JP6681499B1 - 化学修飾されたセルロース微細繊維、及び化学修飾されたセルロース微細繊維を含む高耐熱性樹脂複合体 - Google Patents
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Abstract
Description
[1] 重量平均分子量(Mw)が100000以上、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が6以下であり、アルカリ可溶分が12質量パーセント以下であり、結晶化度が60%以上である、化学修飾されたセルロース微細繊維。
[2] 熱分解開始温度(TD)が270℃以上であり、数平均繊維径が10nm以上、1μm未満である、上記態様1に記載の化学修飾されたセルロース微細繊維。
[3] エステル化セルロース微細繊維である、上記態様1又は2に記載の化学修飾されたセルロース微細繊維。
[4] 水酸基の平均置換度が0.5以上である、上記態様1〜3のいずれかに記載の化学修飾されたセルロース微細繊維。
[5] 前記化学修飾されたセルロース微細繊維の繊維全体の修飾度(DSt)に対する繊維表層の修飾度(DSs)の比であるDS不均一比(DSs/DSt)の変動係数(CV)が50%以下である、上記態様1〜4のいずれかに記載の化学修飾されたセルロース微細繊維。
[6] 化学修飾されたセルロース微細繊維の製造方法であって、
重量平均分子量(Mw)が100000以上、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が6以下であり、アルカリ可溶分が12質量パーセント以下であるセルロース原料を、非プロトン性溶媒を含む分散液中で解繊してセルロース微細繊維を得ることと、
修飾化剤を含む溶液を前記分散液に加えて前記セルロース微細繊維を修飾することにより、重量平均分子量(Mw)が100000以上、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が6以下であり、アルカリ可溶分が12質量パーセント以下であり、結晶化度が60%以上である、化学修飾されたセルロース微細繊維を得ることと、
を含む、方法。
[7] 化学修飾されたセルロース微細繊維の熱分解開始温度(TD)が270℃以上であり、数平均繊維径が10nm以上、1μm未満である、上記態様6に記載の方法。
[8] 前記非プロトン性溶媒がジメチルスルホキシドであり、かつ、前記修飾化剤が酢酸ビニル又は無水酢酸である、上記態様6又は7に記載の方法。
[9] 上記態様1〜5のいずれかに記載の化学修飾されたセルロース微細繊維0.5〜40質量%と、樹脂とを含む樹脂複合体。
[10] 前記化学修飾されたセルロース微細繊維が、分散安定剤と、前記分散安定剤中に分散された前記化学修飾されたセルロース微細繊維とを含む分散体の形態で前記樹脂複合体中に分散されており、前記分散体中の前記化学修飾されたセルロース微細繊維の含有率が10〜90質量%である、上記態様9に記載の樹脂複合体。
[11] 前記分散安定剤が、界面活性剤、及び沸点160℃以上の有機化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記態様10に記載の樹脂複合体。
[12] 前記樹脂が、熱可塑性樹脂である、上記態様9〜11のいずれかに記載の樹脂複合体。
[13] 上記態様9〜12のいずれかに記載の樹脂複合体を含む自動車用部材。
[14] 上記態様9〜12のいずれかに記載の樹脂複合体を含む家電用部材。
本実施形態の化学修飾微細繊維、及び樹脂複合体中の化学修飾微細繊維の重量平均分子量(Mw)は100000以上であり、より好ましくは200000以上である。重量平均分子量と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は6以下であり、好ましくは5.4以下である。重量平均分子量が大きいほどセルロース分子の末端基の数は少ないことを意味する。また、重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)は分子量分布の幅を表すものであることから、Mw/Mnが小さいほどセルロース分子の末端の数は少ないことを意味する。セルロース分子の末端は熱分解の起点となるため、セルロース微細繊維のセルロース分子の重量平均分子量が大きいだけでは十分な耐熱性が達成できず、重量平均分子量が大きいと同時に分子量分布の幅が狭い場合に高耐熱性のセルロース微細繊維、及びセルロース微細繊維と樹脂との樹脂複合体が得られる。