JP2023112485A - セルロース微細繊維分散液の濃縮物の製造方法、及び樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

セルロース微細繊維分散液の濃縮物の製造方法、及び樹脂組成物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】希薄なセルロース微細繊維分散液を用いる場合にも固形分率のばらつきが少ない濃縮物を低い環境負荷で製造できる、セルロース微細繊維分散液の濃縮物の製造方法を提供する。【解決手段】セルロース微細繊維分散液の濃縮物を製造する方法であって、前記方法が、前記セルロース微細繊維分散液を脱液して前記濃縮物を得る濃縮工程を含み、前記セルロース微細繊維分散液中のセルロース微細繊維の平均繊維径が50~1000nmであり、前記濃縮工程において、前記セルロース微細繊維分散液を1.0kg-DS/h以上、45.0kg-DS/h未満の処理速度で連続的に脱液し、前記濃縮工程において、前記濃縮物の固形分率を10回サンプリングして測定したときに、前記固形分率の平均値が5質量%以上60質量%以下であり、且つ前記固形分率のCV値(標準偏差/平均値)0.001以上0.300以下である、方法。【選択図】図3

Description

本発明は、セルロース微細繊維分散液の濃縮物の製造方法、及び樹脂組成物の製造方法に関する。
熱可塑性樹脂は、軽く、加工特性に優れるため、自動車部材、電気・電子部材、事務機器ハウジング、精密部品等の多方面に広く使用されているが、樹脂単体では、機械特性、寸法安定性等が不十分である場合が多いことから、樹脂と各種フィラーとをコンポジットしたものが一般的に用いられている。近年、このようなフィラーとして、セルロース繊維等の有機繊維を使用することが検討されている。セルロースは、環境への負荷が少ない素材であること、低比重であること、及び樹脂組成物に対して優れた物性向上効果を有し得ることから、環境調和型の樹脂組成物のフィラーとして有望である。特に、セルロース微細繊維は、その微細構造に起因して少量でも樹脂組成物に対する優れた補強効果を示し得ることから、近年、樹脂組成物用のフィラーとしての利用が検討されている。セルロース微細繊維を製造する方法としては、固形分率の低い希薄な分散液をリファイナー、高圧ホモジナイザー等で処理する方法が一般に用いられる。希薄な分散液は、そのままの状態ではフィラーとして樹脂に混合することが難しいため濃縮する必要がある。しかし、セルロース微細繊維はセルロース分子間の水素結合等によって極めて凝集しやすく、過剰に濃縮すると再分散性が低下し、結果として樹脂中への均一分散が容易ではなくなってしまう。そこで、セルロース微細繊維に優れた補強効果を発現させつつ、当該セルロース微細繊維を樹脂中に良好に分散させた状態を実現するために、セルロース微細繊維の濃縮技術が種々提案されている。
例えば、特許文献1は、セルロース微細繊維の分散液に樹脂エマルジョンを添加して、セルロース微細繊維と樹脂の混合物として成形体を得て、前記成形体を粉砕して主材樹脂と溶融混練する方法を記載する。
特許文献2は、化学変性したパルプの水分散液を2~10MPaの処理条件で圧搾して脱水する方法を記載する。
国際公開第2013/137449号 特開2017-95813号公報
セルロース微細繊維と樹脂とを混練する際には、セルロース微細繊維分散液の分散媒を除去する必要があるが、当該分散液は一般的に希薄であるため、セルロース微細繊維を大量に使用する工業プロセスでは、除去する分散媒の量も膨大であり、バッチ式のプロセスでは効率が非常に悪い。また、得られる濃縮物の固形分率がバッチごとに異なっていたり、同一バッチ内でも局所的に一部のセルロース微細繊維が高固形分率に濃縮されて不均一な状態になるという問題があった。このような固形分率のバラつきに起因して、フィラー強化樹脂用のフィラーとして使用した際の不良が発生し易く、従来の方法は大量生産に適した方法ではなかった。また、例えば製紙業界で広く用いられている抄紙プロセスは加熱乾燥工程を含むため、当該プロセスで得られる乾燥体は樹脂と混練されたときの再分散性に乏しく、フィラー強化樹脂用のフィラーとしての性能を発揮しにくいものであった。
特許文献1には、セルロース微細繊維の分散液に樹脂エマルジョンを添加して、セルロース微細繊維と樹脂の混合物として抄紙を行い、濃縮されたセルロース微細繊維組成物を中間体として得る製造方法が記載されている。しかし、樹脂エマルジョンの性状や抄紙機の目の粗さによっては、添加した樹脂エマルジョンが100%利用されず、廃水に含まれて排出され、産業廃棄物として処分する際のエネルギー消費が大きくなることが考えられる。したがって、上記技術は、コストと環境負荷の観点から工業プロセスとして好適であるとは言えない。
一方、特許文献2には、加圧によって化学変性パルプの分散液を脱水する方法が記載されているが、加圧方式は連続式プロセスとするのが難しい。セルロース微細繊維組成物はパルプに比べてフィルターの目詰まりを起こし易く、加圧方式では工程初期に形成されたケーク層が緻密に圧縮される。これにより、上記技術では、固形分率の異なる生成物がバッチ内で混在するという問題が生じ易い。
本発明は上記課題を解決し、希薄なセルロース微細繊維分散液を用いる場合にも固形分率のばらつきが少ない濃縮物を低い環境負荷で製造できる、セルロース微細繊維分散液の濃縮物の製造方法、及び当該濃縮物を用いる樹脂組成物の製造方法の提供を目的とする。
本開示は以下の態様を包含する。
[1] セルロース微細繊維分散液の濃縮物を製造する方法であって、
前記方法が、前記セルロース微細繊維分散液を脱液して前記濃縮物を得る濃縮工程を含み、
前記セルロース微細繊維分散液中のセルロース微細繊維の平均繊維径が50~1000nmであり、
前記濃縮工程において、前記セルロース微細繊維分散液を1.0kg-DS/h以上、45.0kg-DS/h未満の処理速度で連続的に脱液し、
前記濃縮工程において、前記濃縮物の固形分率を10回サンプリングして測定したときに、前記固形分率の平均値が5質量%以上60質量%以下であり、且つ前記固形分率のCV値(標準偏差/平均値)0.001以上0.300以下である、
方法。
[2] 周速0.01m/sec以上6.00m/secで撹拌されたセルロース微細繊維分散液を前記濃縮工程に供給する、上記態様1に記載の方法。
[3] 前記濃縮工程を、80℃以下で行う、上記態様1又は2に記載の方法。
[4] 前記セルロース微細繊維分散液中のセルロース微細繊維が、繊維長0.1mm未満の繊維を本数基準で70%以上含む、上記態様1~3のいずれかに記載の方法。
[5] 前記濃縮工程に供される前記セルロース微細繊維分散液において、不揮発成分の総含有率100質量%に対してセルロース微細繊維の含有率が75質量%以上である、上記態様1~4のいずれかに記載の方法。
[6] 前記セルロース微細繊維分散液中のセルロース微細繊維が疎水性置換基で化学修飾されている、上記態様1~5のいずれかに記載の方法。
[7] 前記セルロース微細繊維分散液中のセルロース微細繊維がアセチル基で化学修飾されている、上記態様1~6のいずれかに記載の方法。
[8] 前記濃縮工程に供されるセルロース微細繊維がコットンリンターを原料とする、上記態様1~7のいずれかに記載の方法。
[9] 上記態様1~8のいずれかに記載の方法でセルロース微細繊維分散液の濃縮物を生成する工程と、
前記濃縮物を乾燥させてセルロース微細繊維乾燥体を生成する工程と、
を含む、セルロース微細繊維乾燥体の製造方法。
[10] 上記態様1~8のいずれかに記載の方法でセルロース微細繊維分散液の濃縮物を生成し、又は上記態様9に記載の方法でセルロース微細繊維乾燥体を生成する工程と、
前記セルロース微細繊維分散液の濃縮物又は前記セルロース微細繊維乾燥体を熱可塑性樹脂と混合して樹脂組成物を生成する工程と、
を含む、樹脂組成物の製造方法。
本発明の一態様によれば、希薄なセルロース微細繊維分散液を用いる場合にも固形分率のばらつきが少ない濃縮物を低い環境負荷で製造できる、セルロース微細繊維分散液の濃縮物の製造方法、及び当該濃縮物を用いる樹脂組成物の製造方法が提供され得る。
ディスクリファイナーの刃及び溝の配置例について説明する図である。 ディスクリファイナーの刃幅、溝幅及び刃間距離について説明する図である。 連続式濃縮装置の構成例について説明する図である。
以下、本発明の例示の実施の形態(以下、「本実施形態」と略記する。)について説明するが、本発明はこれら実施形態に何ら限定されない。なお本開示の特性値は、特記がない限り、本開示の[実施例]の項に記載される方法又はこれと同等であることが当業者に理解される方法で測定される値である。
≪セルロース微細繊維分散液の濃縮物の製造方法≫
本発明の一態様は、セルロース微細繊維分散液の濃縮物(本開示で、単に濃縮物ともいう。)の製造方法を提供する。一態様において、当該方法は、セルロース微細繊維分散液を脱液して濃縮物を得る濃縮工程を含む。一態様においては、濃縮工程において、セルロース微細繊維分散液を1.0kg-DS/h以上、45.0kg-DS/h未満の処理速度で濃縮装置において連続的に脱液する。一態様に係る濃縮工程において、濃縮物の固形分率の平均値は5質量%以上60質量%以下である。一態様において、当該固形分率のCV値(標準偏差/平均値)は0.001以上0.300以下である。一態様において、セルロース微細繊維分散液中のセルロース微細繊維の平均繊維径は50~1000nmである。一態様において、当該方法は、分散液中でセルロース原料(例えばパルプ)を叩解、及び/又は解繊してセルロース微細繊維分散液を生成する解繊工程を含んでよい。
セルロース微細繊維は、主に植物が天然に産出するセルロースからなる材料であるため、これを利用することで環境負荷が低くサステナブルな工業製品を提供することが期待されている。その一例が、樹脂と混合して物性を強化するフィラーとしての利用であるが、樹脂との混合のためには、希薄な分散液として製造されるセルロース微細繊維分散液から水を取り除く必要がある。また、セルロース微細繊維は希薄な分散液中では安定な分散状態を保持するが、分散媒を除去すると、微細繊維同士が接近して水素結合によって強固に結びつき、再分散が困難になるため、物性上の不具合や品質の不均一性が生じる場合があった。
本発明者らは、所定の平均繊維径を有するセルロース微細繊維の分散液を、特定の態様で、連続脱液装置で所定の固形分率まで濃縮する際に、ハンドリングしやすく、固形分率のバラつきが抑制され、フィラー強化樹脂用のフィラーとして用いたときに良好な物性と均一な品質を達成可能であることを見出した。セルロース微細繊維分散液の濃縮物の固形分率が適切な範囲よりも低い場合、セルロース微細繊維は脱液装置に付着し易いため、濃縮物の収率低下、及び装置に付着したまま固化して再分散しなくなった固形異物の濃縮物への混入が起こりうる。一方、濃縮物の固形分率が適切な範囲よりも高い場合は、濃縮が過剰でありセルロース微細繊維の再分散性が低下する。特に、濃縮が乾燥に近い状態まで進んだ場合、濃縮物の固形分率のバラつきは小さくなるが、再分散性は著しく低下する。例えば、バッチ式及びバッチ操作を繰り返す方式の脱液装置では、バッチ内に局所的な固形分率のムラが生じる結果、生成物をフィラーとして用いたときのフィラー強化樹脂の物性低下、バッチ間の固形分率のバラつきを抑えるために生成物から規格外品を排除することによる収率低下等の不具合が起こり易い。一方、本実施形態の方法によれば、再分散性が維持される固形分率でセルロース微細繊維分散液を濃縮し、固形分率のバラつきが少ない濃縮物を大量生産することが可能である。
本実施形態のセルロース微細繊維分散液の濃縮物の製造方法は、濃縮工程を含み、典型的には解繊工程及び濃縮工程を含む。以下、各工程について説明する。
<解繊工程>
本工程では、セルロース原料(例えば、セルロースを含むパルプ)を希薄な分散液中で叩解及び/又は解繊してセルロース微細繊維を得る。セルロース原料としては、木材種(広葉樹又は針葉樹)から得られる木材パルプ、非木材種(竹、麻系繊維、バガス、ケナフ、リンター等)から得られる非木材パルプ、及びこれらの精製パルプ(精製リンター等)等が使用できる。非木材パルプとしては、コットンリンターパルプを含むコットン由来パルプ、麻由来パルプ、バガス由来パルプ、ケナフ由来パルプ、竹由来パルプ、ワラ由来パルプ等を使用できる。コットン由来パルプ、麻由来パルプ、バガス由来パルプ、ケナフ由来パルプ、竹由来パルプ、及びワラ由来パルプは各々、コットンリント、コットンリンター、麻系のアバカ(例えば、エクアドル産又はフィリピン産のもの)、サイザル、バガス、ケナフ、竹、ワラ等の原料から、蒸解処理による脱リグニン等の精製工程、漂白工程等を経て得られる精製パルプであってよい。セルロース原料は、結晶化度が高く、フィラー強化樹脂用のフィラーとして用いたとき機械特性に優れるセルロース微細繊維を生成できる点で、好ましくはコットンリンター由来(例えばコットンリンター由来パルプ)である。
セルロース微細繊維は、化学修飾されていてよい。化学修飾は、セルロース原料(例えばパルプ)に対して及び/又はセルロース微細繊維に対して行われてよいが、好ましい一態様において、パルプに対して行われる。化学修飾は、親水性の置換基を導入するものでも、疎水性の置換基を導入するものでもよく、用途に応じて適宜選択され得る。親水性の置換基を導入する方法としては、TEMPO酸化、カルボキシメチル化、リン酸エステル化、硫酸エステル化などが挙げられる。疎水性の置換基を導入する方法としては、エステル化(アシル化)、エーテル化、シリル化などが挙げられる。
セルロース微細繊維をフィラー強化樹脂用のフィラーとして用いる場合は、セルロースに疎水性の置換基を導入する化学修飾が好ましく、天然セルロースが有するI型の結晶構造を壊さず、反応性も良好なエステル化がより好ましく、反応し易さやコストの観点からアセチル化が特に好ましい。したがって、疎水性置換基は、好ましくは、アシル基、エーテル基及びシリル基から成る群から選ばれる1つ以上であり、より好ましくはアシル基であり、特に好ましくはアセチル基である。化学修飾、特に疎水性の置換基の導入により、セルロース微細繊維と分散媒(特に水)との親和性が低くなると、セルロース微細繊維が分散媒と分離し易くなるが、本実施形態の方法で得られる、固形分率のバラつきが少ない濃縮物によれば、化学修飾による樹脂組成物の物性及び品質安定性の向上効果が良好に発揮され得る。
エステル化反応は、エステル化剤の存在下、溶媒中で行ってよい。エステル化で用いる溶媒(本開示で、エステル化溶媒ともいう。)としては、非プロトン性溶媒、例えば、アルキルスルホキシド類、アルキルアミド類、ピロリドン類等を、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
アルキルスルホキシド類としては、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メチルエチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのジC1-4アルキルスルホキシドなどが挙げられる。
アルキルアミド類としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジエチルホルムアミドなどのN,N-ジC1-4アルキルホルムアミド;N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミドなどのN,N-ジC1-4アルキルアセトアミドなどが挙げられる。
ピロリドン類としては、例えば、2-ピロリドン、3-ピロリドンなどのピロリドン;N-メチル-2-ピロリドン(NMP)などのN-C1-4アルキルピロリドンなどが挙げられる。
