JP2012036508A - 微細繊維状セルロースの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】セルロース繊維を機械的に解繊することによって、繊維幅が2〜1000nmの微細繊維状セルロースを容易に得ることができる微細繊維状セルロースの製造方法を提供する。
【解決手段】木材チップを木粉化し、それを化学処理した後、微細化処理を経て最大繊維幅1000nm以下の微細繊維状セルロースを製造する方法において、化学処理工程に供せられる木粉の形状を、粒度・形状分布測定における個数での累積が50%となる点において、長径が30〜50μm、短径が15〜35μmとなるように処理した後、脱脂処理、脱リグニン処理、脱ヘミセルロース処理の順に化学処理を行い、かつ脱リグニン処理における温度が70〜99℃、pHが3以下で処理する微細繊維状セルロースの製造方法である。
【選択図】なし
【解決手段】木材チップを木粉化し、それを化学処理した後、微細化処理を経て最大繊維幅1000nm以下の微細繊維状セルロースを製造する方法において、化学処理工程に供せられる木粉の形状を、粒度・形状分布測定における個数での累積が50%となる点において、長径が30〜50μm、短径が15〜35μmとなるように処理した後、脱脂処理、脱リグニン処理、脱ヘミセルロース処理の順に化学処理を行い、かつ脱リグニン処理における温度が70〜99℃、pHが3以下で処理する微細繊維状セルロースの製造方法である。
【選択図】なし
Description
本発明は、最大繊維幅1000nm以下の微細繊維状セルロースを収率高く製造するための方法を提供することを目的とする。
近年、物質をナノメートルサイズの大きさにすることによりバルクや分子レベルとは異なる物性を得ることを目的としたナノテクノロジーが注目されている。一方で、石油資源の代替および環境意識の高まりから再生産可能な天然繊維の応用にも注目が集まっている。
天然繊維の中でもセルロース繊維、とりわけ木材由来のセルロース繊維(パルプ)は主に紙製品として幅広く使用されている。紙に使用されるセルロース繊維の幅は10〜50μmのものがほとんどである。このようなセルロース繊維から得られる紙(シート)は不透明であり、不透明であるが故に印刷用紙として幅広く利用されている。一方、セルロース繊維をレファイナーやニーダー、サンドグラインダーなどで処理(叩解、粉砕)し、セルロース繊維を微細化すると透明紙(グラシン紙等)が得られる。しかし、この透明紙の透明性は半透明レベルであり、光の透過性は高分子フィルムに比べると低く、曇り度合い(ヘーズ値)も大きい。
天然繊維の中でもセルロース繊維、とりわけ木材由来のセルロース繊維(パルプ)は主に紙製品として幅広く使用されている。紙に使用されるセルロース繊維の幅は10〜50μmのものがほとんどである。このようなセルロース繊維から得られる紙(シート)は不透明であり、不透明であるが故に印刷用紙として幅広く利用されている。一方、セルロース繊維をレファイナーやニーダー、サンドグラインダーなどで処理(叩解、粉砕)し、セルロース繊維を微細化すると透明紙(グラシン紙等)が得られる。しかし、この透明紙の透明性は半透明レベルであり、光の透過性は高分子フィルムに比べると低く、曇り度合い(ヘーズ値)も大きい。
また、セルロース繊維は弾性率が高く、熱膨張率の低いセルロース結晶の集合体であり、セルロース繊維を樹脂と複合化することによって寸法安定性が高まるため、積層板などに利用されている。ただし、通常のセルロース繊維は結晶部分と非晶部分との集合体であり、筒状の空隙を有する繊維のため、寸法安定性には限界がある。
セルロース繊維を種々の方法で処理し、その繊維幅を50nm以下とした微細繊維状セルロースの水分散液は透明である。一方、微細繊維状セルロースシートは空隙を含むため白く乱反射し、不透明性が高くなるが、微細繊維状セルロースシートに樹脂を含浸すると空隙が埋まるため、透明なシートが得られる。微細繊維状セルロースシートの繊維は非常に剛直で、また、繊維幅が狭いため、通常のセルロースシート(紙)に比べると同質量において繊維の本数が飛躍的に多くなり、樹脂と複合化すると樹脂中で細い繊維がより均一かつ緻密に分散し、耐熱寸法安定性や強度が飛躍的に向上する。さらに、繊維が細いため透明性も高い。このような特性を有する微細繊維状セルロースの複合体は、有機ELや液晶ディスプレイ用のフレキシブル透明基板(曲げたり折ったりすることのできる透明基板)として非常に大きな期待が寄せられている。
セルロース繊維を種々の方法で処理し、その繊維幅を50nm以下とした微細繊維状セルロースの水分散液は透明である。一方、微細繊維状セルロースシートは空隙を含むため白く乱反射し、不透明性が高くなるが、微細繊維状セルロースシートに樹脂を含浸すると空隙が埋まるため、透明なシートが得られる。微細繊維状セルロースシートの繊維は非常に剛直で、また、繊維幅が狭いため、通常のセルロースシート(紙)に比べると同質量において繊維の本数が飛躍的に多くなり、樹脂と複合化すると樹脂中で細い繊維がより均一かつ緻密に分散し、耐熱寸法安定性や強度が飛躍的に向上する。さらに、繊維が細いため透明性も高い。このような特性を有する微細繊維状セルロースの複合体は、有機ELや液晶ディスプレイ用のフレキシブル透明基板(曲げたり折ったりすることのできる透明基板)として非常に大きな期待が寄せられている。
