JP5374869B2 - セルロース繊維複合体 - Google Patents
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Description
しかし、ここで用いられる樹脂は光硬化性のアクリレート系樹脂であり、硬化収縮率が10%近くあるために、セルロース繊維と複合化した際には、樹脂の収縮により、複合シートが撓んだり、皺が入ったりする問題が生じた。
特許文献5のように、紙の表面に塗布されているだけでは、本発明で目的とするような透明かつ低線膨張性を達成することはできない。
請求項6のセルロース繊維複合体は、請求項1ないし5のいずれかにおいて、セルロース繊維の含有量が1重量%以上、マトリクス材料の含有量が99重量%以下であることを特徴とする。
本発明のセルロース繊維複合体は、セルロース繊維にオキセタン樹脂モノマーを含浸させた後、活性エネルギー線を照射して得られるが、活性エネルギー線による硬化反応であれば、樹脂の温度上昇を抑えつつ樹脂を硬化させることができるため、硬化反応の途中においても、硬化後においても硬化収縮率を低く抑えることができ、皺のないフラットなシートを得ることができる。
本発明におけるセルロース繊維は、好ましくはセルロース不織布である。
本発明におけるセルロース不織布(以下「本発明のセルロース不織布」と称する場合がある。)とは、主としてセルロースからなる不織布であり、セルロース繊維の集合体である。セルロース不織布はセルロース分散液を抄紙又は塗布によって製膜する方法、あるいはゲル状膜を乾燥する方法などによって得られる。
本発明のセルロース不織布の厚みは特に制限されるものではないが、好ましくは10μm以上、さらに好ましくは50μm以上、特に好ましくは80μm以上で、好ましくは10cm以下、さらに好ましくは1cm以下、より好ましくは1mm以下、特に好ましくは250μm以下である。セルロース不織布の厚みは、製造の安定性、強度の点から上記下限以上で厚い方が好ましく、生産性、均一性、樹脂の含浸性の点から上記上限以下で薄い方がが好ましい。
本発明のセルロース不織布を構成するセルロース繊維の繊維径は細いことが好ましい。具体的には1500nm以上の繊維径のものを含んでいないことが好ましく、さらに好ましくは1000nm以上の繊維径のものを含んでいないことが好ましく、特に好ましくは500nm以上の繊維径のものを含んでいないことが好ましい。1500nm以上の繊維径のものを含んでいない不織布は、樹脂等のマトリクス材料と複合化した場合、透明性が高く、線膨張係数が低いものが得られる点において好ましい。
なお、セルロース繊維の繊維径はSEM観察により確認することができる。
セルロース繊維の長さについては特に限定されないが、平均で100nm以上が好ましい。セルロース繊維の平均長さが100nmより短いと、強度が不十分となる恐れがある。
本発明のセルロース不織布の色目は、白いことが好ましい。本発明のセルロース不織布は、上述のように繊維径の細いセルロース繊維で構成されるが、空隙があるために、セルロース不織布自体は実質的には透明にならず、樹脂等のマトリクス材料を含浸させて複合化した後に透明となる。その際、無色であることが好ましい。よって、不織布自体は白いことが好ましい。
本発明のセルロース不織布の原料としては、針葉樹や広葉樹等の木質、バクテリアが産生するバクテリアセルロース、コットンリンターやコットンリント等のコットン、バロニアやシオグサ等の海草やホヤの被嚢等が挙げられる。これらの天然セルロースは、結晶性が高いので低線膨張係数になり好ましい。バクテリアセルロースは微細な繊維径のものが得やすいものの、横方向に扁平な結晶構造であることと、分岐した繊維形態を形成するため、光の散乱を生じやすいので好ましくない。また、コットンも微細な繊維径なものが得やすい点で好ましいが、生産量が木質と比較して乏しいため経済的に好ましくない。一方、針葉樹や広葉樹等の木質はミクロフィブリルが約4nm径と非常に微細であり、分岐のない線状の繊維形態を有する。さらに、地球上で最大量の生物資源であり、年間約700億トン以上ともいわれる量が生産されている持続型資源あることから、地球温暖化に影響する二酸化炭素削減への寄与も大きく、性能的にも経済的にも非常に好ましい。
本発明のセルロース不織布は空隙率が35vol%以上であることが好ましく、さらには35vol%以上60vol%以下であることが好ましい。セルロース不織布の空隙率が小さいと、後に示す化学修飾が進行しにくかったり、樹脂等のマトリクス材料が含浸しにくくなり、複合体にしたときに未含浸部が残るため、その界面で散乱が生じてヘーズが高くなり好ましくない。また、セルロース不織布の空隙率が高いと複合体としたとき、セルロース繊維による十分な補強効果が得られず、線膨張係数が大きくなるので、好ましくない。
空隙率(vol%)={(1−B/(M×A×t)}×100
ここで、Aは不織布の面積(cm2)、t(cm)は厚み、Bは不織布の重量(g)、Mはセルロースの密度であり、本発明ではM=1.5g/cm3と仮定する。セルロース不織布の膜厚は、膜厚計(Mitutoyo(株)製 IP65)を用いて、不織布の種々な位置について10点の測定を行い、その平均値を採用する。
本発明のセルロース繊維複合体中のセルロース繊維は、化学修飾されたセルロース繊維であることが好ましい。化学修飾とは、セルロース中の水酸基が化学修飾剤と反応して化学修飾されているものである。
化学修飾によってセルロースに導入させる官能基としては、アセチル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロピオニル基、プロピオロイル基、ブチリル基、2−ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、フロイル基、シンナモイル基等のアシル基、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアノイル基等のイソシアネート基、メチル基、エチル基、プロピル基、2−プロピル基、ブチル基、2−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基等のアルキル基、オキシラン基、オキセタン基、チイラン基、チエタン基等が挙げられる。これらの中では特にアセチル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基等の炭素数2〜12のアシル基、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜12のアルキル基が好ましい。
