JP6063605B1 - セルロースアセテート粉体およびセルロースアセテート粉体の製造方法 - Google Patents

セルロースアセテート粉体およびセルロースアセテート粉体の製造方法 Download PDF

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Abstract

成形体のスポット状の斑を低減し、成形体の製造工程通過性の低下を防ぐことができるセルロースアセテート粉体を提供する。酢化度が53〜56%、および6%粘度が30〜200mPa・sであるセルロースアセテートからなり、累積細孔容積が0.200ml/g以上であり、粒径500μm以上の粒子の比率が40%以下であり、かつ、安息角が51°以下である、セルロースアセテート粉体。

Description

本発明は、セルロースアセテート粉体およびセルロースアセテート粉体の製造方法に関する。
セルロースアセテートは、一般的にそのままでは熱可塑性に乏しい。通常、可塑剤を添加することにより熱可塑性を付与することができ、熱成形を行うことができる。
例えば、特許文献1には、可塑剤をセルロースアセテートペレット内へ吸収させ、成形品を形成することが記載されている。また、特許文献2には、セルロースアセテートのフレークまたは粉末と可塑剤の混合物とを混合することによるセルロースアセテートの可塑化工程、成形工程が記載されている。
特表2008−542473号公報 特開2013−112821号公報
セルロースアセテートのフレーク、粉末等は、可塑剤を添加することにより熱成形が容易になる。一方で、可塑剤の添加により、成形体にスポット状の斑が生じる場合や成形体の製造工程通過性が低下する場合があることを、本発明者らは見出した。本発明は、成形体のスポット状の斑を低減し、成形体の製造工程通過性の低下を防ぐことができるセルロースアセテート粉体を提供することを目的とする。
本発明の第一は、酢化度が53〜56%、および6%粘度が30〜200mPa・sであるセルロースアセテートからなり、累積細孔容積が0.200ml/g以上であり、粒径500μm以上の粒子の比率が40%以下であり、かつ、安息角が51°以下である、セルロースアセテート粉体に関する。
本発明の第二は、セルロースアセテートを含む反応混合物と水または希酢酸とを混合し、セルロースアセテートの沈澱物を得る工程と、前記沈澱物を粉砕する工程とを有する、セルロースアセテート粉体の製造方法に関する。
本発明のセルロースアセテート粉体によれば、成形体のスポット状の斑を低減し、成形体の製造工程通過性の低下を防ぐことができる。
以下、好ましい実施の形態の一例を具体的に説明する。
本開示に係るセルロースアセテート粉体は、酢化度が53〜56%、および6%粘度が30〜200mPa・sであるセルロースアセテートからなり、累積細孔容積が0.200ml/g以上であり、粒径500μm以上の粒子の比率が40%以下であり、かつ、安息角が51°以下であることが好ましい。
[酢化度]
本開示に係るセルロースアセテートは、酢化度が53〜56%であることが好ましく、53.7〜55.7%であることがより好ましく、54.0〜55.4%であることがさらに好ましい。酢化度が53%未満であると、成形体の寸法安定性や耐湿性、耐熱性などが低くなり、56%を超えると、成形体の強度に優れるが脆くなり、例えば、衣料用等の繊維材料、メガネやサングラスのフレーム等の成形品に用いる場合、適した伸度等やわらかさを得るために可塑剤を大量に添加するとブリードアウトを生じる可能性が高くなる。
ここで、酢化度とは、セルロース単位重量当たりの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定および計算に従う。
[6%粘度]
本開示に係るセルロースアセテートは、6%粘度が30〜200mPa・sであることが好ましく、50〜180mPa・sであることがより好ましく、70〜160mPa・sであることがさらに好ましい。6%粘度が30mPa・s未満であると、射出成型における流動性が高すぎ金型から洩れ出る可能性が高くなる。また、6%粘度が200mPa・sを超えると射出成型における流動性が低く成形体の表面平滑性が悪化する可能性がある。
ここで、6%粘度は、セルロースアセテートを95%アセトン水溶液に6wt/vol%となるよう溶解させ、オストワルド粘度計を用いた流化時間により求められるものである。
[累積細孔容積]
本開示に係るセルロースアセテート粉体は、累積細孔容積が0.200ml/g以上であることが好ましく、0.300ml/g以上であることがより好ましく、0.500ml/g以上であることがさらに好ましい。累積細孔容積が0.200ml/g未満であると、セルロースアセテートの成形体製造工程において、スポット状の斑を生じにくくするために多量の可塑剤を添加したセルロースアセテート粉体をホッパーを用いて押出機に送ると、ホッパー内でブリッジが生じやすく、製造工程通過性に劣る。また、累積細孔容積は、より大きい方が好ましいところ、例えば、1.500ml/g以下、1.200ml/g以下、または、1.000ml/g以下であってもよい。
ここで、累積細孔容積は、水銀圧入法により求められるものである。水銀ポロシメーター(Quantachrome社製、PoreMaster60)等を用いて測定することができる。
[粒度]
