JP2022171138A - 樹脂組成物及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】セルロースを含みかつ臭気及び熱エージングが抑制された樹脂組成物及びその製造方法を提供する。【解決手段】セルロースとポリアミドとを含む樹脂組成物であって、赤外分光分析において、波数1620~1650cm-1の範囲に観測されるカルボニル由来ピークのピーク強度に対する波数1700~1730cm-1の範囲に観測されるカルボニル由来ピークのピーク強度の割合が0.04未満であり、前記樹脂組成物中のジメチルスルホキシド(DMSO)の含有率が100質量ppm以下である、樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、セルロースと熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物及びその製造方法に関する。
近年、自動車、電化製品等の分野において、製品軽量化のために部品を金属から樹脂へ代替することが積極的になされている。このような用途において、樹脂単体では機械特性及び寸法安定性が不十分であることが多く、ガラス繊維、炭素繊維、タルク、クレイ等の各種無機材料がフィラーとして添加されるのが一般的である。しかし、これらのフィラーは比重が大きいため得られる樹脂成形体の重量が大きくなるという課題がある。
これに対しセルロースは、アラミド繊維に匹敵する高い弾性率と、ガラス繊維よりも低い線膨張係数とを有することが知られている。また、真密度が1.56g/cm3と、低く、一般的なフィラーとして使用されるガラス(密度2.4~2.6g/cm3)及びタルク(密度2.7g/cm3)と比較し圧倒的に軽い材料である。そして、天然資源として地球上に大量に存在し、かつ、カーボンニュートラルの観点から環境調和型材料とされ、熱可塑性樹脂のフィラーとして期待されている。
近年、セルロース繊維を高レベルで叩解及び粉砕して、繊維径1μm以下まで微細化(フィブリル化)させたセルロースナノファイバーを樹脂中にフィラーとして分散させる技術が提案されている。セルロースは、水中で分散している状態では、比較的安定な分散状態を維持するが、水を除去すると、セルロース同士の水素結合によって極めて容易に凝集してしまう。そこで、セルロースナノファイバーを化学修飾によって疎水化することで、水除去後の分散性を向上させることが提案されている。例えば特許文献1は、熱分解開始温度(TD)が260℃以上であり、数平均繊維径が10nm以上1μm未満であり、かつ、化学修飾されたセルロース微細繊維を0.5~40wt%含有する樹脂複合体の製造に際して、セルロースを、プロトン性溶媒及び修飾化剤を含む溶液中に分散させ、解繊と修飾を同時に行うことを記載する。
特開2019-6875号公報
セルロースが樹脂中に良好に分散してなる樹脂組成物は機械強度、耐熱性等において優れた性能を示し得るが、セルロース含有樹脂組成物においては、微細セルロース製造時に用いるプロトン性溶媒が微量に残留することにより、赤外分光測定で検知されるほどの樹脂劣化が押出製造中に発生してしまうという問題、及び、そのような樹脂組成物を用いて樹脂成形体を製造すると、当該樹脂成形体の使用時の熱履歴により樹脂がさらに劣化して本来意図される性能が十分発揮されない(すなわち、耐熱エージング性が悪い)という問題があり、これらの問題は、化学修飾によって疎水化されたセルロースを含む樹脂組成物において特に顕著であった。前述の特許文献1は、化学修飾されたセルロースを樹脂中に良好に分散させようとするものであるが、従来技術において、セルロース、特に疎水化されたセルロースを含みかつ、使用時の熱履歴による熱劣化の問題が解消された樹脂組成物は提案されていない。
本発明は上記の課題を解決し、セルロースを含みかつ使用時の熱履歴に対する耐熱劣化性に優れる樹脂組成物及びその製造方法の提供を目的とする。
本発明は、以下の態様を包含する。
[1] セルロースとポリアミドとを含む樹脂組成物であって、
赤外分光分析において、波数1620~1650cm-1の範囲に観測されるカルボニル由来ピークのピーク強度に対する波数1700~1730cm-1の範囲に観測されるカルボニル由来ピークのピーク強度の割合が0.04未満であり、
前記樹脂組成物中のジメチルスルホキシド(DMSO)の含有率が100質量ppm以下である、樹脂組成物。
[2] 前記ジメチルスルホキシド(DMSO)の含有率が、20質量ppm以下である、上記態様1に記載の樹脂組成物。
[3] 前記ジメチルスルホキシド(DMSO)の含有率が、0.4質量ppm以上である、上記態様1又は2に記載の樹脂組成物。
[4] 前記樹脂組成物がペレット形状である、上記態様1~3のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5] 前記樹脂組成物中の前記セルロースの含有率が、0.1質量%~30質量%である、上記態様1~4のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6] 前記セルロースが、径50~1000nm、長さ(L)/径(D)比30以上のセルロースナノファイバー、径100nm以下、長さ(L)/径(D)比30未満のセルロースナノクリスタル、若しくは径1μm超50μm以下のセルロースマイクロファイバー、又はこれらの2種以上の混合物である、上記態様1~5のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7] 前記セルロースの結晶化度が、60%以上である、上記態様1~6のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8] 前記セルロースがコットンリンター由来セルロースである、上記態様1~7のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9] 前記セルロースが、疎水化セルロースである、上記態様1~8のいずれかに記載の樹脂組成物。
[10] 前記セルロースが、エステル化セルロースである、上記態様9に記載の樹脂組成物。
[11] 前記エステル化セルロースのアシル置換度が0.01~2.0である、上記態様10に記載の樹脂組成物。
[12] 上記態様1~11のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法であって、
セルロース原料を解繊して前記セルロースを得るセルロース製造工程、及び
前記セルロースと前記ポリアミドとを溶融混練して前記樹脂組成物を得る樹脂組成物製造工程、
を含み、
前記セルロース製造工程が、ジメチルスルホキシド(DMSO)の存在下でセルロース原料を処理した後、前記ジメチルスルホキシド(DMSO)を除去することを含む、方法。
[13] 前記セルロースが疎水化セルロースであり、
前記セルロース製造工程において、前記セルロース原料をジメチルスルホキシド(DMSO)の存在下で疎水化し、次いでジメチルスルホキシド(DMSO)を水に置換し、次いで前記疎水化されたセルロース原料を解繊して前記セルロースを得る、上記態様12に記載の方法。
[14] 前記溶融混練に供されるセルロース中のジメチルスルホキシド(DMSO)の含有率が、100質量ppm以下である、上記態様12又は13に記載の方法。
本発明の一態様によれば、セルロースを含みかつ使用時の熱履歴に対する耐熱劣化性に優れる樹脂組成物及びその製造方法が提供され得る。
本発明の例示の態様について以下具体的に説明するが、本発明はこれらの態様に限定されるものではない。
≪樹脂組成物≫
本発明の一態様は、セルロースとポリアミドとを含む樹脂組成物を提供する。本発明者らは、樹脂組成物中の残存DMSO量を低減するとともに、樹脂の初期劣化を制御された範囲に抑えることが、樹脂組成物の耐熱エージング性の向上に有利であることを見出した。一態様においては、樹脂組成物の赤外分光分析(IR)において、波数1620~1650cm-1のカルボニル由来ピークのピーク強度に対する波数1700~1730cm-1のカルボニル由来ピークのピーク強度の割合(本開示で、ピーク強度割合ともいう。)が0.04未満である。波数1620~1650cm-1のピークは、アミド基のカルボニルに由来し、樹脂組成物中のアミド基(これは主にポリアミドのアミド結合である)の量を反映する。一方、波数1700~1730cm-1のピークは、アミド基ではないカルボニルに由来する。したがって、上記ピーク強度割合は、樹脂組成物中のポリアミドの分解によるカルボニルの生成を主に反映することになる。上記ピーク強度割合が小さい樹脂組成物は、その製造時にポリアミドの分解が抑制されていることを意味する。このような樹脂組成物は、例えば成形体に加工された後、使用時の熱履歴による劣化が生じ難い。上記ピーク強度割合は、使用時の耐熱劣化性に優れる樹脂組成物を得る観点から、一態様において0.04未満であり、好ましくは、0.03以下、又は0.02以下である。上記ピーク強度割合は小さい程好ましい。
上記ピーク強度割合は、赤外分光光度計を用いて得た反射型赤外吸収スペクトルから、下記式に従って算出されるIRインデックスの値である。
IRインデックス= H1730~1700/H1650~1620
ここで、H1730~1700は、セルロース骨格鎖C-O伸縮振動の吸収バンドである波数1730~1700cm-1における吸光度であり、H1650~1620は、ポリアミド樹脂骨格鎖C-O伸縮振動の吸収バンドである波数1650~1620cm-1における吸光度である。H1730~1700としては、1680cm-1付近と1850cm-1付近の他のピークがない位置を直線で結んだベースラインを引き、ベースラインの高さをピーク高さから差し引いた値を読み取る。また、H1650~1620としては、1550cm-1付近と1680cm-1付近の他のピークがない位置を直線で結んだベースラインを引き、ベースラインの高さをピーク高さから差し引いた値を読み取る。各波数範囲内に複数のピークが存在する場合には、最もピーク強度が大きいピークを上記算出に用いる。
上記ピーク強度割合を制御する手段としては、これらに限定されないが例えば以下の方法を例示できる。
(1)樹脂組成物中の残存ジメチルスルホキシド(DMSO)量を制御する方法。
(2)樹脂との溶融混練に供されるセルロース及び/又は樹脂の水分率を低減する方法。
水分率の低減方法としては、セルロース及び/又は樹脂の乾燥、溶融混練時の原料投入口の不活性ガス(例えば窒素)パージ、等を例示できる。
(3)押出条件を制御する方法。
例えば、押出機のバレル温度を上昇させることで加水分解を誘発する水分の揮発を促進し、又はバレル温度を低下させることでベント真空度を上昇させて当該水分の揮発を促進する方法、押出機のスクリューデザインの選択により溶融混練時の剪断力を弱くする方法等が挙げられる。
本発明者は、セルロースと熱可塑性樹脂、特にポリアミドとを含む樹脂組成物において、樹脂劣化が生じる原因を詳細に検討したところ、セルロースの製造時に用いたDMSOが当該セルロース中に残留し、セルロースと熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物の製造時の熱履歴でDMSOが樹脂組成物中に含まれてしまうことが、樹脂組成物の使用時の熱履歴による樹脂の劣化(例えば分子量及び/又は物性の低下)の一因であることを見出した。セルロースと熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物の製造においては、熱可塑性樹脂中で良好に分散できるセルロースを製造するために、セルロース原料をDMSO存在下(具体的には、DMSO溶媒中、又はDMSO含有混合溶媒中)で解繊することがある。また、熱可塑性樹脂に対するセルロースの分散性及び耐熱性を向上させる目的で、セルロースが疎水化されることがあるが、疎水化セルロースは、しばしば、DMSO存在下(具体的には、DMSO溶媒中、又はDMSO含有混合溶媒中)でセルロースを疎水化(典型的にはエステル化)する方法で調製される。上記のようにセルロースの製造時にDMSOを用いると、得られたセルロース中にDMSOが残留してしまう。この残留DMSOは、セルロースと熱可塑性樹脂との溶融混合時に一部熱分解してDMSO分解物を生じるため、樹脂組成物中にはDMSOとDMSO分解物とが残留することになる。これらの残留物のいずれかの成分が、樹脂組成物の使用時の熱履歴による樹脂劣化を促進すると考えられる。
一態様においては、樹脂組成物中のジメチルスルホキシド(DMSO)の含有率が100質量ppm以下である。DMSOは、沸点189℃を有し沸点付近での加熱で僅かに分解されるところ、セルロースと熱可塑性樹脂との溶融混合は、150℃~300℃程度で行われる場合が多いため、溶融混合時には系中のDMSOが僅かに分解することになる。したがって、樹脂組成物中にDMSOが存在していることは、当該樹脂組成物中にDMSO分解物も、DMSO量と比べて僅かな量で、存在していることを意味する。DMSO分解物は、樹脂組成物の劣化原因となり得ることから、樹脂組成物中の含有量が可能な限り低減されることが望まれる。上記観点から、本実施形態の樹脂組成物のDMSO含有率は、一態様において100質量ppm以下、好ましくは、80質量ppm以下、又は50質量ppm以下、又は30質量ppm以下、又は20質量ppm以下である。しかし、樹脂組成物の製造時(より具体的にはセルロースの製造時)にDMSOを用いる場合、樹脂組成物中のDMSO量を完全にゼロにすることは実際上ほぼ不可能である。したがって、樹脂組成物のDMSO含有率は、樹脂組成物の製造容易性の観点から、例えば、0.4質量ppm以上、又は1質量ppm以上、又は5質量ppm以上であってよい。なお本開示のDMSO含有率は、ガスクロマトグラフィ質量分析(GC/MS)法で測定される値である。
樹脂組成物のDMSO含有率を100質量ppm以下に制御する方法としては、これらに限定されないが以下の方法を例示できる。
(1)DMSO溶媒中又はDMSO含有混合溶媒中に分散させたセルロース原料から、解繊によってセルロースを製造する際、セルロース原料を任意に処理(例えば疎水化)した後、DMSOを別の分散媒に溶媒置換してDMSOを除去し、その後、当該セルロース原料を当該別の分散媒中で解繊して最終セルロースを得る方法。
(2)セルロースの製造時に、DMSOを例えば系中の水とともに凍結乾燥で除去する方法。
