JP7417391B2 - エステル化セルロース繊維の製造方法 - Google Patents

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本発明は、エステル化セルロース繊維の製造方法に関する。
セルロース繊維はアラミド繊維に匹敵する高い弾性率と、ガラス繊維よりも低い線膨張係数とを有することが知られている。また、真密度が1.5~1.6g/cm3と、低く、一般的なフィラーとして使用されるガラス(密度2.4~2.6g/cm3)及びタルク(密度2.7g/cm3)と比較し圧倒的に軽い材料である。そして、天然資源として地球上に大量に存在し、かつ、カーボンニュートラルの観点から環境調和型材料とされる。以上のような特長を生かし、繊維強化樹脂のフィラーとして古来より利用されてきた。
繊維強化樹脂のマトリックス樹脂種は、ポリプロピレン、ポリエチレン、エポキシ樹脂の様に疎水性である場合が多い。一方、セルロース繊維は親水性であるため、マトリックス樹脂中でセルロース繊維を均一に分散させ、マトリックス樹脂とセルロース繊維の界面の親和性を向上させるために、セルロース繊維表面の疎水化処理が行われてきた。疎水化処理の中でもエステル化は、反応が簡便であり、エステル基の安定性が高いことから最も一般的な手法の一つである。
セルロース繊維のエステル化は、一般的に有機溶媒中にセルロース繊維を分散させた上で、エステル化剤(必要に応じて触媒も含む)を添加して実施される(特許文献1)。しかし、有機溶媒の使用は環境への負荷が大きく、コストが高くなり好ましくない。また、一度水中に分散したセルロース繊維を有機溶媒へ置換した後にエステル化する手法は、極めて大量の有機溶媒を必要とするため、工業的に課題が多い(特許文献2)。このような中、特許文献3では反応液中に水を10%含む状態でアセチル化を行っている。
国際公開第2017/073700号 国際公開第2013/081138号 国際公開第2016/010016号
しかしながら、特許文献1~3に記載される技術ではエステル化セルロース繊維の収率が低いという問題があった。このような低い収率は、反応液に対する高置換度エステル化セルロース(本開示で、高DSセルロースともいう。)の高い溶解度に起因している可能性がある。
本発明は、上記の課題を解決し、反応液に対する高DSセルロースの溶出を抑制してエステル化セルロース繊維を高収率で製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、従来法におけるエステル化セルロース繊維の低収率が、反応液に対する高DSセルロースの高い溶解度に起因している可能性に着目し、反応液の含水率を大きくすることで、エステル化セルロースの溶出を抑制できることを見出した。すなわち、本発明は以下の態様を包含する。
[1] エステル化セルロース繊維の製造方法であって、セルロース繊維原料を、エステル化剤及び水性媒体の存在下でエステル化することを含み、前記水性媒体が、水を20質量%以上含む、方法。
[2] エステル化セルロース繊維の製造方法であって、水性媒体に、セルロース繊維原料及びエステル化剤を加えて前記セルロース繊維原料をエステル化することを含み、前記水性媒体が水を20質量%以上含む、方法。
[3] 前記水性媒体が、水を50質量%以上含む、上記態様1又は2に記載の方法。
[4] 前記水性媒体が、水である、上記態様1~3のいずれかに記載の方法。
[5] 前記水性媒体が、水と、非プロトン性溶媒及びプロトン性溶媒からなる群から選択される1種以上である水混和性媒体とを含む、上記態様1~3のいずれかに記載の方法。
[6] 前記水混和性媒体が、非プロトン性溶媒である、上記態様5に記載の方法。
[7] 前記エステル化がアセチル化である、上記態様1~6のいずれかに記載の方法。
[8] 前記エステル化剤が、カルボン酸ビニルエステル、カルボン酸クロリド、無水酢酸及び酢酸からなる群から選択される、上記態様1~7のいずれかに記載の方法。
[9] 前記エステル化を、前記エステル化剤を含む油相と、前記水性媒体を含む水相とを有する水/油系中で行う、上記態様1~8のいずれかに記載の方法。
[10] 前記エステル化を、前記エステル化剤と前記水性媒体とを含むエマルション中で行う、上記態様1~8のいずれかに記載の方法。
[11] 前記エステル化セルロース繊維の置換度(DS)が、1.0以下である、上記態様1~10のいずれかに記載の方法。
[12] 前記置換度(DS)が、0.1以上1.0以下である、上記態様11に記載の方法。
[13] 前記エステル化剤が酢酸ビニルであり、前記置換度(DS)が0.1以上0.3以下である、上記態様11又は12に記載の方法。
[14] 前記エステル化剤が無水酢酸であり、前記置換度(DS)が0.1以上0.6以下である、上記態様11又は12に記載の方法。
[15] 前記セルロース繊維原料の数平均繊維径が、2nm以上1μm未満である、上記態様1~14のいずれかに記載の方法。
[16] 前記エステル化セルロース繊維が、重量平均分子量(Mw)100000以上、及び重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)6以下を有する、上記態様1~15のいずれかに記載の方法。
[17] 前記エステル化セルロース繊維が、アルカリ可溶多糖類含有率12質量%以下、及び結晶化度60%以上を有する、上記態様1~16のいずれかに記載の方法。
[18] 前記セルロース繊維原料が、重量平均分子量(Mw)100000以上、及び重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)6以下を有する、上記態様1~17のいずれかに記載の方法。
[19] 前記セルロース繊維原料が、アルカリ可溶多糖類含有率12質量%以下、及び結晶化度60%以上を有する、上記態様1~18のいずれかに記載の方法。
[20] エステル化セルロース繊維と分散媒とを含む分散体の製造方法であって、
上記態様1~19のいずれかに記載の方法でエステル化セルロース繊維を製造すること、並びに
前記エステル化セルロース繊維の製造時又は製造後に前記エステル化セルロース繊維を分散媒中に分散させること、
を含む、方法。
[21] エステル化セルロース繊維を含むシートの製造方法であって、
上記態様1~19のいずれかに記載の方法でエステル化セルロース繊維を製造すること、並びに
前記エステル化セルロース繊維をシート化すること、
を含む、方法。
[22] エステル化セルロース繊維と樹脂とを含む樹脂複合体の製造方法であって、
上記態様1~19のいずれかに記載の方法でエステル化セルロース繊維を製造すること、並びに
前記エステル化セルロース繊維と樹脂とを複合化すること、
を含む、方法。
本発明の一態様によれば、反応液に対する高DSセルロースの溶出を抑制してエステル化セルロース繊維を高収率で製造する方法が提供される。
IRインデックス1730及びIRインデックス1030の算出法の説明図である。 熱分解開始温度(TD)及び1%重量減少温度(T1%)の測定法の説明図である。
以下、本発明を実施するための形態(「本実施形態」ともいう)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本発明の一態様は、エステル化セルロース繊維の製造方法を提供する。一態様において、該方法は、セルロース繊維原料をエステル化剤及び水性媒体の存在下でエステル化することを含む。また一態様において、該方法は、水性媒体にセルロース繊維原料及びエステル化剤を加えてセルロース繊維原料をエステル化することを含む。上記水性媒体は、一態様において水を20質量%以上含む。
セルロース繊維原料としては、天然セルロース及び再生セルロースを用いることができる。天然セルロースとしては、木材種(広葉樹又は針葉樹)から得られる木材パルプ、非木材種(綿、竹、麻、バガス、ケナフ、コットンリンター、サイザル、ワラ等)から得られる非木材パルプ、動物(例えばホヤ類)や藻類、微生物(例えば酢酸菌)、が産生するセルロース繊維集合体を使用できる。再生セルロースとしては、再生セルロース繊維(ビスコース、キュプラ、テンセル等)、セルロース誘導体繊維、エレクトロスピニング法により得られた再生セルロース又はセルロース誘導体の極細糸等を使用できる。これらの原料は、必要に応じて、グラインダー、リファイナー等の機械力による叩解、フィブリル化、微細化等によって、繊維径、繊維長、フィブリル化度等を調整したり、薬品を用いて漂白、精製し、セルロース以外の成分(リグニン、ヘミセルロース等)の含有率を調整したりすることができる。
セルロース繊維原料は、本実施形態の目的を阻害しない範囲内で化学修飾されていてもよい。即ち、セルロース繊維原料として化学変性パルプを用いてもよい。例えば、硝酸エステル、硫酸エステル、リン酸エステル、ケイ酸エステル等の無機エステル化物、メチルエーテル、ヒドロキシエチルエーテル、ヒドロキシプロピルエーテル、ヒドロキシブチルエーテル、カルボキシメチルエーテル、シアノエチルエーテル等のエーテル化物、セルロースの一級水酸基を酸化してなるTEMPO酸化処理パルプ等をセルロース繊維原料として使用できる。
セルロース繊維原料の数平均繊維径の下限は、好ましくは2nm以上、より好ましくは10nm以上、さらに好ましくは30nm以上、さらに好ましくは100nm以上、特に好ましくは300nm以上である。一方、上限は、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下、さらに好ましくは1μm未満、特に好ましくは800nm以下、最も好ましくは500nm以下である。数平均繊維径が2nm以上であると、セルロースの結晶性が良好に保持され好ましい。数平均繊維径が100μm以下であると、樹脂複合体のフィラーとして用いたときのエステル化セルロース繊維の繊維径が大きすぎず、樹脂複合体の性能向上に良好に寄与するため好ましい。
セルロース繊維原料の数平均繊維径については、窒素吸着によるBET法で得られる比表面積から算出される数平均繊維径が1μm未満(比表面積が2.667m2/g未満)の場合、その値を数平均繊維径として採用し、1μm以上の場合、後述する共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)による計測値の平均を数平均繊維径として採用する。
窒素吸着による数平均繊維径の算出方法は以下のとおりである。すなわち、セルロース繊維原料の水分散体をtBuOHで溶剤置換した上で多孔質シートを作製し、その多孔質シートの比表面積を窒素吸着によるBET法を用いて測定する。セルロース繊維原料を、繊維間の融着が全く起こっていない理想状態であり、かつセルロース密度がd(g/cm3)、繊維径がD(nm)である円柱とした時、比表面積と繊維径との関係は下記の式で表される。
比表面積(m2/g)=4000/(dD)
そして、セルロース密度を1.50g/cm3とした時、数平均繊維径は下記の式で表される。
D(nm)=2667/比表面積(m2/g)
なお、Dが1μmの時の比表面積は2.667m2/gである。
CLSMによる数平均繊維径の算出方法は以下のとおりである。すなわち、セルロース繊維原料の水分散体を0.01質量%までtBuOHで希釈し、10μlのtBuOH分散体をSi基板上にキャストし、風乾したものを測定サンプルとし、CLSM観察にて繊維径を計測する。具体的には、少なくとも10本以上のセルロース繊維原料が観測されるように倍率が調整された観察視野にて、無作為に選んだ10本のセルロース繊維原料の繊維径を計測する。そして、得られた10本の繊維径の数平均値をセルロース繊維原料の数平均繊維径とする。
典型的な態様において、セルロース繊維原料の結晶構造は、セルロースI型及び/又はII型を有する。セルロースの結晶形としては、I型、II型、III型、IV型等が知られている。I型及びII型のセルロースは汎用されている一方、III型及びIV型のセルロースは実験室スケールでは得られているものの工業スケールでは汎用されていない。