エステル化溶媒としては、良好なエステル化効率を得る観点から、ジメチルスルホキシド(DMSO)が特に好ましい。
エステル化剤としては、酸ハロゲン化物、酸無水物、及びカルボン酸ビニルエステルが好ましく、エステル化効率の観点からカルボン酸ビニルエステルが特に好ましい。
酸ハロゲン化物は、下記式で表される化合物からなる群より選択された少なくとも1種であってよい。
1-C(=O)-X
(式中、R1は炭素数1~24のアルキル基、炭素数2~24のアルケニル基、炭素数3~24のシクロアルキル基、又は炭素数6~24のアリール基を表し、XはCl、Br又はIである。)
酸ハロゲン化物の具体例としては、塩化アセチル、臭化アセチル、ヨウ化アセチル、塩化プロピオニル、臭化プロピオニル、ヨウ化プロピオニル、塩化ブチリル、臭化ブチリル、ヨウ化ブチリル、塩化ベンゾイル、臭化ベンゾイル、ヨウ化ベンゾイル等が挙げられるが、これらに限定されない。中でも、酸塩化物は反応性と取り扱い性の点から好適に採用できる。尚、酸ハロゲン化物の反応においては、触媒として働くと同時に副生物である酸性物質を中和する目的で、アルカリ性化合物を1種又は2種以上添加してもよい。アルカリ性化合物としては、具体的には:トリエチルアミン、トリメチルアミン等の3級アミン化合物;及びピリジン、ジメチルアミノピリジン等の含窒素芳香族化合物;が挙げられるが、これに限定されない。
酸無水物としては、任意の適切な酸無水物類を用いることができる。例えば、
酢酸、プロピオン酸、(イソ)酪酸、吉草酸等の飽和脂肪族モノカルボン酸の無水物;(メタ)アクリル酸、オレイン酸等の不飽和脂肪族モノカルボン酸の無水物;
シクロヘキサンカルボン酸、テトラヒドロ安息香酸等の脂環族モノカルボン酸の無水物;
安息香酸、4-メチル安息香酸等の芳香族モノカルボン酸の無水物;
二塩基カルボン酸無水物として、例えば、無水コハク酸、アジピン酸等の無水飽和脂肪族ジカルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の無水不飽和脂肪族ジカルボン酸無水物、無水1-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸等の無水脂環族ジカルボン酸、及び、無水フタル酸、無水ナフタル酸等の無水芳香族ジカルボン酸無水物等;
3塩基以上の多塩基カルボン酸無水物類として、例えば、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の(無水)ポリカルボン酸等が挙げられる。
尚、酸無水物の反応においては、触媒として、硫酸、塩酸、燐酸等の酸性化合物、又はルイス酸、(例えば、MYnで表されるルイス酸化合物であって、MはB、As,Ge等の半金属元素、又はAl、Bi、In等の卑金属元素、又はTi、Zn、Cu等の遷移金属元素、又はランタノイド元素を表し、nはMの原子価に相当する整数であり、2又は3を表し、Yはハロゲン原子、OAc、OCOCF3、ClO4、SbF6、PF6又はOSO2CF3(OTf)を表す。)、又はトリエチルアミン、ピリジン等のアルカリ性化合物を1種又は2種以上添加してもよい。
カルボン酸ビニルエステルとしては、下記式:
R-COO-CH=CH2
{式中、Rは、炭素数1~24のアルキル基、炭素数2~24のアルケニル基、炭素数3~16のシクロアルキル基、又は炭素数6~24のアリール基のいずれかである。}で表されるカルボン酸ビニルエステルが好ましい。カルボン酸ビニルエステルは、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニルアジピン酸ジビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、安息香酸ビニル、及び桂皮酸ビニルからなる群より選択された少なくとも1種であることがより好ましい。カルボン酸ビニルエステルによるエステル化反応のとき、触媒として、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、1~3級アミン、4級アンモニウム塩、イミダゾール及びその誘導体、ピリジン及びその誘導体、並びにアルコキシドからなる群より選ばれる1種又は2種以上を添加してもよい。
アルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等が挙げられる。アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム等が挙げられる。
1~3級アミンとは、1級アミン、2級アミン、及び3級アミンのことであり、具体例としては、エチレンジアミン、ジエチルアミン、プロリン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン、トリス(3-ジメチルアミノプロピル)アミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、ジアザビシクロウンデセン等が挙げられる。
イミダゾール及びその誘導体としては、1-メチルイミダゾール、3-アミノプロピルイミダゾール、カルボニルジイミダゾール等が挙げられる。
ピリジン及びその誘導体としては、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン、ピコリン等が挙げられる。
アルコキシドとしては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム-t-ブトキシド等が挙げられる。
カルボン酸としては、下記式で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
R-COOH
(式中、Rは、炭素数1~16のアルキル基、炭素数2~16のアルケニル基、炭素数3~16のシクロアルキル基、又は炭素数6~16のアリール基を表す。)
カルボン酸の具体例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、シクロヘキサンカルボン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、メタクリル酸、クロトン酸、ピバリン酸、オクチル酸、安息香酸、及び桂皮酸からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
これらカルボン酸の中でも、酢酸、プロピオン酸、及び酪酸からなる群から選択される少なくとも一種、特に酢酸が、反応効率の観点から好ましい。
尚、カルボン酸の反応においては、触媒として、硫酸、塩酸、燐酸等の酸性化合物、又はルイス酸、(例えば、MYnで表されるルイス酸化合物であって、MはB、As,Ge等の半金属元素、又はAl、Bi、In等の卑金属元素、又はTi、Zn、Cu等の遷移金属元素、又はランタノイド元素を表し、nはMの原子価に相当する整数であり、2又は3を表し、Yはハロゲン原子、OAc、OCOCF3、ClO4、SbF6、PF6又はOSO2CF3(OTf)を表す。)、又はトリエチルアミン、ピリジン等のアルカリ性化合物を1種又は2種以上添加してもよい。
これらエステル化剤の中でも、特に、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、及び酢酸からなる群から選択された少なくとも一種、中でも無水酢酸及び酢酸ビニルが、反応効率の観点から好ましい。
化学修飾されたセルロース原料(例えばパルプ)又は化学修飾されたセルロース微細繊維の置換度(DS)、例えばエステル化物のエステル化度は、樹脂への分散性、耐熱性等に優れる化学修飾(例えばエステル化)セルロース微細繊維を得る観点から、一態様において、0.5超、又は0.6以上、又は0.7以上であり、解繊してセルロース本来の良好な機械特性を有する化学修飾(例えばエステル化)セルロース微細繊維を得る観点から、一態様において、2.0以下、又は1.9以下、又は1.8以下である。
例えば、エステル化物の置換度(DS)であるエステル化度は、エステル化セルロース原料(例えばパルプ)又はエステル化セルロース微細繊維(以下、これらを纏めてエステル化セルロースともいう。)の反射型赤外吸収スペクトルから、アシル基由来のピークとセルロース骨格由来のピークとのピーク強度比に基づいて算出することができる。アシル基に基づくC=Oの吸収バンドのピークは1730cm-1に出現し、セルロース骨格鎖に基づくC-Oの吸収バンドのピークは1030cm-1に出現する。エステル化セルロースのDSは、後述する固体NMR測定から得られるDSと、セルロース骨格鎖C-Oの吸収バンドのピーク強度に対するアシル基に基づくC=Oの吸収バンドのピーク強度の比率で定義される修飾化率(IRインデックス1030)との相関グラフを作成し、相関グラフから算出された検量線
置換度DS = 4.13 × IRインデックス(1030)
を使用することで求めることができる。
なお、上記反射型赤外吸収スペクトルで適切な測定が困難である場合には、固体NMRを用いる。固体NMRによるDSの算出方法は、凍結粉砕したエステル化セルロースについて13C固体NMR測定を行い、50ppmから110ppmの範囲に現れるセルロースのピラノース環由来の炭素C1-C6に帰属されるシグナルの合計面積強度(Inp)に対する修飾基由来の1つの炭素原子に帰属されるシグナルの面積強度(Inf)より下記式で求めることができる。
DS=(Inf)×6/(Inp)
たとえば、修飾基がアセチル基の場合、-CH3に帰属される23ppmのシグナルを用いればよい。
用いる13C固体NMR測定の条件は例えば以下の通りである。
装置 :Bruker Biospin Avance500WB
周波数 :125.77MHz
測定方法 :DD/MAS法
待ち時間 :75sec
NMR試料管 :4mmφ
積算回数 :640回(約14Hr)
MAS :14,500Hz
化学シフト基準:グリシン(外部基準:176.03ppm)
セルロース原料又はセルロース微細繊維の結晶形としては、I型、II型、III型、IV型などが知られている。I型及びII型は汎用されており、III型及びIV型は工業スケールでは汎用されていない。セルロース原料又はセルロース微細繊維の結晶形は、構造上の可動性が高い点、線膨張係数が低く、引張強度、曲げ強度及び曲げ伸度が高い点で、好ましくはI型又はII型、より好ましくはI型である。
セルロース原料又はセルロース微細繊維の結晶化度は、一態様において、50%以上、又は60%以上、又は70%以上、又は73%以上、又は75%以上であり、一態様において、95%以下、又は90%以下、又は85%以下であってよい。
なお上記結晶化度は、一態様においてセルロースI型の結晶化度である。
本開示で、結晶化度は、セルロースがセルロースI型結晶(天然セルロース由来)である場合には、サンプルを広角X線回折により測定した際の回折パターン(2θ/deg.が10~30)からSegal法により、以下の式で求められる。
結晶化度(%)=[I(200)-I(amorphous)]/I(200)×100
I(200):セルロースI型結晶における200面(2θ=22.5°)による回折ピーク強度
I(amorphous):セルロースI型結晶におけるアモルファスによるハローピーク強度であって、200面の回折角度より4.5°低角度側(2θ=18.0°)のピーク強度
また結晶化度は、セルロースがセルロースII型結晶(再生セルロース由来)である場合には、広角X線回折において、セルロースII型結晶の(110)面ピークに帰属される2θ=12.6°における絶対ピーク強度h0 とこの面間隔におけるベースラインからのピーク強度h1 とから、下記式によって求められる。
結晶化度(%) =h1 /h0 ×100
本工程では、セルロース原料(例えばパルプ)を叩解及び/又は解繊してセルロース微細繊維を製造する。一態様においては、溶媒(本開示で、解繊溶媒ともいう。)中で叩解及び/又は解繊を行う。例えば、セルロース原料(例えばパルプ)を解繊溶媒中、典型的にはスラリー形態で、叩解装置としてシングルディスクリファイナー、ダブルディスクリファイナー、コニカルリファイナー、ナイアガラビーター、PFIミルなどを使用し、解繊装置として高圧ホモジナイザー、マイクロフリュイダイザー、ボールミル、ビーズミル、ディスクミル、湿式微粒化装置などを使用して処理を行い、セルロース微細繊維を得ることができる。これらの処理は単独でも複数を併用してもよい。
解繊溶媒としては、水、DMSO(ジメチルスルホキシド)、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMAc(ジメチルアセトアミド)、NMP(N-メチルピロリドン)、酢酸等を例示できる。これらの溶媒を2種以上混合して用いてもよい。
また、叩解及び/又は解繊処理の前に、パルパーやホモミキサー等を用いて原料を解繊溶媒に均質分散させてから微細化処理することが好ましい。特に、先にセルロース原料の化学修飾を行ってから微細化処理する際は、セルロース原料の親水性が低下していることから周速度が好ましくは10m/s以上、より好ましくは20m/s以上、より好ましくは25m/s以上、好ましくは90m/s以下、より好ましくは80m/s以下、より好ましくは50m/s以下のホモミキサー等のミキサーによる分散処理を行うことが好ましい。前処理としてダマ等を低減させることにより均質な微細化処理によって均質なセルロース微細繊維を得ることができる。尚、この際に溶媒として水を使用する場合、蒸留水やイオン交換水などの純度の高い水を用いると有効であることがある。
複数の叩解及び/又は解繊処理を併用してセルロース微細繊維を製造する場合は、微細化のメカニズム、又は剪断速度の異なる2種類以上の処理を組み合わせることが有効である。前述のような多段微細化の方法としては、ディスク構成の異なるディスクリファイナーを用いて多段微細化する、若しくはディスクリファイナーでの微細化後に高圧ホモジナイザーで微細化を行うことが好ましい。ここでディスクリファイナーにはシングルディスクリファイナー、ダブルディスクリファイナー、コニカルリファイナーのいずれを用いても構わないが、微細化を高度に制御するためには固定刃と回転刃間のクリアランス精度が高いシングルディスクリファイナーが好ましい。
(ディスクリファイナーによる微細化)
ディスクリファイナーを用いて微細化処理する場合、例えばパルプ又は綿状の精製セルロース繊維を解繊溶媒中に0.5質量%以上6質量%以下、好ましくは0.8質量%以上3.5質量%以下、より好ましくは1質量%以上3質量%以下の固形分濃度となるようにタンク内に分散、貯留し、ディスクリファイナーを用いて微細化させる。この際に溶媒として水を使用する場合、蒸留水やイオン交換水などの純度の高い水を用いると有効であることがある。
ディスクリファイナーの運転においては、タンクに溜めたスラリーからディスクリファイナーを介し元のタンクに戻す循環式の連続処理工程で解繊処理を行ってもよいが、ディスクリファイナーを介し配管で繋がった2つのタンクを準備し(タンクA,タンクBとする)、まずスラリーを投入したタンクAからディスクリファイナーを介しタンクBへ送液、貯留し、タンクA中のスラリーの処理を終えた段階で、連続的にタンクBからディスクリファイナーを介しタンクAへ送液、蓄積するという過程へ切り替え、以降、これらの工程を交互に繰り返す連続処理工程で解繊処理を行うと、スラリーが毎回のディスクリファイナー処理において確実に通過(パス)されるため、スラリーの全量に対し均一なパス回数を施すことができ、解繊程度の均一性、すなわちセルロース微細繊維の品質安定性の観点から、より好ましい。
