JP2019052410A - セルロースナノファイバーの製造方法 - Google Patents

セルロースナノファイバーの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 物理粉砕を必要としない省エネルギーな化学方法で、ナノサイズで結晶化度が高く、アスペクト比が大きいセルロースナノファイバー及びセルロースナノファイバーの表面をエステル化又はウレタン化した修飾セルロースナノファイバーの製造法を提供する。
【解決手段】 本発明のセルロースナノファイバーの製造方法は、ジメチルスルホキシド、無水酢酸、並びに、塩酸、リン酸、及び硝酸のうちのいずれか1種以上の無機酸触媒を含む解繊溶液をセルロースに浸透させてセルロースを解繊することを特徴とする。また、前記セルロースナノファイバーをエステル化反応化剤又はウレタン反応化剤とさらに反応させて表面をエステル化修飾又はウレタン修飾することを特徴とする。
【選択図】 図2

Description

本発明は、化学解繊法による無修飾セルロースナノファイバーの製造方法及び修飾セルロースナノファイバーの製造方法に関する。
通常、セルロースパルプからセルロースナノファイバーを製造する方法は解繊と言われている。解繊方法は大きく分けると機械解繊法と化学解繊法があるが、機械解繊法では、セルロースを水に分散、膨潤膨潤され、柔らかく状態で高圧ホモジナイザー等の強力的な機械せん断によりナノ化する必要があるため、多大なエネルギーが必要であり、得られたセルロースナノファイバーに損傷のある場合もある。
そこで、表面をエステル化したセルロースナノファイバーの製造方法として、イオン液体と有機溶媒を含有する混合溶媒を用いてセルロース系物質を膨潤及び/または部分溶解させた後、エステル化する方法がある(特許文献1、特許文献2)。しかし、イオン液体と有機溶媒を含有する混合溶媒を用いた場合は、イオン液体の回収や再利用に関するコストが高くなる課題があった。
また、セルロース原料の物理粉砕を必要としない省エネルギーな化学方法によりセルロースナノファイバーを製造する方法として、テトラアルキルアンモニウムアセテートおよび非プロトン性極性溶媒を含む解繊溶液を用いる方法も開発されている(特許文献3)。
さらに、化学解繊法として、北米や北欧を中心としたセルロースを酸加水分解等の化学的処理を施すことでセルロースナノクリスタルを調製する方法が良く知られている。即ち、セルロースパルプを60−70%の硫酸(あるいは塩酸)水溶液中に70℃で10−30分あるいは45℃で3時間で浸漬した後、中和・洗浄してから超音波処理によりセルロースナノクリスタル(CNC)が得られる(非特許文献1)。この方法で得られたCNCの幅は10〜50nm程度、長さが500nm以下である。この方法は酸濃度が高いため、セルロースが激しく加水分解され、ナノ化されたセルロースの幅が20nmであるものの、長さが200−500nm程度しかない。アスペクト比(繊維の長さと幅の比)が小さいため、補強効果が殆ど発現できず、それから得られた自立膜は脆い。また、加水分解のため、収率が低い。さらに、高濃度硫酸を用いた場合、得られたナノクリサタルの表面の水酸基が硫酸により硫酸エステル化修飾されるため耐熱性が低く、熱分解温度は250℃まで低下する
一方、表面修飾セルロースナノファイバーは、セルロースナノファイバーを前記した官能基によって修飾することにより得ることができる。
セルロースナノファイバーの表面をエステル化修飾、ウレタン修飾、エーテル修飾等で修飾した表面修飾セルロースナノファイバーは、高分子材料との親和性が高く各種高分子複合材料の原料として有用であり、例えば、熱伝導性無機粒子とセルロースナノファイバーの複合材からなる放熱材にも利用されている(特許文献4)
特開2010−104768号公報 特開2013−44076号公報 特開2013−091874号公報 特開2016−79202号公報
Biomacromolecules 2005,6,1048−1054
本発明は、パルプ、綿、紙類、段ボール等のセルロース原料の物理粉砕を必要としない省エネルギーな化学方法で、ナノサイズで結晶化度が高く、アスペクト比が大きいセルロースナノファイバーの製造法を提供する。
また、セルロースナノファイバーの表面をエステル化又はウレタン化した修飾セルロースナノファイバーの製造法を提供する。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、セルロース原料を機械的に破砕することなく、ジメチルスルホキシド、無水酢酸及び無機酸触媒を含む解繊溶液にセルロースを浸透させて、セルロースを解繊し、繊維径がナノサイズで結晶化度が高く、繊維形状の損傷が少ないセルロースナノファイバーの製造方法を見出した。
すなわち本発明は、以下の構成からなることを特徴とし、上記課題を解決するものである。
〔1〕 ジメチルスルホキシド、無水酢酸、並びに、塩酸、リン酸、及び硝酸のうちのいずれか1種以上の無機酸触媒を含む解繊溶液をセルロースに浸透させてセルロースを解繊することを特徴とするセルロースナノファイバーの製造方法。
〔2〕 前記解繊溶液における無水酢酸の濃度が、0.5〜50重量%であることを特徴とする前記〔1〕に記載の製造方法。
〔3〕 前記解繊溶液における無機酸触媒の濃度が、0.5〜50重量%であることを特徴とする前記〔1〕又は前記〔2〕に記載の製造方法。
〔4〕 セルロースと前記解繊溶液との重量割合が、前者/後者=0.5/99.5〜50/50である前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の製造方法。
