JP6678698B2 - 微細セルロース含有樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、部分的に加水分解された構造を有する微細セルロースを含んでなる樹脂組成物に関し、特に、良好な摺動特性を有する成形体を与え得る樹脂組成物に関する。
熱可塑性樹脂は、軽く、加工特性に優れるため、自動車部材、電気・電子部材、事務機器ハウジング、精密部品等の多方面に広く使用されている。しかしながら、樹脂単体では、機械特性、摺動性、熱安定性、寸法安定性等が不十分である場合が多く、樹脂と各種無機材料をコンポジットしたものが一般的に用いられている。
熱可塑性樹脂をガラス繊維、炭素繊維、タルク、クレイなどの無機充填剤である強化材料で強化した樹脂組成物は、比重が高いため、得られる樹脂成形体の重量が大きくなるという課題がある。
そこで近年、樹脂の新たな強化材料として、環境負荷の低いセルロースが用いられるようになってきている。
セルロースは、その単体特性として、アラミド繊維に匹敵する高い弾性率と、ガラス繊維よりも低い線膨張係数を有することが知られている。また、真密度が1.56g/cm3と低く、一般的な熱可塑性樹脂の補強材として使用されるガラス(密度2.4〜2.6g/cm3)やタルク(密度2.7g/cm3)と比較し圧倒的に軽い材料である。
セルロースは、樹木を原料とするもののほか、麻・綿花・ケナフ・キャッサバ等を原料とするものなど多岐にわたっている。さらには、ナタデココに代表されるようなバクテリアセルロースなども知られている。これら原料となる天然資源は地球上に大量に存在し、この有効利用のために、樹脂中にセルロースをフィラーとして活用する技術が注目を浴びている。
セルロースが有する特性を十分に発揮させるためには、熱可塑性樹脂中に微細かつ均一な分散状態を作り出す必要がある。天然資源から得られるセルロースは、ヘミセルロースやリグニンと物理的及び/又は化学的に結合して、強固な細胞壁を形成しているため、微細なフィラーとして利用するにはセルロース繊維を解して微細なセルロース繊維を取り出す工程が行われる。セルロース繊維を1ミクロン未満のナノメートルオーダーまで解繊したものはCNF(セルロースナノファイバー)と呼ばれ、植物由来の天然資源に対して蒸解、精選、漂白などの前処理を行って得られるパルプ等を原料に、高圧ホモジナイザー処理、マイクロフリュイダイザー処理、水中対向衝突、ボールミルやディスクミル処理といった機械的解繊法や、TEMPO酸化、硫酸エステル化などの化学的処理によって低エネルギーで解繊する方法により得られるものであり、水中において微細なナノ分散と呼ばれるレベルの高度の分散状態やネットワークを形成していることが知られている。
汎用的に用いられる熱可塑性樹脂とセルロースは、表面自由エネルギーの違いから親和性に乏しい場合が多く、CNFと熱可塑性樹脂の界面密着性が低いため、その特性を十分に発揮できないことが多い。これに対して、セルロースの表面状態を改質するために化学修飾した変性セルロースナノファイバーを用いる方法が知られている(特許文献1)。
特開2017−171698号公報
しかし、水中に分散したセルロースナノファイバーを化学修飾するためには、溶媒置換処理が必要である。溶媒置換処理は、セルロースナノファイバー製造に要するコストのみならず、副生する廃棄物、及び消費エネルギーを増大させ、環境負荷が低いというセルロースの利点を小さくしてしまう。
また、イオン化変性したセルロースナノファイバーに、水中で対イオン性の添加剤を吸着させて変性セルロースナノファイバーを得る方法も知られているが、イオン化変性したセルロースでは耐熱性が低下しているため、セルロースナノファイバーは、高温で樹脂と混練される過程で熱分解を起こして本来の補強効果を発揮できず、不安定な品質、装置トラブル等の原因となる場合があった。
本発明は、上述した従来技術の課題を解決し、樹脂との界面密着性が良好で、化学修飾プロセスによる環境負荷及び物性低下の問題が低減されたCNFフィラーを用いており、耐摩耗性及び耐久性に優れる樹脂コンポジットを与えることができる、樹脂組成物、及びその成形体である樹脂コンポジットを提供することを目的とする。
本発明者は、前記課題を解決するため、鋭意検討を進めた結果、部分加水分解されたセルロースを含み、さらに特定の化合物を含む樹脂組成物が前記課題を解決できることを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は以下の態様を包含する。
[1] 部分加水分解された微細セルロース(A)、及び熱可塑性樹脂(B)を含む、樹脂組成物。
[2] さらにヘミセルロース(C)を含む、上記態様1に記載の樹脂組成物。
[3] 部分加水分解された微細セルロース(A)が、繊維長/繊維径のアスペクト比30以上の微細セルロース繊維である、上記態様1又は2に記載の樹脂組成物。
[4] 部分加水分解された微細セルロース(A)が、重合度450以上に相当するピークトップ分子量を有し、
部分加水分解された微細セルロース(A)において、前記ピークトップ分子量以下の分子量を有する低分子量成分の量をS1、前記ピークトップ分子量を超える分子量を有する高分子量成分の量をS2としたとき、S1/S2が1.00より大きい、上記態様1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5] 前記S1/S2が、1.00より大きく、3.00以下である、上記態様4に記載の樹脂組成物。
[6] 部分加水分解された微細セルロース(A)の平均繊維径が4〜3000nmである、上記態様1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7] 部分加水分解された微細セルロース(A)/熱可塑性樹脂(B)の質量比(A)/(B)が0.01〜1である、上記態様1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8] 前記樹脂組成物がヘミセルロース(C)を含み、ヘミセルロース(C)/部分加水分解された微細セルロース(A)の質量比(C)/(A)が0.001〜0.2である、上記態様1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9] 前記樹脂組成物がヘミセルロース(C)及びリグニン(D)を含み、リグニン(D)/ヘミセルロース(C)の質量比(D)/(C)が0.001〜10である、上記態様1〜8のいずれかに記載の樹脂組成物。
[10] 熱可塑性樹脂(B)がポリアミド系樹脂である、上記態様1〜9のいずれかに記載の樹脂組成物。
[11] 上記態様1〜10のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法であって、
微細セルロース及び/又は植物繊維を、水を含む状態かつ酸素濃度18体積%以下の雰囲気下で加熱することによって、部分加水分解された微細セルロース(A)を含む配合成分を得ること、及び
前記配合成分と前記熱可塑性樹脂(B)とを組合せること、
を含む、方法。
[12] 上記態様1〜10のいずれかに記載の樹脂組成物の成形体である、摺動性部材。
本発明によれば、樹脂との界面密着性が良好で、化学修飾プロセスによる環境負荷及び物性低下の問題が低減されたCNFフィラーを用いており、耐摩耗性及び耐久性に優れる樹脂コンポジットを与えることができる、樹脂組成物、及びその成形体である樹脂コンポジットが提供され得る。
以下、本発明を実施するための形態(以下「本実施形態」という)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
<樹脂組成物>
一態様において、樹脂組成物は、部分加水分解された微細セルロース(A)、及び熱可塑性樹脂(B)を含む。一態様において、樹脂組成物は、部分加水分解された微細セルロース(A)、熱可塑性樹脂(B)、及びヘミセルロース(C)を含む。
[(A)部分加水分解された微細セルロース]
部分加水分解された微細セルロース(A)は種々の原料に由来してよい。原料となるセルロースとしては、天然セルロース及び再生セルロースが挙げられる。
