JP6100167B2 - ポリビニルアルコール系重合体フィルムおよび偏光フィルム - Google Patents

ポリビニルアルコール系重合体フィルムおよび偏光フィルム Download PDF

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Description

本発明は、欠点が少なく、しかも透明性が良好なポリビニルアルコール系重合体フィルム(以下、「ポリビニルアルコール系重合体」を「PVA」と略記することがある)、およびそれから製造される偏光フィルムに関する。
PVAフィルムは、透明性・光学特性・機械的強度・水溶性などに関するユニークな性質を利用して様々な用途に使用されており、特に最近ではその優れた光学特性を利用して、液晶ディスプレイ(LCD)の基本的な構成要素である偏光板を構成する偏光フィルムの製造原料(原反フィルム)としての用途が拡大している。このLCD用偏光板には高い光学性能が求められ、その構成要素である偏光フィルムに対しても高い光学性能が要求される。
偏光板は、一般に、PVAフィルムに染色、一軸延伸、および必要に応じてさらにホウ素化合物等による固定処理を施して偏光フィルムを製造した後、その偏光フィルムの表面に三酢酸セルロース(TAC)フィルムなどの保護膜を貼り合わせることによって製造される。そして当該PVAフィルムは、多くの場合、キャスト製膜法などを利用してPVAを含む製膜原液を乾燥して製造される。
これまでにPVAフィルムやその製造方法に関する多くの技術が知られている。例えば、T型スリットダイを用いてPVA水溶液(製膜原液)を流延する際にスリットダイの出口付近にカルシウムやケイ素が析出・付着し、得られるフィルムにスジが形成される問題や、ドラム型ロール表面にPVA水溶液を流延しフィルムを形成した後、このロールからフィルムを剥離する際に、ケイ素の含有量が多いことにより剥離しにくくなって、無理に剥離する際に延伸が生じてフィルムに光学ムラが形成される問題を踏まえ、光学的スジや光学的色ムラの発生が抑制されたPVAフィルムを得ることなどを目的として、PVAフィルムにおけるカルシウムまたはケイ素の含有量を特定の範囲とする方法が知られている(特許文献1参照)。当該特許文献1には、PVA100質量部に対して界面活性剤を0.01質量部程度含むPVAフィルムが具体的に記載され、当該PVAフィルムにおいてカルシウムの含有量を280ppm程度、および、ケイ素の含有量を70ppm程度とすれば、特許文献1で問題としている光学的スジや光学的色ムラが充分に低減できることが示されている。
特開2007−9056号公報
ところで本発明者は、PVAフィルムにおけるスジ状の欠点を解消することを目的として特定の界面活性剤を比較的多量に使用してPVAフィルムを製膜した場合に得られるPVAフィルムの透明性が悪化する問題のあることを認識し、そして、PVAフィルムにおける透明性を改善することにより、それを用いて製造される偏光フィルムの光学的性能を向上させることができると考えた。特に近年ではLCDにおいて消費電力の低減がより強く求められてきており、バックライトの強度が低い場合であっても高い画面輝度を維持できるようにするために偏光板ひいては偏光フィルムの光透過率を向上させることが望まれるが、PVAフィルムにおける透明性を改善すれば、光透過率が向上した偏光フィルムを容易に得ることができると考えた。
そこで本発明は、欠点が少なく、しかも透明性が良好なPVAフィルム、およびそれから製造される光透過率が向上した高品質の偏光フィルムを提供することを目的とする。
本発明者は、上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の界面活性剤を比較的多量に使用した場合においては、PVAフィルム中あるいはそれの製膜に使用される製膜原液中における特定の金属の影響によって、得られるPVAフィルムの透明性が悪化することを見出した。そして、製膜原液中における当該金属の含有量を特定の範囲とするなどして、得られるPVAフィルムにおける当該金属の含有量を調整すれば、欠点が少なく、しかも透明性が良好なPVAフィルムとなることを見出した。本発明者はこれらの知見に基づいてさらに検討を重ねて本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
[1]PVA(A)およびノニオン系界面活性剤(B)を含有するPVA組成物からなるPVAフィルムであって、ノニオン系界面活性剤(B)が、炭素数9〜16のアルキル鎖を有するアルカノールアミド型のノニオン系界面活性剤であり、当該PVA組成物において、ノニオン系界面活性剤(B)の含有量がPVA(A)100質量部に対して0.02〜1質量部であり、かつ、カルシウム(C)の含有量がPVA(A)に対して質量基準で0.2〜60ppmである、PVAフィルム、
[2]上記[1]のPVAフィルムから製造される偏光フィルム、
に関する。
本発明によれば、欠点が少なく、しかも透明性が良好なPVAフィルム、およびそれから製造される光透過率が向上した高品質の偏光フィルムが提供される。
以下に本発明をさらに詳細に説明する。
本発明のPVAフィルムはPVA(A)およびノニオン系界面活性剤(B)を含有するPVA組成物からなる。そして、当該PVA組成物において、ノニオン系界面活性剤(B)の含有量は、PVA(A)100質量部に対して0.02〜1質量部であり、かつ、アルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属(C)の含有量は、PVA(A)に対して質量基準で100ppm以下である。
