JP7342142B2 - セルロース樹脂組成物 - Google Patents
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Description
[1] セルロース繊維と、樹脂と、ハロゲン含有化合物とを含む、樹脂組成物。
[2] 前記樹脂組成物は、前記ハロゲン含有化合物の少なくとも一部をハロゲン化物イオンとして含む、上記態様1に記載の樹脂組成物。
[3] 前記セルロース繊維の量が、前記樹脂100質量部に対して5質量部~50質量部であり、
前記ハロゲン含有化合物のハロゲンの量が、前記セルロース繊維100質量部に対して0.01質量部~1000質量部である、上記態様1又は2に記載の樹脂組成物。
[4] 前記ハロゲン含有化合物のハロゲンが、ヨウ素及び臭素からなる群から選択される1種以上である、上記態様1~3のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5] 前記ハロゲン含有化合物の少なくとも一部がアルカリ金属を含む、上記態様1~4のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6] 前記アルカリ金属の少なくとも一部がアルカリ金属イオンである、上記態様5に記載の樹脂組成物。
[7] 前記アルカリ金属が、ナトリウム及びカリウムからなる群から選択される1種以上である、上記態様5又は6に記載の樹脂組成物。
[8] 前記ハロゲン含有化合物が、ハロゲン含有無機塩及びその電離生成物からなる群から選択される1種以上である、上記態様1~7のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9] 前記セルロース繊維の数平均繊維径が、2nm~1000nmである、上記態様1~8のいずれかに記載の樹脂組成物。
[10] 前記セルロース繊維が、重量平均分子量(Mw)100000以上、及び重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)6以下を有する、上記態様1~9のいずれかに記載の樹脂組成物。
[11] 前記セルロース繊維が、アルカリ可溶多糖類平均含有率12質量%以下、及び結晶化度60%以上を有する、上記態様1~10のいずれかに記載の樹脂組成物。
[12] 前記セルロース繊維が、化学修飾されている、上記態様1~11のいずれかに記載の樹脂組成物。
[13] 前記化学修飾がアシル化であり、前記セルロース繊維のアシル置換度(DS)が0.1~1.0である、上記態様12に記載の樹脂組成物。
[14] 前記樹脂が、酸変性ポリオレフィン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、及びアクリル系樹脂からなる群から選択される1種以上である、上記態様1~13のいずれかに記載の樹脂組成物。
[15] 分散剤を更に含む、上記態様1~14のいずれかに記載の樹脂組成物。
[16] 前記樹脂が、前記樹脂総量の50質量%超を占めるベース樹脂と、前記ベース樹脂とは異なる追加樹脂とで構成される、上記態様1~15のいずれかに記載の樹脂組成物。
[17] 前記樹脂100質量部に対する前記追加樹脂の量が、0.01~25質量部である、上記態様16に記載の樹脂組成物。
[18] 前記追加樹脂が、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6,I、ポリアミド610、ポリアミド66/6I、ポリプロピレン、及びポリアセタールからなる群から選択される1種以上である、上記態様16又は17に記載の樹脂組成物。
[19] 以下の関係:
5MPa≦(SA-SB)/A≦100MPa
(式中、Aは前記樹脂組成物中のハロゲン含有化合物の含有率(単位:質量%)であり、SAは前記樹脂組成物の引張降伏強度(単位:MPa)であり、SBはハロゲン含有化合物を含まない他は前記樹脂組成物と同組成である比較樹脂組成物の引張降伏強度(単位:MPa)である。)
を満たす、上記態様1~18のいずれかに記載の樹脂組成物。
[20] 上記態様1~19のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法であって、
セルロース繊維とハロゲン塩とを混合してマスターバッチを調製する工程、及び
前記マスターバッチと樹脂とを混合する工程
を含む、方法。
[21] 上記態様1~19のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法であって、
樹脂とハロゲン塩とを混合してマスターバッチを調製する工程、及び
前記マスターバッチとセルロース繊維とを混合する工程
を含む、方法。
[22] 上記態様1~19のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法であって、
セルロース繊維と、ハロゲン塩と、樹脂とを混合する工程を含む、方法。
[23] 前記樹脂が熱可塑性樹脂であり、前記混合が溶融混練である、上記態様20~22のいずれかに記載の方法。
[24] 前記樹脂組成物の引張降伏強度が、ハロゲン塩を用いない他は前記樹脂組成物と同一である比較樹脂組成物の引張降伏強度の1.05倍以上である、上記態様20~23のいずれかに記載の方法。
[25] 前記樹脂組成物の引張弾性率が、ハロゲン塩を用いない他は前記樹脂組成物と同一である比較樹脂組成物の引張弾性率の1.02倍以上である、上記態様20~24のいずれかに記載の方法。
[26] セルロース繊維と樹脂とを含む樹脂組成物の製造において、樹脂組成物材料にハロゲン塩を添加することを含む、樹脂組成物の物性を向上させる方法であって、
前記物性が向上された樹脂組成物が、上記態様1~19のいずれかに記載の樹脂組成物である、方法。
