JP2019173243A - 修飾キチン系ナノファイバーおよびその製造方法 - Google Patents

修飾キチン系ナノファイバーおよびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】簡便かつ効率良く生産できるとともに、均一なナノサイズで、繊維形状の損傷が少なくてアスペクト比が大きい修飾キチン系ナノファイバーを提供する。【解決手段】塩基触媒または酸触媒を含む触媒とカルボン酸無水物とを含む反応性解繊液をキチン類に浸透させて、キチン類をエステル化して化学解繊し、修飾キチン系微細繊維を得る修飾解繊工程と、得られた修飾キチン系微細繊維に分散媒を添加して攪拌し、修飾キチン系ナノファイバーを得る攪拌工程とを経て、修飾キチン系ナノファイバーを製造する。前記反応性解繊液は、さらにドナー数25以上の非プロトン性溶媒を含んでいてもよい。前記カルボン酸無水物は、二塩基カルボン酸無水物であってもよい。前記触媒はアルカリ金属炭酸水素塩であってもよい。前記攪拌工程において、前記修飾キチン系微細化繊維を液−液剪断してもよい。【選択図】なし

Description

本発明は、透明フィルム原料、医療用材料、化粧品原料、樹脂強化剤などに利用できる修飾キチン系ナノファイバーおよびその製造方法に関する。
キチンは、アセチルグルコサミンが直鎖状に連結した多糖類であり、カニやエビ、昆虫の外皮、担子菌(キノコ)を含む菌類の細胞壁の主成分であり、高強度、低熱膨張性、吸着性能、生体適合性等の特性を有している。そのため、キチンを解繊したナノファイバーは、透明フィルム原料、医療用材料、化粧品原料、樹脂強化剤などの用途に利用することが期待されており、キチンナノファイバーの簡便な製造方法が求められている。
特開2003−155349号公報(特許文献1)には、キチン・キトサン系繊維などの天然有機繊維を、メタノールやエタノールなどの膨潤媒体に対して試料濃度1〜5%で剪断力を付与して解繊することにより、超微細化繊維を製造している。実施例では、天然有機繊維として、セルロース系天然繊維、キトサン、コラーゲン繊維、リサイクル回収物を超微細化している。
しかし、この方法では、繊維間の水素結合を十分に断ち切ることができず、均一なナノファイバーを製造できない。
特許第5186694号公報(特許文献2)には、甲殻類由来のキチン含有材料を、少なくとも1回の脱蛋白工程および少なくとも1回の脱灰工程に付し、酸性試薬にて処理する工程に付し、次いで解繊工程に付すキチンナノファイバーの製造方法が開示されている。この文献には、前記解繊工程は、石臼式磨砕機および/または高圧ホモジナイザーを用いて解繊することが記載されている。
しかし、この方法では、ナノファイバーを製造するために、強い機械的処理が必要である。
特開2003−155349号公報(請求項1、実施例) 特許第5186694号公報(請求項1および3)
従って、本発明の目的は、簡便かつ効率良く生産できるとともに、均一なナノサイズで、繊維形状の損傷が少なくてアスペクト比が大きい修飾キチン系ナノファイバーおよびその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、強力な機械的な剪断をすることなく、省エネルギーな方法で生産できる修飾キチン系ナノファイバーおよびその製造方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、有機溶媒への分散性に優れた修飾キチン系ナノファイバーおよびその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、塩基または酸触媒とカルボン酸無水物とを含む反応性解繊液をキチン類に浸透させて、キチン類をエステル化して化学解繊し、特定の修飾キチン系微細繊維、すなわち均一なナノサイズで、繊維形状の損傷が少なくてアスペクト比が大きいキチン系ナノファイバーを、簡便かつ効率良く生産できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の修飾キチン系ナノファイバーの製造方法は、塩基触媒または酸触媒を含む触媒とカルボン酸無水物とを含む反応性解繊液をキチン類に浸透させて、キチン類をエステル化して化学解繊し、修飾キチン系微細繊維を得る修飾解繊工程と、得られた修飾キチン系微細繊維に分散媒を添加して攪拌し、修飾キチン系ナノファイバーを得る攪拌工程とを含む。前記反応性解繊液は、さらにドナー数25以上の非プロトン性溶媒、例えば、アルキルスルホキシド類、アルキルアミド類およびピロリドン類からなる群より選択された少なくとも1種(特に、ジC1−2アルキルスルホキシド)を含んでいてもよい。前記カルボン酸無水物は、二塩基カルボン酸無水物、例えば、脂肪族ジカルボン酸無水物、脂環族ジカルボン酸無水物および芳香族ジカルボン酸無水物からなる群より選択された少なくとも1種(特に、炭素数4〜6の飽和脂肪族ジカルボン酸無水物)であってもよい。前記触媒はアルカリ金属炭酸水素塩であってもよい。前記触媒の割合は、前記カルボン酸無水物100重量部に対して100重量部以上であってもよい。前記カルボン酸無水物の割合は、前記キチン類100重量部に対して60重量部以上であってもよい。前記攪拌工程において、前記修飾キチン系微細化繊維を液−液剪断してもよい。