上記のPVA(A)としては、ビニルエステル系モノマーを重合して得られるビニルエステル系重合体をけん化することにより製造されたものを使用することができる。ビニルエステル系モノマーとしては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル等を挙げることができ、これらの中でも入手性、コスト、PVA(A)の生産性などの観点から酢酸ビニルが好ましい。
上記のビニルエステル系重合体は、単量体として1種または2種以上のビニルエステル系モノマーのみを用いて得られたものが好ましく、単量体として1種のビニルエステル系モノマーのみを用いて得られたものがより好ましいが、1種または2種以上のビニルエステル系モノマーと、これと共重合可能な他のモノマーとの共重合体であってもよい。
このようなビニルエステル系モノマーと共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、エチレン;プロピレン、1−ブテン、イソブテン等の炭素数3〜30のオレフィン;アクリル酸またはその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸またはその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル等のメタクリル酸エステル;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸またはその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンまたはその塩、N−メチロールアクリルアミドまたはその誘導体等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸またはその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンまたはその塩、N−メチロールメタクリルアミドまたはその誘導体等のメタクリルアミド誘導体;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン等のN−ビニルアミド;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸またはその塩、エステルもしくは酸無水物;イタコン酸またはその塩、エステルもしくは酸無水物;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニルなどを挙げることができる。上記のビニルエステル系重合体は、これらの他のモノマーのうちの1種または2種以上に由来する構造単位を有することができる。
上記のビニルエステル系重合体に占める上記他のモノマーに由来する構造単位の割合に特に制限はないが、ビニルエステル系重合体を構成する全構造単位のモル数に基づいて、15モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましい。
PVA(A)の重合度に必ずしも制限はないが、重合度が下がるにつれてフィルム強度が低下する傾向があることから200以上であることが好ましく、より好適には300以上、さらに好適には400以上、特に好適には500以上である。また、重合度が高すぎると水溶液あるいは溶融したPVA(A)の粘度が高くなり、製膜が難しくなる傾向があることから、10,000以下であることが好ましく、より好適には9,000以下、さらに好適には8,000以下、特に好適には7,000以下である。ここでPVA(A)の重合度とは、JIS K6726−1994の記載に準じて測定される平均重合度を意味し、PVA(A)を再けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](単位:デシリットル/g)から次式により求められる。
重合度 = ([η]×10/8.29)(1/0.62)
PVA(A)のけん化度に特に制限はなく、例えば60モル%以上のPVA(A)を使用することができるが、PVAフィルムを特に偏光フィルム等の光学フィルム製造用の原反フィルムとして使用する場合などにおいては、PVA(A)のけん化度は95モル%以上であることが好ましく、98モル%以上であることがより好ましく、99モル%以上であることがさらに好ましい。ここでPVA(A)のけん化度とは、PVA(A)が有する、けん化によってビニルアルコール単位に変換され得る構造単位(典型的にはビニルエステル系モノマー単位)とビニルアルコール単位との合計モル数に対して当該ビニルアルコール単位のモル数が占める割合(モル%)を意味する。PVA(A)のけん化度は、JIS K6726−1994の記載に準じて測定することができる。
PVA組成物は、PVA(A)として、1種のPVAを単独で含有していてもよいし、重合度、けん化度、変性度などのうちの1つまたは2つ以上が互いに異なる2種以上のPVAを含有していてもよい。但し、光学フィルム製造用の原反フィルムとして用いる場合のように本発明のPVAフィルムに優れた二次加工性が求められる場合などにおいて、PVA組成物が、カルボキシル基、スルホン酸基等の酸性官能基を有するPVA;酸無水物基を有するPVA;アミノ基等の塩基性官能基を有するPVA;これらの中和物など、架橋反応を促進させる官能基を有するPVAを含有すると、PVA分子間の架橋反応によってPVAフィルムの二次加工性が低下することがある。そのため、上記のような場合においてはPVA組成物は、酸性官能基を有するPVA、酸無水物基を有するPVA、塩基性官能基を有するPVAおよびこれらの中和物のいずれも含有しないことが好ましく、PVA(A)として、ビニルエステル系モノマーのみを単量体に用いて得られたビニルエステル系重合体をけん化することにより製造されたPVA、および/または、ビニルエステル系モノマーとエチレンおよび/または炭素数3〜30のオレフィンのみを単量体に用いて得られたビニルエステル系重合体をけん化することにより製造されたPVAのみを含有することがより好ましく、PVA(A)として、ビニルエステル系モノマーのみを単量体に用いて得られたビニルエステル系重合体をけん化することにより製造されたPVA、および/または、ビニルエステル系モノマーとエチレンのみを単量体に用いて得られたビニルエステル系重合体をけん化することにより製造されたPVAのみを含有することがさらに好ましい。