〔5〕 解繊過程における解繊溶液の温度が、10〜150℃であることを特徴とする前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の製造方法。
〔6〕 平均繊維径1〜500nmのセルロースナノファイバーの表面の水酸基がエステル化又はウレタン化された修飾セルロースナノファイバーの製造方法であって、(1)請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法によりセルロースナノファイバーを製造する工程と、(2)前記セルロースナノファイバーをエステル化反応化剤又はウレタン反応化剤とさらに反応させて表面をエステル化修飾又はウレタン修飾する工程、を含む修飾セルロースナノファイバーの製造方法。
〔7〕 前記(1)の工程が終了後、アルカリを用いて中和、濾過、洗浄により解繊溶液を除いてから(2)の工程を行うことを特徴とする前記〔6〕に記載の修飾セルロースナノファイバーの製造方法。
〔8〕 前記(2)の工程のエステル化修飾化剤が、カルボン酸無水物、カルボン酸ビニル、カルボン酸ハロゲン化物及びカルボン酸のいずれか1つ以上であることを特徴とする前記〔6〕又は前記〔7〕に記載の修飾セルロースナノファイバーの製造方法。
〔9〕 前記(2)の工程のウレタン化修飾化剤が、イソシアネートであることを特徴とする前記〔6〕又は前記〔7〕に記載の修飾セルロースナノファイバーの製造方法。
〔10〕 前記(2)の工程のエステル化又はウレタン化修飾反応において、反応液中にアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、カルボン酸塩、又はピリジン類、イミダゾール類及びアミン類からなる群より選択された少なくとも1種の塩基触媒を含むことを特徴とする前記〔6〕〜〔9〕のいずれかに記載の修飾セルロースナノファイバーの製造方法。
本発明では、機械的に破砕することなく、ジメチルスルホキシド、無水酢酸及び塩酸、リン酸、及び硝酸のうちのいずれか1種以上の無機酸触媒を含む解繊溶液にセルロースを浸透させる際に、解繊溶液はセルロース繊維のミクロフィブリル又はエレメンタリーミクロフィブリルの間まで浸透し、フィブリルの間の水素結合を効率よく解除してミクロフィブリル又はエレメンタリーフィブリルを得ることができる。
即ち、先行技術と比べ、本技術の特徴は、強いせん断力を必要とせず、省エネルギーで、高い解繊速度を有し、セルロースナノファイバーの繊維径を容易に制御でき、繊維径が数ナノ〜数百ナノまでの修飾セルロースナノファイバーを簡単に調製できる。また、解繊薬剤の入手が容易で安全性が高い。さらに、解繊溶液中の酸濃度が低いため、セルロースに与えるダメージが低い。
実施例1と3で得られたセルロースナノファイバーの水分散液の外観 実施例1で得られたセルロースナノファイバーのSEM写真 実施例1で得られたセルロースナノファイバーのIRスペクトル 実施例2で得られたセルロースナノファイバーの水分散液の外観とSEM写真 実施例2及び実施例7で得られたセルロースナノファイバーのIRスペクトル 実施例3で得られたセルロースナノファイバーのIRスペクトル 実施例3で得られたセルロースナノファイバーのXRD 実施例4で得られたセルロースナノファイバーの水分散液とSEM写真 実施例4で得られたセルロースナノファイバーのIRスペクトル 実施例5で得られたブチリル修飾セルロースナノファイバーのIRスペクトル 実施例6で得られたアセチル化修飾セルロースナノファイバーのIRスペクトル
本発明のセルロースナノファイバーの製造方法は、機械的破砕等の前処理を必要とせず、直接ジメチルスルホキシド(以下、「DMSO」と略記する場合がある。)、無水酢酸及び塩酸、リン酸、及び硝酸のうちのいずれか1種以上の無機酸触媒(以下「無機酸触媒」と略記する場合がある。)、を含む解繊溶液をセルロースパルプに浸透させて、セルロースを解繊することを特徴とする。
詳細には、DMSO、無水酢酸及び無機酸触媒を含む解繊溶液をセルロース繊維のミクロフィブリル又はエレメンタリーミクロフィブリルの間に浸透させて水素結合を効率よく解除することによりミクロフィブリルが自ら解してセルロースナノファイバーを得ることができる。無水酢酸と無機酸触媒の添加量や処理時間の制御によりセルロースナノファイバーの繊維径を数nm〜数百nmまで容易に制御できる。
原料となるセルロースは、綿、パルプなどセルロース単独の形態であってもよく、木材、竹、古紙、藁などリグニンやヘミセルロースなどの非セルロース成分を含む混合形態であってもよい。
好ましいセルロール物質としては、I結晶型セルロース構造を含むセルロース物質であり、例えば、木材由来セルロースパルプ、リンダーパルプ、綿、セルロースパウダー、木材、竹を含む物質等がある。
セルロースの原料としてリグニンの含有率は20重量%以下が好ましい。より好ましくは15重量%以下である。さらに好ましくは10重量%以下である。リグニンの含有率が多い程解繊速度が遅くなる恐れがあるため好ましくない。さらに、セルロース原料の中にI結晶型セルロースの含有量は30%以上が好ましい。より好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%である。
解繊に用いるセルロース原料の含水率は、特に制限しないが、好ましくは、0〜50%、より好ましくは0.5〜20重量%、さらに好ましくは1〜15重量%。もっと好ましくは1.5〜10重量%である。セルロース原料に少量の水分を残留させたままで使用することは、解繊溶媒がミクロフィブリルの間への浸透を容易にする効果がある(浸透速度が速くなる)。一方、セルロース原料の含水率が50%以上になると、解繊速度が低下する傾向がある。