化学修飾微細繊維の重量平均分子量(Mw)は、セルロース原料の入手容易性の観点から、例えば600000以下、又は500000以下であってよい。重量平均分子量と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、化学修飾微細繊維の製造容易性の観点から、例えば1.5以上、又は2以上であってよい。Mwは、目的に応じたMwを有するセルロース原料を選択すること、セルロース原料に対して物理的処理及び/又は化学的処理を適度な範囲で適切に行うこと、等によって上記範囲に制御できる。Mw/Mnもまた、目的に応じたMw/Mnを有するセルロース原料を選択すること、セルロース原料に対して物理的処理及び/又は化学的処理を適度な範囲で適切に行うこと、等によって上記範囲に制御できる。Mwの制御、及びMw/Mnの制御の両者において、上記物理的処理としては、マイクロフリュイダイザー、ボールミル、ディスクミル等の乾式粉砕若しくは湿式粉砕、擂潰機、ホモミキサー、高圧ホモジナイザー、超音波装置等による衝撃、せん断、ずり、摩擦等の機械的な力を加える物理的処理を例示でき、上記化学的処理としては、蒸解、漂白、酸処理、再生セルロース化等を例示できる。
アルカリ可溶分は、非特許文献(木質科学実験マニュアル、日本木材学会編、92〜97頁、2000年)に記載の手法より求めることができ、ホロセルロース含有率(Wise法)からαセルロース含有率を差し引くことで求められる。なお、化学修飾微細繊維のアルカリ可溶分は、通常、化学修飾微細繊維の製造に使用したセルロース原料のアルカリ可溶分とほぼ同様である(すなわち、化学修飾の通常の条件(典型的には弱酸性〜中性のpH)下ではアルカリ可溶分の選択的な除去は実質的に生じないと考えてよい。一態様において、セルロース原料のアルカリ可溶分の値を化学修飾微細繊維中のアルカリ可溶分の値とみなしてよい。
結晶化度(%)=[I(200)−I(amorphous)]/I(200)×100
I(200):セルロースI型結晶における200面(2θ=22.5°)による回折ピーク強度
I(amorphous):セルロースI型結晶におけるアモルファスによるハローピーク強度であって、200面の回折角度より4.5°低角度側(2θ=18.0°)のピーク強度
結晶化度(%) =h1 /h0 ×100
R1−C(=O)−X (1)
(式中、R1は炭素数1〜24のアルキル基、炭素数1〜24のアルキレン基、炭素数3〜24のシクロアルキル基、又は炭素数6〜24のアリール基を表し、XはCl、Br又はIである。)
酸ハロゲン化物の具体例としては、塩化アセチル、臭化アセチル、ヨウ化アセチル、塩化プロピオニル、臭化プロピオニル、ヨウ化プロピオニル、塩化ブチリル、臭化ブチリル、ヨウ化ブチリル、塩化ベンゾイル、臭化ベンゾイル、ヨウ化ベンゾイル等が挙げられるが、これらに限定されない。中でも、酸塩化物は反応性と取り扱い性の点から好適に採用できる。尚、酸ハロゲン化物の反応においては、触媒として働くと同時に副生物である酸性物質を中和する目的で、アルカリ性化合物を1種又は2種以上添加してもよい。アルカリ性化合物としては、具体的には:トリエチルアミン、トリメチルアミン等の3級アミン化合物;及びピリジン、ジメチルアミノピリジン等の含窒素芳香族化合物;が挙げられるが、これに限定されない。
酢酸、プロピオン酸、(イソ)酪酸、吉草酸等の飽和脂肪族モノカルボン酸無水物;
(メタ)アクリル酸、オレイン酸等の不飽和脂肪族モノカルボン酸無水物;
シクロヘキサンカルボン酸、テトラヒドロ安息香酸等の脂環族モノカルボン酸無水物;
安息香酸、4−メチル安息香酸等の芳香族モノカルボン酸無水物;二塩基カルボン酸無水物として、例えば、無水コハク酸、アジピン酸等の無水飽和脂肪族ジカルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の無水不飽和脂肪族ジカルボン酸無水物、無水1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸等の無水脂環族ジカルボン酸、及び、無水フタル酸、無水ナフタル酸等の無水芳香族ジカルボン酸無水物等;3塩基以上の多塩基カルボン酸無水物類として、例えば、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の(無水)ポリカルボン酸等が挙げられる。尚、酸無水物の反応においては、触媒として、硫酸、塩酸、燐酸等の酸性化合物、又は金属塩化物、金属トリフラート等のルイス酸、又はトリエチルアミン、ピリジン等のアルカリ性化合物を1種又は2種以上添加してもよい。
