粒径は前記同様に、透過型電子顕微鏡、H−1700FA型(日立製作所社製)を用いて10000倍の倍率で観察した後、得られた画像について無作為に100個の粒子を選び、球換算の体積平均粒径を求めた。
なお、無機微粒子には、上記均一酸化物粒子の表面にシリカ層を形成してそのシリカ層の表面に疎水化処理を施したものも含まれる。
マトリックスとなるセルロース繊維の性質により疎水化処理された無機微粒子又は疎水化処理しない無機微粒子を適宜選択して使用する。
(粒子形成工程)
均一酸化物粒子の作製方法としては、熱分解法(原料を加熱分解して微粒子を得る方法。噴霧乾燥法、火炎噴霧法、プラズマ法、気相反応法、凍結乾燥法、加熱ケロシン法、加熱石油法)、沈殿法(共沈法)、加水分解法(塩水溶液法、アルコキシド法、ゾルゲル法)、水熱法(沈殿法、結晶化法、水熱分解法、水熱酸化法)などが挙げられる。このうち、熱分解法や、沈殿法、加水分解法は、小粒径でかつ均一な酸化物粒子を作製する観点で好ましい手法である。当該均一酸化物粒子の作製にあたっては、これらの手法を複数組み合わせてもよい。
(塗工層の形成方法)
本発明のポリマーフィルムは、上述したセルロース繊維と無機微粒子を溶媒に溶解または分散させた塗布液を作り、それら塗布液を、ポリマー基材上に、単層で塗布、または、複数同時に重層塗布した後、加熱処理を行って形成されることが好ましい。ここで「複数同時に重層塗布」とは、各構成層(例えばセルロース繊維層、無機微粒子層)の塗布液を作製し、これをポリマー基材へ塗布する際に各層個別に塗布、乾燥の繰り返しをするのではなく、同時に重層塗布を行い、乾燥する工程も同時に行える状態で各構成層を形成しうることを意味する。即ち、下層中の全溶剤の残存量が70質量%以下(より好ましくは90質量%以下)となる前に、上層を設けることである。
各構成層を単層又は複数同時に塗布する方法には特に制限はなく、例えばバーコーター法、カーテンコート法、浸漬法、エアーナイフ法、スライド塗布法、ホッパー塗布法、リバースロール塗布法、グラビア塗布法、エクストリュージョン塗布法等の公知の方法を用いることができる。これらのうちより好ましくはスライド塗布法、エクストリュージョン塗布法である。これらの塗布方法はポリマー基材の片面塗布について述べたが、両面塗布に際しても同様である。
尚、本発明において、塗布膜の厚さは、目的に応じ適量を選ぶことが好ましいが、乾燥後の膜厚で0.01μ以上1000μm以下が好ましく、さらに好ましくは、0.1μ以上100μm以下が好ましい。
なお、上記ポリマーフィルム、各構成層下層中の上記溶剤の含有量は塗布工程後の乾燥工程等における温度条件等の条件変化によって調整できる。また、当該溶剤の含有量は、含有させた溶剤を検出するために適した条件下におけるガスクロマトグラフィーで測定できる。
前記セルロース繊維は、ポリマー基材に塗布、乾燥することで固定化でき、本発明の効果を確認できるが、必要に応じてポリマー基材へ固定化させる方法として、紫外線及び電子線硬化方法が用いられる。前記、セルロース繊維と無機微粒子分散物に、必要に応じて光重合開始剤を添加し、ポリマー基板上に塗布した後、紫外線及び電子線を照射してポリマー基材へ固定化させればよい。
ここで用いられる光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、べンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、4,4′−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等の光ラジカル開始剤等が挙げられる。一方、ポリマー基材へ熱硬化方法で固定化する場合は、必要に応じて前記、セルロース繊維と無機微粒子分散物に熱ラジカル発生剤等の熱重合開始剤を添加すればよい。ここで用いられる熱重合開始剤としては、例えば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシピバレート、1,1′−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物等が挙げられる。