また、セルロース原料の形状について特に制限しないが、解繊溶剤の浸透や解繊処理時の適度な攪拌に適する程度、適宜選定すればよい。本発明の解繊溶液は浸透性が高いため、粉末状に過剰粉砕する必要はない。好ましい例は、例えば、セルロースパルプを用いる場合、解繊反応装置のサイズに応じて数mm〜数mに切断すればよい。一般公知の方法では、セルロースを粉末(数mm角以下)まで粉砕してから解繊することが多くあるが、本技術ではセルロースパルプを粉末まで粉砕せずに解繊することができる。強力な力で粉砕することにより、セルロース繊維が緻密になり、本来存在する細胞腔や空隙が少なくなり、解繊溶媒が浸透し難くなるため解繊効率の観点から好ましくない。一方、木材、竹、農業残渣等リグニンが多く含まれているセルロースを含む物質を用いた場合、チップ状、繊維状又は粒状にしてセルロースをリグニン等の非セルロース物質から出来るだけ露出させることが好ましい。
本発明の解繊溶液は、ジメチルスルホキシド、無水酢酸及び塩酸、リン酸、及び硝酸のうちのいずれか1種以上無機酸触媒を含む。前記解繊溶液に含まれるDMSOは、解繊助剤と溶媒の両方の役割を兼ねると推測する。特に他の溶媒を加える必要はないが、必要に応じてDMSO以外のスルホキシド系溶媒、アミド系溶媒(DMAc、DMF、N−メチルアセトアミド、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド等)、グリコール系溶媒(エチレングリコール、プロピレングリコール)、アルコール系溶媒(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール)、及びアセトニトリル等を解繊溶液に加えても良い。
前記解繊溶液における無水酢酸の濃度は、0.5〜50重量%であることが好ましく、より好ましくは1〜30重量%、もっと好ましくは3〜20重量%である。無水酢酸の役割は、セルロースの水酸基とエステル化反応するのではなく、ジメチルスルホキシドと結合してセルロースミクロフィブリル又はエレメンタリーフィブリルの間に浸透し、水素結合を解除すると推測される。無水酢酸の添加量は0.5重量%以下になると解繊速度が遅くなり、得られたセルロースナノファイバーが太くなる。一方、添加量が50重量%以上になると、解繊溶液はセルロースへの浸透性が低下したり、副生物の酢酸の増加による溶媒回収時の効率が悪くなったりする等の恐れがあるため好ましくない。
前記無機酸触媒は解繊速度と解繊度合を促進する役割を果たし、解繊効率を向上させる。
ここで、解繊度合は、セルロースがセルロースナノファイバーへの解繊の進行の程度であり、解繊度合が高くなるとセルロースナノファイバーの繊維径が小さくなり、得られたセルロースナノファイバーの水分散液の透明度が高くなる。
前記解繊溶液における無機酸触媒の添加量は、無機酸触媒の酸性度の強さと求める繊維径により調整する。
無機酸触媒の添加量については、好ましくは0.05〜50%、より好ましくは0.1〜15重量%、もっと好ましくは0.3〜10重量%である。無機酸触媒の添加量は0.05%以下になると反応が遅くなり、解繊効率が低いため好ましくない。一方、無機酸触媒の添加量が50%以上になると、加水分解等の副作用が起こる恐れがあり、中和や洗浄のためコストの上昇にも繋がるため好ましくない。
さらに、硝酸を触媒とした場合、添加量は0.05〜15重量%が好ましい。より好ましくは0.1〜10重量%である。一方、塩酸水溶液(HCL35%)又はリン酸(リン酸85%)を触媒とした場合、2〜30重量%が好ましい。より好ましくは3〜20重量%である。
無機酸の酸性度が強いほど、又は添加量が多い程、より直径の小さいセルロースナノファイバーが得られる。また、酸触媒の含水率が多い程得られたセルロースナノファイバーの繊維径が大きいため繊維径の小さいセルロースナノファイバーを求めるには含水率の低い酸触媒が好ましい。特に繊維径20nm以下のセルロースナノファイバーを製造する場合、硝酸等の強酸触媒を用いることが好ましい。
解繊速度と得られたセルロースナノファイバーの繊維径は無機酸触媒と無水酢酸の添加量に大きく依存する。無機酸触媒や無水酢酸の添加量が多い程、解繊速度が速くなり、得られたナノファイバーの繊維径が小さくなる。
塩酸やリン酸等水を多く含む酸触媒を用いる場合、得られたセルロースナノファイバーの繊維径は20nm〜サブミクロンオーダーである。
セルロースと前記解繊溶液との重量割合は、前者/後者=0.5/99.5〜50/50であり、より好ましくは前者/後者=1/99〜30/70であり、もっと好ましくは前者/後者=1.5/98.5〜20/80であり、さらに好ましくは前者/後者=2/98〜15/85である。
セルロースの割合が少なすぎると、セルロースナノファイバーの生産効率が低くなり、多すぎると、反応時間が長くなるため、いずれにしても生産性が低下する恐れがある。さらに、セルロースの割合が多すぎると得られたナノファイバーのサイズ均一性が低下する恐れがある。
本発明のセルロースナノファイバーの製造方法は、前記解繊溶液とセルロースを混合することにより解繊溶液をセルロースに浸透させることによってセルロースの水素結合を効率よく解除することによりセルロースナノファイバーを得る。
一般的には、解繊溶液の各成分を加えて解繊溶液を調製してからセルロースと混ぜることが好ましい。しかし、解繊溶液の各成分が液体であるため、解繊溶液の成分を予め混合せずに、解繊溶液の各成分とセルロースを解繊容器に一緒に加えることもできる。また、セルロースに解繊溶液の各成分を順不同に加えても良い。
