JP2017190437A - 修飾セルロース微細繊維及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】均一なナノサイズで結晶化度が高く、繊維形状の損傷が少なくてアスペクト比が大きく、かつ吸水性も大きい修飾セルロース微細繊維を、機械的に破砕することなく、簡便かつ効率良く生産する。
【解決手段】塩基触媒又は酸触媒を含む触媒と二塩基カルボン酸無水物を含む反応性解繊液をセルロースに浸透させて、セルロースをエステル化して化学解繊し、カルボキシル基含有セルロース微細繊維を得る修飾解繊工程と、得られたカルボキシル基含有セルロース微細繊維と分散媒とを2000rpm以上の回転速度で攪拌し、カルボキシ基含有セルロース微細繊維を得る攪拌工程とを経て修飾セルロース微細繊維を製造する。前記触媒はピリジン類であってもよい。前記反応性解繊液は、さらにドナー数25以上の非プロトン性溶媒を含んでいてもよい。前記二塩基カルボン酸無水物は脂肪族ジカルボン酸無水物であってもよい。
【選択図】なし

Description

本発明は、繊維表面が二塩基カルボン酸無水物でエステル化された修飾セルロース微細繊維及びその製造方法に関する。
セルロース繊維(細胞壁単位)は、セルロース微細繊維(ミクロフィブリル)の集合体である。セルロース微細繊維は、鋼鉄に匹敵する機械特性を持ち、直径約30nmのナノ構造を持つため、補強剤として社会的に熱く注目されている。しかし、セルロース微細繊維は、繊維間が水素結合により結束されており、その微細繊維を取り出すためには、水素結合を解いてミクロフィブリルを分離(解繊)する必要がある。そこで、このようなミクロフィブリルの分離は、解繊と称され、セルロース微細繊維(セルロースナノファイバー)の解繊法として、激しい物理力を加えた機械解繊法が開発された。
機械解繊法は、水中でセルロース繊維を機械的に解繊する水中機械解繊法が汎用されており、水中機械解繊法では、セルロース繊維は、水により膨潤され、柔らかくなった状態で高圧ホモジナイザーなどの強力な機械剪断によりナノ化される。しかし、天然のセルロースミクロフィブリルは、結晶ゾーン(結晶域)と非晶ゾーン(非晶域)とから構成されるが、非晶ゾーンは、水などの膨潤性溶媒を吸収、膨潤した状態になると、強力な剪断により変形する。そのため、セルロース繊維は、剪断によりダメージを受け、絡み合いや引っ掛かりが生じ易い分岐形状となる。また、ボールミルなどの強力な機械粉砕法により、固体状態特有のメカノケミカル反応が起こり、この作用によりセルロースの結晶構造が破壊されたり、溶解されたりすることが避けられなくなる。その結果、収率は低くなり、結晶化度が低くなり易い。さらに、セルロース微細繊維は樹脂の強化材料として利用できるが、樹脂と複合化するためには、水中機械解繊法では、解繊の後、脱水して繊維表面を修飾して疎水化する必要があり、この脱水工程には高いエネルギーが必要となる。
そこで、繊維表面をエステル化し、樹脂や有機溶媒などの有機媒体への分散性に優れたセルロース微細繊維の製造方法として、特開2010−104768号公報(特許文献1)には、塩化ブチルメチルイミダゾリウムなどのイオン液体と有機溶媒とを含有する混合溶媒を用いてセルロース系物質を膨潤及び/又は部分溶解させた後、エステル化する多糖類ナノファイバーの製造方法が開示されている。この文献の実施例では、エステル化剤として、無水酢酸、無水酪酸が使用されている。
しかし、この製造方法では、特殊なイオン液体を使用する必要があり、イオン液体を回収や再利用するための精製工程はセルロースナノファイバーの製造コストの上昇や製造工程の複雑化につながる。
特開2009−293167号公報(特許文献2)には、セルロースの水酸基の一部に多塩基酸無水物を半エステル化してカルボキシル基を導入することにより、多塩基酸半エステル化セルロースを調製する多塩基酸半エステル化セルロース調製工程と、前記多塩基酸半エステル化セルロースを微細繊維化することにより、ナノ繊維を製造する繊維製造工程とを含むナノ繊維の製造方法が開示されている。この文献には、任意の工程であるセルロース膨潤工程において、膨潤剤として、水、低級アルコールが記載されている。この文献の実施例では、セルロース粉末と無水マレイン酸や無水コハク酸などの多塩基酸無水物とを加熱下で混練した後、アルテマイザーや高圧ホモジナイザーなどの強力で叩解能力のある装置を用いて多塩基酸半エステル化セルロースを微細繊維化している。
また、特表2015−500354号公報(特許文献3)には、セルロースと有機溶剤とを混合させ、混合物にエステル化剤を添加して物理破砕すると共にセルロースファイバー表面のヒドロキシル基をエステル化するセルロースナノファイバー懸濁液の製造方法が開示されている。この文献の実施例では、セルロースをクロロホルムと混合した後、無水コハク酸を添加して超音波破砕した例や、セルロースをピリジンと混合した後、塩化ラウロイルを添加してボール研磨した例などが記載されている。
しかし、特許文献2及び3の方法では、強力な機械的破砕により繊維を解繊するため、前述のように、セルロース繊維がダメージを受ける。さらに、機械的破砕のための設備やエネルギーも必要となる。また、エステル化剤自身又はエステル化剤を含む溶液はセルロースのミクロフィブリルの間に充分浸透できないためエステル化修飾は殆どセルロース繊維の表面に留まる。その状態で機械解繊を加えてナノサイズまで解繊しても、得られたナノファイバーの多くは修飾されず有機溶媒や樹脂への分散性が低いことが想定できる。
特開2012−229350号公報(特許文献4)には、植物繊維を解繊し、セルロースナノファイバーを得る工程、得られたセルロースナノファイバーを無水多塩基酸でエステル化し、セルロースナノファイバーの水酸基の一部が、カルボキシル基を有する置換基で変性された変性セルロースナノファイバーを得る工程、得られた変性セルロースナノファイバーと樹脂を混合し、かつ樹脂と変性セルロースナノファイバーのカルボキシル基を反応させる工程を含む樹脂組成物の製造方法が開示されている。この文献には、エステル化の反応溶媒として、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ケトン系溶媒、エステル系溶媒が記載されている。この文献の実施例では、パルプを機械的に摩砕してナノファイバーを得た後、アセトン及びN−メチル−2−ピロリドンの存在下、無水コハク酸又は無水グルタル酸でエステル化している。
しかし、この方法でも、強力な機械的破砕による解繊と得られたセルロースナノファイバーの表面修飾との2段階法であるため、セルロース繊維がダメージを受け、機械的破砕のための設備やエネルギーも必要となる。さらに、この工程により得られた表面修飾セルロースナノファイバーは、サイズや表面修飾官能基の均一性が低下する。
さらに、強力な解繊や粉砕を必要としない化学解繊法として、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシラジカル(TEMPO)を用いたTEMPO酸化法も注目されている。WO2010/116794号パンフレット(特許文献5)には、TEMPOなどのN−オキシル化合物と臭化物及び/又はヨウ化物との存在下で酸化剤を用いセルロース系原料を酸化した後、湿式微粒化処理するセルロースナノファイバー分散液の製造方法が開示されている。
しかし、TEMPO法で得られたセルロースナノファイバーは高い親水性や水分散性を有するが、有機媒体への分散性が低い。さらに、高価なTEMPO触媒や大量のアルカリ物質を用いるため、経済性が低く、排水処理も困難であり、環境に対する負荷も大きい。
