JP2013087132A - 微細繊維状セルロースの製造方法 - Google Patents

微細繊維状セルロースの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】微細繊維状セルロースを簡便な方法で、高収率で製造するための製造方法を提供する。
【解決手段】木材を木粉化し、化学処理を行った後、微細化処理を経て微細繊維状セルロースを製造する方法であって、化学処理工程は脱脂処理、脱リグニン処理、およびアルカリ処理の各工程を含有し、アルカリ処理工程のアルカリ処理液の濃度が0.1〜1.5質量%であることを特徴とする微細繊維状セルロースの製造方法。アルカリ処理工程の温度が10〜40℃であり、処理時間が1時間以内が好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、微細繊維状セルロースの製造方法に関する。
近年、物質をナノメートルサイズの大きさにすることによりバルクや分子レベルとは異なる物性を得ることを目的としたナノテクノロジーが注目されている。一方で、石油資源の代替および環境意識の高まりから再生産可能な天然繊維の応用にも注目が集まっている。
天然繊維の中でもセルロース繊維、とりわけ木材由来のセルロース繊維(パルプ)は主に紙製品として幅広く使用されている。紙に使用されるセルロース繊維の幅は10〜50μmのものがほとんどである。このようなセルロース繊維から得られる紙(シート)は不透明であり、不透明であるが故に印刷用紙として幅広く利用されている。一方、セルロース繊維をレファイナーやニーダー、サンドグラインダーなどで処理(叩解、粉砕)し、セルロース繊維を微細化すると透明紙(グラシン紙等)が得られる。しかし、この透明紙の透明性は半透明レベルであり、光の透過性は高分子フィルムに比べると低く、曇り度合い(ヘーズ値)も大きい。
また、セルロース繊維は弾性率が高く、熱膨張率の低いセルロース結晶の集合体であり、セルロース繊維を樹脂と複合化することによって寸法安定性が高まるため、積層板などに利用されている。ただし、通常のセルロース繊維は結晶部分と非晶部分との集合体であり、筒状の空隙のある繊維のため寸法安定性には限界がある。
セルロース繊維を種々な方法で処理し、その繊維幅をナノレベルにすると微細繊維状セルロースの水分散液の透明性が上がる。一方、微細繊維状セルロースシートは空隙を含むため白く乱反射し、不透明性が高くなるが、微細繊維状セルロースシートに樹脂を含浸すると空隙が埋まるため、透明性の高いシートが得られる。微細繊維状セルロースシートの繊維は非常に剛直で、また、繊維幅が狭いため、通常のセルロースシート(紙)に比べると同質量において繊維の本数が飛躍的に多くなり、樹脂と複合化すると樹脂中で細い繊維がより均一かつ緻密に分散し、耐熱寸法安定性や強度が飛躍的に向上する。このような微細繊維状セルロースは各種用途に利用でき、大きな期待が寄せられている。
セルロースは層構造となって、さらにリグニンやヘミセルロースといった成分と化学的に結合しているため、機械的な粉砕処理のみでは、樹脂と複合した時の最終製品での着色が問題となる。最大繊維幅1000nm以下の微細繊維状セルロースを得るためには、化学的あるいは生物学的処理と機械的粉砕処理とを組合せた方法が一般に使用されている。
この組合せの方法としては、パルプを軽度に加水分解し、濾過水洗後、乾燥、粉砕して一部非晶領域を含むセルロース微粒子の製造方法や精製パルプを塩酸または硫酸で加水分解して結晶領域のみを残して微粉化する技術(非特許文献1)が開示されている。しかしながら、微細化のレベルは充分ではなく、得られた水系懸濁液中の微細繊維状セルロースの含有比率が低い。
また、酵素処理、酸処理、アルカリ処理、膨潤薬品処理を組み合わせて前処理した繊維状セルロースを振動ミル粉砕機にて湿式粉砕する技術も開示されている(特許文献1)が、酵素反応の効率が低く、生産性の高い微細繊維状セルロースの製造方法とはいえない。
