JP5272738B2 - セルロース塗工膜を有するポリマーフィルム - Google Patents
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Description
セルロース繊維の平均繊維径が2nm以上、200nm以下であることにより塗布膜中でナノレベルの繊維マトリックスを形成することにより、本発明の効果が確認できる。本発明のセルロース繊維は、ミクロフィブリルの状態まで解繊されていればよく、さらに好ましくは繊維表面を化学修飾、あるいは物理修飾により表面処理したものである。本発明に用いる原料セルロース繊維としては、植物由来のパルプ、木材、コットン、麻、竹、綿、ケナフ、ヘンプ、ジュート、バナナ、ココナツ、海草等の植物繊維から分離した繊維、海産動物であるホヤが産生する動物繊維から分離した繊維、あるいは酢酸菌より産生させたバクテリアセルロース等が挙げられる。これらの中で、植物繊維から分離した繊維が好ましく用いることができるが、より好ましくはパルプ、コットン等の植物繊維から得られる繊維である。本発明においては、これらの繊維をホモジナイザーやグラインダー等を用いて解繊処理し、微細化したミクロフィブリル状のセルロース繊維とするが、含有されるセルロースが繊維状態を保持している限りにおいては、その解繊維処理方法について何ら制限はない。
ミクロフィブリル化したセルロース繊維は、良好な分散性を保っているが、繊維径がナノレベルまで小さくなることで繊維の比表面積が増大し、表面の水酸基が増加する。これにより水酸基同士の水素結合性が増し時間と共に水素結合による繊維同士の凝集がおこりやすくなる。一度、ミクロフィブリル繊維に分散した分散液の再凝集を防ぐためにセルロース水酸基を修飾し、水素結合由来の凝集を少なくする手段としてセルロースの水酸基の表面修飾方法がある。
次に本発明で用いられるポリマー基材(基材樹脂)について具体的に例示する。
本発明は、ミクロフィブリル化したセルロース繊維単体膜でも本発明の目的の物性向上を図れるが、耐傷性という観点から有機物より硬い成分である無機微粒子を含有させることでより良好な結果が得られる。また、無機微粒子単体では、温度による膨張がほとんどないことより、セルロース繊維マトリックス中に無機微粒子を含有させることで耐傷性、線膨張の両物性値をさらに向上させることが可能である。
均一酸化物粒子の作製方法としては、熱分解法(原料を加熱分解して微粒子を得る方法。噴霧乾燥法、火炎噴霧法、プラズマ法、気相反応法、凍結乾燥法、加熱ケロシン法、加熱石油法)、沈殿法(共沈法)、加水分解法(塩水溶液法、アルコキシド法、ゾルゲル法)、水熱法(沈殿法、結晶化法、水熱分解法、水熱酸化法)などが挙げられる。このうち、熱分解法や、沈殿法、加水分解法は、小粒径でかつ均一な酸化物粒子を作製する観点で好ましい手法である。当該均一酸化物粒子の作製にあたっては、これらの手法を複数組み合わせてもよい。
本発明のポリマーフィルムは、上述したセルロース繊維と無機微粒子を溶媒に溶解または分散させた塗布液を作り、それら塗布液を、ポリマー基材上に、単層で塗布、または、複数同時に重層塗布した後、加熱処理を行って形成されることが好ましい。ここで「複数同時に重層塗布」とは、各構成層(例えばセルロース繊維層、無機微粒子層)の塗布液を作製し、これをポリマー基材へ塗布する際に各層個別に塗布、乾燥の繰り返しをするのではなく、同時に重層塗布を行い、乾燥する工程も同時に行える状態で各構成層を形成しうることを意味する。即ち、下層中の全溶剤の残存量が70質量%以下(より好ましくは90質量%以下)となる前に、上層を設けることである。
比較製造例1
針葉樹から得られた亜硫酸漂白パルプを純水に1.0質量%となるように添加し、株式会社 日本精機製作所製 エクセルオートホモジナイザーを用いて3000回転/分で15分、セルロース繊維を解繊した。この水分散液をセルロース繊維Aとした。得られたセルロース繊維は走査型電子顕微鏡観察結果より、平均繊維径1μmに解繊されており、ミクロフィブリル化していることを確認した。
比較例1の回転数を10000回転/分で15分にした以外は、同様に作成したものをセルロース繊維Bとした。平均繊維径500nmに解繊されており、ミクロフィブリル化していることを確認した。
比較例2で作成したセルロース繊維B水分散液を濾過後、純水で洗浄し、70℃で乾燥させてセルロース繊維B′を得た。
比較例2で作成したセルロース繊維BをウルトラアペックスミルUAM−015(寿工業株式会社製)で、1.0mmビーズを用いて、周速4m/secで1時間分散した。セルロース繊維Bが0.1質量%となるよう水で希釈し、セルロース繊維Dを得た。得られたセルロース繊維は平均繊維径220nmであった。
比較例4で得られたセルロース繊維Dを比較例3同様に表面処理したものをセルロース繊維Eとした。平均繊維径220nmであった。
比較例2で作成したセルロース繊維BをウルトラアペックスミルUAM−015(寿工業株式会社製)で、1.0mmビーズを用いて、周速6m/secで1時間分散した。セルロース繊維Bが0.1質量%となるよう水で希釈し、セルロース繊維Fを得た。得られたセルロース繊維は平均繊維径180nmであった。