[27] 前記物性が向上された樹脂組成物の引張降伏強度が、ハロゲン塩を用いない他は前記樹脂組成物と同一である比較樹脂組成物の引張降伏強度の1.05倍以上である、上記態様26に記載の方法。
[28] 前記物性が向上された樹脂組成物の引張弾性率が、ハロゲン塩を用いない他は前記樹脂組成物と同一である比較樹脂組成物の引張弾性率の1.02倍以上である、上記態様26又は27に記載の方法。
[29] 上記態様1~19のいずれかに記載の樹脂組成物より形成される、樹脂ペレット。
[30] 上記態様1~19のいずれかに記載の樹脂組成物より形成される、樹脂成形体。
本発明の一態様は、セルロース繊維と、樹脂と、ハロゲン含有化合物とを含む、樹脂組成物を提供する。
一態様において、樹脂組成物はハロゲン含有化合物を含む。本発明者らは、セルロース繊維と樹脂とを含む樹脂組成物中にハロゲン含有化合物を添加することで、樹脂組成物中のセルロース繊維量を変えることなく樹脂組成物の物性を顕著に向上できることを見出した。その理由は定かでないが、セルロース繊維及び/又は樹脂とハロゲン含有化合物とに何らかの相互作用が生じることで、樹脂中に分散しているセルロース繊維による物性向上効果が顕著に高まり、樹脂組成物の物性が向上しているものと考えられる。
セルロース繊維は、天然セルロース及び再生セルロースから選ばれる各種セルロース繊維原料から得られるものであってよい。天然セルロースとしては、木材種(広葉樹又は針葉樹)から得られる木材パルプ、非木材種(綿、竹、麻、バガス、ケナフ、コットンリンター、サイザル、ワラ等)から得られる非木材パルプ、動物(例えばホヤ類)や藻類、微生物(例えば酢酸菌)、が産生するセルロース繊維集合体を使用できる。再生セルロースとしては、再生セルロース繊維(ビスコース、キュプラ、テンセル等)、セルロース誘導体繊維、エレクトロスピニング法により得られた再生セルロース又はセルロース誘導体の極細糸等を使用できる。これらの原料は、必要に応じて、グラインダー、リファイナー等の機械力による叩解、フィブリル化、微細化等によって、繊維径、繊維長、フィブリル化度等を調整したり、薬品を用いて漂白、精製し、セルロース以外の成分(リグニン等の酸不溶成分、ヘミセルロース等のアルカリ可溶多糖類、等)の含有率を調整したりすることができる。
微細化処理における水又は有機溶媒の使用量は、微細化前の繊維を分散できる有効量であればよく、特に制限はないが、微細化前の繊維に対して、好ましくは1質量倍以上、より好ましくは10質量倍以上、さらに好ましくは50質量倍以上であり、好ましくは2000質量倍以下、より好ましくは1000質量倍以下である。
I(200):セルロースI型結晶における200面(2θ=22.5°)による回折ピーク強度
I(amorphous):セルロースI型結晶におけるアモルファスによるハローピーク強度であって、200面の回折角度より4.5°低角度側(2θ=18.0°)のピーク強度
結晶化度(%)=h1/h0×100
R1-C(=O)-X (1)
(式中、R1は炭素数1~24のアルキル基、炭素数2~24のアルケニル基、炭素数3~24のシクロアルキル基、又は炭素数6~24のアリール基を表し、XはCl、Br又はIである。)
酸ハロゲン化物の具体例としては、塩化アセチル、臭化アセチル、ヨウ化アセチル、塩化プロピオニル、臭化プロピオニル、ヨウ化プロピオニル、塩化ブチリル、臭化ブチリル、ヨウ化ブチリル、塩化ベンゾイル、臭化ベンゾイル、ヨウ化ベンゾイル等が挙げられるが、これらに限定されない。中でも、酸塩化物は反応性と取り扱い性の点から好適に採用できる。尚、酸ハロゲン化物の反応においては、触媒として働くと同時に副生物である酸性物質を中和する目的で、アルカリ性化合物を1種又は2種以上添加してもよい。アルカリ性化合物としては、具体的には:トリエチルアミン、トリメチルアミン等の3級アミン化合物;及びピリジン、ジメチルアミノピリジン等の含窒素芳香族化合物;が挙げられるが、これに限定されない。
酢酸、プロピオン酸、(イソ)酪酸、吉草酸等の飽和脂肪族モノカルボン酸無水物;(メタ)アクリル酸、オレイン酸等の不飽和脂肪族モノカルボン酸無水物;
シクロヘキサンカルボン酸、テトラヒドロ安息香酸等の脂環族モノカルボン酸無水物;
安息香酸、4-メチル安息香酸等の芳香族モノカルボン酸無水物;
二塩基カルボン酸無水物として、例えば、無水コハク酸、アジピン酸等の無水飽和脂肪族ジカルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の無水不飽和脂肪族ジカルボン酸無水物、無水1-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸等の無水脂環族ジカルボン酸、及び、無水フタル酸、無水ナフタル酸等の無水芳香族ジカルボン酸無水物等;
3塩基以上の多塩基カルボン酸無水物類として、例えば、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の(無水)ポリカルボン酸等が挙げられる。
尚、酸無水物の反応においては、触媒として、硫酸、塩酸、燐酸等の酸性化合物、又は金属塩化物、金属トリフラート等のルイス酸、又はトリエチルアミン、ピリジン等のアルカリ性化合物を1種又は2種以上添加してもよい。
R-COO-CH=CH2 …式(1)
{式中、Rは、炭素数1~24のアルキル基、炭素数2~24のアルケニル基、炭素数3~16のシクロアルキル基、又は炭素数6~24のアリール基のいずれかである。}で表されるカルボン酸ビニルエステルが好ましい。カルボン酸ビニルエステルは、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニルアジピン酸ジビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、安息香酸ビニル、及び桂皮酸ビニルからなる群から選択された少なくとも1種であることがより好ましい。カルボン酸ビニルエステルによるエステル化反応のとき、触媒として、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、1~3級アミン、4級アンモニウム塩、イミダゾール及びその誘導体、ピリジン及びその誘導体、並びにアルコキシドからなる群から選択される1種又は2種以上を添加しても良い。
