JP2017160396A - 酸化セルロース繊維、微細セルロース繊維分散体、及び微細セルロース繊維の製造方法 - Google Patents

酸化セルロース繊維、微細セルロース繊維分散体、及び微細セルロース繊維の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】短時間で効率よくTEMPO酸化反応後の酸化セルロース繊維の重合度の低下を抑制することができ、高分子量で強度に優れる酸化セルロース繊維を製造することができる酸化セルロース繊維の製造方法、前記酸化セルロース繊維を用いた微細セルロース繊維分散体の製造方法及び微細セルロース繊維の製造方法を提供すること。【解決手段】セルロース系原料を含む溶液を加圧することにより脱水して未乾燥パルプを得る脱水工程と、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル及び共酸化剤を含む反応液中で前記未乾燥パルプを酸化して酸化セルロース繊維を得る酸化工程とを含み、前記酸化セルロース繊維の銅エチレンジアミン溶液を用いた粘度法による粘度平均重合度が650以上である酸化セルロース繊維の製造方法である。【選択図】なし

Description

本発明は、酸化セルロース繊維、微細セルロース繊維分散体、及び微細セルロース繊維の製造方法に関する。
セルロース系原料を、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(以下、「TEMPO」と称することがある)をはじめとするN−オキシル化合物を触媒とした酸化反応を用いて処理して得た酸化セルロース繊維は、処理条件を調整すると水中での軽度な解繊処理により均質な分散体が得られることが知られている。前記分散体は、前記酸化セルロース繊維が前記セルロースミクロフィブリルレベルまで解繊され、幅数nm〜数百nmに分散した微細セルロース繊維(以下、「セルロースナノファイバー」と称することがある)を含む微細セルロース繊維分散体(以下、「酸化セルロースナノファイバー分散体」と称することがある)である。更にこのTEMPO酸化反応では、有機溶媒は使用せず水のみを反応媒として用いるため、反応プロセスの環境適応性が極めて高い。
TEMPO酸化反応により得られた酸化セルロース繊維が軽度な機械的な解繊処理によりナノレベルまで分散するメカニズムとしては、以下のように知られている。酸化反応によりセルロースミクロフィブリル表面に露出しているC6位の一級水酸基のみが選択的に酸化され、アルデヒド基を経由してカルボキシル基が導入される。これにより、セルロースミクロフィブリル表面がマイナス荷電を有するようになるため、水中ではセルロースミクロフィブリル間の強力な荷電反発及び浸透圧効果(高密度のカルボキシル基のナトリウム塩部分を水で希釈しようとして水分子が強引に入り込むことによりセルロースミクロフィブリル間を広げようとする力)を示し、ナノオーダーのミクロフィブリルが孤立しやすくなるため、極めて軽微な解繊処理によって完全な微細分散(以下、「ナノ分散」と称することがある)が可能となる。(非特許文献1参照)。
前記微細セルロース繊維分散体は、そのまま、あるいは他の材料と複合化したゲル状で増粘材として利用できる。また、微細セルロース繊維分散体を、そのまま、あるいは他の材料と複合化して乾燥することで、シート状、フィルム状、発泡体状、エアロゲル状等の材料を製造することができる(例えば、特許文献1参照)。また、前記微細セルロース繊維は、均一の幅で、高アスペクト比のバイオ系ナノファイバーであり、大比表面積、高強度、及び導入されたカルボキシル基による水中での優れたナノ分散性を有するという優れた特徴がある。そのため、例えば、酸素バリア膜、汎用プラスチックの補強材、医療用材、細胞培養基材、触媒担体、吸着剤、分離材などの様々な分野への利用が期待されている。
しかしながら、天然のセルロースは重合度が約1,000〜3,000程度であるのに対し、特許文献1に記載の方法で製造された微細セルロース繊維は重合度が約200程度であり、天然のセルロースに比べて著しく低いという問題がある。このような低分子量の微細セルロース繊維を上述のような様々な分野における材料として用いる場合、強度や弾性率の低下の原因となる。そのため、微細セルロース繊維の重合度を増加させることが試みられている。
例えば、天然セルロースを、TEMPO及び亜塩素酸ナトリウムを含む酸性の反応溶液(pH6.8)に分散させ、次いで次亜塩素酸ナトリウムを添加して60℃で2時間〜6時間攪拌してセルロースナノファイバーを得る方法が提案されている(特許文献2参照)。
しかしながら、この方法は、反応温度を40℃に加熱する必要があり、反応時間に72時間という長い時間を要するため、効率が悪いという問題である。
また、未乾燥状態の漂白クラフトパルプを、TEMPO、臭化ナトリウム、及び次亜塩素酸ナトリウムを含む第1の反応溶液(pH8〜pH12)中で酸化させる第1の酸化工程と、前記第1の酸化工程で得られた酸化セルロースを、亜塩素酸ナトリウムを含む第2の反応溶液(pH3〜pH7)中で酸化させる第2の酸化工程とを含むセルロースナノファイバーの製造方法も提案されている(特許文献3参照)。
しかしながら、この方法は、酸化セルロースの単離精製処理を含む2段階の酸化反応工程が必要であり、しかも前記第2の酸化工程は、1日以上の反応が必要であるため、効率が悪いという問題である。
また、前記TEMPO酸化反応におけるセルロース系原料として使用されるパルプ自体も、酸性、高温、及び高圧の条件下でパルプ化した場合、重合度が低下して分子量が小さくなり、該パルプを利用する紙や繊維等のセルロース関連製品の強度が極端に低くなるという問題がある。そのため、一般的に製紙用パルプは、木材チップをアルカリ性条件下で高温高圧処理してリグニンを除去してパルプ化しており、強酸性条件下でのパルプ化はほとんど行われていない。また、パルプ化後の未漂白パルプは、2%〜5%程度のリグニンが残存しており褐色を呈しているため、前記未漂白パルプを5段階程度に分けて漂白処理を行い、白色度80%以上の製紙用漂白パルプが製造されている。この漂白処理において、酸性条件の漂白を加えるとレベルオフ重合度(LODP)まで重合度が低下して紙の強度が低下してしまうため、pH制御は極めて重要であり、LODPまで重合度が低下するような酸性条件を避けるように漂白条件が精密に制御されている。
このようなセルロースの重合度の低下は、前記セルロースミクロフィブリルにおける非結晶領域の存在によるものである。前記セルロースミクロフィブリルは、植物から単離し、精製された天然のセルロースにおける、セルロース分子に次ぐ最小単位であり、樹木、木材、紙、綿繊維製品などの強度の発現、安定性などに寄与している。図1に示すように、幅約3nmの結晶性のセルロースミクロフィブリルは、30本〜40本のセルロース分子が集合してなるものであり、長さ方向に周期的に構造が乱れた非結晶領域が存在する。これまで、前記非結晶領域が存在する証拠を顕微鏡画像等で可視化することは不可能であったが、以下の2つの証拠によってその存在が支持されている。
第1の証拠としては、植物セルロースの重合度は約1,000〜3,000程度であり、これを、80℃以上の希酸中で加熱加水分解処理しても重量収率の低下はほとんどないが、30分間以内に重合度が200〜300に急激に低下し、その後何時間希酸中で加熱加水分解処理してもこの重合度は一定であるということである(非特許文献2及び3参照)。この一定の重合度が、前記LODPである。
第2の証拠としては、植物セルロースを重水(DO)に浸漬し、中性子散乱で重水素(D)の分布を調べると、LODPに対応する重合度200〜300程度に周期構造があることが認められることである(非特許文献4参照)。これは、前記セルロースミクロフィブリルの結晶領域内の水酸基(OH)は、DOと接触しないためODに変換されないが、前記セルロースミクロフィブリルの非結晶領域は、DOと接触可能であるため水酸基(OH)がODに変換するためである。
しかしながら、前記セルロースミクロフィブリルにおける非結晶領域は、植物がセルロースを生合成する初期から存在しているのか、植物を伐採し、チップ化し、該チップを乾燥させ、パルプ化し、該パルプを漂白する過程のいずれかで後天的に生成しているのかは未だ不明である。そのため、前記セルロースミクロフィブリルの非結晶領域を生成させないようにする、あるいは非結晶領域における結晶の乱れを縮小することにより、TEMPO酸化反応後のセルロースの重合度の低下を抑制するような試みは、これまで全くなされていない。
特開2008−001728号公報 国際公開第2009/069641号 特開2011−46793号公報
磯貝 明, 東京大学農学部演習林報告, 2011, 126, 1−43 O. A. Battista et al., Ind. Eng. Chem., 1956, 48(2), pp.333−335 H. H▲a▼kansson et al., Cellulose, 2005, 12, pp.177−183 Y. Nishiyama et al., Biomacromolecules, 2003, 4, pp.1013−1017