本発明には、アルカン二酸無水物で修飾され、平均繊維径が100nm以下であり、かつ平均繊維長が1μm以上である修飾キチン系ナノファイバーも含まれる。
本発明では、塩基または酸触媒とカルボン酸無水物とを含む反応性解繊液をキチン類に浸透させて、キチン類をエステル化して化学解繊するため、天然由来のキチン類のミクロフィブリル構造を破壊することなく解繊できる。特に、本発明では、前記反応性解繊液の浸透に伴ってキチン類を膨潤させることができ、強力な機械的な剪断をすることなく、キチン類の解繊効率を向上できる。そのため、ナノサイズで繊維形状の損傷が少なくてアスペクト比が大きく、且つ有機溶媒への分散性が優れた修飾キチン系微細繊維を、省エネルギーな方法で簡便かつ効率良く生産できる。
図1は、実施例1で得られた修飾キチンナノファイバーの走査型電子顕微鏡(SEM)写真(5000倍)である。 図2は、実施例1で得られた修飾キチンナノファイバーのFT−IRの測定結果を示すグラフである。 図3は、実施例2で得られた修飾キチンナノファイバーのSEM写真(5000倍)である。 図4は、実施例3で得られた修飾キチンナノファイバーのSEM写真(5000倍)である。 図5は、実施例4で得られた修飾キチンナノファイバーのSEM写真(5000倍)である。 図6は、実施例5で得られた修飾キチンナノファイバーのSEM写真(5000倍)である。 図7は、実施例6で得られた修飾キチンナノファイバーのSEM写真(5000倍)である。 図8は、比較例1で得られたキチンファイバーのSEM写真(1000倍)である。 図9は、比較例2で得られたキチンファイバーのSEM写真(5000倍)である。
[修飾解繊工程]
本発明の修飾キチン系ナノファイバーの製造方法は、塩基触媒または酸触媒を含む触媒とカルボン酸無水物とを含む反応性解繊液(反応性解繊溶液または混合液)をキチン類に浸透させてキチン類をエステル化して化学解繊し、修飾キチン系微細繊維を得る修飾解繊工程を含む。本発明では、この工程によってキチン類が修飾されると同時に、解繊される理由は次のように推定できる。すなわち、前記触媒およびカルボン酸無水物(特に、さらに非プロトン性溶媒)を含む反応性解繊液は、キチン類に対する溶解性の低い溶液であり、この溶液がキチン類のミクロフィブリル間に浸透してキチン系繊維を膨潤させ、ミクロフィブリルの表面の水酸基を修飾する。さらに、この修飾によりミクロフィブリル間の水素結合が破壊され、ミクロフィブリル同士は容易に離れ、解繊される。また、前記溶液は、ミクロフィブリルの結晶ゾーン(ドメイン)に浸透しないため、得られた修飾キチン系微細繊維は、ダメージが少なく、天然のミクロフィブリルに近い構造を有している。同時に、この工程では、強力な剪断力の働きによる機械的解繊手段を用いることなく、キチン類を解繊できるため、物理的な作用によるダメージも少ない。そのため、得られた修飾キチン系微細繊維は、高い強度を保持していると推定できる。
(キチン類)
原料となるキチン類は、カニやエビなどの甲殻類、オキアミ、昆虫などの天然生物の殻および外皮由来のキチン(β−1,4−ポリ−N−アセチル−D−グルコサミン)またはその誘導体である。本明細書および特許請求の範囲において、キチンの誘導体とは、キチンの特性を損なわない範囲で、N−アセチル基の一部が脱アセチル化したり、ヒドロキシル基の一部がアルキル基やアシル基などにより置換した誘導体を意味する。
キチンの結晶構造は、特に限定されず、α型、β型、γ型のいずれでもよいが、資源量が豊富であり、かつ強度も向上できる点から、α型が好ましい。
キチンのN−アセチル化度(全グルコサミン単位のうち、N−アセチル化されたグルコサミン単位の割合)は、特に限定されず、通常90%以上(例えば90〜100%)程度であるが、解繊性に優れる点から、高い方が好ましく、100%アセチル化されたキチンの精製は困難であり、例えば91〜99.9%、好ましくは92〜99%、さらに好ましくは93〜98%程度である。
本明細書および特許請求の範囲において、キチン類のN−アセチル化度は、窒素含有量に基づいて算出できるとともに、赤外吸収スペクトル、NMRスペクトルなどにより測定できる。
キチン類の平均重合度(粘度平均重合度)は、例えば100〜100000、好ましくは500〜50000、さらに好ましくは1000〜30000(特に2000〜20000)程度である。
原料となるキチン類の形状は、特に限定されず、通常、粒状または繊維状である。キチン類の平均粒径(繊維形状などの異方形状の場合、長径と短径との平均値を粒径として算出)は、通常0.1μm以上であり、例えば1〜5000μm、好ましくは3〜1000μm、さらに好ましくは5〜100μm(特に10〜50μm)程度であってもよい。なお、本明細書および特許請求の範囲では、原料キチン類の平均粒径は、SEM写真の画像からランダムに50個の繊維を選択し、加算平均して算出してもよい。
キチン類と反応性解繊液との重量割合は、前者/後者=1/99〜30/70程度の範囲から選択でき、例えば1.2/98.8〜25/75、好ましくは1.3/98.7〜20/80、さらに好ましくは1.5/98.5〜10/90(特に2/98〜5/95)程度である。キチン類の割合が少なすぎると、修飾キチン系微細繊維の生産量が低くなり、多すぎると、反応時間が長くなるため、いずれにしても生産性が低下する虞がある。さらに、キチン類の割合が多すぎると得られた微細繊維のサイズと修飾率の均一性が低下する虞がある。
(カルボン酸無水物)