また、開始剤なしの場合でも前記、セルロース繊維と無機微粒子分散物を塗布するポリマー基材上にコロナ放電処理、プラズマ放電処理等でポリマー表面を活性化させておけば固定化することができる。
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〈セルロース繊維について〉
比較製造例1
針葉樹から得られた亜硫酸漂白パルプを純水に1.0質量%となるように添加し、株式会社 日本精機製作所製 エクセルオートホモジナイザーを用いて3000回転/分で15分、セルロース繊維を解繊した。この水分散液をセルロース繊維Aとした。得られたセルロース繊維は走査型電子顕微鏡観察結果より、平均繊維径1μmに解繊されており、ミクロフィブリル化していることを確認した。
比較製造例2
比較例1の回転数を10000回転/分で15分にした以外は、同様に作成したものをセルロース繊維Bとした。平均繊維径500nmに解繊されており、ミクロフィブリル化していることを確認した。
比較製造例3
比較例2で作成したセルロース繊維B水分散液を濾過後、純水で洗浄し、70℃で乾燥させてセルロース繊維B′を得た。
メタノール300質量部と1モル%の硝酸水溶液に、セルロース繊維B′の5質量部を添加して分散させ、この分散液を50℃で撹拌しながら、メタノール100質量部とγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン6質量部の混合液を60分かけて添加し、その後さらに2時間撹拌した。次に分散した繊維を濾過し、500質量部の水で3回水洗した後、200質量部のエタノールで2回洗浄した。さらに、500質量部の水で2回水洗を行った後、セルロース繊維B′が0.1質量%となるよう水で希釈し、セルロース繊維Cを得た。得られたセルロース繊維は走査型電子顕微鏡観察結果より、平均繊維径は500nmに保たれていた。
比較製造例4
比較例2で作成したセルロース繊維BをウルトラアペックスミルUAM−015(寿工業株式会社製)で、1.0mmビーズを用いて、周速4m/secで1時間分散した。セルロース繊維Bが0.1質量%となるよう水で希釈し、セルロース繊維Dを得た。得られたセルロース繊維は平均繊維径220nmであった。
比較製造例5
比較例4で得られたセルロース繊維Dを比較例3同様に表面処理したものをセルロース繊維Eとした。平均繊維径220nmであった。
製造例1
比較例2で作成したセルロース繊維BをウルトラアペックスミルUAM−015(寿工業株式会社製)で、1.0mmビーズを用いて、周速6m/secで1時間分散した。セルロース繊維Bが0.1質量%となるよう水で希釈し、セルロース繊維Fを得た。得られたセルロース繊維は平均繊維径180nmであった。
製造例2
製造例1で得られたセルロース繊維Fを比較例3同様に表面処理したものをセルロース繊維Gとした。平均繊維径180nmであった。
製造例3
比較例2で作成したセルロース繊維BをウルトラアペックスミルUAM−015(寿工業株式会社製)で、0.5mmビーズを用いて、周速6m/secで1時間分散した。セルロース繊維Bが0.1質量%となるよう水で希釈し、セルロース繊維Hを得た。得られたセルロース繊維は平均繊維径50nmであった。
製造例4
製造例3で得られたセルロース繊維Hを比較例3同様に表面処理したものをセルロース繊維Iとした。平均繊維径50nmであった。
製造例5
比較例2で作成したセルロース繊維BをウルトラアペックスミルUAM−015(寿工業株式会社製)で、0.05mmビーズを用いて、周速6m/secで1時間分散した。セルロース繊維Bが0.1質量%となるよう水で希釈し、セルロース繊維Jを得た。得られたセルロース繊維は平均繊維径20nmであった。
製造例6
製造例5で得られたセルロース繊維Jを比較例3同様に表面処理したものをセルロース繊維Kとした。平均繊維径20nmであった。
製造例7