ただし、微細繊維状セルロースを用いて樹脂と複合化し、透明基板が得られても、実際のデバイス化工程では、数回の加熱処理が必須である。加熱処理をすると、微細繊維状セルロースに残留する微量のリグニン、ヘミセルロースあるいはセルロースの還元末端基あるいは抽出成分が反応することによって着色するという問題があり、その指標としてYI値(Yellowing Index)が定められている。該着色を防止するため、予め微細繊維状セルロースを製造する工程で、残留する微量のリグニン、ヘミセルロース、セルロースの還元末端基あるいは抽出成分を限りなく除去するか、またはそれらが少ない原料を選ぶことが、製造上求められている。
木材内部においてセルロースは層構造となっており、さらにリグニンやヘミセルロースといった成分と化学的に結合しているため、機械的な粉砕処理のみでは、樹脂と複合し、数時間の加熱処理を経た最終製品でのYI値が低く、かつ最大繊維幅1000nm以下の微細繊維状セルロースを得ることが困難となる。そのため、化学的あるいは生物学的処理と機械的粉砕処理とを組合せた方法が一般に使用されている。
この組合せの方法としては、パルプを軽度に加水分解し、濾過水洗後、乾燥、粉砕して一部非晶領域を含むセルロース微粒子の製造方法や精製パルプを塩酸または硫酸で加水分解して結晶領域のみを残して微粉化する技術(非特許文献1)が開示されている。しかしながら、微細化のレベルは充分ではなく、得られた微細繊維状セルロースの水系懸濁液の透明性も不十分である。
また、酵素処理、酸処理、アルカリ処理、膨潤薬品処理を組み合わせて前処理した繊維状セルロースを振動ミル粉砕機にて湿式粉砕する技術も開示されている(特許文献1)が、酵素反応の効率が依然として低く、生産性の高い微細繊維状セルロースの製造方法とはいえない。
繊維状セルロースの原料として木材パルプを使用した場合、数平均繊維長が0.8mm未満である短繊維のパルプとして、国産ドロノキ、シナノキや、外国産のアスペン、ユーカリなどを機械的方法や化学的方法で繊維を抽出したものを予備叩解して、それを砥粒板すり合わせ装置で微細化して、微細フィブリル化セルロースを得る方法(特許文献2)が開示されているが、微細化に供するパルプスラリーの固形分濃度を高くすると、急激に処理効率が低下するという問題が残されている。
特許文献3や特許文献4には、N−オキシル化合物および臭化物/ヨウ化物の存在下で、酸化剤を用いて広葉樹や針葉樹のパルプなどのセルロース系原料を酸化して、酸化されたセルロースを湿式微粒化処理し、そのセルロースナノファイバーを製紙用添加剤に用いて印刷用紙を製造する方法が記載されている。しかしながら、この方法では、繊維表面に親水基が導入されるので、疎水性樹脂の含浸が問題になる。
一方、繊維状セルロースの原料としてバクテリアセルロースあるいはコットンを使用した場合(特許文献5、特許文献6)、バクテリアセルロースでは繊維自体が絡みあいではなく、主として分岐によりネットワークが形成されているため、ネットワークが解繊されずに絡まってしまい、解繊が困難である。また、コットンを原料とすると、コットンがリグニンやヘミセルロースを含んでいないため、機械的な解繊効率が悪く、そのため解繊の時間を延ばすと、結晶セルロースが破壊されて結晶化度が低下し、得られた繊維強化複合材料の線膨張係数が大きくなり、また弾性率も低下する欠点がある。
木粉を原料として、それを脱脂し、亜塩素酸ナトリウムと酢酸で脱リグニンし、洗浄、脱ヘミセルロースした後、微細化して微細繊維状セルロースを製造する方法が提案されている(特許文献7)。しかし、塩素化合物である亜塩素酸ナトリウムを使用するため、反応後の排水中に有機塩素化合物が含まれ、環境上の問題が発生する。
酸性水溶液とアルカリ水溶液によって脱リグニンする技術(非特許文献2〜4)があるが、ヘミセルロースを残してパルプ収率を向上させようとする技術であって、微細繊維状セルロース用の原料として利用する記載はない。
また、特許文献8には、木質チップを希苛性ソーダにより常温で親水化し、希硝酸中でリグニンを選択的に部分酸化して変性し、希苛性ソーダ水溶液を用いて大気圧下で蒸解してパルプを製造する技術が開示されている。この方法は高収率でパルプを製造しリグニンを回収する技術であり、微細繊維状セルロース用のパルプとして利用する記載はない。
更に、特許文献9には、酸処理したパルプをTEMPO酸化する方法が開示されているが、この酸処理は、本文献〔0014〕段に記載されているように重金属の除去を目的としたものである。また、特許文献9の対象は、脱リグニンされたパルプであり、本願発明のような木粉中のリグニンを除去する方法ではないし、木粉への応用の示唆もない。
上記のように、繊維状セルロースを微細化する技術が種々開示されているが、工業的なレベルで収率の高い微細繊維状セルロースの製造方法の開発が望まれている。
山口章「セルロースの微粉化・ミクロフィブリル化」紙パルプ技術タイムス28巻9号5頁以下(1985年)
ウェン・バン・バ「硝酸法パルプに関する研究(第1報) 木材多糖類の挙動」木材学会誌26巻1号12頁以下(1980)
ウェン・バン・バ「硝酸法パルプに関する研究(第2報)硝酸法パルプ化に関する研究(第2法) 炭水化物の挙動についてのモデル実験 」木材学会誌26巻11号738以下(1980)
ウェン・バン・バ「硝酸法パルプに関する研究(第3報) Vanillyl Alcoholと希硝酸の反応」木材学会誌28巻2号129頁(1982)
本発明の目的は、最大繊維幅1000nm以下の微細繊維状セルロースを簡便な方法で、しかも収率を高く製造するための製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、化学処理の工程で、高温で低pHの酸性条件で脱リグニン処理を行なうと、リグニンの酸加水分解が促進され、脱リグニンには有利ではあるが、同時に酸処理中にセルロース鎖も加水分解を受けるため、酸性条件で脱リグニン処理を含む化学処理に供する木粉の形状が重要であることを見出した。また、そのような特定の木粉形状となるように作製するための処理方法を知得した。