繊維状セルロースの原料として木材パルプを使用した場合、数平均繊維長が0.8mm未満である短繊維のパルプとして、国産ドロノキ、シナノキや、外国産のアスペン、ユーカリなどを機械的方法や化学的方法で繊維を抽出したものを予備叩解して、それを砥粒板すり合わせ装置で微細化して、微細フィブリル化セルロースを得る方法(特許文献2)が記載されているが、微細化に供するパルプスラリーの固形分濃度を高くすると、急激に処理効率が低下するという問題が残されている。
特許文献3や特許文献4には、N-オキシル化合物および臭化物/ヨウ化物の存在下で、酸化材を用いて広葉樹や針葉樹のパルプなどのセルロース系原料を酸化して、酸化されたセルロースを湿式微粒化処理し、そのセルロースナノファイバーを製紙用添加剤に用いて印刷用紙を製造する方法が記述されている。しかしながら、この方法も微細繊維状セルロースの生産効率が十分高いとは言えない。また、繊維表面に親水基が導入されるので、疎水性の樹脂の含浸が問題になる。
一方、繊維状セルロースの原料としてバクテリアセルロースあるいはコットンを使用した場合(特許文献5、特許文献6)、バクテリアセルロースでは繊維自体が絡みあいではなく、主として分岐によりネットワークが形成されているため、ネットワークが解繊されずに絡まってしまい、解繊が困難である。一方、コットンはリグニンやヘミセルロースを含んでいないため、機械的な解繊効率が悪く、そのため解繊の時間を延ばすと、結晶セルロースが破壊されて結晶化度が低下し、得られた繊維強化複合材料の線膨張係数が大きくなり、また弾性率も低下する欠点があった。
特許文献7、8では、木粉を脱脂し、亜塩素酸ナトリウムと酢酸で脱リグニンし、洗浄、脱ヘミセルロースした後、微細化して微細繊維状セルロースを製造する方法が提案されている。
ヘミセルロースの除去については、高濃度アルカリ金属の水酸化物の水溶液を用いて、室温で一晩浸漬処理したり、該水溶液中で攪拌しながら高温で短時間処理したり、該水溶液中に圧力下で攪拌しながら高温高圧下で処理する方法などが挙げられている。これらの方法は、アルカリ処理工程のpHが高く、積極的に脱ヘミセルロースを行なうことが目的であり、微細繊維状セルロースの収率が高くない。
上記のように、繊維状セルロースを微細化する技術が種々開示されているが、工業的なレベルで収率の高い微細繊維状セルロースの製造方法が強く望まれている。
山口章、「セルロースの微粉化・ミクロフィブリル化」、紙パルプ技術タイムス、28巻9号、6〜8頁(1985年)
特開平6−10288号公報 特許第3036354号公報 特開2009−263850号公報 特開2009−263849号公報 特開2005−60680号公報 特開2007−51266号公報 特開2008−24788号公報 特開2008−242154号公報
本発明の目的は、微細繊維状セルロースを簡便な方法で、高収率で製造するための製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、木粉の化学処理工程において、脱リグニン処理を行なった後のアルカリ処理の処理条件が、繊維の微細化に大きく影響を及ぼすことが分かった。アルカリ処理液の濃度を0.1〜1.5質量%にし、さらに短時間で処理を行うことで、微細繊維状セルロースが高収率で得られ、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の各発明を包含する。
(1)木材を木粉化し、化学処理を行った後、微細化処理を経て微細繊維状セルロースを製造する方法であって、化学処理工程を構成するアルカリ処理工程のアルカリ処理液の濃度が0.1〜1.5質量%であることを特徴とする微細繊維状セルロースの製造方法。
(2)化学処理工程が、脱脂処理、脱リグニン処理、およびアルカリ処理の各工程を含有し、該アルカリ処理工程の温度が10〜40℃であり、処理時間が1時間以内である(1)に記載の微細繊維状セルロースの製造方法。