置換度DS = 4.13 × IRインデックス(1030)
を使用することで求めることができる。
DS=(Inf)×6/(Inp)
たとえば、修飾基がアセチル基の場合、-CH3に帰属される23ppmのシグナルを用いれば良い。
用いる13C固体NMR測定の条件は例えば以下の通りである。
装置 :Bruker Biospin Avance500WB
周波数 :125.77MHz
測定方法 :DD/MAS法
待ち時間 :75sec
NMR試料管 :4mmφ
積算回数 :640回(約14Hr)
MAS :14,500Hz
化学シフト基準:グリシン(外部基準:176.03ppm)
DS不均一比 = DSs/DS
変動係数(%)= 標準偏差σ / 算術平均μ × 100
DSs=(Ixf)×5/(Ixp)
たとえば、修飾基がアセチル基の場合、C1sスペクトルを285eV、286eV,288eV,289eVでピーク分離を行った後、Ixpには289evのピークを、Ixfにはアセチル基のO-C=O結合由来のピーク(286eV)を用いれば良い。
用いるXPS測定の条件は例えば以下の通りである。
使用機器 :アルバックファイVersaProbeII
励起源 :mono.AlKα 15kV×3.33mA
分析サイズ :約200μmφ
光電子取出角 :45°
取込領域
Narrow scan:C 1s、O 1s
Pass Energy:23.5eV
樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、ゴム等を用いることができる。
熱可塑性樹脂の具体例としては、特に制限されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル系樹脂;ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール等のビニル系樹脂;ポリアセタール系樹脂;ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリスチレン、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-イソプレンブロック共重合体等のポリスチレン系樹脂;ポリアクリロニトリル、スチレン-アクリロニトリル共重合体、ABS樹脂等のニトリル系樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリアミド;ポリウレタン;ポリイミド;ポリアミドイミド;ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸等のアクリル樹脂;ポリカーボネート;ポリフェニレンスルフィド;ポリスルフォン;ポリエーテルスルフォン;ポリエーテルニトリル;ポリエーテルケトン;ポリケトン;液晶ポリマー;シリコーン樹脂;アイオノマー;セルロース(木材パルプ、綿等の天然セルロース;ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン及びテンセル等の再生セルロース);ニトロセルロース等のセルロース誘導体が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で使用してもよく、2種類以上をブレンドして用いてもよい。ブレンドする場合のブレンド比は各種用途に応じて適宜選択されればよい。
これらの詳細は、例えば、Polymer Process Engineering(Prentice-Hall,Inc 1994)の291ページ~294ページ等に記載されている。
このとき濃度の異なるいくつかの測定溶媒の点数は、少なくとも4点とすることが精度の観点より望ましい。このとき、推奨される異なる粘度測定溶液の濃度は、好ましくは、0.05g/dL、0.1g/dL、0.2g/dL、0.4g/dLの少なくとも4点である。
熱硬化性樹脂の具体例としては、特に制限されるものではないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、アリールアルキレン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、グリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂、シクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートとの共重合エポキシ樹脂、エポキシ変性のポリブタジエンゴム誘導体、CTBN変性エポキシ樹脂、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、フェニル-1,3-ジグリシジルエーテル、ビフェニル-4,4’-ジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールまたはプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、未変性のレゾールフェノール樹脂、桐油、アマニ油、クルミ油等で変性した油変性レゾールフェノール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂等のフェノール樹脂、フェノキシ樹脂、尿素(ユリア)樹脂、メラミン樹脂等のトリアジン環含有樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、ノルボルネン系樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、マレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリアゾメチン樹脂、熱硬化性ポリイミド等が挙げられる。