上記(1)の方法のように、DMSOの除去を解繊前に行うことにより、当該除去を解繊後に行う場合とくらべて、最終セルロース中の残留DMSO量を低減できる。すなわち、セルロース原料のサイズ(特に繊維径)は最終セルロースと比べて大きいことから、セルロース原料においては、DMSOから別の分散媒への溶媒置換時にセルロース間でのDMSO抱き込みによる溶媒置換不良が生じ難い。これによりセルロース原料からDMSOが良好に除去され、残存DMSO量が少ない最終セルロースを生成できると考えられる。DMSOから置換される別の分散媒としては、水等を使用できる。
以下、樹脂組成物の各成分の好適例について説明する。
<セルロース>
本実施形態の樹脂組成物はセルロースを含む。セルロースは、一態様において繊維状セルロースを含み、一態様において繊維状セルロースである。セルロースは、一態様においてセルロースナノファイバーを含み、一態様においてセルロースナノファイバーである。
樹脂組成物の総質量に対するセルロースの質量比率は、樹脂組成物の機械特性及び熱安定性の向上効果を良好に得る観点から、好ましくは、0.1質量%以上、又は1質量%以上、又は3質量%以上、又は5質量%以上であり、上限が、樹脂組成物中のベース樹脂の所望の特性を良好に維持する観点から、好ましくは、30質量%以下、又は25質量%以下、又は20質量%以下、又は15質量%以下である。
ポリアミド100質量部に対するセルロースの量は、好ましくは、0.1質量部以上、又は1質量部以上、又は2質量部以上、又は3質量部以上であり、好ましくは、40質量部以下、又は30質量部以下、又は20質量部以下、又は10質量部以下である。樹脂組成物の溶融時の流動性と機械的特性とのバランスの観点から、セルロース量を上述の範囲内とすることが望ましい。一態様においては、乾燥状態のセルロースが樹脂に混入された後に高度に再分散するため、樹脂対比のセルロース量が少なくても十分な力学的特性を実現することができる。
セルロースの原料としては、天然セルロース及び再生セルロースが挙げられる。天然セルロースとしては、木材種(広葉樹又は針葉樹)から得られる木材パルプ、非木材種(竹、麻系繊維、バガス、ケナフ、リンター等)から得られる非木材パルプ、及びこれらの精製パルプ(精製リンター等)等が使用できる。非木材パルプとしては、コットンリンターパルプを含むコットン由来パルプ、麻由来パルプ、バガス由来パルプ、ケナフ由来パルプ、竹由来パルプ、ワラ由来パルプ等を使用できる。コットン由来パルプ、麻由来パルプ、バガス由来パルプ、ケナフ由来パルプ、竹由来パルプ、及びワラ由来パルプは各々、コットンリント、コットンリンター、麻系のアバカ(例えば、エクアドル産又はフィリピン産のもの)、ザイサル、バガス、ケナフ、竹、ワラ等の原料から、蒸解処理による脱リグニン等の精製工程、漂白工程等を経て得られる精製パルプを原料とするセルロースを挙げることができる。
コットンリンター由来のセルロースは、結晶化度が高く耐熱性に優れる点で好ましい。なおセルロースの由来(例えば、セルロースがコットンリンター由来であること)は、セルロースのMw/Mnを測定することで確認できる。すなわち、コットンリンター由来セルロースは、Mw/Mnが6以下と特異な値を示すことから、このような特異なMw/Mnを示すセルロースはコットンリンター由来であると判断できる。
例えば、セルロースナノファイバーは、上述のパルプを100℃以上の熱水等で処理し、ヘミセルロース部分を加水分解して脆弱化したのち、高圧ホモジナイザー、マイクロフリュイダイザー、ボールミル、ディスクミル等の粉砕法により解繊して得ることができる。セルロースナノファイバーの径は、一態様において、2~1000nmであり、好ましくは4nm以上、又は5nm以上、又は10nm以上、又は15nm以上、又は20nm以上、又は50nm以上、又は100nm以上であり、好ましくは500nm以下、又は450nm以下、又は400nm以下、又は350nm以下、又は300nm以下、又は250nm以下、又は200nm以下である。
一態様において、セルロースは、径50nm~1000nm、長さ(L)/径(D)比30以上のセルロースナノファイバー(CNF)、径100nm以下、長さ(L)/径(D)比30未満のセルロースナノクリスタル(CNC)若しくは径1μm超~50μmのセルロースマイクロファイバー(CMF)、又はこれらの混合物を含んでよく、CNF、CNC若しくはCMF、又はこれらの混合物であることが望ましい。これらのセルロースとしては、前述で例示したような、天然セルロース及び再生セルロースが挙げられる。
CNFの径は、一態様において50nm以上、又は100nm以上であってよく、一態様において1000nm以下、又は400nm以下、又は200nm以下であってよい。CNFのL/Dは、一態様において、30以上、又は50以上、又は80以上、又は100以上であってよく、一態様において、5000以下、又は4000以下、又は3000以下であってよい。
セルロースナノクリスタル(CNC)とは、上述のパルプを原料とし、これを裁断後、塩酸、硫酸等の酸中で、セルロースの非晶部分を溶解した後に残留する結晶質のセルロースである。CNCの径は、一態様において100nm以下、又は80nm以下、又は70nm以下であってよく、一態様において3nm以上、又は5nm以上、又は10nm以上であってよい。CNCの長さ/径比率(L/D比)は、一態様において30未満、又は20以下、又は15以下、又は10以下であってよく、一態様において1以上、又は2以上、又は4以上、又は5以上であってよい。
セルロースマイクロファイバー(以下、CMFと称することがある)とは、CNFを製造する過程における解繊工程を少なくすることで得られる比較的大サイズの繊維状セルロースを指す。CMFの径は、一態様において1μm超、又は2μm以上、又は5μm以上、又は10μm以上であってよく、一態様において50μm以下、又は45μm以下、又は40μm以下、又は35μm以下であってよい。CMFのL/Dは、一態様において30以上、又は50以上、又は70以上であってよく、一態様において2000以下、又は1000以下、又は500以下であってよい。CMFは、通常CNFを製造するエネルギーの約半分程度のエネルギーで得られる。
一態様において、セルロースは、CNFとCMFとの二種併用であってよい。この場合、セルロースの合計量を100質量%としたとき、CMFの比率は、好ましくは、50質量%以上、又は55質量%以上、又は60質量%以上、又は70質量%以上であり、好ましくは、99質量%以下、又は97質量%以下、又は95質量%以下、又は93質量%以下、又は90質量%以下である。
一態様において、セルロースは、CNFとCNCとの二種併用、又は、CMFとCNCとの二種併用であってよい。この場合、セルロースの合計量を100質量%としたとき、CNCの比率は、好ましくは、50質量%以上、又は55質量%以上、又は60質量%以上、又は70質量%以上であり、好ましくは、99質量%以下、又は97質量%以下、又は95質量%以下、又は93質量%以下、又は90質量%以下である。
一態様において、セルロースは、CMFとCNFとCNCとの三種併用であってよい。この場合、セルロースの合計量を100質量%としたとき、CNCの比率は、好ましくは、50質量%以上、又は55質量%以上、又は60質量%以上、又は65質量%以上であり、好ましくは、99質量%以下、又は97質量%以下、又は95質量%以下、又は93質量%以下、又は90質量%以下である。またCNC以外のセルロースの総量を100質量%としたとき、CMFの比率は、好ましくは、50質量%以上、又は55質量%以上、又は60質量%以上、又は70質量%以上であり、好ましくは、99質量%以下、又は97質量%以下、又は95質量%以下、又は93質量%以下、又は90質量%以下である。
一態様において、樹脂組成物100質量%に対するCNFの量は、熱膨張性等の特性を向上させる点で、好ましくは0.1質量%以上、又は1質量%以上、又は2質量%以上、又は3質量%以上、又は5質量%以上、好ましくは、20質量%以下、又は18質量%以下、又は16質量%以下、又は14質量%以下、又は12質量%以下である。
一態様において、樹脂組成物100質量%に対するCMFの量は、引張伸び、振動疲労特性等の特性を向上させる点で、好ましくは、0.1質量%以上、又は1質量%以上、又は2質量%以上、又は3質量%以上、又は5質量%以上、好ましくは、20質量%以下、又は18質量%以下、又は16質量%以下、又は14質量%以下、又は12質量%以下である。
一態様において、本開示のセルロース(CMF以外)の数平均径(D)、数平均長(L)、及びL/D比は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて以下の手順で測定される値である。セルロースの水分散液をtert-ブタノールで置換し、0.001~0.1質量%まで希釈し、高剪断ホモジナイザー(例えばIKA製、商品名「ウルトラタラックスT18」)を用い、処理条件:回転数15,000rpm×3分間で分散させ、オスミウム蒸着したシリコン基板上にキャストし、風乾したものを測定サンプルとし、高分解能走査型電子顕微鏡(SEM)で計測して求める。具体的には、少なくとも100本の繊維状物質が観測されるように倍率が調整された観察視野にて、無作為に選んだ100本の繊維状物質の長さ(L)及び径(D)を計測し、比(L/D)を算出する。セルロースについて、長さ(L)の数平均値、径(D)の数平均値、及び比(L/D)の数平均値を算出する。
なおCMFについては、サイズスケールが大きいため以下の方法で測定する。CMFが0.1質量%程度となるように調製された低濃度水分散液に、超音波洗浄機にて充分な振動を与え、若しくは、分散機(例えば、デスパミル 浅田鉄工(株)製)にて20分間分散処理を実施し、CMF間の絡み合いをほぐした後、該水分散液を光学顕微鏡でそのまま観察する。この際の計測・計算方法は、上記の高分解能走査型電子顕微鏡(SEM)による場合と同様である。
なお、樹脂組成物中及び成形体中のセルロースの長さ、径、及びL/D比は、樹脂成分を溶解できる有機又は無機の溶媒に樹脂成分を溶解させ、セルロースを分離し、前記溶媒で充分に洗浄した後、tert-ブタノールで置換し、0.001~0.1質量%分散液を調製し、高剪断ホモジナイザー(例えばIKA製、商品名「ウルトラタラックスT18」)で再分散したものを利用して、上記の方法で測定できる。
セルロースの結晶化度は、耐熱性、機械強度及び寸法安定性に優れる樹脂組成物を得る観点から、好ましくは、55%以上、又は60%以上、又は70%以上、又は80%以上である。結晶化度がこの範囲にあると、セルロース自体の力学物性(耐熱性、強度、寸法安定性)が高いため、セルロースを樹脂に分散した際に、樹脂組成物の耐熱性、強度、寸法安定性が高い傾向にある。結晶化度は高い方が好ましいが、生産上の観点から好ましい上限は99%である。
植物由来のセルロースのミクロフィブリル同士の間、及びミクロフィブリル束同士の間には、ヘミセルロース等のアルカリ可溶多糖類、及びリグニン等の酸不溶成分が存在する。ヘミセルロースはマンナン、キシラン等の糖で構成される多糖類であり、セルロースと水素結合して、ミクロフィブリル間を結びつける役割を果たしている。またリグニンは芳香環を有する化合物であり、植物の細胞壁中ではヘミセルロースと共有結合していることが知られている。セルロース中のリグニン等の不純物の残存量が多いと、樹脂組成物の製造時及び使用時の熱により変色をきたすことがあるため、押出加工時及び成形加工時の樹脂組成物の変色を抑制する観点からも、セルロースの結晶化度を本開示の範囲内にすることが望ましい。
ここでいう結晶化度は、セルロースがセルロースI型結晶(天然セルロース由来)である場合には、サンプルを広角X線回折により測定した際の回折パターン(2θ/deg.が10~30)からSegal法により、以下の式で求められる。
結晶化度(%)=([2θ/deg.=22.5の(200)面に起因する回折強度]-[2θ/deg.=18の非晶質に起因する回折強度])/[2θ/deg.=22.5の(200)面に起因する回折強度]×100
また結晶化度は、セルロースがセルロースII型結晶(再生セルロース由来)である場合には、広角X線回折において、セルロースII型結晶の(110)面ピークに帰属される2θ=12.6°における絶対ピーク強度h0 とこの面間隔におけるベースラインからのピーク強度h1 とから、下記式によって求められる。
結晶化度(%) =h1 /h0 ×100
なお、測定サンプルとしては、本開示の多孔質シートを用いる。
セルロースの結晶形としては、I型、II型、III型、IV型などが知られており、その中でも特にI型及びII型は汎用されており、III型、IV型は実験室スケールでは得られているものの工業スケールでは汎用されていない。本開示のセルロースとしては、構造上の可動性が比較的高く、当該セルロースを樹脂に分散させることにより、線膨張係数がより低く、引っ張り、曲げ変形時の強度及び伸びがより優れた樹脂組成物が得られることから、セルロースI型結晶又はセルロースII型結晶を含有するセルロースが好ましく、セルロースI型結晶を含有し、かつ結晶化度が55%以上のセルロースがより好ましい。
また、セルロースの重合度は、好ましくは100以上、より好ましくは150以上であり、より好ましくは200以上、より好ましくは300以上、より好ましくは400以上であり、好ましくは3500以下、より好ましく3300以下、より好ましくは3200以下、より好ましくは3100以下、より好ましくは3000以下である。
加工性と機械的特性発現との観点から、セルロースの重合度を上述の範囲内とすることが望ましい。加工性の観点から、重合度は高すぎない方が好ましく、機械的特性発現の観点からは低すぎないことが望まれる。
セルロースの重合度は、「第十五改正日本薬局方解説書(廣川書店発行)」の確認試験(3)に記載の銅エチレンジアミン溶液による還元比粘度法に従って測定される平均重合度を意味する。