(3)アルカリ処理工程に使用されるアルカリ処理液が、アンモニア水、水酸化アルカリ金属水溶液の中から選ばれることを特徴とする(1)、(2)のいずれか1項に記載の微細繊維状セルロースの製造方法。
(4)水酸化アルカリ金属が、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムであることを特徴とする(3)に記載の微細繊維状セルロースの製造方法。
本発明の製造方法により、微細化工程での解繊性が向上し、微細繊維状セルロースが高収率で得られる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は木材を木粉化し、化学処理を行った後、微細化処理して微細繊維状セルロースを得る方法であり、化学処理工程を構成するアルカリ処理工程のアルカリ処理液の濃度が0.1〜1.5質量%であることが特徴である。化学処理工程が、脱脂処理、脱リグニン処理、およびアルカリ処理の各工程を含有するものが本発明の好ましい形態である。
(木粉)
木粉用の木材は特に限定するものではなく、例えば、針葉樹(国産のベイマツ、エゾマツ、トドマツ、アカマツ、カラマツ等、外国産のブラックスプルース、ホワイトスプルース、ダグラスファー、ウェスターンヘムロック、サウザーンパイン、ジャックパイン等)、広葉樹(国産のドノノキ、シナノキ、セン、ポプラ、カバ等、外国産のアスペン、コットンウッド、ブラックウィロー、イエローポプラ、イエローバーチ、ユーカリ等)などが挙げられ、なかでもベイマツやユーカリが好ましい。特にユーカリの植林木由来の原料は、材の均一性が高いので好ましい実施態様である。
本発明において使用可能である植林木由来のユーカリはグロブラス、グランディス、カマルドレンシス、ペリータ、サリグナ、ダニアイ、ナイテンス、カマルドレンシスとユーロフィラとのハイブリッド等から選択される少なくとも1種の材が挙げられる。
本発明において、木材を一旦チップにしてから木粉を製造した方が、木粉を効率よく得ることが可能である。木材チップは、通常パルプ製造に用いられる方法と同様の方法が挙げられる。例えばベイマツまたはユーカリチップ(厚みが2mm〜8mm)を、含水率が10%以下になるように天日干しあるいは強制的に乾燥機で乾燥させた後、粉砕処理工程でチップを粉砕し、木粉を製造する。チップの粒径分布には特に規定はないが、厚みは2mm〜8mmのものが、木粉化しやすいので好適に使用される。チップの含水率が10%超えると、最終の微細繊維状セルロースの結晶化度が大幅に低下するので、好ましくない。
本発明の木粉製造においては、粗粉砕機にはシュレッダー、カッターミルなどのせん断式粉砕機、ジュークラッシャーやコーンクラッシャーなどの圧縮式粉砕機、インパクト、クラッシャーなどの衝撃式粉砕機、あるいはロールミル、スタンプミル、エッジランナー、ロッドミルなどの中粉機の中から、最終の用途やコストの点から任意に選ぶことができる。
粗粉砕後、分級することなく、該木粉を微粉砕処理するが、微粉砕処理には自生粉砕機、竪型ローラーミル、高速回転ミル、分級機内蔵型高速回転ミル、容器駆動媒体ミル、媒体攪拌式ミル、気流式粉砕機、圧密せん断ミルおよびコロイドミルなどがあるが、セラミックス製、ジルコニューム製、アルミナ製、SUS製などのボールやロッドなどの媒体を用いて粉体化する衝撃方式が好ましい。
木粉にすることは、木材中の成分と薬品との接触を増やす点で重要である。本発明における木粉の粒度分布は、粉砕時間や濃度、媒体の種類などの粉砕条件を適宜変更することで調製できるが、好ましくは個数の平均粒径が10〜500μm、さらに好ましくは50〜300μmである。
(脱脂工程)
本発明において、微細繊維状セルロースを得るためには、上記木粉を少なくとも脱脂工程、脱リグニン工程、アルカリ処理工程を経て処理することが好ましい。