R−COO−CH=CH2 …式(1)
{式中、Rは、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数1〜24のアルキレン基、炭素数3〜16のシクロアルキル基、又は炭素数6〜24のアリール基のいずれかである。}で表されるカルボン酸ビニルエステルが好ましい。カルボン酸ビニルエステルは、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニルアジピン酸ジビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、安息香酸ビニル、及び桂皮酸ビニルからなる群より選択された少なくとも1種であることがより好ましい。カルボン酸ビニルエステルによるエステル化反応のとき、触媒として、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、1〜3級アミン、4級アンモニウム塩、イミダゾール及びその誘導体、ピリジン及びその誘導体、並びにアルコキシドからなる群より選ばれる1種又は2種以上を添加しても良い。
装置:JASCO社製 FT/IR−6200
積算回数:64回、
波数分解能:4cm-1、
測定波数範囲:4000〜600cm-1、
ATR結晶:ダイヤモンド、
入射角度:45°
DS=4.13×IRインデックス
具体的には、図2を参照し、セルロース骨格鎖C−Oの吸収バンドである1030cm-1のピーク強度については、820cm-1付近と1530cm-1付近の他のピークがない位置を直線で結んだベースラインを引き、1030cm-1におけるベースラインの高さを1030cm-1のピーク高さから差し引いた値を読み取るものとした。化学修飾基に基づく吸収バンドである1730cm-1のピーク強度については、1550cm-1付近と1850cm-1付近の他のピークがない位置を直線で結んだベースラインを引き、1730cm-1におけるベースラインの高さを1030cm-1のピーク高さから差し引いた値を読み取るものとした。
DS不均一比の変動係数は、例えば、これに限定されないが、原料セルロースを解繊及び化学修飾して化学修飾微細繊維を製造する際に、まず解繊を行い、次いで化学修飾を行う方法等によって低減され得る。解繊、化学修飾をこの順で行う方法のより詳細な例については後述する。
DS不均一比 = DSs/DSt
変動係数(%)= 標準偏差σ / 算術平均μ × 100
DSt=(Inf)×6/(Inp)
たとえば修飾基がアセチル基の場合、−CH3に帰属される23ppmのシグナルを用いれば良い。
装置:Bruker BioSin Avance500WB
周波数 :125.77MHz
測定方法 :DD/MAS法
待ち時間 :75sec
NMR試料管 :4mmφ
積算回数 :640回(約14Hr)
MAS :14,500Hz
化学シフト基準:グリシン(外部基準:176.03ppm)
DSs=(Ixf)×5/(Ixp)
たとえば、修飾基がアセチル基の場合、C1sスペクトルを285eV、286eV,288eV,289eVでピーク分離を行った後、Ixpには289evのピークを、Ixfにはアセチル基のO−C=O結合由来のピーク(286eV)を用いれば良い。
装置 :アルバックファイVersaProbeII
励起源 :mono.AlKα 15kV×3.33mA
分析サイズ :約200μmφ
光電子取出角 :45°
取込領域 Narrow scan:C 1s、O 1s
Pass Energy:23.5eV
セルロース純度は非特許文献(木質科学実験マニュアル、日本木材学会編、92〜97頁、2000年)に記載のαセルロース含有率測定法より求めることができる。
セルロースII型結晶の原料については、前記αセルロース含有率測定法を使用すると低めのセルロース純度を示すことがある(元来、αセルロース含有率測定法はセルロースI型結晶の原料、例えば木材、の分析に開発された手法のため)。しかし、セルロースII型結晶の原料はセルロースI型結晶を原料にして加工・製造された製品(例えば、ビスコースレーヨン、キュプラ、リヨセル、マーセル化セルロース等)であるため、元来セルロース純度は高い。したがって、セルロースII型結晶の原料についてはセルロース純度が85質量%未満であっても、本発明の微細セルロース繊維の原料として好ましい。
次に、本実施形態の化学修飾微細繊維と、樹脂とを含む樹脂複合体における化学修飾微細繊維以外の成分の例について説明する。