PVA組成物におけるPVA(A)の含有率は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、85質量%以上であることがさらに好ましい。
PVA組成物は上記のPVA(A)の他にさらにノニオン系界面活性剤(B)を含有する。ノニオン系界面活性剤(B)としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のアルキルエーテル型;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のアルキルフェニルエーテル型;ポリオキシエチレンラウレート等のアルキルエステル型;ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル等のアルキルアミン型;ポリオキシエチレンラウリン酸アミド等のアルキルアミド型;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル等のポリプロピレングリコールエーテル型;ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド等のアルカノールアミド型;ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル等のアリルフェニルエーテル型などが挙げられる。PVA組成物は1種のノニオン系界面活性剤のみを含有していてもよいし、2種以上のノニオン系界面活性剤を含有していてもよい。
ノニオン系界面活性剤(B)は、炭素数9以上のアルキル鎖(アルキル基)を有するノニオン系界面活性剤であることが好ましい。このようなノニオン系界面活性剤は、従来技術によっては、極性が低いことなどに起因してPVAフィルムにおける透明性が悪化しやすく、したがって、当該ノニオン系界面活性剤を用いた場合に透明性に関する本発明の効果がより顕著に奏される。またノニオン系界面活性剤(B)が炭素数9以上のアルキル鎖を有するノニオン系界面活性剤であると、PVAフィルムを製膜する際においてスジ状の欠点の発生をより低減することもできる。上記のような観点から、上記アルキル鎖の炭素数(アルキル鎖長)は10以上であることがより好ましく、また、30以下であることが好ましく、22以下であることがより好ましく、16以下であることがさらに好ましく、12以下であることが特に好ましい。上記のアルキル鎖は直鎖状であっても分岐鎖状であってもどちらでもよく、直鎖状であることが好ましい。また上記のアルキル鎖はノニオン系界面活性剤(B)の主鎖部分(最長鎖)中に含まれることが好ましい。
またノニオン系界面活性剤(B)は、アルカノールアミド型のノニオン系界面活性剤であることが好ましく、脂肪酸のジアルカノールアミドであることがより好ましい。このようなノニオン系界面活性剤は、従来技術によっては、後述する金属(C)と配位する等、相互作用しやすいことなどに起因してPVAフィルムにおける透明性が悪化しやすく、したがって、当該ノニオン系界面活性剤を用いた場合に透明性に関する本発明の効果がより顕著に奏される。またノニオン系界面活性剤(B)がアルカノールアミド型のノニオン系界面活性剤であると、PVAフィルムを製膜する際においてスジ状の欠点の発生をより低減することもできる。
PVA組成物におけるノニオン系界面活性剤(B)の含有量は、PVA(A)100質量部に対して0.02〜1質量部の範囲内であることが必要である。当該含有量がPVA(A)100質量部に対して0.02質量部未満であるとPVAフィルムを製膜する際にスジ状の欠点が発生しやすくなる。一方、当該含有量がPVA(A)100質量部に対して1質量部を超えるとPVAフィルムの表面に移行してブロッキングが生じやすくなり取り扱い性が低下する。上記のような観点から当該含有量はPVA(A)100質量部に対して0.05質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましく、0.2質量部以上であることがさらに好ましく、また、0.7質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以下であることがより好ましい。
PVA組成物は上記のノニオン系界面活性剤(B)以外の他の界面活性剤をさらに含有してもよい。このような他の界面活性剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤などが挙げられる。当該アニオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸カリウム等のカルボン酸型;オクチルサルフェート等の硫酸エステル型;ドデシルベンゼンスルホネート等のスルホン酸型などが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤(B)やそれ以外の他の界面活性剤を使用するにあたっては、入手が容易であり安価でもあることから、これらの界面活性剤を含む混合物の形態で使用することが好ましい。当該混合物における界面活性剤の含有率は70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。また当該混合物における界面活性剤の含有率の上限としては、例えば、99.99質量%が挙げられる。当該混合物が含む界面活性剤以外の成分に特に制限はないが、例えば、界面活性剤を製造する際に使用した原料、触媒、溶媒;界面活性剤が分解して生じた分解物;界面活性剤の安定性を向上させるために添加される安定剤などが挙げられ、より具体的には、界面活性剤がアルカノールアミド型のノニオン系界面活性剤である場合に、対応するアルカノールアミンが挙げられる。