特開2010−104768号公報(請求項1、実施例) 特開2009−293167号公報(請求項1、段落[0036]〜[0038]、実施例) 特表2015−500354号公報(請求項1、実施例) 特開2012−229350号公報(請求項6、段落[0073][0081]、実施例) WO2010/116794号パンフレット(請求項6)
従って、本発明の目的は、簡便かつ効率良く生産できるとともに、均一なナノサイズで結晶化度が高く、繊維形状の損傷が少なくてアスペクト比が大きく、かつ吸水性の大きい修飾セルロース微細繊維及びその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、透明性、チキソトロピー性及び成膜性に優れた修飾セルロース微細繊維及びその製造方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、有機溶媒への分散性に優れた高い修飾セルロース微細繊維及びその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、塩基又は酸触媒と二塩基カルボン酸無水物とを含む反応性解繊液をセルロースに浸透させて、セルロースをエステル化してナノサイズに化学解繊した後、さらに得られたカルボキシル基含有セルロース微細繊維と分散媒とを高速で攪拌することにより、特定のカルボキシル基含有セルロース微細繊維、すなわち均一なナノサイズで結晶化度が高く、繊維形状の損傷が少なくてアスペクト比が大きく、かつ吸水性も大きいセルロース微細繊維を、省エネルギーな方法で簡便かつ効率良く生産できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の修飾セルロース微細繊維の製造方法は、塩基又は酸触媒を含む触媒と二塩基カルボン酸無水物とを含む反応性解繊液をセルロース(原料セルロース)に浸透させて、セルロースをエステル化して化学解繊し、カルボキシル基含有セルロース微細繊維を得る修飾解繊工程と、得られたカルボキシル基含有セルロース微細繊維と分散媒とを2000rpm以上の回転速度で攪拌し、カルボキシル基含有セルロース微細繊維を得る攪拌工程とを含む。前記触媒はピリジン類であってもよい。前記反応性解繊液は、さらにドナー数25以上の非プロトン性溶媒を含んでいてもよい。ドナー数25以上の非プロトン性溶媒は、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド及びN−メチル−2−ピロリドンからなる群より選択された少なくとも1種であってもよい。前記触媒の割合は、反応性解繊液全体に対して10〜95重量%程度である。前記二塩基カルボン酸無水物は、脂肪族ジカルボン酸無水物、脂環族ジカルボン酸無水物及び芳香族ジカルボン酸無水物からなる群より選択された少なくとも1種(特に脂肪族ジカルボン酸無水物)であってもよい。前記二塩基カルボン酸無水物の割合は、反応性解繊液全体に対して10〜90重量%程度であってもよい。前記セルロースと反応性解繊液との重量割合は、前者/後者=1/99〜30/70程度であってもよい。前記分散媒が、水及び溶解パラメーター10以上の有機溶媒(特にC1−4アルカノール)から選択された少なくとも1種であってもよい。前記分散媒の割合は、カルボキシル基含有セルロース微細繊維100重量部に対して900〜200000重量部程度である。前記セルロース(原料セルロース)の平均繊維径は1μm以上であってもよい。
本発明には、二塩基カルボン酸無水物で修飾され、かつ下記特性(1)〜(8)を充足するカルボキシル基含有セルロース微細繊維も含まれる。
(1)平均置換度が0.3〜1.5である
(2)平均繊維径が50nm以下である
(3)繊維径300nm以上の繊維数が全繊維数に対して5%以下である
(4)平均繊維長が1μm以上である
(5)23℃、剪断速度1s−1における0.18重量%の水分散液の粘度が15ポアズ以上である
(6)飽和吸水率が100倍以上である
(7)チキソトロピー指数が5以上である
(8)結晶化度が70%以上である
本発明では、塩基又は酸触媒と二塩基カルボン酸無水物とを含む反応性解繊液をセルロースに浸透させて、セルロースをエステル化してナノサイズに化学解繊し、さらに得られたカルボキシル基含有セルロース微細繊維と分散媒とを高速で攪拌することにより、天然由来のセルロースの結晶構造やミクロフィブリル構造を破壊することなく、平均繊維径50nm以下のカルボキシル基含有セルロース微細繊維を調製できる。特に、本発明では、前記反応性解繊液の浸透に伴ってセルロースミクロフィブリル表面の水酸基を修飾することによりミクロフィブリル間の水素結合を解除することができ、セルロースの解繊効率、得られた微細繊維の繊維径及び表面修飾官能基の均一性を向上できる。そのため、均一なナノサイズで結晶化度が高く、繊維形状の損傷が少なくてアスペクト比が大きく、かつ吸水性も大きいカルボキシル基含有セルロース微細繊維を、省エネルギーな方法で簡便かつ効率良く生産できる。また、ナノサイズであり、かつ繊維径の均一性も高いため、透明性、チキソトロピー性及び成膜性を向上できる。さらに、エステル化修飾されているため、有機溶媒への分散性も向上できる。
図1は、実施例で使用した原料のセルロースパルプの光学顕微鏡写真である。 図2は、実施例1で得られたカルボキシル基含有セルロース微細繊維の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(5000倍)である。 図3は、実施例1で得られたカルボキシル基含有セルロース微細繊維のSEM写真(50000倍)である。 図4は、実施例2で得られたカルボキシル基含有セルロース微細繊維のSEM写真(5000倍)である。 図5は、実施例2で得られたカルボキシル基含有セルロース微細繊維のSEM写真(50000倍)である。 図6は、参考例1で得られたカルボキシル基含有セルロース微細繊維のSEM写真(5000倍)である。 図7は、参考例1で得られたカルボキシル基含有セルロース微細繊維のSEM写真(50000倍)である。 図8は、参考例2で得られたカルボキシル基含有セルロース微細繊維のSEM写真(5000倍)である。 図9は、参考例2で得られたカルボキシル基含有セルロース微細繊維のSEM写真(50000倍)である。
[修飾解繊工程]
本発明の修飾セルロース微細繊維の製造方法は、塩基触媒又は酸触媒を含む触媒と二塩基カルボン酸無水物(環状型酸無水物)とを含む反応性解繊液(反応性解繊溶液又は混合液)をセルロースに浸透させてセルロースをエステル化して化学解繊し、カルボキシル基含有セルロース微細繊維を得る修飾解繊工程を含む。本発明では、この工程によってセルロースが修飾されると同時に、解繊される理由は次のように推定できる。すなわち、前記触媒及び二塩基カルボン酸無水物(特に、さらに非プロトン性溶媒)を含む反応性解繊液は、セルロースに対する溶解性の低い溶液であり、この溶液がセルロースのミクロフィブリル間に浸透してセルロースを膨潤させ、ミクロフィブリルの表面の水酸基を修飾する。さらに、この修飾によりミクロフィブリル間の水素結合が破壊され、ミクロフィブリル同士は容易に離れ、解繊される。また、前記溶液は、ミクロフィブリルの結晶ゾーン(ドメイン)に浸透しないため、得られたカルボキシル基含有セルロース微細繊維は、ダメージが少なく、天然のミクロフィブリルに近い構造を有している。同時に、この工程では、従来技術(例えば、特許文献3)のような強力な剪断力の働きによる機械的解繊手段を用いることなく、セルロースを解繊できるため、物理的な作用によるダメージも少ない。そのため、得られたカルボキシル基含有セルロース微細繊維は、高い強度を保持していると推定できる。