図1は、ディスクリファイナーの刃及び溝の配置例について説明する図であり、図2は、ディスクリファイナーの刃幅、溝幅及び刃間距離について説明する図である。複数のディスクリファイナーを用いて多段で微細化する場合、少なくとも2種類の異なる刃を有するリファイナーを用いることが好ましい。図1及び2を参照し、具体的な刃の構成としては、図1に示すような刃11及び溝12を有するディスクリファイナーにおいて、図2に示す刃幅WB、溝幅WG、及び刃幅WBを溝幅WGで除した値(以降、刃溝比と呼ぶ)を適切に調整することが重要である。刃幅が1.5mm以上、5mm以下、且つ、刃溝比が0.1以上、1.0以下である刃を取り付けたリファイナーで微細化処理(以降、前段と呼ぶ)を施した後、刃幅が0.1mm以上、1.0mm以下、且つ刃溝比が0.5以上、1.0以下である刃を有するリファイナーで微細化処理(以降、後段と呼ぶ)を施すことが特に好ましい。このような構成のディスクリファイナーによって解繊することで、樹脂中の凝集の原因となる長大繊維が減少するとともに、フィブリル化率の低いセルロース繊維を得ることができる。この時、前段と後段の間に別の微細化工程を加えてもよい。
また、1種類の刃を用いて1段でディスクリファイナー処理する場合は、刃幅が0.1mm以上、1.0mm以下、且つ、刃溝比が0.5以上、1.0以下である刃を有するリファイナーで微細処理を施すことが特に好ましい。その際、使用する原料の繊維長は、繊維形状自動分析計(具体的にはTechpap社製Morfi Neo)の長さ加重平均繊維長として、好ましくは500μm以上、より好ましくは700μm以上、さらに好ましくは900μm以上であり、好ましくは3000μm以下、より好ましくは2000μm以下、より好ましくは1500μm以下、さらに好ましくは1300μm以下である。この範囲にある原料を使用することで、1段で効率的に樹脂中での凝集の原因となる長大繊維が減少するとともに、フィブリル率の低いセルロース微細繊維を得ることができる。
(ディスクリファイナー処理における刃間距離)
また、図2を参照し、ディスクリファイナーでの微細化においては、二つの刃(具体的には図2中の回転刃21及び固定刃22)の刃間距離WL(クリアランス)(以下、単に刃間距離と呼ぶ)を制御することが重要である。刃間距離を制御することで、セルロース繊維の繊維長や叩解の程度を制御することが可能であり、多段で処理する場合は、前段の処理においては、刃間距離を0.05mm以上、0.5mm以下、後段の処理においては刃間距離を0.05mm以上、0.3mm以下とすることが好ましい。また、1段で処理する場合は、刃間距離を0.05mm以上、0.3mm以下とすることが好ましい。尚、刃間距離を調整する際には、広目の刃間距離から装置の電流値を一定以下に抑えながら徐々に刃間を詰めていくことが好ましく、このように制御することで、装置の詰まりやオーバーロードを防止し、また、均質性の高いセルロース繊維が得られる。
このようにディスクリファイナーによるセルロースの微細化処理においてその固定刃と回転刃の刃間距離を高度に制御することが、均質でフィラーとしての力学物性の良いセルロース微細繊維を製造する上で有利である。例えば、従来用いられているシングルディスクリファイナーの刃間距離調整は、スクリュー式ネジジャッキ等を用いていることから、回転刃を固定するランナー部の遊びがある。そのため、ランナー部をスラスト方向に強く引っ張ると0.3mm程度動いてしまう。そのため、精度と再現性良くセルロース微細繊維を得るためには、移動量(遊び)が少ないことが好ましい。一態様においては、移動量(遊び)は0.10mm以下が好ましく、0.08mm以下がより好ましく、0.05mm以下にすることが更に好ましい。また、刃間を詰める精度は5μm以下で詰めていけることが好ましく、より好ましくは3μm以下、最も好ましくは1μm以下である。一態様においては、刃間距離調整機構をボールねじ式ジャッキにすることで、上記のトラスト方向の移動量が0.03mmのシングルディスクリファイナーを使用することができる。更には、ボールねじ式ジャッキに減速機を付け、刃間距離1μm単位で刃間距離調整することもできる。この他、ボールねじ式ジャッキとサーボモーターを組み合わせるなど前記ランナー部の移動量や刃間を詰める精度が得られるならばあらゆる機構を用いても構わない。
このようにシングルディスクリファイナーを用いることで、高精度な刃間距離調整が可能となる。また、微細化処理中の刃のブレなく一定の刃間を維持して処理することが可能となり、刃間を詰めた際に固定刃と回転刃が接触する不具合も防止されるため、セルロース微細繊維の繊維長が短くなりすぎるのを防止したり、解繊不足の粗い繊維が低減される結果、形状分布の均一性の高いセルロース微細繊維が再現良く製造でき、樹脂に複合化した際に優れた力学特性を示すフィラーとなる。
(ディスクリファイナー処理でのパス回数)
微細化の工程は、セルロース繊維が回転刃と固定刃の間を通過する回数(以下、パス回数と呼ぶ)によっても制御可能である。パス回数を増加させることにより、繊維径、繊維長分布が均質なセルロース繊維を得ることができる。ここでバス回数とは、前記の刃間距離を目的の刃間距離に詰めてからのリファイナー処理を施した(回転刃と固定刃の間を通過した)回数を意味する。
ディスクリファイナーのパス回数は、好ましくは5回以上、より好ましくは20回以上、さらに好ましくは40回以上である。回数を増やしていくと徐々に繊維形状の分布が一定に収束していくため多い方が好ましいが、生産性も考慮すると、パス数の上限は300回以下であってよい。
(ディスクリファイナーによる微細化条件の決定方法)
ディスクリファイナー処理によって得られるセルロース微細繊維の形状は、前述したディスクリファイナーの刃の種類、刃間距離、パス回数、濃度などの影響が複合的に作用して制御される。繊維強化樹脂に用いる際に好ましいセルロース繊維の形状を得るためには、粘状叩解条件においてパス数を多くすることが好ましい。粘状叩解とは、繊維を毛羽立たせて微細化していく傾向が強い叩解方法であり、繊維を切断する傾向が強い叩解方法は遊離叩解と呼ばれる。ディスクリファイナーの刃の構成として、刃の数が多く、刃長が長く、刃幅と溝幅の比(刃溝比)が大きく、接触角度が大きいほど、回転刃と固定刃のブレードの交錯数が増えるため、1つの交点で繊維に加わる力が分散し、繊維への衝撃回数は増加することで粘状叩解になる傾向を示し、これが逆の時に遊離叩解となる傾向を示す。ディスクリファイナーの刃間距離は遊離叩解傾向を示す刃を用いる場合は広げることが好ましく、粘状叩解傾向を示す刃を用いる場合は刃間距離を詰めることが好ましいが、刃間距離を詰めすぎると目詰まりや繊維長の切断による短繊維化、及び微細化されすぎてフィラーとしての性能が低下することから、刃間距離は0.05mm以上であることが好ましい。セルロース原料(例えばパルプ)の形状(繊維長や繊維径)、処理濃度、及び使用する刃により、前述の刃間距離及び/又はパス回数を調整することで平均繊維径、繊維長分布等の繊維形状を好ましい範囲に制御することが可能である。
(ディスクリファイナーと高圧ホモジナイザーの組合せによる多段微細化処理)
ディスクリファイナーで微細化されたセルロース繊維に対し、更に高圧ホモジナイザーによる微細化処理を施すことも好ましい態様の一つである。高圧ホモジナイザーはディスクリファイナーと比べ、繊維を細くする効果が大きい。高圧ホモジナイザー処理は、好ましくは30MPa以上、より好ましくは50MPa以上、より好ましくは80MPa以上の圧力で行う。上限は装置の特性上300MPa以下、又は250MPa以下、又は150MPa以下であってよい。
高圧ホモジナイザーとしては、ニロ・ソアビ社(伊)のNS型高圧ホモジナイザー、(株)エスエムテーのラニエタイプ(Rモデル)圧力式ホモジナイザー、三和機械(株)の高圧式ホモゲナイザー等、超高圧ホモジナイザーとしては、みづほ工業(株)のマイクロフルイダイザー、吉田機械興業(株)のナノマイザー、(株)スギノマシーンのアルティマイザー等の高圧衝突型の微細化処理機を挙げることができるが、これらの装置とほぼ同様の機構で微細化を実施する装置であれば、これら以外の装置であってもよい。
高圧ホモジナイザー処理においてもディスクリファイナー処理の場合と同様に、タンクに溜めたスラリーから高圧ホモジナイザーを介し元のタンクに戻す循環式の連続処理工程で解繊処理を行ってもよいが、高圧ホモジナイザーを介し配管で繋がった2つのタンクを準備し(タンクA,タンクBとする)、まずスラリーを投入したタンクAから高圧ホモジナイザーを介しタンクBへ送液、貯留し、タンクA中のスラリーの処理を終えた段階で、連続的にタンクBから高圧ホモジナイザーを介しタンクAへ送液、蓄積するという過程へ切り替え、以降、これらの工程を交互に繰り返す連続処理工程で解繊処理を行うと、スラリーが毎回の高圧ホモジナイザー処理において確実に通過(パス)されるため、スラリーの全量に対し均一なパス回数を施すことができ、解繊程度の均一性、すなわちセルロース微細繊維の品質安定性の観点から、より好ましい。
<濃縮工程>
本工程では、例えば上記の解繊工程によって解繊されたセルロース微細繊維の分散液を脱液して濃縮物を得る。セルロース微細繊維分散液としては、解繊工程で得られたセルロース微細繊維スラリーをそのまま、又は希釈して使用することができる。希釈用溶媒としては、解繊溶媒として前述で例示したのと同様の溶媒を例示でき、より好ましくは、水、又は、水と、解繊溶媒として例示した有機溶媒のうち1種以上との混合溶媒である。
濃縮工程に供給されるセルロース微細繊維分散液の固形分率は、一態様において、0.1質量%以上、又は0.3質量%以上、又は0.5質量%以上、又は0.7質量%以上、又は1.0質量%以上、又は1.5質量%以上であり、一態様において、5.0質量%以下、又は4.0質量%以下、又は3.0質量%以下、又は2.5質量%以下である。
濃縮工程に供給されるセルロース微細繊維分散液において、不揮発成分の総含有率100質量%に対するセルロース微細繊維の含有率は、一態様において、75質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上、又は100質量%であってよい。不揮発成分がセルロース微細繊維以外の成分も含む場合、セルロース微細繊維の上記含有率は、一態様において、99質量%以下、又は95質量%以下、又は90質量%以下であってよい。不揮発成分としてセルロース微細繊維以外に存在し得る成分としては、例えば、分散剤;セルロース以外のフィラー成分;相溶化剤;可塑剤;でんぷん類、アルギン酸等の多糖類;ゼラチン、ニカワ、カゼイン等の天然たんぱく質;ゼオライト、セラミックス、タルク、シリカ、金属酸化物、金属粉末等の無機化合物;着色剤;香料;顔料;流動調整剤;レベリング剤;導電剤;酸化防止剤;帯電防止剤;紫外線吸収剤;紫外線分散剤;及び消臭剤からなる群から選択される1種以上が挙げられる。上記の各成分の好適例は、樹脂組成物における<追加の成分>の項で後述するのと同様であり得る。不揮発成分の総含有率100質量%に対するセルロース微細繊維の含有率は、セルロース微細繊維分散液、又はセルロース微細繊維分散液の濃縮物を110℃のオーブン、及び/又は真空乾燥機で乾燥して溶媒を除去して、追加の成分が溶媒に可溶性であれば溶媒抽出する方法、溶媒に不溶性であれば核磁気共鳴(NMR)又は赤外(IR)分光スペクトルを標品と比較して算出する方法、無機物であれば灰分を測定する方法、又はこれら複数の方法を併用することで求められる値である。但し、セルロース微細繊維と溶媒とからなる分散液と、追加の成分との混合物を濃縮工程に供する場合には、不揮発成分の総含有率100質量%に対するセルロース微細繊維の含有率を仕込み量から算出できる。
セルロース微細繊維分散液を濃縮するための濃縮装置(より具体的には脱液装置)は、セルロース微細繊維分散液の濃縮物の固形分率のばらつき低減の観点から連続式であることが有利である。濃縮装置は、セルロース微細繊維分散液を受入れて脱液する濃縮機構を備える。濃縮機構としては、セルロース微細繊維分散液をその上に保持する濾過基材と、当該濾過基材上のセルロース微細繊維分散液を濾過基材側から減圧して脱液するサクション部との組合せを例示できる。濃縮機構の他の例としては、濾過基材上のセルロース微細繊維分散液から重力によって脱液する方法、2つの濾過基材の間でセルロース微細繊維を圧搾して脱液する方法、筒状のスクリーンと筒の内部にあるスクリューによる圧搾とせん断で脱液する方法等を例示できる。上記の濾過基材とサクション部との組合せである濃縮機構は、濾過基材の端部から液漏れしにくい点、及び流動性の高い希薄な分散液であっても濃縮できる点で好適である。以下、この濃縮機構を備える連続式濃縮装置を用いる場合を例に、本実施形態の方法の手順を説明する。
図3は、連続式濃縮装置の構成例について説明する図である。一態様において、連続式濃縮装置300は、セルロース微細繊維分散液Dを貯蔵するタンク301と、サクション部303と、タンク301からサクション部303にセルロース微細繊維分散液を供給するポンプ302と、セルロース微細繊維分散液を固液分離する濾過基材304と、濾過基材304を連続的に送り出す/又は連続的に循環させる送り機構305と、セルロース微細繊維分散液の濃縮物Cを濾過基材304から転写により受入れる転写体306と、転写体306から濃縮物Cを分離するスクレーパー307と、濃縮物Cを回収する回収容器308とを備える。
濃縮物の均一性の観点から、濃縮工程には、周速0.01m/sec以上6.00m/secで撹拌されたセルロース微細繊維分散液を供給することが好ましい。例えば、タンク301は、分散液を撹拌して濃度を均一に保つ撹拌装置309を備えていることが好ましい。撹拌装置309は、例えば、撹拌機309aに撹拌羽根309bが取付けられた構成を有してよい。分散液を撹拌する場合の撹拌速度としては、周速0.01m/sec以上、又は0.05m/sec以上、又は0.10m/sec以上、又は0.25m/sec以上、又は0.50m/sec以上、又は0.70m/sec以上、又は1.00m/sec以上、又は1.50m/sec以上が好ましく、6.00m/sec以下、又は5.00m/sec以下、又は4.00m/sec以下、又は3.00m/sec以下が好ましい。周速が上記下限値以上である場合、タンク内部でセルロース微細繊維のフロック化又は沈降による濃度の分布が生じ難く、濃縮が均一になる。周速が上記上限値以下である場合、撹拌によって泡を生じたり、分散液が液跳ねしてタンクの液面以上の位置に付着し、乾燥して再分散性を失った固形物が剥落して混入し、濃縮が不均一になるという不都合が生じ難い。
タンク301からサクション部303に分散液を供給するポンプ302としては、ピストンポンプ、ダイアフラムポンプ、プランジャーポンプ、モーノポンプ、ホースポンプ、ロータリーポンプ等が挙げられる。無脈動で定量送液性に優れたモーノポンプが好ましく使用できる。
連続式濃縮装置300に供給される分散液、より具体的にはサクション部303に供給される分散液に含まれるセルロース微細繊維の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、又は0.3質量%以上、又は0.5質量%以上、又は0.7質量%以上、又は1.0質量%以上、又は1.5質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、又は4質量%以下、又は3質量%以下、又は2.5質量%以下である。セルロース微細繊維濃度が上記下限値以上である場合、サクション部で生じたセルロース微細繊維分散液の濃縮物の膜が薄くなり過ぎないため、当該膜のピンホールが発生し難く均一な状態になり易いほか、濾過基材からの回収が容易である。セルロース微細繊維濃度が上記上限値以下である場合、分散液のチキソ性又は粘性が大きくなり過ぎないため、サクション部に供給される分散液の液厚が一定になり、当該分散液の濃縮物の固形分率にバラつきが生じ難い。