PVA組成物は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属(C)の含有量がPVA(A)に対して質量基準(すなわち、PVA(A)の質量に対する金属(C)の質量の割合)で100ppm以下であることが必要である。PVAフィルムがノニオン系界面活性剤(B)を上記のように比較的多量に含有する場合において金属(C)の含有量が上記範囲にあることにより、欠点が少なく、しかも透明性が良好なPVAフィルムとなる。上記のような観点から金属(C)の含有量はPVA(A)に対して質量基準で60ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、30ppm以下であることがさらに好ましく、10ppm以下であることが特に好ましい。一方、金属(C)の含有量があまりに少なすぎると製膜したPVAフィルムをフィルムロールに巻き取る際にシワが発生しやすくなる傾向があることから、当該含有量はPVA(A)に対して質量基準で0.2ppm以上であることが好ましく、0.4ppm以上であることがより好ましく、0.5ppm以上であることがさらに好ましく、0.7ppm以上であることが特に好ましい。なお、金属(C)として複数種の金属が含まれる場合、各金属の含有量の合計が上記範囲内にあればよい。金属(C)の含有量はICP−MS分析により求めることができる。
金属(C)としては、例えば、アルカリ金属として、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムなどが挙げられ、アルカリ土類金属として、マグネシウム、カルシウムなどが挙げられる。これらの中でも、PVAフィルムがノニオン系界面活性剤(B)を上記のように比較的多量に含有する場合において当該PVAフィルムの透明性に強い影響を与えることから、金属(C)はアルカリ土類金属であることが好ましく、カルシウムであることがより好ましい。なお、金属(C)の形態に特に制限はないが、本発明の効果がより顕著に奏されることなどから、金属塩の形態であることが好ましい。
PVA組成物は、PVAフィルムに柔軟性を付与させることができることから可塑剤を含有することが好ましい。好ましい可塑剤としては多価アルコールが挙げられ、具体的には、例えば、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン等を挙げることができる。PVA組成物は1種の可塑剤のみを含有していてもよいし、2種以上の可塑剤を含有していてもよい。これらの可塑剤の中でも、PVA(A)との相溶性や入手性などの観点から、エチレングリコールまたはグリセリンが好ましい。
PVA組成物における可塑剤の含有量は、PVA(A)100質量部に対して1〜30質量部の範囲内であることが好ましい。
PVA組成物は、上述のPVA(A)、ノニオン系界面活性剤(B)等の界面活性剤、金属(C)、および可塑剤以外の他の成分を、必要に応じ、さらに含有していてもよい。このような他の成分としては、例えば、水分、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、着色剤、充填剤(無機物粒子・デンプン等)、防腐剤、防黴剤、上記した成分以外の他の高分子化合物などが挙げられる。
本発明のPVAフィルムの厚みは特に制限されず、PVAフィルムの用途などに応じて適宜設定することができ、例えば300μm以下とすることができるが、本発明のPVAフィルムを偏光フィルム等の光学フィルム製造用の原反フィルムとして使用する場合には当該厚みは5〜150μmの範囲内であることが好ましい。なお、PVAフィルムの厚みは、任意の10ヶ所において測定された値の平均値として求めることができる。
本発明のPVAフィルムの形状は特に制限されないが、より均一なPVAフィルムを連続して円滑に製造することができると共に、それを用いて偏光フィルム等の光学フィルムを製造する場合などにおいても連続して使用することができることなどから長尺のフィルムであることが好ましい。長尺のフィルムの長さ(流れ方向の長さ)は特に制限されず、用途などに応じて適宜設定することができ、例えば、5〜30,000mの範囲内とすることができる。長尺のフィルムはコアに巻き取るなどしてフィルムロールとすることが好ましい。
本発明のPVAフィルムの幅に特に制限はなく、例えば0.5m以上とすることができるが、近年幅広の偏光フィルムが求められていることから、当該幅は1m以上であることが好ましく、3m以上であることがより好ましく、4.5m以上であることがさらに好ましく、5.0m以上であることが特に好ましく、5.5m以上であることが最も好ましい。一方、PVAフィルムの幅があまりに広すぎると、PVAフィルムを製膜するための製膜装置の製造費用が増加したり、さらには、実用化されている製造装置で光学フィルムを製造する場合において均一に延伸することが困難になったりすることがあることから、PVAフィルムの幅は7.5m以下であることが好ましく、7.0m以下であることがより好ましく、6.5m以下であることがさらに好ましい。