界面活性剤は、陰イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、両性イオン系界面活性剤、及び陽イオン系界面活性剤のいずれも使用することができるが、セルロースとの親和性の点で、陰イオン系界面活性剤、及び非イオン系界面活性剤が好ましく、非イオン系界面活性剤がより好ましい。
これらの中でも、特にロジンエステル型、及び硬化ひまし油型がより好ましい。
本実施形態の化学修飾微細繊維を含有する樹脂複合体は、力学的特性において、貯蔵弾性率といった剛性、及び衝撃試験等の動的特性がバランス良く向上されたものである。
これらポリアミド系樹脂の中でも、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6,11、ポリアミド6,12等の脂肪族ポリアミド、及び、ポリアミド6,C、ポリアミド2M5,C等の脂環式ポリアミドがより好ましい。
更により好ましくは、ポリアミド6、及びポリアミド6,6が挙げられ、ポリアミド6,6が最も好ましい。
化学修飾微細繊維は、化学修飾処理により、樹脂中での分散性が促進されている。
タンクサイズ35Lの回転式ホモジナイジングミキサーKAPPA VITA(登録商標)に、リンターパルプ0.5kg、ジメチルスルホキサイド(DMSO)9.5kgを仕込み、回転数6000rpm、周速度29m/s、常温で4時間運転を行い、パルプを解繊した(解繊工程)。続いて、重曹0.16kg、酢酸ビニル1.05kgを添加し、回転数6000rpm、周速度29m/s、60℃で2時間運転を行った(解繊・修飾工程)。得られた解繊修飾スラリーに純水10Lを加えて十分に撹拌した後、脱水機に入れて濃縮した。得られたウェットケーキを再度10Lの純水に分散、撹拌、濃縮する洗浄操作を合計5回繰り返すことで、未反応試薬溶媒等を除去し、最終的に得られた化学修飾微細繊維1(数平均繊維径:88nm)の水分散体(固形分率:10質量%)を得た。
図3は、化学修飾微細繊維1の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す図である。SEM画像は、日本電子社製JSM−6700Fを用い、加速電圧5kV、倍率10000倍(図3の視野サイズは縦9μm×横12μmである)、WD7.1mmの撮影条件で得た。
実施例1のリンターパルプに代わり、高純度木材パルプを原材料とした以外は実施例1と同様に作製し、化学修飾微細繊維2(数平均繊維径:65nm)を得た。
実施例1のリンターパルプに代わり、精製リンターパルプを原材料として、タンクサイズ35Lの回転式ホモジナイジングミキサーKAPPA VITA(登録商標)に、精製リンターパルプ0.5kg、DMSO9.5kgを仕込み、回転数6000rpm、周速度29m/s、常温で4時間運転を行い、パルプを解繊した(解繊工程)。続いて、重曹0.16kg、酢酸ビニル1.05kgを添加し、回転数2500rpm、周速度12m/s、60℃で2時間運転を行った(修飾工程)。得られた解繊修飾スラリーに純水10Lを加えて十分に撹拌した後、脱水機に入れて濃縮した。得られたウェットケーキを再度10Lの純水に分散、撹拌、濃縮する洗浄操作を合計5回繰り返すことで、未反応試薬溶媒等を除去し、最終的に得られた化学修飾微細繊維3(数平均繊維径:80nm)の水分散体(固形分率:10質量%)を得た。
リンターパルプ210gを化学修飾微細繊維の原料とし、一軸撹拌機(アイメックス社製 DKV−1 φ125mmディゾルバー)を用いジメチルスルホキサイド(DMSO)5kg中で500rpmにて1時間、常温で攪拌した。続いて、ホースポンプでビーズミル(アイメックス社製 NVM−1.5)にフィードし、DMSOのみで2時間循環運転させ、解繊スラリー5.2kgを得た(解繊工程)。循環運転の際、ビーズミルの回転数は2500rpm、周速12m/sとし、用いたビーズはジルコニア製で、Φ2.0mm、充填率70%とした(ビーズミルのスリット隙間は0.6mmとした)。また、循環運転の際は、摩擦による発熱を吸収するためにチラーによりスラリー温度を40℃に温度管理した。つづいて、得られた解繊スラリーを防爆型ディスパーザータンクに投入した後、酢酸ビニル(VA)572g、炭酸水素ナトリウム85gを加え、タンク内温度を40℃とし、2時間撹拌を行った(修飾工程)。得られたスラリーを10Lの純水中に分散、撹拌した後、脱水機で濃縮した。得られたウェットケーキを再度10Lの純水に分散、撹拌、濃縮する洗浄操作を合計5回繰り返すことで、未反応試薬溶媒等を除去して化学修飾微細繊維4(数平均繊維径:140nm)を得た。