結晶構造は、グラファイトで単色化したCuKα(λ=0.15418nm)を用いた広角X線回折より得られる回折プロファイルより同定することが可能である。セルロースI型は2θ=14~17°付近と2θ=22~23°付近の2箇所の位置にピークを有する。セルロースII型は2θ=10°~19°に1つのピークと、2θ=19°~25°に2つのピークとを有する。セルロースI型及びセルロースII型が混在する場合、2θ=10°~25°の範囲で最大6本のピークが観測される。
本実施形態のセルロース繊維原料の結晶化度は、好ましくは50%以上である。結晶化度がこの範囲にあると、セルロース繊維原料及びそれから得られるエステル化セルロース繊維の力学物性(特に強度及び寸法安定性)が高まるため、エステル化セルロース繊維を樹脂に分散してなる樹脂組成物の強度及び寸法安定性が高くなる傾向にある。本実施形態のセルロース繊維原料の結晶化度は、より好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは65%であり、最も好ましくは70%である。セルロース繊維原料の結晶化度は高いほど好ましい傾向にあるので、上限は特に限定されないが、生産上の観点から99%が好ましい上限である。
結晶化度は、セルロース繊維原料がセルロースI型結晶(天然セルロース由来)である場合には、サンプルを広角X線回折により測定した際の回折パターン(2θ/deg.が10~30)からSegal法により、以下の式で求められる。
結晶化度(%)=[I(200)-I(amorphous)]/I(200)×100
(200):セルロースI型結晶における200面(2θ=22.5°)による回折ピーク強度
(amorphous):セルロースI型結晶におけるアモルファスによるハローピーク強度であって、200面の回折角度より4.5°低角度側(2θ=18.0°)のピーク強度
また結晶化度は、セルロース繊維原料がセルロースII型結晶(再生セルロース由来)である場合には、広角X線回折において、セルロースII型結晶の(110)面ピークに帰属される2θ=12.6°における絶対ピーク強度h0 とこの面間隔におけるベースラインからのピーク強度h1 とから、下記式によって求められる。
結晶化度(%)=h1/h0×100
セルロース繊維原料の重合度(DP)は、100以上12000以下であることが好ましい。重合度はセルロース分子鎖を形成する無水グルコース単位の繰返し数である。セルロース繊維原料の重合度が100以上であることで、繊維自体の引張破断強度及び弾性率が向上し、エステル化セルロース繊維を含む樹脂組成物の高い引張破断強度及び熱安定性が発現するため好ましい。セルロース繊維原料の重合度に特に上限はないが、12000を超える重合度のセルロースは実質的に入手が困難であり、工業的な利用が難しい傾向がある。取扱性及び工業的実施の観点から、セルロース繊維原料の重合度は、150~8000が好ましい。重合度は、まず、銅エチレンジアミン溶液を用いたセルロース希薄溶液の極限粘度(JIS P 8215:1998)を求めた後、セルロースの極限粘度と重合度DPとが下記式(1)の関係であることを利用して、重合度DPとして求められる。
極限粘度[η]=K×DPa (1)
ここでK及びaは高分子の種類によって決まる定数であり、セルロースの場合、Kは5.7×10-3、aは1である。
セルロース繊維原料の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100000以上であり、より好ましくは200000以上である。セルロース繊維原料の重量平均分子量と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、好ましくは6以下であり、好ましくは5.4以下である。重量平均分子量が大きいほどセルロース分子の末端基の数は少ないことを意味する。また、重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)は分子量分布の幅を表すものであることから、Mw/Mnが小さいほどセルロース分子の末端の数は少ないことを意味する。セルロース分子の末端は熱分解の起点となるため、セルロース繊維原料のセルロース分子の重量平均分子量が大きいのみでなく重量平均分子量が大きいと同時に分子量分布の幅が狭い場合、特に高耐熱性のエステル化セルロース繊維、及びエステル化セルロース繊維と樹脂とを含む樹脂複合体が得られる。セルロース繊維原料の重量平均分子量(Mw)は、セルロース原料の入手容易性の観点から、例えば600000以下、又は500000以下であってよい。重量平均分子量と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、セルロース繊維原料の製造容易性の観点から、例えば1.5以上、又は2以上であってよい。Mwは、目的に応じたMwを有するセルロース原料を選択すること、セルロース原料に対して物理的処理及び/又は化学的処理を適度な範囲で適切に行うこと、等によって上記範囲に制御できる。Mw/Mnもまた、目的に応じたMw/Mnを有するセルロース原料を選択すること、セルロース原料に対して物理的処理及び/又は化学的処理を適度な範囲で適切に行うこと、等によって上記範囲に制御できる。Mwの制御、及びMw/Mnの制御の両者において、上記物理的処理としては、マイクロフリュイダイザー、ボールミル、ディスクミル等の乾式粉砕若しくは湿式粉砕、擂潰機、ホモミキサー、高圧ホモジナイザー、超音波装置等による衝撃、せん断、ずり、摩擦等の機械的な力を加える物理的処理を例示でき、上記化学的処理としては、蒸解、漂白、酸処理、再生セルロース化等を例示できる。
ここで、セルロース繊維原料の重量平均分子量及び数平均分子量とは、セルロース繊維原料を塩化リチウムが添加されたN,N-ジメチルアセトアミドに溶解させたうえで、N,N-ジメチルアセトアミドを溶媒としてゲルパーミエーションクロマトグラフィによって求めた値である。
本実施形態のセルロース繊維原料はリグニン等を含む酸不溶成分及び/又はヘミセルロース等を含むアルカリ可溶多糖類を含んでいても良い。酸不溶成分及びアルカリ可溶多糖類の含有量はセルロース繊維の耐熱性及び樹脂組成物中の分散性に影響を及ぼすため、目的に応じて調整すれば良い。一般的に酸不溶成分及びアルカリ可溶多糖類の含有量が多いと、セルロース繊維の耐熱性低下及びそれに伴う変色、セルロース繊維の力学的特性の低下等を誘起する。したがって、例えば、ポリアミド樹脂のような高温で溶融混練する樹脂を用いて樹脂組成物を製造する場合、セルロース繊維原料中の酸不溶成分及びアルカリ可溶多糖類の平均含有率は少ない方が好ましい場合がある。
セルロース繊維原料の酸不溶成分平均含有率はできる限り少ない方が好ましい。具体的には、好ましくは10質量%未満、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは7質量%以下、さらにより好ましくは6質量%以下、最も好ましくは5質量%以下である。酸不溶成分平均含有率は、0質量%であってよいが、セルロース繊維の製造容易性の観点から、例えば0.1質量%以上、又は0.5質量%以上、又は1質量%以上、又は2質量%以上、又は3質量%以上であってもよい。
酸不溶成分平均含有率は、非特許文献(木質科学実験マニュアル、日本木材学会編、92~97頁、2000年)に記載のクラーソン法を用いた酸不溶成分の定量として行う。なおこの方法は当業界においてリグニン量の測定方法として理解されている。硫酸溶液中でサンプルを撹拌してセルロース及びヘミセルロース等を溶解させた後、ガラスファイバーろ紙で濾過し、得られた残渣が酸不溶成分に該当する。この酸不溶成分重量より酸不溶成分含有率を算出し、そして、3サンプルについて算出した酸不溶成分含有率の数平均を酸不溶成分平均含有率とする。
セルロース繊維原料中のアルカリ可溶多糖類平均含有率(一態様においてヘミセルロース平均含有率)は、好ましくは25質量%以下、より好ましくは13質量%以下、さらに好ましくは12質量%以下、特に好ましくは8質量%以下、最も好ましくは5質量%以下である。アルカリ可溶多糖類平均含有率は、0質量%であってよいが、セルロース繊維の製造容易性の観点から、例えば1質量%以上、又は3質量%以上、又は6質量%以上であってもよい。
本開示におけるアルカリ可溶多糖類は、ヘミセルロースのほか、β-セルロース及びγ-セルロースも包含する。アルカリ可溶多糖類とは、植物(例えば木材)を溶媒抽出及び塩素処理して得られるホロセルロースのうちのアルカリ可溶部として得られる成分(すなわちホロセルロースからα-セルロースを除いた成分)として当業者に理解される。アルカリ可溶多糖類は、水酸基を含む多糖であり耐熱性が悪く、熱がかかった場合に分解すること、熱エージング時に黄変を引き起こすこと、セルロース繊維の強度低下の原因になること等の不都合を招来し得ることから、セルロース繊維原料中のアルカリ可溶多糖類含有量は少ない方が好ましい。
アルカリ可溶多糖類含有率は、非特許文献(木質科学実験マニュアル、日本木材学会編、92~97頁、2000年)に記載の手法より求めることができ、ホロセルロース含有率(Wise法)からαセルロース含有率を差し引くことで求められる。なおこの方法は当業界においてヘミセルロース量の測定方法として理解されている。1つのサンプルにつき3回アルカリ可溶多糖類含有率を算出し、算出したアルカリ可溶多糖類含有率の数平均をアルカリ可溶多糖類平均含有率とする。
[水性媒体]
本実施形態の水性媒体は、水を20質量%以上含む。水性媒体に含まれる水の量が20質量%未満であると高DSセルロースの溶出が生じ望ましくない。水性媒体に含まれる水の下限は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量以上である。一態様において、水性媒体に含まれる水の量の上限は、好ましくは99質量%以下、より好ましくは97質量%以下、さらに好ましくは95質量%以下である。水性媒体に含まれる水の量が99質量%以下である場合、後述の水混和性溶媒の存在により反応効率を高くでき、製造上好ましい。別の一態様において、水性媒体は水であってよい(すなわち水性媒体中の水の量が100質量%であってよい)。
一態様において、水性媒体は、水と、非プロトン性溶媒及びプロトン性溶媒からなる群から選択される1種以上である水混和性媒体とを含む。非プロトン性溶媒は極性溶媒でも非極性溶媒でもよい。なおプロトン性溶媒はその構造上本質的に極性溶媒である。好ましい態様において、当該水混和性媒体は非プロトン性溶媒である。一態様においては、エステル化剤及び水混和性媒体の両方の機能を有する物質(例えば酢酸等)を用いてもよい。当該物質の量は、本開示で言及するエステル化剤の量及び水性媒体の量の各々に算入される。
非プロトン性溶媒としては、特に限定されるものではないが、好ましくは、アルキルスルホキシド類、アルキルアミド類、ピロリドン類、ケトン類、エーテル類等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
アルキルスルホキシド類としては、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メチルエチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のジC1-4アルキルスルホキシド等が挙げられる。
アルキルアミド類としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジエチルホルムアミド等のN,N-ジC1-4アルキルホルムアミド;N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド等のN,N-ジC1-4アルキルアセトアミド等が挙げられる。