天然セルロースとしては、木材種(広葉樹又は針葉樹)から得られる木材パルプ、非木材種(竹、麻系繊維、バガス、ケナフ、リンター等)から得られる非木材パルプ、及びこれらの精製パルプ(精製リンター)等が使用できる。非木材パルプとしては、コットンリンターパルプを含むコットン由来パルプ、麻由来パルプ、バガス由来パルプ、ケナフ由来パルプ、竹由来パルプ、ワラ由来パルプ、バナナ由来パルプ等を使用できる。コットン由来パルプ、麻由来パルプ、バガス由来パルプ、ケナフ由来パルプ、竹由来パルプ、ワラ由来パルプ、及びバナナ由来パルプは各々、コットンリント、コットンリンター、麻系のアバカ(例えば、エクアドル産又はフィリピン産のもの)、サイザル、バガス、ケナフ、竹、ワラ、バナナ茎等の原料から、蒸解処理による脱リグニン等の精製工程、漂白工程等を経て得られる精製パルプであることが好ましい。この他、海藻由来のセルロースも使用できる。
再生セルロースとは、天然セルロースを溶解又は結晶膨潤(マーセル化)処理し再生して得られる物質であって、粒子線回折によって格子面間隔0.73nm、0.44nm及び0.40nmに相当する回折角を頂点とする結晶回折パターン(セルロースII型結晶)を与えるような分子配列を有するβ−1,4結合グルカン(グルコース重合体)を言う。再生セルロースは、X線回折パターンにおいて、2θの範囲を0°〜30°とするX線回折パターンが、10°≦2θ<19°に1つのピークと、19°≦2θ≦30°に2つのピークとを有する。再生セルロースとしては、例えば、レーヨン、キュプラ、テンセル等が挙げられる。再生セルロースからは100nmを超える繊維径の繊維を作り易いため、再生セルロースは、樹脂中での分散性の観点から好ましい場合がある。微細セルロースの原料としては、微細化のし易さの観点から、繊維軸方向への分子配向性の高いキュプラ及びテンセルが特に好ましい。さらに、再生セルロース繊維のカット糸、セルロース誘導体繊維のカット糸等も原料として使用できる。また、原料として天然セルロースと再生セルロースとを混合して用いても構わない。
一般にセルロース繊維は、規則的に配列した結晶構造部分と不規則なアモルファス構造部分とを含んでいることが知られている。通常は約40本のセルロース分子が分子間水素結合によって幅4〜5nm程度のミクロフィブリルを形成し、ミクロフィブリルが複数集まって幅が約15nm以上の束を形成している。この束がさらに集まって数十〜数百nmの繊維径を有している状態まで解繊されたものからミクロフィブリル相当まで解繊されたものがセルロースナノファイバーと呼ばれる。セルロース繊維は、解繊されることで表面積が増加し、樹脂とコンポジット化された場合の界面が増加することになるので、機械物性の向上効果(補強効果)が増大する。しかしながら、解繊がさらに進んだミクロフィブリルに近い微細セルロース繊維では、樹脂とのコンポジット化工程の加熱で表面からの分解が起き易くなる。部分加水分解された微細セルロース(A)の平均繊維径としては、4nm以上が好ましく、15nm以上がより好ましく、30nm以上がさらに好ましく、50nm以上が特に好ましい。一方、部分加水分解された微細セルロース(A)の平均繊維径が大きすぎると、補強効果が低くなるほか、樹脂コンポジットの表面粗さが増して意匠性が悪くなる場合があるため、平均繊維径としては、3000nm以下が好ましく、2000nm以下がより好ましく、1500nm以下がさらに好ましく、1000nm以下が特に好ましい。なお平均繊維径は、本開示の[実施例]の項に記載される方法で測定される値である。
セルロースの高弾性率や低線膨張係数といった特性は主として結晶構造部分に起因する。結晶構造部分のセルロース分子は互いに強固に水素結合しているため、加水分解され難いが、アモルファス部分は加水分解され易い。アモルファス部分のセルロース分子を酸加水分解によって切断し、重合度200〜300前後まで微細化した結晶セルロースにおいては、長さ/太さのアスペクト比が最大でも数十程度であり、セルロースナノウィスカーやセルロースナノクリスタルと呼称されている。このサイズまで微細化されると、樹脂とコンポジット化した場合に樹脂中でセルロースナノクリスタル同士の相互作用によるネットワークが形成され難いため、補強効果も発現し難くなる。また、このようなセルロースナノクリスタルでは、アスペクト比が大きいセルロースナノファイバーと比べて耐熱性が低い傾向がある。繊維表面積及び/又はセルロース分子末端数が多くなることで熱分解の起点が増えていると考えられる。
部分加水分解された微細セルロース(A)は、アモルファス部分の少なくとも一部が加水分解されるに留まり、低アスペクト比のセルロースナノクリスタルまでは分解されていないものである。部分加水分解された微細セルロース(A)の長さ/太さ(繊維長/繊維径)のアスペクト比は、好ましくは30以上、より好ましくは50以上、さらに好ましくは100以上である。原料として用いる微細セルロース、又は樹脂組成物から樹脂を溶解除去して回収された微細セルロースを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することで、上記好ましい範囲よりも低アスペクト比の微細セルロースの含有を確認できる。樹脂組成物中、このような低アスペクト比まで切断された微細セルロースは少ないことが好ましいが、本発明の樹脂組成物の所望の補強効果を発現できる範囲で存在しても構わない。なおアスペクト比は、本開示の[実施例]の項に記載される方法で測定される値である。
微細セルロースの局所的な分子構造を直接観察することは難しいが、マクロスケールの分析結果から、本発明の部分加水分解された微細セルロースの構造は次のように考えられる。セルロースを、例えば、水の存在下、中性〜弱い酸性条件で加熱すること等によって加水分解すると、アモルファス部分の少なくとも一部が加水分解される一方、結晶構造は実質的に維持された、部分加水分解されたセルロースを得ることができる。このような部分加水分解セルロースは、分子量分布を測定したときの低重合度のセルロースを多く含む一方、形態観察での低アスペクト比の微細セルロースはほとんど含まない。すなわち、部分加水分解されたセルロースでは、ミクロフィブリル又はミクロフィブリル束において、内層では加水分解が実質的に起きておらず、また表層の加水分解も一部に留まっているため、セルロースが高アスペクト比の微細セルロースとして存在し得る。
部分加水分解された微細セルロース(A)は、一般的にセルロースの分析に用いられる各種の方法で分析することができる。分子量分布の測定はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で行うことが好ましい。分子量分布は1つのピークを有するモノモーダルの場合、2つのピークを有するバイモーダルの場合、更に、まれに3つ以上のピークを有する場合があるが、ピークトップ分子量(すなわち、最大ピークの頂点の分子量)を基準として低分子量側と高分子量側に分ける。該ピークトップ分子量を、セルロースのモノマー構造である無水グルコースユニットの分子量162で除すると重合度に換算できる。このときピークトップ分子量に相当する重合度は300以上であることが好ましく、400以上であることがより好ましく、450以上であることがさらに好ましく、500以上であることが特に好ましい。ピークトップ分子量が上記重合度以上である場合、部分加水分解の過剰な進行が抑えられており、セルロースナノクリスタルと同等の低アスペクト比の微細セルロースの含有量が少なく、耐熱性が良好である。分子量測定において、ピークトップ分子量以下の分子量を有する低分子量成分の量(累積面積強度)をS1、ピークトップ分子量を超える分子量を有する高分子量成分の量(累積面積強度)をS2として、S1/S2比の下限は1.00超が好ましく、1.05以上がより好ましく、1.10以上がさらに好ましく、1.15以上がよりさらに好ましく、1.20以上が特に好ましい。S1/S2がこれらの比以上のとき、部分加水分解された微細セルロース(A)によって樹脂コンポジットの良好な引張強度、摩擦係数、及び摩耗深さが得られる。S1/S2比の上限は3.00以下が好ましく、2.50以下がより好ましく、2.00以下がさらに好ましく、1.90以下がよりさらに好ましく、1.80以下が特に好ましい。S1/S2がこれらの比以下のとき、樹脂コンポジットを混練する際の加熱による熱分解及び性能劣化が抑えられる。
部分加水分解された微細セルロース(A)が、通常の(すなわち部分加水分解されていない)微細セルロースよりも優れた効果を発現する理由は次のように推定される。セルロースのアモルファス部分が加水分解されることで、新たに還元末端(グルコースユニットの1位)と非還元末端(グルコースユニットの4位)が生じる。このうち、還元末端はヘミアセタール基とアルデヒド基との平衡状態にあるが、このアルデヒド基が熱可塑性樹脂の主鎖、及び/又は側鎖、及び/又は末端に存在する、アミノ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基などの官能基と反応すると、共有結合を形成できる。その結果、微細セルロースと熱可塑性樹脂との界面密着力が強められる。