本開示に係るセルロースアセテート粉体の粒度は、粒径が500μm以上の粒子の比率が40%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、2%以下であることがさらに好ましい。粒径が500μm以上の粒子の比率が40%を超えると成形体にスポット状の斑が生じやすくなる。また、粒度は、粒径が500μm以上の粒子の比率がより小さい方が好ましいところ、例えば、0.1%以上であってもよい。ここで、粒径が500μm以上の粒子の比率(%)は、JIS Z 8801に規定の篩を用いて求めることができる。すなわち、目開きが、500μmである篩、及び500μmを超える1以上の篩と受け皿とを用い、ロータップマシーン((株)飯田製作所製、タッピング:156回/分、ローリング:290回/分)に取り付け、100gの試料を5分間振動させた後、各篩上の粉体の重量の合計の、全体重量(試料100g)に対する割合を算出することにより求めることができる。
ここで、粒径は、メジアン径d50で示される。メジアン径d50の測定方法は次のとおりである。JIS Z 8801に規定の篩を用いて求めることができる。具体的には、目開きが4,000μm、1,700μm、1,000μm、840μm、500μm、300μm、150μm、50μmである各篩と受け皿を用意し、目開きが4,000μmの篩をロータップマシーン((株)飯田製作所製、タッピング:156回/分、ローリング:290回/分)に取り付け、100gの試料を5分間振動させて篩い、受け皿上の試料を目開きが1,700μmの篩に入れて同様に篩った後、さらに目開きが1,000μm、840μm、500μm、300μm、150μm、50μmの各篩についても順に篩分けする。各目開きサイズと、篩上粉体重量の合計(100g)に対する各目開きサイズの篩上粉体の重量の割合との関係から粒度分布を作成し、累積重量百分率50%における目開きサイズを、メジアン径d50とした。
[安息角]
本開示に係るセルロースアセテート粉体の安息角は、安息界が51°以下であることが好ましく、49°以下であることがより好ましく、48°以下であることがさらに好ましい。安息角が51°を超えると、セルロースアセテートの成形体製造工程において、スポット状の斑を生じにくくするために多量の可塑剤を添加したセルロースアセテート粉体をホッパーを用いて押出機に送ると、ホッパー内でブリッジが生じやすく、製造工程通過性に劣る。
ここで、安息角とは、粉体を水平面上に自由落下させたとき、そこに堆積する粉体によりつくられる円錐の母線と水平面とにより形成される角をいう。粉体の安息角は安息角測定器[ホソカワミクロン(株)製、商品名「パウダーテスター TYPE:PT−E」等]により測定することができる。
[可塑剤]
本開示のセルロースアセテート粉体には、可塑剤を添加および吸着させることができる。
可塑剤としては、例えば以下のものを挙げることができる。芳香族カルボン酸エステル[フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシルなどのフタル酸ジC1−12アルキルエステル、フタル酸ジメトキシエチルなどのフタル酸C1−6アルコキシC1−12アルキルエステル、フタル酸ブチルベンジルなどのフタル酸C1−12アルキル・アリール−C1−3アルキルエステル、エチルフタリルエチレングリコレート、ブチルフタリルブチレングリコレートなどのC1−6アルキルフタリルC2−4アルキレングリコレート、トリメリット酸トリメチル、トリメリット酸トリエチル、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリ2−エチルヘキシルなどのトリメリット酸トリC1−12アルキルエステル、ピロメリット酸テトラオクチルなどのピロメリット酸テトラC1−12アルキルエステルなど]、
リン酸エステル[リン酸トリブチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリフェニルなど]
脂肪酸エステル[アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ブトキシエトキシエチル・ベンジル、アジピン酸ジブトキシエトキシエチルなどのアジピン酸エステル、アゼライン酸ジエチル、アゼライン酸ジブチル、アゼライン酸ジオクチルなどのアゼライン酸エステル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジオクチルなどのセバシン酸エステル、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチルなど]、
多価アルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど)の低級脂肪酸エステル[トリアセチン、ジグリセリンテトラアセテートなど]、
グリコールエステル(ジプロピレングリコールジベンゾエートなど)、
クエン酸エステル[クエン酸アセチルトリブチルなど]、
アミド類[N−ブチルベンゼンスルホンアミドなど]、
エステルオリゴマー(カプロラクトンオリゴマーなど)などを含有してもよい。これらの可塑剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用してもよい。
これらの可塑剤の中でも、セルロースアセテートと相溶性が良いため、フタル酸ジエチル、リン酸トリフェニルまたはトリアセチンを用いることが好ましい。
本開示に係るセルロースアセテート粉体100重量部に対し、これらの可塑剤を40重量部程度まで添加しても、成形体の製造工程通過性の低下が生じにくい。成形体の製造工程通過性の低下の例としては、例えば、セルロースアセテートの成形体製造工程において、可塑剤を添加したセルロースアセテート粉体をホッパーを用いて押出機に送る場合に、ホッパー内でブリッジが生じること等が挙げられる。本開示に係るセルロースアセテート粉体100重量部に対し、可塑剤の添加量は、セルロースアセテート100重量部に対し、20〜40重量部が好ましく、24〜36重量部がより好ましく、26〜34重量部がさらに好ましい。可塑剤の添加量が、20重量部未満であると、成形体のスポット状の斑が生じやすくなり、40重量部を超えると、成形体の曲げ強さが低くなる。
