JP7309158B2 - 多糖類エステル化物の製造方法 - Google Patents
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Description
[1]多糖類含有バイオマスと、アニオンの共役酸のpKaが真空中における計算値として2~19である塩基性イオン液体と、エステル化剤を、せん断力付与機構を備える混練機を用いて反応させる多糖類エステル化物の製造方法。
[2]前記塩基性イオン液体を構成するカチオンは、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、およびテトラアルキルアンモニウムカチオンからなる群より選択される1種である、前記[1]記載の多糖類エステル化物の製造方法。
[3]前記塩基性イオン液体を構成するアニオンが、カルボン酸アニオン、アミノ酸アニオン、シアン化物イオン、およびフッ化物イオンからなる群より選択される1種である、前記[1]または[2]に記載の多糖類エステル化物の製造方法。
[4]前記[1]~[3]のいずれかに記載の多糖類エステル化物の製造方法であって、
前記多糖類含有バイオマスと前記塩基性イオン液体を練り混ぜ、第1の混練物を生成する第1混練工程と、
前記エステル化剤と第1の混練物を練り混ぜ、反応させて多糖類エステル化物を含む第2の混練物を生成する第2混練工程とを有し、
前記第1混練工程および第2混練工程の少なくとも1つの工程で、前記せん断力付与機構を備える混練機を用いる多糖類エステル化物の製造方法。
[5]前記[4]に記載の多糖類エステル化物の製造方法であって、
さらに第2の混練物を搬送しながら押し出す押出工程を有し、
前記第1混練工程、前記第2混練工程および前記押出工程の少なくとも2つの工程で、せん断力付与機構を備える混練機を用いる多糖類エステル化物の製造方法。
[6]前記[5]に記載の多糖類エステル化物の製造方法であって、
前記第1混練工程、前記第2混練工程および前記押出工程の少なくとも1つの工程を連続的に行う多糖類エステル化物の製造方法。
[7]前記[5]または[6]に記載の多糖類エステル化物の製造方法であって、
前記第1混練工程、前記第2混練工程または前記押出工程のいずれかの工程において、スクリューを備える混練機を用いる多糖類エステル化物の製造方法。
[8]前記[7]に記載の多糖類エステル化物の製造方法であって、
スクリューを備える混練機を用いて前記第1混練工程を行うに際し、
前記混練機のスクリュー直上に、前記多糖類含有バイオマスと前記塩基性イオン液体を同時に導入する多糖類エステル化物の製造方法。
[9]前記第1混練工程、前記第2混練工程または前記押出工程の1以上の工程において、有機溶媒を用いる、前記[5]~[8]のいずれかに記載の多糖類エステル化物の製造方法。
[10]前記エステル化剤は、鎖状エステル化合物、環状エステル化合物、不飽和アルデヒド、飽和アルデヒド、酸ハロゲン化物、酸無水物、およびアリルアルコールからなる群より選択された1以上である、前記[1]~[9]のいずれかに記載の多糖類エステル化物の製造方法。
[11]前記多糖類含有バイオマス1に対する前記塩基性イオン液体の重量比割合が、0.5~10である、前記[1]~[10]のいずれかに記載の多糖類エステル化物の製造方法。
[12]前記多糖類含有バイオマス1に対する前記塩基性イオン液体の重量比割合が、0.5~10であり、且つ、前記多糖類含有バイオマス1に対する前記有機溶媒の重量比割合が0.5~10である、前記[9]に記載の多糖類エステル化物の製造方法。
[13]前記多糖類エステル化物における、セルロースエステルの含有量が80重量%以上である、前記[1]~[12]のいずれかに記載の多糖類エステル化物の製造方法。
[14]前記多糖類含有バイオマス中の多糖類の水酸基1当量に対する、前記エステル化剤の当量が0.5~7当量である、前記[1]~[13]のいずれかに記載の多糖類エステル化物の製造方法。
[15]前記多糖類含有バイオマス中の多糖類の水酸基のエステル化率が23%以上である前記[1]~[14]に記載の多糖類エステル化物の製造方法。
[16]前記[1]~[15]に記載の多糖類エステル化物の製造方法により得られる多糖類エステル化物。
