JP2018119053A - セルロースアセテートおよび成形体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】酢化度が52%以上59%以下であり、アセトン不溶解物量が0.04wt%以下であることを特徴とするセルロースアセテート。
【選択図】なし
Description
本開示のセルロースアセテートは酢化度が52%以上59%以下であり、アセトン不溶解物量が0.04wt%以下であることを特徴とする。
本開示のセルロースアセテートの酢化度は、52%以上59%以下であるところ、酢化度の下限値としては、53%以上であることが好ましく、53.7%以上であることがより好ましく、54%以上であることがさらに好ましい。酢化度が52%未満であると、セルロースアセテートを含有する成形体の寸法安定性や耐湿性、耐熱性などが低くなる。一方、酢化度の上限値としては、57%以下であることが好ましく、56%以下であることがより好ましく、55.5%以下であることがさらに好ましい。酢化度が59%を超えると、セルロースアセテートを含有する成形体の強度に優れるが脆くなり、例えば、衣料用等の繊維材料、メガネやサングラスのフレーム等の成形品に用いる場合、適した伸度等やわらかさを得るために可塑剤を大量に添加するとブリードアウトを生じる可能性が高くなる。
DS=162.14×AV×0.01/(60.052−42.037×AV×0.01)
DS:アセチル置換度
AV:酢化度(%)
本開示のセルロースアセテートは、アセトン不溶解物量が0.04wt%以下であるところ、アセトン不溶解物量の上限値としては、0.03wt%以下であることが好ましく、0.02wt%以下がより好ましく、0.01wt%以下であることがさらに好ましい。アセトン不溶解物量が0.04wt%を超えるとブツが急激に増えるため好ましくない。さらに、アセトン不溶解物量が増えすぎれば、測定時にガラスフィルターが目詰まりして測定不能となる場合がある。アセトン不溶解物量の下限値としては、より小さい方が好ましく、特に限定されるものではないが、例えば、製造コストの観点からは、0.001wt%以上であってもよい。
アセトン不溶解物量(wt%)=〔濾過後ガラスフィルター重量(g)−濾過前ガラスフィルター重量(g)〕/セルロースアセテート重量(g)×100
本開示のセルロースアセテートは、6%粘度が30mPa・s以上200mPa・s以下であることが好ましい。また、6%粘度の下限値は40mPa・s以上であることがより好ましく、50mPa・s以上であることがさらに好ましく、60mPa・s以上であることが最も好ましい。6%粘度が30mPa・s未満であると、成形体を得ようとする場合に、射出成型における流動性が高すぎ金型から洩れ出る可能性が高くなる。一方、6%粘度の上限値は180mPa・s以下であることがより好ましく、160mPa・s以下であることがさらに好ましく、140mPa・s以下であることが最も好ましい。6%粘度が200mPa・sを超えると、成形体を得ようとする場合に、射出成型における流動性が低く成形体の表面平滑性が悪化する可能性がある。
本開示のセルロースアセテートは構成糖分析において、グルコース、キシロースおよびマンノースのモル含量の和におけるグルコースのモル含量の割合が97%以上であることが好ましく、97.5%以上であることがより好ましく、98.0%以上であることがさらに好ましく、98.5%以上であることが最も好ましい。グルコース、キシロースおよびマンノースのモル含量の和におけるグルコースのモル含量の割合は97%未満であると、アセトン不溶解物量が多くなり、ブツ量が多くなる傾向があるため望ましくない。
本開示のセルロースアセテートはHazeが10以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましく、5以下であることがさらに好ましく、4以下であることが最も好ましい。アセトン不溶解物量が少ない程、Hazeは低くなる。また、Hazeがより低い程、成形品の透明性が高くなる。
本開示におけるブツとは、セルロースアセテートに可塑剤をブレンドして熱可塑成形する際に生じ得る肉眼でも確認できるような異物をいう。ブツは、セルロースアセテートと可塑剤とが十分に相溶せず、ブツ以外の部分と比較して可塑剤の割合が少ないか、可塑剤が含まれないことによって生じ得る。