特許文献には、原料となる木粉の形状が記載されているものもあるが、木粉化後の脱リグニン処理との関係を記載した、あるいは特定したものはない。本発明者らは、この点について多角的に検討したところ、木粉の脱リグニンの方法としてどのような化学的処理法を採用するかによって、木粉の最適な形状は異なることを見出した。特に、脱リグニンの方法として有効な高温・低pHで行なわれる酸性処理では、従来言われているような形状では、収率が低下し、精製した微細繊維状セルロースの強度も低下することがわかり、本発明を完成させるに至った。
本発明は、以下の各発明を包含する。
(1)木材チップを木粉化し、それを化学処理した後、微細化処理を経て最大繊維幅1000nm以下の微細繊維状セルロースを製造する方法において、化学処理工程に供せられる木粉の形状を、粒度・形状分布測定における個数での累積が50%となる点において、長径が30〜50μm、短径が15〜35μmとなるように処理した後、脱脂処理、脱リグニン処理、脱ヘミセルロース処理の順に化学処理を行い、かつ脱リグニン処理における温度が70〜99℃、pHが3以下で処理する微細繊維状セルロースの製造方法。
(1)木材チップを木粉化し、それを化学処理した後、微細化処理を経て最大繊維幅1000nm以下の微細繊維状セルロースを製造する方法において、化学処理工程に供せられる木粉の形状を、粒度・形状分布測定における個数での累積が50%となる点において、長径が30〜50μm、短径が15〜35μmとなるように処理した後、脱脂処理、脱リグニン処理、脱ヘミセルロース処理の順に化学処理を行い、かつ脱リグニン処理における温度が70〜99℃、pHが3以下で処理する微細繊維状セルロースの製造方法。
(2)前記木粉のアスペクト比が1〜2となるように処理する(1)に記載の微細繊維状セルロースの製造方法。
(3)木材チップを粗粉砕し、分級することなく粉砕媒体を用いる衝撃方式で微粉砕した木粉を前記化学処理工程に供する(1)または(2)に記載の微細繊維状セルロースの製造方法。
(4)前記木材チップの含水率を10%以下とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の微細繊維状セルロースの製造方法。
(5)前記脱リグニン処理において、硫酸、塩酸、硝酸、酢酸、蟻酸、炭酸、リン酸、安息香酸、メタクロロ安息香酸、プロピオン酸から選択される少なくとも1種類の酸性水溶液を用いる(1)〜(4)のいずれか1項に記載の微細繊維状セルロースの製造方法。
(6)前記脱リグニン処理において、さらに過酸化水素を併用する(1)〜(5)のいずれか1項に記載の微細繊維状セルロースの製造方法。
本発明者らは、微細繊維状セルロース繊維の収率を向上させる方法を種々検討したところ、木粉を脱リグニンする際に高温・低pHの酸性条件で処理することが重要であるが、この条件では木粉中のセルロースも加水分解を受け、収率の低下や強度の低下を引き起こすので、木粉の形状が特定の形状となるように木粉化することによって、脱リグニン性が良好で、しかも微細繊維状セルロースの収率を高くできること見出した。
微細繊維状セルロースを高収率に得る方法として、高温・低pHの酸性条件は効果が高い。この理由として、酸性条件下では100℃を越えない温度でも、リグニンが効果的に除去されるため、セルロースとリグニンとの結合が弱められ、それによって微細なフィブリル間、さらには結晶領域を構成するミクロフィブリル間の結合力が低下して、機械的処理によりパルプを容易に微細化できるものと考えられる。
さらに、そのような木粉を得るため、木材チップの含水率や微粉砕処理工程での衝撃方式を適正に選択することで、効率よく、特定された形状の木粉が得られることも明らかにした。
本発明によって、微細繊維状セルロースの収率を容易に高くすることができる微細繊維状セルロースの製造方法を提供することができる。
本発明によって、微細繊維状セルロースの収率を容易に高くすることができる微細繊維状セルロースの製造方法を提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明においては、セルロース繊維を微細化するに当たり、繊維原料として植物由来のセルロース、動物由来のセルロース、バクテリア由来のセルロース等が挙げられ、より具体的には針葉樹パルプや広葉樹パルプ等の木材系製紙用パルプ、コットンリンターやコットンリント等の綿系パルプ、麻や麦わら、バガス等の非木材系パルプ、あるいはホヤや海草等から単離されるセルロースが挙げられるが、入手し易く、安価である木材系原料を木粉化して好適に使用される。該木粉としては針葉樹(国産のベイマツ、エゾマツ、トドマツ、アカマツ、カラマツ等、外国産のブラックスプルース、ホワイトスプルース、ダグラスファー、ウェスターンヘムロック、サウザーンパイン、ジャックパイン等)の木粉、広葉樹(国産のドノノキ、シナノキ、セン、ポプラ、カバ等、外国産のアスペン、コットンウッド、ブラックウィロー、イエローポプラ、イエローバーチ、ユーカリ等)の木粉などが挙げられ、なかでもベイマツやユーカリが好ましい。特にユーカリの植林木由来の原料は、材の均一性が高いので好ましい実施態様である。