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、TEMPO酸化反応後の酸化セルロース繊維の重合度の低下を抑制することができ、高分子量で強度に優れる酸化セルロース繊維を製造することができる酸化セルロース繊維の製造方法、前記酸化セルロース繊維を用いた微細セルロース繊維分散体の製造方法及び微細セルロース繊維の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、セルロース系原料を含む溶液を加圧することにより脱水して得た未乾燥パルプを出発物質とすることにより、常温及び常圧の温和な条件下にて短時間のTEMPO酸化反応を行うだけで、アルカリ条件で溶解させて測定した粘度平均重合度が650以上と大幅に増加することを知見した。更に、このようなTEMPO酸化反応後の酸化セルロース繊維の粘度平均重合度の低下の抑制は、前記セルロース系原料を含む溶液を加圧して脱水することにより、従来の減圧脱水(真空乾燥)などの脱水方法で該セルロース系原料の一部が乾燥することにより生成するセルロースミクロフィブリルの非結晶構造領域における結晶の乱れを縮小することによるものであることを知見した。
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> セルロース系原料を含む溶液を加圧することにより脱水して未乾燥パルプを得る脱水工程と、
2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル及び共酸化剤を含む反応液中で前記未乾燥パルプを酸化して酸化セルロース繊維を得る酸化工程とを含み、
前記酸化セルロース繊維の銅エチレンジアミン溶液を用いた粘度法による重合度が650以上であることを特徴とする酸化セルロース繊維の製造方法である。
<2> セルロース系原料を含む溶液を加圧することにより脱水して未乾燥パルプを得る脱水工程と、
2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル及び共酸化剤を含む反応液中で前記未乾燥パルプを酸化して酸化セルロース繊維を得る酸化工程と、
前記酸化セルロース繊維を溶媒に分散して微細セルロース繊維分散体を得る分散工程とを含み、
前記酸化セルロース繊維の銅エチレンジアミン溶液を用いた粘度法による重合度が650以上であることを特徴とする微細セルロース繊維分散体の製造方法である。
<3> セルロース系原料を含む溶液を加圧することにより脱水して未乾燥パルプを得る脱水工程と、
2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル及び共酸化剤を含む反応液中で前記未乾燥パルプを酸化して酸化セルロース繊維を得る酸化工程と、
前記酸化セルロース繊維を溶媒に分散して微細セルロース繊維分散体を得る分散工程と、
前記微細セルロース繊維分散体を乾燥させて微細セルロース繊維を得る乾燥工程とを含み、
前記酸化セルロース繊維の銅エチレンジアミン溶液を用いた粘度法による重合度が650以上であることを特徴とする微細セルロース繊維の製造方法である。
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、TEMPO酸化反応後の酸化セルロース繊維の重合度の低下を抑制することができ、高分子量で強度に優れる酸化セルロース繊維を製造することができる酸化セルロース繊維の製造方法、前記酸化セルロース繊維を用いた微細セルロース繊維分散体の製造方法及び微細セルロース繊維の製造方法を提供することができる。
図1は、樹木中での木材セルロースの階層構造を示す概略説明図である。 図2は、実施例1の脱水工程で得られた未乾燥パルプ(○)、実施例1の酸化工程で得られた酸化セルロース繊維(□)、実施例2の酸化工程で得られた酸化セルロース繊維(△)、比較例1の酸化工程で得られた酸化セルロース繊維(■)、及び比較例2の酸化工程で得られた酸化セルロース繊維(▲)の粘度平均重合度を示すグラフである。縦軸:銅エチレンジアミン溶液を用いた粘度法による粘度平均重合度、横軸:酸化工程における次亜塩素酸ナトリウムの添加量(未乾燥パルプ又は酸化セルロース繊維の絶乾質量1gに対するmmol量) 図3は、実施例3の分散工程で得られた微細セルロース繊維分散体(破線)及び実施例4の分散工程で得られた微細セルロース繊維分散体(実線)の光透過度を示すグラフである。縦軸:光透過度(%)、横軸:波長(nm) 図4は、実施例3の分散工程で得られた微細セルロース繊維分散体の透過型顕微鏡像である。スケールバー:200nm
(酸化セルロース繊維の製造方法)
本発明の酸化セルロース繊維の製造方法は、脱水工程及び酸化工程を少なくとも含み、必要に応じて、更にその他の工程を含む。
前記酸化セルロース繊維の製造方法により製造される酸化セルロース繊維の銅エチレンジアミン溶液を用いた粘度法による重合度は、650以上である。
<脱水工程>
前記脱水工程は、セルロース系原料を含む溶液を加圧することにより脱水して未乾燥パルプを得る工程である。本発明は、前記セルロース系原料を含む溶液を加圧することにより脱水して得た未乾燥パルプを、後述の酸化工程で酸化することにより、高重合度の酸化セルロース繊維を得ることができる。
本発明において、「加圧」とは、圧力を加えることを意味する。したがって、前記脱水工程には、真空脱水及び減圧脱水は含まない。また、遠心脱水も、水分が遠心加速度によって強制的に移動し、除去されることにより、その部分が減圧になる気流が発生するため、前記減圧脱水に含まれる。
前記加圧の方法としては、前記セルロース系原料を含む溶液に圧力を加えて脱水できる方法であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ワイヤーメッシュ上に前記セルロース系原料を含む溶液を付与し、ワイヤーメッシュ上の前記セルロース系原料を加圧手段で加圧して、前記セルロース系原料を含む溶液中の水分のみ該ワイヤーメッシュを通過させて排出する方法などが挙げられる。
前記加圧手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加圧濾過機などが挙げられる。また、前記加圧手段は、ヒトの手であってもよい。
前記加圧時の圧力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
−セルロース系原料を含む溶液−
前記セルロース系原料を含む溶液は、セルロース系原料及び溶媒を少なくとも含有し、必要に応じて、更にその他の成分を含有する。
−−セルロース系原料−−
前記セルロース系原料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、植物、動物、バクテリア生産ゲル等のセルロースの生合成系から単離し、必要に応じて精製したセルロースなどが挙げられる。また、前記セルロース系原料は、単離、精製されたセルロースに対して、叩解等の表面積を高める処理を施したものであってもよい。
前記セルロース系原料の具体例としては、パルプ、バクテリアセルロース、ホヤから単離されるセルロース、海草から単離されるセルロースなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記セルロース系原料は、パルプが好ましく、溶解パルプがより好ましい。
前記溶解パルプとは、化学的に精製されたセルロース純度の高いパルプを意味し、好ましい態様においてα−セルロース含有率が90%以上である。ここで、パルプのα−セルロース含有率とは、パルプを17.5質量%の水酸化ナトリウムで処理したときに溶解しない部分である。
一般に木材は、セルロース、リグニン、及びヘミセルロースの三大成分、少量の樹脂分、灰分などを含んでいるが、前記溶解パルプは、セルロース純度が高く、化学繊維、セロハン、プラスチック、合成糊料、その他種々のセルロース系誘導体の原料として広く利用されている。
前記溶解パルプは、アルカリ性条件下で蒸解された(以下、「アルカリ蒸解」と称することがある)パルプであることが好ましい。前記溶解パルプが、酸性条件下で蒸解された場合、前記セルロース系原料中のセルロースミクロフィブリルにおける非結晶領域が増大し、酸化セルロース繊維の粘度平均重合度が低下することがある。
前記アルカリ蒸解を行う方法としては、アルカリ性条件下で行われる限り、特に制限はなく、公知の方法の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、クラフト法、ソーダ法、炭酸ソーダ法、ポリサルファイド法、アルカリサルファイト法、亜硫酸法などが挙げられる。前記アルカリ蒸解は、1種単独の方法で行われてもよく、2種以上の方法を組み合わせて行ってもよい。これらの中でも、前記アルカリ蒸解は、クラフト法、ソーダ法などが好ましい。
前記溶解パルプの原料(以下、「パルプ原料」と称することがある)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、針葉樹系木材チップ、広葉樹系木材チップ等の木材系原料;コットンリンター、コットンリント等の綿系原料;麦わら、バガス、ケナフ、麻、イネ、竹等の非木材系原料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記針葉樹の具体例としては、アカマツ、クロマツ、トドマツ、エゾマツ、ベニマツ、カラマツ、モミ、ツガ、スギ、ヒノキ、カラマツ、シラベ、トウヒ、ヒバ、ダグラスファー、ヘムロック、ホワイトファー、スプルース、バルサムファー、シーダ、パイン、メルクシマツ、ラジアータパインなどが挙げられる。
