JP2018168520A - 高圧水流を用いた解繊法によるパルプのナノ微細化を容易にするパルプ製造法 - Google Patents

高圧水流を用いた解繊法によるパルプのナノ微細化を容易にするパルプ製造法 Download PDF

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Abstract

【課題】高圧水流を用いた解繊法によるパルプのナノ微細化において、原料となるパルプのカッパー価の値が高い方がナノ微細化され易いことが明らかにされているが、カッパー価が高いパルプが得られる蒸解条件でパルプを製造すると未蒸解のノット粕が大量に発生するため、実際に操業することは困難である。本発明では実操業可能で高圧水流を用いた解繊法によるパルプのナノ微細化を容易にするパルプ製造法を提供する。【解決手段】本発明は、パルプの高圧水流を用いた解繊法によるナノ微細化を容易にするような高カッパー価パルプの製造において、ノット率が8%以下になるような蒸解条件をHファクターとの関係性から導き出した。導き出された蒸解条件により得られたパルプは高圧水流を用いた解繊法によるナノ微細化において容易にナノ微細化されることが確認された。【選択図】図23

Description

本発明は、高圧水流を用いたパルプの解繊法において、ナノ微細化をより容易に可能にする原材料パルプの製造法に関する。
繊維状多糖の一種であるセルロースは、植物、例えば、広葉樹や針葉樹などの木本植物、および竹や葦などの草本植物、ホヤに代表される一部の動物、および酢酸菌に代表される一部の菌類などによって産生されることが知られている。このセルロースが繊維状に集合した構造を有するものをセルロースファイバーと呼び、特に繊維幅が100nm以下でアスペクト比が100以上のものを、一般的にセルロースナノファイバー(ナノセルロース)と呼ばれている。ナノセルロースは、軽量、高強度、低熱膨張率等の優れた性質を有し、その利用に向けた取り組みが盛んに行われている。
ナノセルロースの製造法にはさまざまな手法が提案されているが、酸加水分解法やTEMPO触媒酸化法といった化学的手法と、グラインダー法や高圧ホモジナイザー法、水中対向衝突法(ACC法)といった物理的手法の2種類に大別される。いずれの手法においても、今後、ナノセルロースが市場に普及するためには、製造効率を上げ、製造コスト削減による販売価格低減が必要である。
ナノセルロースの製造コストを下げるためには、ナノ微細化法自体の製造効率を上げる方法と、ナノ微細化法に供する原料を見直す方法が挙げられる。
特許文献1は、セルロースナノ繊維を製造するための、拡張可能でエネルギー効率の良い方法を開示することを課題とし、(a)セルロース繊維の細胞壁及び繊維間結合を化学的に解重合するためのフリーラジカルの形成を促進する条件下で比較的高装入量のオゾン;又は(b)セルラーゼ酵素;の一つ又は両方による解重合処理を使用する。解重合はパルプ粘度の変化によって推定できる。解重合処理の後又は同時に処理繊維を機械的に粉砕する。その粉砕はいくつかの機械的粉砕装置のいずれかで実施され、エネルギー節約の量は粉砕系のタイプ及び処理条件によって異なる。粉砕は、繊維長、%ファイン又はスラリー粘度などのいくつかの終点測定のいずれかに至るまで実施されるセルロースナノ繊維の形成法を開示した。
特許文献2はASTM試験1975−96による測定にて200〜1000の重合度を有するセルロースパルプとリヨセルとのフィブリル化ブレンドであって、リヨセル繊維の少なくとも一部が3〜12mmの長さを有する上記フィブリル化ブレンを開示した。
現在ナノセルロースの製造には、一般的に広く流通しており、低コストでの製造法が確立されているクラフト蒸解法により製造された木材由来パルプ(木材パルプ)が原材料として利用されている。クラフト蒸解法は原料となる木材チップを白液と呼ばれるNaOHとNaSの混合液と共に高温(140〜180℃)、高圧で数時間処理して得られる。しかしこの製造法は、脱リグニンを促進することにより、本来の目的である紙をより効率よく製造するための製造法であり、決して、全てのナノ微細化法に適した原料とは言えない。
本発明者等はこれまでの研究の成果として、高圧水流を用いた解繊法の一つである水中カウンターコリジョン(ACC)法によるアルカリ蒸解竹未晒パルプのナノ微細化において、原料となるパルプの残存リグニン量の指標となるカッパー価の値が高い方が、ナノ微細化され易いことを見出している(非特許文献1)。