修飾方法としては、特に限定されるものではないが、セルロースと次に挙げるような化学修飾剤とを反応させる方法がある。この反応条件についても特に限定されるものではないが、必要に応じて溶媒、触媒等を用いたり、加熱、減圧等を行うこともできる。
ハロゲン化試薬としては、例えばアセチルハライド、アクリロイルハライド、メタクリロイルハライド、プロパノイルハライド、ブタノイルハライド、2−ブタノイルハライド、ペンタノイルハライド、ベンゾイルハライド、ナフトイルハライド等が挙げられる。
アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール等が挙げられる。
イソシアナートとしては、例えばメチルイソシアナート、エチルイソシアナート、プロピルイソシアナート等が挙げられる。
アルコキシシランとしては、例えばメトキシシラン、エトキシシラン等が挙げられる。
オキシラン(エポキシ)等の環状エーテルとしては、例えばエチルオキシラン、エチルオキセタン等が挙げられる。
これらの化学修飾剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
ここでいう化学修飾率とは、セルロース中の全水酸基のうちの化学修飾されたものの割合を示し、化学修飾率は下記の滴定法によって測定することができる。
セルロース不織布0.5gを精秤しこれにメタノール6ml、蒸留水2mlを添加する。これを60〜70℃で30分攪拌した後、0.05N水酸化ナトリウム水溶液10mlを添加する。これを60〜70℃で15分攪拌しさらに室温で一日攪拌する。ここにフェノールフタレインを用いて0.02N塩酸水溶液で滴定する。
ここで、滴定に要した0.02N塩酸水溶液の量Z(ml)から、化学修飾により導入された置換基のモル数Qは、下記式で求められる。
Q(mol)=0.05(N)×10(ml)/1000
−0.02(N)×Z(ml)/1000
この置換基のモル数Qと、化学修飾率X(mol%)との関係は、以下の式で算出される(セルロース=(C6O5H10)n=(162.14)n,繰り返し単位1個当たりの水酸基数=3,OHの分子量=17)。なお、以下において、Tは置換基の分子量である。
本発明のセルロース不織布の製造方法は特に限定されるものではないが、化学修飾したセルロース不織布を製造する場合には、好ましくは、セルロースを不織布とした後に、化学修飾することにより、より好ましくは、セルロースを有機溶媒で洗浄した後に不織布とし、その後化学修飾することにより製造される。
不織布の製造には微細化したセルロース繊維を用いる。
バクテリアセルロースをセルロース原料とする場合、セルロースを産生するバクテリアを培養することによりセルロース繊維を得ることができる。この産生物を培地から取り出し、それを水洗、又はアルカリ処理などしてバクテリアを除去することにより、バクテリアを含まない含水バクテリアセルロースを得ることができる。バクテリアは微細なセルロースを産生するので微細化処理を行うことなく、そのまま用いることができる。
針葉樹や広葉樹等の木質、コットンリンターやコットンリント等のコットンは一般的な塩素による漂白法や、酸やアルカリ、各種有機溶剤による抽出などにより精製した後、微細化処理を行い微細化したセルロースを得る。
また、バロニアやシオグサ等の海草やホヤの被嚢等も微細化処理を行い、微細化したセルロースを得る。
具体的には孔径0.1〜5μm、例えば1μmのポリテトラフルオロエチレンの多孔膜、孔径0.1〜5μm、例えば1μmのポリエチレンテレフタレートやポリエチレンの織物等が挙げられる。
不織布の化学修飾は、上述のように、不織布を製造後、アルコール等の有機溶媒で置換した後、更に不織布を乾燥した後に行っても、乾燥せずに行っても構わないが、乾燥した後に行った方が化学修飾の反応速度が速くなるため好ましい。乾燥する場合は送風乾燥、減圧乾燥してもよいし、加圧乾燥してもよい。また、加熱しても構わない。
このようにして化学修飾を行った後は、反応を終結させるために水で十分に洗浄することが好ましい。未反応の化学修飾剤が残留していると、後で着色の原因になったり、樹脂と複合化する際に問題になったりするので好ましくない。また、水で十分に洗浄した後、さらに残留する水をアルコール等の有機溶媒で置換することが好ましい。この場合、不織布をアルコール等の有機溶媒に浸漬しておくことで容易に置換することができる。
このような化学修飾後は、最後に不織布を乾燥するが、送風乾燥又は減圧乾燥してもよいし、加圧乾燥してもよい。また、加熱乾燥しても構わない。加熱する場合、温度は50℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましく、また、250℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましい。加熱温度が低すぎると乾燥に時間がかかったり、乾燥が不十分になる可能性があり、加熱温度が高すぎると不織布が着色したり、分解したりする可能性がある。また、加圧する場合は0.01MPa以上が好ましく、0.1MPa以上がより好ましく、また、5MPa以下が好ましく、1MPa以下がより好ましい。圧力が低すぎると乾燥が不十分になる可能性があり、圧力が高すぎるとセルロース不織布がつぶれたり分解する可能性がある。
