JP2014109024A - 複合樹脂組成物及び絶縁性と熱放散性に優れた成形体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】構成材料として、(A)絶縁性を有する高熱伝導性フィラー及び(B)樹脂を含む複合樹脂組成物であって、前記樹脂組成物を成形して得られる成形体における、レーザーフラッシュ法により測定した平面方向の熱伝導率が2W/mK以上であり、厚み方向の熱伝導率が平面方向の熱伝導率に対して半分以下であり、JIS K 6911に準拠して測定した曲げ強度が100MPa以上、曲げ弾性率が8GPa以上であり、JIS
K 6911に準拠して測定した比重が1以上5以下であり、JIS K 7197に準拠して測定した平面方向の線膨脹係数が0.1ppm/℃以上50ppm/℃以下であり、JIS K6911に準拠して測定した体積抵抗率が108Ω・cm以上1016Ω
・cm以下である複合樹脂組成物。
【選択図】なし
Description
樹脂自身の熱伝導率を向上させる方法として、樹脂の化学構造にメソゲン基を導入し、結晶性を向上させる検討が実施されている(例えば、特許文献1参照)。樹脂の結晶化率が上昇することでフォノン伝達の損失が減少し、熱伝導率が上昇する。また、エポキシ樹脂に熱伝導性フィラーを大量に添加して、材料の熱伝導率を向上させる試みも行われている(例えば、特許文献2参照)。
に優れ、かつ樹脂材料よりも平面方向の熱伝導性に優れる複合樹脂組成物を提供することにある。
(1) 構成材料として、(A)絶縁性を有する高熱伝導性フィラー及び(B)樹脂を含む複合樹脂組成物であって、前記樹脂組成物を成形して得られる成形体における、レーザーフラッシュ法により測定した平面方向の熱伝導率が2W/mK以上であり、厚み方向の熱伝導率が平面方向の熱伝導率に対して半分以下であり、JIS K 6911に準拠して測定した曲げ強度が100MPa以上、曲げ弾性率が8GPa以上であり、JIS K 6911に準拠して測定した比重が1以上5以下であり、JIS K 7197に準拠して測定した平面方向の線膨脹係数が0.1ppm/℃以上50ppm/℃以下であり、JIS K6911に準拠して測定した体積抵抗率が108Ω・cm以上1016Ω・
cm以下であることを特徴とする複合樹脂組成物。
(2) 前記(A)絶縁性を有する高熱伝導性フィラーの熱伝導率が10W/mK以上であることを特徴とする第(1)項記載の複合樹脂組成物。
(3) 前記(A)絶縁性を有する高熱伝導性フィラーの含有量は、複合樹脂組成物全体の10質量%以上90質量%以下であることを特徴とする第(1)項又は第(2)項に記載の複合樹脂組成物。
(4) 前記(A)絶縁性を有する高熱伝導性フィラーが、(a1)絶縁性を有する高熱伝導性繊維及び(a2)絶縁性を有する高熱伝導性粉末から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする第(1)項ないし第(3)項のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
(5) 前記(a1)絶縁性を有する高熱伝導性繊維が、アルミナ繊維、ポリパラフェニレンベンゾオキサゾール繊維、超高分子量ポリエチレン繊維から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする第(4)項に記載の複合樹脂組成物。
(6) 前記(a1)絶縁性を有する高熱伝導性繊維の平均繊維長さが、500μm以上10mm以下であることを特徴とする第(4)項又は第(5)項に記載の複合樹脂組成物。
(7) 前記(a2)絶縁性を有する高熱伝導性粉末が、アルミナ粉末及び酸化マグネシウム粉末等の酸化物の粉末、窒化ホウ素粉末、窒化アルミニウム粉末及び窒化ケイ素粉末等の窒化物の粉末、ならびに、炭化ケイ素粉末等の炭化物の粉末から選ばれる少なくとも1種類の無機化合物の粉末を含むことを特徴とする第(4)項ないし第(6)項のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
