JP2015089914A - 繊維樹脂複合材料及び繊維樹脂複合材料の製造方法 - Google Patents

繊維樹脂複合材料及び繊維樹脂複合材料の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】微細セルロース繊維と樹脂とを含む繊維樹脂複合材料において、低線膨張係数、高強度を示し、また、透明樹脂と複合化しても、透明性を損なうことのない繊維樹脂複合材料を提供する。【解決手段】数平均繊維径が2〜200nmのセルロース繊維と樹脂を含む繊維樹脂複合材料であって、該セルロース繊維は、カチオン化された、リグニン含量が0.1〜40%の植物繊維材料を解繊処理して得られるセルロース繊維であり、該樹脂が熱可塑性樹脂または活性エネルギー線硬化性樹脂である繊維樹脂複合材料。この繊維樹脂複合材料を、リグニン含量が0.1〜40%の植物繊維材料をカチオン化剤によりカチオン化処理し、得られたカチオン化植物繊維材料を解繊処理した後に、熱可塑性樹脂または活性エネルギー線硬化性樹脂と複合化することにより製造する方法。【選択図】なし

Description

本発明は、繊維と樹脂とを含有する繊維樹脂複合材料に関し、具体的には、特定の処理により得られたセルロース繊維と熱可塑性樹脂または活性エネルギー線硬化性樹脂を用いた繊維樹脂複合材料に関する。
近年、セルロースの微細繊維を用いた複合材料がさかんに研究されている。セルロースはその伸びきり鎖結晶が故に、低線膨張係数と高弾性率と高強度とを発現することが知られている。また、微細化することにより、樹脂と複合化し複合材料とした際、高透明性を示す材料としても注目されている。このような高透明性、低線膨張係数を有するセルロース繊維の複合材料(セルロース繊維複合材料)の用途の例としては、フラットパネルディスプレイや有機LED照明、太陽光発電パネルなどに代表される電気・電子デバイス向けの基板材料が挙げられている。
従来、このようなセルロースの微細繊維を得るために、例えば、特許文献1では、木粉を高圧ホモジナイザー、高速回転式ホモジナイザー、超音波ホモジナイザーなどで湿式解繊する方法が提案されている。この方法では、解繊性を高めるためには大きなエネルギーが必要であり、また、所望の微細繊維を得るためには遠心分離操作を行うが、更なる回収率の向上、生産性の向上が求められている。
これらの機械的処理による解繊方法に化学的処理を併用することで解繊性を高める方法もまた報告されている。
例えば、特許文献2、3には、N−オキシル化合物によるセルロースの表面酸化反応を利用して、セルロース繊維にカルボキシ基を導入し、水中での分散性を高めた解繊性に優れたセルロース繊維を提供する技術が開示されている。
しかしながら、この方法は、セルロースの酸化に用いるN−オキシル化合物が一般的に高価であり、また、酸化反応に必要な薬品の種類が多く、製造工程が複雑であり製造費用が高いという課題があった。
特開2009―167397号公報 特開2010−242063号公報 特開2008−1728号公報
本発明は、微細セルロース繊維と樹脂とを含む繊維樹脂複合材料において、低線膨張係数、高強度を示し、また、透明樹脂と複合化しても、透明性を損なうことのない繊維樹脂複合材料を提供することを課題とする。
本発明者が鋭意検討した結果、特定量のリグニンを含む植物繊維材料にカチオン化処理を施した後に、この植物繊維材料を解繊処理して得られるセルロース繊維を用いて、熱可塑性樹脂や活性エネルギー線硬化性樹脂と複合化することにより、上記課題を解決できることが分かり本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下(1)〜(3)に存する。
(1) 数平均繊維径が2〜200nmのセルロース繊維と樹脂を含む繊維樹脂複合材料であって、該セルロース繊維は、カチオン化された、リグニン含量が0.1〜40%の植物繊維材料を解繊処理して得られるセルロース繊維であり、該樹脂が熱可塑性樹脂または活性エネルギー線硬化性樹脂である繊維樹脂複合材料。
(2) 該セルロース繊維が、0.05〜3.0mmol/gのカチオン基を有する(1)に記載の繊維樹脂複合材料。
(3) 数平均繊維径が2〜200nmのセルロース繊維と樹脂を含む繊維樹脂複合材料の製造方法であって、リグニン含量が0.1〜40%の植物繊維材料をカチオン化剤によりカチオン化処理し、得られたカチオン化植物繊維材料を解繊処理した後に、熱可塑性樹脂または活性エネルギー線硬化性樹脂と複合化する繊維樹脂複合材料の製造方法。
本発明の繊維樹脂複合材料は、高透明性で高強度かつ低線膨張性であり、例えば、フラットパネルディスプレイや有機LED照明、太陽光発電パネルなどに代表される電気・電子デバイス向けの透明基板材料等への用途に有用である。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に特定はされない。
本発明の繊維樹脂複合材料は、数平均繊維径が2〜200nmのセルロース繊維と樹脂を含む繊維樹脂複合材料であって、該セルロース繊維は、カチオン化された、リグニン含量が0.1〜40%の植物繊維材料を解繊処理して得られるセルロース繊維であり、該樹脂が熱可塑性樹脂または活性エネルギー線硬化性樹脂であることを特徴とする。
本発明の繊維樹脂複合材料は、通常、リグニン含量が0.1〜40%の植物繊維材料をカチオン化剤によりカチオン化処理し、得られたカチオン化植物繊維材料を解繊処理した後に、熱可塑性樹脂または活性エネルギー線硬化性樹脂と複合化する、本発明の繊維樹脂複合材料の製造方法により得られる。
〔セルロース繊維〕
[植物繊維材料]
まず、セルロース繊維の原料として用いる植物繊維材料について説明する。
本発明において、植物繊維材料とは、製紙用パルプ、或いは、以下に示すような植物系セルロース含有物から一般的な精製を経て不純物を除去したものである。
植物系セルロース含有物としては、亜麻、麦わら、ラミー、バガス、ジュート、ケナフ等の靭皮繊維、サイザル、パイナップル等の葉脈繊維、アバカ、バナナ等の葉柄繊維、ココナツヤシ等の果実繊維、竹等の茎幹繊維などが挙げられる。
これらの中でも、入手のしやすさという点で、植物繊維材料としては、製紙用パルプが好ましい。
これらの植物繊維材料は1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
製紙用パルプとしては、木材パルプ、非木材パルプ、古紙を原料とするパルプが挙げられる。木材パルプとしては、広葉樹クラフトパルプ(晒クラフトパルプ(LBKP)、未晒クラフトパルプ(LUKP)、酸素漂白クラフトパルプ(LOKP)など)、針葉樹クラフトパルプ(晒クラフトパルプ(NBKP)、未晒クラフトパルプ(NUKP)、酸素漂白クラフトパルプ(NOKP)など)、サルファイトパルプ(SP)、ソーダパルプ(AP)等の化学パルプ、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプが挙げられる。非木材パルプとしては、楮、三椏、麻、ケナフ等を原料とするパルプが挙げられる。古紙を原料とするパルプとしては、脱墨パルプが挙げられる。
上記製紙用パルプの中でも、入手のしやすさという点で、木材パルプ、脱墨パルプが好ましい。さらに、木材パルプの中でも、化学パルプはセルロース比率が大きいため、微細繊維状セルロースの収率が高く、また、パルプ中のセルロースの分解が小さく、軸比(繊維長/繊維径比)の大きい長繊維の微細繊維状セルロースが得られる点で特に好ましい。化学パルプの中でもクラフトパルプ、サルファイトパルプが最も好ましく選択される。
本発明の効果を得るための1つの要素として、植物繊維材料中のリグニンの含有量が重要となる。植物繊維材料中のリグニン含量は0.1〜40%であり、より好ましくは1%以上、好ましくは30%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは8%以下、特に好ましくは6%以下である。リグニン含量がこの範囲内の植物繊維材料を用いることにより、解繊処理後のセルロース繊維の回収率が高く、また樹脂と複合化した際に高強度な繊維樹脂複合材料が得られる。なお、ここで、植物繊維材料のリグニン含量は、重量基準で表されるものであり、TAPPI試験法T 222 om−98で規定されているクラーソンリグニン法で直接的に測定するか、あるいはJIS法カッパー価、JIS法K価またはTAPPI法過マンガン酸カリウム価を測定することによって間接的にリグニン量を定量することができるが、市販品にあっては、カタログ値を採用することができる。
植物繊維材料中のリグニン含量は、上記した製紙用パルプ又は植物系セルロース含有物を脱リグニン、又は漂白することで植物繊維中のリグニン量を調整することにより上記好適範囲とすることができる。また、上記した植物繊維材料を一般的な精製工程などを経て精製することによっても、リグニン含量を上記好適範囲に調整することができる。精製方法としては、例えば、ベンゼン−エタノールや炭酸ナトリウム水溶液で脱脂した後、亜塩素酸塩で脱リグニン処理を行い(ワイズ法)、アルカリで脱ヘミセルロース処理をする方法が挙げられる。また、ワイズ法の他に、過酢酸を用いる方法(pa法)、過酢酸過硫酸混合物を用いる方法(pxa法)なども精製方法として利用される。また、適宜、更に漂白処理等を行うこともできる。