[ヘミセルロース(C)、及びリグニン(D)]
一態様において、樹脂組成物は、ヘミセルロース(C)及び/又はリグニン(D)(より典型的には、ヘミセルロース(C)及びリグニン(D)の両者)を更に含む。通常、植物由来の微細セルロースには、ミクロフィブリル同士の間、及びミクロフィブリル束同士の間に、ヘミセルロースと総称される多糖類や、リグニンと総称される芳香族化合物が残存している。本発明においては、微細セルロースの製造工程でこれらの成分を完全に除去するのではなく、好適な範囲内の含有量で残存させることが好ましい。ヘミセルロースは、マンナンやキシランなどの糖で構成される多糖類であり、セルロースと水素結合して、ミクロフィブリル間を結びつける役割を果たしている。また、ヘミセルロースの溶解度パラメータ(SP値)はセルロースよりも疎水性側にあることから、ヘミセルロースは、熱可塑性樹脂と微細セルロースとのSP値差を緩和する効果を有すると考えられる。
本発明の樹脂組成物中のヘミセルロース(C)の量としては、部分加水分解された微細セルロース(A)に対する質量比(C)/(A)で、0.001以上が好ましく、0.005以上がより好ましく、0.01以上がさらに好ましく、0.02以上がよりさらに好ましく、0.03以上が特に好ましく、0.2以下が好ましく、0.18以下がより好ましく、0.15以下がさらに好ましい。ヘミセルロース(C)が前述の範囲で含まれる場合には、微細セルロースが部分加水分解された際の、低重合度となったセルロース分子の表層からの剥落が抑制されているため、樹脂コンポジットの引張強度、摩擦係数、及び摩耗深さが良好である。
リグニンは芳香環を有する化合物であり、植物の細胞壁中ではヘミセルロースと共有結合していることが知られている。本発明の樹脂組成物中のリグニン(D)の量としては、ヘミセルロース(C)に対する質量比(D)/(C)で、0.001以上が好ましく、0.01以上がより好ましく、0.1以上がさらに好ましく、10以下が好ましく、5以下がより好ましく、3以下がさらに好ましい。リグニンはヘミセルロースよりもさらに疎水性の化合物であり、熱可塑性樹脂と微細セルロースとのSP値差を更に良好に緩和する効果を有すると考えられる。ヘミセルロース及びリグニンの存在量は、上述の範囲を超えないことが、樹脂コンポジットにおいて耐熱性低下やそれに伴う変色を誘起するため好ましくない。
ヘミセルロース(C)の量は、ヘミセルロースの含有率が高い天然木材原料に対して、精製処理を施すことで所望の量に減らして調整することもできるし、ヘミセルロースの含有率が低い原料を用いた場合は、別の原料から抽出処理して得られたヘミセルロースを添加することで所望の量に調整することができる。このときヘミセルロースの末端などの構造が、精製や抽出処理によって部分的に天然物と異なる形になっていても構わない。
また、リグニン(D)の量は、リグニンの含有率が高い天然木材原料に対して、精製処理を施すことで所望の量に減らして調整することもできるし、リグニンの含有率が低い原料を用いた場合は、別の原料から抽出処理して得られたリグニンを添加することで所望の量に調整することができる。このときリグニンの末端などの構造が、精製や抽出処理によって部分的に天然物と異なる形になっていても構わない。
[熱可塑性樹脂(B)]
熱可塑性樹脂(B)としては、100℃〜350℃の範囲内に融点を有する結晶性樹脂、又は、100〜250℃の範囲内にガラス転移温度を有する非晶性樹脂が挙げられる。
ここでいう結晶性樹脂の融点とは、示差走査熱量分析装置(DSC)を用いて、23℃から10℃/分の昇温速度で昇温していった際に、現れる吸熱ピークのピークトップ温度をいう。吸熱ピークが2つ以上現れる場合は、最も高温側の吸熱ピークのピークトップ温度を指す。この時の吸熱ピークのエンタルピーは、10J/g以上であることが望ましく、より望ましくは20J/g以上である。また測定に際しては、サンプルを一度融点+20℃以上の温度条件まで加温し、樹脂を溶融させたのち、10℃/分の降温速度で23℃まで冷却したサンプルを用いることが望ましい。
また、ここでいう非晶性樹脂のガラス転移温度とは、動的粘弾性測定装置を用いて、23℃から2℃/分の昇温速度で昇温しながら、印加周波数10Hzで測定した際に、貯蔵弾性率が大きく低下し、損失弾性率が最大となるピークのピークトップの温度をいう。損失弾性率のピークが2つ以上現れる場合は、最も高温側のピークのピークトップ温度を指す。この際の測定頻度は、測定精度を高めるため、少なくとも20秒に1回以上の測定とすることが望ましい。また、測定用サンプルの調製方法については特に制限はないが、成形歪の影響をなくす観点から、熱プレス成型品の切り出し片を用いることが望ましく、切り出し片の大きさ(幅及び厚み)はできるだけ小さい方が熱伝導の観点より望ましい。
熱可塑性樹脂(B)としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂(ポリフェニレンエーテルを他の樹脂とブレンド又はグラフト重合させて変性させた変性ポリフェニレンエーテルも含む)、ポリアリレート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリケトン系樹脂、ポリフェニレンエーテルケトン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えばα-オレフィン(共)重合体)、各種アイオノマー等が挙げられる。
熱可塑性樹脂(B)の好ましい具体例は、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン(例えば直鎖状低密度ポリエチレン)、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、環状オレフィン系樹脂、ポリ1−ブテン、ポリ1−ペンテン、ポリメチルペンテン、エチレン/α−オレフィン共重合体、エチレン・ブテン共重合体、EPR(エチレン−プロピレン共重合体)、変性エチレン・ブテン共重合体、EEA(エチレン−エチルアクリレート共重合体)、変性EEA、変性EPR、変性EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体)、アイオノマー、α−オレフィン共重合体、変性IR(イソプレンゴム)、変性SEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体)、ハロゲン化イソブチレン−パラメチルスチレン共重合体、エチレン−アクリル酸変性体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、及びその酸変性物、(エチレン及び/又はプロピレン)と(不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル)との共重合体、(エチレン及び/又はプロピレン)と(不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル)との共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部を金属塩化して得られるポリオレフィン、共役ジエンとビニル芳香族炭化水素のブロック共重合体、共役ジエンとビニル芳香族炭化水素のブロック共重合体の水素化物、他の共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体、天然ゴム、各種ブタジエンゴム、各種スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、イソブチレンとp−メチルスチレンの共重合体の臭化物、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニトリロブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル等のアクリル、アクリロニトリルを主成分とするアクリロニトリル系共重合体、アクリロニトリル・ブタンジエン・スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル・スチレン(AS)樹脂、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂、塩化ビニル/エチレン共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、及びエチレン/酢酸ビニル共重合体のケン化物等が挙げられる。
これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合は、ポリマーアロイとして用いてもよい。また、上記した熱可塑性樹脂が、不飽和カルボン酸、その酸無水物又はその誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物により変性されたものも用いることもできる。
これらの中でも、耐熱性、成形性、意匠性及び機械特性の観点から、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂及びこれらの2種以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中でもポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂等が、取り扱い性・コストの観点からより好ましい樹脂である。
ポリオレフィン系樹脂は、オレフィン類(例えばα−オレフィン類)を含むモノマー単位を重合して得られる高分子である。ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、特に限定されないが、低密度ポリエチレン(例えば線状低密度ポリエチレン)、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなどに例示されるエチレン系(共)重合体、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体などに例示されるポリプロピレン系(共)重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体などに代表されるα−オレフィンと他のモノマー単位との共重合体等が挙げられる。
ここで最も好ましいポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレンが挙げられる。特に、ISO1133に準拠して230℃、荷重21.2Nで測定されたメルトマスフローレイト(MFR)が、3g/10分以上30g/10分以下であるポリプロピレンが好ましい。MFRの下限値は、より好ましくは5g/10分であり、さらにより好ましくは6g/10分であり、最も好ましくは8g/10分である。また、上限値は、より好ましくは25g/10分であり、さらにより好ましくは20g/10分であり、最も好ましくは18g/10分である。MFRは、組成物の靱性向上の観点から上記上限値を超えないことが望ましく、組成物の流動性の観点から上記下限値を超えないことが望ましい。
また、セルロースとの親和性を高めるため、酸変性されたポリオレフィン系樹脂も好適に使用可能である。酸としては、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、フタル酸及びこれらの無水物、及びクエン酸等のポリカルボン酸等から適宜選択可能である。これらの中でも好ましいのは、変性率の高めやすさから、マレイン酸又はその無水物である。変性方法については特に制限はないが、過酸化物の存在下/非存在下で樹脂を融点以上に加熱して溶融混練する方法が一般的である。酸変性するポリオレフィン樹脂としては前出のポリオレフィン系樹脂はすべて使用可能であるが、ポリプロピレンが中でも好適に使用可能である。
酸変性されたポリオレフィン系樹脂は、単独で用いても構わないが、組成物としての変性率を調整するため、変性されていないポリオレフィン系樹脂と混合して使用することがより好ましい。例えば、変性されていないポリプロピレンと酸変性されたポリプロピレンとの混合物を用いる場合、全プロピレンに対する酸変性されたポリプロピレンの割合は、好ましくは0.5質量%〜50質量%である。より好ましい下限は、1質量%であり、更に好ましくは2質量%、更により好ましくは3質量%、特に好ましくは4質量%、最も好ましくは5質量%である。また、より好ましい上限は、45質量%であり、更に好ましくは40質量%、更により好ましくは35質量%、特に好ましくは30質量%、最も好ましくは20質量%である。セルロースとの界面強度を維持するためには、下限以上が好ましく、樹脂としての延性を維持するためには、上限以下が好ましい。
酸変性されたポリプロピレンの好ましいISO1133に準拠して230℃、荷重21.2Nで測定されたメルトマスフローレイト(MFR)は、セルロース界面との親和性を高めるため、50g/10分以上であることが好ましい。より好ましい下限は100g/10分であり、更により好ましくは150g/10分、最も好ましくは200g/10分である。上限は特にないが、機械的強度の維持から500g/10分である。MFRをこの範囲内とすることにより、セルロースと樹脂との界面に存在しやすくなるという利点を享受できる。
熱可塑性樹脂として好ましいポリアミド系樹脂としては、特に限定されないが、ラクタム類の重縮合反応により得られるポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12等;1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、2−メチル−1−6−ヘキサンジアミン、1,8−オクタンジアミン、2−メチル−1,7−ヘプタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、m−キシリレンジアミンなどのジアミン類と、ブタン二酸 、ペンタン二酸、ヘキサン二酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸、ベンゼン−1,2−ジカルボン酸、ベンゼン−1,3−ジカルボン酸、ベンゼン−1,4ジカルボン酸等、シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸などのジカルボン酸類との共重合体として得られるポリアミド6,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6,11、ポリアミド6,12、ポリアミド6,T、ポリアミド6,I、ポリアミド9,T、ポリアミド10,T、ポリアミド2M5,T、ポリアミドMXD,6、ポリアミド6,C、ポリアミド2M5,C等;及び、これらがそれぞれ共重合された共重合体(一例としてポリアミド6,T/6,I)等の共重合体;が挙げられる。
これらポリアミド系樹脂の中でも、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6,11、ポリアミド6,12といった脂肪族ポリアミドや、ポリアミド6,C、ポリアミド2M5,Cといった脂環式ポリアミドがより好ましい。
ポリアミド系樹脂の末端カルボキシル基濃度には特に制限はないが、下限値は、20μモル/gであると好ましく、より好ましくは30μモル/gである。また、末端カルボキシル基濃度の上限値は、150μモル/gであると好ましく、より好ましくは100μモル/gであり、更に好ましくは80μモル/gである。
ポリアミド系樹脂において、好ましい全末端基に対するカルボキシル末端基比率([COOH]/[全末端基])が、0.30〜0.95であることがより好ましい。カルボキシル末端基比率下限は、より好ましくは0.35であり、さらにより好ましくは0.40であり、最も好ましくは0.45である。またカルボキシル末端基比率上限は、より好ましくは0.90であり、さらにより好ましくは0.85であり、最も好ましくは0.80である。上記カルボキシル末端基比率は、セルロース成分の組成物中への分散性の観点から0.30以上とすることが望ましく、得られる組成物の色調の観点から0.95以下とすることが望ましい。
ポリアミド系樹脂の末端基濃度の調整方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、ポリアミドの重合時に所定の末端基濃度となるように、ジアミン化合物、モノアミン化合物、ジカルボン酸化合物、モノカルボン酸化合物、酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル、モノアルコールなどの末端基と反応する末端調整剤を重合液に添加する方法が挙げられる。