ピロリドン類としては、例えば、2-ピロリドン、3-ピロリドン等のピロリドン;N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等のN-C1-4アルキルピロリドン等が挙げられる。
ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等が挙げられる。
エーテル類としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
これらの非プロトン性溶媒のうち、ドナー数が25以上の溶媒はセルロース繊維原料のミクロフィブリル間を膨潤させることが可能であり、反応効率が上がるため好ましい。具体的にはDMSO(29.8)、DMF(26.6)、DMAc(27.8)、NMP(27.3)等が挙げられ、特にDMSOがより好ましい。
非プロトン性溶媒が非極性溶媒である場合の例としては、オレフィン類、パラフィン類、芳香族炭化水素類、ハロゲン類等が挙げられる。
プロトン性溶媒としては、例えば、アルコール類(例えばメタノール、エタノール、フェノール、ブタンジオール、グリセリン等)、カルボン酸類(例えば酢酸、安息香酸、アジピン酸等)、アンモニア等が挙げられる。
[エステル化剤]
本実施形態の方法で用いるエステル化剤は、セルロースの水酸基と反応してアシル基を生成する化合物である。エステル化剤としては、アシル化剤、例えば、カルボン酸ハロゲン化物、酸無水物(すなわちカルボン酸無水物)、カルボン酸ビニルエステル又はカルボン酸から選択される化合物を使用できる。好ましい一態様において、エステル化はアセチル化である。上記のカルボン酸ハロゲン化物、酸無水物、及びカルボン酸ビニルエステルの各々を構成するカルボン酸としては、飽和脂肪酸、不飽和(モノ不飽和、ジ不飽和、トリ不飽和、テトラ不飽和、ペンタ不飽和、ヘキサ不飽和等)脂肪酸、芳香族カルボン酸、アミノ酸、イミド化合物等を例示できる。カルボン酸は、単塩基酸でも多塩基酸でもよい。カルボン酸が低級(例えば炭素数1~24)のアルカノイルオキシ基を有することが、エステル化セルロース繊維の製造容易性の点で好ましい。
飽和脂肪酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ピバル酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸及びアラキジン酸等が好ましい。飽和脂肪酸としては、分岐鎖アルキルカルボン酸(例えば、3,5,5-トリメチルヘキサン酸等)、環式アルカンカルボン酸(シクロヘキサンカルボン酸、t-ブチルシクロヘキサンカルボン酸等)及び、置換若しくは非置換フェノキシアルキルカルボン酸(フェノキシ酢酸、1,1,3,3-テトラメチルブチルフェノキシ酢酸、ボルナンフェノキシ酢酸、ボルナンフェノキシヘキサン酸等)も挙げられる。
モノ不飽和脂肪酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リシノール酸等が挙げられる。
ジ不飽和脂肪酸としては、ソルビン酸、リノール酸、エイコサジエン酸等が挙げられる。
トリ不飽和脂肪酸としては、リノレン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸等が挙げられる。
テトラ不飽和脂肪酸としては、ステアリドン酸及びアラキドン酸等が挙げられる。
ペンタ不飽和脂肪酸としては、ボセオペンタエン酸、エイコサペンタエン酸等が挙げられる。
ヘキサ不飽和脂肪酸としては、ドコサヘキサエン酸、ニシン酸等が挙げられる。
芳香族カルボン酸としては、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、没食子酸(3,4,5-トリヒドロキシベンゼンカルボン酸)、ケイ皮酸(3-フェニルプロパ-2-エン酸)等が挙げられる。
多塩基カルボン酸としては、ジカルボン酸、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸等、が挙げられる。
アミノ酸としては、グリシン、β-アラニン、ε-アミノカプロン酸(6-アミノヘキサン酸)等が挙げられる。
イミド化合物としては、
マレイミド化合物:
フタルイミド化合物:
からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を例示できる。
カルボン酸ハロゲン化物の好適例としては、下記式(1)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
R1-C(=O)-X (1)
(式中、R1は、炭素数1~24のアルキル基、炭素数1~24のアルキレン基、炭素数3~24のシクロアルキル基、又は炭素数6~24のアリール基を表し、Xは、Cl、Br又はIである。)
カルボン酸ハロゲン化物の好適例としては、塩化アセチル、臭化アセチル、ヨウ化アセチル、塩化プロピオニル、臭化プロピオニル、ヨウ化プロピオニル、塩化ブチリル、臭化ブチリル、ヨウ化ブチリル、塩化ベンゾイル、臭化ベンゾイル、ヨウ化ベンゾイル等が挙げられるが、これらに限定されない。中でも、カルボン酸クロリドは反応性と取り扱い性の点から好適に採用できる。
酸無水物の好適例としては、酢酸、プロピオン酸、(イソ)酪酸、吉草酸等の飽和脂肪族モノカルボン酸無水物;(メタ)アクリル酸、オレイン酸等の不飽和脂肪族モノカルボン酸の無水物;シクロヘキサンカルボン酸、テトラヒドロ安息香酸等の脂環族モノカルボン酸の無水物;安息香酸、4-メチル安息香酸等の芳香族モノカルボン酸の無水物;二塩基カルボン酸無水物として、例えば、無水コハク酸、アジピン酸等の無水飽和脂肪族ジカルボン酸;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の無水不飽和脂肪族ジカルボン酸無水物;無水1-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸等の無水脂環族ジカルボン酸;無水フタル酸、無水ナフタル酸等の無水芳香族ジカルボン酸無水物等、多塩基カルボン酸無水物類として、例えば、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の(無水)ポリカルボン酸等が挙げられる。反応効率の観点から、無水酢酸、無水プロピオン酸、及び無水酪酸が好ましく、無水酢酸が特に好ましい。
カルボン酸ビニルエステルとしては、下記式(1)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
R-COO-CH=CH2 …(1)
(式中、Rは、炭素数1~16のアルキル基、炭素数1~16のアルキレン基、炭素数3~16のシクロアルキル基、又は炭素数6~16のアリール基を表す。)
カルボン酸ビニルエステルの具体例としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニルアジピン酸ジビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、安息香酸ビニル、及び桂皮酸ビニルからなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
これらカルボン酸ビニルエステルの中でも、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、及び酪酸ビニルからなる群から選択される少なくとも一種、特に酢酸ビニルが、反応効率の観点から好ましい。
カルボン酸としては、下記式(1)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
R-COOH …(1)
(式中、Rは、炭素数1~16のアルキル基、炭素数2~16のアルケニル基、炭素数3~16のシクロアルキル基、又は炭素数6~16のアリール基を表す。)
カルボン酸の具体例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、シクロヘキサンカルボン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、メタクリル酸、クロトン酸、ピバリン酸、オクチル酸、安息香酸、及び桂皮酸からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
これらカルボン酸の中でも、酢酸、プロピオン酸、及び酪酸からなる群から選択される少なくとも一種、特に酢酸が、反応効率の観点から好ましい。
反応系全体に対するエステル化剤の質量比率の下限は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、特に好ましくは10質量%以上である。0.1質量%以上であるとエステル化剤量が少なすぎず、反応性が良好であり好ましい。一方、上記質量比率の上限は、好ましくは80質量%未満、より好ましくは50質量%未満、さらに好ましくは30質量%未満である。80質量%未満であると高DSセルロースの溶出が抑えられるため、好ましい。
一態様において、反応促進の観点から、水性媒体は触媒をさらに含んでもよい。例えば、カルボン酸ハロゲン化物の反応においては、触媒として作用させると同時に、副生物である酸性物質を中和する目的で、アルカリ性化合物を1種又は2種以上添加してもよい。アルカリ性化合物としては、具体的には:トリエチルアミン、トリメチルアミン等の3級アミン化合物;及びピリジン、ジメチルアミノピリジン等の含窒素芳香族化合物が挙げられるが、これに限定されない。
酸無水物の反応においては、触媒として、硫酸、塩酸、リン酸等の酸性化合物、又はルイス酸、(例えば、MYnで表されるルイス酸化合物であって、MはB、As,Ge等の半金属元素、又はAl、Bi、In等の卑金属元素、又はTi、Zn、Cu等の遷移金属元素、又はランタノイド元素を表し、nはMの原子価に相当する整数であり、2又は3を表し、Yはハロゲン原子、OAc、OCOCF3、ClO4、SbF6、PF6又はOSO2CF3(OTf)を表す。)、又はトリエチルアミン、ピリジン等のアルカリ性化合物を1種又は2種以上添加してもよい。
カルボン酸ビニルエステルの反応においては、触媒として、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、1~3級アミン、4級アンモニウム塩、イミダゾール及びその誘導体、ピリジン及びその誘導体、並びにアルコキシドからなる群より選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
アルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等が挙げられる。アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム等が挙げられる。
1~3級アミン(すなわち、1級アミン、2級アミン、及び3級アミン)としては、エチレンジアミン、ジエチルアミン、プロリン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン、トリス(3-ジメチルアミノプロピル)アミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
イミダゾール及びその誘導体としては、1-メチルイミダゾール、3-アミノプロピルイミダゾール、カルボニルジイミダゾール等が挙げられる。
ピリジン及びその誘導体としては、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン、ピコリン等が挙げられる。