本発明においては、セルロース繊維を微細化するに当たり、繊維原料として植物由来のセルロース、動物由来のセルロース、バクテリア由来のセルロース等が挙げられ、より具体的には針葉樹パルプや広葉樹パルプ等の木材系製紙用パルプ、コットンリンターやコットンリント等の綿系パルプ、麻や麦わら、バガス等の非木材系パルプ、あるいはホヤや海草等から単離されるセルロースが挙げられるが、入手し易く、安価である木材系原料を木粉化して好適に使用される。該木粉としては針葉樹(国産のベイマツ、エゾマツ、トドマツ、アカマツ、カラマツ等、外国産のブラックスプルース、ホワイトスプルース、ダグラスファー、ウェスターンヘムロック、サウザーンパイン、ジャックパイン等)の木粉、広葉樹(国産のドノノキ、シナノキ、セン、ポプラ、カバ等、外国産のアスペン、コットンウッド、ブラックウィロー、イエローポプラ、イエローバーチ、ユーカリ等)の木粉などが挙げられ、なかでもベイマツやユーカリが好ましい。特にユーカリの植林木由来の原料は、材の均一性が高いので好ましい実施態様である。
本発明において使用可能である植林木由来のユーカリはグロブラス、グランディス、カマルドレンシス、ペリータ、サリグナ、ダニアイ、ナイテンス、カマルドレンシスとユーロフィラとのハイブリッド等から選択される少なくとも1種の材が挙げられる。
本発明において用いられる繊維原料としての木材チップは、通常パルプ製造に用いられる、例えばベイマツまたはユーカリチップ(厚みが2mm〜8mm)を、含水率が10%以下になるように天日干しあるいは強制的に乾燥機で乾燥させた後、粉砕処理工程でチップを粉砕し、木粉を製造する。ここで、チップの粒径分布には特に限定はないが、厚みは2mm〜8mmのものが木粉化し易いので、好適に使用される。チップの含水率が10%超えると、最終の微細繊維状セルロースの結晶化度が大幅に低下するので、好ましくない。
本発明における木粉製造においては、粗粉砕機にはシュレッダー、カッターミルなどのせん断式粉砕機、ジュークラッシャーやコーンクラッシャーなどの圧縮式粉砕機、インパクトクラッシャーなどの衝撃式粉砕機、あるいはロールミル、スタンプミル、エッジランナーミル、ロッドミルなどの中砕機の中から、最終の用途やコストの点から任意に選ぶことができる。ここでは、特に粒径・形状を整える必要はなく、したがってスクリーンを用いることなく粉砕しても、問題はない。
粗粉砕後、分級することなく、該木粉を微粉砕処理するが、微粉砕処理には自生粉砕ミル、竪型ローラーミル、高速回転ミル、分級機内蔵型高速回転ミル、容器駆動媒体ミル、媒体攪拌式ミル、気流式粉砕機、圧密せん断ミルおよびコロイドミルなどがあるが、ジルコニューム製、アルミナ製、SUS製などのボールやロッドなどの媒体を用いて粉体化する衝撃方式が好ましく、中でも中央化工機(株)製のCDミルあるいは喜多村(株)製のボールミルを使用することが好ましい。CDミルでは、質量が比較的高いSUS製のロッドで粗粉砕木粉を叩いた後、SUS製のボールあるいはロッドで微粉砕する方法が特に好ましく、粉砕機出のところでサンプリングを行ない、所定内の粒径・形状に入っていない場合には、出口の堰板を上げることによって滞留時間を増やして対処することが好ましい。それでも困難な場合には、スクリーンあるいは篩い分けを大ない、粗い成分あるいは細かすぎる成分を除去しても構わない。ボールミルの場合には、時間毎にサンプリングを行ない、所定の粒径・形状になるように対処してもよいし、篩い分けをしても構わない。
本発明における木粉の形状(粒度分布)は、粉砕時間や木粉濃度、媒体の種類(材質、形状、大きさ)などの粉砕条件を適宜変更することで調製できるが、該木粉の形状は粒度・形状分布測定装置(セイシン企業社製:商品名「PITA−1」)を用い、水を分散媒として木粉の長径、短径、アスペクト比(=長径/短径)及びその個数を計測する。
本発明においては前記の装置により木粉の形状は、個数での累積が全粒子の50%となる点において、長径は30〜50μmとなるように処理する必要があり、より好ましく20〜40μm、さらに好ましくは15〜35μmである。短径は15〜35μmとなるように処理する必要があり、より好ましくは12〜32μm、さらに好ましく13〜22μmである。木粉の長径および短径が細かすぎると、酸性水溶液の中で激しく加水分解を受けるので、精製した微細化繊維の長径および短径が短くなり、そのため収率の低下が大きく、また、細かいが故に、強度も低下してしまう。逆に、木粉の長径あるいは短径が大きすぎると、酸性水溶液は脱リグニン性が高いといえども、所定の粒径・形状にするのに時間がかかりすぎるので、適切ではない。
また、長径と短径の比で表されるアスペクト比は1〜2となるように処理することが好ましく、より好ましくは1.4〜1.9、特に好ましくは1.6〜1.8である。このアスペクト比についでも、上記と同様なことが言えるので、適切な範囲が存在する。
本発明においては微細繊維状セルロースを得るためには、上記原料を少なくとも脱脂工程、脱リグニン工程、脱ヘミセルロース工程を経た後、微細化処理する必要がある。
本発明において該脱脂工程では、炭酸塩、アルコール、アルコール−ベンゼンの1:2混合溶液であるアルベン、ベンゼン、脂肪酸のトリグリセリドを分解する酵素であるリパーゼなどを適宜用いることができ、常温で、攪拌しながら、あるいは高温高圧で処理する方法等が挙げられるが、薬剤としては安価で、かつ有機溶媒ではなく、さらに圧力容器を用いないで簡便に使用でき、しかも脱脂効率が高いという理由で炭酸ナトリウム法が好ましい。
本発明において該脱脂工程では、炭酸塩、アルコール、アルコール−ベンゼンの1:2混合溶液であるアルベン、ベンゼン、脂肪酸のトリグリセリドを分解する酵素であるリパーゼなどを適宜用いることができ、常温で、攪拌しながら、あるいは高温高圧で処理する方法等が挙げられるが、薬剤としては安価で、かつ有機溶媒ではなく、さらに圧力容器を用いないで簡便に使用でき、しかも脱脂効率が高いという理由で炭酸ナトリウム法が好ましい。
脱脂工程における炭酸ナトリウムは水溶液として使用するが、水溶液中の炭酸ナトリウム濃度は0.1質量%〜10質量%が好ましい。炭酸ナトリウムの濃度が0.1質量%未満であると脱脂効率が低下して好ましくない。一方、濃度が10質量%を超えると脱脂効果が飽和し、経済的にも必要性に乏しい。