これらの熱硬化性樹脂は、単独で使用してもよく、2種類以上をブレンドして用いてもよい。ブレンドする場合のブレンド比は各種用途に応じて適宜選択されればよい。
光硬化性樹脂の具体例としては、特に制限されるものではないが、公知一般の(メタ)アクリレート樹脂、ビニル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、反応機構により、概ね光により発生したラジカルによりモノマーが反応するラジカル反応型と、モノマーがカチオン重合するカチオン反応型とに分類される。ラジカル反応型のモノマーには、(メタ)アクリレート化合物、ビニル化合物(例えばある種のビニルエーテル)等が該当する。カチオン反応型としては、エポキシ化合物、ある種のビニルエーテル等が該当する。なお、例えば、カチオン反応型として用いることができるエポキシ化合物は、熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂の両者のモノマーとなり得る。
エラストマー(すなわちゴム)の具体例としては、特に制限されるものではないが、例えば、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合体ゴム、クロロプレンゴム、スチレン-イソプレン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体ゴム、イソプレン-ブタジエン共重合体ゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、改質天然ゴム(エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素化天然ゴム、脱タンパク天然ゴム等)、エチレン-プロピレン共重合体ゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。これらのゴムは、単独で使用してもよく、2種類以上をブレンドして用いてもよい。ブレンドする場合のブレンド比は各種用途に応じて適宜選択されればよい。
本実施形態の樹脂組成物において、樹脂は、実用特性、特に金型離形性を向上させるために、樹脂総量の50質量%超を占めるベース樹脂と、当該ベース樹脂とは異なる追加樹脂とで構成されてよい。従来、セルロース繊維含有樹脂組成物を金型成形する際には、金型からの離形不良、スプルーの固定側金型への残留等の成形トラブルが頻発し、これら成形トラブルの都度成形機を停止してメンテナンスをしなければならないという課題があった。ベース樹脂と、これと異なる追加樹脂とを組合せる場合、樹脂組成物の成形性を所望に応じて調整できるため、良好な物性に加えて良好な金型離形性をも有する樹脂組成物を得ることができる。ベース樹脂と追加樹脂との組合せは、樹脂組成物の金型離形性を向上できる組合せであれば特に制限されるものではないが、例えば、ベース樹脂としてポリアミドを選択した場合の追加樹脂としては:ベース樹脂と種類、末端比率及び/又は分子量が異なるポリアミド;ポリプロピレン(酸変性ポリプロピレンであってもよい、以下同じ。)等のポリオレフィン;ポリアセタール等が挙げられる。追加樹脂としてのポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6,I、ポリアミド610、ポリアミド66/I等が挙げられる。追加樹脂は、1種類の樹脂であってよく、又は2種類以上のブレンド物であってもよい。ブレンド物のブレンド比は各種用途に応じて適宜選択されればよい。
本実施形態の樹脂組成物は、その性能を向上させるために、必要に応じて追加の成分をさらに含んでも良い。追加の成分としては特に限定されないが、例えば、分散剤;セルロース繊維以外の高耐熱性の有機ポリマーからなる微細繊維フィラー成分(例えば、アラミド繊維のフィブリル化繊維又は微細繊維);相溶化剤;可塑剤;でんぷん類、アルギン酸等の多糖類;ゼラチン、ニカワ、カゼイン等の天然たんぱく質;ゼオライト、セラミックス、タルク、シリカ、金属酸化物、金属粉末等の無機化合物;着色剤;香料;顔料;流動調整剤;レベリング剤;導電剤;帯電防止剤;紫外線吸収剤;紫外線分散剤;消臭剤等が挙げられる。任意の追加の成分の樹脂組成物中の含有割合は、本発明の所望の効果が損なわれない範囲で適宜選択されるが、例えば0.01~50質量%、又は0.1~30質量%であってよい。
好ましい態様において、樹脂組成物は分散剤を更に含んでよい。分散剤は、セルロース繊維を樹脂組成物中で安定に分散させる機能を有する。分散剤は、樹脂組成物中でのセルロース繊維の分散状態を向上、制御することによって、樹脂組成物の力学物性を向上させることができる。一態様において、分散剤は、界面活性剤、沸点160℃以上の有機化合物、及びセルロース繊維を高度に分散可能な化学構造を有する樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である。一態様において、分散剤は、界面活性剤、及び沸点160℃以上の有機化合物からなる群から選択される1種以上である。
界面活性剤は、陰イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、両性イオン系界面活性剤、及び陽イオン系界面活性剤のいずれも使用することができるが、セルロースとの親和性の点で、陰イオン系界面活性剤、及び非イオン系界面活性剤が好ましく、非イオン系界面活性剤がより好ましい。
これらの中でも、特にロジンエステル型、及び硬化ひまし油型がより好ましい。
本発明の一態様は、本開示の樹脂組成物の製造方法を提供する。