比較例2で作成したセルロース繊維Bを、乾燥質量で1g相当分と0.0125gのTEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシル フリーラジカル)および0.125gの臭化ナトリウムを水100mlに分散させた後、13質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、次亜塩素酸ナトリウムの量が2.5mmolとなるように次亜塩素酸ナトリウムを加えて反応を開始した。反応中は0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10.5に保った。pHに変化が見られなくなった時点で反応終了と見なし、反応物をガラスフィルターにてろ過した後、十分な量の水による水洗、ろ過を5回繰り返し、セルロース繊維Bが0.1質量%になるよう水で希釈した。さらに超音波分散機にて1時間処理をし、セルロース繊維Lが得られた、平均繊維径12nmであった。
《ポリマーフィルム試料1〜30の作成》
二軸延伸した膜厚100μmポリエチレンテレフタレートフィルムまたは表1記載のポリマーフィルムにコロナ放電処理を施した後、比較製造例、また製造例1から7記載のセルロース繊維水分散液と表1記載の無機粒子を、表1の記載量だけ添加して塗布液を作成し、20℃、相対湿度55%の条件でエアーナイフ方式により塗布した、120℃、30分乾燥を行った。ただし、塗布液は、乾燥後の膜厚が0.8μmとなるよう塗布し、塗工層を形成した。また膜厚100μmのトリアセチルセルロースフィルムにも表1記載の塗布液を同様の方法で塗布し、ポリマーフィルムを作成した。
物性測定用試験片を作製し、以下の項目について測定した。評価結果を表1に示す。
(ポリマーフィルムの物性評価方法)
(1)曲げ弾性率
前記ポリマーフィルムを140mm×12mmで切り出し、オートグラフ(「DSS−500」型島津製作所製)により、支点間距離80mm、曲げ速度2mm/分、20℃で曲げ弾性率(MPa)の測定を行った。
(2)線膨張係数
前記ポリマーフィルムについて、物性測定用試験片;150mm×50mmを作製し、40〜80℃の範囲内で温度を変化させ、線膨張係数を測定した。測定装置としてSII(セイコーインスツルメンツ)社EXSTAR6000 TMA/SS6100を用いた。
(3)スクラッチ(耐傷性評価)
物性測定用試験片;150mm×50mmを作製し、前記ポリマーフィルムに質量をかけた金属針で膜表面を引掻いて傷がつく最低の金属針の質量g(引掻き強度)を求めた。
(4)引っ張り強度
同じく、物性測定用試験片;150mm×50mmを作製し、インストロン社の引っ張り試験機を用いて引っ張り試験を行った。試験片の長さは5cm、幅1cm、引っ張り速度は毎分1cmとした。
なお、上記表において「無機微粒子」のうち、
A200 :平均粒径12nmのアエロジル社製シリカAEROSIL200(親水性粒子)
RX200:平均粒径12nmのアエロジル社製シリカAEROSILR200(疎水性粒子)
コアフロント社:コアフロント社製 平均粒径12μmのシリカ粒子(親水性粒子)
a:平均粒径0.3μmのシリカ粒子(親水性粒子)
b:平均粒径0.5μmのシリカ粒子(親水性粒子)
c:平均粒径1.0μmのシリカ粒子(親水性粒子)
d:平均粒径1.2μmのシリカ粒子(親水性粒子)
また、「ポリマー基材」のうち、
PET:ポリエチレンテレフタレート
TAC:トリアセチルセルロース
を表す。
表1よりわかるとおり、本発明は、曲げ弾性率が低くなりフレキシブルエレクトロニクス材料に必要な曲がりやすさを向上させている。また、線膨張が低く、温度に対する寸法安定性がよく、耐傷性の代用評価であるスクラッチ耐性も向上し、フィルムを曲げた際にかかる引っ張り強度も向上していることがわかった。

Claims (4)

  1. ポリマー基材上に、平均繊維径が2nm以上200nm以下であるセルロース繊維および体積平均粒径1nm以上1000nm以下の無機微粒子を含有する塗工層を有することを特徴とするポリマーフィルム。
  2. 前記セルロース繊維が表面修飾されたことを特徴とする請求項1記載のポリマーフィルム。
  3. 前記塗工層が体積平均粒径2nm以上1000nm以下の無機微粒子を含有することを特徴とする請求項1または2記載のポリマーフィルム。
  4. 前記無機微粒子が酸化物微粒子であることを特徴とする請求項3記載のポリマーフィルム。
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