JP2019119880A - 分散液 - Google Patents

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恭平 大和
亮太 山本
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Abstract

【課題】樹脂組成物の強度や靱性をより向上させることができる、微細セルロース繊維複合体を含有する非水系の分散液を提供すること。【解決手段】イオン性基を含むセルロース繊維に修飾基が結合してなる微細セルロース繊維複合体、及び非水系媒体を含有し、セルロース繊維換算の固形分含有量を0.5質量%とした場合に含まれる長さが1μm以上の異物が10,000個以下である、非水系分散液。【選択図】なし

Description

本発明は、微細セルロース繊維複合体を含有する非水系の分散液に関する。
従来、有限な資源である石油由来のプラスチック材料が多用されていたが、近年、環境に対する負荷の少ない技術が脚光を浴びるようになり、かかる技術背景の下、天然に多量に存在するバイオマスであるセルロース繊維を用いた種々の材料が注目されている。
例えば特許文献1には、第4級アンモニウム化合物が微細セルロース繊維に吸着した微細セルロース繊維複合体を含む微細セルロース繊維分散液が開示され、複合材料の高機能化を図っている。
特許第5944098号
しかしながら、微細セルロース繊維複合体は一般的に非水系の媒体や非水溶性の樹脂に分散しにくい傾向を有するため、微細セルロース繊維複合体の配合が困難な材料も多く、ユーザーが求める高機能化、とりわけ強度や靱性の向上の点を満足させることは十分とは言えない。
本発明は、樹脂組成物の強度や靱性をより向上させることができる、微細セルロース繊維複合体を含有する非水系の分散液を提供することに関する。
即ち、本発明の要旨は下記[1]〜[5]に関する。
[1] イオン性基を含むセルロース繊維に修飾基が結合してなる微細セルロース繊維複合体、及び非水系媒体を含有し、セルロース繊維換算の固形分含有量を0.5質量%とした場合に含まれる長さが1μm以上の異物が10,000個以下である、非水系分散液。
[2] 微細セルロース繊維複合体から異物を除去する工程を含む、微細セルロース繊維複合体、及び非水系媒体を含有する分散液の製造方法。
[3] イオン性基を含むセルロース繊維に修飾基が結合してなる微細セルロース繊維複合体及び樹脂を含有し、長さが1μm以上の異物が100個以下である、樹脂組成物。
[4] 前記[3]に記載の樹脂組成物を成形してなる樹脂成形体。
[5] 前記[1]に記載の分散液又は前記[2]に記載の製造方法によって製造された分散液と樹脂とを混合する工程を含む、樹脂組成物の製造方法。
本発明によれば、樹脂組成物の強度や靱性をより向上させることができる、微細セルロース繊維複合体を含有する非水系の分散液を提供することができる。
〔分散液〕
本発明の非水系分散液は微細セルロース繊維複合体、及び非水系媒体を含有し、異物の量が一定量以下であることを特徴の一つとする。
本発明者らが検討した結果、微細セルロース繊維複合体から異物量を一定以下にすることで、意外にも前記複合体を樹脂組成物に適用した場合の強度や靱性が向上することを見出した。かかるメカニズムは定かではないが、比較的サイズが大きい異物の量が減少することで、樹脂組成物中の微細セルロース繊維複合体が均一に分散すると推定され、その結果、樹脂組成物の強度や靱性が向上するものと考えられる。
本発明の非水系分散液における非水系とは、当該分散液中に含まれる水の量が少ないことを意味し、本発明の効果を発現する観点から、当該分散液中の水の量は、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは70質量%以下であり、更に好ましくは50質量%以下であり、更に好ましくは20質量%以下であり、更に好ましくは10質量%以下であり、更に好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは0質量%である。
分散液中に含まれる異物量は、得られる樹脂組成物の強度、靱性の観点から、セルロース繊維換算の固形分含有量を0.5質量%とした場合に含まれる長さ1μm以上の異物が10,000個以下であり、好ましくは9,500個以下であり、より好ましくは7,000個以下であり、更に5,000個以下であり、更に好ましくは3,000個以下であり、更に好ましくは2,000個以下である。分散液中に含まれる異物量は、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。
以下、各成分の詳細を説明する。
〔微細セルロース繊維複合体〕
本発明で用いられる微細セルロース繊維複合体は、イオン性基を含むセルロース繊維(イオン変性セルロース繊維)に修飾基が結合されており、微細化されたものである。本発明で用いられる微細セルロース繊維複合体は、原料のセルロース繊維にイオン性基を導入してイオン性基を含むイオン変性セルロース繊維を得る工程(イオン性基を導入する工程:工程A)、イオン性基を含むイオン変性セルロース繊維に修飾基を導入する工程(修飾基を導入する工程:工程B)、及び微細化処理工程(工程C)を行うことによって製造することができる。なお、微細化処理工程は、工程Aと工程Bとの間に実施してもよく、複数回実施されてもよい。
(セルロース繊維)
原料のセルロース繊維としては、環境負荷の観点から、天然セルロース繊維を用いることが好ましい。天然セルロース繊維としては、例えば、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ等の木材パルプ;コットンリンター、コットンリントのような綿系パルプ;麦わらパルプ、バガスパルプ等の非木材系パルプ;バクテリアセルロース等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
原料のセルロース繊維の平均繊維径は特に限定されないが、取扱い性及びコストの観点から、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは7μm以上であり、同様の観点から、好ましくは500μm以下であり、より好ましくは300μm以下である。
また、原料のセルロース繊維の平均繊維長は特に限定されないが、入手性及びコストの観点から、好ましくは1,000μm以上、より好ましくは1,500μm以上であり、同様の観点から、好ましくは5,000μm以下、より好ましくは3,000μm以下である。原料のセルロース繊維の平均繊維径及び平均繊維長は、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
(イオン性基を含むイオン変性セルロース繊維)
本発明で用いられるイオン性基を含むイオン変性セルロース繊維(単に「イオン変性セルロース繊維」とも称する。)は、セルロース繊維中にイオン性基を含むようにイオン変性されたセルロース繊維である。
イオン性基としては、アニオン性基及びカチオン性基が挙げられる。アニオン性基としては、例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基などが挙げられ、カチオン性基としては、その基内にアンモニウム、ホスホニウム、スルホニウムなどのオニウムを有する基などが挙げられる。セルロース繊維への導入効率の観点から、好ましくはアニオン性基であり、より好ましくはカルボキシ基である。イオン性基は、単独で又は2種以上を組み合わせて導入されていてもよい。なお、イオン性基がアニオン性基である場合において、アニオン性基の対となるイオン(カウンターイオン)は、好ましくはプロトンである。
イオン変性セルロース繊維は、安定的な微細化及び修飾基導入の観点から、イオン性基の含有量が、好ましくは0.1mmol/g以上であり、より好ましくは0.4mmol/g以上であり、更に好ましくは0.6mmol/g以上である。その上限は、好ましくは3.0mmol/g以下であり、より好ましくは2.0mmol/g以下であり、更に好ましくは1.8mmol/g以下である。イオン性基含有量とは、イオン性基含有セルロース繊維を構成するセルロース繊維中のイオン性基の総量を意味する。例えば、イオン性基がアニオン性基の場合のアニオン性基含有量は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
また同様の観点から、イオン変性セルロース繊維中の水酸基の含有量は、好ましくは0.5mmol/g以上であり、より好ましくは1.0mmol/g以上であり、更に好ましくは2.0mmol/g以上である。その上限は、好ましくは20mmol/g以下であり、より好ましくは19mmol/g以下であり、更に好ましくは18mmol/g以下である。イオン変性セルロース繊維の水酸基の含有量は公知の方法(例えば、滴定、IR測定等)に従って測定することで算出することができる。
イオン変性セルロース繊維の平均繊維径、平均繊維長の好適範囲は、製造工程の順序にもよるが、原料のセルロース繊維のものと同等である。
(イオン性基を導入する工程:工程A)
(セルロース繊維にイオン性基としてアニオン性基を導入する場合)
本発明で用いられるイオン変性セルロース繊維は、対象のセルロース繊維にイオン性基を導入してイオン変性させることによって得ることができ、イオン性基がアニオン性基の場合は、例えば、対象の原料のセルロース繊維に酸化処理又はアニオン性基の付加処理を施して、アニオン性基を導入することができる。
(i)セルロース繊維にアニオン性基としてカルボキシ基を導入する場合
セルロース繊維にカルボキシ基を導入する方法としては、例えばセルロースの水酸基を酸化してカルボキシ基に変換する方法や、セルロースの水酸基にカルボキシ基を有する化合物、カルボキシ基を有する化合物の酸無水物及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種を反応させる方法が挙げられる。
前記セルロースの水酸基を酸化処理する方法としては特に制限されないが、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシル(TEMPO)を触媒として、次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤及び臭化ナトリウム等の臭化物を反応させて酸化処理する方法が適用できる。より詳細には、特開2011−140632号公報に記載の方法を参照することができる。