本発明に適用可能な多糖類含有バイオマスとは、多糖類を含有するものであれば、特に制限されない。例えば、バガス(サトウキビ残渣):ケナフ;スギ、ユーカリ、アカマツ、ポプラ、ラワン、ヒノキ、マカンバ、シトカスプルースなどの木材;カニやエビなどの甲殻類の殻;米、小麦、トウモロコシ、ソルガムなどの穀類;ジャガイモ、サツマイモ、キャッサバなどの芋類;その他のセルロース系植物由来原料(パルプ廃液、稲藁、もみ殻、果実繊維、ギンナンなどの果実核殻、空果房(エンプティ・フルーツ・バンチ))などを挙げることができる。また、これらのバイオマスを精製したパルプなども使用できる。なお、本発明の多糖類エステル化物の製造方法に先だって、上記多糖類含有バイオマスは、裁断、乾燥など、必要に応じて種々の前処理を施し、多糖(例えば、セルロース)を分離抽出する工程を経て、多糖の状態となっていてもよい。上記多糖類含有バイオマスは、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
一般に、イオン液体とは、カチオンとアニオンから構成される塩のうち、比較的低温(例えば、150℃以下)で、液体で存在するものを指す。本発明で用いる塩基性イオン液体とは、アニオンの共役酸の酸解離定数(pKa)が真空中における計算値として2~19であるイオン液体を指す(以下、「特定の塩基性イオン液体」と称する場合がある)。上記特定の塩基性イオン液体は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
本発明では、上記特定の塩基性イオン液体とともに有機溶媒を使用してもよい。上記有機溶媒は、上記特定の塩基性イオン液体との相溶性、上記多糖類含有バイオマスや多糖類エステル化物との親和性、上記多糖類含有バイオマスと上記特定の塩基性イオン液体の混合物の粘度などを考慮して適宜選択することができる。また上記有機溶媒は、上記特定の塩基性イオン液体と反応しないもの、該イオン液体と混合した状態で原料となる上記多糖類含有バイオマス、および製造する多糖類エステル化物に対する溶解性が高いものが好ましい。上記有機溶媒を用いると、上記特定の塩基性イオン液体の使用量を低減させることができ、多糖類エステル化物の製造コストを抑えることも可能となる。上記有機溶媒は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
本発明における、エステル化剤としては、特に限定されず、製造する多糖類エステル化物の種類に対応する化合物を適宜選択して用いることができる。なかでも、反応性の観点から、上記エステル化剤としては、鎖状エステル化合物、環状エステル化合物、不飽和アルデヒド、飽和アルデヒド、酸ハロゲン化物、酸無水物、およびアリルアルコールからなる群より選択された1以上であることが好ましい。上記エステル化剤は、それぞれ一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
本発明においては、エステル化反応を促進するために、酸触媒を使用してもよい。上記酸触媒としては、例えば、無機酸、有機酸、ルイス酸などが挙げられ、具体的には、硫酸、塩酸、トルエンスルホン酸、フェノールスルホン酸、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、3フッ化ホウ素などが挙げられるが、これらに限定されない。なお、本発明においては、高いせん断力が付加された条件下で、上記特定の塩基性イオン液体を用いることにより、効率的にエステル化反応が進行するため、通常、酸触媒を使用する必要はない。むしろ酸触媒を使用しない(すなわち、意図的に配合しない)ことが、作業工程の安全性の面や、製造コストを抑える観点から好ましい。
せん断力付与機構を備える混練機を用いることにより、例えば、多糖類エステル化物の出来上がりの濃度が30重量%を超える高濃度であっても、短時間に均一に混合・練和することができ、均一系でエステル化反応を効率的に進行させることができる。また、十分なせん断力が反応物に付与されるため、工程中で用いる反応試薬類(例えば、特定の塩基性イオン液体、エステル化剤、有機溶媒など)を低減することも可能となる。また、上記反応試薬類の低減に伴い、得られる多糖類エステル化物のボリュームも低減するため、沈降精製する過程で用いる試薬類(例えば、メタノールなど)を低減することも可能となる。このように、系全体で効率が向上するため、製造工程のコストダウンにも寄与する。
第1混練工程は、上記多糖類含有バイオマスと上記特定の塩基性イオン液体を練り混ぜ、溶解させて第1の混練物を生成する工程である。当該工程では、上記特定の塩基性イオン液体は、上記多糖類含有バイオマスを溶解させる溶媒としての役割を発揮する。上記特定の塩基性イオン液体中における、上記多糖類含有バイオマスの濃度は、例えば、5~70重量%、好ましくは、10~65重量%、より好ましくは20~65重量%、さらに好ましくは30~63重量%、特に好ましくは40~60重量%である。本工程では必要に応じて、上記有機溶媒を使用してもよい。上記有機溶媒中における、上記多糖類含有バイオマスの濃度は、例えば、5~70重量%、好ましくは、10~65重量%、より好ましくは20~65重量%、さらに好ましくは30~63重量%、特に好ましくは40~60重量%である。
