JP2017052841A - ポリマー溶液の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】予めポリマーが溶解した溶液を、前記ポリマーのガラス転移転温度より高い温度で、高速回転式せん断装置により撹拌翼の周速を4.5m/秒以上にして処理するポリマー溶液の製造方法。
【選択図】なし
Description
樹脂を原料としたフィルムの用途の広がりに伴い、フィルムに課せられる課題も多様化しているが、多くの用途のフィルムに求められる性能として高透明性が挙げられる。透明性の指標としては多くの場合、拡散透過率を全光線透過率で除した値であるヘイズが用いられ、ヘイズは通常は百分率で表記される。光学用途のフィルムには特に高い透明性が求められている。例えば、液晶ディスプレイは通常多層のフィルムからなるが、パネル光の乱反射を防止するために、いずれの層のフィルムにおいても低ヘイズ化が要求されており、ヘイズ0.5%以下の領域における0.1%の差が大きな影響を及ぼす場合もある(非特許文献1)。
[1]予めポリマーが溶解した溶液を、前記ポリマーのガラス転移転温度より高い温度で
、高速回転式せん断装置により撹拌翼の周速を4.5m/秒以上として処理するポリマー溶液の製造方法。
[2]前記ポリマーが結晶性ポリマーである[1]に記載のポリマー溶液の製造方法。
[3]前記ポリマーがポリビニルアルコールである[1]又は[2]に記載のポリマー溶
液の製造方法。
[4]前記ポリビニルアルコールのけん化度が70%以上である[3]に記載のポリマー溶液の製造方法。
[5]前記ポリマー溶液が、下記の(1)又は/及び(2)を満たすフィラーを含む[1]〜[4]の何れかに記載のポリマー溶液の製造方法。
(2)数平均長軸方向長さが100μm以下
[6]前記フィラーが、セルロース又はその変性物である[1]〜[5]の何れかに記載のポリマー溶液の製造方法。
[7][1]〜[6]の何れかに記載の製造方法で製造されたポリマー溶液を乾燥することにより得られるフィルム。
本発明で用いるポリマーの種類は、用いる溶媒に溶解するものであれば特に制限されず、熱可塑性、硬化性、生分解性などの機能を有するものであっても構わない。また、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。さらにいえば、繰り返し単位を構成するモノマー種、繰り返し単位間の結合種、結合様式などいずれの種類のポリマーであっても用いることがでる。また、単独重合体、ランダム重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、櫛形共重合体、グラフト共重合体、星形共重合体などの共重合体であっても何ら問題無く適用可能である。
熱硬化性ポリマーとしては、例えば、エポキシ系、アクリル系、オキセタン系、フェノール系、尿素系、メラミン系、不飽和ポリエステル系、ケイ素系、ウレタン系、ジアリルフタレート系のポリマーなどが挙げられる。ただし、高速回転式せん断装置による処理温度で硬化しない必要がある。
湿気硬化性ポリマーとしては、例えば、ケイ素系、ウレタン系、シアノアクリレート系
のポリマーなどが挙げられる。
生分解性ポリマーとしては、例えば、脂肪族ポリエステル、ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリグリコール酸、変性ポリビニルアルコールなどが挙げられる。
代表的な結晶性ポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの脂肪族ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリアセタール、シンジオタクチックポリスチレン、芳香族ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミドなどが挙げられる。これらを含むいずれの結晶性ポリマーでも使用することができるが、特にポリビニルアルコールを用いた場合は、水溶性であるため溶媒に水を用いることができ、環境負荷、安全性、コストの観点から好ましい。
本発明で使用する溶媒の種類は、使用するポリマーを溶解させるものであれば特に制限されず、水、有機溶媒の両方を使用することができ、二種類以上混合して使用しても構わないが、環境負荷、安全性、コストの観点から水を使用することが好ましい。