一態様において、セルロースの重量平均分子量(Mw)は100000以上であり、より好ましくは200000以上である。重量平均分子量と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は6以下であり、好ましくは5.4以下である。重量平均分子量が大きいほどセルロース分子の末端基の数は少ないことを意味する。また、重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)は分子量分布の幅を表すものであることから、Mw/Mnが小さいほどセルロース分子の末端の数は少ないことを意味する。セルロース分子の末端は熱分解の起点となるため、セルロース分子の重量平均分子量が大きいだけでなく、重量平均分子量が大きいと同時に分子量分布の幅が狭い場合に、特に高耐熱性のセルロース、及びセルロースと樹脂とを含む樹脂組成物が得られる。セルロースの重量平均分子量(Mw)は、セルロース原料の入手容易性の観点から、例えば600000以下、又は500000以下であってよい。重量平均分子量と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)はセルロースの製造容易性の観点から、例えば1.5以上、又は2以上であってよい。Mwは、目的に応じたMwを有するセルロース原料を選択すること、セルロース原料に対して物理的処理及び/又は化学的処理を適度な範囲で適切に行うこと、等によって上記範囲に制御できる。Mw/Mnもまた、目的に応じたMw/Mnを有するセルロース原料を選択すること、セルロース原料に対して物理的処理及び/又は化学的処理を適度な範囲で適切に行うこと、等によって上記範囲に制御できる。Mwの制御、及びMw/Mnの制御の両者において、上記物理的処理としては、マイクロフリュイダイザー、ボールミル、ディスクミル等の乾式粉砕若しくは湿式粉砕、擂潰機、ホモミキサー、高圧ホモジナイザー、超音波装置等による衝撃、剪断、ずり、摩擦等の機械的な力を加える物理的処理を例示でき、上記化学的処理としては、蒸解、漂白、酸処理、再生セルロース化等を例示できる。
ここでいうセルロースの重量平均分子量及び数平均分子量とは、セルロースを塩化リチウムが添加されたN,N-ジメチルアセトアミドに溶解させたうえで、N,N-ジメチルアセトアミドを溶媒としてゲルパーミエーションクロマトグラフィによって求めた値である。
セルロースの重合度(すなわち平均重合度)又は分子量を制御する方法としては、加水分解処理等が挙げられる。加水分解処理によって、セルロース内部の非晶質セルロースの解重合が進み、平均重合度が小さくなる。また同時に、加水分解処理により、上述の非晶質セルロースに加え、ヘミセルロース、リグニン等の不純物も取り除かれるため、繊維質内部が多孔質化する。それにより、後記の混練工程中等の、セルロースに機械的せん断力を与える工程において、セルロースが機械処理を受けやすくなり、セルロースが微細化されやすくなる。
加水分解の方法は、特に制限されないが、酸加水分解、アルカリ加水分解、熱水分解、スチームエクスプロージョン、マイクロ波分解等が挙げられる。これらの方法は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。酸加水分解の方法では、例えば、繊維性植物からパルプとして得たα-セルロースをセルロース原料とし、これを水系媒体に分散させた状態で、プロトン酸、カルボン酸、ルイス酸、ヘテロポリ酸等を適量加え、攪拌しながら加温することにより、容易に平均重合度を制御できる。この際の温度、圧力、時間等の反応条件は、セルロース種、セルロース濃度、酸種、酸濃度等により異なるが、目的とする平均重合度が達成されるよう適宜調製されるものである。例えば、2質量%以下の鉱酸水溶液を使用し、100℃以上、加圧下で、10分間以上セルロースを処理するという条件が挙げられる。この条件のとき、酸等の触媒成分がセルロース内部まで浸透し、加水分解が促進され、使用する触媒成分量が少なくなり、その後の精製も容易になる。なお、加水分解時のセルロース原料の分散液は、水の他、本発明の効果を損なわない範囲において有機溶媒を少量含んでいてもよい。
セルロースが含み得るアルカリ可溶多糖類は、ヘミセルロースのほか、β-セルロース及びγ-セルロースも包含する。アルカリ可溶多糖類とは、植物(例えば木材)を溶媒抽出及び塩素処理して得られるホロセルロースのうちのアルカリ可溶部として得られる成分(すなわちホロセルロースからα-セルロースを除いた成分)として当業者に理解される。アルカリ可溶多糖類は、水酸基を含む多糖であり耐熱性が悪く、熱がかかった場合に分解すること、熱エージング時に黄変を引き起こすこと、セルロースの強度低下の原因になること等の不都合を招来し得ることから、セルロース中のアルカリ可溶多糖類含有量は少ない方が好ましい。
一態様において、セルロース中のアルカリ可溶多糖類平均含有率は、セルロースの良好な分散性を得る観点から、セルロース100質量%に対して、好ましくは、20質量%以下、又は18質量%以下、又は15質量%以下、又は12質量%以下、又は11質量%以下、又は8質量%以下である。上記含有率は、セルロースの製造容易性の観点から、1質量%以上、又は2質量%以上、又は3質量%以上、又は6質量%以上であってもよい。一態様において、セルロース原料中のアルカリ可溶多糖類平均含有率は、13質量%以下、又は12質量%以下、又は11質量%以下、又は8質量%以下であってよく、最も好ましくは0質量%であるが、セルロース原料の入手容易性の観点から、例えば3質量%以上、又は6質量%以上であってもよい。
アルカリ可溶多糖類平均含有率は、非特許文献(木質科学実験マニュアル、日本木材学会編、92~97頁、2000年)に記載の手法より求めることができ、ホロセルロース含有率(Wise法)からαセルロース含有率を差し引くことで求められる。なおこの方法は当業界においてヘミセルロース量の測定方法として理解されている。1つのサンプルにつき3回アルカリ可溶多糖類含有率を算出し、算出したアルカリ可溶多糖類含有率の数平均をアルカリ可溶多糖類平均含有率とする。
一態様において、セルロース中の酸不溶成分平均含有率は、セルロースの耐熱性低下及びそれに伴う変色を回避する観点から、セルロース100質量%に対して、好ましくは、10質量%以下、又は5質量%以下、又は3質量%以下である。上記含有率は、セルロースの製造容易性の観点から、0.1質量%以上、又は0.2質量%以上、又は0.3質量%以上であってもよい。
酸不溶成分平均含有率は、非特許文献(木質科学実験マニュアル、日本木材学会編、92~97頁、2000年)に記載のクラーソン法を用いた酸不溶成分の定量として行う。なおこの方法は当業界においてリグニン量の測定方法として理解されている。硫酸溶液中でサンプルを撹拌してセルロース及びヘミセルロース等を溶解させた後、ガラスファイバーろ紙で濾過し、得られた残渣が酸不溶成分に該当する。この酸不溶成分重量より酸不溶成分含有率を算出し、そして、3サンプルについて算出した酸不溶成分含有率の数平均を酸不溶成分平均含有率とする。
セルロースは、化学処理(例えば酸化、又は修飾化剤を用いた化学修飾)がされていてもよい。一例として、Cellulose(1998)5,153-164に示されているような2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルラジカルによってセルロースを酸化させた後に、洗浄、機械解繊を経ることにより得られる、微細化セルロースを使用してもよい。
<セルロースの疎水化>
セルロースは疎水化剤により疎水化されたセルロース(本開示で、化学修飾セルロースともいう。)であってもよい。疎水化することにより、セルロース同士の水素結合が弱められ、微分散に寄与するようになるとともに、セルロースとして耐熱性が向上し、樹脂との混練による劣化を抑制することが可能となり、セルロースが物性欠陥の起点となりにくくなる効果がある。疎水化剤(本開示で、修飾化剤ともいう。)としては、セルロースの水酸基と反応する化合物を使用でき、エステル化剤、エーテル化剤、及びシリル化剤が挙げられる。特にエステル化剤が好ましい。好ましい態様において、疎水化は、エステル化剤を用いたアシル化である。エステル化剤としては、酸ハロゲン化物、酸無水物、及びカルボン酸ビニルエステルが好ましい。特に好ましい態様において、疎水化はアセチル化である。
酸ハロゲン化物は、下記式で表される化合物からなる群より選択された少なくとも1種であってよい。
1-C(=O)-X
(式中、R1は炭素数1~24のアルキル基、炭素数2~24のアルケニル基、炭素数3~24のシクロアルキル基、又は炭素数6~24のアリール基を表し、XはCl、Br又はIである。)
酸ハロゲン化物の具体例としては、塩化アセチル、臭化アセチル、ヨウ化アセチル、塩化プロピオニル、臭化プロピオニル、ヨウ化プロピオニル、塩化ブチリル、臭化ブチリル、ヨウ化ブチリル、塩化ベンゾイル、臭化ベンゾイル、ヨウ化ベンゾイル等が挙げられるが、これらに限定されない。中でも、酸塩化物は反応性と取り扱い性の点から好適に採用できる。尚、酸ハロゲン化物の反応においては、触媒として働くと同時に副生物である酸性物質を中和する目的で、アルカリ性化合物を1種又は2種以上添加してもよい。アルカリ性化合物としては、具体的には:トリエチルアミン、トリメチルアミン等の3級アミン化合物;及びピリジン、ジメチルアミノピリジン等の含窒素芳香族化合物;が挙げられるが、これに限定されない。
酸無水物としては、任意の適切な酸無水物類を用いることができる。例えば、
酢酸、プロピオン酸、(イソ)酪酸、吉草酸等の飽和脂肪族モノカルボン酸無水物;(メタ)アクリル酸、オレイン酸等の不飽和脂肪族モノカルボン酸無水物;
シクロヘキサンカルボン酸、テトラヒドロ安息香酸等の脂環族モノカルボン酸無水物;
安息香酸、4-メチル安息香酸等の芳香族モノカルボン酸無水物;
二塩基カルボン酸無水物として、例えば、無水コハク酸、アジピン酸等の無水飽和脂肪族ジカルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の無水不飽和脂肪族ジカルボン酸無水物、無水1-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸等の無水脂環族ジカルボン酸、及び、無水フタル酸、無水ナフタル酸等の無水芳香族ジカルボン酸無水物等;
3塩基以上の多塩基カルボン酸無水物類として、例えば、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の(無水)ポリカルボン酸等が挙げられる。
尚、酸無水物の反応においては、触媒として、硫酸、塩酸、燐酸等の酸性化合物、又はルイス酸、(例えば、MYnで表されるルイス酸化合物であって、MはB、As,Ge等の半金属元素、又はAl、Bi、In等の卑金属元素、又はTi、Zn、Cu等の遷移金属元素、又はランタノイド元素を表し、nはMの原子価に相当する整数であり、2又は3を表し、Yはハロゲン原子、OAc、OCOCF3、ClO4、SbF6、PF6又はOSO2CF3(OTf)を表す。)、又はトリエチルアミン、ピリジン等のアルカリ性化合物を1種又は2種以上添加してもよい。
カルボン酸ビニルエステルとしては、下記式:
R-COO-CH=CH2
{式中、Rは、炭素数1~24のアルキル基、炭素数2~24のアルケニル基、炭素数3~16のシクロアルキル基、又は炭素数6~24のアリール基のいずれかである。}で表されるカルボン酸ビニルエステルが好ましい。カルボン酸ビニルエステルは、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニルアジピン酸ジビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、安息香酸ビニル、及び桂皮酸ビニルからなる群より選択された少なくとも1種であることがより好ましい。カルボン酸ビニルエステルによるエステル化反応のとき、触媒として、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、1~3級アミン、4級アンモニウム塩、イミダゾール及びその誘導体、ピリジン及びその誘導体、並びにアルコキシドからなる群より選ばれる1種又は2種以上を添加しても良い。
アルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等が挙げられる。 アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム等が挙げられる。
1~3級アミンとは、1級アミン、2級アミン、及び3級アミンのことであり、具体例としては、エチレンジアミン、ジエチルアミン、プロリン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン、トリス(3-ジメチルアミノプロピル)アミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
イミダゾール及びその誘導体としては、1-メチルイミダゾール、3-アミノプロピルイミダゾール、カルボニルジイミダゾール等が挙げられる。
ピリジン及びその誘導体としては、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン、ピコリン等が挙げられる。
アルコキシドとしては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム-t-ブトキシド等が挙げられる。
カルボン酸としては、下記式で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
R-COOH
(式中、Rは、炭素数1~16のアルキル基、炭素数2~16のアルケニル基、炭素数3~16のシクロアルキル基、又は炭素数6~16のアリール基を表す。)
カルボン酸の具体例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、シクロヘキサンカルボン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、メタクリル酸、クロトン酸、ピバリン酸、オクチル酸、安息香酸、及び桂皮酸からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
これらカルボン酸の中でも、酢酸、プロピオン酸、及び酪酸からなる群から選択される少なくとも一種、特に酢酸が、反応効率の観点から好ましい。
尚、カルボン酸の反応においては、触媒として、硫酸、塩酸、燐酸等の酸性化合物、又はルイス酸、(例えば、MYnで表されるルイス酸化合物であって、MはB、As,Ge等の半金属元素、又はAl、Bi、In等の卑金属元素、又はTi、Zn、Cu等の遷移金属元素、又はランタノイド元素を表し、nはMの原子価に相当する整数であり、2又は3を表し、Yはハロゲン原子、OAc、OCOCF3、ClO4、SbF6、PF6又はOSO2CF3(OTf)を表す。)、又はトリエチルアミン、ピリジン等のアルカリ性化合物を1種又は2種以上添加してもよい。
これらエステル化反応剤の中でも、特に、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、及び酢酸からなる群から選択された少なくとも一種、中でも無水酢酸及び酢酸ビニルが、反応効率の観点から好ましい。