カルボン酸無水物(エステル化剤)には、一塩基カルボン酸(モノカルボン酸)無水物、二塩基カルボン酸(ジカルボン酸)無水物、多塩基カルボン酸無水物が含まれる。
一塩基カルボン酸無水物としては、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水吉草酸、エタン酸プロピオン酸無水物などの無水飽和脂肪族モノカルボン酸;無水(メタ)アクリル酸、無水クロトン酸などの無水不飽和脂肪族モノカルボン酸;無水シクロヘキサンカルボン酸、無水テトラヒドロ安息香酸などの無水脂環族モノカルボン酸;無水安息香酸、無水4−メチル安息香酸などの無水芳香族モノカルボン酸などが挙げられる。
二塩基カルボン酸無水物としては、例えば、無水コハク酸などの無水飽和脂肪族ジカルボン酸;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの無水不飽和脂肪族ジカルボン酸;1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸などの無水脂環族ジカルボン酸;無水フタル酸、無水ナフタル酸などの無水芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。
多塩基カルボン酸無水物としては、例えば、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの無水ポリカルボン酸などが挙げられる。
これらのカルボン酸無水物は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのカルボン酸無水物のうち、修飾性および解繊性の点から、脂肪族ジカルボン酸無水物、脂環族ジカルボン酸無水物および芳香族ジカルボン酸無水物からなる群より選択された少なくとも1種の二塩基カルボン酸無水物が好ましく、炭素数4〜8の飽和または不飽和脂肪族ジカルボン酸無水物がさらに好ましく、無水コハク酸などの炭素数4〜6の飽和脂肪族ジカルボン酸無水物(アルカン二酸無水物)が最も好ましい。炭素数が大きすぎると、ミクロフィブリル間への浸透性とキチン類の水酸基に対する反応性が低下する虞がある。
反応性解繊液中のカルボン酸無水物の濃度(重量割合)は、ミクロフィブリル間への浸透性とキチン類の水酸基に対する反応性のバランスに優れる点から、1〜50重量%(例えば1.5〜40重量%)程度の範囲から選択でき、例えば2〜30重量%、好ましくは2.5〜10重量%、さらに好ましくは3〜5重量%程度である。
キチン類とカルボン酸無水物との割合は、ミクロフィブリル間への浸透性とキチン類の水酸基に対する反応性のバランスに優れる点から、キチン類のグルコサミンユニット(N−アセチル−D−グルコサミン単位)換算のモル比で、前者/後者=10/1〜1/10程度の範囲から選択でき、例えば1/1〜1/8、好ましくは1/2〜1/6、さらに好ましくは1/3〜1/5程度である。両者の重量割合は、例えば、キチン類/カルボン酸無水物=70/30〜5/95、好ましくは60/40〜10/90、さらに好ましくは50/50〜30/70程度である。化学解繊性の点から、カルボン酸無水物の割合は、キチン類100重量部に対して20重量部以上(例えば20〜500重量部)であってもよく、例えば50〜300重量部、好ましくは80〜200重量部、さらに好ましくは90〜150重量部(特に100〜130重量部)程度であってもよい。
(触媒)
本発明では、キチン類のエステル化を促進するために、カルボン酸無水物に加えて触媒を用いる。触媒には、塩基触媒、酸触媒(プロトン酸、ルイス酸など)が含まれる。
塩基触媒としては、例えば、第三級アミン類(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどのトリC1−4アルキルアミンなど)、複素環式アミン類(4−ジメチルアミノピリジン、モルホリン、ピペリジンなど)、第4級アンモニウム塩(例えば、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウムなどのテトラアルキルアンモニウムハライド;塩化ベンジルトリメチルアンモニウムなどのベンジルトリアルキルアンモニウムハライドなど)、アルカリ金属化合物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属炭酸水素塩;水素化ナトリウム、水素化カリウムなどのアルカリ金属水素化物;酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム、酪酸ナトリウムなどのアルカリ金属カルボン酸塩;メタホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム(ホウ砂)などのアルカリ金属ホウ酸塩;リン酸三ナトリウムなどのリン酸アルカリ金属塩;リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウムなどのアルカリ金属リン酸水素塩;ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムt−ブトキシド、カリウムt−ブトキシドなどのアルカリ金属アルコキシドなど)、アルカリ土類金属化合物(例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物;炭酸マグネシウムなどのアルカリ土類金属炭酸塩;炭酸水素マグネシウムなどのアルカリ土類金属炭酸水素塩;酢酸カルシウムなどのカルボン酸アルカリ土類金属塩;カルシウムt−ブトキシドなどのアルカリ土類金属アルコキシドなど)などが挙げられる。これらの塩基触媒は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