原料100質量部に対する炭酸ナトリウム水溶液の添加量(固形分)は、1質量部〜10質量部が好ましい。添加量が1質量部未満になると生産性が低下し、好ましくない。10質量部を超えると脱脂効率が低下し、好ましくない。
温度は40℃〜99℃が好ましく、40℃未満になると脱脂効率が極端に低下し、好ましくない。一方、100℃を超えると微細繊維化が困難となり、好ましくない。
原料100質量部に対する炭酸ナトリウム水溶液の添加量(固形分)は、1質量部〜10質量部が好ましい。添加量が1質量部未満になると生産性が低下し、好ましくない。10質量部を超えると脱脂効率が低下し、好ましくない。
温度は40℃〜99℃が好ましく、40℃未満になると脱脂効率が極端に低下し、好ましくない。一方、100℃を超えると微細繊維化が困難となり、好ましくない。
脱リグニン工程における酸性の水溶液としては、酢酸、硫酸、炭酸、リン酸、硝酸、塩酸、安息香酸、メタクロロ安息香酸、蟻酸、プロピオン酸等の水溶液が挙げられるが、扱い方が比較的容易でpHを3以下にできる硫酸、塩酸、硝酸、酢酸および蟻酸の各水溶液を用いる方法が好ましい。また、異なる酸性水溶液を2種以上混合して用いてもかまわない。
酸性水溶液の酸の濃度は、pHを3以下にできる濃度が必要である。pHを3以下にすると脱リグニンが進み、木粉のバインダー成分であるリグニンが効率よく除去され、微細繊維化が促進されるので、好ましい。脱脂された原料100質量部に対する酸性水溶液の添加量(固形分)は0.1部〜50部が好ましい。
酸性水溶液で原料を処理する際の温度は70℃以上、99℃以下が好ましく、75℃〜98℃がさらに好ましく、80℃〜95℃が特に好ましい。温度が70℃未満であると脱リグニンの効率が悪化し、色が着いた状態となり好ましくない。一方、99℃を超えると微細繊維化が困難となり、好ましくない。
酸性水溶液の酸の濃度は、pHを3以下にできる濃度が必要である。pHを3以下にすると脱リグニンが進み、木粉のバインダー成分であるリグニンが効率よく除去され、微細繊維化が促進されるので、好ましい。脱脂された原料100質量部に対する酸性水溶液の添加量(固形分)は0.1部〜50部が好ましい。
酸性水溶液で原料を処理する際の温度は70℃以上、99℃以下が好ましく、75℃〜98℃がさらに好ましく、80℃〜95℃が特に好ましい。温度が70℃未満であると脱リグニンの効率が悪化し、色が着いた状態となり好ましくない。一方、99℃を超えると微細繊維化が困難となり、好ましくない。
本発明においては脱リグニン工程では、脱リグニンをさらに促進するため、過酸化水素を併用しても良い。その場合、生成する過酸化物の安定性や安全性の点で、硫酸(過硫酸が生成)、酢酸(過酢酸が生成)を用いることが好ましい。その場合でも、温度やpHあるいは添加量は酸性溶液を用いる場合と同様である。
本発明においては脱リグニン工程の後に、脱ヘミセルロース工程を設けるが、この工程ではアルカリを使用するので、脱リグニンされたフラグメントを除去するにも都合がよい。脱ヘミセルロース化する方法としては、アルカリ金属の水酸化物の水溶液を用いて、室温で一晩浸漬処理したり、該水溶液中で攪拌しながら高温で短時間処理したり、該水溶液中に圧力下で攪拌しながら高温高圧下で処理する方法などが挙げられる。用いる薬品としては安価で、常温常圧で使用でき、しかも脱ヘミセルロースの効率が高いという理由で水酸化カリウムが最も好ましい。
水酸化カリウムの濃度は1質量%〜20質量%であることが好ましい。濃度が1質量%未満であると脱ヘミセルロースの効率が低下して、好ましくない。一方、濃度が20質量%を超えるとセルロースがマーセル化してしまい、その結果微細繊維状セルロースの収率が低下して、好ましくない。
原料100質量部に対する水酸化カリウム水溶液の添加量(固形分)は、1質量部〜10質量部が好ましい。添加量が1質量部未満になると生産性が低下し、好ましくない。10質量部を超えると脱脂効率が低下し、好ましくない。
水酸化カリウム水溶液の温度は1℃〜40℃が好ましく、4℃〜36℃がさらに好ましく、8℃〜32℃が特に好ましい。温度が1℃未満になると脱ヘミセルロースの効率が悪くなり、好ましくない。温度が40℃を超えると微細繊維化が困難となるので、好ましくない。
水酸化カリウムの濃度は1質量%〜20質量%であることが好ましい。濃度が1質量%未満であると脱ヘミセルロースの効率が低下して、好ましくない。一方、濃度が20質量%を超えるとセルロースがマーセル化してしまい、その結果微細繊維状セルロースの収率が低下して、好ましくない。
原料100質量部に対する水酸化カリウム水溶液の添加量(固形分)は、1質量部〜10質量部が好ましい。添加量が1質量部未満になると生産性が低下し、好ましくない。10質量部を超えると脱脂効率が低下し、好ましくない。
水酸化カリウム水溶液の温度は1℃〜40℃が好ましく、4℃〜36℃がさらに好ましく、8℃〜32℃が特に好ましい。温度が1℃未満になると脱ヘミセルロースの効率が悪くなり、好ましくない。温度が40℃を超えると微細繊維化が困難となるので、好ましくない。
上記脱ヘミセルロース処理を施したセルロース繊維は水に分散され、水性懸濁液として微細化処理に供される。該水性懸濁液の濃度としては0.1質量%〜7質量%であることが好ましく、0.3〜5質量%であることがより好ましい。濃度が0.1質量%未満であると生産性が低下して、好ましくない。一方、濃度が7質量%を超えると、粉砕処理中に粘度が上昇し過ぎ、取扱いが非常に困難になるおそれがある。