ACC法は、特許文献3にも開示されているように、水に懸濁した天然セルロース繊維をチャンバー(図1:107)内で相対する二つのノズル(図1:108a,108b)に導入し、これらのノズルから一点に向かって噴射、衝突させる手法である(図1)。この手法によれば、天然微結晶セルロース繊維(例えば、フナセル)の懸濁水を対向衝突させ、その表面をナノフィブリル化させて引き剥がし、キャリアーである水との親和性を向上させることによって、最終的には溶解に近い状態に至らせることが可能となる。図1に示される装置は液体循環型となっており、タンク(図1:109)、プランジャ(図1:110)、対向する二つのノズル(図1:108a,108b)、必要に応じて熱交換器(図1:111)を備え、水中に分散させた微粒子を二つのノズルに導入し高圧下で合い対するノズル(図1:108a,108b)から噴射して水中で対向衝突させる。この手法では天然セルロース繊維の他には水しか使用せず、繊維間の相互作用のみを解裂させることによってナノ微細化を行うため、セルロース分子の構造変化がなく解裂に伴う重合度低下を最小限にした状態でセルロースナノ繊維を得ることが可能となる。
前述のクラフト蒸解法は、紙の重要品質の一つである白色度(紙の白さを示す指標)を向上させるため、脱リグニン性が良い蒸解法となっている。そのため、未晒パルプにおいてもカッパー価が低く、高圧水流による解繊法におけるナノ微細化においては、ナノ化され易い原料とは言い難い。
一方、本発明者等がこれまでの研究で行ってきたアルカリ蒸解は、クラフト蒸解法が発明される以前に利用されていた蒸解法で、原料チップとNaOHの混合液を高温高圧で処理する蒸解法である。しかし、クラフト蒸解法が主流となった現在では、脱リグニン性がクラフト蒸解よりも悪いため、工業生産に利用されることは殆ど無い状況にある。
特表2015−521694号公報 特表2012−526923号公報 特開2005−270891
平成27年度 環境省セルロースナノファイバー活用製品の性能評価事業委託業務 研究成果報告書「多機能性・竹ナノセルロースの低エネルギー型生産プロセスの確立」
本発明者等は、高圧水流を用いたる解繊法の一つである水中カウンターコリジョン(ACC)法によるパルプのナノ微細化において、よりナノ微細化され易い条件として、カッパー価が高いパルプを原料に利用することを提案し、そのパルプの製造法として、蒸解が穏やかに進行するアルカリ蒸解法を採用し、比較的温和な条件(アルカリ添加率15%、140℃)を見出した。しかし、蒸解を温和な条件で行うがゆえ、蒸解が不十分なノット粕が大量に発生し、実際に工業生産するには設備的に難しいという問題が生じていた。
本発明は以上の従来技術における問題に鑑み、蒸解温度と蒸解時間を最適化することにより、実操業が可能で、高圧水流を用いた解繊法によるパルプのナノ微細化を容易にするアルカリ蒸解法における蒸解条件を提供することを目的とする。
本発明者等は、高圧水流を用いた解繊法の一つであるACC法による竹パルプのナノ微細化において、原料パルプのカッパー価の値が高い方がナノ微細化され易いことを明らかにしたが、この条件で竹チップを蒸解した場合、未蒸解のノット粕が大量に発生し、実際に操業するのには厳しい条件(理想的にはノット率5%以下)であることも同時に判明した。本発明者等は、この点をさらに検討し、実操業が可能なノット率5%以下を満たし、且つ高圧水流を用いた解繊法によるパルプのナノ微細化を容易にする竹のアルカリ蒸解法における蒸解条件を見出した。
また、本発明者等は、高圧水流を用いた解繊法によるパルプのナノ微細化が、原材料に竹を用いることで木材よりも容易に進行することを見出した。
高圧水流を用いた解繊法によるパルプのナノ微細化では、ナノセルロース間の結合(主に水素結合とファンデルワールス力)を開裂させる必要がある。ナノセルロースを構成しているセルロース分子は側鎖に水酸基を有しており、主にこの水酸基により形成される水素結合によってナノセルロース同士が強く結びついている。原料となるパルプはナノセルロースの集合体であるが、その基になる木材や竹等は、ナノセルロース以外に、リグニンやヘミセルロースといったセルロース以外の成分を多く含有している。一般的な紙を製造するために調製されたパルプは、本来、ナノセルロース間に存在していたセルロース以外の成分を可能な限り除去しているため、ナノセルロース間には多くの水素結合が形成されており、それによりナノ微細化を難しくしていると考えられる。
本発明によれば、残存リグニン量の指標となるカッパー価の値が高い状態でパルプ化することで、ナノ微細化の際にパルプ内に残存(点在)するリグニンがナノセルロース間の結合を開裂する際の応力集中点、すなわちWeak−pointになり、ナノ微細化を容易にすると考えられる。
カッパー価が高い状態でパルプ化するためには、穏和な条件で蒸解処理に供する必要があるが、穏和な条件ゆえ、蒸解が不十分なノット粕が大量に発生する。大量なノット粕の発生は、実際の製造設備で操業を行う際に支障を来たすため、ノット粕の発生量を操業可能なレベル(一般的に重量比で5%以下が理想)に押さえる必要がある。
本発明によれば、製紙用パルプ製造で一般的に用いられているクラフト蒸解法ではなく、より穏和に蒸解が進行するアルカリ蒸解法を用い、竹を原料とする場合、アルカリ添加率(AA)17−19%(好ましくは18−19%)、処理温度140−170℃(好ましくは155−160℃)、処理時間19−451分(好ましくは56−108分)の条件で処理することにより、ノット率が実操業可能な5%以下に抑えられ、かつカッパー価を最大にすることが可能になる。
