JP6714808B2 - 偏光膜用フィルムおよびそれを用いた偏光膜ならびにその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、液晶表示装置等に用いられる繊維−樹脂の複合材料からなる偏光膜用フィルムおよびそれを用いた偏光膜に関するものであり、特に、ナノサイズのセルロース繊維を含有する、薄膜化しても強度に優れ、かつ透明性に優れたポリビニルアルコール系樹脂製の偏光膜用フィルムおよびそれを用いた偏光膜に関するものである。
偏光板は、液晶表示装置における偏光の供給素子として、また偏光の検出素子として、広く用いられている。かかる偏光板は、従来より、ポリビニルアルコール(以下、「PVA」と略記する場合がある。)系樹脂からなる偏光膜にトリアセチルセルロースからなる保護フィルムを接着したものが使用されているが、近年、液晶表示装置のノート型パーソナルコンピュータや携帯電話などモバイル機器への展開、さらには大型テレビへの展開などに伴い、薄肉軽量化が求められている。
偏光板は、通常、偏光膜を2枚の保護フィルムで挟む構成を採っているが、偏光板の薄肉化のために、保護フィルムを2枚から1枚に減らしたり(特許文献1)、あるいは保護フィルムの厚みを薄くしたりする方法が提案されてきた。そして、偏光板の更なる薄肉化の要求に対応するためには、保護フィルムの厚みのみではなく、偏光膜の厚みもより薄くすることが必要となっている。
例えば、特許文献2には、非晶性エステル系熱可塑性樹脂基材にPVA系樹脂を塗布し、延伸することにより10μm以下の厚みに製造する偏光膜に関する方法が提案されている。この方法では、厚みが10μm以下のPVA系樹脂製単層体を延伸すると、破断を生じることなく厚みを均一に製造することができないと記載されており、非晶性エステル系熱可塑性樹脂基材にPVA系樹脂を薄く塗布して延伸する方法が提案されている。ここで、基材として結晶性の熱可塑性樹脂は、延伸工程で結晶化し延伸不能になるため使用することができず、また、非結晶のポリエチレンテレフタレート樹脂(アモルファスPET)であっても120℃周辺で結晶化速度が急上昇し130℃で延伸不能となるため、結晶化を阻害するユニットをわざわざ共重合させた非晶性のポリエチレンテレフタレート樹脂を用いることにより5.5倍以上の延伸ができることが示されている。
すなわち、通常の単層体のPVA系樹脂フィルムは、50μm程度であれば7倍ほども延伸することができるが、10μm以下に厚みが薄くなると高延伸倍率ではフィルムの強度が足りずに破断が起こる。これを解消するために特許文献2では、特殊な熱可塑性樹脂基材にPVA系樹脂を塗布して、特殊な条件下で延伸を行うことにより高倍率の延伸倍率を得ることが提案されている。しかし、特許文献2には、PVA系樹脂の配向性向上に関わるほどの高い延伸倍率および延伸温度は熱可塑性樹脂基材によって大きく制約を受けると記述されており、熱可塑性樹脂基材の選択が重要であり、自由な延伸倍率を設計することが困難であった。また、空中での加熱延伸だけでは充分な倍率まで延伸することが難しく、空中加熱延伸後にホウ酸水中での2段階延伸が提案されている。この組み合わせは、一段目の延伸倍率や延伸温度、二段階目の延伸倍率、さらに基材に用いる樹脂の種類により制約を受け、非常に特殊な領域での加工時において特定の性能を発現するものであり、従来の偏光膜製造条件と大きく異なるという問題点があった。
一方、厚みの薄いPVA系樹脂フィルムを高延伸倍率で延伸して、均一な薄膜延伸フィルムを得るために、延伸時の破断を防止する目的で繊維状のフィラーで補強することが考えられる。従来より、ナノサイズのセルロース繊維を用いることにより、樹脂が補強されることは知られている。例えば、特許文献3では、ナノサイズのセルロース繊維を非晶性のポリ乳酸樹脂と混合分散してシート状に加工する技術が提案されており、弾性率と破断強度の向上が認められている。
また、特許文献4では、高圧ホモジナイザーを用いてナノサイズにしたセルロース繊維から不織布を製造し、表面をアセチル化処理した後、この不織布に光硬化性樹脂モノマーを含浸させて紫外線(UV)硬化することにより、透明で線膨張係数が小さく、弾性率の高いシートが得られることが提案されている。さらに、特許文献5には、TEMPO(2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン−1−オキシル)によりセルロース表面を酸化処理した後、回転刃式ミキサーでナノサイズにしたセルロース繊維をPVA系樹脂水溶液に添加し、キャスト製膜して厚み75μmのフィルムを製造することが提案されており、水中での形状保持性が向上することが記述されている。また、特許文献6には、表面にカチオン基を有するナノサイズのセルロース繊維とPVA系樹脂の複合フィルムに関して、透明で線膨張係数が小さい複合フィルムが提案されている。さらに、特許文献7では、カルボキシル基もしくはリン酸基で修飾されたナノサイズのセルロース繊維とゴムの複合化が提案されており、引張破断強度が向上することが記述されている。
特開2009−181042号 特開2014−059328号 特開2008−24795号 特開2009−167397号 特開2012−82395号 特開2013―227536号 特開2014−105233号
しかしながら、特許文献3においては、破断強度と弾性率は向上しているものの、破断伸度は低下し、数%延伸したところで破断が生じることとなる。また、特許文献4では延伸そのものの記述がなく、複合フィルムの厚みも44μm以上ある。特許文献5では、水中での寸法安定性に関しての記述はあるものの、高延伸に関しては記述がない。また、特許文献6、7においても表面変性したナノサイズのセルロース繊維と高分子化合物の複合体に関して、高延伸が可能であるとの記載はない。
そこで、本発明ではこのような背景下において、特殊な延伸方法を用いることなく高い延伸倍率で延伸することができるPVA系樹脂フィルムからなる偏光膜用フィルム、および、この偏光膜用フィルムを用いて得られる、非常に薄い膜厚であり、かつ高い偏光性能を示す偏光膜を提供することを目的とするものである。
しかるに、本発明者らはかかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、特定サイズ(特定の数平均繊維径)のセルロース繊維が分散されたPVA系樹脂フィルムを用いて染色,延伸してなる偏光膜が、透明性に優れ、高延伸倍率に延伸することが可能となり、薄膜とした際の偏光特性にも優れることを見出し、本発明を完成した。
<本発明の要旨>
すなわち、本発明は、数平均繊維径が2〜200nmのセルロース繊維を分散したPVA系樹脂からなる偏光膜用フィルムを第1の要旨とする。
また、本発明は、上記第1の要旨の偏光膜用フィルムを、染色,延伸してなる偏光膜を第2の要旨とする。
本発明は、数平均繊維径が2〜200nmのセルロース繊維を分散したPVA系樹脂からなる偏光膜用フィルムであり、この偏光膜用フィルムを染色,延伸してなる偏光膜である。このため、上記偏光膜は、透明性に優れ、また強度的にも優れていることから、薄膜化が可能となり、薄膜とした際の偏光特性にも優れるため表示デバイス用の偏光板の材料に適したものである。また、幅広長尺なロール状のフィルム用の材料としても適したものである。