(セルロース)
原料となるセルロースは、セルロース単独の形態であってもよく、リグニンやヘミセルロースなどの非セルロース成分を含む混合形態であってもよい。
単独形態のセルロース(又は非セルロース成分の含有量が少ないセルロース)としては、例えば、パルプ(例えば、木材パルプ、竹パルプ、ワラパルプ、バガスパルプ、リンターパルプ、亜麻パルプ、麻パルプ、楮パルプ、三椏パルプなど)、ホヤセルロース、バクテリアセルロース、セルロースパウダー、結晶セルロースなどが挙げられる。
混合形態のセルロース(セルロース組成物)としては、例えば、木材[例えば、針葉樹(マツ、モミ、トウヒ、ツガ、スギなど)、広葉樹(ブナ、カバ、ポプラ、カエデなど)など]、草本類[麻類(麻、亜麻、マニラ麻、ラミーなど)、ワラ、バガス、ミツマタなど]、種子毛繊維(コットンリンター、ボンバックス綿、カポックなど)、竹、サトウキビ、紙などが挙げられる。
これらのセルロースは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。混合形態のセルロースにおいて、非セルロース成分の割合は90重量%以下であってもよく、例えば1〜90重量%、好ましくは3〜80重量%、さらに好ましくは5〜70重量%程度であってもよい。他の成分の割合が多すぎると、カルボキシル基含有セルロース微細繊維の製造が困難となる虞がある。
セルロースは、結晶セルロース(特にI型結晶セルロース)を含むのが好ましく、結晶セルロースと非晶セルロース(不定形セルロースなど)との組み合わせであってもよい。結晶セルロース(特にI型結晶セルロース)の割合は、セルロース全体に対して10重量%以上であってもよく、例えば30〜99重量%、好ましくは50〜98.5重量%、さらに好ましくは60〜98重量%程度である。結晶セルロースの割合が少なすぎると、カルボキシル基含有セルロース微細繊維の耐熱性や強度が低下する虞がある。
これらのうち、修飾及び解繊し易い点から、木材パルプ(例えば、針葉樹パルプ、広葉樹パルプなど)、種子毛繊維のパルプ(例えば、コットンリンターパルプ)、セルロースパウダーなどが汎用される。なお、パルプは、パルプ材を機械的に処理した機械パルプであってもよいが、非セルロース成分の含有量が少ないことからパルプ材を化学的に処理した化学パルプが好ましい。
原料となるセルロースの平均繊維径は、通常1μm以上であり、例えば5〜500μm、好ましくは10〜300μm、さらに好ましくは20〜100μm(特に30〜50μm)程度であってもよい。なお、本明細書及び特許請求の範囲では、原料セルロースの平均繊維径は、光学顕微鏡写真の画像からランダムに50個の繊維を選択し、加算平均して算出してもよい。
セルロースと反応性解繊液との重量割合は、前者/後者=1/99〜30/70程度の範囲から選択でき、例えば1.2/98.8〜25/75、好ましくは1.3/98.7〜20/80、さらに好ましくは1.5/98.5〜15/85程度である。セルロースの割合が少なすぎると、カルボキシル基含有セルロース微細繊維の生産量が低くなり、多すぎると、反応時間が長くなるため、いずれにしても生産性が低下する虞がある。さらに、セルロースの割合が多すぎると得られた微細繊維のサイズと修飾率の均一性が低下する虞がある。
反応性解繊液に対するセルロースの飽和吸収率は、例えば10倍以上(例えば10〜200倍程度)、好ましくは20倍以上(例えば20〜150倍程度)、さらに好ましくは30倍以上(例えば30〜100倍程度)である。飽和吸収率が低すぎると、セルロースの解繊性及び得られた微細繊維の均一性が低下する虞がある。
(二塩基カルボン酸無水物)
二塩基カルボン酸(ジカルボン酸)無水物(エステル化剤)には、脂肪族ジカルボン酸無水物、脂環族ジカルボン酸無水物、芳香族ジカルボン酸無水物が含まれる。
脂肪族ジカルボン酸無水物としては、例えば、無水コハク酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸無水物;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和脂肪族ジカルボン酸無水物などが挙げられる。脂環族ジカルボン酸無水物としては、例えば、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸などが挙げられる。芳香族ジカルボン酸無水物としては、例えば、無水フタル酸、無水ナフタル酸などが挙げられる。これらの二塩基カルボン酸無水物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらの二塩基カルボン酸無水物のうち、修飾性及び解繊性の点から、無水コハク酸や無水マレイン酸などの炭素数4〜8の飽和又は不飽和脂肪族ジカルボン酸無水物が好ましく、炭素数4〜6の飽和脂肪族ジカルボン酸無水物が特に好ましい。炭素数が大きすぎると、ミクロフィブリル間への浸透性とセルロース水酸基に対する反応性が低下する虞がある。
反応性解繊液中の二塩基カルボン酸無水物の濃度(重量割合)は、ミクロフィブリル間への浸透性とセルロース水酸基に対する反応性のバランスに優れる点から、1〜50重量%(例えば3〜50重量%)程度の範囲から選択でき、例えば2〜40重量%、好ましくは5〜30重量%程度である。
セルロースと二塩基カルボン酸無水物との割合は、ミクロフィブリル間への浸透性とセルロース水酸基に対する反応性のバランスに優れる点から、セルロースの無水グルカンユニット(無水グルコース単位)換算のモル比で、前者/後者=10/1〜1/10程度の範囲から選択でき、例えば1/1〜1/8、好ましくは1/2〜1/6、さらに好ましくは1/3〜1/5程度である。両者の重量割合は、例えば、セルロース/二塩基カルボン酸無水物=30/70〜5/95、好ましくは50/50〜10/90、さらに好ましくは45/55〜15/85程度である。
(触媒)
本発明では、セルロースのエステル化を促進するために、二塩基カルボン酸無水物に加えて触媒を用いる。触媒には、塩基触媒、酸触媒(プロトン酸、ルイス酸など)などが含まれ、金属触媒(有機スズ化合物など)などであってもよい。これらのうち、塩基触媒、酸触媒が汎用される。
塩基触媒としては、例えば、第三級アミン類(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどのトリC1−4アルキルアミンなど)、第4級アンモニウム塩(例えば、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウムなどのテトラアルキルアンモニウムハライド;塩化ベンジルトリメチルアンモニウムなどのベンジルトリアルキルアンモニウムハライドなど)、ピリジン類[例えば、ピリジン;メチルピリジン(ピコリン)、エチルピリジンなどのC1−4アルキルピリジン;ジメチルピリジン(ルチジン)などのジC1−4アルキルピリジン;トリメチルピリジン(コリジン)などのトリC1−4アルキルピリジンなど]などが挙げられる。これらの塩基触媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