すなわち本発明の高圧水流を用いた解繊法によるパルプのナノ微細化を容易にするパルプ製造法は、原料に竹を用い、パルプのカッパー価が40以上、好ましくは43以上、且つ蒸解後の残渣の指標となるノット率が8%以下、好ましくは5%以下になる条件でアルカリ蒸解法を用いることを特徴とする。
また、本発明の高圧水流を用いた解繊法によるパルプのナノ微細化を容易にするパルプ製造法は、アルカリ添加率16%以上においてHファクターが350以上、好ましくは400以上となる蒸解条件において最適化される。尚、ここでいうところのHファクターは、蒸解時に反応系に与えられた熱の送料を示す目安であり、リグノセルロース材料と蒸解液が混ざった時点から蒸解終了時までを積分することで得られる値のことを示し、次式により算出される。
Hファクター=∫exp(43.2−16113/T) dt(T:絶対温度、t:時間)
さらには、本発明の高圧水流を用いた解繊法によるパルプのナノ微細化を容易にするパルプ製造法はアルカリ蒸解法においてより最適な効果が得られるが、クラフト蒸解法においても、蒸解後のパルプのカッパー価を18以上、好ましくは21以上になるような蒸解条件を用いてパルプの製造を行うことで、高圧水流を用いた解繊法によるパルプのナノ微細化を容易にすることが可能になる。
尚、クラフト蒸解による高圧水流を用いた解繊法によるパルプのナノ微細化を容易にするパルプ製造法においては、アルカリ添加率16%以上においてHファクターが220以上、好ましくは250以上となる蒸解条件において最適化される。
本発明の高圧水流を用いた解繊法によるパルプのナノ微細化を容易にするパルプ製造法は、アルカリ蒸解法、およびクラフト蒸解法のいずれを用いた場合においても、Hファクターからの逆算により算出される蒸解温度140℃以上の蒸解条件を満たすことで、より最適化される。
蒸解後のノット率は、一般的な製造現場で操業可能な条件として8%以下、好ましくは5%以下が望ましいが、製造装置の改良や処理量の増減により変動するため、この限りではない。実操業可能なノット率であれば本発明の高圧水流を用いた解繊法によるパルプのナノ微細化を容易にするパルプ製造法は適用できる。
本発明の高圧水流を用いた解繊法によるパルプのナノ微細化を容易にするパルプ製造法は、原料に竹を用いることでより最適なパルプ製造が可能になるが、原料は竹に限定されない。原料としては、竹のほか、構成成分中にリグニンを含有する天然素材、例えば木材、草類などに適用できる。
本発明で製造されたパルプの高圧水流を用いた解繊は、0.5〜10%(w/w)の水混合液にしたパルプに対し、50〜400MPa程度の高圧水を用いて行うことができる。これは例えば図2に示すナノセルロースの製造装置1を用いて行うことができる。ナノセルロースの製造装置1は、一のチャンバー2に対してパルプスラリを供給可能に配置される第1の液状媒体供給経路であるところのパルプスラリ供給経路3と、例えば水である非パルプスラリを一のチャンバー2を介して循環させる第2の液状媒体供給経路4よりなる。一のチャンバー2内には第2の液状媒体供給経路4の非パルプスラリをパルプスラリ供給経路3からのパルプスラリ供給方向と交差する方向にオリフィス噴射するオリフィス噴射部5を備える。パルプスラリ供給経路3は、パルプスラリを一のチャンバー2を介して循環可能にされる。
パルプスラリ供給経路3と第2の液状媒体供給経路4とは一のチャンバー2内に相互の交差部6を有する。
パルプスラリ供給経路3はパルプスラリ供給部でありパルプスラリを貯留するタンク7、ポンプ8を循環路9に配置してなり、一方、第2の液状媒体供給経路4はタンク10、ポンプ11、熱交換器12、プランジャ13を循環路である液状媒体供給経路4に配置してなる。
なお非パルプスラリは、例えば水であり、当初タンク10に収納され、その後ナノセルロースの製造装置1の作動に伴い交差部6を通過してタンク10に収納されたナノ微細化されたパルプを操業の度合いに応じた濃度で含むことになった状態のものをも、包括的に指称する。
図3に示すようにチャンバー2を貫通する態様でパルプスラリ供給経路3の循環路9が配置され、これと交差する方向に非パルプスラリをオリフィス噴射して循環路9を貫通させることができるように第2の液状媒体供給経路4のプランジャ13に接続されるオリフィス噴射部5のオリフィス噴射口14がチャンバー2内側において開口する。チャンバー2のオリフィス噴射口14と対向する位置にチャンバー2の排出口15が設けられ、このチャンバー2の排出口15に第2の液状媒体供給経路4の循環路が接続されて、第2の液状媒体供給経路4が構成される。
一方、パルプスラリ供給経路3の循環路9は例えばビニルホース、ゴムホース等を用いて形成され、その循環路9のチャンバー2への入り側にはチャンバー2方向にのみ開弁される一方向弁16が取りつけられる。さらに循環路9のチャンバー2からの出側にはチャンバー2からの排出方向にのみ開弁される一方向弁17が取りつけられる。加えてチャンバー2と一方向弁17の間の循環路9にはエア吸入弁18が取りつけられ、このエア吸入弁18は外部から循環路9へエアを吸入する方向にのみ開弁される。