(8) 前記(a2)絶縁性を有する高熱伝導性粉末の平均粒径が、0.5μm以上500μm以下であることを特徴とする第(4)項ないし第(7)項のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
(9) 前記構成材料として、(C)前記(a1)絶縁性を有する高熱伝導性繊維とは異なる繊維をさらに含むことを特徴とする第(1)項ないし第(8)項のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
(10) 前記(a1)絶縁性を有する高熱伝導性繊維とは異なる前記(C)成分の繊維が、木材繊維、木綿、麻、羊毛などの天然繊維、レーヨン繊維などの再生繊維、セルロース繊維などの半合成繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ポリイミド繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアクリロニトリル繊維、エチレンビニルアルコール繊維などの合成繊維、ならびに、ガラス繊維などの無機繊維から選ばれる少なくとも1種の繊維を含むことを特徴とする第(9)項に記載の複合樹脂組成物。
(11) 前記(B)樹脂の平均粒径が500μm以下であることを特徴とする第(1)項ないし第(10)項のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
(12) 前記構成材料を溶媒に分散させた後、高分子凝集剤を添加し、前記構成材料
をフロック状に凝集させ、その凝集物を前記溶媒と分離させた後、前記溶媒を除去してなる複合樹脂組成物であって、前記構成材料として、さらに(D)イオン交換能を有する粉末状物質を含むことを特徴とする第(1)項ないし第(11)項のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
(13) 前記(D)イオン交換能を有する粉末状物質が、粘土鉱物、鱗片状シリカ微粒子、ハイドロタルサイト類、フッ素テニオライト及び膨潤性合成雲母から選ばれる少なくとも1種の層間化合物であることを特徴とする第(12)項に記載の複合樹脂組成物。
(14) 前記(D)イオン交換能を有する粉末状物質が、スメクタイト、ハロイサイト、カネマイト、ケニヤイト、燐酸ジルコニウム及び燐酸チタニウムから選ばれる少なくとも1種の粘土鉱物を含むことを特徴とする第(12)項に記載の複合樹脂組成物。
(15) 前記(D)イオン交換能を有する粉末状物質が、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト及びスチーブンサイトから選ばれる少なくとも1種のスメクタイトを含むことを特徴とする第(12)項に記載の複合樹脂組成物。
(16) 前記(D)イオン交換能を有する粉末状物質がモンモリロナイトを含むことを特徴とする第(12)項に記載の複合樹脂組成物。
(17) 前記(D)イオン交換能を有する粉末状物質の含有量は、複合樹脂組成物全体の0.1質量%以上30質量%以下であることを特徴とする第(12)項ないし第(16)項のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
(18) 前記溶媒の沸点が50℃以上200℃以下であることを特徴とする第(12)項ないし第(17)項のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
(19) 第(1)項ないし第(18)項のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物を用いてなることを特徴とする成形体。
K 7197に準拠して測定した平面方向の線膨脹係数が0.1ppm/℃以上50ppm/℃以下であり、JIS K6911に準拠して測定した体積抵抗率が108Ω・c