本発明において、繊維状セルロースの微細化方法には特に制限はないが、高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混錬機(二軸押出機)、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、ビーターなどの機械的作用を利用する湿式粉砕でセルロース系繊維を細くする方法が好ましい。なかでも、高速解繊機、石臼粉砕、高圧ホモジナイザー、あるいはボールミル処理は微細な繊維が効率的に得られるため、特に好ましい。また、TEMPO酸化、オゾン処理、酵素処理などの化学処理を施してから微細化してもかまわない。
本発明における微細繊維状セルロースは通常製紙用途で用いるパルプ繊維よりもはるかに幅の狭いセルロース繊維あるいは棒状粒子である。微細繊維状セルロースは結晶状態のセルロース分子の集合体であり、その結晶構造はI型(平行鎖)である。微細繊維状セルロースの幅は電子顕微鏡で観察して2nm〜1000nmが好ましく、より好ましくは2nm〜500nm、さらに好ましくは4nm〜100nmである。繊維の幅が2nm未満であると、セルロース分子として水に溶解しているため、微細繊維としての物性(強度や剛性、寸法安定性)が発現しなくなる。1000nmを超えると微細繊維とは言えず、通常のパルプに含まれる繊維にすぎないため、微細繊維としての物性(強度や剛性、寸法安定性)が得られない。また、微細繊維状セルロースのコンポジットに透明性が求められる用途であると、微細繊維の幅は50nm以下が好ましい。これらの微細繊維状セルロースから得られる複合材料は密度が高く、緻密な構造体となるために強度が高く、セルロース結晶に由来した高い弾性率が得られることに加え、可視光の散乱が少ないため高い透明性も得られる。
ここで、微細繊維状セルロースがI型結晶構造をとっていることは、グラファイトで単色化したCuKα(λ=1.5418Å)を用いた広角X線回折写真より得られる回折プロファイルにおいて、2θ=14〜17°付近と2θ=22〜23°付近の2箇所の位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。また、微細繊維状セルロースの電子顕微鏡観察による繊維幅の測定は以下のようにして行う。濃度0.05〜0.1質量%の微細繊維状セルロースの水系懸濁液を調製し、該懸濁液を親水化処理したカーボン膜被覆グリッド上にキャストしてTEM観察用試料とする。幅の広い繊維を含む場合には、ガラス上にキャストした表面のSEM像を観察してもよい。構成する繊維の幅に応じて5000倍、10000倍あるいは50000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。この際、得られた画像内に縦横任意の画像幅の軸を想定した場合に少なくとも軸に対し、20本以上の繊維が軸と交差するような試料および観察条件(倍率等)とする。この条件を満足する観察画像に対し、1枚の画像当たり縦横2本ずつの無作為な軸を引き、軸に交錯する繊維の繊維幅を目視で読み取っていく。こうして最低3枚の重なっていない表面部分の画像を電子顕微鏡で観察し、各々2つの軸の交錯する繊維の繊維幅の値を読み取る(最低20本×2×3=120本の繊維幅)。
微細繊維の繊維長は1μm〜1000μmが好ましく、5μm〜800μmがさらに好ましく、10μm〜600nmが特に好ましい。繊維長が1μm未満になると、微細繊維シートを形成し難くなる。1000μmを超えると微細繊維のスラリー粘度が非常に高くなり、扱いづらくなる。
繊維長は、TEMやSEM、AFMの画像解析より求めることができる。本発明で言う繊維長は、繊維の30%以上を占める繊維長である。
本発明による微細繊維の軸比は100〜10000の範囲であることが好ましい。軸比が100未満であると微細繊維シートを形成し難くなるおそれがある。また、幅が太くなり、微細繊維の特徴が発現しなくなるおそれがある。軸比が10000を超えるとスラリー粘度が高くなり、好ましくない。
微細繊維の繊維長は1μm〜1000μmが好ましく、5μm〜800μmがさらに好ましく、10μm〜600nmが特に好ましい。繊維長が1μm未満になると、微細繊維シートを形成し難くなる。1000μmを超えると微細繊維のスラリー粘度が非常に高くなり、扱いづらくなる。
繊維長は、TEMやSEM、AFMの画像解析より求めることができる。本発明で言う繊維長は、繊維の30%以上を占める繊維長である。
本発明による微細繊維の軸比は100〜10000の範囲であることが好ましい。軸比が100未満であると微細繊維シートを形成し難くなるおそれがある。また、幅が太くなり、微細繊維の特徴が発現しなくなるおそれがある。軸比が10000を超えるとスラリー粘度が高くなり、好ましくない。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の部及び%は特に断らない限り、それぞれ質量部及び質量%を示す。
<実施例1>
〔チップの処理〕
パルプの製造に供するベイマツチップをチップ厚み分級装置で、厚みが8mmパスで2mmオン分のチップに分級した後、天日でチップの含水率(水分量/水分量を含むチップ全量の割合)を約10%に調節し、木粉化の試料とした。
〔チップの処理〕
パルプの製造に供するベイマツチップをチップ厚み分級装置で、厚みが8mmパスで2mmオン分のチップに分級した後、天日でチップの含水率(水分量/水分量を含むチップ全量の割合)を約10%に調節し、木粉化の試料とした。
〔木粉化処理(粗粉砕と微粉砕)〕
上記チップを(株)東洋油圧工業製の粗粉砕機(型式:「TYM−600−350−WS」)を用いて、粗粉砕した。それを分級することなく、粉砕媒体にSUS製ロッドを二段に用いる中央化工機(株)製のCDミル(型式:「CD−30」)を用いて、処理時間30分にて所定の粒径・形状になるように微粉砕した。