本発明によれば透明性が良好なPVAフィルムが得られる。PVAフィルムの透明性の程度に特に制限はないが、例えば、PVAフィルムのヘイズ値として、3.0%以下であることが好ましく、2.5%以下であることがより好ましく、2.0%以下であることがさらに好ましく、1.5%以下であることが特に好ましい。このように透明性が良好なPVAフィルムによれば、光透過率が向上した偏光フィルム等の光学フィルムを容易に得ることができる。なお、PVAフィルムのヘイズ値は、実施例において後述するように、PVAフィルムの幅方向全体にわたって幅方向50cmあたり任意に10ヶ所の測定地点を定めて、当該測定地点で個々のヘイズ値を測定した際に、測定された個々のヘイズ値の平均値として求めることができる。ここで、個々のヘイズ値は、フィルムに可視光を照射したときの全光線透過率(Tt)に対する拡散透過率(Td)の割合を示す以下の式で表される。
個々のヘイズ値(%)=100×Td/Tt
本発明によれば、透明性が良好なPVAフィルムが得られることに加えて、幅方向に透明性のばらつきの少ないPVAフィルムが得られる。そしてこのように幅方向に透明性のばらつきの少ないPVAフィルムによれば、膜面全体において光透過率のムラの少ない偏光フィルム等の光学フィルムを容易に得ることができる。本発明のPVAフィルムでは、上記のようにPVAフィルムの幅方向全体にわたって幅方向50cmあたり任意に10ヶ所の測定地点を定めて、当該測定地点で個々のヘイズ値を測定した際に、測定された個々のヘイズ値のうちの最大値が3.5%以下であることが好ましく、3.0%以下であることがより好ましく、2.5%以下であることがさらに好ましく、2.0%以下であることが特に好ましい。
また、同様の理由から、上記の個々のヘイズ値のうちの最大値と最小値の差は、0.8%以下であることが好ましく、0.6%以下であることがより好ましく、0.3%以下であることがさらに好ましく、0.2%以下であることが特に好ましい。
本発明のPVAフィルムの製造方法に特に制限はなく、例えば、PVA(A)、ノニオン系界面活性剤(B)等の界面活性剤、液体媒体、および必要に応じてさらに上記した可塑剤やその他の成分を含有する製膜原液を用いて、流延製膜法や溶融押出製膜法など公知の方法を採用することにより製造することができる。この際に、製膜原液における金属(C)の含有量を予め調整しておくことにより、目的とするPVAフィルムが容易に得られる。当該調整方法に特に制限はなく、例えば、金属(C)の含有量が低減された原料を用いたり、あるいは逆に、金属(C)の塩を配合するなどして金属(C)の含有量を増加させたりする方法が挙げられる。なお、製膜原液は、PVA(A)が液体媒体に溶解してなるものであってもよいし、PVA(A)が溶融したものであってもよい。
製膜原液における上記液体媒体としては、例えば、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンなどを挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上を使用することができる。そのうちでも、環境に与える負荷が小さいことや回収性の点から水が好ましい。液体媒体は製膜原液における金属(C)の含有量を所望の範囲にするために、その少なくとも一部として、蒸留された液体媒体など、金属(C)の含有量が低減されたものを用いることが好ましい。
製膜原液の揮発分率(製膜時に揮発や蒸発によって除去される液体媒体などの揮発性成分の製膜原液中における含有割合)は製膜方法、製膜条件等によっても異なるが、50〜90質量%の範囲内であることが好ましく、55〜80質量%の範囲内であることがより好ましい。製膜原液の揮発分率が50質量%以上であることにより、製膜原液の粘度が高くなりすぎず製膜が容易になる。一方、製膜原液の揮発分率が90質量%以下であることにより、製膜原液の粘度が低くなりすぎず得られるPVAフィルムの厚み均一性が向上する。
上記の製膜原液を用いて、流延製膜法や溶融押出製膜法によって本発明のPVAフィルムを製造する際の具体的な製造方法に特に制限はなく、例えば、当該製膜原液をドラムやベルト等の支持体上に膜状に流延または吐出し、当該支持体上で乾燥し、得られたフィルムに対し、必要に応じて、乾燥ロールや熱風乾燥装置によりさらに乾燥したり、熱処理装置により熱処理を施したり、調湿装置により調湿したりすることにより、目的とするPVAフィルムを製造することができる。製造されたPVAフィルムは、コアに巻き取るなどしてフィルムロールとすることが好ましい。また、製造されたPVAフィルムの幅方向の両端部を切り取ってもよい。
本発明のPVAフィルムは、光透過率が向上した高品質の偏光フィルム、位相差フィルム、特殊集光フィルム等の光学フィルムを製造するための原反フィルムとして好適に使用することができる。また、本発明のPVAフィルムは、それ以外の用途、例えば包装材料、ランドリーバッグ等の水溶性フィルム、人工大理石等を製造する際の離型フィルムなどとして使用することもできる。これらの用途のうち、本発明のPVAフィルムは、特に偏光フィルム製造用の原反フィルムとして使用するのが好ましい。
本発明のPVAフィルムから偏光フィルムを製造するには、例えば、PVAフィルムを染色、一軸延伸、固定処理、乾燥処理、さらに必要に応じて熱処理を行えばよい。染色と一軸延伸の順序は特に限定されず、一軸延伸処理の前に染色処理を行ってもよいし、一軸延伸処理と同時に染色処理を行ってもよいし、または一軸延伸処理の後に染色処理を行ってもよい。また、一軸延伸、染色などの工程は複数回繰り返してもよい。特に一軸延伸を2段以上に分けると均一な延伸を行いやすくなるため、好ましい。
PVAフィルムの染色に用いる染料としては、ヨウ素または二色性有機染料(例えば、DirectBlack 17、19、154;DirectBrown 44、106、195、210、223;DirectRed 2、23、28、31、37、39、79、81、240、242、247;DirectBlue 1、15、22、78、90、98、151、168、202、236、249、270;DirectViolet 9、12、51、98;DirectGreen 1、85;DirectYellow 8、12、44、86、87;DirectOrange 26、39、106、107などの二色性染料)などを使用することができる。これらの染料は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。染色は、通常、PVAフィルムを上記染料を含有する溶液中に浸漬することにより行うことができるが、その処理条件や処理方法は特に制限されるものではない。