第2混練工程は、エステル化剤と第1の混練物を練り混ぜ、反応させて多糖類エステル化物を含む第2の混練物を生成する工程である。第2混練工程では、第1の混練物に含まれる上記特定の塩基性イオン液体が触媒として作用する場合もある。本工程では、必要に応じて上記有機溶媒を使用してもよい。
押出工程は、上記第2の混練物を押し出す工程である。上記押出工程は、上記第2の混練物を搬送する工程を伴う場合もある。押出温度条件は、例えば、40~180℃(好ましくは、60~150℃、より好ましくは80~120℃)である。押出し時間は、用いる装置により適宜調整しうる。なお、第1混練工程と第2混練工程を、異なる混練機を用いて実施する場合は、上記押出工程としては、上記第1の混練物を押し出してもよい。この場合も、上記第1の混練物を搬送する工程を伴う場合があってもよく、押出温度条件はすでに述べたとおりである。好ましい態様において、例えば、単軸押出機や、二軸混練押出機などの連続混練設備を使用する場合は、滞留時間が上記の範囲になるようにして、連続的に上記第2の混練物の押出しを行いうる。本工程では、必要に応じて上記有機溶媒を使用してもよい。
本発明の多糖類エステル化物の製造方法には、上記工程以外の他の工程(例えば、上記第1または第2の混練物を搬送する搬送工程、成形工程など)や、さらに別の混練機と接続して、追加の混練工程(例えば、第3混練工程や第4混練工程など)を備えることもできる。
製造元:TECHNOVEL CORPORATION
スクリューサイズ:φ=20mm,L/D=20D
スクリュー回転方向:同方向型
ヒーターゾーン(温度制御ゾーン):C(Cylinder)1、C2、C3、H/D 合計4箇所
スクリューエレメント:搬送(Conveying),混合(Mixing)、練和(Kneading)の合計3種類を使用
試料の準備として、セルロース(100g、Sigma-Aldrich社の商品名「Avicel PH-101」、数平均重合度105)を500mLのコニカルビーカーに測りとり、一晩減圧乾燥させた。続いて、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート(50g)とジメチルスルホキシド(150g)を大容量の空瓶に測りとり混合し、数分間撹拌させた。事前に、図1の二軸混練押出機のC1、C2、C3、H/D部分の温度を120℃に設定し昇温した。スクリュー回転数は60rpmに設定した。用意したセルロース、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテートとジメチルスルホキシドの混合物、ビニルラウレートの3種類の試料は以下の方法で供給を行った。セルロースは図1の二軸混練押出機に搭載されているフィーダー(図示せず)を使用し、0.529(g/min)でC1の手前にある投入口F1から供給した。1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテートとジメチルスルホキシドの混合物とビニルラウレートはそれぞれ別の定量送液ポンプを使用し(図示せず)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテートとジメチルスルホキシドの混合物を1.95mL/minでC1の手前にある投入口F1から供給し、ビニルラウレートを2.70mL/minでC2のF2部分から供給した。図1の二軸混練押出機の出口から出始めた混合物の色が変化し始めたことを確認した後、2分間ごとに混合物を回収しサンプリングを3回行った。得られた回収物から500mgを測りとり、メタノール20mLを用いた洗浄操作を3回繰り返した後、回収物を一晩かけて減圧乾燥させることで固体を得た。IRおよび1H NMR測定の解析結果から、回収物は目的のセルロースラウリル酸エステルであることが確認された。3点のサンプリング物の解析結果から、全置換度は2.6、生成物の生産速度は1.8g/minであることが確認された。
IR (ATR, cm-1) 1738.;1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ; 5.5-3.0 (br), 2.5-0.8 (br).