TEMPOを触媒としてセルロース繊維の酸化処理を行うことによって、セルロース構成単位のC6位のヒドロキシメチル基(−CHOH)が選択的にカルボキシ基に変換される。特にこの方法は、原料のセルロース繊維表面の酸化対象となるC6位の水酸基の選択性に優れており、且つ反応条件も穏やかである点で有利である。従って、本発明におけるアニオン変性セルロース繊維の好ましい態様として、セルロース構成単位のC6位がカルボキシ基であるセルロース繊維が挙げられる。本明細書において、かかるセルロース繊維を「酸化セルロース繊維」という場合がある。
セルロース繊維へのカルボキシ基の導入に使用するための、カルボキシ基を有する化合物は特に限定されないが、具体的にはハロゲン化酢酸が挙げられる。ハロゲン化酢酸としては、クロロ酢酸等が挙げられる。
セルロース繊維へのカルボキシ基の導入に使用するための、カルボキシ基を有する化合物の酸無水物及びそれらの誘導体は特に限定されないが、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸及び無水アジピン酸等のジカルボン酸化合物の酸無水物やカルボキシ基を有する化合物の酸無水物のイミド化物、カルボキシ基を有する化合物の酸無水物の誘導体が挙げられる。これらの化合物は疎水基で置換されていてもよい。
(ii)セルロース繊維にアニオン性基としてスルホン酸基又はリン酸基を導入する場合
セルロース繊維へスルホン酸基を導入する方法としては、セルロース繊維に硫酸を添加し加熱する方法等が挙げられる。
セルロース繊維へリン酸基を導入する方法としては、乾燥状態又は湿潤状態のセルロース繊維に、リン酸又はリン酸誘導体の粉末や水溶液を混合する方法や、セルロース繊維の分散液にリン酸又はリン酸誘導体の水溶液を添加する方法等が挙げられる。これらの方法を採用した場合、一般的に、リン酸又はリン酸誘導体の粉末や水溶液を混合または添加した後に、脱水処理及び加熱処理等を行う。
(セルロース繊維にイオン性基としてカチオン性基を導入する場合)
本発明で用いられるイオン変性セルロース繊維は、対象のセルロース繊維にイオン性基を導入してイオン変性させることによって得ることができ、イオン性基がカチオン性基の場合は、対象のセルロース繊維にアルカリの存在下においてカチオン化剤で処理することで、カチオン性基を導入することができる。
上述のいずれかの方法でセルロース繊維にイオン性基を導入することによって、原料のセルロース繊維がイオン変性され、イオン変性セルロース繊維となる。この時点では、微細化処理は施されていない。本発明の繊維の熱寸法安定性や機械的強度を向上させる観点から、還元処理や低アスペクト比化処理を更に行うことが好ましい。
(イオン変性セルロース繊維複合体)
本発明におけるイオン変性セルロース繊維複合体とは、イオン変性セルロース繊維に修飾基が結合してなるセルロース繊維である。
また、本発明に用いるイオン変性セルロース繊維複合体は、イオン変性セルロース繊維に対して、イオン変性セルロース繊維中に含まれるイオン性基及び水酸基から選ばれる1種以上の基に修飾基が結合してなるイオン変性セルロース繊維複合体であることが好ましく、イオン性基に修飾基がイオン結合及び/又は共有結合してなるイオン変性セルロース繊維複合体であることがより好ましく、イオン性基に修飾基がイオン結合してなるイオン変性セルロース繊維複合体であることがさらに好ましい。
本発明に用いられるイオン変性セルロース繊維複合体は、セルロース繊維への導入効率の観点から、イオン性基は、好ましくアニオン性基であり、したがって、好ましくはアニオン変性セルロース繊維複合体である。
イオン性基及び/又は水酸基に修飾基を結合させるためには、例えば修飾基を有する化合物(「改質基種」ともいう。)を用いることが好ましい。改質基種としては、イオン性基又は水酸基との結合様式に応じて適切なものを選択すればよい。
以下、イオン性基として好ましいアニオン性基と、水酸基における結合様式を例示する。
結合様式がイオン結合の場合には、改質基種として第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、第4級アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物等が挙げられる。これらの化合物には、修飾基として各種の炭化水素基、例えば鎖式飽和炭化水素基、鎖式不飽和炭化水素基、環式飽和炭化水素基、及び芳香族炭化水素基等の炭化水素基や、共重合部位等を導入することができる。これらの基や部位は単独で又は2種以上を組み合わせて導入されていてもよい。
第1級アミン〜第3級アミンとしては、分散性の観点から、炭素数が好ましくは3以上であり、より好ましくは6以上であり、同様の観点から、炭素数が好ましくは30以下であり、より好ましくは24以下であり、更に好ましくは18以下である。第1級アミン〜第3級アミンの具体例としては、プロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、トリヘキシルアミン、オクチルアミン、ジオクチルアミン、トリオクチルアミン、ドデシルアミン、ジドデシルアミン、ジステアリルアミン、オレイルアミン、アニリン、オクタデシルアミン、ジメチルベヘニルアミンが挙げられる。これらの中では、分散性の観点から、好ましくは、ヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、トリヘキシルアミン、ドデシルアミン、オレイルアミンである。
第4級アンモニウム化合物としては、分散性の観点から、炭素数が好ましくは3以上であり、より好ましくは6以上であり、同様の観点から、炭素数が好ましくは30以下であり、より好ましくは24以下であり、更に好ましくは18以下である。第4級アンモニウム化合物の具体例としては、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)が挙げられる。これらの中では、分散性の観点から、好ましくは、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)である。
改質基種として第4級アンモニウム化合物及びホスホニウム化合物を用いる場合には、その陰イオン成分として、反応性の観点から、好ましくは塩化物イオン及び臭化物イオンなどのハロゲン化物イオン、硫酸水素イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロフォスフェイトイオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン及びヒドロキシイオンが挙げられ、より好ましくはヒドロキシイオンが挙げられる。
結合様式が共有結合の場合には、アニオン性基を修飾するか、あるいは水酸基を修飾するかに応じて適切な改質基種が用いられる。アニオン性基を修飾する場合、例えばアミド結合を介して修飾する場合には、改質基種として例えば第1級アミン及び第2級アミンを用いることが好ましい。エステル結合を介して修飾する場合には、改質基種として例えばブタノール、オクタノール及びドデカノール等のアルコールを用いることが好ましい。ウレタン結合を介して修飾する場合には、改質基種として例えばイソシアネート化合物を用いることが好ましい。これらの化合物には、修飾基として各種の炭化水素基、例えば鎖式飽和炭化水素基、鎖式不飽和炭化水素基、環式飽和炭化水素基、及び芳香族炭化水素基等の炭化水素基や、共重合部位等を導入することができる。これらの基や部位は単独で又は2種以上を組み合わせて導入されていてもよい。
水酸基を修飾する場合、例えばエステル結合を介して修飾する場合には、改質基種として例えば酸無水物(例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸)や、酸ハライド(例えば、カプリル酸クロライド、ラウリン酸クロライド及びステアリン酸クロライド)を用いることが好ましい。エーテル結合を介して修飾する場合には、改質基種として例えばエポキシ化合物(例えば、酸化アルキレン及びアルキルグリシジルエーテル)、アルキルハライド並びにその誘導体(例えばメチルクロライド、エチルクロライド及びオクタデシルクロライド)が好ましい。ウレタン結合を介して修飾する場合には、改質基種として例えばイソシアネート化合物を用いることが好ましい。これらの化合物には、修飾基として各種の炭化水素基、例えば鎖式飽和炭化水素基、鎖式不飽和炭化水素基、環式飽和炭化水素基、及び芳香族炭化水素基等の炭化水素基や、共重合部位等を導入することができる。これらの基や部位は単独で又は2種以上を組み合わせて導入されていてもよい。
これら改質基種がイオン結合や共有結合により導入されるイオン変性セルロース繊維複合体の修飾基の炭素数は、本発明の効果を発現する観点から、好ましくは6以上であり、同様の観点から、好ましくは30以下であり、より好ましくは24以下であり、好ましくは18以下である。
改質基種が修飾基として上述した鎖式飽和炭化水素基を有する場合、該鎖式飽和炭化水素基は、直鎖状又は分岐状であってもよい。鎖式飽和炭化水素基の炭素数は、分散性を向上させる観点から、1つの修飾基における炭素数は好ましくは3以上であり、より好ましくは4以上であり、更に好ましくは6以上であり、同様の観点から、好ましくは30以下であり、より好ましく24以下であり、更に好ましくは18以下である。具体的には、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基、ジヘキシル基、トリヘキシル基等が挙げられる。
改質基種が修飾基として上述した鎖式不飽和炭化水素基を有する場合、該鎖式不飽和炭化水素基は、直鎖状又は分岐状であってもよい。鎖式不飽和炭化水素基の炭素数は、分散性を向上する観点から、1つの修飾基における炭素数は好ましくは3以上であり、より好ましくは4以上であり、更に好ましくは6以上であり、同様の観点から、好ましくは30以下であり、より好ましくは24以下であり、更に好ましくは18以下である。具体的にはオレイル基等が挙げられる。
改質基種が修飾基として上述した環式飽和炭化水素基を有する場合、該環式飽和炭化水素基の炭素数は、分散性を向上する観点から、1つの修飾基の炭素数は好ましくは3以上であり、より好ましくは4以上であり、更に好ましくは6以上であり、同様の観点から、好ましくは30以下であり、より好ましくは24以下であり、更に好ましくは18以下である。