前記広葉樹の具体例としては、ブナ、カバ、ハンノキ、ナラ、タブ、シイ、シラカバ、ハコヤナギ、ポプラ、タモ、ドロヤナギ、ユーカリ、マングローブ、ラワン、アカシアなどが挙げられる。
前記アルカリ蒸解を行う際の前記パルプ原料に対する蒸解液の液比としては、特に制限はなく、使用する前記パルプ原料の種類などに応じて適宜選択することができるが、1.0L/kg〜5.0L/kgが好ましく、1.5L/kg〜4.5L/kgがより好ましく、2.0L/kg〜4.0L/kgが更に好ましい。
前記パルプ原料の絶乾質量当たりの前記蒸解液の活性アルカリ添加率(AA)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、8質量%〜35質量%が好ましく、10質量%〜30質量%がより好ましい。前記活性アルカリ添加率が、8質量%未満であると、リグニンやヘミルロースの除去が不十分となることがあり、35質量%を超えると、収率の低下や品質の低下が起こることがある。
ここで前記活性アルカリ添加率とは、水酸化ナトリウム(NaOH)の添加率を酸化ナトリウム(NaO)の添加率として換算したもので、水酸化ナトリウの添加率に0.775を乗じることでNaOの添加率に換算できる。
前記アルカリ蒸解は、蒸解助剤の存在下で行われてもよい。前記蒸解助剤としては、特に制限はなく、公知の蒸解助剤の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、キノン化合物、ヒドロキノン化合物、これらの前駆体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記キノン化合物の具体例としては、アントラキノン(アントラセン−9,10−ジオン)、ジヒドロアントラキノン(例えば、1,4−ジヒドロアントラキノン)、テトラヒドロアントラキノン(例えば、1,4,4a,9a−テトラヒドロアントラキノン、1,2,3,4−テトラヒドロアントラキノン)、メチルアントラキノン(例えば、1−メチルアントラキノン、2−メチルアントラキノン)、メチルジヒドロアントラキノン(例えば、2−メチル−1,4−ジヒドロアントラキノン)、メチルテトラヒドロアントラキノン(例えば、1−メチル−1,4,4a,9a−テトラヒドロアントラキノン、2−メチル−1,4,4a,9a−テトラヒドロアントラキノン)などが挙げられる。
前記ヒドロキノン化合物の具体例としては、アントラヒドロキノン(9,10−ジヒドロキシアントラセン)、メチルアントラヒドロキノン(例えば、2−メチルアントラヒドロキノン)、ジヒドロアントラヒドロアントラキノン(例えば、1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン)、これらのアルカリ金属塩(例えば、アントラヒドロキノンのジナトリウム塩、1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセンのジナトリウム塩)などが挙げられる。
前記前駆体の具体例としては、アントロン、アントラノール、メチルアントロン、メチルアントラノールなどが挙げられる。これらの前駆体は、蒸解条件下ではキノン化合物又はヒドロキノン化合物に変換することもある。
前記蒸解助剤の添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記パルプ原料の絶乾質量に対して、0.01質量%〜1.5質量%が好ましく、0.05質量%〜0.5質量%がより好ましい。前記蒸解助剤の添加量が、0.01質量%未満であると、蒸解後のパルプ原料、即ち、前記セルロース系原料のカッパー価が低減されないことがあり、1.5質量%を超えても、前記セルロース系原料のカッパー価の更なる低減は認められずコスト的に不利である。
前記アルカリ蒸解は、Hファクター(Hf)を指標として、処理温度及び処理時間を設定することができる。前記Hファクターとは、蒸解過程で反応系に与えられた熱の総量を表す目安であり、下記の式によって表わされる。Hファクターは、下記計算式により、前記パルプ原料と水(蒸解液)が混ざった時点から蒸解終了時点まで時間積分することで算出することができる。
Hf=∫exp(43.20−16113/T)dt
[式中、Tはある時点の絶対温度を表す]
前記Hファクターとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるaがある。
前記アルカリ蒸解の処理温度としては、特に制限はなく、前記Hファクターなどに応じて適宜選択することができるが、120℃〜220℃が好ましく、150℃〜180℃がより好ましい。前記温度が、120℃未満であると、カッパー価の低下(脱リグニン)が不十分となることがあり、220℃を超えると、前記セルロース系原料の粘度平均重合度が低下することがある。
前記アルカリ蒸解の処理時間としては、特に制限はなく、前記Hファクターなどに応じて適宜選択することができるが、蒸解温度が最高温度に達してから温度が下降し始めるまでの時間(以下、「蒸解時間」と称することがある)が、1時間〜10時間が好ましく、2時間〜4時間がより好ましい。前記蒸解時間が、1時間未満であると、パルプ化が進行しないことがあり、10時間を超えると、パルプの生産効率が悪化することがある。
前記アルカリ蒸解により得られたセルロース系原料は、必要に応じて、酸素脱リグニン処理が行われてもよい。
前記酸素脱リグニン処理としては、特に制限はなく、公知の処理の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、中濃度法、高濃度法などが挙げられる。
前記中濃度法は、前記セルロース系原料の濃度が、8質量%〜15質量%であることが好ましい。
前記高濃度法は、前記セルロース系原料の濃度が、20質量%〜35質量%であることが好ましい。
前記酸素脱リグニンにおけるアルカリとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。
前記酸素脱リグニンにおける酸素ガスとしても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、深冷分離法からの酸素、PSA(Pressure Swing Adsorption)からの酸素、VSA(Vacuum Swing Adsorption)からの酸素などが挙げられる。
酸素脱リグニン処理の反応条件としては、特に制限はなく、公知の反応条件の中から目的に応じて適宜選択することができるが、酸素圧は、3kg/cm〜9kg/cmが好ましく、4kg/cm〜7kg/cmがより好ましく、前記活性アルカリ添加率は、0.5質量%〜4質量%が好ましく、処理温度は、80℃〜140℃が好ましく、処理時間は、20分間〜180分間が好ましい。
前記酸素脱リグニン処理は、1回のみ行ってもよく、複数回行ってもよい。
前記セルロース系原料は、前記アルカリ蒸解後又は前記酸素脱リグニン処理後、水で洗浄して、前記蒸解液や前記酸素脱リグニン処理における反応液を水に置換してもよいが、
ここでの洗浄方法は、前記脱水工程と同様に、加圧することにより脱水して行う必要がある。前記洗浄の回数は、1回であってもよいし、複数回であってもよい。前記洗浄により、未反応の共酸化剤や各種副生成物を除去することができる。
−−溶媒−−
前記セルロース系原料を含む溶液の溶媒(分散媒)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上述の蒸解液、水などが挙げられる。
前記セルロース系原料を含む溶液中における前記セルロース系原料の濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
−−その他の成分−−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上述の蒸解助剤などが挙げられる。
−未乾燥パルプ−
前記未乾燥パルプは、前記セルロース系原料を含む溶液を加圧することにより脱水して得られたものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、未漂白の未乾燥パルプであることが好ましい。前記未乾燥パルプを漂白すると、漂白工程中に該未乾燥パルプ中のセルロースミクロフィブリルにおける非結晶領域が増大し、酸化セルロース繊維の粘度平均重合度が低下することがある。
前記未乾燥パルプの含水率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。本発明は、前記脱水工程において、前記セルロース系原料を含む溶液を加圧することにより脱水した未乾燥パルプであれば、脱水工程後の該未乾燥パルプの含水率に関係なく、銅エチレンジアミン溶液を用いた粘度法による粘度平均重合度が650以上である酸化セルロース繊維を製造することができる。