試料の準備として、セルロース(100g、Sigma-Aldrich社の商品名「Avicel PH-101」、数平均重合度105)を500mLのコニカルビーカーに測りとり、一晩減圧乾燥させた。続いて、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート(50g)とジメチルスルホキシド(150g)を大容量の空瓶に測りとり混合し、数分間撹拌させた。事前に図1の二軸混練押出機のC1、C2、C3、H/D部分の温度を100℃に設定し昇温した。スクリュー回転数は60rpmに設定した。用意したセルロース、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテートとジメチルスルホキシドの混合物、ビニルラウレートの3種類の試料は以下の方法で供給を行った。セルロースは二軸混練押出機に搭載されているフィーダー(図示せず)を使用し、0.529(g/min)でC1の手前にある投入口F1から供給した。1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテートとジメチルスルホキシドの混合物、ビニルラウレートはそれぞれ別の定量送液ポンプを使用し(図示せず)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテートとジメチルスルホキシドの混合物を1.95mL/minでC1の手前にある投入口F1から供給し、ビニルラウレートを2.70mL/minでC2のF2部分から供給した。図1の二軸混練押出機の出口から出始めた混合物の色が変化し始めたことを確認した後、2分間ごとに混合物を回収しサンプリングを3回行った。得られた回収物から500mgを測りとり、メタノール20mLを用いた洗浄操作を3回繰り返した後、回収物を一晩かけて減圧乾燥させることで固体を得た。IRおよび1H NMR測定の解析結果から、回収物は目的のセルロースラウリル酸エステルであることが確認された。3点のサンプリング物の解析結果から、全置換度は2.4、生成物の生産速度は1.7g/minであることが確認された。
IR (ATR, cm-1) 1738.;1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ; 5.5-3.0 (br), 2.5-0.8 (br).
試料の準備として、セルロース(100g、Sigma-Aldrich社の商品名「Avicel PH-101」、数平均重合度105)を500mのコニカルビーカーに測りとり、一晩減圧乾燥させた。続いて、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート(50g)とジメチルスルホキシド(150g)を大容量の空瓶に測りとり混合し、数分間撹拌させた。事前に二軸混練押出機のC1、C2、C3、H/D部分の温度を80℃に設定し昇温した。スクリュー回転数は60rpmに設定した。用意したセルロース、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテートとジメチルスルホキシドの混合物、ビニルラウレートの3種類の試料は以下の方法で供給を行った。セルロースは図1の二軸混練押出機に搭載されているフィーダー(図示せず)を使用し、0.529(g/min)でC1の手前にある投入口F1から供給した。1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテートとジメチルスルホキシドの混合物とビニルラウレートはそれぞれ別の定量送液ポンプ(図示せず)を使用し、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテートとジメチルスルホキシドの混合物を1.95mL/minでC1の手前にある投入口F1から供給し、ビニルラウレートを2.70mL/minでC2のF2部分から供給した。図1の二軸混練押出機の出口から出始めた混合物の色が変化し始めたことを確認した後、2分間ごとに混合物を回収しサンプリングを3回行った。得られた回収物から500mgを測りとり、メタノール20mLを用いた洗浄操作を3回繰り返した後、回収物を一晩かけて減圧乾燥させることで固体を得た。IRおよび1H NMR測定の解析結果から、回収物は目的のセルロースラウリル酸エステルであることが確認された。3点のサンプリング物の解析結果から、全置換度は2.2、生成物の生産速度は1.6g/minであることが確認された。
IR (ATR, cm-1) 1738.;1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ; 5.5-3.0 (br), 2.5-0.8 (br).
試料の準備として、セルロース(100g、Sigma-Aldrich社の商品名「Avicel PH-101」、数平均重合度105)を500mLのコニカルビーカーに測りとり、一晩減圧乾燥させた。続いて、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート(50g)とジメチルスルホキシド(150g)を大容量の空瓶に測りとり混合し、数分間撹拌させた。事前に二軸混練押出機のC1、C2、C3、H/D部分の温度を80℃に設定し昇温した。スクリュー回転数は60rpmに設定した。用意したセルロース、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテートとジメチルスルホキシドの混合物、酢酸イソプロペニルの3種類の試料は以下の方法で供給を行った。セルロースは図1の二軸混練押出機に搭載されているフィーダー(図示せず)を使用し、0.76(g/min)でC1の手前にある投入口F1から供給した。1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテートとジメチルスルホキシドの混合物、酢酸イソプロペニルはそれぞれ別の定量送液ポンプ(図示せず)を使用し、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテートとジメチルスルホキシドの混合物を2.79mL/minでC1の手前にある投入口F1から供給し、酢酸イソプロペニルを1.57mL/minでC2のF2部分から供給した。図1の二軸混練押出機の出口から出始めた混合物の色が変化し始めたことを確認した後、2分間ごとに混合物を回収しサンプリングを3回行った。得られた回収物から500mgを測りとり、メタノール20mLを用いた洗浄操作を3回繰り返した後、回収物を一晩かけて減圧乾燥させることで固体を得た。IRおよび1H NMR測定の解析結果から、回収物は目的の酢酸セルロースエステルであることが確認された。3点のサンプリング物の解析結果から、全置換度は1.1、生成物の生産速度は0.9g/minであることが確認された。
IR (ATR, cm-1) 1738.;1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ; 5.3-3.4 (br), 2.2-1.8 (br).