改質基種が修飾基として上述した芳香族炭化水素基を有する場合、該芳香族炭化水素基としては、分散性を向上する観点から、1つの修飾基の炭素数は6以上であり、同様の観点から、好ましくは30以下であり、より好ましくは24以下であり、更に好ましくは18以下であり、更に好ましくは14以下であり、更に好ましくは10以下である。
修飾基が炭化水素基であり、該炭化水素基が置換基を有する場合は、修飾基における炭素数が上述の範囲を満たすことを条件として、置換基として、例えば炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基;アルコキシ基の炭素数が1〜6の直鎖又は分岐のアルコキシカルボニル基;臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;炭素数1〜6のアシル基;アラルキル基;アラルキルオキシ基;炭素数1〜6のアルキルアミノ基;アルキル基の炭素数が1〜6のジアルキルアミノ基や、水酸基、エーテル、アミド等を用いてもよい。なお、前述の各種の炭化水素基そのものが別の炭化水素基に置換基として結合していてもよい。
上述した各種の修飾基として有する第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、ホスホニウム化合物、酸無水物及びイソシアネート化合物は、市販品を用いることができ、また公知の方法に従って調製することができる。
本発明における微細セルロース繊維複合体は、その修飾基が共重合部位を含むことができる。そのような共重合部位としては、例えば、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド(EO/PO)共重合部位等を用いることができる。EO/PO共重合部位とは、エチレンオキサイド(EO)とプロピレンオキサイド(PO)がランダム又はブロック状に重合した構造を意味する。
EO/PO共重合部位中のPOの含有率(モル%)は、分散性を向上させる観点から、好ましくは1モル%以上であり、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは10モル%以上である。同様の観点から、好ましくは90モル%以下であり、より好ましくは60モル%以下であり、更に好ましくは40モル%以下である。
EO/PO共重合部位の分子量は、分散性を向上させる観点から、好ましくは500以上であり、より好ましくは1,000以上であり、更に好ましくは1,500以上である。同様の観点から、好ましくは10,000以下であり、より好ましくは5,000以下であり、更に好ましくは3,500以下である。
改質基種が、EO/PO共重合部位とアミノ基とを有するアミンである場合、EO/PO共重合部位とアミノ基とは、直接に結合していてもよく、あるいは連結基を介して結合していてもよい。連結基としては例えば炭化水素基が好ましく、特に炭素数が好ましくは1以上6以下であり、より好ましくは1以上3以下であるアルキレン基が用いられる。アルキレン基としては例えば、エチレン基及びプロピレン基が好ましい。
EO/PO共重合部位を有するアミン(「EOPOアミン」とも称する。)としては、例えば下記式(i)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2019119880
〔式中、Rは水素原子、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を示し、EO及びPOはランダム又はブロック状に存在し、aはEOの平均付加モル数を示す正の数であり、bはPOの平均付加モル数を示す正の数である〕
式(i)におけるaはEOの平均付加モル数を示し、分散性を一層向上させる観点から、好ましくは1以上であり、より好ましくは15以上であり、更に好ましくは30以上である。同様の観点から、好ましくは100以下であり、より好ましくは70以下であり、更に好ましくは50以下である。
式(i)におけるbはPOの平均付加モル数を示し、分散性を一層向上させる観点から、好ましくは3以上であり、より好ましくは5以上である。同様の観点から、好ましくは50以下であり、より好ましくは30以下である。
EO/PO共重合部位中のPOの含有率(モル%)は、アミンが式(i)で表される場合は、前記aとbに基づいて計算することが可能であり、具体的にはb×100/(a+b)より求めることができる。POの含有率の好ましい範囲は上述のとおりである。
式(i)におけるRは、分散性を向上させる観点から水素原子が好ましい。Rが炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である場合、該アルキル基は好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基及びsec−プロピル基である。
式(i)で表されるEO/PO共重合部位を有するアミンについての詳細は、例えば特許第6105139号公報に記載されている。
イオン変性セルロース繊維複合体における修飾基の平均結合量は、分散性を向上させる観点から、好ましくは0.01mmol/g以上であり、より好ましくは0.05mmol/g以上であり、更に好ましくは0.1mmol/g以上であり、更に好ましくは0.3mmol/g以上であり、更に好ましくは0.5mmol/g以上である。また、反応性の観点から、好ましくは3mmol/g以下であり、より好ましくは2.5mmol/g以下であり、更に好ましくは2mmol/g以下であり、更に好ましくは1.8mmol/g以下であり、更に好ましくは1.5mmol/g以下である。修飾基として任意の2種以上の修飾基が同時にセルロース繊維に導入されている場合、修飾基の平均結合量は、導入されている修飾基の合計量が前記範囲内であることが好ましい。
イオン変性セルロース繊維複合体における修飾基の導入率は、いずれの修飾基についても、分散性の観点から、好ましくは5%以上であり、より好ましくは10%以上であり、更に好ましくは15%以上であり、反応性の観点から、好ましくは100%以下であり、より好ましくは60%以下であり、更に好ましくは50%以下である。
本明細書において、修飾基の平均結合量及び導入率は、改質基種の添加量、改質基種の種類、反応温度、反応時間、溶媒などによって調整することができる。修飾基の平均結合量(mmol/g)及び導入率(%)とは、疎水変性セルロース繊維表面のアニオン性基又は水酸基に修飾基が導入された量及び割合のことである。疎水変性セルロース繊維のイオン性基含有量や水酸基含有量は公知の方法(例えば、滴定、IR測定等)に従って測定することで算出できる。修飾基の平均結合量及び導入率は、例えば、実施例に記載された方法で算出される。
イオン変性セルロース繊維複合体の平均繊維径、平均繊維長の好適範囲は、製造工程の順序にもよるが、原料のセルロース繊維のものと同等である。
(修飾基を導入する工程:工程B)
本発明に用いるイオン変性セルロース繊維複合体は、上述したイオン性基を含むイオン変性セルロース繊維に修飾基を導入できるのであれば、特に限定なく公知の方法に従って製造することができる。
例えば、イオン性基がアニオン性基の場合、以下に示すように、修飾基をイオン結合によってアニオン変性セルロース繊維に結合させる態様(態様A)、修飾基を共有結合によってアニオン変性セルロース繊維に結合させる態様(態様B)が挙げられる。なお、共有結合として、アミド結合の場合を以下に示す。
(態様A):アニオン変性セルロース繊維としてカルボキシ基変性セルロース繊維と、修飾基を有する化合物とを混合する工程(工程B1)。
(態様B):アニオン変性セルロース繊維としてカルボキシ基変性セルロース繊維と、修飾基を有する化合物とをアミド化反応させる工程(工程B2)。
アニオン性基がカルボキシ基の場合の具体的な方法としては、態様Aは特開2015−143336号公報の工程(B)に記載の方法を、態様Bは特開2015−143337号公報の工程(B)に記載の方法を参照して実施することができる。
〔微細セルロース繊維複合体〕
本発明で用いられる微細セルロース繊維複合体は、イオン性基を含むセルロース繊維(イオン変性セルロース繊維)に修飾基が結合されており、微細化されたものである。具体的には、微細セルロース繊維複合体は、前述した工程A、工程B、及び後述の工程Cを行うことによって製造することができる。
本発明で用いられる微細セルロース繊維複合体は、原料として天然セルロース繊維を使用していることに起因して、セルロースI型結晶構造を有している。セルロースI型とは天然セルロースの結晶形のことであり、セルロースI型結晶化度とは、セルロース全体のうち結晶領域量の占める割合のことを意味する。
本発明における微細セルロース繊維複合体の結晶化度は、本発明の効果を発現する観点から、好ましくは30%以上であり、より好ましくは35%以上であり、更に好ましくは40%以上であり、更に好ましくは45%以上である。また、使用するセルロース原料コストの観点から、好ましくは95%以下であり、より好ましくは90%以下であり、更に好ましくは85%以下であり、更に好ましくは80%以下である。なお、本明細書において、本発明におけるセルロースの結晶化度は、具体的には後述の実施例に記載の方法により測定される。
分散液中の微細セルロース繊維複合体の含有量は、樹脂組成物の強度や靱性の観点から、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましく0.1質量%以上であり、更に好ましくは0.2質量%以上である。一方、同様の観点から、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは1.0質量%以下である。
なお、本発明の非水系分散液及び樹脂組成物に用いる本明細書中の「含有」は「配合」と読み替えることができる。
微細セルロース繊維複合体は、その平均繊維径が、本発明の効果を発現する観点から、好ましくは0.1nm以上、より好ましくは0.5nm以上、更に好ましくは1nm以上、更に好ましくは2nm以上、更に好ましくは3nm以上である。また、同様の観点から、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下、更に好ましくは20nm以下、更に好ましくは10nm以下、更に好ましくは6nm以下、更に好ましくは5nm以下である。微細セルロース繊維複合体の平均繊維径は、実施例に記載の方法によって測定することができる。