一態様において、樹脂組成物の製造方法は、セルロース繊維とハロゲン塩とを混合してマスターバッチを調製する工程(第一工程)、及び該マスターバッチと樹脂とを混合する工程(第二工程)を含む。この態様においては、セルロース繊維及びハロゲン塩のそれぞれについて、全部を第一工程で添加してもよいし、一部を第一工程、残部を第二工程で添加してもよく、樹脂について、全部を第二工程で添加してもよいし、一部を第一工程、残部を第二工程で添加してもよい。
別の一態様において、樹脂組成物の製造方法は、セルロース繊維を熱硬化性樹脂と混合し、次いで成形し、次いで熱硬化処理を行う工程、又はセルロース繊維を光硬化性樹脂と混合し、次いで成形し、次いで光硬化処理を行う工程、を含む。
別の一態様において、樹脂組成物の製造方法は、セルロース繊維をゴムと混合し、次いで成形し、次いで加硫を行う工程を含む。
1.単軸又は二軸押出機を用いて、セルロース繊維(乾燥粉末又は水分散体)と熱可塑性樹脂との混合物を溶融混練した後、
(1)ストランド状に押出し、水浴中で冷却固化させ、樹脂組成物のペレット状成形体を得る方法、
(2)棒状又は筒状に押出し冷却して、樹脂組成物の押出成形体を得る方法、若しくは
(3)Tダイより押出し、樹脂組成物のシート状又はフィルム状成形体を得る方法、
2.セルロース繊維(乾燥粉末又は水分散体)と熱可塑性樹脂モノマーとを混合し、重合反応(具体的には固相重合、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合等)を行い、得られた生成物を、上記(1)~(3)のいずれかの方法で押出して、樹脂組成物の成形体を得る方法、
3.熱可塑性樹脂モノマー及びセルロース繊維の水分散液を混合し、重合反応を行い、得られた生成物を、上記(1)~(3)のいずれかの方法で押出して、樹脂組成物の成形体を得る方法、
等が挙げられる。
1.樹脂、セルロース繊維(乾燥粉末又は水分散体)、必要により分散剤を所望の比率で混合した後、一括溶融混練する方法、
2.樹脂及び必要により分散剤を溶融混練した後、セルロース繊維(乾燥粉末又は水分散体)を添加して、更に溶融混練する方法、
等が挙げられる。
本発明の一態様はまた、セルロース繊維と樹脂とを含む樹脂組成物の製造において、樹脂組成物材料にハロゲン塩を添加することを含む、樹脂組成物の物性を向上させる方法を提供する。当該物性が向上された樹脂組成物は本開示の樹脂組成物であってよく、ハロゲン塩の添加態様の好適例は≪樹脂組成物の製造方法≫の項で前述したのと同様であってよい。一態様において、当該樹脂組成物の引張降伏強度は、ハロゲン塩を用いない他は樹脂組成物と同一である比較樹脂組成物の引張降伏強度の1.05倍以上、又は1.1倍以上、又は1.2倍以上であることができ、及び/又は、当該樹脂組成物の引張弾性率は、ハロゲン塩を用いない他は樹脂組成物と同一である比較樹脂組成物の引張弾性率の1.02倍以上、又は1.03倍以上、又は1.04倍以上であることができる。樹脂組成物の製造容易性の観点から、樹脂組成物の引張降伏強度は、ハロゲン塩を用いない他は樹脂組成物と同一である比較樹脂組成物の引張降伏強度の、5.0倍以下、又は3.0倍以下、又は2.0倍以下であってもよく、樹脂組成物の引張弾性率は、ハロゲン塩を用いない他は樹脂組成物と同一である比較樹脂組成物の引張弾性率の、2.0倍以下、又は1.8倍以下、又は1.5倍以下であってもよい。
5MPa≦(SA-SB)/A≦100MPa
(式中、Aは樹脂組成物中のハロゲン含有化合物の含有率(単位:質量%)であり、SAは前記樹脂組成物の引張降伏強度(単位:MPa)であり、SBはハロゲン含有化合物を含まない他は前記樹脂組成物と同組成である比較樹脂組成物の引張降伏強度(単位:MPa)である。)
を満たす。(SA-SB)/Aは、ハロゲン含有化合物による引張強度向上効果に優れる点で、好ましくは、5MPa以上、又は10MPa以上、又は15MPa以上であり、樹脂組成物の製造容易性の観点から、好ましくは、100MPa以下、又は85MPa以下、又は70MPa以下である。
本発明の一態様は、樹脂組成物を用いて形成されてなる樹脂成形体も提供する。樹脂成形体の形状は、三次元の立体形状でも、シート状、フィルム状又は繊維状でも構わない。例えば、樹脂成形体の一部(例えば数箇所)を加熱処理する事により溶融させ、例えば樹脂又は金属の基板に接着して用いても構わない。樹脂成形体は、樹脂又は金属の基板に塗布された塗膜であってもよく、基板との積層体を形成してもよい。また、シート状、フィルム状又は繊維状の樹脂成形体につき、アニール処理、エッチング処理、コロナ処理、プラズマ処理、シボ転写、切削、表面研磨等の二次加工を行っても構わない。
各実施例及び比較例で得た樹脂組成物について、下記評価を行った。なお、ポリアミド系材料は、吸湿による変化が起きるため、成形直後にアルミ防湿袋に保管し、吸湿を抑制した。
[多孔質シートの作製]
まず、ウェットケーキをtert-ブタノール中に添加し、さらにミキサー等で凝集物が無い状態まで分散処理を行った。セルロース繊維固形分重量0.5gに対し、濃度が0.5質量%となるように調整した。得られたtert-ブタノール分散液100gをろ紙上で濾過し、150℃にて乾燥させた後、ろ紙を剥離してシートを得た。このシートの透気抵抗度がシート目付10g/m2あたり100sec/100ml以下のものを多孔質シートとし、測定サンプルとして使用した。
23℃、50%RHの環境で1日静置したサンプルの目付W(g/m2)を測定した後、王研式透気抵抗試験機(旭精工(株)製、型式EG01)を用いて透気抵抗度R(sec/100ml)を測定した。この時、下記式に従い、10g/m2目付あたりの値を算出した。
目付10g/m2あたり透気抵抗度(sec/100ml)=R/W×10