m以上1016Ω・cm以下であることを特徴とする。このような構成とすることにより、セラミックスよりも機械的強度、成形加工性、軽量性、絶縁性に優れ、かつ樹脂材料よりも平面方向の熱伝導性、機械的強度に優れる複合樹脂組成物を得ることができる。以下、本発明について詳細に説明する。
的に平面方向への放熱を行うことができるため、筐体などに有用に用いることができる。本発明で、レーザーフラッシュ法により熱伝導率を測定する試験片としては、その形状などを特に限定されるものではないが、例えば、1.5mm厚の成形体を用いることができる。
8Ω・cm以上1016Ω・cm以下であるものが好ましく、1012Ω・cm上1016Ω・cm以下であるものがより好ましく、1014Ω・cm以上1016Ω・cm以下であるものが特に好ましい。上記下限値以上とすることにより、絶縁性に優れた成形体を得ることができる。
0μm以下であることが好ましい。平均粒子径が上記下限値未満の場合は、樹脂との界面増加による熱抵抗増加のため、高熱伝導性を発現しにくい場合がある。また、平均粒子径が上記上限値を超えると、高熱伝導化には有効であるが、フロックへの定着効率が低下し、歩留り低下になるので好ましくない。尚、平均粒子径の異なる複数の(a2)絶縁性を有する高熱伝導性粉末を用いる場合には、その一部として、平均粒子径が上記下限値未満のものを用いることは可能である。この場合、熱伝導性を損なうことなく、流動性と成形性を向上させることができる。
よい。これらのうち、機械強度や耐薬品性が良好であるという観点では、熱硬化性樹脂が好ましく、成形性が良好であることや、樹脂の透明性などのデザイン性が必要であるという観点では、熱可塑性樹脂が好ましい。
いが、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト及びスチーブンサイトなどが挙げられる。モンモリロナイトは、アルミニウムの含水ケイ酸塩であるが、モンモリロナイトを主成分とし、他に石英や雲母、長石、ゼオライトなどの鉱物を含んでいるベントナイトであってもよい。着色や不純物を気にする用途に用いる場合などには、不純物が少ない合成スメクタイトが好ましい。
質量ppm以上1質量%以下が好ましい。更に好ましくは、500質量ppm以上0.5質量%である。これにより、収得よく構成材料が凝集させることができる。高分子凝集剤の添加量が上記下限値よりも小さいと収得が低下する可能性があり、上記上限値よりも大きいと凝集が強すぎて脱水などに問題が生じる可能性がある。
実施例に記載している原材料は、あらかじめ含有されている水分量を抜いた質量部で表している。
実施例1
アトマイザー粉砕機で平均粒径100μmに粉砕した固形レゾール樹脂(住友ベークライト(株)製商品名PR−51723)35部と、合成サポナイト(クニミネ工業(株)
製商品名スメクトンSA)3部、熱伝導率30W/mK、繊維長3mm、繊維径12μmのポリパラフェニレンベンゾオキサゾール繊維(東洋紡績(株)製商品名ザイロンHM)30部、ケブラー(登録商標)パルプ(ダイセル化学工業(株)製商品名ティアラKY400S)4部、面方向熱伝導率300W/mK、平均粒子径45μmの窒化ホウ素粉末(モメンティブ社製商品名PT110)28部を10000部の水に添加して、ディスパーザーで30分撹拌した後、あらかじめ水に溶解させたポリエチレンオキシド(和光純薬工業(株)製、分子量1,000,000)を構成材料に対して0.2%添加を行い、構成材料をフロック状に凝集させる。その凝集物を40メッシュの金属網で水と分離し、この後その凝集物を、脱水プレスし、さらに70℃の乾燥器に6時間入れて乾燥させ、複合樹脂組成物を98%の収率で得た。
アトマイザー粉砕機で平均粒径100μmに粉砕した固形レゾール樹脂(住友ベークライト(株)製商品名PR−51723)40部と、合成サポナイト(クニミネ工業(株)製商品名スメクトンSA)2部、熱伝導率30W/mK、繊維長3mm、繊維径12μmのポリパラフェニレンベンゾオキサゾール繊維(東洋紡績(株)製商品名ザイロンHM)54部、ケブラー(登録商標)パルプKY400S(ダイセル化学工業(株)製商品名ティアラ)4部、を10000部の水に添加して、ディスパーザーで30分撹拌した後、あらかじめ水に溶解させたポリエチレンオキシド分子量1,000,000(和光純薬工業(株)製)を構成材料に対して0.2%添加を行い、構成材料をフロック状に凝集させる。その凝集物を40メッシュの金属網で水と分離し、この後その凝集物を、脱水プレスし、さらに70℃の乾燥器に6時間入れて乾燥させ、複合樹脂組成物を98%の収率で得た。