本発明の脱脂工程は特に限定するものではないが、一般製紙に用いる脱脂工程と同様の方法で行うことができる。例えば、脱脂処理液として、炭酸塩、アルコール、アルコール/ベンゼンの1:2混合溶液であるアルベン、ベンゼン、脂肪酸のトリグリセリドを分解する酵素であるリパーゼなどを適宜用いることができる。前記脱脂処理液を木粉に添加し、常温で攪拌しながら、あるいは高温高圧で処理する方法等が挙げられる。脱脂処理液としては安価で、かつ有機溶媒ではなく、さらに圧力容器を用いず簡便に使用でき、しかも脱脂効率が高いという理由で炭酸ナトリウム法が好ましい。
脱脂工程における炭酸ナトリウムは水溶液として使用するが、水溶液の炭酸ナトリウムの濃度は0.1質量%〜10質量%が好ましく、0.1質量%未満では脱脂効率が低下して好ましくない。一方、濃度が10質量%を超えると脱脂効果が頭打ちとなり不経済である。
原料に対する炭酸ナトリウム水溶液の添加量は、1質量%〜10質量%が好ましい。1質量%未満では生産性が低く、好ましくない。一方、10質量%を超えると脱脂効率が低下し好ましくない。
脱脂処理時の温度は40℃〜99℃が好ましく、40℃未満になると脱脂効率が低下し、好ましくない。一方、100℃を超えると微細繊維化が困難となり好ましくない。
(脱リグニン工程)
前記脱脂処理後の原料には多くのリグニンを含有し、脱リグニン処理が必要である。本発明の脱リグニン処理は特に限定するものではないが、一般製紙に用いる脱リグニン工程と同様の方法で行うことができる。例えば、脱リグニン工程に用いる酸性水溶液としては、酢酸、硫酸、炭酸、リン酸、硝酸、過塩素酸、安息香酸、メタクロロ安息香酸、蟻酸、プロピオン酸等の水溶液が挙げられるが、扱い方が比較的容易でpHを低めにできる硫酸、塩酸、硝酸、ギ酸および酢酸の各水溶液を用いる方法が好ましい。
脱脂処理後の原料に添加する酸性水溶液の濃度は、脱リグニン処理液のpHを3以下にできる濃度が好ましい。pHが3以下にすると脱リグニンが進み、バインダーのリグニンが効率よく除去できるので、好ましい。脱脂された原料に対する酸性水溶液の添加量は0.1質量%〜50質量%程度であり、好ましくは1質量%〜40質量%である。
脱脂処理後の原料を酸性水溶液で処理する時の温度は70℃〜99℃が好ましく、75℃〜98℃がさらに好ましく、80℃〜95℃が特に好ましい。温度が70℃未満では脱リグニンの効率が低下し、色が着いた状態となり好ましくない。一方、99℃を超えると微細繊維化が困難となり、好ましくない。
本発明においては、脱リグニンを促進するため、過酸化水素を併用しても良い。この場合は、生成する過酸化物の安定性や安全性の点で、硫酸、酢酸を用いることが好ましい。温度、pH、添加率は上記酸性水溶液を用いるときと同様の範囲が好ましい。
(アルカリ処理工程)
本発明においては脱リグニン後の原料を用いて、アルカリ処理を行なう。このアルカリ処理は、脱リグニンされたフラグメントを除去するにも有効である。従来の脱ヘミセルロースのアルカリ処理条件は、例えば特許文献7,8に記載されたように、水酸化カリウム水溶液の濃度を5質量%前後にし、室温で一晩浸漬処理したり、該水溶液中で攪拌しながら80℃の高温で2時間処理したり、該水溶液中で攪拌しながら高温高圧下で処理するなどが挙げられる。本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、アルカリ水溶液の濃度を低く抑え、つまり、積極的に脱ヘミセルロースを行わないことによって、後述の微細化工程にてセルロース繊維の解繊が著しく容易になり、微細繊維状セルロースが高収率で得られることが分かった。