セルロースアセテートの製造方法について詳述する。本開示に係るセルロースアセテートの好ましい製造方法としては、原料セルロースに酢酸または1〜10重量%の硫酸を含む酢酸(含硫酢酸)を一段または二段に分けて添加して前処理活性化する活性化工程(i)と、硫酸触媒の存在下で、前処理活性化したセルロースを酢化する酢化工程(ii)と、前記硫酸触媒を部分中和し、硫酸触媒(又は残存硫酸)の存在下で熟成するケン化熟成工程(iii)と、精製及び乾燥処理(iv)と、粉砕工程(v)と、セルロースアセテートに含まれるアセトン不溶解物を低減する工程(vi)とを含む一連の工程を経ることが挙げられる。当該製造方法において、特に精製及び乾燥処理(iv)は、適宜その採否を選択できる、任意工程である。なお、一般的なセルロースアセテートの製造方法については、「木材化学」(上)(右田ら、共立出版(株)1968年発行、第180頁〜第190頁)を参照できる。
本開示のセルロースアセテートの原料となるセルロース(パルプ)としては、木材パルプ(針葉樹パルプ、広葉樹パルプ)や綿花リンターなどが使用できる。これらのセルロースは単独で又は二種以上組み合わせてもよく、例えば、針葉樹パルプと、綿花リンター又は広葉樹パルプとを併用してもよい。
原料セルロースに酢酸または1〜10重量%の硫酸を含む酢酸(含硫酢酸)を添加して前処理活性化する活性化工程(i)において、酢酸及び/または含硫酢酸は、原料セルロース100重量部に対して、好ましくは10〜500重量部を添加することができる。また、セルロースに酢酸及び/または含硫酢酸を添加する方法としては、例えば、酢酸もしくは含硫酢酸を一段階で添加する方法、または、酢酸を添加して一定時間経過後、含硫酢酸を添加する方法、含硫酢酸を添加して一定時間経過後、酢酸を添加する方法等の酢酸または含硫酢酸を2段階以上に分割して添加する方法等が挙げられる。添加の具体的手段としては、噴霧してかき混ぜる方法が挙げられる。
硫酸触媒の存在下で、前処理活性化したセルロースを酢化する酢化工程(ii)において、例えば、酢酸、無水酢酸、および硫酸からなる混合物に、前処理活性化したセルロースを添加すること、または前処理活性化したセルロースに、酢酸と無水酢酸の混合物および硫酸を添加すること等により酢化を開始することができる。
前記硫酸触媒を部分中和し、硫酸触媒(又は残存硫酸)の存在下で熟成するケン化熟成工程(iii)において、前記酢化反応により、硫酸は硫酸エステルとしてセルロースに結合しているため、前記酢化反応終了後、熱安定性向上のためこの硫酸エステルをケン化して除去する。ケン化熟成に際して、酢化反応停止のために水、希酢酸、又は酢酸マグネシウム水溶液などの中和剤を添加する。そして、水を添加する場合、セルロースアセテートを含む反応混合物中に存在する無水酢酸と反応して酢酸を生成させ、ケン化熟成工程後のセルロースアセテートを含む反応混合物の水分量が酢酸に対し5〜70mol%になるように添加することができる。5mol%未満であると、ケン化反応が進まず解重合が進み、低粘度のセルロースアセテートとなり、70mol%を超えると、酢化反応終了後のセルロースエステル(セルローストリアセテート)が析出しケン化熟成反応系から出るため、析出したセルロースエステルのケン化反応が進まなくなる。
精製及び乾燥処理(iv)のうち、精製は、セルロースアセテートを含む混合物と水、希酢酸、又は酢酸マグネシウム水溶液等の沈澱剤とを混合し、生成したセルロースアセテート(沈澱物)を分離して沈殿物を得、水洗により遊離の金属成分や硫酸成分などを除去することにより行うことができる。ここで、セルロースアセテートの沈殿物を得る際に用いる沈澱剤としては、水または希酢酸が好ましい。セルロースアセテートを含む反応混合物中の硫酸塩を溶解し、沈澱物として得られるセルロースアセテート中の硫酸塩を除去しやすいためである。
粉砕工程(v)について、セルロースアセテートの沈殿物を粉砕する方法は限定されない。粉砕は、慣用の粉砕機、例えば、サンプルミル、ハンマーミル、ターボミル、アトマイザー、カッターミル、ビーズミル、ボールミル、ロールミル、ジェットミル、ピンミルなどを用いることができる。また、凍結粉砕、常温での乾式粉砕、または湿式粉砕でもよい。中でも、粉砕処理能力に優れることから、ハンマーミルまたはターボミルを用いることが好ましい。