セルロース不織布は、化学修飾を行なわないのであれば、酸で洗浄することが好ましい。即ち、セルロースの精製過程で各種薬液を用いた場合、様々な塩が残留する恐れがある。特に、アルカリ金属や塩素は光カチオン重合を阻害する恐れがあるため、十分に酸等で洗浄する必要がある。使用する洗浄液としては、塩が残留しない物であればよく、酢酸水溶液が好適に用いられる。この酢酸水溶液の酢酸濃度は好ましくは1重量%以上50重量%以下、より好ましくは5重量%以上35重量%以下である。酢酸濃度が薄い場合は洗浄効果が弱く、濃い場合はセルロース繊維が変質するなど悪影響を与える恐れがある。洗浄温度は室温から60℃程度が好ましい。洗浄温度が低いと洗浄効率が低下する。高いと洗浄液から酢酸が蒸発するなど、操作が困難になる。洗浄時間は1秒以上10時間以下が好ましい。洗浄時間が短いと洗浄効果が得られず、長いとセルロース繊維の変質を引き起こす可能性がある。この様に酢酸水溶液で洗浄した後、脱塩水にて十分に酢酸を洗浄除去する。その後、エタノールやイソプロピルアルコールのような有機溶剤に浸漬した後、上記に示したようなプレス加工(加圧乾燥)を行うことが出来る。
上述の本発明のセルロース不織布を、マトリクス材料としてのオキセタン樹脂、好ましくはオキセタン樹脂及びエポキシ樹脂と複合化することで本発明のセルロース繊維複合体が得られる。
ここで、オキセタン樹脂とは、オキセタン環を有するオキセタン化合物のモノマー、オリゴマー、ポリマーを意味する。
また、エポキシ樹脂とは、分子内にエポキシ環を有するエポキシ化合物のモノマー、オリゴマー、ポリマーを意味する。
分子中に1個のオキセタン環を有する化合物としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル{[−3−(トリエトキシリル)プロポキシ]メチル}オキセタン、3−エチル−3−メタクリロキシメチルオキセタンなどが挙げられる。
分子中に2個のオキセタン環を有する化合物としては、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、4,4‘−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル等が挙げられる。
分子中に3〜4個のオキセタン環を有する化合物としては、分枝状のポリアルキレンオキシ基やポリシロキシ基と3−アルキル−3−メチルオキセタンの反応物などが挙げられる。
市販のオキセタン樹脂としてはアロンオキセタン OXT-101、OXT-121、OXT-211、OXT-221、OXT-212、OXT-610、OXT-213(東亞合成(株)社製)、ETERNACOLL OXETANE EHO、OXBP、OXMA、OXTP(宇部興産(株)社製)などが挙げられる。
エポキシ樹脂としては多価フェノール化合物、あるいはそのアルキレンオキサイ付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造される、ジまたはポリグリシジルエーテルであり、例えばビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。また、脂肪族多価アルコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応による、ジまたはポリグリシジルエーテル等があり、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールヘプタグリシジルエーテル、ソルビトールヘキサグリシジルエーテル等のグリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。グリシジルエーテル型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、大日本インキ社製のエピクロン840、840S、850、850S、860、1050、830、705、707、720、725、N−665、EXA−7015等が挙げられる。また、ナガセ化成社製のEX−201、EX−211、EX−212、EX−216、EX−252、EX−321、EX−622、EX−611、EX−216L等が挙げられる。また、坂本薬品社製のSR−16H、SR−NPG、NPG−DGE、SR−16HL、SR−16KF等が挙げられる。また、ジャパンエポキシレジン社の828、828EL、828XA、806、871、152、630、1256、4250、YX8000、YX8034、YL980、YX4000等が挙げられる。
本発明のセルロース繊維複合体中のオキセタン樹脂とエポキシ樹脂の比率に関しては、これらの合計100重量部の内、オキセタン樹脂が10〜90重量部であることが好ましく、より好ましくはオキセタン樹脂は30〜70重量部である。オキセタン樹脂が10重量部未満では、光硬化度が低下し、90重量部を超えると光硬化速度が低下して十分な物性の硬化物が得られない。
光カチオン重合開始剤とは、紫外線や電子線などの活性エネルギー線の照射によりカチオン重合を開始させる化合物であり、次のようなものが挙げられる。
上記の光カチオン重合開始剤の他にも、エポキシ樹脂やオキセタン樹脂等の重合性化合物を重合硬化させるために、その他の硬化剤を添加しても良い。その他の硬化剤としては、例えば、アミン化合物、アミン化合物から合成されるポリアミノアミド化合物等の化合物、3級アミン化合物、イミダゾール化合物、ヒドラジド化合物、メラミン化合物、酸無水物、フェノール化合物、熱潜在性カチオン重合触媒、ジシアンアミド及びその誘導体等が挙げられる。
これらの硬化剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
熱潜在性カチオン重合触媒の市販品としては、アデカオプトン CP-66、CP-77((株)ADEKA社製)、サンエイド SI−15、SI−20、SI−25、SI−40、SI−45、SI−47、SI−60、SI−80、SI−100、SI−100L、SI−110L、SI−145、SI−150、SI−160、SI−180L(三新化学工業(株)社製)などが挙げられる。
更に、光増感剤を用いることもできる。光増感剤としては、具体的にはピレン、ペリレン、アクリジンオレンジ、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、ベンゾフラビン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。市販の光増感剤としては、アデカイプトマーSP−100((株)ADEKA社製)などが挙げられる。