本発明のアルカリ処理液の濃度は0.1〜1.5質量%(pHは約8.5〜11.5)、好ましくは0.3〜1.3質量%、さらに好ましくは0.5〜1.1質量%である。濃度が0.1質量%未満ではカルボキシル基の乖離が十分ではなく、1.5質量%を超えるとヘミセルロースがアルカリに溶解し始めるので、ヘミセルロース由来のカルボキシル基の量が減少するためか、微細繊維セルロースの収率が減少して、好ましくない。また、処理時間は1時間以内、より好ましくは30分以内で処理した方が好ましい。処理時間が1時間を超えると、ヘミセルロースがアルカリに溶解しやすくなり、ヘミセルロース由来のカルボキシル基の量が減少するためか、微細繊維状セルロースの収率が低下する。また、処理温度についても、10℃〜40℃が好ましく、15℃〜30℃がさらに好ましい。温度が10℃未満ではカルボキシル基の乖離が難しくなるので好ましくない。一方、温度が40℃を超えると微細繊維化が困難となるので好ましくない。アルカリ水溶液は、安価で、常温常圧で使用しやすいものとして、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アンモニアが好ましく選択される。中でも、特に水酸化カリウム、水酸化ナトリウムが好ましい。
脱リグニン後の原料とアルカリ水溶液の質量比は1:10〜1:30の範囲が好ましい。さらには、1:15〜1:20の範囲が好ましい。1:10よりもアルカリ水溶液の添加量が少ない場合は、原料とアルカリ水溶液の混合が不均一になるので好ましくない。一方、1:30よりもアルカリ水溶液の添加量が多い場合は、ヘミセルロースのアルカリへの溶解が過激になるので好ましくない。
アルカリ処理工程のアルカリ処理液の濃度を低く抑えて、その後の微細化工程の微細化が容易になる理由は、まだ定かではないが、例えば、水酸化カリウムを使用する場合、セルロースやヘミセルロースに存在するカルボキシル基が、アルカリと反応して
R-COOH+KOH → R-COOK + H2O (1)
の平衡が右に進み、静電気的な反発が強まったことで、微細なフィブリル間、さらには結晶領域を構成するミクロフィブリル間の結合力が低下して、機械的処理によるパルプを容易に微細化でき、その結果、繊維の解繊が容易になり、微細繊維の収率が上昇したものと推測される。従来の脱ヘミセルロースを目的としたアルカリ処理は、アルカリの濃度が高く、ヘミセルロースが積極的に除去され、上記の反応に資するカルボキシル基が減少して、電気的な反発力が弱くなり、微細化工程でセルロース繊維が微細化されにくく、微細繊維状セルロースの収率が低下したのではと推測される。また、高温や長時間処理は、同様にヘミセルロースが積極的に除去される方法のため、微細繊維状セルロースの収率を低下させたのではと考えられる。
(微細化処理)
上記アルカリ処理で得られたセルロース繊維を0.1〜7質量%、好ましくは0.3〜5質量%の水分散液を調整し、微細化処理に供される。濃度が0.1質量%未満では生産性が低下し、好ましくない。一方、濃度が7質量%を超えると、粉砕処理中に粘度が上昇し過ぎ、取扱いが非常に困難になるおそれがある。
本発明において、セルロース繊維の微細化方法は特に限定しないが、高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混錬機(二軸押出機)、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、ビーターなどの機械的作用を利用する湿式粉砕でセルロース系繊維を細くする方法が好ましい。なかでも、高速解繊機、石臼粉砕、高圧ホモジナイザー、あるいはボールミル処理は微細な繊維が効率的に得られるため、特に好ましい。
本発明の製造方法は、上述のように、脱脂工程、脱リグニン工程、アルカリ処理工程、微細化工程を含むことが好ましいが、さらに、各工程後に洗浄や水洗工程があってもよい。例えば、一例として、脱脂工程、脱リグニン工程、洗浄工程、アルカリ処理工程、水洗工程、微細化工程が挙げられる。
同じ木粉を用いて、本発明の化学処理工程を行ったものは、一般製紙の化学処理工程や特許文献7,8に示された化学処理工程を行ったものよりも、微細化処理において、解繊しやすく、微細繊維状セルロースが効率よく得られる。つまり、微細繊維状セルロースの収率が高い。一般的に、平均繊維幅が2〜1000nm、特に2〜200nmの微細繊維状セルロースを得るためには、微細化処理工程において、大量のエネルギーが消費される。本発明の製造方法は、少ないエネルギーで微細繊維状セルロースを得ることが可能なため、上記繊維幅の微細繊維状セルロースを得るためには、特に有効である。例えば、最大繊維幅が1000nm以下の微細繊維状セルロースを得るためには、本発明の化学処理工程にて処理し、微細化処理後、遠心分離して上澄みを採取すれば得ることが可能である。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の部及び%は特に断らない限り、それぞれ質量部及び質量%を示す。