ウェットケーキをtert-ブタノールで0.01質量%まで希釈し、高剪断ホモジナイザー(IKA製、商品名「ウルトラタラックスT18」)を用い、処理条件:回転数25,000rpm×5分間で分散させ、マイカ上にキャストし、風乾したものを、高分解能走査型電子顕微鏡で測定した。測定は、少なくとも100本のセルロース繊維が観測されるように倍率を調整して行い、無作為に選んだ100本のセルロース繊維の長径(L)を測定し、100本のセルロース繊維の加算平均を算出した。
比表面積・細孔分布測定装置(Nova-4200e,カンタクローム・インスツルメンツ社製)にて、多孔質シート試料約0.2gを真空下で120℃、2時間乾燥させた後、液体窒素の沸点における窒素ガスの吸着量を相対蒸気圧(P/P0)が0.05以上0.2以下の範囲にて5点測定した後(多点法)、同装置プログラムによりBET比表面積(m2/g)を算出した。
多孔質シートを0.88g秤量し、ハサミで小片に切り刻んだ後、軽く攪拌したうえで、純水20mLを加え1日放置した。次に遠心分離によって水と固形分を分離した。続いてアセトン20mLを加え、軽く攪拌したうえで1日放置した。次に遠心分離によってアセトンと固形分を分離した。続いてN、N-ジメチルアセトアミド20mLを加え、軽く攪拌したうえで1日放置した。再度、遠心分離によってN、N-ジメチルアセトアミドと固形分を分離したのち、N,N-ジメチルアセトアミド20mLを加え、軽く攪拌したうえで1日放置した。遠心分離によってN,N-ジメチルアセトアミドと固形分を分離し、固形分に塩化リチウムが8質量パーセントになるように調液したN,N-ジメチルアセトアミド溶液を19.2g加え、スターラーで攪拌し、目視で溶解するのを確認した。セルロースを溶解させた溶液を0.45μmフィルターでろ過し、ろ液をゲルパーミエーションクロマトグラフィ用の試料として供した。用いた装置と測定条件は下記である。
装置 :東ソー社 HLC-8120
カラム:TSKgel SuperAWM-H(6.0mmI.D.×15cm)×2本
検出器:RI検出器
溶離液:N、N-ジメチルアセトアミド(塩化リチウム0.2%)
流速:0.6mL/分
検量線:プルラン換算
多孔質シートのX線回折測定を行い、下記式より結晶化度を算出した。
結晶化度(%)=[I(200)-I(amorphous)]/I(200)×100
I(200):セルロースI型結晶における200面(2θ=22.5°)による回折ピーク強度
I(amorphous):セルロースI型結晶におけるアモルファスによるハローピーク強度であって、200面の回折角度より4.5°低角度側(2θ=18.0°)のピーク強度
装置 MiniFlex(株式会社リガク製)
操作軸 2θ/θ
線源 CuKα
測定方法 連続式
電圧 40kV
電流 15mA
開始角度 2θ=5°
終了角度 2θ=30°
サンプリング幅 0.020°
スキャン速度 2.0°/min
サンプル:試料ホルダー上に多孔質シートを貼り付け
多孔質シートの5か所のATR-IR法による赤外分光スペクトルを、フーリエ変換赤外分光光度計(JASCO社製 FT/IR-6200)で測定した。赤外分光スペクトル測定は以下の条件で行った。
積算回数:64回、
波数分解能:4cm-1、
測定波数範囲:4000~600cm-1、
ATR結晶:ダイヤモンド、
入射角度:45°
得られたIRスペクトルよりIRインデックスを、下記式(1):
IRインデックス= H1730/H1030・・・(1)
に従って算出した。式中、H1730及びH1030は1730cm-1、1030cm-1(セルロース骨格鎖C-O伸縮振動の吸収バンド)における吸光度である。ただし、それぞれ1900cm-1と1500cm-1を結ぶ線と800cm-1と1500cm-1を結ぶ線をベースラインとして、このベースラインを吸光度0とした時の吸光度を意味する。
そして、各測定場所の平均置換度をIRインデックスより下記式(2)に従って算出し、その平均値をDSとした。
DS=4.13×IRインデックス・・・(2)
アルカリ可溶多糖類含有率はセルロース繊維について非特許文献(木質科学実験マニュアル、日本木材学会編、92~97頁、2000年)に記載の手法より、ホロセルロース含有率(Wise法)からαセルロース含有率を差し引くことで求めた。1つのサンプルにつき3回アルカリ可溶多糖類含有率を算出し、算出したアルカリ可溶多糖類含有率の数平均をセルロース繊維のアルカリ可溶多糖類平均含有率とした。
[引張強度(引張降伏強度)]
最大型締圧力75トンの射出成形機を用いて、ISO294-3に準拠した多目的試験片を成形し、JIS K6920-2に準拠した条件でn=10で実施した。なお、ポリアミド樹脂は、吸湿による変化が起きるため、成形直後にアルミ防湿袋に保管し、吸湿を抑制した。また、各実施例の引張強度について、ハロゲン含有化合物を含まない他は同組成の樹脂組成物に係る対応の比較例の引張強度に対する比を、引張強度向上率として求めた。
JIS K6920-2に準拠した条件で測定した。また、各実施例の引張弾性率について、ハロゲン含有化合物を含まない他は同組成の樹脂組成物に係る対応の比較例の引張弾性率に対する比を、引張弾性率向上率として求めた。
最大型締圧力75トンの射出成形機を用いて、冷却時間10秒、金型温度120℃、シリンダー温度250℃の条件で多目的試験片を成形し、金型離形性を以下の5段階で評価した。ここで、金型離形不良は、固定側金型へのスプルー取られ若しくは可動側金型からの成形片落下不良と定義した。
A・・・100ショット中、金型離形不良が0回であった
B・・・100ショット中、1~3回金型離形不良が生じた
C・・・100ショット中、4~30回金型離形不良が生じた
D・・・100ショット中、31~50回金型離形不良が生じた
E・・・100ショット中、51~100回金型離形不良が生じた
各実施例及び比較例に係る樹脂組成物の製造に用いた材料は以下のとおりである。
ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化ナトリウム、塩化ナトリウム(いずれも東京化成工業製)、エチレンビスペンタブロモフェニル(商品名:サイニックス8010:アルベマール日本製)を用いた。
CNF-A
コットンリンターパルプを1質量部、一軸撹拌機(アイメックス社製 DKV-1 φ125mmディゾルバー)を用いジメチルスルホキサイド(DMSO)30質量部中で500rpmにて1時間、常温で攪拌した。続いて、ホースポンプでビーズミル(アイメックス社製 NVM-1.5)にフィードし、DMSOのみで180分間循環運転させ、微細セルロース繊維スラリーとして、固形分率3.2質量%のスラリーS1(DMSO溶媒)を31質量部得た。
反応を停止するため、純水30質量部を加えて十分に撹拌した後、脱水機に入れて濃縮した。得られたウェットケーキを再度30質量部の純水に分散、撹拌、濃縮する洗浄操作を合計5回繰り返すことで、未反応試薬及び溶媒等を除去し、固形分率10質量%のアセチル化された微細セルロース繊維ケーキ(CNF-Aケーキ)(水溶媒)を10質量部得た。このケーキから多孔質シートを作製してアシル置換度(DS)を求めたところ、DS=1.0であった。
コットンリンターパルプ3質量部を水27質量部に浸漬させてオートクレーブ内で130℃、4時間の熱処理を行った。得られた膨潤パルプは水洗し、水を含む精製パルプ(30質量部)を得た。つづいて、水を含む精製パルプ30質量部に水を170質量部入れて水中に分散させて(固形分率1.5質量%)、ディスクリファイナー装置として相川鉄工(株)製SDR14型ラボリファイナー(加圧型DISK式)を用い、ディスク間のクリアランスを1mmで該水分散体を20分間叩解処理した。そして、脱水機により固形分率10質量%まで濃縮し、CNF-Bケーキ(水溶媒)30質量部を得た。
市販のセリッシュKY100G(ダイセルファインケム製)をCNF-Cケーキとして使用した。
(CNF-Bを更に高圧ホモジナイザーで解繊処理したもの)
CNF-Bケーキを、クリアランスをほとんどゼロに近いレベルにまで低減させた条件下で徹底的に叩解を行い、叩解水分散体(固形分濃度:1.5質量%)を得た。得られた叩解水分散体を、そのまま高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社(伊)製NSO15H)を用いて操作圧力100MPa下で15回の微細化処理し、セルロース繊維スラリー(固形分濃度:1.5質量%)を得た。そして、脱水機により固形分率10質量%まで濃縮し、CNF-Dケーキ(水溶媒)30質量部を得た。
ポリアミド6(宇部興産製:1013A)
ポリアミド6(宇部興産製:1013B)
ポリアミド6(宇部興産製:1022B)
ポリアミド66(旭化成製:LEONA1300S)
ポリアミド66/6I(特開2014-37481号公報に記載の方法にて製造)
ポリアミド610(アルケマ製:Hiprolon 70NN)
ポリプロピレン(PP)(プライムポリマー製:J105G)
マレイン酸変性ポリプロピレン(MAPP)(三洋化成製:ユーメックス1010)
ポリアセタール(POM)(旭化成製:TENAC HC450)
ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド共重合体(PEG-PPG)(三洋化成製:PE-74)
硬化ひまし油エーテル(青木油脂製:RCW-20)
[実施例1~18,21~46]
上記材料を表1~4に示す配合で用い、下記手順で樹脂組成物を調製した。
セルロースケーキと分散剤とを、表1~4に示す配合で、プラネタリーミキサーを用いて減圧乾燥し、セルロース乾燥体を得た。
樹脂100質量部にハロゲン塩10質量部を配合し、二軸押出機で混練し、ハロゲン含有樹脂ペレットを得た。
上記、セルロース乾燥体と、ハロゲン塩複合樹脂含有ペレットと、樹脂とを表1~4に示す割合で配合し、二軸押出機で混練し、セルロース含有樹脂ペレットを得た。
下記手順で樹脂組成物を調製した。
セルロースケーキと分散剤とハロゲン塩とを、表3に示す配合で、プラネタリーミキサーを用いて減圧乾燥し、セルロース乾燥体を得た。
セルロース乾燥体と、樹脂とを表3に示す割合で配合し、二軸押出機で混練し、セルロース含有樹脂ペレットを得た。
下記手順で樹脂組成物を調製した。
セルロースケーキと分散剤とを、表3に示す配合で、プラネタリーミキサーを用いて減圧乾燥し、セルロース乾燥体を得た。
セルロース乾燥体と、樹脂と、ハロゲン塩とを表3に示す割合で配合し、二軸押出機で混練し、セルロース含有樹脂ペレットを得た。
表5及び6に示す組成で、実施例1と同様にして、樹脂組成物を得た。
評価結果を表1~6に示す。
Claims (27)
- セルロース繊維と、ポリアミド系樹脂を含む樹脂と、少なくとも一部をハロゲン化物イオンとして含むハロゲン含有化合物とを含む、樹脂組成物であって、
前記セルロース繊維が、重量平均分子量(Mw)100000以上、及び重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)6以下を有する、樹脂組成物。 - セルロース繊維と、ポリアミド系樹脂を含む樹脂と、少なくとも一部をハロゲン化物イオンとして含むハロゲン含有化合物と、分散剤とを含む、樹脂組成物。
- セルロース繊維と、ポリアミド系樹脂を含む樹脂と、少なくとも一部をハロゲン化物イオンとして含むハロゲン含有化合物とを含む、樹脂組成物であって、
以下の関係:
5MPa≦(S A -S B )/A≦100MPa
(式中、Aは前記樹脂組成物中のハロゲン含有化合物の含有率(単位:質量%)であり、S A は前記樹脂組成物の引張降伏強度(単位:MPa)であり、S B はハロゲン含有化合物を含まない他は前記樹脂組成物と同組成である比較樹脂組成物の引張降伏強度(単位:MPa)である。)
を満たす、樹脂組成物。 - 前記セルロース繊維の量が、前記樹脂100質量部に対して5質量部~50質量部であり、