製造例1で得られたセルロース繊維Fを比較例3同様に表面処理したものをセルロース繊維Gとした。平均繊維径180nmであった。
比較例2で作成したセルロース繊維BをウルトラアペックスミルUAM−015(寿工業株式会社製)で、0.5mmビーズを用いて、周速6m/secで1時間分散した。セルロース繊維Bが0.1質量%となるよう水で希釈し、セルロース繊維Hを得た。得られたセルロース繊維は平均繊維径50nmであった。
製造例3で得られたセルロース繊維Hを比較例3同様に表面処理したものをセルロース繊維Iとした。平均繊維径50nmであった。
比較例2で作成したセルロース繊維BをウルトラアペックスミルUAM−015(寿工業株式会社製)で、0.05mmビーズを用いて、周速6m/secで1時間分散した。セルロース繊維Bが0.1質量%となるよう水で希釈し、セルロース繊維Jを得た。得られたセルロース繊維は平均繊維径20nmであった。
製造例5で得られたセルロース繊維Jを比較例3同様に表面処理したものをセルロース繊維Kとした。平均繊維径20nmであった。
比較例2で作成したセルロース繊維Bを、乾燥質量で1g相当分と0.0125gのTEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシル フリーラジカル)および0.125gの臭化ナトリウムを水100mlに分散させた後、13質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、次亜塩素酸ナトリウムの量が2.5mmolとなるように次亜塩素酸ナトリウムを加えて反応を開始した。反応中は0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10.5に保った。pHに変化が見られなくなった時点で反応終了と見なし、反応物をガラスフィルターにてろ過した後、十分な量の水による水洗、ろ過を5回繰り返し、セルロース繊維Bが0.1質量%になるよう水で希釈した。さらに超音波分散機にて1時間処理をし、セルロース繊維Lが得られた、平均繊維径12nmであった。
二軸延伸した膜厚100μmポリエチレンテレフタレートフィルムまたは表1記載のポリマーフィルムにコロナ放電処理を施した後、比較製造例、また製造例1から7記載のセルロース繊維水分散液と表1記載の無機粒子を、表1の記載量だけ添加して塗布液を作成し、20℃、相対湿度55%の条件でエアーナイフ方式により塗布した、120℃、30分乾燥を行った。ただし、塗布液は、乾燥後の膜厚が0.8μmとなるよう塗布し、塗工層を形成した。また膜厚100μmのトリアセチルセルロースフィルムにも表1記載の塗布液を同様の方法で塗布し、ポリマーフィルムを作成した。
(1)曲げ弾性率
前記ポリマーフィルムを140mm×12mmで切り出し、オートグラフ(「DSS−500」型島津製作所製)により、支点間距離80mm、曲げ速度2mm/分、20℃で曲げ弾性率(MPa)の測定を行った。
(2)線膨張係数
前記ポリマーフィルムについて、物性測定用試験片;150mm×50mmを作製し、40〜80℃の範囲内で温度を変化させ、線膨張係数を測定した。測定装置としてSII(セイコーインスツルメンツ)社EXSTAR6000 TMA/SS6100を用いた。
(3)スクラッチ(耐傷性評価)
物性測定用試験片;150mm×50mmを作製し、前記ポリマーフィルムに質量をかけた金属針で膜表面を引掻いて傷がつく最低の金属針の質量g(引掻き強度)を求めた。
(4)引っ張り強度
同じく、物性測定用試験片;150mm×50mmを作製し、インストロン社の引っ張り試験機を用いて引っ張り試験を行った。試験片の長さは5cm、幅1cm、引っ張り速度は毎分1cmとした。
A200 :平均粒径12nmのアエロジル社製シリカAEROSIL200(親水性粒子)
RX200:平均粒径12nmのアエロジル社製シリカAEROSILR200(疎水性粒子)
コアフロント社:コアフロント社製 平均粒径12μmのシリカ粒子(親水性粒子)
a:平均粒径0.3μmのシリカ粒子(親水性粒子)
b:平均粒径0.5μmのシリカ粒子(親水性粒子)
c:平均粒径1.0μmのシリカ粒子(親水性粒子)
d:平均粒径1.2μmのシリカ粒子(親水性粒子)
また、「ポリマー基材」のうち、
PET:ポリエチレンテレフタレート
TAC:トリアセチルセルロース
を表す。
Claims (4)
- ポリマー基材上に、平均繊維径が2nm以上200nm以下であるセルロース繊維および体積平均粒径1nm以上1000nm以下の無機微粒子を含有する塗工層を有することを特徴とするポリマーフィルム。
- 前記セルロース繊維が表面修飾されたことを特徴とする請求項1記載のポリマーフィルム。
- 前記塗工層が体積平均粒径2nm以上1000nm以下の無機微粒子を含有することを特徴とする請求項1または2記載のポリマーフィルム。
- 前記無機微粒子が酸化物微粒子であることを特徴とする請求項3記載のポリマーフィルム。
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