なお、本開示において、スポット状の斑は、成形体の表面において正常な透明部と目視で判別できる無色あるいは不透明の点をいう。
[セルロースアセテート粉体の製造]
セルロースアセテート粉体の製造方法について詳述する。本開示に係るセルロースアセテート粉体は、原料セルロースに酢酸または1〜10重量%の硫酸を含む酢酸(含硫酢酸)を一段または二段に分けて添加して前処理活性化する活性化工程(i)と、硫酸触媒の存在下で、前処理活性化したセルロースを酢化する酢化工程(ii)と、前記硫酸触媒を部分中和し、硫酸触媒(又は残存硫酸)の存在下で熟成するケン化熟成工程(iii)と、精製及び乾燥処理(iv)と、粉砕工程(v)とを含む一連の工程を経ることにより製造することができる。なお、一般的なセルロースアセテートの製造方法については、「木材化学」(上)(右田ら、共立出版(株)1968年発行、第180頁〜第190頁)を参照できる。
(原料セルロース)
本開示のセルロースアセテート粉体の原料となるセルロース(パルプ)としては、木材パルプ(針葉樹パルプ、広葉樹パルプ)や綿花リンターなどが使用できる。これらのセルロースは単独で又は二種以上組み合わせてもよく、例えば、針葉樹パルプと、綿花リンター又は広葉樹パルプとを併用してもよい。
リンターパルプについて述べる。リンターパルプは、セルロース純度が高く、着色成分が少ないため成形品の透明度が高くなるため、好ましい。
次に、木材パルプについて述べる。木材パルプは、原料の安定供給及びリンターに比べコスト的に有利であるため、好ましい。
木材パルプとしては、例えば、広葉樹前加水分解クラフトパルプ等が挙げられる。
また、木材パルプは、広葉樹前加水分解クラフトパルプ等を綿状に解砕した解砕パルプを用いることができる。解砕は、例えば、ディスクリファイナーを用いて行うことができる。
なお、原料セルロースのαセルロース含量は、不溶解残渣を少なくし、成形品の透明性を損なわないため、90重量%以上であることが好ましい。
(製造工程)
原料セルロースがシート状の形態で供給されるなど、以降の工程で取扱いにくい場合は、原料セルロースを乾式で解砕処理する工程を経ることが好ましい。解砕処理した原料セルロースに酢酸または1〜10重量%の硫酸を含む酢酸(含硫酢酸)を添加して前処理活性化する活性化工程(i)において、酢酸及び/または含硫酢酸は原料セルロース100重量部に対して、好ましくは10〜500重量部を添加することができる。また、セルロースに酢酸及び/または含硫酢酸を添加する方法としては、例えば、酢酸もしくは含硫酢酸を一段階で添加する方法、または、酢酸を添加して一定時間経過後、含硫酢酸を添加する方法、含硫酢酸を添加して一定時間経過後、酢酸を添加する方法等の酢酸または含硫酢酸を2段階以上に分割して添加する方法等が挙げられる。添加の具体的手段としては、噴霧してかき混ぜる方法が挙げられる。
そして、前処理活性化は、セルロースに酢酸及び/または含硫酢酸を添加した後、17〜40℃下で0.2〜48時間静置する、または17〜40℃下で0.1〜24時間密閉及び攪拌すること等により行うことができる。
硫酸触媒の存在下で、前処理活性化したセルロースを酢化する酢化工程(ii)において、例えば、酢酸、無水酢酸、および硫酸からなる混合物に、前処理活性化したセルロースを添加すること、または前処理活性化したセルロースに、酢酸と無水酢酸の混合物および硫酸を添加すること等により酢化を開始することができる。
また、酢酸と無水酢酸との混合物を調整する場合、酢酸と無水酢酸とが含まれていれば、特に限定されないが、酢酸と無水酢酸との割合としては、酢酸300〜600重量部に対し、無水酢酸200〜400重量部であることが好ましく、酢酸350〜530重量部に対し、無水酢酸240〜280重量部であることがより好ましい。
酢化反応における、セルロース、酢酸と無水酢酸の混合物、および硫酸の割合としては、セルロース100重量部に対して、酢酸と無水酢酸の混合物は500〜1000重量部であることが好ましく、濃硫酸は5〜15重量部であることが好ましく、7〜13重量部であることがより好ましく、8〜11重量部であることがさらに好ましい。
酢化工程(ii)において、セルロースの酢化反応は、20〜55℃下で酢化を開始した時から30分〜36時間、攪拌することにより行うことができる。
また、セルロースの酢化反応は、例えば、攪拌条件下、酢化を開始した時から5分〜36時間要して20〜55℃に昇温して行うこと、または、撹拌条件下、外部から反応系の内外には一切の熱は加えず行うことができる。酢化反応初期は固液不均一系での反応となり解重合反応を抑えつつ酢化反応を進ませ未反応物を減らすため可能な限り時間を掛けて昇温するのが良いが、生産性の観点からは、2時間以下、さらに好ましくは1時間以下で昇温を行うことが好ましい。
また、酢化反応にかかる時間(以下、酢化時間ともいう。)は、150〜280分であることが望ましい。ここで、酢化時間とは、原料セルロースが反応系内に投入され、無水酢酸と反応を開始した時点から中和剤投入までの時間をいう。