また、セルロース成分は結晶性のα−セルロース成分と非結晶性のヘミセルロース成分に分類できる。結晶性のα−セルロースの比率が高い方が、繊維樹脂複合材料とした際に低線膨張係数、高弾性率、高強度の効果が得られやすいため好ましい。本発明で用いる植物繊維材料のα−セルロースと非結晶性ヘミセルロースの比率(重量比率)は好ましくは70対30以上、さらに好ましくは75対25以上、さらに好ましくは80対20以上で、α−セルロースの比率が高いことが好ましい。
尚、カチオン化処理や解繊処理を施す植物繊維材料の繊維径は特に制限されるものではなく、数平均繊維径としては1μmから1mmである。
[カチオン化処理]
次に上記植物繊維材料をカチオン化剤によりカチオン化処理してカチオン基を導入したカチオン化植物繊維材料を製造する方法について説明する。
<カチオン基>
本発明におけるカチオン基とは、その基内に、アンモニウム、ホスホニウム、スルホニウムなどのオニウムを有する基であって、通常は、分子量が1000以下程度の基である。
カチオン基として具体的には、1級アンモニウム、2級アンモニウム、3級アンモニウム、4級アンモニウムなどのアンモニウム、ホスホニウム、スルホニウムまたはこれらのいずれかを有する基、すなわち、アンモニウムを有する基、ホスホニウムを有する基またはスルホニウムを有する基が挙げられ、本発明で用いる植物繊維材料は、これらのカチオン基の2種以上を有するものであってもよい。
これらのカチオン基は、通常、セルロース繊維を構成するセルロースの水酸基の一部をカチオン基で置換することにより導入される。
従って、カチオン基は、上記のアンモニウム、ホスホニウムまたはスルホニウムなどの基と、セルロースの水酸基と反応する基とを有する化合物をカチオン化剤として用い、これを植物繊維材料に反応させることにより導入することが好ましく、ここで、セルロースの水酸基と反応する基としては、その水酸基と反応して共有結合を形成する反応基であれば特に限定はなく、例えば、エポキシ基又はそれを形成し得るハロヒドリン基、活性ハロゲン基、活性ビニル基、メチロール基等が挙げられる。これらの内、反応性の点からエポキシ基又はそれを形成し得るハロヒドリン基が好ましい。
植物繊維材料にカチオン基を導入するために用いられるカチオン化剤としては、具体的には、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド等のグリシジルトリアルキルアンモニウムハライド或いはそのハロヒドリン等が挙げられ、このグリシジルトリアルキルアンモニウムハライド或いはそのハロヒドリン等と植物繊維材料とを反応させて、植物繊維材料にカチオン基を導入することができる。
これらは、カチオン化剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
カチオン化剤と植物繊維材料との反応方法としては、例えば、グリシジルトリアルキルアンモニウムハライドを用いる場合、反応溶媒中で、植物繊維材料にグリシジルトリアルキルアンモニウムハライドと触媒である水酸化アルカリ金属塩を作用させることにより反応させる方法が挙げられる。
反応溶媒としては、植物繊維材料に対し3〜20重量倍の水、或いは低級アルコール、具体的にはメタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール等の1種又は2種以上、或いはこれらの低級アルコールと水との混合溶媒が使用できる。
触媒の水酸化アルカリ金属塩としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の1種又は2種以上が使用できる。
カチオン化剤と触媒の使用量は、用いる植物繊維材料、反応系の溶媒組成、反応器の機械的条件、その他の要因によって適宜調整する。
カチオン化反応の反応温度は、30℃以上が好ましく、40℃以上がより好ましく、90℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましい。また、反応時間は通常30分以上、好ましくは1時間以上、通常10時間以下、4時間以下である。
反応終了後、残存する触媒を鉱酸、或いは有機酸により中和した後、常法により洗浄、精製してカチオン化植物繊維材料を得ることができる。
カチオン化植物繊維材料は、解繊性、回収率の向上の点から、植物繊維材料の重量に対してカチオン基を、0.05mmol/g以上有していることが好ましく、0.08mmol/g以上有していることがより好ましく、0.10mmol/g以上有していることが特に好ましい。また、このカチオン基の含有量は3.0mmol/g以下であることが、水溶性部分が増加し、水への溶解が起こり易くなるのを抑制するため、また、樹脂との親和性を高めるために好ましく、2.5mmol/g以下であることがより好ましい。係るカチオン基の量は、元素分析法により算出された値である。
元素分析法による算出方法として、具体的には、例えばカチオン基がアンモニウムの場合、窒素測定装置を用いて、JIS−K2609に準じて窒素量を定量し、窒素の分子量で割ることで単位重量あたりのモル数(例えばmmol/g)を換算することができる。
[その他の置換基]
本発明で用いる植物繊維材料は、カチオン基以外の他の基を有していてもよい。即ち、植物繊維材料中のセルロースの水酸基が他の基で置換されていてもよい。例えば、酸化処理によりカルボキシ基やホルミル基に置換されていてもよいし、化学修飾処理により、以下に例示するような基、即ち、具体的には、アセチル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロピオニル基、プロピオロイル基、ブチリル基、2−ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、フロイル基、シンナモイル基等のアシル基、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアノイル基等のイソシアネート基、メチル基、エチル基、プロピル基、2−プロピル基、ブチル基、2−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基等のアルキル基、オキシラン基、オキセタン基、チイラン基、チエタン基等の1種または2種以上で置換されていてもよい。
これら置換基は、解繊処理前の植物繊維材料に導入してもよいし、以下に記載する解繊処理後の微細セルロース繊維に導入してもよい。
[解繊処理]
カチオン化された、リグニン含量が0.1〜40%の植物繊維材料は、解繊処理により、数平均繊維径が2〜200nmのセルロース繊維(以下、「微細セルロース繊維」または「本発明の微細セルロース繊維」という場合がある)とされる。
植物繊維材料の解繊処理の具体的な方法としては、特に制限はないが、例えば、直径1mm程度のセラミック製ビーズを植物繊維材料濃度0.1〜10重量%、例えば1重量%程度の植物繊維材料の分散液(以下、「植物繊維材料分散液」という場合がある)に入れ、ペイントシェーカーやビーズミル等を用いて振動を与え、セルロースを解繊する方法、ブレンダータイプの分散機や高速回転するスリットの間に、植物繊維材料分散液を通して剪断力を働かせて解繊する方法(高速回転式ホモジナイザーを用いる方法)や、高圧から急に減圧することによって、セルロース繊維間に剪断力を発生させて解繊する方法(高圧ホモジナイザー法を用いる方法)、「マスコマイザーX(増幸産業)」のような対向衝突型の分散機等を用いる方法などが挙げられる。特に、高速回転式ホモジナイザーや高圧ホモジナイザーによる処理を採用することにより、解繊の効率が向上する。
なお、植物繊維材料分散液の分散媒としては、有機溶媒、水、有機溶媒と水との混合液を使用することができる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコール−モノ−t−ブチルエーテル等のアルコール類、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、その他水溶性の有機溶媒の1種又は2種以上を用いることができる。分散媒は、有機溶媒と水との混合液又は水であることが好ましく、特に水であることが好ましい。
これらの処理で解繊する場合は、植物繊維材料としての固形分濃度が0.1重量%以上、好ましくは0.2重量%以上、特に0.3重量%以上、また10重量%以下、特に6重量%以下の植物繊維材料分散液に対して解繊処理を行う。この解繊処理に供する植物繊維材料分散液中の固形分濃度が低過ぎると処理する植物繊維材料量に対して液量が多くなり過ぎ効率が悪く、固形分濃度が高過ぎると流動性が悪くなるため、解繊処理に供する植物繊維材料分散液は適宜水を添加するなどして濃度調整する。
なお、このような高圧ホモジナイザーによる処理、高速回転式ホモジナイザーによる処理の後に、超音波処理を組み合わせた微細化処理を行ってもよい。
上記のような解繊工程を経て、本発明の微細セルロース繊維を含むセルロース繊維分散液(以下、「本発明のセルロース繊維分散液」という場合がある)を得ることができる。この本発明のセルロース繊維分散液の分散媒は上記植物繊維材料分散液の分散媒と同様である。
[数平均繊維径]