試料の準備として、セルロース(100g、Sigma-Aldrich社の商品名「Avicel PH-101」、数平均重合度105)を500mLのコニカルビーカーに測りとり、一晩減圧乾燥させた。続いて、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート (50g)とジメチルスルホキシド(150g)を大容量の空瓶に測りとり混合し、数分間撹拌させた。事前に図1の二軸混練押出機のC1、C2、C3、H/D部分の温度を120℃に設定し昇温した。スクリュー回転数は60rpmに設定した。用意したセルロース、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテートとジメチルスルホキシドの混合物、シンナムアルデヒドの3種類の試料は以下の方法で供給を行った。セルロースは図1の二軸混練押出機に搭載されているフィーダー(図示せず)を使用し、0.67(g/min)でC1の手前にある投入口F1から供給した。1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテートとジメチルスルホキシドの混合物、シンナムアルデヒドはそれぞれ別の定量送液ポンプ(図示せず)を使用し、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテートとジメチルスルホキシドの混合物を2.44mL/minでC1の手前にある投入口F1から供給し、シンナムアルデヒドを1.56mL/minでC2のF2部分から供給した。図1の二軸混練押出機の出口から出始めた混合物の色が変化し始めたことを確認した後、2分間ごとに混合物を回収しサンプリングを3回行った。得られた回収物から500mgを測りとり、メタノール20mLを用いた洗浄操作を3回繰り返した後、回収物を一晩かけて減圧乾燥させることで固体を得た。IRおよび1H NMR測定の解析結果から、回収物は目的のセルロースフェニルプロピオン酸エステルであることが確認された。3点のサンプリング物の解析結果から、全置換度は1.3、生成物の生産速度は1.1 g/minであることが確認された。
IR (ATR, cm-1) 1729.;1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ; 8.0-6.5 (br), 5.5-3.0 (br), 3.0-2.5 (br).
試料の準備として、バガス(サトウキビ残渣)を粉砕し、ふるいによって粒径を150μm以下に揃えた。粒径を分別したバガス(100g)を500mLのコニカルビーカーに測りとり、一晩減圧乾燥させた。続いて、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート(50g)とジメチルスルホキシド(150g)を大容量の空瓶に測りとり混合し、数分間撹拌させた。事前に二軸混練押出機のC1、C2、C3、H/D部分の温度を120℃に設定し昇温した。スクリュー回転数は60rpmに設定した。用意したバガス、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテートとジメチルスルホキシドの混合物、ビニルラウレートの3種類の試料は以下の方法で供給を行った。バガスは図1の二軸混練押出機に搭載されているフィーダー(図示せず)を使用し、0.64(g/min)でC1の手前にある投入口F1から供給した。1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテートとジメチルスルホキシドの混合物、ビニルラウレートはそれぞれ別の定量送液ポンプ(図示せず)を使用し、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテートとジメチルスルホキシドの混合物を2.36mL/minでC1の手前にある投入口から供給し、ビニルラウレートを2.09mL/minでC2の部分から供給した。図1の二軸混練押出機の出口から出始めた混合物の色が変化し始めたことを確認した後、2分間ごとに混合物を回収しサンプリングを3回行った。得られた回収物から1.0gを測りとり、メタノール20mLを用いた洗浄操作を3回繰り返した後、回収物を一晩かけて減圧乾燥させることで固体を得た。得られたメタノール不溶分100mgをクロロホルム5mLに溶解させろ過し、ろ液を減圧留去した後真空乾燥することによりクロロホルム可溶分を得た。メタノール不溶分のIR測定およびクロロホルム可溶分の1H NMR測定の解析結果から、回収物は目的のバガスラウリル酸エステルであることが確認された。3点のサンプリング物の解析結果から、メタノール不溶分の生産速度は1.2g/minであることが確認された。
IR (ATR, cm-1) 1738.;1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ; 5.5-3.0 (br), 2.5-0.8 (br).