酸触媒としては、例えば、無機酸[例えば、硫酸、塩化水素(または塩酸)、硝酸、リン酸など]、有機酸[例えば、スルホン酸(メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などのアルカンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などのアレーンスルホン酸)など]が挙げられる。これらの酸触媒は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
これらの触媒のうち、塩基触媒が好ましく、エステル化反応における触媒作用だけでなく、カルボン酸無水物のミクロフィブリル間への浸透性も促進できる点から、弱塩基性の塩基触媒(特に、弱塩基性の塩)が特に好ましい。塩基触媒であっても、強塩基性であると、エステル化剤のミクロフィブリル間への浸透の前にキチン類の表面での反応が進行し、解繊性が低下する虞がある。弱塩基性の塩基触媒は、1モル/リットルの水溶液におけるpHが7.3〜10、好ましくは7.5〜9.5、さらに好ましくは7.8〜9(特に8〜8.5)程度であってもよい。
このような弱塩基性の塩基触媒としては、炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属炭酸水素塩;酢酸ナトリウムなどのカルボン酸アルカリ金属塩;四ホウ酸ナトリウム(ホウ砂)などのアルカリ金属ホウ酸塩;リン酸三ナトリウムなどのアルカリ金属リン酸塩;リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウムなどのアルカリ金属リン酸水素塩;炭酸マグネシウムなどのアルカリ土類金属炭酸塩;炭酸水素マグネシウムなどのアルカリ土類金属炭酸水素塩;酢酸カルシウムなどのアルカリ土類金属カルボン酸塩などが挙げられる。これらの塩基触媒は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属炭酸水素塩、酢酸ナトリウムなどのアルカリ金属C1−4アルカン−モノカルボン酸塩が好ましく、アルカリ金属炭酸水素塩が特に好ましい。
触媒の割合は、反応性解繊液全体に対して0.5〜50重量%であればよく、例えば1〜30重量%、好ましくは2〜20重量%、さらに好ましくは3〜15重量%(特に5〜10重量%)程度である。触媒の割合が少なすぎると、キチン類の修飾率が低下し、キチン類を解繊する作用も低下する虞がある。一方、触媒の割合が多すぎると、修飾率が高すぎるためキチン類が分解する虞がある上に、キチン類への反応性解繊液の浸透性が低下し、キチン類を解繊する作用も低下する虞がある。
触媒の割合は、カルボン酸無水物100重量部に対して50重量部以上であればよく、例えば50〜1000重量部程度の範囲から選択でき、例えば50〜500重量部、好ましくは80〜400重量部、さらに好ましくは100〜300重量部(特に150〜200重量部)程度である。化学解繊性の点から、触媒の割合は、カルボン酸無水物100重量部に対して10重量部以上であってもよく、例えば10〜500重量部、好ましくは50〜400重量部(例えば100〜350重量部)、さらに好ましくは130〜300重量部(特に150〜250重量部)程度であってもよい。触媒の割合が少なすぎると、キチン類の修飾率が低下し、キチン類を解繊する作用も低下する虞がある。
(溶媒)
溶媒としては、カルボン酸無水物の反応性およびキチン類の解繊を損なわない溶媒であれば特に限定されないが、カルボン酸無水物のミクロフィブリル間への浸透性を促進でき、かつキチン類の水酸基に対する反応性を適度に調整できるため、ドナー数25以上の非プロトン性溶媒を含む溶媒が好ましい。このような非プロトン性溶媒のドナー数は、例えば25〜35、好ましくは26〜33、さらに好ましくは28〜30程度である。ドナー数が低すぎると、カルボン酸無水物のミクロフィブリル間への浸透性を向上させる効果が発現しない虞がある。なお、ドナー数については、文献「Netsu Sokutei 28(3)135-143」を参照できる。
前記非プロトン性溶媒としては、例えば、アルキルスルホキシド類、アルキルアミド類、ピロリドン類などが挙げられる。これらの溶媒は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
アルキルスルホキシド類としては、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メチルエチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのジC1−4アルキルスルホキシドなどが挙げられる。
アルキルアミド類としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジエチルホルムアミドなどのN,N−ジC1−4アルキルホルムアミド;N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジエチルアセトアミドなどのN,N−ジC1−4アルキルアセトアミドなどが挙げられる。