実施例1のリンターパルプに代わり、ろ紙を原材料とした以外は実施例1と同様に作製し、化学修飾微細繊維5(数平均繊維径:79nm)を得た。
実施例3のリンターパルプに代わり、別の精製リンターパルプを原材料とした以外は実施例3と同様に作製し、化学修飾微細繊維6(数平均繊維径:66nm)を得た。
実施例1のリンターパルプに代わり、木材パルプを原材料とした以外は実施例1と同様に作製し、化学修飾微細繊維7(数平均繊維径:58nm)を得た。
実施例1のリンターパルプに代わり、アバカを原材料とした以外は実施例1と同様に作製し、化学修飾微細繊維8(数平均繊維径:73nm)を得た。
実施例3の精製リンターパルプとは別の精製リンターパルプを用いた以外は実施例3と同様にして作製し、化学修飾微細繊維9(数平均繊維径:84nm)を得た。
実施例4記載の、ビーズミルをフィード後、DMSOのみで循環運転する時間を2時間から8時間にした以外は実施例4と同様にして作製し、化学修飾微細繊維10(数平均繊維径:64nm)を得た。
N,N−ジメチルアセトアミド300mlに、ろ紙50gと、イオン液体として塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム300gを加え、攪拌した。次に、無水酢酸270gを加え、反応させた後、ろ過し、固形分を水で洗浄した。これを高圧ホモジナイザーで処理することにより、化学修飾微細繊維11(数平均繊維径:44nm)を得た。
化学修飾していないセルロース微細繊維として、ダイセル社(株)製のセリッシュKY−100G(数平均繊維径:75nm)を用意した。
得られた化学修飾微細繊維1を2質量部(スラリー中の固形分量として、以下同様。)、樹脂1としてナイロン66樹脂(以下、単に、PA66と称す)(ユニチカ社製 A226)を98質量部加え、小型混練機(Xplore instruments社製、製品名「Xplore」)を用いて、260℃、100rpm(シアレート1570(1/s))で5分間循環混練後に、ダイスを経てφ1mmの複合樹脂組成物のストランドを得た。当該ストランドから得られた樹脂複合体ペレット(前記ストランドを1cm長さにカットしたもの)を、付属の射出成形機にて260℃で溶融し、JIS K7127規格のダンベル状試験片を作製し、評価に用いた。得られたダンベル状試験片の各形体とした樹脂複合体1を用いて適宜各評価を行った。
化学修飾微細繊維1の量を10質量部、PA66の量を90質量部に変更した以外は、実施例1と同様に、樹脂複合体2を得た。
実施例7のPA66を樹脂2としてPA6(宇部興産製 1013B)(以下、単にPA6と称す)に変更し、小型混練機での混練温度と射出成形機の成形温度を250℃に変更した以外は、実施例2と同様に、樹脂複合体3を得た。
実施例7のPA66を樹脂3としてポリプロピレン樹脂(プライムポリマー社製 プライムポリプロ J105G)(以下、単にPPと称す)とし96質量部に、更に小型混練機での混練温度と射出成形機の成形温度を160℃に変更した以外は、実施例7と同様にダンベル状試験片の各形体とした樹脂複合体4を得た。
実施例7において、化学修飾微細繊維1の乾燥前の水分散体(固形分率:9質量%)における化学修飾微細繊維1の7質量部相当量に対して、分散安定剤としてポリオキシエチレン硬化ひまし油エーテル(青木油脂工業株式会社製 ブラウノンRCW−20(以下、単にRCW−20と称す)の3質量部を加えて前述の公転・自転方式の攪拌機を用いて30℃で30分間混練した後に約40℃で真空乾燥させることにより得られた、化学修飾微細繊維1とポリオキシエチレン硬化ひまし油エーテルとの混合固体(14質量部)(分散体として)、及びPA6の86質量部を用いて、実施例7と同様に、ダンベル状試験片の各形体とした樹脂複合体5を得た。
実施例7において、化学修飾微細繊維1の乾燥前の水分散体(固形分率:9質量%)における化学修飾微細繊維1の7質量部相当量に対して、セルロースウィスカー(旭化成製,SC900)の2質量部、分散安定剤としてポリオキシエチレン硬化ひまし油エーテル(青木油脂工業株式会社製 ブラウノンRCW−20(以下、単にRCW−20と称す)の3質量部を加えて前述の公転・自転方式の攪拌機を用いて30℃で30分間混練した後に約40℃で真空乾燥させることにより得られた、化学修飾微細繊維1とセルロースウィスカーとポリオキシエチレン硬化ひまし油エーテルとの混合固体(17.1質量部)(分散体として)、及びPA6の82.9質量部を用いて、実施例7と同様に、ダンベル状試験片の各形体とした樹脂複合体6を得た。