前記硫酸触媒を部分中和し、硫酸触媒(又は残存硫酸)の存在下で熟成するケン化熟成工程(iii)において、前記酢化反応により、硫酸は硫酸エステルとしてセルロースに結合しているため、前記酢化反応終了後、熱安定性向上のためこの硫酸エステルをケン化して除去する。ケン化熟成に際して、酢化反応停止のために水、希酢酸、又は酢酸マグネシウム水溶液などの中和剤を添加する。そして、水は、セルロースアセテートを含む反応混合物中に存在する無水酢酸と反応して酢酸を生成させ、ケン化熟成工程後のセルロースアセテートを含む反応混合物の水分量が酢酸に対し5〜70mol%になるように添加することができる。5mol%未満であると、ケン化反応が進まず解重合が進み、低粘度のセルロースアセテートとなり、70mol%を超えると、酢化反応終了後のセルロースエステル(セルローストリアセテート)が析出しケン化熟成反応系から出るため、析出したセルロースエステルのケン化反応が進まなくなる。
ここで、希酢酸とは、1〜50重量%の酢酸水溶液をいう。また、酢酸マグネシウム水溶液は、5〜30重量%であることが好ましい。
なお、セルロースアセテートを含む反応混合物とは、セルロースアセテート粉体を得るまでの各工程におけるセルロースアセテートを含む混合物のいずれも指す。
また、セルロースアセテートを含む反応混合物における硫酸イオン濃度が高いと効率よく硫酸エステルを除去することができないため、酢酸マグネシウム等の酢酸のアルカリ土類金属塩の水溶液又は酢酸−水混合溶液を添加して不溶性の硫酸塩を形成させることにより、硫酸イオン濃度を低下させることが好ましい。セルロースアセテート100重量部(セルロース換算)に対し、セルロースアセテートを含む反応混合物の硫酸イオンを1〜6重量部に調整することが好ましい。なお、例えば、セルロースアセテートを含む反応混合物に酢酸マグネシウムの酢酸−水混合溶液を添加することにより、酢化反応の停止とセルロースアセテート100重量部(セルロース換算)に対する硫酸イオンの重量比の低下とを同時に行うこともできる。
ケン化熟成の時間(以下、熟成時間ともいう。)は、特に限定されないが、酢化度を53〜56%に調整する場合、例えば、10〜240分間行う。ここで、熟成時間は、中和剤の投入開始からケン化反応停止までの時間をいう。
また、ケン化熟成は、好ましくは50〜100℃、特に好ましくは70〜90℃の熟成温度で20〜120分間保持することにより行う。ここで、熟成温度とは、熟成時間における反応系内の温度をいう。
ケン化熟成工程においては、水と無水酢酸との反応熱を利用することにより、反応系全体を均一でかつ適正な温度に保持することができるため、酢化度が高すぎるものや低すぎるものが生成することが防止される。
精製及び乾燥処理(iv)のうち、精製は、セルロースアセテートを含む混合物と水、希酢酸、又は酢酸マグネシウム水溶液等の沈澱剤とを混合し、生成したセルロースアセテート(沈澱物)を分離して沈殿物を得、水洗により遊離の金属成分や硫酸成分などを除去することにより行うことができる。ここで、セルロースアセテートの沈殿物を得る際に用いる沈澱剤としては、水または希酢酸が好ましい。セルロースアセテートを含む反応混合物中の硫酸塩を溶解し、沈澱物として得られるセルロースアセテート粉体中の硫酸塩を除去しやすいためである。
特に、前記熟成反応の後(完全中和の後)、セルロースアセテートの熱安定性を高めるため、水洗に加えてさらに、必要に応じて安定剤として、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物、特に水酸化カルシウムなどのカルシウム化合物を添加してもよい。また、水洗の際に安定剤を用いてもよい。
反応混合物を希酢酸中に吐出して、セルローストリアセテートを沈殿させることが特開2013−049867号公報に記載されているが、粒径が大きな粉体しか製造できず、セルロースアセテート溶液を沈殿力の弱い沈殿液(40%酢酸溶液)と混合した後に、沈殿力の強い沈殿液(18%酢酸溶液)と混合して、段階的にセルロースアセテートを沈殿させることが英国特許出願公開532949号明細書に記載されているが、累積細孔容積の小さな粉体しか製造することができなかった。したがって、いずれの沈殿方法によっても、本開示の粒度、累積細孔容積、および安息角のいずれも満たす粉体を得ることはできなかった。
本開示において、セルロースアセテートを含む反応混合物と沈澱剤を混合し、セルロースアセテートを沈殿させる際、セルロースアセテートの沈殿点を急激に超えるようにすることが好ましい。例えば、セルロースアセテートを含む反応混合物に沈澱剤を添加する場合において、(1)セルロースアセテートの沈殿点を超える量の沈澱剤を一回で添加すること、(2)セルロースアセテートの沈殿点を超える量の沈澱剤を添加し、さらに沈澱剤を添加して、沈澱剤を二回に分けて添加すること、(3)セルロースアセテートの沈殿点を超えない量の沈澱剤を添加し、さらに大量の沈澱剤を添加して、沈澱剤を二回に分けて添加すること等が挙げられる。
セルロースアセテートを含む反応混合物と沈澱剤を混合する具体的な手段としては、セルロースアセテートを含む反応混合物と沈澱剤とを業務用ミキサーを用いて撹拌する方法、またはセルロースアセテートを含む反応混合物に沈澱剤を添加し、二軸ニーダーを用いて練り込む方法などが挙げられる。例えば、業務用ミキサーを用いて撹拌する方法の場合、セルロースアセテートを含む反応混合物とセルロースアセテートを沈澱させるのに必要量の沈澱剤とを一度に混合し、撹拌する。二軸ニーダーを用いて練り込む方法の場合、沈澱剤を数回に分けてセルロースアセテートを含む反応混合物に添加することができるが、沈澱点を超える直前において、沈澱剤を、セルロースアセテートを含む反応混合物の0.5〜2倍量を一度に添加することが好ましい。
沈澱点をより急激に超えられ、より大きな累積細孔容積のセルロースアセテート粉体が得られやすい観点から、業務用ミキサーで撹拌する方法を用いることが好ましい。