20mLシュレンク管内で、セルロース(120mg、2.22mmol=[OH]、Sigma-Aldrich社の商品名「Avicel PH-101」、数平均重合度105)を1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート(4000mg、23.4mmol)に溶解させ、80℃で3時間減圧乾燥を行った。反応容器にアルゴンガスを充填したバルーンを取り付け、容器内部をアルゴンで置換し、脱水ジメチルスルホキシド(4.0mL、113mmol)を加え、セルロースが均一に溶液に溶解していることを確認し、ビニルラウレート(9.2mL、37.9mmol)を反応溶液中へ加え、120℃で18時間撹拌した。反応溶液を過剰量のメタノールに加えることで不溶分を析出させ、ろ過後さらにメタノールを用いて洗浄した後に回収した。減圧条件下60℃で一晩不溶分を乾燥させることで、固体を187mg得た。IRおよび1H NMR測定の解析結果から、回収物は目的のセルロースラウリル酸酢酸混合エステルであることが確認された。ラウレートの全置換度は2.03、アセテートの全置換度は0.71であった。
IR (ATR, cm-1) 1738.;1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ; 5.5-3.0 (br), 2.5-0.8 (br).
試料の準備として、セルロース(100g、Sigma-Aldrich社の商品名「Avicel PH-101」、数平均重合度105)を500mLのコニカルビーカーに測りとり、一晩減圧乾燥させた。続いて、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド(50g)とジメチルスルホキシド(150g)を大容量の空瓶に測りとり混合し、数分間攪拌させた。事前に図1の二軸混練押出機のC1、C2、C3、H/D部分の温度を120℃に設定し昇温した。スクリュー回転数は60rpmに設定した。用意したセルロース、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロライドとジメチルスルホキシドの混合物、ビニルラウレートの3種類の試料は以下の方法で供給を行った。セルロースは図1の二軸混練押出機に搭載されているフィーダー(図示せず)を使用し、0.529(g/min)でC1の手前にある投入口から供給した。1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロライドとジメチルスルホキシドの混合物とビニルラウレートはそれぞれ別の定量送液ポンプ(図示せず)を使用し、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロライドとジメチルスルホキシドの混合物を1.95mL/minでC1の手前にある投入口から供給し、ビニルラウレートを2.70mL/minでC2の部分から供給した。図1の二軸混練押出機の出口から出始めた混合物の色が変化し始めたことを確認した後、2分間ごとに混合物を回収しサンプリングを3回行った。得られた回収物から500mgを測りとり、メタノール20mLを用いた洗浄操作を3回繰り返した後、回収物を一晩かけて減圧乾燥させることで固体を得た。IR測定の解析結果から、エステル基に由来するピークは殆ど観測されず、回収物は出発原料のセルロースであることが確認された。
以上の結果から、次の事柄が確認された。
(1)従来技術(段落0005、0006参照)と比較して、実施例は、全置換度が約10倍に向上した。また、実施例2と3の対比から、温度を調節することにより、任意の置換度の多糖類エステル化物を得ることができることがわかる。
(2)実施例では、比較例1と比べて、有機溶媒の量と、試薬(イオン液体、エステル化剤)の量を約20分の1に低減できた。
(3)実施例では、比較例1と比べて、反応時間を約200分の1に短縮できた。
(4)特定の塩基性イオン液体を用いなかった比較例2では、多糖類エステル化物が得られなかった。
(5)図1の二軸混練押出機を用いることで、連続生産が可能となった。すなわち、定量供給する限り、一定量の目的物が生産された。これにより、容易に生産スケールの拡大が可能となることがわかる。
したがって、本発明の多糖類エステル化物の製造補法によれば、多糖類エステル化物を工業的に効率よく製造できることが明らかとなった。特に、せん断力付与機構を備える混練機として、図1の二軸混練押出機を用いる場合、多糖類エステル化物の出来上がりの濃度が30重量%を超える高濃度条件でも、高せん断力により均一に混練され、反応させることができるため、特定の塩基性イオン液体の有する溶媒且つ触媒としての機能が一層効果的に発揮される。加えて、原料を定量供給する限り、一定量の多糖類エステル化物が連続的に生産できるという、連続生産性が確認された。