化学修飾微細繊維1を微細繊維1に変更した以外は、実施例9と同様にして作製し、樹脂複合体6を得た。樹脂複合体7は褐色に変色していた。
化学修飾微細繊維1を化学修飾微細繊維7に変更した以外は、実施例9と同様にして作製し、樹脂複合体8を得た。樹脂複合体8は褐色に変色していた。
化学修飾微細繊維1を化学修飾微細繊維9に変更した以外は、実施例9と同様にして作製し、樹脂複合体9を得た。樹脂複合体9はやや褐色に変色していた。
実施例1〜6、及び比較例1〜6について、下記の項目について評価した結果を以下の表1に示す。
実施例1〜6、比較例1〜6の化学修飾微細繊維又は微細繊維は、多孔質シートを測定サンプルとして評価を行った。多孔質サンプルの作製は次の通りに行った。
まず、実施例1〜6、比較例1〜6の化学修飾微細繊維又は微細繊維の水分散体を遠心分離して濃縮物を得た(固形分率5質量%以上)。続いて、化学修飾微細繊維又は微細繊維0.5gを含む該濃縮物を濃度が0.2質量%となるように該濃縮物をtert−ブタノール中に分散させ、さらに超音波分散等で凝集物が無い状態まで分散処理を行った。得られたtert−ブタノール分散液100gをろ紙(5C,アドバンテック,直径90mm)上で濾過し、150℃にて乾燥させた後、ろ紙を剥離してシートを得た。シートを得た。このシートの透気抵抗度がシート目付10g/m2あたり100sec/100ml以下のものを多孔質シートとし、測定サンプルとして使用した。
シート目付10g/m2あたりの透気抵抗度(sec/100ml)について、23℃、50%RHの環境で1日静置したサンプルの目付W(g/m2)を測定した後、王研式透気抵抗試験機(旭精工(株)製、型式EG01)を用いて透気抵抗度R(sec/100ml)を測定した。この時、下記式に従い、10g/m2目付あたりの値を算出した。
目付10g/m2あたり透気抵抗度(sec/100ml)=R/W×10
まず、多孔質シートの表面の無作為に選んだ3箇所を、走査型電子顕微鏡(SEM)により、微細繊維の繊維径に応じて10000〜100000倍相当の倍率で観察した。得られた3つのSEM画像の各々において、画面に対しヨコ方向とタテ方向にラインを引き、ラインに交差する繊維の本数と、各繊維の繊維径とを拡大画像から実測して、1つの画像につきタテヨコ2系列の数平均繊維径を算出した。上記数平均繊維径の3画像での数平均を、対象とする試料の平均繊維径とした。
実施例1〜6、比較例1〜6の化学修飾微細繊維又は微細繊維の多孔質シートを0.88g秤量し、ハサミで小片に切り刻んだ後、軽く攪拌したうえで、純水20mLを加え1日放置した。次に遠心分離によって水と固形分を分離した。続いてアセトン20mLを加え、軽く攪拌したうえで1日放置した。次に遠心分離によってアセトンと固形分を分離した。続いてN、N−ジメチルアセトアミド20mLを加え、軽く攪拌したうえで1日放置した。再度、遠心分離によってN、N−ジメチルアセトアミドと固形分を分離したのち、N,N−ジメチルアセトアミド20mLを加え、軽く攪拌したうえで1日放置した。遠心分離によってN,N−ジメチルアセトアミドと固形分を分離し、固形分に塩化リチウムが8質量パーセントになるように調液したN,N−ジメチルアセトアミド溶液を19.2g加え、スターラーで攪拌し、目視で溶解するのを確認した。セルロースを溶解させた溶液を0.45μmフィルターでろ過し、ろ液をゲルパーミエーションクロマトグラフィ用の試料として供した。用いた装置と測定条件は下記である。
装置 :東ソー社 HLC−8120
カラム:TSKgel SuperAWM−H(6.0mmI.D.×15cm)×2本
検出器:RI検出器
溶離液:N、N−ジメチルアセトアミド(塩化リチウム0.2%)
流速:0.6mL/分
検量線:プルラン換算
アルカリ可溶分は非特許文献(木質科学実験マニュアル、日本木材学会編、92〜97頁、2000年)に記載の手法より求め、ホロセルロース含有率(Wise法)からαセルロース含有率を差し引くことで求めた。
比表面積・細孔分布測定装置(Nova−4200e, カンタクローム・インスツルメンツ社製)にて、多孔質シート試料約0.2gを真空下で120℃、2時間乾燥させた後、液体窒素の沸点における窒素ガスの吸着量を相対蒸気圧(P/P0)が0.05以上0.2以下の範囲にて5点測定した後(多点法)、同装置プログラムによりBET比表面積(m2/g)を算出した。
多孔質シートのX線回折測定を行い、下記式より結晶化度を算出した。
結晶化度(%)=[I(200)−I(amorphous)]/I(200)×100