セルロース微細繊維分散液を固液分離する濾過基材304は、溶媒を透過させるがセルロース微細繊維を保持することができる任意の基材であってよく、ワイヤー(網)、又は、織布若しくは不織布等の多孔質材、等が使用できる。ワイヤーの素材は金属でもプラスチックでもよい。多孔質材の素材としては未変性セルロース、変性セルロース、再生セルロース、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ガラス繊維などが挙げられ、複数の素材の組合せ、例えば混抄シートでもよい。これらの濾過基材は単独で用いてもよいし、2種以上の基材を積層して用いてもよい。濾過基材の例としては、SEFAR社(スイス)製のTETEXMONODLW07-8435-SK010(PET(ポリエチレンテレフタレート)製)、日本フィルコン社製LTT-9FE(ポリエステル製)、敷島カンバス社製NT20(PET/ナイロン混紡)、TT30(PET製)、中村製紙所社の超強和紙等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。濾過基材304は、ワイヤー等の支持体310上に保持されてもよく、2種以上の濾過基材を積層して用いる場合、濾過基材304とは異なる濾過基材を支持体310として用いてもよい。支持体310は駆動機構311を備え、循環して使用されてもよい。
濾過基材304を連続的に送り出す/又は連続的に循環させる送り機構305は、濾過基材304の送り出しと巻き取りとをロールトゥロールで行う機構(図3に示すような)、両端を繋ぎ合わせた濾過基材をロール駆動で循環させる機構、等であってよい。濾過基材を循環させる機構を用いる場合は、循環経路の途中で濾過基材を洗浄して目詰まりを防止する洗浄機構(図示せず)を併せて備えることが好ましい。上記の送り機構を備えた連続式(すなわち非バッチ式)の濃縮装置を用いてセルロース微細繊維分散液を連続的に濃縮することで、濃縮開始直後及び濃縮終了直前の分散液濃度の変動及び濃縮物の固形分率のバラつきを低減できるため、セルロース微細繊維分散液の濃縮物の均一性を高くすることができる。
サクション部303は、減圧によって濾過基材304上のセルロース微細繊維分散液を脱液(脱溶媒)して濃縮する。サクション部は一つでも複数でも構わない。複数のサクション部を併用して脱溶媒を制御することは、固形分率のバラつきが少ない濃縮物を生成するようにセルロース微細繊維分散液の濃縮を精度よく行うことができる点で好ましい。サクション部の減圧は、減圧機構312によって行ってよい。また、連続式濃縮装置は、濃縮効率を高めるために、セルロース微細繊維分散液をプレスしながら減圧する機構を有してもよく、例えば、減圧機構312としての減圧ポンプと、プレス機構(図示せず)としてのロールとを組合せてよい。
セルロース微細繊維分散液を濃縮する処理速度は、生産性と濃縮物の固形分率のバラつき低減との観点から、一態様において、1.0kg-DS/h以上、又は1.5kg-DS/h以上、又は2.0kg-DS/h以上、又は3.0kg-DS/h以上、又は5.0kg-DS/h以上、又は10.0kg-DS/h以上であり、一態様において、45.0kg-DS/h未満、又は40.0kg-DS/h以下、又は35.0kg-DS/h以下、又は30.0kg-DS/h以下である。ここで、kg-DSとはセルロース微細繊維の絶乾重量を表す。上記処理速度は、単位時間当たりに生成する濃縮物の重量から求めてよい。具体的には、回収容器308部位から採取した濃縮物の固形分率を赤外線(IR)水分計で測定して算出することで求める。但し、分散媒が有機溶媒を含むときは、安全性の観点から真空乾燥機で乾燥した固形分重量から固形分率を算出する。上記の範囲内の処理速度で濃縮を行うことで、セルロース微細繊維の繊維サイズ分布(例えば濾過基材上に生成した濃縮物の厚み方向でのセルロース微細繊維の繊維サイズ分布)が均一になる。処理速度が上記下限値以上である場合、繊維径及び/又は繊維長が大きいセルロース微細繊維の沈降による分布のバラつきが生じ難いため、脱液(より具体的にはサクション部における脱液)が均一になり好ましい。処理速度が上記上限値以下である場合、脱液が良好に行われるため、濃縮物の回収率が高く、また濃縮物の固形分率のバラつきが小さく好ましい。
上記処理速度は、例えば、濾過基材の幅(すなわち走行方向に直交する方向の寸法)、温度、サクション部が付与する減圧度、分散液の供給速度、濾過基材の走行速度等を調整することで、所定範囲に制御可能である。このとき、分散液の均一性を濃縮工程中に亘って維持するためにタンク内の撹拌を継続することは、処理速度を所望の範囲に確実に制御する点で有用である。
濾過基材304上に堆積した濃縮物Cを、例えば転写ロール又は転写フィルムであってよい転写体306に転写して濾過基材から剥離し、当該転写体から収集して回収してよい。回収方法としては、濾過基材の走行方向にスクレーパー307を設置して濃縮物を掻き取る方法等が使用できる。又は、濃縮物Cを濾過基材から直接掻き取って回収してもよい。
濃縮工程で得られる、セルロース微細繊維分散液の濃縮物の固形分率については、連続して行われる濃縮工程の任意のタイミングにおいて10点サンプリングし、各サンプルの固形分率をIR水分計で(但し、分散媒が有機溶媒を含む場合には真空乾燥機を用いて)測定して固形分率の数平均値と標準偏差を求め、更にCV値を算出する。一態様において、サンプリングは、一態様において15分間隔で行う。但し、連続運転時間が150分よりも短い場合は、連続運転時間の1/10のタイミングで行う。例えば、連続運転時間が100分である場合、サンプリングは10分間隔で行う。
ここで、CV値(変動係数)は以下の式で求められる値である。
CV値=標準偏差/平均値
セルロース微細繊維分散液の濃縮物の固形分率の平均値は、一態様において5質量%以上、又は10質量%以上、又は15質量%以上、又は20質量%以上、又は25質量%以上、又は30質量%以上であり、一態様において60質量%以下、又は50質量%以下、又は45質量%以下、又は40質量%以下である。セルロース微細繊維分散液の濃縮物の平均固形分率が上記下限値以上である場合、固形分率の制御が容易であり、バラつきが小さいほか、濾過基材に残渣が付着し難く回収率が高い。一方、セルロース微細繊維分散液の濃縮物の平均固形分率が上記上限値以下である場合、濃縮物と濾過基材との接着性が大きくなり過ぎず回収が容易である。またこの場合、セルロース微細繊維同士の凝集が少なく再分散性が良好であるため、樹脂組成物のフィラーとして用いる際の補強効果が良好に発揮される。
セルロース微細繊維分散液の濃縮物の固形分率のCV値は、一態様において0.001以上、又は0.005以上、又は0.010以上、又は0.020以上、又は0.050以上、又は0.070以上、又は0.090以上であり、好ましくは0.300以下、又は0.250以下、又は0.200以下、又は0.150以下、又は0.100以下である。CV値が上記の範囲内にあることで、セルロース微細繊維分散液の濃縮物は未だ分散媒を多く含んだ状態でありながらも定量性に優れている。したがって、樹脂強化用のフィラーを製造する際の原料として当該濃縮物を用いるとき、及び当該フィラーを用いてフィラー強化樹脂を製造するときに、セルロース微細繊維の充填量を正確にコントロールできるため、フィラー強化樹脂を大量生産する際の品質が安定し、不良品を減らすことができる。セルロース微細繊維を乾燥状態、すなわち水等の分散媒が非常に少ない状態にすれば固形分率のバラつきが減るため、CV値を小さくすることは可能であるが、後工程でのセルロース微細繊維の再分散性の点では濃縮物形態での取扱いが有利である。
濃縮工程は、80℃以下で行われることが好ましく、70℃以下で行われることがより好ましく、60℃以下で行われることがさらに好ましく、50℃以下で行われることが特に好ましい。濃縮工程の温度が上記上限値以下に維持される場合、セルロース微細繊維分散液の濃縮物の表面からの乾燥を抑制でき、固形分率のバラつきを低減できる。またこの場合、濃縮物が過度に乾燥されることによるセルロース微細繊維の凝集を防止できるため、再分散性を良好に維持できる。濃縮工程の温度の下限は5℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、20℃以上がさらに好ましい。濃縮工程の温度が上記下限値以上に維持される場合、系全体の温度を下げるために冷媒温度が設定温度を下回ることを抑制できるため、局所的に冷却され過ぎた水などの分散媒の凍結が生じ難い。分散媒が凍結すると解凍時にセルロース微細繊維の凝集が起こり再分散性が低下するため、分散媒の凍結を回避することが好ましい。なお濃縮工程の温度は、熱風、赤外線、マイクロ波等の加熱機構により温度調整した場合は、加熱中の温度を測定する。加熱機構による温度調整を行わない場合は、タンク中のセルロース微細繊維分散液、及び脱液直後のセルロース微細繊維分散液の濃縮物の温度として評価される。
≪セルロース微細繊維乾燥体の製造方法≫
本発明の一態様は、本開示の方法でセルロース微細繊維分散液の濃縮物を生成する工程と、当該濃縮物を乾燥させてセルロース微細繊維乾燥体を生成する工程とを含む、セルロース微細繊維乾燥体の製造方法も提供する。このような乾燥体は、セルロース微細繊維と樹脂とを含む樹脂組成物の製造において、樹脂と簡便に混合でき好ましい。
濃縮物の乾燥には、例えば、ニーダー、プラネタリーミキサー、ヘンシェルミキサー、ハイスピードミキサー、プロペラミキサー、リボンミキサー、単軸又は二軸のスクリュー押出機、バンバリーミキサー、凍結乾燥機、棚乾燥機、スプレー噴霧乾燥機、流動層乾燥機等の乾燥装置を使用できる。例えば、濃縮物に追加の成分(例えば、本開示で例示する分散剤等)を添加した後に乾燥することによって、当該追加の成分を含む乾燥体を製造する場合には、乾燥体中に追加の成分を均一に分散させる観点から、押出機、ミキサー、スプレー噴霧乾燥機、流動層乾燥機等の動的な乾燥機が好ましく、生産性の観点から、高粘度のものであっても容易に撹拌、混練可能な押出機及びミキサー等が好ましい。乾燥時に造粒も併せて行うことで、所望サイズの粒子形状を形成してもよい。
乾燥温度は、乾燥効率、及び樹脂への分散性に優れる乾燥体を得る観点から、例えば20℃以上、又は30℃以上、又は40℃以上、又は50℃以上であってよく、セルロース微細繊維及び追加の成分の熱劣化を生じ難くする観点から、例えば160℃以下、又は150℃以下、又は140℃以下、又は130℃以下、又は100℃以下であってよい。乾燥温度は、濃縮物に接触する熱源の温度であり、例えば、乾燥装置の温調ジャケットの表面温度、加熱シリンダーの表面温度、熱風の温度等で定義される。
乾燥時の圧力は、大気圧、又は減圧であってよいが、乾燥効率、及び樹脂への分散性に優れる乾燥体を得る観点から、-1kPa以下、又は-10kPa以下、又は-20kPa以下、又は-30kPa以下、又は-40kPa以下、又は-50kPa以下であってよく、濃縮物の急速乾燥による乾燥体の過度な微粉化を回避する観点から、-100kPa以上、又は-95kPa以上、又は-90kPa以上であってよい。圧力は、適切な排気能力を有する減圧ポンプをフル稼働させる方法、真空レギュレーター、リークバルブなどを用いて大気及び/又は不活性ガスを意図的に導入する方法等によって調整してよい。
一態様においては、乾燥工程における濃縮物の温度40℃~100℃での滞留時間が、例えば、30分間~600分間、又は45分間~300分間、又は60分間~200分間であってよい。
一態様において、セルロース微細繊維乾燥体は粒子状であってよい。この場合の平均粒径は、好ましくは、1μm以上、又は10μm以上、又は50μm以上、又は100μm以上、又は200μm以上、又は500μm以上であり、好ましくは5000μm以下、又は4000μm以下、又は3000μm以下、又は2000μm以下である。上記平均粒径はレーザー回折・散乱法で測定される値である。
<BET比表面積>
一態様において、セルロース微細繊維乾燥体のBET比表面積は、セルロース微細繊維の樹脂組成物中での分散性の観点から、好ましくは、1m2/g以上、又は3m2/g以上、又は5m2/g以上、又は8m2/g以上、又は10m2/g以上、又は12m2/g以上であり、乾燥体の製造容易性の観点から、好ましくは50m2/g以下、又は40m2/g以下、又は30m2/g以下、又は25m2/g以下、又は20m2/g以下である。比表面積は、比表面積・細孔分布測定装置(例えばNova-4200e,カンタクローム・インスツルメンツ社製)にて、乾燥体約0.2gを真空下で120℃、5時間乾燥させた後、液体窒素の沸点における窒素ガスの吸着量を相対蒸気圧(P/P0)0.05以上0.2以下の範囲にて5点測定した後(多点法)、同装置プログラムによりBET比表面積(m2/g)を算出することで得られる値である。
≪セルロース原料及びセルロース微細繊維の特性≫
以下、本開示のセルロース原料及びセルロース微細繊維の特性の例示的態様について説明する。なお以下の特性は、特記がない限り、本開示のセルロース微細繊維分散液中のセルロース微細繊維(本開示で、濃縮前のセルロース微細繊維ということもある。)、本開示の濃縮物中のセルロース微細繊維(本開示で、濃縮後のセルロース微細繊維ということもある。)、又は本開示の乾燥体中のセルロース微細繊維に係る特性であってよい。
セルロース微細繊維の平均繊維径は、一態様において、50~1000nmであり、好ましくは55nm以上、又は60nm以上、又は65nm以上、又は70nm以上、又は75nm以上であり、好ましくは900nm以下、又は800nm以下、又は700nm以下、又は600nm以下、又は500nm以下である。セルロース微細繊維の平均繊維径が上記の範囲内にあると、未修飾のみならず化学修飾によって表面疎水性が増したセルロース微細繊維であっても、固形分率のバラつきが少ない濃縮が可能となる。平均繊維径が上記下限値以上である場合、保水性が高くなり過ぎずセルロース微細繊維分散液からの脱液が容易であり、濃縮装置の目詰まりや回収率の低下が生じ難い。一方、平均繊維径が上記上限値以下である場合、セルロース微細繊維が分散液中で沈降し難いため、沈降による濃度ムラが生じ難い。
一態様において、セルロース微細繊維の数平均繊維径(D)は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて以下の手順で測定される値である。濃縮前又は濃縮後のセルロース微細繊維をtert-ブタノールで、0.1~0.5質量%まで希釈し、吸引濾過して作製したシートを150℃のオーブンで5分乾燥したものを測定サンプルとし、高分解能走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した10000倍の画像から計測して求める。具体的には、観察画像の中央点を通る直線を任意に3本引き、これらの直線と交差する繊維の幅を、少なくとも100本の繊維に対して求めて、数平均値を算出する。
セルロース原料又はセルロース微細繊維の結晶化度は、耐熱性、機械強度及び寸法安定性に優れる樹脂組成物を得る観点から、好ましくは、55%以上、又は60%以上、又は70%以上、又は73%以上、又は75%以上である。結晶化度がこの範囲にあると、セルロース自体の力学物性(耐熱性、強度、寸法安定性)が高いため、セルロースを樹脂に分散した際に、樹脂組成物の耐熱性、強度、寸法安定性が高い傾向にある。結晶化度は高い方が好ましいが、生産上の観点から好ましい上限は99%である。