有機溶媒を使用する場合においても、その種類は特に制限されない。代表的な有機溶媒としては脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、非プロトン性極性溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、ハロゲン系溶媒などが挙げられる。
トラクロロエチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、1−ブロモプロパン、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2‐プロパノールなどが挙げられる。使用する溶媒は、使用するポリマーのガラス転移温度よりも常圧における沸点が高い方が好ましいが、ガラス転移温度よりも沸点が低い溶媒であっても、密閉可能な耐圧容器を使用したり、沸点上昇効果がある物質を別途加えることにより、ガラス転移点よりも沸点を上昇させることで使用することができる。
溶液の粘度調整や得られるフィルムへの性能付与などを目的として、フィラーを添加することができる。フィラーの種類は特に制限されず、球状、棒状、繊維状、不定形などの各種フィラーを単独、または複数使用することができる。
フィラーの大きさは特に制限されないが、フィラーの数平均径は、小さい方が好ましく、通常100μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは1μm以下であるが、通常0.1μm以上である。また、数平均長軸方向長さも、短い方が好ましく、通常100μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは1μ以下であるが、通常0.1μm以上である。上記範囲内とすることにより、フィラーのヘイズ上昇効果が併発し難くなる。
また、原料を木材チップまたは木粉などの状態に破砕してもよく、該破砕は上述の如く、精製処理前、処理の途中、処理後、いずれのタイミングで行ってもかまわない。
セルロース繊維の精製処理に使用する酸または塩基、その他の処理剤は、特に制限されない。例えば、酸としては、酢酸、シュウ酸などが挙げられる。塩基としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。その他の処理剤としては、硫化ナトリウム、硫化マグネシウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸マグネシウム、亜硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、チオ硫酸トリウム、酸化ナトリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸ナトリウム、塩素酸ナトリウム、二酸化塩素、塩素、過塩素酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、過酸化水素、オゾン、ハイ
ドロサルファイト、アントラキノン、ジヒドロジヒドロキシアントラセン、テトラヒドロアントラキノン、アントラヒドロキノン、また、エタノール、メタノール、2−プロパノールなどのアルコール類並びにアセトンなどの水溶性有機溶媒などが挙げられる。これらの処理剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
2種以上の処理剤を用いて、2以上の精製処理を行うこともできる。その場合、異なる処理剤を用いた精製処理間に、水で洗浄処理することが好ましい。
精製処理時の温度、圧力は特に制限はなく、温度は通常0℃以上100℃以下の範囲で選択さる。1気圧を超える加圧下での処理の場合、温度は通常100℃以上200℃以下とすることが好ましい。
本発明においては、使用されるセルロース繊維は、化学修飾によって誘導化されたものであってもよい。化学修飾とは、セルロース中の水酸基に化学修飾剤を反応させることである。
化学修飾によってセルロースの水酸基に導入する置換基(水酸基中の水素原子と置換して導入される基)は特に制限されず、例えば、アセチル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロピオニル基、プロピオロイル基、ブチリル基、2−ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイ基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、フロイル基、シンナモイル基等のアシル基、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアノイル基等のイソシアネート基、メチル基、エチル基、プロピル基、2−プロピル基、ブチル基、2−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基等のアルキル基、オキシラン基、オキセタン基、チイラン基およびチエタン基等が挙げられる。