末端アミノ基と反応する末端調整剤としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソ酪酸等の脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸等の脂環式モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸;及びこれらから任意に選ばれる複数の混合物が挙げられる。これらの中でも、反応性、封止末端の安定性、価格などの点から、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及び安息香酸からなる群より選ばれる1種以上の末端調整剤が好ましく、酢酸が最も好ましい。
末端カルボキシル基と反応する末端調整剤としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等の脂肪族モノアミン;シクロヘキシルア ミン、ジシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミン等の芳香族モノアミン及びこれらの任意の混合物が挙げられる。これらの中でも、反応性、沸点、封止末端の安定性、価格などの点から、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン及びアニリンからなる群より選ばれる1種以上の末端調整剤が好ましい。
これら、アミノ末端基及びカルボキシル末端基の濃度は、1H−NMRにより、各末端基に対応する特性シグナルの積分値から求めるのが精度、簡便さの点で好ましい。それらの末端基の濃度を求める方法として、具体的に、特開平7−228775号公報に記載された方法が推奨される。この方法を用いる場合、測定溶媒としては、重トリフルオロ酢酸が有用である。また、1H−NMRの積算回数は、十分な分解能を有する機器で測定した際においても、少なくとも300スキャンは必要である。そのほか、特開2003−055549号公報に記載されているような滴定による測定方法によっても末端基の濃度を測定できる。ただし、混在する添加剤、潤滑剤等の影響をなるべく少なくするためには、1H−NMRによる定量がより好ましい。
熱可塑性樹脂として好ましいポリエステル系樹脂としては、特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリアリレート(PAR)、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)(3−ヒドロキシアルカン酸からなるポリエステル樹脂)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカーボネート(PC)等から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でより好ましいポリエステル系樹脂としては、PET、PBS、PBSA、PBT、及びPENが挙げられ、更に好ましくは、PBS、PBSA、及びPBTが挙げられる。
また、ポリエステル系樹脂は、重合時のモノマー比率並びに末端安定化剤の添加の有無及び量によって、末端基を自由に変えることが可能であるが、ポリエステル系樹脂の全末端基に対するカルボキシル末端基比率([COOH]/[全末端基])が、0.30〜0.95であることが好ましい。カルボキシル末端基比率下限は、より好ましくは0.35であり、さらに好ましくは、0.40であり、最も好ましくは0.45である。また、カルボキシル末端基比率上限は、より好ましくは0.90であり、さらに好ましくは、0.85であり、最も好ましくは0.80である。上記カルボキシル末端基比率は、セルロース成分の組成物中への分散性の観点から0.30以上とすることが望ましく、得られる組成物の色調の観点から0.95以下とすることが望ましい。
熱可塑性樹脂として好ましいポリアセタール系樹脂には、ホルムアルデヒドを原料とするホモポリアセタールと、トリオキサンを主モノマーとし、例えば1,3−ジオキソランをコモノマー成分として含むコポリアセタールとが一般的であり、両者とも使用可能であるが、加工時の熱安定性の観点から、コポリアセタールが好ましく使用できる。特に、コモノマー成分(例えば1,3−ジオキソラン)量としては0.01〜4モル%の範囲内が好ましい。コモノマー成分量のより好ましい下限量は、0.05モル%であり、さらに好ましくは0.1モル%であり、特に好ましくは0.2モル%である。またより好ましい上限量は、3.5モル%であり、さらに好ましくは3.0モル%であり、特に好ましくは2.5モル%であり、最も好ましくは2.3モル%である。押出加工時及び成形加工時の熱安定性の観点から、下限は上述の範囲内とすることが望ましく、機械的強度の観点より、上限は上述の範囲内とすることが望ましい。
熱可塑性樹脂(B)は、部分加水分解された微細セルロース(A)に新しく生成した還元末端アルデヒドと反応し易いアミノ基を末端に有している点で、ポリアミド系樹脂であることが好ましい。
熱可塑性樹脂(B)の数平均分子量Mnに特に制限はなく、樹脂組成物を成形する際に一般的に用いられる射出成形、押出成形、ブロー成形などの成形方法によって加工できればよい。熱可塑性樹脂(B)の数平均分子量Mnが低い場合、樹脂組成物の機械物性や耐衝撃性が低下することが知られているが、本発明の樹脂組成物は、部分加水分解された微細セルロース(A)との良好な密着性を有することから、数平均分子量Mnが低い熱可塑性樹脂にも適用できる。例を挙げると、熱可塑性樹脂(B)の数平均分子量Mnが14000未満、13000未満、12000未満、11000未満、10000未満であっても、良好な機械強度を得ることができる。上記数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用い、ポリメタクリル酸メチル換算にて求められる値である。
樹脂組成物中、部分加水分解された微細セルロース(A)の量の、熱可塑性樹脂(B)の量に対する質量比(A)/(B)は、部分加水分解された微細セルロース(A)による良好な補強効果を得る観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、さらに好ましくは0.03以上、成形体を良好に形成する観点から、好ましくは1以下、より好ましくは0.70以下、さらに好ましくは0.45以下、特に好ましくは0.25以下である。
[その他の成分]
本発明の樹脂組成物には、その他の成分として、例えば、酸化防止剤;結晶核剤;相溶化剤;可塑剤;着色剤;香料;顔料;流動調整剤;レベリング剤;導電剤;帯電防止剤;紫外線吸収剤;紫外線分散剤;消臭剤;殺菌剤;難燃剤等の添加剤を配合してもよい。任意の添加剤の含有割合は、本発明の所望の効果が損なわれない範囲で適宜設定してよい。
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物は、種々の製造方法で製造でき、予め重合された市販ポリマー(熱可塑性樹脂(B)として)を微細セルロースと混練してもよいし、微細セルロースの共存下で、熱可塑性樹脂(B)の原料モノマーを重合して樹脂組成物としてもよい。
予め重合された熱可塑性樹脂を用いる場合、予め微細セルロースを部分加水分解してから混練する方法と、混練機中で部分加水分解を行いながら、連続的に熱可塑性樹脂と混練する方法とのいずれでも構わない。
一態様において、本実施形態の樹脂組成物の製造方法は、
微細セルロース及び/又は植物繊維を、水を含む状態かつ低酸素濃度雰囲気下で加熱することによって、部分加水分解された微細セルロース(A)を含む配合成分を得ること、及び
該配合成分と熱可塑性樹脂(B)とを組合せること、
を含む。本開示の「低酸素濃度雰囲気」とは、酸素濃度が、好ましくは18体積%以下、より好ましくは10体積%以下、さらに好ましくは5体積%以下、特に好ましくは1体積%以下である雰囲気である。一態様において、上記配合成分は、部分加水分解された微細セルロース(A)の原料由来の、又は別途添加された、ヘミセルロース(C)及び/又はリグニン(D)を更に含む。