<偏光膜用フィルム>
本発明の偏光膜用フィルムは、数平均繊維径が2〜200nmのセルロース繊維を分散したPVA系樹脂を用いて得られる。
[PVA系樹脂]
本発明の偏光膜用フィルムの形成材料において、マトリックス成分となるPVA系樹脂について説明する。
本発明で用いられるPVA系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合したポリ酢酸ビニルをケン化して得られる樹脂が好適に用いられるが、本発明の効果を阻害しない範囲で、酢酸ビニルと少量の酢酸ビニルと共重合可能な成分との共重合体をケン化して得られる樹脂を用いることもできる。酢酸ビニルと共重合可能な成分としては、例えば不飽和カルボン酸やその塩、エステル、アミド、またはニトリル等があげられる。さらには、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテン等の炭素数2〜30のオレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸塩等があげられる。
PVA系樹脂の重量平均分子量は10万〜30万であることが好ましく、特に好ましくは11万〜28万である。
かかる重量平均分子量が少なすぎるとPVA系樹脂を光学フィルムとする場合に充分な光学性能が得られにくい傾向があり、多すぎるとPVA系樹脂フィルムを偏光フィルムとする場合に延伸が困難となり、工業的な生産が難しく好ましくない。
なお、本発明におけるPVA系樹脂の重量平均分子量は、GPC−MALS法により測定される重量平均分子量である。
PVA系樹脂のケン化度は、97〜100モル%であることが好ましく、特に好ましくは98〜100モル%、更に好ましくは99〜100モル%である。かかるケン化度が低すぎるとPVA系樹脂を光学フィルムとする場合に充分な光学性能が得られにくい傾向がある。
上記PVA系樹脂は、PVA系樹脂水溶液として調製し、フィルム形成材料に供される。なお、PVA系樹脂では、フィルム製造に際して、通常、可塑剤や、ノニオン性、アニオン性またはカチオン性の界面活性剤等の配合剤が適宜配合される。
上記可塑剤は、一般的に、偏光膜を製造する際の延伸性に寄与するものであり、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン等のグリセリン類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルキレングリコール類またはポリアルキレングリコール類や、トリメチロールプロパン等があげられる。これらは単独でまたは二種以上組み合わせて使用することができる。
上記可塑剤の含有量は、通常、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して1〜35重量部であり、好ましくは3〜30重量部である。
上記界面活性剤の含有量は、通常、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して0.01〜1重量部であり、好ましくは0.02〜0.5重量部である。
[セルロース繊維]
つぎに、PVA系樹脂に分散してなるセルロース繊維について説明する。
<セルロース繊維原料>
本発明において、特定の数平均繊維径であるセルロース繊維の原料(セルロース繊維原料)となるものは、下記に示すようなセルロース含有物から一般的な精製工程を経て不純物を除去したものである。
(セルロース含有物)
上記セルロース含有物としては、例えば、針葉樹や広葉樹等の木質(木粉等)、コットンリンターやコットンリント等のコットン、さとうきびや砂糖大根等の絞りかす、亜麻、ラミー、ジュート、ケナフ等の靭皮繊維、サイザル、パイナップル等の葉脈繊維、アバカ、バナナ等の葉柄繊維、ココナツヤシ等の果実繊維、竹等の茎幹繊維等の植物由来原料、バクテリアが産生するバクテリアセルロース、バロニアやシオグサ等の海草やホヤの被嚢等の天然セルロースがあげられる。これらの天然セルロースは、結晶性が高いので低線膨張率、高弾性率になり好ましい。特に、植物由来原料から得られるセルロース含有物が好ましい。
上記植物由来原料から得られるセルロース含有物では、針葉樹や広葉樹等の木質は微細な繊維が得られ、かつ地球上で最大量の生物資源であり、年間約700億トン以上ともいわれる量が生産されている持続性資源であることから、地球温暖化に影響する二酸化炭素削減への寄与も大きく、経済的な点からも優位である。
(セルロース含有物の精製)
セルロース含有物の精製方法は、例えば、セルロース含有物をベンゼン−エタノール混合液や炭酸ナトリウム水溶液で脱脂した後、亜塩素酸塩で脱リグニン処理を行い(ワイズ法)、アルカリ化合物で脱ヘミセルロース処理することにより行なわれる。また、上記ワイズ法の他に、過酢酸を用いる方法(Pa法)、過酢酸過硫酸混合物を用いる方法(Pxa法)等もセルロース含有物の精製方法として利用される。また、上記方法に続いて、適宜、さらに漂白処理等が行なわれる。
セルロース含有物の精製処理には、分散媒として一般的に水が用いられるが、酸または塩基、その他の処理剤の水溶液であってもよく、このような水溶液を用いる場合には、最終的に水で洗浄処理してもよい。
また、上記セルロース繊維原料は、一般的な化学パルプの製造方法、例えば、クラフトパルプ、サリファイドパルプ、アルカリパルプ、硝酸パルプの製造方法によって得られるものであってもよい。
すなわち、セルロース繊維原料としては、広葉樹クラフトパルプ、針葉樹クラフトパルプ、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ、広葉樹漂白クラフトパルプ、針葉樹漂白クラフトパルプ、リンターパルプ等のパルプを用いてもよい。
また、セルロース繊維原料としては砕木パルプ、例えば、SGW(Stone Groundwood)、あるいは亜硫酸ソーダ等により軽度に化学処理した後、砕木化するCGP(Chemical Groundwood Pulp)等も使用可能であり、針葉樹、広葉樹の砕木パルプが好ましく使用される。
なお、セルロース含有物を木材チップや木粉等の状態に破砕してもよく、この破砕は、セルロース含有物の精製処理前、精製処理の途中、精製処理後、いずれのタイミングで行なってもかまわない。
セルロース含有物を精製して得られるセルロース繊維原料の精製度合いは特に定めないが、油脂、リグニンが少なく、セルロース成分の含有率が高い方がセルロース繊維原料の着色が少なく好ましい。セルロース繊維原料のセルロース成分の含有率は好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上である。
また、セルロース繊維原料のセルロース成分は、結晶性のα−セルロース成分と非結晶性のヘミセルロース成分に分類できる。結晶性のα−セルロース含有率が多い方が、樹脂組成物(フィルム形成材料)とした際に、低線膨張係数、高弾性率、高強度の効果が得られやすいため好ましい。セルロース繊維原料のα−セルロース含有率は好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは75重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。