微細セルロース繊維複合体の平均繊維長は、本発明の効果を発現する観点から、好ましくは150nm以上、より好ましくは200nm以上である。同様の観点から、好ましくは1000nm以下、より好ましくは750nm以下、更に好ましくは500nm以下、更に好ましくは400nm以下である。微細セルロース繊維複合体の平均繊維長は、実施例に記載の方法によって測定することができる。
微細セルロース繊維複合体の平均アスペクト比、すなわち繊維長/繊維径の値は、分散性の観点から、好ましくは1以上であり、より好ましくは10以上であり、更に好ましくは20以上であり、更に好ましくは40以上であり、更に好ましくは50以上であり、その上限は好ましくは250以下であり、より好ましくは200以下であり、更に好ましくは150以下であり、更に好ましくは100以下であり、更に好ましくは90以下である。同様の観点から、平均アスペクト比が前記範囲内にある場合、アスペクト比の標準偏差は、好ましくは60以下であり、より好ましくは50以下であり、更に好ましくは45以下であり、下限は特に設定されないが、経済性の観点から、好ましくは4以上である。微細セルロース繊維複合体の平均アスペクト比は、実施例に記載の方法によって測定することができる。
微細セルロース繊維複合体は、微細化処理されたイオン変性セルロース繊維複合体である。したがって、平均繊維径、平均繊維長以外の修飾基の平均結合量や導入率、改質基種の種類や修飾基の種類、修飾基の結合様式に関する、微細セルロース繊維複合体の好適範囲は、イオン変性セルロース繊維複合体のものと同等である。
微細セルロース繊維複合体は、分散液の状態で使用することもできるし、あるいは乾燥処理等により該分散液から溶媒を除去して、乾燥した粉末状の微細セルロース繊維複合体(粉末状の微細セルロース繊維複合体は適宜溶媒を所定量含んでいても良い。)として使用することもできる。乾燥処理の方法は、微細セルロース繊維複合体の品質を維持できる方法であれば特に制限されず、例えば熱風やヒーター、真空による乾燥、フリーズドライ、スプレードライ等の方法が挙げられる。
(微細化処理工程:工程C)
本工程は、所定の平均繊維径、平均繊維長を有する前述のようにして得られたイオン変性セルロース繊維複合体を、有機溶媒中で微細化処理する工程であり、微細化処理によって微細セルロース繊維複合体が得られる。微細化処理工程では、前述のようにして得られたイオン変性セルロース繊維複合体が有機溶媒に分散した状態のものや、有機溶媒を除去したものについては新たに溶媒に分散させたものに対して微細化処理を行うことが好ましい。具体的には、特開2013−151661号の微細化工程の説明を参照して実施することができる。
なお、セルロース繊維(換算量)とは、微細セルロース繊維複合体の質量から修飾基の質量を引いた質量を指す。微細セルロース繊維複合体におけるセルロース繊維(換算量)は、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。
〔非水系媒体〕
本発明の非水系分散液は、塗布性の観点から、非水系媒体を含有する。本発明における非水系媒体は有機溶媒や反応性の官能基を含む有機性媒体が挙げられ、例えば、塗料分野で使用されるものであれば特に限定されるものではない。
本発明に用いられる非水系媒体は、平滑性及び耐熱性の観点から、25℃における誘電率は好ましくは75以下であり、より好ましくは55以下であり、更に好ましくは45以下であり、好ましくは1以上であり、より好ましくは2以上であり、更に好ましくは3以上である。なお、非水系媒体の誘電率は、液体用誘電率計Model871(日本ルフト社製)を用い25℃にて測定することができる。
有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、2−ブタノール、1−ペンタノール、オクチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;酢酸等のカルボン酸類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、流動パラフィン等の炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトアニリド等のアミド類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酪酸メチル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等のエステル類;ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のポリエーテル類;ポリジメチルシロキサン等のシリコーンオイル類;アセトニトリル、プロピオニトリル、エステル油、サラダ油、大豆油、ヒマシ油等が挙げられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
また、反応性の官能基を含む有機性媒体としては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸n−へキシル、メタクリル酸n−へキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル、フェニルグリシジルエーテルアクリレート等のアクリレート類;ヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、フェニルグリシジルエーテルアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー等のウレタンプレポリマー類;n−ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ステアリン酸グリシジルエーテル、スチレンオキサイド、フェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類;クロロスチレン、メトキシスチレン、ブトキシスチレン、ビニル安息香酸等が挙げられる。
分散液中の非水系媒体の含有量は、樹脂組成物の強度や靱性の観点から、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、更に好ましくは95質量%以上である。一方、同様の観点から、好ましくは99.99質量%以下であり、より好ましくは99.8質量%以下であり、更に好ましくは99.5質量%以下である。
分散液には、微細セルロース繊維複合体及び非水系媒体以外の成分、例えば、充填剤、加水分解抑制剤、難燃剤、酸化防止剤、炭化水素系ワックス類、滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、光安定剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、発泡剤、界面活性剤、でんぷん類やアルギン酸等の多糖類、ゼラチン、ニカワ、カゼイン等の天然たんぱく質、タンニン、ゼオライト、セラミックス、金属粉末等の無機化合物、香料、流動調整剤、レべリング剤、導電剤、紫外線分散剤及び消臭剤等の成分が含まれていてもよい。かかる成分の分散液中の含有量としては、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
〔分散液の製造方法〕
本発明の分散液の製造方法は、上述の微細セルロース繊維複合体から異物を除去する工程を含む。
[異物を除去する工程]
通常、セルロース繊維原料には様々な種類の異物が意図せずに含まれている。例えば、木材由来の原料を用いた場合には、本来はパルプ化前に剥皮されて除去されているはずの樹皮が異物として含まれていることがある。セルロース繊維原料が製紙用化学パルプである場合には、蒸解が不充分で元の木材原料の形状を保ったままの未蒸解片が異物として含まれていることがある。セルロース繊維原料が機械パルプである場合には、機械的パルプ化工程にて充分にパルプ化されずに残った未解繊繊維が異物として含まれていることがある。また、すべての原料に共通して含まれる異物として、石片や砂、サビ、金属片、ホコリなどが挙げられる。また、セルロース繊維から微細化し微細セルロース繊維を製造する際に微細化されていないセルロース繊維が異物として含まれる場合がある。
通常、セルロース繊維原料を製造する工程には異物を除去する工程が含まれるが、それでも異物を完全に除去することは実質的に不可能であるため、多かれ少なかれ何らかの異物が残存している。これらの異物が含まれていると、得られるセルロース繊維中に異物が残留し、靱性の低下を引き起こすことを本発明者らは見出した。従って、異物の残留は望ましくない。
本工程における異物除去処理は、微細化処理された微細セルロース繊維複合体からこのような異物を分離し、除去する処理であればよい。異物除去処理に用いる異物除去装置としては、ろ過、遠心分離、透析などがあるが、生産性の観点からろ過、遠心分離が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、種類の異なる複数を組み合わせてもよい。また、同一の装置を複数台組み合わせてもよい。ろ過を実施する場合、好ましくは2回以上、より好ましくは3回以上実施する。
異物を除去する工程では、微細化処理された微細セルロース繊維複合体を非水系媒体中に分散させて行うことができる。微細セルロース繊維複合体と溶媒との割合は特に限定されないが、セルロース繊維換算の固形分含有量としては、効率的な異物除去の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上であり、一方、同様の観点から、好ましくは15質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは1.0質量%以下である。
[ろ過]
ろ過では、微細化処理された微細セルロース繊維複合体の分散液を、例えば加圧ろ過または減圧ろ過する。ろ過差圧は0.01〜10MPaであることが好ましい。ろ過としては、ろ材としてろ紙を用いる一般的なろ過に加えて、ろ過助剤を用いても良いし、ろ材として多孔質ろ材等を用いてもよい。
一般的なろ過としては、市販されているろ紙等の紙ろ材を使用できる。ろ紙を使用する場合、ろ紙のろ過精度は、効率的な異物除去の観点及び経済性の観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.03μm以上、更に好ましくは0.05μm以上であり、同様の観点から、好ましくは30μm以下、より好ましくは15μm以下、更に好ましくは5μm以下である。ろ過操作は複数回、例えば2回以上行ってもよく、ろ過効率の観点から、回数が増えるに従って、ろ過精度が小さなろ紙を使用することが好ましい。