[1]多糖類含有バイオマスと、アニオンの共役酸のpKaが真空中における計算値として2~19(好ましくは3~17、より好ましくは4~12、さらに好ましくは4.5~11)である塩基性イオン液体と、エステル化剤を、せん断力付与機構を備える混練機を用いて反応させる多糖類エステル化物の製造方法。
[2]多糖類含有バイオマスと、25℃におけるアニオンの共役酸のジメチルスルホキシド中におけるpKaが9~29(好ましくは10~25、より好ましくは12~19、さらに好ましくは12.3~18.6)である塩基性イオン液体と、エステル化剤を、せん断力付与機構を備える混練機を用いて反応させる多糖類エステル化物の製造方法。
[3]前記塩基性イオン液体を構成するカチオンは、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、およびテトラアルキルアンモニウムカチオンからなる群より選択される1種である、上記[1]または[2]記載の多糖類エステル化物の製造方法。
[4]前記塩基性イオン液体を構成するアニオンが、カルボン酸アニオン、アミノ酸アニオン、シアン化物イオン、およびフッ化物イオンからなる群より選択される1種である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の多糖類エステル化物の製造方法。
[5]多糖類含有バイオマスと、塩基性イオン液体と、エステル化剤を、せん断力付与機構を備える混練機を用いて反応させる多糖類エステル化物の製造方法であり、
前記塩基性イオン液体として、カチオンが下記式(1)
[6]多糖類含有バイオマスと、塩基性イオン液体と、エステル化剤を、せん断力付与機構を備える混練機を用いて反応させる多糖類エステル化物の製造方法であり、
前記塩基性イオン液体は、120℃における前記塩基性イオン液体1gに対する数平均重合度105のセルロースの溶解度が、0.01g以上(好ましくは0.05g以上、より好ましくは0.1g以上、さらに好ましくは0.2g以上、特に好ましくは0.3g以上)である多糖類エステル化物の製造方法。
前記多糖類含有バイオマスと前記塩基性イオン液体を練り混ぜ、第1の混練物を生成する第1混練工程と、
前記エステル化剤と第1の混練物を練り混ぜ、反応させて多糖類エステル化物を含む第2の混練物を生成する第2混練工程とを有し、
前記第1混練工程および第2混練工程の少なくとも1つの工程で、前記せん断力付与機構を備える混練機を用いる多糖類エステル化物の製造方法。
[8]上記[7]に記載の多糖類エステル化物の製造方法であって、
さらに第2の混練物を搬送しながら押し出す押出工程を有し、
前記第1混練工程、前記第2混練工程および前記押出工程の少なくとも2つの工程で、せん断力付与機構を備える混練機を用いる多糖類エステル化物の製造方法。
[9]上記[8]に記載の多糖類エステル化物の製造方法であって、
前記第1混練工程、前記第2混練工程および前記押出工程の少なくとも1つの工程を連続的に行う多糖類エステル化物の製造方法。
[10]上記[8]または[9]に記載の多糖類エステル化物の製造方法であって、
前記第1混練工程、前記第2混練工程または前記押出工程のいずれかの工程において、スクリューを備える混練機を用いる多糖類エステル化物の製造方法。
[11]上記[10]に記載の多糖類エステル化物の製造方法であって、
スクリューを備える混練機を用いて前記第1混練工程を行うに際し、
前記混練機のスクリュー直上に、前記多糖類含有バイオマスと前記塩基性イオン液体を同時に導入する多糖類エステル化物の製造方法。
[13]前記エステル化剤は、鎖状エステル化合物、環状エステル化合物、不飽和アルデヒド、飽和アルデヒド、酸ハロゲン化物、酸無水物、およびアリルアルコールからなる群より選択された1以上である、上記[1]~[12]のいずれかに記載の多糖類エステル化物の製造方法。
[14]上記多糖類含有バイオマス1に対する上記塩基性イオン液体の重量比割合は、0.5~10(好ましくは、0.7~7、より好ましくは0.8~3、さらに好ましくは1~2.5、特に好ましくは、1~1.5)である、上記[1]~[13]のいずれかに記載の多糖類エステル化物の製造方法。
[15]上記多糖類含有バイオマス1に対する上記塩基性イオン液体の重量比割合は、0.5~10(好ましくは、0.7~7、より好ましくは0.8~3、さらに好ましくは1~2.5、特に好ましくは、1~1.5)であり、且つ、上記多糖類含有バイオマス1に対する上記有機溶媒の重量比割合は0.5~10(好ましくは、0.7~7、より好ましくは0.8~3、さらに好ましくは1~2.5、特に好ましくは、1~1.5)である、上記[12]に記載の多糖類エステル化物の製造方法。
[16]前記多糖類エステル化物における、セルロースエステルの含有量が80重量%以上(好ましくは85重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%)である、上記[1]~[15]のいずれかに記載の多糖類エステル化物の製造方法。