<セルロース繊維の繊維径>
本発明にて用いられるセルロース繊維の数平均繊維径は、2〜200nmであるが、好ましくは100nm以下、より好ましくは20nm以下、さらに好ましくは10nm以下、特に好ましくは8nm以下である。また、上記セルロース繊維の数平均繊維径は、小さい程好ましいが、高い補強効果を発現するためには、セルロースの結晶性を維持することが重要であることから、2nm以上である必要がある。セルロース繊維の平均繊維径が上記の下限値未満の場合は、セルロースのI型結晶構造が維持できない場合があり、繊維自体の強度や弾性率が低下し、補強効果が得られ難い傾向がある。また、セルロース繊維の数平均繊維径が上記上限値を超える場合はPVA系樹脂との接触面積が小さくなるため、補強効果が小さくなったり、透明性が悪化したりする傾向がある。
ちなみに、上記セルロース繊維原料においては、通常、数平均繊維径は1μm〜1mm程度であり、一般的な精製を経たものの数平均繊維径は、通常、50μm程度である。
<セルロース繊維の繊維長>
本発明にて用いられるセルロース繊維の数平均繊維長は、好ましくは1μm以下、より好ましくは900nm以下、さらに好ましくは800nm以下である。セルロース繊維の数平均繊維長をこの範囲にすることにより、PVA系樹脂中でのセルロース繊維の分散性が向上する。また、上記セルロース繊維の数平均繊維長は、小さい程好ましいが、天然セルロースのレベルオフ重合度を考えると、実質的には好ましくは100nm以上、より好ましくは150nm以上、さらに好ましくは200nm以上であることが特に好ましい。
ちなみに、上記セルロース繊維原料の数平均繊維長は、通常、一般的には0.1〜10mm程度である。
なお、本発明にて用いられるセルロース繊維、さらにはセルロース繊維原料の数平均繊維長および数平均繊維径は、上記セルロース繊維(セルロース繊維の原料)の分散液中の分散媒を乾燥除去した後、走査型電子顕微鏡(以下、「SEM」と称す場合がある。)や透過型電子顕微鏡(以下、「TEM」と称す場合がある。)、原子間力顕微鏡(以下、「AFM」と称す場合がある。)、X線小角散乱(以下、「SAXS」と称す場合がある。)等で観察することにより計測して求めることができる。セルロース繊維の数平均繊維径をSEMで測定する場合は、30,000倍に拡大したSEM写真の対角線に線を引き、その近傍にある繊維をランダムに12点抽出し、最も太い繊維と最も細い繊維を除去した10点の測定値の平均を数平均繊維径とする。また、後述のセルロース繊維分散PVA系樹脂フィルム中のセルロース繊維についても、PVA系樹脂を除去して同様に観察することにより計測して求めることができる。
本発明で用いられる数平均繊維径が2〜200nmのセルロース繊維は、上記セルロース繊維の原料をそのまま解繊処理したものを用いてもよいが、解繊性が向上したり、水分散液中での安定性が向上したり、PVA系樹脂中に均一に分散しやすいという点で、変性処理することが好ましい。
<変性セルロース繊維>
本発明に用いられるセルロース繊維としては、上述のとおり、PVA系樹脂に対する分散性の向上という点から、変性処理されたものを用いることが好ましい。
上記変性処理としては、セルロース繊維の水酸基の一部が他の基で置換されたもの、または、セルロース繊維が酸化されてカルボキシ基に置換された酸化セルロース繊維があげられる。これらの中で、水酸基の一部がイオン性基を有する基に置換されたセルロース繊維が、解繊効率の向上や、PVA系樹脂に対する分散性の向上という点で、より好ましく用いられる。上記イオン性基としては、例えば、カチオン基、アニオン基があげられる。
<カチオン基を有する基>
カチオン基を有する基として具体的には、アンモニウム基、ホスホニウム基またはスルホニウム基等のオニウム基があげられる。また、オニウム基を有する基は、通常分子量が1000以下程度の基である。具体的には、一級アンモニウム、二級アンモニウム、三級アンモニウム、四級アンモニウム等のアンモニウム、ホスホニウム、スルホニウムまたはこれらのいずれかを有する基、すなわち、アンモニウムを有する基、ホスホニウムを有する基またはスルホニウムを有する基があげられる。本発明において、カチオン基としては、アンモニウムを含む基が好ましく、特に、四級アンモニウムを含む基が好ましい。
カチオン基を導入するカチオン化剤に含まれる、セルロース繊維の水酸基と反応する基としては、その水酸基と反応して共有結合を形成する反応基であれば特に限定はなく、例えば、エポキシ基またはそれを形成し得るハロヒドリン基、活性ハロゲン基、活性ビニル基、メチロール基等があげられる。これらの内、反応性の点からエポキシ基またはそれを形成し得るハロヒドリン基が好ましい。
カチオン基を導入するカチオン化剤としては、例えば、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド等のグリシジルトリアルキルアンモニウムハライドあるいはそのハロヒドリン等があげられる。これらは単独で用いてもよく二種以上を併用してもよい。これらのうち、反応性の観点から、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドが好ましい。
カチオン化剤とセルロース繊維との反応方法としては、例えば、グリシジルトリアルキルアンモニウムハライド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドを用いる場合、反応溶媒中で、セルロース繊維にカチオン化剤と触媒である水酸化アルカリ金属塩を作用させることにより反応させる方法があげられる。
反応溶媒としては、セルロース繊維に対し3〜20重量倍の水、あるいは低級アルコール、具体的にはメタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール等の一種または二種以上、あるいはこれらの低級アルコールと水との混合溶媒が使用できる。
触媒の水酸化アルカリ金属塩としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の一種または二種以上が使用できる。
上記カチオン化剤と触媒の使用量は、用いるセルロース繊維、反応系の溶媒組成、反応器の機械的条件、その他要因によって適宜調整する。
カチオン化反応の反応温度は、30〜90℃が好ましく、より好ましくは40〜80℃である。また、反応時間は、通常30分以上10時間以下、好ましくは1時間以上4時間以下である。反応終了後、残存する触媒を鉱酸、あるいは有機酸により中和した後、常法により洗浄、精製してカチオン化されたセルロース繊維を得ることができる。
カチオン化されたセルロース繊維は、解繊性、回収率の向上の点から、カチオン化されたセルロース繊維の重量に対してカチオン基を、0.05mmol/g以上有していることが好ましく、0.08mmol/g以上有していることがより好ましく、0.10mmol/g以上有していることが特に好ましい。また、このカチオン基の含有量は3.0mmol/g以下であることが、水溶性部分が増加し、水への溶解が起こり易くなるのを抑制するため、また、樹脂との親和性を高めるために好ましく、2.5mmol/g以下であることがより好ましい。係るカチオン基の量は、元素分析法により算出される値である。