以上のナノセルロースの製造装置によれば以下のようにしてナノセルロースが製造される。
非パルプスラリをチャンバー2を介して第2の液状媒体供給経路4を循環させる。具体的にはポンプ11を用いてタンク10内の非アルカリ蒸解未晒竹パルプスラリを熱交換器12、プランジャ13を通過させて液状媒体供給経路4内を循環させる。一方、パルプスラリをチャンバー2を介してパルプスラリ供給経路3内を循環させる。具体的にはポンプ8を用いてタンク7内のパルプスラリをビニルホース、ゴムホース等を用いて形成された循環路9内を循環させる。
これにより、パルプスラリ供給経路3内を循環してチャンバー2内を流通するパルプスラリに対して第2の液状媒体供給経路4を循環する非パルプスラリがオリフィス噴射される。具体的にはプランジャ13に接続されるオリフィス噴射口14にプランジャ13から高圧水が供給され、これがオリフィス噴射口14から循環路9に向けて50〜400MPa程度の高圧でオリフィス噴射される。
その結果、例えばビニルホース、ゴムホース等を用いて形成された循環路9に予め形成された貫通孔26a、bを通過して、循環路9と交差する方向に循環路9内側を通過した非パルプスラリが循環路9内を循環するパルプスラリを巻き込みながらチャンバー2の排出口15に向けて排出され、第2の液状媒体供給経路4に流入する。これによって、非パルプスラリが第2の液状媒体供給経路4内を再度循環する。
以上のプロセスを反復する過程でパルプスラリ供給経路3内を循環してチャンバー2内を流通するパルプスラリ及び第2の液状媒体供給経路4を循環する非パルプスラリ中のパルプが徐々に解繊されて、用途に応じた解繊度合いの均一性の高いナノセルロースが得られる。
その他にパルプを高圧水流にて解繊してナノセルロースとする手法としては破砕型ホモバルブシートを備えたホモジナイザーでパルプを溶媒に分散させた分散液を処理するホモジナイズ処理法がある。図4に示されるようにこのホモジナイズ処理法によれば高圧でホモジナイザー内を圧送されるパルプ101が、狭い間隙である小径オリフィス102を通過する際に、小径オリフィス102の壁面(特にインパクトリング103の壁面)と衝突することにより、剪断応力又は切断作用を受けて分割され、均一な繊維径を有するナノ微細化が行われる。
さらにパルプを高圧水流にて解繊してナノセルロースとする手法としては前述の水中対向衝突法などがあるが、本発明で示す高圧水流を用いた解繊法はこの限りではない。
本発明によれば、原料に竹を用い、パルプのカッパー価が40以上、好ましくは43以上、且つ蒸解後の残渣の指標となるノット率が8%以下、好ましくは5%以下になる条件でアルカリ蒸解法を用いることにより、高圧水流を用いた解繊法によるパルプのナノ微細化を容易にする原料パルプを得ることができる。
水中対向衝突法(ACC法)によるナノセルロース製造装置の概念図である。 本発明の高圧水流を用いた解繊法によるパルプのナノ微細化を容易にするパルプ製造法によって得られたパルプを用いるナノセルロース製造装置の一例の概念図である。 図2に示すナノセルロース製造装置の一部を拡大して示す概念図である。 本発明の高圧水流を用いた解繊法によるパルプのナノ微細化を容易にするパルプ製造法によって得られたパルプを用いるナノセルロース製造装置のさらに他の例の概念図である。 異なるカッパー価のパルプをACC法によりナノ微細化して得られたナノセルロースの繊維幅と原料パルプのカッパー価の関係を示すグラフである。 各アルカリ添加率におけるHファクターとノット率(補正値使用)の関係(蒸解条件:アルカリ蒸解、竹)を示すグラフである。 各アルカリ添加率におけるHファクターとカッパー価の関係(蒸解条件:アルカリ蒸解、竹)を示すグラフである。 各蒸解温度におけるアルカリ添加率とカッパー価の関係(蒸解条件:アルカリ蒸解、竹)を示すグラフである。 竹のアルカリ蒸解によって生じるノット粕を示し、(a)針状のノット粕と(b)粒子状のノット粕を示す。 本発明の過程で想定された竹のアルカリ蒸解の進行プロセスを示す説明図 アルカリ添加率17,18,19%におけるHファクターとノット率の関係(蒸解条件:クラフト蒸解、竹)を示すグラフである。 アルカリ添加率17,18,19%におけるHファクターとカッパー価の関係(蒸解条件:クラフト蒸解、竹)を示すグラフである。 アルカリ添加率17,18,19%それぞれにおけるHファクターとカッパー価の関係(蒸解条件:クラフト蒸解、竹)を示すグラフである ノット率が5%になるときのアルカリ蒸解とクラフト蒸解の比較を示すグラフである。 微分干渉観察による画像処理例 微分干渉観察画像(5パス処理試料) 二値化後の画像(5パス処理試料) 微分干渉観察画像(30パス処理試料) 二値化後の画像(30パス処理試料) 各サンプルの残存ファイバー量の比較を示すグラフである。 各サンプルの残存ファイバー量の比較(図20を並び替えたグラフ)を示すグラフである。 5パス処理試料のTEM画像 5パス試料のTEM画像(図22四角部の拡大像)。矢印は幅4〜5nmのシングルナノファイバーを示す。