酸触媒としては、例えば、無機酸[例えば、硫酸、塩化水素(又は塩酸)、硝酸、リン酸など]、有機酸[例えば、カルボン酸(ギ酸などの脂肪族モノカルボン酸;シュウ酸などの脂肪族ジカルボン酸など)、スルホン酸(メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などのアルカンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などのアレーンスルホン酸)など]が挙げられる。これらの酸触媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらの触媒のうち、トリエチルアミンなどのトリC1−4アルキルアミン、ピリジンなどのピリジン類、硫酸や塩酸などの無機酸、ギ酸などの脂肪族モノカルボン酸、シュウ酸などの脂肪族ジカルボン酸、トルエンスルホン酸などのアレーンスルホン酸が好ましく、エステル化反応における触媒作用だけでなく、二塩基カルボン酸無水物のミクロフィブリル間への浸透性も促進できる点から、ピリジン類(特にピリジン)が特に好ましい。さらに、ピリジン類は、触媒機能を有する溶媒として用いることもでき、沸点も低いため、回収も容易であり、再利用し易い。
触媒の割合は、反応性解繊液全体に対して0.5〜99重量%(例えば1〜98重量%)であればよく、例えば5〜97重量%、好ましくは10〜95重量%(例えば30〜93重量%)、さらに好ましくは50〜92重量%(特に60〜90重量%)程度である。触媒の割合が少なすぎると、セルロースの修飾率が低下し、セルロースを解繊する作用も低下する虞がある。一方、触媒の割合が多すぎると、修飾率が高すぎるためセルロースが分解する虞がある上に、セルロースへの反応性解繊液の浸透性が低下し、セルロースを解繊する作用も低下する虞がある。
触媒の割合は、二塩基カルボン酸無水物100重量部に対して50重量部以上であればよく、例えば50〜2000重量部程度の範囲から選択でき、溶媒を用いる場合、例えば50〜1000重量部、好ましくは80〜500重量部、さらに好ましくは100〜400重量部程度である。溶媒を用いない場合、触媒の割合は、二塩基カルボン酸無水物100重量部に対して、例えば100〜2000重量部、好ましくは200〜1500重量部、さらに好ましくは300〜1000重量部程度である。触媒の割合が少なすぎると、セルロースの修飾率が低下し、セルロースを解繊する作用も低下する虞がある。
(溶媒)
溶媒としては、二塩基カルボン酸無水物の反応性及びセルロースの解繊を損なわない溶媒であれば特に限定されないが、二塩基カルボン酸無水物のミクロフィブリル間への浸透性を促進でき、かつセルロースの水酸基に対する反応性を適度に調整できるため、ドナー数25以上の非プロトン性溶媒を含む溶媒が好ましい。このような非プロトン性溶媒のドナー数は、例えば25〜35、好ましくは26〜33、さらに好ましくは28〜30程度である。ドナー数が低すぎると、二塩基カルボン酸無水物のミクロフィブリル間への浸透性を向上させる効果が発現しない虞がある。なお、ドナー数はについては、文献「Netsu Sokutei 28(3)135-143」を参照できる。
前記非プロトン性溶媒としては、例えば、アルキルスルホキシド類、アルキルアミド類、ピロリドン類などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
アルキルスルホキシド類としては、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メチルエチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのジC1−4アルキルスルホキシドなどが挙げられる。
アルキルアミド類としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジエチルホルムアミドなどのN,N−ジC1−4アルキルホルムアミド;N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジエチルアセトアミドなどのN,N−ジC1−4アルキルアセトアミドなどが挙げられる。
ピロリドン類としては、例えば、2−ピロリドン、3−ピロリドンなどのピロリドン;N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などのN−C1−4アルキルピロリドンなどが挙げられる。
これらの非プロトン性溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの非プロトン性溶媒(括弧内の数字はドナー数)のうち、DMSO(29.8)、DMF(26.6)、DMAc(27.8)、NMP(27.3)などが汎用される。
これらのうち、非プロトン性溶媒のうち、二塩基カルボン酸無水物のミクロフィブリル間への浸透性を高度に促進できる点から、アルキルスルホキシド類及び/又はアルキルアセトアミド類(特に、DMSOなどのジC1−2アルキルスルホキシド)が好ましく、セルロースの解繊効果を向上できる点から、DMSOが特に好ましく、変色を抑制できる点からDMAcが特に好ましい。
溶媒は、他の溶媒として、ドナー数25未満の慣用の溶媒、例えば、メタノール、アセトニトリル、ジオキサン、アセトン、ジメチルエーテル、テトラヒドロフランなどを含んでいてもよいが、ドナー数25以上の非プロトン性溶媒を主溶媒として含むのが好ましい。ドナー数25以上の非プロトン性溶媒の割合は、溶媒全体に対して50重量%以上であってもよく、好ましくは80重量%、さらに好ましくは90重量%以上であり、100重量%(ドナー数25以上の非プロトン性溶媒単独)であってもよい。ドナー数25未満の溶媒が多すぎると、セルロースミクロフィブリル間への反応性解繊液の浸透性が低下するためセルロースの解繊率が低下する虞がある。
触媒(特にピリジンなどのピリジン類)と溶媒(特にアルキルスルホキシド類及び/又はアルキルアミド類などの非プロトン性溶媒)との重量比は、前者/後者=100/0〜1/99程度の範囲から選択でき、修飾反応速度及びセルロースミクロフィブリル間への反応性解繊液の浸透速度を向上できる点から、例えば99/1〜5/95、好ましくは95/5〜10/90程度である。両者の重量比は、触媒種に応じて選択してもよく、例えば、塩基触媒の場合は、多量の触媒が必要であり、触媒/溶媒=20/80〜95/5、好ましくは30/70〜90/10、さらに好ましくは40/60〜80/20程度であってもよく、ピリジンなどの弱アルカリ性の触媒を用いる場合は、例えば30/70〜95/5、好ましくは50/50〜90/10、さらに好ましくは60/40〜80/20程度であってもよい。一方、酸触媒の場合は、少量であってもよく、触媒と溶媒との重量比は、触媒/溶媒=30/70〜1/99、好ましくは20/80〜2/98程度であり、強酸性のトルエンスルホン酸や硫酸を用いる場合は、触媒/溶媒=15/85〜3/97程度であってもよい。溶媒の割合が多すぎると、セルロースの修飾率や解繊率が低下し、セルロースを解繊する作用も低下する虞がある。
(他のエステル化剤)