アトマイザー粉砕機で平均粒径100μmに粉砕した固形レゾール樹脂(住友ベークライト(株)製商品名PR−51723)40部と、合成サポナイト(クニミネ工業(株)製商品名スメクトンSA)2部、熱伝導率30W/mK、繊維長3mm、繊維径12μmの超高分子量ポリエチレン繊維(東洋紡績(株)製商品名ダイニーマ)53部、ケブラー(登録商標)パルプKY400S(ダイセル化学工業(株)製商品名ティアラ)5部を10000部の水に添加して、ディスパーザーで30分撹拌した後、あらかじめ水に溶解させたポリエチレンオキシド分子量1,000,000(和光純薬工業(株)製)を構成材料に対して0.2%添加を行い、構成材料をフロック状に凝集させる。その凝集物を40メッシュの金属網で水と分離し、この後その凝集物を、脱水プレスし、さらに70℃の乾燥器に6時間入れて乾燥させ、複合樹脂組成物を98%の収率で得た。
アトマイザー粉砕機で平均粒径100μmに粉砕した固形レゾール樹脂(住友ベークライト(株)製商品名PR−51723)24部と、合成サポナイト(クニミネ工業(株)製商品名スメクトンSA)2部、熱伝導率29W/mK、平均繊維径3〜5μmのアルミナ繊維(電気化学工業(株)製商品名デンカアルセンバルク)72部、ケブラー(登録商標)パルプKY400S(ダイセル化学工業(株)製商品名ティアラ)2部、を10000部の水に添加して、ディスパーザーで30分撹拌した後、あらかじめ水に溶解させたポリエチレンオキシド分子量1,000,000(和光純薬工業(株)製)を構成材料に対して0.2%添加を行い、構成材料をフロック状に凝集させる。その凝集物を40メッシュの金属網で水と分離し、この後その凝集物を、脱水プレスし、さらに70℃の乾燥器に6時間入れて乾燥させ、複合樹脂組成物を98%の収率で得た。
アトマイザー粉砕機で平均粒径100μmに粉砕した固形レゾール樹脂23部(住友ベ
ークライト(株)製商品名PR−51723)と、熱伝導率29W/mK、平均粒子径60μmのアルミナ粉末(昭和電工製商品名A−12)77部を、ラボプラストミルを用いて、100℃で5分、回転数50rpmで溶融混錬し、複合樹脂組成物を99%の収率で得た。
アトマイザー粉砕機で平均粒径100μmに粉砕した固形レゾール樹脂40部(住友ベークライト(株)製商品名PR−51723)と、面方向熱伝導率300W/mK、平均粒子径45μmの窒化ホウ素粉末(モメンティブ社製商品名PT110)60部を、ラボプラストミルを用いて、100℃で5分、回転数50rpmで溶融混錬し、複合樹脂組成物を99%の収率で得た。
アトマイザー粉砕機で平均粒径100μmに粉砕した固形レゾール樹脂(住友ベークライト(株)製商品名PR−51723)34部と、合成サポナイト(クニミネ工業(株)製商品名スメクトンSA)2部、テクノーラ(登録商標)繊維T32PNW(帝人テクノプロダクツ(株)製)8部、ケブラー(登録商標)パルプKY400S(ダイセル化学工業(株)製商品名ティアラ)3部、面方向熱伝導率300W/mK、平均粒子径45μmの窒化ホウ素粉末(モメンティブ社製商品名PT110)53部を10000部の水に添加して、ディスパーザーで30分撹拌した後、あらかじめ水に溶解させたポリエチレンオキシド分子量1,000,000(和光純薬工業(株)製)を構成材料に対して0.2%添加を行い、構成材料をフロック状に凝集させる。その凝集物を40メッシュの金属網で水と分離し、この後その凝集物を、脱水プレスし、さらに70℃の乾燥器に6時間入れて乾燥させ、複合樹脂組成物を97%の収率で得た。
実施例5
実施例1で得られた複合樹脂組成物を、離型剤を塗布した金型にセットし、複合樹脂組成物に対して、面圧30MPa加圧下でコンプレッション成形を180℃、20分行い、縦10cm×横10cm×厚み2mmの成形体を得た。