本発明の微細セルロース繊維の数平均繊維径は、通常200nm以下であり、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがさらに好ましく、10nm以下であることが特に好ましい。また、本発明の微細セルロース繊維の数平均繊維径は小さい程好ましいが、通常は2nm以上、さらには4nm以上である。
微細セルロース繊維の繊維径は、分散液中の分散媒を乾燥除去した後(シート化後)、SEMやTEMやAFM等の各種顕微鏡等で観察することにより計測して求めることができる。
本発明の微細セルロース繊維には、セルロース繊維の重量に対してカチオン基を、0.05mmol/g以上有していることが好ましく、0.08mmol/g以上有していることがより好ましく、0.10mmol/g以上有していることが特に好ましい。また、このカチオン基の含有量は3.0mmol/g以下であることが、水溶性部分が増加し、水への溶解が起こり易くなるのを抑制するため、また、樹脂との親和性を高めるために好ましく、2.5mmol/g以下であることがより好ましい。係るカチオン基の量は、上記同様に元素分析法により算出された値である。
なお、微細セルロース繊維のカチオン基量は、この微細セルロース繊維の製造に用いた解繊処理前のカチオン化植物繊維材料のカチオン基量と同等であり、カチオン化植物繊維材料について測定したカチオン基量を微細セルロース繊維のカチオン基量とすることができる。
〔セルロース繊維集合体〕
次に、本発明の微細セルロース繊維を用いたセルロース繊維集合体(以下、「本発明のセルロース繊維集合体」という場合がある)について説明する。
[セルロース繊維集合体の製造]
本発明のセルロース繊維集合体は、本発明の微細セルロース繊維を含むものである。通常、本発明のセルロース繊維集合体は、後述の乾燥後は、本発明の微細セルロース繊維のみからなるが、他の繊維や粒子を含有するものであってもよい。
本発明のセルロース繊維集合体は、解繊処理により微細化された微細セルロース繊維を用いて製造される。ここで、本発明において、セルロース繊維集合体とは、通常、微細セルロース繊維を含むセルロース繊維分散液を濾過することにより、あるいは、適当な基材に該分散液を塗布したものから分散媒を揮発させるなどの方法で除去させて得られる、セルロース繊維の集合物を言い、例えばシート、粒子、ゲルなどを言う。
なお、このセルロース繊維の集合体の製造に際して、解繊により得られた微細セルロース繊維分散液を遠心分離処理して、極微細なセルロース繊維のみを含む上澄み液を得、この上澄み液をセルロース繊維集合体の製造に用いると、得られたセルロース繊維集合体から高透明なセルロース繊維複合材料を得ることができる。
<シート>
上記得られた微細セルロース繊維を用いて、セルロース繊維シートとすることができる。セルロース繊維シートとすることで、樹脂を含浸させて繊維樹脂複合材料としたり、樹脂シートではさんで繊維樹脂複合材料とすることができる。セルロース繊維シートは、具体的には、前述の解繊処理を施した、本発明の微細セルロース繊維を含むセルロース繊維分散液を濾過することにより、或いは適当な基材に塗布することにより製造される。
セルロース繊維シートを、セルロース繊維分散液を濾過することによって製造する場合、濾過に供されるセルロース繊維分散液のセルロース繊維濃度は、0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上であることが好ましい。セルロース繊維分散液のセルロース繊維濃度が低すぎると濾過に膨大な時間を要するようになり非効率である。また、セルロース繊維分散液のセルロース繊維濃度は1.5重量%以下、好ましくは1.2重量%以下、さらに好ましくは1.0重量%以下であることが好ましい。セルロース繊維濃度が高すぎると均一なシートが得られない場合がある。
セルロース繊維分散液を濾過する場合、濾過時の濾布としては、微細化したセルロース繊維は通過せずかつ濾過速度が遅くなりすぎないことが重要である。このような濾布としては、有機ポリマーからなるシート、織物、多孔膜が好ましい。有機ポリマーとしてはポリエチレンテレフタレートやポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のような非セルロース系の有機ポリマーが好ましい。
具体的には孔径0.1〜20μm、例えば0.5〜1μmのポリテトラフルオロエチレンの多孔膜、孔径0.1〜20μm、例えば0.5〜1μmのポリエチレンテレフタレートやポリエチレンの織物等が挙げられる。
セルロース繊維シートはその製造方法により、様々な空隙率を有することができる。
セルロース繊維シートに樹脂を含浸させてセルロース繊維複合材料を得る場合には、セルロース繊維シートの空隙率が小さいと樹脂が含浸されにくくなるため、ある程度の空隙率があることが好ましい。この場合の空隙率は、通常10体積%以上、好ましくは20体積%以上である。ただし、セルロース繊維シートの空隙率が過度に高いと、セルロース繊維複合材料とした際に、セルロース繊維による十分な補強効果が得られず、線膨張率や弾性率が不足する場合があるので、80体積%以下であることが好ましい。
ここでいうセルロース繊維シートの空隙率は簡易的に下記式により求めるものである。
空隙率(体積%)={(1−B/(M×A×t)}×100
ここで、Aはセルロース繊維シートの面積(cm)、tは膜厚(cm)、Bはシート
の重量(g)、Mはセルロースの密度であり、本発明ではM=1.5g/cmと仮定す
る。
セルロース繊維シートの膜厚は、膜厚計(PEACOK製のPDN−20)を用いて、
シートの種々な位置について10点の測定を行い、その平均値を採用する。
空隙率の大きなセルロース繊維シートを得る方法としては、濾過による製膜工程において、セルロース繊維シート中の水を最後にアルコール等の有機溶媒に置換する方法を挙げることができる。
これは、濾過により水を除去し、セルロース含量が5〜99重量%になったところでアルコール等の有機溶媒を加えるものである。または、微細セルロース繊維の分散液を濾過装置に投入した後、アルコール等の有機溶媒を分散液の上部に静かに投入することによっても濾過の最後にセルロース繊維シート中の水をアルコール等の有機溶媒と置換することができる。
ここで用いるアルコール等の有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコール−モノ−t−ブチルエーテル等のアルコール類の他、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、トルエン、四塩化炭素等の1種または2種以上の有機溶媒が挙げられる。非水溶性有機溶媒を用いる場合は、水溶性有機溶媒との混合溶媒にするか水溶性有機溶媒で置換した後、非水溶性有機溶媒で置換することが好ましい。
このようにして空隙率を制御することによりセルロース繊維シートの膜厚も制御することができる。
また、空隙率を制御する方法として、上記のアルコール等より沸点の高い溶媒を微細セルロース繊維の分散液に混合し、その溶媒の沸点より低い温度で乾燥させる方法が挙げられる。この場合は、必要に応じて、乾燥後に残っている高い沸点の溶媒を、他の溶媒に置換した後に、樹脂に含浸させてセルロース繊維複合材料とすることができる。濾過によって溶媒を除去したセルロース繊維シートは、その後、乾燥を行うが、場合によっては乾燥を行わずに次の工程に進んでも構わない。
すなわち、加熱処理したセルロース繊維分散液を濾過して、次に樹脂に含浸する場合、
乾燥工程を経ずそのまま樹脂に含浸することもできる。
また、セルロース繊維分散液を濾過して、そのシートを加熱処理する場合にも、乾燥工程を経ずに行うこともできる。
ただし、空隙率、膜厚の制御、シートの構造をより強固にする意味でも乾燥を行った方が好ましい。
この乾燥は、送風乾燥であってもよく、減圧乾燥であってもよく、また、加圧乾燥であってもよい。また、加熱乾燥しても構わない。加熱する場合、温度は50℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましく、また、250℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましい。加熱温度が低すぎると乾燥に時間がかかったり、乾燥が不十分になる可能性があり、加熱温度が高すぎるとセルロース繊維シートが着色したり、セルロースが分解したりする可能性がある。また、加圧する場合は0.01MPa以上が好ましく、0.1MPa以上がより好ましく、また、5MPa以下が好ましく、1MPa以下がより好ましい。圧力が低すぎると乾燥が不十分になる可能性がり、圧力が高すぎるとセルロース繊維シートがつぶれたりセルロースが分解する可能性がある。
セルロース繊維シートの厚みには特に限定はないが、好ましくは1μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。又、通常1000μm以下、好ましくは250μm以下である。
<粒子>
微細セルロース繊維を用いて、セルロース繊維粒子とすることができる。
セルロース繊維粒子は特に熱可塑性樹脂との混練によって複合化する際に好適に用いられ、その高弾性率、低線膨張率、表面平滑性といった特性を生かして、各種の構造材、特に表面の意匠性に優れた自動車用パネルや建築物の外壁パネル等に有用である。