修飾解繊工程では、本発明の効果を損なわない範囲で、他のエステル化剤を用いてもよい。他のエステル化剤としては、二塩基カルボン酸(例えば、コハク酸、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸など)、一塩基カルボン酸又はその無水物[例えば、(無水)酢酸、(無水)プロピオン酸、(無水)酪酸、(無水)イソ酪酸、(無水)吉草酸、エタン酸プロピオン酸無水物、(無水)(メタ)アクリル酸、(無水)クロトン酸などの(無水)脂肪族モノカルボン酸;(無水)シクロヘキサンカルボン酸、(無水)テトラヒドロ安息香酸などの(無水)脂環族カルボン酸;(無水)安息香酸、(無水)4−メチル安息香酸などの(無水)芳香族モノカルボン酸など]、多塩基カルボン酸類(例えば、トリメリット酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの(無水)ポリカルボン酸など)などが挙げられる。これらのエステル化剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。他のエステル化剤の割合は、二塩基カルボン酸無水物100重量部に対して50重量部以下であり、例えば0〜30重量部、好ましくは0.01〜10重量部、さらに好ましくは0.1〜5重量部程度である。他のエステル化剤の割合が多すぎると、修飾率が低下したり、得られたカルボキシル基含有セルロース微細繊維の反応性が低下する虞がある。
(反応条件)
修飾解繊工程では、塩基触媒又は酸触媒を含む触媒と二塩基カルボン酸無水物とを含む反応性解繊液をセルロースに浸透させて、セルロースをエステル化反応させて、セルロースミクロフィブリルの表面にある水酸基をエステル化して修飾し、かつセルロースを解繊できればよく、このような化学解繊方法は特に限定されないが、通常、触媒及び二塩基カルボン酸無水物(及び必要に応じて溶媒)を含む反応性解繊液を調製し、調製した反応性解繊液にセルロースを添加して混合する方法を利用できる。
反応性解繊液の調製方法は、予め触媒と二塩基カルボン酸無水物と(必要に応じて溶媒と)を攪拌などによって混合し、二塩基カルボン酸無水物を触媒(及び溶媒)中に均一に溶解させてもよい。
得られた反応性解繊液は、セルロースに対する浸透性が高いため、セルロースを反応性解繊液に添加して混合することにより、二塩基カルボン酸無水物と触媒は、ミクロフィブリル間に浸入して、ミクロフィブリルの表面に存在する水酸基を修飾することにより、セルロースの修飾と解繊とを同時に行うことができる。
詳しくは、化学解繊方法は、反応性解繊液にセルロースを混合して2時間以上放置してエステル化する方法であってもよく、混合後、さらに溶液中でセルロースが均一な状態を維持できる程度の攪拌や混練(物理的にセルロースを解繊又は破砕しない程度の攪拌や混練)を行ってもよい。すなわち、反応は、反応性解繊液にセルロースを混合して放置するだけでも進行するが、浸透又は均一性を促進するために、セルロースを粉砕又は解繊させることなく攪拌可能な攪拌手段(低濃度の反応性解繊液における手段)や混練手段(高濃度の反応性解繊液における手段)を用いて攪拌や混練を行ってもよい。
前記攪拌手段は、物理的にセルロースを粉砕又は解繊させる強力な攪拌ではなく、通常、化学反応で汎用されているマグネティックスターラ又は攪拌翼(例えば10〜2000rpm、好ましくは50〜1500rpm、さらに好ましくは50〜1000rpm、特に50〜500rpm程度の回転速度による攪拌)による攪拌であればよい。また、攪拌は、連続的に攪拌してもよいいし、断続的に攪拌してもよい。
一方、前記混練手段も、物理的にセルロースを粉砕又は解繊させる強力な混練ではなく、慣用の混練手段(通常、常温での混練手段)により、例えば10〜2000rpm、好ましくは20〜1500rpm、さらに好ましくは30〜1000rpm、特に50〜500rpm程度の回転速度で混練してもよい。慣用の混練方法としては、例えば、ミキシングローラ、ニーダ、バンバリーミキサー、押出機(一軸又は二軸押出機など)などを用いた方法などが挙げられる。混練手段を利用すると、セルロースの化学解繊とその後の浸透又は均一性の促進工程とを工業的に連続に行える点で有利である。
本発明では、化学解繊における反応温度は、加熱する必要はなく、室温で反応させればよく、2時間以上反応させることにより、剪断力の働きによる機械的解繊手段を用いることなく、セルロースを化学的に解繊できる。そのため、本発明では、余分なエネルギーを使用することなくセルロースを解繊できる。なお、反応を促進するために、加熱してもよく、加熱温度は、例えば90℃以下(例えば40〜90℃程度)、好ましくは80℃以下、さらに好ましくは70℃以下程度である。
反応時間は、二塩基カルボン酸無水物及び触媒の種類や、前記溶媒のドナー数によって選択でき、例えば3〜50時間、好ましくは5〜36時間、さらに好ましくは6〜24時間程度である。無水コハク酸などの極性の高い低級カルボン酸無水物とドナー数の高いジメチルスルホキシド(DMSO)やジメチルアセトアミド(DMAc)などの非プロトン性極性溶媒とを用いる場合、数時間(例えば2〜36時間)程度の短時間であってもよく、好ましくは5〜24時間程度である。さらに、前述のように、処理温度(反応温度)を高めて、反応時間を短くしてもよい。反応時間が短すぎると、反応性解繊液がミクロフィブリル間まで浸透するのが不十分となり、反応が不十分となり、解繊度合いも低下する虞がある。一方、反応時間は長すぎるとセルロース微細繊維の収率が低下する虞がある。
反応は、不活性ガス(窒素、アルゴンなどの希ガスなど)雰囲気下又は減圧下で行ってもよいが、通常、密閉反応容器内で行う場合が多い。それらの反応条件であればエステル化反応により発生した水を系外に排出したり、空気中の水分が系内に吸入されないため、好ましい。
化学解繊して得られたカルボキシル基含有セルロース微細繊維は、反応終了後、水などの失活剤を添加して、二塩基カルボン酸無水物(エステル化剤)を失活させた後、慣用の方法(例えば、遠心分離、濾過、濃縮、抽出など)により分離精製してもよい。例えば、失活させたエステル化剤、触媒及び溶媒を溶解可能な溶媒を反応混合物に添加し、前記遠心分離、濾過、抽出などの分離法(慣用の方法)で分離精製(洗浄)してもよい。なお、分離操作は複数回(例えば、2〜5回程度)行うことができる。溶媒としては、例えば、水、アセトンなどのケトン類、エタノール、イソプロパノールなどのC1−4アルカノールなどが挙げられる。
[攪拌工程]
得られたカルボキシル基含有セルロース微細繊維は、化学解繊によりナノサイズにまで解繊されているが、一部にミクロンサイズの繊維が残存している。そのため、攪拌工程で分散媒と高速で攪拌することにより、より均一な繊維径を有するナノファイバーを調製できる。
攪拌方法としては、高速攪拌できれば特に限定されず、慣用の攪拌方法を利用でき、例えば、攪拌翼を有する攪拌機(例えば、ミキサー、電動ミルなど)を用いた方法などを利用できる。
攪拌の回転速度は、2000rpm以上であればよく、例えば2000〜100000rpm、好ましくは3000〜50000rpm、さらに好ましくは4000〜30000rpm(特に5000〜20000rpm)程度である。回転速度が小さすぎると、繊維径の均一性が低下する虞がある。
攪拌時間は、回転速度に応じて適宜選択でき、例えば30秒以上であってよく、例えば30秒〜1時間、好ましくは1〜30分、さらに好ましくは2〜10分程度である。
分散媒は、水であってもよく、有機溶媒であってもよい。有機溶媒としては、例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのC1−4アルカノールなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類)、ケトン類(アセトンなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミドなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、アルカンジオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのC2−4アルカンジオール)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ)、カルビトール類(エチルカルビトールなど)、カーボネート類(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネートなど)などが挙げられる。これらの分散媒は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。なお、分散媒は、攪拌工程で新たに添加してもよく、修飾解繊工程の洗浄などで利用した溶媒を利用してもよい。