これらの中では特にアセチル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ベンゾイル基およびナフトイル基等の炭素数2〜12のアシル基が好ましい。また、上記に加えイオン性基を導入してもよく、カチオン性基としてはアンモニウム基、ホスホニウム基、スルホニウム基、およびこれらを含む基などが挙げられる。また、アニオン性基としてはカルボン酸基、スルホン酸基、オキソリン酸基、およびこれらの水素原子を一部または全部別の陽イオンで置換したものなどが挙げられる。
本発明におけるポリマー溶液には、高速回転せん断処理を妨げない範囲でポリマー、溶媒、および上記のフィラー以外の成分を添加することができる。例えば、粘度調整剤、可塑剤、酸化防止剤、耐UV性付与剤、表面改質剤、界面活性剤、耐水性付与剤、耐油性付与剤、粘着付与剤、接着性付与剤、吸水剤、ガスバリア性付与剤などが挙げられる。
ポリマーを予め溶媒に溶解させる工程について説明する。
この工程では、ポリマー、溶媒、及び必要に応じて他の成分を混合し、ポリマーを溶解させる。各成分の混合割合は特に制限されないが、ポリマーと溶媒の重量比が、0.005〜0.9であることが好ましく、0.01〜0.7であることがより好ましく、0.03〜0.5であることがさらに好ましい。溶液中のポリマーが少なすぎる場合には溶液の粘度が低いため、十分なせん断力が付与されないことがある。溶液中のポリマーが多すぎる場合には溶液の粘度が高くなるため、装置への負荷が大きくなる。また、その他の成分の量についても特に制限されないが、フィラーなどのようにポリマー溶媒に不溶な成分は、ポリマー溶液100重量部に対し、好ましくは50重量部以下、より好ましくは10重量部以下、さらに好ましくは5重量部以下配合する。
ポリマーを溶媒に溶解させる際の温度は高い方が好ましいが、溶媒の分解温度以下で溶解させる必要がある。メカニカルスターラー、マグネチックスターラーなどの撹拌装置を備えた容器中で溶解させることが好ましく、撹拌翼やスターラーバーの周速は、4.5m/秒未満であり、通常は0.2〜1.0m/秒である。溶媒の温度が十分に高い場合には撹拌が不要な場合もある。また、溶媒の沸点以上で溶解させる場合には、耐圧容器を用いることが好ましい。
高速回転式せん断装置としては、板状、棒状、スクリュー状などの形状の翼を備えた回転軸を高速で回転させる方式もの、突起物を備えた円盤を高速で回転させる方式のものなどを使用することができるが、板状、棒状、スクリュー状などの形状の翼を備えた回転軸を高速で回転させる方式ものが好ましく、回転部の周囲にスリット有するスクリーンを装着することで回転と同時に発生するジェット流をせん断力として併用するものが特に好ましい。
高速回転式せん断装置による処理時の溶液温度は、ガラス転移温度以上であれば問題ないが、ガラス転移は僅かに幅を持った値で観測されることもあることから、十分なポリマ
ー鎖の運動性を得るためには、ガラス転移温度よりも2℃以上高いことが好ましく、5℃以上高いことがさらに好ましい。
高速回転式せん断装置による処理時の溶液温度は、ポリマーのガラス転位温度の、通常200℃以下、好ましくは100℃以下である。溶解温度が高すぎると、ポリマーや溶媒の熱分解が起こる可能性がある。
フィルム化の方法については特に限定されず、一般的な方法で構わない。
例えば、ポリマー溶液を、PETフィルム、ガラス、SUS板等にアプリケーターを用いて塗布したり、ゴム等で作製した枠型に流涎させたりした後、乾燥して、フィルム化させる。この際、流涎させる基板は必要に応じて温度をかけることが好ましい。この乾燥温度としては、通常、20〜150℃であることが好ましい。また、必要に応じて、段階的に温度をかけてもよい。
上記乾燥の後、必要に応じて熱処理を行ってもよい。熱処理の方法としては、例えば、熱ロール(カレンダーロールを含む)、熱風、遠赤外線、誘電加熱等の方法があげられる。上記熱処理は、通常50〜130℃で行うことが好ましく、より好ましくは60〜120℃である。
(フィルムの用途)
以上のようにして得られるフィルムの用途は特に限定されないが、ヘイズが著しく低いことから、特に光学フィルム用途に好適に使用することができる。
[ヘイズの測定方法]
JIS規格K7136に準拠し、スガ試験機製ヘーズメータを用いてC光によるヘイズ値を測定した。