アルコキシドとしては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム-t-ブトキシド等が挙げられる。
カルボン酸の反応においては、触媒として、硫酸、塩酸、リン酸等の酸性化合物、又はルイス酸、(例えば、MYnで表されるルイス酸化合物であって、MはB、As,Ge等の半金属元素、又はAl、Bi、In等の卑金属元素、又はTi、Zn、Cu等の遷移金属元素、又はランタノイド元素を表し、nはMの原子価に相当する整数であり、2又は3を表し、Yはハロゲン原子、OAc、OCOCF3、ClO4、SbF6、PF6又はOSO2CF3(OTf)を表す。)を1種又は2種以上添加してもよい。
エステル化剤に対する触媒の質量比率の下限は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上、特に好ましくは1質量%以上である。0.01質量%以上であると触媒量が少なすぎず、反応性が良好であり好ましい。一方、上記質量比率の上限は、好ましくは1000質量%未満、より好ましくは500質量%未満、さらに好ましくは100質量%未満である。1000質量%未満であることは製造コストの観点から好ましい。
セルロース繊維原料をエステル化剤及び水性媒体の存在下で反応させる際の、反応系中のセルロース繊維原料の含有率は、特に限定されないが、反応系全体質量に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1.0質量%以上、極めて好ましくは2.0質量%以上、最も好ましくは3.0質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下、極めて好ましくは8質量%以下、最も好ましくは5質量%以下である。0.01質量%以上であると、セルロース繊維原料が希薄すぎず生産性が高いため好ましく、50質量%以下であると、攪拌が容易であるためエステル化が均一になり好ましい。
エステル化剤と水性媒体とは、
(i) 完全に混合し一液となった状態
(ii) 層分離し二液となった状態
(iii) 乳化した状態
のいずれであっても良い。
上記(ii)の態様において、エステル化は、エステル化剤を含む油相と、水性媒体を含む水相とを有する水/油系中で行うことができる。例えば、エステル化剤として酢酸ビニルを用いる場合、酢酸ビニルは主として油相中に存在するが水相中にも僅かに溶解してセルロースをアセチル化することができる。
また、上記(iii)の態様において、エステル化は、エステル化剤と水性媒体とを含むエマルション中で行うことができる。典型的な態様において、エマルションは乳化剤を含む。乳化剤としては、周知のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子系界面活性剤、反応性界面活性剤等を挙げることができる。
特に好ましいアニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルカルボン酸塩系化合物、アルキルサルフェート系化合物、アルキルリン酸塩等が挙げられる。
特に好ましいノニオン性界面活性剤としては、炭素数1~18のアルコールのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド付加物、アルキレングリコール及び/又はアルキレンジアミンのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド付加物、ポリエチレンオキシド及びプロピレンオキシドのブロック共重合体等が挙げられる。
特に好ましいカチオン性界面活性剤としては、1級~3級アミン、ピリジニウム塩、アルキルピリジニウム塩、ハロゲン化アルキル4級アンモニウム塩等の4級アンモニウム塩等が挙げられる。
エステル化は、撹拌下で行うことが好ましい。撹拌の方法は特に限定されないが、各種撹拌機(せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波式等のもの)、溶解機、乳化機、分散機、混錬機、ホモジナイザー等を用いて実施することができる。
エステル化時の圧力は、セルロース繊維原料及びエステル化剤の種類、並びに目標とするエステル化率によって適宜決定されるが、反応性を向上させる観点から、下限は好ましくは-0.1MPa、より好ましくは0MPa以上であり、熱分解を抑制する観点から、上限は好ましくは10MPa、より好ましくは5MPa以下、さらに好ましくは2MPa以下である。
エステル化時の温度は、セルロース繊維原料及びエステル化剤の種類、並びに目標とするエステル化率によって適宜決定されるが、反応性を向上させる観点から、下限は好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上、さらに好ましくは20℃以上、特に好ましくは30℃以上、最も好ましくは40℃以上であり、熱分解を抑制する観点から、上限は好ましくは200℃以下、より好ましくは150℃以下、さらに好ましくは120℃以下、さらに好ましくは100℃以下、さらに好ましくは80℃以下、さらに好ましくは70℃以下である。0℃以上であると、水性媒体の凍結を回避でき好ましい。セルロース繊維(特に微細化されたセルロース繊維)は凍結によって凝集しやすいため、水性媒体が凍結しないことが好ましい。一方、200℃以下であると、攪拌が容易であるためエステル化が均一になり好ましい。
エステル化の反応時間は、セルロース繊維原料及びエステル化剤の種類、並びに目標とするエステル化率によって適宜決定されるが、反応性の観点から、下限は好ましくは0.1時間以上、より好ましくは0.5時間以上、さらに好ましくは1時間以上、さらに好ましくは3時間以上、さらに好ましくは6時間以上、さらに好ましくは10時間以上であり、生産性の観点から、上限は好ましくは60時間以下、より好ましくは48時間以下、さらに好ましくは36時間以下である。
反応終了後のエステル化セルロース繊維は、未反応の化合物や塩基等を除去するために、ろ過や遠心分離による濃縮工程及び水による洗浄工程を少なくとも1回以上実施し、最終的に水スラリー又は乾燥体として回収できる。なお、洗浄工程において有機溶剤を使用して洗浄すること、洗浄したスラリーを有機溶剤で置換して有機溶剤スラリーとして回収すること、有機溶剤スラリーを乾燥し、乾燥体を供すること等を実施しても良い。
本実施形態のエステル化セルロース繊維の製造方法の一態様においては、反応液中への高DSセルロースの溶出が実質的に無い。高DSセルロースの溶出が実質的に無いとは、反応液中へ溶出した高DSセルロースの重量を反応開始時のセルロース繊維原料の重量で除して求まる溶出率(以下、単に溶出率ともいう)が5質量%以下であることを意味する。上記溶出率は、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。高DSセルロース溶出率が高いことは最終的なエステル化セルロース繊維の収率低下をもたらすため、当該溶出率はできるだけ低い方が好ましい。
反応液中へ溶出したエステル化セルロースの重量は下記手法で求めることができる。フッ化カルシウム板(円形 直径10mm)を200℃のホットプレートで熱し、フッ化カルシウム板上に反応終了時(水を添加する直前)の反応液10μLを滴下させ、乾固させる。なお、この反応液はシリンジフィルター(PTFE製、孔径0.2μm)を用いてエステル化セルロース繊維等の固形物を除いた液体のことを言う。つづいて、フーリエ変換赤外分光光度計を用いて該フッ化カルシウム板の赤外分光スペクトルを透過法により測定する。なお、該乾固物が赤外分光スペクトルの観測スポットの内部に収まる必要がある。
得られたスペクトルより1030cm-1(セルロース骨格鎖C-O伸縮振動の吸収バンド)における吸光度(H1030)を読み取る。ただし、800cm-1と1500cm-1を結ぶ線をベースラインとして、このベースラインを吸光度0とした時の吸光度を意味する。未置換のセルロースは反応液中で不溶であり、反応液中に溶解しているセルロースは高DSセルロースであるとみなすことができる。したがって、該吸光度H1030より下記式を用いて、反応液中に溶出したエステル化セルロース重量が算出される。
高DSセルロース重量(g)=H1030/27.4×反応液重量(g)
つづいて、溶出率は下記式より算出される。高DSセルロースの置換度を2.5と仮定して高DSセルロースのmol数、及び仕込みセルロース繊維のmol数を算出した上で、溶出率を求める。
溶出率(%)=(高DSセルロース重量(g)/263.5)/(セルロース繊維原料重量(g)/162.1)×100
赤外分光スペクトル測定は、例えば以下の条件で行う。
積算回数:64回
波数分解能:4cm-1
測定波数範囲:4000~600cm-1
≪エステル化セルロース繊維≫
本実施形態の方法で得られるエステル化セルロース繊維においては、セルロース繊維の水酸基が、前述で例示したようなエステル化剤によってアシル化されている。エステル化セルロース繊維のアシル置換度(DS)は、一態様において1.0以下であり、好ましくは0.1以上1.0以下である。DSが0.1以上であれば、熱分解開始温度が高い、エステル化セルロース繊維及びこれを含む樹脂複合体を得ることができる。一方、DSが1.0以下であると、エステル化セルロース繊維中に未修飾のセルロース骨格が残存するため、セルロース由来の高い引張強度及び寸法安定性と化学修飾由来の高い熱分解開始温度を兼ね備えた、エステル化セルロース繊維及びこれを含む樹脂複合体を得ることができる。DSはより好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.25以上、特に好ましくは0.3以上、最も好ましくは0.5以上であり、より好ましくは0.8以下、さらに好ましくは0.7以下、特に好ましくは0.6以下、最も好ましくは0.5以下である。
好ましい一態様においては、エステル化剤が酢酸ビニルであり、置換度(DS)が0.1以上0.3以下である。また、別の好ましい一態様においては、エステル化剤が無水酢酸であり、置換度(DS)が0.1以上0.6以下である。
エステル化セルロース繊維の上記アシル置換度(DS)は、エステル化セルロース繊維の反射型赤外吸収スペクトルから、アシル基由来のピークとセルロース骨格由来のピークとのピーク強度比に基づいて算出することができる。アシル基に基づくC=Oの吸収バンドのピークは1730cm-1に出現し、セルロース骨格鎖に基づくC-Oの吸収バンドのピークは1030cm-1に出現する(図1参照)。エステル化セルロース繊維のDSは、後述するエステル化セルロース繊維の固体NMR測定から得られるDSと、セルロース骨格鎖C-Oの吸収バンドのピーク強度に対するアシル基に基づくC=Oの吸収バンドのピーク強度の比率で定義される修飾化率(IRインデックス1030)との相関グラフを作製し、相関グラフから算出された検量線
置換度DS = 4.13 × IRインデックス(1030)
を使用することで求めることができる。
固体NMRによるエステル化セルロース繊維のDSの算出方法は、凍結粉砕したエステル化セルロース繊維について13C固体NMR測定を行い、50ppmから110ppmの範囲に現れるセルロースのピラノース環由来の炭素C1-C6に帰属されるシグナルの合計面積強度(Inp)に対する修飾基由来の1つの炭素原子に帰属されるシグナルの面積強度(Inf)より下記式で求めることができる。
DS=(Inf)×6/(Inp)
たとえば、修飾基がアセチル基の場合、-CH3に帰属される23ppmのシグナルを用いれば良い。
用いる13C固体NMR測定の条件は例えば以下の通りである。
装置 :Bruker Biospin Avance500WB
周波数 :125.77MHz
測定方法 :DD/MAS法
待ち時間 :75sec
NMR試料管 :4mmφ
積算回数 :640回(約14Hr)