微細セルロース繊維を粒子化する方法としては、本発明のセルロース繊維分散液を、例えば公知のスプレードライ装置を用いて、スプレーノズル等から噴射することにより、分散媒を除去して造粒する方法が挙げられる。この噴射方法としては、具体的には回転円盤による方法、加圧ノズルによる方法、2流体ノズルによる方法などがある。スプレードライして得られた粒子を更に他の乾燥装置を用いて乾燥させてもよい。この場合の熱エネルギー源としては、赤外線やマイクロ波を用いることもできる。
また、本発明のセルロース繊維分散液を凍結乾燥し、粉砕することによってもセルロース繊維粒子を得ることができる。この場合、具体的には、本発明のセルロース繊維分散液を液体窒素などで冷却した後、グラインダーや回転刃などで粉砕する方法が挙げられる。
セルロース繊維粒子の粒径には特に制限はないが、通常1μm以上で1mm以下が好ましい。この粒径は更に好ましくは5μm以上、100μm以下であり、特に好ましくは5μm以上、50μm以下である。セルロース繊維粒子の粒径が大き過ぎると樹脂と複合化した際、分散不良を起こし、小さ過ぎるとふわふわと舞って取り扱いが困難である。
<ゲル>
本発明の微細セルロース繊維は、セルロース以外の高分子と複合化させることにより、
繊維樹脂複合材料を得る事ができる。このセルロース以外の高分子との複合化は、本発明のセルロース繊維分散液から分散媒を除去することなく分散媒中で行ってもよく、複合化させた後に分散媒を除去することで複合体を得る事もできる。本発明のセルロース繊維分散液の分散媒は、水から他の有機溶媒に、あるいは有機溶媒から水へと、セルロース以外の高分子と複合化するのに適した分散媒種へ置換を行ってから複合化を行うとより好ましい。
この複合化における分散媒の除去ないし置換の過程において、本発明のセルロース繊維分散液はセルロース繊維ゲルの状態をとる場合がある。
セルロース繊維ゲルは、セルロース繊維が3次元網目状構造を作り、それが分散媒によって湿潤または膨潤したものであり、網目構造は化学架橋や物理架橋により形成される。ゲルが所定量の分散媒を含有することによって、ゲル中のセルロース繊維の3次元網目状構造が保持される。
ゲル中における分散媒の含有量は、10重量%以上であり、50重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましい。10重量%未満であると、得られるセルロース繊維複合材料の光学的等方性および表面平滑性が損なわれる。また、上限としては、99重量%以下であり、97重量%以下が好ましく、95重量%以下がより好ましい。99重量%を超えると、ゲルのハンドリング性が悪くなると共に、生産性が低下する。
また、ゲル中における微細セルロース繊維の含有量は、通常90重量%以下であり、50重量%以下が好ましく、30重量%以下がより好ましい。90重量%を超えると、得られるセルロース繊維複合材料の光学的等方性および表面平滑性が損なわれる。また、下限としては、1重量%以上であり、3重量%以上が好ましく、5重量%以上がより好ましい。1重量%未満であると、ゲルのハンドリング性が悪くなると共に、生産性が低下する。
ゲル中における分散媒と微細セルロース繊維との重量比(微細セルロース繊維/分散媒)は、9/1〜1/99が好ましく、より好ましくは1/1〜3/97であり、さらに好ましくは3/7〜5/95である。9/1を超えると、得られるセルロース繊維複合材料の光学的等方性および表面平滑性が損なわれる。1/99未満であると、セルロース繊維ゲルの形状を保てず、取扱いが非常に困難となる。
セルロース繊維ゲルに含まれる分散媒は、通常、本発明のセルロース繊維分散液の分散媒であり、一般的には水であるが、有機溶媒の1種または2種以上の混合分散媒であってもよい。また、水と有機溶媒との混合分散媒であってもよい。
セルロース繊維ゲルに含まれる分散媒は、上記分散媒含有量が上記範囲内である限り、
必要に応じて他の種類の分散媒に置換することができる。つまり、ゲル製造工程後、必要に応じて、セルロース繊維ゲル中の分散媒(第一の分散媒)を、他の分散媒(第二の分散媒)に置換する分散媒置換工程を実施してもよい。
置換する方法としては、例えば、上記の濾過法により分散液中に含まれる所定量の分散媒を除去した後、アルコールなどの有機溶媒を加えることにより、アルコール等の有機溶媒が含まれるゲルを製造することができる。より具体的には、第一の分散媒が水で、第二の分散媒が有機溶媒である場合が挙げられる。
なお、上記第二の分散媒の種類は特に限定されず、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールなどのアルコール類の他、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、トルエン、四塩化炭素などの1種または2種以上の有機溶媒が挙げられる。
セルロース繊維ゲルの形状は、特に限定されず、シートまたはフィルム状(例えば、厚み10μm以上10cm以下)、粒子状など適宜制御することができる。
〔繊維樹脂複合材料〕
上述のセルロース繊維シート、セルロース繊維粒子またはセルロース繊維ゲル等のセルロース繊維集合体をマトリックス材料と複合化することで本発明の繊維樹脂複合材料が得られる。なお、繊維樹脂複合材料は、本発明のセルロース繊維分散液からセルロース繊維集合体を経ることなく直接製造することもできる。すなわち、本発明の繊維樹脂複合材料は、本発明の微細セルロース繊維とマトリックス材料を含むものであればよい。
本発明の繊維樹脂複合材料は、その高透明性、低線膨張率あるいは非着色性といった特性を生かして、各種ディスプレイ基板材料、太陽電池用基板、窓材等に有用であり、また、その高弾性率、低線膨張率、表面平滑性といった特性を生かして、各種の構造材、特に表面の意匠性に優れた自動車用パネルや建築物の外壁パネル等に有用である。
[複合化方法]
以下、繊維樹脂複合材料を製造する方法について説明する。
繊維樹脂複合材料は、上述の方法で得られたセルロース繊維シート、セルロース繊維粒子またはセルロース繊維ゲル等のセルロース繊維集合体、或いはセルロース繊維分散液と、セルロース以外の樹脂とを複合化させたものである。
セルロース以外の樹脂は、セルロース繊維シートと貼り合わせたり、空隙を埋めたり、微細セルロース繊維や造粒したセルロース繊維粒子を混練や分散する樹脂のことをいう。尚、これら貼り合せや混練、分散などの際は、樹脂の前駆体(例えばモノマー)などの状態であってもよく、加熱や活性エネルギー線照射などにより樹脂となるものであればよい。以下、セルロース以外の樹脂とその前駆体をあわせて、マトリックス材料とよぶ。
このマトリックス材料として好適なものは、加熱することにより流動性のある液体になる熱可塑性樹脂、紫外線や電子線などの活性エネルギー線を照射することにより重合硬化する、活性エネルギー線硬化性樹脂(以下、「光硬化性樹脂」という場合がある)等から得られる少なくとも1種の樹脂(高分子材料)またはその前駆体である。
なお、本発明において樹脂の前駆体とは、いわゆるモノマー、オリゴマーであり、例えば、熱可塑性樹脂の項に重合または共重合成分として後述する各単量体など(以後、熱可塑性樹脂前駆体と称することがある)、光硬化性樹脂の項に後述する各前駆体などが挙げられる。
上述の方法で得られたセルロース繊維シート、セルロース繊維粒子またはセルロース繊維ゲル等のセルロース繊維集合体、或いはセルロース繊維分散液と、マトリックス材料との複合化の方法としては、次の(a)〜(j)の方法が挙げられる。尚、硬化性樹脂の重合硬化工程については<重合硬化工程>の項に詳述する。
(a) セルロース繊維シート、セルロース繊維粒子またはセルロース繊維ゲルに液状の熱可塑性樹脂前駆体を含浸させて重合させる方法
(b) セルロース繊維シート、セルロース繊維粒子またはセルロース繊維ゲルに光硬化性樹脂前駆体を含浸させて重合硬化させる方法
(c) セルロース繊維シート、セルロース繊維粒子またはセルロース繊維ゲルに樹脂溶液(熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂前駆体および光硬化性樹脂前駆体から選ばれる1以上の溶質を含む溶液)を含浸させて乾燥した後、加熱プレス等で密着させ、必要に応じて重合硬化させる方法
(d) セルロース繊維シート、セルロース繊維粒子またはセルロース繊維ゲルに熱可塑性樹脂の溶融体を含浸させ、加熱プレス等で密着させる方法
(e) 熱可塑性樹脂シートとセルロース繊維シートまたはセルロース繊維ゲルとを交互に配置し、加熱プレス等で密着させる方法
(f) セルロース繊維シートまたはセルロース繊維ゲルの片面もしくは両面に液状の熱可塑性樹脂前駆体もしくは光硬化性樹脂前駆体を塗布して重合硬化させる方法
(g) セルロース繊維シートまたはセルロース繊維ゲルの片面もしくは両面に樹脂溶液(熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂前駆体、および光硬化性樹脂前駆体から選ばれる1以上の溶質を含む溶液)を塗布して、溶媒を除去後、必要に応じて重合硬化させる方法
(h) セルロース繊維粒子と熱可塑性樹脂を溶融混練した後、シート状や目的の形状に成形する方法