分散媒の溶解パラメーター(SP値)は高い方が好ましく、具体的な溶解パラメーターは10以上であってもよく、例えば10〜30、好ましくは12〜28、さらに好ましくは15〜26[特に20〜25]程度である。溶解パラメーターが低すぎると、繊維径の均一性が低下する虞がある。なお、本明細書及び特許請求の範囲におけるSP値は、HildebrandのSP値である。
これらの分散媒のうち、繊維径の均一性を向上できる点から、水、溶解パラメーター10以上の有機溶媒(特にC1−4アルカノール)が好ましい。さらに、分散媒は、水を含むのが特に好ましく、水単独、水とC1−4アルカノール(エタノールなど)との混合溶媒であってもよい。水とC1−4アルカノールとを混合する場合、両者の重量割合は、水/C1−4アルカノール=10/90〜99/1、好ましくは30/70〜95/5、さらに好ましくは50/50〜90/10程度である。
分散媒の割合は、カルボキシル基含有セルロース微細繊維100重量部に対して、例えば900〜200000重量部、好ましくは2000〜150000重量部、さらに好ましくは3000〜100000重量部程度である。分散媒の割合が少なすぎると、高速で攪拌するのが困難となる上に、繊維に対するダメージが大きくなり、繊維径の均一性が低下する虞がある。一方、分散媒の割合が多すぎると、効率が低下し、セルロース微細繊維の回収が難しくなる虞がある。
[カルボキシル基含有セルロース微細繊維]
本発明のカルボキシル基含有セルロース微細繊維は、前記攪拌工程を経て得られ、二塩基カルボン酸無水物で修飾されているとともに、極細のナノサイズであり、かつ均一な繊維径に解繊されている。カルボキシル基含有セルロース微細繊維の平均繊維径は100nm以下(好ましくは50nm以下、さらに好ましくは30nm以下)であってもよく、例えば1〜50nm、好ましくは3〜40nm、さらに好ましくは5〜30nm(特に10〜20nm)程度である。繊維径が大きすぎると、膜や溶液の状態における透明性、チキソトロピー性、成膜性などが低下したり、補強材としての効果が低下する虞がある。一方、繊維径が小さすぎると、微細繊維の取り扱い性や耐熱性も低下する虞がある。
本発明のカルボキシル基含有セルロース微細繊維は、均一な繊維径を有しており、繊維径300nm以上の繊維数が全繊維数に対して10%以下(特に5%以下)であってもよく、300nm以上の繊維を実質的に含んでいない(0%である)のが好ましい。そのため、本発明のカルボキシル基含有セルロース微細繊維の最大繊維径は500nm以下(特に300nm以下)であってもよく、好ましくは200nm以下、さらに好ましくは100nm以下(特に50nm以下)であってもよい。繊維径の均一性が大きすぎると、透明性、チキソトロピー性、成膜性などが低下したり、緻密又は均一な膜を形成できない虞がある。
本発明のカルボキシル基含有セルロース微細繊維は、化学解繊されてナノサイズに解繊された後、高速攪拌されているため、従来の強力な機械解繊法で得られた微細繊維よりも長い繊維長を有しており、平均繊維長は1μm以上であってもよく、例えば1〜200μm程度の範囲から選択でき、例えば1〜100μm(例えば1〜80μm)、好ましくは2〜60μm、さらに好ましくは3〜50μm程度であってもよい。繊維長が短すぎると、繊維長が短すぎると、補強効果や成膜機能が低下する虞がある。また、長すぎると、繊維が絡み易くなるため、溶媒や樹脂への分散性が低下する虞がある。
カルボキシル基含有セルロース微細繊維の平均繊維径に対する平均繊維長の割合(アスペクト比)は用途に応じて対応でき、例えば10以上であってもよく、例えば30〜5000、好ましくは50〜3000、さらに好ましくは100〜1000(特に200〜500)程度であってもよい。
なお、本明細書及び特許請求の範囲では、セルロース微細繊維の平均繊維径、平均繊維長及びアスペクト比は、走査型電子顕微鏡写真の画像からランダムに50個の繊維を選択し、加算平均して算出してもよい。
本発明のカルボキシル基含有セルロース微細繊維は、チキソトロピー性を有しており、チキソトロピー指数が4以上(例えば4〜30程度)であってもよく、好ましくは5以上(例えば5〜20程度)、さらに好ましくは6以上(例えば6〜15程度)であってもよい。なお、本願明細書及び特許請求の範囲では、チキソトロピー指数は、後述の実施例に記載の方法で測定できる。
本発明のカルボキシル基含有セルロース微細繊維は、吸水性が高く、飽和吸水率が50倍以上(特に100倍以上)であってもよく、例えば100〜2000倍、好ましくは150〜1000倍、さらに好ましくは200〜500倍(特に250〜400倍)程度である。なお、本願明細書及び特許請求の範囲では、飽和吸水率は、後述の実施例に記載の方法で測定できる。
本発明のカルボキシル基含有セルロース微細繊維は、適度な粘度を有しているため、成膜性にも優れている。23℃、剪断速度1s−1における0.18重量%の水分散液の粘度が15ポアズ以上であってもよく、例えば20〜500ポアズ、好ましくは25〜400ポアズ、さらに好ましくは30〜300ポアズ(特に35〜250ポアズ)程度である。なお、本願明細書及び特許請求の範囲では、水分散液の粘度は、後述の実施例に記載の方法で測定できる。
本発明のカルボキシル基含有セルロース微細繊維は、繊維間でむら無く、すなわち各繊維又は全ての繊維がむら無くエステル化修飾されているため、有機溶媒や樹脂などの有機媒体によく分散できる。カルボキシル基含有セルロース微細繊維の特性(例えば、低線膨張特性、強度、耐熱性など)を樹脂に有効に発現させるためには、結晶性の高いカルボキシル基含有セルロース微細繊維が好ましい。本発明のカルボキシル基含有セルロース微細繊維は、化学解繊されてナノサイズに解繊された後、高速攪拌されているため、原料セルロースの結晶性を維持できるため、カルボキシル基含有セルロース繊維の結晶化度は前記セルロースの数値をそのまま参照できる。カルボキシル基含有セルロース微細の結晶化度は50%以上(特に70%以上)であってもよく、例えば70〜98%、好ましくは72〜95%、さらに好ましくは73〜92%(特に75〜90%)程度であってもよい。結晶化度が小さすぎると、線膨張特性や強度などの特性を低下させる虞がある。なお、本明細書及び特許請求の範囲では、結晶化度は、後述の実施例に記載の方法で測定できる。