精製及び乾燥処理(iv)のうち、乾燥は、その方法としては特に限定されず、公知のものを用いることができ、例えば、送風や減圧などの条件下乾燥を行うことができる。乾燥方法としては、例えば、熱風乾燥が挙げられる。
粉砕工程(v)について、セルロースアセテート粉体を、粒径500μm以上の粒子の比率が40%以下、かつ安息角を51°以上に調整することができれば、セルロースアセテートの沈殿物を粉砕する方法は限定されない。粉砕は、慣用の粉砕機、例えば、サンプルミル、ハンマーミル、ターボミル、アトマイザー、カッターミル、ビーズミル、ボールミル、ロールミル、ジェットミル、ピンミルなどを用いることができる。また、凍結粉砕、常温での乾式粉砕、または湿式粉砕でもよい。中でも、粉砕処理能力に優れることから、ハンマーミルまたはターボミルを用いることが好ましい。
また、例えば、スクリーンを用いるミルの場合、スクリーン径は、2.0mm以下であることが好ましく、1.0mm以下であることがより好ましく、0.5mm以下であることがさらに好ましい。スクリーン径が2.0mmを超えると、本開示の粒度および安息角のいずれも満たす粉体を得ることが困難となる。
(可塑剤の混合)
本開示のセルロースアセテート粉体に可塑剤を混合する場合、セルロースアセテート粉体と可塑剤との混合は、遊星ミル、ヘンシェルミキサー、振動ミル、ボールミルなどの混合機により行うことができる。短時間で均質な混合分散が可能であるため、ヘンシェルミキサーを用いることが好ましい。また、混合の程度は特に限定されるものではないが、例えば、ヘンシェルミキサーの場合、好ましくは10分〜1時間混合する。
また、セルロースアセテート粉体と可塑剤の混合後、乾燥を行うことができる。乾燥方法としては、例えば、50〜105℃下で、1〜48時間静置して乾燥する方法が挙げられる。
セルロースアセテート粉体と可塑剤の混合時に、成形体の用途・仕様に応じ、着色剤、耐熱安定剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤などを添加することが出来る。
[セルロースアセテート成形体]
セルロースアセテート成形体は、セルロースアセテート粉体と可塑剤を混合、乾燥することにより、可塑剤が吸着したセルロースアセテート粉体を用いて製造することができる。製造は、例えば、可塑剤が吸着したセルロースアセテート粉体を、一軸又は二軸押出機などの押出機で混練してペレットに調製する方法、加熱ロールやバンバリーミキサー等の混練機で溶融混練して調製する方法が挙げられる。
また、ペレットに調製した後、例えば、T−ダイを装着した一軸または二軸押出機を用いて、再溶解し、フィルム等を成形することができる。
本開示のセルロースアセテート粉体は、射出成形、押出成形、真空成形、異型成形、発泡成形、インジェクションプレス、プレス成形、ブロー成形、ガス注入成形等によって各種成形体に成形することができる。
本開示のセルロースアセテート粉体および当該セルロースアセテート粉体からなる成形体は、例えば、OA・家電機器分野、電気・電子分野、通信機器分野、サニタリー分野、自動車等の輸送車両分野、家具・建材等の住宅関連分野、雑貨分野等において、シート、フィルム、パイプ、棒、印材、装飾品、眼鏡枠、工具柄、食器具柄、玩具、繊維、雑貨など広範囲に使用することができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によりその技術的範囲が限定されるものではない。
後述する実施例に記載の各物性は以下の方法で評価した。
<酢化度>
ASTM−D−817−91(セルロースアセテートなどの試験方法)における酢化度の測定方法により求めた。
乾燥したセルロースアセテート1.9gを精秤し、アセトンとジメチルスルホキシドとの混合溶媒(容量比4:1)150mlに溶解した後、1N−水酸化ナトリウム水溶液30mlを添加し、25℃で2時間ケン化する。フェノールフタレインを指示薬として添加し、1N−硫酸(濃度ファクター:F)で過剰の水酸化ナトリウムを滴定する。また、上記と同様の方法でブランク試験を行い、下記式に従って酢化度を算出する。
酢化度(%)=[6.5×(B−A)×F]/W
(式中、Aは試料での1N−硫酸の滴定量(ml)、Bはブランク試験での1N−硫酸の滴定量(ml)、Fは1N−硫酸の濃度ファクター、Wは試料の重量を示す)。
<6%粘度>
セルロースアセテートの6%粘度は、下記の方法で測定した。
三角フラスコに乾燥試料3.00g、95%アセトン水溶液を39.90g入れ、密栓して約1.5時間攪拌する。その後、回転振盪機で約1時間振盪して完溶させる。得られた6wt/vol%の溶液を所定のオストワルド粘度計の標線まで移し、25±1℃で約15分間整温する。計時標線間の流下時間を測定し、次式(1)により6%粘度を算出する。
6%粘度(mPa・s)=流下時間(s)×粘度計係数 (1)
粘度計係数は、粘度計校正用標準液[昭和石油社製、商品名「JS−200」(JIS Z 8809に準拠)]を用いて上記と同様の操作で流下時間を測定し、次式(2)より求める。
粘度計係数={標準液絶対粘度(mPa・s)×溶液の密度(0.827g/cm)}/{標準液の密度(g/cm)×標準液の流下秒数(s) (2)
<粒度>
粒径は、JIS Z 8801に規定の篩を用いて篩分けした時に、通過しなかった最も小さい目開きサイズを粒径と定義し、JIS Z 8801に規定の篩を用いて求めた。