前記解繊溶液とセルロースを混合した後、解繊混合液の成分及び温度の均一性を保つように適度な機械撹拌又は超音波等の通常化学反応に用いられる物理撹拌をするのが好ましいが、通常機械的解繊法に用いられるような解繊装置による高いせん断力の撹拌は行わなくても良い。しかし、解繊を促進したり解繊の均一性を高めたりするため、ホモジナイザーやニーダー、グラインダー等剪断力がより大きい装置を併用することを妨げない。撹拌せずにセルロースを前記解繊溶液に下記温度下で一定時間まで浸漬した後に、水、アルコール等の希釈溶媒を加えて均一分散するまで撹拌した後、濾過又は遠心分離によりセルロースナノファイバーを回収することも可能である。
前記解繊溶液中のセルロースの割合が大きい場合、押し出し機やニーダー等の高粘度を対応できる撹拌装置を用いれば効率よく解繊できる。
また、解繊は、室温で行うことができるが、解繊を促進するために加温しても良い。解繊溶液の温度は、10〜150℃であることが好ましい。解繊温度が10℃以下になると解繊速度が遅くなり、粘度の上昇により解繊度合いの均一性が低下する恐れがあるため好ましくない。一方、温度は150℃以上になると、セルロースが分解したり、無水酢酸や酢酸が揮発したり、他の副反応は起こったりする恐れがあるため好ましくない。より好ましくは15〜80℃、さらに好ましくは20〜70℃である。
解繊に要する時間は、解繊溶液中の無水酢酸又は無機酸触媒の添加量、求めるナノファイバーの繊維径、撹拌手法によるが、10分〜10時間である。より好ましくは20分〜8時間、もっと好ましくは30分〜5時間である。
解繊の後、DMSO、無機酸と無水酢酸を溶解する溶媒を加えて解繊を停止させるとともに、洗浄してセルロースナノファイバーを回収する。解繊溶液に酸触媒の使用量が多く酸性度が高い場合、水酸化ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液又は炭酸水素ナトリウム等のアルカリ性溶液を加えて解繊溶液を中和してもよい。洗浄用溶媒は特に制限しないが、DMSO、無水酢酸、酢酸と無機酸触媒を溶ける溶媒であれば良い。例えば、水、アルコール、ケトン等の有機溶媒系溶媒の一種以上である。特に好ましくは水とアルコールである。洗浄の際に、ミキサー等の混合機器と併用することは、洗浄効果が高いため好ましい。セルロースナノファイバーを回収する方法として、一般工業用の減圧濾過法、加圧濾過法、遠心分離、デカテーション等が挙げられる。未解繊のセルロース固形分が残存している場合は、デカンテーション、遠心分離、濾過などの手法により取り除いた後、セルロースナノファイバーの固形分を取り出すようにすれば良い。
解繊後はセルロースナノファイバーを洗浄・回収してもよいが、解繊後の混合液をそのまま、又は必要な調整を加えた後、セルロースナノファイバーをフィルム化や繊維化してもよい。例えば、解繊後得られたスラリー状の分散液を基板上に塗布し、ケトン類、アルコール類、エーテル類、エステル類などの溶媒を通すことによりセルロースナノファイバーのフィルム状ゲルを得る。フィルム状ゲルを前記溶媒で洗浄、乾燥することでセルロースナノファイバーフィルムが得られる。繊維化する場合、解繊後得られたスラリー状の分散液をノルズから押出し、繊維状にして、前記と同様に、ケトン類、アルコール類、エーテル類、エステル類などの溶媒を通して、繊維状ゲルになった後、洗浄、乾燥によりセルロースナノファイバーを含む繊維が得られる。解繊後の分散液の粘度が高い場合、水、アルコール等の溶媒を加えて成形可能の粘度まで稀釈してから用いて成形することも可能である。
本発明のセルロースナノファイバーの製造方法から製造されるセルロースナノファイバーの繊維径は特に制限されるものではないが、通常は1〜500nmの範囲である。好ましくは2〜100nm、さらに好ましくは3〜50nm、最も好ましくは5〜20nmである。繊維径は1nm以下であると収率が低くなる傾向があり、ナノファイバーの強度等性能面も低下する恐れがある。繊維径が500nm以上であると、直径が大きいためナノファイバーとしての性能は発揮しにくい。
特に、本発明の製造方法で調製される繊維径20nm以下のセルロースナノファイバーは、透明性、結晶性が高く、粘度とチキソロトピー性が大きく、ダメージも少ないため、増強材料、機能性材料、マトリックス材料としての用途が広く、電子、光学、材料、製薬、医療、化学、食品など多くの分野に期待できる。
本発明のセルロースナノファイバーの製造方法から製造されるセルロースナノファイバーは、無修飾セルロースナノファイバーであり、表面にイオン性官能基を有さないか、有しても極めて少ない無修飾セルロースナノファイバーが、本発明の無修飾セルロースナノファイバーである。例えば、触媒として用いる無機酸は解繊処理の間に、セルロースナノファイバーの表面にある水酸基に化学的又は物理的にアタックしてセルロースナノファイバーの表面に結合する可能性がある。しかし、あるとしても、その比率はセルロースナノファイバーの全体水酸基の数に対して5%未満、さらに3%未満である。
通常、本発明の無修飾セルロースナノファイバーは、水分散液の状態で得られる。水分散液の濃度は、濃度が薄い場合は溶液であり約0.2%以上でゲルになる。そして、濃度が高くなると粘度が高くなりすぎ、均一なゲルを得ることが困難で、脱泡ができないなどで取り扱いが難しくなるため、2重量%以下が好ましく、1重量%以下がより好ましい。
しかし、本発明の解繊方法により調製したセルロースナノファイバーは、TEMPO酸化法やリン酸エステル化法と同等又はそれ以上の繊維径、繊維長とアスペクトを持ち、表面官能基はイオン性官能基ではなくノンイオン性水酸基であるため、化学安定性、安全性、耐熱性等の性能が向上すると考える。また、天然セルロースの化学構造をそのまま維持するため、食品分野、化粧品分野、製薬分野への応用が期待できる。