ピロリドン類としては、例えば、2−ピロリドン、3−ピロリドンなどのピロリドン;N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などのN−C1−4アルキル−ピロリドンなどが挙げられる。
これらの非プロトン性溶媒は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの非プロトン性溶媒(括弧内の数字はドナー数)のうち、DMSO(29.8)、DMF(26.6)、DMAc(27.8)、NMP(27.3)などが汎用される。
これらのうち、非プロトン性溶媒のうち、カルボン酸無水物のミクロフィブリル間への浸透性を高度に促進できる点から、アルキルスルホキシド類および/またはアルキルアセトアミド類(特に、DMSOなどのジC1−2アルキルスルホキシド)が好ましく、キチン類の解繊効果を向上できる点から、DMSOが特に好ましく、変色を抑制できる点からDMAcが特に好ましい。特に、化学解繊性に優れる点から、アルキルスルホキシド類が好ましく、DMSOなどのジC1−2アルキルスルホキシドが特に好ましい。
溶媒は、他の溶媒として、ドナー数25未満の慣用の溶媒、例えば、メタノール、アセトニトリル、ジオキサン、アセトン、ジメチルエーテル、テトラヒドロフランなどを含んでいてもよいが、ドナー数25以上の非プロトン性溶媒を主溶媒として含むのが好ましい。ドナー数25以上の非プロトン性溶媒の割合は、溶媒全体に対して50重量%以上であってもよく、好ましくは80重量%、さらに好ましくは90重量%以上であり、100重量%(ドナー数25以上の非プロトン性溶媒単独)であってもよい。ドナー数25未満の溶媒が多すぎると、キチン類のミクロフィブリル間への反応性解繊液の浸透性が低下するため、キチン類の解繊率が低下する虞がある。
触媒(特に炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属炭酸水素塩)と溶媒(特にアルキルスルホキシド類および/またはアルキルアミド類などの非プロトン性溶媒)との重量比は、前者/後者=100/0〜0.1/99.9程度の範囲から選択でき、修飾反応速度およびミクロフィブリル間への反応性解繊液の浸透速度を向上できる点から、例えば50/50〜1/99、好ましくは30/70〜2/98、さらに好ましくは20/80〜3/97(特に10/90〜4/96)程度である。溶媒の割合が多すぎると、キチン類の修飾率や解繊率が低下し、キチン類を解繊する作用も低下する虞がある。
(他のエステル化剤)
修飾解繊工程では、本発明の効果を損なわない範囲で、他のエステル化剤を用いてもよい。他のエステル化剤としては、例えば、前記カルボン酸無水物に対応するカルボン酸(例えば、コハク酸などの脂肪族ジカルボン酸など)などが挙げられる。他のエステル化剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。他のエステル化剤の割合は、カルボン酸無水物100重量部に対して50重量部以下であり、例えば0〜30重量部、好ましくは0.01〜10重量部、さらに好ましくは0.1〜5重量部程度である。他のエステル化剤の割合が多すぎると、修飾率が低下したり、得られた修飾キチン系微細繊維の反応性が低下する虞がある。
(反応条件)
修飾解繊工程では、塩基触媒または酸触媒を含む触媒とカルボン酸無水物とを含む反応性解繊液をキチン類に浸透させて、キチン類をエステル化反応させて、キチン類のミクロフィブリルの表面にある水酸基をエステル化して修飾し、かつキチン類を解繊できればよく、このような化学解繊方法は特に限定されないが、通常、触媒およびカルボン酸無水物(および必要に応じて溶媒)を含む反応性解繊液を調製し、調製した反応性解繊液にキチン類を添加して混合する方法を利用できる。
反応性解繊液の調製方法は、予め触媒とカルボン酸無水物と(必要に応じて溶媒と)を攪拌などによって混合し、カルボン酸無水物を触媒(および溶媒)中に均一に溶解させてもよい。
得られた反応性解繊液は、キチン類に対する浸透性が高いため、キチン類を反応性解繊液に添加して混合することにより、カルボン酸無水物と触媒は、ミクロフィブリル間に浸入して、ミクロフィブリルの表面に存在する水酸基を修飾することにより、キチン類の修飾と解繊とを同時に行うことができる。
詳しくは、化学解繊方法は、反応性解繊液にキチン類を混合して2時間以上放置してエステル化する方法であってもよく、混合後、さらに溶液中でキチン類が均一な状態を維持できる程度の攪拌や混練(物理的にキチン類を解繊または破砕しない程度の攪拌や混練)を行ってもよい。すなわち、反応は、反応性解繊液にキチン類を混合して放置するだけでも進行するが、浸透または均一性を促進するために、キチン類を粉砕または解繊させることなく攪拌可能な攪拌手段(低濃度の反応性解繊液における手段)や混練手段(高濃度の反応性解繊液における手段)を用いて攪拌や混練を行ってもよい。
前記攪拌手段は、物理的にキチン類を粉砕または解繊させる強力な攪拌ではなく、通常、化学反応で汎用されているマグネティックスターラまたは攪拌翼(例えば10〜2000rpm、好ましくは50〜1500rpm、さらに好ましくは50〜1000rpm、特に50〜500rpm程度の回転速度による攪拌)による攪拌であればよい。また、攪拌は、連続的に攪拌してもよいいし、断続的に攪拌してもよい。