粒径が500μm以上の粒子の比率は、以下のようにして求めた。目開きが、4,000μm、1,700μm、1,000μm、840μm、500μm、300μm、150μm、50μmである各篩と受け皿を用意し、まず目開きが4,000μmの篩をロータップマシーン((株)飯田製作所製、タッピング:156回/分、ローリング:290回/分)に取り付け、セルロースアセテート粉体100gを5分間振動させた後、受け皿上の試料を目開きが1,700μmの篩に入れて同様に篩った後、さらに目開きが1,000μm、840μm、500μmの各篩についても順に篩分けした。目開きが4,000μm、1,700μm、1,000μm、840μm、500μmの各篩上のセルロースアセテート粉体の重量の合計の、全体重量(セルロースアセテート粉体100g)に対する割合を500μm以上の粒子の比率とした。
<累積細孔容積>
水銀ポロシメーター(Quantachrome社製、PoreMaster60)を用いて、水銀圧入法により、測定を行った。
<BET比表面積>
比表面積の測定法;BET多点法
測定装置:高速比表面積・細孔径分布測定装置NOVA−1200(ユアサアイオニクス(株)製)
前処理条件:試料を測定セルに入れ、60℃(真空下)で10分間脱気した。
吸着ガス:窒素ガス
セルサイズ:スモールペレットセル1.80cm(システム外径9mm)
測定項目:0.1、0.2、0.3の吸着側3点
解析項目:BET1点、BET多点、ラングミュアーによる比表面積
測定回数:試料を替えて3回測定した。表1に記載する比表面積は3回測定の平均値である。
<ホッパー流動性>
ホッパー流動性は粉体流動性指数から以下の基準で評価した。
「○」:粉体流動性指数40〜100
「×」:粉体流動性指数0〜39
<粉体流動性指数>
セルロースアセテートフレークまたは粉体の粉体流動性指数は、安息角、圧縮度、スパチュラ角、均一度の各測定値から各々の指数を求め合計した数値を粉体流動性指数とした。各測定値からの指数は粉体流動性指数表(粉体技術ポケットブック 林 恒美 著)に従った。
<安息角>
セルロースアセテートフレークまたは粉体の安息角はパウダーテスター[ホソカワミクロン(株)製、商品名「パウダーテスター TYPE:PT−E」を用いて行った。より具体的には、篩上に可塑剤未添加のフレークまたは粉体(約100g)を入れ、振動によりロートを経由して下部の水平に置かれた専用テーブルの上に粉体を落下させて山を形成し、その山の頂点と底辺とを結んだ直線が水平面となす角度を測定した。
<圧縮度>
セルロースアセテートフレークまたは粉体の圧縮度はパウダーテスター[ホソカワミクロン(株)製、商品名「パウダーテスター TYPE:PT−E」を用いて行った。より具体的には、専用スコップを用いて粉体を静かに専用カップに注ぎ、専用カップ口から粉体が溢れるまで充満させた後、付属のブレードで表面部分をすり切り、カップも含めて重量を測定した。この値から、予め測定したカップ重量を引いて粉体重量を求め、これをカップ内容積(100ml)で除した値をゆるみ見掛密度とした。次に、上記専用カップにキャップを継ぎ足して、パウダーテスターのタッピングホルダーに設置した後、粉体を更に充満させ、キャップの上にキャップカバーを取り付けた。これを180秒間タッピングした。タッピング終了後、キャップ及びキャップカバーを取り外し、付属のブレードで専用カップの表面部分をすり切り、カップも含めて重量を測定した。この値から、予め測定したカップ重量を引いて粉体重量を求め、これをカップ内容積(100ml)で除した値を固め見掛密度とした。以上の操作で得られた固め見掛密度及びゆるみ見掛密度から、次式を用いて圧縮度(%)を計算した。
(圧縮度)={(固め見掛密度)−(ゆるみ見掛密度)}/(固め見掛密度)×100
<スパチュラ角>
スパチュラ角の評価は、パウダーテスター[ホソカワミクロン(株)製、商品名「パウダーテスター TYPE:PT−E」を用いて行った。(1)専用バットの上に置かれたスパチュラの上に試料を加え、スパチュラ上に試料を盛り上げた。その後、専用パットが乗った昇降台を下げ、付属の分度器スタンドを用いて、スパチュラ上に堆積した試料の稜線の傾斜角を測定した。(2)スパチュラアセンブリーに付属の錘をポールの上端に持ち上げてから落下させ、1回だけスパチュラにショックを与えた。その後、スパチュラ上の試料の傾斜角を測定した。
(1)及び(2)における測定値の平均をとり、これをスパチュラ角とした。
<均一度>
粒度分布測定を実施し、60%篩下粒径を10%篩下粒径で割った値を均一度とした。粒度分布測定は、前記粒度分布の作成と同様に、粒度分布を作成し、累積重量百分率60%および10%における目開きサイズをそれぞれ60%篩下粒径および10%篩下粒径とした。
また、セルロースアセテートフレークまたは粉体を用いて製造したセルロースアセテート成形体の各物性は以下の方法で評価した。
<フィルムの斑>
セルロースアセテートフレークまたは粉体100重量部に対し、DEP(フタル酸ジエチル)35重量部を加え、ヘンシェルミキサーで十分混合し、コンパウンドを得、90℃で8時間乾燥した。乾燥したコンパウンドを30m/mΦの2軸押出機を用いて、230℃の温度でペレット化した。このペレットを用いて、150mm幅のT−ダイを装着した1軸押出機I(型番:GT−25A、(株)プラスチック光学研究所製)により、230℃で再溶解し200μmのフィルムを成形した。成形したフィルム210cm(縦横70mm×300mm)当たりのスポット状の斑の個数を目視にて評価した。以下の基準で評価した。
「◎」:スポット状の斑の数25個以下
「○」:スポット状の斑の数26個以上60個以下
「×」:スポット状の斑の数61個以上
<比較例1>