セルロース原料又はセルロース微細繊維の重合度は、機械的特性発現の観点から、好ましくは、100以上、又は150以上、又は200以上、又は300以上、又は400以上であり、加工性の観点から、好ましくは、3500以下、又は3300以下、又は3200以下、又は3100以下、又は3000以下である。
セルロースの重合度は、「第十五改正日本薬局方解説書(廣川書店発行)」の確認試験(3)に記載の銅エチレンジアミン溶液による還元比粘度法に従って測定される平均重合度を意味する。
一態様において、セルロース原料又はセルロース微細繊維の重量平均分子量(Mw)は100000以上であり、より好ましくは200000以上である。重量平均分子量と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は6以下であり、好ましくは5.4以下である。重量平均分子量が大きいほどセルロース分子の末端基の数は少ないことを意味する。また、重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)は分子量分布の幅を表すものであることから、Mw/Mnが小さいほどセルロース分子の末端の数は少ないことを意味する。セルロース分子の末端は熱分解の起点となるため、セルロース分子の重量平均分子量が大きいだけでなく、重量平均分子量が大きいと同時に分子量分布の幅が狭い場合に、特に高耐熱性のセルロース、及びセルロースと樹脂とを含む樹脂組成物が得られる。セルロース微細繊維の重量平均分子量(Mw)は、セルロース原料の入手容易性の観点から、例えば600000以下、又は500000以下であってよい。重量平均分子量と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、セルロース微細繊維の製造容易性の観点から、例えば1.5以上、又は2以上であってよい。Mwは、目的に応じたMwを有するセルロース原料を選択すること、セルロース原料に対して物理的処理及び/又は化学的処理を適度な範囲で適切に行うこと、等によって上記範囲に制御できる。Mw/Mnもまた、目的に応じたMw/Mnを有するセルロース原料を選択すること、セルロース原料に対して物理的処理及び/又は化学的処理を適度な範囲で適切に行うこと、等によって上記範囲に制御できる。Mwの制御、及びMw/Mnの制御の両者において、上記物理的処理としては、マイクロフリュイダイザー、ボールミル、ディスクミル等の乾式粉砕若しくは湿式粉砕、擂潰機、ホモミキサー、高圧ホモジナイザー、超音波装置等による衝撃、剪断、ずり、摩擦等の機械的な力を加える物理的処理を例示でき、上記化学的処理としては、蒸解、漂白、酸処理、再生セルロース化等を例示できる。
ここでいう重量平均分子量及び数平均分子量とは、セルロース原料又はセルロース微細繊維を塩化リチウムが添加されたN,N-ジメチルアセトアミドに溶解させたうえで、N,N-ジメチルアセトアミドを溶媒としてゲルパーミエーションクロマトグラフィによって求めた値である。
セルロース微細繊維の重合度(すなわち平均重合度)又は分子量を制御する方法としては、解繊工程後の加水分解処理等が挙げられる。加水分解処理によって、セルロース内部の非晶質セルロースの解重合が進み、平均重合度が小さくなる。また同時に、加水分解処理により、非晶質セルロースに加え、ヘミセルロース、リグニン等の不純物も取り除かれるため、繊維質内部が多孔質化する。それにより、後記の混練工程中等の、セルロースに機械的せん断力を与える工程において、セルロースが機械処理を受けやすくなり、セルロースが微分散しやすくなる。
セルロース微細繊維は繊維径に対して繊維長が長い高アスペクト比の形状であることができ、かつセルロース微細繊維が屈曲した状態を取ることができるため、繊維長を定量的に測定することは難しいが、繊維形状自動分析計(例えばTechpap社製Morfi Neo)を用いて、繊維長分布を反映したファイン率を求めることができる。本開示では、長さ加重繊維長0.1mm未満の繊維の含有率をファイン率と定義して算出する。
(繊維形状自動分析計)
繊維形状自動分析計(Techpap社製Morfi Neo)の測定手順を以下に説明する。測定の際の繊維パラメータは繊維長0.1mmを閾値とし、閾値以上のセルロース微細繊維を通常繊維、閾値未満の繊維をファイン繊維と定義する。
セルロース微細繊維を純水に分散し、固形分濃度を0.003~0.005質量%とした1Lの水分散液を用意する。なお、希釈前のセルロース微細繊維が2質量%以下の水分散液である場合には、スパチュラ等で簡易的に混ぜるだけで良いが、2質量%以上の水分散液、含水ケーク状若しくは粉末状等である場合においては、高せん断ホモジナイザー(IKA製、商品名「ウルトラタラックスT18」)を用い処理条件:回転数25,000rpm×5分間で分散処理を行う。水以外の媒体に分散されている場合、高せん断ホモジナイザー(例えば、IKA製、商品名「ウルトラタラックスT18」)を用い処理条件:回転数25,000rpm×5分間で、充分量の純水中に分散処理を行ったのち、吸引濾過等の手段で、媒体を除去、再度、高せん断ホモジナイザー(例えば、IKA製、商品名「ウルトラタラックスT18」)を用い純水中に、処理条件:回転数25,000rpm×5分間で、固形分濃度0.003~0.005質量%となるように分散処理を行うことで、媒体を水に置換する。上記のように調製した水分散液をオートサンプラーに供して測定を行い、結果より各形状パラメータを抽出、又は算出する。なお、当該機器における繊維長分布の測定においては、データ区間は任意に設定可能であるため、前述の繊維長を有する繊維の分布が確認できる設定であれば、どのように設定しても構わない。
以下に、それぞれの形状パラメータに関して詳細に説明する。
(長さ加重平均繊維長)
長さ加重平均繊維長はISO/FDIS 16065-2:2006に定義された方法に準拠して繊維形状自動分析計で測定し、平均値の算出は繊維長0.1mm以上の繊維に対して行った。屈折した繊維においてはその屈折形状を考慮した実際の繊維長に相当する繊維長の平均値である。
(ファイン率)
繊維形状自動分析計において観察された全セルロース微細繊維の本数のうち、ファイン繊維(繊維長0.1mm未満の繊維)が占める本数割合である。ファイン率は、一態様において、好ましくは70%以上、又は80%以上、又は90%以上であり、好ましくは99%以下、又は98%以下、又は97%以下である。ファイン率が上記範囲で制御されることで、セルロース微細繊維をフィラー強化樹脂用のフィラーとして用いたときに良好な補強効果が得られる。ファイン率が上記下限値以上である場合、セルロース微細繊維の解繊が良好に行われている傾向を示しており、セルロース微細繊維が分散液中で沈降し難いため、沈降による濃度ムラが生じ難く好ましい。またこの場合、フィラー強化樹脂用のフィラーとしての補強効果も良好である。一方、ファイン率が上記上限値以下である場合、セルロース微細繊維の解繊が過剰ではない傾向を示しており、濃縮工程において濾過基材を通過したり、濾過基材を詰まらせる不具合が生じ難く好ましい。またこの場合、過剰な解繊によるセルロース微細繊維の耐熱性低下が生じ難いため、フィラー強化樹脂用のフィラーとしての熱劣化による激しい着色又は物性低下が生じ難く好ましい。
(ファイン繊維面積比)
ファイン繊維面積比とは、全セルロース微細繊維の観察像の面積総和(通常繊維の面積+ファイン繊維の面積)に占める、繊維長0.1mm未満であるファイン繊維の観察像の面積総和の比率である。ファイン繊維面積比は、好ましくは90%以下、又は80%以下、又は70%以下、又は60%以下であり、好ましくは5%以上、又は10%以上、又は20%以上、又は25%以上、又は30%以上である。ファイン繊維面積比が好ましい範囲にあることで、濃縮工程において固形分率のバラつきが少ない濃縮が容易になる。
(フィブリル化率)
フィブリル化率とは、少なくも一部が分岐した構造を有する繊維において、最も径が大きい部分を主鎖として、その主鎖長L(Main)に対し、分岐したn本の側鎖L(Sub)の合計長さを意味し、以下の式で定義される。
セルロース微細繊維のフィブリル化率は、好ましくは0.5%以上、又は0.7%以上、又は0.8%以上、又は0.9%以上、又は1.0%以上、又は1.2%以上、又は1.5%以上であり、好ましくは3.5%以下、又は3.0%以下、又は2.5%以下、又は2.0%以下である。フィブリル化率がこの範囲にあることで、セルロース微細繊維をフィラー強化樹脂用のフィラーとして用いたときの、樹脂組成物中でのセルロース微細繊維/樹脂間の界面の面積が適切な範囲となり、破壊の起点が少なくなるため、破壊歪が大きくなる。
一態様において、セルロース微細繊維は、アルカリ可溶多糖類を含み得る。アルカリ可溶多糖類は、ヘミセルロースのほか、β-セルロース及びγ-セルロースも包含する。アルカリ可溶多糖類とは、植物(例えば木材)を溶媒抽出及び塩素処理して得られるホロセルロースのうちのアルカリ可溶部として得られる成分(すなわちホロセルロースからα-セルロースを除いた成分)として当業者に理解される。アルカリ可溶多糖類は、水酸基を含む多糖であり、セルロース微細繊維の耐熱性低下、物性低下、変色、樹脂への分散性低下等の原因となり得ることから、セルロース微細繊維中のアルカリ可溶多糖類含有量は少ない方が好ましい。
一態様において、セルロース微細繊維中のアルカリ可溶多糖類平均含有率は、セルロース微細繊維の良好な機能を維持する観点から、セルロース微細繊維100質量%に対して、好ましくは、20質量%以下、又は18質量%以下、又は15質量%以下、又は12質量%以下、又は11質量%以下、又は8質量%以下である。上記含有率は、セルロース微細繊維の製造容易性の観点から、1質量%以上、又は2質量%以上、又は3質量%以上、又は6質量%以上であってもよい。一態様において、セルロース原料中のアルカリ可溶多糖類平均含有率は、13質量%以下、又は12質量%以下、又は11質量%以下、又は8質量%以下であってよく、最も好ましくは0質量%であるが、セルロース原料の入手容易性の観点から、例えば3質量%以上、又は6質量%以上であってもよい。
アルカリ可溶多糖類平均含有率は、非特許文献(木質科学実験マニュアル、日本木材学会編、92~97頁、2000年)に記載の手法より求めることができ、ホロセルロース含有率(Wise法)からαセルロース含有率を差し引くことで求められる。なおこの方法は当業界においてヘミセルロース量の測定方法として理解されている。1つのサンプルにつき3回アルカリ可溶多糖類含有率を算出し、算出したアルカリ可溶多糖類含有率の数平均をアルカリ可溶多糖類平均含有率とする。
一態様において、セルロース微細繊維中の酸不溶成分平均含有率は、セルロースの耐熱性低下及びそれに伴う変色を回避する観点から、セルロース微細繊維100質量%に対して、好ましくは、10質量%以下、又は5質量%以下、又は3質量%以下である。上記含有率は、セルロース微細繊維の製造容易性の観点から、0.1質量%以上、又は0.2質量%以上、又は0.3質量%以上であってもよい。
酸不溶成分平均含有率は、非特許文献(木質科学実験マニュアル、日本木材学会編、92~97頁、2000年)に記載のクラーソン法を用いた酸不溶成分の定量として行う。なおこの方法は当業界においてリグニン量の測定方法として理解されている。硫酸溶液中でサンプルを撹拌してセルロース及びヘミセルロース等を溶解させた後、ガラスファイバーろ紙で濾過し、得られた残渣が酸不溶成分に該当する。この酸不溶成分重量より酸不溶成分含有率を算出し、そして、3サンプルについて算出した酸不溶成分含有率の数平均を酸不溶成分平均含有率とする。
≪樹脂組成物の製造方法≫
本発明の一態様はまた、セルロース微細繊維と熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物の製造方法を提供する。当該方法は、一態様において、本開示のセルロース微細繊維分散液の濃縮物の製造方法でセルロース微細繊維分散液の濃縮物を生成し、又は本開示のセルロース微細繊維乾燥体の製造方法でセルロース微細繊維乾燥体を生成する工程と、当該セルロース微細繊維分散液の濃縮物又は当該セルロース微細繊維乾燥体を熱可塑性樹脂と混合(典型的には溶融混練)して樹脂組成物を生成する工程とを含む。
溶融混練には、単軸押出機、二軸押出機等の押出機を使用できるが、二軸押出機が、セルロース微細繊維の分散性を制御する上で好ましい。押出機のシリンダー長(L)をスクリュー径(D)で除したL/Dは、30以上が好ましく、特に好ましくは40以上である。また、混練時のスクリュー回転数は、50~800rpmの範囲が好ましく、より好ましくは100~600rpmの範囲内である。押出機のシリンダー内の各スクリューは、楕円形の二翼のねじ形状の搬送スクリュー、ニーディングディスクと呼ばれる混練エレメント、等を組み合わせて最適化される。
<熱可塑性樹脂>
熱可塑性樹脂は、樹脂組成物の使用目的に応じて適宜選択され、例えば、100℃~350℃の範囲内に融点を有する結晶性熱可塑性樹脂、100~250℃の範囲内にガラス転移温度を有する非晶性熱可塑性樹脂等であってよい。樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂及びこれらの2種以上の混合物を例示でき、取り扱い性及びコストの観点から、好ましくはポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂等が挙げられ、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂及びポリアセタール系樹脂はより好ましく、ポリアミド系樹脂及びポリアセタール系樹脂は特に好ましい。熱可塑性樹脂(特に結晶性樹脂)の融点は、樹脂組成物の耐熱性を高める観点から、好ましくは、140℃以上、又は150℃以上、又は160℃以上、又は170℃以上、又は180℃以上、又は190℃以上、又は200℃以上、又は210℃以上、又は220℃以上、又は230℃以上、又は240℃以上、又は245℃以上、又は250℃以上である。
熱可塑性樹脂の融点としては、例えば比較的低融点の樹脂(例えばポリオレフィン系樹脂)について、150℃~190℃、又は160℃~180℃、また例えば比較的高融点の樹脂(例えばポリアミド系樹脂)について、220℃~350℃、又は230℃~320℃、を例示できる。
本開示で、樹脂の融点とは、示差走査熱量分析装置(DSC)を用いて、23℃から10℃/分の昇温速度で昇温した際に現れる吸熱ピークのピークトップ温度を指し、吸熱ピークが2つ以上現れる場合は、最も高温側の吸熱ピークのピークトップ温度を指す。
本開示で、樹脂のガラス転移温度とは、動的粘弾性測定装置を用いて、23℃から2℃/分の昇温速度で昇温しながら、印加周波数10Hzで測定した際に、貯蔵弾性率が大きく低下し、損失弾性率が最大となるピークのピークトップの温度をいう。損失弾性率のピークが2つ以上現れる場合は、最も高温側のピークのピークトップ温度を指す。
熱可塑性樹脂として好ましいポリオレフィン系樹脂は、オレフィン類(例えばα-オレフィン類)やアルケン類をモノマー単位として重合して得られる高分子である。ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、低密度ポリエチレン(例えば線状低密度ポリエチレン)、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン等に例示されるエチレン系(共)重合体、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体等に例示されるポリプロピレン系(共)重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体等に代表されるエチレン等α-オレフィンの共重合体等が挙げられる。