(i) セルロース繊維分散液とモノマー溶液または分散液(熱可塑性樹脂前駆体、および光硬化性樹脂前駆体から選ばれる1以上の溶質または分散質を含む溶液または分散液)とを混合した後、溶媒除去、重合硬化させる方法。
(j) セルロース繊維分散液と高分子溶液または分散液(熱可塑性樹脂溶液または分散液)を混合した後、溶媒を除去する方法。
[樹脂]
マトリックス材料としては、熱可塑性樹脂または光硬化性樹脂等の活性エネルギー線硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂または光硬化性樹脂等の活性エネルギー線硬化性樹脂を用いることで、透明性の高い繊維樹脂複合材料を得ることができる。例えば、熱硬化性樹脂を用いた場合、硬化時間が長いため、その過程で透明性が低下する場合がある。
本発明において、熱可塑性樹脂とは、加熱によって軟化して成形できるようになり、それを冷却すれば固化する特性(これには可逆性もある)を有する樹脂を示す。
また、本発明において、活性エネルギー線(光)硬化性樹脂とは、活性エネルギー線(光エネルギー)の作用で液状から固体に変化し(光硬化)、硬化する樹脂を示す。
本発明においては、以下のマトリックス材料のうち、高分子材料、または前駆体の場合にはその重合体が、非晶質でガラス転移温度(Tg)の高い合成高分子であるものが、透明性に優れた高耐久性の繊維樹脂複合材料を得る上で好ましく、このうち非晶質の程度としては、結晶化度で10%以下、特に5%以下であるものが好ましく、また、Tgは110℃以上、特に120℃以上、とりわけ130℃以上のものが好ましい。Tgが低いと例えば熱水等に触れた際に変形する恐れがあり、実用上問題が生じる。また、低吸水性の繊維樹脂複合材料を得るためには、ヒドロキシル基、カルボキシ基、アミノ基などの親水性の官能基が少ない高分子材料を選定することが好ましい。なお、高分子材料のTgは一般的な方法で求めることができる。例えば、DSC法による測定で求められる。高分子の結晶化度は、非晶質部と結晶質部の密度から算定することができ、また、動的粘弾性測定により、弾性率と粘性率の比であるtanδから算出することもできる。
<熱可塑性樹脂>
熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではないが、ポリビニルアルコール樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、芳香族ポリカーボネート系樹脂、脂肪族ポリカーボネート系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリオレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、熱可塑性ポリイミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリスルホン系樹脂、非晶性フッ素系樹脂等が挙げられる。
<活性エネルギー線硬化性樹脂>
光硬化性樹脂等の活性エネルギー線硬化性樹脂としては、特に限定されるものではないが、上述の熱硬化性樹脂として例示したエポキシ樹脂、アクリル樹脂、オキセタン樹脂等の前駆体が挙げられる。
熱可塑性樹脂、活性エネルギー線硬化性樹脂の具体例は、特開2009−299043号公報に記載のものが挙げられる。
<その他の成分>
熱可塑性樹脂および活性エネルギー線硬化性樹脂は、適宜、連鎖移動剤、紫外線吸収剤、充填剤、シランカップリング剤等と配合した組成物(以下、硬化性組成物とよぶ)として用いられる。
<連鎖移動剤>
反応を均一に進行させる目的等で硬化性組成物は連鎖移動剤を含んでもよい。連鎖移動剤としては、例えば、分子内に2個以上のチオール基を有する多官能メルカプタン化合物を用いることができ、これにより硬化物に適度な靱性を付与する事が出来る。メルカプタン化合物としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス(β−チオプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(β−チオプロピオネート)、トリス[2−(β−チオプロピオニルオキシエトキシ)エチル]トリイソシアヌレートなどの1種または2種以上を用いるのが好ましい。硬化性組成物にメルカプタン化合物を含有させる場合、連鎖移動剤は硬化性組成物中のラジカル重合可能な化合物の合計に対して、通常30重量%以下の割合で含有させる。
<紫外線吸収剤>
着色防止目的で硬化性組成物は紫外線吸収剤を含んでもよい。例えば、紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤およびベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤から選ばれるものであり、その紫外線吸収剤は1種類を用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。硬化性組成物に紫外線吸収剤を含有させる場合、紫外線吸収剤は硬化性組成物中のラジカル重合な可能化合物の合計100重量部に対して、通常0.01〜1重量部の割合で含有させる。
<セルロース以外の充填剤>
硬化性組成物は、セルロース繊維以外の充填剤を含んでもよい。充填剤としては、例えば、無機粒子や有機高分子などが挙げられる。具体的には、シリカ粒子、チタニア粒子、アルミナ粒子などの無機粒子、ゼオネックス(日本ゼオン社)やアートン(JSR社)などの透明シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネートやポリメチルメタアクリレートなどの汎用熱可塑性ポリマーなどが挙げられる。中でも、ナノサイズのシリカ粒子を用いると透明性を維持することができ好適である。また、紫外線硬化性モノマーと構造の似たポリマーを用いると高濃度までポリマーを溶解させることが可能であり、好適である。
<シランカップリング剤>
硬化性組成物には、シランカップリング剤を添加してもよい。シランカップリング剤としては、例えば、γ−((メタ)アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−((メタ)アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、γ−((メタ)アクリロキシプロピル)メチルジエトキシシラン、γ−((メタ)アクリロキシプロピル)トリエトキシシラン、γ−(アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン等が挙げられ、これらは分子中に(メタ)アクリル基を有しており、他のモノマーと共重合することができるので好ましい。硬化性組成物にシランカップリング剤を含有させる場合、シランカップリング剤は、硬化性組成物中のラジカル重合な可能化合物の合計に対して通常0.1〜50重量%、好ましくは1〜20重量%となるように含有させる。この配合量が少な過ぎると、これを含有させる効果が十分に得られず、また、多過ぎると、硬化物の透明性などの光学特性が損なわれる恐れがある。
[重合硬化工程]
本発明の繊維樹脂複合材料を形成するための硬化性組成物は、公知の方法で重合硬化させることができる。
硬化方法としては、放射線硬化等が挙げられる。放射線としては、赤外線、可視光線、紫外線、電子線等の活性エネルギー線が挙げられるが、好ましくは光である。更に好ましくは波長が200nm〜450nm程度の光であり、更に好ましくは波長が250〜400nmの紫外線である。
具体的には、予め硬化性組成物に紫外線等の放射線によりラジカルを発生する光重合開始剤を添加しておき、放射線を照射して重合させる方法(以下「光重合」という場合がある)等が挙げられる。
光重合開始剤としては、通常、光ラジカル発生剤が用いられる。光ラジカル発生剤としては、この用途に用い得ることが知られている公知の化合物を用いることができる。例えば、ベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホシフィンオキシド等が挙げられる。これらの中でも、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドが好ましい。これらの光重合開始剤は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
光重合開始剤の成分量は、硬化性組成物中のラジカル重合な可能化合物の合計を100重量部としたとき、0.001重量部以上、好ましくは0.05重量部以上、更に好ましくは0.01重量部以上である。その上限は、通常1重量部以下、好ましくは0.5重量部以下、更に好ましくは0.1重量部以下である。光重合開始剤の添加量が多すぎると、重合が急激に進行し、得られる硬化物の複屈折を大きくするだけでなく色相も悪化する。例えば、開始剤の量を5重量部とした場合、開始剤の吸収により、紫外線の照射と反対側に光が到達できずに未硬化の部分が生ずる。また、黄色く着色し色相の劣化が著しい。一方、少なすぎると紫外線照射を行っても重合が十分に進行しないおそれがある。