αセルロース含量98.4wt%の広葉樹前加水分解クラフトパルプをディスクリファイナーで綿状に解砕した。100重量部の解砕パルプ(含水率8%)に26.8重量部の酢酸を噴霧し、良くかき混ぜた後、前処理として60時間静置し活性化した(活性化工程)。
活性化したパルプを、323重量部の酢酸、245重量部の無水酢酸、13.1重量部の硫酸からなる混合物に加えた。当該混合物は予め5℃に冷却しておいた。40分を要して5℃から40℃の最高温度に調整し、パルプを混合物に加えた時点から90分間酢化した。中和剤(24%酢酸マグネシウム水溶液)を、硫酸量(熟成硫酸量)が2.5重量部に調整されるように3分間かけて添加した。さらに、反応浴を75℃に昇温した後、水を添加し、反応浴水分(熟成水分)濃度を52mol%とした。なお、熟成水分濃度は、反応浴水分の酢酸に対する割合をモル比で表わしたものに100を乗じてmol%で示した。その後、85℃で100分間熟成を行ない、酢酸マグネシウムで硫酸を中和することで熟成を停止し、セルロースアセテートを含む反応混合物を得た。
業務用ミキサー(Panasonic製、型番:MX−152SP−W)に希酢酸(10wt%)1200重量部、セルロースアセテートを含む反応混合物400重量部を加え、4秒間ミキサーで攪拌・沈澱させた。沈澱したセルロースアセテートを水洗し、希水酸化カルシウム水溶液(20ppm)に浸漬した後、濾別し乾燥することにより、セルロースアセテートフレークを得た。得られたセルロースアセテートフレークについて、酢化度、6%粘度、粒度、累積細孔容積、BET比表面積、安息角、ホッパー流動性を測定した。また、得られたセルロースアセテートフレークから成形したフィルムについて、フィルムの斑を評価した。結果は、表1に示した。
<比較例2>
比較例1で得られたセルロースアセテートフレークを、マキノ式粉砕機(槇野産業株式会社製、型番:DD−2−3.7)を用いて粉砕した。粉砕条件は、回転速度2450rpm、スクリーン径φ5.0mmとした。
得られたセルロースアセテート粉体について、酢化度、6%粘度、粒度、累積細孔容積、BET比表面積、安息角、ホッパー流動性を測定した。また、得られたセルロースアセテート粉体から成形したフィルムについて、フィルムの斑を評価した。結果は、表1に示した。
<比較例3>
比較例1で得られたセルロースアセテートを含む反応混合物に希酢酸(10wt%)を二軸ニーダーを用いて練り込み、練込沈澱方式でセルロースアセテートを沈澱させた。このとき、セルロースアセテートを含む反応混合物に対し、3回に分け希酢酸を練り込んだ。セルロースアセテートを含む反応混合物に対し1回目に0.4倍量(重量比)の希酢酸(10wt%)を練り込み反応混合物が均一になった後、2回目に0.5倍量(重量比)、3回目に0.6倍量(重量比)、合計で1.5倍量(重量比)を添加した。希酢酸(10wt%)を3回目に0.6倍量(重量比)添加した際に沈澱が生じた。
沈澱したセルロースアセテートを水洗し、希水酸化カルシウム水溶液(20ppm)に浸漬した後、濾別し乾燥することにより、セルロースアセテートフレークを得た。
得られたセルロースアセテートフレークを、比較例2と同じ粉砕機を用いて粉砕した。粉砕条件は、回転速度2450rpm、スクリーン径φ0.5mmとした。
得られたセルロースアセテート粉体について、酢化度、6%粘度、粒度、累積細孔容積、BET比表面積、安息角、ホッパー流動性を測定した。また、得られたセルロースアセテート粉体から成形したフィルムについて、フィルムの斑を評価した。結果は、表1に示した。
<比較例4>
比較例1で得られたセルロースアセテートを含む反応混合物に希酢酸(10wt%)を二軸ニーダーを用いて練り込み、練込沈澱方式でセルロースアセテートを沈澱させた。このとき、セルロースアセテートを含む反応混合物に対し、3回に分け希酢酸を練り込んだ。セルロースアセテートを含む反応混合物に対し1回目に0.5倍量(重量比)、2回目に1.2倍量(重量比)、3回目に0.6倍量添(重量比)、合計で2.3倍量(重量比)を添加した。徐々にセルロースアセテートを析出・沈澱させた。沈澱したセルロースアセテートを水洗し、希水酸化カルシウム水溶液(20ppm)に浸漬した後、濾別し乾燥することにより、セルロースアセテートフレークを得た。
得られたセルロースアセテートフレークを、比較例2と同じ粉砕機を用いて粉砕した。粉砕条件は、回転速度2450rpm、スクリーン径φ0.5mmとした。
得られたセルロースアセテート粉体について、酢化度、6%粘度、粒度、累積細孔容積、BET比表面積、安息角、ホッパー流動性を測定した。また、得られたセルロースアセテート粉体から成形したフィルムについて、フィルムの斑を評価した。結果は、表1に示した。
<比較例5>
比較例3で得られたセルロースアセテートフレークを、粉砕しなかった以外は、比較例3と同様にした。
得られたセルロースアセテートフレークについて、酢化度、6%粘度、粒度、累積細孔容積、BET比表面積、安息角、ホッパー流動性を測定した。また、得られたセルロースアセテート粉体から成形したフィルムについて、フィルムの斑を評価した。結果は、表1に示した。
<比較例6>
反応浴水分(熟成水分)濃度を44mol%とし、熟成の時間を130分に変更した以外は、比較例1と同様にして、セルロースアセテートを含む反応混合物を得た。
得られたセルロースアセテートを含む反応混合物に希酢酸(10wt%)を二軸ニーダーを用いて練り込み、練込沈澱方式でセルロースアセテートを沈澱させた。このとき、セルロースアセテートを含む反応混合物に対し、数回に分け希酢酸を練り込んだ。比較例3の回数に対応させて述べると、セルロースアセテートを含む反応混合物に対し1回目に希酢酸を添加せず、2回目に1.7倍量(重量比)、3回目に0.6倍量(重量比)、合計で2.3倍量(重量比)を添加した。希酢酸(10wt%)を1.7倍量(重量比)添加した際に沈澱が生じた。