元素分析法による算出方法として、具体的には、例えばカチオン基がアンモニウムの場合、窒素測定装置を用いて、JIS−K2609に準じて窒素量を定量し、窒素の分子量で割ることで単位重量当りのモル数(例えばmmol/g)を換算することができる。
<アニオン基を有する基>
アニオン基を有する基としては、具体的には、カルボキシ基、燐酸由来の基、スルホ基等があげられる。アニオン基を有する基は、通常分子量が1000以下程度の基である。本発明において、アニオン基としては、カルボキシ基、燐酸由来の基が好ましく、特に燐酸由来の基が好ましい。
<燐酸由来の基>
燐酸由来の基として具体的には、燐酸、ポリ燐酸、亜燐酸、ホスホン酸、ポリホスホン酸あるいはこれらの塩またはエステルよりなる群から選ばれる少なくとも一つである。これらの中でも、低コストであり、扱いやすく、また、セルロース繊維のヒドロキシ基に燐酸基を導入して微細化(解繊)解繊効率をより向上できることから、燐酸基を有する化合物が好ましい。
燐酸基を有する化合物としては、燐酸、燐酸のリチウム塩である燐酸二水素リチウム、燐酸水素二リチウム、燐酸三リチウム、ピロ燐酸リチウム、ポリ燐酸リチウム、更に燐酸のナトリウム塩である燐酸二水素ナトリウム、燐酸水素二ナトリウム、燐酸三ナトリウム、ピロ燐酸ナトリウム、ポリ燐酸ナトリウム、更に燐酸のカリウム塩である燐酸二水素カリウム、燐酸水素二カリウム、燐酸三カリウム、ピロ燐酸カリウム、ポリ燐酸カリウム等があげられる。これらのうち、燐酸基導入の効率が高く、工業的に適用しやすい観点から、燐酸、燐酸のナトリウム塩、燐酸のカリウム塩が好ましく、燐酸二水素ナトリウム、燐酸水素二ナトリウムがより好ましい。
また、反応の均一性および燐酸由来の基の導入効率が高いことから、上記化合物は水溶液として用いることが好ましい。また、公知技術である尿素燐酸法のように、水溶液中に尿素等の有機化合物を含んでいてもよい。その際の有機化合物を含む水溶液のpHは、燐酸基導入の効率が高いことから7以下であることが好ましい。さらに、セルロース繊維の加水分解を抑える観点からpH3〜7が特に好ましい。
燐酸由来の基を導入したセルロース繊維は、解繊性、回収率の向上の点から、燐酸由来の基を導入したセルロース繊維の重量に対して燐酸基を、0.05mmol/g以上有していることが好ましく、0.08mmol/g以上有していることがより好ましく、0.10mmol/g以上有していることが特に好ましい。また、この燐酸基の含有量は3.0mmol/g以下であることが、水溶性部分が増加し、水への溶解が起こり易くなるのを抑制するため、また、樹脂との親和性を高めるために好ましく、2.5mmol/g以下であることがより好ましい。係る燐酸基の量は、米国TAPPIの「Test Method T237 cm−08(2008):Carboxyl Content of pulp」の方法、または元素分析法により算出された値である。
元素分析法による算出方法として、具体的には、誘導結合プラズマ発行分析装置(ICP−AES)を用いて、燐量を定量し、燐の分子量で割ることにより単位重量当りのモル数(例えばmmol/g)を換算することができる。
<カルボキシ基を有する基>
カルボキシ基を有するセルロース繊維を得るためには、セルロース繊維の水酸基を酸化してもよいし、カルボキシ基を有する化学修飾剤を用いて水酸基を変性してもよい。
カルボキシ基を酸化する方法としては、TEMPO触媒を用いた酸化や、オゾンを用いる酸化の方法があげられる。
また、カルボキシ基を有する化学修飾剤としては、マロン酸、コハク酸、2−メチルプロパン二酸、2−メチルブタン二酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、2−メチル−2−ブテン二酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸等の誘導体があげられる。特に無水物やモノ酸ハライドはセルロースとの反応性が高く好ましい。これらの中では、コハク酸、マレイン酸、フタル酸等が好ましい。
<その他の変性処理>
さらには、上記以外の、例えば、セルロース繊維に、炭素数1〜20のアルキルカルボニル基、アリール基で置換されてもよい炭素数2〜6のアルケニルカルボニル基、アルキニルカルボニル基、アリールカルボニル基等を導入して変性処理する方法があげられる。
<炭素数1〜20のアルキルカルボニル基>
炭素数1〜20のアルキルカルボニル基としては、具体的にアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、2−ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ピバロイル基等があげられる。
<アリール基で置換されてもよい炭素数2〜6のアルケニルカルボニル基>
アリール基で置換されてもよい炭素数2〜6のアルケニルカルボニル基としては、具体的にアクリロイル基、メタクリロイル基、シンナモイル基等があげられる。
<アルキニルカルボニル基>
アルキニルカルボニル基としては、プロピオロイル基等があげられる。
<アリールカルボニル基>
アリールカルボニル基としては、ベンゾイル基、ナフトイル基等があげられる。
上記炭素数1〜20のアルキルカルボニル基、アリール基で置換されてもよい炭素数2〜6のアルケニルカルボニル基、アルキニルカルボニル基、アリールカルボニル基を導入する方法としては、例えば、セルロース繊維原料または解繊処理後のセルロース繊維と、下記の化学修飾剤とを反応させる方法があげられる。上記反応条件について、例えば、必要に応じて溶媒、触媒等を用いたり、加熱、減圧等を行うこともできる。
化学修飾剤の種類としては、酸、酸無水物、アルコール、ハロゲン化試薬よりなる群から選ばれる一種または二種以上があげられる。
酸としては、例えば酢酸、アクリル酸、メタクリル酸、プロパン酸、ブタン酸、2−ブタン酸、ペンタン酸等があげられる。
酸無水物としては、例えば無水酢酸、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、無水プロパン酸、無水ブタン酸、無水2−ブタン酸、ペンタン酸等があげられる。
ハロゲン化試薬としては、例えばアセチルハライド、アクロイルハライド、メタクリロイルハライド、プロパノイルハライド、ブタノイルハライド、2−ブタノイルハライド、ペンタノイルハライド、ベンゾイルハライド、ナフトイルハライド等があげられる。
これらの中で特に無水酢酸、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、ベンゾイルハライド、ナフトイルハライドが好ましい。
これらの化学修飾剤は一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
上記方法により炭素数1〜20のアルキルカルボニル基、アリール基で置換されてもよい炭素数2〜6のアルケニルカルボニル基、アルキニルカルボニル基、アリールカルボニル基が導入される量は、セルロース繊維の全水酸基に対して、通常2mol%以上、好ましくは3mol%以上で、通常65mol%以下、好ましくは50mol%以下、より好ましくは40mol%以下、さらに好ましくは35mol%以下である。