以下に本発明の高圧水流を用いた解繊法によるパルプのナノ微細化を容易にするパルプ製造法と、それにより得られたパルプを高圧水流を用いた解繊法の一つであるACC法によりナノ微細化した際のナノ化挙動の特徴について詳細に説明する。
蒸解時間を120分に固定し、アルカリ添加率(AA)15%、17%、蒸解温度140℃、150℃、160℃の条件で竹チップを原料としたアルカリ蒸解を実施し、蒸解後に得られたパルプのカッパー価と蒸解残渣(ノット)の量、およびそれらを高圧水流を用いた解繊法の一つであるACC法により処理回数5パスと30パスに供した際に得られたナノセルロースの繊維幅を測定した結果を表1に示した。
図5に、表1の結果を基にグラフ化した、ナノ微細化に供したパルプのカッパー価と各処理回数のナノ微細化処理を施して得られたナノセルロースの繊維幅の関係を示した。ACC法による処理回数が30パスでは、繊維幅はカッパー価の上昇に伴い直線的に減少した。一方、5パスでは、カッパー価の高い領域では大きな変化は無いが、低い領域になると急激に増加した。
高圧水流を用いた解繊法による通常の製紙用パルプのナノ微細化では、ナノセルロース間の結合(主に水素結合とファンデルワールス力)を開裂させる必要がある。残存リグニン量の指標となるカッパー価の値が高いパルプのナノ微細化では、パルプ内に残存(点在)したリグニンがナノセルロース間の結合を開裂する際の応力集中点、すなわちWeak−pointになるものと考えられる。しかし、カッパー価の値が小さく残存リグニン量が少ない状態では、ナノ微細化の際のこのWeak−pointが少なく、結果としてナノ微細化し難く、得られたナノセルロースの繊維幅が高かったと考えられる。特にナノ微細化の初期段階(低パス領域)ではその影響は強く表れ、図5の5パス処理時のように、カッパー価が繊維幅に強く影響を与えたと考えられる。
すなわち、高圧水流を用いた解繊法によるパルプのナノ微細化では、原料となるパルプのカッパー価の値が高い方、つまり残存するリグニン量が多い方が、より容易にナノ微細化することが示された。
しかし、カッパー価が高い蒸解条件だとノット率が高く、実際に操業するのには厳しい条件(理想的にはノット率5%以下)であった。
そこで、ノット率が5%以下になり、カッパー価が最大になる条件を模索するため、蒸解時間を120分に固定し、アルカリ添加率(AA)17%、18%、19%、蒸解温度140℃、150℃、160℃の条件で竹チップを原料としたアルカリ蒸解を実施し、蒸解後に得られたパルプのカッパー価と蒸解残渣(ノット)の量を比較した。表2に結果の一覧を示す。ここで、異なる蒸解条件を一元化するため、蒸解温度と蒸解時間から算出される「Hファクター」を各条件において算出し、Hファクターに対するカッパー価、Hファクターに対するノット率を各AAにおいてグラフ化した。図6、図7にその結果を示す。
ここでいうところのHファクターとは、蒸解時に反応系に与えられた熱の総量を表す目安であり、リグノセルロース材料と蒸解液が混ざった時点から蒸解終了時までを積分することで次式により得られる。
Hファクター=∫exp(43.2−16113/T)dt (T:絶対温度、t:時間)
図6より、ノット率はHファクターの上昇に伴い減少し、さらには同じHファクターでもAAが上昇するに連れ発生するノット率は低下することが明らかになった。この結果から、実操業可能なノット率5%を満たすためには、AA=17%では、Hファクターが758以上、AA=18%ではHファクターが507以上、AA=19%ではHファクターが437以上必要であることが示唆された。
また、図7より、カッパー価はHファクターの上昇に伴い減少し、さらには同じHファクターでもAAが上昇するに連れカッパー価は低下することが明らかになった。この結果から、実操業可能なノット率5%を満たし、カッパー価が最大になる各AAにおけるHファクターとカッパー価の値は、AA=17%ではHファクターが758でカッパー価が36、AA=18%ではHファクターが507でカッパー価が43、AA=19%ではHファクターが437でカッパー価が43であることが示唆された。
図8に、各蒸解温度で蒸解した際に得られたパルプのアルカリ添加率とカッパー価の関係を、表1と表2の結果からプロットした。蒸解温度140℃では、AA=17〜18%以上でカッパー価の低下が頭打ちとなったが、AA=17%以下ではAA=1%あたり1.5ポイントの割合で低下していた。一方、蒸解温度160℃では2.4〜2.6ポイントの割合で低下しており、同じアルカリ添加率の変化でも蒸解温度が高い方がカッパー価の低下が激しいことを示した。
蒸解において添加されたアルカリは、チップ内のリグニンを溶出させる働きをする。チップ内のリグニンは、植物細胞壁の階層構造のさまざまな部位に存在するが、穏和な条件では、パルプ内(二次壁)のリグニン溶出よりもパルプ間(細胞間層)のリグニン溶出が優先されると考えられる。140℃、および150℃のAA=17%−18%間のカッパー価低下量はAA=1%あたり1.4〜1.5ポイントだが、150℃のAA=18%−19%間では1.8ポイントに上昇し、160℃では2.4〜2.6ポイントとさらに上昇している。つまり、150℃のAA=18%以下の条件では、添加されたアルカリは主にパルプ間のリグニン溶出に働き、150℃のAA=18%以上の条件では、パルプ間に加え、パルプ内からのリグニン溶出が大きいと考えられる。