MAS :14,500Hz
化学シフト基準:グリシン(外部基準:176.03ppm)
本実施形態のエステル化セルロース繊維において、繊維全体の修飾度(DSt)(これは上記のアシル置換度(DS)と同義である。)に対する繊維表面の修飾度(DSs)の比率で定義されるDS不均一比(DSs/DSt)は1.05以上が好ましい。DS不均一比は値が大きいほど、鞘芯構造様の不均一構造(すなわち、繊維表層が高度に化学修飾される一方で繊維中心部が元の未修飾に近いセルロースの構造を保持している構造)が顕著であり、セルロース由来の高い引張強度及び寸法安定性を有しつつ、樹脂複合時の樹脂との親和性の向上、樹脂複合体の寸法安定性の向上につながる。DS不均一比はより好ましくは1.1以上、より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.3以上、特に好ましくは1.5以上、最も好ましくは2.0以上であり、エステル化セルロース繊維の製造容易性の観点から、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは10以下である。
DSsの値は、エステル化セルロース繊維の修飾度に応じて変わるが、一例として、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.3以上であり、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.5以下、特に好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.5以下、特に好ましくは1.2以下、最も好ましくは1.0以下である。DStの好ましい範囲は、アシル置換基(DS)について前述したとおりである。
本実施形態のエステル化セルロース繊維は高DSセルロースが反応溶液中に溶出しないため、水性媒体中の水含有率が20質量%未満の系と比較し、DSs及びDS不均一比が高くなる。
本実施形態のエステル化セルロース繊維においては、DS不均一比の変動係数(CV)が小さいほど、樹脂複合体の各種物性のバラつきが小さくなるため好ましい。上記変動係数は、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは30%以下、最も好ましくは20%以下である。
DS不均一比の変動係数(CV)は、エステル化セルロース繊維の水分散体(固形分率10質量%以上)を100g採取し、10gずつ凍結粉砕したものを測定サンプルとし、10サンプルのDS及びDSsからDS不均一比を算出した後、得られた10個のサンプル間でのDS不均一比の標準偏差(σ)及び算術平均(μ)より変動係数を算出する。
DS不均一比 = DSs/DS
変動係数(%)= 標準偏差σ / 算術平均μ × 100
DSsの算出方法は以下のとおりである。すなわち、凍結粉砕により粉末化したエステル化セルロース繊維を2.5mmφの皿状試料台に載せ、表面を抑えて平らにし、X線光電子分光法(XPS)による測定を行う。XPSスペクトルは、サンプルの表層のみ(典型的には数nm程度)の構成元素及び化学結合状態を反映する。得られたC1sスペクトルについてピーク分離を行い、セルロースのピラノース環由来の炭素C2-C6帰属されるピーク(289eV、C-C結合)の面積強度(Ixp)に対する修飾基由来の1つの炭素原子に帰属されるピークの面積強度(Ixf)より下記式で求めることができる。
DSs=(Ixf)×5/(Ixp)
たとえば、修飾基がアセチル基の場合、C1sスペクトルを285eV、286eV,288eV,289eVでピーク分離を行った後、Ixpには289evのピークを、Ixfにはアセチル基のO-C=O結合由来のピーク(286eV)を用いれば良い。
用いるXPS測定の条件は例えば以下の通りである。
使用機器 :アルバックファイVersaProbeII
励起源 :mono.AlKα 15kV×3.33mA
分析サイズ :約200μmφ
光電子取出角 :45°
取込領域
Narrow scan:C 1s、O 1s
Pass Energy:23.5eV
エステル化セルロース繊維の数平均繊維径の下限は、好ましくは2nm以上、より好ましくは10nm以上、さらに好ましくは30nm以上、さらに好ましくは100nm以上、特に好ましくは300nm以上である。一方、上限は、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下、さらに好ましくは1μm未満、特に好ましくは800nm以下、最も好ましくは500nm以下である。数平均繊維径が2nm以上であると、セルロースの結晶性が良好に保持され好ましい。数平均繊維径が100μm以下であると、樹脂複合体のフィラーとして用いたときのエステル化セルロース繊維の繊維径が大きすぎず、樹脂複合体の性能向上に良好に寄与するため好ましい。
エステル化セルロース繊維の数平均繊維径については、窒素吸着によるBET法で得られる比表面積から算出される数平均繊維径が1μm未満の場合、その値を数平均繊維径として採用し、1μm以上の場合、共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)による計測値の平均を数平均繊維径として採用する。
エステル化セルロース繊維の数平均繊維径のそれぞれの測定方法としては、セルロース繊維原料の測定方法として前述した方法を用いることができる。
一態様において、数平均繊維径が1μm未満であるエステル化セルロース繊維を得る方法としては、エステル化前、エステル化と同時、及び/又はエステル化後に繊維を微細化処理する方法を例示できる。微細化処理は公知の微細化処理方法により実施することができる。例えば、数平均繊維径が1μm以上の繊維から数平均繊維径1μm未満(例えば2nm以上1μm未満)の微細繊維を得る場合は、水又は有機溶媒中でマスコロイダー等の磨砕機や高圧ホモジナイザー等を用いた処理を行うことで微細化を行うことができる。
微細化処理に用いられる有機溶媒としては、特に限定されないが、例えばメタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1~6、好ましくは炭素数1~3のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の炭素数3~6のケトン;直鎖又は分岐状の炭素数1~6の飽和炭化水素又は不飽和炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;炭素数2~5の低級アルキルエーテル;DMSO、DMF、DMAc、NMP、コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのジエステル等の極性溶媒等が例示される。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができるが、微細化処理の操作性の観点から、炭素数1~6のアルコール、炭素数3~6のケトン、炭素数2~5の低級アルキルエーテル、DMSO、DMF、DMAc、NMP、コハク酸メチルトリグリコールジエステル、トルエン等が好ましい。
微細化処理における水又は有機溶媒の使用量は、微細化前の繊維を分散できる有効量であればよく、特に制限はないが、微細化前の繊維に対して、好ましくは1質量倍以上、より好ましくは10質量倍以上、さらに好ましくは50質量倍以上であり、好ましくは2000質量倍以下、より好ましくは1000質量倍以下である。
また、微細化処理で使用する装置としては、公知の分散機が好適に使用される。例えば、離解機、叩解機、リファイナー、低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、ホモミキサー、グラインダー、マスコロイダー、カッターミル、ボールミル、ジェットミル、単軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等を用いることができる。
典型的な態様において、エステル化セルロース繊維の結晶構造は、セルロースI型及び/又はII型を有する。エステル化セルロース繊維の結晶構造は、セルロース繊維原料の結晶構造の決定方法として前述した方法で決定できる。
本実施形態のエステル化セルロース繊維の結晶化度は、好ましくは50%以上である。結晶化度がこの範囲にあると、エステル化セルロース繊維の力学物性(特に強度及び寸法安定性)が高まるため、エステル化セルロース繊維を樹脂に分散してなる樹脂組成物の強度及び寸法安定性が高くなる傾向にある。本実施形態のエステル化セルロース繊維の結晶化度は、より好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは65%であり、最も好ましくは70%である。エステル化セルロース繊維の結晶化度は高いほど好ましい傾向にあるので、上限は特に限定されないが、生産上の観点から99%が好ましい上限である。
エステル化セルロース繊維の結晶化度の測定方法としては、セルロース繊維原料での測定方法として前述した方法を用いることができる。
エステル化セルロース繊維の重合度(DP)は、100以上12000以下であることが好ましい。重合度はセルロース分子鎖を形成する無水グルコース単位の繰返し数である。エステル化セルロース繊維の重合度が100以上であることで、繊維自体の引張破断強度及び弾性率が向上し、エステル化セルロース繊維を含む樹脂組成物の高い引張破断強度及び熱安定性が発現するため好ましい。エステル化セルロース繊維の重合度に特に上限はないが、12000を超える重合度のセルロースは実質的に入手が困難であり、工業的な利用が難しい傾向がある。取扱性及び工業的実施の観点から、エステル化セルロース繊維の重合度は、150~8000が好ましい。
エステル化セルロース繊維の重合度の測定方法としては、セルロース繊維原料での測定方法として前述した方法を用いることができる。
エステル化セルロース繊維の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100000以上であり、より好ましくは200000以上である。エステル化セルロース繊維の重量平均分子量と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、好ましくは6以下であり、好ましくは5.4以下である。セルロース繊維原料について前述したのと同様の理由で、エステル化セルロース繊維のセルロース分子の重量平均分子量が大きいのみでなく重量平均分子量が大きいと同時に分子量分布の幅が狭い場合、特に高耐熱性のエステル化セルロース繊維、及びエステル化セルロース繊維と樹脂とを含む樹脂複合体が得られる。エステル化セルロース繊維の重量平均分子量(Mw)は、セルロース原料の入手容易性の観点から、例えば600000以下、又は500000以下であってよい。重量平均分子量と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、エステル化セルロース繊維の製造容易性の観点から、例えば1.5以上、又は2以上であってよい。Mw及びMw/Mnを目的範囲に制御する手段の例は、セルロース繊維原料について前述したのと同様である。
エステル化セルロース繊維のMw及びMw/Mnの測定方法としては、セルロース繊維原料での測定方法として前述した方法を用いることができる。
エステル化セルロース繊維はリグニン等を含む酸不溶成分及び/又はヘミセルロース等を含むアルカリ可溶多糖類を含んでいても良い。酸不溶成分及びアルカリ可溶多糖類の含有量はセルロース繊維の耐熱性及び樹脂組成物中の分散性に影響を及ぼすため、目的に応じて調整すれば良い。一般的に酸不溶成分及びアルカリ可溶多糖類の含有量が多いと、エステル化セルロース繊維の耐熱性低下及びそれに伴う変色、エステル化セルロース繊維の力学的特性の低下等を誘起する。したがって、例えば、ポリアミド樹脂のような高温で溶融混練する樹脂を用いて樹脂組成物を製造する場合、エステル化セルロース繊維中の酸不溶成分及びアルカリ可溶多糖類の平均含有率は少ない方が好ましい場合がある。