ここで最も好ましいポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレンが挙げられる。特に、ISO1133に準拠して230℃、荷重21.2Nで測定されたメルトマスフローレイト(MFR)が、3g/10分以上30g/10分以下であるポリプロピレンが好ましい。MFRの下限値は、より好ましくは5g/10分であり、さらにより好ましくは6g/10分であり、最も好ましくは8g/10分である。また、上限値は、より好ましくは25g/10分であり、さらにより好ましくは20g/10分であり、最も好ましくは18g/10分である。MFRは、組成物の靱性向上の観点から上記上限値を超えないことが望ましく、組成物の流動性の観点から上記下限値を下回らないことが望ましい。
また、微細セルロース繊維との親和性を高めるため、酸変性されたポリオレフィン系樹脂も好適に使用可能である。酸変性に用いる酸としては、モノ又はポリカルボン酸を使用でき、例えば、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、フタル酸及びこれらの無水物、並びにクエン酸等を例示できる。変性率の高めやすさから、マレイン酸又はその無水物が特に好ましい。変性方法については特に制限はないが、過酸化物の存在下又は非存在下でポリオレフィン系樹脂を融点以上に加熱して溶融混練する方法が一般的である。酸変性するポリオレフィン樹脂としては前出のポリオレフィン系樹脂をすべて使用可能であるが、ポリプロピレンが特に好適である。酸変性されたポリプロピレン系樹脂は、単独で用いても構わないが、樹脂全体としての変性率を調整するため、変性されていないポリプロピレン系樹脂と混合して使用することがより好ましい。この際のすべてのポリプロピレン系樹脂に対する酸変性されたポリプロピレン系樹脂の割合は、好ましくは0.5質量%~50質量%である。より好ましい下限は、1質量%、又は2質量%、又は3質量%、又は4質量%、又は5質量%である。また、より好ましい上限は、45質量%、又は40質量%、又は35質量%、又は30質量%、又は20質量%である。樹脂と微細セルロース繊維との界面強度を維持するためには、下限以上が好ましく、樹脂としての延性を維持するためには、上限以下が好ましい。
酸変性されたポリプロピレンのISO1133に準拠して230℃、荷重21.2Nで測定されたメルトマスフローレイト(MFR)は、セルロース界面との親和性を高めるため、50g/10分以上であることが好ましい。より好ましい下限は100g/10分であり、更により好ましくは150g/10分、最も好ましくは200g/10分である。上限は特にないが、機械的強度の維持から500g/10分である。MFRをこの範囲内とすることにより、酸変性されたポリプロピレンと変性されていないポリプロピレンとが併用される場合に、酸変性されたポリプロピレンがセルロースと樹脂との界面に存在しやすくなるという利点を享受できる。
熱可塑性樹脂として好ましいポリアミド系樹脂としては:ラクタム類の重縮合反応により得られるポリアミド(例えばポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12等);ジアミン類(例えば1,6-ヘキサンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、2-メチル-1-6-ヘキサンジアミン、1,8-オクタンジアミン、2-メチル-1,7-ヘプタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、m-キシリレンジアミン等)とジカルボン酸類(例えばブタン二酸、ペンタン二酸、ヘキサン二酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸、ベンゼン-1,2-ジカルボン酸、ベンゼン-1,3-ジカルボン酸、ベンゼン-1,4ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸等)との共重合体として得られるポリアミド(例えばポリアミド6,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6,11、ポリアミド6,12、ポリアミド6,T、ポリアミド6,I、ポリアミド9,T、ポリアミド10,T、ポリアミド2M5,T、ポリアミドMXD,6、ポリアミド6、C、ポリアミド2M5,C等);及びこれらがそれぞれ共重合された共重合体(例えばポリアミド6,T/6,I等)、が挙げられる。
これらポリアミド系樹脂の中でも、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6,11、ポリアミド6,12等の脂肪族ポリアミド、及び、ポリアミド6,C、ポリアミド2M5,C等の脂環式ポリアミドがより好ましい。
ポリアミド系樹脂の末端カルボキシル基濃度には特に制限はないが、好ましくは、20μモル/g以上、又は25μモル/g以上であってよく、好ましくは、150μモル/g以下、又は100μモル/g以下であってよい。
ポリアミド系樹脂の末端アミノ基濃度は、好ましくは、20μモル/g以上、又は30μモル/g以上であってよく、好ましくは、150μモル/g以下、又は100μモル/g以下であってよい。
ポリアミド系樹脂の末端アミノ基と末端カルボキシル基との合計濃度に特に制限はないが、好ましくは、10μモル/g以上、又は50μモル/g以上、又は100μモル/g以上、又は135μモル/g以上であってよく、樹脂が過度に低分子量になることによる粘度低下を防止して成形時のバリ発生等を抑制する観点から、好ましくは、500μモル/g以下、又は300μモル/g以下、又は135μモル/g以下、又は100μモル/g以下であってよい。
ポリアミド系樹脂の、カルボキシル末端基に対するアミノ末端基比率([NH2]/[COOH])は、好ましくは、1.00超、又は1.01以上、又は1.05以上、又は1.10以上である。アミノ末端基比率上限には特に制限はないが、樹脂組成物の色調を良好に維持する観点からは、好ましくは、10000以下、又は1000以下、又は100以下、又は10以下であってよい。
ポリアミド系樹脂の末端基濃度は、公知の方法で調整できる。調整方法としては、ポリアミドの重合時に、所定の末端基濃度となるように末端基と反応する末端調整剤(例えば、ジアミン化合物、モノアミン化合物、ジカルボン酸化合物、モノカルボン酸化合物、酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル、モノアルコール等)を重合液に添加する方法が挙げられる。
ポリアミド系樹脂のアミノ末端基及びカルボキシル末端基の濃度は、1H-NMRにより、各末端基に対応する特性シグナルの積分値から求めることができる。この方法は、精度及び簡便さの点で好ましい。より具体的には、特開平7-228775号公報に記載された方法を用い、測定溶媒として重トリフルオロ酢酸を用い、積算回数を300スキャン以上とすることが推奨される。
ポリアミド系樹脂の、濃硫酸中30℃の条件下で測定した固有粘度[η]は、樹脂組成物を例えば射出成形する際に、金型内流動性が良好で成形片の外観が良好であるという観点から、好ましくは、0.6~2.0dL/g、又は0.7~1.4dL/g、又は0.7~1.2dL/g、又は0.7~1.0dL/gである。本開示において、「固有粘度」とは、一般的に極限粘度と呼ばれている粘度と同義である。固有粘度は、96%濃硫酸中、30℃の温度条件下で、濃度の異なるいくつかの測定溶媒のηsp/cを測定し、そのそれぞれのηsp/cと濃度(c)との関係式を導き出し、濃度をゼロに外挿する方法で求められる。このゼロに外挿された値が固有粘度である。上記方法の詳細は、例えば、Polymer Process Engineering(Prentice-Hall,Inc 1994)の291ページ~294ページ等に記載されている。上記の濃度の異なるいくつかの測定溶媒における濃度は、少なくとも4点(例えば、0.05g/dL、0.1g/dL、0.2g/dL、0.4g/dL)とすることが精度の観点から望ましい。
ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリアリレート(PAR)、ポリカーボネート(PC)等から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。ポリエステル系樹脂としては、より好ましくは、PET、PBS、PBSA、PBT、PENが挙げられ、更に好ましくは、PBS、PBSA、PBTが挙げられる。
また、ポリエステル系樹脂は、重合時のモノマー比率や末端安定化剤の添加の有無や量によって、末端基を自由に変えることが可能であるが、該ポリエステル系樹脂の全末端基に対するカルボキシル末端基比率([COOH]/[全末端基])が、0.30~0.95であることがより好ましい。カルボキシル末端基比率下限は、より好ましくは0.35であり、さらにより好ましくは、0.40であり、最も好ましくは0.45である。また、カルボキシル末端基比率上限は、より好ましくは0.90であり、さらにより好ましくは、0.85であり、最も好ましくは0.80である。上記カルボキシル末端基比率は、セルロースの組成物中への分散性の観点から0.30以上とすることが望ましく、得られる組成物の色調の観点から0.95以下とすることが望ましい。
ポリアセタール系樹脂としては、ホルムアルデヒドを原料とするホモポリアセタールと、トリオキサンを主モノマーとし、1,3-ジオキソランをコモノマー成分として含むコポリアセタールが一般的であり、両者とも使用可能であるが、加工時の熱安定性の観点から、コポリアセタールが好ましく使用できる。特に、コモノマー成分(例えば1,3-ジオキソラン)由来構造の量としては0.01~4モル%の範囲内がより好ましい。コモノマー成分由来構造の量の好ましい下限量は、0.05モル%であり、より好ましくは0.1モル%であり、さらにより好ましくは0.2モル%である。また好ましい上限量は、3.5モル%であり、さらに好ましくは3.0モル%であり、さらにより好ましくは2.5モル%、最も好ましくは2.3モル%である。
押出加工や成形加工時の熱安定性の観点から、下限は上述の範囲内とすることが望ましく、機械的強度の観点より、上限は上述の範囲内とすることが望ましい。
樹脂としては、セルロースとの親和性の観点から、親水性基(例えば、水酸基、エーテル基、エステル基、アミノ基及びカルボキシ基から選ばれる1種以上)を有する樹脂が特に好ましい。親水性基を有する樹脂の好適例は、酸変性ポリオレフィン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、及びアクリル系樹脂からなる群から選択される1種以上である。中でもポリアミド系樹脂及びマレイン化ポリプロピレンが好ましい。
<追加の成分>
本実施形態の樹脂組成物は、その性能を向上させるために、必要に応じて追加の成分をさらに含んでもよい。追加の成分としては、分散剤;セルロース以外のフィラー成分;相溶化剤;可塑剤;でんぷん類、アルギン酸等の多糖類;ゼラチン、ニカワ、カゼイン等の天然たんぱく質;ゼオライト、セラミックス、タルク、シリカ、金属酸化物、金属粉末等の無機化合物;着色剤;香料;顔料;流動調整剤;レベリング剤;導電剤;酸化防止剤;帯電防止剤;紫外線吸収剤;紫外線分散剤;消臭剤等が挙げられる。任意の追加の成分の樹脂組成物中の含有割合は、本発明の所望の効果が損なわれない範囲で適宜選択されるが、例えば0.01~50質量%、又は0.1~30質量%であってよい。
分散剤としては、濃縮後のセルロース微細繊維と混合してセルロース微細繊維乾燥体を形成したときにセルロースの凝集と固化を抑制し、樹脂とセルロース微細繊維乾燥体とを混練して得た樹脂組成物中でセルロース微細繊維の分散安定性を向上するものを使用でき、親水性でも疎水性でもよい。分散剤の好適例は、セルロース誘導体、ポリアルキレンオキシド、アミド及びアミンからなる群から選択される1種以上であるが、これに限定されない。中でも、セルロース誘導体は、セルロース系物質であることからセルロース微細繊維との親和性が高い一方で、熱可塑性樹脂でもあることから、樹脂組成物中でのセルロース微細繊維の分散安定性向上効果が高く好ましい。分散剤としては、水よりも高い沸点を有するものが好ましい。なお、水よりも高い沸点とは、水の蒸気圧曲線における各圧力における沸点(例えば、1気圧下では100℃)よりも高い沸点を指す。分散剤の沸点は、混練時の樹脂温度よりも高いことがより好ましく、高い程好ましい。分散剤の沸点は、例えば、130℃以上、又は140℃以上、又は150℃以上、又は160℃以上、又は170℃以上、又は180℃以上であってよく、予定される混練温度よりも高い沸点を有する分散剤を選択してよい。又は、分散剤は、沸点を有さずに熱分解するものであってもよい。この場合の分散剤の熱分解温度は、混練時の樹脂温度よりも高いことが好ましく、一態様において、上記好ましい沸点と同様の温度の熱分解温度を有してよい。
樹脂組成物全体100質量%に対するセルロース微細繊維の量は、セルロース微細繊維による良好な補強効果を得る観点から、好ましくは、0.1質量%以上、又は0.5質量%以上、又は1質量%以上、又は3質量%以上であり、樹脂本来の特性を良好に保持する観点から、好ましくは、30質量%以下、又は25質量%以下、又は20質量%以下、又は15質量%以下である。セルロース微細繊維の含有量は、樹脂組成物の成形品全体で偏りが無いことが好ましい。局所的にセルロース微細繊維の含有量が低い部分や高い部分が存在すると、それらの部分に起因して成形品の補強効果が低下したり、破壊の原因となり得る。特に小型の成形品を製造した場合、不良品の増加につながる恐れがある。
樹脂組成物全体100質量%に対する樹脂の量は、樹脂本来の特性を良好に保持する観点から、好ましくは、20質量%以上、又は30質量%以上、又は40質量%以上、又は50質量%以上、又は60質量%以上、又は70質量%以上、又は75質量%以上、又は80質量%以上、又は85質量%以上であり、他の成分による効果を良好に得る観点から、好ましくは、99.9質量%以下、又は99.5質量%以下、又は99質量%以下、又は97質量%以下、又は95質量%以下、又は90質量%以下である。
樹脂組成物中、セルロース微細繊維100質量部に対する分散剤の量は、セルロースの良好な分散及びネットワーク形成の観点から、好ましくは、1質量部以上、又は5質量部以上、又は10質量部以上、又は20質量部以上、又は30質量部以上であり、樹脂組成物の性能のばらつき低減の観点から、好ましくは、500質量部以下、又は300質量部以下、又は200質量部以下、又は100質量部以下である。
本実施形態の樹脂組成物は、種々の樹脂成形体として利用可能である。樹脂成形体の製造方法に特に制限はないが、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、インフレーション成形法、発泡成形法などが使用可能である。これらの中では射出成形法がデザイン性及びコストの観点から特に好ましい。
≪樹脂組成物の用途≫
本実施形態の方法で得られる樹脂組成物は、鋼板、繊維強化プラスチック(例えば炭素繊維強化プラスチック、ガラス繊維強化プラスチック等)、無機フィラーを含む樹脂コンポジット、等の代替品として有用である。樹脂組成物の好適な用途としては、産業用機械部品、一般機械部品、自動車・鉄道・車両・船舶・航空宇宙関連部品、電子・電気部品、建築・土木材料、生活用品、スポーツ・レジャー用品、風力発電用筐体部材、容器・包装部材、等を例示できる。