前記未乾燥パルプのカッパー価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5〜30が好ましく、8〜25がより好ましい。前記カッパー価が、5未満であると、パルプ収率が低下することがあり、30を超えると、後述する酸化工程の反応効率が低下することがある。
<酸化工程>
前記酸化工程は、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(TEMPO)及び共酸化剤を含む反応液中で前記未乾燥パルプを酸化して酸化セルロース繊維を得る工程である。
前記酸化工程により、前記セルロースの水酸基が、アルデヒドを経てカルボン酸に酸化される。
前記酸化工程において、TEMPO酸化法を用いることで、高い粘度平均重合度の酸化セルロース繊維を得ることができる点で有利である。また、TEMPO酸化法は、反応媒体として有機溶媒を用いることなく完全に水中での反応であること、試薬の入手しやすさ、コスト、反応の安定性の点からも有利である。更に、TEMPO酸化法は、結晶性のセルロースミクロフィブリルの表面のみを酸化し、セルロースミクロフィブリルの結晶内部には酸化が起こらないため、結晶構造を維持することができる。そのため、前記酸化工程で得られた酸化セルロース繊維は、セルロース本来の高強度、高弾性率、低線熱膨張係数、高耐熱性の特性を有する点でも有利である。
−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(TEMPO)−
前記反応液における前記TEMPOの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、触媒量などが挙げられる。
−共酸化剤−
前記共酸化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、次亜ハロゲン酸又はその塩、亜ハロゲン酸又はその塩、過ハロゲン酸又はその塩、過酸化水素、過有機酸など挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記次亜ハロゲン酸又はその塩の具体例としては、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜臭素酸ナトリウムなどが挙げられる。
前記亜ハロゲン酸又はその塩の具体例としては、亜塩素酸、亜塩素酸ナトリウム、亜臭素酸ナトリウムなどが挙げられる。
前記過ハロゲン酸又はその塩の具体例としては、過塩素酸、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウムなどが挙げられる。
前記反応液における前記共酸化剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
−その他の成分−
前記反応液は、上述のセルロース系原料、TEMPO、及び共酸化剤以外のその他の成分を含んでいてもよい。
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、臭化物、ヨウ化物、又はこれらの混合物などが挙げられる。
−−臭化物、ヨウ化物、又はこれらの混合物−−
前記臭化物、及びヨウ化物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、臭化アルカリ金属、ヨウ化アルカリ金属などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記反応液における前記臭化物、ヨウ化物、又はこれらの混合物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記酸化工程における反応液のpHとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、pH3〜pH12が好ましく、pH7〜pH11がより好ましく、pH9〜pH10が更に好ましく、pH10が、短時間の酸化反応で、高分子量の酸化セルロース繊維が得られる点で特に好ましい。
前記酸化工程における、反応温度、圧力、反応時間などの条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記酸化工程における条件を選択することで、アルデヒド基を含まない酸化セルロース繊維を得ることができる。
前記アルデヒド基を含まない酸化セルロース繊維を得るための酸化の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、S.Saito,M.Hirota,N.Tamura,S.Kimura,H.Fukuzumi,L.Heux,A.Isogai、「Individualization of nano−sized plant cellulose fibrils by direct surface carboxylation using TEMPO catalyst under neutral conditions」、Biomacromolecules、Vol.10、1992〜1996ページ、2009年)に記載されている条件を適宜選択することができる
<その他の工程>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蒸解工程、洗浄工程などが挙げられる。
<<蒸解工程>>
前記蒸解工程は、前記脱水工程でセルロース系原料として溶解パルプを使用する場合、該溶解パルプを調製する工程である。
前記蒸解工程は、アルカリ蒸解により行うことが好ましい。前記アルカリ蒸解の方法、条件、原料などとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記「セルロース系原料」の欄に記載した方法、条件、原料などが挙げられる。
<<洗浄工程>>
前記洗浄工程は、前記酸化工程で得られた酸化セルロース繊維を洗浄する工程である。
前記酸化セルロース繊維は、この段階ではナノファイバー単位までバラバラに分散しているわけではないため、通常の水洗−吸引ろ過洗浄方法により洗浄することができる。
前記洗浄方法の具体例としては、吸引ろ過あるいは遠心分離の少なくともいずれかで水洗、洗浄する方法が挙げられる。前記洗浄の回数は、1回であってもよいし、複数回であってもよい。前記洗浄により、未反応の共酸化剤や各種副生成物を除去することができる。
−酸化セルロース繊維−
本発明の前記酸化セルロース繊維の製造方法により製造される酸化セルロース繊維は、銅エチレンジアミン溶液を用いた粘度法による粘度平均重合度が650以上であるが、700以上が好ましく、800以上がより好ましい。前記粘度平均重合度が、650未満であると、前記酸化セルロース繊維を用いたセルロース関連製品の強度が低下する。
−−粘度平均重合度の測定方法−−
前記粘度平均重合度(本明細書において、単に「重合度」と称することがある)とは、1本のセルロース分子鎖中に含まれるグルコース単位の平均連結数であり、前記粘度平均重合度に162(グルコース単位の分子量)を乗じると、セルロースの分子量となる。本発明において、前記粘度平均重合度は、次に示す銅エチレンジアミン溶液を用いた粘度法で求めることができる。
0.5Mの銅エチレンジアミン溶液を調整し、これを「溶液1」とする。また、前記酸化セルロース繊維を0.5Mの銅エチレンジアミン溶液に溶解した溶解液を調製し、これを「溶液2」とする。粘度計を用いて前記溶液1及び前記溶液2の粘度を測定する。前記溶液1の粘度をη、前記溶液2の粘度をηとし、以下の計算式1により酸化セルロース繊維の溶解液の固有粘度(「極限粘度」と称することもある)[η]を求める。
固有粘度[η]=(η/η)/{c(1+A×η/η)} ・・・計算式1
前記計算式1において、「c」は、前記溶解液(溶液2)中の酸化セルロース繊維の濃度(g/dL)を示し、「A」は、溶液1の種類による固有の値を示す。0.5Mの銅エチレンジアミン溶液の場合、「A」は0.28である。
次に、以下の計算式2(Mark−Houwink−Sakurada式)により、粘度平均重合度DPを求める。
固有粘度[η]=K×DP ・・・計算式2
前記計算式2において、「K」及び「a」は、高分子の種類による固有の値を示す。セルロースの場合、「K」は0.57×10−3、「a」は1である。
前記粘度計としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、キャピラリー粘度計が好ましく、その具体的としては、キャノン−フェンスケ粘度計などが挙げられる。
前記酸化セルロース繊維のカルボキシル基量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.8mmol/g〜2.2mmol/gであることが好ましい。
前記酸化セルロース繊維のアルデヒド基量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.8mmol/g以下であることが好ましい。
前記酸化セルロース繊維中のカルボキシル基量とアルデヒド基量は、T.Saito及びA.Isogai、「TEMPO−mediated oxidation of native cellulose. The effect of oxidation conditions on chemical and crystal structures of the water−insoluble fractions」、Biomacromolecules、Vol.5、1983〜1989ページ、2004年)に記載されている方法に従い、亜塩素酸ナトリウムによる追酸化処理と電導度滴定によって測定することができる。