部分加水分解された微細セルロース(A)を予め得る方法としては、微細セルロース及び/又は微細セルロースの原料(例えば植物繊維)の水分散液そのもの、又は酸を加えて得たものであって、pHが1以上7以下の酸性にされた、微細セルロース分散液を、常温若しくは高温で処理して酸加水分解を進行させる方法がある。分散液を酸性にするために用いる酸は、有機酸でも無機酸でも構わないし、固体酸を用いてもよい。酸化能力を有する酸(例えば、硝酸やハロゲンオキソ酸)を用いる場合は、微細セルロースを酸化して耐熱性や補強効果を低下させることがあるので、添加量は少ない方が好ましい。アモルファス部分を良好に加水分解しつつ結晶構造部分の加水分解を低程度に抑えることができる点で、酸化能力が無いか、比較的弱い酸(希塩酸、希硫酸、リン酸、亜リン酸、炭酸などの無機酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、乳酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、フェノールなどの有機酸、イオン交換体(ナフィオン(登録商標)、アンバーライト(登録商標)など)、Y型ゼオライト、β型ゼオライト、メソポーラスシリカ、スルホン化カーボンなどの固体酸)を用い、加熱下で酸加水分解を行うことが好ましい。
また、酸加水分解の代わりに酵素反応を利用して部分加水分解を行ってもよい。酵素としてはセルラーゼ(具体的には、セロビオハイドロラーゼ、エンドグルカナーゼ、又はβ−グルコシダーゼ)を使用できるが、アモルファス部分を良好に加水分解しつつ結晶構造部分の加水分解を低程度に抑えることができる点で、エンドグルカナーゼが好ましい。
これらの酸又は酵素を用いた加水分解の際の分解条件は、微細セルロースが低アスペクト比にまで加水分解されることがない範囲で、それぞれ適宜選択することができる。
一方、混練機中で微細セルロースを部分加水分解する方法としては、微細セルロースを水分散液、含水ケーキ、及び乾燥粉体から選ばれるいずれかの形態で混練機にフィードして熱可塑性樹脂と混合する方法がある。微細セルロースを乾燥粉体として用いる場合は、別途適量の水を混練機中に導入する。当該混練機としては、以下に限定されるものではないが、例えば、一軸又は多軸混練押出機、ロール、バンバリーミキサー等を用いればよい。中でも、減圧装置、及びサイドフィーダー設備を装備した二軸押出機が好ましい。
微細セルロースの共存下で熱可塑性樹脂の原料モノマーを重合して樹脂組成物を得る方法としては、種々の重合反応を利用できる。重合反応の例としては、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、メタセシス重合、重縮合、重付加、付加縮合などが挙げられる。微細セルロースは上述のように予め部分加水分解して用いてもよいし、重合反応と連続及び/又は同時並行に部分加水分解を行ってもよい。部分加水分解と重合反応を連続及び/又は同時並行に行う方法は、製造工程の短縮や省コスト化に寄与するので好ましい。
部分加水分解、及び樹脂組成物の製造は、それぞれ、窒素、アルゴン等の不活性気体での置換、又は減圧によって、低酸素濃度雰囲気とした系中で行うことが好ましい。低酸素濃度雰囲気下で部分加水分解、及び/又は樹脂組成物の製造を行うことで、微細セルロースの熱分解、及び部分加水分解によって新たに生じた還元末端の酸化が起きにくくなり、樹脂組成物の着色や補強効果の低減が抑制され、品質のばらつきが少ない樹脂組成物を提供することができる。
本発明の樹脂組成物は、引張物性や耐摩耗性が良い成形品を得られることから、産業用機械部品(例えば、電磁機器筐体、ロール材、搬送用アーム、医療機器部材など)、一般機械部品、自動車・鉄道・車両等部品(例えば外板、シャシー、空力部材、座席、トランスミッション内部の摩擦材など)、船舶部材(例えば船体、座席など)、航空関連部品(例えば、胴体、主翼、尾翼、動翼、フェアリング、カウル、ドア、座席、内装材など)、宇宙機、人工衛星部材(モーターケース、主翼、構体、アンテナなど)、電子・電気部品(例えばパーソナルコンピュータ筐体、携帯電話筐体、OA機器、AV機器、電話機、ファクシミリ、家電製品、玩具用品など)、建築・土木材料(例えば、鉄筋代替材料、トラス構造体、つり橋用ケーブルなど)、生活用品、スポーツ・レジャー用品(例えば、ゴルフクラブシャフト、釣り竿、テニスやバトミントンのラケットなど)、風力発電用筐体部材等、また容器・包装部材、例えば、燃料電池に使用されるような水素ガスなどを充填する高圧力容器用の材料となり得る。
また、本実施形態の樹脂組成物は、樹脂複合フィルム等の樹脂複合体の形態に成形されることができる。例えば樹脂複合フィルムは、プリント配線板における積層板補強用に好適である。その他、樹脂複合体は、例えば、発電機、変圧器、整流器、遮断器、制御器における絶縁筒、絶縁レバー、消弧板、操作ロッド、絶縁スペーサ、ケース、風胴、エンドベル、風ウケ、標準電気品におけるスイッチボックス、ケース、クロスバー、絶縁軸、ファンブレード、機構部品、透明樹脂基板、スピーカ振動板、イータダイヤフラム、テレビのスクリーン、蛍光灯カバー、通信機器・航空宇宙用におけるアンテナ、ホーンカバー、レードーム、ケース、機構部品、配線基板、航空機、ロケット、人工衛星用電子機器部品、鉄道用部品、船舶用部品、浴槽、浄化槽、耐食機器、いす、安全帽、パイプ、タンクローリ、冷却塔、浮消波堤、地下埋没タンク、コンテナ等の用途にも適用できる。
これらの中でも、既存の樹脂複合体と比べて特性が改善されることで優位性を発揮できるのは、摺動性部材(例えば、産業機器、オフィス機器等における軸受け、歯車、滑り部材等の摺動用途部品、及び家庭用電気機器部品、自動車の機構部品等)である。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されるものではない。なお、物性の主な測定値は以下の方法で測定した。
(1)微細セルロースの平均繊維径
微細セルロースの分散液、又は樹脂組成物から樹脂を溶解除去して得た微細セルロースの再分散液を、濃度0.01質量%に希釈してシリコンウェハー上に滴下、乾燥させてから、無作為に選んだ10箇所について、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を微細セルロースの繊維径に応じて10000〜100000倍相当の倍率で行った。得られたSEM画像において、互いに直角をなす縦横2方向のラインを引き、当該ラインに交差する繊維の繊維径を拡大画像から実測し、当該ラインに交差する繊維の個数と各繊維の繊維径とを数えた。こうして得られた、一つの画像につき縦横2系列の測定結果を用いて、数平均繊維径を算出した。さらに抽出した別の9箇所のSEM画像についても同様に数平均繊維径を算出した。10箇所の画像の結果を数平均し、対象とする試料の平均繊維径とした。
(2)微細セルロースのアスペクト比判定
上記(1)と同様に、無作為に選んだ10箇所のSEM観察を行った。得られたSEM画像において、互いに直角をなす縦横2方向のラインを引き、当該ラインに交差する繊維の繊維長及び繊維径を拡大画像から実測し、当該ラインに交差する繊維の個数と各繊維の繊維径とを数えた。得られた繊維長及び繊維径からアスペクト比を求め、低アスペクト比の微細セルロースが含まれているか否かを判定した。アスペクト比が高い場合、微細セルロースが屈曲していたり、画像内に全体が収まらないなどして正確なアスペクト比を求められないことがある。しかし、本発明の樹脂組成物においては高アスペクト比であれば効果を発現するため、低アスペクト比の微細セルロースを観察できればよい。アスペクト比を、下記基準で判定した。
◎:10箇所の観察エリアの全てにおいて、アスペクト比30以下の微細セルロースが含まれない。
〇:10箇所の観察エリアのいずれかにおいて、アスペクト比30以下の微細セルロースが含まれる。
△:10箇所の観察エリアの全てにおいて、アスペクト比30以下の微細セルロースが含まれる。
(3)微細セルロースの分子量分布測定
微細セルロースの分子量分布測定は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で行った。微細セルロースの分散液、又は樹脂組成物から樹脂を溶解除去して得た微細セルロースの再分散液から分散媒を除去し、セルロース残渣をLiCl含有ジメチルアセトアミド溶離液に溶解させ、PTFEカートリッジフィルターでろ過して試料溶液を作製した。