エステル化セルロース繊維の酸不溶成分平均含有率はできる限り少ない方が好ましい。具体的には、好ましくは10質量%未満、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは7質量%以下、さらにより好ましくは6質量%以下、最も好ましくは5質量%以下である。酸不溶成分平均含有率は、0質量%であってよいが、エステル化セルロース繊維の製造容易性の観点から、例えば0.1質量%以上、又は0.5質量%以上、又は1質量%以上、又は2質量%以上、又は3質量%以上であってもよい。
エステル化セルロース繊維中のアルカリ可溶多糖類平均含有率(一態様においてヘミセルロース平均含有率)は、好ましくは25質量%以下、より好ましくは13質量%以下、さらに好ましくは12質量%以下、特に好ましくは8質量%以下、最も好ましくは5質量%以下である。アルカリ可溶多糖類平均含有率は、0質量%であってよいが、セルロース繊維の製造容易性の観点から、例えば1質量%以上、又は3質量%以上、又は6質量%以上であってもよい。
エステル化セルロース繊維の酸不溶成分及びアルカリ可溶多糖類平均含有率の測定方法としては、セルロース繊維原料での測定方法として前述した方法を用いることができる。
なお、エステル化セルロース繊維の酸不溶成分含有率及びアルカリ可溶多糖類含有率は、通常、エステル化セルロース繊維の製造に使用したセルロース繊維原料の酸不溶成分含有率及びアルカリ可溶多糖類含有率とほぼ同様である(すなわち、エステル化の通常の条件(典型的にはpH2~のpH13)下では酸不溶成分含有率及びアルカリ可溶多糖類の選択的な除去は実質的に生じないと考えてよい。一態様において、セルロース繊維原料の酸不溶成分含有率及びアルカリ可溶多糖類含有率の値をエステル化セルロース繊維中の酸不溶成分含有率及びアルカリ可溶多糖類含有率の値とみなしてよい。
エステル化セルロース繊維の熱分解開始温度(TD)は、車載用途等で望まれる耐熱性及び機械強度を発揮できるという観点から、一態様において270℃以上であり、好ましくは275℃以上、より好ましくは280℃以上、さらに好ましくは285℃以上である。熱分解開始温度は高いほど好ましいが、エステル化セルロース繊維の製造容易性の観点から、例えば、320℃以下、又は300℃以下であってもよい。
本開示で、TDとは、図2の説明図に示すように、熱重量(TG)分析における、横軸が温度、縦軸が重量残存率%のグラフから求めた値である(尚、図2(B)は図2(A)の拡大図である。)。エステル化セルロース繊維の150℃(水分がほぼ除去された状態)での重量(重量減少量0wt%)を起点としてさらに昇温を続け、1wt%重量減少時の温度(T1%)と2wt%重量減少時の温度(T2%)とを通る直線を得る。この直線と、重量減少量0wt%の起点を通る水平線(ベースライン)とが交わる点の温度をTDと定義する。
1%重量減少温度(T1%)は、上記TDの手法で昇温を続けた際の、150℃の重量を起点とした1重量%重量減少時の温度である。
樹脂複合体中のエステル化セルロース繊維の250℃重量減少率(T250℃)は、TG分析において、エステル化セルロース繊維を250℃、窒素フロー下で2時間保持した時の重量減少率である。
本発明の一態様に係る方法によって製造されるエステル化セルロース繊維は、シート、ゲル、粉末、分散体(水分散体又は有機溶剤分散体)、樹脂複合体等の種々の形態で特に制限なく利用でき、特に、樹脂複合体におけるフィラー又は支持体シートとして最適である。
本発明の一態様は、エステル化セルロース繊維と分散媒とを含む分散体の製造方法を提供する。当該方法は、本開示の方法でエステル化セルロース繊維を製造すること、並びに該エステル化セルロース繊維の製造時又は製造後に該エステル化セルロース繊維を分散媒中に分散させること、を含む。分散体の分散媒は、エステル化セルロース繊維の製造時に用いた水性媒体であってよく、又は、エステル化セルロース繊維の製造後に該水性媒体の一部又は全部を溶媒置換し、若しくは該水性媒体に別の媒体(例えば水及び/又は有機溶媒)を追加したものであってよい。
本発明の一態様は、エステル化セルロース繊維を含むシートの製造方法を提供する。当該方法は、本開示の方法でエステル化セルロース繊維を製造すること、並びに該エステル化セルロース繊維をシート化すること、を含む。シート化の方法は特に限定されず、エステル化セルロース繊維を単独又は他の成分と組み合わせてシート化できる。例えば、チタニアウィスカー、カーボンナノチューブ等の無機粒子、ポリウレタン、ポリアミド等の高分子粒子、炭素繊維及びカーボンファイバー等の無機繊維及びアラミド繊維を高圧ホモジナイザーにより微細化した微小繊維状アラミド(ティアラ(登録商標)、ダイセル化学工業)等の高分子繊維からなる群から選択される1種以上のフィラー材を含んでも良い。
本発明の一態様は、エステル化セルロース繊維と樹脂とを含む樹脂複合体の製造方法を提供する。当該方法は、本開示の方法でエステル化セルロース繊維を製造すること、並びに該エステル化セルロース繊維と樹脂とを複合化すること、を含む。樹脂複合体中のエステル化セルロース繊維では、水素結合による凝集が無修飾のセルロース微細繊維に比べて抑制されている。よって、エステル化セルロース繊維と樹脂との混合工程において、エステル化セルロース繊維同士の凝集が抑制され、エステル化セルロース繊維が樹脂中で均一に分散され、力学的特性、耐熱性、表面平滑性、外観等に優れた樹脂複合体を得ることができる。
樹脂複合体中の樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び/又は光硬化性樹脂を用いることができる。樹脂はエラストマーであってもよい。樹脂複合体中のエステル化セルロース繊維/樹脂(マトリクス樹脂)の質量比率は、好ましくは0.1/99.9~40/60、より好ましくは0.5/99.5~30/70、さらに好ましくは1.0/99.0~25/75、特に好ましくは3/97~20/80、最も好ましくは10/90~20/80である。エステル化セルロース繊維と樹脂との合計に対する樹脂の質量比率が60質量%以上であれば、熱安定性(線熱膨張率の低減、及び高温時の弾性保持)を発揮するのに有効であり、99.9質量%以下であれば、樹脂複合体に対して、高弾性率化、熱膨張率の低減等の機能を付与することが可能である。
樹脂が熱可塑性樹脂である場合の当該熱可塑性樹脂の融点は、樹脂複合体の用途等に応じて適宜選択してよい。熱可塑性樹脂の融点としては、例えば比較的低融点の樹脂(例えばポリオレフィン系樹脂)について、150℃~190℃、又は160℃~180℃、また例えば比較的高融点の樹脂(例えばポリアミド系樹脂)について、220℃~350℃、又は230℃~320℃、を例示できる。
熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂、ポリアセテート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、及びアクリル系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であることができる。
熱硬化性樹脂の具体例としては、特に制限されるものではないが、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、トリアジン環含有樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、ノルボルネン系樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、マレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリアゾメチン樹脂、熱硬化性ポリイミド等が挙げられる。
光硬化性樹脂の具体例としては、特に制限されるものではないが、公知一般の(メタ)アクリレート樹脂、ビニル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
[エラストマー(ゴム)]
エラストマー(すなわちゴム)の具体例としては、特に制限されるものではないが、例えば、天然ゴム(NR)、改質天然ゴム(エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素化天然ゴム等)、各種ジエン系(共)共重合体ゴム、エチレン-プロピレン共重合体ゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。
樹脂複合体には、エステル化セルロース繊維及び樹脂に加え、例えば、エステル化セルロース繊維以外の高耐熱性の有機ポリマーからなる微細繊維フィラー成分、相溶化剤、可塑剤、多糖類、天然タンパク質、無機化合物、着色剤、香料、顔料、流動調整剤、レベリング剤、導電剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、紫外線分散剤、消臭剤等の添加剤を配合してもよい。任意の添加剤の樹脂複合体中の含有割合は、本発明の所望の効果が損なわれない範囲で適宜選択されるが、例えば0.01~50質量%、又は0.1~30質量%であってよい。
樹脂が熱可塑性樹脂である場合の樹脂複合体の製造方法としては、エステル化セルロース繊維を、乾燥粉末又は水分散体の形態で、熱可塑性樹脂と溶融混練成形機の内部で混練し、次いで成形することを含む方法が挙げられる。水分散体は、上述したエステル化セルロース繊維の製造の際の乾燥過程の途中で乾燥を中止する方法、又は乾燥過程の後に水を添加する方法、等によって調製できる。成形は、射出成形、押出成形、発泡成形、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形等によって行うことができる。
樹脂が熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂である場合の樹脂複合体の製造方法としては、エステル化セルロース繊維を樹脂と混合し、次いで成形し、次いで熱硬化処理(熱硬化性樹脂を用いる場合)又は活性エネルギー線による光硬化処理(光硬化性樹脂を用いる場合)することを含む方法が挙げられる。例えば、樹脂溶液又は樹脂粉末分散体中にエステル化セルロース繊維を十分に分散させて乾燥する方法、樹脂モノマー液中にエステル化セルロース繊維を十分に分散させて熱、UV照射、重合開始剤等によって重合する方法、エステル化セルロース繊維からなる成形体(例えば、シート、粉末粒子成形体等)に樹脂溶液又は樹脂粉末分散体を十分に含浸させて乾燥する方法、エステル化セルロース繊維からなる成形体に樹脂モノマー液を十分に含浸させて熱、UV照射、重合開始剤等によって重合する方法等を用いることができる。硬化に際し、種々の重合開始剤、硬化剤、硬化促進剤、重合禁止剤等を配合することができる。また、未硬化又は半硬化のプリプレグと呼ばれるシートを作製した後、プリプレグを単層又は積層にして、加圧及び加熱して樹脂を硬化及び成形させる方法を用いてもよい。さらに、炭素繊維等の強化繊維のフィラメント又はプリフォームに樹脂硬化前の樹脂複合体を含浸させた後、当該樹脂を硬化させて成形物を得る方法を用いてもよい。
樹脂がエラストマーである場合の樹脂複合体の製造方法としては、エステル化セルロース繊維をエラストマーと混合し、次いで成形し、次いで必要に応じて熱処理等による加硫を行うことを含む方法が挙げられる。例えば、エステル化セルロース繊維とエラストマーとを乾式で混練する方法、エステル化セルロース繊維とエラストマーとを分散媒中に分散又は溶解させた後、乾燥させて混練する方法等が挙げられる。