ろ過助剤としては、無機化合物、有機化合物のいずれを用いてもよいが、粒状のものが好ましい。具体的には、好ましくは、珪藻土、パーライト、粉末セルロース、活性炭等が挙げられる。
多孔質ろ材としては、金属多孔質ろ材、無機材料多孔質ろ材、およびポリマー多孔質ろ材等が挙げられ、ろ材の平均孔径は、効率的な異物除去の観点及び経済性の観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.03μm以上、更に好ましくは0.05μm以上であり、同様の観点から、好ましくは30μm以下、より好ましくは15μm以下、更に好ましくは5μm以下である。
これら、一般的なろ過、ろ過助剤、及び特定のろ材は、ろ過処理において組み合わせてもよいし、組み合わせる順序も適宜選択することができる。
(5)ろ過条件等
ろ過装置は、加圧もしくは減圧を行える必要がある。加圧または減圧下でろ過を行うことにより、分散液の濃度や粘度が高くても充分なろ過処理量が可能となる。このような装置として、ヌッチェ型、キャンドル型、リーフディスク型、ドラム型、フィルタープレス型、ベルトフィルター型等が挙げられる。
ろ過処理量は1時間当たり好ましくは10L/m以上であり、より好ましくは100L/m以上である。
[遠心分離]
遠心分離を適用する場合の遠心力は、好ましくは1000〜10000G、より好ましくは1000〜5000G、更に好ましくは2000〜4000Gである。遠心分離においては、遠心力を容易に上記範囲にできる点で、遠心分離機を使用することもできる。
〔樹脂組成物〕
本発明の樹脂組成物は、前記微細セルロース繊維複合体及び樹脂を含有し、異物が所定量以下のものである。樹脂組成物の形状は特に限定されないが、成形体であることが好ましく、本発明の分散液と樹脂との混合物に溶媒キャスト法、又紡糸等の成形処理又は、分散液と樹脂との混合物を乾燥し非水系媒体を除去した後に押出成形、射出成形、プレス成形、必要に応じて硬化処理を施すことによって、成形体を調製することができる。
樹脂組成物中に含まれる異物量は、樹脂組成物の強度、靱性の観点から、長さ1μm以上の異物が樹脂組成物中に100個以下であり、好ましくは80個以下であり、より好ましくは60個以下であり、更に好ましくは30個以下であり、更に好ましくは20個以下であり、更に好ましくは15個以下であり、更に好ましくは10個以下である。樹脂組成物中に含まれる異物量は、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。
樹脂組成物中の微細セルロース繊維複合体の含有量は、樹脂組成物の強度や靱性の観点から、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.3質量%以上であり、更に好ましくは1質量%以上であり、更に好ましくは5質量%以上であり、更に好ましくは10質量%以上であり、更に好ましくは15質量%以上である。一方、同様の観点から、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下であり、更に好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
樹脂組成物中のセルロース繊維(換算量)の含有量は、樹脂組成物の強度や靱性の観点から、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、更に好ましくは0.8質量%以上であり、更に好ましくは4質量%以上であり、より好ましくは8質量%以上であり、更に好ましくは12質量%以上である。一方、同様の観点から、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下であり、更に好ましくは35質量%以下更に好ましくは25質量%以下である。
樹脂組成物中の樹脂の含有量は、樹脂組成物の強度や靱性の観点から、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上であり、更に好ましくは30質量%以上であり、更に好ましくは40質量%以上であり、更に好ましくは50質量%以上であり、更に好ましくは60質量%以上である。一方、同様の観点から、好ましくは99.9質量%以下、より好ましくは99質量%以下、好ましくは95質量%以下であり、より好ましくは90質量%以下であり、更に好ましくは85質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。
樹脂組成物には、本発明の分野で通常使用される添加剤が含有されていてもよい。このような添加剤としては、結晶核剤、硬化剤、染料、顔料、可塑剤、触媒、防かび剤、消泡剤、レベリング剤、顔料分散剤、沈降防止剤、たれ防止剤、増粘剤、艶消し剤、光安定剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。かかる添加剤の樹脂組成物中の含有量としては、好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
可塑剤としては、特に限定はなく、従来からの可塑剤であるフタル酸エステルやコハク酸エステル、アジピン酸エステルといった多価カルボン酸エステル、グリセリン等脂肪族ポリオールの脂肪酸エステル等が挙げられる。具体的には、特開2008−174718号公報及び特開2008−115372号公報に記載の可塑剤が例示される。
また、樹脂組成物がゴム系樹脂を含有する場合には、前記以外の成分として、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、ゴム工業界で通常用いられるカーボンブラックやシリカ等の補強用充填剤、各種薬品、例えば加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸、プロセスオイル、植物油脂、可塑剤等のタイヤ用、その他一般ゴム用に配合されている各種添加剤を従来の一般的な量で配合させることができる。
樹脂組成物の製造方法は特に制限されないが、本発明の分散液又は本発明の製造方法によって製造された分散液と樹脂とを混合する工程を含む方法が挙げられる。あるいは、前述の樹脂、微細セルロース繊維複合体、非水系媒体を、必要により、これら以外の成分と一緒に、高圧ホモジナイザーで分散処理を行うことにより、調製することができる。あるいは、これらの各原料を、ヘンシェルミキサー、自転公転式攪拌機等で攪拌、あるいは密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて溶融混練することでも調製することができる。
その後、必要に応じて非水系媒体を公知の方法で除去することで、樹脂組成物を製造することができる。
[樹脂]
本発明の樹脂組成物に使用できる樹脂は特に限定されないが、本発明における樹脂としては、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、セルロース系樹脂、ゴム系樹脂を用いることができる。かかる熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、セルロース系樹脂及びゴム系樹脂は、樹脂として1種のみ使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
総合すると、樹脂組成物に使用される樹脂としては、オレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ビニル樹脂及びゴム系樹脂からなる群より選択される1種以上が好ましい。
熱可塑性樹脂としては、ポリ乳酸樹脂等の飽和ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、スチレン樹脂、ビニルエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂等のビニル樹脂;(メタ)アクリル系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上の混合樹脂として用いても良い。これらの中でも、本発明の効果を発現する観点から、飽和ポリエステル樹脂、オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド樹脂が好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリル系樹脂とは、メタクリル系樹脂及びアクリル系樹脂を含むものを意味する。
(メタ)アクリル系樹脂としては、該樹脂を構成する全重合体の単量体単位の合計を基準として、50重量%以上の(メタ)アクリル酸メチルを単量体単位として含むものが好ましく、メタクリル系樹脂がより好ましい。
メタクリル系樹脂は、メタクリル酸メチル及びこれに共重合可能な他の単量体を共重合することによって製造することができる。重合方法は特に限定されず、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、注型重合法(例えば、セルキャスト重合法)などが挙げられる。
硬化性樹脂は、光硬化性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂が好ましい。
光硬化性樹脂は、紫外線や電子線等の活性エネルギー線照射により、ラジカルやカチオンを発生する光重合開始剤を用いることで重合反応が進行する。
前記光重合開始剤としては、例えばアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物、2,3−ジアルキルシオン類化合物類、ジスルフィド化合物、チウラム化合物類、フルオロアミン化合物等が挙げられる。より具体的には、特開2018−024967号公報の段落0113に記載の化合物が挙げられる。
光重合開始剤で、例えば、単量体(単官能単量体、多官能単量体)、反応性不飽和基を有するオリゴマー又は樹脂等を重合することができる。