マトリクス材料には、オキセタン樹脂、エポキシ樹脂及び光カチオン重合開始剤以外の他の成分を用いても良い。例えば、このようなものとしては、熱可塑性の高分子やラジカル重合可能な化合物等が挙げられる。また、有機や無機の充填剤、染料、顔料、粘度調整剤、紫外線吸収剤、熱ラジカル重合開始剤、連鎖移動剤、シランカップリング剤等を添加しても良い。
これらの添加剤の量は必要な物性とのバランスで決定され、特に制限はないが、通常、エポキシ樹脂やオキセタン樹脂等の重合性化合物100重量部に対して、各々0.01重量部以上、50重量部以下である。0.01重量部よりも少ないと添加効果が期待できず、50重量部を超えると、物性が悪化する。
熱可塑性の高分子としては、オキセタン樹脂、或いはオキセタン樹脂及びエポキシ樹脂と相溶して透明になるものが良く、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、芳香族ポリカーボネート系樹脂、脂肪族ポリカーボネート系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリオレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、熱可塑性ポリイミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリスルホン系樹脂、非晶性フッ素系樹脂、JSR社製のアートンや日本ゼオン社製のゼオネックス、ゼオノア等のシクロオレフィンポリマーが挙げられる。これらは上記オキセタン樹脂モノマーやエポキシ樹脂モノマーに溶解させて用い、粘度の調整や硬化収縮率を低減させる効果がある。
ラジカル重合可能な化合物としては、例えば、分子内に1個の(メタ)アクリロイル基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物、分子内に2個または3個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物、分子内に3〜8個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート、スチレン系化合物、エステル以外の(メタ)アクリル酸誘導体などが挙げられる。
熱によりラジカルを発生させる熱ラジカル重合開始剤を添加しても良い。熱重合開始剤としては、例えば、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシカーボネート、パーオキシケタール、ケトンパーオキサイド等が上げられる。具体的にはベンゾイルパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)ジクミルパーオキサイド、ジt−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルハイドロパーキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等を用いることができる。光照射時に熱重合が開始されると、重合を制御することが難しくなるので、これらの熱重合開始剤は好ましくは1分半減期温度が120℃以上であることがよい。これらの重合開始剤は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
連鎖移動剤としてしては、例えば、分子内に2個以上のチオール基を有する多官能メルカプタン化合物を用いることができ、これにより硬化物に適度な靱性を付与する事が出来る。メルカプタン化合物としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス(β−チオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(β−チオグリコレート)、トリメチロールプロパントリス(β−チオプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(β−チオグリコレート)、ジエチレングリコールビス(β−チオプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(β−チオグリコレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(β−チオプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(β−チオグリコレート)等の2〜6価のチオグリコール酸エステル又はチオプロピオン酸エステル;トリス[2−(β−チオプロピオニルオキシ)エチル]トリイソシアヌレート、トリス[2−(β−チオグリコニルオキシ)エチル]トリイソシアヌレート、トリス[2−(β−チオプロピオニルオキシエトキシ)エチル]トリイソシアヌレート、トリス[2−(β−チオグリコニルオキシエトキシ)エチル]トリイソシアヌレート、トリス[2−(β−チオプロピオニルオキシ)プロピル]トリイソシアヌレート、トリス[2−(β−チオグリコニルオキシ)プロピル]トリイソシアヌレート等のω−SH基含有トリイソシアヌレート;ベンゼンジメルカプタン、キシリレンジメルカプタン、4、4’−ジメルカプトジフェニルスルフィド等のα,ω−SH基含有化合物等が挙げられる。これらの中でもペンタエリスリトールテトラキス(β−チオプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(β−チオプロピオネート)、トリス[2−(β−チオプロピオニルオキシエトキシ)エチル]トリイソシアヌレートなどの1種又は2種以上を用いるのが好ましい。メルカプタン化合物を入れる場合は、ラジカル重合性モノマーの合計100重量部に対して、通常30重量部以下の割合で含有させる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤から選ばれるものであり、その紫外線吸収剤は1種類を用いてもよいし、2種類以上を併用しても良い。