樹脂複合体は、フィルム、シート、ペレット、繊維、粉末等の所望形状にて得ることができる。例えばペレット、粉末等として得られた樹脂複合体は、単独又は他の成分と組み合わせて成形材料として使用できる。成形材料を例えば金型成形、射出成形、押出成形、中空成形、発泡成形等の所望の成形方法を用いて成形し、所望形状(例えば、三次元の立体形状、シート状、フィルム状又は繊維状等)の成形体を得ることができる。さらに、成形体を他の部材と組み合わせて各種部品を形成してもよい。例えば、成形体の一部(例えば数箇所)を加熱処理する事により溶融させ、樹脂又は金属の基板に接着すること、樹脂又は金属の基板に成形体を塗膜として形成すること、等によって、成形体と他の部材とを組み合わせることができる。
本実施形態のエステル化セルロース繊維を含む樹脂複合体は、高耐熱かつ軽量であることができることから、鋼板、繊維強化プラスチック(例えば炭素繊維強化プラスチック、ガラス繊維強化プラスチック等)、無機フィラーを含む樹脂コンポジット、等の代替品として有用である。樹脂複合体の好適な用途としては、産業用機械部品、一般機械部品、自動車・鉄道・車両・船舶・航空宇宙関連部品、電子・電気部品、建築・土木材料、生活用品、スポーツ・レジャー用品、風力発電用筐体部材、容器・包装部材、等を例示できる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されるものではない。
[製造例1](微細セルロース繊維の製造)
コットンリンターパルプ3質量部を水27質量部に浸漬させてオートクレーブ内で130℃、4時間の熱処理を行った。得られた膨潤パルプは水洗し、水を含む精製パルプ(30質量部)を得た。つづいて、水を含む精製パルプ30質量部に水を170質量部入れて水中に分散させて(固形分率1.5質量%)、ディスクリファイナー装置として相川鉄工(株)製SDR14型ラボリファイナー(加圧型DISK式)を用い、ディスク間のクリアランスを1mmとして該水分散体を30分間叩解処理した。それに引き続き、クリアランスをほとんどゼロに近いレベルにまで低減させた条件下で徹底的に叩解を行い、叩解水分散体(固形分濃度:1.5質量%)を得た。得られた叩解水分散体を、そのまま高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社(伊)製NSO15H)を用いて操作圧力100MPa下で10回微細化処理し、微細セルロース繊維スラリー(固形分濃度:1.5質量%)を得た。そして、脱水機により固形分率10質量%まで濃縮し、濃縮スラリーAを30質量部得た。
[製造例2](微細セルロース繊維の製造)
製造例1の濃縮スラリー1の製造において、脱水機による濃縮工程の条件を変更し、濃縮スラリーB(固形分率20質量%)を15質量部得た。
[製造例3](微細セルロース繊維の製造)
製造例1の濃縮スラリー1(固形分率10質量%)10質量部をDMSO80質量部に加えて、ホモジナイザーで分散させた後、遠心分離機で9000rpm、15分処理を行い、上澄みを除去し、DMSOスラリー30質量部を得た。つづいて、DMSOを60質量部加えて、同様の分散、遠心分離を行うDMSO置換処理を3回実施し、DMSOスラリー(固形分率3.3質量%、含水率<1質量%)30質量部を得た。
[製造例4](リンターパルプの製造)
コットンリンターパルプを卓上粉砕機で1分間処理し、綿状のリンターパルプを得た。
実施例1~10、比較例1~3の反応組成及び結果を表1に示す。
[実施例1]
(セルロース繊維原料:微細セルロース繊維、水性媒体:水を約21質量%含有、エステル化剤:酢酸ビニル、反応器:フラスコ)
セパラブルフラスコに製造例1で得た濃縮スラリー1(固形分率10質量%)50質量部、DMSO170質量部を加えて、攪拌羽で均一に攪拌しながら70℃まで加温した。つづいて、酢酸ビニル10質量部及び炭酸カリウム1.6質量部を加え、70℃で5時間攪拌した。反応を停止させるため、水500質量部を攪拌しながら加えた。つづいて、濾過により固形分を濾別した。得られた固形分に対して500質量部の水を加えてミキサーで分散させた後、濾過をする洗浄操作を4回実施し、エステル化セルロース繊維1(固形分率10質量%)を得た。
[実施例2]
(セルロース繊維原料:微細セルロース繊維、水性媒体:水を50質量%含有、エステル化剤:酢酸ビニル、反応器:フラスコ)
セパラブルフラスコに添加するDMSOを125質量部とし、同時に水を80質量部さらに添加した(濃縮スラリー中の水は含まない)以外は実施例1と同様の手順でエステル化セルロース繊維2(固形分率10質量%)を得た。
[実施例3]
(セルロース繊維原料:微細セルロース繊維、水性媒体:水を80質量%含有、エステル化剤:酢酸ビニル、反応器:フラスコ)
セパラブルフラスコに添加するDMSOを48質量部、さらに添加する水を142質量部(濃縮スラリー中の水は含まない)にした以外は実施例1と同様の手順でエステル化セルロース繊維3(固形分率10質量%)を得た。
[実施例4]
(セルロース繊維原料:微細セルロース繊維、水性媒体:完全水系、エステル化剤:酢酸ビニル、反応器:フラスコ)
セパラブルフラスコにDMSOを添加せず、添加する濃縮スラリー、酢酸ビニル及び炭酸カリウムをそれぞれ50質量部、20質量部、7.0質量部にした以外は実施例1と同様の手順でエステル化セルロース繊維4(固形分率10質量%)を得た。
[実施例5]
(セルロース繊維原料:微細セルロース繊維、水性媒体:完全水系、エステル化剤:酢酸ビニル、反応器:オートクレーブ)
オートクレーブ用PTFEカップ中に濃縮スラリー1を10質量部、炭酸カリウム1.4質量部、酢酸ビニル4.3質量部を加え攪拌をした後、ステンレス製のオートクレーブ内に収納し、蓋をした。つづいて、オートクレーブを100℃のオーブン中に2時間静置し、加熱処理を行った。加熱処理終了後、オートクレーブに水をかけて急冷した。内容物をエタノール100質量部中で分散させて、濾過を実施する洗浄操作を2回行った後、水100質量部での同様の洗浄操作を4回行い、エステル化セルロース繊維5(固形分率10質量%)を得た。
[実施例6]
(セルロース繊維原料:微細セルロース繊維、水性媒体:完全水系、エステル化剤:無水酢酸、反応器:オートクレーブ)
オートクレーブ用PTFEカップ中に入れるエステル化剤及び触媒を無水酢酸及びトリフルオロメタンスルホン酸スカンジウム(III)に変更し、濃縮スラリー1を10質量部、トリフルオロメタンスルホン酸スカンジウム(III)0.0003質量部、無水酢酸60質量部を添加した以外は実施例5と同様の手順でエステル化セルロース繊維6(固形分率10質量%)を得た。
[実施例7]
(セルロース繊維原料:微細セルロース繊維、水性媒体:完全水系、エステル化剤:無水酢酸、反応器:オートクレーブ)
反応温度を120℃、反応時間を4時間にした以外は実施例6と同様の手順でエステル化セルロース繊維7(固形分率10質量%)を得た。
[実施例8]
(セルロース繊維原料:微細セルロース繊維、水性媒体:完全水系、エステル化剤:酢酸、反応器:オートクレーブ)
無水酢酸の代わりに酢酸60質量部、トリフルオロメタンスルホン酸スカンジウム(III)を0.03質量部用い、反応時間を5時間とした以外は、実施例6と同様の手順でエステル化セルロース繊維8(固形分率10質量%)を得た。
[比較例1]
(セルロース繊維原料:微細セルロース繊維、媒体:DMSO、反応器:フラスコ)
濃縮スラリー1の代わりに製造例3で得たDMSOスラリー(固形分率3.3質量%、含水率<1質量%)150質量部を用い、DMSOの添加量を163質量部から80質量部に変更した以外は実施例1と同様の手順でエステル化セルロース繊維9(固形分率10質量%)を得た。
[比較例2]
(セルロース繊維原料:微細セルロース繊維、水性媒体:水を約8質量%含有、エステル化剤:酢酸ビニル、反応器:フラスコ)
濃縮スラリー1の代わりに製造例2で得た濃縮スラリー2(固形分率20質量%)を25質量部、DMSOを225質量部とし、水を添加しなかった以外は実施例1と同様の手順でエステル化セルロース繊維10(固形分率10質量%)を得た。
[実施例9]
(セルロース繊維原料:パルプ、水性媒体:水を約22質量%含有、エステル化剤:酢酸ビニル、反応器:ビーカー)
濃縮スラリー1の代わりに製造例4のリンターパルプ5質量部及び水45質量部を混合して用いた以外は実施例1と同様の手順でエステル化セルロース繊維11(固形分率50質量%)を得た。
[実施例10]
(セルロース繊維原料:パルプ、水性媒体:完全水系、エステル化剤:酢酸ビニル、反応器:オートクレーブ)
濃縮スラリー1の代わりに製造例4のリンターパルプ1質量部及び水9質量部を混合して用いた以外は実施例5と同様の手順でエステル化セルロース繊維12(固形分率50質量%)を得た。
[比較例3]
(セルロース繊維原料:パルプ、水性媒体:水を約6質量%含有、エステル化剤:酢酸ビニル、反応器:ビーカー)
水10質量部を用いた以外は実施例9と同様の手順でエステル化セルロース繊維13(固形分率50質量%)を得た。
<測定方法>
[多孔質シート作製]
製造例1及び4のセルロース繊維原料、実施例1~10、比較例1~3のエステル化セルロース繊維の物性を表2に示す。これらの物性は製造例1及び4の水含有スラリー、実施例1~10、比較例1~3の洗浄後水含有スラリーを用いて、下記手法で作製された多孔質シートを用いて評価した。
まず、固形分率5質量%以上のセルロース繊維原料又はエステル化セルロース繊維をtert-ブタノール中に分散させ、さらにミキサー等で凝集物が無い状態まで分散処理を行った。微細セルロース繊維については固形分重量0.5gに対し、濃度が0.5質量%となるように調整した(実施例1~8、比較例1又は2)。パルプについては固形分重量1.0gに対し、濃度が1.0質量%となるように調整した(実施例9又は10、比較例3)。得られたtert-ブタノール分散液100gをろ紙上で濾過し、150℃にて乾燥させた後、ろ紙を剥離してシートを得た。このシートの透気抵抗度がシート目付10g/m2あたり100sec/100ml以下のものを多孔質シートとし、測定サンプルとして使用した。
23℃、50%RHの環境で1日静置したサンプルの目付W(g/m2)を測定した後、王研式透気抵抗試験機(旭精工(株)製、型式EG01)を用いて透気抵抗度R(sec/100ml)を測定した。この時、下記式に従い、10g/m2目付あたりの値を算出した。
目付10g/m2あたり透気抵抗度(sec/100ml)=R/W×10
[繊維径―比表面積]
比表面積・細孔分布測定装置(Nova-4200e, カンタクローム・インスツルメンツ社製)にて、多孔質シート試料約0.2gを真空下、120℃で2時間乾燥し、液体窒素の沸点における窒素ガスの吸着量を相対蒸気圧(P/P0)が0.05以上0.2以下の範囲にて5点測定した後(多点法)、同装置プログラムによりBET比表面積(m2/g)を算出した。得られた比表面積から、エステル化セルロース繊維の繊維径を下式に従って求めた。
D(nm)=2667/比表面積(m2/g)
なお、Dが1μmの時の比表面積は2.667m2/gである。
[繊維径―CLSM]
比表面積より求めた数平均繊維径が1μm以上の試料については、本手法を用いて繊維径を算出した。セルロース繊維原料の水分散液を0.1質量%まで純水で希釈し、10μlの水分散液をSi基板上にキャストし、風乾した。得られたサンプルを共焦点レーザー顕微鏡で観察し、少なくとも10本以上のセルロース繊維原料が1視野に観測されるように倍率を調整した。無作為に選んだ10本のセルロース繊維原料の繊維径を計測し、得られた10個の繊維径の平均値をセルロース繊維原料の数平均繊維径とした。
[結晶化度]
多孔質シートのX線回折測定を行い、下記式より結晶化度を算出した。