一方、前記混練手段も、物理的にキチン類を粉砕または解繊させる強力な混練ではなく、慣用の混練手段(通常、常温での混練手段)により、例えば10〜2000rpm、好ましくは20〜1500rpm、さらに好ましくは30〜1000rpm、特に50〜500rpm程度の回転速度で混練してもよい。慣用の混練方法としては、例えば、ミキシングローラ、ニーダ、バンバリーミキサー、押出機(一軸または二軸押出機など)などを用いた方法などが挙げられる。混練手段を利用すると、キチン類の化学解繊とその後の浸透または均一性の促進工程とを工業的に連続に行える点で有利である。
本発明では、化学解繊における反応温度は、加熱する必要はなく、室温で反応させればよく、2時間以上反応させることにより、剪断力の働きによる機械的解繊手段を用いることなく、キチン類を化学的に解繊できる。そのため、本発明では、余分なエネルギーを使用することなくキチン類を解繊できる。なお、反応を促進するために、加熱してもよく、加熱温度は、例えば90℃以下(例えば40〜90℃程度)、好ましくは80℃以下、さらに好ましくは70℃以下程度である。
反応時間は、カルボン酸無水物および触媒の種類や、前記溶媒のドナー数によって選択でき、例えば3〜72時間、好ましくは5〜48時間、さらに好ましくは10〜36時間(特に18〜30時間)程度である。反応時間が短すぎると、反応性解繊液がミクロフィブリル間まで浸透するのが不十分となり、反応が不十分となり、解繊度合いも低下する虞がある。一方、反応時間は長すぎるとキチン系微細繊維の収率が低下する虞がある。
反応は、不活性ガス(窒素、アルゴンなどの希ガスなど)雰囲気下または減圧下で行ってもよいが、通常、密閉反応容器内で行う場合が多い。それらの反応条件であればエステル化反応により発生した水を系外に排出したり、空気中の水分が系内に吸入されないため、好ましい。
化学解繊して得られた修飾キチン系微細繊維は、反応終了後、水などの失活剤を添加して、カルボン酸無水物(エステル化剤)を失活させた後、慣用の方法(例えば、遠心分離、濾過、濃縮、抽出など)により分離精製してもよい。例えば、失活させたエステル化剤、触媒および溶媒を溶解可能な溶媒を反応混合物に添加し、前記遠心分離、濾過、抽出などの分離法(慣用の方法)で分離精製(洗浄)してもよい。なお、分離操作は複数回(例えば、2〜5回程度)行うことができる。溶媒としては、例えば、水、アセトンなどのケトン類、エタノール、イソプロパノールなどのC1−4アルカノールなどが挙げられる。
[攪拌工程]
得られた修飾キチン系微細繊維は、化学解繊によりナノサイズにまで解繊されているが、一部に繊維同士が緩く凝集したミクロンサイズの繊維が残存している。そのため、攪拌工程で分散媒と攪拌することにより、より均一な繊維径を有するナノファイバーを調製できる。
攪拌方法としては、攪拌できれば特に限定されず、慣用の攪拌方法を利用でき、例えば、攪拌翼を有する攪拌機(例えば、ミキサー、乳化装置など)を用いた方法などを利用できる。
なかでも、攪拌方法としては、均一なナノサイズで、繊維形状の損傷が少なくてアスペクト比が大きい修飾キチン系ナノファイバーが得られる点から、修飾キチン系微細繊維を液−液剪断する攪拌方法が好ましい。液−液剪断とは、流体と接触壁面との外部剪断力による剪断とは異なり、乱流域を発生させ、速度の不規則な変動のために生じるレイノルズ応力と称される内部剪断力(流体自身の分子間引力)を利用した剪断である。本発明では、このような液−液剪断する攪拌機として、スクリーン(スリット状の複数の孔部を有する円錐体)とローター(スクリーン内部に収容された攪拌翼)とを組み合わせた乳化装置を利用できる。この乳化装置では、ロータによって攪拌された修飾キチン系微細繊維および分散媒がスクリーンを通過することにより、修飾キチン系微細繊維に対してレイノルズ応力を付与できる。このような乳化装置としては、市販の乳化装置(例えば、エム・テクニック(株)製「クレアミックス」)を利用できる。
攪拌の回転速度は、2000rpm以上であればよく、例えば2000〜100000rpm、好ましくは3000〜50000rpm、さらに好ましくは5000〜30000rpm(特に10000〜25000rpm)程度である。回転速度が小さすぎると、繊維径の均一性が低下する虞がある。
攪拌時間は、回転速度に応じて適宜選択でき、例えば30秒以上であってもよく、例えば30秒〜1時間、好ましくは1〜30分、さらに好ましくは2〜10分程度である。
本発明では、メディアミル、コロイドミル、ロールミル、回転式、高圧式ホモジナイザーなどの外部剪断力を利用することなく、均一なナノファイバーが得られる。そのため、外部剪断力を利用しない攪拌方法が好ましい。