疎水化セルロースナノファイバーを得る場合、天然セルロース原料を微細化し繊維径を小さくする方法としては、特に制限はないが、解繊の処理条件(剪断場を与える方法、剪断場の大きさ等)をより高効率にすることが好ましい。特に、非プロトン性溶媒を含む解繊用溶液を、セルロース純度が85質量%以上のセルロース原料に含浸させることで、セルロースの膨潤が短時間で起こり、わずかな攪拌と剪断エネルギーを与えるだけでセルロースが微細化していく。そして、解繊直後にセルロース修飾化剤を加えることにより、疎水化セルロースナノファイバーを得ることができる。この方法が、生成効率及び精製効率(すなわち疎水化セルロースナノファイバーの高セルロース純度化)、並びに樹脂組成物の物理特性の観点から好ましい。
非プロトン性溶媒は、例えば、アルキルスルホキシド類、アルキルアミド類、ピロリドン類などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
アルキルスルホキシド類としては、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メチルエチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのジC1-4アルキルスルホキシドなどが挙げられる。
アルキルアミド類としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジエチルホルムアミドなどのN,N-ジC1-4アルキルホルムアミド;N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミドなどのN,N-ジC1-4アルキルアセトアミドなどが挙げられる。
ピロリドン類としては、例えば、2-ピロリドン、3-ピロリドンなどのピロリドン;N-メチル-2-ピロリドン(NMP)などのN-C1-4アルキルピロリドンなどが挙げられる。
これらの非プロトン性溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの非プロトン性溶媒(括弧内の数字はドナー数)のうち、DMSO(29.8)、DMF(26.6)、DMAc(27.8)、NMP(27.3)など、特に、DMSOを用いれば、熱分解開始温度が高い疎水化セルロースナノファイバーをより効率的に製造することができる。この作用機序は必ずしも明らかではないが、非プロトン性溶媒中での繊維原料の均質なミクロ膨潤に起因するものと推察される。
セルロース原料が非プロトン性溶媒中で膨潤する際、非プロトン性溶媒が原料を構成するフィブリルに素早く浸透し膨潤することでミクロフィブリル同士が微解繊状態となる。この状態を作り出した後、化学修飾を行うことで微細繊維の全体で均質に疎水化が進行し、結果として高い耐熱性を獲得しているものと推察される。さらに、このミクロフィブリル化された化学修飾微細繊維は高い結晶化度を維持しており、樹脂と複合したときに高い機械特性と優れた寸法安定性(特に、線熱膨張率の著しい低下)を獲得することができる。
疎水化セルロースナノファイバーを得る場合、微細化(解繊)及び疎水化処理されたセルロースナノファイバーは、遊星ボールミル及びビーズミルのような衝突剪断が加わる装置、ディスクリファイナー及びグラインダーのようなセルロースのフィブリル化を誘因する回転剪断場が加わる装置、或いは各種ニーダー及びプラネタリーミキサーのような混練、撹拌、及び分散の機能を高効率で実施可能な装置を用いることで得ることができる。
セルロースの疎水化度(修飾度)は水酸基の平均置換度(セルロースの基本構成単位であるグルコース当たりの置換された水酸基の平均数、DSともいう)として表される。一態様において、化学修飾セルロースのDSは0.01以上2.0以下が好ましい。DSが0.01以上であれば、熱分解開始温度が高い化学修飾セルロースを含む樹脂組成物を得ることができる。一方、2.0以下であると、化学修飾セルロース中に未修飾のセルロース骨格が残存するため、セルロース由来の高い引張強度及び寸法安定性と化学修飾由来の高い熱分解開始温度を兼ね備えた化学修飾セルロースを含む樹脂組成物を得ることができる。DSはより好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.1以上、特に好ましくは0.2以上、最も好ましくは0.3以上であって、より好ましくは1.8以下、さらに好ましくは1.5以下、特に好ましくは1.2以下、最も好ましくは1.0以下である。
疎水化セルロースの反射型赤外吸収スペクトルにおいて、疎水化修飾基の種類により吸収バンドのピーク位置は変化する。ピーク位置の変化から、そのピークが何の吸収バンドに基づくものかは確定でき、修飾基の同定ができる。また、修飾基由来のピークとセルロース骨格由来のピークのピーク強度比から修飾化率を算出することができる。
修飾基がアシル基の場合、アシル置換度(DS)は、エステル化セルロースの反射型赤外吸収スペクトルから、アシル基由来のピークとセルロース骨格由来のピークとのピーク強度比に基づいて算出することができる。アシル基に基づくC=Oの吸収バンドのピークは1730cm-1に出現し、セルロース骨格鎖に基づくC-Oの吸収バンドのピークは1030cm-1に出現する。エステル化セルロースのDSは、後述するエステル化セルロースの固体NMR測定から得られるDSと、セルロース骨格鎖C-Oの吸収バンドのピーク強度に対するアシル基に基づくC=Oの吸収バンドのピーク強度の比率で定義される修飾化率(IRインデックス1030)との相関グラフを作製し、相関グラフから算出された検量線
置換度DS = 4.13 × IRインデックス(1030)
を使用することで求めることができる。
なお、上記反射型赤外吸収スペクトルで適切な測定が困難である場合には、固体NMRを用いる。固体NMRによるエステル化セルロースのDSの算出方法は、凍結粉砕したエステル化セルロースについて13C固体NMR測定を行い、50ppmから110ppmの範囲に現れるセルロースのピラノース環由来の炭素C1-C6に帰属されるシグナルの合計面積強度(Inp)に対する修飾基由来の1つの炭素原子に帰属されるシグナルの面積強度(Inf)より下記式で求めることができる。
DS=(Inf)×6/(Inp)
たとえば、修飾基がアセチル基の場合、-CH3に帰属される23ppmのシグナルを用いれば良い。
用いる13C固体NMR測定の条件は例えば以下の通りである。
装置 :Bruker Biospin Avance500WB
周波数 :125.77MHz
測定方法 :DD/MAS法
待ち時間 :75sec
NMR試料管 :4mmφ
積算回数 :640回(約14Hr)
MAS :14,500Hz
化学シフト基準:グリシン(外部基準:176.03ppm)
<ポリアミド)>
本実施形態の樹脂組成物は、ポリアミドを含む。樹脂組成物の総質量に対するポリアミドの質量比率は、セルロースの良好な分散の観点から、好ましくは、50質量%以上、70質量%以上、又は75質量%以上、又は80質量%以上であり、樹脂組成物に対して、セルロースによって樹脂組成物に高弾性率化、熱膨張率の低減等の機能を付与する観点から、好ましくは、99.9質量%以下、又は99質量%以下、又は97質量%以下、又は95質量%以下である。
ポリアミドの融点は、樹脂組成物の耐熱性を高める観点から、好ましくは、220℃以上、又は230℃以上であり、好ましくは、350℃以下、又は320℃以下、又は300℃以下である。
本開示で、融点とは、示差走査熱量分析装置(DSC)を用いて、23℃から10℃/分の昇温速度で昇温した際に現れる吸熱ピークのピークトップ温度を指し、吸熱ピークが2つ以上現れる場合は、最も高温側の吸熱ピークのピークトップ温度を指す。この時の吸熱ピークのエンタルピーは、10J/g以上であることが望ましく、より望ましくは20J/g以上である。また測定に際しては、サンプルを一度融点+20℃以上の温度条件まで加温し、樹脂を溶融させたのち、10℃/分の降温速度で23℃まで冷却したサンプルを用いることが望ましい。
ポリアミドとしては、二塩基酸とジアミンの重縮合物、環状ラクタム開環重合物、アミノカルボン酸の重縮合物、及び、これらのコポリマー、ブレンド物が挙げられる。より具体的には、ポリアミド6、ポリアミド10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612などの脂肪族ポリアミド、ポリメタキシレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリヘキサメチレンテレフタラミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタラミド(ポリアミド6I)などの芳香族ポリアミド、及び、ポリアミド6/6I、ポリアミド66/6I、ポリアミド6/6T、ポリアミド66/6T、ポリアミド6/66/6T、ポリアミド6/66/6I、ポリアミド9T、ポリアミド10Tなどの共重合体及びブレンド物を用いることができる。これらの中でも特に、ポリアミド6、ポリアミド10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6/6I、ポリアミド66/6I、ポリアミド6I、及びこれらの混合物が好ましく使用可能である。最も好ましくは、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6I、及びこれらの混合物である。
ポリアミドの末端カルボキシル基濃度には特に制限はないが、下限値は、好ましくは、5μモル/g、又は10μモル/g、又は20μモル/g、又は25μモル/g、又は30μモル/gである。また、末端カルボキシル基濃度の上限値は、好ましくは、150μモル/g、又は100μモル/g、又は80μモル/gである。
ポリアミドの末端アミノ基濃度には特に制限はないが、下限値は、好ましくは、20μモル/g、又は30μモル/gであり、上限値は、好ましくは、150μモル/g、又は100μモル/g、又は80μモル/gである。
ポリアミドにおいて、全末端基に対するカルボキシル末端基比率([COOH]/[全末端基])は、0.20~0.95であることが好ましい。カルボキシル末端基比率の下限は、より好ましくは0.3であり、より好ましくは0.35であり、さらにより好ましくは0.40であり、最も好ましくは0.45である。またカルボキシル末端基比率の上限は、より好ましくは0.90であり、さらにより好ましくは0.85であり、最も好ましくは0.80である。上記カルボキシル末端基比率は、セルロースの樹脂組成物中への分散性の観点から0.20以上とすることが望ましく、得られる樹脂組成物の色調の観点から0.95以下とすることが望ましい。
ポリアミドの末端基濃度の調整方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、ポリアミドの重合時に所定の末端基濃度となるように、ジアミン化合物、モノアミン化合物、ジカルボン酸化合物、モノカルボン酸化合物、酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル、モノアルコールなどの、末端基と反応する末端調整剤を重合液に添加する方法が挙げられる。
末端アミノ基と反応する末端調整剤としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソ酪酸等の脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸等の脂環式モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、α-ナフタレンカルボン酸、β-ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸;及びこれらから任意に選ばれる複数の混合物が挙げられる。これらの中でも、反応性、封止末端の安定性、価格などの点から、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及び安息香酸からなる群より選ばれる1種以上の末端調整剤が好ましく、酢酸が最も好ましい。
末端カルボキシル基と反応する末端調整剤としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等の脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミン等の芳香族モノアミン及びこれらの任意の混合物が挙げられる。これらの中でも、反応性、沸点、封止末端の安定性、価格などの点から、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン及びアニリンからなる群より選ばれる1種以上の末端調整剤が好ましい。
これら、アミノ末端基及びカルボキシル末端基の濃度は、1H-NMRにより、各末端基に対応する特性シグナルの積分値から求めるのが精度、簡便さの点で好ましい。それらの末端基の濃度を求める方法として、具体的に、特開平7-228775号公報に記載された方法が推奨される。この方法を用いる場合、測定溶媒としては、重トリフルオロ酢酸が有用である。また、1H-NMRの積算回数は、十分な分解能を有する機器で測定した際においても、少なくとも300スキャンは必要である。そのほか、特開2003-055549号公報に記載されているような滴定による測定方法によっても末端基の濃度を測定できる。ただし、混在する添加剤、潤滑剤等の影響をなるべく少なくするためには、1H-NMRによる定量がより好ましい。
ポリアミドの重合度については、特に限定されないが、通常の射出成形加工性の面から、ISO307に準拠し、96質量%濃度硫酸中で測定したポリアミドの粘度数(VN)が、200以下であることが望ましい。より好ましい上限は180であり、さらに好ましくは150であり、さらにより好ましくは140であり、最も好ましくは、130である。上述の範囲内とすることにより、成形体の成形時の流動性を適度に維持し、成形歪を低減させることにより、実成形品での異方性を低く抑えることが可能となる。上記粘度数の下限は、特に限定されないが、良好な耐衝撃性を得る観点から、好ましくは50であり、より好ましくは60であり、より好ましくは65であり、最も好ましくは70である。
本実施形態におけるポリアミドは、異なる複数種のポリアミドの混合物であってもよい。複数種のポリアミドの混合物である場合のポリアミドの各種特性値は当該複数種での平均値であってよい。