続いて、修飾セルロースナノファイバーの製造方法に関する本発明について説明する。
本発明の修飾セルロースナノファイバーの製造方法は、平均繊維径1〜500nmのセルロースナノファイバーの表面の水酸基がエステル化又はウレタン化された修飾セルロースナノファイバーの製造方法であって、(1)前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の製造方法によりセルロースナノファイバーを製造する工程と、(2)前記セルロースナノファイバーをエステル化反応化剤又はウレタン反応化剤とさらに反応させて表面をエステル化修飾又はウレタン修飾する工程、を含む修飾セルロースナノファイバーの製造方法である。
前記(1)の前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の製造方法によりセルロースナノファイバーを製造する工程でセルロースを解繊した後は、前記(1)の工程で解繊したセルロースナノファイバーを含む解繊溶液をそのまま用いて前記(2)の工程の反応に進むこともできるが、アルカリを用いて中和、濾過、洗浄により解繊溶液を除いてから(2)の工程を行うこともできる。
前記(1)の工程が終了後、アルカリを用いて中和、濾過、洗浄により解繊溶液を除いてから(2)の工程を行う場合、洗浄後セルロースナノファイバーを乾燥、回収して前記(2)の工程に用いることができる。
また、非極性溶媒で洗浄した場合は、洗浄した溶媒にセルロースナノファイバーを分散させて前記(2)の工程の反応に進むことができ、水又はアルコールを洗浄溶媒として用いた場合は、前記(2)の工程で使用する溶媒を用いて水やアルコール等のプロトン系溶媒を置換してから前記(2)の工程に進むことができる。
続いて、本発明の前記(2)の工程について説明する。
本発明の前記(2)の工程は、前記(1)の工程で得られたセルロースナノファイバーをさらにエステル化反応化剤又はウレタン反応化剤と反応させて表面をエステル化修飾又はウレタン修飾する工程である。(1)工程で得られたセルロースナノファイバーのエステル化修飾反応又はウレタン修飾反応は従来のエステル化反応法又は従来ウレタン反応法であれば良い。例えば、エステル化修飾化剤やウレタン反応化剤とセルロースナノファイバーを脱水反応することによりエステル化修飾又はウレタン修飾セルロースナノファイバーを得ることができる。
前記エステル化修飾化剤は、カルボン酸無水物、カルボン酸ビニル、カルボン酸ハロゲン化物及びカルボン酸のいずれか1つ以上であることが好ましく、前記ウレタン化修飾化剤は、イソシアネートであることが好ましい。
工程(2)のエステル化又はウレタン化修飾反応は、溶媒中に前記(1)の工程で得られたセルロースナノファイバーを分散させて、エステル化修飾化剤又はウレタン修飾化剤を加えて、反応させる。反応に際しては、エステル化反応触媒又はウレタン化反応触媒を加えて行ってもよい。
前記エステル化反応触媒又はウレタン化反応触媒としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、カルボン酸塩、又はピリジン類、イミダゾール類及びアミン類からなる群より選択された少なくとも1種の塩基触媒であることが好ましい。
前記反応溶媒としては、ピリジン、ジメチルアセトアミド、ホルムアセトアミド、NMP,ケトン、トルエンの一種以上を用いることができる。
その中、ピリジンを溶媒として用いた場合塩基触媒を兼用できるため好ましい。アミド系溶媒は工程(1)で得られたセルロースまたはセルロースナノファイバーが分散しやすいため修飾反応の均一性の面から好ましい。また、ケトンやトルエンなどの低沸点溶媒を用いることは修飾反応後除去しやすいため精製のコストの面から好ましい。これらの溶媒はそれぞれの特性を持つため適切に選定すれば良い。2種類以上を併用することでもよい。
前記(2)の工程のエステル化修飾化剤については特に制限しないが、カルボン酸無水物、カルボン酸ビニル、カルボン酸ハロゲン化物及びカルボン酸のいずれか1つ以上であることが好ましい。その中、特に好ましくはカルボン酸無水物とカルボン酸ビニルである。
カルボン酸無水物の例として、例えば、無水酢酸、プロピオン無水物、無水酪酸、無水安息香酸等が挙げられる。
カルボン酸ビニルの例として、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニルアジピン酸ジビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等が挙げられる。
カルボン酸ハロゲン化物としては、例えば、塩化アセチル、塩化プロピオニル、塩化ブチリル、塩化オクタノイル、塩化ステアロイル、塩化ベンゾイル、パラトルエンスルホン酸クロライド等が挙げられる。
カルボン酸ハロゲン化物は反応速度が速く反応が激しい。CNFに大きいダメージを与える可能性があるため反応速度を制御して修飾反応をCNFの表面に留まるように制御する必要がある。一方、カルボン酸は常圧下では反応速度が低いため、減圧反応が好ましい。
さらに、カルボン酸をエステル化修飾化剤として用いる場合は、沸点150℃以上の脂肪族カルボン酸又は芳香族カルボン酸が好ましく、例えば、酪酸、ピバル酸、メタクリル酸、ラウリン酸、桂皮酸、クロトン酸、安息香酸等が挙げられる。