上記チップを(株)東洋油圧工業製の粗粉砕機(型式:「TYM−600−350−WS」)を用いて、粗粉砕した。それを分級することなく、粉砕媒体にSUS製ロッドを二段に用いる中央化工機(株)製のCDミル(型式:「CD−30」)を用いて、処理時間30分にて所定の粒径・形状になるように微粉砕した。
〔木粉の形状の測定〕
室温で0.02〜0.03gの上記木粉を蒸留水20mlに懸濁させた後、(株)セイシン企業製の粒度・形状分布測定器である商品名:「PITA−1」を用いて、CCDカメラで、一試料で5000本の画像を取り込み(所要時間15〜30分)、個数での累積が50%となる点において、長径、短径およびアスペクト比を求めた。
室温で0.02〜0.03gの上記木粉を蒸留水20mlに懸濁させた後、(株)セイシン企業製の粒度・形状分布測定器である商品名:「PITA−1」を用いて、CCDカメラで、一試料で5000本の画像を取り込み(所要時間15〜30分)、個数での累積が50%となる点において、長径、短径およびアスペクト比を求めた。
〔脱脂処理〕
該木粉は、セルロース繊維(BD15g)を2%炭酸ナトリウム水溶液中で攪拌しながら90℃で5時間処理した。処理後の原料は、10倍量の蒸留水で洗浄し、ブフナーで脱水した後、蒸留水を加えて濃度を調整した。
該木粉は、セルロース繊維(BD15g)を2%炭酸ナトリウム水溶液中で攪拌しながら90℃で5時間処理した。処理後の原料は、10倍量の蒸留水で洗浄し、ブフナーで脱水した後、蒸留水を加えて濃度を調整した。
〔脱リグニン処理〕
脱脂処理した木粉を10%の各種酸性水溶液(1500g)に加え、90℃、1時間処理した。処理後の原料は、10倍量の蒸留水で洗浄し、ブフナーで脱水した後、蒸留水を加えて濃度を調整した。また、過酸化水素を併用して脱リグニンを行なう場合には、例えば、過酢酸では、無水酢酸と30%過酸化水素を液量として1:1となるように混合して調整し、これを脱脂処理後の原料(BD15g)に対して過酸化水素当量で4.5%に相当する過酸水溶液を750ml加え、90℃で1時間処理した。処理後の原料は、10倍量の蒸留水で洗浄し、ブフナーで脱水した後、蒸留水を加えて濃度を調整した。
脱脂処理した木粉を10%の各種酸性水溶液(1500g)に加え、90℃、1時間処理した。処理後の原料は、10倍量の蒸留水で洗浄し、ブフナーで脱水した後、蒸留水を加えて濃度を調整した。また、過酸化水素を併用して脱リグニンを行なう場合には、例えば、過酢酸では、無水酢酸と30%過酸化水素を液量として1:1となるように混合して調整し、これを脱脂処理後の原料(BD15g)に対して過酸化水素当量で4.5%に相当する過酸水溶液を750ml加え、90℃で1時間処理した。処理後の原料は、10倍量の蒸留水で洗浄し、ブフナーで脱水した後、蒸留水を加えて濃度を調整した。
〔脱ヘミセルロース処理〕
スラリー状の脱リグニン処理した原料(BD15g)に5%水酸化カリウム水溶液を用いて、室温で24時間浸漬し処理した。10倍量の蒸留水で洗浄し、ブフナーで脱水し、蒸留水を加えて0.5%のパルプ懸濁液を作製した
スラリー状の脱リグニン処理した原料(BD15g)に5%水酸化カリウム水溶液を用いて、室温で24時間浸漬し処理した。10倍量の蒸留水で洗浄し、ブフナーで脱水し、蒸留水を加えて0.5%のパルプ懸濁液を作製した
〔微細化処理と収率測定〕
上記の懸濁液を高速解繊機(エムテクニック社製「クレアミックス」)で21,500回転、30分間解繊し(微細化処理)、微細繊維状セルロース水系懸濁液を得、この上澄み液濃度を測定した。得られた微細繊維状セルロース懸濁液について遠心分離機(コクサン社製「H−200NR」)を用いて約12,000Gで10分間処理し、上澄み液濃度を測定し、以下のような計算式から収率を求めた。
収率(%)=(遠心分離後の上澄み液の濃度)÷(微細化処理後のスラリー濃度)×100
遠心分離して得た上澄み液中の繊維を電子顕微鏡で観察し、繊維幅を測定した。さらに遠心分離して得られた上澄み液を孔径0.45μmのメンブレンフィルター上で吸引ろ過し、80g/m2のシートを作製した。その結果を表1に示す。
上記の懸濁液を高速解繊機(エムテクニック社製「クレアミックス」)で21,500回転、30分間解繊し(微細化処理)、微細繊維状セルロース水系懸濁液を得、この上澄み液濃度を測定した。得られた微細繊維状セルロース懸濁液について遠心分離機(コクサン社製「H−200NR」)を用いて約12,000Gで10分間処理し、上澄み液濃度を測定し、以下のような計算式から収率を求めた。
収率(%)=(遠心分離後の上澄み液の濃度)÷(微細化処理後のスラリー濃度)×100
遠心分離して得た上澄み液中の繊維を電子顕微鏡で観察し、繊維幅を測定した。さらに遠心分離して得られた上澄み液を孔径0.45μmのメンブレンフィルター上で吸引ろ過し、80g/m2のシートを作製した。その結果を表1に示す。
<実施例2>
材種としてはベイマツを用い、脱リグニン工程での酸性水溶液として10%の硫酸を用いた以外は、実施例1と同様にして本発明の微細繊維状セルロースおよびそのシ−トを得た。その結果を表1に示す。
材種としてはベイマツを用い、脱リグニン工程での酸性水溶液として10%の硫酸を用いた以外は、実施例1と同様にして本発明の微細繊維状セルロースおよびそのシ−トを得た。その結果を表1に示す。
<実施例3>
材種としては樹齢8年の植林木ユーカリを用い、脱リグニン工程での酸性水溶液として10%の酢酸を用いた以外は、実施例1と同様にして本発明の微細繊維状セルロースおよびそのシ−トを得た。その結果を表1に示す。