分散媒は、水であってもよく、有機溶媒であってもよい。有機溶媒としては、例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのC1−4アルカノールなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類)、ケトン類(アセトンなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミドなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、アルカンジオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのC2−4アルカンジオール)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ)、カルビトール類(エチルカルビトールなど)、カーボネート類(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどの環状カーボネート;ジメチルカーボネートなど)などが挙げられる。これらの分散媒は、単独でまたは二種以上組み合わせてもよい。なお、分散媒は、攪拌工程で新たに添加してもよく、修飾解繊工程の洗浄などで利用した溶媒を利用してもよい。
分散媒の溶解度パラメーター(SP値)は高い方が好ましく、具体的な溶解度パラメーターは10以上であってもよく、例えば10〜30、好ましくは12〜28、さらに好ましくは15〜26[特に20〜25]程度である。溶解度パラメーターが低すぎると、繊維径の均一性が低下する虞がある。なお、本明細書および特許請求の範囲におけるSP値は、HildebrandのSP値である。
これらの分散媒のうち、繊維径の均一性を向上できる点から、水、溶解度パラメーター10以上の有機溶媒(特にC1−4アルカノール)が好ましい。さらに、分散媒は、水を含むのが特に好ましく、水単独、水とC1−4アルカノール(エタノールなど)との混合溶媒であってもよい。
分散媒の割合は、修飾キチン系微細繊維1重量部に対して、例えば10〜1000重量部、好ましくは20〜500重量部、さらに好ましくは30〜300重量部(特に50〜150重量部)程度である。分散媒の割合が少なすぎると、高速で攪拌するのが困難となる上に、繊維に対するダメージが大きくなり、繊維径の均一性が低下する虞がある。一方、分散媒の割合が多すぎると、効率が低下し、キチン系ナノファイバーの回収が難しくなる虞がある。
[修飾キチン系ナノファイバー]
本発明の修飾キチン系ナノファイバーは、前記攪拌工程を経て得られ、カルボン酸無水物(特にアルカン二酸無水物)で修飾されているとともに、極細のナノサイズであり、かつ均一な繊維径に解繊されている。修飾キチン系ナノファイバーの平均繊維径は100nm以下(好ましくは80nm以下、さらに好ましくは50nm以下)であってもよく、例えば1〜100nm、好ましくは3〜80nm、さらに好ましくは5〜60nm(特に10〜50nm)程度である。繊維径が大きすぎると、膜や溶液の状態における透明性、チキソトロピー性、成膜性などが低下したり、補強材としての効果が低下する虞がある。一方、繊維径が小さすぎると、微細繊維の取り扱い性や耐熱性も低下する虞がある。
本発明の修飾キチン系ナノファイバーは、均一な繊維径を有しており、繊維径300nm以上の繊維数が全繊維数に対して10%以下(特に5%以下)であってもよく、300nm以上の繊維を実質的に含んでいない(0%である)のが好ましい。そのため、本発明の修飾キチン系ナノファイバーの最大繊維径は500nm以下(特に300nm以下)であってもよく、好ましくは200nm以下、さらに好ましくは100nm以下であってもよい。繊維径の均一性が低すぎると、透明性、チキソトロピー性、成膜性などが低下したり、緻密または均一な膜を形成できない虞がある。
本発明の修飾キチン系ナノファイバーは、化学解繊されてナノサイズに解繊された後、強力な外部外部剪断力を付与することなく攪拌されているため、従来の強力な機械解繊法で得られたナノファイバーよりも長い繊維長を有しており、平均繊維長は1μm以上であってもよく、例えば1〜1000μm程度の範囲から選択でき、例えば1〜1000μm、好ましくは3〜500μm、さらに好ましくは5〜200μm程度であってもよい。繊維長が短すぎると、繊維長が短すぎると、補強効果や成膜機能が低下する虞がある。また、長すぎると、繊維が絡み易くなるため、溶媒や樹脂への分散性が低下する虞がある。
修飾キチン系ナノファイバーの平均繊維径に対する平均繊維長の割合(アスペクト比)は用途に応じて対応でき、例えば10以上であってもよく、例えば30〜10000、好ましくは50〜8000、さらに好ましくは100〜5000程度であってもよい。
なお、本明細書および特許請求の範囲では、修飾キチン系ナノファイバーの平均繊維径、平均繊維長およびアスペクト比は、走査型電子顕微鏡写真の画像からランダムに50個の繊維を選択し、加算平均して算出してもよい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、用いた原料の詳細は以下の通りであり、得られた修飾キチンナノファイバーの特性および評価は以下のようにして測定した。
(修飾キチンナノファイバーの形状観察)
修飾キチンナノファイバーの形状は、走査型電子顕微鏡SEM(日本電子(株)製「JSM−6510」、測定条件:20mA、60秒)を用いて観察した。なお、平均繊維径および平均繊維長は、SEM写真の画像からランダムに50個の繊維を選択し、加算平均して算出した。
(修飾キチンナノファイバーの修飾の有無)
得られた修飾キチンナノファイバーを、80℃で5時間減圧乾燥したものをフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)で分析した。なお、測定は、NICOLET社製「NICOLET iS5」を用い、反射モードで分析した。