実施例2で得られた複合樹脂組成物を、離型剤を塗布した金型にセットし、複合樹脂組成物に対して、面圧30MPa加圧下でコンプレッション成形を180℃、20分行い、縦10cm×横10cm×厚み2mmの成形体を得た。
実施例3で得られた複合樹脂組成物を、離型剤を塗布した金型にセットし、複合樹脂組成物に対して、面圧30MPa加圧下でコンプレッション成形を180℃、20分行い、縦10cm×横10cm×厚み2mmの成形体を得た。
実施例4で得られた複合樹脂組成物を、離型剤を塗布した金型にセットし、複合樹脂組成物に対して、面圧30MPa加圧下でコンプレッション成形を180℃、20分行い、縦10cm×横10cm×厚み2mmの成形体を得た。
比較例1で得られた複合樹脂組成物を、離型剤を塗布した金型にセットし、複合樹脂組成物に対して、面圧5MPa加圧下でコンプレッション成形を180℃、10分行い、縦10cm×横10cm×厚み2mmの成形体を得た。
比較例2で得られた複合樹脂組成物を、離型剤を塗布した金型にセットし、複合樹脂組成物に対して、面圧5MPa加圧下でコンプレッション成形を180℃、10分行い、縦10cm×横10cm×厚み2mmの成形体を得た。
比較例3で得られた複合樹脂組成物を、離型剤を塗布した金型にセットし、複合樹脂組成物に対して、面圧5MPa加圧下でコンプレッション成形を180℃、10分行い、縦10cm×横10cm×厚み2mmの成形体を得た。
3.1 複合樹脂組成物
(1)収率
下記式により算出した。
収率(%)=(得られた複合樹脂組成物の重量/仕込んだ複合樹脂組成物原料の重量合計)×100
得られた複合樹脂組成物については、乾燥後の重量を用い、仕込んだ複合樹脂組成物原料の合計重量に関しては、水分を抜いた量を用いた。
(1)比重測定
比重測定は、JIS K 6911(熱硬化性プラスチック一般試験方法)に準拠して行った。試験片は縦2cm×横2cm×厚み2mmになるように成形体から切り出したものを用いた。
平面方向測定用として、縦10cm×横10cm×厚み2mmの成形体を得た成形条件に対して、成形時間のみを3倍として、縦10mm×横10mm×長さ3cmの成形体を得た。また、厚み方向測定用として、縦10cm×横10cm×厚み2mmの成形体を得た成形条件と同一の成形条件で、縦10cm×横10cm×長さ1.5mmの成形体を得た。得られたそれぞれの成形体から、縦10mm×横10mm×長さ1.5mmになるように切り出して試験片とした。次に、NETZSCH社製のXeフラッシュアナライザー
LFA447を用いて、レーザーフラッシュ法により板状試験片の長さ方向の熱伝導率の測定を行った。測定は、大気雰囲気下、25℃の条件下で行った。
曲げ試験は、JIS K 6911(熱硬化性プラスチック一般試験方法)に準拠して行った。試験片は、縦50mm×横25mm×厚み2mmになるように成形体から切り出したものを用いた。曲げ試験の支点間距離は32mmで行った。
縦10cm×横10cm×厚み2mmの成形体を得た成形条件に対して、成形時間のみを3倍として、縦5mm×横30mm×長さ10mmの成形体を作製し、それを縦5mm×横5mm×長さ10mmの試験片に切断し、熱機械的分析装置(セイコーインスツルメンツ社製、TMA−6000)を用いて、長さ方向の線膨脹係数を測定した。昇温速度は、5℃/分とし、線膨脹係数(α1)を80〜120℃の温度範囲で求めた。
体積低効率の測定はJIS K 6911に準拠して行った。試験片は、縦10cm×横10cm×厚み2mmの成形体を得た成形条件と同一の成形条件で、直径10cm×厚み2mmになるように成形し、表面に銀ペーストをスクリーン印刷して用いた。
実施例1〜4は、いずれも、高い収率で複合樹脂組成物が得られた。また、実施例5〜8は、いずれも、平面方向の熱伝導率が2W/mK以上、厚み方向の熱伝導率が平面方向の熱伝導率に対して半分以下、曲げ強度が100MPa以上、曲げ弾性率が8GPa以上であり、比重が1以上5以下、かつ平面方向の線膨脹係数が0.1ppm/℃以上50ppm/℃以下と、特性バランスに優れた成形体が得られることが分かった。