ポリアミドの重合方法は特に限定されず、溶融重合、界面重合、溶液重合、塊状重合、固相重合、及び、これらを組み合わせた方法のいずれでもよい。これらの中では、重合コントロール性の観点から、溶融重合がより好ましく用いられる。
また、ポリアミドの耐熱安定性を向上させる目的で、例えば特開平1-163262号公報に記載されるような公知の金属系安定剤を使用してもよい。金属系安定剤の中で特に好ましい例としては、CuI、CuCl2、酢酸銅、ステアリン酸セリウム等が挙げられる。また、ヨウ化カリウム、臭化カリウム等に代表されるアルカリ金属のハロゲン化塩も好適に使用することができる。これらは、もちろん併用添加しても構わない。上記の金属系安定剤及び/又はアルカリ金属のハロゲン化塩の好ましい配合量は、合計量としてポリアミド100質量部に対して、0.001~5質量部である。耐熱エージング性能の観点から上述の下限以上であることが好ましく、高靭性維持の観点から上述の上限以下であることが好ましい。
さらに、上記の他に、ポリアミドに添加することが可能な公知の添加剤を、例えばポリアミド100質量部に対して10質量部未満の量で添加してもかまわない。
樹脂組成物100質量%に対するポリアミドの比率は、ポリアミド相による高耐熱性、低線膨張係数等の利点を良好に得る観点から、好ましくは、30質量%以上、又は35質量%以上、又は40質量%以上であり、樹脂組成物中の他の成分による利点を良好に得る観点から、好ましくは、90質量%以下、又は80質量%以下、又は70質量%以下、又は60質量%以下である。
<追加の成分>
本実施形態の樹脂組成物は、その性能を向上させるために、必要に応じて追加の成分をさらに含んでも良い。追加の成分としては、ポリアミド以外の樹脂;分散剤;セルロース以外のフィラー成分;相溶化剤;可塑剤;でんぷん類、アルギン酸等の多糖類;ゼラチン、ニカワ、カゼイン等の天然たんぱく質;ゼオライト、セラミックス、タルク、シリカ、金属酸化物、金属粉末等の無機化合物;着色剤;香料;顔料;流動調整剤;レベリング剤;導電剤;酸化防止剤;帯電防止剤;紫外線吸収剤;紫外線分散剤;消臭剤等が挙げられる。任意の追加の成分の樹脂組成物中の含有割合は、本発明の所望の効果が損なわれない範囲で適宜選択されるが、例えば0.01~50質量%、又は0.1~30質量%であってよい。
(ポリアミド以外の樹脂)
ポリアミド以外の樹脂としては、100℃~350℃の範囲内に融点を有する結晶性樹脂、又は、100~250℃の範囲内にガラス転移温度を有する非晶性樹脂が挙げられ、具体的には、例えばポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂及びこれらの2種以上の混合物が好ましく挙げられ、取り扱い性及びコストの観点からより好ましくはポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂等が挙げられる。なお本開示で、非晶性樹脂のガラス転移温度とは、動的粘弾性測定装置を用いて、23℃から2℃/分の昇温速度で昇温しながら、印加周波数10Hzで測定した際に、貯蔵弾性率が大きく低下し、損失弾性率が最大となるピークのピークトップの温度をいう。損失弾性率のピークが2つ以上現れる場合は、最も高温側のピークのピークトップ温度を指す。
熱可塑性樹脂(特に結晶性樹脂)の融点は、樹脂組成物の耐熱性を高める観点から、好ましくは、140℃以上、又は150℃以上、又は160℃以上、又は170℃以上、又は180℃以上、又は190℃以上、又は200℃以上、又は210℃以上、220℃以上、又は230℃以上、又は240℃以上、又は245℃以上、又は250℃以上である。
熱可塑性樹脂として好ましいポリオレフィン系樹脂は、オレフィン類(例えばα-オレフィン類)やアルケン類をモノマー単位として重合して得られる高分子である。ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、低密度ポリエチレン(例えば線状低密度ポリエチレン)、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン等に例示されるエチレン系(共)重合体、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体等に例示されるポリプロピレン系(共)重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体等に代表されるエチレン等α-オレフィンの共重合体等が挙げられる。
また、セルロースとの親和性を高めるため、酸変性されたポリオレフィン系樹脂も好適に使用可能である。この際の酸としては、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、フタル酸及び、これらの無水物、並びにクエン酸等のポリカルボン酸から、適宜選択可能である。これらの中でも好ましいのは、変性率の高めやすさから、マレイン酸又はその無水物である。
酸変性されたポリプロピレンのISO1133に準拠して230℃、荷重21.2Nで測定されたメルトマスフローレイト(MFR)は、セルロース界面との親和性を高めるため、50g/10分以上であることが好ましい。より好ましい下限は100g/10分であり、更により好ましくは150g/10分、最も好ましくは200g/10分である。上限は特にないが、機械的強度の維持から500g/10分である。MFRをこの範囲内とすることにより、セルロースと樹脂との界面に存在しやすくなるという利点を享受できる。
熱可塑性樹脂として好ましいポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(以下、単にPETと称することもある)、ポリブチレンサクシネート(脂肪族多価カルボン酸と脂肪族ポリオールとからなるポリエステル樹脂(以下、単位PBSと称することもある)、ポリブチレンサクシネートアジペート(以下、単にPBSAと称することもある)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(以下、単にPBATと称することもある)、ポリヒドロキシアルカン酸(3-ヒドロキシアルカン酸からなるポリエステル樹脂。以下、単にPHAと称することもある)、ポリ乳酸(以下、単にPLAと称することもある)、ポリブチレンテレフタレート(以下、単にPBTと称することもある)、ポリエチレンナフタレート(以下、単にPENと称することもある)、ポリアリレート(以下、単にPARと称することもある)、ポリカーボネート(以下、単にPCと称することもある)等から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
これらの中でより好ましいポリエステル系樹脂は、PET、PBS、PBSA、PBT、PENが挙げられ、更に好ましくは、PBS、PBSA、PBTが挙げられる。
熱可塑性樹脂として好ましいポリアセタール系樹脂には、ホルムアルデヒドを原料とするホモポリアセタールと、トリオキサンを主モノマーとし、1,3-ジオキソランをコモノマー成分として含むコポリアセタールが一般的であり、両者とも使用可能であるが、樹脂組成物の使用時の熱安定性の観点から、コポリアセタールが好ましく使用できる。特に、コモノマー成分(例えば1,3-ジオキソラン)由来構造の量としては0.01~4モル%の範囲内がより好ましい。コモノマー成分由来構造の量の好ましい下限量は、0.05モル%であり、より好ましくは0.1モル%であり、さらにより好ましくは0.2モル%である。また好ましい上限量は、3.5モル%であり、さらに好ましくは3.0モル%であり、さらにより好ましくは2.5モル%、最も好ましくは2.3モル%である。
押出加工や成形加工時の熱安定性の観点から、下限は上述の範囲内とすることが望ましく、機械的強度の観点より、上限は上述の範囲内とすることが望ましい。
熱可塑性樹脂としては、セルロースとの親和性の観点から、親水性基(例えば、水酸基、アミノ基及びカルボキシ基から選ばれる1種以上)を有する樹脂が特に好ましい。親水性基を有する熱可塑性樹脂の好適例は、酸変性ポリオレフィン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、及びアクリル系樹脂からなる群から選択される1種以上である。
(分散剤)
分散剤は、樹脂中でのセルロースの分散性を向上させることに寄与する。分散剤は、1種の物質でも2種以上の物質の混合物であってもよい。後者の場合、本開示の特性値(例えば融点、分子量、HLB値、SP値)は、当該混合物の値を意味する。
分散剤の融点は、セルロースの周囲を分散剤がより均一にコーティングでき、セルロースを樹脂中でより均一に分散させることができる点で、80℃以下、又は70℃以下であってよく、-100℃以上、又は-50℃以上であってよい。分散剤の数平均分子量は、セルロースの周囲を分散剤がより均一にコーティングでき、セルロースを樹脂中でより均一に分散させることができる点で、1000以上、又は2000以上であってよく、50000以下、又は20000以下であってよい。分散剤の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィを用い、標準ポリスチレン換算で求められる値である。
分散剤は、セルロースの凝集を抑制する観点で、水溶性ポリマーであることが好ましい。本開示で、「水溶性」とは、23℃で100gの水に対して0.1g以上溶解することを意味する。更には、分散剤は親水性セグメント及び疎水性セグメントを有する(すなわち両親媒性分子である)ことが、樹脂中にセルロースをより均一に分散させる観点で更に好ましい。両親媒性分子としては、炭素原子を基本骨格とし、炭素、水素、酸素、窒素、塩素、硫黄、及びリンから選ばれる元素から構成される官能基を有するものが挙げられる。分子中に上述の構造を有していれば、無機化合物と上記官能基とが化学結合したものも好ましい。親水性セグメントは、セルロースの表面との親和性が良好であり、疎水性セグメントは、親水性セグメントを介してセルロース同士の凝集を抑制し、更には樹脂と相溶し易い特徴がある。そのため分散剤において親水性セグメントと疎水性セグメントとは同一分子内に存在することが好ましい。
分散剤のHLB値は、好ましくは0.1以上8.0未満である。HLB値とは、界面活性剤の疎水性と親水性とのバランスを示す値であり、1~20までの値をとり、数値が小さいほど疎水性が強く、数値が大きいほど親水性が強いことを示す。本開示で、HLB値は、以下のグリフィン法による式より求められる値である。なお下記式において、「親水基の式量の総和/分子量」とは、親水基の質量%である。
式1) グリフィン法:HLB値=20×(親水基の式量の総和/分子量)
分散剤のHLB値の下限値は、水への易溶解性の観点から、好ましくは0.1、より好ましくは0.2、最も好ましくは1である。また、当該HLB値の上限値は、セルロースの樹脂への均一分散性の観点から、好ましくは8.0未満、より好ましくは7.5、最も好ましくは7である。
典型的な態様において、親水性セグメントは、親水性構造(例えば水酸基、カルボキシ基、カルボニル基、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、スルホ基等から選ばれる1つ以上の親水性基)を含むことによって、セルロースとの良好な親和性を示す部分である。親水性セグメントとしては、ポリエチレングリコールのセグメント(すなわち複数のオキシエチレンユニットのセグメント)(PEGブロック)、4級アンモニウム塩構造を含む繰り返し単位が含まれるセグメント、ポリビニルアルコールのセグメント、ポリビニルピロリドンのセグメント、ポリアクリル酸のセグメント、カルボキシビニルポリマーのセグメント、カチオン化グアガムのセグメント、ヒドロキシエチルセルロースのセグメント、メチルセルロースのセグメント、カルボキシメチルセルロースのセグメント、ポリウレタンのソフトセグメント(具体的にはジオールセグメント)等を例示できる。好ましい態様において、親水性セグメントは、オキシエチレンユニットを含む。
疎水性セグメントとしては、炭素数3以上のアルキレンオキシド単位を有するセグメント(例えば、PPGブロック)、また以下のポリマー構造を含むセグメント等を例示できる:
アクリル系ポリマー、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリヘキサメチレンアジパミド(6,6ナイロン)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(6,9ナイロン)、ポリヘキサメチレンセバカミド(6,10ナイロン)、ポリヘキサメチレンドデカノアミド(6,12ナイロン)、ポリビス(4‐アミノシクロヘキシル)メタンドデカン等の、炭素数4~12の有機ジカルボン酸と炭素数2~13の有機ジアミンとの重縮合物、ω-アミノ酸(例えばω-アミノウンデカン酸)の重縮合物(例えば、ポリウンデカンアミド(11ナイロン)等)、ε-アミノカプロラクタムの開環重合物であるポリカプラミド(6ナイロン)、ε-アミノラウロラクタムの開環重合物であるポリラウリックラクタム(12ナイロン)等の、ラクタムの開環重合物を含むアミノ酸ラクタム、ジアミンとジカルボン酸とから構成されるポリマー、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、疎水性シリコーン系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂。
好ましい態様において、分散剤は、分子内に、親水性基としてPEGブロック、及び疎水性基としてPPGブロックを有する。
分散剤は、グラフト共重合体構造、及び/又はブロック共重合体構造を有することができる。これら構造は1種単独でもよいし、2種以上でもよい。2種以上の場合は、ポリマーアロイでもよい。またこれら共重合体の部分変性体、又は末端変性体(酸変性)でも良い。
分散剤の構造は、特に限定されないが、親水性セグメントをA、疎水性セグメントをBとしたときに、AB型ブロック共重合体、ABA型ブロック共重合体、BAB型ブロック共重合体、ABAB型ブロック共重合体、ABABA型ブロック共重合体、BABAB型共重合体、AとBを含む3分岐型共重合体、AとBを含む4分岐型共重合体、AとBを含む星型共重合体、AとBを含む単環状共重合体、AとBを含む多環状共重合体、AとBを含むかご型共重合体、等が挙げられる。