本開示のアセトン不溶解物量が0.04wt%以下であるセルロースアセテートは一般的なセルロースアセテートの製造方法で取得することは困難であり、セルロースアセテートからアセトン不溶解物を低減する工程(vi)を経ることにより得ることができる。
本開示のセルロースアセテートを含有する成形体は、本開示のセルロースアセテートを成形することにより得られる。成形方法としては、射出成形、押出成形、真空成形、異型成形、発泡成形、インジェクションプレス、プレス成形、ブロー成形、ガス注入成形等が挙げられる。
セルロースアセテートの酢化度は、ASTM−D−817−91(セルロースアセテートなどの試験方法)における酢化度の測定方法により求めた。乾燥したセルロースアセテート1.9gを精秤し、アセトンとジメチルスルホキシドとの混合溶媒(容量比4:1)150mlに溶解した後、1N−水酸化ナトリウム水溶液30mlを添加し、25℃で2時間ケン化した。フェノールフタレインを指示薬として添加し、1N−硫酸(濃度ファクター:F)で過剰の水酸化ナトリウムを滴定した。また、上記と同様の方法でブランク試験を行い、下記式に従って酢化度を算出した。
酢化度(%)=[6.5×(B−A)×F]/W
(式中、Aは試料での1N−硫酸の滴定量(ml)、Bはブランク試験での1N−硫酸の滴定量(ml)、Fは1N−硫酸の濃度ファクター、Wは試料の重量を示す)。
乾燥したセルロースアセテート10.0gを精秤し、25℃のアセトン322.0gに溶解し、30mmHgの減圧条件下、室温(25℃)にてガラスフィルター(孔径5〜10μm:相互理化学硝子製作所製の1G−4)を使用して減圧濾過した。その後、濾過残渣に付着しているドープをアセトン200mLにて洗浄した。濾過残渣をガラスフィルターごと恒量になるまで乾燥した。これらの濾過前後でのガラスフィルター重量を測定し、次式よりアセトン不溶解物量を算出した。
アセトン不溶解物量(wt%)=〔濾過後ガラスフィルター重量(g)−濾過前ガラスフィルター重量(g)〕/セルロースアセテート重量(g)×100
セルロースアセテートの6%粘度は、下記の方法で測定した。三角フラスコに乾燥試料3.00g、95%アセトン水溶液を39.90g入れ、密栓して約1.5時間攪拌した。その後、回転振盪機で約1時間振盪して完溶させた。得られた6wt/vol%の溶液を所定のオストワルド粘度計の標線まで移し、25±1℃で約15分間整温した。計時標線間の流下時間を測定し、次式(1)により6%粘度を算出した。
6%粘度(mPa・s)=流下時間(s)×粘度計係数 (1)
粘度計係数={標準液絶対粘度(mPa・s)×溶液の密度(0.827g/cm3)}/{標準液の密度(g/cm3)×標準液の流下秒数(s) (2)
セルロースアセテートを硫酸によって加水分解し、炭酸バリウムによって中和し、ろ紙およびイオン交換フィルターによってろ過した後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法のうち、HPLC−CAD(Agilent1200シリーズシステム)から得られたデータを用いて、グルコース、キシロースおよびマンノースのモル含量を算出し、グルコース、キシロースおよびマンノースのモル含量の和におけるグルコースのモル含量の割合を求めた。
カラム:Asahipak NH2P−50 4E (4.6mmI.D.×250mm)
ガードカラム:Asahipak NH2P−50G 4A(4.6mmI.D.×10mm)
カラム温度:20℃
移動相:水/アセトニトリル=25/75(v/v)
移動相流速:1.0mL/min
窒素ガス圧力:35psi
ネブライザー:30℃
セルロースアセテート溶液の透過光におけるHaze値を測定した。装置は日本電色工業製、商品名「Haze Meter NDH2000」を用い、測定条件は測定径30mm、C光源を選択した。乾燥させたセルロースアセテート12gに、メタノール8.8g、及び塩化メチレン79.2gを加えて溶解させ、脱泡しセルロースアセテート溶液を調製した。このセルロースアセテート溶液を45mm(L)×45mm(W)×10mm(D)ガラスセルに入れHaze値を測定した。