また、硬化性組成物は、熱重合開始剤を同時に含んでもよい。例えば、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシカーボネート、パーオキシケタール、ケトンパーオキサイド等が挙げられる。具体的にはベンゾイルパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)ジクミルパーオキサイド、ジt−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルハイドロパーキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等を用いることができる。光照射時に熱重合が開始されると、重合を制御することが難しくなるので、これらの熱重合開始剤は好ましくは1分半減期温度が120℃以上であることがよい。これらの重合開始剤は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
硬化に際して照射する放射線の量は、光重合開始剤がラジカルを発生させる範囲であれば任意であるが、極端に少ない場合は重合が不完全となるため硬化物の耐熱性、機械特性が十分に発現されず、逆に極端に過剰な場合は硬化物の黄変等の光による劣化を生じるので、モノマーの組成および光重合開始剤の種類、量に合わせて、波長300〜450nmの紫外線を、好ましくは0.1J/cm以上200J/cm以下の範囲で照射する。更に好ましくは1J/cm以上20J/cmの範囲で照射する。放射線を複数回に分割して照射すると、より好ましい。すなわち1回目に全照射量の1/20〜1/3程度を照射し、2回目以降に必要残量を照射すると、複屈折のより小さな硬化物が得られる。使用するランプの具体例としては、メタルハライドランプ、高圧水銀灯ランプ、紫外線LEDランプ、無電極水銀灯ランプ等を挙げることができる。
重合をすみやかに完了させる目的で、光重合と熱重合を同時に行ってもよい。この場合には、放射線照射と同時に硬化性組成物を30℃以上300℃以下の範囲で加熱して硬化を行う。この場合、硬化性組成物には、重合を完結するために熱重合開始剤を添加してもよいが、大量に添加すると硬化物の複屈折の増大と色相の悪化をもたらすので、熱重合開始剤は、硬化性組成物中のラジカル重合な可能化合物の合計に対して通常0.1重量%以上2重量%以下、より好ましくは0.3重量%以上1重量%以下となるように用いる。
[積層構造体]
本発明で得られる繊維樹脂複合材料は、本発明で得られるセルロース繊維シートの層と、前述したセルロース以外の高分子よりなる平面構造体層との積層構造体であってもよく、また、本発明で得られるセルロース繊維シートの層と、本発明で得られる繊維樹脂複合材料の層との積層構造であってもよく、その積層数や積層構成には特に制限はない。
また、本発明で得られるシートないし板状の繊維樹脂複合材料を複数枚重ねて積層体とすることもできる。その際に、セルロース繊維を含む複合体と含まない樹脂シートを積層してもよい。この場合、繊維樹脂複合材料同士や樹脂シートと繊維樹脂複合材料を接着させるために、接着剤を塗布したり接着シートを介在させてもよい。また、積層体に加熱プレス処理を加えて一体化することもできる。
[無機膜]
本発明で得られる繊維樹脂複合材料は、その用途に応じて、繊維樹脂複合材料層に更に無機膜が積層されたものであってもよく、上述の積層構造体に更に無機膜が積層されたものであってもよい。
ここで用いられる無機膜は、繊維樹脂複合材料の用途に応じて適宜決定され、例えば、白金、銀、アルミニウム、金、銅等の金属、シリコン、ITO、SiO、SiN、SiOxNy、ZnO等、TFT等が挙げられ、その組み合わせや膜厚は任意に設計することができる。
[繊維樹脂複合材料の特性ないし物性]
以下に本発明で得られる繊維樹脂複合材料の好適な特性ないし物性について説明する。
<セルロース含有量>
本発明の繊維樹脂複合材料中のセルロース繊維の含有量(微細セルロース繊維の含有量)は通常1重量%以上、99重量%以下である。セルロース繊維の含有量は、5重量%以上であることが好ましく、10重量%以上がさらに好ましく、30重量%以上が特に好ましい。また、セルロース繊維の含有量は、90重量%以下であることが好ましく、80重量%以下であることがさらに好ましく、70重量%以下であることが特に好ましい。セルロース繊維の含有量が下限値以上であることにより低線膨張性を発現することができ、上限値以下であることにより透明性を発現することができる。
セルロース繊維以外のマトリックス材料の含有量は、通常1重量%以上、99重量%以下である。セルロース繊維以外のマトリックス材料の含有量は、10重量%以上が好ましく、20重量%以上がさらに好ましく、30重量%以上が特に好ましく、95重量%以下が好ましく、90重量%以下がさらに好ましく、70重量%以下が特に好ましい。セルロース繊維以外のマトリックス材料の含有量が下限値以上であることにより透明性を発現することができ、上限値以下であることにより低線膨張性を発現することができる。
繊維樹脂複合材料中のセルロース繊維およびセルロース繊維以外のマトリックス材料の含有量は、例えば、複合化前のセルロース繊維の重量と複合化後の繊維樹脂複合材料の重量より求めることができる。また、マトリックス材料が可溶な溶媒に繊維樹脂複合材料を浸漬してマトリックス材料のみを取り除き、残ったセルロース繊維の重量から求めることもできる。その他、マトリックス材料である樹脂の比重から求める方法や、NMR、IRを用いて樹脂やセルロース繊維の官能基を定量して求めることもできる。
<厚み>
本発明により得られる繊維樹脂複合材料の厚みは、好ましくは10μm以上10cm以下であり、このような厚みとすることにより、構造材としての強度を保つことができる。繊維樹脂複合材料の厚さはより好ましくは50μm以上1cm以下であり、さらに好ましくは80μm以上250μm以下である。
なお、本発明により得られる繊維樹脂複合材料は、例えば、このような厚さの膜状(フィルム状)または板状であるが、平膜または平板に限らず、曲面を有する膜状または板状とすることもできる。また、その他の異形形状であってもよい。また、厚さは必ずしも均一である必要はなく、部分的に異なっていてもよい。
<全光線透過率>
本発明により得られる繊維樹脂複合材料は、透明性の高い、すなわちヘーズの小さい繊維樹脂複合材料とすることができる。各種透明材料として用いる場合、この繊維樹脂複合材料は、JIS規格K7105に準拠してその厚み方向に測定された全光線透過率が60%以上、更には70%以上、特に80%以上、とりわけ90%以上であることが好ましい。この全光線透過率が60%未満であると半透明または不透明となり、透明性が要求される用途への使用が困難となる場合がある。
全光線透過率は例えば、繊維樹脂複合材料について、スガ試験機製ヘーズメータを用いて測定することができ、C光源の値を用いる。例えば、厚み10〜250μm、好ましくは10〜100μmの繊維樹脂複合材料について測定する。
<線膨張係数>
本発明により得られる繊維樹脂複合材料は、線膨張係数(1Kあたりの伸び率)の低いセルロースを用いることにより線膨張係数の低い繊維樹脂複合材料とすることができる。この繊維樹脂複合材料の線膨張係数は1〜50ppm/Kであることが好ましく、1〜30ppm/Kであることがより好ましく、1〜20ppm/Kであることが特に好ましく、1〜15ppm/Kであることが最も好ましい。
即ち、例えば、基板用途においては、無機の薄膜トランジスタの線膨張係数が15ppm/K程度であるため、繊維樹脂複合材料の線膨張係数が50ppm/Kを超えると無機膜との積層複合化の際に、二層の線膨張率差が大きくなり、クラック等が発生する。従って、繊維樹脂複合材料の線膨張係数は、特に1〜20ppm/Kであることが好ましい。
なお、線膨張係数は、後述の実施例の項に記載される方法により測定される。
<引張弾性率>
本発明により得られる繊維樹脂複合材料の引張弾性率は、好ましくは0.2〜100GPaであり、より好ましくは1〜50GPa、さらに好ましくは5.0〜30GPaである。引張弾性率が0.2GPaより低いと、十分な強度が得られず、構造材料等、力の加わる用途への使用に影響を与えることがある。
なお、引張弾性率は、後述の実施例の項に記載される方法により測定される。
[用途]
本発明により得られる繊維樹脂複合材料は、低線膨張係数で、透明性が高く、高強度、ヘーズが小さく光学特性に優れるため、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、リアプロジェクションテレビ等のディスプレイや基板やパネルとして好適である。また、シリコン系太陽電池、色素増感太陽電池などの太陽電池用基板に好適である。基板としては、バリア膜、ITO、TFT等と積層してもよい。
また、本発明の繊維樹脂複合材料は、自動車用の窓材、鉄道車両用の窓材、住宅用の窓材、オフィスや工場などの窓材などにも好適に用いることができる。窓材としては、必要に応じてフッ素皮膜、ハードコート膜等の膜や耐衝撃性、耐光性の素材を積層して用いてもよい。
また、本発明の繊維樹脂複合材料は、その低線膨張係数、高弾性、高強度等の特性を生かして透明材料用途以外の構造体としても用いることができる。特に、内装材、外板、バンパー等の自動車材料やパソコンの筐体、家電部品、包装用資材、建築資材、土木資材、水産資材、その他、工業用資材等として好適に用いられる。