具体的には、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4、4’−ジメトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物、2−(2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジターシャリーブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−ターシャリーブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系化合物、その他マロン酸エステル系のホスタビンPR−25(クラリアント社)、蓚酸アニリド系のサンデュボアVSU(クラリアント社)などの化合物である。紫外線吸収剤を入れる場合は、ラジカル重合性モノマーの合計100重量部に対して、通常0.01〜1重量部の割合で含有させる。
充填剤としては、無機粒子や有機高分子などが挙げられる。例えば、シリカ粒子、チタニア粒子、アルミナ粒子などの無機粒子、ゼオネックス(日本ゼオン社)やアートン(JSR社)などの透明シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネートやPMMAなどの汎用熱可塑性ポリマーなどが挙げられる。中でも、ナノサイズのシリカ粒子を用いると透明性を維持することができ好適である。また、紫外線硬化性モノマーと構造の似たポリマーを用いると高濃度までポリマーを溶解させることが可能であり、好適である。
また、シランカップリング剤を添加しても良い。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−((メタ)アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。中でも、γ−((メタ)アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−((メタ)アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、γ−((メタ)アクリロキシプロピル)メチルジエトキシシラン、γ−((メタ)アクリロキシプロピル)トリエトキシシラン、γ−(アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン等は分子中に(メタ)アクリルないしアクリル基を有しており、(メタ)アクリレートを用いる場合には、共重合することができるので好ましい。シランカップリング剤は、マトリクス材料の合計に対して通常0.1〜50重量%となるように含有させる。好ましくは1〜20重量%、特に好ましくは1〜20重量%である。0.1重量%よりも少ない場合には、これを含有させる効果が十分に得られず、また50重量%よりも多い場合には、得られる複合体の透明性などの光学特性が損なわれる恐れがある。
セルロース不織布と、前述のマトリクス材料とを複合化して本発明のセルロース繊維複合体を製造する方法としては特に制限はないが、例えば次のような方法を採用することができる。
含浸の方法は一般的な方法を用いることが出来る。例えば、硬化性組成物中にセルロース不織布を浸漬する方法やセルロース不織布にダイコーター等から吐出させた硬化性組成物を塗布する方法、セルロース不織布に硬化性組成物を塗布したキッスロールを押しつけることで含浸させる方法、セルロースに硬化性組成物をスプレーする方法などが挙げられる。
この硬化方法としては、具体的には、紫外線などの活性エネルギー線を照射して光カチオン重合性樹脂を重合させる方法、および熱重合開始剤と光カチオン重合開始剤を併用して予め添加しておき、熱と活性エネルギー線を同時に付与して重合させる方法、活性エネルギー線を照射した後、熱を当てて重合を行う方法などが挙げられる。
本発明においては熱により硬化性組成物が膨張することを防ぐために光重合を行うことが好ましい。光重合終了後に後加熱を行ってもよい。この場合、硬化性組成物を含浸させたセルロース不織布を挟んだガラス板の上下から紫外線等の活性エネルギー線を照射した後、ガラス板から硬化物を取り出し、必要に応じてオーブンなどを用いて後加熱する方法が挙げられる。
次に、本発明のセルロース繊維複合体の物性について説明する。
本発明のセルロース繊維複合体中のセルロース繊維の含有量は通常1重量%以上99重量%以下であり、マトリクス材料の含有量が1重量%以上99重量%以下である。低線膨張性を発現するには、セルロース繊維の含有量が1重量%以上、マトリクス材料の含有量が99重量%以下であることが、透明性を発現するにはセルロース繊維の含有量が99重量%以下、マトリクス材料の含有量が1重量%以上であることが必要である。好ましい範囲はセルロース繊維が2重量%以上90重量%以下であり、マトリクス材料が10重量%以上98重量%以下であり、さらに好ましい範囲はセルロース繊維が5重量%以上80重量%以下であり、マトリクス材料が20重量%以上95重量%以下である。特に、本発明のセルロース繊維複合体では、セルロース繊維の含有量が70重量%以下でマトリクス材料の含有量が30重量%以上、更には、セルロース繊維の含有量が60重量%以下でマトリクス材料の含有量が40重量%以上であることが好ましい。また、セルロース繊維の含有量が10重量%以上でマトリクス材料の含有量が90重量%以下、更にはセルロース繊維の含有量が15重量%以上でマトリクス材料の含有量が85重量%以下、更にはセルロース繊維の含有量が20重量%以上でマトリクス材料の含有量が80重量%以下、特にセルロース繊維の含有量が30重量%以上でマトリクス材料の含有量が70重量%以下であることが好ましい。
本発明のセルロース繊維複合体の厚みは、好ましくは10μm以上、10cm以下である。このような厚みのセルロース繊維複合体にすることで強度を保つことができる。セルロース繊維複合体の厚みはより好ましくは50μm以上、1cm以下であり、さらに好ましくは80μm以上、250μm以下である。