これらの基を導入することで、セルロース繊維の耐熱性が高くなり、高温での物性低下や着色が小さくなる。
これら変性処理により、セルロース繊維に上記イオン性基を導入してなる変性セルロース繊維において、イオン性基の中でも、カチオン基を有する基、燐酸由来の基、または炭素数1〜20のアルキルカルボニル基が好ましく、中でもカチオン基を有する基、燐酸由来の基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基が好ましく、カチオン基を有する基、燐酸由来の基がより好ましい。
(変性前の前処理)
変性セルロース繊維を製造する方法としては、上述の通り、例えばセルロース繊維に対し、化学的または物理的処理により、セルロース繊維の水酸基に他の基を導入する方法が採られる。そして、変性処理はセルロース繊維原料に対して行なってもよいし、解繊処理後のセルロース繊維に対して行なってもよいが、セルロース繊維を変性する前に、酵素処理、酸処理等の前処理を行うことが好ましい。これらの前処理を行なうことにより、繊維長が短くなり、解繊効率が向上する。
酵素処理には、セルラーゼ系酵素を使用することが好ましい。
セルラーゼ系酵素は、セルロース繊維のβ−1,4−グリコキシド結合を加水分解によって開裂し、解重合を引き起こす酵素である。本発明においては、セルラーゼ系酵素として、エンド型グルカナーゼ(endo−glucanase:EG)およびセロビオヒドラーゼ(cellobiohydrolase:CBH)のいずれも使用できる。それぞれを単体で用いてもよいし、EGとCBHを混合して使用しても構わない。また、ヘミセルラーゼ系酵素と混合して用いても構わない。
上記ヘミセルラーゼ系酵素とは、ヘミセルロースを加水分解する酵素である。ヘミセルラーゼ系酵素の中でもキシランを分解する酵素であるキシラナーゼ(xylanase)、マンナンを分解する酵素であるマンナーゼ(mannase)、アラバンを分解する酵素であるアラバナーゼ(arabanase)があげられる。また、ペクチンを分解する酵素であるペクチナーゼもヘミセルラーゼ系酵素として使用することができる。
酸処理としては、塩酸や硫酸等の酸でセルロース繊維を加熱処理する方法があげられる。
<セルロース繊維の解繊>
本発明で用いられるセルロース繊維は、上述の様な変性処理を行なったものをそのまま用いることもできるが、透明性、より良好な機械物性、線膨張係数、水中安定性や乾燥収縮率を得るためには、解繊により、微細なセルロース繊維とすることが好ましい。そして、解繊により微細なセルロース繊維を効率よく得るために前処理を行ってもよい。
解繊処理の具体的な方法としては、特に制限はないが、例えば、直径0.1〜1mm程度のセラミック製ビーズをセルロース繊維原料濃度0.1〜10重量%、例えば1重量%程度のセルロース繊維原料の分散液(以下、「セルロース繊維分散液」と称す場合がある。)に入れ、ペイントシェーカーやビーズミル等を用いて振動を与え、セルロース繊維原料を解繊する方法、グラインダー(石臼型粉砕機)を用いて解繊する方法等があげられる。特にこれらの方法はセルロース繊維の繊維長を短くするのに効果的である。
なお、セルロース繊維分散液の分散媒としては、有機溶媒、水、有機溶媒と水との混合液を使用することができる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコール−モノ−t−ブチルエーテル等のアルコール類、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等の環状エーテル類、その他水溶性の有機溶媒の一種または二種以上を用いることができる。分散媒は、PVA系樹脂との複合化の際、より均一に混合しやすいことから、有機溶媒と水との混合液または水であることが好ましく、特に水であることが好ましい。
解繊方法としては、ブレンダータイプの分散機や高速回転するスリットの間に、セルロース繊維分散液を通して剪断力を働かせて解繊する方法(高速回転式ホモジナイザーを用いる方法)や、高圧から急に減圧することによって、セルロース繊維原料間に剪断力を発生させて解繊する方法(高圧ホモジナイザー法を用いる方法)、「マスコマイザーX(増幸産業社製)」のような対向衝突型の分散機等を用いる方法等があげられる。特に、高速回転式ホモジナイザーや高圧ホモジナイザーによる処理を採用することにより、解繊の効率が向上する。
これらの処理で解繊する場合は、セルロース繊維原料としての固形分濃度が0.1重量%以上、好ましくは0.2重量%以上、特に0.3重量%以上であり、また10重量%以下、特に6重量%以下のセルロース繊維分散液に対して解繊処理を行うことが好ましい。この解繊処理に供するセルロース繊維分散液中の固形分濃度が低過ぎると処理するセルロース繊維原料量に対して液量が多くなり過ぎ効率が悪く、固形分濃度が高過ぎると流動性が悪くなるため、解繊処理に供するセルロース繊維分散液は適宜水を添加するなどして濃度調整する。
なお、このような高圧ホモジナイザーによる処理、高速回転式ホモジナイザーによる処理の後に、超音波処理を組み合わせた解繊(微細化)処理を行ってもよい。
また、解繊処理した後は、遠心分離を用いてセルロース繊維分散液中の解繊不良のセルロース繊維を分離、除去してもよい。遠心分離でセルロース繊維分散液中の解繊不良のセルロース繊維を分離、除去することで、より均一で細かい微細セルロース繊維分散液の上澄み液が得られ、セルロース繊維が分散されたPVA系樹脂製フィルムの透明性がより向上し、機械物性、線膨張係数、乾燥収縮、水中安定性もより良好となる。遠心分離の条件は、用いる解繊処理にもよるが、例えば3000G以上の遠心力をかけることが好ましく、特に好ましくは10000G以上の遠心力をかけることである。通常、遠心力の上限は50000Gである。また、遠心分離の時間は、例えば1分以上120分以下、好ましくは5分以上90分以下とすることが好ましい。遠心力が小さすぎたり、時間が短すぎたりすると、解繊不良のセルロース繊維の分離、除去が不充分になり、好ましくない。
また、遠心分離を行う際、セルロース繊維分散液の粘度が高いと、分離効率が落ちるため好ましくない。このため、セルロース繊維分散液の粘度としては、25℃において測定されるずり速度10s-1における粘度が500mPa・s以下であることが好ましく、特に好ましくは100mPa・s以下である。なお、ずり速度10s-1における粘度の下限値は、通常、1mPa・sである。
本発明の偏光膜用フィルムは、前述のPVA系樹脂に、前記特定の数平均繊維径であるナノサイズのセルロース繊維(以下、「ナノファイバーセルロース」と略記する場合がある。)を含有、分散させてなるフィルム形成材料を用いて得られる。その際、フィルム形成材料は、例えば、ナノファイバーセルロースを水に分散してナノファイバーセルロース水分散液を調製する。一方で、PVA系樹脂を水に溶解してPVA系樹脂水溶液を調製する。そして、上記ナノファイバーセルロース水分散液と上記PVA系樹脂水溶液を混合することにより、PVA系樹脂水溶液中にナノファイバーセルロースが分散された、ナノファイバーセルロース−PVA系樹脂水分散液であるフィルム形成材料を得ることができる。