以下、本発明の例示の態様について実施例を挙げて更に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
≪評価方法≫
<繊維形状自動分析計によるファイン率、ファイン繊維面積比及びフィブリル化率の評価>
繊維形状自動分析計(Techpap社製Morfi Neo)の測定手順を以下に説明する。なお、測定の際の繊維パラメータは繊維長0.1mmを閾値とし、閾値以上のセルロース微細繊維を通常繊維、閾値未満の繊維をファイン繊維と定義する。繊維形状自動分析計による測定結果から、以下の形状パラメータを抽出又は算出した。
ファイン率:全セルロース微細繊維の本数のうち、ファイン繊維(繊維長0.1mm未満の繊維)が占める本数割合
ファイン繊維面積比:Fine content,% in area[%]
フィブリル化率:MacroFibrillation index[%]
セルロース微細繊維分散液を純水に希釈し、固形分濃度を0.003~0.005質量%とした1Lの水分散液を用意した。この水分散液について、高せん断ホモジナイザー(IKA製、商品名「ウルトラタラックスT18」)を用い処理条件:回転数25,000rpm×5分間で分散処理を行った。上記のように調製した水分散液をオートサンプラーに供して測定を行い、結果よりファイン率を算出した。
<パルプ及びセルロース微細繊維の多孔質シートの作製>
後述の方法で得られた含水状態のアセチル化パルプを約3.3g(固形分0.5g相当)、又は後述の製造例で得られたセルロース微細繊維分散液を約35g(固形分0.5g相当)分取して吸引ろ過し、ろ物をtert-ブタノール中に添加し、さらにミキサーで凝集物が無い状態まで分散処理を行った。セルロース固形分重量0.5gに対し、濃度が0.5質量%となるように調整した。得られたtert-ブタノール分散液100gをろ紙上で濾過し、150℃にて乾燥させた後、ろ紙を剥離して多孔質シートを得た。
<セルロース微細繊維の平均繊維径(D)>
セルロース微細繊維の数平均繊維径(D)は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて以下の手順で測定した。上記の方法で多孔質シートを作製して測定サンプルとし、高分解能走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した10000倍、又は50000倍の画像から計測して求めた。具体的には、観察画像の中央点を通る直線を任意に3本引き、これらの直線と交差する繊維の幅を、少なくとも100本の繊維に対して求めて、数平均値を算出した。
<セルロース微細繊維の結晶化度>
上記の方法で作製した多孔質シートを広角X線回折により測定した際の回折パターン(2θ/deg.が10~30)からSegal法により、以下の式で求めた。
結晶化度(%)=[I(200)-I(amorphous)]/I(200)×100
I(200):セルロースI型結晶における200面(2θ=22.5°)による回折ピーク強度
I(amorphous):セルロースI型結晶におけるアモルファスによるハローピーク強度であって、200面の回折角度より4.5°低角度側(2θ=18.0°)のピーク強度
(X線回折測定条件)
装置 MiniFlex(株式会社リガク製)
操作軸 2θ/θ
線源 CuKα
測定方法 連続式
電圧 40kV
電流 15mA
開始角度 2θ=5°
終了角度 2θ=30°
サンプリング幅 0.020°
スキャン速度 2.0°/min
サンプル:試料ホルダー上に多孔質シートを貼り付け
<アセチル化パルプ及びアセチル化セルロース微細繊維の置換度(DS)>
アセチル化パルプ及びアセチル化セルロース微細繊維について、置換度(DS)は、これらの各々の上記の方法で作製した多孔質シートの反射型赤外吸収スペクトルから、アセチル基由来のピークとセルロース骨格由来のピークとのピーク強度比に基づいて算出した。アセチル基に基づくC=Oの吸収バンドのピークは1730cm-1に出現し、セルロース骨格鎖に基づくC-Oの吸収バンドのピークは1030cm-1に出現する。アセチル化セルロースのDSは、後述するアセチル化セルロースの固体NMR測定から得られるDSと、セルロース骨格鎖C-Oの吸収バンドのピーク強度に対するアセチル基に基づくC=Oの吸収バンドのピーク強度の比率で定義される修飾化率(IRインデックス1030)との相関グラフを作製し、相関グラフから算出された検量線置換度
DS = 4.13 × IRインデックス(1030)
を使用することで求めた。
(反射型赤外スペクトル測定条件)
装置 :フーリエ変換赤外分光光度計(ThermoFisherScientific社製 Nicolet Summit Pro)
積算回数 :16回、
波数分解能 :4cm-1
ATR結晶 :ダイヤモンド
入射角 :45°
固体NMRによるアセチル化セルロースのDSの算出方法は、凍結粉砕したアセチル化パルプ及びアセチル化微細セルロース繊維の各々について13C固体NMR測定を行い、50ppmから110ppmの範囲に現れるセルロースのピラノース環由来の炭素C1-C6に帰属されるシグナルの合計面積強度(Inp)に対する修飾基由来の1つの炭素原子に帰属されるシグナルの面積強度(Inf)より下記式で求めた。
DS=(Inf)×6/(Inp)
アセチル基について、-CH3に帰属される23ppmのシグナルを用いた。
用いた13C固体NMR測定の条件は以下の通りである。
装置 :Bruker Biospin Avance500WB
周波数 :125.77MHz
測定方法 :DD/MAS法
待ち時間 :75sec
NMR試料管 :4mmφ
積算回数 :640回(約14Hr)
MAS :14,500Hz
化学シフト基準:グリシン(外部基準:176.03ppm)
<置換基のモル数>
製造例で得たセルロース微細繊維の分散液について、非特許文献(Biomacromolecules 2004,5,1983-1989)に記載の方法に従って伝導度滴定を行い、カルボキシル酸化セルロース微細繊維の単位質量当たりのカルボキシル基のモル数を求めた。
また、アセチル化セルロース微細繊維について、前述のDSの測定結果に基づき、アセチル化セルロース微細繊維の単位質量当たりのアセチル基のモル数を下記式で求めた。
{1/[(162-DS)+(アセチル基の分子量×DS)]}×DS
<濃縮工程に供した分散液中の不揮発成分100質量%に対するセルロース微細繊維の含有率>
各成分の仕込み量から算出した。
<処理速度>
連続式濃縮装置にセルロース微細繊維の分散液を供給開始した時点を起点に、30分間の運転後に回収容器に回収されたセルロース微細繊維濃縮物の重量と固形分率を測定し、固形分重量を算出して、1時間当たりの処理速度に換算した。
<濃縮物の固形分率>
濃縮物を5g分取し、IR水分計(MX-50(エー・アンド・デイ製))で150℃の条件で乾燥させて、固形分率を求めた。各例について、濃縮工程の15分毎のサンプルを10点採取し、10点の数平均値及びCV値(標準偏差/数平均)を求めた。
<ハンドリング性>
濃縮工程におけるハンドリング性を、以下の基準で評価した。
×:下記(1)~(3)の不具合のうち1つ以上が発生
○:下記(1)~(3)の不具合の何れも発生なし
(1)セルロース微細繊維の目詰まりにより連続濃縮が不可能であった。
(2)濾過基材からの濃縮物の分離が困難であるために残渣が濾過基材上に付着したままとなり、回収率が低下し又は回収が不可能であった。
(3)回収されたセルロース微細繊維が、凝集により分散剤及び溶融した樹脂を浸透させなかった。
<樹脂組成物の引張降伏強度、引張破断伸度>
樹脂組成物ペレットを、射出成形機を用いて、JIS K6920-2に準拠した条件で成形し、ISO294-3に準拠した多目的試験片を成形した。射出成形の成形温度は、PA6は260℃、PA66は280℃、POMは210℃、PPは200℃とした。
<樹脂組成物中のセルロース微細繊維含有率>
樹脂組成物中のセルロース微細繊維の定量は、樹脂組成物のペレットを秤量して、樹脂及び分散剤を溶解するがセルロース微細繊維を溶解しない溶媒で組成物を溶解分散させ、遠心分離及び濾過で回収した不溶分を、前記溶媒、エタノール、水の順に洗浄して、110℃のオーブンで乾燥させたサンプルを秤量した。各樹脂組成物について5点のサンプルを秤量した。得られた値の最大値及び最小値を表3に示す。
上記溶媒として、樹脂がポリアミド6、ポリアミド66又はポリアセタールである場合には常温のヘキサフルオロイソプロパノール、樹脂がポリプロピレンである場合には140℃の熱キシレンをそれぞれ用いた。樹脂組成物のペレットから、各樹脂組成物について5点の薄片を切り出し、各々について下記処理を行った。サンプル1gを精密天秤で秤量し、溶媒(すなわちヘキサフルオロイソプロパノール又は熱キシレン)30mLを加え、超音波洗浄機で超音波を照射して樹脂を溶解させた。PTFE製メンブレンフィルタで加圧濾過して、残渣を溶媒(すなわちヘキサフルオロイソプロパノール又は熱キシレン)で2回、エタノールで2回、水で2回加圧濾過して洗浄した。残渣を110℃で1時間乾燥させて、精密天秤で重量を測定し、樹脂組成物中のセルロース微細繊維の含有率を算出した。
≪使用材料≫
<樹脂>
ポリアミド6(宇部興産(株)製、UBE NYLON 1013B)、融点225℃
ポリアミド66(旭化成(株)製、LEONA1300)、融点265℃
ポリプロピレン((株)プライムポリマー製、J106G)、融点160℃
ポリアセタール(旭化成(株)製、TENAC HC450)、融点165℃
<パルプ>
コットンリンターパルプ
日本紙パルプ商事株式会社より入手したコットンリンターパルプシートを使用した。
<アセチル化パルプの製造>
ジャケット付きの40L反応釜に、ジメチルスルホキシド(30kg)を加え、触媒の炭酸水素ナトリウム(0.48kg)とパルプ(1.5kg)を投入して撹拌した。ジャケットに温水を流して、液温60℃まで加温した。反応釜内部を窒素で置換して、酢酸ビニル(1.4kg)を投入した。2時間反応を行い、純水(10kg)を加えて反応を停止した。100Lヌッチェフィルタに濾布(PP9B、中尾フィルター工業社から入手可能)をセットして、純水(50kg)と反応液を投入して加圧濾過を行った(1回目濾過)。さらに室温にて純水(50kg)による加圧濾過を5回繰り返し(2~6回目濾過)、合計6回の加圧濾過を行って、固形分率15質量%の含水状態のアセチル化パルプを得て、乾燥せずに次の工程に使用した。このとき、反射型赤外スペクトル測定から求めたパルプ表面のDSは1.50であった。
<製造例1>(セルロース微細繊維の分散液Aの製造)
ディスクリファイナーを介して配管で繋がった2つのタンク(タンクA及びタンクB)を備える解繊装置を用いて解繊を行った。コットンリンターパルプシートを固形分濃度1.5質量%になるように水に浸漬させ、ラボパルパー(相川鉄工社製)を用いて、合計20kgのコットンリンターパルプシートを分散させた後、タンクAに送液し、シングルディスクリファイナー(相川鉄工社製、SDR14型ラボリファイナー 加圧型DISK式)を用いて処理した。まずスラリーを投入したタンクAから該ディスクリファイナーを介してタンクBへ送液、貯蔵し、該タンクAのスラリーの処理を終えた段階で、連続的に該タンクBから該ディスクリファイナーを介して該タンクAへ送液、貯蔵する方法により、該ディスクリファイナーを通過した回数(パス回数)を制御して行った。尚、該ディスクリファイナーの刃間調整機構には、ボールねじ式ジャッキと減速機を設けており、目的の刃間距離に到達させた後の叩解処理中の刃間距離のぶれ幅は変位センサーによる測定で0.005mm以下であった。ディスクリファイナーの刃は刃幅4.0mm、刃溝比0.89の刃を使用し、刃間距離0.25mmで30パスさせた後、刃幅0.8mm、刃溝比0.53の刃を用いて刃間距離0.25mmで30パスさせた。
得られたスラリーを高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社製、NS3015H)にて80MPaで10パス処理した。高圧ホモジナイザー処理も上記ディスクリファイナー処理と同様に2つのタンクを設け、高圧ホモジナイザー処理されたパス回数を制御して行い、不揮発成分100質量%に対するセルロース微細繊維の含有率100質量%、平均繊維径95nmのセルロース微細繊維の分散液Aを得た。
<製造例2>(アセチル化セルロース微細繊維の分散液Bの製造)
原料として、上記の方法を複数回で繰り返すことで製造したアセチル化パルプ計40kgを用いて、ディスクリファイナー処理は刃幅0.8mm、刃溝比0.53の刃を使用し、刃間距離0.25mmで30パスの1段とし、高圧ホモジナイザー処理のパス回数を3パスにした他は製造例1と同様に行って、不揮発成分100質量%に対するセルロース微細繊維の含有率100質量%、DS=0.78、平均繊維径150nmのアセチル化セルロース微細繊維の分散液Bを得た。
<製造例3>(アセチル化セルロース微細繊維の分散液Cの製造)
原料として、上記の方法を複数回繰り返すことで製造したアセチル化パルプ計75kgを用いて、ディスクリファイナー処理は刃幅0.8mm、刃溝比0.53の刃を使用し、刃間距離0.30mmで20パスの1段とした他は製造例1と同様に行い、高圧ホモジナイザー処理を行わずに、不揮発成分100質量%に対するセルロース微細繊維の含有率100質量%、DS=0.88、平均繊維径450nmのアセチル化セルロース微細繊維の分散液Cを得た。
<製造例4>(セルロース微細繊維の分散液Dの製造)
未修飾のコットンリンターパルプ75kgを用いた他は、製造例2と同様に行って、不揮発成分100質量%に対するセルロース微細繊維の含有率100質量%、平均繊維径178nmのセルロース微細繊維の分散液Dを得た。
<製造例5>(アセチル化セルロース微細繊維の分散液Eの製造)
原料として、上記の方法を複数回繰り返すことで製造したアセチル化パルプ計20kgを用いて、ディスクリファイナー処理は刃幅4.0mm、刃溝比0.89の刃を使用し、刃間距離0.25mm、30パスの1段とし、高圧ホモジナイザー処理のパス回数を3パスにした他は製造例1と同様に行って、不揮発成分100質量%に対するセルロース微細繊維の含有率100質量%、DS=0.80、平均繊維径275nmのアセチル化セルロース微細繊維の分散液Eを得た。
<製造例6>(アセチル化セルロース微細繊維分散液Fの製造)
原料として、上記の方法を複数回繰り返すことで製造したアセチル化パルプ計10kgを用いて、ディスクリファイナー処理は刃幅4.0mm、刃溝比0.89の刃を使用し、刃間距離0.30mmで20パスの1段とした他は製造例1と同様に行い、高圧ホモジナイザー処理を行わずに、DS=0.88、平均繊維径660nmのアセチル化セルロース微細繊維の分散液Fを得た。
<製造例7>(酸化セルロース微細繊維の分散液Gの製造)
針葉樹由来の漂白クラフトパルプ5kgを、TEMPO(Sigma Aldrich社より入手可能)78gと臭化ナトリウム754gを溶解した水溶液500Lに加えて撹拌した。次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素5%)を18L添加し、室温にて酸化反応を開始した。反応中は1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を適宜追加してpH10に調整した。反応を2時間行い、反応後の混合物を水洗することで酸化されたパルプ(カルボキシル化セルロース)を得た。水を加えて濃度を1.0質量%に調整し、高圧ホモジナイザーで3パス処理して、不揮発成分100質量%に対するセルロース微細繊維の含有率100質量%、平均繊維径5nmの酸化セルロース微細繊維の分散液Gを得た。