本発明のカルボキシル基含有セルロース微細繊維の平均置換度は2.0以下(例えば0.1〜2.0)であってもよく、例えば0.3〜1.5、好ましくは0.4〜1.3、さらに好ましくは0.5〜1.2程度である。さらに、高置換度のカルボキシル基含有セルロース微細繊維も調製でき、平均置換度は、例えば0.5〜1.5、好ましくは0.8〜1.3、さらに好ましくは1.0〜1.2程度であってもよい。平均置換度が大きすぎると、微細繊維の結晶化度又は収率が低下する虞がある。平均置換度(DS:degree of substitution)は、セルロースの基本構成単位であるグルコース当たりの置換された水酸基の平均数であり、Biomacromolecules 2007, 8, 1973-1978やWO2012/124652A1又はWO2014/142166A1などを参照できる。なお、本明細書及び特許請求の範囲では、平均置換度は、後述の実施例に記載の方法で測定できる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、用いた原料の詳細は以下の通りであり、得られた修飾セルロース微細繊維及び延伸フィルムの特性及び評価は以下のようにして測定した。
(セルロースパルプ)
原料となるセルロースパルプとしては、市販木材パルプ(Georgia Pacific社製、商品名:フラッフパルプARC48000GP)をサンプル瓶に入れるサイズまで切断したパルプを用いた。また、このパルプの光学顕微鏡写真を図1に示す。パルプの平均繊維径は約40μmであった。
(他の原料、触媒及び溶媒)
他の原料、触媒及び溶媒としては、ナカライテスク(株)製の試薬を用いた。
(二塩基カルボン酸含有セルロースナノファイバーの製造)
二塩基カルボン酸無水物、ピリジン又はピリジンとジメチルスルホキシドの混合溶媒をバイオ瓶に入れ、スターラーで混合液が均一に混ざるまで攪拌した。次に、セルロースパルプを加え、さらに既定時間まで撹拌した後、エタノールと水の混合液(50/50重量比)を加えて残留無水コハク酸を失活し、さらに同じ溶媒で洗浄することによりピリジンとジメチルスルホキシド、残留コハク酸を除いた。得られた二塩基カルボン酸修飾セルロースナノファイバーと一定量の蒸留水をミキサーに加えて、1〜10分攪拌して二塩基カルボン酸修飾セルロースナノファイバーの水分散液を得た。なお、二塩基カルボン酸修飾セルロースナノファイバーの水分散液中に二塩基カルボン酸修飾セルロースナノファイバーは0.05〜5重量%である。ミキサーはテスコム社製のPALCOOKIN TM3である。
(解繊度合)
得られたカルボキシル基含有セルロース微細繊維を走査型電子顕微鏡FE−SEM(日本電子(株)製「JSM−6700F」、測定条件:20mA、60秒)で25〜50000倍の範囲でセルロースの解繊度合を観察し、以下の基準で評価した。
○:解繊が進行し、繊維径300nm以上の微細繊維が殆ど存在しない
×:繊維径300nm以上の微細繊維が多く存在する。
(カルボキシル基含有セルロース微細繊維の修飾率又は平均置換度)
カルボキシル基含有セルロース微細繊維の修飾率は平均置換度で示し、以下に示す滴定法(電気伝導度滴定法)によって測定した。なお、平均置換度とは、セルロースの繰り返し単位1個当たりの修飾された水酸基の数(置換基の数)の平均値である。
カルボキシル基含有セルロース微細繊維0.5質量%スラリーを60ml調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定した。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム水溶液量(a)から、化学修飾により導入された置換基のモル数Qは、下記式で求められる。
Q(mol)=a[ml]×0.05/1000
この置換基のモル数Qと、平均置換度Dとの関係は、以下の式で算出される[セルロース=(グルコースC10=(162.14),繰り返し単位1個当たりの水酸基数=3,OHの分子量=17]。
D=162.14×Q/[サンプル量−(T−17)×Q]
(式中、Tはエステル化置換基のである二塩基カルボン酸無水物の分子量である)。
さらに一部のサンプルをフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)で分析したところ、何れのサンプルも1730cm−1でのエステル結合の吸収バンドが検出された。なお、測定は、NICOLET社製「NICOLET MAGNA−IR760 Spectrometer」を用い、反射モードで分析した。
(セルロース繊維の形状観察)
カルボキシル基含有セルロース微細繊維の形状は走査型電子顕微鏡FE−SEM(日本電子(株)製「JSM−6700F」、測定条件:20mA、60秒)を用いて観察した。なお、平均繊維径及び平均繊維長は、SEM写真の画像からランダムに50個の繊維を選択し、加算平均して算出した。
(結晶化度)
カルボキシル基含有セルロース微細繊維の結晶化度は、参考文献:Textile Res. J. 29:786-794(1959)に基づき、XRD分析法(Segal法)により測定し、下記式により算出した。
結晶化度(%)=[(I200-IAM)/I200]×100%
[式中、I200はX線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、IAMはアモルファス部(002面と110面間の最低部、回折角2θ=18.5°)の回折強度である]。
(セルロースナノファイバーの飽和吸水率)
カルボキシルキ含有セルロースナノファイバーの水分散液(濃度約0.18重量%)を遠心分離機で12000rpmの回転速度で90分遠心した後、上澄みを除いた。得られたセルロールナノファイバーゲル(W)を送風乾燥機で乾燥し、固形分量(W)を秤量し、下記式に基づいて飽和吸水率を算出した。
飽和吸水率=W/(W−W)。
(セルロースナノファイバーの水分散液の粘度)
レオメータ(レオロジカ社製「DAR−50」)を用いて、23℃、1s−1のせん断速度で、カルボキシルキ含有セルロースナノファイバーの水分散液(濃度約0.18重量%)の粘度を測定した。
(チキソトロピー指数)
レオメータ(レオロジカ社製「DAR−50」)を用いて、カルボキシルキ含有セルロースナノファイバーの水分散液(濃度約0.18重量%)の粘度を23℃で測定し、剪断速度(ν=1s−1)と(ν=10s−1)(νの値はνの10倍である)での粘度(ηとη)をそれぞれ評価し、粘度比(η/η)によりチキソトロピー指数(TI)を算出した。
実施例1
ピリジン36g及び無水コハク酸4gを110mlのサンプル瓶に入れ、スターラーで混合液が均一に混ざるまで攪拌した。次に、セルロースパルプ1.3gを添加し、さらに23℃の室温で48時間攪拌した後、蒸留水50mlを添加して残留無水コハク酸を失活させ、カルボキシル基含有セルロースナノファイバーを含む分散液を得た。さらに、この分散液に、蒸留水とエタノールとの混合溶媒(50/50重量比)200mlを添加し、遠心分離法で3回洗浄することにより、ピリジン、残留コハク酸を除去した。カルボキシル基含有セルロース微細繊維を光学顕微鏡(ニコン(株)製「OPTIPHOT−POL」)でセルロースの解繊度合を観察したところ、解繊が進行し、1μm以上の繊維径を有する繊維が殆ど存在しなかった。回収した水及びエタノールを含むカルボキシル基含有セルロースナノファイバーと蒸留水500mlとをミキサー((株)テスコム製「PALCOOKIN TM3」)に充填し、3分間撹拌した。なお、評価のため、ミキサーで処理したカルボキシル基含有セルロースナノファイバーの水分散液中の固形分濃度は0.18重量%に調整した。得られたカルボキシル基含有セルロース微細繊維のSEM写真を図2及び3に示す。繊維の平均繊維径は15nmであり、平均繊維長は5μm以上であった。また、繊維径300nm以上の繊維が殆ど観察されなかった。得られたカルボキシル基含有セルロース微細繊維は、水、ジメチルアセトアミド、エチレングリコール、メタノール等の溶媒に容易に分散できた。
実施例2