PVAフィルムを流れ方向(MD)等に延伸する一軸延伸は、湿式延伸法または乾熱延伸法のいずれで行ってもよいが、得られる偏光フィルムの性能および品質の安定性の観点から湿式延伸法が好ましい。湿式延伸法としては、PVAフィルムを、純水、添加剤や水性媒体等の各種成分を含む水溶液、または各種成分が分散した水分散液中で延伸する方法が挙げられ、湿式延伸法による一軸延伸方法の具体例としては、ホウ酸を含む温水中で一軸延伸する方法、前記した染料を含有する溶液中や後記固定処理浴中で一軸延伸する方法などが挙げられる。また、吸水後のPVAフィルムを用いて空気中で一軸延伸してもよいし、その他の方法で一軸延伸してもよい。
一軸延伸する際の延伸温度は特に限定されないが、湿式延伸する場合は好ましくは20〜90℃、より好ましくは25〜70℃、さらに好ましくは30〜65℃の範囲内の温度が採用され、乾熱延伸する場合は好ましくは50〜180℃の範囲内の温度が採用される。
一軸延伸処理の延伸倍率(多段で一軸延伸を行う場合は合計の延伸倍率)は、偏光性能の点からフィルムが切断する直前までできるだけ延伸することが好ましく、具体的には4倍以上であることが好ましく、5倍以上であることがより好ましく、5.5倍以上であることがさらに好ましい。延伸倍率の上限はフィルムが破断しない限り特に制限はないが、均一な延伸を行うためには8.0倍以下であることが好ましい。
偏光フィルムの製造にあたっては、一軸延伸されたフィルムへの染料の吸着を強固にするために、固定処理を行うことが多い。固定処理としては、ホウ酸および/またはホウ素化合物を添加した処理浴中にフィルムを浸漬する方法が一般に広く採用されている。その際に、必要に応じて処理浴中にヨウ素化合物を添加してもよい。
一軸延伸処理、または一軸延伸処理と固定処理を行ったフィルムを次いで乾燥処理(熱処理)するのが好ましい。乾燥処理(熱処理)の温度は30〜150℃、特に50〜140℃であることが好ましい。乾燥処理(熱処理)の温度が低すぎると、得られる偏光フィルムの寸法安定性が低下しやすくなり、一方、高すぎると染料の分解などに伴う偏光性能の低下が発生しやすくなる。
上記のようにして得られた偏光フィルムの両面または片面に、光学的に透明で、かつ機械的強度を有する保護膜を貼り合わせて偏光板にすることができる。その場合の保護膜としては、三酢酸セルロース(TAC)フィルム、酢酸・酪酸セルロース(CAB)フィルム、アクリル系フィルム、ポリエステル系フィルムなどが使用される。また、保護膜を貼り合わせるための接着剤としては、PVA系接着剤やウレタン系接着剤などが一般に使用されており、そのうちでもPVA系接着剤が好ましく用いられる。
上記のようにして得られた偏光板は、アクリル系などの粘着剤を被覆した後、ガラス基板に貼り合わせて液晶ディスプレイ装置の部品として使用することができる。偏光板をガラス基板に貼り合わせる際に、位相差フィルム、視野角向上フィルム、輝度向上フィルムなどを同時に貼り合わせてもよい。
以下に、本発明を実施例等により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において採用された各測定または評価方法を以下に示す。
[金属(C)の含有量の測定方法]
ICP−MS分析(高周波誘導結合プラズマ質量分析)によりPVAフィルム(PVA組成物)中におけるカルシウムの含有量を求めた。具体的には、まず、以下の実施例または比較例で得られたPVAフィルムから約5gのサンプル片を採取し、それを白金るつぼに量り取り、硝酸と硫酸を用いて乾式分解を行い、灰化した試料に塩酸約5mLを加えた後、25mL容「テフロン」製メスフラスコに定容し、孔径0.45μmのPTFEフィルターでろ過して試料溶液を調製した。次いで、得られた試料溶液を用いて、以下の条件でICP−MS分析を行い、PVAフィルム(PVA組成物)中におけるカルシウムの含有量を、PVA(A)の質量に対する金属(C)の質量の割合として求めた。なお、カルシウムの含有量を求める際に使用した検量線は、SPEX CertiPrep,Inc.社製の標準液「XSTC−622」を希釈することにより調製した検量線作成用標準液を用いて作成した。
《測定条件》
装置:Perkin−Elmer社製ELAN DRCII
プラズマ出力:1100W
ネブライザーガス流量:1.01L/分
補助ガス流量:1.10L/分
プラズマガス流量:18.00L/分
[スジ状の欠点の評価方法]
PVAフィルム上の、製膜時の流れ方向(MD)に平行に存在するスジ状の欠点を目視で観察して評価した。具体的には、以下の実施例または比較例で得られたPVAフィルムから切り出したサンプル片をMDが水平になるように吊り下げ、その背後に30Wの直管状蛍光灯を水平に置いて点灯し、サンプル片を通して蛍光灯を見たときに観察されるスジ状の欠点について、以下の基準で評価した。
A:スジ状の欠点が認められない
B:スジ状の欠点がほとんどない
C:スジ状の欠点がわずかに認められる
D:スジ状の欠点が多数認められる
[ヘイズ値の測定方法]
以下の実施例または比較例で得られたPVAフィルムから、MDに15cm、幅方向(TD)に全幅の、横に長い短冊状のサンプルを採取した。このサンプルをさらに一方の端からTDに50cmずつの幅に裁断した。なお幅が50cmに満たないサンプル片が残った場合には(以下の実施例および比較例では幅165cmのPVAフィルムを製造しているので幅が15cmのサンプル片が残る)、そのサンプル片についてはその幅のままとした。