以下、実施例および比較例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
尚、繊維樹脂複合材料のセルロース繊維含有量、繊維樹脂複合材料又は樹脂シートの全光線透過率、線膨張係数および引張弾性率の測定方法は以下の通りである。
〔繊維樹脂複合材料中のセルロース繊維含有量〕
複合化に用いたセルロース繊維集合体の重量と、得られた繊維樹脂複合材料の重量からセルロース繊維含有量(重量%)を求めた。
〔全光線透過率〕
JIS規格K7105に準拠し、スガ試験機製ヘーズメータを用いてC光源による全光線透過率を測定した。
〔線膨張係数〕
繊維樹脂複合材料又は樹脂シートをレーザーカッターにより、3mm幅×40mm長にカットした。これをSII製TMA6100を用いて引張モードでチャック間20mm、荷重10g、窒素雰囲気下、室温から180℃まで5℃/min.で昇温し、次いで180℃から25℃まで5℃/min.で降温し、更に25℃から180℃まで5℃/min.で昇温した際の2度目の昇温時の60℃から100℃の測定値から線膨張係数を求めた。
〔引張弾性率〕
繊維樹脂複合材料又は樹脂シートをレーザーカッターにより、10mm幅×40mm長にカットした。これを、SII社製DMS6100を用いて引張モードでDMA(動的粘弾性)測定を行い、周波数10Hz、23℃における貯蔵弾性率E’(単位;GPa)を測定した。
〔カチオン化植物繊維材料の製造例〕
[製造例1]
2−プロパノール250gに、植物繊維材料として広葉樹未漂白クラフトパルプ(王子製紙社製、リグニン含量3%、固形分12.1重量%)をセルロース量が9.7gとなるように添加し、次いで1mol/L水酸化ナトリウム水溶液5.83g、カチオン化剤としてグリシジルトリメチルアンモニウムクロリドの80重量%水溶液(カチオマスターG(登録商標)、四日市合成社製)4.86gを添加し、室温で3時間撹拌した。その後、50℃に昇温し、セルロース繊維原料とカチオン化剤とを90分間反応させた。反応後、濾別したケーキを脱塩水600mlに分散させて10重量%酢酸水溶液で中和した後、再度濾別した。次いで、濾液の電気伝導度が50μS/cm未満になるまで脱塩水で洗浄し、カチオン基を導入した植物繊維材料を得た。このカチオン化植物繊維材料のカチオン基の導入量を、三菱化学アナリテック社製窒素測定装置TN−10を用いて、JIS−K2609に準じて測定したところ、0.64mmol/gであった。
[製造例2]
植物繊維材料に針葉樹未漂白クラフトパルプ(王子製紙社製、リグニン含量3%、固形分30.1重量%)を用いた以外は、製造例1と同様にして、カチオン基を導入した植物繊維材料を得た。得られたカチオン化植物繊維材料のカチオン基の導入量は0.57mmol/gであった。
[製造例3]
植物繊維材料に針葉樹未漂白クラフトパルプ(王子製紙社製、リグニン含量7%、固形分33.7重量%)を用いた以外は、製造例1と同様にして、カチオン基を導入した植物繊維材料を得た。得られたカチオン化植物繊維材料のカチオン基の導入量は0.57mmol/gであった。
[製造例4]
植物繊維材料に広葉樹漂白クラフトパルプ(王子製紙社製、リグニン含量0%、固形分37.0重量%)を用いた以外は、製造例1と同様にして、カチオン基を導入した植物繊維材料を得た。得られたカチオン化植物繊維材料のカチオン基の導入量は0.50mmol/gであった。
[製造例5]
1mol/L水酸化ナトリウム水溶液30g、カチオン化剤としてグリシジルトリメチルアンモニウムクロリドの80重量%水溶液(カチオマスターG(登録商標)、四日市合成社製)17.5を混合し、混練機(プライミクス株式会社製TKハイビスミックス)の混合槽に投入した。次いで、植物繊維材料として針葉樹漂白クラフトパルプ(王子製紙社製、リグニン含量0%、固形分99.0重量%)を投入し、ブレードを回転させながら50℃に昇温し、植物繊維材料とカチオン化剤とを90分間反応させた。反応後、ケーキを回収し、脱塩水2Lに分散させて10重量%酢酸水溶液で中和した後、濾別した。次いで、濾液の電気伝導度が50μS/cm未満になるまで脱塩水で洗浄し、カチオン基を導入した植物繊維材料を得た。得られたカチオン化植物繊維材料のカチオン基の導入量は0.57mmol/gであった。
〔微細セルロース繊維製造の実施例と比較例〕
以降、実施例1〜8および比較例1〜9に関しては、製造例1〜5で得られたカチオン化植物繊維材料の解繊による微細セルロース繊維製造時の回収率について述べる。また、結果を表1に示す。
[実施例1]
製造例1で得られたカチオン化植物繊維材料を0.5重量%含む水分散液を作製し、高速回転式ホモジナイザー(クレアミックス−0.8S、エム・テクニック社製)を用いて、20000rpmで10分間解繊処理を行った。
得られた微細セルロース繊維の回収率を以下のようにして測定した。
解繊処理後の分散液を0.2重量%に希釈し均一に分散させ、この分散液をアルミ皿にとり、105℃で2時間以上乾燥させて固形分濃度を測った(C)。遠沈管に30gを測り取り、遠心分離機(日立工機社製CR23)により12000Gで10分間遠心分離処理した。その後、遠沈管ごと秤量し(W)、沈殿物が入らないように注意して上澄みを取り分け、上記同様に固形分濃度を測った(C)。沈殿物が残った遠沈管を秤量した(W)。尚、遠沈管の質量はWとした。
以下の式により、微細セルロース繊維の回収率を算出したところ、77.4%であった。
Figure 2015089914
[実施例2]
解繊処理時間を30分間にした以外は、実施例1と同様にして解繊処理を行ったところ、微細セルロース繊維の回収率は92.2%であった。
[実施例3]
解繊処理時間を60分間にした以外は、実施例1と同様にして解繊処理を行ったところ、微細セルロース繊維の回収率は92.7%であった。
[実施例4]
製造例2で得られたカチオン化植物繊維材料を用いて実施例1と同様にして解繊処理を行ったところ、微細セルロース繊維の回収率は87.5%であった。
[実施例5]
解繊処理時間を30分間にした以外は、実施例4と同様にして解繊処理を行ったところ、微細セルロース繊維の回収率は87.0%であった。
[実施例6]
解繊処理時間を60分間にした以外は、実施例4と同様にして解繊処理を行ったところ、微細セルロース繊維の回収率は96.5%であった。
[実施例7]
製造例3で得られたカチオン化植物繊維材料を用いて実施例1と同様にして解繊処理を行ったところ、微細セルロース繊維の回収率は90.0%であった。
[実施例8]
解繊処理時間を5分間にした以外は、実施例7と同様にして解繊処理を行ったところ、微細セルロース繊維の回収率は70.8%であった。
[比較例1]
製造例4で得られたカチオン化植物繊維材料を用いて実施例1と同様にして解繊処理を行ったところ、微細セルロース繊維の回収率は64.2%であった。
[比較例2]
解繊処理時間を30分間にした以外は、比較例1と同様にして解繊処理を行ったところ、微細セルロース繊維の回収率は76.2%であった。
[比較例3]
解繊処理時間を60分間にした以外は、比較例1と同様にして解繊処理を行ったところ、微細セルロース繊維の回収率は84.5%であった。
[比較例4]
製造例5で得られたカチオン化植物繊維材料を用いて実施例1と同様にして解繊処理を行ったところ、微細セルロース繊維の回収率は68.1%であった。
[比較例5]
解繊処理時間を30分間にした以外は、比較例4と同様にして解繊処理を行ったところ、微細セルロース繊維の回収率は84.9%であった。
[比較例6]
解繊処理時間を60分間にした以外は、比較例4と同様にして解繊処理を行ったところ、微細セルロース繊維の回収率は91.3%であった。
[比較例7]
カチオン基を導入していない広葉樹漂白クラフトパルプ(王子製紙社製、リグニン含量0%、固形分37.0重量%)を用いて実施例3と同様にして解繊処理を行ったところ、微細セルロース繊維の回収率は12.4%であった。
[比較例8]
カチオン基を導入していない広葉樹未漂白クラフトパルプ(王子製紙社製、リグニン含量3%、固形分12.1重量%)を用いて実施例3と同様にして解繊処理を行ったところ、微細セルロース繊維の回収率は25.8%であった。
[比較例9]
カチオン基を導入していない針葉樹未漂白クラフトパルプ(王子製紙社製、リグニン含量3%、固形分30.1重量%)を用いて実施例3と同様にして解繊処理を行ったところ、微細セルロース繊維の回収率は15.4%であった。
Figure 2015089914
以上の実施例1〜8と比較例1〜9の結果より以下のことがわかった。
実施例1〜8、比較例8〜9の微細セルロース繊維の回収率から、リグニンを含有する植物繊維材料にカチオン基を導入することで、微細セルロース繊維の収率が大幅に向上することがわかった。
また、実施例1〜8、比較例1〜6の結果から、リグニンを含有するカチオン化植物繊維材料を用いた場合、リグニンを含有しないカチオン化植物繊維材料よりも、微細セルロース繊維の収率が向上することが分かった。
これは、植物繊維材料にカチオン基を導入する過程で、セルロース以外の成分であるリグニンやヘミセルロースにもカチオン基が導入され、これらの成分(カチオン基が導入されたリグニンやヘミセルロース)がセルロース繊維間の相互作用を弱めて解繊効率を向上する働きをするためと推察される。