図9は竹のアルカリ蒸解で発生したノット粕の写真である。ノット粕は大別して2種類の形態が観察された。一つは図9(a)のような針状のノット粕で、これは木材のクラフト蒸解でも頻繁に見られる通常のノット粕である。もう一つは、木材では見られない、図9(b)のような粒子状のノット粕である。このノット粕(b)は、アルカリ蒸解だけでなく、クラフト蒸解でも見られることから、竹特有のノット粕と思われる。
160℃で蒸解された試料のノット率は、AA=17%、18%、19%でそれぞれ、5.0%、3.3%、2.4%であった。この時発生したノット粕を見ると、他の蒸解温度で見られるような針状のノット粕(図9(a))は殆ど無く、粒子状のノット粕(図9(b))ばかりであった。
他の条件で蒸解した場合においても、図9(a)のノット粕はノット率の低下に伴い減少する傾向を示したが、図9(b)のノット粕はノット率に関係なく、試験したどの条件においてもほぼ同程度残存していた(目視による観察。正確な計量は行っていない)。また、前述のように、160℃で蒸解されたノット粕には図9(a)のノット粕は殆ど無く、図9(b)のノット粕だけが存在していた。このことから、図9(b)のノット粕は、非常に蒸解され難いが、チップからは容易に離脱されることが示唆された。
以上のことから、竹のアルカリ蒸解プロセスとして、図10のような進行過程が考えられる。まず、蒸解の初期段階では、パルプ間のリグニン(細胞間層リグニン)が優先的に溶出し、パルプ内のリグニン(二次壁リグニン)溶出は少ない状態で進行する。細胞間層リグニンが少なくなってくると(蒸解中期)、二次壁リグニンの溶出が増えてくる。そして、細胞間層リグニンがほぼ無くなり、針状のノット粕(図9(a))が無くなると、二次壁リグニンの溶出だけが進行し、カッパー価が低下する。粒子状のノット粕(図9(b))は、蒸解初期から発生し、殆ど蒸解されずに蒸解終了時まで残存すると考えられる。つまり、非常に蒸解され難い粒子状のノット粕(図9(b))が残存するため、蒸解条件を強くしてもノット率はなかなかゼロにはならず、二次壁リグニンの溶出ばかりが進行することが考えられる。
すなわち、ノット率を低減するためにHファクターを高くしても、ノット率の低下よりもカッパー価の低下の方が優先的に起こることが、上記のアルカリ蒸解プロセスの考察からいえる。
高圧水流を用いた解繊法によるパルプのナノ微細化では、残存リグニンの指標となるカッパー価の値が高い方が、より容易にナノ微細化が進行すると考えられるため、ノット率が5%以下になる条件検討で得られた「AA=17%、Hファクター758、カッパー価36」という条件よりも、AA=18%および19%の条件の方が、ナノ微細化を容易にするためには、より好ましいといえる。
比較例1
本発明は、蒸解後のカッパー価を高くすることを目的に、現在主流ではないアルカリ蒸解法を用いて検討を行った。以下に、現在一般的なパルプ製造に用いられているクラフト蒸解法で同様の比較検討を行った結果について説明する。
アルカリ蒸解の検討で使用したものと同じ竹チップを原料に、アルカリ添加率(AA)と蒸解温度、蒸解時間を変えてクラフト蒸解法によりパルプ化を実施し、得られたパルプのカッパー価、ノット率、Hファクターの関連性を導き出した。図11、図12にその結果を示す。
図11より、ノット率はHファクターの上昇に伴い減少し、さらには同じHファクターでもAAが上昇するに連れ発生するノット率は低下することが明らかになった。この結果から、実操業可能なノット率5%を満たすためには、AA=17%では、Hファクターが835以上、AA=18%ではHファクターが399以上、AA=19%ではHファクターが320以上必要であることが示唆された。
図12にはHファクターとカッパー価の関係性を示したが、グラフから得られた近似式では、実測値の値と近似曲線のズレが大きいため、図13に示したように近似曲線を引き直し、そこから得られた関係式より、実操業可能なノット率5%を満たし、カッパー価が最大になる各AAにおけるHファクターとカッパー価の値を導いた。その結果、AA=17%ではHファクターが835でカッパー価が18.1、AA=18%ではHファクターが399でカッパー価が21.1、AA=19%ではHファクターが320でカッパー価が21.0であることが示唆された。
上記の検討より得られた結果を、アルカリ蒸解試験の結果と比較した(図14)。ノット率が5%になるときのHファクターは、低アルカリ添加率においてはアルカリ蒸解の方が低いが、AA=17〜18%で逆転し、AA=18%以上ではクラフト蒸解の方が低くなった。ノット率が5%になるときのカッパー価はいずれのアルカリ添加率においてもクラフト蒸解の方が低く、クラフト蒸解の方がアルカリ蒸解よりもリグニン除去が促進されることが明らかになった。