HLC−8120GPC(東ソー製)に、TSKgel guardcolumn Super AW−H(4.6mmI.D.×3.5cm)+Tskgel Super AWM−H(6.0mmI.D.×15cm)×2本(いずれも東ソー製)を接続し、RI検出器でピークを検出した。検量線は標準プルラン(Shodex製)を用いた1次近似直線を使用して、プルラン換算値の分子量を求めた。なお、該分子量をセルロースのモノマー単位である無水グルコースユニット分子量(162)で除することで重合度に換算することもできる。
得られたGPCチャート(横軸:分子量、縦軸:分布値)のピークトップ分子量を基準として低分子量側と高分子量側に分け、それぞれの積分値(面積)を低分子量側はS1、高分子量側はS2として、低分子量体(すなわち低重合度セルロース)と高分子量体(すなわち高重合度セルロース)との量比を、S1/S2比にて表した。
(4)ヘミセルロースの定量
ヘミセルロースの定量分析は、以下の方法で行った。微細セルロースの分散液、又は樹脂組成物から樹脂を溶解除去して得た微細セルロースの再分散液から分散媒を除去し、セルロース残渣を回収して、105℃で乾燥して得た乾燥試料の質量を、以下の方法で測定した。
乾燥したセルロース残渣を粉砕して得た粉砕試料をソックスレー抽出器でアルコール(エタノール)/ベンゼン混合溶媒)で6時間抽出した後、アルコール(エタノール)/ベンゼン混合溶媒)でさらに4時間抽出を行って脱脂試料を得た。脱脂試料2.5gに蒸留水150mL、亜塩素酸ナトリウム1.0g、酢酸0.2mLを加えて、70〜80℃で1時間加熱処理を行い、再び亜塩素酸ナトリウム1.0g、酢酸0.2mLを加えて、70〜80℃で1時間加熱する操作を、試料が白く脱色するまで3〜4回繰り返した。得られた試料をろ過して、水及びアセトンで洗浄し、105℃で乾燥してホロセルロース画分を得た。このホロセルロース画分の質量を測定した。
続いて、ホロセルロース画分1.0gに17.5質量%水酸化ナトリウム水溶液25mLを加え、3分後、膨潤状態になるまでガラス棒で軽く潰した。20℃で静置し、上記水酸化ナトリウム水溶液を加えてから30分後に、蒸留水25mLを加え、正確に1分間かき混ぜて、20℃で5分静置し、ガラスフィルターでろ過してろ液が中性になるまで洗浄した。さらに10質量%酢酸40mLを吸引ろ過し、次に沸騰水1Lを吸引ろ過して洗浄した試料を105℃で質量が一定になるまで乾燥して、αセルロース画分を得た。このαセルロース画分の質量を測定した。
上記のように求めたホロセルロース画分とαセルロース画分との質量から、次式によってヘミセルロースの含有率を求めた。
ホロセルロース(%)=ホロセルロース画分(g)/試料(無水ベース)(g)×100
αセルロース(%)=αセルロース画分(g)/試料(無水ベース)(g)×100
ヘミセルロース(%)=ホロセルロース(%)−αセルロース(%)
(5)リグニンの定量
リグニンの定量分析は、以下の方法で行った。上記のヘミセルロース定量分析中に得た脱脂試料300mgに、72質量%硫酸3mLを加え、30℃で1時間静置した後、蒸留水84mLで耐圧びん(125mL容量)に流し入れた。120℃で1時間のオートクレーブ処理を行い、冷める前にガラスフィルターでろ過して酸不溶性リグニンをろ別し、ろ液も回収した。酸不溶性リグニンは蒸留水で洗浄して105℃で乾燥後、酸不溶性リグニン画分の質量を測定し、ろ液は紫外可視分光光度計で吸光度を測定した。
下記式から酸不溶性リグニン及び酸可溶性リグニンの含有率を算出した。これらを合計して総リグニン含有率が求められる。
酸不溶性リグニン(%)=酸不溶性リグニン画分(g)/試料量(無水ベース)(g)×100
酸可溶性リグニン(%)=((d×v×(As−Ab))/(a×w))×100
リグニン(%)=酸不溶性リグニン(%)+酸可溶性リグニン(%)
d : 希釈倍率
v : ろ液定容量(L)
As: 試料溶液の吸光度
Ab: ブランク溶液の吸光度
a : リグニンの吸光係数(110L/g・cm)
w : 試料量(無水ベース)(g)
(6)熱可塑性樹脂(B)の数平均分子量測定
熱可塑性樹脂の数平均分子量測定は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で行った。樹脂種に応じて公知の溶離液を使用できる。ポリアミド樹脂を例に挙げると、樹脂組成物の原料に用いた熱可塑性樹脂をヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解、又は樹脂組成物をHFIPに溶解して得た溶液をPTFEカートリッジフィルターでろ過して試料溶液を作製した。溶離液にはトリフルオロ酢酸ナトリウムを0.1mol/%溶解させたヘキサフルオロイソプロパノールを用いた。
HLC−8320GPC(東ソー製)にTSKgel guardcolumn HHR−L(6mmI.D.×4cm)+TSKgel−G2000HHR(7.8mmI.D.×30cm)+TSKgel−G3000HHR(7.8mmI.D.×30cm)各1本(いずれも東ソー製)を接続し、RI検出器でピークを検出し、ポリメタクリル酸メチル換算値の数平均分子量を求めた。
(7)成形条件・機械物性測定
ISO294−3、及びJIS K6920−2に準拠した条件で多目的試験片を射出成型し、原料樹脂(すなわち熱可塑性樹脂単独)及び樹脂組成物(すなわち微細セルロース含有樹脂組成物)の各々について、ISO527に準拠して引張降伏強度を測定した。
なお、ポリアミド系材料は、吸湿による変化が起きるため、成形直後にアルミ防湿袋に保管し、吸湿を抑制した。
(8)耐摩耗性試験(摩擦係数及び摩耗深さ)
上記成形条件で得られた多目的試験片について、往復動摩擦摩耗試験機(東洋精密(株)製AFT−15MS型)、相手材料として、SUS304試験片(直径5mmの球)を用いて、線速度50mm/sec、往復距離50mm、温度23℃、湿度50%で、摺動試験を実施した。摩擦係数は荷重9.8N、往復回数10,000回の試験終了時の値を採用した。また摩耗量は摺動試験後のサンプルの摩耗量(摩耗深さ)を、共焦点顕微鏡(OPTELICS(登録商標) H1200、レーザーテック(株)社製)を用いて測定した。摩耗深さはn=4で測定した数値の平均値とし、小数点第一位で四捨五入した。測定箇所は摩耗痕の端より12.5mmの等しい間隔をあけて実施した。また摩耗深さは数値が低い方が摩耗特性に優れると評価した。
(9)成形品着色
上記成形条件で得られた多目的試験片の色調を目視で評価した。
[製造例1](微細セルロース原料1の調製)
コットンリンターパルプを裁断後、水で洗浄して不純物を除去した精製パルプを、固形分率が1.5質量%になるように純水中に加え、叩解処理により高度に短繊維化及びフィブリル化させた後、そのままの濃度で高圧ホモジナイザー(操作圧:85MPaにて10回処理)により解繊することにより解繊セルロースを得た。ここで、叩解処理においては、ディスクリファイナーを用い、カット機能の高い叩解刃(以下カット刃と称す)で2.5時間処理した後に解繊機能の高い叩解刃(以下解繊刃と称す)を用いてさらに2時間叩解を実施し、微細セルロース原料1の分散液を得た。
[製造例2](微細セルロース原料2の調製)
コットンリンターパルプを裁断後、水で洗浄して不純物を除去した精製パルプを、さらに5%水酸化カリウム水溶液に1晩浸漬してヘミセルロースを除去した精製パルプを原料に用いたほかは、製造例1と同様に叩解と高圧ホモジナイザーによる微細化処理を実施し、微細セルロース原料2の分散液を得た。
[製造例3](微細セルロース原料3の調製)
アバカパルプを原料に用いたほかは、製造例1と同様に叩解と高圧ホモジナイザーによる微細化処理を実施し、微細セルロース原料3の分散液を得た。
[製造例4](微細セルロース原料4の調製)
レンチング・ファイバーズ社より供給されたテンセル(登録商標)カット糸(3mm長)の油剤を水中、界面活性剤添加系での数回の洗浄により十分に落とした短繊維原糸を原料に用いたほかは、製造例1と同様に叩解と高圧ホモジナイザーによる微細化処理を実施し、微細セルロース原料4の分散液を得た。
[製造例5](微細セルロース原料5の調製)
市販DPパルプ(平均重合度1600)を裁断し、10質量%塩酸水溶液中で、105℃で5分間加水分解した後、濾過、洗浄した中間体を原料に用いたほかは、製造例1と同様に叩解と高圧ホモジナイザーによる微細化処理を実施し、微細セルロース原料5の分散液を得た。
[製造例6](微細セルロース原料6の調製)