I(200):セルロースI型結晶における200面(2θ=22.5°)による回折ピーク強度
I(amorphous):セルロースI型結晶におけるアモルファスによるハローピーク強度であって、200面の回折角度より4.5°低角度側(2θ=18.0°)のピーク強度
用いた装置と測定条件は下記である。
装置:MiniFlex(株式会社リガク製)
操作軸:2θ/θ
線源:CuKα
測定方法:連続式
電圧:40kV
電流:15mA
開始角度:2θ=5°
終了角度:2θ=30°
サンプリング幅:0.020°
スキャン速度:2.0°/min
サンプル:試料ホルダー上に多孔質シートを貼り付け
化学修飾微細繊維の水分散体(固形分率10質量%)を100g採取し、10gずつ凍結粉砕を行って粉末サンプルを10個作製した。粉末サンプル質量は、1g/個であった。10個の粉末サンプルについて13C固体NMR及びXPS測定を行い、それぞれDSt及びDSsを求め、各粉末サンプルのDS不均一比を算出した。そして、得られた10個のDS不均一比の標準偏差(σ)及び算術平均(μ)より変動係数を算出した。
DS不均一比 = DSs/DSt
変動係数(%)= 標準偏差σ / 算術平均μ × 100
DSt=(Inf)×6/(Inp)
用いた装置と測定条件は下記である。
装置:Bruker Biospin Avance500WB
周波数:125.77MHz
測定方法:DD/MAS法
待ち時間:75sec
NMR試料管:4mmφ
積算回数:640回(約14Hr)
MAS:14,500Hz
化学シフト基準:グリシン(外部基準:176.03ppm)
DSs=(Ixf)×5/(Ixp)
用いたXPS測定の条件は以下の通りである。
使用機器 :アルバックファイVersaProbeII
励起源 :mono.AlKα 15kV×3.33mA
分析サイズ :約200μmφ
光電子取出角 :45°
取込領域:Narrow scan:C 1s、O 1s
Pass Energy:23.5eV
多孔質シートの熱分析を以下の測定法にて評価した。
装置:SII社製 EXSTAR6000
サンプル:多孔質シートから円形に切り抜いたものをアルミ試料パン中に10mg分重ねて入れた。
サンプル量:10mg
測定条件:窒素フロー100ml/min中で、室温から150℃まで昇温速度:10℃/minで昇温し、150℃で1時間保持した後、30℃になるまで冷却した。つづいて、そのまま30℃から450℃まで昇温速度:10℃/minで昇温した。
TD算出方法:横軸が温度、縦軸が重量残存率%のグラフから求めた。化学修飾微細繊維の150℃(水分がほぼ除去された状態)での重量(重量減少量0wt%)を起点としてさらに昇温を続け、1wt%重量減少時の温度と2wt%重量減少時の温度とを通る直線を得た。この直線と、重量減少量0wt%の起点を通る水平線(ベースライン)とが交わる点の温度を熱分解開始温度(TD)とした。
1wt%重量減少温度算出方法:前記TD算出時に用いた1wt%重量減少時の温度を1wt%重量減少温度とした。
装置:SII社製 EXSTAR6000
サンプル:多孔質シートから円形に切り抜いたものをアルミ試料パン中に10mg分重ねて入れた。
サンプル量:10mg
測定条件:窒素フロー100ml/min中で、室温から150℃まで昇温速度:10℃/minで昇温し、150℃で1時間保持した後、150℃から250℃まで昇温速度:10℃/minで昇温し、そのまま250℃で2時間保持した。
250℃重量変化率算出方法:250℃に到達した時点での重量W0を起点として、2時間250℃で保持した後の重量をW1とし、下記式より求めた。
250℃重量変化率(%):(W1−W0)/W0×100
多孔質シートをオーブンに入れ、150℃、大気下で3000時間運転を行い、熱エージングを行った。熱エージング前、熱エージング後それぞれの多孔質シートの黄変度合いをYI測定によって評価した。YI測定はコニカミノルタ社の分校測色計CM−700dを用い、反射型(SCI+SCE)、測定径3mmの条件で測定を行い、任意の5カ所のYIの平均値を求めた。熱エージング後のYIから熱エージング前のYIを減算し、ΔYIを得た。
多孔質シートをオーブンに入れ、150℃、大気下で3000時間運転を行い、熱エージングを行った。熱エージング後の試料から幅1cm、長さ3cmの短冊状試料を切り出し、ピンセットで破断するまで引っ張った。引っ張った際に手に抵抗を感じて破断したものはシート強度が〇、引っ張った際に手に抵抗を感じずに破断したものはシート強度が△、引っ張った際にピンセットでつかんだ位置で試料が崩壊してしまうものをシート強度が×、とした。