すなわち、高圧水流を用いた解繊法によるパルプのナノ微細化では、蒸解後のパルプに残存するリグニン量の指標となるカッパー価が高い方が容易にナノ微細化され易いという結果と合わせると、蒸解後のパルプのカッパー価をアルカリ蒸解法よりも高く維持することが不可能なクラフト蒸解法で得られたパルプは不向きであることが示唆された。
以下に、本発明を実施例によってさらに詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によっては限定されない。
上記の検討により得られた高圧水流を用いた解繊法によるパルプのナノ微細化を容易にするパルプの蒸解条件は、蒸解温度と蒸解時間を限定しないHファクターによる検討を行った。そこで、このHファクターから逆算して蒸解温度と蒸解時間を決定したアルカリ蒸解法における蒸解条件の一覧を表3に、クラフト蒸解法における蒸解条件の一覧を表4に示す。
Hファクターより逆算して得られた表3、表4に示す蒸解温度と蒸解時間のうち、一般的な実操業を加味すると、蒸解時間が長過ぎたり短過ぎたりする条件は現実的ではない。また、高圧水流を用いた解繊法によるパルプのナノ微細化では、蒸解後のパルプに残存するリグニン量の指標となるカッパー価が高い方が容易にナノ微細化され易いという結果から、表3、表4に示す条件の中から、5条件を選定し、この5条件で各蒸解法によるラボ蒸解を実施した。ただし、クラフト蒸解については、アルカリ蒸解に比べてカッパー価が低く、ナノ化され難いことが想定されたため、表4のAA=19%の条件とほぼ同じ条件で比較例1の検討の際に試験したパルプを代表として用いた。
この5条件と、その条件で蒸解して得られた試験結果を表5に示す。
表5に示すラボ蒸解の結果は、検討により推定された「ノット率5%以下」でカッパー価が最大になる条件をほぼ満たしていたことから、上記の検討結果の妥当性を示した。
実施例1で得られた表5に示すパルプを、処理濃度0.05%(w/w)、噴出圧力200MPa、処理回数5パスおよび30パスの条件で、高圧水流を用いた解繊法の一つであるACC処理にそれぞれ供し、各ナノセルロース分散水を得た。
なお、ACC処理に供したパルプは、ノット率5%以下を満たす上限に近いパルプのため、ノットスクリーンを通過した微細なノット粕が多く残存していた。ACC機のチャンバーノズル径はφ160μmと細いため、このノット粕が直ぐに目詰まりを起こし処理が出来なかった。そこで、大きめなノット粕をACCに供する前のパルプ懸濁水からピンセットを用いて手作業で除去したのちACC処理に供した。
得られた各ナノセルロース分散水中のナノセルロースおよび解繊が不十分なマイクロサイズのファイバーを評価することにより、各条件で得られたパルプの高圧水流を用いた解繊法によるナノ微細化の「され易さ」を比較検討した。
評価する試料はACC処理回数が5passと少なく、未解繊のマイクロファイバーが多く存在するうえ、微細化されたナノファイバーの繊維幅分布もブロードな「不均一な状態」である。そのため、通常のTEM観察による繊維幅の比較ではバラツキが激しく、適切な評価が難しい。そこで、得られた「ナノファイバー」により評価を行うのでは無く、解繊が不十分な「マイクロファイバー」の残存状態の比較による評価を試みた。
各ナノセルロース分散水をスライドガラスに滴下することで作成したプレパラートを、微分干渉観察(100倍、モノクロ)モードで撮影し、カラーバランスを調整して白黒をより明確にした。その画像をImage Jで取り込み、一定の閾値で二値化してからファイバー箇所の面積を求め比較した。尚、測定誤差の軽減を目的に、画像連結機能を用いて100枚分の画像を1枚の画像に連結することで、なるべく広範囲の観察を行った。画像処理に供した画像のサイズはスケールバーより算出し(約6mm×8mm)、カバーガラス(18mm×18mm)との面積比、プレパラート作成時のサンプル滴下量およびサンプル濃度より、測定箇所に存在するファイバー重量を求め、得られたファイバー面積を測定したサンプル重量あたりの面積に換算して比較を行った。
典型例として、画像連結前の観察像を用いて以下に説明する(図15)。図15a)は通常の観察法で取得したファイバーの画像である。比較的大きなファイバーは判別可能だが、フィブリル化した末端のファイバーは確認し難い。しかし、微分干渉光学顕微鏡観察を行った図15b)だと、末端の細かなファイバーまで確認できる。この画像のカラーバランスを調整した画像が図15c)である。この処理を行うことにより、淡く映り込んでいるゴミやムラ等を黒色にしてファイバーを明確にした。この段階での画像は、モノクロの白黒階調を有する画像であるため、画像処理ソフト(Image J)を用い、一定の閾値を設けて二値化した(図15d))。これにより画像は白と黒の二色に変換される。その後、ファイバー存在箇所にあたる黒色部の面積を算出した。観察に用いたプレパラートは、先を切ったピペッターを用い、スライドガラスに滴下したサンプルがカバーガラスからはみ出ない量を滴下した(約0.01g)。各サンプルの滴下量は、精密天秤にて記録した。プレパラート作成後、カバーガラスの縁をマニキュアでシールし、溶媒の蒸発およびファイバーがカバーガラス縁に移動するのを防止した。その後、カバーガラスの縁を除いた任意の箇所の画像を撮影し、上記の処理に供した。観察はLiecaの倒立顕微鏡DMi8を用い表6に示す微分干渉光学顕微鏡を用いる観察条件にて行った。また、画像処理はフリーソフトImage Jを用い表7に示す画像処理条件で処理した。