このナノファイバーセルロース−PVA系樹脂水分散液を用いて本発明の偏光膜用フィルムであるナノファイバーセルロース−PVA系樹脂複合フィルムを製造する方法としては、例えば、下記の工程(A)、さらには必要に応じて工程(B)を経由する方法があげられる。
(A)キャスト法によりナノファイバーセルロース−PVA系複合フィルムを製膜する工程。
(B)製膜されたナノファイバーセルロース−PVA系複合フィルムを加熱して乾燥する工程。
以下、上記工程(A)について説明する。
工程(A)においては、まず、フィルム形成材料となるナノファイバーセルロース−PVA系樹脂水分散液を調製する。ナノファイバーセルロース−PVA系樹脂水分散液の調製方法は、好適には、前述のとおり、ナノファイバーセルロース水分散液とPVA系樹脂水溶液を各々調製した後、これらを混合する方法があげられる。ナノファイバーセルロース水分散液は前述したようにして調製することができる。一方、PVA系樹脂水溶液は、たとえば、多軸押出機を用いて調製してもよく、また、上下循環流発生型撹拌翼を備えた溶解缶において、缶中に水蒸気を吹き込んで含水PVA系樹脂ウェットケーキを溶解させて水溶液を調製することもできる。
上記PVA系樹脂水溶液には、前述のように、PVA系樹脂以外に、必要に応じて、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等の可塑剤や、ノニオン性、アニオン性またはカチオン性の界面活性剤を含有させることが、機械特性や生産性の点より好ましい。
ナノファイバーセルロース水分散液とPVA系樹脂水溶液の混合方法としては、例えば、回転刃による撹拌で混合してもよいが、より分散性を向上させるために、数万rpm以上の高速で回転する回転翼とスリットの間を高速で流動する、高速回転式ホモジナイザー等を用いてもよい。撹拌の温度は0℃〜90℃である。
このようにして得られるナノファイバーセルロース−PVA系樹脂水分散液(フィルム形成材料)中のPVA系樹脂濃度は、10〜60重量%であることが好ましく、特に好ましくは12〜55重量%、更に好ましくは15〜50重量%である。かかるPVA系樹脂濃度が低すぎると乾燥負荷が大きくなるため生産能力に劣る傾向があり、高すぎると粘度が高くなりすぎて均一な溶解ができない傾向がある。
また、上記ナノファイバーセルロース−PVA系樹脂水分散液(フィルム形成材料)中のナノファイバーセルロース濃度は、0.001〜12重量%であることが好ましく、特に好ましくは0.01〜5重量%である。ナノファイバーセルロース濃度が低すぎると水分量が多すぎてキャスト時の蒸発水分量が多くなり非効率である。また、ナノファイバーセルロース濃度が高すぎるとナノファイバーセルロースが凝集してPVA系樹脂との分散性が悪くなったり、粘度が高くなり後述するTダイからの吐出がしにくくなる傾向がある。
そして、本発明においては、PVA系樹脂100重量部に対するセルロース繊維(ナノファイバーセルロース)の含有量は0.01〜20重量部であることが好ましく、より好ましくは0.05〜10重量部、特に好ましくは0.1〜5重量部である。
つぎに、得られたナノファイバーセルロース−PVA系樹脂水分散液は、脱泡処理される。脱泡方法としては、静置脱泡や多軸押出機による脱泡等の方法があげられる。
脱泡処理ののち、ナノファイバーセルロース−PVA系樹脂水分散液は、キャスティング法により製膜される。その具体的な方法としては、例えば、一般にキャストフィルムを製造する際に採用される製膜法を採用することができる。このようにして、ナノファイバーセルロース−PVA系樹脂複合フィルムを製膜する。
ついで、上記工程(B)について説明する。
製膜したフィルムは、必要に応じて加熱処理を行なってもよい。加熱処理温度については、70〜140℃で行うことが好ましく、特には70〜135℃で行なうことが好ましい。加熱処理温度が低すぎるとフィルムの耐水性が不足したり、熱処理斑が多くなり、光学斑の原因となる傾向があり、高すぎると偏光膜製造時の延伸性が低下する傾向がある。
本発明の偏光膜用フィルム(ナノファイバーセルロース−PVA系樹脂複合フィルム)は、具体的には、ナノファイバーセルロース−PVA系樹脂水分散液を平坦なガラス板の上や回転するキャストドラム(ドラム型ロール)に流延して、キャスト法により製膜、乾燥することにより製造することができる。連続的に製造する方法としては、例えば、キャストドラムを用いる方法があげられる。
このようにして、上記工程(A)、さらには必要に応じて工程(B)を経由することにより、偏光膜用フィルム(ナノファイバーセルロース−PVA系樹脂複合フィルム)が得られる。
上記得られた偏光膜用フィルム(ナノファイバーセルロース−PVA系樹脂複合フィルム)は、厚さが5〜60μmであることが好ましく、偏光膜の薄膜化の点から特に好ましくは5〜50μm、更に好ましくは5〜40μmである。
[偏光膜]
つぎに、本発明の偏光膜用フィルムであるナノファイバーセルロース−PVA系樹脂複合フィルムを用いて、偏光膜を製造する。
本発明の偏光膜は、上記ナノファイバーセルロース−PVA系樹脂複合フィルムを用い、通常、膨潤処理、染色、延伸、ホウ酸架橋等の各工程を経由することにより製造される。すなわち、偏光膜の製造方法としては、ナノファイバーセルロース−PVA系樹脂複合フィルムを、(1)延伸、膨潤処理してヨウ素または二色性染料の溶液に浸漬し染色したのち、ホウ素化合物処理する方法、(2)膨潤処理、延伸と染色を同時に行なったのち、ホウ素化合物処理する方法、膨潤処理、ヨウ素または二色性染料により染色して延伸したのち、ホウ素化合物処理する方法、(3)膨潤処理、染色したのち、ホウ素化合物の溶液中で延伸する方法等があげられ、適宜選択される。このように、ナノファイバーセルロース−PVA系樹脂複合フィルム(偏光膜用フィルム:未延伸フィルム)は、延伸と染色、さらにホウ素化合物処理を別々に行なってもよいし同時に行なってもよいが、染色工程、ホウ素化合物処理工程の少なくとも一方の工程中に一軸延伸を実施することが、生産性の点より望ましい。
上記延伸工程は、一軸方向に3〜10倍、好ましくは5〜8倍、より好ましくは5.5〜8倍延伸することが望ましい。延伸倍率が低すぎると、二色性色素の延伸配向度合いが悪く、偏光性能が悪化する傾向がある。また、延伸倍率は高いほどよいが、延伸倍率が高すぎるとナノファイバーセルロース−PVA系樹脂複合フィルムが破断する傾向がある。本発明では、ナノサイズの(好ましくは表面変性処理した)セルロース繊維であるナノファイバーセルロースを含有することにより、より高い延伸倍率が可能となり、より薄く配向性の高い配向膜を製造することができる。通常、セルロース繊維のような繊維状のものがフィルムに含まれると、延伸時に伸度が低下する。本発明で延伸倍率が向上する詳細の理由は不明であるが、(好ましくは表面変性処理した)セルロース繊維のナノサイズの効果により、PVA系樹脂の破断を阻害しているのではないかと推測される。また、特に厚み10μm以下の薄いPVA系樹脂フィルムは延伸装置の振動などにより、引っ張り応力に増減が生じた際に、破断しやすくなるが、ナノファイバーセルロースとPVA系樹脂との相互作用によりフィルム自体にコシがでて、引っ張り応力の微小な変化に抗力が発生するため破断伸度が向上することも推測される。