得られた50cm幅のサンプル片の上から任意に10ヶ所の測定地点を選定し、その測定地点でのヘイズ値をスガ試験機株式会社製のヘーズメーター「HZ−1」を用い、ASTM D1003−61に従って測定した。すなわち、ヘイズ値の測定地点の数は、幅方向50cmあたり10ヶ所になる。なお、幅が50cmに満たないサンプル片については、その幅に比例した数(すなわち、そのサンプル片の幅を5cmで除し、端数は切り上げて得られた数)の測定地点でのヘイズ値を測定した。得られた個々のヘイズ値の平均値を求めてそのPVAフィルムのヘイズ値とした。また、得られた個々のヘイズ値のうちの最大値と最小値を求め、両者の差を算出した。
[フィルムロールにおけるブロッキングの評価方法]
以下の実施例または比較例で得られたフィルムロールからPVAフィルムを巻き出した際のブロッキングの有無を確認した。
[実施例1]
PVA(A)として、重合度2400、けん化度99.9モル%のPVA(酢酸ビニルの単独重合体のけん化物)を用い、このPVAのチップ(カルシウムの含有量はPVAに対して質量基準で0.005ppm未満)100質量部を35℃の蒸留水2500質量部に24時間浸漬した後、遠心脱水を行い、PVA含水チップを得た。得られたPVA含水チップ中の揮発分率は70質量%であった。そのPVA含水チップ333質量部(乾燥状態のPVAは100質量部)に対して、グリセリンを12質量部、ノニオン系界面活性剤(B)としてラウリン酸ジエタノールアミド(純度95質量%、ジエタノールアミンを不純物として含む混合物)を0.3質量部、塩化カルシウム二水和物をカルシウム換算で0.0002質量部添加した後、よく混合して混合物とし、これを最高温度130℃のベント付き二軸押出機で加熱溶融して製膜原液とした。
この製膜原液を熱交換機で100℃に冷却した後、180cm幅のコートハンガーダイから表面温度を90℃にしたドラム上に押出製膜して、さらに熱風乾燥装置内を通して乾燥し、次いで、製膜時のネックインにより厚くなったフィルムの両端部を切り取ることにより、幅165cmのPVAフィルムを連続的に製造した。なお、製造されたPVAフィルムのうちの長さ4000m分を円筒状のコアに巻き取ってフィルムロールとした。
得られたPVAフィルムについて上記した方法により金属(C)(カルシウム)の含有量、スジ状の欠点およびヘイズ値を測定または評価するとともに、得られたフィルムロールについて上記した方法によりブロッキングを評価したところ、カルシウムの含有量はPVAに対して質量基準で1.8ppmであり、スジ状の欠点は評価が「A」であり、ヘイズ値は0.4%(最大値は0.5%、最小値は0.4%、両者の差は0.1%)であり、ブロッキングは見られなかった。また、フィルムロールの表面に特に目立ったシワは観察されなかった。以上の結果を表1にまとめた。
比較例5
実施例1において、塩化カルシウム二水和物の添加量をカルシウム換算で0.0002質量部から0.008質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にしてPVAフィルム(およびフィルムロール)を製造した。
得られたPVAフィルムについて上記した方法により金属(C)(カルシウム)の含有量、スジ状の欠点およびヘイズ値を測定または評価するとともに、得られたフィルムロールについて上記した方法によりブロッキングを評価したところ、カルシウムの含有量はPVAに対して質量基準で78ppmであり、スジ状の欠点は評価が「A」であり、ヘイズ値は2.8%(最大値は3.3%、最小値は2.6%、両者の差は0.7%)であり、ブロッキングは見られなかった。また、フィルムロールの表面に特に目立ったシワは観察されなかった。以上の結果を表1にまとめた。
比較例7
実施例1においてノニオン系界面活性剤(B)を、ラウリン酸ジエタノールアミド(純度95質量%、ジエタノールアミンを不純物として含む混合物)から、ポリオキシエチレンラウリルアミン(純度93質量%、不純物を含む混合物)に変更したこと以外は実施例1と同様にしてPVAフィルム(およびフィルムロール)を製造した。
得られたPVAフィルムについて上記した方法により金属(C)(カルシウム)の含有量、スジ状の欠点およびヘイズ値を測定または評価するとともに、得られたフィルムロールについて上記した方法によりブロッキングを評価したところ、カルシウムの含有量はPVAに対して質量基準で1.9ppmであり、スジ状の欠点は評価が「B」であり、ヘイズ値は0.8%(最大値は1.0%、最小値は0.7%、両者の差は0.3%)であり、ブロッキングは見られなかった。また、フィルムロールの表面に特に目立ったシワは観察されなかった。以上の結果を表1にまとめた。
比較例8
実施例1においてノニオン系界面活性剤(B)を、ラウリン酸ジエタノールアミド(純度95質量%、ジエタノールアミンを不純物として含む混合物)から、ステアリン酸ジエタノールアミド(純度95質量%、不純物を含む混合物)に変更したこと以外は実施例1と同様にしてPVAフィルム(およびフィルムロール)を製造した。
得られたPVAフィルムについて上記した方法により金属(C)(カルシウム)の含有量、スジ状の欠点およびヘイズ値を測定または評価するとともに、得られたフィルムロールについて上記した方法によりブロッキングを評価したところ、カルシウムの含有量はPVAに対して質量基準で1.8ppmであり、スジ状の欠点は評価が「B」であり、ヘイズ値は0.6%(最大値は0.8%、最小値は0.5%、両者の差は0.3%)であり、ブロッキングは見られなかった。また、フィルムロールの表面に特に目立ったシワは観察されなかった。以上の結果を表1にまとめた。
比較例6
実施例1において、塩化カルシウム二水和物を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にしてPVAフィルム(およびフィルムロール)を製造した。