材種としては樹齢8年の植林木ユーカリを用い、脱リグニン工程での酸性水溶液として10%の酢酸を用いた以外は、実施例1と同様にして本発明の微細繊維状セルロースおよびそのシ−トを得た。その結果を表1に示す。
<実施例4>
材種としてはベイマツを用い、脱リグニン工程での酸性水溶液として過酢酸を用いた以外は、実施例1と同様にして本発明の微細繊維状セルロースおよびそのシ−トを得た。なお、過酢酸は無水酢酸と30%過酸化水素を液量として1:1に混合して調整し、これを脱脂処理後の原料(BD15g)に対して過酸化水素当量で4.5%に相当する過酢酸水溶液を750ml加え、90℃で1時間処理した。その結果を表1に示す。
材種としてはベイマツを用い、脱リグニン工程での酸性水溶液として過酢酸を用いた以外は、実施例1と同様にして本発明の微細繊維状セルロースおよびそのシ−トを得た。なお、過酢酸は無水酢酸と30%過酸化水素を液量として1:1に混合して調整し、これを脱脂処理後の原料(BD15g)に対して過酸化水素当量で4.5%に相当する過酢酸水溶液を750ml加え、90℃で1時間処理した。その結果を表1に示す。
<実施例5>
材種としては樹齢8年の植林木ユーカリを用い、脱リグニン工程での酸性水溶液としては過酢酸と過硫酸混合液(100質量%の酢酸、98質量%の硫酸、60質量%の過酸化水素を1:1.5:1(モル比))を脱脂処理後の原料(BD15g)に対して過酸化水素当量で4.5%に相当する過酸水溶液を750ml加え、90℃で1時間処理した以外は、実施例1と同様にして本発明の微細繊維状セルロースおよびそのシ−トを得た。その結果を表1に示す。
材種としては樹齢8年の植林木ユーカリを用い、脱リグニン工程での酸性水溶液としては過酢酸と過硫酸混合液(100質量%の酢酸、98質量%の硫酸、60質量%の過酸化水素を1:1.5:1(モル比))を脱脂処理後の原料(BD15g)に対して過酸化水素当量で4.5%に相当する過酸水溶液を750ml加え、90℃で1時間処理した以外は、実施例1と同様にして本発明の微細繊維状セルロースおよびそのシ−トを得た。その結果を表1に示す。
<比較例1>
長径が120μm、短径が50μm、アスペクト比が2.4であるベイマツ木粉を用いた以外は、実施例1と同様にして微細繊維状セルロース水系懸濁液を得た。その結果を表1に示す。
長径が120μm、短径が50μm、アスペクト比が2.4であるベイマツ木粉を用いた以外は、実施例1と同様にして微細繊維状セルロース水系懸濁液を得た。その結果を表1に示す。
<比較例2>
ベイマツの含水量を30%にして木粉化した以外は、実施例2と同様にして、微細繊維状セルロース水系懸濁液を得た。その結果を表1に示す。
ベイマツの含水量を30%にして木粉化した以外は、実施例2と同様にして、微細繊維状セルロース水系懸濁液を得た。その結果を表1に示す。
<比較例3>
脱リグニン工程で、酢酸に苛性ソーダを加えてpHを5以上とし、温度を60℃で行なった以外は、実施例3と同様にして微細繊維状セルロース水系懸濁液を得た。その結果を表1に示す。
脱リグニン工程で、酢酸に苛性ソーダを加えてpHを5以上とし、温度を60℃で行なった以外は、実施例3と同様にして微細繊維状セルロース水系懸濁液を得た。その結果を表1に示す。
表1から明らかなように、ベイマツまたはユーカリの木粉の形態を最適範囲になるように、含水率と微粉砕機を選択することによって、その後の高温・低pHでの酸性水溶液を用いる脱リグニンを含む化学処理を行なった後、微細化処理を経ることによって、最大繊維幅は1000nm以下で、微細化処理工程での収率が90%以上の微細繊維が、二つの異なる材種の差異にかかわらず得られることがわかる。一方、両木種ともに、木粉の形状が請求の範囲を超えると、この系での収率が低下することがわかる。
本発明により、微細化処理工程での収率が高い、最大繊維幅1000nm以下の微細繊維状セルロースを簡便な方法により効率的に製造することが可能となる。
Claims (6)
- 木材チップを木粉化し、それを化学処理した後、微細化処理を経て最大繊維幅1000nm以下の微細繊維状セルロースを製造する方法において、化学処理工程に供せられる木粉の形状を、粒度・形状分布測定における個数での累積が50%となる点において、長径が30〜50μm、短径が15〜35μmとなるように処理した後、脱脂処理、脱リグニン処理、脱ヘミセルロース処理の順に化学処理を行い、かつ脱リグニン処理における温度が70〜99℃、pHが3以下で処理することを特徴とする微細繊維状セルロースの製造方法。
- 前記木粉のアスペクト比が1〜2となるように処理することを特徴とする請求項1に記載の微細繊維状セルロースの製造方法。
- 木材チップを粗粉砕し、分級することなく、粉砕媒体を用いる衝撃方式で微粉砕した木粉を前記化学処理工程に供することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の微細繊維状セルロースの製造方法。
- 前記木材チップの含水率を10%以下とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の微細繊維状セルロースの製造方法。
- 前記脱リグニン処理において、硫酸、塩酸、硝酸、酢酸、蟻酸、炭酸、リン酸、安息香酸、メタクロロ安息香酸、プロピオン酸から選択される少なくとも1種類の酸性水溶液を用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の微細繊維状セルロースの製造方法。
- 前記脱リグニン処理において、さらに過酸化水素を併用することを特徴とする1〜5のいずれか1項に記載の微細繊維状セルロースの製造方法。
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