分散剤の構造は、好ましくはAB型ブロック共重合体、ABA型トリブロック共重合体、AとBを含む3分岐型共重合体、又はAとBを含む4分岐型共重合体であり、より好ましくはABA型トリブロック共重合体、3分岐構造体(すなわちAとBを含む3分岐型共重合体)、又は4分岐構造体(すなわちAとBを含む4分岐型共重合体)である。セルロースとの良好な親和性を確保するために、分散剤の構造は上記構造であることが望ましい。
分散剤の好適例としては、親水性セグメントを与える化合物(例えば、ポリエチレングリコール)、疎水性セグメントを与える化合物(例えば、ポリプロピレングリコール、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール(PTMEG)、ポリブタジエンジオール等)をそれぞれ1種以上用いて得られる共重合体(例えば、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとのブロック共重合体、テトラヒドロフランとエチレンオキシドとのブロック共重合体)等が挙げられる。分散剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合は、ポリマーアロイとして用いてもよい。また、上記した共重合体が変性されたもの(例えば、不飽和カルボン酸、その酸無水物又はその誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物により変性されたもの)も用いることもできる。
これらの中でも、耐熱性(臭気性)及び機械特性の観点から、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体、ポリエチレングリコールとポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール(PTMEG)の共重合体、及びこれらの混合物が好ましく挙げられ、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体が、取り扱い性・コストの観点からより好ましい。
典型的な態様において、分散剤は曇点を有する。親水性部位としてポリオキシエチレン鎖等のポリエーテル鎖をもつ非イオン性界面活性剤の水溶液の温度を上昇させていくと、透明又は半透明であった水溶液がある温度(この温度を曇点という)で白濁する現象がみられる。すなわち、低温で透明又は半透明である水溶液を加温した際に、ある温度を境に非イオン性界面活性剤の溶解度が急激に低下し、それまで溶けていた界面活性剤同士が凝集・白濁して、水と分離する。これは、高温になると非イオン性界面活性剤が水和力を失う(ポリエーテル鎖と水との水素結合が切れ水への溶解度が急激に下がる)ためと考えられる。曇点はポリエーテル鎖が長いほど低い傾向にある。曇点以下の温度であれば、水に任意の割合で溶解することから、曇点は、分散剤における親水性の尺度となる。
分散剤の曇点は以下の方法で測定する事ができる。音叉型振動式粘度計(例えば株式会社エー・アンド・デイ社製SV-10A)を用いて、分散剤の水溶液を0.5質量%、1.0質量%、5質量%に調整し、温度0~100℃の範囲で測定を行う。この時、各濃度において変曲点(粘度の上昇変化、又は水溶液が曇化した点)を示した部分を曇点とする。
分散剤の曇点の下限値は、取扱い性の観点から、好ましくは10℃であり、より好ましくは20℃であり、最も好ましくは30℃である。また、当該曇点の上限値は、特に限定されないが、好ましくは120℃であり、より好ましくは110℃であり、さらに好ましくは100℃であり、最も好ましくは60℃である。セルロースとの良好な親和性を確保するために、分散剤の曇点は上述の範囲内にあることが望ましい。
分散剤としては、溶解パラメーター(SP値)が7.25以上であるものがより好ましい。分散剤がこの範囲のSP値を有することで、セルロースの樹脂中での分散性が向上する。
SP値は、Fodersの文献(R.F.Foders:Polymer Engineering & SCienCe,vol.12(10),p.2359-2370(1974))によると、物質の凝集エネルギー密度とモル分子量の両方に依存し、またこれらは物質の置換基の種類及び数に依存していると考えられ、上田らの文献(塗料の研究、No.152、OCt.2010)によると、既存の主要な溶剤についてのSP値(Cal/Cm31/2が公開されている。
分散剤のSP値は、実験的には、SP値が既知の種々の溶剤に分散剤を溶解させたときの、可溶と不溶の境目から求めることができる。例えば、SP値が異なる各種溶剤(10mL)に、分散剤1mLを室温においてスターラー撹拌下で1時間溶解させた場合に、全量が溶解するかどうかで判断可能である。例えば、分散剤がジエチルエーテルに可溶であった場合は、その分散剤のSP値は7.25以上となる。
分散剤(特に両親媒性分子)としては、水より高い沸点を有するものが好ましく、樹脂の融点よりも高い沸点を有するものが、樹脂中にセルロースを溶融混練時に均一に分散させる観点でより好ましい。なお、水よりも高い沸点とは、水の蒸気圧曲線における各圧力における沸点(例えば、1気圧下では100℃)よりも高い沸点を指す。
分散剤として水より高い沸点を有するものを選択することにより、例えば、分散剤の存在下で、液体媒体として水を含むスラリーを乾燥させてセルロース乾燥体を得る工程において、水が蒸発する過程で水と分散剤とが置換されてセルロース表面に分散剤が存在するようになるため、セルロースの凝集を大幅に抑制する効果を奏することができる。
なお、分散剤の添加方法は限定されず、
セルロース乾燥体の製造において、乾燥工程後のセルロースに分散剤を混合してセルロース乾燥体を得る方法、
セルロース乾燥体の製造において、セルロースが液体媒体に分散してなるスラリー中に分散剤を添加した後乾燥させてセルロース乾燥体を得る方法、
樹脂組成物の製造において、樹脂、セルロース乾燥体又はこれを液体媒体に分散してなる再分散液、及び分散剤をあらかじめ混合し溶融混練した後、成形加工する方法、
樹脂組成物の製造において、樹脂にあらかじめ分散剤を添加し、必要により予備混練した後、セルロース乾燥体又はこれを液体媒体に分散してなる再分散液を添加して溶融混練し、成形加工する方法、
等が挙げられる。
分散剤の量は、セルロース100質量部に対して、5~100質量部であることがセルロースを樹脂組成物中に均一に分散させる観点で好ましく、10~70質量部であることがより好ましく、20~50質量部であることが最も好ましい。
一態様において、樹脂組成物中の分散剤の含有量は、それぞれ、好ましくは、0.3質量%以上、又は0.5質量%以上、又は1.0質量%以上であり、好ましくは、10.0質量%以下、又は5.0質量%以下、又は3.0質量%以下である。
樹脂組成物において、分散剤の量は当業者に一般的な方法で容易に確認する事が出来る。確認方法は限定されないが、以下の方法を例示できる。樹脂組成物(例えば成形体の破断片)を用い、樹脂を溶解させる溶媒に破断片を溶解させたときの、可溶分1(樹脂及び分散剤)と不溶分1(セルロース及び分散剤)を分離する。可溶分1を、樹脂を溶解させないが分散剤を溶解させる溶媒で再沈殿させ、不溶分2(樹脂)と可溶分2(分散剤)に分離する。また、不溶分1を分散剤溶解性溶媒に溶解させ、可溶分3(分散剤)と不溶分3(セルロース)に分離する。可溶分2、可溶分3を濃縮(乾燥・風乾・減圧乾燥等)させることで分散剤の定量が可能である。濃縮後の分散剤について、前述の方法によって同定及び分子量の測定を行うことができる。
樹脂組成物の水分率は、例えば、1200質量ppm以下、又は900質量ppm以下、又は700質量ppm以下であってよい。当該水分率は、樹脂組成物の製造容易性の観点から、例えば、10質量ppm以上であってよい。本開示で、水分率は、ISO 15512に準拠した方法でカールフィッシャー水分計を用いて測定される値である。
≪ペレット及び成形体≫
本実施形態の樹脂組成物は、種々の形状での提供が可能である。具体的には、樹脂ペレット状、シート状、繊維状、板状、棒状等が挙げられるが、樹脂ペレット形状が、後加工の容易性及び運搬の容易性から好ましい。好ましい樹脂ペレット形状としては、丸型、楕円型、円柱型などが挙げられ、形状は押出加工時のカット方式により異なってよい。例えば、アンダーウォーターカットと呼ばれるカット方法で切断されたペレットは、丸型になることが多く、ホットカットと呼ばれるカット方法で切断されたペレットは丸型又は楕円型になることが多く、ストランドカットと呼ばれるカット方法で切断されたペレットは円柱状になることが多い。丸型ペレットの好ましいペレット直径は、1mm以上3mm以下である。円柱状ペレットの好ましい直径は、1mm以上3mm以下であり、好ましい長さは、2mm以上10mm以下である。上記の直径及び長さは、押出時の運転安定性の観点から、下限以上とすることが望ましく、後加工での成形機への噛み込み性の観点から、上限以下とすることが望ましい。
一態様において、樹脂組成物は成形体に成形されてよい。成形体は、フィルム状、シート状、繊維状、板状、粉末状、立体構造等の種々の形態であってよい。一態様において、成形体は樹脂組成物のペレットから成形されてよい。
≪樹脂組成物の製造方法≫
本発明の一態様はまた、前述した本開示の樹脂組成物の製造方法であって、セルロースとポリアミドとを溶融混練して樹脂組成物を得る混練工程を含む方法を提供する。一態様に係る方法は、
セルロース原料を解繊してセルロースを得るセルロース製造工程、
該セルロースとポリアミドとを溶融混練して樹脂組成物を得る樹脂組成物製造工程、及び
樹脂組成物を容器に収容する収容工程、を含む。
<セルロース製造工程>
本工程では、セルロース原料(パルプ)からセルロースを製造する。一態様に係る方法においては、セルロース製造工程が、DMSOの存在下(すなわち、DMSO中、又はDMSO含有混合溶媒中)でセルロース原料を処理(例えば、前述の加水分解、前述の疎水化等)した後、DMSOを除去することを含む。DMSO含有混合溶媒としては、DMSOと、水及び硫黄不含有非プロトン性溶媒(すなわち、DMSOとは異なり、分子構造中に硫黄原子を含まない溶媒)からなる群から選択される1種以上との混合溶媒を例示できる。
硫黄不含有非プロトン性溶媒としては、アルキルアミド類、ピロリドン類等が挙げられる。
アルキルアミド類としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジエチルホルムアミド等のN,N-ジC1-4アルキルホルムアミド;N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド等のN,N-ジC1-4アルキルアセトアミド等が挙げられる。
ピロリドン類としては、例えば、2-ピロリドン、3-ピロリドン等のピロリドン;N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等のN-C1-4アルキルピロリドン等が挙げられる。
DMSO含有混合溶媒中のDMSO含有率は、例えば、80質量%以上100質量%未満、又は40質量%~80質量%、又は0質量%~40質量%であってよい。DMSO含有混合溶媒のより典型的な例としては、DMSOと水との混合溶媒等が挙げられる。
上記処理は、セルロース原料の粉砕及び/又は粗解繊を含んでもよい。この場合、DMSO除去効率向上の観点から、粗解繊は、平均繊維径0.3mm~0.8mm程度のものであることが好ましい。
粉砕は、高速回転衝撃式粉砕機等を用いた乾式粉砕であってよい。高速回転衝撃式粉砕機とは、粉砕室内で回転するピンや特殊な構造を有するローターがセルロース原料に衝撃、あるいは剪断等を与え、これを粉砕する方式の粉砕機である。
粗解繊は、残存DMSO量を低減するような態様で行うことが好ましく、好ましい一例は、水媒体中での粗解繊である。
一態様に係る方法においては、セルロースが疎水化セルロースであり、セルロース製造工程において、セルロース原料をDMSOの存在下で疎水化し、次いでDMSOを水に置換し、次いで疎水化されたセルロース原料を解繊してセルロースを得る。解繊前にDMSOを除去することは、セルロース中のDMSO含有率の低減において極めて有効である。
DMSOの除去は、例えば繰り返し洗浄によって行ってよい。好ましい条件としては、セルロース原料への洗浄水の添加、強制脱水による可能な限りの脱水、取り出し、のサイクルの繰り返し実施を例示できる。
DMSO除去後、セルロース原料を解繊する。解繊には、セルロース原料に剪断が効果的に掛かる装置、例えば、離解機、叩解機、リファイナー、低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、乳化機、ホモミキサー、グラインダー、マスコロイダー、カッターミル、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル、単軸押出機、二軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等を使用できる。中でも、硫黄不含有非プロトン性溶媒を用いたホモミキサーでの解繊は、低エネルギーでの解繊が可能であり好ましい。
分散剤を用いる場合には、セルロースの解繊に使用する溶媒に、予め(すなわちセルロースを供給する前に)溶解させておくことが好ましい。この場合、溶媒としては、DMF、DMAc、NMP等が、セルロースの良好な微分散の点で好ましい。
分散剤を使用する場合、解繊後に溶媒を分散剤の貧溶媒に置換して、セルロースへの分散剤の付着を促進してもよい。分散剤の貧溶媒とは、分散剤を溶解しない溶媒であって、より好ましくは、分散剤を溶解させず、かつ分散剤が溶解する有機溶媒とは混和する溶媒である。例えば、分散剤がセルロース誘導体である場合、貧溶媒としては、pH1~14の範囲の水、無機塩(例えば塩化ナトリウム、塩化カルシウム、ケイ酸ナトリウム等)を含む水、アルコール(例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、1-ヘキサノール等)、水/アルコール混合溶媒等が挙げられる。
後段の溶融混練に供されるセルロースのDMSO含有率は、好ましくは、100質量ppm以下、又は80質量ppm以下、又は50質量ppm以下、又は30質量ppm以下、又は20質量ppm以下である。セルロースのDMSO含有率が上記範囲である場合、当該セルロースを用いて得られる樹脂組成物中のDMSO分解物の含有率を低減でき好ましい。セルロースのDMSO含有率は小さい程望ましく、例えば検出限界(一態様において0.4質量ppmであり得る)以下であってよいが、セルロースの製造容易性の観点から、例えば、0.5質量ppm以上、又は1質量ppm以上、又は5質量ppm以上であってもよい。