特表平11−513425号の実施例1に記載の方法に従って、細かく刻んだホヤの鞘を水酸化ナトリウムと亜塩素酸ナトリウム溶液で漂白し、ミキサーで撹拌して1質量%の懸濁液を得た。この懸濁液を高圧ホモジナイザー(APV GAULIN社製15MR−8TA)を用いて、45MPaの圧力で15回処理を実施し、微細セルロース原料6の分散液を得た。
[製造例7](微細セルロース原料7の調製)
コットンリンターパルプを裁断後、水で洗浄して不純物を除去した精製パルプを、固形分率が1.5質量%になるように純水中に加え、叩解処理により短繊維化及びフィブリル化させて、高圧ホモジナイザー処理を行わずに、微細セルロース原料7の分散液を得た。
[実施例1〜12、比較例1〜10]
(実施例1)
微細セルロース原料1の水分散液173質量部と、熱可塑性樹脂モノマー(ε−カプロラクタム)216質量部と、アミノカプロン酸44質量部と、亜リン酸0.59質量部とを、均一な分散液となるまでミキサーで攪拌、混合した。続いて、密閉した反応容器内に窒素を流して空気を置換した。この混合分散液を徐々に加熱し、加熱の途中において水蒸気を排出しながら微細セルロースの部分加水分解を行い、240℃まで温度を上げ、240℃にて1時間攪拌し、重合反応を行った。
重合が終了した時点で得られた樹脂組成物を払い出し、これを切断してペレットとした。得られたペレットを95℃の熱水で精錬し、乾燥させた。射出成形条件は、シリンダ温度250℃、金型温度70℃とした。各種評価を行った結果を表1に示す。
(実施例2)
微細セルロース原料1の水分散液520質量部を用いた他は、実施例1と同様に樹脂組成物を製造し、成形と評価を行った。
(実施例3)
微細セルロース原料1の水分散液867質量部を用いた他は、実施例1と同様に樹脂組成物を製造し、成形と評価を行った。
(実施例4)
微細セルロース原料1の水分散液1733質量部を用いた他は、実施例1と同様に樹脂組成物を製造し、成形と評価を行った。
(実施例5)
微細セルロース原料1の水分散液2600質量部を用いた他は、実施例1と同様に樹脂組成物を製造し、成形と評価を行った。
(実施例6)
微細セルロース原料1の水分散液3467質量部を用いた他は、実施例1と同様に樹脂組成物を製造し、成形と評価を行った。
(実施例7)
微細セルロース原料2の水分散液867質量部を用いた他は、実施例1と同様に樹脂組成物を製造し、成形と評価を行った。
(実施例8)
微細セルロース原料3の水分散液520質量部を、240℃、5MPaの条件で1分間処理してから用いた他は、実施例1と同様に樹脂組成物を製造し、成形と評価を行った。
(実施例9)
微細セルロース原料3の水分散液867質量部を、240℃、5MPaの条件で1分間処理してから用いた他は、実施例1と同様に樹脂組成物を製造し、成形と評価を行った。
(実施例10)
微細セルロース原料4の水分散液867質量部を用いた他は、実施例1と同様に樹脂組成物を製造し、成形と評価を行った。
(実施例11)
亜リン酸を添加しなかった他は、実施例4と同様に樹脂組成物を製造し、成形と評価を行った。
(実施例12)
微細セルロース原料1の水分散液200質量部と、酢酸5質量部とを、オートクレーブに投入し、密閉した反応容器内に窒素を流して空気を置換した。この混合分散液を120℃、3時間加熱した後、室温まで冷却してから遠心脱液、洗浄して、固形分濃度5質量%の含水ケーキを得た。この工程を繰り返し行い、固形分濃度5質量%の含水ケーキを300質量部得た。
シリンダーブロック数が13個ある二軸押出機(STEER社製 OMEGA30H、L/D=60)のシリンダー6に圧力コントロール型の液体注入ノズルを設置し、シリンダー1を水冷、シリンダー2を80℃、シリンダー3を150℃、シリンダー4〜13及びダイスを250℃に設定した。シリンダー1より熱可塑性樹脂PA610を11.4kg/時間の流量で供給し、シリンダー6の液体注入ノズルより、前記固形分濃度5質量%の含水ケーキをポンプで200cc/分の流量で押出機に液添した。シリンダー12で大気圧開放して押出し、微細セルロース含有樹脂組成物ペレットを得た。得られたペレットを95℃の熱水で精錬し、乾燥させた。射出成形条件は、シリンダ温度250℃、金型温度70℃とした。各種評価を行った結果を表1に示す。
(実施例13)
熱可塑性樹脂(PA12)を用いた他は、実施例12と同様に樹脂組成物を製造し、成形と評価を行った。
(比較例1)
微細セルロース原料5の水分散液173質量部を用いた他は、実施例1と同様に樹脂組成物を製造し、成形と評価を行った。
(比較例2)
微細セルロース原料1の水分散液52質量部を用いた他は、実施例1と同様に樹脂組成物を製造し、成形と評価を行った。
(比較例3)
微細セルロース原料1の水分散液10400質量部を用いた他は、実施例1と同様に樹脂組成物を製造し、成形と評価を行った。
(比較例4)
微細セルロース原料1の水分散液を遠心脱液して、固形分濃度5質量%の含水ケーキを得た後、密閉式プラネタリーミキサー(株式会社小平製作所製、商品名「ACM−5LVT」、撹拌羽根はフック型)中、70rpmで撹拌し、−0.1MPaの減圧条件で、40℃の温浴をセットし、307rpmで5時間、減圧乾燥処理を行い、微細セルロース原料1の乾燥粉体を得た。該乾燥粉体と熱可塑性樹脂(PA6)とを5:95の割合で混合し、溶融混練しストランド状に押出しして樹脂組成物を製造し、成形と評価を行った。
(比較例5)
微細セルロース原料6の水分散液1300質量部を用いた他は、実施例1と同様に樹脂組成物を製造し、成形と評価を行った。
(比較例6)
微細セルロース原料1の乾燥粉体と平均分子量が低い熱可塑性樹脂(PA6)とを10:90(質量比)の割合で混合して用いた他は、比較例4と同様に樹脂組成物を製造し、成形と評価を行った。
(比較例7)
微細セルロース原料7の水分散液867質量部を用いた他は、実施例1と同様に樹脂組成物を製造し、成形と評価を行った。
(比較例8〜10)
市販の熱可塑性樹脂(PA6:比較例8)、(PA610:比較例9)、(PA12:比較例10)をそれぞれ単独で用いて、シリンダ温度250℃、金型温度70℃で射出成形し、評価を行った。
各成分及び成形体の性状を表1に示す。
Figure 0006678698
本発明に係る樹脂組成物は、引張物性及び耐摩耗性に優れる成形品を与えることから、産業用機械部品、一般機械部品、自動車・鉄道・車両等部品、船舶部材、航空関連部品、宇宙機、人工衛星部材、電子・電気部品、建築・土木材料、生活用品、スポーツ・レジャー用品、風力発電用筐体部材、容器・包装部材等に好適に適用され得る。

Claims (6)

  1. 部分加水分解された微細セルロース(A)、熱可塑性樹脂(B)、及びヘミセルロース(C)を含む、樹脂組成物であって、前記部分加水分解された微細セルロース(A)は、ミクロフィブリル又はミクロフィブリル束において、表層の一部が加水分解されており、
    部分加水分解された微細セルロース(A)が、重合度450以上に相当するピークトップ分子量を有し、前記ピークトップ分子量以下の分子量を有する低分子量成分の量をS1、前記ピークトップ分子量を超える分子量を有する高分子量成分の量をS2としたとき、S1/S2が1.00より大きく、3.00以下であり、
    部分加水分解された微細セルロース(A)の平均繊維径が1500nm以下であり、
    部分加水分解された微細セルロース(A)/熱可塑性樹脂(B)の質量比(A)/(B)が0.01〜1である、樹脂組成物。
  2. 部分加水分解された微細セルロース(A)が、繊維長/繊維径のアスペクト比30以上の微細セルロース繊維である、請求項に記載の樹脂組成物。
  3. 部分加水分解された微細セルロース(A)の平均繊維径が4〜1500nmである、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
  4. 熱可塑性樹脂(B)がポリアミド系樹脂である、請求項1〜のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  5. 前記部分加水分解された微細セルロース(A)は、ミクロフィブリル又はミクロフィブリル束において、内層が加水分解されていない、請求項1〜のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  6. 請求項1〜のいずれか一項に記載の樹脂組成物の成形体である、摺動性部材。
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