各試料の微分干渉観察像と二値化後の画像を図16〜図19に示した(図16、17は5パス処理試料、図18、19は30パス処理試料)。5パス処理試料では、繊維長が数mmある未解繊のファイバーが多く存在しており、A−2、A−4、K−1ではその量が多いように見受けられた(図16、図17)。特にK−1は他に比べ繊維長が長く、量も多かった。一方、30パス処理試料では、5パス処理試料に見られたような大きなファイバーは殆ど残存しておらず、幅も長さも小さくなったファイバーが、ダマ状に存在していた(図18、図19)。このダマ状のファイバー塊は、クラフト蒸解試料由来(K−1)では少なくアルカリ蒸解試料由来(A−1〜4)で多い傾向にあった。
画像の二値化によって計測されたファイバー箇所の面積を、そこに存在する全ファイバー1gあたりの面積に換算して各サンプルを比較したものが図20である。得られた数値は画像の見た目の感覚とほぼ同じ傾向を示しており、この手法により、残存ファイバー量が適切に数値化されていると判断される。5パス処理試料におけるA−1、A−3の残存ファイバー量は他の半分以下であり、これらのサンプルは他に比べ低パスで微細化されることが明確になった。30パス処理試料における残存ファイバー量は5パス処理試料ほどの差は見られなかったが、K−1が他より少なかった。
図20のグラフを5パス処理試料の値が小さいものから順に並び替えたグラフを図21に示す。5パス処理試料の残存ファイバー量は、蒸解温度が低い試料およびアルカリ蒸解の方が小さいことが分かる。また、5パス処理試料と30パス処理試料の残存ファイバー量の値を比べると、A−1、A−3では大きな違いが無いものの、A−2、A−4、K−1では残存ファイバーが5パスから30パスに掛けて大きく減少していることが分かる。
この測定により計測された「残存ファイバー」は原料パルプに依存するため、A−2、A−4、K−1のように、ACCの処理回数が増加することで減少する。しかしA−1、A−3では、5パス処理試料と30パス処理試料の残存ファイバー量の値が殆ど変らないことから、マイクロサイズにおける微細化は5パスの時点で既に終了していると考えられる。すなわち、1〜5パスの間に、A−2、A−4、K−1に見られたような残存ファイバー量の劇的な減少が起こったと思われる。このことから、A−2、A−4、K−1よりもA−1、A−3の方が「ナノ化され易い」試料であったと考えられる。
光学顕微鏡の微分干渉観察モードで行った残存ファイバー量によるナノ微細化のされ易さの検討は「解繊が不十分なマイクロファイバーの残存状態」を比較した、いわば間接的な評価である。そのため、実際にナノ化されたナノファイバーの状態を確認しておく必要がある。
そこで、各サンプルの5パス処理試料をTEM観察に供しナノファイバーの状態を比較した(図22,図23)。いずれのサンプルにも繊維幅4〜5nm程度のシングルナノファイバーが多く観察されたことから(図23)、5パスでもナノ微細化は生じていることが確認された。
107・・・チャンバー、108a,108b・・・ノズル、109・・・タンク、110・・・プランジャ、111・・・熱交換器。

Claims (7)

  1. 原料となるパルプのカッパー価を40以上とすることを特徴とする高圧水流を用いた解繊法によるパルプのナノ微細化を容易にするアルカリ蒸解法によるパルプ製造法。
  2. 原料となるパルプのカッパー価を18以上とすることを特徴とする高圧水流を用いた解繊法によるパルプのナノ微細化を容易にするクラフト蒸解法によるパルプ製造法。
  3. アルカリ添加率が16%以上で、Hファクターが350以上である請求項1に記載のパルプ製造法。
    ここでいうところのHファクターは、蒸解時に反応系に与えられた熱の送料を示す目安であり、リグノセルロース材料と蒸解液が混ざった時点から蒸解終了時までを積分することで得られる値のことを示し、次式により算出される。
    Hファクター=∫exp(43.2−16113/T)dt (T:絶対温度、t:時間)
  4. アルカリ添加率が16%以上で、Hファクターが220以上である請求項2に記載のパルプ製造法。
  5. Hファクターからの逆算により算出される蒸解温度140℃以上の蒸解条件を満たす請求項3〜4のいずれか一に記載したパルプ製造法。
  6. 蒸解後のノット率を8%以下とする請求項1〜請求項5のいずれか一に記載したパルプ製造法。
  7. 原料を竹とする請求項1〜請求項6のいずれか一に記載したパルプ製造法。
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