実施例1
ジメチルスルホキシド90gにキチン(東京化成工業(株)製)3g、無水コハク酸3.3g、炭酸水素ナトリウム5.6gを加えて、25℃の室内で24時間スターラー攪拌を行った。反応液を濾過し、90gの水で3回洗浄、遠心分離することにより、未修飾の原料および触媒を除去した。得られた固形物に蒸留水を加えて全量700mlとして乳化装置(エム・テクニック(株)製「クレアミックス CLM−0.8S」)で5分間攪拌処理してキチンナノファイバー分散液を得た。得られた分散液のキチンナノファイバーの形状をSEM観察した結果を図1に示す。図1から明らかなように、分散液では、ナノファイバーが生成している。さらに、分散液を乾燥し、FTIRで測定した結果を図2に示す。図2に示すように、1730cm−1でのエステル結合の吸収バンドが検出され、無水コハク酸で修飾されていることが確認できた。
実施例2
ジメチルスルホキシド90gをジメチルアセトアミド90gに変更した以外は実施例1と同様にしてキチンナノファイバー分散液を得た。得られたキチンナノファイバーの形状をSEM観察した結果を図3に示す。
実施例3
無水コハク酸3.3gを無水マレイン酸3.2gに変更した以外は実施例1と同様にしてキチンナノファイバー分散液を得た。得られたキチンナノファイバーの形状をSEM観察した結果を図4に示す。
実施例4
無水コハク酸3.3gを無水フタル酸3.3gに変更した以外は実施例1と同様にしてキチンナノファイバー分散液を得た。得られたキチンナノファイバーの形状をSEM観察した結果を図5に示す。
実施例5
炭酸水素ナトリウム5.6gを2.8gに変更した以外は実施例1と同様にしてキチンナノファイバー分散液を得た。得られたキチンナノファイバーの形状をSEM観察した結果を図6に示す。
実施例6
無水コハク酸3.3gを1.7gに変更した以外は実施例1と同様にしてキチンナノファイバー分散液を得た。得られたキチンナノファイバーの形状をSEM観察した結果を図7に示す。
比較例1
化学的解繊処理はせず、原料のキチンに蒸留水を加えて全量700mlとして乳化装置で5分間攪拌処理して分散液を得た。得られた分散液のキチンナノファイバーの形状をSEM観察した結果を図8に示す。図8の結果から明らかなように、キチンの表面の一部はナノファイバー化されているが、数μm以上の粒子が大半を占めていた。
比較例2
炭酸水素ナトリウムを加えなかったこと以外は実施例1と同様にしてキチンナノファイバー分散液を得た。得られたキチンナノファイバーの形状をSEM観察した結果を図9に示す。図9の結果から明らかなように、解繊は一部では進行するが、均一なナノファイバーは得られず、未解繊部分が多く残存していた。
本発明のキチン系ナノファイバーは、透明フィルム原料、医療用材料、化粧品原料、樹脂強化剤などに利用できる。

Claims (12)

  1. 塩基触媒または酸触媒を含む触媒とカルボン酸無水物とを含む反応性解繊液をキチン類に浸透させて、キチン類をエステル化して化学解繊し、修飾キチン系微細繊維を得る修飾解繊工程と、得られた修飾キチン系微細繊維に分散媒を添加して攪拌し、修飾キチン系ナノファイバーを得る攪拌工程とを含む、修飾キチン系ナノファイバーの製造方法。
  2. 反応性解繊液が、さらにドナー数25以上の非プロトン性溶媒を含む請求項1記載の製造方法。
  3. ドナー数25以上の非プロトン性溶媒が、アルキルスルホキシド類、アルキルアミド類およびピロリドン類からなる群より選択された少なくとも1種である請求項2記載の製造方法。
  4. ドナー数25以上の非プロトン性溶媒が、ジC1−2アルキルスルホキシドである請求項3記載の製造方法。
  5. カルボン酸無水物が、二塩基カルボン酸無水物である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 二塩基カルボン酸無水物が、脂肪族ジカルボン酸無水物、脂環族ジカルボン酸無水物および芳香族ジカルボン酸無水物からなる群より選択された少なくとも1種である請求項5記載の製造方法。
  7. 二塩基カルボン酸無水物が炭素数4〜6の飽和脂肪族ジカルボン酸無水物である請求項5または6記載の製造方法。
  8. 触媒がアルカリ金属炭酸水素塩である請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
  9. 触媒の割合が、カルボン酸無水物100重量部に対して100重量部以上である請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
  10. カルボン酸無水物の割合が、キチン類100重量部に対して60重量部以上である請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
  11. 攪拌工程において、修飾キチン系微細繊維を液−液剪断する請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
  12. アルカン二酸無水物で修飾され、平均繊維径が100nm以下であり、かつ平均繊維長が1μm以上である修飾キチン系ナノファイバー。
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