[17]前記多糖類含有バイオマス中の多糖類の水酸基1当量に対する、前記エステル化剤の当量が0.5~7当量(好ましくは0.7~7当量)である、上記[1]~[16]のいずれかに記載の多糖類エステル化物の製造方法。
[18]前記多糖類含有バイオマス中の多糖類の水酸基のエステル化率が23%以上(好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上)である上記[1]~[17]のいずれかに記載の多糖類エステル化物の製造方法。
[20]上記[1]~[18]のいずれかに記載の多糖類エステル化物の製造方法により得られる多糖類エステル化物であって、前記多糖類エステル化物がセルロースエステルの場合の全置換度が0.7以上(好ましくは0.9以上、1.0以上、1.1以上、1.3以上、2.0以上、2.2以上、2.4以上、2.6以上)である多糖類エステル化物。
11 回転軸
12 バレル
13a,13b,13c,13d,13e,13f スクリュー
14 シリンダー
15 ヘッド(H)/ダイス(D)
16 出口
21 搬送部、搬送エレメントを使用
22 第1の混練部
22a 混合部、混合エレメントを使用
22b 練和部、練和エレメントを使用
23 搬送部、搬送エレメントを使用
24 第2の混練部、練和エレメントを使用
25 押出部(搬送押出部)、搬送エレメントを使用
C1,C2,C3,15 加温ゾーン
F1,F2 原料供給口
Claims (10)
- 多糖類含有バイオマスと、アニオンの共役酸のpKaが真空中における計算値として2~19である塩基性イオン液体と、エステル化剤を、せん断力付与機構を備える混練機を用いて反応させる多糖類エステル化物の製造方法であって、
前記多糖類含有バイオマスと前記塩基性イオン液体を練り混ぜ、第1の混練物を生成する第1混練工程と、
前記エステル化剤と第1の混練物を練り混ぜ、反応させて多糖類エステル化物を含む第2の混練物を生成する第2混練工程と、
前記第2の混練物を搬送しながら押し出す押出工程を有し、
前記第1混練工程、前記第2混練工程および前記押出工程の少なくとも2つの工程で、せん断力付与機構を備える混練機を用い、
前記第1混練工程、前記第2混練工程または前記押出工程の1以上の工程において、有機溶媒を用い、
前記多糖類含有バイオマス1に対する前記塩基性イオン液体の重量比割合が、0.5~10であり、
前記多糖類含有バイオマス1に対する前記有機溶媒の重量比割合が、0.5~10である、多糖類エステル化物の製造方法。 - 前記塩基性イオン液体を構成するカチオンが、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、およびテトラアルキルアンモニウムカチオンからなる群より選択される1種である、請求項1に記載の多糖類エステル化物の製造方法。
- 前記塩基性イオン液体を構成するアニオンが、カルボン酸アニオン、アミノ酸アニオン、シアン化物イオン、およびフッ化物イオンからなる群より選択される1種である、請求項1または2に記載の多糖類エステル化物の製造方法。
- 請求項1~3のいずれか一項に記載の多糖類エステル化物の製造方法であって、
前記第1混練工程、前記第2混練工程および前記押出工程の少なくとも1つの工程を連続的に行う多糖類エステル化物の製造方法。 - 請求項1~4のいずれか一項に記載の多糖類エステル化物の製造方法であって、
前記第1混練工程、前記第2混練工程または前記押出工程のいずれかの工程において、スクリューを備える混練機を用いる多糖類エステル化物の製造方法。 - 請求項5に記載の多糖類エステル化物の製造方法であって、
スクリューを備える混練機を用いて前記第1混練工程を行うに際し、
前記混練機のスクリュー直上に、前記多糖類含有バイオマスと前記塩基性イオン液体を同時に導入する多糖類エステル化物の製造方法。 - 前記エステル化剤は、鎖状エステル化合物、環状エステル化合物、不飽和アルデヒド、飽和アルデヒド、酸ハロゲン化物、酸無水物、およびアリルアルコールからなる群より選択された1以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載の多糖類エステル化物の製造方法。
- 前記多糖類エステル化物における、セルロースエステルの含有量が80重量%以上である請求項1~7のいずれか一項に記載の多糖類エステル化物の製造方法。
- 前記多糖類含有バイオマス中の多糖類の水酸基1当量に対する、前記エステル化剤の当量が0.5~7当量である、請求項1~8のいずれか一項に記載の多糖類エステル化物の製造方法。
- 前記多糖類含有バイオマス中の多糖類の水酸基のエステル化率が23%以上である請求項1~9のいずれか一項に記載の多糖類エステル化物の製造方法。
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