また、上記フィルムの延伸方向の直角方向にも若干の延伸(幅方向の収縮を防止する程度、またはそれ以上の延伸)を行なっても差し支えない。延伸時の温度は、40〜170℃であることが好ましく、特に好ましくは45〜165℃である。
さらに、延伸倍率は最終的に前記範囲に設定されればよく、延伸操作は一段階のみならず、製造工程の任意の範囲の段階に実施すればよい。
上記膨潤処理工程は、染色工程の前に施される。膨潤処理工程により、ナノファイバーセルロース−PVA系樹脂複合フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができる他に、ナノファイバーセルロース−PVA系樹脂複合フィルムを膨潤させることにより染色ムラ等の不均一な現象を防止する効果もある。膨潤処理工程では、処理液としては、通常、水が用いられる。上記処理液は、主成分が水であれば、ヨウ化化合物、界面活性剤等の添加物、アルコール等が少量入っていてもよい。膨潤処理浴の温度は、通常20〜45℃程度であり、膨潤処理浴への浸漬時間は、通常0.1〜10分間程度である。
上記フィルムに対する染色工程は、ナノファイバーセルロース−PVA系樹脂複合フィルムにヨウ素または二色性染料を含有する液体を接触させることによって行なわれる。通常は、上記液体としてはヨウ素−ヨウ化カリウムの水溶液が用いられ、好ましくは水溶液中のヨウ素の濃度は0.1〜2g/L、ヨウ化カリウムの濃度は1〜100g/Lである。染色時間は30〜500秒程度が実用的である。また、染色処理浴の温度は5〜50℃が好ましい。上記水溶液には、水溶媒以外に水と相溶性のある有機溶媒を少量含有させても差し支えない。フィルムに対する水溶液の接触手段としては浸漬、塗布、噴霧等の任意の手段が適用できる。
上記染色処理されたナノファイバーセルロース−PVA系樹脂複合フィルムは、ついでホウ素化合物によって処理される。ホウ素化合物としてはホウ酸、ホウ砂が実用的である。ホウ素化合物は、水溶液または水−有機溶媒混合液において、濃度0.3〜2モル/L程度で用いられ、液中には10〜100g/Lのヨウ化カリウムを共存させることが実用上望ましい。ホウ素化合物による処理法は浸漬法が望ましいが、塗布法、噴霧法も実施可能である。処理時の温度は40〜70℃程度、処理時間は0.5〜20分程度が好ましく、また必要に応じてホウ素化合物による処理中に延伸操作を行なってもよい。
その後、上記ナノファイバーセルロース−PVA系樹脂複合フィルムに洗浄処理を施してもよい。この洗浄処理により、延伸フィルムの表面に発生する析出物を除去することができる。
洗浄処理は、例えば、水やヨウ化カリウム等のヨウ化物水溶液にナノファイバーセルロース−PVA系樹脂複合フィルムを浸漬することにより行なわれる。ヨウ化カリウム水溶液を用いる場合のヨウ化カリウム濃度は1〜10g/L程度でよい。洗浄処理時の温度は、通常、5〜50℃、好ましくは10〜45℃である。処理時間は、通常、1〜300秒間、好ましくは10〜240秒間である。なお、水洗浄とヨウ化カリウム水溶液等のヨウ化物水溶液による洗浄は、適宜組み合わせて行ってもよい。また、その後、前記フィルムに乾燥工程を施してもよい。
このようにして、本発明の偏光膜を製造することができる。得られる偏光膜の偏光度は、好ましくは99%以上、より好ましくは99.5%以上である。また、偏光膜のヘイズは1%以下であることが好ましい。偏光度が低すぎると液晶ディスプレイにおけるコントラストを確保することができなくなる傾向がある。
なお、偏光度は、2枚の偏光膜を、その配向方向が同一方向になるように重ね合わせた状態で、波長λにおいて測定した光線透過率(H11)と、2枚の偏光子を、配向方向が互いに直交する方向になる様に重ね合わせた状態で、波長λにおいて測定した光線透過率(H)より、下式にしたがって算出される。
〔(H11−H)/(H11+H)〕1/2
さらに、本発明の偏光膜の単体透過率は、好ましくは43%以上である。透過率が低すぎると液晶ディスプレイの高輝度化を達成できなくなる傾向がある。
なお、上記単体透過率は、分光光度計を用いて偏光膜単体の光線透過率を測定して得られる値である。
そして、本発明の偏光膜の厚みは、薄膜化を考慮して、1〜30μmであることが好ましく、より好ましくは3〜30μm、特に好ましくは5〜30μmである。
このようにして得られる偏光膜は、その片面または両面に光学的に等方性の高分子フィルムまたはシートを保護フィルムとして積層接着して、偏光板として用いることもできる。上記保護フィルムとしては、例えば、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、ポリアリーレンエステル、ポリ−4−メチルペンテン、ポリフェニレンオキサイド等のフィルムまたはシートがあげられる。
このようにして得られる本発明の偏光膜は、透明性に優れ、厚みが非常に薄く、電子卓上計算機、電子時計、ワープロ、パソコン、携帯情報端末機、液晶テレビ、ウェアラブルディスプレイ、サイネージ、自動車や機械類の計器類等の液晶表示装置、サングラス、防眩メガネ、立体メガネ、表示素子(CRT、LCD、有機EL、電子ペーパー等)用反射低減層、医療機器、建築材料、玩具等に好ましく用いられる。
以下、実施例をあげて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
なお、例中「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
セルロース繊維の数平均繊維径および数平均繊維長は、つぎのようにして測定した。
(1−1)数平均繊維径(nm)
セルロース繊維の数平均繊維径は、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、以下のようにして測定した。
<AFM>
手法:原子間力顕微鏡法(タッピングモード)
探針:未修飾のSi製カンチレバー(NCH)
環境:室温(25℃)・大気中(湿度50%程度)
装置:ブルカー社製Digital Instrument NanoscopeIII
デ−タサンプリング数:512×512ポイント
AFM造の種別:高さ像、位相像(繊維一つ一つを認識するため)
画像解析法:AFM観察像から繊維をトレースして、繊維を一本ずつ抽出し、繊維一本の高さの最高値を繊維の太さとして計測した。この計測値を平均して数平均繊維径とした。
(1−2)数平均繊維長(nm)
上記数平均繊維径と同様、原子間力顕微鏡(AFM)を用い、上記条件にて、AFM観察像から繊維をトレースして、繊維を一本ずつ抽出し、繊維一本の長さを計測した。この計測値を平均して数平均繊維長とした。
(2)カチオン基量(イオン基量:mmol/g)
カチオン化されたセルロース繊維のカチオン基量(窒素量)は、窒素測定装置(TN−10、三菱化学アナリテック社製)を用いてJIS−K2609に準じて測定した。
(3)ナノファイバーセルロース−PVA樹脂複合フィルム(延伸前)および延伸フィルム(延伸後)の厚みを、マイクロメータを用いて測定した。
(4)ヘイズ(%)
ナノファイバーセルロース−PVA樹脂複合フィルムおよび延伸フィルムを縦30mm×横30mmのサイズにカットしたものを試験片として3枚用意し、JIS K7361に準拠し、日本電色工業社製ヘイズメーター「NDH−2000」を用いて測定した。