単官能単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルなどの(メタ)アクリル系単量体、ビニルピロリドンなどのビニル系単量体、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートなどの架橋環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。多官能単量体には、2〜8程度の重合性基を有する多官能単量体が含まれ、2官能単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの架橋環式炭化水素基を有するジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。3〜8官能単量体としては、例えば、グリセリントリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
反応性不飽和基を有するオリゴマー又は樹脂としては、ビスフェノールA−アルキレンオキサイド付加体の(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート(ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ノボラック型エポキシ(メタ)アクリレートなど)、ポリエステル(メタ)アクリレート(例えば、脂肪族ポリエステル型(メタ)アクリレート、芳香族ポリエステル型(メタ)アクリレートなど)、ウレタン(メタ)アクリレート(ポリエステル型ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル型ウレタン(メタ)アクリレートなど)、シリコーン(メタ)アクリレートなどが例示できる。これらのオリゴマー又は樹脂は、前記単量体と共に用いても良い。
光硬化性樹脂は、凝集物が少なく、透明性に優れる分散液や樹脂成形体が得られる観点から、好ましい。
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂;フェノール樹脂;フェノキシ樹脂;ユリア樹脂;メラミン樹脂;不飽和ポリエステル樹脂;ジアリルフタレート樹脂;ポリウレタン樹脂;ケイ素樹脂;ポリイミド樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂は、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。これらの中では、本発明の効果を発現する観点から、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂が好ましく、エポキシ樹脂がより好ましい。
前記樹脂成分にエポキシ樹脂を用いる場合は、硬化剤を使用することが好ましい。硬化剤を配合することによって、樹脂組成物から得られる成形体を強固に成形することができ、機械的強度を向上させることができる。尚、硬化剤の含有量は、使用する硬化剤の種類により適宜設定すればよい。
セルロース系樹脂としては、酢酸セルロース(セルロースアセテート)、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース混合アシレートなどの有機酸エステル;硝酸セルロース、リン酸セルロース等の無機酸エステル;硝酸酢酸セルロース等の有機酸無機酸混酸エステル;アセチル化ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロースエーテルエステルなどが挙げられる。上記酢酸セルロースには、セルローストリアセテート(アセチル置換度2.6〜3)、セルロースジアセテート(アセチル置換度2以上2.6未満)、セルロースモノアセテートが含まれる。セルロース系樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、本発明では、樹脂としてゴム系樹脂を用いることができる。ゴム系樹脂は、強度を高めるために、補強材としてカーボンブラックやシリカ等の無機フィラー配合品が汎用されているが、その補強効果にも限界があると考えられる。しかしながら、本発明の分散液にゴム系樹脂を配合することで得られる樹脂組成物中での分散性に優れることから、機械的強度及び耐熱性に優れる分散液や成形体(ゴム)を提供することが可能になると考えられる。
ゴム系樹脂としては、ジエン系ゴム、非ジエン系ゴムが好ましい。
ジエン系ゴムとしては、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、ブチルゴム、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体ゴム、クロロプレンゴム及び変性天然ゴム等が挙げられる。変性天然ゴムとしては、エポキシ化天然ゴム、水素化天然ゴム等が挙げられる。非ジエン系ゴムとしては、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、多硫化ゴム、エピクロルヒドリンゴムなどが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
〔樹脂成形体〕
樹脂成形体は、本発明の樹脂組成物を利用した押出成形、射出成形、プレス成形、注型成型又は溶媒キャスト法等の公知の成形方法を適宜用いることによって調製することができる。本発明の分散液は、微細セルロース繊維複合体の分散性に優れているので、成形体である各種樹脂製品の機械的強度が従来品よりも向上している。そのため、樹脂成形体を各種用途に好適に用いることができる。
本発明の樹脂組成物や樹脂成形体が使用できる用途は特に限定されないが、例えば透明樹脂材料、3次元造形材料、クッション材、補修材、接着剤、粘着剤、シーリング材、断熱材、吸音材、人工皮革材料、塗料、電子材、包装材料、タイヤ、自動車部品、繊維複合材料に用いることができる。これらの中でも、透明性に優れる成形体が得られる観点からは、特に透明樹脂材料、接着剤、粘着剤、人工皮革材料、塗料、電子材、繊維複合材料用途が好ましく、強度発現の観点からは3次元造形材料、クッション材、補修材、シーリング材、断熱材、吸音材、タイヤ、自動車部品用途が好ましい。
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
〔セルロースの結晶化度〕
微細セルロース繊維及び微細セルロース繊維複合体におけるセルロースの結晶化度は、X線回折法による回折強度値からSegal法により算出したセルロースI型結晶化度であり、下記計算式(A)により定義される。
セルロースI型結晶化度(%)=[(I22.6−I18.5)/I22.6]×100 (A)
〔式中、I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、I18.5は,アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。〕
〔セルロース繊維、イオン変性セルロース繊維及びイオン変性セルロース繊維複合体の平均繊維径及び平均繊維長〕
測定対象のセルロース繊維にイオン交換水を加えて、その濃度が0.01質量%の分散液を調製する。該分散液を湿式分散タイプ画像解析粒度分布計(ジャスコインターナショナル社製、商品名:IF−3200)を用いて、フロントレンズ:2倍、テレセントリックズームレンズ:1倍、画像分解能:0.835μm/ピクセル、シリンジ内径:6515μm、スペーサー厚み:500μm、画像認識モード:ゴースト、閾値:8、分析サンプル量:1mL、サンプリング:15%の条件で測定する。セルロース繊維を100本以上測定し、それらの平均ISO繊維径を平均繊維径をとして、平均ISO繊維長を平均繊維長として算出する。
〔微細セルロース繊維及び微細セルロース繊維複合体の平均繊維径〕
微細セルロース繊維又は微細セルロース繊維複合体に水又はエタノールを加えて、その濃度が0.0001質量%の分散液を調製し、該分散液をマイカ(雲母)上に滴下して乾燥したものを観察試料として、原子間力顕微鏡(AFM、Nanoscope III Tapping mode AFM、Digital instrument社製、プローブはナノセンサーズ社製Point Probe (NCH)を使用)を用いて、該観察試料中のセルロース繊維の繊維高さを測定する。その際、該セルロース繊維が確認できる顕微鏡画像において、微細セルロース繊維又は微細セルロース繊維複合体を100本以上抽出し、それらの繊維高さから平均繊維径を算出する。繊維方向の距離より、平均繊維長を算出する。平均アスペクト比は平均繊維長/平均繊維径より算出し、標準偏差も算出する。
〔イオン変性セルロース繊維、微細セルロース繊維及び微細セルロース繊維複合体のアニオン性基含有量〕
乾燥質量0.5gの測定対象のセルロース繊維又は複合体を100mLビーカーにとり、イオン交換水を加えて全体で55mLとし、そこに0.01M塩化ナトリウム水溶液5mLを加えて分散液を調製する。測定対象のセルロース繊維又は複合体が十分に分散するまで該分散液を撹拌する。この分散液に0.1M塩酸を加えてpHを2.5〜3に調整し、自動滴定装置(東亜ディーケーケー社製、商品名「AUT−501」)を用い、0.05M水酸化ナトリウム水溶液を待ち時間60秒の条件で該分散液に滴下し、1分ごとの電導度及びpHの値を測定する。pH11程度になるまで測定を続け、電導度曲線を得る。この電導度曲線から水酸化ナトリウム滴定量を求め、次式により、測定対象のセルロース繊維又は複合体のアニオン性基含有量を算出する。
アニオン性基含有量(mmol/g)=水酸化ナトリウム滴定量×水酸化ナトリウム水溶液濃度(0.05M)/測定対象のセルロース繊維又は複合体の質量(0.5g)
〔微細セルロース繊維のアルデヒド基含有量〕
ビーカーに、対象のセルロース繊維100.0g(固形分濃度1.0質量%)、酢酸緩衝液(pH4.8)、2−メチル−2−ブテン0.33g、亜塩素酸ナトリウム0.45gを加え室温で16時間撹拌する。反応終了後、イオン交換水にて洗浄を行い、アルデヒドを酸化処理したセルロース繊維を得る。反応液を凍結乾燥処理し、得られた乾燥品をセルロース繊維のアニオン性基含有量を上記に記載の方法で測定し、酸化処理したセルロース繊維のアニオン性基含有量を算出する。続いて、次式にて対象のセルロース繊維のアルデヒド基含有量を算出する。
アルデヒド基含有量(mmol/g)=(酸化処理した対象セルロース繊維のアニオン性基含有量)−(対象セルロース繊維のアニオン性基含有量)
〔微細セルロース繊維複合体の修飾基の平均結合量及び導入率(イオン結合)〕