本発明の酸化セルロース繊維の製造方法は、酸化工程を多段階で行うことなく、常温及び常圧の温和な条件下にて短時間で行うことができ、更に酸化工程後に追酸化処理や還元処理(例えば、特開2015−113376号公報参照)などの追加の処理を行うことなく、TEMPO酸化反応後の酸化セルロース繊維の重合度の低下を抑制することができ、高分子量で強度に優れる酸化セルロース繊維を製造することができる点で有利である。
(微細セルロース繊維分散体の製造方法)
本発明の微細セルロース繊維分散体の製造方法は、脱水工程、酸化工程、及び分散工程を少なくとも含み、必要に応じて、更にその他の工程を含む。
前記脱水工程及び酸化工程は、前記酸化セルロース繊維の製造方法における脱水工程及び酸化工程と同様の態様が好適に用いられる。
前記微細セルロース繊維分散体の製造方法の前記酸化工程で得られる酸化セルロース繊維の銅エチレンジアミン溶液を用いた粘度法による重合度は、650以上であるが、700以上が好ましく、800以上がより好ましい。
<分散工程>
前記分散工程は、前記酸化工程で得られた酸化セルロース繊維を溶媒に分散して微細セルロース繊維分散体を得る工程である。前記分散工程により、前記酸化セルロース繊維を微細分散させることができる。
−溶媒−
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、水、アルコール類、エーテル類、ケトン類、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキサイド、N−メチル−2−ピロリドンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記アルコール類の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。
前記エーテル類の具体例としては、エチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
前記ケトン類の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。
前記溶媒の中でも、水が好ましい。
−分散−
前記分散工程で用いる分散手段(以下、「解繊手段」と称することもある)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スクリュー型ミキサー、パドルミキサー、ディスパー型ミキサー、タービン型ミキサー、高速回転下でのホモミキサー、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、二重円筒型ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、水流対向衝突型分散機、ビーター、ディスク型リファイナー、コニカル型リファイナー、ダブルディスク型リファイナー、グラインダー、二軸混練機、ナノジナイザー、ボールミルなどが挙げられる。これらの分散手段は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
この中でも、微細化効率の面で、高速回転下でのホモミキサー、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザーが好ましい。
前記分散工程の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、後述する「光透過度」の欄に記載した分散液の調製における条件などが挙げられる。
前記微細セルロース繊維分散体が得られたか否かは、例えば、光透過度の測定、複屈折の観察などにより、判断することができる。
−−光透過度−−
前記光透過度の測定により前記微細セルロース繊維分散体が得られたか否かを判断する場合には、例えば、以下のようにして調製した乾燥済みの酸化セルロース繊維濃度が0.1質量%の分散液(未解繊物があったとしても除去しないままの分散液。完全ナノ分散化して未解繊物が存在しないこともある)の波長600nmにおける光透過度(以下、「透過率」と称することがある)が80%以上であれば、微細分散された(ナノ分散された)と判断できる。光透過度が、80%に至らない場合には、微細分散されていない、未解繊成分を含有していると判断できる。
前記分散液の調製は、以下のようにして行うことができる。
105℃で3時間乾燥した乾燥済みの酸化セルロース繊維を濃度が0.1質量%になるように水で希釈して40mLの分散液とする。前記分散液を50mL容のポリプロピレン製遠沈管(Corning(登録商標)製)に入れ、そのまま二重円筒型ホモジナイザー(型式:NS−56、刃の直径1.5cm、株式会社マイクロテック・ニチオン製)を用いて7,500rpmで2分間解繊処理を行う。次いで、前記二重円筒型ホモジナイザーによる解繊処理後、そのまま直ちに氷水で容器の周りを冷やしながら超音波ホモジナイザー(US−300T、プローブチップ7mm、出力300W、19.5kHz、株式会社日本精機製)で8分間解繊処理を行う。
なお、前記超音波ホモジナイザーでの処理では、超音波処理による前記分散液の温度上昇を避けるために、2分間超音波処理して、1分間放置冷却するというサイクルを繰り返し、合計の超音波処理時間が8分間となるように行う。
前記微細セルロース繊維分散体の光透過度を測定する手段としては、特に制限はなく、公知の手段を適宜選択することができ、例えば、紫外可視近赤外分光光度計(V−670、日本分光株式会社製)などが挙げられる。
−−複屈折−−
前記複屈折の観察により前記微細セルロース繊維分散体が得られたか否かを判断する場合には、例えば、未解繊の残渣がある場合には、遠心分離処理により取り除く以外は、前記光透過度の測定で調製した分散液と同様にして調製した乾燥済みの酸化セルロース繊維を濃度が0.1質量%となるように水で希釈した分散液を直交偏光板の間に置き、複屈折が観察された場合には、微細分散された(ナノ分散された)と判断できる。
前記遠心分離処理は、前記50mL容のポリプロピレン製遠沈管のまま、12,000Gで10分間遠心分離機にて行うことができる。これにより、未解繊セルロース繊維を除去し、未解繊セルロース繊維を含まない上澄みを得る。
なお、前記遠心分離処理により除去した未解繊部分の質量割合が10%以上である場合には、前記微細セルロース繊維分散体は、「水中ナノ分散化できていない」と判断される。
<その他の工程>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蒸解工程、洗浄工程などが挙げられる。
前記蒸解工程及び前記洗浄工程は、上述の酸化セルロース繊維の製造方法におけるその他の工程に記載の方法と同様の方法で行うことができる。
−微細セルロース繊維分散体−
本発明の前記微細セルロース繊維分散体の製造方法により製造された微細セルロース繊維分散体は、微細セルロース繊維が水中に微細分散してなるものである。
前記微細セルロース繊維分散体における微細セルロース繊維の幅及び長さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、幅が2nm〜5nm程度、長さが0.2μm〜5μm程度のセルロースシングルミクロフィブリルであることが好ましい。
前記微細セルロース繊維分散体における微細セルロース繊維の固形分濃度としては、微細分散される限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.01質量%〜5質量%などが挙げられる。
(微細セルロース繊維の製造方法)
本発明の微細セルロース繊維の製造方法は、脱水工程、酸化工程、分散工程、及び乾燥工程を少なくとも含み、必要に応じて、更にその他の工程を含む。
前記脱水工程及び酸化工程は、前記酸化セルロース繊維の製造方法における脱水工程及び酸化工程と同様の態様が好適に用いられる。また、前記分散工程は、前記微細セルロース繊維分散体の製造方法における分散工程と同様の態様が好適に用いられる。
前記微細セルロース繊維の製造方法の前記酸化工程で得られる酸化セルロース繊維の銅エチレンジアミン溶液を用いた粘度法による重合度は、650以上であるが、700以上が好ましく、800以上がより好ましい。
<乾燥工程>
前記乾燥工程は、前記分散工程により得られた微細セルロース繊維分散体を乾燥させて微細セルロース繊維を得る工程である。
前記微細セルロース繊維分散体を乾燥させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オーブン乾燥機を用いた乾燥方法、凍結乾燥法、噴霧乾燥法などが挙げられる。
前記乾燥の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、105℃で3時間などが挙げられる。
前記105℃、3時間の乾燥条件は、一般にセルロース繊維の絶乾条件とされている。