エステル化修飾化剤の添加量は特に制限しないが、セルロースナノファイバーの無水グルカン1モルに当たり0.05〜15モルが好ましい。添加量が少なすぎると反応速度が遅くなったり修飾率が低すぎたりするため好ましくない。一方、エステル化修飾化剤の添加量が多すぎると過修飾によりセルロースナノファイバーの結晶化度が低下したり、コストが高くなったりする恐れがあるため好ましくない。好ましくは0.1〜10モル、より好ましくは0.3〜9モル、さらに好ましくは0.5〜8モルである。
カルボン酸無水物又はカルボン酸ビニルをエステル化修飾化剤として用いる場合は前記塩基触媒を添加すると反応速度が上昇するため好ましい。
カルボン酸ハロゲン化物をエステル化修飾化剤として用いる場合は、反応が激しいため触媒を用いなくても反応が進むが、触媒を添加しても良い。添加する触媒は、前記した塩基触媒が好ましく、その中でもアミン類等の弱塩基性の塩基触媒がより好ましい。
カルボン酸をエステル化修飾化剤として用いる場合、塩基触媒より酸触媒が好ましい。例えば、硫酸、p−トルエンスルホン酸等が挙げられる。
エステル化修飾反応の温度はエステル化修飾化剤の種類や触媒により適切に調整すればよい。例えば、カルボン酸無水物やカルボン酸ビニルの場合は室温から150℃が好ましい。反応温度が低すぎると反応速度が低くなり、高すぎるとセルロースナノファイバーにダメージを与える恐れがあるため好ましくない。より好ましくは室温から120℃、さらに好ましくは25〜100℃、もっと好ましくは30〜90℃である。
反応時間は特に制限しないが、反応温度、触媒の種類と添加量により適切調整すればよい。反応時間が短すぎると修飾率が低くなり、長すぎると過修飾によりセルロースの結晶化度や収率が低下する恐れがあるため好ましくない。例えば、20〜240分である。
前記(2)の工程のウレタン化修飾化剤は、イソシアネート類である。例えば、イソシアン酸メチル、2−イソシアナトエチルアクリラート、と2−イソシアナトエチルメタクリレート等の単官能基のイソシアネート、またはジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートとトルエンジイソシアネー等のジイアソシアネートまたは多官能基のイソシアネート等が挙げられる。
イソシアネートの添加量は特に制限しないか、好ましい添加量は前記のエステル化修飾化剤と同じ範囲であれば良い。
ウレタン修飾反応触媒として、前記エステル化反応と同様に塩基触媒が好ましい。特に好ましくは、アミン系の有機塩基性触媒である。さらに、ジブチル錫ジラウレートやジルコニウムテトラアセトアセテート等の金属触媒も好適である。添加量は特に制限しないが、反応化剤の種類と添加量や温度に応じて適量を加えればよい。
ウレタン化修飾反応の温度は通常のウレタン合成と同様に、イソシアネートの反応性、触媒の種類と添加量により適切に調製すればよい。例えば、室温〜120℃が好ましい。反応温度が低すぎると反応速度が低くなり、高すぎるとセルロースナノファイバーにダメージを与える恐れがあるため好ましくない。より好ましくは25〜1100℃、さらに好ましくは30〜95℃、もっと好ましくは35〜80℃である。
反応時間は特に制限しないが、反応温度、触媒の種類と添加量により適切調整すればよい。反応時間が短すぎると修飾率が低くなり、長すぎると過修飾によりセルロースの結晶化度や収率が低下する恐れがあるため好ましくない。例えば、20〜240分である。
工程(1)又は工程(2)の後、ミキサー、ホモジナイザー、押し出し機、ニーダー、またはペイントシェーカーのいずれかを用いてさらにナノ化することもできる。
得られたセルロースの解繊度合は工程(1)の反応条件により異なる。解繊度合が不十分の場合、工程(1)の洗浄後又は工程(2)の反応後にせんだん力が強い機械解繊装置を用いて処理することでナノ化を改良することができる。たとえば、ミキサーやクレアミックス、押し出し機、ニーダー、ビーズミル、ペイントシェーカーなどがあげられる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
用いた原料の詳細は以下の通りであり、得られたセルロースナノファイバーの評価は以下のようにして測定した。
(用いたセルロース、無水酢酸、無機酸触媒及びDMSO)
セルロースパルプは市販木材パルプ(Georgia Pacific社製、商品名:フラッフパルプARC48000GP、含水率9重量%)である。解繊前にパルプをサンプル瓶に入れるサイズ(1〜3cm角程度)まで千切った。
無水酢酸、リン酸(リン酸85%)、塩酸(HCL35%)及びDMSOはナカライテスク(株)から購入した。
(解繊に用いたスターラー)
解繊用のスターラーは小池精密機器製作所製のマイティ・スターラー(モデルHE−20G)を用いた。なお、オーバル型の強力撹拌子を用いた。
(ミキサー)
セルロースナノファイバーを分散するため、パナソニック社製のミキサー(商品番号:MX−X701)を用いた。
(クレアミックス)
有機溶媒を用いて解繊度合を改良する場合、ミキサーに代えてM TECHNIQUE社製のクレアミックス(CLM−0.8s、回転速度:18000rpm)を用いた。
(遠心分離機)
洗浄に用いた遠心分離機は日立工機(株)社製のCR22Gを用いた。なお、遠心分離速度は12000rpm、遠心時間が30分であった。
(セルロースナノファイバーの形状観察)
セルロースナノファイバーの形状はFE−SEM(日本電子(株)製「JSM−6700F」、測定条件:20mA、60秒)を用いて観察した。なお、平均繊維径は、SEM写真の画像からランダムに50個の繊維を選択し、加算平均して算出した。
(結晶化度)
得られた修飾セルロースナノファイバーの結晶化度は、参考文献:Textile Res.J.29:786−794(1959)に基づき、XRD分析法(Segal法)により測定し、下記式により算出した。