実施例7では(a1)絶縁性を有する高熱伝導性繊維として比重が低く高熱伝導性、絶縁性を有するポリエチレン繊維(超高分子量ポリエチレン繊維)を用いることで比重1.10と軽量性にすぐれた絶縁・熱伝導性成形品が得られている。
実施例8と比較例4の成形体を比較した場合、アルミナからなる繊維と粉末状フィラーとの差を示した検討であり、アルミナとしての成形体中に占める体積比率がほぼ同じであっても、本発明による熱伝導性繊維が分布良く配合した成形体は、粉末状フィラーの高充填したものよりも平面方向の熱伝導率は、1.5倍以上高い結果を示すものであった。
また、実施例5においては、(a1)絶縁性を有する高熱伝導性繊維と(a2)絶縁性を有する高熱伝導性粉末を併用することで平面方向への熱伝導率は5W/mK以上、曲げ強度150MPa以上と、良好な熱伝導性と強度を有する成形体が得られている。
以上のとおり、本発明により、加工性や軽量性などの特性と、熱伝導率や剛性などの特性とのバランスに優れた成形体を得ることができることが分かる。また、特に、(A)絶縁性を有する高熱伝導性フィラーとして、(a1)絶縁性を有する高熱伝導性繊維を用いることで、(a2)絶縁性を有する高熱伝導性粉末のみを用いる場合よりも、平面方向における高い熱伝導性を発揮できることが分かる。また、(a1)絶縁性を有する高熱伝導性繊維を用いることで、優れた機械的強度を発揮できることが分かる。
従って、本発明の複合樹脂組成物より得られた成形体は、パソコンや携帯電話、携帯情報端末、プラズマディスプレイテレビ、液晶テレビ、OA機器、ゲーム機器、娯楽用品、エアコン、オーディオ、光学機器、照明器具などの電子製品や、車載用のエレクトロニクス製品の内部機構部品、筐体等の構成部品への適用や、建築用構造材料、航空分野、宇宙分野、自動車分野などの部品等に使用が可能になり、軽量化による燃費の向上や省エネルギー化、電子機器などのヒートスポットの解消などに寄与することができ、環境負荷を低減することが可能となる。
Claims (19)
- 構成材料として、(A)絶縁性を有する高熱伝導性フィラー及び(B)樹脂を含む複合樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物を成形して得られる成形体における、レーザーフラッシュ法により測定した平面方向の熱伝導率が2W/mK以上であり、厚み方向の熱伝導率が平面方向の熱伝導率に対して半分以下であり、JIS K 6911に準拠して測定した曲げ強度が100MPa以上、曲げ弾性率が8GPa以上であり、JIS K 6911に準拠して測定した比重が1以上5以下であり、JIS K 7197に準拠して測定した平面方向の線膨脹係数が0.1ppm/℃以上50ppm/℃以下であり、JIS K6911に準拠
して測定した体積抵抗率が108Ω・cm以上1016Ω・cm以下であることを特徴とする複合樹脂組成物。 - 前記(A)絶縁性を有する高熱伝導性フィラーの熱伝導率が10W/mK以上であることを特徴とする請求項1記載の複合樹脂組成物。
- 前記(A)絶縁性を有する高熱伝導性フィラーの含有量は、複合樹脂組成物全体の10質量%以上90質量%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合樹脂組成物。
- 前記(A)絶縁性を有する高熱伝導性フィラーが、(a1)絶縁性を有する高熱伝導性繊維及び(a2)絶縁性を有する高熱伝導性粉末から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
- 前記(a1)絶縁性を有する高熱伝導性繊維が、アルミナ繊維、ポリパラフェニレンベンゾオキサゾール繊維、超高分子量ポリエチレン繊維から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項4に記載の複合樹脂組成物。
- 前記(a1)絶縁性を有する高熱伝導性繊維の平均繊維長さが、500μm以上10mm以下であることを特徴とする請求項4又は5に記載の複合樹脂組成物。