(チップの処理)
パルプの製造に供するベイマツあるいはユーカリチップを、チップ厚み分級装置で、厚みが8mmパスで2mmオン分のチップに分級した後、天日でチップの含水率(水分量/水分量を含むチップ全量の割合)を10%以下に調節し、木粉化の試料とした。
(木粉化処理)
該チップを、(株)東洋油圧工業製の粗粉砕機(型式TYM−600−350−WS)を用いて、粗粉砕した。それを分級することなく、粉砕媒体にロッドを二段に用いる中央化工機(株)製のCDミル(型式CD-30型)を用いて、個数の平均粒径が100〜250μm程度になるように、処理時間を変えて微粉砕した。
(脱脂処理)
該木粉は、セルロース繊維(BD15g)を2%炭酸ナトリウム水溶液中で攪拌しながら90℃で5時間処理した。処理後の原料は、10倍量の蒸留水で洗浄し、ブフナーで脱水した後、蒸留水を加えて濃度を調整した。
(脱リグニン処理)
脱脂処理した木粉を過酢酸で脱リグニンを行なった。過酢酸は無水酢酸と30%過酸化水素を液量として1:1に混合して調整し、これを、脱脂処理後の原料(BD15g)に対して過酸化水素当量で4.5%に相当する過酸水溶液を750ml加え、90℃で1時間処理した。処理後の原料は、10倍量の蒸留水で洗浄し、ブフナーで脱水した後、蒸留水を加えて濃度を調整した。
(アルカリ処理)
スラリー状の脱リグニン処理した原料(BD15g)に下記実施例及び比較例の各濃度のアルカリ金属水溶液を250cc加えて調製後、マグネチックスターラーで緩やかに攪拌しながら15分間、20℃で静置し処理した。10倍量の蒸留水で洗浄し、ブフナーで脱水し、蒸留水を加えて0.5%のパルプ懸濁液を作製した
(微細化処理と収率)
上記の懸濁液を、高速解繊機(エムテクニック社製「クレアミックス」)で21,500回転、30分間解繊し(微細化処理)、微細繊維状セルロース含有水系懸濁液を得た。得られた微細繊維状セルロース含有懸濁液を遠心分離機(コクサン社製「H−200NR」)で約12,000G、10分間処理し、上澄み液の濃度を測定後、以下の計算式から微細繊維状セルロースの収率を求めた。
収率(%)=(遠心分離後の上澄み液の濃度)÷(0.5%)×100
遠心分離して得た上澄み液中の繊維を電子顕微鏡で観察して繊維径を測定し、最大繊維幅は1000nm以下であることを確認した。
(実施例1)
材種としてはベイマツを用い、アルカリ処理工程でのアルカリ水溶液として1%濃度の水酸化カリウムを用いた以外は、上記記載の方法で行ない、微細繊維状セルロースの収率を測定した。その結果を表1に示す。
(実施例2)
材種としてはベイマツを用い、アルカリ処理工程でのアルカリ水溶液として1%濃度の水酸化ナトリウムを用いた以外は、実施例1と同様にして微細繊維状セルロース水系懸濁液を得た。その収率を測定し、結果を表1に示す。
(実施例3)
材種としては樹齢8年の植林木ユーカリを用いた以外は、実施例1と同様にして微細繊維状セルロース水系懸濁液を得た。その収率を測定し、結果を表1に示す。
(実施例4)
材種としては樹齢8年の植林木ユーカリを用い、アルカリ処理工程でのアルカリ水溶液として1%濃度の水酸化ナトリウムを用いた以外は、実施例1と同様にして微細繊維状セルロース水系懸濁液を得た。その収率を測定し、結果を表1に示す。
(実施例5)
アルカリ処理工程でのアルカリ水溶液として0.3%濃度の水酸化カリウムを用いた以外は、実施例1と同様にして微細繊維状セルロース水系懸濁液を得た。その収率を測定し、結果を表1に示す。