結晶化度(%)=[(I200−IAM)/I200]×100%
[式中、I200はX線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、IAMはアモルファス部(002面と110面間の最低部、回折角2θ=18.5°)の回折強度である]。
(エステル化又はウレタン化修飾されたセルロースナノファイバーの平均置換度)
修飾セルロースナノファイバーの表面修飾率は、平均置換度で示し、固体NMRにより測定した。測定モ−ドとして、固体13C−CP/MAS法と固体DP/MAS法の2法を併用した。なお、平均置換度とは、セルロースの繰り返し単位1個当たりの修飾された水酸基の数(置換基の数)の平均値(平均置換度)である。
さらに、乾燥した修飾セルロースナノファイバーをFT−IR(ATRモード)で分析し、周波数1730cm−1にカルボニル基に由来吸収バンドの有無により修飾有無を確認したり、平均置換度の相対比較をしたりする手段として利用できる。
なお、測定は、NICOLET社製「NICOLET MAGNA−IR760 Spectrometer」を用い、反射モードで分析した。
〔実施例1〕
DMSO9g、無水酢酸1.0g(解繊溶液における濃度は9.1%)及び35wt%の塩酸水溶液1.0g(解繊溶液における濃度は3.18%)を20mlのサンプル瓶に入れ、23℃の室温下で磁性スターラーで約30秒撹拌した。次に、セルロースパルプ0.3gを加え、同じ室温でさらに110分攪拌した後、0.1重量%の炭酸水素ナトリウム水溶液200mlの中に加え、混ぜた後遠心分離により上澄みを除いた。次に蒸留水80mlとエタノール80mlを加えて均一分散するまで撹拌した後同様な遠心条件で遠心分離して上澄みを除いた。同じ手順で繰り返し3回洗浄した。なお、遠心分離の速度は12000rpm、遠心分離時間は50分であった。遠心分離により洗浄した後に蒸留水を加え、全体重さを50gまで稀釈した。次に、ミキサーを用いて3分撹拌することにより均一なセルロースナノファイバーの水分散液を得た。得られた水分散液は、セルロースナノファイバーが0.552%の水分散液で、その外観を図1に示した。SEMの観察結果(図2)から繊維径は20〜500nmであった。また、XRDの分析結果、結晶化度は86%であることが判明した。このセルロースナノファイバーのIRスペクトル(図3)は原料のパルプと同様であるため、無水酢酸によるアセチル化修飾や塩酸による修飾が見られなかった。また、セルロースナノファイバーの収率の定量結果、92%であることが分った。
〔実施例2〕
ジメチルスルホキシド(DMSO)18g、無水酢酸2gと35wt%の塩酸水溶液2gを50mlのサンプル瓶に入れ、23℃の室温下で磁性スターラーで約30秒混ぜた後、セルロースパルプ0.6gを加え、23℃の室温で120分攪拌した。次に、圧搾法を用いて蒸留水で3回繰り返し洗浄した後、炭酸カリウム0.5gと蒸留水400から調製した水溶液の中に加え、室温で10分間混ぜた後に同じ圧搾法を用いて蒸留水で3回繰り返し洗浄して中性のセルロース解繊物を得た。次に、実施例1と同様に、ミキサーを用いて3分撹拌することにより均一なセルロースナノファイバーの水分散液を得た。得られたセルロースナノファイバーの水分散液の外観とSEM写真を図4に、IRスペクトルを図5示す。結晶化度は86%で、セルロースナノファイバーの収率は93%であった。
〔実施例3〕
塩酸水溶液を85wt%のリン酸0.3g(解繊溶液における濃度は2.48%)に変更した以外は実施例1と同様にしてセルロースナノファイバーを得た。得られたセルロースナノファイバーの分散液を図1に示す。得られたセルロースナノファイバーの分散液のセルロースナノファイバー濃度は、0.576%であった。SEM観察結果から繊維径は実施例1で得られたセルロースナノファイバーとほぼ同等であった。IRスペクトルを図6、XRDパターンを図7に示した。IRスペクトルからセルロースナノファイバーのエスエル結合やカルボン酸官能基が検出されなかった。また、結晶化度は85%であった。一方、セルロースナノファイバーの収率は96%であった。
〔実施例4〕
塩酸水溶液を85%のリン酸0.54gに変更した以外、実施例1の解繊工程と同様にしてセルロースナノファイバーを調製した。得られたセルロースナノファイバーのSEM写真と水分散液の外観とSEM写真を図8、IRスペクトルを図9に示す。結晶化度は81%で、セルロースナノファイバーの収率は98%であった。
〔比較例1〕
無水酢酸を添加しない以外は実施例1と同様にしてセルロースの解繊を行った。得られた解繊物を光顕で観察した。パルプは繊維状まで解されたが、僅かの繊維は繊維径が20nm以下であったが、殆どの繊維がミクロンオーダーとなった。その水分散液は室温で1時間放置すると沈殿した。
〔比較例2〕
塩酸水溶液を添加しない以外は実施例1と同様にしてセルロースの解繊を行った。得られた解繊物を分析した結果、比較例1で得られた解繊物とほぼ同等であった。
以上、実施例1〜4及び比較例1、2の結果をまとめて表1に示す。
〔実施例5〕