セルロースアセテートフィルムの表面に光を当てて観察される異物(ブツ:スポット状の斑)の個数を70cm2(縦横7cm×10cm)当たりの個数を目視にて評価した。
αセルロース含量97.8wt%の針葉樹サルファイトパルプをディスクリファイナーで綿状に解砕し、解砕パルプを得た。100重量部の解砕パルプ(含水率8%)に26.8重量部の酢酸を噴霧し、良くかき混ぜた後、前処理として60時間静置し活性化した(活性化工程)。
比較例1で得られたセルロースアセテート20重量部にアセトン80重量部を加えた後、3時間振盪して完全に溶解した。得られたセルロースアセテート溶液に蒸留水110重量部を加え、析出したセルロースアセテートを濾紙(有限会社 桐山製作所製、桐山ろ紙 No.5C 40φ)で濾過した。セルロースアセテートに蒸留水150重量部を加え、遠心脱水(回転数1000rpm、3分間)した。その後、80℃にて12時間乾燥しセルロースアセテートを取得し、マキノ式粉砕機(槇野産業株式会社製、型番:DD−2−3.7)を用いて粉砕した。粉砕条件は、回転速度2450rpm、スクリーン径φ5.0mmとした。
比較例1で得られたセルロースアセテート20重量部にアセトン80重量部を加えた後、3時間振盪して完全に溶解した。得られたセルロースアセテート溶液をフィルター(関西金網株式会社製、ベキポア15AL3、濾過粒度15μm)に加圧下(2kg/cm2)で通した。得られたセルロースアセテート溶液に蒸留水110重量部を加え、沈殿したセルロースアセテートを濾紙(有限会社 桐山製作所製、桐山ろ紙 No.5C 40φ)で濾過した。セルロースアセテートに蒸留水150重量部を加え、遠心脱水(回転数1000rpm、3分間)した。その後、80℃にて12時間乾燥しセルロースアセテートを取得し、マキノ式粉砕機(槇野産業株式会社製、型番:DD−2−3.7)を用いて粉砕した。粉砕条件は、回転速度2450rpm、スクリーン径φ5.0mmとした。
比較例1で得られたセルロースアセテート16重量部にジクロロメタン80重量部とメタノール4重量部を加えた後、3時間振盪して完全に溶解した。得られたセルロースアセテート溶液をフィルター(関西金網株式会社製、ベキポア15AL3、濾過粒度15μm)に加圧下(3kg/cm2)で通した。得られたセルロースアセテート溶液にメタノール289重量部を加え、沈殿したセルロースアセテートを濾紙(有限会社 桐山製作所製、桐山ろ紙 No.5C 40φ)で濾過した。セルロースアセテートに蒸留水150重量部を加え、遠心脱水(回転数1000rpm、3分間)した。その後、80℃にて12時間乾燥しセルロースアセテートを取得し、マキノ式粉砕機(槇野産業株式会社製、型番:DD−2−3.7)を用いて粉砕した。粉砕条件は、回転速度2450rpm、スクリーン径φ5.0mmとした。
αセルロース含量97.0wt%の針葉樹サルファイトパルプを使用し、85℃での酢化時間を100分とし、反応浴水分(熟成水分)濃度を39mol%と点以外は、実施例1と同様にしてセルロースアセテートを取得した。
Claims (6)
- 酢化度が52%以上59%以下であり、アセトン不溶解物量が0.04wt%以下であることを特徴とするセルロースアセテート。
- 6%粘度が30mPa・s以上200mPa・s以下であることを特徴とする、請求項1に記載のセルロースアセテート。
- 構成糖分析において、グルコース、キシロースおよびマンノースのモル含量の和におけるグルコースのモル含量の割合が97%以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載のセルロースアセテート。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロースアセテート及び可塑剤を含有することを特徴とするセルロースアセテート組成物。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロースアセテートを含有することを特徴とする成形体。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロースアセテートを含有することを特徴とするフィルム。
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