後段の溶融混練に供されるセルロースの水分率は、好ましくは、5質量%以下、又は1質量%以下、又は0.1質量%以下である。水分率は小さい方が好ましいが、セルロースの製造容易性の観点から、例えば、0.5質量%以上、又は1質量%以上、又は3質量%以上であってもよい。
<樹脂組成物製造工程>
本工程では、セルロース製造工程で得たセルロースと、熱可塑性樹脂とを溶融混練して樹脂組成物を得る。具体的には、セルロースを、乾燥体又はスラリー(例えば水分散体)の形態で、熱可塑性樹脂と溶融混練して樹脂組成物を得ることができる。セルロースと熱可塑性樹脂との混合物を溶融混練する際の加熱温度は、使用する樹脂に合わせて調整することができる。溶融混練時の加熱温度としては、熱可塑性樹脂の融点以上であるが当該融点を大幅に上回らない温度が好ましい。加熱温度は、好ましくは、樹脂組成物を構成する熱可塑性樹脂の融点以上、又は当該融点+30℃以上、又は当該融点+60℃以上である。一方、混練時の熱履歴による樹脂組成物中の樹脂の初期分子量低下及び物性低下を抑制する観点からは、加熱温度は低い方が有利であり、例えば、好ましくは、当該融点+80℃以下、又は当該融点+40℃以下、又は当該融点+20℃以下である。
上記融点とは、示差走査熱量分析装置(DSC)を用いて、23℃から10℃/分の昇温速度で昇温した際に現れる吸熱ピークのうち最も高温側のピークのピークトップ温度であり、樹脂組成物が複数種の熱可塑性樹脂を含む場合には最も高温側の融点を意味する。なお、熱可塑性樹脂供給業者が推奨する最低加工温度は、ナイロン66では255~270℃、ナイロン6では225~240℃、ポリアセタール樹脂では170℃~190℃、ポリプロピレンでは160~180℃である。加熱設定温度は、これらの推奨最低加工温度より40℃高い温度の範囲であってよい。
溶融混練の際、混練物の水分率は、好ましくは、0.2質量%以下、又は0.1質量%以下、又は0.07質量%以下である。上記水分率は、工程管理容易性の観点から、例えば、0.01質量%以上、又は0.03質量%以上、又は0.05質量%以上であってよい。上記水分率は、混練工程終了時の混練物(すなわち得られる樹脂組成物)についての値である。溶融混練に供されている混合物の水分率は、好ましくは、混練工程の開始時及び終了時の両方、より好ましくは混練工程の開始時から終了時までを通じて、上記範囲であってよい。
溶融混練には、単軸押出機、二軸押出機等の押出機を使用できるが、二軸押出機がセルロースの分散性を制御する上で好ましい。押出機のシリンダー長(L)をスクリュー径(D)で除したL/Dは、40以上が好ましく、特に好ましくは50以上である。また、混練時のスクリュー回転数は、100~800rpmの範囲が好ましく、より好ましくは150~600rpmの範囲内である。これらはスクリューのデザインにより、変化する。例えば、樹脂組成物の初期分子量の低下を抑制するとともに樹脂組成物中のセルロースの劣化を抑制する観点からは、弱練り(すなわち、小剪断力下での混練)が好適である場合がある。
押出機のシリンダー内の各スクリューは、楕円形の二翼のねじ形状のフルフライトスクリュー、ニーディングディスクと呼ばれる混練エレメント、等を組み合わせて最適化される。
一態様においては、押出機のシリンダーの途中部分に添加口が設置され、添加口に投入された原料はシリンダー内のスクリューに導かれる。一態様において、添加口の位置は、最初の溶融混練ゾーンより下流に配置される。押出機を用いた通常の混練では、最初の樹脂溶融ゾーンが最も強く剪断がかかる領域であるため、搬送ゾーンを移動する未溶融状態の樹脂に対しフィラー成分を添加することにより、その後の加熱溶融下での剪断力でフィラーが微分散される。
セルロースの表面積は極めて大きいため、セルロースを樹脂に微分散させる場合、樹脂溶融ゾーンの手前でセルロースを添加すると、樹脂溶融ゾーンでの強い剪断力が原因で、セルロースの劣化が生じる場合がある。例えば、通常のフィラー成分の樹脂に対する添加量比(具体的には、フィラー成分と樹脂との合計100質量%に対してフィラー成分20質量%以上)で強化樹脂組成を設計しようとした場合、上記剪断力によるセルロースの劣化によって、セルロースのもつ本来の強固な結晶構造の損失、強化樹脂としての力学的特性の低下、着色及び臭気といった問題が生じる場合がある。このとき、セルロースに分散剤が付着していると、セルロースの分散性が顕著に良好であるため、上記剪断下にセルロースをさらすことなく微分散が可能である。すなわち、予め溶融された樹脂に対してセルロースを添加することで、セルロースが劣化の少ない状態で樹脂中に分散できる。熱可塑性樹脂が耐熱性に優れたエンジニアプラスチックであった場合、その溶融温度は非常に高温であるため、加工時には強い熱履歴がセルロースにもかかり、セルロースの劣化が生じやすい。このような耐熱性に優れた熱可塑性樹脂を用いる場合には、分散剤の使用等によってセルロースの分散性を向上させ、混練時に受ける熱履歴を少なくすることが好ましい。
シリンダー内部を通過する際に受ける熱履歴の軽減を目的とし、添加口は、押出機の溶融混練ゾーンよりも下流側に設計することが好ましい。具体的には、シリンダーの全長(L1)に対し、シリンダーの出口から添加口までの長さ(L2)を1/2以下に設計することが好ましい。なおシリンダーの全長には混練に関与しない部分(例えば搬送ゾーン)も含まれる。添加口からは、セルロースが投入され、押出機内で溶融混練された熱可塑性樹脂中に混入される。
セルロースに予め分散剤を付着させる場合、溶融された樹脂に対して(好ましくは押出機の溶融混練ゾーンよりも下流、より好ましくはL2/L1が1/2以下、更に好ましくはL2/L1が1/3以下、最も好ましくはL2/L1が1/4以下に位置する添加口から)シリンダーにセルロースを添加しても、セルロースが高度に分散した樹脂組成物を製造することができる。上記のような態様で投入されたセルロースは、微細に分散されていながらも熱履歴が緩和されているため、樹脂組成物の物性が高度であるとともに、焼けによる着色及び臭気の発生が抑制されている。
押出機の、添加口を含む部位(サイドフィーダー)の下流には、ガス抜きシリンダー、真空引きベント等を適宜設け、セルロース投入時に混入した空気及び微量の水分(水蒸気)を脱気することができる。
また、二軸押出機は、先端排出部で樹脂に高圧がかかり、樹脂温度が上昇しやすい。この樹脂圧力を制御したり樹脂温度上昇を軽減する目的で、下流にギヤポンプを設置することができる。
セルロースが押出機内を搬送される距離を、熱可塑性樹脂と比較して短くする場合、セルロース混入後のシリンダー内のスクリューの構成を工夫することで確実な均質分散を実現することができる。具体的には、これに限定するものではないが、進行方向と逆向きのフィードを作り出す反時計回りのスクリューを1箇所以上、添加口よりも下流側のシリンダー内に設けることにより、セルロースの高度な分散をより確実に実現することができる。
溶融混練後、樹脂組成物は、押出機の紡口から押出してペレットとして回収してよく、更に成形体に成形してよい。成形方法としては、射出成形(例えば射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、及び超高速射出成形)、各種押出成形(コールドランナー方式又はホットランナー方式)、発泡成形(超臨界流体の注入によるものを含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、各種異形押出成形(例えば二色成形及びサンドイッチ成形)等を例示できる。例えば、シート、フィルム、繊維等の成形には種々の押出成形が好適である。シート又はフィルムの成形にはインフレーション法、カレンダー法、キャスティング法等も用いることができる。さらに、特定の延伸操作をかけることにより熱収縮チューブとして成形することも可能である。また、回転成形又はブロー成形等により中空成形品とすることも可能である。デザイン性及びコストの観点から、成形方法としては射出成形が好ましい。
≪樹脂組成物の用途≫
本実施形態の樹脂組成物は、鋼板、繊維強化プラスチック(例えば炭素繊維強化プラスチック、ガラス繊維強化プラスチック等)、無機フィラーを含む樹脂コンポジット、等の代替品として有用である。樹脂組成物の好適な用途としては、産業用機械部品、一般機械部品、自動車・鉄道・車両・船舶・航空宇宙関連部品、電子・電気部品、建築・土木材料、生活用品、スポーツ・レジャー用品、風力発電用筐体部材、容器・包装部材、等を例示できる。
以下に、本発明を実施例に基づいて更に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
≪原料≫
下記原料を用いた。
<熱可塑性樹脂>
ポリアミド:ポリアミド66(PA66)(旭化成(株)製 レオナ1300)
ポリアミド6(PA6)(宇部興産(株)製 1013B)
ポリアミド610(PA610)(旭化成(株)製 レオナ3400)
<セルロース>
[セルローススラリーの調製]
(製造例1:CNF-A)
コットンリンターパルプ3質量部を水27質量部に浸漬させてオートクレーブ内で130℃、4時間の熱処理を行った。得られた膨潤パルプは水洗し、水を含む精製パルプ(30質量部)を得た。つづいて、水を含む精製パルプ30質量部に水を170質量部入れて水中に分散させて(固形分率1.5質量%)、ディスクリファイナー装置として相川鉄工(株)製SDR14型ラボリファイナー(加圧型DISK式)を用い、ディスク間のクリアランスを1mmとして該水分散体を30分間叩解処理した。それに引き続き、クリアランスをほとんどゼロに近いレベルにまで低減させた条件下で徹底的に叩解を行い、叩解水分散体(固形分濃度:1.5質量%)を得た。得られた叩解水分散体を、そのまま高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社(伊)製NSO15H)を用いて操作圧力100MPa下で10回微細化処理し、微細セルローススラリー(固形分濃度:1.5質量%)を得た。そして、脱水機により固形分率10質量%まで濃縮し、濃縮スラリー1を30質量部得た。
オートクレーブ用PTFEカップ中に濃縮スラリー1を10質量部、炭酸カリウム1.4質量部、酢酸ビニル4.3質量部を加え攪拌をした後、ステンレス製のオートクレーブ内に収納し、蓋をした。つづいて、オートクレーブを100℃のオーブン中に2時間静置し、加熱処理を行った。加熱処理終了後、オートクレーブに水をかけて急冷した。内容物をエタノール100質量部中で分散させて、濾過を実施する洗浄操作を2回行った後、水100質量部での同様の洗浄操作を4回行い、CNF-Aのスラリー(固形分率10質量%)を得た。
(粉体化)
得られたスラリーを防爆型ディスパーザータンクに投入し、純水30質量部を加えて十分に撹拌した後、脱水機に入れて濃縮した。得られたウェットケーキを再度30質量部の純水に分散、撹拌、濃縮する洗浄操作を合計5回繰り返すことで、未反応試薬溶媒等を除去し、固形分率10質量%のスラリー(水溶媒)を10質量部得た。
つづいて得られたスラリーをプラネタリミキサー(ハイビスミックス2P-1)を用いて回転数50rpm、40℃で真空乾燥させることにより、セルロースナノファイバーの乾燥体(CNF-A)を得た。
[製造例2]
KAPPA VITA(登録商標)ホモミキサー(タンクサイズ35L)に、パルプ1質量部、DMSO19質量部、重曹0.321質量部、酢酸ビニル1質量部を仕込み、60℃にて、ホモミキサー回転数6000rpm(周速度29m/s)で2時間、解繊と化学修飾を行い、CNF-Bのスラリーを得た。
製造例1と同様の条件で粉体化を行い、セルロースナノファイバーの乾燥体(CNF-B)を得た。
≪樹脂組成物の製造≫
[実施例1~9、及び比較例1~9]
組成、押出時の温度、混練の強弱、真空ベントの引きの強弱を表2に示す。表2に示すベースポリマー85.6質量部と、CNF-A又はCNF-B 10質量部及びポリエチレングリコール(PEG20000)(分散剤として)4.3質量部とを、表2に示す混練条件で混練して、樹脂組成物を得た。
[押出機の構成]
シリンダーブロック数が13個ある二軸押出機(STEER社製 OMEGA30H、L/D=60)のシリンダー1を水冷、シリンダー2を80℃、シリンダー3を150℃、シリンダー4~ダイスを表2に記載の温度に設定した。
(構成1)
スクリュー構成としては、シリンダー1~3を搬送スクリューのみで構成される搬送ゾーンとし、シリンダー4に上流側より2個の時計回りニーディングディスク(送りタイプニーディングディスク:以下、単にRKDと呼ぶことがある。)、2個のニュートラルニーディングディスク(無搬送タイプニーディングディスク:以下、単にNKDと呼ぶことがある。)を順に配した。シリンダー5~10は搬送ゾーンとし、シリンダー11に2個のNKD、引き続いての1個の反時計回りスクリューを配し、シリンダー12及び13は搬送ゾーンとした。なお、シリンダー12にはシリンダー上部にベントポートを設置し減圧吸引できるようにし、真空吸引を実施した。
スクリュー回転数:250rpm
(構成2)
スクリュー構成としては、シリンダー1~3を搬送スクリューのみで構成される搬送ゾーンとし、シリンダー4に上流側より2個の時計回りニーディングディスク(送りタイプニーディングディスク:以下、単にRKDと呼ぶことがある。)、2個のニュートラルニーディングディスク(無搬送タイプニーディングディスク:以下、単にNKDと呼ぶことがある。)を順に配した。シリンダー5は搬送ゾーンとし、シリンダー6に1個のRKD及び引き続いての2個のNKDを配し、シリンダー7及び8は搬送ゾーンとし、シリンダー9に2個のNKDを配した。続くシリンダー10は搬送ゾーンとし、シリンダー11に2個のNKD、引き続いての1個の反時計回りスクリューを配し、シリンダー12及び13は搬送ゾーンとした。なお、シリンダー12にはシリンダー上部にベントポートを設置し減圧吸引できるようにし、真空吸引を実施した。
スクリュー回転数:500rpm
≪評価≫
<セルロースの評価>
[多孔質シートの作製]
まず、ウェットケーキをtert-ブタノール中に添加し、さらにミキサー等で凝集物が無い状態まで分散処理を行った。セルロース固形分重量0.5gに対し、濃度が0.5質量%となるように調整した。得られたtert-ブタノール分散液100gをろ紙上で濾過し、150℃にて乾燥させた後、ろ紙を剥離してシートを得た。このシートの透気抵抗度がシート目付10g/m2あたり100sec/100ml以下のものを多孔質シートとし、測定サンプルとして使用した。