<セルロース繊維の調製>
(製造例1)カチオン化セルロース水分散液の製造
セルロース繊維原料を得るために、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP、王子ホールディング社製、固形分30%)固形分で100部に5N塩酸を2500体積部添加し、撹拌下85℃で1時間加熱した。これを冷却後、濾過し、中性になるまで水洗した。
この酸処理したLBKPを固形分で100部に、25%水酸化ナトリウム水溶液80部を滴下し、混合した。ここに、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(四日市合成社製、CTA−65)を85部と2−プロパノール1000部を添加し、70℃で90分反応させた。冷却後、濾過し濾別したケーキを脱塩水600部に分散させ10%酢酸水溶液で中和した後、再度濾別した。
ついで、濾液の電気伝導度が50μS/cm未満になるまで脱塩水で洗浄することによりカチオン基を導入したセルロース繊維原料を得た。このカチオン化セルロース繊維原料のカチオン基量は、0.57mmol/gであった。
得られたカチオン基を導入したセルロース繊維原料を0.5%含む水分散液を調製した後、高速回転式ホモジナイザー(クレアミックス−0.8S、エム・テクニック社製)を用いて、20000rpmで60分間解繊処理を行なった。
続いて、高速回転式分散機で解繊処理した後のカチオン基を導入したセルロース繊維水分散液(カチオン化セルロース水分散液)を、超音波ホモジナイザー(UH−600S、チタン合金製、直径36mmストレート型チップ、周波数20kHz、出力224W、SMT社製)を用い、アウトプットボリューム8でチューニングを行い、カチオン化セルロース水分散液を15±5℃に保持しながら、60分間、50%の間欠運転にて超音波処理を実施した。50%の間欠運転とは、0.5秒間超音波を発振した後、0.5秒間休止を行なう運転である。
ついで、超音波処理にて得られたカチオン化セルロース水分散液を固形分量0.21%に希釈し、遠心分離機(himacCR22G、日立工機社製)にてアングルローターR20A2を用い、23℃、38900Gで30分間処理することにより、目的とするカチオン化セルロース水分散液(固形分0.18%)を得た。得られたカチオン化されたセルロース繊維(カチオン化ナノファイバーセルロース)の数平均繊維径は4.8nm、数平均繊維長は313nmであった。
〔実施例1〕
オートクレーブ中に、PVA樹脂(重量平均分子量135,000、ケン化度99.8モル%)15.0部とグリセリン(和光純薬工業社製、試薬特級)2.03部、製造例1にて得られたカチオン化セルロース水分散液(固形分0.18%)41.9部(換算:PVA樹脂100部に対して0.5部)、イオン交換水41.1部を量り取り密閉した後、120℃にて2時間加熱し、上記カチオン化ナノファイバーセルロース−PVA樹脂混合分散液を得た。この混合分散液を90℃に加熱したホットプレート上に設置したガラス板上に適量載せ、ギャップ50μmのアプリケータを用いて塗布し、そのまま90℃にて3分間乾燥させフィルム化した。得られたフィルムを枠に固定し、74℃で30秒間、続いて120℃で30秒間処理することにより、カチオン化ナノファイバーセルロース−PVA樹脂複合フィルムを得た。上記複合フィルムの厚みは10μmであった。
このカチオン化ナノファイバーセルロース−PVA樹脂複合フィルムを、水温30℃の水槽に浸漬しつつ、1.5倍に延伸した。つぎに、ヨウ素0.2g/L、ヨウ化カリウム15g/Lよりなる染色槽(30℃)にて240秒間、上記フィルムを浸漬しつつ、一軸方向に1.3倍に延伸し、さらにホウ酸50g/L、ヨウ化カリウム30g/Lの組成のホウ酸処理槽(50℃)に浸漬するとともに、同時に2.87倍に一軸延伸しつつ5分間にわたってホウ酸処理を行った。延伸後のフィルムの厚みは5.0μm、延伸後のフィルムのヘイズは0.5%であった。
上記で得られたカチオン化ナノファイバーセルロース−PVA樹脂複合フィルムを用いて、上記と同様の偏光膜の製造において、ホウ酸処理槽での延伸倍率を更に上げ、フィルムが破断するまでの延伸を行い、限界延伸倍率を測定したところ、6.9倍であった。
〔実施例2〕
実施例1記載の方法と同様にして厚みが30μmのカチオン化ナノファイバーセルロース−PVA樹脂複合フィルムを作製した。さらに、実施例1と同様にして偏光膜を得た。得られた偏光膜の厚みは14μm、ヘイズは0.5%であった。
また、実施例1と同様に限界延伸倍率を測定したところ、8倍であった。
〔比較例1〕
ナノサイズのカチオン化されたセルロース繊維(カチオン化ナノファイバーセルロース)を添加しない以外は実施例1に記載の方法に従い、厚み10μmのPVA樹脂フィルムを製膜した。得られたフィルムを実施例1と同様にして偏光フィルムの作製を行なったが、一軸方向の延伸において延伸倍率5.1倍で破断した。なお、5.0倍の延伸倍率でのフィルムの厚みは6μm、ヘイズが0.4%であった。
これら実施例および比較例の測定結果を下記の表1に併せて示す。
Figure 0006714808
上記評価結果より、実施例1および2においては、5倍を超える非常に高い限界延伸倍率を得ることができ、延伸後の厚みも薄く、ヘイズが低く偏光膜として良好なものが得られたことがわかる。
一方、比較例1では、ヘイズが低く良好であるが、延伸倍率小さいため、偏光特性が悪くなる恐れがある。
本発明の偏光膜用フィルムは、薄膜化に対応したものであって、強度および透明性に優れており、電子卓上計算機、電子時計、ワープロ、パソコン、携帯情報端末機、液晶テレビ、ウェアラブルディスプレイ、サイネージ、自動車や機械類の計器類等の液晶表示装置、サングラス、防眩メガネ、立体メガネ、表示素子(CRT、LCD、有機EL、電子ペーパー等)用反射低減層、医療機器、建築材料、玩具等に用いられる。

Claims (6)

  1. 数平均繊維径が2〜200nmのセルロース繊維を分散したポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光膜用フィルムであって、上記セルロース繊維がカチオン基を有する基を導入してなる変性セルロース繊維であり、上記偏光膜用フィルムの厚みが5〜60μmであることを特徴とする偏光膜用フィルム。
  2. ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対するセルロース繊維の含有量が0.01〜20重量部であることを特徴とする請求項1記載の偏光膜用フィルム。
  3. 請求項1または2記載の偏光膜用フィルムを、染色,延伸してなることを特徴とする偏光膜。
  4. 偏光膜の厚みが1〜30μmであることを特徴とする請求項記載の偏光膜。
  5. 偏光膜のヘイズが1%以下であることを特徴とする請求項または記載の偏光膜。
  6. 請求項1または2記載の偏光膜用フィルムを、一方向に5.5倍以上延伸する工程を有することを特徴とする偏光膜の製造方法。
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