結晶化度(%)=[I(200)-I(amorphous)]/I(200)×100
I(200):セルロースI型結晶における200面(2θ=22.5°)による回折ピーク強度
I(amorphous):セルロースI型結晶におけるアモルファスによるハローピーク強度であって、200面の回折角度より4.5°低角度側(2θ=18.0°)のピーク強度
(X線回折測定条件)
装置 MiniFlex(株式会社リガク製)
操作軸 2θ/θ
線源 CuKα
測定方法 連続式
電圧 40kV
電流 15mA
開始角度 2θ=5°
終了角度 2θ=30°
サンプリング幅 0.020°
スキャン速度 2.0°/min
サンプル:試料ホルダー上に多孔質シートを貼り付け
[重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)]
多孔質シートを0.88g秤量し、ハサミで小片に切り刻んだ後、軽く攪拌したうえで、純水20mLを加え1日放置した。次に遠心分離によって水と固形分を分離した。続いてアセトン20mLを加え、軽く攪拌したうえで1日放置した。次に遠心分離によってアセトンと固形分を分離した。続いてN、N-ジメチルアセトアミド20mLを加え、軽く攪拌したうえで1日放置した。再度、遠心分離によってN、N-ジメチルアセトアミドと固形分を分離したのち、N,N-ジメチルアセトアミド20mLを加え、軽く攪拌したうえで1日放置した。遠心分離によってN,N-ジメチルアセトアミドと固形分を分離し、固形分に塩化リチウムが8質量パーセントになるように調液したN,N-ジメチルアセトアミド溶液を19.2g加え、スターラーで攪拌し、目視で溶解するのを確認した。セルロースを溶解させた溶液を0.45μmフィルターでろ過し、ろ液をゲルパーミエーションクロマトグラフィ用の試料として供した。用いた装置と測定条件は下記である。
装置 :東ソー社 HLC-8120
カラム:TSKgel SuperAWM-H(6.0mmI.D.×15cm)×2本
検出器:RI検出器
溶離液:N、N-ジメチルアセトアミド(塩化リチウム0.2%)
流速:0.6mL/分
検量線:プルラン換算
[アルカリ可溶多糖類平均含有率]
アルカリ可溶多糖類含有率は微細セルロース繊維の原料について非特許文献(木質科学実験マニュアル、日本木材学会編、92~97頁、2000年)に記載の手法より、ホロセルロース含有率(Wise法)からαセルロース含有率を差し引くことで求めた。1つのサンプルにつき3回アルカリ可溶多糖類含有率を算出し、算出したアルカリ可溶多糖類含有率の数平均を微細セルロース繊維のアルカリ可溶多糖類平均含有率とした。
[DS]
多孔質シートの5か所をATR-IR法による赤外分光スペクトルを、フーリエ変換赤外分光光度計(JASCO社製 FT/IR-6200)で測定した。赤外分光スペクトル測定は以下の条件で行った。
積算回数:64回、
波数分解能:4cm-1
測定波数範囲:4000~600cm-1
ATR結晶:ダイヤモンド、
入射角度:45°
得られたIRスペクトルよりIRインデックスを、下記式(1):
IRインデックス= H1730/H1030・・・(1)
に従って算出した。式中、H1730及びH1030は1730cm-1、1030cm-1(セルロース骨格鎖C-O伸縮振動の吸収バンド)における吸光度である。ただし、それぞれ1900cm-1と1500cm-1を結ぶ線と800cm-1と1500cm-1を結ぶ線をベースラインとして、このベースラインを吸光度0とした時の吸光度を意味する。
そして、各測定場所の平均置換度をIRインデックスより下記式(2)に従って算出し、その平均値をDSとした。
DS=4.13×IRインデックス・・・(2)
[DSs]
FT-IR測定した多孔質シートを凍結粉砕し、エステル化セルロース繊維の粉末サンプルを作製した。粉末を10枚の2.5mmφの皿状試料台に載せ、表面を抑えて平らにし、それぞれXPS測定を行った。得られたC1sスペクトルについてピーク分離を行い、セルロースのピラノース環由来の炭素C2-C6に帰属されるピーク(289eV、C-C結合)の面積強度(Ixp)に対するアセチル基のO-C=O結合由来のピーク(286eV)の面積強度(Ixf)より各サンプルのDSsを下記式で求め、その平均値をエステル化セルロース繊維のDSsとした。
DSs=(Ixf)×5/(Ixp)
用いたXPS測定の条件は以下の通りである。
使用機器 :アルバックファイVersaProbeII
励起源 :mono.AlKα 15kV×3.33mA
分析サイズ :約200μmφ
光電子取出角 :45°
取込領域
Narrow scan:C 1s、O 1s
Pass Energy:23.5eV
(5)DS不均一比
下記式に従い、算出した
DS不均一比 = DSs/DS
[エステル化セルロース繊維収率]
エステル化セルロース繊維収率は下記式により求めた。
エステル化セルロース繊維収率(%)=(エステル化セルロース繊維重量/(42.1×エステル化セルロース繊維DS+162.1))/(セルロース繊維原料重量/162.1)×100
なお、エステル化セルロース繊維重量並びにセルロース繊維原料重量について、エステル化セルロース繊維及びセルロース繊維原料水分散体(スラリー)である場合、分散体の固形分率は赤外式水分計を用いて算出し、水分散体総重量に固形分率を乗じて、求めた。
[反応液中への高DSセルロース溶出量]
反応終了時(水を添加する直前)の反応液を1ml程度シリンジで分取した後、シリンジフィルター(PTFE,孔径0.2μm)でろ過し、ろ液を反応液として得た。つづいて、200℃のホットプレートで熱したフッ化カルシウム板(円形 直径10mm)の上に、該ろ液10μLを滴下し、乾固させた。なお、該乾固物は赤外分光スペクトルの観測スポットの内部に収まった。つづいて、フーリエ変換赤外分光光度計を用いて該フッ化カルシウム板の赤外分光スペクトルを透過法により測定した。
赤外分光スペクトル測定は以下の条件で行った。
積算回数:64回、
波数分解能:4cm-1
測定波数範囲:4000~850cm-1
得られたスペクトルより1030cm-1(セルロース骨格鎖C-O伸縮振動の吸収バンド)における吸光度(H1030)を読み取った。ただし、850cm-1と1500cm-1を結ぶ線をベースラインとして、このベースラインを吸光度0とした時の吸光度を意味する。該吸光度H1030より下記式を用いて、反応液中に溶出した高DSセルロース重量を算出した。
高DSセルロース重量(g)=H1030/27.4×反応液重量(g)
つづいて、溶出率は下記式より算出した。なお、高DSセルロースの置換度を2.5と仮定して高DSセルロースのmol数、及び仕込みセルロース繊維のmol数を算出した上で、溶出率を求めた。
溶出率(%)=(高DSセルロース重量(g)/263.5)/(仕込みセルロース繊維重量(g)/162.1)×100
Figure 0007417391000003
Figure 0007417391000004
本発明に係る方法によって高収率で製造され得るエステル化セルロース繊維は、各種補強材として好適に適用され得る。

Claims (19)

  1. エステル化セルロース繊維の製造方法であって、セルロース繊維原料を、エステル化剤及び水性媒体の存在下でエステル化することを含み、
    前記エステル化が、アセチル化であり、
    前記水性媒体が、水、又は水と極性を有する非プロトン性溶媒である水混和性媒体との組合せであり、
    前記水性媒体が、水を20質量%以上含む、方法。
  2. エステル化セルロース繊維の製造方法であって、水性媒体に、セルロース繊維原料及びエステル化剤を加えて前記セルロース繊維原料をエステル化することを含み、
    前記エステル化が、アセチル化であり、
    前記水性媒体が、水、又は水と極性を有する非プロトン性溶媒である水混和性媒体との組合せであり、
    前記水性媒体が、水を20質量%以上含む、方法。
  3. 前記水性媒体が、水を50質量%以上含む、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記水性媒体が、水である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記エステル化剤が、酢酸ビニル、無水酢酸及び酢酸からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記エステル化を、前記エステル化剤を含む油相と、前記水性媒体を含む水相とを有する水/油系中で行う、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記エステル化を、前記エステル化剤と前記水性媒体とを含むエマルション中で行う、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記エステル化セルロース繊維の置換度(DS)が、1.0以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記置換度(DS)が、0.1以上1.0以下である、請求項8記載の方法。
  10. 前記エステル化剤が酢酸ビニルであり、前記置換度(DS)が0.1以上0.3以下である、請求項8又は9に記載の方法。
  11. 前記エステル化剤が無水酢酸であり、前記置換度(DS)が0.1以上0.6以下である、請求項8又は9に記載の方法。
  12. 前記セルロース繊維原料の数平均繊維径が、2nm以上1μm未満である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 前記エステル化セルロース繊維が、重量平均分子量(Mw)100000以上、及び重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)6以下を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 前記エステル化セルロース繊維が、アルカリ可溶多糖類含有率12質量%以下、及び結晶化度60%以上を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
  15. 前記セルロース繊維原料が、重量平均分子量(Mw)100000以上、及び重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)6以下を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
  16. 前記セルロース繊維原料が、アルカリ可溶多糖類含有率12質量%以下、及び結晶化度60%以上を有する、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
  17. エステル化セルロース繊維と分散媒とを含む分散体の製造方法であって、
    請求項1~16のいずれか一項に記載の方法でエステル化セルロース繊維を製造すること、並びに
    前記エステル化セルロース繊維の製造時又は製造後に前記エステル化セルロース繊維を分散媒中に分散させること、
    を含む、方法。
  18. エステル化セルロース繊維を含むシートの製造方法であって、
    請求項1~16のいずれか一項に記載の方法でエステル化セルロース繊維を製造すること、並びに
    前記エステル化セルロース繊維をシート化すること、
    を含む、方法。
  19. エステル化セルロース繊維と樹脂とを含む樹脂複合体の製造方法であって、
    請求項1~16のいずれか一項に記載の方法でエステル化セルロース繊維を製造すること、並びに
    前記エステル化セルロース繊維と樹脂とを複合化すること、
    を含む、方法。
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