23℃、50%RHの環境で1日静置したサンプルの目付W(g/m2)を測定した後、王研式透気抵抗試験機(旭精工(株)製、型式EG01)を用いて透気抵抗度R(sec/100ml)を測定した。この時、下記式に従い、10g/m2目付あたりの値を算出した。
目付10g/m2あたり透気抵抗度(sec/100ml)=R/W×10
[アシル置換度(DS)]
多孔質シートの5か所のATR-IR法による赤外分光スペクトルを、フーリエ変換赤外分光光度計(JASCO社製 FT/IR-6200)で測定した。赤外分光スペクトル測定は以下の条件で行った。
積算回数:64回、
波数分解能:4cm-1
測定波数範囲:4000~600cm-1
ATR結晶:ダイヤモンド、
入射角度:45°
得られたIRスペクトルよりIRインデックスを、下記式:
IRインデックス= H1730/H1030・・・(1)
に従って算出した。式中、H1730及びH1030は1730cm-1、1030cm-1(セルロース骨格鎖C-O伸縮振動の吸収バンド)における吸光度である。ただし、それぞれ1900cm-1と1500cm-1を結ぶ線と800cm-1と1500cm-1を結ぶ線をベースラインとして、このベースラインを吸光度0とした時の吸光度を意味する。
そして、各測定場所の平均置換度をIRインデックスより下記式に従って算出し、その平均値をDSとした。
DS=4.13×IRインデックス
[結晶化度]
多孔質シートのX線回折測定を行い、下記式より結晶化度を算出した。
結晶化度(%)=[I(200)-I(amorphous)]/I(200)×100
(200):セルロースI型結晶における200面(2θ=22.5°)による回折ピーク強度
(amorphous):セルロースI型結晶におけるアモルファスによるハローピーク強度であって、200面の回折角度より4.5°低角度側(2θ=18.0°)のピーク強度
(X線回折測定条件)
装置 MiniFlex(株式会社リガク製)
操作軸 2θ/θ
線源 CuKα
測定方法 連続式
電圧 40kV
電流 15mA
開始角度 2θ=5°
終了角度 2θ=30°
サンプリング幅 0.020°
スキャン速度 2.0°/min
サンプル:試料ホルダー上に多孔質シートを貼り付け
[平均繊維径、平均L/D]
ウェットケーキをtert-ブタノールで0.01質量%まで希釈し、高剪断ホモジナイザー(IKA製、商品名「ウルトラタラックスT18」)を用い、処理条件:回転数25,000rpm×5分間で分散させ、マイカ上にキャストし、風乾したものを、高分解能走査型電子顕微鏡で測定した。測定は、少なくとも100本のセルロースが観測されるように倍率を調整して行い、無作為に選んだ100本のセルロースの長さ(L)、長径(D)及びこれらの比を求め、100本のセルロースの加算平均を算出した。
<樹脂組成物の評価>
[DMSO含有率]
樹脂組成物を凍結粉砕後、約1mg精秤して、230℃の熱分解炉で10分間加熱した。加熱中に発生したガスは、液体窒素で冷却したカラムでトラップした。
加熱終了後、室温まで放冷し、カラム内部にトラップされた発生ガス成分をガスクロマトグラフィ質量分析(GC/MS)測定に供した。測定手順は以下のとおりである。
装置:Agilent社製 6890GC、 MSD-5973
検出器:MSD
カラム:DB-WAX(30m×0.25mm,Film0.25μm)
スプリット比:1/100
オーブン温度:40℃(5分)→20℃/分で昇温→230℃(5分)
注入口温度:250℃
トランスファー温度:320℃
熱分解装置:フロンティアラボ製 PY-2010D
熱分解温度:230℃(10min) IF温度:230℃
測定条件:230℃で10分間加熱したときのクロマトグラム(1回目加熱クロマトグラム)を得た後、230℃で再度10分間加熱し、このときのクロマトグラム(2回目加熱クロマトグラム)を得た。2回目加熱クロマトグラムにおいてDMSOが検出されないことを確認した。
上記1回目加熱クロマトグラムから、DMSOの定量を行った。DMSO標準溶液として、DMSOの、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP):メタノール=1:3(質量比)混合溶媒中溶液を調製し、熱分解炉に直接注入し、冷却したカラムで10分トラップした。得られたDMSO標準溶液のクロマトグラムのピーク面積値に基づいて、サンプル中のDMSO量を絶対検量線法にて定量した(一点検量線法)。
[水分率]
ISO 15512に準拠した方法でカールフィッシャー水分計を用いて測定した。
[IRピーク強度比]
樹脂組成物のATR-IR法による赤外分光スペクトルを、フーリエ変換赤外分光光度計(JASCO社製 FT/IR-6200)で測定した。赤外分光スペクトル測定は以下の条件で行った。
積算回数:16回、
波数分解能:4cm-1
測定波数範囲:4000~600cm-1
ATR結晶:ダイヤモンド、
入射角度:45°
得られた反射型赤外吸収スペクトルから、下記式に従ってIRインデックスの値を求めた。
IRインデックス= H1730~1700/H1650~1620
ここで、H1730~1700は、セルロース骨格鎖C-O伸縮振動の吸収バンドである波数1730~1700cm-1における吸光度であり、H1650~1620は、ポリアミド樹脂骨格鎖C-O伸縮振動の吸収バンドである波数1650~1620cm-1における吸光度である。H1730~1700としては、1680cm-1付近と1850cm-1付近の他のピークがない位置を直線で結んだベースラインを引き、ベースラインの高さをピーク高さから差し引いた値を読み取った。また、H1650~1620としては、1550cm-1付近と1680cm-1付近の他のピークがない位置を直線で結んだベースラインを引き、ベースラインの高さをピーク高さから差し引いた値を読みった。各波数範囲内に複数のピークが存在する場合には、最もピーク強度が大きいピークを上記算出に用いた。
[試験片の射出成形]
真空乾燥機(エスペック社製、型番LCV-233)にて、80℃で48時間真空乾燥した樹脂を下記の条件で射出成形した。
装置:ファナック社製 S2000i100B
金型:ISO 20753 type A1準拠
成形条件:ISO294-1、ISO527-1及びISO16396準拠
[評価1(成形性)]
(臭気)
上記試験片の射出成形において、臭気の有無を以下の基準で評価した。
×:成形の最中に鼻に付く臭気を感じる。
△:上記×に該当しないが、成形機の投入部の蓋を開けると臭気を感じる。
〇:上記×及び△に該当しないが、成形直後の試験片に顔を近付けると臭気を感じる。
◎:上記×、△及び〇に該当せず、成形直後の試験片に顔を近付けても臭気を感じない。
通常、成形機周辺には排気ダクトが必ず設置されていることから、上記の評価が△以上であれば実用上許容可能なレベルと判定できる。評価×は、排気が間に合わず実用上は許容できないレベルである。
(ガス発生)
上記試験片の射出成形において、白煙の有無を以下の基準で評価した。
×:成形機に樹脂を滞留させると、成形機を操作していない状態でもノズルから白煙が生じている様子が認められる。
△:上記×に該当しないが、成形機を操作すると樹脂パージ当初に白煙が認められる。
〇:上記×及び△に該当しないが、成形機を操作すると樹脂パージ当初にわずかに白煙が認められる。
◎:上記×、△及び〇に該当せず、成形機を操作してもまったく白煙が認められない。
長時間の樹脂滞留によって分解ガスが生じることは、セルロース不含有樹脂組成物であってもあり得ることから、上記の評価が△以上であれば実用上許容可能なレベルと判定できる。評価×は、保安面に劣り実用上は許容できないレベルである。
[評価2(エージング性)]
(オーブンによるエージング)
上記試験片をギア-オーブンの金網に所定時間平置きして熱曝露した。使用した装置、温度、及び曝露時間は下記の通りである。また、オーブンから取り出したサンプルは速やかにアルミ防湿袋に入れ、熱伝導性の低い場所に静置して保管した。
温度:130℃、150℃、180℃
曝露時間:100時間、250時間、500時間、1000時間
装置:東洋精機社製(型番:Geer Oven S45)
空気置換率:~56回/h
(1000h後引張強度保持率)
エージング前、及びエージングを1000時間行った後の試験片の引張強度を測定した。
測定前に24時間以上、温度23℃、相対湿度50%の恒温恒湿室に、アルミ防湿袋に入れた状態でサンプルを静置して状態安定化させた後、下記の装置及び条件で引張試験を行なった。
装置:インストロン社製(型番:5969)
ロードセル:10kN
引張試験条件:ISO527準拠
標線間:50mm
測定環境:温度23℃、相対湿度50%の恒温恒湿室
1000時間エージング後の試験片の引張強度を、エージング前の試験片の引張強度で除した値を、1000h後引張強度保持率とした。
1000h後引張強度保持率が80%以上である場合、一般的な耐熱ガラス繊維(GF)グレード相当と見做せることから実用上許容可能なレベルと判定できる。
(1000h後Mw保持率)
エージング前、及びエージングを1000時間行った後のサンプルの表層(表面から深さ200μm)、及びコア層(表面から深さ1000μm)をミクロトーム(ライカ社製、型番:RM2245)で約5.0mgサンプリングした後、計算した樹脂分に対して1mg:1mLになるように0.0848%トリフルオロ酢酸ナトリウムを溶解させたヘキサフルオロイソプロピルアルコールを加え、1時間静置し溶解させた。溶液を孔径0.22μmのメンブレンフィルターでろ過し、ろ液をゲルパーミエーションクロマトグラフィ用の試料として供した。用いた装置と測定条件は下記のとおりである。
装置:東ソー社製 HLC-8320GPC
カラム:東ソー社製 SuperHM-M
ガードカラム:東ソー社製 TSK-GELガード
溶離液:ヘキサフルオロイソプロピルアルコール(トリフルオロ酢酸ナトリウム 0.0848質量%)
流速:0.3mL/分
検出器:RI検出器
検量線サンプル:エーエムアール社製 EasiVialTMPM(PMMA)
解析ソフト:EcoSEC-WorkStation
1000時間エージング後のサンプルの重量平均分子量Mwを、エージング前のサンプルの重量平均分子量Mwで除した値を、1000h後Mw保持率とした。
通常、エージングを行うと樹脂の固相重合が進行して分子量が増大する。1000h後Mw保持率が100%未満である場合、Mwが既に低下途中にあると考えられ、1000h以降にサンプルが大きく強度低下することが予想される。これに対し、1000h後Mw保持率が100%以上である場合、実用上許容可能なレベルと判定できる。
結果を表2及び3に示す。
Figure 2022171138000001
Figure 2022171138000002
Figure 2022171138000003
本発明に係る樹脂組成物は、熱劣化の低減が望まれる種々の用途に好適に適用され得る。

Claims (14)

  1. セルロースとポリアミドとを含む樹脂組成物であって、
    赤外分光分析において、波数1620~1650cm-1の範囲に観測されるカルボニル由来ピークのピーク強度に対する波数1700~1730cm-1の範囲に観測されるカルボニル由来ピークのピーク強度の割合が0.04未満であり、
    前記樹脂組成物中のジメチルスルホキシド(DMSO)の含有率が100質量ppm以下である、樹脂組成物。
  2. 前記ジメチルスルホキシド(DMSO)の含有率が、20質量ppm以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記ジメチルスルホキシド(DMSO)の含有率が、0.4質量ppm以上である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記樹脂組成物がペレット形状である、請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  5. 前記樹脂組成物中の前記セルロースの含有率が、0.1質量%~30質量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  6. 前記セルロースが、径50~1000nm、長さ(L)/径(D)比30以上のセルロースナノファイバー、径100nm以下、長さ(L)/径(D)比30未満のセルロースナノクリスタル、若しくは径1μm超50μm以下のセルロースマイクロファイバー、又はこれらの2種以上の混合物である、請求項1~5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  7. 前記セルロースの結晶化度が、60%以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  8. 前記セルロースがコットンリンター由来セルロースである、請求項1~7のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  9. 前記セルロースが、疎水化セルロースである、請求項1~8のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  10. 前記セルロースが、エステル化セルロースである、請求項9に記載の樹脂組成物。
  11. 前記エステル化セルロースのアシル置換度が0.01~2.0である、請求項10に記載の樹脂組成物。
  12. 請求項1~11のいずれか一項に記載の樹脂組成物の製造方法であって、
    セルロース原料を解繊して前記セルロースを得るセルロース製造工程、及び
    前記セルロースと前記ポリアミドとを溶融混練して前記樹脂組成物を得る樹脂組成物製造工程、
    を含み、
    前記セルロース製造工程が、ジメチルスルホキシド(DMSO)の存在下でセルロース原料を処理した後、前記ジメチルスルホキシド(DMSO)を除去することを含む、方法。
  13. 前記セルロースが疎水化セルロースであり、
    前記セルロース製造工程において、前記セルロース原料をジメチルスルホキシド(DMSO)の存在下で疎水化し、次いでジメチルスルホキシド(DMSO)を水に置換し、次いで前記疎水化されたセルロース原料を解繊して前記セルロースを得る、請求項12に記載の方法。
  14. 前記溶融混練に供されるセルロース中のジメチルスルホキシド(DMSO)の含有率が、100質量ppm以下である、請求項12又は13に記載の方法。
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