なお、本発明のセルロース繊維複合体は、好ましくはこのような厚みの膜状(フィルム状)又は板状であるが、平膜又は平板に限らず、曲面を有する膜状又は板状とすることもできる。また、その他の異形形状であっても良い。また、厚みは必ずしも均一である必要はなく、部分的に異なっていても良い。
本発明のセルロース繊維複合体は、JIS規格K7105に準拠して測定した黄色度(YI値)が20以下であることが好ましい。この黄色度は15以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。
セルロース繊維複合体の黄色度は例えば、膜厚100±10μmの複合体を使用し、スガ試験機製カラーコンピューターを用いて測定することができる。
本発明では、例えば、セルロース繊維を化学修飾したり、透明性の高いマトリクス材料を用いたりすることにより、このような着色の小さいセルロース繊維複合体とする。
本発明のセルロース繊維複合体は、可視光の波長よりも細い繊維径のセルロース繊維を用いていることから、透明性の高い、すなわちヘーズの小さい複合体である。本発明のセルロース繊維複合体のヘーズ値は、JIS規格K7136に従って測定した値として、20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。特にこの値は1以下であることが各種透明材料として用いる場合に好ましい。セルロース繊維複合体のヘーズは、例えば、膜厚100±10μmの複合体を使用し、スガ試験機製ヘーズメータで測定することができ、C光の値を用いる。
本発明のセルロース繊維複合体は、JIS規格K7209(D法)に準拠して測定した吸水率が3%以下となる吸水率の低い複合体であることが好ましい。この吸水率は2%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。吸水率が3%を超えると、加工プロセス上で脱水した複合体が空気中に放置された際、空気中の水分を吸収して伸び、寸法変形を起こすため、好ましくない。
本発明のセルロース繊維複合体は、セルロース繊維複合体について、その厚み方向にJIS規格K7105に準拠して測定された全光線透過率が60%以上、更には70%以上、特に80%以上、とりわけ90%以上であることが好ましい。この全光線透過率が60%未満であると半透明または不透明となり、透明性が要求される用途への使用が困難となる場合がある。全光線透過率は例えば、膜厚100±10μmの複合体を使用し、スガ試験機製ヘーズメータを用いて測定することができ、C光を値を用いる。
本発明のセルロース繊維複合体は、線膨張係数(1K当りの伸び率)が50ppm/K以下の線膨張係数の低い複合体であることが好ましい。本発明のセルロース繊維複合体の線膨張係数は30ppm/K以下であることがさらに好ましく、20ppm/K以下であることが特に好ましい。
即ち、例えば、基板用途においては、無機の薄膜トランジスタの線膨張係数が15ppm/K程度であるため、セルロース繊維複合体の線膨張係数が50ppm/Kを超えると無機膜との積層複合化の際に、二層の線膨張係数差が大きくなり、クラック等が発生する。従って、本発明のセルロース繊維複合体の線膨張係数は、特に5〜20ppm/Kであることが好ましい。
なお、線膨張係数は、後述の実施例の項に記載される方法により測定される。
本発明のセルロース繊維複合体は、曲げ強度が、好ましくは40MPa以上であり、より好ましくは100MPa以上である。曲げ強度が40MPaより低いと、十分な強度が得られず、構造材料等、力の加わる用途への使用に影響を与えることがある。
本発明のセルロース繊維複合体は、曲げ弾性率が、好ましくは0.2〜100GPaであり、より好ましくは、1〜50GPaである。曲げ弾性率が0.2GPaより低いと、十分な強度が得られず、構造材料等、力の加わる用途への使用に影響を与えることがある。
本発明のセルロース繊維複合体は、透明性が高く、高強度、低吸水性、低着色性でヘーズの小さい複合体とすることができ、光学特性に優れるため、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、リアプロジェクションテレビ等のディスプレイや基板やパネルとして好適である。
さらに、本発明のセルロース繊維複合体には、必要に応じて反射防止膜や偏光膜、配向膜等を塗布や貼り合わせで設けることができる。
なお、以下において、作製した試料の物性等は、下記の評価方法および測定方法により行った。
セルロース不織布0.5gを精秤しこれにメタノール6ml、蒸留水2mlを添加する。これを60〜70℃で30分攪拌した後、0.05N水酸化ナトリウム水溶液10mlを添加する。これを60〜70℃で15分攪拌しさらに室温で一日攪拌する。これをフェノールフタレインを用いて0.02N塩酸水溶液で滴定する。
ここで、滴定に要した0.02N塩酸水溶液の量Z(ml)から、化学修飾により導入された置換基のモル数Qは、下記式で求められる。
Q(mol)=0.05(N)×10(ml)/1000
−0.02(N)×Z(ml)/1000
この置換基のモル数Qと、化学修飾率X(mol%)との関係は、以下の式で算出される(セルロース=(C6O5H10)n=(162.14)n,繰り返し単位1個当たりの水酸基数=3,OHの分子量=17)。なお、以下において、Tは置換基の分子量である。
セルロース不織布の面積、厚み、重量から、下記式によって求めた。
空隙率(vol%)={(1−B/(M×A×t)}×100
ここで、Aは不織布の面積(cm2)、t(cm)は厚み、Bは不織布の重量(g)、Mはセルロースの密度であり、本発明ではM=1.5g/cm3と仮定する。セルロース不織布の膜厚は、膜厚計(Mitutoyo(株)製 IP65)を用いて、不織布の種々な位置について10点の測定を行い、その平均値を採用した。
目視にて観察した。
JIS規格K7136に準拠し、スガ試験機製ヘーズメータを用いてC光によるヘーズ値を測定した。
JIS規格K7105に準拠し、スガ試験機製ヘーズメータを用いてC光による全光線透過率を測定した。
得られた複合体を150℃で1時間加熱した後、JIS規格K7105に準拠し、スガ試験機製カラーコンピュータを用いて黄色度を測定した。