修飾基の結合量を次のIR測定方法によって求め、下記式によりその平均結合量及び導入率を算出する。IR測定は、具体的には、乾燥させた微細セルロース繊維又は微細セルロース繊維複合体を赤外吸収分光装置(IR)(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、商品名:Nicolet 6700)を用いATR法にて測定し、次式により、イオン結合による修飾基の平均結合量及び導入率を算出する。以下はアニオン性基がカルボキシ基の場合を示す。以下の「1720cm−1のピーク強度」は、カルボニル基に由来するピーク強度である。なお、カルボキシ基以外のアニオン性基の場合はピーク強度の値を適宜変更し、修飾基の平均結合量及び導入率を算出すればよい。
修飾基の結合量(mmol/g)=[微細セルロース繊維のカルボキシ基含有量(mmol/g)]×[(微細セルロース繊維の1720cm−1のピーク強度−修飾基導入後の微細セルロース繊維複合体の1720cm−1のピーク強度)/微細セルロース繊維の1720cm−1のピーク強度]
修飾基の導入率(%)=100×(修飾基の結合量(mmol/g))/(導入前の微細セルロース繊維中のカルボキシ基含有量(mmol/g))
〔微細セルロース繊維複合体の修飾基の平均結合量及び導入率(アミド結合)〕
アミド結合による修飾基の平均結合量は、下記式により算出する。
修飾基の結合量(mmol/g)=(修飾基導入前の微細セルロース繊維中のカルボキシ基含有量(mmol/g))−(修飾基導入後の微細セルロース繊維複合体中のカルボキシ基含有量(mmol/g))
修飾基の導入率(%)=100×(修飾基の結合量(mmol/g))/(導入前の微細セルロース繊維中のカルボキシ基含有量(mmol/g))
〔微細セルロース繊維複合体におけるセルロース繊維(換算量)〕
微細セルロース繊維複合体におけるセルロース繊維(換算量)は、以下の方法によって測定する。
(1)添加される修飾用化合物が1種類の場合
セルロース繊維量(換算量)を下記式Aによって算出する。
<式A>
セルロース繊維量(換算量)(g)=微細セルロース繊維複合体の質量(g)/〔1+修飾用化合物の分子量(g/mol)×修飾基の結合量(mmol/g)×0.001〕
(2)添加される修飾用化合物が2種類以上の場合
各修飾用化合物のモル比率(即ち、添加される修飾用化合物の合計モル量を1とした時のモル比率)を考慮して、セルロース繊維量(換算量)を算出する。
なお、セルロース繊維と修飾用化合物との結合様式がイオン結合の場合、上述の式Aにおいて、「修飾用化合物の分子量」とは、修飾用化合物が第1級アミン、第2級アミン又は第3級アミンである場合は「共重合部を含めた修飾用化合物全体の分子量」を指し、修飾基を有する化合物が第4級アンモニウム化合物又はホスホニウム化合物である場合は「(共重合部を含めた修飾用化合物全体の分子量)−(陰イオン成分の分子量)」を指す。
一方、セルロース繊維と修飾用化合物との結合様式がアミド結合の場合、上述の式Aにおいて、「修飾用化合物の分子量」とは、修飾用化合物が第1級アミン又は第2級アミンである場合、「(共重合部を含めた修飾基を有する化合物全体の分子量)−18」である。
製造例1(針葉樹の酸化パルプ由来のアニオン性基含有微細セルロース繊維)
針葉樹の漂白クラフトパルプ(フレッチャー チャレンジ カナダ社製、商品名「Machenzie」、CSF650ml)を天然セルロース繊維として用いた。TEMPOとしては、市販品(ALDRICH社製、Free radical、98質量%)を用いた。次亜塩素酸ナトリウム及び臭化ナトリウムは市販品を用いた。
まず、針葉樹の漂白クラフトパルプ繊維100gを9900gのイオン交換水で十分に撹拌した後、該パルプ繊維100gに対し、TEMPO1.6g、臭化ナトリウム10g、次亜塩素酸ナトリウム28.4gをこの順で添加した。自動滴定装置(東亜ディーケーケー社製、商品名:AUT−701)でpHスタット滴定を用い、十分な撹拌下、0.5M水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10.5に保持した。反応を20℃で120分間行った。水酸化ナトリウム水溶液の滴下を停止し、酸化パルプを得た。得られた酸化パルプを、コンパクト電気伝導率計(堀場製作所製、LAQUAtwin EC−33B)によるろ液の電導度測定において200μs/cm以下になるまでイオン交換水を用いて十分に洗浄し、次いで脱水処理を行い、固形分34.6質量%の酸化パルプを得た。その後、酸化パルプ1.04gとイオン交換水34.8gを混合し、高圧ホモジナイザーを用いて150MPaで酸化パルプの微細化処理を10回行い、イオン性基としてカルボキシ基を含有した、Na塩型の微細セルロース繊維の分散液(固形分1.0質量%)を得た。この微細セルロース繊維のカルボキシ基含有量は1.1mmol/g、平均繊維長は578nm、平均繊維径は2.7nm、平均アスペクト比は214、アスペクト比の標準偏差は64、アルデヒド基含有量は0.29mmol/g、結晶化度は60%であった。
製造例2(アルデヒド基が還元処理されたアニオン性基含有微細セルロース繊維)
製造例1で得られたカルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液3846.15g(固形分1.0質量%)に、1M水酸化ナトリウム水溶液を加えpH10程度にした後、水素化ホウ素ナトリウムを2.63g仕込み、室温下3時間反応させアルデヒド基の還元処理を行った。反応終了後、1M塩酸水溶液を405g、イオン交換水を4286g加え0.7%の水溶液とし、室温下1時間反応させプロトン化を行った。反応終了後ろ過し、ケークをイオン交換水にて洗浄し、塩酸及び塩を除去した。得られた微細セルロース繊維分散液に1M水酸化ナトリウム水溶液を加えpH10程度にした後、イオン交換水で1%に希釈し、高圧ホモジナイザーを用いて150MPaで微細化処理を10回行った。得られたカルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液(固形分1.0質量%)のカルボキシ基含有量は1.1mmol/g、平均繊維長は573nm、平均繊維径は2.9nm、平均アスペクト比は198、アスペクト比の標準偏差は62、アルデヒド基含有量は0.02mmol/g、結晶化度は60%であった。
製造例3(低アスペクト比化処理されたアニオン性基含有微細セルロース繊維)
製造例1における固形分34.6質量%の酸化パルプ92.54gを、1000gのイオン交換水で希釈し、濃塩酸を346g(セルロース系原料の絶乾質量100質量部に対して389質量部)加えて、酸化パルプの固形分2.34質量%、塩酸濃度2.5Mの分散液(pH1以下)を製造した。この分散液を105℃で120分間還流させて酸加水分解処理を行った。得られた酸化パルプを十分に洗浄し、固形分41質量%の酸化パルプを得た。その後、この酸化パルプ0.88g及びイオン交換水35.12gを混合し、更に高圧ホモジナイザーを用いて150MPaで微細化処理を10回行い、目的とする微細セルロース繊維分散液(固形分1.0質量%)を得た。この微細セルロース繊維のカルボキシ基含有量は1.0mmol/g、平均繊維長は213nm、平均繊維径は8.2nm、平均アスペクト比は26、アルデヒド基含有量は0.27mmol/g、結晶化度は60%であった。
表1に、前記各製造例で得られた微細セルロース繊維の物性を示す。
Figure 2019119880
製造例4(酸処理して得られるアニオン性基含有微細セルロース繊維)
製造例1で得られたカルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液(固形分1.0質量%)の2000gを、メカニカルスターラーにて室温下(25℃)、30分攪拌した。続いてこれに1M塩酸水溶液を245g投入し、室温下、1時間攪拌して反応させた。反応終了後ろ過し、ケークをイオン交換水で洗浄を行い、塩酸及び生成した塩を除去した。その後、ジメチルホルムアミド(DMF)で溶媒置換し、DMFにカルボキシ基含有微細セルロース繊維が膨潤した状態の微細セルロース繊維分散液(固形分5.0質量%)を得た。
製造例5(還元処理及び酸処理したアニオン性基含有微細セルロース繊維)
製造例2で得られたカルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液(固形分1.0質量%)を用いたこと以外は製造例4と同様の方法で、微細セルロース繊維分散液(固形分5.0質量%)を得た。
製造例6(低アスペクト化処理及び酸処理したアニオン性基含有微細セルロース繊維)
製造例3で得られたカルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液(固形分1.0質量%)を用いたこと以外は製造例4と同様の方法で、微細セルロース繊維分散液(固形分5.0質量%)を得た。
製造例7−1(微細セルロース繊維複合体の製造(結合様式:イオン結合))
製造例4で得られたカルボキシ基含有微細セルロース繊維の分散液をジメチルホルムアミド(DMF)で溶媒置換し、固形分0.5質量%の分散液を得た。続いて、微細セルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミノ基1molに相当する量のテトラブチルアンモニウムヒドロキシドを修飾用化合物として添加した後、高圧ホモジナイザーを用いて、150MPaで3パス微細化処理し、微細セルロース繊維複合体を得た。
製造例7−2〜7−6(微細セルロース繊維複合体の製造(結合様式:イオン結合))
修飾用化合物として、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドの代わりに表3に示すアミンをそれぞれ使用したこと以外は製造例7−1と同様の方法で、各微細セルロース繊維複合体を得た。
製造例8(微細セルロース繊維複合体の製造(結合様式:イオン結合))
製造例5で得られた微細セルロース繊維を用いた以外は製造例7−6と同様の方法で、微細セルロース繊維複合体を得た。
製造例9(微細セルロース繊維複合体の製造(結合様式:イオン結合))
製造例6で得られた微細セルロース繊維を用いた以外は製造例7−6と同様の方法で、微細セルロース繊維複合体を得た。
製造例10(微細セルロース繊維複合体の製造(結合様式:共有結合))