実施例4で洗浄して得られたセルロースナノファイバーと水の混合物(スラリー状、固形分0.5g)とアセトン100mlを200mlの遠心管に入れ、均一に混ぜてから遠心機で遠心分離(1200rpm、20分)して上澄みを除いた。沈殿物にアセトン150を加え、攪拌してから再び遠心分離した。同じの遠心分離操作でさらに2回洗浄した後、遠心管の底に残ったスラリー状セルロースナノファイバー(固形分0.5g、アセトンとセルロースナノファイバーの総合重量は約15g)、ピリジン10gとジメチルアセトアミド10gの混合液(反応溶媒)、無水酪酸1.8gを200mlの三口丸底フラスコに加えた。フラスコをシリコン浴につけ、オイルバス温度、60℃で120分間、加熱攪拌した。フラスコをシリコン浴からはずして、メタノール60mlを加えて均一攪拌したら遠心管に移して、遠心分離により上澄みを除いた。同じ操作で更に2回繰り返すことによりアセチル化修飾セルロースナノファイバーを洗浄した。次に、メタノールと水の混合液に分散して溶液のpHを8.5まで炭酸カリウムの水溶液を加えた。次に遠心分離により3回繰り返して洗浄した。得られたアセチル化修飾セルロースナノファイバーの平均置換度と結晶化度を表2に示した。IRスペクトルは図10に示すように、1730cm−1の付近にエステル基に由来するカルボニル基が見られた。本実施例においては、表面水酸基のほとんどがエステル化修飾されていると考えられる。
〔実施例6〕
実施例1で得られたセルロースナノファイバー、ジメチルホルムアミド30g、酢酸ビニル3g、炭酸カリウム0.3gを攪拌棒を備えた100mlの三つ口フラスコに加え、70℃にセットした油浴にいれ、120分攪拌した。後、実施例5と同様に洗浄することによりセルロースナノファイバーを修飾した。得られたセルロースナノファイバーを実施例5と同様に分析した。得られた修飾セルロースナノファイバーの平均置換度と結晶化度を表2に示した。IRスペクトルを図11に示す。1730cm−1の付近にエステル基に由来するカルボニル基が見られた。本実施例においては、表面水酸基のほとんどがアセチル化修飾されていると考えられる。
〔実施例7〕
実施例2で得られたセルロースナノファイバーを用い、修飾化剤は2−イソシアナトエチルメタクリレート、反応溶媒はN−メチル−2−ピロリドン、触媒はトリエチルアミンであった以外は、実施例6と同様にしてセルロースナノファイバーの修飾反応を行った。得られた修飾セルロースナノファイバーのIRスペクトルを図5、平均置換度と結晶化度を表2に示した。本実施例においては、表面水酸基のほとんどがウレタン化修飾されていると考えられる。
〔比較例3〕
比較例1で得られたセルロースの解繊物を用いて実施例5と同様にしてセルロース繊維を含む解繊物のアセチル化修飾反応を行った。得られたアセチル化修飾セルロースの平均置換度と結晶化度を表2に示した。本比較例においては、表面水酸基の大部分はエステル化修飾されたが、得られたエステル化修飾セルロースの繊維径は殆ど数μm〜数十μmであった。
以上、実施例5〜7及び比較例3の結果をまとめて表2に示す。

Claims (10)

  1. ジメチルスルホキシド、無水酢酸、並びに、塩酸、リン酸、及び硝酸のうちのいずれか1種以上の無機酸触媒を含む解繊溶液をセルロースに浸透させてセルロースを解繊することを特徴とするセルロースナノファイバーの製造方法。
  2. 前記解繊溶液における無水酢酸の濃度が、0.5〜50重量%であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記解繊溶液における無機酸触媒の濃度が、0.5〜50重量%であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の製造方法。
  4. セルロースと前記解繊溶液との重量割合が、前者/後者=0.5/99.5〜50/50である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 解繊過程における解繊溶液の温度が、10〜150℃であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 平均繊維径1〜500nmのセルロースナノファイバーの表面の水酸基がエステル化又はウレタン化された修飾セルロースナノファイバーの製造方法であって、(1)請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法によりセルロースナノファイバーを製造する工程と、(2)前記セルロースナノファイバーをエステル化反応化剤又はウレタン反応化剤とさらに反応させて表面をエステル化修飾又はウレタン修飾する工程、を含む修飾セルロースナノファイバーの製造方法。
  7. 前記(1)の工程が終了後、アルカリを用いて中和、濾過、洗浄により解繊溶液を除いてから(2)の工程を行うことを特徴とする請求項6に記載の修飾セルロースナノファイバーの製造方法。
  8. 前記(2)の工程のエステル化修飾化剤が、カルボン酸無水物、カルボン酸ビニル、カルボン酸ハロゲン化物及びカルボン酸のいずれか1つ以上であることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の修飾セルロースナノファイバーの製造方法。
  9. 前記(2)の工程のウレタン化修飾化剤が、イソシアネートであることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の修飾セルロースナノファイバーの製造方法。
  10. 前記(2)の工程のエステル化又はウレタン化修飾反応において、反応液中にアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、カルボン酸塩、又はピリジン類、イミダゾール類及びアミン類からなる群より選択された少なくとも1種の塩基触媒を含むことを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の修飾セルロースナノファイバーの製造方法。

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