セルロース繊維の数平均繊維径は、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、以下のようにして測定した。
手法:原子間力顕微鏡法(タッピングモード)
探針:未修飾のSi製カンチレバー(NCH)
環境:室温・大気中(湿度50%程度)
装置:ブルカー社製Digital Instrument NanoscopeIIIデ−タサンプリング数:512×512ポイント
AFM造の種別:高さ像、位相像(繊維一つひとつを認識するため)
画像解析法:AFM観察像から繊維をトレースして、繊維を一本ずつ抽出し、繊維一本の高さの最高値を繊維の太さとして計測した。この計測値を平均して数平均繊維径とした。
[カチオン化セルロース分散液]
セルロース繊維原料として広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP、王子ホールディング社製、固形分30質量%)固形分で100重量部に5N塩酸を2500体積部添加し、撹拌下85℃で1時間加熱した。これを冷却後、濾過し、中性になるまで水洗した。
このカチオン化セルロース繊維のカチオン基量は、0.57mmol/gであった。
得られたカチオン基を導入したセルロース繊維原料を0.5質量%含む水分散液を作製し、高速回転式ホモジナイザー(クレアミックス−0.8S、エム・テクニック社製)を用いて、20000rpmで60分間解繊処理を行った。
カチオン化ナノファイバーセルロースの数平均繊維径は4.8nmであった。
室温にて1Lオートクレーブ中にポリビニルアルコール58.5g(ゴーセノールNH−26、日本合成化学工業社製、ガラス転移温度85℃)、水384g、グリセリン7.92g(和光純薬社製)を量り取り密閉した後、120℃で2時間撹拌した。得られた溶液を高速回転式ホモジナイザー(クレアミックス−0.8S、ローターの平均外径20mm、エム・テクニック株式会社製)を用いて内温90℃、13000rpmの条件で1時間処理し、ポリビニルアルコール溶液を得た。
オーブン中で30秒処理し、膜厚30μmのフィルムを得た。
室温にて耐圧容器にポリビニルアルコール96.0g(ゴーセノールNH−26、日本合成化学工業社製)、水211g、グリセリン13.0g(和光純薬社製)を量り取り密閉した後、120℃を保持したまま2時間静置した。得られた溶液183gと製造例で得られたカチオン化セルロース分散液(セルロース濃度0.20%)139gを混合して、90℃で10分間撹拌した。得られた溶液を高速回転式ホモジナイザー(クレアミックス−0.8S、ローターの平均外径20mm、エム・テクニック株式会社製)を用いて内温90℃、13000rpmの条件で1時間処理しカチオン化セルロース含有ポリビニルアルコール溶液を得た。
高速回転式ホモジナイザーによる処理をしなかったこと以外は、実施例1と同様にして膜厚30μmのフィルムを得た。
高速回転式ホモジナイザーによる処理をしなかったこと以外は、実施例2と同様にして、膜厚30μmのフィルムを得た。
実施例及び比較例で得られたフィルムのヘイズを表1に示す。
また、実施例2と比較例2との比較から、フィラーとしてセルロースを添加した場合でも、フィルムのヘイズの低下効果が確認できることがわかる。
製されるフィルムは、その用途が特に制限されるものではないが、物質をこれまでと変えることなく、製造方法のみでヘイズの改善が可能であるであることから、産業上の利点は大きい。
Claims (7)
- 予めポリマーが溶解した溶液を、前記ポリマーのガラス転移転温度より高い温度で、高速回転式せん断装置により撹拌翼の周速を4.5m/秒以上にして処理するポリマー溶液の製造方法。
- 前記ポリマーが結晶性ポリマーである請求項1に記載のポリマー溶液の製造方法。
- 前記ポリマーがポリビニルアルコールである請求項1又は2に記載のポリマー溶液の製造方法。
- 前記ポリビニルアルコールのけん化度が70%以上である請求項3に記載のポリマー溶液の製造方法。
- 前記ポリマー溶液が、下記の(1)又は/及び(2)を満たすフィラーを含む請求項1〜4の何れか1項に記載のポリマー溶液の製造方法。
(1)数平均径が100μm以下
(2)数平均長軸方向長さが100μm以下 - 前記フィラーが、セルロース又はその変性物である請求項1〜5の何れか1項に記載のポリマー溶液の製造方法。
- 請求項1〜6の何れか1項に記載の製造方法で製造されたポリマー溶液を乾燥することにより得られるフィルム。
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