得られた複合体をレーザーカッターにより、3mm幅×40mm長に切断した。これを、SII製TMA120を用いて引っ張りモードでチャック間20mm、荷重10g、窒素雰囲気下、室温から180℃まで5℃/min.で昇温、180℃から25℃まで5℃/min.で降温、25℃から180℃まで5℃/min.で昇温した際の2度目の昇温時の60℃から100℃の測定値から線膨張係数を求めた。
JIS規格7209(D法)に準拠し、得られた複合体を50℃で24時間静置後、重量(W0)を測定し、その後23℃、湿度50%の雰囲気下に重量が一定になるまで静置後、重量(W1)を測定した。下記式により吸水率を算出した。
吸湿率(%)=(W1−W0)/W0 ×100
米松木粉((株)宮下木材)を炭酸ナトリウム2重量%水溶液で80℃にて6時間脱脂した。これを脱塩水で洗浄した後、0.66重量%の亜塩素酸ナトリウム、0.14重量%の酢酸水溶液に80℃にて5時間浸漬してリグニン除去を行った。脱塩水洗浄した後、濾過し、回収した精製セルロースを脱塩水で洗浄後、5重量%の水酸化カリウム水溶液に16時間浸漬してヘミセルロース除去を行った。更に、脱塩水洗浄した後に、0.5重量%の水懸濁液とし、超高圧ホモジナイザー(アルティマイザー;スギノマシーン社製)処理を行った。処理時の圧力は245MPaで、10回行った。
製造例1で得られたセルロース分散液を0.2重量%に水で希釈し、孔径1μmのPTFEを用いた90mm径の濾過器に100g投入し、固形分が約5重量%になったところで2−プロパノールを投入して水と置換した。その後、120℃、0.15MPaにて5分間プレス乾燥して、セルロース不織布を得た。
得られたセルロース不織布を100mlの無水酢酸に含浸して100℃にて7時間加熱した。その後、蒸留水でよく洗浄し、最後に2−プロパノールに10分浸した後、120℃、0.15MPaにて5分間プレス乾燥して、厚み62μmのアセチル化セルロース不織布を得た。この不織布の化学修飾率は33mol%であった。また空隙率は56vol%であった。
また、SEM観察により繊維径500nm以上のものが含まれていないことを確認した。任意に抽出した20箇所の平均繊維径は14nmであった。また、繊維長は100nm以上であることを確認した。得られたアセチル化セルロース不織布の黄色度は11.4であった。
食材として利用されているバクテリアセルロースゲルのナタデココ(フジッコ社製、厚さ1cm、繊維含有率1体積%、水含有率99体積%)を用いた。この含水バクテリアセルロースを2−プロパノールに浸漬後、120℃、0.14MPaで5分間プレス乾燥することにより、厚さ50μm、空隙率42vol%のバクテリアセルロースシートを得た。
オキセタン樹脂OXT−211(東亜合成(株)社製)50重量部、OXT−221(東亜合成(株)社製)40重量部、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂YX8000(JER社製)10重量部と光カチオン重合開始剤SP170((株)アデカ社製)5重量部を60℃でよく撹拌して硬化性組成物を作った。この混合液に製造例2で得られたアセチル化セルロース不織布を浸漬した。
2枚のガラス板に0.1mm厚みのシリコーンゴム製スペーサーを介して、上記組成物含浸不織布をはさみ、無電極水銀ランプ(フュージョンUVシステムズ社製「Dバルブ」)の下を、照度400mW/cm2にて、ライン速度2m/minで通過させた。紫外線の光量は0.43J/cm2であった。被照射ガラス面を反転し、この操作を二度繰り返した。次いで、照度1900mW/cm2にて、ライン速度2m/minで先と同様にガラス面を照射毎に反転して6回照射した。紫外線照射後のガラス面の温度は44℃であった。全紫外線量は17.5J/cm2であった。紫外線照射終了後、ガラス板よりはずした。次いで、190℃の真空オーブン中で1時間加熱して厚み100μmのセルロース繊維複合体を得た。
このセルロース繊維複合体のマトリクス含有量は表1に示す通りであった。
なお、紫外線の照度は、オーク製作所製紫外線照度計「UV−M02」で、アタッチメント「UV−35」を用いて、320〜390nmの紫外線の照度を23℃で測定した。
このセルロース繊維複合体の評価結果を表1に示す。
線膨張係数は、12ppm/Kと非常に低い値であった。また、全光線透過率は90%であり、十分な透明性が得られた。また、皺がなく、表面性状も良好なシートであった。
硬化性組成物として、オキセタン樹脂OXT−211(東亜合成(株)社製)20重量部、ビスフェノール型エポキシ樹脂828EL(JER社製)80重量部と硬化剤SP170((株)アデカ社製)5重量部を60℃でよく撹拌して調製した硬化性組成物を用いた他は、実施例1と同様にして厚み100μmのセルロース繊維複合体を作製し、その評価結果を表1に示した。表1に示されるように、良好な結果が得られた。なお、このセルロース繊維複合体のマトリクス含有量は表1に示す通りであった。
硬化性組成物として、オキセタン樹脂OXT−221(東亜合成(株)社製)50重量部、オキセタン樹脂ETERNACOLL OXBP(宇部興産(株)社製)40重量部、ビスフェノール型エポキシ樹脂828EL(JER社製)10重量部と硬化剤SP170((株)アデカ社製)5重量部を60℃でよく撹拌して調製した硬化性組成物を用いた他は、実施例1と同様にして厚み100μmのセルロース繊維複合体を作製し、その評価結果を表1に示した。表1に示されるように、良好な結果が得られた。なお、このセルロース繊維複合体のマトリクス含有量は表1に示す通りであった。
硬化性組成物として、オキセタン樹脂OXT−211(東亜合成(株)社製)50重量部、OXT−221(東亜合成(株)社製)40重量部、エポキシ樹脂KL−613((株)クラレ社製)10重量部と硬化剤SP170((株)アデカ社製)1重量部を60℃でよく撹拌して調製した硬化性組成物を用いた他は、実施例1と同様にして厚み100μmのセルロース繊維複合体を作製し、その評価結果を表1に示した。表1に示されるように、良好な結果が得られた。なお、このセルロース繊維複合体のマトリクス含有量は表1に示す通りであった。