得られたPVAフィルムについて上記した方法により金属(C)(カルシウム)の含有量、スジ状の欠点およびヘイズ値を測定または評価するとともに、得られたフィルムロールについて上記した方法によりブロッキングを評価したところ、カルシウムの含有量はPVAに対して質量基準で0.01ppmであり、スジ状の欠点は評価が「A」であり、ヘイズ値は0.3%(最大値は0.3%、最小値は0.2%、両者の差は0.1%)であり、ブロッキングは見られなかった。但し、フィルムロールの表面にシワが生じた。以上の結果を表1にまとめた。
[比較例1]
実施例1において、ラウリン酸ジエタノールアミド(純度95質量%、ジエタノールアミンを不純物として含む混合物)の添加量を0.3質量部から0.01質量部に変更するとともに、塩化カルシウム二水和物の添加量をカルシウム換算で0.0002質量部から0.015質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にしてPVAフィルム(およびフィルムロール)を製造した。
得られたPVAフィルムについて上記した方法により金属(C)(カルシウム)の含有量、スジ状の欠点およびヘイズ値を測定または評価するとともに、得られたフィルムロールについて上記した方法によりブロッキングを評価したところ、カルシウムの含有量はPVAに対して質量基準で148ppmであり、スジ状の欠点は評価が「D」であり、ヘイズ値は0.4%(最大値は0.5%、最小値は0.4%、両者の差は0.1%)であり、ブロッキングは見られなかった。また、フィルムロールの表面に特に目立ったシワは観察されなかった。以上の結果を表1にまとめた。
[比較例2]
実施例1において、ラウリン酸ジエタノールアミド(純度95質量%、ジエタノールアミンを不純物として含む混合物)の添加量を0.3質量部から0.01質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にしてPVAフィルム(およびフィルムロール)を製造した。
得られたPVAフィルムについて上記した方法により金属(C)(カルシウム)の含有量、スジ状の欠点およびヘイズ値を測定または評価するとともに、得られたフィルムロールについて上記した方法によりブロッキングを評価したところ、カルシウムの含有量はPVAに対して質量基準で2.0ppmであり、スジ状の欠点は評価が「D」であり、ヘイズ値は0.4%(最大値は0.4%、最小値は0.3%、両者の差は0.1%)であり、ブロッキングは見られなかった。また、フィルムロールの表面に特に目立ったシワは観察されなかった。以上の結果を表1にまとめた。
[比較例3]
実施例1において、塩化カルシウム二水和物の添加量をカルシウム換算で0.0002質量部から0.015質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にしてPVAフィルム(およびフィルムロール)を製造した。
得られたPVAフィルムについて上記した方法により金属(C)(カルシウム)の含有量、スジ状の欠点およびヘイズ値を測定または評価するとともに、得られたフィルムロールについて上記した方法によりブロッキングを評価したところ、カルシウムの含有量はPVAに対して質量基準で152ppmであり、スジ状の欠点は評価が「A」であり、ヘイズ値は3.3%(最大値は5.0%、最小値は3.0%、両者の差は2.0%)であり、ブロッキングは見られなかった。また、フィルムロールの表面に特に目立ったシワは観察されなかった。以上の結果を表1にまとめた。
[比較例4]
実施例1において、ラウリン酸ジエタノールアミド(純度95質量%、ジエタノールアミンを不純物として含む混合物)の添加量を0.3質量部から2.0質量部(ラウリン酸ジエタノールアミドとして1.9質量部)に変更したこと以外は実施例1と同様にしてPVAフィルム(およびフィルムロール)を製造した。
得られたPVAフィルムについて上記した方法により金属(C)(カルシウム)の含有量、およびスジ状の欠点を測定または評価するとともに、得られたフィルムロールについて上記した方法によりブロッキングを評価したところ、カルシウムの含有量はPVAに対して質量基準で1.8ppmであり、スジ状の欠点は評価が「A」であったが、ブロッキングが見られ、偏光フィルム等の光学フィルムを製造するための原反フィルムとしては使用に耐えないものであった。なお、フィルムロールの表面に特に目立ったシワは観察されなかった。以上の結果を表1にまとめた。
Figure 0006100167
本発明によれば、欠点が少なく、しかも透明性が良好なPVAフィルムが提供されるため、当該PVAフィルムを原反フィルムとして用いれば、例えば、光透過率が向上した高品質の偏光フィルム等の光学フィルムを、高い製品歩留まりで低コストで製造することが可能になる。

Claims (2)

  1. ポリビニルアルコール系重合体(A)およびノニオン系界面活性剤(B)を含有するポリビニルアルコール系重合体組成物からなるポリビニルアルコール系重合体フィルムであって、ノニオン系界面活性剤(B)が、炭素数9〜16のアルキル鎖を有するアルカノールアミド型のノニオン系界面活性剤であり、当該ポリビニルアルコール系重合体組成物において、ノニオン系界面活性剤(B)の含有量がポリビニルアルコール系重合体(A)100質量部に対して0.02〜1質量部であり、かつ、カルシウム(C)の含有量がポリビニルアルコール系重合体(A)に対して質量基準で0.2〜60ppmである、ポリビニルアルコール系重合体フィルム。
  2. 請求項に記載のポリビニルアルコール系重合体フィルムから製造される偏光フィルム。
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