沈澱したセルロースアセテートを水洗し、希水酸化カルシウム水溶液(20ppm)に浸漬した後、濾別し乾燥することにより、セルロースアセテートフレークを得た。
得られたセルロースアセテートフレークについて、酢化度、6%粘度、粒度、累積細孔容積、BET比表面積、安息角、ホッパー流動性を測定した。また、得られたセルロースアセテート粉体から成形したフィルムについて、フィルムの斑を評価した。結果は、表1に示した。
<実施例1>
比較例1で得られたセルロースアセテートフレークを、比較例2と同じ粉砕機を用いて粉砕した。粉砕条件は、回転速度2450rpm、スクリーン径φ0.5mmとした。
得られたセルロースアセテート粉体について、酢化度、6%粘度、粒度、累積細孔容積、BET比表面積、安息角、ホッパー流動性を測定した。また、得られたセルロースアセテート粉体から成形したフィルムについて、フィルムの斑を評価した。結果は、表1に示した。
比較例7
比較例1で得られたセルロースアセテートフレークを、比較例2と同じ粉砕機を用いて粉砕した。粉砕条件は、回転速度2450rpm、スクリーン径φ1.0mmとした。
得られたセルロースアセテート粉体について、酢化度、6%粘度、粒度、累積細孔容積、BET比表面積、安息角、ホッパー流動性を測定した。また、得られたセルロースアセテート粉体から成形したフィルムについて、フィルムの斑を評価した。結果は、表1に示した。
比較例8
比較例1で得られたセルロースアセテートフレークを、比較例2と同じ粉砕機を用いて粉砕した。粉砕条件は、回転速度2450rpm、スクリーン径φ2.0mmとした。
得られたセルロースアセテート粉体について、酢化度、6%粘度、粒度、累積細孔容積、BET比表面積、安息角、ホッパー流動性を測定した。また、得られたセルロースアセテート粉体から成形したフィルムについて、フィルムの斑を評価した。結果は、表1に示した。
<実施例
反応浴水分(熟成水分)濃度を54mol%とし、熟成の時間を85分間に変更した以外は、比較例1と同様にして、セルロースアセテートフレークを得た。得られたセルロースアセテートフレークを、比較例2と同じ粉砕機を用いて粉砕した。粉砕条件は、回転速度2450rpm、スクリーン径φ0.5mmとした。
得られたセルロースアセテート粉体について、酢化度、6%粘度、粒度、累積細孔容積、BET比表面積、安息角、ホッパー流動性を測定した。また、得られたセルロースアセテート粉体から成形したフィルムについて、フィルムの斑を評価した。結果は、表1に示した。
<実施例
反応浴水分(熟成水分)濃度を44mol%とし、熟成の時間を130分に変更した以外は、比較例1と同様にして、セルロースアセテートフレークを得た。得られたセルロースアセテートフレークを、比較例2と同じ粉砕機を用いて粉砕した。粉砕条件は、回転速度2450rpm、スクリーン径φ0.5mmとした。
得られたセルロースアセテート粉体について、酢化度、6%粘度、粒度、累積細孔容積、BET比表面積、安息角、ホッパー流動性を測定した。また、得られたセルロースアセテート粉体から成形したフィルムについて、フィルムの斑を評価した。結果は、表1に示した。
比較例9
実施例で得られたセルロースアセテートを含む反応混合物に希酢酸(10wt%)を二軸ニーダーを用いて練り込み、練込沈澱方式でセルロースアセテートを沈澱させた。このとき、セルロースアセテートを含む反応混合物に対し、数回に分け希酢酸を練り込んだ。比較例3の回数に対応させて述べると、セルロースアセテートを含む反応混合物に対し1回目に希酢酸を添加せず、2回目に1.7倍量(重量比)、3回目に0.6倍量(重量比)、合計2.3倍量(重量比)を添加した。希酢酸(10wt%)を1.7倍量(重量比)添加した際に沈澱が生じた。
沈澱したセルロースアセテートを水洗し、希水酸化カルシウム水溶液(20ppm)に浸漬した後、濾別し乾燥することにより、セルロースアセテートフレークを得た。
得られたセルロースアセテートフレークを、比較例2と同じ粉砕機を用いて粉砕した。粉砕条件は、回転速度2450rpm、スクリーン径φ0.5mmとした。
得られたセルロースアセテート粉体について、酢化度、6%粘度、粒度、累積細孔容積、BET比表面積、安息角、ホッパー流動性を測定した。また、得られたセルロースアセテート粉体から成形したフィルムについて、フィルムの斑を評価した。結果は、表1に示した。
Figure 0006063605

Claims (5)

  1. 酢化度が53〜56%、および6%粘度が30〜200mPa・sであるセルロースアセテートからなり、
    累積細孔容積が0.200ml/g以上であり、
    粒径500μm以上の粒子の比率が10%以下であり、
    かつ、安息角が49°以下である、
    セルロースアセテート粉体。
  2. 請求項1に記載のセルロースアセテート粉体100重量部に対し、20〜40重量部の可塑剤が吸着したセルロースアセテート粉体。
  3. 前記可塑剤が、フタル酸ジエチル、トリアセチンまたはリン酸トリフェニルである、請求項2に記載のセルロースアセテート粉体。
  4. 請求項1に記載のセルロースアセテート粉体100重量部に対し、20〜40重量部の可塑剤を混合する、可塑剤吸着セルロースアセテート粉体の製造方法。
  5. 請求項2または3に記載のセルロースアセテート粉体を成形する、成形体の製造方法。
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