製造例4で得られたアニオン性基含有微細セルロース繊維のDMF分散液40g(固形分5.0質量%)に、微細セルロース繊維のカルボキシ基1molに対して、アミノ基1.2molに相当する量のEOPOアミン(Jeffamine M−2070)、4−メチルモルホリンを0.34g、縮合剤である4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロライド(DMT−MM)を1.98g添加し、DMF300g中に溶解させた。次いで、この混合物を室温(25℃)で14時間撹拌して反応させた。反応終了後ろ過し、そのケークをエタノール洗浄してDMT−MM塩を除去し、更にDMFで洗浄及び溶媒置換し、微細セルロース繊維の含有量が0.5質量%となるようにDMFで希釈した後に高圧ホモジナイザーを用いて、150MPaで3パス微細化処理し、アニオン性基含有微細セルロース繊維にEOPOアミンがアミド結合を介して連結したアニオン性基含有微細セルロース繊維複合体を得た。
製造例11(微細セルロース繊維複合体の製造(結合様式:イオン結合/イオン結合))
製造例4で得られたアニオン性基含有微細セルロース繊維のカルボキシ基1molに対して、ドデシルアミン(市販品)を0.8mol、EOPOアミン(Jeffamine M−2070)を0.2mol混合したこと以外は製造例7−1と同様の方法で、アニオン性基含有微細セルロース繊維複合体を得た。
製造例12(微細セルロース繊維複合体の製造(結合様式:共有結合/イオン結合))
製造例4で得られたアニオン性基含有微細セルロース繊維のDMF分散液40g(固形分5.0質量%)に、微細セルロース繊維のカルボキシ基1molに対して、アミノ基1.2molに相当する量のドデシルアミン(市販品)、4−メチルモルホリンを0.34g、縮合剤であるDMT−MMを1.98g添加し、DMF300g中に溶解させた。この混合物を室温(25℃)で14時間撹拌して反応させた。反応終了後ろ過し、そのケークをエタノール洗浄してDMT−MM塩を除去し、更にDMFで洗浄及び溶媒置換し、微細セルロース繊維の含有量が0.5質量%となるようにDMFで希釈した後に高圧ホモジナイザーを用いて、150MPaで3パス微細化処理し、アニオン性基含有微細セルロース繊維にドデシルアミンがアミド結合を介して連結したアニオン性基含有微細セルロース繊維複合体を得た。
次いで、得られた微細セルロース繊維複合体のカルボキシ基1molに対して、アミノ基0.2molに相当する量のEOPOアミン(Jeffamine M−2070))を添加した後、高圧ホモジナイザーを用いて、150MPaで3パス微細化処理し、微細セルロース繊維複合体を得た。
実施例1−1(ろ過による異物の除去)
製造例7−1で得られた微細セルロース繊維複合体含有液をろ紙(ロキテクノ社製、商品名:MPX−200、ろ過精度20μm)を用いて、加圧ろ過し、微細セルロース繊維複合体含有分散液を得、分散液中の異物量を測定した。なお、得られた分散液における微細セルロース繊維複合体の含有量は0.6質量%であり、非水系媒体の含有量は99.4質量%であった。
分散液をエバポレーターで微細セルロース繊維換算固形分含有量4質量%まで濃縮した。微細セルロース繊維複合体の所定量(即ち、微細セルロース繊維換算で1.6g)を含有する濃縮後の分散液と、エポキシ樹脂(三菱化学社製、商品名:jER828)の8.0gと混合し、高圧ホモジナイザーを用いて、100MPaで1パス、150MPaで2パス、混合処理した。得られた溶液に対して、硬化剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(和光純薬工業社製)0.4gを加え、自転公転式攪拌機(シンキー社製、商品名:あわとり練太郎)を用いて7分間撹拌した。得られたワニスをバーコーターを用いて塗布厚0.4mmで銅箔(古河電気工業社製、18μm厚)に塗工した。80℃で1時間乾燥し、非水系媒体を除去した後、150℃1時間で熱硬化させて、成形体である、厚さ約0.1mmの微細セルロース繊維複合体含有樹脂組成物を得た。
実施例1−2(ろ過による異物の除去)
含有液をろ紙(MPX−200)でろ過した後に、更にろ紙(ロキテクノ社製、商品名:MPX−100、ろ過精度10μm)でろ過したこと以外は実施例1と同様の方法で、微細セルロース繊維複合体含有樹脂組成物を得た。
実施例1−3(ろ過による異物の除去)
含有液をろ紙(MPX−100)でろ過した後に、更にろ紙(ロキテクノ社製、商品名:MPX−006、ろ過精度0.6μm)でろ過したこと以外は実施例2と同様の方法で微細セルロース繊維複合体含有樹脂組成物を得た。
実施例1−4(遠心分離による異物の除去)
実施例1−1における含有液を遠心分離(3000Gで10分)にかけて、分散液を得た。この分散液を実施例1−1に記載の方法に従って、微細セルロース繊維複合体含有樹脂組成物を得た。ろ紙(MPX−100)でろ過した後に、更にろ紙(ロキテクノ社製、商品名:MPX−045、ろ過精度4.5μm)でろ過したこと以外は実施例2と同様の方法で微細セルロース繊維複合体含有樹脂組成物を得た。
比較例1
異物の除去を行わなかったこと以外は実施例1−1と同様の方法で、微細セルロース繊維複合体含有樹脂組成物を得た。
参考例1
微細セルロース繊維複合体を加えず、塗布厚を0.1mmに変更したこと以外は実施例1−1と同様の方法で樹脂組成物を得た。
得られた各分散液及び樹脂組成物について、以下のように評価した。結果等を表2に示す。
試験例1(非水系分散液中の長さ1μm以上の異物量の測定)
微細セルロース繊維複合体分散液中の異物量は、画像解析粒度分布計(ジャスコインターナショナル社製、商品名:IF−3200)で以下の条件で測定した。微細セルロース繊維換算固形分含有量:0.5質量%、フロントレンズ:2倍、テレセントリックズームレンズ:4.5倍、画像分解能:0.185μm/ピクセル、シリンジ内径:6515μm、スペーサー厚み:50μm、画像認識モード:ゴースト、閾値:8、分析サンプル量:1mL、サンプリング:0.8%とした。ISO繊維長1μm以上の数値として測定されたものを、異物量とした。なお、本明細書中で言う非水系分散液中に含まれる長さ1μm以上の異物量とは、1mLあたりの異物量である。なお、他成分等の影響によって本記載の測定実施が困難の場合は、異物量の測定はこれに限らず、動的光散乱法、レーザー回折法など既知の手法を用いて測定することが出来る。
試験例2(樹脂組成物中の長さ1μm以上の異物量の測定)
得られた樹脂組成物の1cmを、光学顕微鏡(KEYENCE社製、商品名:デジタルマイクロスコープVHX−6000)で反射光を用いクロスニコルで倍率が200倍で観測した。WINROOF(三谷商事社製)を用いて1267μm×1689μmのエリアの画像解析を行い、周囲長/2が1μm以上の数値を算出したものを、長さ1μm以上の異物量とした。なお、本明細書中で言う樹脂組成物中に含まれる長さ1μm以上の異物量とは、樹脂組成物0.2mmあたりの異物量である。なお、他成分等の影響によって本記載の測定実施が困難の場合は、X線CT法、集束イオンビームと上記顕微鏡的手段を組み合わせた手法(FIB−SEM法など)、共焦点顕微鏡法などによる3次元構造解析手法等、対象の樹脂組成物の形状や性状に合わせて既知の手法を用いて測定することが出来る。また、測定に適した形状に加工してもよい。
試験例3(強度、靱性)
引張圧縮試験機(SHIMADZU社製、商品名「Autograph AGS−X」)を用いて、JIS K7113に準拠して、成形体の靱性を引張試験によって測定した。幅5mm、長さ40mmの短冊型サンプルを支点間距離20mmでセットし、クロスヘッド速度1mm/minで測定した。引張り強度が高い方が強度に優れ、破断点伸びが高い方が靱性に優れていることを示す。
Figure 2019119880
表2より、分散液の異物除去を行うことで、樹脂組成物の強度及び靱性が向上することが分かった(比較例1と実施例との対比)。
実施例2〜11(ろ過による異物の除去)
表3に示す各製造例で得られたそれぞれの微細セルロース繊維複合体を、実施例1−3に記載の方法に従ってろ過し、微細セルロース繊維複合体含有樹脂組成物を得た。各分散液及び樹脂組成物について、試験例1〜3による評価を行った。結果等を表3に示す。
Figure 2019119880
なお、表3におけるEOPOアミンは、ハンツマン社製、商品名:Jeffamine M−2070である。
表3より、微細セルロース繊維複合体における結合様式や修飾用化合物の種類に関わらず、本発明の非水系分散液を使用した樹脂組成物は強度や靱性に優れたものであることが分かった。
本発明の分散液は、透明樹脂材料、3次元造形材料、クッション材、補修材、接着剤、シーリング材、断熱材、吸音材、人工皮革材料、塗料、電子材、包装材料、タイヤ、自動車部品、繊維複合材料等の各種樹脂製品の強度及び靱性を高めるための成分として利用することができる。

Claims (9)

  1. イオン性基を含むセルロース繊維に修飾基が結合してなる微細セルロース繊維複合体、及び非水系媒体を含有し、セルロース繊維換算の固形分含有量を0.5質量%とした場合に含まれる長さが1μm以上の異物が10,000個以下である、非水系分散液。
  2. 前記イオン性基がアニオン性基である、請求項1に記載の分散液。
  3. 前記アニオン性基がカルボキシ基である、請求項2に記載の分散液。
  4. 微細セルロース繊維複合体から異物を除去する工程を含む、微細セルロース繊維複合体、及び非水系媒体を含有する分散液の製造方法。
  5. イオン性基を含むセルロース繊維に修飾基が結合してなる微細セルロース繊維複合体及び樹脂を含有し、長さが1μm以上の異物が100個以下である、樹脂組成物。
  6. 前記樹脂が、オレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ビニル樹脂及びゴム系樹脂からなる群より選択される1種以上である、請求項5に記載の樹脂組成物。
  7. 請求項5又は6に記載の樹脂組成物を成形してなる樹脂成形体。
  8. 請求項1〜3いずれか1項に記載の分散液又は請求項4に記載の分散液の製造方法によって製造された分散液と樹脂とを混合する工程を含む、樹脂組成物の製造方法。
  9. 前記樹脂が、オレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ビニル樹脂及びゴム系樹脂からなる群より選択される1種以上である、請求項8に記載の樹脂組成物の製造方法。
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