- 前記(a2)絶縁性を有する高熱伝導性粉末が、アルミナ粉末及び酸化マグネシウム粉末等の酸化物の粉末、窒化ホウ素粉末、窒化アルミニウム粉末及び窒化ケイ素粉末等の窒化物の粉末、ならびに、炭化ケイ素粉末等の炭化物の粉末から選ばれる少なくとも1種類の無機化合物の粉末を含むことを特徴とする請求項4ないし6のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
- 前記(a2)絶縁性を有する高熱伝導性粉末の平均粒径が、0.5μm以上500μm以下であることを特徴とする請求項4ないし7のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
- 前記構成材料として、(C)前記(a1)絶縁性を有する高熱伝導性繊維とは異なる繊維をさらに含むことを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
- 前記(a1)絶縁性を有する高熱伝導性繊維とは異なる前記(C)成分の繊維が、木材繊維、木綿、麻、羊毛などの天然繊維、レーヨン繊維などの再生繊維、セルロース繊維などの半合成繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ポリイミド繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアクリロニトリル繊維、エチレンビニルアルコール繊維などの合成繊維、ならびに、ガラス繊維などの無機繊維から選ばれる少なくとも1種の繊維を含むことを特徴とする請求
項9に記載の複合樹脂組成物。 - 前記(B)樹脂の平均粒径が500μm以下であることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
- 前記構成材料を溶媒に分散させた後、高分子凝集剤を添加し、前記構成材料をフロック状に凝集させ、その凝集物を前記溶媒と分離させた後、前記溶媒を除去してなる複合樹脂組成物であって、前記構成材料として、さらに(D)イオン交換能を有する粉末状物質を含むことを特徴とする請求項1ないし11のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
- 前記(D)イオン交換能を有する粉末状物質が、粘土鉱物、鱗片状シリカ微粒子、ハイドロタルサイト類、フッ素テニオライト及び膨潤性合成雲母から選ばれる少なくとも1種の層間化合物であることを特徴とする請求項12に記載の複合樹脂組成物。
- 前記(D)イオン交換能を有する粉末状物質が、スメクタイト、ハロイサイト、カネマイト、ケニヤイト、燐酸ジルコニウム及び燐酸チタニウムから選ばれる少なくとも1種の粘土鉱物を含むことを特徴とする請求項12に記載の複合樹脂組成物。
- 前記(D)イオン交換能を有する粉末状物質が、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト及びスチーブンサイトから選ばれる少なくとも1種のスメクタイトを含むことを特徴とする請求項12に記載の複合樹脂組成物。
- 前記(D)イオン交換能を有する粉末状物質がモンモリロナイトを含むことを特徴とする請求項12に記載の複合樹脂組成物。
- 前記(D)イオン交換能を有する粉末状物質の含有量は、複合樹脂組成物全体の0.1質量%以上30質量%以下であることを特徴とする請求項12ないし16のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
- 前記溶媒の沸点が50℃以上200℃以下であることを特徴とする請求項12ないし17のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
- 請求項1ないし18のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物を用いてなることを特徴とする成形体。
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