得られた分散液中のセルロース微細繊維の特性を表1に纏める。
<実施例1>
製造例1で作製したセルロース微細繊維分散液Aを、図3に示す連続式濃縮装置で脱水濃縮した。上記分散液を純水で固形分率0.50質量%に希釈し、撹拌翼付きの1.5m3タンクに注入し、周速0.7m/secで撹拌を継続して分散液の均一状態を維持した。循環する抄紙ワイヤーに、濾過基材(セルロースとポリエステル混抄不織布)を重ねて5m/分の速度で送り出し、分散液をモーノポンプで17L/分の速度で送液して濾過基材上に供給し、-20kPaのサクション部で脱液してセルロース微細繊維を層状に濃縮した後、濾過基材上から転写ロールに転写して、転写ロール上部のスクレーパーで掻き落とし、濃縮物を回収した。工程を通じ、処理速度は5.0kg-DS/hr、温度は20℃から25℃に維持された。なお温度はタンク中の分散液の温度(以下の例について同様)である。
<実施例2>
製造例2で作製したアセチル化セルロース微細繊維の分散液Bを、図3に示す連続式濃縮装置で脱水濃縮した。上記分散液を純水で固形分率0.35質量%に希釈して用いた他は実施例1と同様に行い、濃縮物を回収した。工程を通じ、処理速度は3.5kg-DS/hr、温度は20℃から25℃に維持された。
<実施例3>
製造例3で作製したアセチル化セルロース微細繊維の分散液Cを、図3に示す連続式濃縮装置で脱水濃縮した。上記分散液を希釈せず固形分率1.5質量%のまま用い、分散液供給速度を28L/分、サクション部を-40kPaにした他は実施例1と同様に行い、濃縮物を回収した。工程を通じ、処理速度は25.0kg-DS/hr、温度は20℃から25℃に維持された。
<実施例4>
製造例4で作製したセルロース微細繊維の分散液Dを、図3に示す連続式濃縮装置で脱水濃縮した。上記分散液を希釈せず固形分率1.5質量%のまま用い、サクション部を-30kPaにして脱液した他は実施例1と同様に行い、濃縮物を回収した。工程を通じ、処理速度は15.0kg-DS/hr、温度は20℃から25℃に維持された。
<実施例5>
製造例2で作製したアセチル化セルロース微細繊維の分散液Bを、図3に示す連続式濃縮装置で脱水濃縮した。上記分散液を純水で固形分率0.35質量%に希釈して用い、濾過基材の送り速度を4m/sec、サクション部を-25kPaにした他は実施例1と同様に行い、濃縮物を回収した。工程を通じ、処理速度は3.4kg-DS/hr、温度は20℃から25℃に維持された。
<実施例6>
製造例5で作製したアセチル化セルロース微細繊維の分散液Eを、図3に示す連続式濃縮装置で脱水濃縮した。上記分散液を純水で固形分率0.35質量%に希釈して用い、濾過基材の送り速度を3m/sec、分散液供給速度を11L/分、サクション部を2つ設けて-25kPaと-1.8kPaにした他は実施例1と同様に行い、濃縮物を回収した。工程を通じ、処理速度は2.3kg-DS/hr、温度は20℃から25℃に維持された。
<実施例7>
製造例5で作製したアセチル化セルロース微細繊維の分散液Eを、図3に示す連続式濃縮装置で脱水濃縮した。上記分散液を純水で固形分率0.50質量%に希釈して用い、濾過基材の送り速度を3m/sec、分散液供給速度を11L/分、サクション部を-25kPaにした他は実施例1と同様に行い、濃縮物を回収した。工程を通じ、処理速度は3.2kg-DS/hr、温度は20℃から25℃に維持された。
<実施例8>
製造例4で作製したセルロース微細繊維の分散液Dを、図3に示す連続式濃縮装置で脱水濃縮した。分散液供給速度を7L/分、サクション部を-25kPaにして脱液した他は実施例1と同様に行い、濃縮物を回収した。工程を通じ、処理速度は2.0kg-DS/hr、温度は20℃から25℃に維持された。
<実施例9>
製造例6で作製したアセチル化セルロース微細繊維の分散液Fを、図3に示す連続式濃縮装置で脱水濃縮した。上記分散液を純水で固形分率0.35質量%に希釈して用い、濾過基材の送り速度を3m/sec、分散液供給速度を7L/分、サクション部を-30kPaにした他は実施例1と同様に行い、濃縮物を回収した。工程を通じ、処理速度は1.4kg-DS/hr、温度は20℃から25℃に維持された。
<実施例10>
製造例2で作製したアセチル化セルロース微細繊維の分散液Bと粉末状セルロースアセテートブチレート(CAB、イーストマンケミカル社製、製品名:CAB381-0.1)を、図3に示す連続式濃縮装置で脱水濃縮した。上記分散液Bを純水で固形分率0.35質量%に希釈した後、アセチル化セルロース微細繊維とCABとの合計固形分100質量%に対するCABの比率が10質量%(すなわち、不揮発成分100質量%に対するアセチル化セルロース微細繊維の比率が90質量%)となるようにCABを添加し、撹拌混合したものを脱水濃縮に供した他は実施例1と同様に行い、濃縮物を回収した。工程を通じ、処理速度は3.7kg-DS/hr、温度は20℃から25℃に維持された。
<比較例1>
製造例7で作製した酸化セルロース微細繊維の分散液Gを、図3に示す連続式濃縮装置で脱水濃縮した。上記分散液を用いる他は実施例9と同様に行ったが、繊維が微細すぎるため濾過基材が閉塞し、濃縮不可能であった。
<比較例2>
製造例2で作製したアセチル化セルロース微細繊維の分散液Bを、図3に示す連続式濃縮装置で脱水濃縮した。分散液の希釈を行わず固形分率1.5質量%で用い、分散液供給速度を50L/分にした他は実施例1と同様に行ったが、脱液不足のため、固形分率4.5質量%までしか濃縮できず、濃縮物の転写ロールへの転写性が悪く、回収が困難であった。また回収できたセルロース微細繊維は水分を多く含み、固形分率のCV値が0.32と大きかった。
<比較例3>
製造例1で作製したセルロース微細繊維の分散液Aを用いて、ワイヤーパート、プレスパート及びドライヤーパートを備える連続式抄紙機で処理した。工程を通じ、処理速度は1.3kg-DS/hrに維持された。ドライヤーパートにおける乾燥温度を110℃に調整して水分を除去した。固形分率93質量%まで脱水され、固形分率のCV値は0.010であった。得られた生成物を後述の実施例11と同様の方法で分散剤と混合することを試みたが、セルロース微細繊維同士が再分散困難な状態に凝集しており、セルロース微細繊維として熱可塑性樹脂と混練することが難しいレベルであった。
<比較例4>
製造例5で作製したアセチル化セルロース微細繊維の分散液Eを、バッチ式加圧濾過機である100Lヌッチェフィルタで、20℃から25℃にて脱水濃縮した。ろ盤にろ布(PP9B、中尾フィルター工業社から入手可能)をセットして、上記分散液を希釈せずに注入し、窒素で0.18MPaに加圧して濾過を行ったが、ろ布の直上に固く圧縮されたセルロース微細繊維の層があり、その上に水分を含む軟らかいセルロース微細繊維の層が生成しており、固形分率のCV値は0.44と大きかった。
<実施例11>
実施例1で得た濃縮物の固形分0.7kg相当を秤量し、分散剤としてポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド共重合体(三洋化成製:GL-3000)を0.3kg加えて、(株)愛工舎製作所製業務用ミキサー(ケンミックス アイコー シェフPRO)でよく撹拌し、分散剤を配合した濃縮ケーキを得た。(株)アーステクニカ製ハイスピードバキュームドライヤー(型番:FS10)を用いて、ジャケット温度80℃、アジテーター(周速2m/sec)、チョッパー(3500rpm)、で撹拌しながら、真空ポンプで-70kPaまで減圧し、品温が70℃に達するまで減圧乾燥を実施した。赤外加熱式水分計(MX-50(エー・アンド・デイ製))を用いて水分率を測定し、水分率が7質量%以下(固形分質量93%以上)であることを確認して、乾燥の終点とした。
上記の方法で得られたセルロース微細繊維及び分散剤を含む乾燥粉体と、熱可塑性樹脂としてPA6ペレットとを、セルロース微細繊維の含有量が樹脂組成物中の10質量%となるように秤量し、二軸押出機中にそれぞれ別のフィーダーで供給し、シリンダー温度250℃で、250rpmの回転数で溶融混練してストランド状に押出し、水冷・切断しペレットとして得た。
得られた樹脂組成物ペレットを用い、上述の手順で、引張降伏強度及び引張破断伸度の測定、並びに樹脂組成物に含まれるセルロース微細繊維の含有率測定を行った。
<実施例12>
実施例2で濃縮したアセチル化セルロース微細繊維を用いた他は、実施例11と同様に樹脂組成物の製造と評価を行った。
<実施例13>
実施例3で濃縮したアセチル化セルロース微細繊維を用いた他は、実施例11と同様に樹脂組成物の製造と評価を行った。
<実施例14>
実施例4で濃縮したセルロース微細繊維を用いた他は、実施例11と同様に樹脂組成物の製造と評価を行った。
<実施例15>
実施例5で濃縮したアセチル化セルロース微細繊維を用いた他は、実施例11と同様に樹脂組成物の製造と評価を行った。
<実施例16>
実施例5で濃縮したアセチル化セルロース微細繊維を用い、分散剤として液状ゴム(クレイバレー社製、Ricon181)を使用し、熱可塑性樹脂としてPPペレットを用いて、混練と成形を200℃で行った以外は、実施例11と同様に樹脂組成物の製造と評価を行った。
<実施例17>
実施例5で濃縮したアセチル化セルロース微細繊維を用い、熱可塑性樹脂としてPOMペレットを用いて、混練と成形を210℃で行った以外は、実施例11と同様に樹脂組成物の製造と評価を行った。
<実施例18>
実施例5で濃縮したアセチル化セルロース微細繊維を用い、熱可塑性樹脂としてPA66ペレットを用いて、混練と成形を280℃で行った以外は、実施例11と同様に樹脂組成物の製造と評価を行った。
<実施例19>
実施例6で濃縮したアセチル化セルロース微細繊維を用いた他は、実施例11と同様に樹脂組成物の製造と評価を行った。
<実施例20>
実施例7で濃縮したアセチル化セルロース微細繊維を用いた他は、実施例11と同様に樹脂組成物の製造と評価を行った。
<実施例21>
実施例8で濃縮したアセチル化セルロース微細繊維を用いた他は、実施例11と同様に樹脂組成物の製造と評価を行った。
<実施例22>
実施例9で濃縮したアセチル化セルロース微細繊維を用いた他は、実施例11と同様に樹脂組成物の製造と評価を行った。
<実施例23>
実施例10で濃縮したアセチル化セルロース微細繊維とCABとの混合物を用いた他は、実施例11と同様に樹脂組成物の製造と評価を行った。
<比較例5>
比較例2で濃縮したアセチル化セルロース微細繊維を用いた他は、実施例10と同様に樹脂組成物の製造と評価を行った。
<比較例6>
比較例3で濃縮したセルロース微細繊維を用いた他は、実施例10と同様に樹脂組成物の製造と評価を行った。
<比較例7>
比較例4で濃縮したアセチル化セルロース微細繊維を用いた他は、実施例10と同様に樹脂組成物の製造と評価を行った。
<比較例8>
PA6ペレットをそのまま使用して射出成型し、多目的試験片を作製して評価した。
<比較例9>
PPペレットをそのまま使用して射出成型し、多目的試験片を作製して評価した。
<比較例10>
POMペレットをそのまま使用して射出成型し、多目的試験片を作製して評価した。
<比較例11>
PA66ペレットをそのまま使用して射出成型し、多目的試験片を作製して評価した。
結果を表2及び3に示す。
表1~3に示すように、本開示の方法で濃縮したセルロース微細繊維は、固形分率とそのCV値が所定の範囲に制御されており、フィラー強化樹脂組成物のフィラーとして使用したときの物性向上効果と繊維含有率の安定性とを兼ね備えていることが分かる。
本開示の方法で製造される、セルロース微細繊維分散液の濃縮物及びその乾燥体は、所定の濃度で分散媒(特に水分)を含みつつ、固形分率のバラつきが少ないため、セルロース微細繊維の再分散又は別の材料との均一混合を必要とする用途に使用したときに所望の品質を維持して大量生産され得る。したがって、当該濃縮物及びその乾燥体は、セルロース微細繊維で強化された樹脂組成物を利用する、産業用機械部品、一般機械部品、自動車・鉄道・車両・船舶・航空宇宙関連部品、電子・電気部品、建築・土木材料、生活用品、スポーツ・レジャー用品、風力発電用筐体部材、容器・包装部材、等の広範な用途に好適に適用され得る。
11 刃
12 溝
21 回転刃
22 固定刃
300 連続式濃縮装置
301 タンク
302 ポンプ
303 サクション部
304 濾過基材
305 送り機構
306 転写体
307 スクレーパー
308 回収容器
309 撹拌装置
309a 撹拌機
309b 撹拌羽根
310 支持体
311 駆動機構
312 減圧機構

Claims (10)

  1. セルロース微細繊維分散液の濃縮物を製造する方法であって、
    前記方法が、前記セルロース微細繊維分散液を脱液して前記濃縮物を得る濃縮工程を含み、
    前記セルロース微細繊維分散液中のセルロース微細繊維の平均繊維径が50~1000nmであり、
    前記濃縮工程において、前記セルロース微細繊維分散液を1.0kg-DS/h以上、45.0kg-DS/h未満の処理速度で連続的に脱液し、
    前記濃縮工程において、前記濃縮物の固形分率を10回サンプリングして測定したときに、前記固形分率の平均値が5質量%以上60質量%以下であり、且つ前記固形分率のCV値(標準偏差/平均値)0.001以上0.300以下である、
    方法。
  2. 周速0.01m/sec以上6.00m/secで撹拌されたセルロース微細繊維分散液を前記濃縮工程に供給する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記濃縮工程を、80℃以下で行う、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記セルロース微細繊維分散液中のセルロース微細繊維が、繊維長0.1mm未満の繊維を本数基準で70%以上含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記濃縮工程に供される前記セルロース微細繊維分散液において、不揮発成分の総含有率100質量%に対してセルロース微細繊維の含有率が75質量%以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記セルロース微細繊維分散液中のセルロース微細繊維が疎水性置換基で化学修飾されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記セルロース微細繊維分散液中のセルロース微細繊維がアセチル基で化学修飾されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記濃縮工程に供されるセルロース微細繊維がコットンリンターを原料とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 請求項1~8のいずれか一項に記載の方法でセルロース微細繊維分散液の濃縮物を生成する工程と、
    前記濃縮物を乾燥させてセルロース微細繊維乾燥体を生成する工程と、
    を含む、セルロース微細繊維乾燥体の製造方法。
  10. 請求項1~8のいずれか一項に記載の方法でセルロース微細繊維分散液の濃縮物を生成し、又は請求項9に記載の方法でセルロース微細繊維乾燥体を生成する工程と、
    前記セルロース微細繊維分散液の濃縮物又は前記セルロース微細繊維乾燥体を熱可塑性樹脂と混合して樹脂組成物を生成する工程と、
    を含む、樹脂組成物の製造方法。
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