前記ハロゲン含有化合物のハロゲンの量が、前記セルロース繊維100質量部に対して0.01質量部~1000質量部である、請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。 - 前記ハロゲン含有化合物のハロゲンが、ヨウ素及び臭素からなる群から選択される1種以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
- 前記ハロゲン含有化合物の少なくとも一部がアルカリ金属を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
- 前記アルカリ金属の少なくとも一部がアルカリ金属イオンである、請求項6に記載の樹脂組成物。
- 前記アルカリ金属が、ナトリウム及びカリウムからなる群から選択される1種以上である、請求項6又は7に記載の樹脂組成物。
- 前記ハロゲン含有化合物が、ハロゲン含有無機塩及びその電離生成物からなる群から選択される1種以上である、請求項1~8のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
- 前記セルロース繊維の数平均繊維径が、2nm~1000nmである、請求項1~9のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
- 前記セルロース繊維が、アルカリ可溶多糖類平均含有率12質量%以下、及び結晶化度60%以上を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
- 前記セルロース繊維が、化学修飾されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
- 前記化学修飾がアシル化であり、前記セルロース繊維のアシル置換度(DS)が0.1~1.0である、請求項12に記載の樹脂組成物。
- 前記樹脂が、前記ポリアミド系樹脂と、酸変性ポリオレフィン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、及びアクリル系樹脂からなる群から選択される1種以上との組合せである、請求項1~13のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
- 前記樹脂が、前記樹脂総量の50質量%超を占めるベース樹脂と、前記ベース樹脂とは異なる追加樹脂とで構成される、請求項1~14のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
- 前記樹脂100質量部に対する前記追加樹脂の量が、0.01~25質量部である、請求項15に記載の樹脂組成物。
- 前記追加樹脂が、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6,I、ポリアミド610、ポリアミド66/6I、ポリプロピレン、及びポリアセタールからなる群から選択される1種以上である、請求項15又は16に記載の樹脂組成物。
- セルロース繊維と、ポリアミド系樹脂を含む樹脂と、少なくとも一部をハロゲン化物イオンとして含むハロゲン含有化合物とを含む、樹脂組成物の製造方法であって、
セルロース繊維とハロゲン塩とを混合してマスターバッチを調製する工程、及び
前記マスターバッチと樹脂とを混合する工程
を含む、方法。 - セルロース繊維と、ポリアミド系樹脂を含む樹脂と、少なくとも一部をハロゲン化物イオンとして含むハロゲン含有化合物とを含む、樹脂組成物の製造方法であって、
樹脂とハロゲン塩とを混合してマスターバッチを調製する工程、及び
前記マスターバッチとセルロース繊維とを混合する工程
を含む、方法。 - セルロース繊維と、ポリアミド系樹脂を含む樹脂と、少なくとも一部をハロゲン化物イオンとして含むハロゲン含有化合物とを含む、樹脂組成物の製造方法であって、
セルロース繊維と、ハロゲン塩と、樹脂とを混合する工程を含む、方法。 - 前記樹脂が熱可塑性樹脂であり、前記混合が溶融混練である、請求項18~20のいずれか一項に記載の方法。
- 前記樹脂組成物の引張降伏強度が、ハロゲン塩を用いない他は前記樹脂組成物と同一である比較樹脂組成物の引張降伏強度の1.05倍以上である、請求項18~21のいずれか一項に記載の方法。
- 前記樹脂組成物の引張弾性率が、ハロゲン塩を用いない他は前記樹脂組成物と同一である比較樹脂組成物の引張弾性率の1.02倍以上である、請求項18~22のいずれか一項に記載の方法。
- セルロース繊維と樹脂とを含む樹脂組成物の製造において、樹脂組成物材料にハロゲン塩を添加することを含む、樹脂組成物の物性を向上させる方法であって、
前記物性が向上された樹脂組成物が、セルロース繊維と、ポリアミド系樹脂を含む樹脂と、少なくとも一部をハロゲン化物イオンとして含むハロゲン含有化合物とを含む樹脂組成物であり、
前記物性が向上された樹脂組成物の引張降伏強度が、ハロゲン塩を用いない他は前記樹脂組成物と同一である比較樹脂組成物の引張降伏強度の1.05倍以上である、方法。 - セルロース繊維と樹脂とを含む樹脂組成物の製造において、樹脂組成物材料にハロゲン塩を添加することを含む、樹脂組成物の物性を向上させる方法であって、
前記物性が向上された樹脂組成物が、セルロース繊維と、ポリアミド系樹脂を含む樹脂と、少なくとも一部をハロゲン化物イオンとして含むハロゲン含有化合物とを含む樹脂組成物であり、
前記物性が向上された樹脂組成物の引張弾性率が、ハロゲン塩を用いない他は前記樹脂組成物と同一である比較樹脂組成物の引張弾性率の1.02倍以上である、方法。 - 請求項1~17のいずれか一項に記載の樹脂組成物より形成される、樹脂ペレット。
- 請求項1~17のいずれか一項に記載の樹脂組成物より形成される、樹脂成形体。
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