実施例7〜12、及び比較例7〜9について、下記の項目について評価した結果を以下の表2に示す。
得られた樹脂複合体のダンベルを測定サンプルとした。貯蔵弾性率測定に用いた装置と測定条件は下記である。
装置:GABO社エプレクサー
測定モード:引張
周波数:10Hz
温度範囲:−130℃〜150℃
昇温速度:3℃/分
測定雰囲気:窒素
貯蔵弾性率変化は、下記式に従って算出した。
貯蔵弾性率変化=低温時の貯蔵弾性率/高温時の貯蔵弾性率
PA66、PA6については高温/低温の温度は150℃/0℃とし、PPについては100℃/−50℃とした。
一般に貯蔵弾性率は高温になるほど小さくなるため、貯蔵弾性率変化は1以上となる。この値が1に近いほど、高温での貯蔵弾性率変化が小さく、耐熱性が高いといえる。
混練後樹脂複合化後に得られたサンプルの外観について、明らかに褐色なものを×、変色が見られないものを○、やや褐色になっているものを△とした。
樹脂複合体1〜9を3mm幅×25mm長に切断し、測定サンプルとした。SII製TMA6100型装置を用いて、引っ張りモードでチャック間10mm、荷重5g、窒素雰囲気下、室温から120℃まで5℃/min.で昇温した後、25℃まで5℃/min.で降温し、再び25℃から120℃まで5℃/min.で昇温した。この際、2度目の昇温時における0℃〜60℃の間の平均の線熱膨張率を測定した。
Claims (13)
- 重量平均分子量(Mw)が100000以上、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が6以下であり、アルカリ可溶分が12質量パーセント以下であり、セルロースI型の結晶化度が60%以上である、化学修飾されたセルロース微細繊維。
- 熱分解開始温度(TD)が270℃以上であり、数平均繊維径が10nm以上、1μm未満である、請求項1に記載の化学修飾されたセルロース微細繊維。
- エステル化セルロース微細繊維である、請求項1又は2に記載の化学修飾されたセルロース微細繊維。
- 水酸基の平均置換度が0.5以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化学修飾されたセルロース微細繊維。
- 化学修飾されたセルロース微細繊維の製造方法であって、
重量平均分子量(Mw)が100000以上、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が6以下であり、アルカリ可溶分が12質量パーセント以下であるセルロース原料を、非プロトン性溶媒を含む分散液中で解繊してセルロース微細繊維を得ることと、
修飾化剤を含む溶液を前記分散液に加えて前記セルロース微細繊維を修飾することにより、重量平均分子量(Mw)が100000以上、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が6以下であり、アルカリ可溶分が12質量パーセント以下であり、セルロースI型の結晶化度が60%以上である、化学修飾されたセルロース微細繊維を得ることと、
を含む、方法。 - 化学修飾されたセルロース微細繊維の熱分解開始温度(TD)が270℃以上であり、数平均繊維径が10nm以上、1μm未満である、請求項5に記載の方法。
- 前記非プロトン性溶媒がジメチルスルホキシドであり、かつ、前記修飾化剤が酢酸ビニル又は無水酢酸である、請求項5又は6に記載の方法。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載の化学修飾されたセルロース微細繊維0.5〜40質量%と、樹脂とを含む樹脂複合体。
- 前記化学修飾されたセルロース微細繊維が、分散安定剤と、前記分散安定剤中に分散された前記化学修飾されたセルロース微細繊維とを含む分散体の形態で前記樹脂複合体中に分散されており、前記分散体中の前記化学修飾されたセルロース微細繊維の含有率が10〜90質量%である、請求項8に記載の樹脂複合体。
- 前記分散安定剤が、界面活性剤、及び沸点160℃以上の有機化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項9に記載の樹脂複合体。
- 前記樹脂が、熱可塑性樹脂である、請求項8〜10のいずれか一項に記載の樹脂複合体。
- 請求項8〜11のいずれか一項に記載の樹脂複合体を含む自動車用部材。
- 請求項8〜11のいずれか一項に記載の樹脂複合体を含む家電用部材。
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