23℃の室温で24時間攪拌した以外は実施例1と同様にしてカルボキシル基含有セルロースナノファイバーを得た。カルボキシル基含有セルロース微細繊維の解繊度合が実施例1とほぼ同様であった。得られたカルボキシル基含有セルロース微細繊維の平均繊維径は15nmであり、平均繊維長は5μm以上であった。また、繊維径300nm以上の繊維が殆ど観察されなかった。得られたカルボキシル基含有セルロース微細繊維は、水、ジメチルアセトアミド、エチレングリコール、メタノール等の溶媒に容易に分散できた。
実施例3
ピリジン36g及び無水コハク酸4gの代わりに、ピリジン32g、ジメチルスルホキシド8g及び無水コハク酸4.5gを用いた以外は実施例2と同様にしてカルボキシル基含有セルロースナノファイバーを得た。カルボキシル基含有セルロース微細繊維の解繊度合も実施例1と同じ結果であった。得られたカルボキシル基含有セルロース微細繊維のSEM写真を図4及び5に示す。繊維の平均繊維径は15nmであり、平均繊維長は5μm以上であった。また、繊維径300nm以上の繊維が殆ど観察されなかった。得られたカルボキシル基含有セルロース微細繊維は、水、ジメチルアセトアミド、エチレングリコール、メタノール等の溶媒に容易に分散できた。
実施例4
回収した水及びエタノールを含むカルボキシル基含有セルロースナノファイバーと蒸留水300mlとをミキサー((株)テスコム製「PALCOOKIN TM3」)に充填し、3分間撹拌した以外は実施例3と同様にしてカルボキシル基含有セルロースナノファイバーを得た。カルボキシル基含有セルロース微細繊維の解繊度合も実施例3と同じ結果であった。得られたカルボキシル基含有セルロース微細繊維の平均繊維径は15nmであり、平均繊維長は5μm以上であった。また、繊維径300nm以上の繊維が殆ど観察されなかった。得られたカルボキシル基含有セルロース微細繊維は、水、ジメチルアセトアミド、エチレングリコール、メタノール等の溶媒に容易に分散できた。
参考例1
ピリジン36g及び無水コハク酸4g及びパルプ1.3gの代わりに、ピリジン9g、無水コハク酸1g及びパルプ0.3gを用い、かつミキサー処理しない以外は実施例1と同様にしてカルボキシル基含有セルロースナノファイバーを得た。なお、評価サンプルの固形分濃度は0.47重量%に調整した。得られたカルボキシル基含有セルロース微細繊維のSEM写真を図6及び7に示す。繊維の平均繊維径は20nmであり、平均繊維長は5μm以上であった。また、50000万倍で観察された形状は実施例1とほぼ同等であったが、5000倍以下の観察では、繊維径300nm以上の繊維が多く存在することを判明した。
参考例2
ピリジン36g及び無水コハク酸4g及びパルプ1.3gの代わりに、ピリジン1g、ジメチルスルホキシド8g、無水コハク酸2g及びパルプ0.3gを用い、かつミキサー処理しない以外は実施例1と同様にしてカルボキシル基含有セルロースナノファイバーを得た。なお、評価サンプルの固形分濃度は0.47重量%に調整した。得られたカルボキシル基含有セルロース微細繊維のSEM写真を図8及び9に示す。繊維の平均繊維径は20nmであり、平均繊維長は5μm以上であった。また、50000万倍で観察された形状は実施例1とほぼ同等であったが、5000倍以下の観察では、繊維径300nm以上の繊維が多く存在することを判明した。
実施例及び参考例で得られたカルボキシル基含有セルロース微細繊維の評価結果を表1に示す。
表1の結果から明らかなように、実施例で得られたカルボキシル基含有セルロースナノファイバーは、カルボン酸置換度が高く、繊維径300nm以上のナノファイバーが少ないため、吸水率と粘度が大きく、チキソトロピー性を強く示した。これに対して、参考例で得られたカルボキシル基含有セルロースナノファイバーは、繊維径300nm以上のナノファイバーが多く存在するため吸水率と粘度が低く、チキソトロピー性を示さなかった。
本発明の修飾セルロース微細繊維は、各種複合材料、コーティング剤に利用でき、シートやフィルムに成形して利用することもできる。

Claims (14)

  1. 塩基触媒又は酸触媒を含む触媒と二塩基カルボン酸無水物とを含む反応性解繊液をセルロースに浸透させて、セルロースをエステル化して化学解繊し、カルボキシル基含有セルロース微細繊維を得る修飾解繊工程と、得られたカルボキシル基含有セルロース微細繊維と分散媒とを2000rpm以上の回転速度で攪拌し、カルボキシル基含有セルロース微細繊維を得る攪拌工程とを含む修飾セルロース微細繊維の製造方法。
  2. 触媒がピリジン類である請求項1記載の製造方法。
  3. 反応性解繊液が、さらにドナー数25以上の非プロトン性溶媒を含む請求項1又は2記載の製造方法。
  4. ドナー数25以上の非プロトン性溶媒が、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド及びN−メチル−2−ピロリドンからなる群より選択された少なくとも1種である請求項3記載の製造方法。
  5. 触媒の割合が、反応性解繊液全体に対して10〜95重量%である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 二塩基カルボン酸無水物が、脂肪族ジカルボン酸無水物、脂環族ジカルボン酸無水物及び芳香族ジカルボン酸無水物からなる群より選択された少なくとも1種である請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
  7. 二塩基カルボン酸無水物が脂肪族ジカルボン酸無水物である請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
  8. 二塩基カルボン酸無水物の割合が、反応性解繊液全体に対して10〜90重量%である請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
  9. セルロースと反応性解繊液との重量割合が、前者/後者=1/99〜30/70である請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
  10. 分散媒が、水及び溶解パラメーター10以上の有機溶媒から選択された少なくとも1種である請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
  11. 溶解パラメーター10以上の有機溶媒がC1−4アルカノールである請求項10記載の製造方法。
  12. 分散媒の割合が、カルボキシル基含有セルロース微細繊維100重量部に対して900〜200000重量部である請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法。
  13. セルロースの平均繊維径が1μm以上である請求項1〜12のいずれかに記載の製造方法。
  14. 二塩基カルボン酸無水物で修飾され、かつ下記特性(1)〜(8)を充足するカルボキシル基含有セルロース微細繊維。
    (1)平均置換度が0.3〜1.5である
    (2)平均繊維径が50nm以下である
    (3)繊維径300nm以上の繊維数が全繊維数に対して5%以下である
    (4)平均繊維長が1μm以上である
    (5)23℃、剪断速度1s−1における0.18重量%の水分散液の粘度が15ポアズ以上である
    (6)飽和吸水率が100倍以上である
    (7)チキソトロピー指数が5以上である
    (8)結晶化度が70%以上である
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