<その他の工程>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蒸解工程、洗浄工程などが挙げられる。
前記蒸解工程及び前記洗浄工程は、上述の酸化セルロース繊維の製造方法におけるその他の工程に記載の方法と同様の方法で行うことができる。
−微細セルロース繊維−
前記微細セルロース繊維の幅及び長さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、幅が2nm〜5nm程度、長さが0.2μm〜5μm程度のセルロースシングルミクロフィブリルであることが好ましい。
前記微細セルロース繊維の含水量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、運搬に係る費用を低減することができる点で、含水量が低いほど好ましく、絶乾の微細セルロース繊維がより好ましい。
前記微細セルロース繊維は、シート状、フィルム状、発泡体状、エアロゲル状等の材料の製造、酸素防止膜、汎用プラスチックの補強材、医療用材、細胞培養基材、触媒担体、吸着剤、分離材などの様々な分野に好適に用いることができる。特に、前記微細セルロース繊維を用いて製造したキャストフィルムは強度に優れる点で有利である。
(微細セルロース繊維成形体及びその製造方法)
本発明は、上述した本発明の微細セルロース繊維分散体の製造方法により製造された微細セルロース繊維分散体を利用した微細セルロース繊維成形体及びその製造方法も含む。
前記微細セルロース繊維成形体の製造方法は、成形工程を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
前記微細セルロース繊維成形体は、前記微細セルロース繊維成形体の製造方法により得られるものである。
以下、前記微細セルロース繊維成形体の製造方法と併せて、前記微細セルロース繊維成形体について説明する。
<成形工程>
前記成形工程は、上述した本発明の微細セルロース繊維分散体の製造方法により製造された微細セルロース繊維分散体を所定形状に保持しつつ液体成分を除去する工程である。
前記微細セルロース繊維分散体を所定形状に保持しつつ液体成分を除去する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラス板などの基板上に、前記微細セルロース繊維分散体を流延塗布した後、自然乾燥、送風乾燥、真空乾燥などの乾燥法により、前記微細セルロース繊維分散体中の液体成分を除去し、膜を形成する方法などが挙げられる。
前記膜を基板から剥がすことにより、微細セルロース繊維成形体を得ることができる。
また、前記微細セルロース繊維分散体を所定形状に保持しつつ液体成分を除去する方法は、成形物上に前記微細セルロース繊維分散体を用いて、微細セルロース繊維層を形成し、微細セルロース繊維成形体とする方法であってもよい。
前記成形物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、所望の形状及び大きさを有するフィルム、シート、織布、不織布などの箔状物、所望の形状及び大きさの箱、ボトルなどの立体容器などが挙げられる。
前記成形物の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、紙、板紙、プラスチック、金属、これらの複合体などが挙げられる。
前記成形物の構造としては、一層であってもよいし、多層であってもよい。
前記成形物上に前記微細セルロース繊維分散体を付与する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塗布法、噴霧法、浸漬法などが挙げられる。
また、膜状に形成した微細セルロース繊維成形体を、前記成形物の表面に貼り合わせてもよい。前記貼り合わせる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、接着剤を用いる方法、熱融着法などが挙げられる。
<その他の工程>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
(微細セルロース繊維複合体及びその製造方法)
本発明は、上述した本発明の微細セルロース繊維分散体の製造方法により製造された微細セルロース繊維分散体を利用した微細セルロース繊維複合体及びその製造方法も含む。
前記微細セルロース繊維複合体の製造方法は、分散液調製工程を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
前記微細セルロース繊維複合体は、前記微細セルロース繊維複合体の製造方法により得られるものである。
以下、前記微細セルロース繊維複合体の製造方法と併せて、前記微細セルロース繊維複合体について説明する。
<分散液調製工程>
前記分散液調製工程は、上述した本発明の微細セルロース繊維分散体の製造方法により製造された微細セルロース繊維分散体と、複合体の材料を含む液体材料とを混合して分散液を調製する工程である。
−複合体の材料を含む液体材料−
前記複合体の材料を含む液体材料は、複合体の材料、及び溶媒を少なくとも含み、必要に応じて、更にその他の成分を含有する。
−−複合体の材料−−
前記複合体の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルアルコール、ナイロン(登録商標)、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル等の合成高分子などが挙げられる。
−−溶媒−−
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機溶媒などが挙げられる。
前記合成高分子は、前記有機溶媒に溶解させて紡糸(溶液紡糸)したり、フィルムに成形したりすることができる。
したがって、前記微細セルロース繊維分散体と、前記合成高分子を含む液体材料とを混合した分散液を用いることで、前記微細セルロース繊維複合体である繊維状成形物やフィルム状成形物を得ることができる。
また、有機溶媒中で、モノマーと、前記微細セルロース繊維分散体とを混合させ、前記モノマーを重合させて高分子を合成することにより、微細セルロース繊維と、合成高分子との複合体を形成することもできる。
<その他の工程>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
以下に実施例等を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例等に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
<蒸解工程>
スギを原料とする木材チップを篩い分け器(ジャイロシフター、株式会社徳寿工作所製)で篩い分けし、サイズが9.5mm〜25.4mmのもの(直径9.5mmの円形の穴は通過せず、25.4mmの穴を通過したもの)を試料とした。回転型オートクレーブに前記木材チップを絶乾質量で200g入れ、この木材チップに水酸化ナトリウムを含む蒸解薬液を加え、2℃/分間で蒸解最高温度170℃まで上昇させた後、90分間保持し、Hファクター(Hf)が1,500で蒸解を行い、未漂白パルプを含む溶液を得た。
前記蒸解薬液は、活性アルカリ添加率(AA)30質量%、前記木材チップに対する前記蒸解薬液の液比は3L/kgとした。また、蒸解助剤として、1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセンジナトリウム(商品名:SAQ(登録商標)、川崎化成工業株式会社製)を前記木材チップに対して0.1質量%となるように前記蒸解薬液に添加した。
ここで、前記活性アルカリ添加率は、前記木材チップに対する水酸化ナトリウムの添加率に0.775を乗じて酸化ナトリウムの添加率に換算した値を表す。
<脱水工程>
蒸解後の未乾燥パルプを含む液をステンレス製のワイヤー(33cm×33cm、300メッシュ、東京スクリーン株式会社製)上に流し入れ、ワイヤー下からしずくが出なくなるまで、減圧することなく常圧下で前記パルプを手で加圧して脱水し、未乾燥パルプを得た。
−未乾燥パルプの特性−
未乾燥パルプの特性として、含水率、構成糖、及びセルロース/ヘミセルロース比率を以下に示す方法で分析した。
−−含水率−−
未乾燥パルプ5g(以下、「未乾燥パルプの乾燥前質量」と称することがある)を、恒温乾燥機(東京理化機械株式会社(EYELA)製)を用いて105℃にて、3時間乾燥させ、乾燥後の質量(以下、「未乾燥パルプの乾燥後質量」と称することがある)を測定し、下記計算式3により、脱水した未乾燥パルプの含水率を算出したところ、82.7質量%であった。
含水率(質量%)=(未乾燥パルプの乾燥前質量−未乾燥パルプの乾燥後質量)/未乾燥パルプの乾燥前質量×100 ・・・計算式3
−−構成糖−−
未乾燥パルプの糖構成は、該未乾燥パルプの酸加水分解物を高速液体クロマトグラフ(HPLC)システムによって分析して定量した。