硬化性組成物として、オキセタン樹脂OXT−211(東亜合成(株)社製)30重量部、オキセタン樹脂ETERNACOLL OXMA(宇部興産(株)社製)30重量部、ビス(メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン20重量部、4HBAGE(日本化成(株)社製)20重量部と硬化剤SP170((株)アデカ社製)1重量部、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製ルシリンTPO)0.1重量部を60℃でよく撹拌して調製した硬化性組成物を用いた他は、実施例1と同様にして厚み95μmのセルロース繊維複合体を作製し、その評価結果を表1に示した。表1に示されるように、良好な結果が得られた。なお、このセルロース繊維複合体のマトリクス含有量は表1に示す通りであった。
製造例3で得られたバクテリアセルロース不織布を、ビス(メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン96重量部、ペンタエリスリトールテトラキスチオ(β−プロピオネート)6重量部、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製ルシリンTPO)0.05重量部、ベンゾフェノン0.05重量部を混合した溶液に含浸させ、減圧下一晩静置した。これを0.1mm厚みのシリコーンゴム製スペーサーを介して2枚のガラス板にはさみ、無電極水銀ランプ(フュージョンUVシステムズ社製「Dバルブ」)を用いて、照度400mW/cm2にて、ライン速度7m/minで通過させた。紫外線の光量は0.12J/cm2であった。被照射ガラス面を反転し、この操作を二度繰り返した後、紫外線照射後のガラス面の温度を測ったところ、25℃であった。次いで、照度1900mW/cm2にて、ライン速度2m/minで先と同様にガラス面を照射毎に反転して8回照射した。紫外線照射後のガラス面の温度は44℃であった。全紫外線量は24J/cm2であった。紫外線照射終了後、ガラス板よりはずした。次いで、190℃の真空オーブン中で1時間加熱して厚み97μmのセルロース繊維複合体を得た。このセルロース繊維複合体のマトリクス含有量は表1に示す通りであった。
このセルロース繊維複合体の評価結果を表1に示す。線膨張係数は25ppm/Kと比較的小さく、全光線透過率も85%と比較的高い値を示したが、アクリレートモノマーの硬化収縮による皺が発生して、表面にうねりが生じた。
実施例1と同様にして調製した硬化性組成物を、セルロース不織布に含浸せずに単独で、実施例1と同様の条件で光硬化して厚み100μmの樹脂硬化物を得た。この樹脂硬化物の評価結果を表1に示す。線膨張係数が150ppm/Kと非常に高い結果となった。
ビス(メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン96重量部、ペンタエリスリトールテトラキスチオ(β−プロピオネート)6重量部、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製ルシリンTPO)0.05重量部、ベンゾフェノン0.05重量部を混合して硬化性組成物を調製した。これを2枚のガラス板にはさみ、無電極水銀ランプ(フュージョンUVシステムズ社製「Dバルブ」)を用いて、照射光量400mW/cm2の下を、ライン速度7m/minで0.12J/cm2の紫外線を2回照射した。紫外線照射後のガラス面の温度は25℃であった。また、照射毎に被照射ガラス面を反転し、両側から紫外線が照射するように行った。次いで、照射光線量1900mW/cm2の下を、2.7J/cm2の紫外線をライン速度2m/minで先と同様にガラス面を照射毎に反転して8回照射した。紫外線照射後のガラス面の温度は44℃であった。紫外線照射終了後、ガラス板よりはずし、次いで、190℃の真空オーブン中で1時間加熱して厚み97μmの樹脂硬化物を得た。この樹脂硬化物の評価結果を表1に示す。線膨張係数は70ppm/Kと高い値を示す結果となった。
ビスフェノール型エポキシ樹脂828EL(JER社製)100重量部と熱硬化剤CP77((株)アデカ社製)5重量部をよく撹拌して硬化性組成物を調製した。この硬化性組成物に製造例2で得られたアセチル化セルロース不織布を浸漬した。2枚のガラス板に0.1mm厚みのシリコーンゴム製スペーサーを介して、この硬化性組成物含浸不織布をはさみ、熱風オーブン中で100℃にて1時間加熱した。その後、150℃で4時間加熱して厚み100μmのセルロース繊維複合体を作製した。このセルロース繊維複合体のマトリクス含有量は表1に示す通りであった。得られたセルロース繊維複合体の評価結果を表1に示す。このものは、硬化時に加熱によって伸びた後、冷却により収縮したために、皺が入った。
Claims (8)
- 平均繊維径が4〜400nmの化学修飾されたセルロース繊維と、マトリクス材料としてのオキセタン樹脂及びエポキシ樹脂並びに光カチオン重合開始剤の残渣とを同一層内に含むセルロース繊維複合体。
- オキセタン樹脂とエポキシ樹脂との合計100重量部中のオキセタン樹脂の割合が10〜90重量部である請求項1に記載のセルロース繊維複合体。
- マトリクス材料とセルロース繊維との含有割合が重量比で7:3〜3:7である請求項1又は2に記載のセルロース繊維複合体。
- 厚さが10μm以上、10cm以下である請求項1ないし3のいずれかに記載のセルロース繊維複合体。
- 全光線透過率が60%以上で、線膨張係数が50ppm/K以下である請求項1ないし4のいずれかに記載のセルロース繊維複合体。
- セルロース繊維の含有量が1重量%以上、マトリクス材料の含有量が99重量%以下である請求項1ないし5のいずれかに記載のセルロース繊維複合体。
- 請求項1ないし6のいずれかに記載のセルロース繊維複合体を含む基板。
- 請求項1ないし6のいずれかに記載のセルロース繊維複合体を含む窓材。
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