(実施例6)
アルカリ処理工程でのアルカリ水溶液として1.2%濃度の水酸化カリウムを用いた以外は、実施例1と同様にして微細繊維状セルロース水系懸濁液を得た。その収率を測定し、結果を表1に示す。
(実施例7)
アルカリ処理工程でアルカリ処理時間を50分とした以外は、実施例1と同様にして微細繊維状セルロース水系懸濁液を得た。その収率を測定し、結果を表1に示す。
(実施例8)
材種としては樹齢8年の植林木ユーカリを用い、アルカリ処理工程でのアルカリ処理時間を1.5時間とした以外は、実施例1と同様にして微細繊維状セルロース水系懸濁液を得た。その収率を測定し、結果を表1に示す。
(実施例9)
材種としては樹齢8年の植林木ユーカリを用い、アルカリ処理工程でのアルカリ処理温度を45℃にした以外は、実施例1と同様にして微細繊維状セルロース水系懸濁液を得た。その収率を測定し、結果を表1に示す。
(実施例10)
材種としては樹齢8年の植林木ユーカリを用い、アルカリ処理工程でアルカリ処理温度を5℃にした以外は、実施例1と同様にして微細繊維状セルロース水系懸濁液を得た。その収率を測定し、結果を表1に示す。
(比較例1)
アルカリ処理工程でのアルカリ水溶液として1.6%濃度の水酸化カリウムを用いた以外は、実施例1と同様にして微細繊維状セルロース水系懸濁液を得た。その収率を測定し、結果を表1に示す。
(比較例2)
アルカリ処理工程でのアルカリ水溶液として0.07%濃度の水酸化カリウムを用いた以外は、実施例1と同様にして微細繊維状セルロース水系懸濁液を得た。その収率を測定し、その結果を表1に示す。
(比較例3)
アルカリ処理工程でのアルカリ水溶液として4%濃度の水酸化ナトリウムを用いた以外は、実施例3と同様にして微細繊維状セルロース水系懸濁液を得た。その収率を測定し、結果を表1に示す。
(比較例4)
アルカリ処理工程でのアルカリ処理時間を50分にした以外は、比較例3と同様にして、微細繊維状セルロース水系懸濁液を得た。その収率を測定し、結果を表1に示す。
(比較例5)
アルカリ処理工程でのアルカリ処理温度を45℃にした以外は、比較例3と同様にして、微細繊維状セルロース水系懸濁液を得た。その収率を測定し、結果を表1に示す。
Figure 2013087132
表1から明らかなように、アルカリ処理工程のアルカリ処理液の濃度が本発明の範囲であれば、微細化処理工程における微細繊維状セルロースの収率が高い。
本発明により得られた微細繊維状セルロースは食品、タイヤ、抄紙原料、紙塗工用塗料などの添加材料として使用することが可能である。また、本発明により得られた微細繊維状セルロースをシート化して、電池用セパレータ、キャパシタ用セパレータ、ろ過膜用フィルタ、電子部品用基板、光学部品用基板、家電用筐体、電子機器用筐体、建築材料、自動車用内装材および外装材などに好適に使用することができる。

Claims (4)

  1. 木材を木粉化し、化学処理を行った後、微細化処理を経て微細繊維状セルロースを製造する方法であって、化学処理工程を構成するアルカリ処理工程のアルカリ処理液の濃度が0.1〜1.5質量%であることを特徴とする微細繊維状セルロースの製造方法。
  2. 化学処理工程が、脱脂処理、脱リグニン処理、およびアルカリ処理の各工程を含有し、該アルカリ処理工程の温度が10〜40℃であり、処理時間が1時間以内である請求項1に記載の微細繊維状セルロースの製造方法。
  3. アルカリ処理工程に使用されるアルカリ処理液が、アンモニア水、水酸化アルカリ金属水溶液の中から選ばれることを特徴とする請求項1、2のいずれか1項に記載の微細繊維状セルロースの製造方法。
  4. 水酸化アルカリ金属が、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムであることを特徴とする請求項3に記載の微細繊維状セルロースの製造方法。
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