具体的には、未乾燥パルプ約50mgに0.5mLの72体積%硫酸を加え、30℃にて2時間放置して溶解後、水を加えて3体積%硫酸となるように希釈し、120℃にて1時間オートクレーブ中で酸加水分解した。得られた酸加水分解液に、定量用の内部標準物質として20mg/mLのミヨイノシトール水溶液を0.5mL添加した。前記内部標準物質を添加した酸加水分解液に1.7gの水酸化バリウムを加えた後、溶液のpHが5.5から6.5になるように炭酸バリウムを加えて中和し、沈殿した硫酸バリウム及び過剰添加した前記炭酸バリウムを遠心分離して、前記酸加水分解液中に残存する硫酸成分を除去した。得られた上澄み液を濾過した後、凍結乾燥し、酸加水分解物を得た。この加水分解物に蒸留水0.5mL及びアセトニトリル0.5mLを加え、下記条件にてHPLC分析を行った。あらかじめ各単糖(グルコース、マンノース、アラビノース、及びキシロース)の検量線を作成して定量した。
[HPLC条件]
・分析機器:Prominenceシステム(株式会社島津製作所製)
(オートサンプラ:SIL−20AC、送液ユニット:LC−20AD、脱気ユニット:DGU−20A5、カラムオーブン:CTO−20A)
・分析カラム:NH2P−50 4E(昭光サイエンティフィック株式会社製)
・溶離液:250mMのリン酸を含む75体積%アセトニトリル/水混合液
・測定温度:50℃
・流速:1.0mL/分間
・注入量:20μL
・屈折率検出器:Optilab T−rEX(Wyatt社製)
その結果、未乾燥パルプの糖構成は、グルコース78質量%、マンノース5質量%、アラビノース0質量%、キシロース5質量%、その他(リグニンや酸性糖などを含む未同定成分)12質量%であった。
−−セルロース/ヘミセルロース比率−−
未乾燥パルプのセルロース/ヘミセルロース比率は、上記定量した各糖量に基づき算出した。
ヘミセルロースの一種であるグルコマンナンにおけるグルコースとマンノースとの比率(質量比)は、約1:3(グルコース:マンノース)である。未乾燥パルプにおいて、マンノースは5質量%であったことから、未乾燥パルプにおけるグルコース78質量%のうち、5/3質量%(即ち、約2質量%)は、セルロース由来ではなく、ヘミセルロース成分であるグルコマンナンに由来する。これより、セルロース由来のグルコース量は、下記計算式で算出される。
未乾燥パルプにおけるグルコース総量(78質量%)−グルコマンナン由来のグルコース量(2質量%)=セルロース由来のグルコース量(76質量%)
また、ヘミセルロース由来の中性糖の量は、下記計算式で算出される。
マンノース量(5質量%)+キシロース量(5質量%)+グルコマンナン由来のグルコース量(2質量%)=ヘミセルロース由来の中性糖の量(12質量%)
したがって、未同定の「その他成分」を除いたセルロース量及びヘミセルロース量が下記計算式で算出され、セルロース/ヘミセルロース比率は、86/14(質量比)であった。
{セルロース由来のグルコース量(76質量%)/(セルロース由来のグルコース量(76質量%)+ヘミセルロース由来の中性糖の量(12質量%))×100}=セルロース量(86質量%)
100質量%−セルロース量(86質量%)=ヘミセルロース量(14質量%)
<酸化工程>
前記脱水工程で得られた未乾燥パルプ(絶乾質量で5g相当分)を、0.08gのTEMPO及び0.5gの臭化ナトリウムを含む水溶液500mLに分散させた後、1.8Mの次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、絶乾質量で1gの未乾燥パルプに対して次亜塩素酸ナトリウムの量が5mmolとなるように加えて反応を開始した。反応中は、0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10に保ち、室温(20℃〜25℃)で撹拌しながら反応を行った。反応開始から約2時間でpHに変化が見られなくなったため、反応終了とみなした。
<洗浄工程>
前記酸化工程で得られた反応物をガラスフィルターにてろ過した後、十分な量の水による水洗、ろ過を5回繰り返して精製し、酸化セルロース繊維を得た。収率は、約90質量%であった。
−−構成糖−−
前記酸化セルロース繊維の糖構成を、前記未乾燥パルプの糖構成の分析と同様の方法で分析したところ、グルコース63質量%、マンノース2質量%、アラビノース0質量%、キシロース5質量%、その他(リグニンや酸性糖などを含む未同定成分)30質量%であった。
(実施例2)
前記実施例1において、酸化工程を以下のように変えたこと以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2の酸化セルロース繊維を得た。なお、洗浄工程後の酸化セルロース繊維の収率は、約90質量%であった。
<酸化工程>
前記脱水工程で得られた未乾燥パルプ(絶乾質量で5g相当分)を、0.08gのTEMPO及び0.5gの臭化ナトリウムを含む水溶液500mLに分散させた後、1.8Mの次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、絶乾質量で1gの未乾燥パルプに対して次亜塩素酸ナトリウムの量が10mmolとなるように加えて反応を開始した。反応中は、0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10に保ち、室温(20℃〜25℃)で撹拌しながら反応を行った。反応開始から約4時間でpHに変化が見られなくなったため、反応終了とみなした。
−−構成糖−−
前記酸化セルロース繊維の糖構成を、前記未乾燥パルプの糖構成の分析と同様の方法で分析したところ、グルコース55質量%、マンノース1質量%、アラビノース0.3質量%、キシロース3.7質量%、その他(リグニンや酸性糖などを含む未同定成分)40質量%であった。
(比較例1)
前記実施例1において、脱水工程を以下のように変えたこと以外は、実施例1と同様の方法で、比較例1の微細セルロース繊維分散体を得た。なお、洗浄工程後の酸化セルロース繊維の収率は、約90質量%であった。
<脱水工程>
前記蒸解後の未乾燥パルプを含む液をブフナー漏斗上に流し入れ、含水率が約80%になるまで、前記未乾燥パルプをアスピレーターを用いて減圧条件下で真空脱水し、未乾燥パルプを得た。
(比較例2)
前記実施例2において、脱水工程を以下のように変えたこと以外は、実施例2と同様の方法で、比較例2の微細セルロース繊維分散体を得た。なお、洗浄工程後の酸化セルロース繊維の収率は、約90質量%であった。
<脱水工程>
前記蒸解後の未乾燥パルプを含む液をブフナー漏斗上に流し入れ、含水率が約80%になるまで、前記未乾燥パルプをアスピレーターを用いて減圧条件下で真空脱水し、未乾燥パルプを得た。
(参考例1)
参考例1では、前記実施例1の脱水工程で得られた未乾燥パルプを用いて、以下の方法で酸加水分解処理を行い、酸加水分解したセルロース(以下、「酸加水分解セルロース」と称することがある)を得た。
<酸加水分解処理>
前記実施例1の脱水工程で得られた未乾燥パルプ(絶乾質量で0.1g相当分)を、1Mの希硫酸水溶液500mLに分散させた後、105℃にて4時間、酸加熱加水分解を行った。得られた反応物をガラスフィルターにてろ過した後、十分な量の水による水洗、ろ過を5回繰り返して精製し、酸加水分解セルロースを得た。収率は、約95質量%であった。
(試験例1)
<粘度平均重合度の測定>
実施例1の脱水工程で得られた未乾燥パルプ、実施例1、実施例2、比較例1、及び比較例2の酸化工程で得られた酸化セルロース繊維、並びに、参考例1で得られた酸加水分解セルロースの粘度平均重合度を以下の方法で測定した。
0.5Mの銅エチレンジアミン溶液を調整し、これを「溶液1」とした。また、実施例1の脱水工程で得られた未乾燥パルプを絶乾重量で0.04g、実施例1、実施例2、比較例1、又は比較例2の酸化工程で得られた酸化セルロース繊維を絶乾重量で0.04g、又は参考例1で得られた酸加水分解セルロースを絶乾重量で0.04g用い、それぞれ純水10mLを加えて膨潤させた後、1Mの銅エチレンジアミン溶液を10mL加え(銅エチレンジアミン溶液の終濃度0.5M)、時々振とうさせながら試料を溶解させた。この各試料を溶解させた溶解液を「溶液2」とした。前記溶液1及び前記溶液2の粘度を、キャピラリー粘度計(キャノン−フェンスケ粘度計)を用いてそれぞれ測定した。前記溶液1の粘度をη、前記溶液2の粘度をηとし、以下の計算式1により前記未乾燥パルプ、前記酸化セルロース繊維、又は前記酸加水分解セルロースの溶解液の固有粘度[η]を求めた。
固有粘度[η]=(η/η)/{c(1+A×η/η)} ・・・計算式1
前記計算式1において、「c」は、前記溶解液中の前記未乾燥パルプ又は前記酸化セルロース繊維の濃度(g/dL)を示し、「A」は、溶液1の種類による固有の値を示す。0.5Mの銅エチレンジアミン溶液の場合、「A」は0.28である。
次に、以下の計算式2(Mark−Houwink−Sakurada式)により、粘度平均重合度DPを求めた。
固有粘度[η]=K×DP ・・・計算式2
前記計算式2において、「K」及び「a」は、高分子の種類による固有の値を示す。セルロースの場合、「K」は0.57×10−3、「a」は1である。
結果を下記表1及び図2に示す。
(実施例3)
実施例1の洗浄工程後の酸化セルロース繊維を以下の方法でナノ分散化して実施例3の微細セルロース繊維分散体を得た。
<分散工程>