〔繊維樹脂複合材料製造の実施例と比較例〕
以降、実施例9〜16および比較例10〜15に関しては、実施例1,4,7および比較例1,4で得られた微細セルロース繊維分散液を用いて作製した繊維樹脂複合材料又は樹脂シートについて述べる。また、作製した繊維樹脂複合材料又は樹脂シートについて測定した全光線透過率、線膨張係数及び引張弾性率の値を、厚さ、セルロース繊維含有量と共に表2に示す。
[実施例9]
実施例1で得られた微細セルロース繊維を含むセルロース繊維分散液をセルロース濃度0.13重量%になるように水で希釈して、150mlに調整し、上部から30mlのイソプロピルアルコールを静かに加えて減圧濾過を行った。濾過後に得られた湿紙を120℃に加熱したプレス機にて0.15MPaの圧力で5分間プレス乾燥してセルロース繊維集合体(シート)を得た。
得られたセルロース繊維集合体を、エトキシ化グリセリントリアクリレート(EO20mol)(新中村化学社製、A−GLY−20E))50重量部、アクリロイルモルフォリン(興人フィルム&ケミカルズ株式会社製、ACMO)50重量部、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製、ルシリンTPO)0.5重量部との混合液に含浸させ、減圧下、1時間静置した。
含浸後のセルロース繊維集合体を2枚のガラス板に挟み、無電極水銀ランプ(フュージョンUVシステムズ社製「Dバルブ」)を用いて、照射光量1900mW/cmの下、ライン速度7m/minで照射した。この時の光量は2.7J/cmであった。セルロース繊維集合体を挟んだガラス面を反転させて、裏面に上記と同様の条件で再度照射した。次いで、ライン速度2m/minで照射した。この操作を上記と同様に、ガラス面を反転してさらに9回行うことにより、厚さ70μm、セルロース繊維含有量40.2重量%の繊維樹脂複合材料を作製した。
[実施例10]
実施例4で得られた微細セルロース繊維を含むセルロース繊維分散液を用いた以外は、実施例9と同様にして厚さ73μm、セルロース繊維含有量53.9重量%の繊維樹脂複合材料を作製した。
[実施例11]
実施例4で得られた微細セルロース繊維を含むセルロース繊維分散液をセルロース濃度0.2重量%に希釈し均一に分散させ、この分散液を遠心分離機(日立工機社製CR23)にて12000Gで10分間遠心分離して上澄み液を採取した。得られた上澄み液を用いて、実施例9と同様にしてセルロース繊維集合体(シート)を作製し、このセルロース繊維集合体(シート)を用いて同様に厚さ117μm、セルロース繊維含有量38.0重量%の繊維樹脂複合材料を作製した。
[実施例12]
実施例7で得られた微細セルロース繊維を含むセルロース繊維分散液を用いた以外は、実施例9と同様にして厚さ88μm、セルロース繊維含有量41.2重量%の繊維樹脂複合材料を作製した。
[実施例13]
実施例7で得られた微細セルロース繊維を含むセルロース繊維分散液をセルロース濃度0.2重量%に希釈し均一に分散させ、この分散液を遠心分離機(日立工機社製CR23)にて12000Gで10分間遠心分離して上澄み液を採取した。得られた上澄み液を用いて、実施例9と同様にしてセルロース繊維集合体(シート)を作製し、このセルロース繊維集合体(シート)を用いて同様に厚さ67μm、セルロース繊維含有量34.7重量%の繊維樹脂複合材料を作製した。
[実施例14]
実施例4で得られた微細セルロース繊維を含むセルロース繊維分散液をセルロース濃度0.2重量%に希釈し均一に分散させ、この分散液を遠心分離機(日立工機社製CR23)にて12000Gで10分間遠心分離して上澄み液を採取した。得られた上澄み液を用いて、実施例9と同様にしてセルロース繊維集合体(シート)を作製した。このセルロース繊維集合体(シート)を、濃度5重量%のポリビニルアルコールの水溶液(ゴーセノールKH−17(登録商標)、ケン化度77〜82%、日本合成化学工業社製)に浸漬した。その後、60℃で乾燥させることにより、厚さ98μm、セルロース繊維含有量21.8重量%の繊維樹脂複合材料を作製した。
[実施例15]
実施例7で得られた微細セルロース繊維を含むセルロース繊維分散液をセルロース濃度0.2重量%に希釈し均一に分散させ、この分散液を遠心分離機(日立工機社製CR23)にて12000Gで10分間遠心分離して上澄み液を採取した。得られた上澄み液を用いて、実施例9と同様にしてセルロース繊維集合体(シート)を作製した。得られたセルロース繊維集合体(シート)を用いて、実施例14と同様にして厚さ110μm、セルロース繊維含有量17.4重量%の繊維樹脂複合材料を作製した。
[実施例16]
実施例4で得られた微細セルロース繊維を含むセルロース繊維分散液と、ポリビニルアルコールの5%水溶液(ゴーセノールKH−17(登録商標)、ケン化度77〜82%、日本合成化学工業社製)をセルロースとポリビニルアルコールの重量比が1:99となるように混合した。得られた混合液をガラスにキャストし、60℃で乾燥させることにより、厚さ75μm、セルロース繊維含有量1.0重量%の繊維樹脂複合材料を作製した。
[比較例10]
セルロース繊維集合体を用いず、エトキシ化グリセリントリアクリレート(EO20mol)(新中村化学社製、A−GLY−20E))50重量部、アクリロイルモルフォリン(興人フィルム&ケミカルズ株式会社製、ACMO)50重量部、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製、ルシリンTPO)0.5重量部との混合液のみを用いて、実施例9と同様の光照射条件で厚さ100μmの樹脂シートを作製した。
[比較例11]
セルロース繊維集合体を用いず、濃度5重量%のポリビニルアルコールの水溶液(ゴーセノールKH−17(登録商標)、ケン化度77〜82%、日本合成化学工業社製)を60℃で乾燥させてシート化して、厚さ73μmの樹脂シートを作製した。
[比較例12]
比較例1で得られた微細セルロース繊維を含むセルロース繊維分散液を用いた以外は、実施例9と同様にして厚さ60μm、セルロース繊維含有量35.7重量%の繊維樹脂複合材料を作製した。
[比較例13]
比較例4で得られた微細セルロース繊維を含むセルロース繊維分散液を用いた以外は、実施例9と同様にして厚さ67μm、セルロース繊維含有量37.8重量%の繊維樹脂複合材料を作製した。
[比較例14]
比較例4で得られた微細セルロース繊維を含むセルロース繊維分散液をセルロース濃度0.2重量%に希釈し均一に分散させ、この分散液を遠心分離機(日立工機社製CR23)にて12000Gで10分間遠心分離して上澄み液を採取した。得られた上澄み液を用いて、実施例9と同様にしてセルロース繊維集合体(シート)を作製し、このセルロース繊維集合体(シート)を用いて同様に厚さ92μm、セルロース繊維含有量29.1重量%の繊維樹脂複合材料を作製した。
[比較例15]
比較例4で得られた微細セルロース繊維を含むセルロース繊維分散液をセルロース濃度0.2重量%に希釈し均一に分散させ、この分散液を遠心分離機(日立工機社製CR23)にて12000Gで10分間遠心分離して上澄み液を採取した。得られた上澄み液を用いて、実施例9と同様にしてセルロース繊維集合体(シート)を作製した。得られたセルロース繊維集合体(シート)を用いて、実施例14と同様にして厚さ100μm、セルロース繊維含有量21.4重量%の繊維樹脂複合材料を作製した。
Figure 2015089914
以上の実施例9〜16と比較例10〜15の結果より、カチオン基を導入した植物繊維材料から得られた微細セルロース繊維と樹脂の複合材料は、透明性を維持しながら、線膨張係数が大幅に低下すること、すなわち耐熱性が向上することがわかった。また、リグニンを含有する植物繊維材料から得られた微細セルロース繊維を用いた場合、リグニンを含有しない植物繊維材料から得られた微細セルロース繊維を用いた場合よりも、線膨張係数が小さく、引張弾性率の高い繊維樹脂複合材料が得られた。これは、リグニンが存在することにより、セルロース繊維と樹脂との親和性が向上した結果と推察される。

Claims (3)

  1. 数平均繊維径が2〜200nmのセルロース繊維と樹脂を含む繊維樹脂複合材料であって、
    該セルロース繊維は、カチオン化された、リグニン含量が0.1〜40%の植物繊維材料を解繊処理して得られるセルロース繊維であり、
    該樹脂が熱可塑性樹脂または活性エネルギー線硬化性樹脂であることを特徴とする、繊維樹脂複合材料。
  2. 該セルロース繊維が、0.05〜3.0mmol/gのカチオン基を有することを特徴とする、請求項1に記載の繊維樹脂複合材料。
  3. 数平均繊維径が2〜200nmのセルロース繊維と樹脂を含む繊維樹脂複合材料の製造方法であって、
    リグニン含量が0.1〜40%の植物繊維材料をカチオン化剤によりカチオン化処理し、
    得られたカチオン化植物繊維材料を解繊処理した後に、
    熱可塑性樹脂または活性エネルギー線硬化性樹脂と複合化することを特徴とする、繊維樹脂複合材料の製造方法。
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