実施例1の洗浄工程後の酸化セルロース繊維(絶乾質量で0.04g相当分)に、40mLの水を加えた分散液を調製し、50mL容のポリプロピレン製遠沈管(Corning(登録商標)製)に入れ、超音波ホモジナイザー(US−300T、プローブチップ7mm、出力300W、19.5kHz、株式会社日本精機製)で8分間解繊処理を行い、実施例3の微細セルロース繊維分散体を得た。なお、前記超音波処理では、前記分散液の温度上昇を避けるために、2分間超音波処理して、1分間放置冷却するというサイクルを繰り返し、合計の超音波処理時間が8分間となるように行った。前記酸化セルロース繊維がナノ分散化した微細セルロース繊維分散体は、透明で高粘度のゲル状であった。
(実施例4)
実施例3において、実施例1の洗浄工程後の酸化セルロース繊維を、実施例2の洗浄工程後の酸化セルロース繊維に変えたこと以外は、実施例3と同様の方法で酸化セルロース繊維ナノ分散化して実施例4の微細セルロース繊維分散体を得た。
(試験例2)
<光透過度の測定>
実施例3及び実施例4の分散工程で得られた微細セルロース繊維分散体の光透過度を、紫外可視近赤外分光光度計(V−670、日本分光株式会社製)を用いて測定した。なお、光透過度測定の際の微細セルロース繊維分散体は、完全ナノ分散化して未解繊物が存在しないこともあるが、未解繊物があったとしても除去しないままの分散体(分散液)を使用した。
結果を図3に示す。実施例3及び実施例4の0.1質量%(固形分濃度)における微細セルロース繊維分散体の波長600nmにおける光透過度は、いずれも99%であった。
また、実施例3の微細セルロース繊維分散体を透過型顕微鏡で観察した写真を図4に示す。図4において、スケールバーは200nmである。実施例3の微細セルロース繊維分散体は、幅約3nmに完全にナノ分散化されていた。また、写真は示さないが、実施例4の微細セルロース繊維分散体についても同様に透過型顕微鏡で観察したところ、完全にナノ分散化されていた。
実施例1、実施例2、比較例1、及び比較例2の結果より、セルロース系原料を含む溶液を加圧することにより脱水して得た未乾燥パルプをTEMPO酸化処理して得た酸化セルロース繊維は、従来製造工場等で行われていた真空減圧により脱水した未乾燥パルプをTEMPO酸化処理して得た酸化セルロース繊維と比較して、粘度平均重合度が大幅に増加することがわかった。
したがって、市場で製造販売されている未乾燥パルプは、含水率が80%〜90%程度(乾燥パルプ固形分濃度が約10%〜約20%)であるものの、木材からセルロースを単離するために一般的なパルプ化処理後に真空減圧して脱水することでその含水率を制御しており、未乾燥パルプの一部は相当程度乾燥してしまっていると考えられる。そのため、前記未乾燥パルプは、乾燥パルプと同様に、セルロースミクロフィブリルに結晶領域が生成しているものと推察される。
また、参考例1の結果より、セルロース系原料を含む溶液を加圧することにより脱水して得た未乾燥パルプを酸加水分解処理した場合は、LODPに対応する重合度まで低下したことから、本発明における脱水工程で得られた未乾燥パルプ中には、既にセルロースミクロフィブリルの長さ方向に周期的な非結晶領域が生成してしまっていると考えられる。しかしながら、TEMPO酸化処理して得た酸化セルロース繊維は、LODPに対応する重合度まで低下しなかったことから、前記脱水工程で得られた未乾燥パルプ中の非結晶構造は、Hのような極めて小さいイオン分子しか入り込めないような非結晶領域であり、TEMPOのような大きな分子は入り込めないような非晶領域構造となっているものと推察される。
これらの結果より、本発明における脱水工程により、セルロースミクロフィブリル非結晶領域における結晶の乱れを縮小できるものと考えられる。
本発明の態様としては、例えば、以下のものなどが挙げられる。
<1> セルロース系原料を含む溶液を加圧することにより脱水して未乾燥パルプを得る脱水工程と、
2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル及び共酸化剤を含む反応液中で前記未乾燥パルプを酸化して酸化セルロース繊維を得る酸化工程とを含み、
前記酸化セルロース繊維の銅エチレンジアミン溶液を用いた粘度法による重合度が650以上であることを特徴とする酸化セルロース繊維の製造方法である。
<2> セルロース系原料を含む溶液を加圧することにより脱水して未乾燥パルプを得る脱水工程と、
2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル及び共酸化剤を含む反応液中で前記未乾燥パルプを酸化して酸化セルロース繊維を得る酸化工程と、
前記酸化セルロース繊維を溶媒に分散して微細セルロース繊維分散体を得る分散工程とを含み、
前記酸化セルロース繊維の銅エチレンジアミン溶液を用いた粘度法による重合度が650以上であることを特徴とする微細セルロース繊維分散体の製造方法である。
<3> セルロース系原料を含む溶液を加圧することにより脱水して未乾燥パルプを得る脱水工程と、
2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル及び共酸化剤を含む反応液中で前記未乾燥パルプを酸化して酸化セルロース繊維を得る酸化工程と、
前記酸化セルロース繊維を溶媒に分散して微細セルロース繊維分散体を得る分散工程と、
前記微細セルロース繊維分散体を乾燥させて微細セルロース繊維を得る乾燥工程とを含み、
前記酸化セルロース繊維の銅エチレンジアミン溶液を用いた粘度法による重合度が650以上であることを特徴とする微細セルロース繊維の製造方法である。
<4> セルロース系原料を含む溶液を加圧することにより脱水して未乾燥パルプを得る脱水工程と、
2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル及び共酸化剤を含む反応液中で前記未乾燥パルプを酸化して酸化セルロース繊維を得る酸化工程と、
前記酸化セルロース繊維を溶媒に分散して微細セルロース繊維分散体を得る分散工程と、
前記微細セルロース繊維分散体を所定形状に保持しつつ該微細セルロース繊維分散体中の液体成分を除去する成形工程と、を含み、
前記酸化セルロース繊維の銅エチレンジアミン溶液を用いた粘度法による重合度が650以上であることを特徴とする微細セルロース繊維成形体の製造方法である。
<5> セルロース系原料を含む溶液を加圧することにより脱水して未乾燥パルプを得る脱水工程と、
2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル及び共酸化剤を含む反応液中で前記未乾燥パルプを酸化して酸化セルロース繊維を得る酸化工程と、
前記酸化セルロース繊維を溶媒に分散して微細セルロース繊維分散体を得る分散工程と、
前記微細セルロース繊維分散体と、複合体の材料を含む液体材料とを混合して分散液を調製する分散液調製工程と、を含み、
前記酸化セルロース繊維の銅エチレンジアミン溶液を用いた粘度法による重合度が650以上であることを特徴とする微細セルロース繊維複合体の製造方法である。
<6> 前記<1>に記載の方法で製造される酸化セルロース繊維であって、銅エチレンジアミン溶液を用いた粘度法による重合度が650以上であることを特徴とする酸化セルロース繊維である。

Claims (3)

  1. セルロース系原料を含む溶液を加圧することにより脱水して未乾燥パルプを得る脱水工程と、
    2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル及び共酸化剤を含む反応液中で前記未乾燥パルプを酸化して酸化セルロース繊維を得る酸化工程とを含み、
    前記酸化セルロース繊維の銅エチレンジアミン溶液を用いた粘度法による粘度平均重合度が650以上であることを特徴とする酸化セルロース繊維の製造方法。
  2. セルロース系原料を含む溶液を加圧することにより脱水して未乾燥パルプを得る脱水工程と、
    2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル及び共酸化剤を含む反応液中で前記未乾燥パルプを酸化して酸化セルロース繊維を得る酸化工程と、
    前記酸化セルロース繊維を溶媒に分散して微細セルロース繊維分散体を得る分散工程とを含み、
    前記酸化セルロース繊維の銅エチレンジアミン溶液を用いた粘度法による粘度平均重合度が650以上であることを特徴とする微細セルロース繊維分散体の製造方法。
  3. セルロース系原料を含む溶液を加圧することにより脱水して未乾燥パルプを得る脱水工程と、
    2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル及び共酸化剤を含む反応液中で前記未乾燥パルプを酸化して酸化セルロース繊維を得る酸化工程と、
    前記酸化セルロース繊維を溶媒に分散して微細セルロース繊維分散体を得る分散工程と、
    前記微細セルロース繊維分散体を乾燥させて微細セルロース繊維を得る乾燥工程とを含み、
    前記酸化セルロース繊維の銅エチレンジアミン溶液を用いた粘度法による粘度平均重合度が650以上であることを特徴とする微細セルロース繊維の製造方法。
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